絵里「天使の声」 (62)

初SSです。
不慣れな点もございますが、どうぞよろしくお願いします。

・クロスSSです。
ニガテな方はご遠慮ください。
・エログロ等はありません。
・文章力が無いのでつたない文章になっているかと思いますが、温かい目で見守っていただけるとありがたいです。
・誤字脱字等の指摘はぜひお願いします。
・質問等ありましたら完結後にお願いします。

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私が彼に出会ったのは、あの場所だった。

私達μ'sにとってはいつもの、あの場所だった。

これは、私達μ'sが体験した、夏の奇跡の物語です。


絵里「天使の声」


始まります。

そう、あれは7月の終わりの頃の出来事でした。

夏休みに入り、μ'sの練習も朝から夕方まで一日中行われていました。

その日もいつものように練習が終わり、私も家に帰る準備をしていました。

ふと、バックの中を見ると筆箱が無かったので、みんなには先に帰っておいてもらうことにし、屋上まで筆箱を取りに行くことにしました。

これがないと勉強もできないもの。

やっぱり日本とロシアじゃ気候がぜんぜん違うな、などとどうでもいいことを考えながら、屋上に着いた私は、ある異変に気が付きました。

人が倒れていたのです。

それも男性が。ここは女子高なのに。

最初は先生かな?と思ったけれど、それほどの年齢にも見えませんでした。

何より見たことがありませんでした。

「あのー…大丈夫ですか?」

取り敢えず、声をかけてみることにする。

「…」

返事がない。それなら、今度は揺すりながら。

「お兄さん、大丈夫ですか?」

「…」

やっぱり返事がない。

先生に伝えようと階段に向かっていると、背後でもぞもぞと物音がしたので振り返ると、例の男の人が目を覚まして立ち上がっていました。

「ここは…?」

「だ、大丈夫ですか?」

詳しい事情は後で聞くことにして、今はこの男性の体調を確認することにしました。

「あの…ここがどこか判りますか?」

「…え?ここはマクロスシティだろ?」

マクロスシティ…?

「…?ここは音ノ木坂学院ですよ。屋上です。」

「お、音ノ木坂学院??何それ?」

もしかして、記憶喪失なのだろうか、と思いつつも、質問を続けることにしました。

「お名前は?年齢なんかも教えてくれると嬉しいんですけど。」

「熱気バサラだ。歳は24だけど、姉ちゃん、音ノ木坂学院って何なんだ?さっきまでマクロスシティの公園で歌ってたはずなんだけどな。」

熱気バサラさん…ね。取り敢えず、怪しい人ではなさそうだし、病院へ連れて行くことにしました。

「ここの近くに病院があるので、そこに行きましょう。怪我してるといけませんし…」

「病院?そんなもん行かなくても、歌ってれば治るさ。助けてくれてありがとう、じゃあな、姉ちゃん。」

バサラさんはそう言うと、柵を飛び越えてどこかへ行ってしまいました。

…え?柵?

