アルラウネ「別に事実が変わったわけじゃないのにね」(23)


男「ただいまー」

アルラウネ「おかえりー」

男「上半身だけで揺れるな怖いから」

アルラウネ「半身というかほぼ全身だから許して」

男「……その下ってやっぱり普通に根っこなの?」

アルラウネ「見たこと無いしわかんない。でも覗いちゃダメだよ」

男「残念」

アルラウネ「それよりスマブラやろーぜスマブラ」

男「ああちょっと待って。飯とか風呂とか全部済ませてから」

アルラウネ「忙しいねえ男君」

男「君ら見たく生えてれば生きていけるわけじゃないんでね」

……

男「頂きます」

アルラウネ「……んー」

男「どうした」

アルラウネ「毎度のことだけど、味ってどんなのかなーって」

男「食べてみる?」

アルラウネ「いやどんな味がするかじゃなくて、味そのものっていうか」

男「あー……なにか食べたりするわけじゃないからか」

アルラウネ「そそ。土から栄養吸って太陽光浴びるくらいしか、君らにとっての食事に当たるものがないからね」

男「美味い不味いで一喜一憂する必要がなくて楽そうだ」

アルラウネ「憂うことがないのは確かに良いことだけど、それでも喜びを得るために工夫するというのは私は好きだよ」

男「肥料の質にこだわったりは?」

アルラウネ「君は園芸店から毎回同じ腐葉土を買ってくるじゃないか」

男「それもそうか」

……

男「ふいーさっぱりした」

アルラウネ「お風呂ねえ。……それなら私もいけるんじゃないか?」

男「……雑草の除去方法の一つに熱湯をかけるっていうのがあってな」

アルラウネ「おおう……いやでもほら、ぬるま湯というかちょうどいい感じのお湯なら」

男「それ以前に湯につかれるのか」

アルラウネ「……浴びるくらいならなんとか」

男「あと僕と一緒に入ると泡とか跳ねるぞ」

アルラウネ「ままならないねえ」

男「残念だねえ」

……

アルラウネ「ふはは、やはり私のメタナイトには勝てないみたいだね」

男「新作で弱体化されたって聞いたのに……なんで即死コンなんてあるんだよ」

男「……あ、ニュースの時間だ」ピッ

アルラウネ「おや逃げるのか」

男「社会に目を向けているのさ」


アナウンサー『昨年から世間を騒がしているこの『ワイズサキュレント』という植物ですが――』

アルラウネ「おや、同族だ」

男「あー、そういえばお前を拾ってまだ一年だったか」

アルラウネ「早いねえ。そういえば何故私をひろったんだい?」

男「なんか面白いの生えてるなって」

アルラウネ「……まあ、そんなものか」


男「別に新しく何か分かったわけじゃなく、一年っていう節目だから特集でまとめてる感じかな」

アルラウネ「騒がせているとはいうけど、多分周りが勝手に騒いでるだけなんだよねえ」

男「……他のやつも皆お前みたいな性格なら、そうなんだろうな」

アルラウネ「さあ? でも多分、自力で移動もできないし迷惑かけることも無いと思うんだけど」

アルラウネ「というか、そもそも小さい頃から君と一緒にいるのだから、性格とかは君に似たんじゃ?」

男「それもそうか」

アルラウネ「その年で子持ちとは苦労してるねえ」

男「……移動できないのに日本まで広がってきたのって、何かで種がどうたら、だったっけ」


アルラウネ「そーそー。研究者だったかテレビスタッフだったかが持って来ちゃったんだっけ」

アルラウネ「けど私も日本生まれだし、小さい頃に君に拾われたものだから」

アルラウネ「テレビとか君から聞いた情報以上には知識はないよ」

男「……おとなしくこの番組見とくか」

アルラウネ「新しい情報もないのに?」

男「こういうのはエンタメとして楽しむもんだ」

アルラウネ「どの番組も変わらないんだね」

……

アルラウネ「結局、何がどう騒がれているのかはあんまり話題にしなかったね」

男「結構倫理的に複雑だからな、仕方ない」

アルラウネ「その辺、私にはよくわからないんだけどさ」

男「?」

アルラウネ「どうして、私たちの存在が知られるようになった程度でこんなに混乱するの?」

アルラウネ「へーすごい、で終わりじゃない?」

男「……問題はそこじゃなくて」

男「お前らの体の仕組みが、他の植物と全く一緒だったことだろう」


男「ベジタリアンって知ってるよな」

アルラウネ「ああ、ええと、野菜が好きで肉は食わず嫌いな人たち?」

男「我ながら食の好みについてお前が言及するのはどうかと思う」

男「まあ、生き物を食べるのは可愛そうだっていう考えの人達がいて」

男「その人らは植物、野菜とか果物とかを食べてたんだ」

アルラウネ「……とりあえず聞いてた方がいい?」

男「反論は想像できるが、とりあえず静かに聞いてくれると助かる」

