騎士「甘美な蜜滴る洞穴」 (26)
ザッ…ザッ…ザッ……!
騎士「……来たか!」
騎士「ここまで霧が深く、なんと凶悪な魔物の多いこと……」
騎士「いかにも、な雰囲気を醸し出している。間違いない…!」
騎士「倒すべく敵! "魔王"はここに居る……!」
騎士「しかし、随分と深そうな洞窟だ」
がさっ… ボッ!
[騎士は松明に火をつけた]
騎士「……よし、松明の準備は完了した」
騎士「ふっ、首を洗って待っていろよ……!」
ザッザッ…
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[洞穴内部]
かちゃん… かちゃん…
騎士「……足音を立てまいとするも、やはり甲冑では音が響き過ぎるか」
騎士「いっそ、こんなもの脱いでしまおうか」
騎士「……いや、やはりそれは愚直か」
────っ!
[騎士は敵を察知した!]
騎士「誰かそこの陰に居るなっ!」
オーク「グオオっ!」
騎士「オークか……!」
騎士「下等な生物めっ! 向かってくる度胸は誉めてやるが!」
オーク「オオオっ!」
スパッ
オー「ぐ……」
ク「お……?」
騎士「ヒトに勝てるのは千年早いのだ!!」
オーク「────」バタリ
騎士「……ふぅ」
すちゃっ…
[騎士は剣を鞘に収めた]
騎士「敵は大したことないな。どんどん先へ進もう……」
騎士「一刻も早く、世界に平和を……!」
騎士 (平和を……。)
かちゃん… かちゃん…
[洞穴中部]
騎士「……まだか」
騎士「大分歩いたが、まだなのか……? 魔王のもとへは」
騎士「それに、不気味過ぎるほど静かだ。魔物もあのオークしか居なかった……。」
騎士「……。」
騎士「まさか、ここには居ないのか……? 著名な占い師に聞いて来たのに……!」
騎士「……いやいや、引き返すのはまだ早い」
騎士「一度、最果てまで行ってみよう」
かちゃん…
[騎士はまた立ち止まって、目の前を見つめた]
騎士「っと、気付かなかった。これは……宝箱か?」
騎士「どれ、これも旅の神の恩恵。開けて頂くとしよう」
ぎぃぃ…
[騎士は宝箱を開け放った……!]
騎士「うわっ!」
ピカーッ!
[中から眩い閃光が溢れ、騎士の眼を覆う!]
騎士「わっ……罠だったか!?」
[騎士はまだ眼を開けていられない!]
騎士「うぐっ、そろそろ眼を開けてもいいか……。」
騎士「……。」オソルオソル
[まだ不鮮明だが、騎士は僅かに見える視界で辺りを見渡した]
騎士「なっ……。」
騎士「何も無いではないか、脅かしやがって! この宝箱風情が生意気なっ!」
騎士「……しかし、迂闊だった。今のが起爆する物だったら、視界を奪った上に魔物を呼び寄せる物だったら」
騎士「今、ここに立っていられなかったやもしれない……次は気を付けよう」
騎士「さて、いくか……っと」フラフラ
騎士「お、足元がおぼつくな……回復しきっていないのか?」フラフラ
騎士「……それに、ああっ、な…何だか意識が……そんなっ」
騎士「あっ……!」フラフラ
ばたり
[騎士は倒れてしまった]
騎士「」
すたすた…
サキュバス「わっ! 何となく仕掛けた罠に獲物がかかってるじゃん!」
サキュバス「きゃはっ! 間抜け! 抱腹絶倒とはこのことね!」
サキュバス「記念に持ってかえろうっと!」
サキュバス「……っしょっと」
[サキュバスは騎士を背負った]
サキュバス「何か面白いし、魔王様にもみせよーかなー!」
[洞穴の最果て]
ばんっ!
[サキュバスは大袈裟な大扉を騒々しく開け放った!]
サキュバス「へい、魔王さ────
魔王「ゆあふぁっかー!!」
サキュバス「……へ?」
魔王「だーから、いつも言ってるでしょう! 扉はノックしてから開けろって!」
魔王「貴女の脳みそは糞ポンコツで、どうしようもない粗悪品ですね! 糞と一緒にお便所で流されてきなさい!」
サキュバス「あうっ……。」グサッ
サキュバス「や、それより!」
魔王「話を変えましたね」
どさっ
[サキュバスは騎士を魔王の目の前に差し出した]
サキュバス「これ、面白くないですか? 今どき宝箱ドッキリに引っ掛かった人間ですよ!」
魔王「はぁ。まーたゴミを持ち帰ったのですか……ふぁっく!!」
魔王「はぁーあっ……! イラッイラッします!」
サキュバス「あっ、もしや魔王様……?」
魔王「何ですかアバズレ」
サキュバス「も、もしかして"アノヒ"ですか? 機嫌が悪くなってついつい同居人に当たってしまう……例の……。」
魔王「ふっ」
魔王「そうですね。魔王軍に貴女がいる限り、私は年中生理ですね! ふぁーっく!!」
サキュバス「いや、軍って言っても……あたしと魔王様とオークだけ、ですよね……?」
魔王「くーっ……!」ワナワナ
魔王「もう、うるっっっっさいです!」
魔王「いいからこの"ゴミ"を早く処分して────
騎士「ゴミ……とは、随分な言い様だ」
サキュバス「起きるの早くない……?」
魔王「死んでなかったのですね……うわ、面倒」
かちゃっ!
