伊織「天才と天才」 (27)
完結済み超短編です
よろしければお付き合いください
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天才も二十歳過ぎればただの人、とはよく言ったものだ。
容姿端麗、運動神経抜群、語学にも堪能な完璧美少女、それが私……だった。あいつが来るまでは。
「星井美希、よろしくなの……あふぅ」
私がDランクに上がりこれから活動が本格化するという時にあいつ、星井美希はやってきた。
私と美希はプロデューサーの判断でユニットを組むことになった。
「お互いに学ぶところが多いはずだ。切磋琢磨してくれよ」
なんてあの人は言っていたっけ。
同じ年齢。だけど身長もスタイルも私は負けていた。
すぐにソファに寝転び居眠りを始める。
アイドルをなめていると思った。初対面の印象は最悪。
もっとも、美希は私のことをどうも思っていなかったようだけど。
ライブに向けての初レッスン、そこで私は敗北感を味わうこととなる。
一度見た動きは全て再現する記憶力、長丁場のレッスンでもピンピンしている体力、そして、私のような作りものではない笑顔。
レッスン後、それまで退屈そうにしていた美希が私にこう言ったのを覚えている。
「デコちゃんすごいね。ミキより歌って踊れる人、初めて見たの」
その時の美希の目はギラギラと輝いていて、私は眠れる獅子を起こしてしまったのだと悟った。
いおみきですか
私が美希を上回っていたのは単に経験の差だ。こいつが本気で努力したら、勝ち目はおそらく無い。
それまで自分のことを天才だと思っていた私は、価値観を変えることを強いられた。
美希が本物の天才なら、私は見せかけの天才でいい。
あいつが1努力したら私は10努力する。
あいつにだけは負けたくない、初めてそう思った。
千早の歌を聴いても素晴らしいとは思ったが勝ちたいとは思わなかった。
真のダンスを見ても同じだ。
特に理由はない、強いていうなら宿命。
「デコちゃんどうしたの?遅れてるよ!」
「うっさいわね、アンタだってさっきの裏拍とれてなかったわよ!」
時には指摘し合い
「……なんで、なんでダンスの審査員帰っちゃうの!グスッ」
「相手のほうが一枚上手だったってことね。負けは負けよ……」
「デコちゃんも泣いてるの?」
「泣いてない!ほら、くよくよしてないで今日は美味しいものでも食べて帰りましょう!」
時には支えあい
「ミキ、プロデューサーのことが好きになっちゃったかも」
「……そう」
「デコちゃんはなんとも思わないの?」
「ま、アイドル活動している間はやめときなさいよ」
「違うでしょ」
「何が」
「デコちゃんだってプロデューサーのことが好きなんでしょ」
「なんでアンタが決め付けるのよ」
「だって、伊織はミキの仲間で、目標で、ライバルだから」
まっすぐと見つめる緑がかった瞳、私も負けじと視線を交わす。
「初めて名前で呼んだわね」
「そろそろミキも伊織と対等になれたと思ったから」
なんだ、私だけじゃなかったんだ。こいつだって脳天気に見えて色々悩んで躓いて。
「あっはっはっは、あー馬鹿らしい!ええそうよ、私もプロデューサーが好き。だったらどうなのよ」
「やっと言ってくれた。それでこそミキの仲間でライバルで――」
時にはぶつかり合い、ここまで来た。
春香がドームですよ!と客を煽る。
千早が懇親の歌を響かせる。
真と響がキレキレのダンスで魅了する。
亜美真美の元気が会場を明るくする。
やよいと雪歩は日常から離れた客に癒やしを届ける。
貴音とあずさの色気に歓声が上がる。
そして
「ミキたちの出番だね」
「ふん、前座が頑張ってくれたおかげでやりやすそうじゃない」
「あいかわらず伊織は素直じゃないの」
「いいのよ、これが私なんだから。そうでしょ――」
『親友』
「みんなー!まだまだ盛り上がっていくわよ―!」
「ミキたちにしっかりついてきてなの!」
私達がこれからどうなるか、それは誰にもわからない。
輝きの向こう側はとんでもなく辛いことが待っているのかもしれない。
それでも、こいつとなら、きっと大丈夫。
(だって私達は)
(ミキたちは)
天才だから。
これにて終幕です
超短編って言ったもんね
>>8
ふと思いついたので勢いで書いてみました
いおみきは好きです(小並感)
依頼出してきます
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