アイドルマスターシンデレラガールズより、小関麗奈の誕生日SSです。
できるだけ公式設定に準拠したいとは意識していますが、個人的な解釈、推測、キャラづけも多分に含まれております。
おつきあいいただけると嬉しいです。
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PaP「麗奈によると、“相棒”ってのは相方を優しく起こさなきゃいけないものらしい。覚えておくこと、光」
光「わかった、プロデューサー!」
南条光は素直な瞳をきらきらさせて、担当プロデューサーの言うことに元気の良い返事をした。
ちひろ「……なに大真面目な顔で、わけわからんことを光ちゃんに吹き込んでるんですか?」
疑うことを知らない英雄の卵を見かねて、緑の事務員が口を挟む。
純粋で聞き分けよく応じる点が光の長所であるが、単純で聞き分けずに信じてしまう点が光の短所である。
PaP「いや、ちひろさん。これは大事なことです。麗奈の“相棒”である光にとっては」
光「そうだな。しっかり、覚えておくよ!」
PaP「俺は以前、麗奈に怒られたのです。彼女を優しくベッドから起こさなかったことを」
ちひろ「なんかその言い方だと、PaPさんと麗奈ちゃんがやんごとなき仲のように聞こえますね」
PaP「えっ? 何を言ってるんですか? ちひろさんの思考回路はときどき理解できませんね」
ちひろ(野郎ォ……)
ちひろ「……オホンっ。と言っても、この前の仕事の時の話ですよね、それ」
PaP「ええ。あのとき、俺は麗奈に相応しいやり方で起こしたつもりだったんですが……」
ちひろ「寝室に一人忍び込んだ男にバスーカぶっ放されて朝を迎えるのが相応しい女の子なんて、どんな子なんでしょうねぇ」(呆れ)
光「あはは! そりゃあ、麗奈も怒るよ、プロデューサー」
PaP「そうか……反省しよう。とにかく、光も相棒を起こすときは優しくするんだぞ」
このアイドルにして、このプロデューサーあり、ということである。
この事務所のパッション部門プロデューサー、普段はその優メガネという姿の印象通り、理知的で計算高いはずなのだが、妙なところでネジが1本外れている。
麗奈の言うことを真に受け、大真面目に光に教え込んだかと思ったら、光の言うことをストレートに受け止めて、反省している。
――純粋が長所であり単純が短所である似た者同士。
呆れた表情をしているちひろではあるが、まぁ、その実、この2人を見ては「ほほ笑ましい」といつも思っているのだ。
裕子「そんなことより、こっちの手伝いもしてくださいよ!」
夕日が差し込む事務所の談話スペースで、黙々と飾りつけを作っていた堀裕子が呼ぶ。
PaP「おっと、申し訳ない。今から手伝うよ」
光「ユッコ、じゃあ、ケーキのデコレーションはアタシがやっておくね!」
裕子「麗奈ちゃんが帰ってくるまで、そんなに時間はありませんよ!」
さっき終わった就業時間にもかまわず、せっせと働く彼女たち。
その仕事は言うと、小関麗奈――先ほどの話でバズーカをくらっていたパッション部門のイタズラクイーンである――の誕生日お祝いの準備だ。
3月5日。今日は麗奈の誕生日。
光「ケーキっ♪ ケーキっ♪ どう飾ったらカッコよくなるかなぁ」ワクワク
PaP「少し手伝おう。光」
麗奈と光はデビューが同時である。当初から2人でバディを組んで活動を行ってきた。
互いに人気が出てきたため、最近は別々の仕事の方が多いぐらいであるが、それでも光は麗奈とのユニット『ヒーローヴァーサス』を大切にしている。
というより、麗奈を大切にしている。
今日だって、光は自分の誕生日のとき以上に、楽しみそうにソワソワしていたのだから。
そんな光をはじめ、パッション部門の3人のことなど露知らず。
本日の主役であるはずの麗奈はコッソリと誰にも悟られぬように、仕事から事務所に帰ってきた。