[騎士は素早く起き上がり、剣先を魔王と呼ばれた少女へ向ける]
騎士「……それで今の話、聴かせて貰った」
魔王「えっ?」
サキュバス「魔王様が年中生理って……?」
魔王「はーっ!? 誰がそんなこと言ったんですか!? 遂に耳まで可笑しくなったかビッチめ! 死んで産まれた事を償え!」
サキュバス「うにゅっ……。」グサッ
騎士「ち、違うっ!」
騎士「貴様が"魔王"なのだろう……?」
騎士「我らがヒトの敵であるっ! 魔物の長っ!」
魔王「……。」
サキュバス「……。」
騎士「どうした、恐怖で言葉も出ないか? 今からお前はこの剣で死ぬのだぞ!?」
騎士「そして冥界でヒトの繁栄していく姿を、指をくわえて見ていればいいっ!」
騎士「あーっはっは────
魔王「……。」
ぶちっ
騎士「ぶ、ぶちっ?」
[何かがキレた音がした!]
サキュバス「それ以上"魔王様"を愚弄すると……ぶっ殺しますよ……?」
騎士「……!」
騎士 (こいつ、今まで会ったことのないタイプの魔物っ!)
サキュバス「魔王様、あたしが殺っちゃっても?」
魔王「……むしろ殺らなかったら私が貴女を殺します」
サキュバス「ふふっ。見ててください魔王様……!」
騎士 (強いぞ……こいつっ!)
ばっ!
[サキュバスは翼を広げ騎士に襲い掛かった!]
騎士 (きたっ!)
[騎士は剣を強く握った]
本日はここまで
展開がブレッブレだけどそれは初心者だからね、しょうがないね
ホモ要素は勿論ないです
なんでホモ描写を書く必要があるんですか
蜀埼幕
サキュバス「うらァ! あたしのカラテを喰らえい!!」
騎士「ぐっ、剣相手に拳をさらすとは愚の骨頂!」
騎士「お前は魔王の前哨戦としてくれる! そりゃっ!」
スパッ…
[騎士の剣は虚空を切り裂いた!]
騎士「なっ……!?」
サキュバス「ふふん、なーんちゃって!」
サキュバス「そのままあたしが"真っ正面"から来ると思ったの? 馬鹿なのかなー!? 死にたいのかなー!?」
サキュバス「答えは灼熱の炎の中で……聴かせてねっ!」
ボォッ!
[サキュバスは身を震わせて口から灼熱を吐いた!]
騎士「ぐああッ!」
騎士 (な、なんて熱さだ……! このままでは死んでしまう!)
サキュバス「くふっ……くふふ!」
サキュバス「ねえねえ、熱い? 熱いよね!? くふ、久々にニンゲンが焦げる匂いを嗅げてさあ、あたしは!!」
サキュバス「体の芯から沸騰してるよォ!?」
[サキュバスは不敵に笑っている]
騎士「くそっ、いい気になるな!」
騎士「この身を焦がされようとも……ヒトの心までは焼き尽くせないッ!」
騎士「……うおおおおーッ!」
[騎士は全身に力を皆切らせた!]
サキュバス「へぇ。何? 焼かれながらも向かってこようって?」
騎士「うらァ!」
サキュバス「……笑わせなんなって」
[騎士の攻撃!]
[しかしひらりと身をかわされて…]
サキュバス「とっととくたばれっ!」
騎士 (や、殺られる!)
魔王「ストップ。止まりなさい、糞ビッチ」
サキュバス「えっ?」ピタリ
騎士「────っはぁ! はぁ……!」
騎士 (今のが……死の恐怖か……!)
サキュバス「何故止めるんですか!?」
魔王「興奮しないでください。そして、よくあのニンゲンの鎧を見るのです」
サキュバス「……鎧?」
チラッ
[騎士の鎧には胸の位置に家紋が掘られてある]
サキュバス「あっ!」
魔王「分かりましたかポンコツ? こいつこそ私らが必要な"素材"……」
魔王「"勇者"、なのですよ」
魔王「ただのニンゲンじゃあ断じてないッ!」
サキュバス「そ、そうとなれば生かしておかないと!」
魔王「はい。殺しあってる場合では無いのです、事は急を要する……って分かってるかアバズレ?」
サキュバス「はい! 早急にこいつを縛り上げて投獄します!」
騎士「な、なんだ……こ、殺さないのか?」
サキュバス「さっきとは違って随分弱気……。」
騎士「くっ、悔しいがやはり魔物は強かった……そして、己が弱すぎた」
サキュバス「あ、その辺分かってくれた? 魔物とニンゲンの絶対的な力量!」
騎士「……だがヒトは抗う!」
がちゃん!
[サキュバスは牢の門を開け放った]
サキュバス「まあどうでもいいからさ、さっさと入ってよ。儀式の準備をするから」
騎士「儀式?」
サキュバス「そ。あたしらは勇者を生け贄に魔界から援軍を呼ぶの! 勇者の強大な精霊の力を利用してね!」
サキュバス「いやー、馬鹿が勇者で良かった!」
騎士「……。」
騎士 (欲に負けた……己の、過失だ)
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