グリP「伊織と千鶴」 (89)
ミリオンライブSSです。
設定に関して(特に二階堂千鶴のものは)ほぼ妄想です。公式設定ではありませんので注意してください。
拙い文章ですが、よろしくお願いします。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1395591697
__________
今でも覚えている。
「最初にあんたが来た時は、変なやつが入ってきたとしか思わなかったわ」
どんな時も、精一杯の虚勢を張って笑うあんたは滑稽だったけど。
「……そうね。今でもあんたは変なやつよ。でもね」
そんな姿に、私は支えられてきたのよ。
「私に負けないくらい輝いてるわよ!」
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今でも覚えている。
「最初にあんたが来た時は、変なやつが入ってきたとしか思わなかったわ」
どんな時も、精一杯の虚勢を張って笑うあんたは滑稽だったけど。
「……そうね。今でもあんたは変なやつよ。でもね」
そんな姿に、私は支えられてきたのよ。
「私に負けないくらい輝いてるわよ!」
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今でも覚えている。
「最初にあんたが来た時は、変なやつが入ってきたとしか思わなかったわ」
どんな時も、精一杯の虚勢を張って笑うあんたは滑稽だったけど。
「……そうね。今でもあんたは変なやつよ。でもね」
そんな姿に、私は支えられてきたのよ。
「私に負けないくらい輝いてるわよ!」
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「おはよう皆! 突然だが、まず最初に新しい仲間を紹介しようと思う」
朝のミーティング、慌ただしく入ってきたプロデューサーの声が響き渡った。穏やかだった空気は一変しあちこちで歓声が上がる。
「伊織ちゃん! 新しい人がくるんだって! どんな人なのかな?」
「さあ。それにしてもあと何人増やすつもりなのかしらね、あいつは」
今の765プロライブ劇場に所属しているアイドルは私含めて32人。最初13人が集まったときはこんなもんかと思ってたなぁ。
何か月か経ったぐらいのある日、社長が突然『765プロライブ劇場を作ろうと思う。アイドルももっと増やしていこう』なんて……。
私たちの知らぬ間にプロデューサーと社長が進めていたらしい。とんとん拍子で事が運び、仲間も一週間二週間と経つごとに増えていった。
仲間が増えるのはもちろん嬉しい。けど、変わった人が増えてきてるのも確かだわ。
「それじゃ入ってもらおうか! どうぞー!」
扉が開く。全員が話すことをやめて、扉に顔を向けた。
「皆、二階堂千鶴さんだ。二階堂さん、自己紹介お願いします」
……結構大人っぽい。緊張しているからか、ぎこちない笑顔をしている。
「はっ、はい!」
緊張を整えるように息を吐くと、さっきまでの緊張した姿が堂々としたものに変わっていた。
「初めまして! わたくしの名前は二階堂千鶴!! これからよろしくお願いしますですわ!! おーーーっほっほっほっほっほ!!!!」
一瞬だけ空気が固まった。二階堂千鶴と名乗った人はやりきった表情、隣のプロデューサーはニヤニヤと意地の悪い顔をしている。
「「よ、よろしくお願いします!!」」
拍手が沸き起こり、質問タイムが始まったようだけど、なんとなく行く気が起きない。
「二階堂さん! 私、天海春香っていいます! これからよろしくお願いします!」
「天海春香、ね? 覚えましたわ! 皆さん、わたくしのことは名前で呼んでくださっても構いませんわ!」
「ぼく、菊地真です! 千鶴さんってもしかしてお金持ちなんですか? 服もなんだかフリフリーって感じだし!」
「ええ、自慢するほどのものではありませんが!」
「そうなんですか? それじゃあ伊織ちゃんとおんなじですね!」
ちょっとやよい! こっちに話を振るんじゃないわよ!
「えっ!? 伊織さんという方もお金持ち、ですの? ええと」
「あっ! 高槻やよいっていいます! 伊織ちゃんは……伊織ちゃーん!」
しょうがないわね。行くしかないか。
「水瀬伊織よ。よろしく」
「よ、よろしくですわ、水瀬さん。って水瀬!? 水瀬って、あ、あの水瀬財閥ですの!?」
さっきまでの余裕の表情が嘘みたいね。二階堂なんて聞いたこともないし、なんなのかしらこいつ。
「正解よ。まっ、今の私にはそこまで関係ないけどね」
「ま、まさか本物のセレブがいるなんて……」
「千鶴さん、どうかしましたか?」
「い、いえ! なんでもないですわ! おーっほっほっゴホッゴホッ!!」
咳き込む姿を見てやよいが、水を取ってきます! と慌てて給湯室に向かった。他の皆もお菓子を持ってきたり質問したりとすっかり団欒ムードだ。
「皆、そろそろ全体ミーティング始めるぞ!!」
そんな時間もプロデューサーの一声で終わり、今日のスケジュールの確認や今後の予定の話となった。
「……これぐらいかな! 二階堂さんはこの後話がありますので残っててください。ちょっと書類を取ってきますので」
「わかりましたわ」
「それじゃあ解散! 皆、今日も一日がんばれよ!」
今日はレッスンのみ、か。レッスンまでまだ時間もあるしあいつに聞いて確かめるべきね。さっきから二階堂とやらがチラチラこっちを見てくるし、やりにくいったらないわ。
「ちょっと、あいつ何なのよ」
「どうした、伊織。同じセレブ仲間じゃないか」
にやついた顔で言ってくる。ムカつくから脛を蹴っておこう。
「うっ! ぐおぉぉぉぉぉぉ!! な、なんで!?」
「うっさい! 二階堂なんて名前聞いたこともないし! どう考えたっておかしいでしょ!」
痛たた、と言いながらプロデューサーが顔を上げた時にはさっきのウザったい顔はなくなり、いつも通りの顔に戻っていた。
「伊織が知らないのも当然だな。二階堂さんはセレブでも何でもない、一般人だよ」
「やっぱりそうなのね。じゃあなんであんなことさせてるのよ」
「俺も何であのキャラでいこうと思ったのかまでは知らないけど、今のほうが絶対売れるからだよ。アイドルにはキャラ作りも必要だからな」
まぁ、バラエティ向きではあるでしょうね。さっきも私がもう少し突っ込んだことを言えばすぐにボロが出たでしょうし。