慌てて下を覗き見ましたが、彼の姿は見えませんでした。

「ハラショー…」

翌日、練習が休みだったので、希とにこと3人でショッピングに行くことになりました。

「ったく、あのお店、品揃え悪すぎない?折角この矢澤にこ様が買い物に行ってるって言うのに。」

♪未来が俺たちを呼んでる

「そんなこと言ったって、無いものは仕方ないやん?」

♪ぐずぐずしてるヒマはない

「希!このにこ様が満足できるような店をカードで探してよ!」

♪Ooh baby, baby, baby, baby ついてこい

「どうしよっかなぁ~?にこっちがワシワシさせてくれるなら考えてもええけど~?」

♪一緒に出かけよう

「くぅぅ…こ、今回は我慢するわ!そうだふたりとも、お昼ごはんにしない?」

ストリートミュージシャンかな?いつもはあまり気にすることはなかったのですが、この時は否が応でも反応せざるを得ませんでした。

「そろそろいい時間やし、そうする?えりちは何が食べたい?」

だって、昨日のあの人の声だったから。

マクロス7か
期待

人だかりに向かって、おもむろに私は走りだしました。

きっと、彼にもう一度会わないと一生後悔する。そんな気がして。

「ちょ、えりち?どうしたん?えりちーっ!」

「待ちなさいよ、絵里!」

希達の呼びとめる声も気にせずに、私は人だかりの中に入って行きました。

「I CALL YOUR NAMEだ。ありがとう。」

曲が終わると、大きな歓声と拍手が沸き起こりました。

「次の曲、ON THE WIND。」

♪悲しい時もある

♪抱きしめたい時もある

この人の歌を聞いていると、とても心が落ち着くのが分かる。

>>8
ありがとう
ゆっくりだけど頑張ります

まるで恋する乙女みたいだな、と思いながら歌を聞いていると、希達が追いついたようで、私に話しかけてきた。

「この人の歌、すごいなぁ。えりち、一目散に走っていったけど、知り合いなん?」

「昨日出会ったばかりの人よ。うちの学校の屋上で倒れてたわ。」

我ながらすごいことをさらっと言ったなと思いつつも、事実なのだからしょうがない。

「た、倒れてたですってぇ!?うちは女子高なのに!?」

にこが驚くのも無理は無いなと思いつつ、もう少し詳しく説明することにした。

「昨日、筆箱を取りに行ったじゃない?その時になぜか屋上で倒れてたのよ。屋上からジャンプして帰っていったから、心配してたんだけど無事だったのね。」

うん、詳しく言えば言うほどワケがわからないわ。

「スピリチュアルやわ…」

「絵里、いつの間にキャラチェンを…」

「そんなんじゃないって!本当に倒れてたのよ!」

♪あの風が吹いてくる

「ありがとう、また歌いに来るから、その時もよろしくな!」

彼が歌い終わると聴衆は去って行きましたが、私は残って話を聞いてみることにしました。

「あ、あの!」

「…?あ、昨日の姉ちゃんか。そっちの2人は?」

「東條希です。」

「矢澤にこよ。」

2人が名乗り終わると、彼は私を指さしてきました。

失礼ね…。

「姉ちゃんの名前は?」

あ、そういうことだったのね。

「私は絢瀬絵里です。バサラさん、昨日は大丈夫だったんですか?」

「大丈夫じゃなかったらこんなとこで歌ってないだろ。見ての通り、ピンピンしてるぜ。」

私に続いて希が質問を投げかける。

「あなたは一体どこから来られたんですか?うちの学校の屋上で倒れてたって聞きましたけど…」

夕食なので一旦離脱します。

浮上。
読んでくれてる方がいるとわかって、安心しました。
一応最後まで書ききってはいるのですが、微修正をしながら投稿しますので少し遅くなります。
一応本作の設定を書いておきます。

・バサラは"D7"終了後の時代からやってきた。
そのため、バサラの年齢は本編では21歳と設定されているので、今作では24歳としました。
・"μ's世界"は設定などはアニメ本編と同じですが、平行世界とします。

