エレン「でも、なんだかんだ使っちまう」ブルブル
アルミン「ちょっと、エレン。何で震えてるの」
エレン「お、アルミン。こないだ出た給料で買ったんだ。腹筋を鍛える器具、ってやつを。これでもう俺もミカサにとやかく言われなくてすむ」ブルブル
アルミン「え、ちょっと待って………エレン、それいくらしたの?」
エレン「ん?2万」ブルブル
アルミン「」
エレン「アルミンも使うか?」ブルブル
アルミン「…前にエレンは毎月5万貯蓄しようと思ってるって言ってたけど、それはどうなったの?」
エレン「…え?まあ、ぼちぼちな」
アルミン「ねえ、本当に毎月貯蓄してる?あったらあっただけ使っちゃってない?」
エレン「なんだよ、アルミンまでミカサみたいなこと言って」
アルミン「エレンはさ、例えばもしその月に5万貯蓄出来なかったら来月10万貯蓄すればいいやと思ってない?」
エレン「うぐ」ブルブル
アルミン「それが、ダメなんだよ。結局その次の月に10万なんて無理だ、ってなって諦めちゃうでしょ?ちなみに今月はいくら貯蓄した?」
エレン「…3万」ブルブル
アルミン「その前は?」
エレン「………先月はできてない。でも先々月は5万貯蓄したぜ」ブルブル
アルミン「毎月出来なかったら意味がないよ。…あといい加減にその変な機械止めて。うるさいんだよ!」
エレン「そんなこと言ったって。………なあコニー。お前も前に全然貯蓄できてないって言ってたよな」ブルブ…カチッ
コニー「うお、いきなりオレに話題振んなよ。で、なんの話だ?」
アルミン「エレンが全然貯蓄できてないって話。コニーも貯蓄できてないの?」
コニー「ああ、貯蓄は全然出来てないな。ゼロだ」
エレン「なっ?」
アルミン「エレン、他の人が出来てないからって自分が出来なくていい訳じゃないからね。…で、コニーちなみになんだけど、なんで貯蓄出来てないかとか聞いていい…かな?」
コニー「言っとくけどな、無駄遣いしてるわけじゃねぇぞ?…生活に必要な分以外は全部実家に仕送りしてんだよ。オレんちは兄弟多いからな。だから貯蓄まで手がまわんねぇんだ」
エレン「」
アルミン「そうだったんだ。…コニーって親孝行なんだね」
コニー「当たり前のことをしてるだけだって」
アルミン「それに比べてエレンは…」
エレン「な、なんだよ」
アルミン「仕送りしてる訳でもないのに全然貯蓄できてないよ?散々貯蓄貯蓄って言っておいて恥ずかしくないの?」
エレン「それより、飯だ飯!はやく行かねぇと席取られちまうぞ」
アルミン「あ、ちょっと!エレン!」
*
アルミン「と、いうわけなんだよ。ミカサ。ミカサからもエレンに何か言ってやってよ」
ミカサ「アルミン、ありがとう。私もいつ切り出そうか迷っていた。私もエレンの無駄遣いには困り果てている」
エレン「なんだよ、ミカサ。睨むなよ、怖ぇだろ」
ミカサ「そろそろエレンに現実を見せるべきだと思う」
アルミン「…そうだね。あんまりこんなことをしてエレンを追い詰めたくはなかったんだけど」
エレン「なにを…」
ミカサ「見て、エレン。私の通帳を。…私は訓練兵の給金だけで、これだけ貯めた」
アルミン「ちなみに僕はこれだけ」
エレン「………うわ!お前らいつの間にこんな貯め込んでたんだよ」
アルミン「エレンも違って毎月ちゃんと決まった額をこつこつ貯蓄してたんだよ。…他の同期も多少の増減はあれどこのぐらい貯まってると思うよ」
エレン「嘘だろ、こんな…。同じ給金もらってるはずなのに俺の貯蓄の倍はあるじゃねぇか」
ミカサ「エレンが少なすぎる、だけ。私は普通に暮らしててこのくらい貯まった」
アルミン「欲しいものを我慢してたわけじゃないよ。僕だって本が読みたいときは買ったし、みんなで街に出かけるときはちょっと羽目を外して使ったりしたこともある」
ミカサ「ただ、限度を考えて使っているだけ」
エレン「俺だって普通に暮らしてるって」
ミカサ「この間はぶら下がるだけの機械を買ってたし、その前は街であやしげな栄養剤を買ってきていた。全然普通じゃない」
アルミン「見事にエレンのミカサに対するコンプレックスがわかるラインナップだね」
エレン「…ミカサに俺の気持ちがわかってたまるか」
ミカサ「そうやって、いつもエレンは逃げる」
エレン「なんだよミカサ、いちいち。俺だって貯蓄したいとは思ってんだよ」
ミカサ「だったら行動を起こして。何かあってお金が必要になったとき、貯蓄がないと困る」
エレン(このヤロー。そんなことはわかってんだよ…。ただ、まず貯蓄が出来なきゃお話にならねぇのは事実だ…。正論だ…オレは今何も言う資格がねぇ…。バカ言ってんじゃねぇよって感じなんだろうな…何でも簡単にこなしちまうお前にとっちゃよ!)
