やえ「頼みがあるんだけど」由華「?」 (25)

やえ「由華、ちょっと」チョイチョイ

由華「はいっ!」ササッ

由華「どうしました、やえ先輩?」

やえ「実は、由華にお願いしたいことがあって」

由華「は、はい……」


由華(やえ先輩が頼み事……いったいなんだろう)

由華(今は個人戦に向けた最終調整の時期)

由華(やえ先輩にとっては最後の個人戦だ……自分のことに集中したいはず)

由華(……そうか!もしかして)


由華「部活の雑務なら、私に任せてください!」

やえ「!?」ビクッ

由華「やえ先輩にとっては最後の大会ですから!しっかり調整できるように、私に出来るバックアップは何でもします!」

やえ「そ、そう……いきなり大声出すからちょっと驚いたけど……」ドキドキ

由華「あっ!?」

由華「す、すいません……」

やえ「いえ」フフッ

やえ「ありがとう。とても嬉しい」ニコッ

由華「!?」ドキッ

由華「い、いえ……」ドキドキ

やえ「……でも」



やえ「今から由華に頼むことは、雑務とはとても言えないわね」ニヤッ

由華「……?」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1418734930

やえ「実は来週、他県へ練習試合に行くことになったの」

由華「そうなんですね」

やえ「うん……だけど、行くのは私一人」

由華「!?」

由華「そうか……個人戦に向けて、ということですね」

やえ「監督が予定を組んでくれて。規定に引っかからない、かつ有力な学校をチョイスしたらしいわ」

由華「そうですか。それなら、個人戦に向けて良い準備ができますね!」

やえ「私ひとりだけこんな事させて貰って、本当にありがたい話だと思う」

由華「あっ……でもそうすると、その間麻雀部は部長不在で練習しないといけない、ということですね」

やえ「ええ」

由華「やえ先輩がいないのは少し寂しくなりますね……」

やえ「まあ3日程度だからそんなに悲観することはないんだけど」

由華「3日ですか……」


由華(個人的にはそれでもちょっと寂しいんだよな……)


由華「……でもそれなら練習はきっと大丈夫ですよ!日菜先輩、紀子先輩、良子先輩もいるわけですし」

やえ「由華、そこなんだけど」

由華「?」

やえ「三人とももう引退の身。あまり頼り過ぎるのはどうかと思うの」

由華「あっ……」

やえ「私は一応まだ現役だけどもう長くないし、そろそろ次の世代への引き継ぎを考えておきたい」

由華「そう、ですね……」


由華(やっぱり、そういうことを考える時期に来ているんだ。うすうす感づいてはいたことだけど)

由華(実際そうなると、やっぱり寂しいな……)


