千早「眠り姫殺人事件?」 (52)
美希「千早さん!」ダキッ
千早「きゃ?どうしたの美希?」
美希「えへへ千早さんと久しぶりにお仕事できてうれしいの」
千早「そうね海外のレコーディングもあったし2週間ぶりくらいかしら」
美希「だからね今まで千早さんがいなかった分いっぱいお話したいな」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1402042249
春香「ちょっとぉ美希ぃ。私もいるんだけど」
美希「春香はいつも生っすかで一緒だったから別にいいの」
春香「なんですってーこのー」ダキッ
美希「きゃーなのー」
P「おいおい狭い車なんだ危ないからおとなしくしてろよ」
3人「はーーい」
私たち3人は特番収録のためロケ地に向かっています
カーブの多い山道を車で走ること4時間
見えてきたのは古風のお屋敷
庭園にはすでに何人かのスタッフが集まっていました
春香「何してるんですか?」
スタッフA「あ、天海さん」
スタッフB「ちょっと珍しいものがあって」
千早「ポスト?こんなところに?」
A「はい、ここって携帯が通じないんですよ」
A「はい、ここって携帯が通じないんですよ」
美希「ホントだ。圏外になってるの」
B「だからここの管理人さんが外部との連絡が取れるようにって設置したんですって」
千早「ふーんじゃあここは本当に陸の孤島なのね」
A「いえ固定電話はあるそうなので緊急時には連絡できるそうですよ」
B「でもほとんどの人はこのポストに手紙を入れてるって話です」
千早「まあもともとここは人目につかずゆっくりしたいって人たちのためにつくられたみたいなので積極的に誰かと連絡とることはないと思います
美希「でもおもしろそうなの」
A「ですよね。私たちも後で投函しようと思ってたんです」
B「よかったら星井さんもどうですか?はがきとかけっこう余っちゃったんですよ」
美希「いいの?ありがとうなの」
P「おーいそろそろ行くぞ!」
美希「はーいなのー」
春香「それじゃ今日はよろしくおねがいしますね」
AB「はいこちらこそよろしくお願いします」
P「もうあいさつは済ませたか?」
千早「ええさきほどスタッフさんに」
春香「でも監督さんはまだだよね?」
美希「あの監督さんおもしろいからミキけっこう好きかも」
監督「おっ嬉しいこといってくれるじゃない」
春香「あっ監督さん」
P「すみませんあいさつが遅れてしまって」
監督「気にしない気にしない俺たちも今到着したばかりなんよ」
3人「監督さん今日はよろしくお願いします」
監督「元気いーねよろしく頼むよ」
監督「ん?」
P「どうかしましたか?」
監督「同じ香水つけるたぁ765プロは仲いいんだなあ」
監督「そこが他の事務所にはないお前らのいいとこだからな。仲間は大切にしろよ」
スタッフ「監督すいません来てください」
監督「おうじゃあまたな」
千早「ねえ春香?香水つけてるの?」
春香「ううん今日は何もつけてないよ」
P「でも柑橘系のいいにおいがするぞ」
春香「ちょプロデューサーさんそんな近くで嗅がないで」
美希「もしかしてミキの香水かも」
千早「美希の?」
美希「うん今日おろしたての新品でミキにぴったりと思ったの」
春香「うんすごい美希らしくてキラキラしてて惹きつけられるよ」
美希「あは♪ありがとうなの
スタッフ「765プロさん衣装の用意ができました」
P「よしそれじゃあ綺麗にしてもらってこい」
春香・千早「わかりました」
美希「うんと綺麗になってくるからちゃんと見ててよねハニー
P「千早」サワッ
千早「きゃ!」
千早「ってプロデューサー急にお尻触るのやめてもらえます?」
P「事前に言えば触ってもいいのか」
千早「そういうことじゃなくて」
P「はは悪い悪い」
P「で何か問題があったのか?」
千早「実は美希が…」
美希「だーかーらーミキ的にはメイクはこうしたほうがいいって思うな」
メイク「素人にはわからないだろうけどここはこうしたほうが見栄えがいいのよ」
美希「ふーんミキは素人でお姉さんはプロってわけね」
メイク「当たり前じゃない」
メイク「何年この仕事やってると思うの?」
美希「だったらお仕事中なのにどうしてそんなに眠そうな顔しているの?」
メイク「なっ!?」
美希「そんな眠そうに仕事されちゃったらてきとーにお化粧されてる気がしてイヤ」