それでは続きをどうぞ。

それを聞くと、彼は不思議そうな顔をしてこう答えました。

「どこ…って、マクロスシティってとこで歌ってたはずなんだけど、気づいたらあそこで寝てた。あそこって学校だったんだな。」

マクロスって何だろう。昨日もそんなことを言っていた気がする。

そんな事を思っているのに気づくはずもなく、彼は続けました。

「ここ、東京っていうんだろ?大昔にあった街のはずなのに、何で俺はいるんだろうな…もしかして、本当に異次元に飛ばされちまったのかもな。」

笑いながらそう言うと、彼は立ち去ろうとしました。

そしてその時、私の胸の中にある思いが生まれました。

さっきと同じ、後悔するかもしれないという思いが。

あの時の私はなんであんなことを言ったのか、まだわかりません。

「私達に歌の指導をして欲しいんです!」

そう言うと、希とにこはもちろん、彼も驚いた顔をしていました。

「歌の指導?」

「はい!私達、スクールアイドルをしているんです。学校の廃校を阻止するために…」

「ちょ、絵里!?何言ってるのかわかってんの?!」

「そうやで、えりち。昨日あったばかりの人にそんな…」

あぁ、言ってしまった。

それでも、この人がいればμ'sは成長できるという、確信があった。

「でも、この人の指導ならきっと…!」

「お断りだ。」

「お願いします!」

「駄目だ。」

「絵里、あんたいい加減にしなさいよっ!こんな無茶言って!」

わかってる。

無茶だし勝手なお願いだってことくらい。

「…わかりました。無茶を言ってすいませんでした。」

それなら、せめて私達のステージを見てから決めてもらおう。

我ながら諦めが悪いなと思いつつ、そう提案してみることにしました。

「3日後、秋葉原でライブをやります。チケットとチラシです。せめて、私達のライブを見て決めてもらえないでしょうか?」

さあ、どう来る?

彼は暫く考えた後、一言だけ言い残すと、姿を消しました。

「…考えとくよ。」

3日後、秋葉原ライブ当日。

私はあの人が来てくれているのかどうか、それが気がかりでした。

(ねぇ、希。あの人来てくれてると思う?)コソコソ

(さぁ…でも、えりちがあそこまでするのも珍しかったなぁ?)コソコソ

(根拠の無い自信…かしら?)コソコソ

(どう転ぶか、ウチは楽しみにしてるわ)コソコソ

一方のリーダー・穂乃果はというと…

「海未ちゃん!あのお店のコーラパン美味しいよ!みんなの分もあるから一緒に食べよう!」

「こら、穂乃果!ライブ前に食事はいけないと何度言ったら分かるんですか…」

「本当だぁ!このパン美味しいね、穂乃果ちゃん!」

「ことりまで…どちらにしろ、私はそんなゲテモノはいりませんっ!(炭酸飲料はニガテです…)」

「えー、美味しいのになぁ…」

相変わらずであった。

それはライブ終盤のことでした。

♪いまここで出会えた奇跡

♪忘れないで 僕たちの奇跡

大歓声の中、アクシデントは起こってしまいました。

「痛っ!てめェ、どこ見てやがンだよ!」

「あん!?何だとこのカスが!」

どうやら、お客さん同士がぶつかってしまい、喧嘩になってしまったようでした。

スタッフさんは気づいていないようで、誰も止めることが出来ませんでした。

すると、どこからともなく歌声が聞こえてきました。

♪お前が風になるなら

そう、私にとっては3度目となる、あの歌声が。

♪果てしない宇宙になりたい

(ねぇ絵里、この声って…)

希とにこも、この声の主に気がついたようでした。

(えぇ。見に来てくれていたのね…)