麗奈「ククク……。PaPめ。この前の仕返しよ。ちょうどいい具合に光とユッコもいるじゃない」
受付カウンターや観葉植物の鉢などに身を隠しながら近づく麗奈。
その腕には細長い金色の筒を抱えており、それには“アルティメット”と赤い文字が殴り書きされていた。
ご丁寧に注意書きなのか、小さく“鬼ヤバ!!”と書かれているのが、そのマヌケっぷりに拍車をかけている。
麗奈「この前の仕事先での寝起きドッキリ……その復讐よ! 何してるんだか知らないけど、思いっきりビビるといいわ、PaP!」
射程距離まで近づいた麗奈は一気に飛び出して、PaPのいる給湯室の方へ砲身を向けた。
その姿にちひろが気づいた。
一瞬、遅かった。
ちひろ「――っ!? 麗奈ちゃん、いけないッ!!」
麗奈「プロデューサーぁぁ! 覚悟ぉぉ!!」
ドォーーーンっ
「うわぁ!?」バタンッ ガシャーン
驚くプロデューサー。しかし、驚いたのはプロデューサーだけではなかった。
麗奈「あっ……」
裕子「あぁ! 光ちゃん、大丈夫ですか!?」
そこには体勢を崩しそうになるところをプロデューサーに支えられる光の姿があった。
光「だ、大丈夫だ、アタシは。だけど……その……ケーキが」
ちょうど運び出そうとしたところだった。
光が飾りつけたケーキは無惨にも彼女の服の上にぐっちゃりと崩れ落ちてしまっていた。
麗奈「あぁ……えっと……その……」
PaP「麗奈」
プロデューサーの声が重たい。麗奈も明らかにうろたえている。
麗奈「な、何よ、プロデューサー……」
PaP「謝りなさい」
麗奈「フ、フンっ……。光には悪かったわよ……。けどっ、元々はアンタが」
言い訳を続けそうな麗奈をプロデューサーが遮る。
PaP「そうだな。この前の件なら、それは俺も悪かった」
PaP「だけどな」
裕子が2人の様子を見ながら、目を泳がしている。
あわわ……という古典的なリアクションが聞こえてきそうだ。
麗奈「な、何よっ! 服とケーキは悪いことしちゃったけど、今日のおやつがなくなったぐらいでしょ!」
PaP「“ぐらい”じゃ、ないんだ。麗奈」
麗奈「えっ!?」
PaP「麗奈……まさか、今日が何の日なのか……」
麗奈「はぁ? 今日? 何よ……裕子の誕生日は来週でしょ? そんなケーキを用意するようなことなんて……」
麗奈「…………あっ」
目を見開き、そして、バツが悪そうにうつむく麗奈。
PaP「……そういうことなんだ。しっかり謝らないと――」
今度は,言いかけたプロデューサーを麗奈が遮る。
麗奈「だ、だったらなおさらっ! いいのよ、アタシの誕生日なんて、どうでもっ!」
PaP「麗奈!」
その声に力がこもった。普段、冷静な彼の滅多に見せない感情。
光「待って、プロデューサーさん!」
プロデューサーを遮ったのは、今度は光だった。
光「ケーキ、こぼしちゃった……。ゴメンな、レイナ」
光は笑った。とても哀しそうに、笑った。
そのあまりにも不器用なかばい方に、プロデューサーも自分が冷静さを欠いていたことを恥じた。
麗奈「な、何よ……もうっ……!」
うつむいたまま麗奈は声を絞り出す。そして、振り返り、そのまま事務所を駆け出してしまった。
事務所を出る時、一言だけ残して。
麗奈「ゴメン……みんな……」
ちひろが心配そうに3人を見つめている。二の句をつげる者は、いなかった……。
と、そのとき、麗奈が出て行ったはずの事務所の扉が開く。
奈緒「おつかれさま~」
まゆ「おつかれさまです」
神谷奈緒と佐久間まゆ――事務所のお姉さん的存在である2人が帰ってきた。
奈緒「なぁ、みんな、麗奈が走ってったけど、何か――」
と言いかけ、事務所の様子を見て、納得したように言葉を飲む。
奈緒「……あぁ。なんかあったんだな、こりゃ」
まゆ「そのようですねぇ。どうしたんですか、みなさん?」
裕子「じ、実はね――……」
裕子から事の顛末を聞いた2人は、ふぅとため息をもらす。
