そんな世界観
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息子「ただいまー」
父「おお、おかえり息子よ。今日も可愛いな」ナデナデ
息子「……」
父「む、なんだこの砂の跡…まさかまた野球でもやって来たのか?」
息子「…う、うん」
父「お前は男の娘なんだから、男の子とばかり遊んでいてはいけないといつも言っているだろう?」
息子「…で、でもパパー。ボク、男の子と遊んでる方が楽しい…」
父「だめなものはだめ」
息子「…」ムゥ
息子「べっ。もうパパなんて知らないもん」タタッ
父「あ、こら。待ちなさい!」
父「…あぁ、本当にあの息子は…まったく言うことを聞かずとも可愛く育ちよって」ホッコリ
母(ちゃんと躾けろよ、おい)
父「失礼します」ガラ
先生「あ、お父さん。ご足労頂きありがとうございます」
父「いえ。愛する息子のためなら、いつだって仕事を投げ出して駆けつけます」
母(そこはちゃんと働け)
先生「ありがとうございます」
先生「それで、息子ちゃんのことですが…」
父「うちの息子になにかありましたか」
先生「ええ…今日のお昼の話なんですが」
~~~~~~
息子「ぐす」
先生「? あら…息子ちゃん。どうかしたの?」
息子「あ…先生…」
息子「うえぇ……みんなが、ボクを仲間に入れてくれなくて…」グス
先生「…そっか。よしよし。先生が言ってあげるから、仲間に入れてもらおうね」ニコ
息子「ほんと?」
先生「」キュン
先生「え、ええ。先生に任せておいて」ハアハア
ガラ
先生「みんなー。息子ちゃんも仲間に入れてあげなさい」ハアハア
女子「? いいよー。けど先生どうしてはないきあらいの…?」
息子「あ、あの…ボク、男の子と遊びたいんだけど…」
~~~~~~
父「…」ボタボタ
先生「お宅の息子さんは天使ですね」ボタボタ
父「まったくです」ハナヂガ…
母(なんのためにアタシら呼んだんだよ)
父「母さん、ハンカチ取ってくれ」
母(てめぇで取れ)
姉「ただいまー」
息子「あっお姉ちゃん!」トテトテ
ダキッ
息子「おかえりっ」ニパッ
姉「おうふ」ズキューン
父「…ああ、うちの娘はみんな可愛いなぁ!」ボタボタ
母(さっさと風呂掃除しろよ)
姉「よしよし。いい子にしてた?」ナデナデ
息子「…むぅ…ボク、もう子どもじゃないもん」プイ
姉(可愛い)
父(可愛い)
母(可愛い)
息子「ねーお姉ちゃん。キャッチボールしよー」グイ
姉「む。今日は妹ちゃんとは一緒にお菓子を作ろうと思ってたんだけどなー」
息子「…ボク、弟だよ…?」
姉「まあ、仕方ないね。よっし、お姉ちゃんが付き合ってあげよう」フフン
息子「ありがとう! お姉ちゃんだいすきっ」ギュー
姉「おうふ」
父「おうふ」
息子「パパはね、ボクとキャッチボールしてくれないから、いじわるなんだよー」
父「息子よおおぉおおぉお!!!!??」ドバーッ
母(うるせえ)トントン
ガチャ
父「…」スクッ
上司「? 父くん、突然立ち上がってどうかしたかね。もしや急用の連絡だったか?」
父「ええ…すみません、今日はもう早退させてください」
上司「はっ?」
父「息子がっ…私の息子が、転んで、怪我を負ったと学校の先生から連絡がっ…!」
部下(えぇー…)カタカタ…
父「もう、仕事が手につきません。では!」
上司「ち、ちょっと待ちたまえ!」ガシッ
父「!? 止めないでください、止めるなら力づくでも!」
部下(なにこの展開)カタカタ
上司「落ち着け! 君の娘さんが非常に愛らしいのは私も知っている」
部下(働け上司ども)カタカタ
父「え、ええ。私も、知っています」
父「ですが上司さん、娘ではなく息子です」
部下(どうでもいいわ)
上司「そ、そうだったな。いや失礼した」
上司「早退するのは一向に構わん。それより君は電車通勤だろう? ほれ」スッ
父「え?」
上司「私のポケットマネーだ。タクシーを拾ってすぐにでも息子さんのところへ行きなさい」
父「…じ、上司さん…」
上司「ほれ。万が一が起きてからでは遅い! すぐに動く! ビジネスでは時は金なりだぞ!」
部下(それ仕事のつもりかよ)
父「あ、ありがとうございます!」タタッ
上司「…ふ、あいつもすっかり男の娘を子に持つ親の顔だな…」
部下(だから働けって)カタカタ…
ガチャッ
父「息子よぉ!」
母(うるせぇ)
