ちひろ「え?侍がタイムスリップしてきてアイドルのプロデュースですか?」(1000)


モバマスSSです。

この作品は侍が現代の日本にタイムスリップしてくるお話です。

敏腕Pの元経験を積んでアイドル達をプロデュースしていきます。

書き溜めとかないんで更新は遅めですけど。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1370428252

――秋葉原 中央通り付近――

侍(此処はいずこだ?)ここはどこだ?

侍(確か拙者は合戦をしてござった手筈……)確か俺は合戦をしていたはずだ。

侍(なのに、居られたらかのようなわけもわよりぬ場所に……)なのに、気がついたらこんな場所に……

侍(輩、大層ゐる……)人はたくさんいるが……

侍(何奴も武器を持とはおらぬ)誰も武器は持っていない。

ちょっと侍語はやりにくいから普通の侍っぽい喋り方に変えるね

侍(不思議な場所だ……)

侍(みな、手に四角く薄い箱のようなものを持っている)

侍(あれはなんだろうか……)

侍(拙者はもしかして合戦中に死んだのだろうか?)

同じパターンアイマスで書いてて落とした人?

侍(着物も拙者が見た事もないようなものだ)

侍(ここが天国だと言われても頷ける)

モバP「あのー……ちょっといいですか?」

侍「何奴だ!」ガチャ

モバP「腰の摸擬刀に手を掛けないでくださいよ」



>>8

二番煎じだったか……

どうしよう。このまま続けていいのだろうか。

うーん。もし一番目の人のファンの方で不快感を抱いてしまったらすいません。

それじゃあ、続きいきます。

侍「貴様……もしかして敵か?」

モバP「違いますよ。ほら、丸腰でしょ?」

侍「確かにそうだが……」

モバP「はぁ……。成りきるのは構わないんですけどその格好じゃ職質受けますよ?」

侍「しょくしつ? 一体なんのことだ」

モバP(うわ……重症だ)

モバP「鎧を身に纏って摸擬刀を腰に掛けてたらただの不審者ですよ?」

侍「貴様! 拙者の身形を愚弄するか!?」

モバP「そういうわけじゃないんですけど……」

モバP(喋り掛けないほうがよかったな)

モバP(もういいや。適当に終らせよう)

侍「まぁ、いい。敵じゃないことはわかった」

侍「貴様、ここがどこだかわかるか?」

侍「拙者は先程まで合戦場にいたんだが……」

侍「どういうわけか今ここにいる」

モバP「合戦場?」

モバP(もしかして……)

モバP「すいません。今が西暦何年か知ってますか?」

侍「? なぜそんなことを申すか」

モバP「えっと……今は西暦2013年なんですよ」

侍「馬鹿を申せ。世は戦国――」

モバP「私にとってそれは何百年も前の出来事です」

侍「な! 貴様、本気で申しているのか!?」

細かいことは気にしないでください。

そういうのが嫌いな人がいたなら申し訳ないです。

暦とかのほうがよかったのかな?

小難しい言葉やら現代なかなか使わない言葉だと読者にストレスが掛かるんでなるべく避けてはいるんですけど。


やっぱりリアルを追求したほうがいいですか?

それならもっと勉強しますけど。

そうですか。ちょっと真面目にやりすぎだったかな……

じゃあ、おかしな点があったら

「ありえねからwwwwww」

的なノリでお願いします。


モバP(言動やらをみれば嘘をついているかどうかはわかるけど……)

モバP(この様子じゃどうも……)

モバP(いやいや、絵空事じゃないんだから)

侍「今の話は本当なのか?」

モバP「私の頭がおかしくなっていなければ」

侍(信じたくはないが、この状況を考えればあり得ない話じゃない)

侍「貴様、もう少し詳しく話を聞かせてはくれまいか?」

モバP「え、えぇ。どっから話そうかな……まずは――」


侍「その話は真か!? 尾張の織田が世を統治したのではないのか?」

モバP「史実ではそうなっています」

侍「そんなことが……」

侍「しかし、ここは拙者がいた時代よりも先なのだろう」

侍「それは納得するほか致し方ないないな……」

モバP「本当にあなたは戦国時代の人間なんですか?」

侍「信じたくはないがそうだ。拙者の名は侍。以後宜しく頼む」

モバP(順応力が高いって言うか……すんなりとここが未来であることを把握してくれたな)

モバP(柔軟で理解力があるのか)

侍「すまないな。こんな見ず知らずの拙者に良くしてもらって」

侍「その行為、痛み入る」

モバP「構いませんよ」ニコ

モバP(最初は面倒な奴だと思ったけど礼儀とかはしっかりしてるんだな)

まあリアルうんぬん言いだしたら当時の人と現代人がスムーズに会話できてる時点で……

>>35

確か発音とかにも微妙な違いがあるんでリアルならニュアンスで判断するしかないですよね。

ちょうど侍さんがいる時代だと西洋の文化が入り始めているんで言語や発音は前の時代に比べて現代っぽいみたいですけどね。

侍(そうか……ここは拙者が暮らしていた時代とは違うのか)

侍「しかし、拙者はやるべきことがある故、帰りたいのだが……」

侍「お主は帰り方を存じているか?」

モバP「さぁ……それはちょっと」

侍「なに!? それでは拙者はどうすればいいのだ!」

モバP「わ、わからないですけど。おそらくそう易々とは帰れないと思います」

侍「それでは、拙者は一体どうすれば」プルプル

侍「拙者はこの時代を生きる術も知恵もござらぬ……」

侍「家もなければ銭もない」

侍「致し方……ないのか」ガチャ

モバP「うわー! 刀で腹を切ろうとしないでください!」

侍「しかし、拙者は飢え死にするほか道は残されていない」

侍「それなら、腹を切手死んだほうがましというもの」

モバP「まだ、まだ帰れないときまったわけじゃないですから!」

モバP「それに乗り掛かった舟です。私がどうにかしますよ」ニコ

侍「だが、拙者はお主になにもしてやれぬぞ?」

侍「そんな親切をする必要は皆無のはず」

侍「しかも知りもしない一人の侍のために」

モバP「困ったときはお互い様ですよ?」

モバP(なんか面白そうだし、いっか)

侍「……」ポタポタ

侍「ご厄介になるでござる」

モバP「お、往来で泣きながら土下座するのやめてもらえませんか!?」

侍「すまぬ……」

侍「失礼だとは存じているが名を聞かせては戴けまいか?」

モバP「モバPっていいます」

侍「P殿! 拙者、このご恩は一生忘れませぬ!」

モバP「だから、土下座はやめてください!」

モバP(真面目だなー……)

―――事務所近く―――

モバP「もうすぐ着くから待ってろよー」

侍「御意でござる」

モバP(敬語は使わなくていいみたいだけどやっぱ侍の言い回しは気になるなー)

モバP(それにあのなりだから目立って仕方ない)

侍「P殿。なに故拙者は周りの人間にジロジロと見られてるでござるか?」

モバP「えっと……周りからは異国から来た宣教師のように見えてるんだよ」

モバP「物珍しくてただ見てるだけだから気にしなくてもいいよ」

侍「そうでござるか……」

あかん。ござるの使い方間違えた。まぁ、それっぽいからいいや。

侍「それからあのからくりの正体はなにでござろうか?」

モバP「あれか? あれは自動車っていって移動に使う馬のようなものだよ」

侍「じどうしゃ?」

モバP「そうそう。疲れを知らなくて早い馬だと思えばいいよ」

侍「左様でござったか」

侍「しかし、みらい……は変ったものが多ゐでござるな」

※ござる口調は敬語を使ってるってイメージしてください

侍「度々でかたじけないが――」

モバP(凄い好奇心。なんにでも食いつくな)

モバP「あれはな――」

モバP(あんなに目をキラキラさせていると教えがいがあるな)

侍「む?」

モバP「どうしたんだ侍?」

侍(あそこにいるおなご……)

侍「しばし、刻限を願いたもうぞ」

モバP「あ! ちょっと」

侍(先程あそこにいたおなご。顔色が優れないように見受けられた)

侍(いた!)

女「……」フラ

侍「よきか!?」ガシ

女「あ……すいません。少しふらついてしまって」

モバP「えらくタイミングが良かったな……」

侍「先程チラッと顔が見えたとき顔色が悪かったでござる」

モバP「そうだったのか……」

女「私はもう大丈夫ですから」

女「ご迷惑をおかけしました」スタスタ

侍「真によきか?」

侍「去っていった……」

モバP「よく気付けたな」

侍「偶然でござる」

モバP「それにしても普通しらない女の人に具合が悪そうだからって理由で近づけないよ」

モバP(気遣いも出来るんだな……)

侍「おなごに優しくするのは当然でござる」

侍「しかし、P殿のお言葉。有難く頂戴するでござる」

モバP(それに女の子に対しても誠実……)

モバP(これは育ててみたくなったな)

―――

モバP「ここがうちの事務所だ」

モバP「人は……珍しく誰も居ないな」

侍「ここがP殿の会社<城>でござるか……」

モバP「ちょっと待ってろ。すぐに俺の着替えを貸してやるから」スタスタ

侍「かたじけない。拙者は鎧を脱ぐでござる」

侍(ふー。それにしてもP殿はなんでもお知りになられている)

侍(よき、お人に会えることが出来申した)

侍(殿よ。しばし拙者はここで帰る方法を模索するでござる)

トゥゥゥル

侍「」ビク

侍「何事だ!」抜刀

トゥゥゥル

侍「」ビク

侍「貴様か……」


侍(なんだこの音の鳴るからくりは……)

侍「……」ツンツン

トゥルルル!

侍「」ビクン

侍「急に騒ぐでない!」

ピー

電話の留守番録音『あ、モバプロダクション様でよろしいでしょうか? 私――』

侍(からくりが喋った!?)