メイク「仕方ないじゃない!こっちは仕事のストレスで眠れないんだから!」
美希「うーんストレスで寝れないってのは良くわかんないけどミキもうつらうつらして眠いときはいっぱいあるよ」
美希「でもお仕事になったらきっちり起きるの」
美希「お姉さんはプロ失格なんじゃないかな」
春香「美希ちょっと言いすぎっ」
メイク「だったら好きにすればいいじゃない!!」
千早「あっ」
春香「こら美希」
美希「ふん。お仕事の途中で帰るなんてやっぱりプロじゃないの」
P「すいません俺ちょっと謝ってきます」
春香「メイクさんすごい怒ってたね」
千早「ええ。荷物も放りっぱなしで出て行くなんてよっぽどね」
春香「美希もあとで謝りなさいよ」
美希「ふんなの」
スタッフ「すいません収録はじめまーす
春香「あわわ時間だ。私たちのメイクどうしよう
千早「そうね女性のスタッフさんも多いから誰かできないか聞いてみましょうか
美希「あっそれなら任せてなの
美希「この前別のメイクさんにお化粧ちょっと習ったからみんなとってもかわいくしてあげるの
監督「カーットォ」
AD「今日の収録はこれで終わりです!お疲れ様っした」
P「おつかれさまですー」
春香「プロデューサーさん」
P「おっどうした3人とも?」
春香「実はプレゼントがありまして」
美希「とにかく食堂に来てなの」
千早「よかったら監督さんやスタッフの皆様もどうぞ」
「おっなんだ?」
「春香ちゃんたちが手料理振舞ってくれるってよ」
「まじか」
「アイドルの手料理とか最高じゃん」
春香「じゃーんどうぞ皆さん席についてください」
P「んんーいいにおいカレーライスか」
千早「はい。3人分担して収録の合間に作ってみました」
美希「ハ、じゃなくてプロデューサーはミキの隣なの」
春香「あっずるいプロデューサーさんはこっちですよこっち」
P「ははじゃあ2人の真ん中で」
美希「はいプロデューサーあーん」
春香「ぱくっ。ううんおいしいー」
美希「春香ちょっと行儀悪いの」
春香「ほらほらプロデューサーさんこっちのカレーもおいしいですよ」
P「いや一人で食べるから良いよ」
春香「ちぇー」
美希「どう?プロデューサーお野菜はミキが切ったんだよ」
P「うん、なんていうか独特の形してるな」
美希「しょうがないの。果物ナイフしかなかったから切りにくかったの」
P「いやいや。食べ応えがあってなかなかいいぞ。それに一番重要な味も完璧だ」
春香「えへへ味付けは私と千早ちゃんとでがんばりました」
P「そうかさすが春香だな。千早も料理上達してるじゃないか」
千早「はい。ありがとうございます」
春香「あのプロデューサーさん。ほめてくれるのはうれしいんですけど」
P「なんだ?」
春香「その、太ももを撫でられるのはちょっと」
P「そうか?でも美希はよろこぶぞ」
美希「いやん。ハニーったらえっちなの」
春香「こら美希っ」
美希「ぷ、ぷろでゅーさーはえっちなの」
千早「ハニー呼びを怒ったんじゃないと思うけど?」
春香「とにかくプロデューサーさんも自重してくださいね」
P「努力はするよ」
監督「いやーまいったまいった」
千早「監督さん」
監督「メイクの奴まだ部屋に閉じこもってるもんだから声かけたんだが」
P「やっぱりだめでしたか?」
監督「ああ。全く監督の俺がわざわざ行ってやってるのに無視と着たもんだ」
P「すみません。うちの美希が」
監督「いやいや気にスンナ。別に初めてなわけじゃないんだ」
春香「そうなんですか?」
監督「世界的なコンクールで優勝したとかで天狗になってるのさ」
監督「で気に食わないことがあるとすぐに拗ねる」
監督「すまないな美希ちゃんあとできつく言っておくよ」
美希「ううんミキもちょっと言い過ぎたかも」
千早「美希?」
美希「カッとなって美希は全然悪くないって思ってたけど」
美希「落ち着いて考えてみればプロ失格だなんて言っちゃいけない言葉だったの」
美希「そのせいで春香にも千早さんにも迷惑かけちゃったし」
監督「いやそう言ってくれて助かるよ」
監督「あいつも美希ちゃんみたいに大人になってくれれば良いんだが」
美希「ううん。ミキはまだ子供だよ」
美希「だからちょっと遅くなったけどきちんとごめんなさいって言ってくるね」
千早「美希すごい成長してるわね」
春香「うん初めて会ったころなんかマイペースで寝てるばかりだったもんね」
春香「でも今はきちんとアイドルとしてプロとしてしっかりしてる」
