「長門有希」 (128)

なんとなく進学した高校のお決まりの入学式を終えた俺達は教室に移動した。
そしてやってきたのは定番の自己紹介。

俺は特別なこともなく当たり障りのない紹介を終え着席した。

俺が自己紹介を終えると後ろの奴が立ち上がった。

「長門有希」

聞いた三秒後には忘れてしまいそうな平坦で耳に残らない声だった。

その生徒は続けて言った。

「この銀河を統括する情報統合思念体によって造られた対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース。それが、わたし」

俺を含めた生徒たちが振り返る。ショートカットをした小柄でクールビューティーとでも表現すべき女生徒がそこにいた。

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「わたしの仕事は自律進化の可能性を秘めている者を観察して、入手した情報を統合思念体に報告すること」

彼女は衆人の注目など気にせずに続ける。

「産み出されてから三年間、わたしはずっとそうやって過ごしてきた。この三年間は特別な不確定要素がなく、いたって平穏。でも、最近になって無視出来ないイレギュラー因子が現れた。わたしとしたことがその対象を見失った。ゆきりんのうっかり屋さん」

教室の空気が固まる。

「この中に自律進化の可能性を秘めている者、自分の都合の良いように周囲の環境情報を操作する力がある者、それとそんな人物に選ばれた者がいたらわたしの所にきて欲しい。以上」

彼女はやはり平坦で抑揚のない声で募集をかけると何事もなかったかのように着席した。


これってギャグなの?

おそらく全員の頭にどういうリアクションをとればいいのか、疑問符が浮かんでいたことだろう。「ここ、笑うとこ?」

このように一瞬にしてクラス全員のハートをいろんな意味でキャッチした長門有希だが、翌日以降もおとなしく見た目や喋り方と同じく静かな女子高生だった。

ある日、そんなネジが飛んでるクールビューティーに話しかけた。

「なあ」

と、俺はさりげなく振り返りながらさりげない笑みを満面に浮かべて言った。

「しょっぱなの自己紹介のアレ、どのへんまで本気だったんだ?」

読書をしていた長門有希は本から顔を上げてまともに俺の目を凝視した。

「あなたの質問の意図が不明」

そう言って、意味が解らないと感じの風情で小首を傾げる。

「いや、だから自律進化の可能性がどうとか」

「あなたは自律進化の可能性を秘めてるの?」

大まじめな顔で訊きやがる。

「…違うけどさ」

「違うけど?」

「…いや、何もない」

「そう」

長門はそれだけ言うと興味を失ったかのように読書を再開した。

もはや話しかけることもままならぬと判断した俺は諦めて前を向いた。

それから数日したある日のことだ。

長門有希が俺に本を持ってきた。

「これ」

ハードカバーのそれは海外のSFものだった。

「貸すから」

長門は短く言い残すと俺に反駁するヒマを与えることなく机の上に置いて席に戻って行った。

そして翌日。

登校した俺が着席しようとしたら長門が声をかけてきた。

「本読んだ?」

長門有希の暗闇色をした目が俺を射抜いていた。

本。というと、いつぞや俺に貸した異様に厚いハードカバーのことか?

「そう」

「いや、まだだけど……返した方がいいか?」

「返さなくていい」

長門のセリフはいつも端的だ。

「今日読んで」

長門はどうでもよさそうに言った。

「帰ったらすぐ」

どうでもよさそうなのに命令調である。

ここんとこ国語の教科書に載っている以外の小説なんて読んでもいないけど、そこまで言うからには他人に推薦したくなるほどの面白さなのだろう。

「……解ったよ」

俺が応えると長門はまた自分の読書に戻った。

そして、あくる日。

登校した俺が着席しようとしたら長門が声をかけてきた。

「本読んだ?」

長門有希の暗闇色をした目が俺を射抜いていた。

昨日言われた本のことだろう。つい読みそびれてしまっていた。

「そう」

「いや、まだだけど……返した方がいいか?」

「返さなくていい」

長門のセリフはいつも端的だ。

「今日読んで」

長門はどうでもよさそうに言った。

「帰ったらすぐ」

どうでもよさそうなのに命令調である。

ここんとこ国語の教科書に載っている以外の小説なんて読んでもいないけど、そこまで言うからには他人に推薦したくなるほどの面白さなのだろう。

「……解ったよ」

俺が応えると長門はまた自分の読書に戻った。

さらに数日経ったある日。

登校した俺が着席しようとしたら長門が声をかけてきた。

「本読んだ?」

長門有希の暗闇色をした目が俺を射抜いていた。

本。というと、いつぞや俺に貸した異様に厚いハードカバーのことか?