♪激しい雨音に立ち竦む時は

「とっても安心する声だにゃあ」

♪ギターを掻き鳴らし 心を沈めよう

「えぇ…しかも、歌だけで騒ぎをおさめてるわ…」

♪Come On People 感じて欲しい

「本当に…すごいです」

1年生たちも驚いた様子を隠し切れないようでしたが、彼の歌に心を打たれていたようでした。

♪今すぐわからなくていいから

「この歌、本当にすごいね…」

♪Come On People 命の限り

「穂乃果もそう思いますか?」

♪お前を守り続ける My Soul For You

「うん。私、この人に歌を習いたいくらいかも。」

歌い終わると、彼はこう言いました。

「おい、お前ら!ここは彼女達のステージだ。邪魔するって言うならさっさと帰りな。」

騒ぎを起こした2人は渋々、元の席へと戻って行きました。

彼が歌っていた場所を見ると、そこに彼はもういませんでした。

「じゃ、じゃあ次の曲!ユメノトビラです!」

その後は大きな騒ぎもなく、ライブは終わりました。

私がライブ会場から出ると、人影に気が付きました。

最初は関係のない人かな?と思っていましたが、よく見るとそれはバサラさんだということに気づきました。

「今日はありがとうございました。」

「気にすんな。俺は人のステージを邪魔する奴が気に入らなかっただけさ。」

「それにしても、歌だけで喧嘩を止めるなんて。本当にすごいです。しかもアカペラだなんて…」

そう、彼は本当に自らの声だけで喧嘩を止めていたのです。

「あの、それで…」

「歌のコーチの件か?それなら受けるよ。今日のライブで、お前たちの本気が伝わったぜ。」

「本当ですか!?」

「ガラじゃないけど、たまには…な。」ボソッ

「どうかしました?」

「なんでもねーよ」

翌日の練習時間を伝え、その日は彼と別れました。

明日の仕事が早いので今日はここまで。
明日は18時くらいには浮上できるかな?
読んでくれている方、ありがとうございます。
おやすみなさい。

どうも、こんばんは。
帰宅しましたので続きを投下していきます。
夏に暑苦しいスレですんませんwwww
ただ、今回のバサラはそんなに暑苦しい感じではないです。

では、どうぞ。

翌日、まずは彼の紹介から始めることにしました。

「こちら、熱気バサラさん。昨日のライブの時に騒ぎを収めてくれた方よ。」

「よろしくな。」

すると、直接会うのははじめてだった1年生と2年生は目を輝かして、次々に質問を投げかけはじめました。

「ちょっと待ちなさい!自己紹介が先でしょ!」

流石の彼も困惑した様子だったので、一先ずメンバーに自己紹介させることにしました。

「2年生の高坂穂乃果です!μ'sのリーダーやってます!」

「園田海未です。作詞とレッスンの構築を担当しています。」

「南ことりです♪衣装作りをしています!」

「1年生西木野真姫よ。作曲を担当してるわ。」

「星空凛だにゃ。」

「小泉花陽です。」

「後は私、希、にこの合わせて9人で活動しています。」

ひと通り自己紹介が終わると、順番に質問を投げかけはじめました。

「あれ?希ちゃんとにこちゃんは知り合いだったのかにゃ?」

「こないだ出会ったんよね~」

屋上で倒れてたっていうのは伏せておくことにしました。

「質問はもういいかしら?それじゃあ練習を…」

「いや、今日はもう帰る。」

「え!?なにか失礼なことでも?」

「そんなんじゃないけどよ、今日は用事があるんだ。」

「そうですか…それじゃあ、明日は9時から練習をしますので。」

「あぁ、わーったよ。」

…割と自由人なのかしら。

「バサラさん帰っちゃうの?残念だなぁ。」

「無理を言ってはいけませんよ、穂乃果。」

「ま、明日からの練習ではこのにこ様の歌を聞いて驚くでしょうね!」

「なにそれ、意味分かんない。」

「なんですって!真姫、それってどういう意味よ~!」

「そのままだけど?」

「覚えておきなさいよ、真姫!」

にこと真姫は相変わらずね。

翌日、彼は1時間ほど遅れてやって来ました。

理由を聞いてはみたものの、特に回答は得られず…

そんなことを気にしていてもしょうがないので、早速歌の練習に入ることにしました。

「「「よろしくお願いします!」」」

彼が私達に課した練習は驚くようなものでした。

「とにかく歌え」

そう、たったそれだけ。

あの穂乃果が聞き返すくらいでした。