「二階堂さんなりに考えてやってることだ。それがやる気につながるなら良いことじゃないか」
「あっそ。でもあんなのでやっていけるのかしらね」
「おっ? もしかして心配なのぐあああああぁぁぁぁ!!!」
ジタバタしてるこいつは無視して、もう戻りましょう。とりあえず関わらなければ問題ないみたいだし。
「まったく……心配ないさ。伊織と二階堂さんなら、きっと仲良くなれる」
二階堂千鶴がこの事務所にやってきて一か月がたった。仲間は相変わらず増え続けているが私の日常は変わらない。
水瀬財閥も関係ない。ただの水瀬伊織としてトップアイドルになり認めさせてやる。そのためにここに来たのだ。
今日は週に一度の合同レッスンの日。メンバーは私、やよい、瑞希、美也の五人。午前中はリーダーである私が、午後はプロデューサーが練習を仕切る予定だ。
「まずはボーカルレッスンね。始めまるわよ!」
発声から始まり練習曲を歌う。私も皆もまだ駆け出しだけどなかなかの手ごたえはあった。
「伊織ちゃんすごいね! 私なんていーっぱい間違えちゃったのに!」
ありがと、と言いながら軽くハイタッチ。
「水瀬さん。すごい上手だった。私もがんばるぞ。おー」
隣にいた瑞希も話しかけてきた。ちょっと変わってるけど練習熱心だしおもしろいし割と好きなタイプだ。
「瑞希はもっと声を出しなさいよ。やよいはもっと丁寧に歌うように」
「「はーい!」」
やよい、瑞希と話していたら美也も近づいてきた。
「伊織さ~ん、私には何かありませんか~?」
「美也はもっとハキハキ喋りなさい」
「ハキハキ、ですか~。がんばってみますね~」
「全然できてないじゃない!」
笑いが起きる。美也はのんびりしすぎよね。そこが良いところでもあるけど、変な大人に騙されそうよね……
「千鶴さーん! 千鶴さんもすごかったですよ!」
「そ、そうでしたの? わたくしはいつも通りやっただけですが、流石わたくしですわね!」
さりげなくこっちに来たつもりでしょうけど、さっきから会話に入りたそうにチラチラ見てたの、気付いてるからね。
「千鶴さんも上手でしたね~。普段から歌ってたりするんですか~?」
「わたくしはいつもカラオ……じゃなくて、専用スタジオがありますので! そこで歌いたいときに歌っていますのよ!」
「専用スタジオ。私も行ってみたい」
「うっ! それは、ちょっと……」
自分の首を絞めてどうするのよ! まったく、何やってるんだか……。
「はいはい、無駄話はそこまでにして。次のレッスンを始めるわよー」
皆が次のレッスンの準備を始める。千鶴が何か言いたそうにしてるけど、無視よ無視。
次はダンスレッスン。入念に柔軟をして、基本的なステップから始めていく。
「やよい! 美也! 遅れてるわよ! 千鶴も指先まで集中!」
三人はダンスが苦手だ。やよいと美也はあんな性格だし、千鶴は体力的にも辛いみたいね。
「いい? まず私がやってみるからそれを手本にしなさい!」
何度も練習した場所。完成度の高さはプロデューサーの折り紙つきだ。油断せず、緊張しすぎないよう普段通りに!
……踊りきった。それから拍手されたり、すごいすごいと言われたり。ミスなくできてよかったわ。
「それじゃ一人ずつ見ていきましょう!」
最初に瑞希、バトントワリングをやっていただけに丁寧な動きだ。
次に美也、やっぱりテンポについていけてない。でも動き自体はしっかりできてるしこれからね。
次はやよい、緊張してるからか通しで踊れず、細かく区切りながら確実に進めていくことに。
「うぅー、難しいです……」
「やよい、ファイトですわ! 絶対できるようになりますわよ!」
難しい部分から思うように進まず少し休憩。練習法を考えていると千鶴の声が聞こえてきた。
「でも……何度やっても上手くいかないし……」
「最初から上手くいく人間なんていませんわ。努力してできないことを減らしていく。それが上達の近道ですわよ!」
「千鶴さん……! はい! 私、がんばってみます!」
やよいも元気を取り戻したみたいだ。千鶴もまぁ、良いところあるじゃない。
それにしても、私もまだまだダメね。練習が進まないことに焦って気遣う余裕も忘れるなんて……。
「それじゃ再開するわよ!」
「…………できましたー!!」
「高槻さん、おめでとう。いえい」
「おめでとうございます~」
「おめでとうですわ! やよい!」
「はい! 皆さんありがとうございます! 伊織ちゃんもありがとう!」
「私が教えたんだから当然ね。おめでとうやよい!」
やよいが無事にできるようになってよかったわ。あとは千鶴だけね。
「それじゃ次は千鶴ね」
「ついにわたくしの出番ですわね! 華麗に決めてやりますわ!」
ずいぶんと自信たっぷりに出ていったが、結果は可もなく不可もなくって感じだった。まぁ入って一か月だしこんなもんよね。
「今日はこんなところね。それじゃお昼にしましょう!」
レッスン場を後にする。皆が思い思いの場所へ食事に行き、午後のレッスンの時間になった。
午後からはプロデューサーに任せ自分のことに専念する。そうして今日一日のレッスンが終了した。
「よーしここらで終わりにするか!」
「ふぅ、やっと終わったわね」
「レッスン終了後に飲むドリンクは格別です。……美味しい」
「私もいただきます! 美也さんもどうぞー!」
「ふふっ、ありがとうございます。やよいちゃん」
これで今日の活動はおしまいね。今はまだレッスンだけだけど、早くお仕事が欲しいわ。
「そろそろ閉めるぞー」
ぞろぞろと扉から出ていく。更衣室で着替え、荷物を持って帰ろうとしたとき忘れ物に気付いた。たぶんレッスン場だ。
事務室に入るとデスクで仕事中のプロデューサーを発見。鍵を貸してもらおう。
「ねぇ、レッスン場に忘れ物しちゃったみたいなの」
「忘れ物? 大事なものなのか?」
「タオルだから別に大したものじゃないわよ。自分で取ってくるから鍵借りてもいいかしら?」
そうプロデューサーに伝えるとうーんと困ったようにブツブツ言い始めた。
「なによ。ちょっと行って取ってくるだけだし時間はかからないわよ」
「いやー、それが、でもまずいかなぁ。どうしようかなー。まぁ、いいだろう。伊織だし」
一人納得してしまった。鍵は開いてるだろうから入っていいぞ、との話だ。誰かまだ残ってるのかしら。
レッスン場の前まで来ると中から音楽が聞こえてきた。これは、ダンスの練習曲?