「そう」

「いや、まだだけど……返した方がいいか?」

「返さなくていい」

長門のセリフはいつも端的だ。

「今日読んで」

長門はどうでもよさそうに言った。

「帰ったらすぐ」

どうでもよさそうなのに命令調である。

ここんとこ国語の教科書に載っている以外の小説なんて読んでもいないけど、そこまで言うからには他人に推薦したくなるほどの面白さなのだろう。

「……解ったよ」

俺が応えると長門はまた自分の読書に戻った。

それから一週間ほど経った。

登校した俺が着席しようとしたら長門が声をかけてきた。

「本読んだ?」

長門有希の暗闇色をした目が俺を射抜いていた。

本。というと、いつぞや俺に貸した異様に厚いハードカバーのことか?

「そう」

「いや、まだだけど……返した方がいいか?」

「返さなくていい」

長門のセリフはいつも端的だ。

「これ」

長門は一枚の紙を寄越してきた。

「入部届け?」

俺はその紙に大書きされた文字を読み上げた。

「そう」

ご丁寧に俺の名前まで書きこんであるその紙を見つめていると、

「文芸部」

長門が部の名前を言った。

「入部しろってことか?」

「そう」

俺の質問に対して、長門が言葉短く肯定の返事を寄越してきた。

「文芸部にはわたししかいない。廃部の危機」

闇色の瞳が俺を見つめる。

「なんで俺なんだ?」

「入学してから三週間。言葉を交わしたのはあなただけ」

長門はじーっと俺を見ている。

「本を読まんから幽霊部員になるかもしれんぞ?」

「構わない」

ぼっちの美少女とお近づきになれる機会だったからという訳ではなかったが、こうして俺は文芸部員になった。

そんな感じで過ごしているうちにゴールデンウィークも終わり、初夏の暖かさを感じるようになったある日の放課後のことだった。

終礼のベルとともに帰ろうとした俺の袖が掴まれた。

「どうした?」

俺の袖を掴んでいる長門に質問した。

「今日は部室に来てほしい」

「なにかあるのか?」

「昼休み、妙な女生徒に絡まれた」

今時スケバンということもないだろうが少々気になる。

「それで怖いのか?」

「そう。部室を寄越せと言われた」

まさか本当にスケバンで部室を溜まり場にでもするの気なのだろうか?

「それで部室に顔を出せと言うことか?」

「そう」

本当に不良だったらどうしようか?その様な一抹の不安を抱きながらも長門に同行することとなった。

文芸部は部室棟、通称旧館にある。

老朽化した校舎を長門と二人歩く。

そして、文芸部と書かれたプレートが斜めに傾いで貼り付けられているドアの前で立ち止まる。

「ここ」

長門はそのドアを開けた。

長門がそのまま入室し、俺も続いて入る。

入部して三週間経とうと言うのに初めて入室する文芸部の部室は新鮮だった。

部屋は意外に広かった。長テーブルとパイプ椅子、それにスチール製の本棚くらいしかないせいだろうか。天井や壁には年代を思わせるヒビ割れが二、三本走っており建物自体の老朽化を如実に物語っている。

長門は本棚から本を一つ取るとそのまま部屋の奥に行き、窓際のパイプ椅子に腰かけた。

「適当に座ってて」

長門は無関心な風にそう言うと本を開いた。

俺は遠慮がちに適当に椅子に座る。お喋りの一つでもしようかと思ったが声をかけるのもはばかれる雰囲気だったため、諦めて携帯のアプリを起動した。

暫くしたら意外なことに長門から声をかけてきた。

「本読んだ?」

長門有希の暗闇色をした目が俺を射抜いていた。

本。というと、いつぞや俺に貸した異様に厚いハードカバーのことか?