侍(いや……もしかしたらあやかしの類かもしれぬ)

侍(……切り捨ててみるか)

侍(いや、よしんば重要なものだとしたら……)

モバP「どうしたんだ」

侍「P、P殿! あれについて説明していただきたいでござる!」

モバP「あれは――」

侍「なるほど。それは画期的なものでござるな」

モバP「これが出来たのは150年くらい前かな?」

モバP「お前からすると数百年も先の話だ」

侍「歴史を感じるでござる」

モバP(侍も十分歴史を感じさせてくれるけどな)

モバP「それより、どうだ? 初めて着るスーツは」

侍「どうにも動きづらいでござる」

モバP「それは鎧のように誇り高い衣服なんだ」

モバP「合戦に出るとき必ず身につけてなきゃいけないものなんだよ」

侍「そのような大事なものを貸してもらってかたじけない」

侍「それに着替えるのも手伝ってもらいかたじけなかったでござる」

モバP「そればっかりは初めてだとしょうがないからな」

ガチャ

モバP「戻ってきたか」

侍「?」

ちひろ「すいません。ちょっとコンビニに行っていました」

モバP「外に出るときは鍵くらい閉めていってくれよー?」

ちひろ「あー、忘れてました」

ちひろ「てへ☆」コツン

モバP(うわぁ……)

侍(可愛ゐい仕草だな……)

ちひろ「あれ? この人は誰ですか?」

ちひろ(ちょ、ちょんまげにスーツ。私、顔にやけてないかな? 失礼になってないよね?)



モバP「ちょっと説明すると長くなるんだけど……」

侍「拙者の名は侍と申す」

ちひろ(ガチのほうの人だ)ドンビキ

ちひろ(精悍な顔付きをしてて男前だけど、残念系だ)

ちょっと今日はこれくらいにします。

続きは明日がんばるじぇー

下手するとこのスレ丸々一個使いそうになるんで気長に待っててくださいね

面白くかけるように努力します。

モバP「ちひろ、ちょっと」クイクイ

ちひろ「なんでしょうか?」

モバP「信じてもらえないとは思うんだけど」

モバP「実は彼な戦国時代からタイムスリップしてきた人間なんだ」

ちひろ「はい?」

モバP「俺も正直疑ってたんだけどここが現代で帰れないかもしれないってわかった瞬間」

モバP「往来のど真ん中で腹を切ろうとしたんだ」

ちひろ「それは災難でしたね……」

ちひろ「ていうか、なぜ話しかけたんですか?」

モバP「ほっとけないオーラが漂っていたから」

ちひろ「あー……またそれですか。頼みますからそういうのは女の子だけにしてください」

モバP「はは、まぁいいじゃない」

ちひろ「その能天気なのもやめてください」

ちひろ「でも、本当なんですか?」

モバP「そこに鎧とか兜とか刀があるでしょ?」

モバP「それが証拠」

ちひろ「た、確かにありますけど……」

ちひろ「まぁ、いいです。納得はいかないですけど一応理解しました」

ちひろ「けど、この事務所に連れてきて一体どうするんですか?」

モバP「ここのプロデューサーになってもらう」

ちひろ「え、え。ちょっと!? なに言ってるんですか!」

モバP「最初は適当に清掃要因として確保しようとしたんだけど……」

モバP「面白そうだし、アイドルのプロデュースをさせてみたくなったんだ」

ちひろ「正気ですか?」

ちひろ「言葉は悪いですけど頭おかしいですよ?」

モバP「言われると思った」

モバP「でも……例えこの時代で生きていなかった人間だとしても」

モバP「あいつにはプロデューサーの素質がある」

ちひろ「……きっとPさんがそういうならそうなんでしょう」

モバP「基本的には俺がナウハウを教えるから安心してくれ」

ちひろ「え?」

ちひろ「どういう風の吹き回しですか?」

ちひろ「Pさんっていろんなところからプロデューサーを養成してくれって話を全部断っているんですよね?」

ちひろ「それって自分のノウハウを人に知られたくないからじゃないんですか?」

ちひろ「なのに突然そんなことを言い出すなんて……」

モバP「確かに、俺は敏腕Pとして前いた事務所で芸能界一のプロデューサーって言われてた」

モバP「ノウハウを人に晒したくないのも当たっている」

モバP「……なぁ、ちひろ」

モバP「アイドルをスカウトするときってどんな気持ちだかわかる?」

ちひろ「急にどうしたんですか?」

モバP「いいから」

ちひろ「そうですねー……やっぱりこの子は可愛い! とかですか?」

モバP「……」フルフル

モバP「わくわくしたときだよ」

ちひろ「わくわく?」

モバP「こいつならアイドル業界を叩き壊すほどの力を持ってる」

モバP「そういう原石を見かけたときはすげーわくわくするんだ」

ちひろ「……じゃあ侍さんはPさんの目に原石としてみえたんですか?」

モバP「それもとっびきりのダイヤモンド」

モバP「柔軟性があって理解力もある。観察力もあって気遣いも出来る」

モバP「なにより、女の子に誠実で真っ直ぐだった」

モバP「これほど適している人間を俺はみたことがないよ」

ちひろ「……本音を言うと?」

モバP「侍口調のちょんまげPなんてそれだけで面白いから」


ちひろ「やっぱりそうなんですね」ハァ

モバP「まぁ、個性的なのは悪いことじゃないからさ」

モバP「それに取引相手とかにも気に入ってもらえると思うんだよね」

モバP「あんなにも真っ直ぐな目をして口調はおかしいけど礼儀正しい男だったら」

モバP「俺同様、必ず業界で噂の人物になるだろうな」

モバP「良くも悪くも」

ちひろ「Pさんがプロデュースする女の子が個性派だらけの理由が良くわかりましたよ……」

モバP「そんなに落ち込むなって!」

モバP「それにちひろ。面白そうっていうのも大事な部分なんだよ」

ちひろ「もう……」

侍「すまぬ。もう話は終り申したか?」

モバP「いま終ったとこー」

モバP「それで本題なんだけどさ」

侍「なんなりと」

モバP「侍にはここで働いてもらおうと思うんだ」

侍「なんですと!? しかし、拙者はなにもわからぬ故……足で纏いになるでござるよ?」

モバP「俺が一から教えるから大丈夫だよ」

モバP「読み書きとかもちひろさんが教えてくれるから」ニッコリ

ちひろ「ちょ! 私に押し付けないでくださいよ!」

侍「ちひろ殿。不束者ござるが、宜しくお願いいたす」ペコリ

ちひろ「え、あ、はい」

ちひろ(そんな澄んだ目でお願いをしないでよ……)

モバP「それで、仕事内容なんだけどな。侍にはアイドルのプロデュースをしてもらう」

侍「亜異怒瑠? ぷろでゅーす?」

侍「異国の言葉は拙者、あまり良くわからぬ……」

侍「それとも、また不思議なからくりの類なのでござろうか?」

侍「拙者には全く想像が出来ぬ……」

モバP「なんて説明したらいいんだろうな」

モバP「ここの時代にはアイドル業界っていう戦場(いくさば)があるんだ」

侍「こ、この時代にも戦があるでござるか!?」

侍「見たところこの時代には争っているような形跡はござらぬ」

侍「こんなにも良き時代なのにまだ戦は残っているでござるか!?」

ちひろ「違いますよ。なにも人を殺したりとかはしません」

侍「そ、そうでござったか」

侍「拙者の早とちりでござった」

モバP「説明に戻るぞー」

モバP「女の子とプロデューサーが頑張って戦いその業界で『仕事』をもらっていくんだ」

モバP「さらにその『仕事』も戦いなんだ」

モバP「『仕事』っていうのにはいろんな種類があって……」

モバP「まぁ、それは体験していけばわかるか」

モバP「もちろん大小も存在している」

モバP「けれど、この『仕事』を手にするには並々ならぬ頑張りが必要なんだ」

侍「よくは分からぬが……血が滾るでござるな……」

モバP「そして、プロデューサーっていうのが参謀役。アイドルが自分で戦うから武将ってところだな」

侍「ぷろでゅーさーよりも亜異怒瑠の方が偉いでござるか!?」

モバP「いや、実際は俺らのほうが偉いんだけど……」

モバP「ほら、偉いからって大きな態度を取ったら嫌われちゃうから、気持ちだけアイドルの方が偉いってことにしておけばいいよ」

侍「おぉ……そのお心。やはりP殿は素晴らしいお方だ!」

モバP「ちひろ、この真面目さだよ」

モバP「これは絶対に受ける!」ニヤニヤ

ちひろ「大体なにを考えているのかはわかりますけど……」

ちひろ(真面目っていうか、ちょろい?)

侍「しかし、おなごを戦場に向かわせるのはいかようなものでござろうか……」

モバP「こればっかりは仕方がないんだ……出来るなら代わりに出てやりたいが……」

モバP「でも、みんな辛くても楽しんでいるから大丈夫だ!」

侍「戦場が辛くても楽しいでござるか?」

モバP「あぁ、お前も現場を見ればわかるよ」

侍「そうでござるか! 楽しみにしておる」

侍「しかし、拙者は参謀が出来るかどうかはわかりませぬぞ?」

モバP「そこは俺が教えるから侍はなにも心配しなくていい」

侍「頼もしいお言葉、拙者にはもったいない……」

ちひろ「ちなみにPさんは参謀プラス大名ってところですかね?」

ちひろ「Pさんはプロデューサー兼うちの社長なんで」

モバP「まだ立ち上げたばっかりで小国だけどな」

侍「それでは、拙者は家臣ということでござるな!?」

モバP「大体合ってる」

侍「拙者の命、P殿のために有難く捧げる所存でござる!」ペコリ

モバP「ありがとな。でも、命はなくならないから安心しろよ?」

モバP「一緒にアイドル界の天下統一を目指そうな!」

侍「御意でござる!」

ちひろ(重いなぁ……)

ちひろ(アイドル界の天下統一って……)

ちひろ(それにソファの上で正座で苦しくないのかな?)

侍「それにしても真に嬉しいでござる」

侍「二度目に拾われた元でもいいお方と巡り合うなんて…」

モバP「二度目?」

侍「拙者、実は――」

ガチャ

モバP「お、来たな」

モバP「侍、その話はまた今度な。紹介したい子がいるんだ」

空蝉丸ことウッチーかと思ったわ

戸籍はどうするでござる?