ミカサ「…!」
ミカサ「私は…エレンだけに貯蓄しろと言ってるんじゃない…」
エレン「行こうぜアルミン」ガタッ
アルミン「う、うん…」ガタッ
ミカサ「私も今以上に貯蓄するので、お金の心配自体はしなくていい。私の貯蓄はエレンのもの、エレンの貯蓄はエレンのもの。それが家族………でも…私はエレンにも貯蓄の大切さを理解して欲しい。それは生きるのに必要なこと」
サシャ「ん?」
サシャ「えーと?つまり?…ミカサの貯蓄は私のものと言うことですか?」
ミカサ「」
サシャ「私は貯蓄よりそのミカサの目の前にあるパァンが欲しいです」
ミカサ「」
*
エレン「たくっ、ミカサは干渉してきすぎなんだよ。オレはあいつの弟でも子供でもねぇんだぞ」
アルミン「…ミカサ、置いてきちゃってかわいそうなことしたね。ミカサは正論しか言ってないのに」
エレン「………まあ、貯蓄は大事だよな。でもなかなか貯まらねぇんだよ」
アルミン「…わかった。僕が(無駄遣いの)エレンでも貯蓄できるように方法を考えてみる」
エレン「………アルミン、頼んだぞ」
*
エレン「とは言ったものの、俺以外にも無駄遣いするやつはいるだろ」
サシャ「あ、エレン。どうしたんですか?」もぐもぐ
エレン「サシャ、何食ってんだよ」
サシャ「ミカサがパァンをくれなくてショックで小腹が減ったので、こないだ街に出たときに買った干し肉を食べています。………盗んだりしてませんよ」
エレン「そうか」じー
サシャ「な、なんですか?そんなに見てもあげませんよ?」
エレン「いや、そういうつもりで見てたんじゃねぇよ。なあサシャ、お前良く街で食いもん買ってるよな?貯蓄はちゃんとしてるか?」
サシャ「え?駆逐?」
エレン「貯蓄」
サシャ「あ、貯蓄。エレンからそんなこと聞かれると思ってなかったので聞き間違いかと思いました。貯蓄ならしてますよ?」
エレン「ちなみに、いくらだ」
サシャ「貯蓄額を聞いてくるなんて失礼ですよっ!…でもまあ同期のよしみで教えてあげましょう。エレン耳を貸して下さい…だいたいですけど、ざっとこのくらいは貯めましたよ」
エレン「え…お前もそんなに貯めてるのか……?」
サシャ「エレンも当然このくらい貯めてますよね?自分で言うのもなんですが、私の貯蓄額はそんなに多くないですよ?クリスタやユミルのほうがもっと堅実に貯めてます」
エレン「………そうか」
*
アルミン「エレン、ここに居たんだ。はい、これ…………何か落ち込んでる?」
エレン「いや、大丈夫だ。…これは?」
アルミン「小分け袋だよ」
エレン「小分け袋?この封筒がか?…何か書いてある。『貯蓄』、『食費』、『交遊費』、『雑費』?」
アルミン「エレンはまず給金をもらったら全部下ろして財布にいれちゃうでしょ?そして、残ったものを貯蓄に回してるよね?それが駄目なんだよ。まずはその逆にしないと」
エレン「逆?」
アルミン「そう、逆。残ったものを貯蓄するんじゃなくて、貯蓄して残ったものをやりくりするって方法にしないと!」
エレン「で、この小分け袋をどうするんだ?」
アルミン「エレン、お財布出して。一昨日給金出たばかりだからまだたくさん入ってるよね?」
エレン「ほら。…給金は昨日街に出て腹筋鍛える機械買ったのとライナー達と昼飯食べた以外にはまだ使ってねぇよ」
アルミン「十分使ってそう…。じゃあエレン、お財布あけるよ?」
エレン「ああ」
アルミン「あ、よかった。まだそれなりにはあるね。とりあえずここから3万この『貯蓄』袋にうつすよ」
エレン「3万でいいのか?」
アルミン「うん、そもそもエレンが5万って無理な目標設定だったなって思うんだ。目標が高すぎると長続きしないからね。慣れるまでは3万で」
エレン「…そうする」
アルミン「そしてこれはもう糊付けしちゃう。これでこの貯蓄分は使えなくなった…いっそミカサにでも預けておいたらどうかな?」
エレン「なんでだよ。自分で管理するよ」
アルミン「…わかった。エレンを信じてとりあえず返すよ。そして『食費』袋にも少し。食費は基本的には支給されるからこれは街に出たときとかの分だと思って」