やえ「というわけで、今回私の不在時には二年生に練習の指揮を取って貰いたいと考えてるの」

由華「はい」

やえ「そして私は今、由華に用事があってここに呼んだわけだけど」

由華「はい」



由華「……」



由華「……」



由華「って、もしかして、まさか……!?」

やえ「そういうこと」ニヤッ


やえ「由華。私が不在の間、あなたに部長代理をやって欲しいの」

由華「ほ……ほんとにですか!?」

由華「わわ、私なんかがぶぶ部長代理だなんてそんな……」

やえ「そんなにうろたえなくても良いわ。さっきも言ったけどたったの3日間なんだから」

由華「ま、まあそれはそうですが……」

やえ「何事もまずはやってみて分かることがあるわ。いい経験になると思う」

由華「は、はい……」

やえ「大丈夫。由華ならきっとうまくやれるから」

由華「そ、そう、ですか……?」

やえ「うん。私が今まで見てきた限り、ひいき目なしで由華には適正があると思う」

由華「そうですか……」


由華「……分かりました」

由華「やえ先輩がそこまで言うなら、この話、引き受けます!」

やえ「ま、まあ、何度も言うようだけどたった3日間だけだから。そんなに気を張らなくても大丈夫よ」アセアセ

やえ「とにかくありがとう。週末に軽い説明をするわね」

由華「はいっ!」

やえ「それじゃ今日はもういいわ。お疲れ様」

由華「はい!お疲れ様です」


やえ「……」

やえ「……さて」



やえ「……」ジーッ

良子「おーす」ガラッ

やえ「良子」

良子「おっ、一人か」

やえ「うん、ちょっと居残り。練習はもう終わったわ」

良子「そうか。今日は悪かったな。クラスの用事で顔出せなかった」

やえ「いや全然」

良子「……個人戦出場者のチェックか。熱心だな」

やえ「まあこれくらいはやっておかないと」

良子「まだ帰らないか?」

やえ「いや、そろそろ引き上げるつもり」

良子「そうか。なら一緒に帰ろうぜ」

やえ「うん」


…………

……


…………

……




やえ「実は、来週練習試合に行くことになって」

良子「そうなのか。お前ひとりか?」

やえ「うん」

良子「そうか。個人戦、良い結果が出るといいな」

やえ「まあ、ね……」

良子「しかし、それじゃあその間の練習はどうするんだ?」

やえ「その事なんだけど、由華に部長代理を頼んだわ」

良子「ほう……まあ確かに、そろそろ部長候補を決めておかなきゃならん時期だしな」

良子「お前から見て、やっぱり由華が候補なのか?」

やえ「まあ……うん、そういうこと」

良子「そうか」

やえ「そこで良子に頼みがあるんだけど」

良子「おう。何だ?」

やえ「由華が部長としてやっていけそうかどうか、それとなく見ていて欲しい」

良子「そういうことなら任せろ。しっかり監督してやるぜ」

やえ「ありがとう。それと……」

良子「?」

やえ「……もし由華が何か困っていたら、少し補佐してやって欲しいの」

良子「なるほど」



日菜「あれー?やえちゃんそれでいいの?」



やえ「えっ」ビクッ

良子「うおっ!?」

日菜「やっほー」

良子「お前いつからいたんだよ?相変わらず神出鬼没だな……」

紀子「気づかぬお前が抜けている、とも取れるがな」

良子「お前もいたのかよ!まあ、日菜がいる時点でなんとなく察しがついたが……」

紀子「もう少し周りの気配に気を配る事だ」

良子「いちいちそんな事しねえよ!」


やえ「……それより日菜」

日菜「んー?」

やえ「それでいいの、ってどういう意味?」

日菜「だって、やえちゃん言ったじゃないー。引退の身である三年生に頼るのはあまり良くないって」

やえ「えっ」

日菜「だからわたしたちを頼るのはどうなのかなーと思って」

やえ「日菜……どうやって聞いてたの?」

日菜「ふふっ、ひみつー♪」

やえ(日菜、やっぱり侮れないわね……)