>>77

調べたでござるけど知らなかったでござる。

戸籍に関してはサムライスピリッツでどうにかするでござる。

無戸籍の場合日本人であることが証明できれば戸籍登録できたと思うけど……

拙者、法律には疎いでござる。

凛「おはようP。ちひろさん」

ちひろ「おはようございます凛ちゃん」

モバP「今日も相変わらず可愛いな凛」

凛「そういうのいらないから」

侍「P殿、こちらは……?」

モバP「紹介するよ。うちの所属アイドルの渋谷凛だ」

凛「……誰?」

侍「拙者の名は侍。縁あってここでプロデューサーをやることになったでござる」

侍「左様でござったか。凛殿と申すのか。不束者だが、宜しくお願いいたす」

凛「なに、この人?」ドンビキ

モバP「今日からうちでプロデューサーをやる侍だ」

モバP「面白いやつだろ? 実は――」

凛「戦国時代の人間?」

凛「ふーん」

モバP「思いのほか驚かないのな……」シュン

凛「Pなら過去の人間でもエイリアンでも幽霊でも気に入れば自分のところに引っ張るだろうから驚くほどのことじゃないよ」

ちひろ(よく、わかってる……)

モバP「よし、じゃあ、侍。早速現場に行ってみるか」

ちひろ「え!? だって今回の仕事は地上派でやるバラエティ番組の収録じゃ……」

モバP「習うより慣れろだ。凛も構わないよな?」

凛「Pが面倒見てくれるなら」

モバP「よし、決定」

侍「な、なにがなんだかわからぬが……迷惑が掛からぬよう精進いたす」

モバP「それから出る前に……」

モバP「その刀をどうにかしないとな」

ちひろ「銃刀法違反ですからね」

モバP「登録証……なんてあるわけないよなー」

ちひろ「こういう場合は警察に発見届けをだして登録してもらったりすると思うんですけど……」

侍「この刀と短刀でござるか?」

ちひろ「そうそう」

ちひろ「あ、でも侍の魂だろうからそれをしばらくの間手放すのは……」

侍「別に構わぬぞ」

ちひろ「え?」

侍「魂などと思ったことは一度もないでござる」

侍「戦では槍と弓が基本だったでござるから」

モバP(確か、その魂が出来たのは江戸初期か幕末くらいだってどこかで聞いたことがあるな)

侍「しかし、ちと、寂しい気がするでござるな……」

モバP「こんど竹刀を買ってきてやるからそれまで我慢しててくれ」

侍「左様でござるか……楽しみでござる」

モバP(戸籍登録やら住民登録やら面倒事はいっぱいあるな)

モバP「それじゃ、いくぞ」

侍「御意!」

凛「うん」

ちひろ(たぶん、この刀の処理は私がやらされるんだろうな…トホホ)


―――送迎用車内――

侍「P殿! 早いでござる!」

侍「景色が、景色がすぐに変わるでござる!」

侍「拙者の愛馬よりも早いでござるよ!」

凛「後ろでござるござる騒いでいるんだけど」

凛(折角Pさんと二人だと思ったのに……)

モバP「そう、ムッとするなって」

モバP「根はいいやつだから。仲良くしてやれよ」

凛「お守りになりそうなのは気のせい?」

凛「でも、いいよ。Pさんが連れてきたって事は凄くなりそうな人なんでしょ?」

モバP「凛にはかなわないな」

凛「うそ。私より凄くなると思ってる」

モバP「ばれたか……」

モバP「その内俺が手の回らないときに侍をつかうから今のうちにコミュニケーションをしておけよ?」

凛「うん。頑張るよ」

―――都内スタジオ―――

機材の音とスタッフの喋り声

侍「P殿、ここは一体……」

モバP「今からテレビで放映するバラエティの収録が始まるんだ」

侍「てれび? ばらえてぃ?」

モバP「テレビっていうのはからくりの一つで今度見せてやるよ」

モバP「それでバラエティっていうのが……なんだろうな」

モバP「笑いを生む娯楽って感じかな?」

侍「なるほど……笑いを生む。楽しそうでござるな」

モバP「今回は駆け出しアイドル対芸人でスポーツ対決をすることになってるんだ」

モバP「競技は三つバスケ、サッカー、野球」

モバP「どれも蹴鞠の進化系だと考えればいいよ」

モバP(バスケと野球は足なんか使わないけど見れば分かるだろ)

侍「御意」

モバP「今回出てるアイドルでうちの凛が一番上だろうな」

モバP「メディアへの露出も多少はしているし」

モバP「その次に○○プロダクションの前川ちゃんだろうな」

侍「なるほど。この中で一番強い武士は凛殿でござるな」

モバP「その解釈で間違っていないとは思う」

ディレクター「いやー久しぶりじゃない。モバP君」

モバP「お久しぶりです。一年ぶりくらいですか?」

ディクレター「ちょうどそれくらい経ったかもしれないね」

モバP「またお会いできて嬉しいですよ」

ディレクター「おや、そちらの方は?」

モバP「あぁ、こいつの名前は侍って言います」

モバP「うちで新しく雇ったプロデューサーです」

モバP「ほら、車の中で教えたとおり挨拶」ボソボソ

モバP「仕事の時は全員目上の存在だと思って振舞えよ?」ボソボソ

侍「おはーよーうございます! 拙者の名は侍と申す!」

一同「」ジロジロジロ

訂正。>>90 よりもこっちのほうが先。

モバP(あ、そういえば挨拶しに行かないと……)

モバP(どこだろう……)

モバP(いた……)

モバP「すいません。おはようございます!」

ディレクター「?」

モバP「僕ですよ」

ディレクター「あ!」

モバP(早速やったか……)クスクス

モバP(そんなに大きな声でとは指示してないんだけどな)

モバP(でも、変人が集まるこっちの業界なら……)

ディレクター「わははは。面白いね君」

侍「拙者には勿体無いお言葉でござる」

ディレクター「いやー、相変わらずモバP君は面白い子を発掘するね」

モバP「ありがとうございます」

モバP(うけてるうけてる)

ディレクター「それじゃ、そろそろ始まるから」スタスタ

モバP「はい」

侍「……」

モバP「どうしたんだ? 浮かない顔をして」

侍「目上の方かもしれませぬが……拙者あの男はあまり好きではござらぬ」

モバP(やっぱり侍は見る目があるな)

モバP「ぶっちゃけ俺もあんまり好きじゃない」

侍「P殿もそう感じたとでござるか?」

モバP「あの人のなんていうかな。笑いの取り方が好きじゃないんだ」

侍「はぁ……拙者はなんとなく感じただけでござるからしかとはわかりませぬが……」

―――収録後半―――

侍(凛殿は凄い。しゅうろくが始まった途端目の色が変っていた)

侍(喋りもはきはきしてて笑顔も忘れておらぬ……)

侍(これが亜異怒瑠……)

モバP(サッカーが終ってバスケも終った。野球も終盤に差し掛かった)

モバP(そろそろおかしな笑いをとってくるだろうな……)

モバP(おそらく標的になるのはいじられ役が多い前川ちゃん)

モバP(お、次は前川ちゃんの打席か)

モバP(なにもないことを祈ろう)

みく「打つニャー!」

芸人A「みくちゃん気合たっぶりやなー」

芸人B「わいがずたずたにしたる」

芸人C「おいおい、本気で投げるなよー」

アハハ アハハ アハハ アハハ

モバP(周りにいるスタッフの人たちも大変だよなー)

モバP(スタッフ笑いって練習とかされられるんだろ?)

侍(拙者も笑ったほうがよいのだろうか……)

芸人B「ほな、いくでー」

芸人B「ほい!」

バシャ

みく「ニャ!?」

モバP(水風船?)

みく(な、なんなのにゃ……)

みく(い、いけないにゃ。リクションをとるにゃ)

みく「デ、デットボールにゃ!」

芸人A「おいB! 相手はアイドルやぞ!」

芸人C「怒られるぞ!」

芸人B「わいは怒られてもいいから前川に打たれたくなかったんや!」

アハハ アハハ アハハ アハハ

モバP(普通アイドルにこんなことさせるもんかなぁ)

モバP(スタッフも本当にただ笑ってるだけになってるし)

モバP(前川ちゃんのPさんは……)

みくP「……」

モバP(だめだこりゃ)

芸人A「前川ちゃんもう一球だけええか?」

みく(どうせもう一球くるんだろうにゃー……)

みく「し、仕方ないにゃ。みくは寛大だから許すにゃ!」

みく(ここはこれで正解のはずにゃ)

芸人B「ほな、いくで」シュ

バシャ

みく(こ、今度のはべとべとするにゃ……)

芸人A「お前いい加減にしろよ!」ペシ

アハハ アハハ アハハ アハハ

モバP(芸人Bさんふてくされてるけど内心きついだろうな……)



侍「貴様ら! いい加減にしろ」ダン!

シーン…………

モバP(侍……)

みく(だ、誰にゃ?)

凛(侍P……)

侍「一体これの何が面白いと申すのだ!」

侍「よってたかっておなごをいじめて!」

侍「さっきまであんなに楽しそうにしていたのに今では悲しそうではないか!」

侍「貴様! どうしてあんなことをした!」

芸人B「は、はぁ……そりゃディレクターの指示だけど」チラ

侍「やはり、貴様か」スタスタ

ディレクター「おい! 撮影中になにを――」

侍「拙者の話を聞けぇぇ!」

ビリビリ

ディレクター「…」

侍「あのようなか弱いおなごにむかってあれを投げるとは一体どういう了見だ!」

侍「あんなのを見せ物にしてなにが楽しいと申すのだ!」

侍「周りの人間もどうして笑っているのだ!?」

侍「おかしいではないか!」

スタッフ「……」

侍「この亜異怒瑠のぷろでゅーさーよ。申し出ろ!」

みくP「えっと……僕ですけど」

侍「貴様か」

侍「自分の亜異怒瑠があのようなことになって何も感じぬのか!」

侍「さっきまで笑顔だったおなごが悲しい表情をしているのになぜ止めぬのか!」

侍「拙者にはそれがわからぬ!」

侍「答えよ! なぜ止めなかったのだ」

みくP「え、えっと……」

侍「はっきりせい! そんななよなよしていると亜異怒瑠に嫌われてしまうぞ!」

モバP「すいませーん! ちょっと外に出しきます」ガシ

侍「P殿!? 話してくだされ! 拙者の話はまだ終わってはござらぬ!」ズサー

みく「……」

凛(Pさんほどじゃないけど……あいつ人……)

訂正 話してくだされ ×

   離して下され ○

『あつい』人、じゃないのか?
あと某乙女座のガンダムスキーの話はやめて差し上げろ

――スタジオ外――

ダン!