春香「私たちも見習わなきゃだよね」
千早「ふふそうね」
美希「ふーおなかいっぱいなの」
千早「ええこんなに食べたの久しぶりだわ」
春香「スタッフのみんなも喜んでくれてよかったね」
??「美希ちゃん!」
美希「はあ、またなの?」
千早「美希この人は?」
美希「新人スタッフの小道具さん」
小道具「おっ覚えててくれたんだ嬉しいねえ」
小道具「でやっとデートしてくれる気になった?」
美希「ミキは今、お仕事しているからデートとか遊びの話はしたくないの」
小道具「でも収録終わったじゃん?今の時間ってオフだよ」
美希「しつこいのはキライなの」
小道具「いいじゃん友達もつれてくるしみんなで遊ぼうよ」
春香「分かりました。いいですよ」
美希「ちょっと春香」
春香「でも私ってあなたのことよく知らないから自己紹介してほしいです」
小道具「おっ春香ちゃんは話がわかるねえ。俺は○△美術の小道具だぜよろしく」
千早「○△美術ってあの有名な大手企業じゃなかったかしら?」
小道具「さすが千早ちゃんそのとおり!」
小道具「結構倍率高かったけど親戚の口利きでいれてもらったぜ」
小道具「やっぱり大手だと女の子にもてるし、765プロみたいなかわいいアイドルともお近づきになれるし良いことづくめだわ」
春香「なるほど○△美術ですね。ではこのことは正式に抗議しますね」
美希千早「えっ?」
小道具「は?」
春香「それから監督さんにもお伝えするので明日の朝には帰ってください」
小道具「はあああ?ふざけるのもいいかげん…」
春香「帰ってください」
小道具「………」
春香「………」
小道具「…ちっ このブス共が!」
春香「………」
美希「春香すごいの。ミキが言ってもしつこかったのに」
千早「ええすごい気迫だったわ」
春香「千早ちゃん美希・・・
千早「どうしたの?春香
春香「こ…
美希「こ?
春香「怖かったああ!
千早「ちょっ鼻水と涙で顔がすごいことになってる」フキフキ
春香「だってだって年上の男の人だよ怖いにきまってんじゃん!そりゃ泣くよ」
美希「でもさっきのって?」
春香「演技だよぉ。足なんてがくがく震えそうなの我慢してたんだから」
千早「そういえば春香って最近ドラマの仕事多いわね。それで演技力が上達したのかしら」
美希「演技でもすごい気迫だったの」
P「最近は演技のレッスンを重点的にいれてるからな」
P「ドラマ以外にも役立ってよかったよ」
千早「ってプロデューサーいつからそこに」
P「いやあすまん。美希が絡まれてるから助けに行こうとしたんだが春香にお株をとられたなあ」
美希「もうハニーってばなさけないの」
P「ははそういうなって。監督や○△美術には話しつけてくるから大目に見てくれ」
P「春香もありがとな」
春香「いえ私なんてたまたまですよ」
千早「ところでプロデューサーはなぜここに?」
P「美希がメイクさんに謝るって言ってただろ?」
P「早めのほうが良いと思って呼びにきたんだ」
美希「ハニーも一緒に来てくれるの?」
P「美希一人だったら心配だからな」
美希「美希のこと心配してくれるの?ありがとうハニー」
春香「また喧嘩になることを心配してるんじゃないのかな」
P「あっはっは。気のせいだ」
美希「ハニーがいたら百人力なの」
P「おいおいそんなに引っ張るなよ」
春香「こら美希腕組まないの!」
千早「ふふ二人とも行っちゃたしどうしようか?」
春香「千早ちゃんとの部屋でおはなししたいな」
春香「ずっと海外行っててメールばっかりで直接お話できなかったし」
春香「やっと帰ってきたと思ったら美希にとられるし」
春香「春香さんはとてもさびしかったんですよ」
千早「春香…わかったわ。今日は朝はまで語りつくしましょう」
春香「いや朝までって言うのはちょっと。てか明日も収録だし」
千早「遠慮は無用よ」
春香「どうしよう。千早ちゃん今日一番の笑顔だ」
ごめんなさい春香
そうね確かに海外から帰ってからゆっくり話してなかったわね
大切な親友のためスタドリを飲んでがんばるわ
まどろみの中でさわやかな柑橘の香りがしました
徐々に覚醒していく意識で次に感じたのは寝苦しさです
何かにまとわり付いて身動きができない
まだ眠足りないと訴える重いまぶたを開けて眼を凝らすと
誰かが抱きついているようでした
美希かと思ったけど違うみたい
あのふくよかな胸の感触はないし………くっ
何より頭には可愛らしいリボンがついていました