小窓から中を覗いてみると、中にいたのは千鶴だった。
同じ場所を何度も繰り返し練習し、納得がいったら今度は最初から通しで踊る、そんな練習法だろうか。今は中盤まで進んでいるようだ。
千鶴のダンスは、私が見るかぎりミスはない。それでも繰り返すことをやめなかった。
それを少しずつ、少しずつ進めていき、最初から最後まで踊りきったところで私は中に入ることにした。
「お疲れ様、千鶴」
水を取ろうとしていた千鶴の背中がビクッと震えた。振り返った千鶴は運動していたからか顔を真っ赤にしていた。
「み、水瀬さん!? 見ていましたの!?」
「結構前からね。ずいぶん練習熱心じゃない」
「べ、別にそんなことはありませんのよ!? ちょっと気になったから帰る前にやっておこうかな~と思っただけですわ!?」
あれがちょっと、なんて言えるなら私が普段やってる自主練習はどれぐらいになるのよ。
そういえば練習が終わってからやけに口数が少なかったけど、色々気にしていたのかしら。
「隠す必要ないじゃない。努力することは恥ずかしいことじゃないわよ?」
「それは! そうですけど……」
なぜか俯いてしまった。本当に何なのかしらね、こいつ。
「まぁあんたが自分のことをどう思ってるかは知らないけど、練習してるあんたは、すごいって思ったわよ」
「水瀬さん……」
……変ね。私ってこんな素直な人間だったかしら。
「私は忘れ物を取りに来ただけだからもう行くわね。まだ残るなら、その……がんばりなさいよ」
私まで赤くなっちゃいそうだし、ささっと取って出ちゃいましょう。あ、そうだ。
「そういえば千鶴?」
「な、なんですの?」
「あんたどうしてセレブなんて……にひひっ! なんでもないわよ!」
さっき以上に顔を真っ赤にしちゃって。どんだけ動揺してるのよ。
「じゃあね、千鶴! また明日!」
「へっ? あ! また明日ですわ!」
二階堂千鶴、ね。なかなかおもしろいじゃない。
「私からまた明日、なんてやよいにしか言ったことないわよ」
廊下を歩いていると自然と笑みが零れていた。なんだか、明日が楽しみね。
それから私は千鶴を観察することが多くなった。
まず千鶴は本当にセレブについて勉強したのか? と思うぐらい知識がない。それなのに無理やりセレブっぽくしようとして失敗する。
考え方が完全に庶民のそれなのだ。最初のうちは殆どの人が信じていたのに、今では環や育とかの年少組や、ひなたややよいみたいな純粋な子だけだ。
信じてない人もおもしろいからと放置している。なので千鶴が混じっている会話には笑いが絶えない。
この前、星梨花たちと話していたときなんて遠くから見ているだけでもおもしろかったわね。
__________
「千鶴さん千鶴さん!」
「あら? どうしましたの星梨花」
「千鶴さんって普段から色んなレストランで食事してるんですよね!」
「うえぇ!? えっと……もちろん!! わたくしに聞きたいことがあるのでしたらなんでも聞いてくださいな!」
「本当ですか? あのわたし、食べてみたい料理があるんです!」
「食べてみたい料理、ですの?」
「はい! なんでも一皿にたくさんの食べ物が乗っていて」
「ほうほう」
「美味しいデザートと飲み物がセットで付いてきて」
「ふむふむ」
「食べ物の中には上に旗の立っているものがあって」
「旗が……え?」
「あっ! あと素晴らしい景品も貰えるとか! この前、環ちゃんに教えてもらったんです!千鶴さんは知ってますか?」
「景品? 旗? そんな高級料理あったかしら? というか高級レストランなんて入ったこともないし……ブツブツ」
「なになに~何の話してるのよ~!」
「あっ恵美さん! カクカクシカジカなんですけど知ってますか?」
「うーん、それってお子様ランチじゃない?」
「お子様ランチ?」
「お、お子様ランチですの!? 確かに旗も立ってるしおもちゃも貰えましたわね……」
「アタシのよく行くファミレスでも子供連れの人がよく注文してるよ!」
「そんな料理があるんですね! 私知りませんでした!」
「アハハハ! 星梨花はお嬢様だからファミレスなんて行ったことなさそうだもんねー!」
「わ、わたくしも知りませんでしたわよ! おほほほ!」
「そだ! 二人ともお昼まだだよね? この後ファミレス行ってみよっか!」
「本当ですか? 行ってみたいです!!」
「そうですわね! ここは庶民の味を知るためにも行ってみましょうか!」
「千鶴ー、ドリンクバーで最初なに入れる?」
「それはもちろんメロンソーダを、はっ!?」
「なーんだ! やっぱり知ってるんじゃーん!」
「ドリンクバー、そういうものもあるんですね。千鶴さんは色んな事を知っててすごいです!」
「あ、あははは……さぁ! そんなことより行きますわよ!」
「千鶴ー、この近くだとガストとサイゼリアがあるけど、どっちにする?」
「わたくしはいつもロイヤルホストですから……はっ!?」
「千鶴はロイヤルホスト派かー! アタシ、ガスト派なんだよねー!」
「ロイヤルホスト? ガスト? 千鶴さん、それって」
「おーっほっほっほっほ!! 二人とも行きますわよー!」
「あっ、待ってよ千鶴~!」「千鶴さーん!」
帰ってきた星梨花に聞いてみたら向こうでも色々あったらしい。私も行ってみればよかったかしら?
こんな感じで千鶴の周りはいつも明るい。主に千鶴の暴走が原因だけど。
それに千鶴は面倒見の良い性格らしく、全員からおもしろいけど頼りになるお姉さん、として慕われているみたいだ。
この前もひなたに色々都会の知識? を教えていたり。寝ている美希に毛布を掛けてあげたりしていた。
驚いたのはあの志保でさえ千鶴とは仲良く会話をしていたことだ。といっても練習法について話していたようだが。
志保も千鶴が並々ならぬ努力をしていることに気付いているらしい。特に練習熱心な志保は共感できる部分があるのだろう。
私もあれからも何度か、千鶴が一人で練習しているところを見てきた。
サッカーフェスで他の子にアドバイスを貰っているところも見たし、少しでも練習できる時間があるとやっていたみたいだ。
それにアイドル学園は私が見てもなかなかの演技だった。まぁ、台本にないことをしたりとプロデューサーに怒られてたりもしたっけ。
それにしても、一つ気に食わないことがある。
それは、私のことを避けていることだ。チラチラとこっちを気にして、私と目が合うと急にそわそわしだしたり、逃げ出してしまう。
普通に私がおはようと挨拶しただけでもビクッと必要以上に反応したり。
もしかして、私がお金持ちだってこと、まだ気にしてるのかしら……。
「はぁ……」
「どうしたの? 伊織ちゃん。なんだか暗い顔してたよ?」
「やよい……。聞いてよやよい! 千鶴ったらね!」
怒りともなんとも言えないモヤモヤした感情をやよいにぶちまけている。そう気付いたのは話を終えたあとのことだった。
「えーっと、伊織ちゃんは千鶴さんとお友達になりたいってことだよね?」
「なんで、なんでこんなことやよいに……。うぅ、私も穴掘って埋まりたい気分だわ……」
「伊織ちゃん?」
「……ええ、そうね。私はあいつと友達になりたいのかもね」
言葉にしてみると、今までモヤモヤした感情はすっ、と消えてしまっていた。
単純なことだけど簡単にできるなら苦労しない。こんな気持ちになるのは久しぶりね。
「やよいの時もこんな感じだったかしら……」
「えっ? なにか言った?」
何でもないわよ、と慌てて誤魔化す。こんな私をあいつはどう思ってるのだろう。
……もしかしたら邪魔だとか、厄介だとか思ってるんじゃないだろうか。
「伊織ちゃん! 大丈夫だよ! 千鶴さんもきっと伊織ちゃんと話したいって思ってるよ!」
「やよい……そうね! 今度私から話してみるわ!」
「うん! その意気だよ! えへへ!」
とにかく話してみないことには始まらないわよね。
それから少しずつ、千鶴と話をする機会を増やしていった。まだ仕事のことでしか話せていないけど……。
それでも一歩ずつ私のほうから歩いていこう。そう決めたのだ。