父「せ、先生から、もう家に帰ってると聞いたぞ! だ、大丈夫なのか!?」
母(…)シッ
父「む…」
息子「…くぅ」
父「…そうか。寝ているところだったか…無事なようで、何よりだ」ホッ
母(相変わらず、お父さんは大げさ)
父「なにを言う。この子は」ナデ…
息子「むにゃ」
父「俺とお前の間に生まれた…大切な男の娘だ。大げさなんてことはない」
母(…)
母「そうね」
・・・・・
父「お、…男の娘、ですか?」
医者「ええ。最近は珍しくは――いや、…それでもまだ、十万に一人くらい…ですか」
母「…私のお腹の子は、どこかおかしいんですか…?」
医者「いえお母さん、男の娘というのはどこか悪いとか、なにか損なっているというわけではないんですよ。…まあそれは、男の娘に限ったわけではないですが」
医者「簡単に言えば、必死に生きようとした、その証です」
母「…生きよう?」
医者「はい。男の娘に生まれるということは、少女の容姿を持ち少年の肉体を持つということです」
医者「要は、男女問わず好かれる素質を肉体的に備えるわけです」
母(それは要約しすぎなんじゃ)
医者「少女からその可愛らしさを憎まれず、少年からは庇護の対象として可愛がられる。ただ…」
父「ただ?」
医者「どちらからも微妙に異性として取り扱われるからこそ、男の娘は成立するわけです」
医者「…つまり、お腹の子はだれからも好かれるでしょうが、それはあくまで他者としてなんですよ」
父「…な、なるほど」
母「…お父さん、ちゃんと分かってますか?」
父「……母さんがちゃんと分かっていればいいだろう」
医者「愛情が損なわれている時代と、現代は言われます。その象徴的な存在がお腹の赤ちゃんです」
父「…」
医者「ですが、無理に生めとは言いません」
母「!? わ、私にこの子を堕ろせと…?」
医者「違います。出生前レベルの治療で、今だと身体構造に多少手を加えることができます」
医者「なので去勢する形で、お子さんを女の子として生むことも、可能です」
父「…」
医者「…ただその場合、感覚としての身体構造に出産後以上が――」
父「必要ありません」
母「…お父さん」
父「さすが俺の息子だ。まだこんなに小さいのに――それほど、必死に生きようとしているとは」ナデナデ
母「…んっ」
父「この子の努力を無駄にしたくはありません」
医者「…では…」
父「ええ。そのまま生みます」
母「生むのは私ですけどね」
父「頼んだぞ、母さん」
母「…はい」
医者「…そうですか。ただ、先にも言った通り――第三の存在として、迫害を受ける可能性は消えません」
父「大丈夫です。私が責任を持って、その相手を殺してでもこの子を守ります」
医者(いや殺さんでください)
母「ふふっもうお父さんったら」
医者(もうっじゃないですよー)
・・・・・
息子「…ん、むにゃ…?」パチ
父「うーんやはり我が息子の頬はすべすべだなぁ。さすが男の娘」スリスリ
息子「…」ジョリジョリ
息子「ひ、きゃあ! ぱ、パパ、近い! なにこれ!?」
父「おお! ようやく起きたか息子よ! 心配したぞー」スリスリ
息子「…んっ、い、いいから、いったん離れてよぉ…」//
父(そんな顔をされて離れる父がどこにいるかね!)ハアハア
息子「…ひげが痛いよぅ…」グス
母(嫌がってんだろ)スパーン
父「んがっ」
母(ほら、お父さんが起きる前に早く逃げなさい)
息子「う、うん。ありがとう、ママ」ニコッ
母(…っ)
息子「晩ご飯までにはお家に戻るねっ」タタッ
母(ええ)ハアハア
父「まったく…母さんは素直じゃないなあ」ムク
母(…)
父「もっと素直に愛する息子を愛でるといいぞ! そう俺のように!」
母(ほどほどにしろ)スパーン
父「おうふ」
姉「お」
姉「おーい。妹ちゃーん」フリフリ
息子「? あっお姉ちゃんっ」タタッ
ダキッ
息子「おかえりっ」エヘヘ
姉「なんだ天使か」
息子「へ?」
姉「あいやなんでも」ギュ
息子「? どうして鼻を押さえてるの…?」
姉「気にしないでいいよ」
息子「…そう?」
息子「あっ! それよりお姉ちゃん、またボクのこと妹って言ったー。ボクは弟だってばー」ポカポカ
姉(とか言いつつ妹と呼ばれて反応しちゃう私の弟マジ天使…)ボタボタ
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