千早「春香?」
春香「んんーおはよー千早ちゃん」
千早「何で春香がここに?」
春香「あふ。別々の部屋はいやだから一緒に寝ようって覚えてない?」
千早「覚えてるけど確か春香は床にふとんをしいてたような」
春香「でも千早ちゃん寂しいかなと思ってベッドにもぐりこみましたあ」
春香「って朝早いじゃん私二度寝するから千早ちゃんも一緒に寝よ?」
千早「うーん?私はいいから春香はゆっくり寝てて」
春香「何か用事?」
千早「用事ってほどでもないけど歌の練習とか」
春香「練習…?わたしも行く」」
千早「すごい眠そうだけど大丈夫なの?」
春香「だいじょーぶれす」
春香「そうだ美希も呼んじゃおう」
千早「美希はまだ寝てると思うけど」
春香「でも仲間外れるにするとすねるよ」
千早「すねる、かしら?」
春香「最近の美希の千早ちゃん好きはすごいから」
春香「千早ちゃんを見習ってレッスンもがんばってるよ」
千早「そうなんだ。何だか照れるわね」
春香「それに寝起きドッキリってのしてみたかったんだ」
千早「………」
春香「あれっ何であきれ顔してるの?」
千早「はあ、まあいいわ美希のとこに行きましょう」
春香「というわけで美希の部屋の前に来ました」
千早「ねえ春香?」
春香「ではさっそく忍び込んでみたいと思います」
千早「春香ってば」
春香「どしたの千早ちゃん?今良いところだからあとでね」
千早「すっごいノリノリのところ悪いんだけど部屋の鍵持ってるの?」
春香「………」
千早「………」
春香「てへっ」
千早「………さすが春香ね」
春香「あー!今の絶対ほめてないでしょ!?」
千早「扉たたいて美希を起こす?」
春香「朝からご近所迷惑だよ」
春香「美希のことだからきっと鍵を閉め忘れてたりして」
千早「そんな無用心なことしないと思うわ」
ガチャ
春香「あっ」
千早「…開いたわね」
春香「お邪魔しマース」
千早「起こしたらちゃんと鍵かけるように言わないと」
春香「ふふ。よく眠ってるみたい」
千早「なんでベッドに花びらまいてるのかしら?」
春香「ほらよくドラマとかでロマンチックを演出ためにしてるよ」
春香「美希もそれをまねしたんじゃないのかな?」
千早「うーん?美希ってそんな趣味があったかしら?」
春香「ほらほら美希ー朝ですよ」
千早「でも眠り姫って感じで素敵ね」
千早「美希にぴったりかも」
春香「ち、ち、千早ちゃん」
千早「どうしたの?」
春香「美希、死んでる」
泣きじゃくる春香をなだめている間にプロデューサーがいろいろ動いてくれているみたいです
私たち出演者やスタッフは全員食堂で待つようにいわれて待機しています
春香の背中をさすり、なんとか落ち着いてきたのですが今度はスタッフ同士でいい争いが始まりました
メイク「あんたが殺したんでしょ」
小道具「なんで俺が殺さなきゃならないんだ」
メイク「聞いたわよ。あんた星井美希にこっぴどくふられたって」
メイク「その腹いせに殺したんじゃないの?」
小道具「だったらお前だってメイクにけちつけられてプライドが傷ついたんだろ」
小道具「仕事を放り出すくらい怒ったんならお前のほうが怪しいだろ」
監督「いいかげん落ち着け!!」
小道具「監督っ」
監督「今はそれどころじゃないだろ」
P「たった今警察に連絡したが来るのは昼過ぎになるらしい」
P「だからそれまで美希の部屋には入らないこと」
監督「あとこの屋敷から出ないようにって警察からの伝言だ」
スタッフA「だったら部屋で待っててもいいですか?」
メイク「私は反対よ。この中に犯人がいるのは間違いわ。一人になったら殺されるもの」
小道具「自分で殺したくせによく言うよ」
メイク「何ですって!!もういっぺん言ってみなさいよ」
小道具「何回も言ってやるよ!!犯人はお前だ!こいつを一人にしたらまた誰かを[ピーーー]ぞ」
小道具「ここで皆で監視したほうが良いに決まってる」
監督「こいつらもうだめだな。頭きてて周りが見えなてないわ」
スタッフB「いいんですか?」
監督「ほっといたら喋り疲れるだろ。すまんがそれまで我慢しててくれ」
スタッフA「いえ。私たちは大丈夫です」
スタッフA「でも………」チラ
監督「ああすまんな、千早ちゃん。情けない大人ばっかりで」
千早「いえ大丈夫です。春香も何とか落ち着いたみたいだし」
スタッフA「如月さんは大人ね。何かあったら私たちに頼ってもいいのよ」