一週間ほど経ち、私はやよいと一緒にスーパーに来ていた。もやし祭りに招待されたのだ。
「千鶴さんとは仲良くなれた?」
「はぁ、全然ダメね。あいつ、私に苦手意識持ってるみたいなの」
「そうなの? うーんどうしてだろう」
やよいは千鶴がお金持ちだって信じてるし話さないほうがいいわよね。
「なんでかしらね。この前それで文句言っちゃったし」
「えー!? ダメだよ伊織ちゃん! 千鶴さんにもきっと事情があるんだよ!」
「そうだけどね! 大体あいつも細かいことを気にしすぎなのよ!」
やよいは私の愚痴を聞きながらテキパキと買い物を済ませていく。私もずっと見てきたからか、最近は食材の良しあしがわかるようになってきた。
買い物もそろそろ、といったところでタイムセールの放送が流れた。チラシにも載っていない突発的なものらしい。
それを聞いた途端、やよいは目の色を輝かせながら猛スピードで売り場に行ってしまった。どこにそんなパワーがあるのかと感心してしまう。
やることのない私は、渡された買い物カゴを持ちながら売り場近くでやよいを待つ。そして、見覚えのある顔を見つけた。
帽子をかぶり、眼鏡をかけているが、あれは間違いなく千鶴だ。
奥様方に負けじと商品を取ろうとしている。そして、おそらく掴んだのだろう。
上に持ち上げられた商品。それには同じように掴んでいたやよいの手が見えた。
「えっ? えっ?」
「はれっ!? ち、千鶴さん!?」
「やよい……さん?」
タイムセールは終わり、さっきまで人で溢れていた場所も今ではやよいと千鶴、そして離れた場所に立っている私だけとなった。
「千鶴さんじゃないですか!? どうして、あっ! 伊織ちゃん! 千鶴さんだよ!」
「へっ? 伊織ちゃん? 伊織ちゃんって、水瀬さんですの!?」
やよいが私に手を振っている。その方向にバッと千鶴が振り向き、目が合った。
「なんで、なんで水瀬さんがこんなところに!?」
私が軽い感じで挨拶してあげようとしてたのに、千鶴のギョッとした顔を見て、そんな考えは吹っ飛んでしまった。
「ちょっとなによ! 私がこんなところにいちゃいけないわけ!?」
「い、いえ! そんなことを言うつもりでは!?」
「いーえ! あんたの顔は会いたくない人に会ったって顔よ!」
「会いたくないだなんて! それは、ちょっと気まずいし本物のお嬢様だし……」
「やっぱり会いたくなかったんじゃない! 私はこんなにっ!」
「伊織ちゃん?」
「ふーふー! 何よやよい! 私はこいつに話が!」
「伊織ちゃん! お店の中で騒いじゃダメです!!」
その言葉で我に返った。不思議そうな、微笑ましいものを見るような他の客の視線と迷惑そうに様子を見守る店員。
恥ずかしさが込み上げてくる。千鶴も顔を真っ赤にしていた。
「話はお会計済ませてからね! 千鶴さんも一緒に行きましょーう!」
「ええ、お供しますわ……」
ニコニコと笑うやよいを先頭に顔真っ赤にしながら私たちは付いていくしかなかった。
レジで会計を済ませ、私たちはとりあえずスーパーから出て話すことに。
「それにしても、千鶴さんってスーパーで買い物してるんですね!」
「ええ! これも全て庶民の生活を学ぶため! わたくしのファンになる方々の生活を知る必要がありますから!」
「えー! なんだかすっごいかもー!」
移動中もぶつぶつ言ってたし、このドヤ顔。確実に設定を考えてたわね。
「さっき買い物カゴ見えちゃったんですけど全部お買い得品でしたよね!」
「こ、これも勉強の成果ですわ! おーっほっほっほゴホッゴホッ!」
慌てて駆け寄るやよい。大丈夫ですわ、なんて言ってるけど涙目になってるわよ。
「あっ、そうだ! 千鶴さんも一緒にもやし祭りしませんか?」
「もやし祭り? なんですの?」
「ちょっとやよい!?」
慌ててやよいの手を掴んで引き離す。千鶴はまたブツブツと言ってるし小声で話せば聞こえないわね。
「やよい? 千鶴を誘う必要ないでしょ!」
「だって伊織ちゃん千鶴さんと仲良くしたいんでしょ?」
「うっ! 確かにちょーっとは仲良くしてもいいかなーって思うけど……」
「ご飯を一緒に食べれば楽しくて絶対仲良くなれるよ! それにえっとうーんと……」
やよいは私を説得しようとしているのかうんうん悩んでる。これじゃ意地張ってる私がバカみたいじゃない。
「わかったわよ。千鶴も一緒にもやし祭りね」
「本当に? うっうー! ありがとう伊織ちゃん!」
お礼を言うのはこっちよ。まったく……。
「ありがとうね、やよい」
「え? 何か言った?」
「ありがとうって言ったの! それより千鶴さんのところに戻るわよ!」
千鶴のほうを見ると頭を抱えて悩んでいる。さすがに悩みすぎでしょう。
「もやし? 祭り? もやしで祭りっていったいどんな祭りですの?」
「何やってるのよ、千鶴」
「み、水瀬さん? いえなんでもないですわよ? おほほほ!」
「千鶴さん! これから一緒にもやし祭りしませんか?」
「えーとやよいさん? そのもやし祭りというのは?」
「やよい、それじゃわからないでしょ。千鶴、これからやよいの家でご飯を食べるんだけど、一緒に来ない?」
「やよいさんの家でご飯ですか? 今日は別に予定もないですが、ああでも買ったものがありますし」
千鶴の持っている袋は大きめの物が二つ、持っていくのは確かに大変だ。
「あうぅ……これだと私の家の冷蔵庫には入りそうにないです……」
「なら新堂を呼べばいいわね。新堂ならやよいの家も知ってるし」
「わたくしの家まで送ってもらえるってことですの!? それは嬉しいというか夢が叶うというか……いやいや迷惑をかけるわけには!」
「私はあんたを招待したいって言ってるのよ! 行きたいか行きたくないかで答えなさい!」
「ええっ!? それは、その……行きたい、ですわ」
「そう……なら決まりね!」
携帯を開き新堂を呼び出す。相変わらずのワンコールで出る新堂に手短に伝えるとすぐに来てくれるそうだ。
「すぐに来るそうよ」
「千鶴さんともやし祭りできるなんて! とっても楽しみですぅ!」
「わたくしも、よくわかってはいませんが、とにかく楽しみですわ!」
程なくして新堂が到着した。私たちは先にやよいの家に向かい、千鶴は家に帰ってそれからこっちに向かう。
「高級車の送迎よ。滅多にない機会なんだから楽しみなさいよね」
「み、水瀬さん!?」
笑いながら車から離れる。車はすぐに発進し、残ったやよいと二人で家に向かう。
「はぁ……ちょっと強引だったかしら」
千鶴がいなくなって、ようやくさっきまでの自分の言動を思い出すぐらいの余裕が生まれた。
本当に、なんであんな言い方しかできないのだろう。
「やったね伊織ちゃん! 千鶴さん来てくれるって!」
「ええ。もうちょっと上手く誘えたと思うけどね」
「そんなことないよ! 伊織ちゃんが来てほしいーって思ってるのが伝わってきたもん!」
「あはは、ありがとうやよい」
やよいはああ言ったけど色々考えてしまう。千鶴との距離が縮まるかもという期待と、嫌われるかもという不安。
そんな私とは違い、なぜかやよいはご機嫌な様子だ。
「ねぇやよい? どうしてそんなに嬉しそうなのよ」
「え? だって、伊織ちゃんが千鶴さんと友達になりたいって言ってくれたのがなんだか嬉しくって!」
「なによそれ。千鶴だけ特別ってわけでもないわよ?」
「でもでも伊織ちゃん、最近千鶴さんのことばっかり話してるよ?」
思い返してみると、確かに最近の話題は千鶴のことばかりだ。なんだか恥ずかしくなってきた。
「伊織ちゃんが嬉しいとね、私もなんだか嬉しくなるんだ! だから、困ったことがあったらなんでも言ってね!」
「やよい……やよいと友達になれて良かったわ」
「うん! 私も伊織ちゃんと友達になれてとーっても幸せだよ!」
満面の笑顔のやよいを見て、自然と私も笑顔になっていた。やよいの笑顔に、私は何度助けられたのだろうか。
さっきまでの不安は消えてしまった。私の問題なのに、自分のことのように悩み応援してくれている人がいるから。
やよいの時は、やよいから私の手を握ってくれた。今度は私から、千鶴の手を握ってやるんだから!