エレン「『交遊費』は?」
アルミン「これも街に出たときに使う分だね。ちょっと遠出したりするときなんかは馬車にも乗ったりするだろ?その交通費とか、かな。そんなに街に出るのも多くはないし、ここにいれるのも少しでいいね」
エレン「最後に『雑費』か?」
アルミン「そう。ここは好きに使えるお金を入れておくよ。とりあえず今月はこのくらい。いきなり節約節約、って切り詰めちゃうとエレンもストレス溜まるだろうし」
エレン「お、まだこんなに使えるのか」
アルミン「油断しないで、エレン。ここにあるお金以上は絶対に使っちゃ駄目だよ」
エレン「わかってるって」
*
▼給料日まであと20日
アルミン「エレン、お金は足りてる?」
エレン「ああ、食費も交遊費も雑費も、まだ余ってるくらいだぜ」
アルミン「なら、よかった」
エレン「これなら、今度の休みに街で何か買っても良さそうだな」
アルミン「………え?」
エレン「………ん?」
クリスタ「アルミンにエレン!探してたんだよ」
アルミン「クリスタ、どうかしたの?」
クリスタ「ほら、この前みんなでお肉が食べたいねって言ってたでしょ?」
エレン「そういえば、先週そんな話で盛り上がったな」
クリスタ「で、マルコと教官に聞きに行ったら実費で買った食材で調理するなら調理室と、あと調味料を自由に使ってもいいって許可をもらったの!だから次の休日にみんなでパーティーしたいなって」
アルミン「わあ、それは楽しそうだね。それに久しぶりにお肉が食べられるんだね」
クリスタ「そうなの!サシャなんか張り切っちゃってすごいんだよ?…で、私が代表でお金集めてるんだ。だから、この紙に書いてかる金額だけ集めてもいいかな?」
アルミン「はい、僕の分だよ」
エレン「ほら、オレの分だ」
クリスタ「ふふ、確かにちょうど頂きました。急に集金することになってごめんね?」
アルミン「ううん、クリスタこそ準備頑張ってね。僕も手伝えることがあれば手伝うから(女神…)」
クリスタ「うん!買い出しとかはたくさんになっちゃいそうだし、男の子たちに手伝ってもらおうかなって思ってたんだ。そのときはよろしくね」ニコッ
アルミン「クリスタは本当にかわいいや…」ぽー
エレン「アルミン…これは雑費から出したが、合ってるか?」
アルミン「ん?ああ、小分け袋の話だね。合ってるよ。自分で使う以外にもこういう臨時の出費なんかもあるんだ。残ってるからってめいっぱい使ったら駄目だって、わかったろ?今度の休みは買い出しで街に出かけることになると思うけど、無駄遣いはしないようにね」
エレン「……わかった」
*
▼次の給料日まであと10日
ミカサ「エレン、アルミンから聞いたんだけど。小分け袋貯蓄、上手くできてる?」
エレン「できてるって!ほら、貯蓄袋はちゃんと糊付けして使えないようにしてるし、財布にもまだ残ってる」
ミカサ「…!そう、それは良かった」
エレン「だから、ミカサは心配しなくていいからな」
ミカサ「わかった。…もう口出ししない」
エレン「とは言ったものの、次の給料日まであと10日か…けっこう厳しいな」
エレン「お金は残ってるにら残ってるが、もう小銭しか残ってない」ちゃりん
エレン「貯蓄袋から少し拝借するか。…次の給料日で補填すれば………ッて、駄目だ、駄目だ!アルミンはオレを信用して貯蓄袋を返してくれた。それを裏切る訳には」
エレン「次の休みは大人しくしていよう」
*
▼給料日前夜
アルミン「エレン、明日は給料日だね!」
エレン「…やっとだ」
アルミン「小分け袋貸してもらってもいい?」
エレン「…ああ」
アルミン「なんか辛そうだね…あれ、全然残ってない」
エレン「でも、貯蓄袋には手をつけなかったぜ」
アルミン「それは…本当に頑張ったんだね」ほろり
アルミン「本来だと最後に小分け袋に残ってる分も貯蓄に回してリセット、そして給料日からはまた小分けしてっていうのを繰り返していくんだけど」