千早「ありがとうございます」
千早「…さっそくで申し訳ないんですけど春香を見ててもらっていいですか?」
春香「千早ちゃん?」
千早「大丈夫よ。ちょっと外の空気を吸ってくるだけだから」
美希が死んだ部屋
あの部屋には気になることがたくさんありました
でもすぐプロデューサーに追い出されたので詳しく調べることができませんでした
どうして美希は殺されたのか
私に何ができるかわかりませんが、それでも真相が知りたかったのです
美希の部屋に向かっている途中で後ろから私を呼ぶ声がして振り向きました
春香「千早ちゃん待って!」
千早「春香?」
春香「あんなぎすぎすした空気の中、私を置いて行っちゃうなんてひどいよ」
千早「ごめんなさい」
春香「美希のとこに行くの?」
千早「ばれてたのね」
千早「ちょっと確かめたいことがあって」
春香「私も行く」
千早「大丈夫なの?」
春香「たぶん。でも本当に美希が死んだかきちんと確かめたい」
千早「………わかったわ。一緒に行きましょう。
やっぱり美希は死んでいました
呼吸も止まってるし触れてみても体温なんて感じられません
花びらの散らばるベッドで眠るように死んでいる美希はまるで物語りに出てくるお姫様のようでとても
千早「きれい」
春香「えっ?」
千早「あ。ごめんなさい。不謹慎だったわ」
春香「ううん。そんなことないよ」
春香「とってもきれいで美希すごくきらきらしてる」
千早「一体、犯人はどうしてベッドにきれいに寝かせるような手の込んだことしたのかしら?」
千早「花びらまで用意して。普通なら誰にも見られないようにすぐににげるはずよね」
春香「美希のおっかけさんかな?」
春香「ずっときれいでいてほしいって思ったのかも」
千早「こんな山奥までさすがに来れないわよ。外部の人間が犯人ってことはないわ」
千早「………あら?
春香「どうしたの?
千早「この花びら造花だわ。小道具のひとつにあったわよね」
春香「うん。確かロケの終盤でバーーっと降らせるって監督さんが言ってたよ」
千早「管理してるのは小道具さんだったかしら。あとで凶器もないか確認してみましょう」
春香「凶器?」
千早「美希の首筋に何か見えない?」
春香「えっと何かラインが引いてあるみたいにちょっと周りと肌の色が違うかな?」
千早「たぶん縛られた跡」
春香「えっ、じゃあ首を絞められて殺されたの?」
千早「ええ。で、その跡って紐よりも太い線だからベルトみたいなもので縛られてんだと思う」
千早「でも何重にも首に巻いてるみたいだからベルトよりやわらかくてて薄いもの」
千早「もしかしたらそんなものが小道具の中に混じってるかなって思っただけよ」
春香「すっごい千早ちゃん!探偵みたい」
春香「じゃあ凶器が見つかってこの跡にぴったり合えば」
千早「持ち主、あるいは使った人が犯人ってことね」
春香「じゃあさっそく行ってk」
千早「まだ待って。他にも………」
千早「っと。これがさっきから気になってたわ」
春香「机の上?………瓶?」
千早「中身は…」
春香「錠剤がたくさん。これって?」
千早「睡眠剤ね。ラベルに書いてあるわ」
春香「え?美希ってそんなお薬使ってないよね」
千早「ええ。きっと犯人が美希に飲ませたのね」
春香「じゃあ犯人って」
千早「まだ決まったわけじゃないわ。とにかく凶器を探しに行きましょう」
春香「うん。そうだね」
春香「美希騒がしくしてごめんね。ゆっくり眠ってね」
春香が美希の耳元でそうつぶやきました
いつもは喧嘩している二人だけどやっぱり大事な仲間なんだ
私も春香に習って美希のそばで必ず犯人をみつけるから安心してねとつぶやきます
それに答えるように美希のさわやかなあの香水が鼻腔をくすぐったのでした
春香「よーし。それじゃあ犯人探しにいきますよ」
千早「………」
春香「千早ちゃん?」
千早「………」
春香「ど、どしたの千早ちゃん!?顔色真っ青だよ」
千早「は、春香っ」
春香「何でしょう!?」
千早「犯人がわかったかもしれない」
春香「えっ。凶器は?」
千早「すぐに見つかるわ。だから皆を食堂に集めて」
春香「わ、わかった。千早ちゃん無理しちゃだめだよ」
千早「ええ。大丈夫よ」
みんなの視線がつきささります
こんな小娘になにができるという雰囲気です
気づくと手のひらにじんわり汗がにじんでいました
意識していなかったのですがライブより緊張してるみたいです
それでも私は!