「そう」

「いや、まだだけど……返した方がいいか?」

「返さなくていい」

長門のセリフはいつも端的だ。

「今日読んで」

長門はどうでもよさそうに言った。

「帰ったらすぐ」

どうでもよさそうなのに命令調である。

ここんとこ国語の教科書に載っている以外の小説なんて読んでもいないけど、そこまで言うからには他人に推薦したくなるほどの面白さなのだろう。

「……解ったよ」

俺が応えると長門はまた自分の読書に戻った。

俺もゲームを再開しようと思っていると乱暴にドアが開かれた。

「おっ待たせーーー!!!」

驚くほどの美少女が元気よく入室してきた。

と、その少女が俺に気が付き、唖然としてみつめていた俺と目が合う。

少女は睨みつけるような目つきとなり言い放つ。

「あんた誰よ」

不機嫌さと不審さを包み隠さない口調だった。

「俺はこの文芸部の----」

「嘘。文芸部には有希一人しか部員が居ないのはすでにリサーチ済みなんだから」

少女は俺の発言を遮った。どうやらこの少女が長門が言っていた妙な女生徒なのだろう。

こんな妙な女生徒が複数くるようなら、文芸部はお祓いでもして貰った方がいいだろう。

確認の為に長門に視線を送る。

長門は黙って縦に首を振った。

「ほら!目を逸らした!!不審者は出て行きなさい!!!」

妙な女生徒が俺を怒鳴りつける。目を逸らしたら負けとは動物の世界ではあるまいし。

「あのなぁ……」

俺は呆れかえりながら改めて女生徒を見る。

どこから見ても非のうちどころのないポニーテール、この上なく整った目鼻立ち、意志の強そうな大きくて黒い目を異常に長いまつげが縁取り、薄桃色の唇を固く引き結んだ女。

「なによ!」

これで微笑んでいればどんな男も一目で恋に落ちることだろう。それこそホモであってもだ。

「疑うのなら長門に確認を取ってくれ。部室に来てなかっただけで三週間くらい前から文芸部員なんだぞ」

勿体無いと思ったからなのか、呆れたからなのか解らないが自然と溜息を出た。

「有希、本当なの!?嘘だったらタダじゃおかないわよ!」

少女は苛立ちながら長門に詰め寄る。

「彼が言っていることに偽りはない」

「……そう」

少女は不満そうに俺を睨む。

「…じゃあ仕方がないわね。部室の端っこで大人しくしてなさいよ!」

「そのことなんだが----」
「そうそう!有希に紹介するわ!」

一方的に言い放つ少女に部室の事を話そうとしたら、少女が無視して一人の少女を連れ込んだ。

「なんなんですかー?」

どう見ても無理矢理連れてこられたと思しきその人物は気の毒なことに半泣き状態だ。

「ここどこですか、なんでわたし連れてこられたんですか、何で----」
「黙りなさい」

 妙な女生徒の押し殺した声に少女はビクッとして固まった。

「紹介するわ。朝比奈みくるちゃんよ」

それだけ言ったきり、妙な女生徒は黙り込んだ。それよりもお前は誰だよ。

名状しがたき気詰まりな沈黙が部屋を支配した。

「それよりもお前----」
「うるさい」

俺が名前を聞こうとしたら睨みつけられ、質問は遮られた。

「みくるちゃん、あなた他に何かクラブ活動してる?」

「あの……書道部に……」

「じゃあ、そこ辞めて。我が部の活動の邪魔だから」

俺を無視してその女生徒は拉致してきた朝比奈さんと話す。

「書道部は辞めてこっちに入部します……」

可哀想なくらいに悲愴な声が聞こえた。何をして彼女をそこまでさせるのだろうか?

