綾乃「30」 (22)

千歳「綾乃ちゃん、30歳おめでとう~」

綾乃「ありがとう、千歳」

綾乃「まさか千歳と一緒に30歳の誕生日を迎える事が出来るなんて」

千歳「うちも信じられないわ」



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綾乃「中学に入ってすぐに千歳と出会ってから17年…」

千歳「まさかこんなに長く一緒にいるなんて…」

綾乃「全く思わなかったわ」

千歳「うちもや」

綾乃「生徒会もずっと千歳が一緒だったわね」

綾乃「私が3年生で生徒会長になった時は千歳が副会長になったし」

綾乃「そして高校生になってすぐに生徒会に入った時も千歳も一緒に入ってくれたよね」

千歳「綾乃ちゃんが生徒会に入ると言ったからうちも入ったんや」

千歳「綾乃ちゃんの負担を軽くしたいから」

綾乃「千歳が一緒に役員に選ばれた時はビックリしたわよ」

綾乃「でも同時に安心したのよ」


「千歳が一緒にいるから」


「千歳と一緒に仕事出来るから」

綾乃「高校でも2年生の時に副会長になって、3年生の時には生徒会長」

千歳「そしてうちが副会長」

綾乃「中学と同じだったわね」

千歳「役員も大室さんと古谷さんやったし」

綾乃「ごらく部もあったしね」

千歳「綾乃ちゃんもよく歳納さんに会いに行ったね~」

綾乃「ち、注意しに行っただけで別に歳納京子に会いに行ったんじゃないから!」///

千歳「うふふ そんな綾乃ちゃんが大好きやわ」

綾乃「その後大学に進学したけど、千歳も付いて来てくれたよね」

千歳「うちも綾乃ちゃんと同じ大学受けたかったんや」

綾乃「そして私と千歳は無事合格して一緒の大学に入って」

千歳「ここでもほとんど一緒やったね~」

綾乃「そして20歳の時に実家を出て千歳と一緒に暮らし始めた」

千歳「綾乃ちゃんから「千歳、一緒に暮らしましょう」と言われた時はビックリしたわ」

綾乃「最初は一人暮らしを考えたけど、やっぱり千歳がそばにいた方が良かったからお願いしたの」

千歳「もう10年前の事なんやね」

綾乃「大学を卒業した後に地元の企業に就職したけど」

千歳「ここも綾乃ちゃんと一緒やったね」

綾乃「私たち、凄い太い赤い糸が繋がっているとしか思えないと当時思ったわ」

千歳「絶対に離れない赤い糸がうちと綾乃ちゃんに付いているんやね」

綾乃「そして今日は私の30歳の誕生日…」

綾乃「この日を千歳と一緒に迎えるなんて赤い糸じゃなくてもっと特別な何かが私と千歳にあると思うわ」

千歳「歳納さんたちから沢山のお祝いが届いているわ」

綾乃「歳納京子も船見さんと一緒に暮らしているよね」

千歳「赤座さんも吉川さんと姉妹で一緒に暮らしているそうやし」

綾乃「古谷さんも大室さんと高校卒業後から一緒に暮らしているし、西垣先生も松本さんと一緒に暮らしているし」

千歳「みんな幸せでええね」

綾乃「30歳かぁ~」ハアー

千歳「どうしたんや、綾乃ちゃん?」

綾乃「この間20歳になったばかりなのにもう30歳だなんて10年ってあっという間に過ぎたわね…」

綾乃「30歳というと三十路…」

綾乃「私もオバさんの仲間入りか…」ズーン

千歳「綾乃ちゃん、落ち込まないで」

千歳「綾乃ちゃんは20歳の時と全く変わってないで」

綾乃「…本当?」

千歳「顔も肌の艶も何もかも20歳の時と変わってないで」

千歳「船見さんだって「綾乃はいくつになっても若々しくておまけに凄い美人でいいよな」と言ってたで」

千歳「うちだっていつも綾乃ちゃんのそばにいたから、綾乃ちゃんの何もかもが分かるで」

千歳「だから落ち込まないで、綾乃ちゃん」