侍「壁に押し付けないでくだされ! 拙者はまだやり終えてはござらぬ!」

モバP「冷静になれ!」

侍「……」

モバP「……はぁ……」

モバP「確かにお前はあそこのスタジオの中で誰よりも正しかった」

モバP「俺よりも正しかった」

モバP「あんなのは笑いじゃない。いじめだ」

モバP「いじめられっ娘をただ遠くからみて冷ややかな笑いを送っているだけだ」

侍「では!」

モバP「だけど!」

侍「」シャキ

モバP「前川ちゃんはお前が担当している亜異怒瑠じゃない」

モバP「人様のアイドルに口出しは出来ない……」

モバP「他所の武将に他家のお前が口出しできるか?」

侍「それは……できぬ」

モバP「そしてあれはあそらく……プロデューサーの方針なんだ」

モバP「収録を撮る前にディレクターとPの間に事前の打ち合わせがある」

モバP「そこでやってもいいか? ときかれて向こうのPはOKを出したんだろう」

侍「なんですと!? あの者、切り捨ててくれる!」

モバP「落ち着け! あいつを切ったところでなにも解決しない!」

侍「では!」

モバP「プロデューサーには個々の考え方があるんだよ……」

モバP「例えば、ある参謀がここは水攻めにしようと提案するだろ?」

モバP「しかし、ある参謀はそれを否定したりする」

モバP「プロデューサーにもいろんな考え方があるんだ……」

侍「じゃあ、拙者はどうすれば……」

モバP「……自分の理想のアイドルを作りあげればいいんだ」

侍「え……?」

モバP「お前ももうプロデューサーなんだ」

モバP「お前独自が思い描くアイドルを作り上げて他のPたちのどぎまを抜くんだ」

モバP「そうすれば、必然的に周りもそれに追いつこうと真似をし始める」

侍「拙者が思い描く……亜異怒瑠」

モバP「お前はあれがいやだったんだろ?」

モバP「だったらそれをさせないような雰囲気を生み出すんだ」

モバP「そして、自分のアイドルにあんなことは絶対にさせない。そう心の中に残しておけ……」

侍「P殿お願い申す。拙者を一人前のプロデューサーにしてはござらぬか?」ジャパニーズドゲザ

モバP「俺の全身全霊をかけてお前をトッププロデューサーにする」

モバP「俺の背中においつけるか?」

侍「無論でござる」

モバP「……アイドルをプロデュースするのは大変だぞ?」

モバP「それからお前が一人前のPを目指すなら俺はスパルタだぞ?」

侍「くどい! 二言はござらぬ……」

モバP「それじゃ、改めてよろしくな」

握手

侍「御意」

侍「P殿。拙者精進致す」

侍「P殿の期待にも答えてみせるでござる!」

モバP「その意気だ!」

―――一週間後―――

侍「ちひろ殿! みてくだされ! この計算どりるを制覇いたしたぞ!」

ちひろ「えぇ!? 本当ですか?」

凛「案外計算は得意みたいだよ」

侍「拙者、町商人の家で育った故、数を数えるのは得意でござる!」

ちひろ(侍なのに町商人?)

侍「いや、しかし。これも凛殿が拙者に教えてくれた賜物でござる!」

凛「はいはい。小学六年生まで終ったから次は読み書きの練習だよ」

侍「う……凛殿もP殿に似てスパルタでござる……」

凛「うっさい」

凛(嫌な気はしないけど)

ちひろ「それにしても凛ちゃん。自分から進んで教えるなんてどういう心境?」

凛「別に。ただ、早くこの人には一人前になってもらいたいだけ」

>>106

誤字の訂正ありがとうございます

凛「あ、そうそう。この前の収録のみくの件」

凛「放送ではあの部分全カットだったよ」

侍「……すまぬ。拙者にも分かりやすく説明してくれはいただけまいか?」

凛「簡単にいうとあの場面はなかったことになったの」

侍「うーん。それでも胃の不快感は拭えないでござるな……」

凛「あのときの侍P少しかっこよかったよ」ボソ

侍「凛殿が好意を寄せているP殿に比べれば拙者なぞまだまだでござる」ハハハ

凛「」ショボン

侍「どうしたでござるか?」

ちひろ「あー……侍さん? 年頃の女の子はデリケートだから……」

凛「」ゲシゲシゲシ

侍「と、途端にどうしたでござるか凛殿!?」

凛「うっさい!」

ちひろ(優しいんだけどこういうところはだめなのよねー)

これはNTR……?

ガチャ

モバP「ただいまー」

凛「P」シュ

侍(こ、このタイミングでやめるでござるか……)

モバP「そうそう。ちょっと道端で猫拾ってきたから」

みく「こんにちはにゃ」

凛「みく?」

ちひろ「え? この前凛ちゃんが共演してた女の子ですか?」

侍「おぉ……! この前のおなごではないか」

侍「大丈夫か? 体は痛まぬか?」

みく「だ、大丈夫にゃ」

みく(ちょっと口調はおかしいけどやっぱりかっこよくて優しいにゃ……)

侍「凛殿、少しよろしいか?」ボソボソ

凛「なに」ボソボソ

侍「あの語尾の「にゃ」はどういう意味でござろうか」ボソボソ

侍「拙者、少しは異国の言葉を勉強しているでござるけど聞いたことがないでござる」ボソボソ

凛「たぶん、猫語とかそんな感じだと思う」ボソボソ

侍「なに? もしかしておなごに化けたあやかしの類か貴様!」

みく「え……ひどくない」

凛「違うってば」ペシ

>>116

宣言しますけど拙者はNTR苦手でござる。

ゆえにその流れはないつもりで読んでくだされ……

ちひろ「移籍ですか!?」

モバP「そうそう。向こうの事務所から引っ張ってきた」

モバP「事務所側もどう扱っていいのか困ってたみたいだからさ……」

モバP「かっこよく言うとお金でヘッドハンティングしてきた」キリ

ちひろ「それって経営学のはなしですよね?」

ちひろ「どうしてまた……」

モバP「前川ちゃんがうちの事務所に来たいって事務所側にいったみたいなんだよ」

みく「そうにゃ。みくはここでアイドルを目指したいにゃ!」

モバP「そして、前川ちゃんの担当Pを侍にしたいと思う」

侍「拙者……でござるか?」

ちひろ「ちょっと待ってください!」

ちひろ「新人Pにみくちゃんクラスはきついですよ!」

モバP「前川ちゃん如きで辛いようなら一人前のPにはなれない」

ちひろ(如きっていったよいまこの人)

モバP「出来るよな?」ニヤ

侍「拙者に任せてくだされ」

侍「必ずや、みく殿を天下の道へとご案内致す!」

侍(そして、いつでも笑顔でいてもらう!)

みく(凄い気迫にゃ……やっぱりこっちに移って正解だったにゃ!)

モバP「わかった。最初は営業するときやらは俺が付き合ってやるから頑張れよ」

侍「御意!」

モバP「それから前川ちゃん。この侍なんだけどな――」

みく「にゃ!? 戦国時代の人間にゃ!?」

みく(確かにそれっぽいにゃ……)

侍「拙者、理由も分からず気がついたらここにいたでござる」

モバP「だから、前川ちゃんが二人三脚でフォローするんだ」

みく「……わかったにゃ」

みく「わからないことがあったらみくに聞くにゃ♪」ダキ

侍「はは、元気でござるなーみく殿は」

凛(あー、みく。抱きついたのに子供扱いされてるよ)

凛(私の場合だとどういう反応するのかな?)チラ

モバP「どうかしたか?」ニコ

凛「なんでもない」プイ

モバP「それじゃ、みくちゃんの入った記念でも開くか?」

一同「賛成ー」

侍「それではみく殿、これからもよろしく頼むでござる」

みく「可愛いみくに負けないでほしいにゃー♪」

第一章「サムライスピリッツ」

end

ふふふ、まだまだ終らんよ。

二章に行く前に小ネタでもやりますかー

ちなみに所属アイドル

モバP担当

渋谷凛 ???

侍P担当

前川みく

とりあえず次回予告

「侍P、なんぱの極意を知る」

侍「おーい。みく殿ー」

みく「にゃ? どうしたのにゃ?」

みく「今日は写真撮影は侍Pちゃんこないはずじゃにゃかったの?」

みく「しかももう終ったあとにゃ!」

侍「すまぬ。拙者にも用事があった故……」

みく「まぁ、それはいいにゃそれよりも……」ジロジロ

侍「どうしたでござるか?」

みく「……ひどくない?(服装が)」

みく「アロハシャツにしかもTシャツも着ないで前全開! それに短パン!」

みく「頭はちょんまげってどういうことにゃ!」

通行人「」ジロジロジロ ニヤニヤ

みく「目立ってしまってるにゃ!」

侍「し、しかし。これが現代の夏の着こなし方とちひろ殿が……」

みく(あの事務員……にゃ)グ

みく「……仕方ないにゃ」

みく「とりあえずシャツのボタンは閉めるにゃ!」

侍「こ、こうでござるか?」オロオロ

みく「あー、もうみくがやるにゃ!」

侍「す、すまぬ……」

みく「はい。これで大丈夫にゃ」

みく「次に帽子を被るにゃ。みくが被ってた帽子。はいにゃ」手渡し

侍「……」

侍「どうやって着ければ……」オロオロ

みく「幼稚園児じゃにゃいんだから頼むにゃ!」

みく「みくがさっきしてたのと同じように被ればいいにゃ」

侍「こう……でござるか?」

みく「そうにゃ」

みく(全くもうにゃ……)

みく(けど、こんなやり取りも楽しいにゃ♪)

みく(それに……こうやって帽子を被って普通にしてればイケメンにゃ!)

