モバP「うーーライブライブ」 (21)
今輝きの向こう側に全力疾走する僕は、346プロダクションに所属するごく一般的なプロデューサー。強いて違うところをあげるとすれば、CuPなことかナー。名前はP。
そんなワケで予定地にある仙台市にやってきたのだ。ふと見ると少女がいた。ウホッ、ティンと来た……。
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そう思ってると、突然その女は僕の見ている目の前でアイスティーを淹れはじめたのだ……!
「うふふ……あなたのまゆですよぉ」
そういえば仙台市はヤンデレが自生してる所で有名だった。
睡眠薬に弱い僕はホイホイと地下室に拉致られてしまったのだ・・
彼女ーー瞳がヤバい元読モで、佐久間まゆと名乗った。拉致監禁もやりなれてるらしく、地下室にはいるなり僕は素裸にむかれてしまった。
「離せぇ!離せぇ!誰か助けて!」
「まゆはPさんのなら、何処だって食べれちゃう女の子ですよぉ?」
「知らんよ!」
「つれないですねぇ。なら、とことん悦ばせてあげますね♪ンブッ、むちゅるる……」
言葉通り、彼女は恋のテクニシャンであった。つなぎバラす、自由自在な責めはクセになりそうだ。
僕はというと、与えられた刺激ですっかりのぼせてスパークしていた。
彼女の細指のビートにあわせる__それでイきそうだったのだ。
だがしかし、僕とて遊びだけやってるワケじゃない。なんとか活力を振り絞って、彼女に声をかけた。
「き、君にはセンスがある……アイドルに興味は、あ、やめて、そこ、きたなっ」
「Pひゃんひひははいほほはんへはひはへんひょほぉ?」
「アイドルやってくれるなら、これ以上だって考えるから!だから口を離してくれ」
寝物語の嘘といえば、なんら間違いではない。僕はこの場を早く逃げ出し、可能であれば彼女の才能を確保したかったのだ。
そんな情けない嘘をスラスラと言えるのは、破廉恥な男たることの証明にほかならなかった。
彼女はチュルリと音を立て、僕のリボルバーカノンから口を離した。プルプルとした唇がつつ、と『くびれ』をなぞったせいでボルテージが上がり、あわや暴発寸前ともなったが、自粛した。
「いいこと思いつきました。Pさんをまゆがトッププロデューサーに仕立て、して……するんです♪」
「えーっ!最初からそう言ったでしょォ!?……あと、随分早く決めますね?」
「なんだって度胸!……おばあちゃんが言ってました♪」
そんなに育ちのよろしいお嬢さんが、何をトチ狂って荒事に頼るのか。疑問の種は尽きないが、僕は佐久間まゆをスカウトできた。
……………………………………………
「うぅーん、もっと勢いが欲しいのよネェ」
カメラマンさんは、腰を軟体動物のようにくねらせながら肩を落とした。なるほどよくわかる話で、カメラ慣れをした佐久間まゆにしては、なんとも『収まりがよすぎる』一枚になっていた。
無数のハートクッションに赤リボンという、オンナノコの大好きがギュッと詰まってると言うべきセットに飲まれてて、意外性が無くなっていたのだ。
もちろん、この一枚で決定してもよい。けれど、芸術家肌のカメラマンさんは納得しないだろうし、何よりまゆがリテイクを望んでいるのだ。
「別に、これでOKしたってよいのだけど……」
「ぺろ……Pさんのお顔から、嘘ついてる味がしますよぉ?」
「ひゃあ。なぜわか……あっ」
「あの写真じゃまだ、満足してないんですねぇ。……ちょっとだけ、怖い風にやっていいですかぁ?」
いつもの君じゃないか!大声を出しそうになったが、大人げないので自重した。それにしても、それまでの王道カワイイ路線を、惜しげもなく捨てられるなんて、なんて娘なんだろう……今更だけれど。
しかし彼女のクレイジーな瞳を覗くうちに、そんな博打じみたことをためしてみたい欲望が、むらむらと鎌首をもたげた。
「カメラさん、少しこわい感じでお願いできます?」
「こわい?……ウン、わかったわよォ!」
これにはカメラマンさんも大喜びであり、まるで大雨の日のように、シャッター音が撮影所に鳴り響いた。
「もっと見る人を挑発するの!刺激的に、情熱的にネ!」
「うふふ……任せてください♪」
変なことを唆されているように映ったが、撮影は無事終了し、誰もがうなる一枚が仕上がった。
一枚のブロマイドで人気になれたわけでは無いが、間違いなくスターダムに登る切っ掛けとなった。
まずステージ、次にイベント、グラビア、CM。とんとんとことが進み、テレビでショータイム。一つの仕事が芋づる式で仕事を呼びあげる様は、ある種のインフレやビッグバンを彷彿させた。
本人の実力はもちろんだが、僕のプロデュースが二割はあると、自惚れていたい。でなければ、過労で倒れた甲斐が無いのだ。
……………………………………………
『休暇?』
『社長から直々にです。まゆと一緒にお寿司でも食べて、ゆっくり休め!……ですって♪』
346プロは人が多いから、僕とまゆが少し抜けても、充分にリカバーが出来る。二三日の休み程度ならばすぐに取り戻せるから……という、贅沢な判断があったかまでは、さすがに思考がおよばない。ともかく、僕とまゆは、社長推薦の寿司屋に向かった。
「ここはやっぱり、美味しいですねぇ」
まゆは慣れた手つきで箸を運び、寿司を転がして反面のみに醤油をつけ、ネタを下に食べた。こなれた手つきは美しかった。
「前に来たことがあるのか?」
「Pさん、お口にお醤油がついてますよぉ?」
はぐらかされてしまった。ひどく長い間口を拭われたのち、僕も寿司を口に運んだ。
「……かっ、からっ!わさび多いって」
強面の板さんが、申し訳なさそうな顔をして、濃いお茶を無口で差し出した。強すぎる香りで鼻がバカになってたせいで、お茶の香りが何もわからなかった。
「ありがとうございます。……それにしても、きれいなお店だ」
「社長が教えてくれたんです。そろそろおあいそしますね」
「もう?……あっ」
いきなりに眼前がチカチカと明滅し、水槽で泳ぐイシダイが拡大写真のようにいびつに延びた。板さんの顔も延びて、リトルグレイのようになっていた。
(こりゃ盛られたな!?)
