ヤンデレ「わたしは好きな人を束縛するなんて最低の行為だと思うわ」
男「ほう」
ヤンデレ「だって本当に好きなら相手の幸せを願うはずでしょう?」
男「まあ、そうだな」
ヤンデレ「それなのに自分の欲望を相手に押し付けて好きな人に嫌な思いをさせるなんて最低よ」
男「なるほど、確かにそうだ」
ヤンデレ「その点わたしはえらいのよ」
男「どうして?」
ヤンデレ「わたしのふつふつと湧き上がる欲望を必死に押し殺してるもの」にこり
男「……」
男「いや、でもお前はずっと俺と一緒にいる気がするんだが」
ヤンデレ「それはあなたがそうしたいと思ってるからよ」
男「うっ」
ヤンデレ「でも、もしあなたが他の女の子を好きになったらわたしは身を引くわ」
男「何もせずにか?」
ヤンデレ「そんなわけないでしょう?」にこり
男「」びくっ
ヤンデレ「どれくらいあなたのことを好きなのか、あなたを幸せにできるのか、それからあなたがその子のことをどれくらい好きなのか。しっかり調べるわ」
男「こええよ」
ヤンデレ「当たり前でしょう、せめてわたしよりもあなたのことが好きだと確信が得られなければならないわね。そうでもしないとわたしは心置きなく死ねないもの」
男「おいお前今物騒なことを」
ヤンデレ「何かしら?」にこり
男「いや死ぬって言っただろ」
ヤンデレ「言ったわね」
男「お前は俺が他に好きな子ができたら死ぬのか?」
ヤンデレ「ふふ、それはあなた次第よ。お遊び程度ならわたしは気にもしないわ、だってわたしがいるんですもの」
男「確かに俺はお前が好きだし、小さい頃からずっと一緒だったわけだが、お前の考えだけはよく分からん」
ヤンデレ「あら、わたしの考えはとてもシンプルだと思うのだけど。逆で考えてみればよく分かるんじゃないかしら。例えばわたしが他の男の人を好きになったら」
男「相手の男を殺す」
ヤンデレ「」びくっ
男「い、いや、今のはあれだ。言葉が咄嗟に出てきただけだ、ほんとに」
ヤンデレ「そ、そう……」
ヤンデレ「と、とにかく、わたしはあなたが他の女の子と話してただけで嫉妬するような器量の小さな女じゃないわ」
男「と言う割には、機嫌が悪くなるよな」
ヤンデレ「う、うるさいわね」
男「まあ俺には仲良く会話してくれる女の子なんていないからな、お前を除いて」
ヤンデレ「四六時中一緒にいるもの、付け入る隙はないわ」
男「多分そのせいだと思う、いや思いたい」
ヤンデレ「でもわたしはあなたが嫌だと言えばやめるわ」
男「はいそうですか、いつも言うけどお前は俺に求めなさすぎなんだよ」
ヤンデレ「そうかしら?」
男「お前がどうしたいとかこうしたいとか、絶対自分からは言わないだろうが」
ヤンデレ「そうね、だってわたしのわがままだもの」
男「いいか、言ってもいいんだ。限度があるが」
ヤンデレ「……あなたの迷惑になるわ」
ヤンデレ「夜中に何百回も無言電話しても授業中に何百通もメールしても一緒にいる時はずっと抱きついていてもずっとあなたに好きって言い続けてもいいの?」
男「それは……」
ヤンデレ「ダメでしょう?」
男「ダメだ」
ヤンデレ「なら我慢するしかないじゃない」
男「いや好きっていうのは何度も言ってる気がするんだが」
ヤンデレ「何度言っても言い足りないわ、言葉って本当に不便ね」
男「ヤンデレ」
ヤンデレ「?」
男「好きだ」
ヤンデレ「……」かたまる
男「俺は一回で言い足りる」
ヤンデレ「ふ、不意打ちは卑怯よ!」
男「ヤンデレは面白いな」
ヤンデレ「むっ、うるさいわね」
男「だけど俺たちは付き合ってすらないんだよな」
ヤンデレ「そうね」
男「周りの連中には付き合ってると思われてるが」
ヤンデレ「わたしは恋人ってひどく曖昧な関係だと思うわ。だって相手を縛るためのものでしょう?」
男「確かにそうかもしれないけど、二人の約束事なんだよ。悪いもんじゃないだろ」
ヤンデレ「そういうものかしら。でも、わたしはあなたの負担にはなりたくないもの」
男「お前が俺と付き合ったら、俺の負担になるってことか?」
ヤンデレ「……なるわ」
男「どうして」