日菜「てっきり今回はゆかちゃんに厳しくいくのかなって思ったんだけどー」

やえ「……」

日菜「ゆかちゃんにとってもいい経験なんだし、頑張ってもらうのもいいんじゃないかなー」

やえ「う……」

日菜「やっぱり、ゆかちゃんにはつい甘くなっちゃうのかなー?」

やえ「い……い、いいでしょ別に!」カァァァ

やえ「とにかく!聞いていたのなら話は早いわ」

やえ「良子にはもう言ったけど、私は来週練習試合でいないから」

日菜「うん。ゆかちゃんのヘルプでしょ?おまかせあれー」

やえ「う……やけにあっさりしてるわね」

日菜「やえちゃんの頼みとあらば断れないわよー」

紀子「……それに、巽が部長に適している、というのは確かだと私も感じる。案外我々が心配すること無く全うするかも知れんぞ」

良子「まあ、それはありそうだな」

やえ「……」

やえ「……まあそんなわけだから、ひとつ頼むわ」

良子「ああ。任せろ」

紀子「うむ」

日菜「おっけーい♪」



…………

……




良子「それにしても」

日菜「んー?」

良子「今回はやけにやえに厳しいんだな」

日菜「そうかなー?」

良子「そうだろう。由華を使って攻め立てているように見えたぞ」

日菜「あれはちょっと、やえちゃんをからかいたくなってねー」テヘッ

良子「そ、そうか……」

紀子「小走のたじろぐ姿を拝見するのも久しぶりだ。中々に楽しめた」

日菜「ふふっ」

日菜「……でもねー」

良子「?」

日菜「ゆかちゃんは、あのやえちゃんが晩成のこれからを担えると見込んだんだから。手始めにこれくらいの試練は乗り越えてくれなきゃ、わたしたちもやるせないわよー」

良子「!」

紀子「……」

良子「ま、まあ確かにそうだが……」

紀子「……小走は巽に対してどうしても甘くなる。その点に業を煮やした部分もあるのでは無いか」

日菜「さすがにそこまで怒ってないけどー」アセアセ

日菜「まあそんなとこかなー」

良子「……そういうことか」

良子「しかし気持ちは分かるぜ。もしもの話でも晩成が弱くなるなんて事はあっちゃいけない」

紀子「そういうことだ」

良子「だからと言っていきなり由華に潰れられても困るからな。まあ三日間ならさすがにそんな状況にはならないだろうが……ある程度厳しくするにせよ、最低限のフォローはしようぜ」

日菜「そうねー」

紀子「……うむ」



…………

……





やえ「……」スタスタスタ

やえ「日菜ったら……」

やえ「分かってるわよ……厳しくしなきゃいけないことくらい……」

やえ「……」

やえ「もう……」スタスタスタ

……



やえ「今日の練習は終了とします」

一同「はいっ!」

やえ「私が明日から少しの間いないので、由華に代理で練習を仕切って貰います」


ザワザワ


由華「よ、よろしくお願いします!」

やえ「うん」

やえ「じゃあ今日はここまで。お疲れ様でした」

一同「お疲れ様でした!」



やえ「由華、ちょっと」

由華「はいっ!」

やえ「前行った通り、軽い説明をしておくわ」

由華「はい。お願いします」

やえ「と言っても、特別やることがあるわけじゃないけど」

由華「……」

やえ「まず、練習開始と終了の号令、ミーティングは必ずやること。そうしないと皆の気が緩んでしまうから」

由華「はい」

やえ「具体的な練習の内容は、由華で決めて良いわ。今のチームに足りないところを由華が判断して、実行すれば良い」

由華「は、はい……」

やえ「……どうしても思い付かなかったら」カサカサ

やえ「この紙に練習メニューをメモしておいたわ。行き詰まったらこれを参考にして」

由華「は……はいっ!ありがとうございます!」

やえ「まあ……短いけどこんなとこ。明日から宜しくね」

由華「はいっ!」

由華「あ、あの……」

やえ「ん?」

由華「やえ先輩も、明日からの練習試合頑張ってください!」

やえ「……」

由華「バッチリ調整できることを願ってます!」

やえ「……うん」

由華「部の事は心配いりませんから。任せてください」

やえ「そう。頼もしいわね」

由華「い、いえ……」

やえ「でもそういうことなら、私も自分の事に集中させて貰うわ。全国で下手なプレイは出来ないし」

由華「もちろんですよ!」

由華「……応援してますね」ニコッ

やえ「!」ドキッ

やえ「……うん。ありがとう」

やえ「お互い頑張りましょう」

由華「はいっ!」


……




やえ「……」

やえ(……由華に甘い、か)

やえ(なるべく自分で考える余地を与えたつもりだったけど)

やえ(練習メニューを用意したのはやり過ぎとか、日菜には思われるんだろうな)

やえ(まあ、確かに「内容は自分で考えて良い」とか言っておきながら矛盾してるかも知れないけど)

やえ(……)

やえ(……まあいいわ。まあいい)


……



由華「」スタスタスタ

由華(やえ先輩……)

由華(練習メニューまで用意してくれるなんて)