「え?とにかく歌う…ですか?」

「あぁ。大事なのは技術じゃなくてハートなのさ。俺の歌を聴け、ってな。」

「わかりました!じゃあ皆、とにかく歌おう!!」

それから、彼は私達に対して指導といえる指導はせず、ただ只管に私達の歌を聞いているだけでした。

彼によるコーチ(?)が始まってひと月が経とうとしたある日、私達のもとに1件のライブ依頼が舞い込んできました。

内容は、秋葉原にあるお店の20周年記念ライブというもの。

秋葉原のメインストリートを封鎖して、私達が歌うという今までにないほど大きなライブでした。

それを彼に伝えると、一言だけ。

「いいんじゃねーの?」

この時の私達は、まだこのライブがμ'sとして最も印象深いライブになることを知りませんでした。

それと同じ日、海未が私のもとに1冊のファイルを持ってきました。

「海未、これはどうしたの?」

「どうやら、バサラさんが部室に持ってきたもののようなのですが、バサラさんに聞いても好きにしろと一点張りで…」

好きにしろ、とはどういう意味だろう。

「真姫がピアノを弾きたい、と申し出てくれました。今度のライブで歌うというのはどうでしょう。」

「そうね、折角バサラさんが持ってきてくれた曲だもの。」

しかし、その曲はメンバーの誰も知らない曲で、聞いたことがある人もいませんでした。

ライブを2週間後に控えたある日、私は1人で秋葉原の街を歩いていました。

すると、バサラさんの後ろ姿が見えたので追いかけてみることにしました。

人影のない路地に入ったかと思うと、誰かと話す声が聞こえてきました。

「またお前か…飽きない奴だな。」

一方はバサラさんの、もう一方は聞いたことのない声でした。

「アニマスピリチア、貴様を狙うのはもう止めることにしたよ。μ'sとかいうアイドルとつるんでるらしいけど、彼女達のライブがあるんだって?」

「一体どうするつもりだ?」

「人間を失望させるなんてことは意外と簡単でね。そのライブには2万人来るんだろ?2万の負の感情があれば俺には充分だな。」

「ま、ライブを中止にでもさせればいいかな?じゃあな、アニマスピリチアさんよ。」

それを最後に、会話が聞こえてくることはありませんでした。

それにしても、アニマスピリチアとは何だろう…。

それに、負の感情とかライブを中止にさせるとか言っていたのも気になります。



翌日、私は昨日のことをバサラさんに聞こうとしたのですが、はぐらかされてしまい、聞くことは出来ませんでした。

このことも気になっていましたが、ライブまで2週間ということもあって毎日が忙しくなり、次第にそのことは記憶から消えていきました。

そして、ライブ1週間前のこと。

その日の練習が始まる前に、私は生徒会室で穂乃果の仕事の手伝いをしていました。

「穂乃果も改めて考えると大変よねぇ、μ'sのリーダーと生徒会長を兼ねるなんて。私よりもよっぽど大変だと思うわ。」

「そうかなぁ?絵里ちゃんも希ちゃんたちが手伝ってくれてたんでしょ?私も海未ちゃんやことりちゃんが手伝ってくれるから大丈夫だよ!」

穂乃果はやっぱり強いわね。

2人に本当に大切にされてるのがよく分かるわ。

「じゃあちょっと休憩にしよっか!絵里ちゃん、よかったらこの揚げまんじゅう食べてね。穂乃果が作ってきたんだよ!」

「ありがとう、いただくわ。」

流石、天然タラシ、恐るべし。

「バサラさんって不思議な人だよね。」

「そ、そうね…」ギクッ

「歌も上手だし、楽器も弾けるなんて、穂乃果憧れちゃうなー。真姫ちゃんにピアノを習ってみようかな?」

「穂乃果ならきっとすぐに上達すると思うわ。」

「ありがとう、絵里ちゃん!」

笑顔が眩しすぎるわよ、穂乃果。

そして、いよいよライブ当日。

バサラさんは2日前から姿を見せなくなっていました。

チラシとチケットは渡してあるし大丈夫かな、と思いつつ、リハーサルを行っていました。

予報によると、今晩は雲ひとつない晴天。

いいライブになりそうだな、と思っていました。

結果的にはそうなったわけなのですが…。

「バサラさん、最近来てくれてないよね…何かあったのかな?」

「きっとサプライズでも用意してくれてるんだよ、凛ちゃん!」

「それに、例の曲もあるしね。」

「なるほど!じゃあ今日のライブは絶対に成功させないとね、かよちん!真姫ちゃん!」

さて、そろそろ本番ね、気を引き締めて行きましょう、絢瀬絵里!

