※あらすじ
P×志希 ただし出てくるのはほぼ志希と文香のみ 短い
志希「プロデューサーと、つきあうんじゃなかったかなぁ?」
文香「……(たぶん惚気でしょうね)」
一ノ瀬志希「キミに惚れ薬を試してみたい」
一ノ瀬志希「キミに惚れ薬を試してみたい」 - SSまとめ速報
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↑の続編ですが、読まなくても大きな支障はないです。
※一ノ瀬志希
http://i.imgur.com/gluAzIq.jpg
※鷺沢文香
http://i.imgur.com/jRcE7eJ.jpg
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1417855904
「ねー文香ちゃーん、ふみふみちゃーん」
「……どうしたんですか?」
「あたし……プロデューサーと付き合ってから、自分が変わっちゃったと思うんだ……」
「……遅刻間際でも、寝癖を直してくるようになりましたね。えらいえらい」
「そーいうことじゃなくてさー。あたし、自分が幼稚になっちゃったなぁと思うんだよ。
プロデューサーが他の子を見てると、つい困らせたくなっちゃって」
「それ、付き合って“から”ですか……?」
「…………」
「……まぁ、話聞くぐらいなら、付き合――」
「――聞いてよ文香ちゃーん! この前さー!」
この業界に入ったばかりの頃は気づかなかったけど、あたしのプロデューサーは、相当破天荒だ。
例えば、仕事中に平気でアイドル候補生をスカウトしようとするトコとか。
普通は、スカウトの人が別に声をかけて女の子を集めてくるのに。
『あ、アイドルになったら、女の子といっぱい友達になれるって……?』
今もそうだ。
営業先からあたしを車で拾ったプロデューサーは、
事務所への帰路でキョーミ深い実験材料を発見♪ したらしく、
ローティーンと見えるお団子ヘアの女の子に声をかけている。
『う……うぅ……お、お山があたしを呼んでる……けど、アイドル、あたしが、かぁ……』
熱心に声をかけてるプロデューサーの後ろから、あたしは女の子の表情をうかがう。
けっこうグラグラ来てるみたいだけど、最後の一押しが足りてないみたい。
じれったいなぁ。
というか、プロデューサー?
あたしを連れて歩いていながら、他の女の子に声かけるかぁ。
いや、一応おシゴトで移動中とはいえ、ね。
あたしとしては、貴重なふたりきりの時間だなーとか思ってたんだけど。
プロデューサーは、そう思ってなかったのかなぁ。
まぁ、プロデューサーの眼力も認めてはいるよ。
あたしをアイドルにしようとしたぐらいだからねー。
今スカウトかけてる女の子だって、カワイイ中にちょっとアブないスメルが漂ってるのがイイよね。
というか、あの子、プロデューサーよりあたしの方をチラチラ見てる。
何か気になるのかしら。あ、もしかしてあたしが現役アイドルだって気づいちゃった?
そうか、あの子がどことなく上の空なのも、プロデューサーの話より、
プロデューサーの後ろで手持ち無沙汰にしてるあたしに意識が向いてるからか。
あたしが見られるのはイイんだけどさ。
あの子があたしの方ばっか見てるってことは、プロデューサーが諦めるまで、延々この状況が続くよね。
プロデューサーとあたしがふたりきりでいられる時間が、目減りしていくわけで。
早くケリがつかないかなー。
さっさと名刺押し付けて、あとはあの子に任せりゃいいのに。
ほら、あの子の目線、プロデューサーじゃなくて、完全にあたしの方に向いてるし。
話聞いてくれてないのに、そんなペラペラ喋ってもしょうがないでしょうが。
『お山……アイドルのお山……』
早くー。はやくはやくー。
女の子を待たせるなんて許されないぞー。
しかもその理由が、他の女の子に声をかけてたからとか、馬鹿も大概にしてよ?