奈緒「やっちゃったなぁ……麗奈も」
まゆ「光ちゃん……元気、出してください。光ちゃんのせいじゃあ、ないですよ」
奈緒「そうだよ、光。あんまり気にすんな」
光「う、うん……ありがとう、2人とも」
光にとっても麗奈にとっても、普段から良いお姉さんである奈緒とまゆ。
2人に励まされて、光の表情も軽くなる。
まゆ「まぁ、悪いのは麗奈ちゃんのイタズラですけど……」
まゆ「麗奈ちゃんも可哀想ですねぇ」
奈緒「そうだな。麗奈は麗奈で謝んないといけないけど……どうすんだい? PaPさん」
奈緒「――麗奈、半ベソかいてたよ」
光「レイナ……」
まゆ「まゆも、できればちゃんとお祝いしてあげたいなって思いますけど」
裕子「わ、私だって! これで終わりはイヤです!」
黙っていたPaPが、メガネを外して大きく息をつく。そして、何かを振りほどくように首を横に何度か振る。
PaP「よしっ! 仕切り直しと行こうか。今日はもう時間が時間だから難しいが……」
PaP「麗奈が良ければ、明日、誕生日会をしよう」
PaPは努めて明るい表情を作った。
その様子を見ていたちひろにも、いつものスマイルが戻っていた。
奈緒「そうと決まれば、準備もしなくちゃな。帰りまで手伝うよ!」
まゆ「ケーキはまた買ってこないといけませんねぇ。それとも、まゆが作りましょうか」
PaP「とりあえず、光は着替えてきた方がいい。代えはあるか?」
光「うん! 大丈夫。着替えてくるね」
裕子「ケーキは私が! サイキック・タイムふろしきぃ~」(のぶよ声)
奈緒「わさびじゃないのか……」
まゆ「ゆっこちゃん、それはひみつ道具です」
PaP「サイキックでも何でもないんだよなぁ」
裕子「わ、わかってますよ、それぐらい! あれです、ほら、あれ、みんなを元気づけようと思って!」
ちひろ「ふふ。とりあえず、良かった……かな?」
再び賑わいを取り戻した事務所。
しかし、肝心の主役が欠けていてはやっぱり寂しいなぁと、ちひろは思うのであった。
明日の仕切り直しに向けて準備は進むが、時間も進む。
そろそろみんな帰らないといけない時間だった。
PaP「光、ちょっと来てくれ」
光「何? プロデューサー」
PaP「これを、麗奈に渡してくれないか?」
プロデューサーが差し出したのは、可愛らしいレターだった。
光「これは?」
PaP「麗奈に向けての招待状だ」
PaP「……さっきは俺も威圧的になりすぎたからな。麗奈が謝ることも大切だけど、その前に俺もしっかり謝らないといけない」
PaP「それに、麗奈もこのままだと素直には来にくいだろうから。それで、俺がしたためた」
そう言って、プロデューサーは恥ずかしそうに笑顔を見せた。
PaP「光から、渡してあげてほしい」
光「――うんっ。わかったよ、プロデューサー!」
光と麗奈は同じマンションの別の部屋に住んでいる。
事務所が借り入れている高セキュリティのマンションであり、他にもいくつかそういう場所がある。
プロデューサー達はこれを女子寮と呼んでいるが、事務所が借りていること以外に寮っぽい要素は皆無だ。
まゆ「光ちゃん。だったら、まゆからもこれ、お願いできないかしら」
まゆ「まゆの作ったクッキーと、雪乃さんからの紅茶」
光「レイナへのプレゼントだね。わかった、ありがとう、まゆ姉!」
まゆ「うふ♪ 本当は今日、渡そうと思ってたんだけど……。明日はCuPさんとお仕事で会えないかもしれないから。よろしくね」
ピンポーン ピンポーン
さっきから何回も鳴るチャイム。それが誰のものかはわかっていた。
『レイナ、大丈夫か?今からレイナの部屋に行くから、待っててくれ!』
“相棒”からのメール。相変わらず、アタシからの返信もないまま結論が決まってる……。
アイツらしい……。こっちの気も知らないで。
いや……知ってるからこそ、か。
そんなふうに麗奈は思った。