「でも文芸部って何するところなのかよく知らなくって、」

「我が部は文芸部じゃないわよ」

当たり前のように言うハルヒ。

俺も当初の目的を思い出した。

>>30のハルヒはミスです。少女とでも読み替えておいてください。

「おい、部室----」
「シャラップ!」

再び少女に遮られた。

「我が部はSOS団。世界を大いに盛り上げるための涼宮ハルヒの団」

涼宮ハルヒ……これを聞いて思い出した。
頭のネジが数本飛んでいると噂のトンデモ美少女の噂だ。

ありとあらゆる情報が彼女と噂の涼宮ハルヒと合致する。

間違いなく彼女が噂の涼宮ハルヒその人なのだろう。

俺がそう思っていると、涼宮ハルヒと思われる人物は、毎日放課後ここに集合ね、と全員に言い渡して、立ち去って行った。

とりあえず長門に謝ることにした。

「すまん!言いだせずに押し切られてしまった」

長門は無関心な風に、

「そう」

と一言だけ返してきた。

不甲斐ない男とでも思ったことだろう。

「あのー……」

ガックリとうなだれた朝比奈さんが声をかけてきた。

「お二人もSOS団なのですか?」

「いや、俺達は文芸部ですよ」

改めて見て気が付いたが、この朝比奈さんはかなりの美少女だった。

小柄である。ついでに童顔である。微妙にウェーブした栗色の髪が柔らかく襟元を隠し、子犬のようにこちらを見上げる潤んだ瞳が守ってください光線を発しつつ半開きの唇から覗く白磁の歯が小ぶりの顔に絶妙なハーモニーを醸し出す。さらには立派な乳までお持ちときている。

俺の視線に気が付いたのか、朝比奈さんが胸を隠した。

「あ、あのですね………」

俺が言い訳を考えていると後方から声がした。

「胸」

胸と同じく平坦な声を出したのは間違いなく長門だろう。

「大きい方がいい?」

長門が聞いてきた。

「いや!貧乳はステータスだと思うぞ!?」

とっさに意味が解らない釈明をした。って俺は何を言っているんだろうね?

「そう」

長門はそれだけ言うと興味をなくしたかのように読書を再開した。

振り返ると、朝比奈さんがさっきよりも心なし距離を取っており、

「ふつつか者ですが、よろしくお願いします」

そう言って小さくお辞儀をするとそそくさと出て行った。

うーん……ちょっと失敗したかな?

部室の防衛に失敗してから数日が経った。

朝のHR前。長門が声をかけてきた。

「本読んだ?」

長門有希の暗闇色をした目が俺を射抜いていた。

本。というと、いつぞや俺に貸した異様に厚いハードカバーのことか?