由華(やっぱり部のことが心配なのかな)

由華(……それとも)

由華(……)

由華(……よしっ)

由華(このメニュー表に頼るのは最後の手段にしよう。なるだけ自分で考えるんだ)

由華(三年生が……やえ先輩がいなくなったら私達が晩成を支えなきゃいけない)

由華(3日間、正直不安だけど……きっと、もうそんなに甘えていられないんだ)

……

>>8

やえ「前行った通り、軽い説明をしておくわ」

とありますが誤字でした

やえ「前言った通り、軽い説明をしておくわ」

となります。すいません

ワイワイ


由華(皆集まってきたな……)

由華(ここからがスタートだ。昨日いろいろ考えてきたし、何があっても大丈夫)

ドクン

由華「……」

由華(緊張する……本当に大丈夫なんだろうか)

由華「……」チラッ



日菜「……」

良子「……」

紀子「……」



由華(大丈夫だ。いざとなったら先輩たちがついてるし、やえ先輩のメモだって……)

由華「……!」

由華(ダメだ……それじゃダメなんだ)

由華(私の力で、先輩たちを安心させるんだ)


由華(……)

由華(……)

由華(……よし)


由華「皆さん、集合してください!」

ザザッ


由華「それでは、今日の練習を始めたいと思います!」

由華「うまくできない所もあるかもしれませんが、よろしくお願いします!」

一同「はいっ!」


由華(よし、つかみはどうにか、かな)

由華(よし……あとはメニューを実行すれば……)


由華「今日は四人打ちをローテーションで回したいと思います。なるべく多くの人と対局するようにしましょう!」

一同「はいっ!」

由華「では早速準備しましょう」



良子「……まずは上々、というところか」

日菜「そうねー」

紀子「……」

部員「ロン!」

部員「!」


ガヤガヤ


由華(うん……いい雰囲気だ。皆が緊張感を持ってやってるのがわかる)


由華「……」チラッ


由華(もう時間か……)


由華「今の対局が終わったら終了して集合してください!」

一同「はいっ!」


ガヤガヤ


由華「今日の練習はここまでです」

由華「明日の練習も今日のような形で行っていこうと思います。出来るだけ多くの人と対局出来るようにしていきましょう」

一同「はいっ!」

由華「それでは今日の練習を終了します。お疲れ様でした!」

一同「お疲れ様でした!」


ワイワイ


由華「……」フーッ

由華(とりあえず上手くいった、かな……)ドキドキ

由華(あと2日……がんばらなくちゃ)




……




由華「今日も昨日同様の練習を行います。よろしくお願いします!」

一同「よろしくお願いします!」


ガヤガヤ


由華「……」


由華(皆今日でひと通り対局出来るかな……)

由華(練習を見ることに気が行き過ぎて昨日は全然打てなかった……私も今日は打つようにしないと)

由華(あ……あの台ちょうど一人足りてないみたいだ。入ろうかな)

由華(……ん?)


ジャラジャラ


部員「この牌何か当ててよ」スッ

部員「うーん……わかんないな」

部員「正解は七萬でしたー」

部員「難しいよー!」ブーッ

初瀬「あ、あの……」

部員「んー?」

初瀬「盲牌も大切な技術ではあるかも知れませんが、例え三麻でも今日のメニュー通り対局をこなすべきでは……」

部員「えー、だってみんな三年生の先輩の台に並んじゃってるんだもん」

部員「どうせちょっとしたら誰か来るんだし、それまでのお遊びだって。四人で打ったほうが良いっしょ?」

初瀬「ま、まあ、それは……」

部員「だからいいの。次やろっ!」ジャラジャラ

部員「あ、これ白でしょ?あたし天才だわー!一発でわかっちゃったー」

部員「白だから当たり前でしょ!」

部員「そりゃそうだ」ハハハ


由華(……)

由華(完全に遊んでる……)

由華(私が入れば四人だからそれはいいんだけど)