みく「それで、今日はどうしたのにゃ?」

侍「うむ。今日はでんしゃ、なるものを覚えようと思ってるでござる」

侍「それで、凛殿に付き添ってくれとお願いしたらみく殿が適役だと言われたゆえこうしているでござる」

みく(また凛ちゃんにゃ……)

みく(勉強もみくが教えるのに……)

みく(でも、凜ちゃんも気が効くにゃ)

みく(今度なにか会ったらモバPちゃんと一緒になれるシチュを作ってあげるにゃ!)

侍「それで、みく殿。お願い出来るだろうか?」

みく「構わないにゃ♪ さぁ、行くにゃ」

侍「腕を掴んだら危ないでござるよー!」

―――改札口前――

みく「ここで切符を買うにゃ」

侍「それぐらいは予習してきたでござる」ドヤァ

みく「じゃあ、これの存在はしってるかにゃ?」ニヤ

侍「それは……噂に聞く……」

みく「そうにゃ、これは――」

侍「西瓜(にしうり)!」

みく「惜しいけど違うにゃ! もっと英語よりにゃ!」

――ホーム――

侍「切符の買い方西瓜の使い方。拙者、しっかりと覚えたでござる」

みく「ふー。疲れたにゃー」

侍「次はあの夢のからくりに乗ることだけでござるな!」ワクワク

みく「乗り方は知ってるのかにゃ?」

侍「ふふふ、からくりの止め方は熟知したでござる……」

みく(大丈夫かにゃ?)

~音~♪

侍「お、そろそろ。くるでござるな」

みく「ん? 次は快速だからここには止まらないにゃ?」

侍「……」ドキドキ

みく(一歩前に踏み出して侍Pちゃんはなにをしているにゃ?)

みく「あ、もう電車が見える位置まで……」



侍「へい、でんしゃ!」



みく「それはタクシーオンリーにゃーぁぁぁ!」

end

あぁー、凛ちゃんのとこ少し間違えてる部分があるな。

まずはPの呼び方がさんづけになってるけどこれは呼び捨て方向で。

それから、

凛「///」シュボン

こっちに変えておいてください。

すまんすまん。NTRの意味がわかった

訂正

凛「」ショボン ×

凛「///」ジュボン


これはばれてしまって恥ずかしかっただけです。

誤解を生む間違いをするのが俺。

SS作家のクズ

なのでお詫びに今日は夜通しやらせてもらいます。

この前も青鬼の方で夜通しやったばかりじゃない?
無理はしないで欲しい

>>143

ははは、物語を創作するのが生き甲斐なんですよ。

俺の娯楽につき合わせてしまってもうしわけない。

みんなが笑える作品にするように努力します。

前回があれだったからね……

それから私はニートではありません。あしからず……

すいませんね……

それじゃあ、休憩がてらラクロスの勉強でもしようかな!

一時間小休止です。

それから俺は脳内が解けてるからすぐに間違えをするんでその都度みなさん助けてくださいね。

おわびに面白い小ネタをしっかり考えるんで。

――7月後半――

凛「そうそう。そこは合ってる」

侍「よかったでござる」

まゆ「そこは違いますよぉ?」

侍「そうでござるかまゆ殿?」

凛「は? どうみてもあってるでしょ」

まゆ「よく見てくださいよ」ニヘ

凛「だからここの読みは――」

侍(ど、どうして双方はここまで仲が悪いのか……)

侍(これでは越後の上杉と甲斐の武田ではないか……)

凛「それにさ、Pに面倒を頼まれたのは私だよ?」

まゆ「まゆだって頼まれましたよぉ?」

まゆ「まゆ、お前が付き添って成長させてやれ、って♪」

凛「私が一番さきだったんだけど」

侍(こ、このままでは喧嘩になってしまう!)

侍(ここは、ちひろ殿に場を静めてもらおう……)チラ

ちひろ(あの二人、Pさんに頼まれてそうとう張り切ってるからここは無視無視)カタカタ

まゆ「時間なんて関係ないですよ」

まゆ「たまたま身内の不幸で地元のほうに戻ってましたけどー」

まゆ「Pさんの動向は逐一わかってましたかぁ」ニヘ

凛「……大体さ。私は前のプロダクションからPさんと一緒だったんだよ?」

凛「なんで割って入ろうとするかな」

まゆ「だから、時間なんて関係ないですってば」

ピリピリ

侍(ち、ちひろ殿ぉぉ!)チラチラチラチラ

ちひろ(無視無視、私が割って入ったら死んでしまう)


訂正 

凛「……大体さ。私は前のプロダクションからPさんと一緒だったんだよ?」 ×

凛「……大体さ。私は前のプロダクションからPと一緒だったんだよ?」 ○

ガチャ

モバP「お、今日もやってるな」

みく「侍Pちゃんただいまにゃー」

侍(これは助かった)

モバP「ごめんな侍。今回のみくの仕事は俺の古い付き合いのひとのやつだったから」

侍「拙者、そのような仕事でも任されるように今後とも精進致す」

モバP「相変わらず頼もしいな」

凛「ねぇ、P。ちょっと話があるんだけど」

まゆ「Pさん、ちょっとぉ」

ゴゴゴゴゴ

みく「ど、どうしのにゃ?」ボソボソ

侍「拙者もよく存じてはいない……」ボソボソ

モバP「今からちょっと侍Pに教えることがあるから後でいいか?」

侍「なんでござるか?」

モバP「今からなんぱ、しにいくぞ」

凛・まゆ「は?」

ちひろ(あー、火に油を……)

良く分からんが

凛→モバP
みく→侍P

でOK?

―――

モバP(いやー、しかし酷い目にあった)ハァハァ

モバP(まさか、凛とまゆがあんな剣幕で追いかけてくるとは)

侍「もう、ここまで走れば大丈夫でござるか?」ハァハァ

モバP「あぁ、たぶんな」

侍「それにしてもP殿。みく殿と仲良くなったのでござるな」

モバP「ん? もしかして下の名前で読んだことか?」

モバP(やきもちか?)

侍「はい。拙者としても嬉しかったでござる。みく殿はあまりP殿に近づかなかった故、仲が悪いものなのかと……」

侍「しかし、拙者、今日ので安心したでござった」

モバP(あー、きっとみくが俺に近づかないのはまゆのせいだな)

モバP(今度注意しておかないと)

モバP(けど、やきもちじゃなかったか。まぁ侍ならそんなのはしないよな)

>>152

それでOK

あー、やっぱ疲れが溜まってて書けないや。

3作品連続でやりまくったつけがきたー。

寝る。

意味分からないとこあったら聞いてくださいねー。

もしかして、モバマス知らなくても読んでくれてる人もいるのかな。

だとしたら凄く嬉しい。

侍「それからまゆ殿は素晴らしいでござるな」

モバP「なにがー?」

侍「自分の主の行動一つ一つをしっかり観察して尚且つ離れ離れになったとしてもP殿の動向を気にしている」

侍「拙者、まゆ殿には感服申した」

モバP「あれはちょっと行き過ぎてるめんもあるけどな……」

侍「そんなことはないでござる!」

侍「主に対してあの忠誠心。拙者、まだまだだと痛感致した……」

―――数週間前―――

侍「ただいまでござるー」

ちひろ「初の一人営業お疲れ様」

侍「いやはや、全く相手にされなかったでござる」

ちひろ「まぁ、最初はそんなもんですって」

ちひろ「侍さんはうちの看板Pになれる(ってPさんが言っていた)ので大丈夫ですよ」

侍「ちひろ殿は優しいでござるな!」

ちひろ(あー、良心が痛むー)

侍「む、あそこにいるお方は誰でござるか?」

まゆ「……」ニコ

ちひろ「あぁ、あれはモバPさんがここを立ち上げると同時に仙台から引っ張ってきた子ですよ」

ちひろ「凛ちゃんと同様うちの所属アイドルです」

侍「おぉ、そうでござったか。申し遅れた拙者の名は――」

まゆ「知ってますよぉ。侍Pさん、ですよね?」

侍「! なぜ、拙者の名を……いやいや、拙者、配慮が行き届かなかったでござる」

侍「まゆ殿は拙者を知っておられたのに拙者は」

まゆ「気にしないでください」ニヘ

侍「かたじけない。それにしても凛殿に負けず劣らずのびしょうじょでござる」

侍「もちろん、拙者のみく殿が一番かわいいでござるけど」

侍(自分の担当している亜異怒瑠は誰よりも可愛い)

侍(そうでござるな。P殿)

まゆ「そんなことより、ちょっとこっちに来てお話しませんか?」

侍「御免」

まゆ「確か、侍PさんはPさんと一緒に暮らしているんですよね?」

侍「拙者、雨を凌げる場所がない故、そうしているでござる」

まゆ「うふ、やっぱりそうでしたか」

侍「しかし、なぜそのようなことをお知りになっているでござるか?」


まゆ「まゆは、Pさんのことならなんでも知っているんですよー」

侍「真でござるか!?」

侍「まゆ殿! 拙者もいろいろと教えてほしいでござる!」

まゆ「いいですよ? まずなにから聞きたいですか? Pさんが家に帰ってからどちらの足で靴を脱ぐとかですか? あ、好き嫌いとかのほうが気になりますかねぇ? うーん。もしくはPさんが最初に洗う体の部位とか知りたいですかねぇ? 後はPさんが使っているハブラシがどういう味がするのとかですか? もしくは――」

侍「拙者にはよくわからぬが、とりあえずまゆ殿は凄いのだな」

ちひろ(小学生並みの感想じゃ済まされない場面なんだけどなー)