ヤンデレ「わたし、重いもの。きっと最低最低な彼女になるわ。今よりもっとあなたにたくさん求めるようになって、わがままも増えて、あなたの負担にしかならない。……わたしは、それがとてもこわいのよ」
男「俺はヤンデレを負担だと思ったことなんてないけどな」
ヤンデレ「ふふ、あなたは優しいわね」
男「いや優しくなんてない、ただ好きな子に甘いだけだ」
ヤンデレ「……ねえ、分かってるかしら。迂闊にあなたがわたしに好きって言うと、わたしはとても浮かれてしまうのよ。これ以上わたしが増長してしまったらあなたに迷惑が」
男「かからない」
ヤンデレ「いいえ、かかるわ。わたしはとても最低な性格をしてるもの、あなたを独占するために何をするか分からないわ」
男「全部受けとめるよ、俺の好きなヤンデレがすることなんだから」
ヤンデレ「また言ったわね!? す、好きって!」
男「言ったな」
ヤンデレ「……」かあああ
ヤンデレ「わ、わたしもあなたが好きよ」
男「ありがとう」
ヤンデレ「……」かあああ
男「照れてるヤンデレもかわいいな」
ヤンデレ「わたしはあなたが平然としてるのが分からないわ」
男「まあ慣れたからな」
ヤンデレ「……わたしに飽きた?」
男「そうは言ってない。だけどヤンデレとずっと一緒にいたからな、これが平常運転になっただけだ」
ヤンデレ「……そう。でもわたしは慣れたと思ったことないわ」
男「そうなのか」
ヤンデレ「だってそうでしょう、わたしはいつも思うもの。あなたが幸せになれますように、って。そのためにわたしはいるんだもの、あなたの幸せにいつわたしが要らなくなるかも分からないのに慣れたりなんてできないわ」
男「なんか俺が糾弾されてるような気がしてくるな」
ヤンデレ「そうじゃないけれど、わたしはそう思うのよ」
男「俺としてはヤンデレの幸せを大切にしたいんだがな」
ヤンデレ「わたしの幸せはあなたの幸せよ」
男「俺の幸せもヤンデレの幸せだ」
ヤンデレ「ふふ、ありがとう」
男「そういえばな、こないだ訊かれたんだよ。ヤンデレさんとはどこまでいってるのかって」
ヤンデレ「あら、なかなか下衆な質問をする輩がいるのね」
男「まあそういうのが気になるんだろうな、そういうもんだよ」
ヤンデレ「ふふ、知ったら驚くでしょうね。わたしとあなたはまだキスもしたことないもの」
男「だから答えたんだよ、キスもしたことないって。そしたら信じてもらえなかった」
ヤンデレ「案の定ね」
男「まあでもヤンデレを知らないから信じられないんだろうな」
ヤンデレ「知らなくていいわ、あなた以外に知られる意味はないもの」
男「ヤンデレは自分から迫るようなことはしないからな、逆に俺から迫るっていうのはアリな気がするが」
ヤンデレ「彼女でもないわたしに迫るのかしら?」
男「確かにそれもそうだな」
ヤンデレ「ふふ、まるでわたしが彼女面してるみたいね」
男「しいて言うならお嫁さん面だな」
ヤンデレ「……もしあなたのお嫁さんになれたら、わたしは何も思い残すことはないわ」
男「ヤンデレはいいお嫁さんになれるよ」
ヤンデレ「誰のお嫁さんかが重要だわ」
男「ヤンデレが俺のお嫁さんになってくれるなら本望だがな」
ヤンデレ「そう言ってくれるのはこの上ないくらい嬉しいわ、……でも、本当にわたしでいいのかしら。わたしがあなたのお嫁さん……、そしたらわたしはとてもとても幸せよ。でもあなたは幸せかしら。わたしなんかがお嫁さんであなたが幸せになれるのかしら。キスをする勇気もないわたしなんかがお嫁さんであなたは」
男「幸せだ、絶対」
ヤンデレ「で、でも、あなたにもし他に好きな女の子ができた時、あなたが初めてのキスを済ませていたら、あなたの印象が悪くなってしまうわ」
男「まさか今までキスを拒んでたのはそういう理由だったのか?」
ヤンデレ「……そ、そうよ、わたしが、あ、あなたの、初めての相手でいいか、わ、わたしには、わ、分からない、もの……。あ、あなたに、ふさわしい女の子が、ほ、他にいるかもしれないわ……、そ、そしたら、その子の方が、い、いいに決まってるもの……。わたしなんかよりもずっと」じわっ
男「もういい、やめろヤンデレ。泣くなって」