由華(どうしよう、その前に一言注意するべきか……あまりこういうこと、したくないんだけど……)

由華(でも……一年生の岡橋さんも困ってるし)

由華(……)

由華(……)

由華(……よし)

由華「入ります」スチャ

初瀬「巽先輩……!」

部員「お、部長代理さんじゃないっすか」

部員「いいねーやりますか」

由華「うん、打とう……」

由華「……」ドクン


由華(……大丈夫、大丈夫)


由華「……」キッ

由華「だけど、その前に」

部員「?」

由華「皆真剣に取り組んでるんだから、遊ぶのはあんまり良くないと思う。注意しよう?」

部員「なっ……だってしょうがないじゃんよ!誰か入るのを待ってただけだし」

部員「三麻より四人で打ったほうが良いしね。別に間違ってないと思うけど?」

由華「う……」

部員「まあいいや。揃ったんだし始めよ」

由華「う、うん……」

初瀬(先輩……)


シーン

部員「」ピシッ

部員「」パシッ

初瀬「……」ピシッ

由華「……」


由華(なんかギスギスしてる……言い方が悪かったかな……)

由華(いや……こんなことで気にしてたらダメだ。あれは注意するべきだったんだ。きっと間違ってない)


由華「……」ピシッ

部員「ロン!」

由華「!?」

部員「割と見え見えだと思ったけど出してくれたねー、ありがとさん」

由華「……はい」ジャラジャラ



良子「ツモ!……これで終わりだな。ありがとうございました」

部員「ありがとうございましたっ!」

良子「……さて、一旦抜けるぜ」ササッ

日菜「はーい。じゃあわたしが代わりに入ります。よろしくねー」

部員「よ、よろしくお願いしますっ!」

日菜「……」

日菜「まあ、りょうちゃんもおせっかいさんだからねー」ボソッ

紀子「巽が気にかかる、のだろうな」ニヤッ

初瀬「ロン!」

由華「……!」

部員「あー、いい手だったのにー」

部員「とりあえず終了ですか。順位は、と……」

部員「あたし一位だ!」

部員「初瀬ちゃん二位か。やるねー。私は三位だよー」

初瀬「あ、ありがとうございます……」

由華「……」

部員「巽さんが最下位か。まあーそんな日もあるでしょー」

由華「そうだね……」

部員「まとりあえず、ありがとうございました」


由華(……)

由華(結局最後まで集中出来なかった……)

由華(……ダメだな、ダメダメだ)

由華(……!)ハッ

由華(いけない、もう終了の時間か)