あぁ、それから言い忘れてた。

基本的に物語には事件(ドラマ)という起爆剤が必要になり作品に波をつけなければなりません。

なので、多少なりとオリジナルの設定がアイドルに設けられることがしばし見受けられると思いますが、

拙者の顔に免じて許してもらいたいでござる。

―――

侍「まゆ殿の博識な部分には驚かされるでござる」

モバP「まゆは別に博識ではないんだけどな……意味、間違えてるぞ?」

モバP(一つのところに対してしか興味を持たないある意味オタクのようなやつだし)

侍「それにしてもP殿。今日はなにをするでござるか?」

モバP「そうそう。今日はなんぱをするんだ」

侍「なんぱ? 一体なにでござるか?」

モバP「アイドルのスカウトだよ」

侍「すかうと?」

モバP「あぁ、うちは人手が足りないから原則Pがアイドルをスカウトすることになってる」

モバP「ようは、アイドルになってくれって道端にいる可愛い女の子に声を掛けるんだよ」

侍「しかし、そんなことをすると迷惑ではなかろうか?」

モバP「もちろんそうだけど……まぁ、そうでもしない限りアイドルの卵はゲットできないから」

侍「そうでござるか……」

モバP「まず、第一、声掛けて最初は嫌がられるけどめげないで何度もアタックすること」

モバP「さらに、それが「こいつだ」っとおもう人物であれば例え警察に厄介になろうが粘り強く交渉すること」

チャリンチャリン

キキー

警官「お、モバP君じゃないか? 今日もスカウト? 頼むからほどほどにしてねー。それじゃ」

チャリンチャリン

モバP「このように、顔が知られるようになれば警察に厄介になっても面倒事は少ない」

侍「おぉ……なるほどでござる」

モバP「後は怪しまれないように開口一番に自分の名前とプロダクション名を伝えるんだ」

侍「御意」

モバP「凛、まゆ、それから新加入したみくのおかげでネットで調べられてもある程度怪しくないところまでは持ってこれた」

モバP「だから、名刺を渡した後も電話が掛かってくる可能性は高いだろう」

侍「めいし?」

モバP「この前侍ように作ってあげたやつがあるだろ? あれを伝えると同時に相手に渡すんだよ」

侍「これでござるか?」

モバP「そうそう」

モバP「じゃあ、それがわかったところで次は原石見極め方だ」

侍「御意」

モバP「なにもただ顔がよければいいってものじゃない」

モバP「まず、第一に大切なのはこいつと一緒に仕事がしてみたい。わくわくする。って感情だ」

モバP「その次に化粧が濃いか濃くないか」

モバP「化粧が薄いもしくはすっぴんの人間は磨けば光る可能性があるからな」

モバP「あとは極端に濃いのもありだ」

モバP「メイクさえ変えれば化ける可能性があるから」

モバP「まぁ、お前の場合こんな小難しいことは考えずに直感で行ってみろ」

侍「直感……」

モバP「とりあえず俺が見本をみせる」スタスタ

モバP「すいみません。少しよろしいですか?」ニコ

女「え、なんですか?」

モバP「私、モバプロダクションのモバPと申します。これ、名刺です」

女「はぁ……」

モバP「出来れば、うちの事務所でアイドルとか――」

女「す、すみません! 私そういうのに興味ないんで!」タッタッタ

モバP「ふぅ」

侍「行ってしまわれた……」

モバP「今のはOLさんだったからアイドルには絶対ならないだろうなって踏んでアタックしてみたんだ」

モバP「無理に追う必要もないな」

モバP「よし、それじゃあ侍やってみろ」

侍「御意」スタスタ

侍「そこのおなご、少し待たれよ」

女「え!? なんですか?」

侍「拙者の名は侍。モバプロダクションで働いているでござる」

侍「拙者わけあってこのような――」

女「じ、時代劇とか私そういうの興味ないんで!」

侍「?」

モバP「お前、いまなんて言おうとした?」

侍「このような時代に迷い込んだ侍だと……」

モバP「はぁ……いいか?」

モバP「お前が戦国時代にいたことは内緒」

モバP「いろいろと面倒だからな。その口調とか髪型は時代劇が好きだからと言っておけ」

侍「ぎょ、御意」

侍「それにしても先刻のあのおなご。どうも微妙だったでござる」

モバP「あぁ、あるある。話しかけてみてどうも違ったって」

モバP「その感覚を忘れるなよ?」

侍「御意」

モバP「それにお前は顔が良いからそれだけで女が――」

侍「ん?」

侍(あそこにいるおなご)

侍「すまぬ。しばし時間を戴く」

モバP「あ、おい!」

侍「すまぬ。しばしよろしいか?」

?「はい?」

侍「拙者、モバプロダクションで働いている侍と申す」

侍「これが名刺でござる」

侍「お主には亜異怒瑠になってもらいたいと思いお声を掛けた次第」

?「す、すいません。私急いでるんで」

?「本当にごめんなさい」タッタッタ

侍「去ってしまわれた」

モバP「ぴんと来たのか?」

侍「拙者、あのおなごにみらいが見えたでござる」

モバP「そうか。なら、どうする?」

侍「出来ることなら先刻渡した名刺を見てもらいたいでござる」

侍「そして、しつこく交渉したいでござるよ!」

モバP「そうかそうか。それにしても優しそうで美人だったな」

侍「暖かみを感じたでござる」

モバP「……アプローチを掛けるか?」

侍「あぷろーち?」

モバP「あの子が着てた服、○○大学って書いてあったよな」

侍「?」

モバP「しかも、持ってたものから推測して……ラクロスか」

侍「拙者、P殿がなにを申しているのかさっぱりでござる」

モバP「大学に潜入するぞ」

―――大学、グラウンド―――

選手達のかけ声

侍(なんとか怪しまれずにここまでこれたでござる)

侍(しかし、緊張するでござるな)

侍(けれど拙者は必ずあのおなごをすかうとしてみせるでござる!)

――― 一日前 ――

モバP「とりあえず、みくが選んできてくれた学生っぽい服を用意した」

みく「侍Pちゃんなら絶対に似合うにゃ!」

侍「それはそれは、かたじけない」

侍「しかし、どうしてこのような服を……」

侍「拙者、やっとすーつになれてきたところでござったのに」

モバP「大学いくのにスーツじゃまずいだろ」

モバP「一発でもぐりだってばれるぞ?」

侍「そういうものでござるか?」

モバP「あぁ、普通に振舞ってればまずばれないから」

モバP「それから帽子もしっかり被っておけよ」

侍「御意」

モバP「それから、はい。竹刀」

侍「おぉ! これは……しかし拙者が扱っていたのとは少々異なる気が……」

モバP「えっとー。戦国時代のものだと今の形状とは少し違うんだよ」

モバP「性能は一緒だから気にしないでくれ」

モバP「はい、それから竹刀袋」

侍「かたじけない」

モバP「それを肩にぶら下げておけば余計それっぽく見えるからそう易々とはばれないはずだ」

侍「御意でござる。それでは明日、行って参る!」

―――

侍(それで、この前のおなごはいずこにおる……)

侍(むむ、拙者の感が向こうを示しておる!)

侍「見つけたでござる……」

?「……ふ!」シュ

侍(とりあえず今はらくろすなるものに興じているから待つでござる)

侍(そういえば、P殿から渡された資料が……)

侍(これでも見ながら大人しくしておるか)

?「……」タッタッタッタ

侍(おぉ)

?「……」シュ

侍「おぉ!」

?「は……!」タッタッタッタ シュ

侍「ま、まっこと綺麗でござる!」

侍「格好良きでござる!」

?「あれ……?」

女A「美波、あれアンタの知り合い?」

新田美波「えと……見覚えないかな」

女B「でも、あれ明から美波に手を振ってるよ」

美波「ちょ、ちょっと行ってくるからみんなは続けててね?」

美波「あのー?」

侍「おぉ、これは失敬致した」

侍「邪魔を仕出かしたでござるか?」

美波「すいません。どちら様ですか?」

侍「これまた申し遅れた。拙者昨日お会いした侍という者でござる」

美波「あ……昨日の!」

侍「きづいて頂けたか!」

美波「昨日はすいません。私急いでましたから……」

侍「いやいや、人様には人様の用事があるでござる」

美波「ちょっと時間は掛かるんですけど見学でもして待っていてもらってもいいですか?」

侍「御意でござる」

美波「ふふ、見ててくださいね」スタスタ

女A「もしかしてアンタの彼氏ー?」ニヤニヤ

女B「うっそー! 超イケメンじゃん! 美波やるなぁ」

美波「ち、違うってば」アセアセ

キャキャキャ

侍(やはり拙者の目に狂いはこざらんかった)

侍(なかなかに、よき子でござる)

剣道サークル男「君、ちょっといい?」

侍「拙者でござるか?」

剣道サークル男「結構いい体してて竹刀袋持ってるけど……剣道とかやってるの?」

侍「いや、拙者は……じ、じだいげきが好きなだけでござるよ」

剣道サークル男「本当!? じゃあ、ちょっときて」

侍「ンア! 拙者にはやるべきごとがあるゆえ、って! 聞く耳を持ってくだされ!」

―――

侍「酷い目にあったでござるよ……」

美波「途中で居なくなったんで心配しましたよ?」

侍「かたじけない。心配かけもうした」

剣道サークル男「確か、新田さんだったよね?」

美波「はい、どうかしました?」

剣道サークル男「この人うちのサークルに呼びたいんだけど説得してくれないかな!?」

剣道サークル男「凄く剣道が上手いんだ!」

侍「いや、しかし拙者は規則とかわかっていなかったではござらぬか」

剣道サークル男「違うよ! あのキレのある動きと声! それに竹刀の振り! 是非うちへ!」

侍(これでは拙者がすかうとされてしまう……)

侍「男よ。すまぬがまた今度にしてはくれぬか?」

侍「拙者も用事がある故、ここでこのおなごと喋らなくてはならぬ」

剣道サークル男「わかった。じゃあ、ここに連絡を頂戴ね」

侍「わかり申した」

美波「えっとー、もう大丈夫ですか?」

侍「これは申し訳ないでござる」

美波「自己紹介がまだでしたね。私の名前は新田美波です」

侍「美波殿でござるか」

侍「唐突の訪問のご無礼。許してもらいたいでござる」

美波「いえ、それは構わないですよ」

美波「それにしても、よく私がここにいるってわかりましたね?」

侍「拙者の勘でござる」

美波(勘で学校もわかっちゃうものなのかな……?)