呼び鈴が鳴る。やよいは料理中なので私とちびっこたちで迎えることに。
「いい? 今日来るのは年上のお姉さんだから失礼のないようにするのよ?」
はーい、と元気よく返事が返ってくる。本当にわかってるのかしらと心配になるけど、千鶴だしきっと大丈夫でしょう。
「お、お邪魔しますわ」
おずおずと入ってくる千鶴にいらっしゃいと言うが、私の声はちびっこたちの声にかき消されてしまった。
やよいの兄弟たちに面食らっている様子。質問攻めにあたふたしながら対応する姿はおもしろいしまだ見ていたいけど、まずは中にいれないと。
「はーいストップストップ! こんなところで話してたらいつまでたっても入れないでしょ!」
はーい、と返事すると千鶴の手を引きながらあっという間に連れて行ってしまった。いつも元気いっぱいだけど千鶴は予想以上に気に入られたみたい。
「ええと皆さん? とりあえず自己紹介をしましょう? コホン、わたくしは二階堂千鶴ですわ!」
浩太郎、浩司、かすみ、長介と順に挨拶していく。もちろん浩三の紹介も忘れずに。
「あの……千鶴さん?」
「かすみさん? 何か聞きたいことでもありますの?」
「えっと……千鶴さんって王女様みたいな話し方だから、千鶴さんも王女様なの?」
「おお! 素晴らしいところに気が付きましたわね! わたくし、実はセレブなんですのよ!」
「セレブって、確かお金持ちって意味ですよね? すごいなぁ」
他の子はセレブって言葉にピンと来ていないようだが長介は知っていたらしい。それを聞くと他の子も目を輝かせながら色んな質問をしていく。
でっかい家なのか、ペットは何飼ってるのか、執事とかいるのか、とおおよそ私に聞いてきたことと同じ質問をする。
それにしても千鶴の答えは私の答えよりも豪華というか、いかにも庶民が考えるお金持ちみたいな答えだ。さすがにライオンは飼わないでしょう。
中でもかすみちゃんはウットリしながら話を聞いている。お姫様に憧れる歳だろうし千鶴は見た目なら上品に見えなくもないが。変なイメージ持たなきゃいいけど。
「あ! 千鶴さんいらっしゃいです!」
「あらやよい! お邪魔してますわ!」
「すっごーい! もう仲良くなっちゃったんですね! みんなー千鶴さんに迷惑掛けちゃだめですよー! 千鶴さん、ありがとうございます!」
「いえいえ、みんな良い子でわたくしも楽しいですわ!」
「もうすぐ出来ますので楽しみにしてくださいね!」
パタパタと台所に戻っていく。そろそろ私も会話に参加していこうかしらね。
それから千鶴のお金持ち話に笑ったり、遊びに付き合って千鶴が困ってるところをフォローしたりしながら、ついにもやし祭りの時間となった。
ホットプレートに乗った大量のもやしに千鶴もびっくりしているようだ。
「これがもやし祭りですの? なんだか、すごいですわね……」
「私も初めて見たときは驚いたわ。でも味は格別よ。私が保証するわ」
「そ、そうなんですの?」
他の子もうんうんと頷く。それでもまだ半信半疑みたいね。早く食べた時の顔が見たいわ。
「やよい、早くはじめましょ!」
「うん! それじゃあもやし祭り、はじまりですー!」
「「いっただきまーす!!」」
あっつあつのもやしにやよい家特製ソースがかかる。それによってじゅうじゅうと音をたてながら、おいしそうな匂いがあふれ出す。
「なんて良い匂い……! それでは、いただきます!」
千鶴の食べる様子を見守る。といっても口に入れた瞬間から頬を緩ませて幸せそうに味わってるし、感想は聞かなくてもわかるわね。
「おいしい……おいしいですわ! やよい! おいしいですわ!」
「ありがとうございます! どんどん追加していくのでたくさん食べてくださいね!」
「ええ! じゃんじゃん食べますわ!」
パクパクと勢いよく食べる。熱かったのか、はふはふ言っている姿に笑いが起きた。
それからはいっそう楽しくワイワイ騒ぎながら、今日のもやし祭りを堪能した。千鶴もかなり満足できたようだ。
ごちそうさまをしたあとは三人で後片付け。私ももう慣れたし、千鶴も普段から料理をするのか無駄がない。
いつもより早め終わって、今はリビングでゆったりだ。
「ふぅー、おなかいっぱいですわ! やよい、とってもおいしかったですわよ!」
「えへへ、ありがとうございます!」
「いつ食べても最高ね。私も少し食べすぎたわ」
「伊織ちゃんも千鶴さんもいっぱい食べてくれて、すごい嬉しかったです!」
「そうね。千鶴があんなに食べるとは思わなかったわ」
「余りにおいしかったのでつい……。み、水瀬さんも普段とは違ってがつがつ食べてましたわよ!」
「ギクッ! それは……やよいの家なら気を使う必要もないし……きっと食べ方が似てきちゃったんでしょうね」
家ではこんな風に話しながら食べることってないしね。
それからしばらく劇場のことなんかを話して、あっという間に解散する時間となった。
「じゃあまたね、やよい」
「誘ってくれてありがとうございましたわ! 楽しかったですわよ!」
「はい! 私も今日は楽しかったです! また来てくださいね!」
「ええ! 呼んでくだされば必ず行きますわ」
それじゃあ、と歩き始める。私は新堂との待ち合わせ場所まで千鶴に送ってもらうということになってるが、本当は二人で話したかったからだ。
「楽しかったですわ。やよいの家はいつもあんな感じですの?」
「そうね。いつも楽しくてあったかくて、私の家とは大違いよ」
「そうなんですの?」
「両親もお兄様たちも普段家にいないから、食事は基本一人ね。話し相手は新堂がいるから寂しいとは思ってないわよ? でも、ね……」
「そうだったんですの……。お金があるから幸せってわけでもないんですわね……」
なんだか、ちょっと湿っぽくなっちゃったわね。
「まぁね。あんたの家はどうなのよ」
「わ、わたくしの家ですか?」
明らかに動揺してるわね。おもしろいし、せっかくだから色々聞き出しちゃおう。
「そうよ。私も話したんだから千鶴も話さなきゃ不公平でしょ?」
「それは強引ではなくて!? まぁ話しても大丈夫……ですわね」
千鶴は両親と三人暮らしで、食事の様子も私の家よりやよいの家のほうが近いようだ。
「へぇー、ご両親は何をやってるの?」
「それはせいに、じゃなかった! 料理人みたいなものですのよ!」
誰が聞いても嘘だとわかるわよ。というかもうすぐ着いちゃうし! 早く言わないと!