P「大丈夫か千早?顔色が悪いようだが」
千早「プロデューサー…はい大丈夫です」
メイク「犯人がわかったって何?探偵ごっこでもするの?」
千早「すみません、私のわがままに付き合ってもらって」
千早「すぐにすみますから」
春香「で千早ちゃん犯人は誰なの?」
千早「お話しする前にひとつ聞きたいことがあります」
千早「小道具さん。この花びらに見覚えは?」
小道具「そ、それはロケで使う花びらだ。もしかしてそれって美希ちゃんの周りにあった花?」
千早「そうです」
メイク「やっぱりあんたが犯人じゃない!」
小道具「ちがう!俺じゃない!」
小道具「確かに俺が道具の管理担当だったが誰でも勝手に持ち出せるんだ。他のやつだ」
メイク「そんなの嘘よ。いいわけはやめて白状したらどうなの?」
千早「落ち着いてください。メイクさん」
千早「彼が犯人の可能性は低いです」
春香「どういうこと千早ちゃん?」
千早「春香。あなた夜中に今日あったばかり男の人を部屋に入れる?」
春香「ええ?そんな無用心なことしないよ」
春香「………あっ」
千早「そう。プロデューサーならともかくスタッフを招き入れるとは思えない」
千早「犯人は女性の可能性が高いわ」
メイク「だったらそのプロデューサーはどうなのよ」
メイク「たったそれだけの理由で女が犯人って決め付けないで」
千早「確かにプロデューサーが犯人の可能性もあります」
千早「でもその前にメイクさん。この睡眠剤に見覚えは?」
メイク「………!!?」
千早「どうやら見覚えがあるようですね」
千早「美希の机の上に置いてありました」
P「美希が睡眠薬を飲んだのか?」
千早「正確には飲ませされたのでしょう」
千早「美希はいつでもどこでも眠れる子でしたから。自分で飲むとは考えにくいです」
P「犯人は美希を眠らせた上で殺したと?」
千早「はい。美希は首を絞められて殺されていました」
千早「それでは意識がなくなるまで時間がかかりその間、激しい抵抗があります」
千早「犯人はそれを嫌って無抵抗の状態で殺したんだと思います」
小道具「だったらお前が犯人か。いつも眠れないと言ってたから自分用の睡眠薬なんだろ
メイク「それは私の薬よ。間違いないわ」
メイク「でも彼女を殺してなんかいない。信じて!
千早「ええ信じます」
P「千早?
千早「昨日の美希との言い争いでメイクさん、かばん忘れて出て行きましたね」
千早「もしかしてそのかばんの中に…」
メイク「ええ。その薬を入れていたわ」
P「つまりこの睡眠薬は誰でも手にできる?」
千早「そうです。もし彼女が犯人なら使った薬ビンは疑われないよう持ちかえるはずです」
千早「持ち物検査されたとしても自分のものだから不自然じゃない」
千早「もちろん裏をかいてあえて薬を置き去りにした可能性もありますけどね」
P「千早、さっきから可能性の話ばかりだがいいかげん犯人を教えてくれないか」
P「まさかまだ犯人の断定ができてないのか?」
千早「すみませんプロデューサー。ここからは可能性ではなく確実な証拠の話です」
千早「さきほど美希の様子を見に行ったとき柑橘系の香水の香りがしました」
千早「監督さん昨日のこと覚えてますか?」
監督「柑橘系の香水?」
監督「ああ、お前たち3人そろってつけてたやつか?」
千早「そうです」
千早「ただ訂正するならつけていたのは美希だけで、春香と私はそのとき香水をつけてませんでした」
千早「きっと車の中でじゃれあったときに香りが移ったんだと思います」
P「それで香水がどうしたんだ?」
千早「犯人は美希の首を絞めて殺しています。そのときどうしても体が密着します」
千早「ん?今顔色が変わりましたね」
千早「そうです。あの香水は触れている人に移りやすい」
千早「そしてやっかいなことに自分ではその香りに気づかない」
千早「今、美希の香水と同じ香りのする人が犯人です」
千早「春香あなたのことよ」
P「春香が?そんなまさか」
春香「や、やだなあ千早ちゃん。冗談きついよ」
千早「春香ごめんなさい。冗談じゃないわ」