美波「それにしても、剣道。お強いんですか?」

侍「いえいえ、拙者などまだまだ未熟でござる」

侍「それで、本題でござるが……」

侍「美波殿に亜異怒瑠になってもらいたいでござるよ」

美波「え……? アイドルですか?」

侍「そうでござる」

美波「突然そんなことを言われても困りますよ」

美波「私、学業もスポーツも疎かには出来ませんから……」

侍「すぐにでなくても構わぬ」

侍「しかし、良き返事をもらいたい」

侍「それから、拙者はらくろすなるものに多少興がそそられるでござる」

侍「今日からしばしの間、見学してても良きだろうか?」

美波「それは構いませんけど……」

侍「かたじけない」

侍「それでは、もう遅いでござるから送っていくでござるよ」

美波「だ、大丈夫ですよ。安心してください」

侍「おなご一人で夜道を歩かせるのは危険でござる」

美波「……わかりました。それじゃあよろしくお願いしますね」ニコ

侍「うむ」

侍「それにしてもやはり可愛いでござる」

美波「え?」

侍「拙者から見て美波殿は可憐で美しい」

侍「それだけでござるよ」

美波「えっと、ありがとうございます?」

美波(私、今口説かれたの? 自然すぎてよくわからなかった……)テレテレ

―――

美波「この変でもう大丈夫ですよ」

侍「しかし、まだ、家までは遠いのではないか?」

美波「心配しすぎですよ? もうすぐそこですから」

侍「むー。わかり申した」

美波「はい。それでは、また今度」スタスタ

侍「御意」

侍(…………)

侍(真にこのままでいいのだろうか)

フラッシュバック

侍(いや、いかぬ! 後ろからこっそりつけてるでござる)

侍(なにもなければそれでよし)

美波「……」スタスタ

侍「…・・・」サササ

侍(む、前方より不届き者らしき柄の悪い人物が二人)

不良A「お、見ろよ。あの子可愛くね?」

不良B「あ、本当だ。すげー美人じゃん」

不良A[なぁ、声掛けてみようぜ」

不良A「そこの君、ちょっといい?」

美波「わ、私ですか?」

不良B「そうそう君君」

不良A「もし良ければメアドとか教えてくんない?」

不良B「それに、もし時間があれば一緒に飯でもたべない?」

美波「わ、私は……」

不良A「うは、びびってる姿とかちょうそそるんですけど」

不良B「おいおい。頼むからこんな道端では勘弁してくれよ?」

不良A「わかってるって」

不良A「なぁ、ちょっとそこの路地まで行かない?」

美波「わ、私……」グスン

不良A「ちょう可愛いんですけど!」

不良B「お、おい。お前マジなのかよ」

不良B「食事くらいならって思ってたけどさすがにそれはやばいって」

不良A「だって、こんなに可愛いならもう俺のエクスカリバー解放するしかないっしょ!」

不良B「馬鹿! こんなどっからどうみてもお譲様に唾つけたら大変なことになるぞ?」

不良A「大丈夫だって。な?」

美波「わ、私」

侍「貴様ら! 美波殿になにをするか!」

不良A「は?誰お前」

不良B(ほ……)

侍「拙者の名前は侍。貴様を今から切ろうとしている者だ」

侍「男の癖にそのようにおなごを好き勝手にしようとするのは許せぬ!」

侍「貴様のような暴漢がいるから! 世の女性は安心して暮らすことができぬのだ!」

侍「不届き者は拙者が成敗いたす!」

不良A「おいみてみろよB。こいつちょんまげに侍口調だぜ!だっせぇ」

不良B「お、おいやめておこうぜ」

不良A「なーにびびってんだよ。俺のボクシングの経験みせてやるって!」シュッシュ

美波「さ、侍さん……」

侍「安心するでござるよ」ニコ

侍「もう……誰もおなごが傷ついておるところは見ていられぬ」ギリ

侍(拙者はあの頃と違って力を持っている)

侍(暴漢に負けるほど落ちぶれてはいない!)

不良A「おら、いくぞ」シュ

侍「ふ!」

不良A(こいつ、スライドして俺の拳を)

侍「テイ!」

ビリビリ

不良A・B・美波「」ビク

バシーーーーン!

不良A「グア!」

不良B「お、おい!」

不良B(あいつ、なんの躊躇いもなく竹刀をこいつの腹部に打ち込みやがった……)

侍「よかったでござるな。これが真剣だったら貴様は間違いなく天に召していた」

侍「そこの者!」

不良B「な、なんすか」

侍「貴様はどうやら猿ではないようだな」

侍「その男を連れてゆけ目障りだ」

不良B「は、はい」スタスタ

不良B「お、おい。いくぞ」ズルズル

侍「全く。いつの世もあのような男は沸くものなのか……」

侍「嘆かわしい」

侍「怪我はござらぬか?」

美波「は、はい」

侍「やはり、拙者がお送りいたす」

美波「……はい」

侍「……」スタスタ

美波「……」スタスタ

美波(私を助けて……くれたんだよね?)

美波(わざわざ後ろから見守ってくれてて……)チラ

美波「あ、あの!」

侍「ど、どうしたでござるか?」

美波「お、お礼がしたいので……私の家でご飯食べていきませんか?」

侍「しかし……」

侍(いや、断るほうが野暮でござるな)

侍「有難き幸せ」ニコ

美波「は、はい!」パァ

――

美波「ただいまー」

美波「すいません。ちょっと待っててもらえますか?」

侍「御意」

侍(なかなか大きな家でござるな……)

侍(そうでござる。怪しまれないように名刺を用意して……)

美波「大丈夫ですよ。もう入っても」

侍「失礼致す」

美波母「あら、やだ。思ったよりもイケメン」

美波父「本当だ。時代劇のお侍さんみたいだなー」

美波弟「すげー! 本当にちょんまげだ!」

侍「拙者の名は侍。こういう者でござる」

父「おーよく訓練されてるねー。おじさん気に入っちゃったよー?」

侍「いえいえ、拙者など未熟でござる。良き上様に恵まれてるだけでござる」

父「面白い子だなー!」ワハッハ

美波「ぱ、パパ。恥ずかしいからやめてよ」

母「もう少し待っててね侍君。そろそろ夕飯が出来るから」

侍「迷惑ではござらぬか?」

母「そんなことないわー。娘を助けてくれたんだから」

弟「ね、ねぇ! 後でそこにある竹刀触らせてください!」

侍「拙者は構わぬ」

弟「おっしゃーラッキ!」

美波「すいません。騒がしくて……」

侍「いやいや……良き家族ではござらぬか」

侍「美波殿がなぜ優しい顔をいつもしているのか拙者、少しわかった気がするでござる」

美波(目を細めてどうしたんだろ……)

―――

食後

父「へぇー。それじゃ、侍君はアイドルのプロデューサーなんだ」

侍「はい。それで、美波殿をすかうとしようとしたのがきかっけでござる」

弟「すげぇじゃん姉ちゃん!」

美波「もう、あんまりはしゃがないでよ?」

母「でも、私は構わないわー。こんなにしっかりしたプロデューサーなら娘を安心させて送れるし」

父「はは、確かにな」

父「今時にしては珍しくいい目をしている」ス

侍(む、美波殿の父上。出来るでござるな)ピクン

侍「それにしても、今日は真に失礼致した」

母「お粗末さまでした」

侍「……」ポタポタ

美波「ど、どうしたんですか!? 急に泣き出して! なにか、お腹に悪いものでも」

侍「いや、失敬。恥ずかしいところをお見せしてしまった」

侍「ここが、少々居心地が良きて、暖かみのある場所だった故、感極まってしまった」

父「……」

母「……」

美波「……」

侍「こういう家族団欒は普通なのかもしれませぬが。食事中に堪えず笑顔があるのはまっこと良きこと……」

侍「拙者、感動したでござる」

侍「心の内側が少し満たされたでござるよ」

母「……なにかあったら。また来てもいいのよ?」

侍「真でござるか!?」

父「あぁ、もし、よければだけどな」

弟「今度は竹刀の振り方を教えてください!」

美波「……私も、構わないですよ?」

侍「かたじけない……かたじけない……まっことかたじけない……」グスン

美波(なんだか……ほっとけない人だな)クス

――

侍「それでは拙者、失礼するでござる」

美波「はい。また機会があれば是非来てくださいね」

侍「拙者も、できれば早いうちにもう一度来たいでござる」

美波「それから……」

侍「どうしたでござるか?」

美波「少しだけアイドルに興味が出てきました」

侍「真でござるか!?」

美波「はい。まだわかりませんけど……」

侍「そうでござるか」シュン

美波「でも、侍さんにならプロデュースされてもいいかなって思いました」ニコ

侍「そうでござったか! それではいい返事を期待するでござる」

美波「はい♪」

―――数日後――

事務所

トゥルル!

ガチャ

ちひろ「はいこちらモバプロダクションのちひろです」

ちひろ「? 侍さんですか? 少々お待ちください」

ちひろ「侍さーん? 新田さんって人からお電話です」

侍「おぉ! そうでござるか!」

侍(もしかして、OKしてくださるのか?)