『ふれあいたい……』
あーあの子の顔。話聞いてないや。もうあたしの方ガン見してる。
しかも心なしか視線がやらしいし。キミ、それオンナノコがしていい目じゃないぞー。
あーもう見てらんないわ。
プロデューサーに代わって、ここはあたしがキメてやるぞ!
だから、プロデューサー。
早くあたしの方を見てよ。
「……それで、志希さんが声をかけたら、その子はあっさり頷いた、と」
「うん。スゴイでしょ! あたし、スカウトの才能あるんじゃない?」
「もしかして、その声をかけられた子とは、愛海ちゃんかしら」
「おっ、文香ちゃんご明察ー。誰のことか言ってなかったのに。さすがあの子も注目の新人だね!」
「その子、志希さんの……その、胸に目線が行ってたんでしょう。それで」
「うん。あたしもアイドルになったからね。ヒトの視線にゃビンカンになったよ!」
「プロデューサーが持たないそれで、愛海ちゃんを籠絡したんですか」
「ローラクとは人聞きの悪い。この事務所に、才能あるアイドルの卵がまたひとり……
それは、あたしの大胆なるネゴシエーションの成果だよ!」
「志希さん。つかぬことをうかがいますが……愛海ちゃんがこの事務所で、
ああもためらいなく胸を揉みに来る原因に、心当たりは?」
「…………なんのコトカナー?」
「……まさか、餌付けしました? プロデューサーさんが愛海ちゃんに構ってばかりだから、
さっさと愛海ちゃんの首を縦に振らせて、話を終わらせようと」
「“アイドルとふれあえる”っていうメリットを、少し体験させたげたんだよっ」
「“ふれあい”とは、手をわきわきさせながら胸を揉みに来ること?
もしかして、あなたが彼女に味を占めさせてしまったのが、アレの原因では……」
「…………」
「志希さん、私は読書に戻りますので。後輩の教育は、しっかりしてくださいね」
「文香ちゃーん! 後生だからあたしの話を聞いてぇ……」
「愛海ちゃんのリビドーを抑え込むのは、あたしのおクスリで何とかするから。
文香ちゃん、今はあたしの話を聞いてよー!」
「プロデューサーと付き合い始めてから、志希さんが幼稚になってしまったとか、最初はそんな話でしたね」
「そーそー……幼稚っていうか、ワガママっていうかね……」
「志希さんは、この事務所に入ってからしばらくの間、仕事ギリギリまで失踪してたり、
怪しい香水を配ったり、事務所で実験やって大騒ぎを起こしたりしてましたが、
最近はそういうプロデューサーを困らせる騒動、めっきり減りましたよね」
「文香ちゃんも、ついにあたしへ忌憚のない意見をくれるようになったとは、あたし嬉しいよ……」
「はいはい」
「私は、志希さんが幼稚になるどころか、歳相応の分別がついてきたなぁと思うぐらいだったんですが」
「へぇへぇ、前は歳相応じゃなくてすみませんでしたねぇ」
「いえ、滅相もございません」
「前……か。プロデューサーと出会った頃は、ひたすら楽しかったな。
実験の時以外は、プロデューサーに何をしてあげちゃおうかなー、なんてずっと考えてた。
思いついたら何でもやったよ。一応、愛想を尽かされないようボーダーは測ってたけど」
「志希さんも、悪いひとですね」
「今は、そーゆーコト、できなくなっちゃってる……かも、知れない。
付き合う、って関係がデキちゃったせいで、守りに入っちゃってるっていうか」
「……そうでしょうかね」
「前ほど思い切ったコトができなくなって……そのくせちょっとでも、
プロデューサーの目が他の子に行ってると、ハラワタがムズムズ来てさ……おかしいね」
「プロデューサーからオモシロそうなニオイがする! アイドルも楽しそうだね! じゃあやろっ♪
……文香ちゃんもご承知だろうけど、あたしってさ、そんな性格だったんだよ。
アタマの中にはオモシロそうなコトしか入れてなくて、他はスッポ抜けてる人間だったんだよ」
