男「何かをなくしちゃったんだね」(15)
男「やあ」
女「ぅわっ!?」ビクッ!
男「ああ、ごめんよ。驚かせてしまったみたいだね」
女「い、いえ・・・まあかなりびっくりしましたけど」
男「いやあ、こんな辺鄙なところに人間が来るなんて思ってもなかったからね。思わず声をかけちゃったよ」
女(なんなんだろこのおじさん)
男「こんな場所まで一体何をしに来たんだい?」
女「・・・えーっと」
男「自殺しようって言うんならここじゃない方がいい。というかここで自殺なんてされたら僕が困る」
女「いやいやいや、自殺なんてしませんよ!」
男「そう?ずいぶん思い悩んでたみたいだったけど」
女「・・・まぁ」
男「ふむ・・・まぁそういう年頃なのかな。おじさんが首を突っ込む問題じゃないか」
女「・・・・・・」
男「まぁ、悩むのもそこそこで切り上げた方がいいよ。君は見た限り「中」の住人だろう?」
女「・・・そうですけど」
男「だったら指定時間以降のゲート管理の厳しさも知っているだろう?」
女「えぇ、前に友達に聞きました」
女「でも今は帰りたくないんです」
男「それはまたどうして?」
女「・・・えーっと、お名前を伺ってもよろしいですか?私は女っていいます」
男「よろしくね女ちゃん。僕は男っていうんだ」
女「単刀直入に聞きますけど、男さんは機械になるのってどう思いますか?」
男「機械になる?」
女「今現在政府が進めてる人間の機械化のことです」
男「へー、今「中」じゃそんなことが行われてるんだ」
女「これによっていろんな問題が解決できるんだそうです」
男「いろいろ?」
女「食糧問題、人口問題、いろいろです」
男「ふーん」
女「そこでなんですよ」
男「?。なにが?」
女「実はこれ、5年ほど前からすでに実施されてまして、すでに人口の6割が機械化してるんですよね」
男「・・・そうなんだ」
女「それで、機械化するかしないかを悩んでたんですよね」
男「・・・・・・」
女「まぁそういう反応になりますよね」
男「こういう話は僕みたいな見ず知らずの人にするよりも、ご家族にするべきじゃないかな?」
女「あはは、それもそうなんでしょうけど、あいにく父も母もすでに機械の身でして」
男「・・・」
女「といっても、自ら進んで機械化を受け入れたわけではないんですよ?」
女「父も母も末期の癌にかかっておりまして」
男「なるほどね。機械の体なら病気とも無縁だもんね。長く生きるにはそれしかなかったのか」
女「はい」
男「それで相談する人がいなくてここで悩んでいたと」
女「・・・はい」
男「んー・・・難しい問題だね」
女「ですよねぇ・・・」
男「んー・・・そうだ!」
女「?」
男「ちょっとついておいでよ」
女「・・・・・・・・」
男「君も大変だね」
女「あはは・・・・・・そうですね。すごい悩んでます」
男「そうだね。君は人が良さそうだから」
女「あの・・・ひょっとして馬鹿にしてます?」
男「そんなことないよ。だから大変そうだなって思ってね」
女「・・・・・・・・・」
~居酒屋~
男「はい到着」
女「・・・・・・」
男「まぁ、「中」の出身じゃその反応も仕方ないかな」
女「いえ、そういうんじゃなくて、こういう店がまだ残っていたってことに驚いてます」
男「見たことあるの?」
女「いえ、歴史の教科書に書いてあったんで」
ガラガラガラ
男「こんばんはー」
店主「いらっしゃーぃ・・・おっ!男じゃねーか!」
男「ご無沙汰です」
店主「なんだよ、最近きてくれないからどっかでくたばっちまったかと思ったぜ」
男「ひどいこと言うなぁ・・・」
店主「ん?そっちのお譲ちゃんは誰だ?お前さんのコレか?」
男「違うよ。さっき話してみたら悩んでるっていうから親父さんのところに連れてきたんだよ」
店主「俺なんかの話聞いてもガッコの試験の点数はあがんねーぞ?」
男「いやいや、そういう話じゃないんだ」
女「・・・えっと、はじめまして。私女っていいます」
店主「おう。俺は店主っていうんだ。オヤジとでもおやっさんとでも好きに呼んでくれ」
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