「μ'sの皆さん、スタンバイお願いします!」

「「「はーい!!」」」

「それじゃあみんな、今日はがんばろう!」

「「オー!」」

(最高のテンションから失望に叩き落とされる時のエネルギーはおいしいんだよねー…もう少し待つことにしよう)

「ありがとうございました!それでは次の曲、Wonderful Rushです!」

穂乃果のMCから次の曲へと移ろうとした時、突如雷が鳴り始めました。

「どうして?今日は快晴のはずじゃ…」

今日は確かに快晴の予報でした。

しかも、どう考えてもにわか雨の風の強さではありません。

「絵里ちゃん、どうしよう…」

「落ち着きましょう、穂乃果。取り敢えず、やむのを待って再開という形にしましょう?ライブも中盤だし、1時間くらいなら待っても大丈夫なはずよ。」

現在時刻は午後8時、会場は午後11時まで借りているので、午後10時にライブが終われば十分間に合います。

お客さんには屋根のある場所に避難してもらい、私達も控室で天気の回復を待つことにしました。

しかし、午後8時50分になっても雨が止む気配は一向にありませんでした。

すると、スタッフさんが大慌てで控室に飛び込んできて、一言。

「外で人が歌っている!」

最初はメンバーの誰も状況が理解できずにいました。

この雨風の中、歌っている?

きっと、理解できる方がおかしいくらいでしょう。

舞台袖からそっと様子を見に行くことにしました。

すると、そこで歌っていたのは私達のコーチ--熱気バサラさんでした。

♪心は変わる

「バサラさん、歌ってるねぇ…えりち?」

♪景色と同じように

「ハラショー…一体どういうつもりなのかしら…」

♪仕方ないのさ

「絵里ちゃん、止めなくてもいいのかな?」

♪神様なんて どこか気まぐれだから

「ことり、きっと何か意味があるはずよ?」

♪アテにするなよ

「そうなんでしょうか…?私にはただ雨の中ギターを弾いて歌っているようにしか見えませんが…」

この時のメンバーに私を含め誰にもその意図を理解できた人はいませんでした。

「海未…」

ファンの人達も騒ぎを聞きつけたのか、続々と客席に戻ってきています。

しかし、決して彼の邪魔をしないように。

皆が彼の歌を聞いていました。

すると、彼は私達が見ていることに気づいたのか、間奏中に一言、こう言いました。

「歌え!」

…?

「歌えって言われても…どうするのかにゃ?」

すると、穂乃果は意図を汲んだのか…

「歌おう!皆さん、聞いてください!"愛・おぼえていますか"」

夕食なので離脱します。

再開します。

(穂乃果、その曲はもっと後じゃ?)ヒソヒソ

(バサラさんはきっとこのためにこの曲を用意してくれたんだよ、絵里ちゃん。)ヒソヒソ

この為…と言われても…ねぇ?