「すごく、楽しそうですね」
「ホントに、楽しくて仕方がなかったよ。特に、プロデューサーと出会った時は。
楽しいコトでアタマがいっぱいになって、油断したら脳漿が溢れだす勢いだった」
「それが今じゃ、ハラワタのムズムズが、あたしの灰色の脳細胞を侵していくんだよ。
楽しくないコトがぐるぐる回って、アタマに居座るんだ」
「アガサ・クリスティなら、私は『春にして君を離れ』が好きですね」
「プロデューサーのコト、スキなのにさ。プロデューサーのそばにいると、
寄ってくる他の子に、あたしは一喜一憂しちゃってさ。スキだって気持ちすら追いやられそうだよ」
「……前の志希さんは、今の誰よりもプロデューサーを振り回してましたよ」
「もし、前のあたしみたいな子が、あたしたちの前に現れたら、前のあたしみたいなことしでかしたら。
あたし、ちょっとトンでもないこと、しでかしちゃうかもしれない」
「……志希さんみたいな子が、ふたりもいたら大変です。ひとりで十分でしょう」
「ね、文香ちゃん」
「……どうしたんですか」
「ツマラない、って思ってるでしょ。あたしの話」
「ええ、愚痴ですからね。面白がるのも悪いかと思って」
「……聞いて差し上げますよ。志希さんが、聞いて欲しいのであれば」
「なんとゆー包容力……やばいね、スキになっちゃいそうだよ……♪」
「私、キープを読みたいんで帰りますね」
「んまっ、待ってふみふみちゃーん!」
「……つまり、志希さんは自分の好奇心の行方より、
プロデューサーの関心の行方を気にするようになった、と。
そんな自分に、戸惑っているのですか?」
「ズバッとくるね……文香ちゃん……」
「…………」
「…………」
「……え、終わりなの? 文香センセイの有難いお言葉」
「志希さんは、言われなきゃ気づけないほど、ニブイ人間ではないはずです」
「……あたし、さ。プロデューサーと会うまで、人目をうかがったことなかったんだよね」
「……それは、すごいですね」
「それが今じゃ、プロデューサーの一挙手一投足にヤキモキしてるなんて。
ホント、あたしどうしたんだろ……?」
「……志希さん。私は、そういう話題について、偉い口が聞ける人間ではありません」
「……そう、なんだ」
「……何ですか、その間」
「いーえ、何でも」
「……なので、古人の言葉を借りることにします。
『思ふべしや、いなや。人、第一ならずはいかに』
(私は、あなたを愛してるのか、してないのか。もし、愛してても一番ではないとしたら、どうかしら)
志希さんは、どうですか?」
「それは、ナニ? あたしが、プロデューサーのことを一番スキかってコト?」
「違います。あなたが、プロデューサーに好かれていても、それが一番でなかったとしたら、という話です」
「きっついコト、聞いてくれちゃうね……」
「……どうですか?」
「……やだよ。あたしは、一番に思われなきゃ、イヤ。自分が、一番大事だと思うヒトだから。
なんとしても、プロデューサーの目をあたしに釘付けにしてみせる」
「……きっと、志希さんの変化もそういうところから生じてるんでしょう。
『第一の人に、また一に思はれむとこそ思はめ』
(私が一番大事だと思う人には、同じように私のことを思ってくれるよう願うものです)
プロデューサーがどこを向いているかにヤキモキするのは、
あなたがプロデューサーを一番に思ってる気持ちの裏返しです。
それもあなたの気持ちなんです。きちんと認めてあげてください」
「……文香ちゃん、ありがとね。今度、文香ちゃんのために、とっておきの香水作るよ」
「……私、古書店で働いてるので、控えめな香りにしてくださいね」
(おわり)
読んでくれた人どうもです。
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