アルミン「うん!今回は貯蓄分はちゃんと手付かずで残ってるし、出だしとしては好調だね!この調子で、来月も頑張ろう」
エレン「…アルミン、オレなんのために貯蓄するのかわからなくなっちまった」
アルミン「…エレン、そんなに貯蓄が辛かった?」
エレン「オレ、もしかしたら浪費でストレス解消してたのかもしれない」
アルミン「うーん、それは良くないことだから我慢できたらいいんだけど」
エレン「だよな。でもなあ…」
アルミン「あ!そうだ、エレン。目標額を決めよう。目標額貯めたらご褒美に何か買ってもいいことにしよう。エレン、何か欲しいものはある?」
エレン「…今はない」
アルミン「うーん、エレンは衝動型の浪費家なんだね。じゃあ、とりあえず3ヶ月!3ヶ月貯蓄を続けられたら街に出てエレンの好きなもの買おう」
エレン「わかった。頑張ってみる」
一旦席外すので、中断します
1時間以内に再開する予定です
*
▼貯蓄2ヶ月目
ライナー「エレン、貯蓄してるんだってな」
エレン「アルミンから聞いたのか?」
ライナー「最初に聞いたのはアルミンからだが、噂になってるぞ。エレンが貯蓄してるって」
ベルトルト「うん、頑張ってるんだってね」
エレン「そうか、なら後には引けないな」
ライナー「だから今日は街で一杯奢るぜ!」
ベルトルト「…一杯っていってもジュースだけど」
エレン「いいのか?」
ライナー「ああ、これ以上部屋にいらないもん増えても困るからな。貯蓄に協力するぜ」
エレン「」
ベルトルト「エレン、いろんなもの買う割にすぐ飽きちゃうでしょ。前に買ったぶら下がり健康器、だっけ?あれなんかは物干し竿にできてるからいいけど」
*
エレン「アルミン、今月は小分け袋にこれだけ残ってるぜ」
アルミン「良い調子だね!コツはつかんできたかな?」
エレン「なんとなくな。増える貯蓄額を見てたらなんだか面白くなってきたんだ。次はもっと残せるように頑張ってみるぜ」
アルミン「そのいきだ!」
ミカサ「エレン、すごい。やっぱりエレンはやれば出来る子」
エレン「まあな!ってミカサまたオレのこと子供扱いしてないか?」
ミカサ「気のせい」
エレン「ならいいんだけどな」
アルミン「まあまあ、エレン。ほら、早くお昼ご飯食べちゃおう」
*
▼貯蓄3ヶ月目
アニ「ほら、これあげるよ」
エレン「…?なんだ?」
アニ「私もう使わないから」
エレン「ノート?」
アニ「お小遣い帳。お金使ったらその度に書き込んで」
エレン「アニも俺が貯蓄してること知ってるのか。ありがとう、使ってみる。…でもなんか意外だな」
アニ「なに、私が人にものあげるのがそんなに意外?」
エレン「違う…………アニ、お小遣い帳とか使ってたのか?」ぷっ
アニ「う、うるさい。蹴るよ」
*
アルミン「エレン今月頑張ったらとりあえず目標達成だね」
エレン「ああ」
ミカサ「貯蓄頑張るエレン、かっこいい」
ジャン「!」
ジャン「おい、エレン!」
エレン「あ?なんだよ」
ジャン「俺も貯蓄するぜ!まあ、既にこんだけ貯めてるんだけどな!」チラッ
エレン「勝手にすればいいじゃねぇか」
ジャン「ミカサ、俺ならエレンの数倍は貯蓄できるぜ」
ミカサ「興味ない」
ジャン「」
*
エレン「やった!目標達成だ!!!」
アルミン「すごい!今月は余った分も合わせてさらに上乗せで2万円も貯蓄できた。
エレン「ということは、オレがはじめに言ってた5万円を達成だな!」
アルミン「良かった!これでエレンも貯蓄の楽しさと効率がわかっただろう?」
エレン「ああ!いざ貯まると使うのがもったいなくなってくるな」
ミカサ「エレン、すごい。昔とは全然違う。この頼もしさならきっと駆逐も出来る」
エレン「貯蓄してやる…給金から…一円残らず…!」
アルミン「だから、無理な目標設定はダメだって言ってるだろ!」
エレン「ごめんなさい」
第xx話 いつか初任給をもらう君へ
終わり
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