ヤンデレ「やめないわ、わたしはあなたが」
男「俺はヤンデレが好きだ。お前は好きな相手の言葉が信じられないか?」
ヤンデレ「……信じないわけがないでしょう?」
男「だがやっぱりこれは俺が悪いな、ヤンデレを泣かせた原因は俺にある」
ヤンデレ「あなたは悪くないわ、わたしが勝手に」
男「いや俺が悪い、お前にたくさん考え事させてつらい気持ちにさせてるんだから」
ヤンデレ「わたしはつらくても悲しくても、あなたのことを考えられるのが幸せよ。すべてわたしの大事な大事な気持ちだもの。嬉しいことも悲しいことも同じくらいの重さを持っているし、同じくらい大事。誰にも分かってほしくない、誰にも渡さないわたしだけのものだわ」
男「だから良いも悪いもないってことか?」
ヤンデレ「そういうことよ、あなたがわたしのことで自分を責める必要なんてないもの」
男「まったく、お前はなぁ」
ヤンデレ「何かしら?」
男「ヤンデレはブレないなと思って」
ヤンデレ「ふふ、わたしはわたしだわ。それ以上でもそれ以下でもない、わたしだもの。ブレるだなんてありえないことよ」
男「そうですかそうですか」
朝、高校までの登校中
男「時にヤンデレよ」
ヤンデレ「何かしら?」
男「当然のごとく毎日一緒に登校してるわけだが、大体俺たちには会話がないな」
ヤンデレ「そうね。でも特に新しく話すようなことはないし、朝のあなたは低血圧だから頭が回らないでしょう? それなのに話しかけるなんて良くないと思うもの」
男「確かに朝は低血圧で結構きついんだよな、頭がぼうっとしてる」
ヤンデレ「体もふらついてるわ」
男「そうか? 自分では分からないもんだな、全然気が付かなかった」
ヤンデレ「だから朝は大人しくしてるのが一番よ、それにわたしは何も言わずにあなたの隣を歩くこの時間が気に入ってるもの」
男「そういうもんかね」
ヤンデレ「ふふ、そういうものよ」
学校、昼休み
ヤンデレ「今日も食堂に行くの?」
男「ああ、何か買って食べるよ」
ヤンデレ「ねえ、やっぱりわたしがあなたのお弁当も」
男「いいって、手間かかるだろうし」
ヤンデレ「でもわたしは自分のお弁当をつくってきてるから、一人分も二人分も変わらないわ」
男「そりゃ確かに本来なら一人分も二人分も変わらないかもしれんが、お前のことだから普段よりもさらにたくさん手間かけてつくるだろうが」
ヤンデレ「ええ、当然そうよ?」きょとん
男「だから申し出はありがたいが遠慮しておく」
ヤンデレ「……?」
男「あのな、ヤンデレ。俺の弁当をつくるために今以上にお前を気苦労させたくないんだよ」
ヤンデレ「や、やっぱり手間は変わらないわ! あなたのもそんなに凝ったお弁当にはしないもの! すぐにつくれるわ! だからあなたのお弁当も」
男「だから大丈夫だって、ヤンデレ。今日も一緒に食堂で食べよう」
ヤンデレ「……でも」
男「ほれ、行くぞ」
ヤンデレ「……うん」
食堂
ヤンデレ「……」
男「ヤンデレ」
ヤンデレ「?」
男「ごめんな」
ヤンデレ「どうしてあなたが謝るの……?」
男「本当はお前の好きにさせるべきなのかもしれない。だってそれはヤンデレの行為だからな。だから、それをしてほしくないっていうのは俺のたんなるわがままだ」
ヤンデレ「わがまま……」
男「ごめんな」
ヤンデレ「……わたしをかばうためにあなたが謝るのね、わたしが嫌な思いをしないように。わたしが最低なだけなのに。あなたの傍にいる資格なんてないのに。ずっとあなたに縋り付いてまとわり付いて鬱陶しくて煩わしくて、……それでもあなたはわたしをかばってくれるのね」
男「俺はそんな風に思ったことは一度もない」
ヤンデレ「わたしはあなたのわがままなら何だって聞きたいわ。たとえそれが何だろうとわたしは聞きたいもの。……でも、あなたが嫌な思いをするわがままだけは」
男「分かった、言わない。約束する」
放課後
男「どっか寄って帰るか?」
ヤンデレ「ふふ、お夕飯の食材を買わないといけないわ」
男(嬉しそうだなぁ)
ヤンデレ「お弁当はダメだけど、お夕飯はあなたのご両親が仕事で遅くなる日はいつもつくれるものね」