「そう」

「いや、まだだけど……返した方がいいか?」

「返さなくていい」

長門のセリフはいつも端的だ。

「今日読んで」

長門はどうでもよさそうに言った。

「帰ったらすぐ」

どうでもよさそうなのに命令調である。

ここんとこ国語の教科書に載っている以外の小説なんて読んでもいないけど、そこまで言うからには他人に推薦したくなるほどの面白さなのだろう。

「……解ったよ」

俺が応えるとほぼ同時に教室の後方の引き戸が乱暴に開かれた。

何事かと思いそこを見ると、頭の四ヶ所を適当にまとめてリボンで結ぶというすこぶる奇妙な髪型をした涼宮ハルヒがそこにいた。

教室を見渡す涼宮ハルヒと目が合った。

すると涼宮ハルヒは他には一切目もくれず、一直線に俺に向かってきた。

そしてむんずと俺のネクタイを掴み上げ、顔を引き寄せる。

「あんた、部室に来ないとかアタシをなめてんの!?」

恐ろしい程の形相で俺を睨みつける。イタリア人であっても「可愛い顔が台無しだぜ?」なんて言える雰囲気ではないだろう。

「今日の放課後は絶対に来なさいよ!来なかったらマジで死刑だから!!」

俺はと言うと、あまりの剣幕に無言で首を縦に数回振った。

涼宮ハルヒは満足したのかネクタイを離し、俺を解放すると大股で教室を出て行った。

そして放課後、仕方が無しに部室に行った。

部室には長門と何故かメイド服姿の朝比奈さんが既にきていた。

手近なパイプ椅子に腰を掛けると朝比奈さんがお茶を淹れてくれた。

「ありがとうございます」

俺が礼を言うと「いいえ」と微笑んでくれた。涼宮ハルヒもこれくらい微笑むことが出来ればさぞモテることだったろう。

そう思いながらお茶を啜る。

「美味しいですね」

お世辞では無い感想を漏らすと嬉しそうに笑ってくれた。

もののついでに何故メイド服なのか聞こうと思ったら、乱暴にドアが開かれた。

「へい、お待ち!」

一人の男子生徒の袖をガッチリとキープした涼宮ハルヒが的はずれな挨拶をよこした。

俺の姿を確認すると満足げに頷き、

「一年九組に本日やってきた即戦力の転校生、その名も、」

言葉を句切り、顔で後は自分で言えとうながす。

虜囚となっていたその少年は、薄く微笑んで俺たち三人のほうを向き

「古泉一樹です。……よろしく」

さわやかなスポーツ少年のような雰囲気を持つ細身の男だった。如才のない笑み、柔和な目。適当なポーズをとらせてスーパーのチラシにモデルとして採用したらコアなファンが付きそうなルックス。これで性格がいいならけっこうな人気者になれるだろう。

「ここ、SOS団。わたしが団長の涼宮ハルヒ。そこの三人は団員その一と二と三。ちなみにあなたは四番目。みんな、仲良くやりましょう!」

いつの間にか俺や長門も彼女の中では団員に加えられていたようだ。

「入るのは別にいいんですが」

転校生の古泉一樹は落ち着いた笑みを絶やさずに言った。

「何をするクラブなんですか?」

「教えるわ。SOS団の活動内容、それは、」

涼宮ハルヒは大きく息を吸い、

「宇宙人や未来人や超能力者を探し出して一緒に遊ぶことよ!」

そう高らかに宣言した。

噂以上におかしな少女だった。勝手にしてくれ。

古泉は、

「はあ、なるほど」

と何かを悟ったような口ぶりで呟いて、朝比奈さんと長門有希を交互に眺め、訳知り顔でうなずいた。

「さすがは涼宮さんですね」

意味不明な感想を言って、

「いいでしょう。入ります。今後とも、どうぞよろしく」

白い歯を見せて微笑んだ。

涼宮ハルヒは見た目が良いし、俺が文芸部に入ったのと大差ない感覚なのかもしれない。

もっとも文芸部とは違い、明らかに後悔しそうではある。

俺がそう思っていると涼宮ハルヒが何かを言い始めた。

「ではこれより、第一回SOS団全体ミーティングを開始します!」

俺と長門には構わずに勝手にやってくれ。

「果報は寝て待て、昔の人は言いました。でももうそんな時代じゃないのです。地面を掘り起こしてでも、果報は探し出すものなのです。だから探しに行きましょう!」

俺の内心での突っ込みを無視してハルヒは続ける。

「市内をくまなく探索したら一つくらいは謎のような現象が転がっているに違いないわ!次の土曜日!つまり明日!朝九時に北口駅前に集合ね!遅れないように。来なかった者は死刑だから!」

ほれ見た事か。古泉は今頃後悔をしていることだろう。

いや、待てよ?涼宮ハルヒに朝比奈さんという美少女と街を散策できると考えて役得とでも思っているかもしれない。

もっとも、おそらくだが、何らかの理由を付けて奢らされることになるだろうから、やはり最後は後悔することになるだろう。

冷静な分析を終える頃には、涼宮ハルヒは学校を案内すると言って古泉を連れて出て行っていた。

涼宮ハルヒに触発されたという訳ではないのだが、俺も部活動をしたくなった。

「なぁ、長門」

文芸部員仲間の長門に声をかけた。

「なに」

感情が読み取れない返事があった。

「俺達も土曜日に出かけないか?」

長門がじーっと俺を見ている。

「あ、あの涼宮さんの方はどうするんですか!?」

朝比奈さんが慌てた様に言ってきた。

「ああ、俺達は文芸部員でSOS団じゃないんで……」

「え!?いや、でも………」

朝比奈さんが困惑したような口ぶりで慌てている。

「どこに?」

朝比奈さんとは対照的に長門は平素と変わらぬ口振りで聞いてきた。

「駅前の図書館なんてどうだ?一応文芸部の課外活動ってことでさ」

「わかった」

長門はあっさりと了承した。

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