由華「皆さん、時間ですのでこの対局で最後としてください!」

一同「はいっ!」

由華「……」フーッ


ワイワイ


部員「あたしらは今ので最後ってことか」

部員「そだね」

良子「ちょっといいか、おふたりさん」

部員「う、上田先輩!」

良子「まあ、なんだ……お前らの言い分も分かる。三麻より四人で打った方が良いのは当然だしな」

部員「み、見ていたんですね……」

部員「……」

良子「ただ、由華の言い分も分かってやって欲しい……何より、ここは晩成高校だ」

部員「……!」

良子「晩成は常に強豪でなきゃならない。まして来年はインターハイへの切符をどうしても掴まなきゃならん。その為には雰囲気づくりが重要になってくる」

部員「……」

良子「やえが部長なら何ら問題ないが……やえも、俺らも、引退しちまう。だから皆で支え合いながらやっていって欲しいと……まあ、そんな風に思うわけだ」

部員「先輩……」

良子「以上だ。ゴチャゴチャ言って悪かったな」

部員「いえ……上田先輩……ありがとうございます!」

良子「!」

良子「……いや、分かってくれたなら良かったよ」

……

一同「お疲れ様でした!」


ガヤガヤ


由華「……」


日菜「ゆかちゃん、考えこんでるわねー」

紀子「上田、巽とは話したのか」

良子「いや、本人とは話してない。揉めてた連中とだけな」

紀子「……そうか」

良子「由華にも声かけてやった方が良いか……」

日菜「うーん……」

日菜「やめておきましょうー。もしゆかちゃんが相談に来たら乗るけど……こっちから助け舟は、とりあえず出さないでいいと思うわー」

紀子「……」

良子「そうか。やっぱりお前が一番厳しいな」

日菜「りょうちゃんは優しいけどねー」

良子「いや……」



由華「……」スチャ

スタスタスタ



日菜「あっ、ゆかちゃん行っちゃったねー」

紀子「……我々の力は借りない、ということか」

良子「由華……」



由華「……」スタスタスタ


由華(やっぱり、言い方が良くなかったかな……)

由華(明日、ちゃんと謝ろうか……)

由華(……)

由華(やえ先輩……)

由華(……そうだ。ちょっと連絡して相談してみようかな)サッ

由華(やえ先輩の状況も気になるし、そういう理由で……)ピッピッピッ

由華(……)

由華(…………)

由華(……ダメだ。やっぱりそれはダメ)パタン

由華(やえ先輩には頼れない……もちろん他の先輩にも……やれるだけ自分でやるんだ!)

由華(……)


由華「……よし、決めた」

由華「明日、ふたりに謝ろう。言い方がまずかったって。うん……それで良い」

……

やえ「ありがとうございました」

対戦相手「ありがとうございました!」


……




やえ「とりあえず順調、か……」


やえ(いい感じに仕上がってきてはいる……一応明日まで試合はあるけど、今が万全と言っていい)

やえ(あとはこれを本試合で発揮出来るか)

やえ(……いや、出来るかじゃない。やるんだ。チームの皆の為にも……私の為にも)

やえ(……皆、練習大丈夫かな……)


やえ「……由華」


やえ(……)ドクン

やえ(やっぱり心配だな。ちょっと電話してみようか)サッ

やえ(……)


やえ「……いや、止めよう」


やえ(由華は「心配ないから任せて」と言った。それに応えるには、個人戦で結果を出さなきゃいけない。そうするには、今は調整に集中することが大事だ)

やえ(それに……これが私に出来る精一杯の厳しさ、かも知れない)

やえ(由華が私を頼りにしてなかったら意味ないけど)フフッ



やえ「由華……頑張って」



……

ワイワイ


由華(えーと……)キョロキョロ

由華(……いた)

ドクン

由華(……)

由華(……大丈夫。きちんと言えば分かってくれるはず)

由華(……よし)


部員「でさー」

部員「えっまじで!?」

由華「あ……あのっ!」

部員「!」

部員「巽さん……」

由華「そ、その……」

由華「昨日は……ごめんなさ」


部員「ごめんなさい!巽さん……」


由華「えっ……?」

部員「上級生のあたし達が中心になって晩成を引っ張ってかなきゃいけないのに……自覚が足りなかったみたい」

部員「あたし達協力するから、一緒に晩成をまた強くしよう」

由華「ふたりとも……」

由華「……うん、ありがとう」

由華「私こそごめんなさい。昨日はちょっと言い方がまずかったかなって」

部員「ううん。次から気を付けるね」

由華「……ありがとう」


由華(……)

由華(嬉しい……こんなに考えてくれてたんだ)

由華(……)

由華(よし。まずは今日、がんばろう!)

ワイワイ


部員「ロン!」

初瀬「っ……!」

由華「……」ジーッ

由華「少し焦ったかな。もっとじっくり間をとって考えていいと思う」

初瀬「……!」

初瀬「は、はいっ!ありがとうございます!」

由華「いえ」


由華(……)チラッ

由華(そろそろか……)


由華「もうすぐ終了の時間です!一打一打、集中して打つようにしてください!」

一同「はいっ!」



良子「由華のやつ、少し風格が出てきたな」

紀子「昨日から今日にかけて、何かあったのだろう」ニヤッ

日菜「……」

日菜「……それにしても」

日菜「よかったわー、しっかり乗り越えてくれたみたいで♪」

良子「……だな!」

紀子「うむ」コクッ




由華「……」


由華(終わりか……)

由華(3日間……なんだかんだであっという間だったな)

由華(よし、最後はビシッとしめよう!)