綾乃「千歳、ありがとう」

綾乃「そういう千歳も全く変わっていないわ」

綾乃「千歳が全く変わっていないから私も安心して毎日を過ごして行けるわ」

綾乃「だから千歳、ずっと変わらないでいて」

千歳「綾乃ちゃんもずっと変わらないでいてくれや」

就寝時間


綾乃「明日は早いから早く寝ましょう」

千歳「明日が30歳になって最初の出勤やね」

綾乃「30歳になった事で他の人からバカにされないかな…」

千歳「そんなに心配しないでええで、綾乃ちゃん」

綾乃「だって20代と30代じゃ見方も何もかもが全く違うし…」

千歳「うちの会社にも30代の先輩がいるけど、みんな見てみ」

千歳「みんな若々しくて20代の後輩からも尊敬の眼差しで見ているで」

千歳「だから綾乃ちゃんもみんなからオバさんじゃなくて立派な先輩として見られるから心配しないで欲しいんや」

綾乃「本当?」

千歳「もし、何かありそうだったら、うちが綾乃ちゃんを守るから安心して寝て欲しいんや」

綾乃「ありがとう、千歳」

しばらく経って


綾乃「…zzz」スースー

千歳「…」

千歳「綾乃ちゃん、ぐっすり寝てるや」

千歳「…」

千歳「いくつになっても綾乃ちゃん可愛いなぁ」

千歳「…」

千歳「思えばあの時からうちと綾乃ちゃんの関係は始まったんやな」

綾乃『…』オドオド

綾乃『(どうしよう、なんと言って声を掛けたら…)』オドオド

千歳『…』

千歳『あの子、大丈夫かな?』

千歳『ちょっと声を掛けてみよう』

綾乃『(どうしよう、どうしよう、声のかけ方が分からない…)』オドオド

綾乃『(こんなんじゃ友達が…)』

千歳『大丈夫?』

綾乃『!』

千歳『大丈夫?随分オドオドしてやったけど』

綾乃『あ、あの…』

綾乃『(せっかく声を掛けてくれたから、ここで言わないと…)』

綾乃『あ、あの…』

綾乃『わ、わ、私と…』


『私とお友達になってください!』

帰り道


綾乃『ありがとう、池田さん、友達になってくれて』

千歳『うちもここに移って来たばっかで不安やったけど、友達が出来て嬉しいや』

千歳『あと、うちの事、千歳と呼んでええよ』

綾乃『私も杉浦さんじゃなくて綾乃と呼んでいいわよ』

綾乃『千歳、よろしくね』

千歳『綾乃ちゃんもよろしくや』

千歳「あの日から17年…」

千歳「うちと綾乃ちゃんは友達じゃなくてパートナーの関係になっている…」

千歳「時の流れは年齢を重ねるだけでなく、絆も深めてくれたもんや」

千歳「これからも綾乃ちゃんと一緒に歩み続けたい」

千歳「綾乃ちゃんと一緒に死ぬまでそばに居たいんや」

千歳「だから綾乃ちゃん」


「これからもよろしくや」

「うちが綾乃ちゃんをずっと幸せにしてあげるんや」

「綾乃ちゃんの幸せがうちの幸せでもあるんやから」




綾乃「千歳、準備出来た?」

千歳「準備万端やで」

綾乃「じゃあ、そろそろ出ましょう」

綾乃「30歳になって最初の出勤だから緊張するわ」

千歳「そんなに緊張しないでええで」

綾乃「千歳、30歳になったけど、これからもよろしくね」

千歳「綾乃ちゃんもこれからもよろしく」

綾乃「じゃあ、手を繋いで出勤しましょう」

千歳「ええよ」

千鶴「…」

千鶴「姉さんの後を追ってこっそり見ていたけど」

千鶴「姉さんと杉浦さん、幸せな顔をして手を繋ぎながら歩いてる」

千鶴「これならしばらく心配する必要無いな」

千鶴「姉さんと杉浦さん、これからも末長くお幸せに」


おしまい

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