こうなったら、光はしつこい。それをよく知っているのもまた、麗奈であった。
悪いのはアタシだ。PaPへの仕返しなんてことして、光やユッコを巻き込んで。
自分の誕生日まで台無しにして……挙句の果てに勝手に1人でいじけて布団にくるまってる。
本当に、“自分の誕生日”だなんてどうでもよかった。
ただ――PaPやユッコの残念そうな顔。それ以上に、アイツの哀しそうな顔。
とにかくそれが堪えた。
居ても立ってもいられなくなった。
だから、逃げたのだ。
情けないことは自分でもわかってる。落ち込んでいるのもわかっている。
だからこそ、こんなとき、南条光はアタシを放っておかないことも、よく、わかっている。
あ~あ。会いたくないなぁ……。
だって……いくらアイツが鈍いからと言って、目の周りが赤くなっていることに気づかないはずがないもの。
でも――
ピンポーン ピンポーン ピンポーン
ガチャ
麗奈「うっさいわね……」
光「やぁ、レイナ! やっと開けてくれた。入るよ!」
ほら。こうやって、コイツはアタシの領分にずけずけと入り込んでくる。
麗奈の部屋で向かい合う2人。
麗奈はふてくされているとも、反省しているとも見える微妙な表情で黙っている。
光はなんだか落ち着かないようでモゴモゴしている。麗奈の目の周りを気にしているようだ。
光「あ、あのさ、その……さっきはさ……」
沈黙に耐えかねて、光から話し出す。しかし、上手く続かない。
麗奈(はぁ……。まったくもう……)
麗奈「……いいのよ、光。悪いのはアタシだって、ちゃんとわかってるから」
麗奈「えっと、その……後でみんなにもだけど……とりあえず、その……」
麗奈「光――」
麗奈「ごめんなさい」
そう言って、麗奈は丁寧に頭を下げた。
麗奈「――だから、光がそんなに申し訳なさそうな顔しないで」
光「――うん。ありがと、レイナ」
これで十分だった。
光「そうだ! これ、レイナに」
光は事務所での預かりものを差し出した。
麗奈「なにこれ?」
光「こっちがプロデューサーからのお手紙」
麗奈「PaPからの……。読むわ」
黙々と手紙を読む麗奈。光はニコニコしながらその様子を見ている。
少し、ほんの少しだけ、しかめっ面をした後、一瞬だけ涙を溜めそうになって、それをごまかすように、麗奈は高笑いをした。
麗奈「アーッハッハッハ、ガッ……ゲホゲホ……ッ!」
光「あはは! 結局、むせて涙出てるぞ、レイナ」
麗奈「な、何よッ! 涙なんて、ゲホッ、出てないわよっ。ゴホッ……うげぇ」
光「プークスクス。“うげぇ”って、レイナ――あっはっはっ」
麗奈「笑ってんじゃ、ゲホッゲホ、ないわよぉ!」
光「ははっ。ごめん、ごめん。大丈夫、レイナ?」
結局のところ、光は笑いをこらえながら、麗奈の背中をさすってやる。
光「あはは! うん、やっぱり、こうじゃないとね、アタシたちは」
麗奈「ゲホッ……ゴホ、う、うぅん。はぁ……まったく、ホント何言ってるんだか」
麗奈「ありがと、光」
光「で、プロデューサーからの手紙、読み終わったんだよね」
麗奈「ええ」
光「明日、いいよね?」
光は既に数時間前のワクワクした表情に戻っている。
麗奈「……ええ」
光「やった! じゃあ、明日、楽しみにしてる!」
麗奈「なんでアンタが楽しそうなのよ。アタシの誕生日よ」
麗奈「……ていうか、今日よ」
光「あっ、そうだった。てへ」
光「じゃあ、あらためまして。誕生日おめでとう、レイナ!」
麗奈「フン。どうも。ちょっとだけ、感謝してあげるわ」
と言いつつ、麗奈がしっかりニヤついてしまっていること。
このことは、あえて指摘しない光。
代わりに一緒にニヤつくのだ。
それが、光と麗奈。
光「そうだ。まゆ姉からも預かってきたんだ。プレゼント」
光「ほら、クッキーと……あと、雪乃さんからも紅茶の詰め合わせ!」
麗奈「なかなかシュショーな心がけね。感謝しておくわ」
麗奈「そういえば、光はなんかないの?」
