香取「練習巡洋艦、香取です」 (34)
「練習巡洋艦……とはどんな特性を?」
「はい。練習艦として設計された私は、艦娘を指導する能力に長けています」
「元々は士官候補生を教育する為に生まれましたが……当時はほとんど、その役割を果たせませんでした」
「そうか……」
「今度こそ、必ずや艦隊の練度向上にお力添えできると思います」
「ですが、敵戦艦との砲撃戦等はあまり得意としておりません……」
「わかった。香取には主に練度の低い艦娘の指導に当たってもらうよ」
「期待してるな、香取」
「はい!」
「しばらくの間、秘書を任せてもいいかな?」
「ぜひお任せください!」
「……すごく、嬉しそうな顔してるね」
「あら、いやだ……そう見えましたか?」
「違ったらごめん」
「大丈夫です、はい♪」
艦としての役割をほとんど果たせぬまま沈んでから、どれだけ経っただろうか。
何の因果か艦娘として生まれ変わり、自我までも保っている。
人と遜色ない機能を手に入れ、無念を晴らしてくれる人に今こうして出会えた喜び。
提督と初めて交わした会話を今でも覚えている。
見た目の第一印象は好青年。見る人によっては若輩者と蔑む捻くれ者もいるだろう。
最初、提督と話をしてみて……真面目な感じで、初心を貫く姿勢のようなものを感じ取った。
提督を見つめる香取の瞳には期待と憧憬、淡い情愛が込められていた。
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…
……
「これはすごい、ですね……」
秘書に任命されまず見たのは練度一覧表。艦娘の情報の全てが詰まっている一覧表である。
その為、これに一通り目を通せばその鎮守府の練度が分かると言っても過言ではない物である。
香取が見たのは、2頁以上に並ぶ練度100超えの艦娘たちの名前。
戦艦や空母等、戦果を上げやすい艦娘が筆頭というのはわかるが、それでもこの数。
若くして提督を務めているだけあって、やっぱりできる人なのだなぁと素直に感心した。
「しかし、これほどの艦娘とケッコンしているのでは大変ではないですか?」
「大変?」
「まぁ……」
「?」
なるほど。これは不躾な質問をしてしまったと少し後悔した。
若さ故成せることなのでしょう、うまく回っているなら問題ありませんね。
この後も、艦娘の殉職数や出撃時の編成記録、日ごとの出撃回数などを提督の見ていない所で調査を進めたが、所謂黒い部分というものが一切見当たらなかった。
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