春香「そ、そうだ凶器は?」
春香「首を絞めたときの凶器!あれさえ見つかれば私が犯人じゃないって分かるよ」
千早「ねえ春香、今日は私と一緒に寝てたわね」
春香「?うん。そうだけど」
千早「私が起きるまで春香はずっと寝てたのかしら?」
春香「もちろんですよ!ぐっすりですよぐっすり眠ってました」
千早「リボンをつけたままで?」
春香「!!」
千早「いつも寝る前に外してたリボン。今日だけつけたままなのはどうしてかしら?」
春香「………」
P「春香まさかお前が」
春香「ふふ」
千早「春香?」
春香「あっはっはっはっは!すごいよ千早ちゃん本当に名探偵みたいだ」
千早「やっぱりあなたが」
春香「そうだよ。星井美希はわたしが殺した」
春香「千早ちゃんが寝静まったころこっそり抜け出して」
春香「美希に睡眠薬をいれたお茶を飲ませて抵抗できないようにしてリボンで首を絞めて殺した」
春香「まったく間違いないわ」
千早「どうしてそんなことを?美希は大切な仲間じゃないの?」
春香「一日中プロデューサーさんといちゃいちゃして腹が立ったから殺した」
千早「そんなことで…?」
春香「そんなこと?」
春香「千早ちゃんは誰かを好きになったことはないの?」
春香「そんな好きな人を年下の女が見せびらかすようにいちゃいちゃされてて平常心を保っていられるの?」
千早「それは…」
P「春香そんなに俺のことが」
春香「ええ。好きよ大好き」
春香「トップアイドル目指すのも最初は私の夢だったけど、いつのまにかプロデューサーさんが喜んでくれるからがんばるようになってきた」
春香「私のためじゃなくプロデューサーさんのため」
春香「でももうお終い」
春香「殺人犯がアイドルになんてなれないよね。ごめんなさいプロデューサーさん」
P「春香………」
春香「ふう。ちょっとごめんね」
千早「春香どこに行くの?」
春香「疲れたから部屋で休むね。大丈夫。警察が着たらきちんと自首するから」カラン
千早「ん?春香何か落としたわよ」
千早「………これって果物ナイフの鞘?」
P「待ってくれ春香」
千早「!!プロデューサー危ないっ!!」
春香「ふふ。最後まで気にかけてくれてありがとうございます」
春香「プロデューサーさん。一生私のものになってくださいね」
笑いながらプロデューサーの腹部を果物ナイフで何度も何度も刺す異様な光景
隙を突いた監督さんによって春香は押さえつけられました。
他のスタッフさんがプロデューサーの傷口をハンカチで押さえて必死に止血しています
けどプロデューサーがもう助からないのは誰が見ても明白です
部屋に充満する血の匂いで美希の香りはいつのまにか完全に消えていました
あれから三日たちました。
美希とプロデューサーはロケ中の事故に巻き込まれて死亡。
私と春香はショックで仕事を休んでいるということになっています。
本当のことを知っているのは現場にいたスタッフさんたちと高木社長を含め、一部の偉い人たちだけです。
でも真実が明るみになるのも時間の問題と社長はおっしゃっていました。
どうもいろんな記者が探りをいれているようです。
人の口に戸は立てられない。
現場には多くの人がいたし、誰か口を滑らす可能性があります。
春香はまだ未成年だし、大々的なニュースになるとは思えないけど
良くない噂が流れて春香のイメージが悪くなるはずです。
春香、本当にこれでよかったの?
買い物から帰るとポストに封筒が突き刺さってるのが見えました
千早「今どき手紙なんて珍しいわね。誰からかしら?」
千早「m i k i…みき?」
千早「!!美希からだ」
はやる気持ちを抑え、封筒を丁寧に開けます
中には数枚の便せんが入っており、その文字は間違いなく美希のものでした
千早さんへ
これを読んでる頃にはミキは死んでいると思うの
ううん正確には殺されてるかな
春香はもう自首している?
きっと春香のことだから千早さんにすら本当のことを話してないと思うの
それどころか嘘をついてまで全ての罪を背負ってるかも
もしかして信じられない?