光「あっ……」
麗奈「アンタねぇ!」
光「ごめん! でも、自分からねだりに行くスタイルはどうかと思うぞ、レイナ!」
麗奈「うっ……。いいのよ、誕生日ぐらい!」
光「う~ん……そうだ! 今からティータイムにしよう!」
麗奈「はぁ?」
光「まゆ姉と雪乃さんのプレゼントを使って、アタシが準備する! レイナの分も淹れてあげるよ!」
光「それで、ティータイムの話し相手になってあげるよ」
光「最近、“相棒”なのにあんまりゆっくり話せなかったし、それがいいだろ?」
麗奈「なんでもう決まってる感じになってんのよ……」
麗奈「だいたい、こんな遅い時間にティータイムなんてしたら、泊りコースじゃない」
光「まぁ、部屋も近いから帰ろうと思えば帰れるぞ、レイナ!」
麗奈「はぁ……」
光「……ダメ?」
光にしては珍しく、と言っても麗奈にとってはさほど珍しくもない、上目づかいでおねだりするような光の瞳。
麗奈は、ホントにコイツは――卑怯なんだから、と心の中で優しく毒づいた。
麗奈「いいわよ。そういうことにしてあげる」
光「やった! じゃあ、決まり! 今日はいっぱい話そう、久しぶりに♪」
麗奈「そうね……。じゃあ、泊まっていきなさい」
光「帰れるけど?」
麗奈「クッ……。いいから、泊まっていくこと。“相棒”でしょ!? レイナサマがそう言ってるんだから、そうしなさいッ!」
光「は~い」
光が目を覚ましたのは、まだ部屋が暖まり切っていない午前7時少し過ぎだった。
光「ふぁ……ねむ…………」
ベッドの横では昨日の主役でもあり、戦犯でもある麗奈が熟睡している。
起きないといけない時間が近い。光はベッドから出て、ひとつ背伸びをした。
再びベッドの方を向くと、麗奈は光の方を向いて横になって眠っている。
なんだか不思議な気持ちになった光は立膝をしてベッドにもたれかかり、麗奈の顔をじっと見つめてみた。
自分の“相棒”とはいえ、寝顔ってなかなか見れるものじゃないよなぁ。
麗奈「すー……すー……」
昨日の事件、その後の強がりが痛いぐらいであった彼女も、今は静かに寝息を立てている。
昨日のことが嘘みたいに穏やかな表情。
薄目に整えた眉毛と短い前髪で強調されたおでこ。
本人はこれで威厳を示しているつもりみたいだけど、むしろ可愛げを感じるのは光だけだろうか。
普段は鋭い(ように心がけている)眼も、安らかに閉じていれば、長い睫とバランスの良いふたえの美しさが強調される。
正直、この麗奈の些細なセクシーさが、光はうらやましくてたまらない。
気がつくと10分ぐらい魅入っていたのだから変な話である。
そろそろ起こさないと。光はそう思った。
そして、昨日、PaPに教えてもらったことを思い出した。
光は麗奈の額から頬にかけてを、その掌で優しく撫でた。
麗奈「うぅんっ……」
そのかすかに漏れた声を聞いた、純粋な感想をただ光は述べただけだった。
彼女の頬に手をそえたまま。優しく凛々しく囁くように。
光「かわいいな――麗奈」
麗奈はパッと目を見開いた。みるみるうちにその頬が紅潮する。
そえられた光の手がやけどするんじゃあないか、ってぐらいに。
麗奈「な、なななな……なんて起こし方すんのよ、光ぅ!?」///
光「いや、だって、こうやって起こしてほしかったんだろ!?」
麗奈「だ、誰が、そんなこと言ったのよッ!?」///
光「麗奈が前に言ってったって、PaPから聞いたぞ!?」
光「――“相棒”って優しく起こすものらしい、って」
その日一日、仕切り直しで誕生日を祝われる麗奈の顔は3割ぐらい赤みを増していたそうな。
おわり
以上です。
麗奈の誕生日SSなのに光が主人公のような話に……
麗奈,おめでとう!レイナンジョウは正義。
おつきあいいただいた方々、ありがとうございました。
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