男「かわいそう、の考え方の一つとして『心があるか』っていうのがあってな」

男「牛やら豚やらは脳が発達していたり、感情表現ができるから心があって」

男「植物はうんともすんともいわないからセーフ、ってことらしい」

アルラウネ「え、心って胸のあたりにあるんじゃないの?」

男「……この前アニメでそういう表現してたな」


男「さて、テレビの撮影クルーによってワイズサキュレントと呼ばれるお前らの存在が知られるようになった」

男「人の上半身みたいな姿で、言葉を話し、学習し、表情をころころと変える植物だ」

男「さすがにそれには心があると言わざるをえない」

アルラウネ「実際心って何かと聞かれると困るけどね」

男「で、早速研究者たちが調査に出向いたわけだ」

アルラウネ「いろんな人が来たせいで種は世界中に大拡散」

男「身近にも君らが現れるようになったところで、調査結果」

男「特有の組織とか、特別な細胞とかは全くなくて」

アルラウネ「あるとしても、発声のためのものと表情を変えるための柔軟な細胞で」

男「それ以外は他の植物と何ら変わりなかったとさ」


男「心がある植物を調べても、他の植物と全く変わらなかった」

男「つまり、これまで食べてきた野菜は、ワイズサキュレントと大差なかった」

男「もしかして植物全般にも心があるのかもしれない」

アルラウネ「……あー、だから食べたくなくなっちゃうのか」

男「罪悪感で自殺しようとした人も出たな。既にその辺にたまに生えてる植物になってるからたちが悪い」

男「草むしりができなくなる人もいるし、農家にもちょっと影響でたらしい」

アルラウネ「作物の売上げ、落ちたんだっけ」

男「そうらしいね」


男「菜食主義の人らの活動は大人しくなってしまったけれど」

男「だからって肉食主義が流行るわけでもなく」

男「今に至るとさ」

アルラウネ「んー……」

アルラウネ「私からしちゃあよくわからない理由だった」

アルラウネ「色々気を使ってもらって悪いけど、腐葉土だって元は植物だし」

男「だよなあ」

アルラウネ「君らの感性からすれば多分これ共食いって言ってもいいんじゃないかな」

アルラウネ「気にしてないけど」


アルラウネ「それにさ、君らが見つけてなかっただけで」

アルラウネ「皆が安心して野菜を食べていたころも、私の祖先は存在していたわけだし」

アルラウネ「今更どうということも無い気がするんだけど」

男「そう言ってしまうとまあそうとしか言えないんだが」

男「そうも行かないから、こうやって皆悩んでいるのさ」

アルラウネ「めんどくさいねえ」

男「どうにかなりませんか賢者様」

アルラウネ「君以上の知識は無いっての。日本生まれ君の部屋育ち」


アルラウネ「まあでも、そのうち落ち着くでしょ」

アルラウネ「元通りとはいかないまでも、折り合いつけて野菜も肉も食べるようになるんじゃないかな」

男「日和見、じゃなくて予言になればいいんだけど」

アルラウネ「言うだけならタダなんだし、ポジティブに行こう」

男「最悪を想定しなかった結果として今のポケモンのレートがあるわけか」

アルラウネ「それとこれとは別」

……

男「さて、そろそろ寝るわ」

アルラウネ「おやすみー。……ああ、そうだ男君」

男「ん?」

アルラウネ「ここ数ヶ月間、君の食事は肉料理が多い気がするのだけれど」

男「あー……、あれだ」

男「ウサギをペットとして飼ってる奴が、嬉々としてウサギ肉のパイを食べるかって話」

アルラウネ「ああ、それは分かりやすい」

っていう世界観だけ思いついてシナリオ思いつかなかったので放り投げて終わり。
誰か書いて

ちょっとだけ思いついたので書いてみる



アルラウネ「でもさ」

男「何?」

アルラウネ「共食いはともかく、肉食動物は別の種族の肉を食べる訳じゃない、私達も他の植物の死んだ土地でその栄養をいただいてる訳よ」

男「それが何か?彼らは本能に従って動いてる訳なんだから、人間は心があるから言語を話して心がある物を食べたくないんだよ」

アルラウネ「それがそもそも間違いなんだってば、私達の様に直接話ができるモノとは違って野菜とか普段人間が食べてる植物は言葉が喋れないし明確な意志疎通ができないのよ、そして野菜とかとは私は違う。つまり他の動物食べてるのと同じなのよ、わかる?」

男「えっと………つまり野菜を食べても兎飼ってる人がウサギパイ食べてる事にはならないってこと?」

アルラウネ「その通り、だからさ、私に気を使って野菜食べないとかそういうの、やめてよね?」

男「あ、ああ………わかったよ、なんかごめん………気を使わせちゃったみたいでさ………」



続きは誰か任せた

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