意識が文章として明瞭になった瞬間に、視界が暗転した。
……………………………………………
「まゆとPさんを繋ぐ、キズナのリボンです。これ、どう思いますかぁ?」
「すごく、紅いです……」
両腕をぐいと引っ張ると、ジャラリと鎖が音を立てた。円形のベッドに大の字で固定されてるのだから、気分は本郷猛その人だ。
しかし、景気よく「やめろショッカー!」と叫べるほどには、睡眠薬…わさび味)の毒は抜けていなかった。
「こんなことをして、どうするんです。社内恋愛なんてタブー破りを……」
「それならもう、大丈夫ですっ♪」
彼女はタブレット端末を取り出して操作し、ビデオレターを再生した。
『頑張ってー!』。ピョイコピョイコと跳ね飛ぶ薫は、子どもや孫がいたらこんな感じだろうか……と思わせてくれた。
しかし、平生の心を取り戻すには、あまりにも趣向が違った。このエールは、まゆに向けられているからだ。
『負けないで』。前髪をパサリとはねのけた凛が、まゆに不器用にエールを送った。
『勇気ある誓いとともに!』。光はサムズアップをして、背中を強く押す熱いメッセージを発した。
『いわゆるホールドアップってやつ?』。赤い上着を着込んだ社長が、ダミ声で呟きながら肩をすくめた。
エトセトラ、エトセトラ、エトセトラ。監禁は事務所の総意であった。僕は味方が何処にもいないことを悟った。
「せ、せめてアレ使ってくれ。サイフの中に入れてあるから」
「まゆ、ビニールとよろしくしたいんじゃないですよぉ?」
「や、やめてくれ……赤ちゃんできちゃっ」
「だからでしょう?チャレンジです、今だけがその時ですよぉ♪」
意見すら許されず、まゆのホルスターに強制的にインサートされた。リボルバーカノンは壊れたように六連射した。
「忙しくって、そうとう我慢してたみたいですねぇ。……お腹の中がパンパンですよぉ」
まゆは自分の左腕で、愛おしそうに腹をなでた。もう片方の手は、まるで別の生き物のようにわきわきと動いていた。
「何をするんだ……も、もうやめてくれぇ……」
すっかり僕は泣いていた。シーツを被れるのであれば、目を隠せるくらいに覆ってしまいたかった。
まゆは涙の一筋を指ですくい、それをペロリと舐めとった。
「いつぞやの約束、果たさせてくださいねぇ?」
「何のこと!?」
「これ以上のこと……考えて、くれてたんですよねぇ?」
まゆは指をしゃぶり、ダラリと濡らした。
「……ごめん、覚えてない」
思い出したくなくて記憶に蓋をしたのか、覚えがなかった。
「まぁ、約束はしていますから♪」
聞く耳持たずであった。僕の中に、つぷりとまゆの指が進入した。
「ココ♪触ると、すぐに復活しちゃうんですって。……このままじゃ収まりがつきません。まゆのことも、悦ばせてくれますよねぇ?」
「あっ……ああっ!!」
手動で給弾され、そのまま銃身が焼きつくまで撃ち続けることとなった。指は二本、三本と増えていき、最後には鋭い貫手が僕をむさぼった。
そして、そんな体験が、その日だけで終わったワケではなかった。そろそろ僕のホルスターは、テニスボールを装填できるほどに拡張されただろうか。
こうして僕のプロデューサー活動は、クソミソな結果となって今に続くのでした。んほぉ。
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地の文の習作です。年末をみなさま、いかがお過ごしでしょうか。
拙い作品に最後まで付き合っていただき、本当にありがとうございました。良いお年を。
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