男「俺としては少し申し訳ない気持ちもあるが」
ヤンデレ「ふふ、わたしはとても嬉しいわ」
男(あのヤンデレがほとんどスキップで状態歩いてる……)
ヤンデレ「あなたは何か食べたいお料理あるかしら?」
男「そうだなぁ……、シチューとか」
ヤンデレ「ふふ、このわたしにかかればお安い御用ね」
男(ほんとにすごい上機嫌だなぁ)
ヤンデレ「そうと決まれば食材を買いに行きましょう!」
男「おう!」(とりあえずテンションを合わせた)
スーパーマーケットにて
ヤンデレ「わたしはね、雑誌で紹介されているようなきらびやかなデートスポットよりも二人でスーパーに行くほうがなんだか親密な感じがするわ」
男「まあ実際そうだからな、二人でスーパーにきてるってことはそれだけの関係があるってことだし」
ヤンデレ「ふふ、例えばお夕飯をつくったりとかね」
男「そういうことだな」
ヤンデレ「わたしはいつもあなたとここにくると緊張してしまうわ」
男「どうして?」
ヤンデレ「夫婦……みたい、って思うから」かあああ
男(かわいいなぁ)
男「とは言ってもかなりここにはきてると思うけど」
ヤンデレ「……でも全然慣れないわ。お夕飯をつくるようになったのは高校に入ってからだから、もう2年くらい」
男「ヤンデレは適応能力が少し低いのかな?」
ヤンデレ「ば、ばかにするのね!? ひどいわ!」
男「ははは、ごめんごめん」
家に帰ってきた
ヤンデレ「さて、つくるわよ」
男「あのー、俺に何か手伝えることはありますか、ヤンデレさん」
ヤンデレ「ないわ」
男「ばっさりいくな」
ヤンデレ「ふふ、あなたはお風呂掃除とか他の家事も色々あるでしょう?」
男「実は宿題もやってない」
ヤンデレ「あら呆れた、なおさらお夕飯のお手伝いはダメね」
男「すみません」
ヤンデレ(だって、わたし一人でお夕飯の準備くらいしなくちゃダメだもの。)
男「風呂掃除おわった」
ヤンデレ「お疲れ様」
男「リビングで宿題してるから、何かあったら声かけてくれ」
ヤンデレ「わかったわ」
男「というか、お前は宿題終わってんのか?」
ヤンデレ「わたしは授業中に終わらせたもの」
男「そ、そうか」
………………………………
…………………………
……………………
………………
…………
……
男「なあ、ヤンデレ」
ヤンデレ「何かしら?」
男「お前はさ、部活入らなくてよかったのか?」
ヤンデレ「今更な質問ね、もうわたしたち2年生も終わるのに」
男「俺が部活に入らなかったから、ヤンデレも入らなかったんじゃないかって思ってな」
ヤンデレ「逆にあなたはどうして部活に入らなかったの?」
男「いや、たんに興味を引かれる部活がなかったから」
ヤンデレ「わたしも同じ理由よ。もしあなたが入る部活があったら、その部活に興味が湧いたけれどね」
男「だけどな、もし、もしもヤンデレが入りたい部活があって、でも俺が帰宅部だったからその部活に入らなかったとか、そういうことがあったら申し訳ないな、って思ったんだよ」
ヤンデレ「ふふ、そんなことは微塵もないから大丈夫よ。本当にあなたも心配症ね」
男「ヤンデレのが伝染ったのかもしれん」
ヤンデレ「ふふ、ひどい言い草ね」
夕飯
男「いただきます」
ヤンデレ「どうぞ召し上がってください」
男「……」ぱくっ
ヤンデレ「お味はいかがでしょう?」
男「うまいよ、ヤンデレも食べてみて」
ヤンデレ「わたしはもう味見したもの」
男「ほら、口をあけて」
ヤンデレ「……!?!?」
男「はやく」
ヤンデレ「……」あーん
男「いい子だ」スプーンをヤンデレの口に入れる
ヤンデレ「……」ぱくり
男「うまい?」
ヤンデレ「あ、味なんてわからなかったわ! いきなりなんだもの! びっくりするわよ!」
男「ははは、ごめんごめん」
ヤンデレ「わたしもやるわ! 口をあけなさい!」
男「!?!?」
ヤンデレ「はやく!」
男「いや俺はいいよ! 恥ずかしい!」
ヤンデレ「問答無用よ!」
食後の団欒
ヤンデレ「恋愛物のお話を読んだり見たりしてて、わたしはいつも思うことがあるわ」
男「ほう」
ヤンデレ「キャラクターたちはいつもね、相手に求めるのよ。何をしてほしい、何をしてくれないから嫌、だから別れるって」