「そうだ、千鶴。あんた、私を避けてるわよね?」
「それは……その……」
やばっ! なんでそんな言い方しちゃったのよ私! これじゃ威圧してるだけじゃない!
「ええと、あんたが私を苦手に思ってるのはわかるけど、私は仲良くしたいと思ってるのよ?」
よし! よく言ったわ私!
「えっ!? そうだったんですの?」
「そうよ! あんたは練習熱心だしおもしろいし、今日だって、その……そのために呼んだんだから!」
「てっきり嫌われているものと思ってましたわ……」
「はぁ!? なんでそんなこと思ってたのよ!」
「ひぃ!? だって、水瀬さんはお金持ちだから……わたくしが嘘ついてるってわかるだろうし、嫌われて当然ですわ」
「それは、まぁ適当言ってるって最初からわかってたけど。それで嫌いにはならないわよ」
「本当ですの?」
「そりゃあ最初は近づかないほうがいいかって思ってたけど、あんたが口だけの人間じゃないってわかったから。偽物だとしても、あんたがしてきた努力は全部本物でしょう?」
「そう……ですわね……」
「努力している人間を嫌いになるわけないじゃない。それも気付かれないようにこっそりやってる人間を」
「き、気付いてましたの?」
「あんたはわかりやすいのよ。まぁ私がよく見てたってのもあるけど」
「あはは……バレバレってことですわね」
「そうよ。ついでに言えば、他の皆もあんたが金持ちじゃないことぐらい気付いてるわ。環とかあそこらへんは信じてると思うけどね」
「そうなんですの!? 自分ではうまく誤魔化せてると思ってたのですが……」
「無理よ無理。あんたは隠し事できる性格じゃないわ。でもね、あんたがそんなやつだから、皆もあんたを慕ってるのよ?」
「……本当にそうでしょうか?」
「ええ。あんたは何気なくやってるかもしれないけど、一生懸命練習してる姿に勇気を貰ったり、フォローしてもらったって話をよく聞くわ」
「あんたがどんな事情で嘘をついていようと、仲間思いで努力家だって皆知ってる。だから心配する必要はないわ」
「……なんだか私だけが空回りしてますわね」
「それでもやめる気はないんでしょう?」
「ええ、まだやめるつもりはありませんわ。そう決めてますもの」
「……それでいいのよ。あんたは」
「ありがとうございますわ。正直、皆から嫌われてるんじゃないかって不安でもありましたの。でももう迷いませんわ」
「相談ならいつでも乗るわよ。あんたのことなんて、この伊織ちゃんにはお見通しなんだから」
「ええ。今日は水瀬さんと話せてよかったですわ」
なんか話がずれちゃったけど、言いたいことは言えた。でも、あとちょっとぐらい、図々しくしてもいいわよね?
「……ねぇ千鶴? 不公平だと思わない?」
「なにがですの?」
「その、水瀬さんっていうの。私は千鶴って呼んでるわよね?」
「ええと確かにそうなんですけど、ずっとそう呼んでましたしなんだか恥ずかしいし……」
「いいから! 伊織って呼んでほしいのよ! こんなこと言う私のほうが恥ずかしいわよ!」
「それじゃあ、伊織、さん」
「やよいにはさん付けしないわよね?」
「うぅ……い、伊織! これでいいですの!」
「最初からそう呼びなさいよね。……にひひっ!」
なんだかあっという間に話してしまった。思ってることが素直に言葉になって、いつもの自分じゃないみたい。
でも、悪い気分じゃないわね。
いつの間にか、待ち合わせ場所に着いていた。すぐそこで新堂が待っている。
ずっと歩きながら話していた。それまでもずっと横目で見るぐらいしかできなかった。
それが今、ようやく立ち止まって、目を合わせて会話することができたのだ。
「改めてよろしくね、千鶴」
「こちらこそよろしくお願いしますわ、伊織」
月明かりに照らされた千鶴は見惚れるぐらい自然な笑顔だった。たぶん……私も同じ顔をしているだろう。
車に乗り込み手を振る。千鶴の姿が見えなくなるときまで、お互いに手を振り続けていた。
「……お嬢様も千鶴様も、良い笑顔でございましたよ」
「ええ、やっと……友達になれたのよ」
そう、やっと友達になれたのだ。
「……ありがとね、新堂」
「私はなにも。お嬢様とやよい様、千鶴様がお互いに歩み寄った結果でございます」
それから新堂は何も言わなかった。私も何も言わなかった。言葉はなくても私たちを祝福してくれていると伝わってきた。
これからどうなるかはわからない。でも、昨日までより素晴らしい日々になることは間違いないだろう。
私は今、こんなにも幸せなんだから。
次の日から千鶴と過ごす時間が多くなった。千鶴がボケて私がツッコむ、以前では考えられないことだ。
それと色んな人から仲良くなったと言われた。私と千鶴が気まずい関係であったことに気付いていた人もいたらしい。
このみやあずさが気付いていたのは、やっぱり大人だからかしら。普段はあんななのにさり気なく見てくれていたみたい。
千鶴と一緒に練習することも増えている。二人でやったほうが効率がいいとかなんとか、千鶴から誘ってきてくれたのだ。
歌は私で、演技は千鶴。ダンスは二人でやるか、時々やよいに手伝ってもらっている。
大きな仕事が終わるたびにやよい家でもやし祭りをしている。この前は千鶴特製のコロッケ祭りだったかしら?
そんな風に、色んな思い出ができた。合宿では花火を持って千鶴を追いかけたりもしたっけ……。
「伊織? 何考えてますの?」
「へっ!? なんだ、千鶴か……」
事務室の椅子に座り、することもなくボーっとしていたら、いつの間にか後ろに千鶴がいた。びっくりして変な声出しちゃったじゃない。
「なんですのその言い方……。まぁいいですわ。ずいぶん幸せそうでしたけど、何か良いことでもありました?」
うーん、本当のこと言うのも恥ずかしいし、適当に流しておきましょう。
「なんでもないわよ。それより、その持ってる袋は?」
「これですの? ふっふーん! 超高級ハムカツですわ! そろそろ小腹がすく時間でしょう?」
「はいはい、いつもの二階堂家特製ハムカツね。一つもらうわよ」
「す、少しも信じないですわね……」
「もぐもぐ……当り前よ。見た目、匂い、味を知ってれば簡単にわかることよ」
うん、何度食べてもおいしいわね。言うと調子に乗るし黙っておこう。
「……まぁ伊織を騙せるとは思ってませんわ。それに、そんな嬉しそうに食べてくれれば私からは何も言えませんわね!」
思わず吹き出しそうになる。そんな顔に出てたかしら……。
「ふふっ、わたくしは他の方にも渡してきますわ。伊織はこれから仕事ですの?」
「変なこと言うんじゃないわよまったく……。違うわよ。なんか重大発表とかでプロデューサーに呼ばれたのよね」
それじゃあ他の人にも渡してくるから、と言って千鶴は出て行ってしまった。プロデューサーにと渡されたハムカツは私が食べておこう。
「すまん伊織! 待たせちゃってって、何食べてるんだ?」
どたどた慌ただしい足音が聞こえたかと思ったら、勢いよく扉が開くと紙の束を抱えたプロデューサーが入ってきた。
「これ? 千鶴のハムカツだけど」
「なにー!? お、俺のは!?」
ないわよと言い放つ。私を待たせた罰ね。
「くっそぅ……。いやっそんなことより! 伊織! ついに企画が通ったんだよ!」
目を輝かせながら言ってくる。興奮してるのか鼻息が荒い。
「興奮してるのはわかったからもう少し落ち着きなさいよ!」
悪い悪いと言いながら空いている椅子に座って向き合う。
「いいか? 落ち着いて聞いてくれよ?」
思わず身を乗り出す。
「実はな……伊織と千鶴のユニット結成が決まったんだ!!」
「……へ?」
千鶴と私が……ユニット!?