由華「皆さん、集合してください!」


ザッ


由華「……」

由華「えー、今日の練習はこれでしゅうりょ」


やえ「ただいま」ガラッ

由華「や、やえ先輩……!」


一同「小走先輩!!」ワッ


やえ「ん……?」

良子「おいおい、タイミング悪すぎるぜ部長!」ニヤニヤ

紀子「ちょうど今、部長代理が最後の勤めを立派に全うしようとした所だ」

日菜「さすがやえちゃん、おいしいとこ持ってくねー♪」

やえ「え、あ……う……ご、ごめん」カァァァァァ

やえ「由華……どうぞ、続けて」コホン

由華「は、はい……」


由華(……でも、さすがやえ先輩だ)

由華(入ってきた瞬間、部室の空気がより引き締まったのを感じた……)

由華(そして……皆が安心したのを感じた)

由華(やえ先輩が皆に信頼されているから……頼られているから、皆安心するんだ)

由華(……私も、そんな風になりたいな)


由華「それでは、今日の練習はこれで終了とします!皆さん、いろいろ足りない代理でしたが、一緒にやってくれてありがとうございました!」


パチパチパチパチ


由華「みんな……」

やえ「……」フフッ

やえ「さて、ついでだからここで確認したいんだけど」

由華「……?」

やえ「次の部長は由華で考えているの。異論が無ければもう一度拍手して欲しいんだけど」

由華「そ、そんな……!いくらなんでもまだ……」




パチパチパチパチパチパチパチパチ




由華「……!」

やえ「決まりね」

良子「ああ。バッチリだ」

日菜「頑張ってねー♪」

紀子「……」コクッ

由華「皆さん……」


由華「あ、ありがとうございます!」

由華「私、頑張ります!よろしくお願いしますっ!」


パチパチパチパチ

……



やえ「由華、頑張ったわね」

由華「やえ先輩……」

やえ「本当は良子達の意見を一度聞いてからと思ってたけど、由華が練習を終わる挨拶をしてた時の皆の顔を見て思ったの。きっと由華が部長で大丈夫だって」

良子「まあ、俺に聞いてもどの道結果は同じだったけどな」

由華「……」

由華「……でも」

ボフッ

やえ「!」

由華「難しかったです……たったの3日だけど、いつ失敗してもおかしくなかった」

やえ「由華……」

やえ「……」

やえ「私も、部長をやりたての頃は苦労したわ」ポンポン

由華「……」

やえ「それこそちょっと間違えば駄目になってたかも知れない」

やえ「でも、仲間達が支えてくれたの。ね。良子、日菜、紀子」

紀子「う……気持ちは嬉しいが」

良子「今ここに振るのかよ……」

日菜「せっかくだからもっとラブラブしてていいのにー」

由華「……!」パッ

やえ「ら、らぶらぶってあんた達……!」カァァァァァ

やえ「……ま、まあいいわ」コホン

やえ「とにかく、皆の顔を見た時に思ったの。きっと皆は由華の力になってくれる」

やえ「だからとにかく由華の自然体でやれば、それできっと問題ないから。心配しないで」

由華「……」

やえ「……そ、それに引退後も学校にはいるんだから」

やえ「辛くなったら……相談に乗るわ」コホン

由華「!」

由華「……ふふっ」

由華「ありがとうございます、やえ先輩♪」ポフッ

やえ「ま、また……」

日菜「だんだんお構いなしになってるねー。まあ、いいことだけど」

良子「……ああ、ところでやえ」

やえ「ん?どしたー」

良子「おみやげとか無いのか?」

やえ「……」

やえ「…………」

やえ「……ごめん、ない」カァァァァァ


カンッ

終了です
ありがとうございました

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