男「確かにそういうのが多い気はするな」
ヤンデレ「何でも自分の都合ばかり。自分を好きなってほしい、そうじゃなきゃ相手だって殺してしまう」
男「こわいな」
ヤンデレ「わたしは、相手が自分に何かしてあげようって思ってくれるように、自分が行動するべきだと思うわ。求めてばっかりじゃなくて、自分の相手に対する行動で相手が自分を必要としてくれるように、って考えるべきよ」
男「そうだな、それが好きってことじなんゃないか?」
ヤンデレ「そうよね、それが好きってことなんだわ。自分の欲ばかりを相手に押し付けて束縛するなんて、それは結局相手が好きなんじゃなくて自分が好きなのよ。そんなものは唾棄に値するわ」
ヤンデレ「わたしは……、あなたが好きよ。心から好き。でも時々、あなたが好きなのか、それとも自分が好きなのか分からなくなるわ。……とてもこわいの。あなたの幸せにわたしが要らなくなってしまうことが。わたしには分からないから。どうすればあなたが幸せになれるのか、それが」
ちゅっ
ヤンデレ「!?!?!?!?」
男「これでも分からないか?」
ヤンデレ「……」ぼーぜん
ヤンデレ「……え、え、わたし、え、うそ、今、……キス、キス、されたの?」
男「もう一回してほしいのか」
ヤンデレ「な、なんで、キス、キスしたの? わ、わたし、なんかと……」
男「ヤンデレが好きだ」
ヤンデレ「……わ、わたしも、あなたが好き、大好き……です」じわあああ
男「やっと本当に好きって言えたな、ヤンデレ」
ヤンデレ「うっ、うん……、ぐすっ、……やっと、言えた」ぼろぼろ
男「よしよし、いいこいいこ」
ヤンデレ「わ、わたしを……、こ、恋人に、してくれますか……?」
男「よろこんで」
ヤンデレ「わたしの大好きなあなたへ」 おわり
後日談があります
ある朝
ヤンデレ「制服のネクタイ、曲がってるわ」
男「お、すまん」
ヤンデレ「ふふ、わたしお嫁さんみたいね」
男(恥ずかしそうに笑ってるヤンデレもかわいいなぁ)
男「そういえば女さんから電話があってさ」
ヤンデレ「……わたし、聞いてないわ」
男「いや昨日の夜だったから、今、朝のうちに話しておこうと思ってな」
ヤンデレ「よ、夜なんかに女さんがあなたに電話する用件ってなに? 普通なら今日学校で話せばいいことでしょう、それなのになんでわざわざ電話をする必要があるのかしら?」
男(嫉妬してるヤンデレかわいいな)
男「いや、なんか知らんが今日の朝に時間つくってくれって言われた」
ヤンデレ「……」
ヤンデレ「……」
ヤンデレ「……」
男「ヤンデレ?」
ちゅっ
男「おい、いきなりどうした」
ヤンデレ「今日は学校を休みましょう?」
男「どうして」
ヤンデレ「女さんには悪いけれど、あなたはわたしの恋人だもの。そういう用件ならお断りよ」
男「……まったく」ぺしっ
ヤンデレ「うあっ」
男「ほれ、学校行くぞ」
ヤンデレ「な、なんで!? こ、告白よ!? 恋人がいるのに告白を受けるの!?」
男「誰がいつ告白なんて言ったんだ?」
ヤンデレ「……でも」
男(多分そういう類の呼び出しじゃない気がするんだよなぁ、勘だけど)
学校にて
ヤンデレ「……」ぼけー
男「やっぱり告白なんかじゃなかっただろ?」
ヤンデレ「う……、ごめんなさい」
男「卒業生を送る会のクラス代表を俺とヤンデレの二人でやってくれないか、っておせっかいを焼いて根回ししてくれようとしてただけだったのに」
ヤンデレ「弁明の余地もないわ」
男「しかし女さんも世話焼きだよな、クラス委員としてはああいう人が適任なんだろうけど」
ヤンデレ「ええ、とてもいい人だもの」
男(少し落ち込んでるヤンデレもかわいいな)
男「さあて、クラス代表だろうがなんだろうが引き受けてしまったからにはしっかりやらんとな」
ヤンデレ「そうね、頑張りましょう」にこり
男(だけどやっぱり笑ってるヤンデレが一番かわいいな)
おわり
こういうヤンデレがいたらいいのになと思ってたから書いた
読んでくれてありがとう
このSSまとめへのコメント
これは許せるヤンデレ
こういうの大好き
優しい世界