「なっ、えっ!? 聞いてないわよそんなこと!?」
「いやぁー最近伊織と千鶴、仲良いだろ? 仕事でも結構うまくやれてるし思い切ってユニットで売り出そうと思ってな!」
「そういうのは私たちに相談してから決めなさいよ!!」
「嫌なのか?」
「えっ? そりゃあ嫌ってわけじゃないし、むしろ嬉しいというか……」
最近妙に千鶴と一緒に動くことが多いからラッキーぐらいにしか考えてなかったけど、裏でそんな計画があったなんて。
千鶴との仕事は楽しかったし、やることだって大きく変わるわけじゃないけど……。
「なんだ、やっぱり嬉しいんじゃないか。そんな幸せそうにしちゃって、伊織もまだまだ子供だな」
「なっ!? そんなんじゃないわよ! ま、まぁ千鶴と一緒なら良いユニットになりそうね!」
「そうだろうそうだろう! やっぱ俺の目に狂いはないな!」
笑いながら千鶴に電話するプロデューサー。数分後にやってきた千鶴にも同じ話をして、千鶴も私と同じぐらい驚いた。
「ええと、伊織はなんて?」
「……やりたいって答えたわよ」
「そ、そうなんですの? それじゃあ、これからも、よ、よろしくお願いしますわ!」
「こっちこそ、えっと、よろしく!」
千鶴が顔真っ赤で言うもんだから私まで顔が熱いわよ。まったく……。
「うんうん! それじゃ色々話さなきゃいけないこともあるけど、まずはユニット名だな!」
「ユニット名ですの?」
「俺のほうでも考えてはいるんだが何かアイデアはないか?」
ユニット名かぁ。私と千鶴、どんな名前がいいだろう。
「セレブとニセレブ、とか?」
ニセレブとは千鶴のファンが付けた愛称だ。ニセのセレブだからニセレブ、単純だがわかりやすい。
「ちょっ!? 伊織!?」
「嘘嘘、冗談よ。でも何かないかしらね……」
「ユニット活動は次の定例ライブで発表する予定だ。それまで候補を考えておいてくれ」
それからは方針について話し合ったり、スケジュールなんかを合わせたりして解散することとなった。
「それにしても急な話よね。あんなにパッと決めちゃってよかったの?」
「それはお互い様でしてよ? 伊織だって聞いたばかりなのに決めてましたわよね」
「まぁ……そうだけど……」
「大丈夫ですわ。いつも通り二人で力を合わせて、目指せトップアイドルですわよ! おーっほっほっほゴホッゲホッ!」
「ちょっと、大丈夫?」
二人で力を合わせて、か。二人でなら、きっと大丈夫よね?
「なんなのよあいつ!!!」
定例ライブまで一か月を切ったある日。その日は人気バラエティに765プロとして出演していた。
メンバーは私と千鶴。ペアでクイズに答えたり運動したりといった内容だ。
司会者の人も何回か会ったことがあり、ニセレブネタで盛り上がることがお決まりのようなものだった。
問題は出演者の中に、人気急上昇と言われる話題のアイドルがいたことだ。
事務所の方針がかなり強引なんだろう、優先的に話題が振られていることは番組中でわかっていた。
しかしその日は千鶴の奇跡的なボケがあったりとテレビ的に美味しいところはうちが持っていってしまった。それが原因だ。
撮影後、向こう側に呼び出された。そこでのプロデューサーへの言いがかり、千鶴への言いがかりは理不尽としか言えないものだった。
プロデューサーも千鶴も必死に謝っていた。汚い言葉、傲慢な態度、それらに文句ひとつ言わず、ただ謝罪を繰り返していた。
それを私は、黙って見ていることしかできなかったのだ。
「伊織、わたくしは大丈夫ですから。とりあえず落ち着きましょう?」
「落ち着いてなんかいられないわよ! 何よあいつ! あることないこと好き放題言って!!」
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765は番組と組んでる。どうせヤラセや仕込みがあった。受け狙いのキャラ作りなんて流行らない。ごり押しできるほど芸能界は甘くない。
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「ふざけるんじゃないわよ! あんたの事務所のほうがよっぽどじゃない! 私たちがどれだけ努力してきたと思ってるのよ!」
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どうせすぐにいなくなる。芸人に転向するのがお似合いだ。ファンの見えないところで何をしているやら。
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「気にすることないですわ! 今日は、そう! ちょっと運が悪かっただけですわ!」
「なによそれ!? 千鶴も何か言いなさいよ! あいつに好き勝手言われて悔しくないの!?」
イライラが収まらない。あいつにも、何も言えなかった自分にも。
「私は……私は! 悔しいわよ……! 千鶴があんなこと言われて! 黙ってることしかできなくて!」
呼び出されたのは二人だけだ。怪しく思った私はついていくことにして、すぐそばで聞いていたのだ。
けど、何もできなかった。私が入ったら余計ややこしいことになる。それぐらいはわかってた。だけど……。
「ひっ…うぅ…ふざけるんじゃ…ないわよぉ!」
話が終わって、千鶴がすっごく苦しそうな顔してて、でも私を見て笑顔を作ろうとしてくれて……。
「伊織、ありがとうですわ。わたくしのために泣いてくれて」
何かに包まれた。暖かくて、ちょっと苦しいけど柔らかくて、すぐそばから千鶴の声が聞こえる。
「わたくしだって悔しかったですわ。でも、いつか今日みたいな日が来ることも覚悟してましたから」
「それにわたくしと伊織は一緒にトップアイドルを目指すんですから。こんなところで問題を起こすわけには、いきませんわ」
千鶴の顔がすぐ目の前にあった。涙を流していたけど、いつも見せる優しい笑顔だった。
「伊織が今日まで支えてくれたから諦めずに進むことができた。だから、これからもわたしを支えてくれますか?」
バカね……そんなの、決まってるじゃない。
「ええ……もちろんよ……千鶴っ……!」
いつだって私が支えるわ。だから、今だけは泣いてもいいわよね?