♪今、あなたの声が聴こえる

♪「ここにおいで」と

♪寂しさに負けそうな私に

♪今、あなたの姿が見える

♪歩いてくる

♪目を閉じて 待っている私に

♪昨日まで涙で曇ってた

♪心は今…

すると、私達の目の前に男の子が現れたかと思うと、突如苦しみ始めました。

「くっ…熱気、バサラめ…まさか、こ…んな…」

♪おぼえていますか

この歌を歌っている時、まるで私達に別の人がとり憑いたような、不思議な感覚に陥っていました。

♪目と目があった時を

おとぎ話みたいですが、あの時の私達には本当に神さまのようなものが味方してくれていたのだと思います。

♪おぼえていますか

そして、この歌。

♪手と手が触れ合った時

私達の曲にはない雰囲気に満ち溢れていました。

♪それははじめての

まるで、二度と触れられないような…

♪愛の旅立ちでした

もう一度触れてしまうと、脆くも崩れ去ってしまうような。

♪I love you so…

そんな雰囲気の曲でした。

私達が歌い終わると、男の子の姿はありませんでした。

男の子は姿を消したものの、バサラさんは歌い続けていました。

「穂乃果、私達も歌いましょう!」

真姫が次の曲を歌おうと穂乃果に提案しましたが、穂乃果はその提案を拒みました。

「バサラさんを信じよう?真姫ちゃん。」

♪ANGEL VOICE

♪感じたのさ はるかな胸の鼓動

♪リズム あわせて やっとこの場所でふたり出逢えた

♪お前のその姿 この目に焼き付ける

♪ヘヴィーな夜にも きっと力与えてくれる ANGEL VOICE

「まるで、天使の声ね…」ボソッ

私が不意に漏らした一言でしたが、メンバーに聞こえていたようで、皆が頷いていました。

不思議なことに、彼が歌い終わるとそれまで降っていた雨風が嘘のようにやんでいました。

彼の歌が天気を変えた…?まさか、ね。

ライブは大盛況のうちに幕を閉じました。

2回もバサラさんに助けられたことになります。

ライブ翌日、私は練習前に彼を部室に呼び出しました。

「バサラさん、昨日はありがとうございました。ところで、昨日の男は一体何者だったんですか?」

「気にすんな。あの男のことも気にすることじゃねーよ。」

またはぐらかされてる気がする…

今日はもう少し食い下がってみることにしました。

「バサラさん、あなたは一体何者なんですか?とても普通の人だとは思えません。」

「何者って…ただの歌手だよ。歌い時に歌う、それだけさ。」

すると、『μ'sへ』と書かれた封筒に入った手紙を私に渡しました。

「これは?」

「俺は今日この街を出る。俺から皆へのせめてもの礼さ。」

この街を出る…?

そんな、急に…

「今日…ですか?」

「あぁ。短い間だったけど、世話になったな。他の奴らにもよろしく伝えといてくれよな。」

そう言うと、彼は部室から出て行きました。

急いで追いかけたものの、結局追いつくことは出来ませんでした。

「えっ!?バサラさん、この街を出て行っちゃったの?穂乃果、まだお礼言えてないよ…」

「えぇ…彼からμ'sの皆へ手紙を預かっているわ。穂乃果、読んでくれる?」

「うん…」

その手紙には、μ'sのメンバー1人ひとりの歌の改善点が書かれていました。

あんな風でもしっかりと聞いていてくれていたのです。

『手紙なんてガラでもねーからもう終わりにするよ。
俺にとっても有意義な時間だった。
次はステージで会おう、同じ歌手として。
じゃあな。』

なんともぶっきらぼうな締めとともに手紙は終わっていました。

彼とはもう一度、どこか出会える。

私は今でもそう思っています。

熱気バサラ。

彼はきっとこの宇宙の何処かで歌い続けていることでしょう。

絵里「天使の声」


お付き合いいただきありがとうございました。
質問等あればどうぞ。
気が向けば後日談的なものを投下したいと思います。

読みたい人いるのかなぁ…

どうも。
続編はぜひ書きたいと思います。
今晩、1レス分だけですが、おまけを投下します。

>>28
キャラ名、場所名(マクロスシティ)出てるんだからggrks
そもそもコレでマクロスとのクロスだと判らない方が少数だと思うけどな

>>55
ですよねぇ…
マクロス感を出すのが難しく、こればかりは描写力不足を痛感せざるを得ませんでした(´・ω・`)
次回からはもう少しわかりやすく表現したいと思います。

おまけを投下したいと思います。
明日にはhtml化の依頼を出します。
読んでくださった方、コメントをくださった方、ありがとうございました。
次回作でお会いしましょう。

【後日談のようななにか】

高坂穂乃果です!

μ'sのリーダーやってます!

今日はお友達の海未ちゃんとことりちゃんとお買い物に来ています。

だったのですが、2人とはぐれちゃいました…。

「はぁ…電話もつながらないし、メールも返ってこない。どうしようかな…」

歩道のベンチに腰掛けていると、どこからともなく歌声が聞こえてきたので、歌声のする方に行ってみることにしました。

すると、人だかりを見つけました。

一番前に出ていると、中学生くらいの女の子が

『ツンツン頭の歌バカを探しています。
ご存知の方は教えて下さい。』

という看板をギターボックスに立てかけて歌っていました。

…どちらかというと、穂乃果はこの子のピンク色の髪の毛ときわどい服装のほうが気になるんだけどな!

本当に終わり!

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