だけど思い出してみて
みんなのことに気を配り、いつでも優しくて、それから演技力の高い春香
その演技でみんなを騙してるの
だけど千早さんにだけは本当のことを知ってほしいかな
だからミキが手紙で何があったのか伝えるね
実はミキね、あの夜
死のうとしたの
プロデューサーにひどいことされて
全然きらきらしなくなったの
だから料理で使った果物ナイフでね手首切ろうとしたの
でも春香に見つかって止められちゃった
春香「美希!!なにやってるの!」
美希「離して!」
春香「このっ」
美希「あ…」
春香「っとこのナイフは預かるから」
美希「………」
春香「美希…何があったの?」
春香「よかったら話してみて」
美希「………」
春香「………」
美希「ぷ………」
春香「うん………」
美希「プロデューサーに………」
春香「プロデューサーに何かされたのね」
美希「プロデューサーにむ、無理やり」
春香「うん」
美希「怖くなってやめてって言ったのにベッドに押さえつけられて」
春香「わかった。わかったからもう言わないで」
美希「春香。ミキもうだめみたい。男の人に汚されちゃって全然キラキラしない」
春香「そんなことないよ。今はダメかもしれないけどきっとキラキラした美希に戻れるよ」
美希「もうアイドル続けられない。こんな汚い姿で歌ったらファンの人に悪いの」
美希「でもアイドル辞めたら今日のこと言いふらすって」
美希「だからもう………」
春香「わかった。プロデューサーさんには口外できないようにする」
美希「どうするの?」
春香「………ごめんね、美希。私がもっと気をつけてたら」
美希「えっ」
春香「プロデューサーさんのセクハラが日に日にひどくなっていたのに私は止めることができなかった」
春香「もっときつく言って、それから大人の人にも相談すればよかったんだ」
美希「もしかして春香がいつもプロデューサーにべたべたするなって言ってたのって?」
春香「………」
美希「ミキもごめん。もっと春香の言うこと聞いてればよかったの」
春香「ねえ美希。今も死にたい」
美希「………うん」
春香「考え直してくれない?」
美希「もうむりなの」
春香「………」
美希「………」
春香「それでもナイフで傷つけるのはやめて。きれいな肌がぼろぼろになっちゃうよ」
美希「もういいの」
美希「春香、もうミキにはかまわないで」
春香「美希っ」
美希「こんな汚い姿、春香に見られるのもつらい」
美希「ファンの皆にはなおさら見せられないの」
美希「だからもうほっといて」
春香「ほっとけないよ! 私、美希の力になりたい」
美希「ほんとに?」
春香「もちろん!だから死にたいなんて………」
美希「だったらミキを殺して」
春香「え?」
美希「春香はミキの力になりたいんでしょ? なら早く殺してなの」
春香「………」
美希「できないくせにえらそうにいわないでほしいの」
春香「私が殺さないと美希は自分で死んじゃう?」
美希「もちろんなの」
春香「………わかった。やってみる」
美希「ホントに? 春香、殺人犯でつかまっちゃうよ」
美希「アイドルも続けられなくなるよ」
春香「美希のためだから」
美希「春香………」
春香「よし春香さんはちょっと準備してくるから。とりあえずミキはお風呂に入ってきて体をきれいにしてね」
春香「それから絶対に自分を傷つけないで。私が美希を永遠にキラキラしてるよう[ピーーー]から安心して待ってて」
お風呂から上がっても春香はいなかったの
たぶんまだ準備が終わってないのかな
今から死ぬことになるって考えてまっさきに思いついたのは
お世話になった人たちや765プロのみんなじゃなかった
ちょっとミキ的には薄情かな
でもそれ以上に春香のことが心配なの
ミキを殺した後、春香はどうなっちゃうのってね
たぶん、春香は黙ったまま嘘をついたまま素直に警察に連れて行かれる
テレビや週刊誌にはたくさんひどい事を書かれるし、ファンの皆もきっと春香を悪者扱いにしちゃうの
それでも春香はミキのために最後まで本当のことを言わない気がする
だけどそれじゃあ春香がかわいそう
せめてたったひとりでも春香の味方がいてくれたら………
千早さん。ミキの最後のわがままをきいてください
どうか春香を軽蔑しないで
春香はきっと殺人っていうとても重い罪を犯すの
でもそれは全部ミキのため
ミキがこの先もずっとキラキラし続けるためにしたことなの
ミキの一番のライバルで親友で、そしてミキの名誉を守ってくれる恩人の春香
理解できないかもしれないし、擁護してとも言わないの
ただ、ただ最後の最後まで春香の親友でいてください
尊敬する如月千早さんへ 星井美希より
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