あれから少し経ってプロデューサーが戻ってきた。できる限りのことはしてきたって言ってたからきっと大丈夫だろう。
プロデューサーに謝られたけど二人で元気に振る舞った。番組内の話で盛り上がって、プロデューサーもやっと笑ってくれた。
最後は三人で笑いながら悪口を言い合って、プロデューサーは劇場に、私たちは新堂の車で帰ることになった。
「伊織には話してませんでしたわね。私がどうしてこんなことをしてるか」
「こんなことって?」
「セレブの真似事ですわ。高級車に乗ってこんな話をするのも、なんだかバカらしいですけど」
「そういえば聞いてなかったけど、いいの?」
「いいんですわ。これ以上伊織に隠す必要もないでしょうし、これからは一緒に活動するんですから」
一呼吸おいて、千鶴は話し始めた。
「わたくしはどこにでもあるような普通の家で生まれましたわ」
「両親は精肉店をやっていて、子供のころからよくお手伝いしてましたわ。お客さんにかわいいねって言われるのが嬉しかったんですわね」
「それの影響か昔から目立つことが好きで、学生の頃は色々やりましたけど、二十歳を超えたぐらいからそんな気も起きませんでしたわ」
「だけどたまたまアイドルのライブを見る機会がありまして、それを見て思いましたの。わたくしもステージに立ちたいって」
「親も許してくれて、今でも応援してくれていますわ。ですが、わたくしはアイドルのことを何も知りませんでしたわ」
「テレビや、学校で聞く有名なアイドルを知ってるぐらいでしたから。わたくしがアイドルになれるのかって不安でしたわ
「見た目には自信ありましたけど、21歳ですのよ? 若い子がたくさんいる中でやっていけるのかと思ってましたわ」
「だから他の子にはない個性を作ろうと思って、それでお金持ちのキャラで行こう! と、そう思いましたの」
「最初は仲間やファンを騙すことになりますけど、トップアイドルになれば本当のことにできる。そう信じることにしましたの」
「改めて考えると、本当にバカらしい理由ですわ。でも初めて本気で夢を叶えようと考えた結果ですから。一度決めたことは曲げませんわ」
「最初は辛いと思うことも多かった。でも、今は楽しいんです。本物か偽物か、そんなもの関係なく私を仲間と呼んでくれる人たちがいますから」
「それに、わたくしを支えてくれる人がいますから」
「……本当にバカらしい理由ね」
「そうですわね。でも、後悔はしていませんわ」
「そう……ならいいんじゃない? すっごくあんたらしい答えよ」
「褒め言葉として受け取っておきますわ。……ねぇ、伊織はどうしてわたくしと仲良くなろうなんて思いましたの?」
そういえばそうね。なんでだったかしら。
「伊織が話しかけてくれなきゃ、今でもわたくしは伊織を避けていたかもしれませんわ」
「そうねぇ……なんとなく、じゃダメかしら?」
「ダメですわ」
「なによそれ。うーん……」
素直な心で今までの自分を見つめなおす。そして浮かんできた思いを、とりあえず口に出してみることにした。
「たぶん千鶴が羨ましかったんじゃないかしら」
「羨ましい?」
「私はね? 家族や、世間に認められたくてアイドルを始めたの。水瀬の娘じゃなくて水瀬伊織っていう人間として」
出来のいい兄、莫大な富や権力、そんなものに頼らず自分だけの力で何かをしたかった。
「私ならトップアイドルになれるって、意地を張ってたわ。プロデューサーにも今日みたいに色々迷惑かけたの」
「それからやよいと友達になって、他の仲間を信じることができて。そしたら劇場の話よ」
新しく人が入ってくる。私にとって不安のほうが大きかった。今までの関係が崩れてしまうんじゃないか、そう思った。
「最初は不安だったけど、新しく入ってきた仲間を見てね? 助けなきゃって思ったの。今度は私から信じてあげようって」
可奈や志保、杏奈に桃子、前に進めなかったり一人で歩こうとしてる子を支えないとって思えた。
「それで、千鶴がやってきた。最初はただ変な人としか思えなかったわ」
「でも一人練習してる姿を見て、もしかしたら悩んでたりするのかなって思った。まっ、すぐにバカだって気付いたけどね」
「でもね、それってすごいことだと思ったのよ。ただトップアイドルになりたいからってあれだけ練習してるんですもの」
「それに他のメンバーとも打ち解けて、悩みも聞いてあげたりして、私より全然すごいなぁって思ったの」
私もトップアイドルになることが夢だ。その理由が認めてほしいからじゃない、楽しいからに変わったのは、きっと仲間たちのおかげだ。
「そんな風にあんたの良いところを見ていたら、仲良くなりたいなぁって自然と思えたのよ。どう? これで満足?」
正直自分でもよくわからない。ただ浮かんできた思いを言葉にしただけ。正確ではないかもしれないけど、どれも本心だ。
「ううぅ…伊織ぃ……。わたくしのことをそこまで……!」
「ちょっなに泣いてんのよ! まったく、しょうがないわね!」
一つだけ言わなかったことがある。千鶴が私の姉さんだったら、どれだけ幸せなんだろうって。
こんなこと、私に抱き付いて泣いてる千鶴には言えないわね。
それからの時間は本当にあっという間で、ついに定例ライブの日が訪れた。
この後はいよいよラストの曲、私と千鶴が初めてユニットとして披露する曲だ。
「伊織!? どこも変じゃないかしら!?」
「大丈夫よ! まったく少しは落ち着きなさいよね!」
「そ、そうですわね。初舞台、絶対成功させないと……ああぁ!」
「うっさいわねぇ! あんたはいつもみたいにおーっほっほっほ! って笑ってればいいのよ!」
「落ち着いて、落ち着いて……おーっほっほゴホッゴホッ!」
「ちょっと! いい加減できるようになりなさいよね! 万全の状態で歌えないでどうするのよ!」
「だって伊織がやれっていうから……」
「私のせいにするんじゃないわよ。……はい、衣装もメイクもばっちり。喉は?」
「ふぅ……少しお水を飲みましたから大丈夫ですわ」
「よし、それじゃ行くわよ」
「ああっ!? ちょっと待ってください!」
「なによ!」
「すぅ、はぁ……絶対、トップアイドルになりますわよ! 伊織!」
「まったく、やっとスイッチ入ったわね! にひひっ!」
スタンバイに入る。前の曲が終わり、私と千鶴のMCが始まる。
ここから、私たち二人の道が始まるのだ。水瀬伊織と二階堂千鶴ではなく、二人で決めた、二人だけの名前で。
いつまでも輝いて、絶対にアイドルの頂点に立つ。そんな願いを込めて。
_________
「……これ、伊織と千鶴で決めたのか?」
「そっ、我ながら良い名前じゃない?」
「そうだなぁ。確かに良い。二人にはぴったりの名前かもな!」
「それじゃ決定ね! 千鶴にも私から言っておくから!」
「おいおい確定したわけじゃ! 行っちゃったか。まっ、二人が決めた名前だ。誰にも文句は言わせない!」
「二人なら世界中に届くぐらい輝ける! そう信じてるぞ!」
_________
「にひひっ! さいっこうの曲をあんたたちに送るわよ!」
「わたくしと伊織のユニット曲! 初公開ですわ!」
これが、私と千鶴の、最初の一歩!!
「「ジュエリースパークで!!」」
『 DAIAMOND 』
これで終了です! 読んでくれた方、ありがとうございます!
今の自分にはこれが限界です! 伊織と千鶴の良さが少しでも伝われば幸いです!
3月26日に『THE IDOLM@STER LIVE THE@TER PERFORMANCE 12』が発売されます
出演者は萩原雪歩、二階堂千鶴、周防桃子、ロコの4人です! 今回書いた二階堂千鶴が出ているのでぜひ買ってみてください!
曲の試聴もできますので良ければ聴いてみてください!
それでは、本当にありがとうございました!
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