侍「お電話換わったでござる」

美波母『あ、侍君? ちょっと頼まれごとしてくれないかな?』

侍「急にどうしたでござるか? 拙者は問題ないが……」

母『実はね。今日美波がラクロスの大きな大会の決勝戦があるの』

侍「おぉ、そうでござるか」

侍「しかし、なぜ拙者には……」

母『恥ずかしいから黙ってたみたいよ』

母『それで家族だけで応援するはずだったんだけど……」

母『弟が高熱を出しちゃっていけなくなっちゃったの。パパも会社の緊急な用事がはいっちゃって』

母『美波、凄く落ち込んでてプレーに支障が出そうだからもしよければ侍君に行って貰おうかと思って』


母『もちろん。無理にとは言わないけど。この電話だって迷惑だろうし……』

侍「いや、拙者。未来のアイドルのため人肌脱ぐでござるよ」

母『そう? ごめんね? 後でなにかお礼はするから』

侍「いやいや。それではきるでござる」

ちひろ「どうかしたんですか?」

侍(しかし……拙者一人が行って何が出来るだろうか……)

侍(……)

侍「ちひろ殿。少し無理をお願いしたいのだが」

ちひろ「はい?」

美波(おかしいな……今日は全然体が動かない)


美波「……ふ」シュ

美波(どうしたのかな?)

美波「……」タッタッタッタ

美波(集中できていないのかな?)

美波「……」タッタッタッタ シュ

美波「はぁ……はぁ……」

美波(パパ……)

美波(ママ……)

訂正

―――グラウンド―――

>>208より先

美波チーム監督(新田の動きが悪いな……)

監督(観客席に気を取られてるのか?)

美波(どうして……どうして動かないの!)

美波(……)

美波(……どうしてきてくれないの……)

美波(もちろん、不運なのはわかってる)

美波(わがまま言ってもしょうがないのはわかってる)

美波(でも、どうして今日に限って)

ドン

美波「キャ!」ドサ

監督「新田! ぼさっとするな!」

美波「す、すいません」

美波(もう、いっそのこと変えてもらった方が――)




侍「スー」

侍「美波殿ぉぉぉぉぉぉ!」





美波「」ビク

美波(あれは……侍さん!? だって、今日のことは……)

侍「頑張るでござるぅぅ!」

侍「それから、これから先、もしアイドルになったときに一緒に頑張る仲間達でござるよー!」

モバP「おう、応援してるぞー!」

凛「頑張れー」

まゆ「うふ」

みく「がんばるにゃー!」

ちひろ「がんばってくださーい」

美波(あれが……アイドルさん達……)

美波(だったら……)グ

美波(無様なとこは晒せない!)

美波「……」ニコ

侍「うぉぉぉ!」

侍「それにしてもみんなの時間を合わせるために遅れてしまったのは申し訳ないでござるな」

ちひろ「もう、私にも労いの言葉くらくださいな」

侍「かたじけない」

ちひろ「はぁ……まぁいいですよ。スポーツ観戦なんて久しぶりですし」

侍「真にちひろ殿には感謝感激でござる」

侍「美波殿。頑張るでござるよ」

――試合終了後――


みく「すごかったにゃー! 結局試合は逆転勝利にゃ!」

モバP「あぁ、凄かったな。久々に俺も動きたくなった」

凛「じゃあ、今度、一緒に犬の散歩でもする?」

モバP「それはいいな」

まゆ「もちろんまゆも一緒ですよ」

凛「は?」ギロ

まゆ「うふ」ニヘ

ガヤガヤガヤ

侍「美波殿、あの後は素晴らしかったでござるな」

美波「侍さんのおかげですよ」

美波「正直臆病になってました……」

美波「それから、家族が来てくれなくてプレーに集中できなくて」

美波「侍さんがきてくれたおかげでこうして私が元に戻って勝つ事ができました」

美波「ありがとうごさいます」ペコリ

侍「拙者はなにもしとらぬ」

侍「全ては美波殿の力でござるよ」

美波「……ねぇ、侍さん。どうしてあなたはそんなに女の子にたいして優しいんですか?」

美波「私をアイドルにしたいから……ってだけで優しくしてくれたわけじゃないですよね?」

侍「………」

美波(遠くを見つめだした)

侍「拙者は元来おなごに優しくなどなかった」

美波「え?」

侍「美波殿には黙っておったでござるが実は――」

美波「戦国時代の人間!?」

侍「左様でござる。その時代では今よりおなごが生きていくにはちと、辛すぎる時代だった」

侍「おなごが虐げられるのは当たり前。そんな世の中だった……」

侍「拙者も、おなごに対しては厳しく到底優しいなどとは言えぬ状態でござった」

侍「この時代でいうところの……おさななじみに対しても冷たい態度をとっておった」

侍「そのおさななじみは口うるさくていつも拙者にたてをついては喧嘩ばかりでござった」

侍「おなごには優しくしろ。おなごには優しくしろ。常に拙者の耳元で騒いでおった」

侍「拙者は、なにをばかなことをぬかしおると嘲笑ったものだ」

侍「しかし、由々しき事態が起こったでござる」

侍「ある日、拙者とそのおさななじみとで山で遊んでおったら暴漢に襲われてな」

侍「拙者のおさななじみは拙者の目の前で辱めを受けた……」

侍「拙者は必死に抵抗しようとしたが非力でなにも出きのうござった」

侍「そして、おさななじみはそのまま切り捨てられてしまい拙者は見逃してもらったでござる」

侍「拙者も一緒に切り捨てよと申し出たが笑って断られてしもうた……」

侍「あの時でござるな。非力な自分を憂い。おなごに優しく出来なかった自分を恨めしく思ったのは

侍「あの時もし、拙者が側におったらきっと暴漢から逃げることが出来たでござろう」

侍「拙者はそれ以来、もうそんな目にあわぬようにおなごに優しくしているでござる」

侍「まぁ、拙者はそんなことがあっておさななじみがよくつかっていた「おなごには優しく」をしているだけでござるよ」

美波「……」

侍「すまぬ。少しばかり重かったでござるか?」

美波「侍さんはその……大丈夫なんですか?」

侍「……拙者は今を楽しく生きようと思うでござる」

侍「肩越しを気にしていては前には進めぬゆえ……」

美波「……侍さん」

侍「なんでござるか?」

美波「しばらく、目を瞑っていてください」

侍「こうでござるか?」

美波「はい。それで大丈夫です」

チュ

侍「!? 美波殿今拙者の頬に」

美波「私のこと、しっかりプロデュースしてくださいね♪ プロデューサーさん」

侍「…………御意!」

――― 一週間後――

凛「あ、そこは間違ってるってば」

侍「そうでござったか」消し消し

まゆ「そこはあってますよぉ」

侍「そ、そうでござるか?」カキカキ

みく「いや、間違ってるにゃ!」

侍「むー」

まゆ「だから間違ってますって」

凛「みくだってここは違うって指摘したじゃん」

みく「そうにゃ!」

まゆ「ここは――」

侍(あー、どんどん雰囲気が悪くなるでござる……)

ガチャ

侍「!」

美波「おはようございまーす」

侍「み、美波殿ーた、たすけてくだされー」グスン ダキ

美波「あー、よしよし。わかりましたから足元に抱きつかないでくださいね?」ニコ

みく「にゃー! 侍Pちゃんどういうつもりにゃ!」

美波「それで、どうしたんですか?」

凛「ここの問題正解の有無が論争の種です」

美波「どれどれ……うん。ここは正解だね」

凛「……」ニヤ

まゆ「……」チ

美波「はい。これでもう大丈夫ですから」

侍「うぅ……すまぬ」

ガヤガヤガヤ

美波(なんだか侍Pさんって……)

美波(かっこいいところもあるけどこうして可愛い部分もあるだよね……)

美波(なんだか、構ってあげたくなっちゃう♪)

第二章 end

新田ちゃんの母性に俺の下半身のデジモンが進化する。

またミスを犯した

訂正

美波「どれどれ……うん。ここは不正解だね」

訂正

まゆ「だから、そこは合ってますって」

二章頭の文が俺の頭を過ぎっていた……

次回予告「らいばる?」


所属アイドル

モバP担当アイドル

渋谷凛 佐久間まゆ ???

侍P担当アイドル

前川みく 新田美波

あー1000まで遠いでござるよー

突っ込んだら負けの小ねた、いきます?

―――

事務所内

テレビ

侍「こ、これは……」

モバP「どうした? 競馬なんて見て」

侍「う、馬が競争をしているでござる……」

侍「馬にまたがるのは得意でござったから血が滾る……」

モバP「ちょうど来週の日曜日にG1があるから見てみるか?」

侍「本当でござるか!?」

―――

日曜日

モバP「よーし、ここが競馬場だ」

モバP「ってあれ? おい! 侍、どこいった!?」

――

侍「ほう……お主の名前はサムライシップというのか……」

馬「ひひーん」

侍「なに? 本名はミスターブシドー?」

馬「ひひーん」

侍「むー、会いたかったといわれても、拙者はがんだむではないでござるよ?」

馬「ひひーん」

侍「そうか。今日は調子がいいでござるか」

男A「なに? サムライシップになるジョッキーが出れないだと!?」

男B「はい……このままでは……」

男A「って、そこの君! 勝手にはいってきちゃだめだろ!」

侍「すまぬ。知人とはぐれてしまい気がついたらここにおった」

侍「それから、この馬は調子が良き様子。楽しく走らせてやってくれ」

訂正

男A「なに? サムライシップに乗るジョッキーが出れないだと!?」


まじでデジモン進化みたくなってるよ。

男A「……なぁ、Bこいつを替え玉に使うのはどうだ?」

男B「正気ですか!?」

男A「じゃあ、どうしろっていうんだ!」

男A「すまないけど君。この馬に乗って今日のレースに出てくれないか?」

侍「拙者、馬に乗るのは得意でござる」

――

モバP「どこいったんだよ……こうなるんだったら携帯買ってやるべきだったな」

モバP「あぁ、もうそろそろG1始まっちゃうし」

モバP「まぁいっか。後で探せば」

モバP(そして、俺が今日掛けてるのは単勝で18番人気のサムライシップ)

モバP(競馬とかよくわかんないから適当に選んじゃったけど大丈夫かな?)

実況<各馬、ゲートに揃いました

実況<今、ゲートが開きました

実況<サムライシップ好スタートを切りました

モバP(サムライシップは逃げか……)

※最初に先頭に立ってずっと先頭でいる方法。最終的には抜かれてしまうケースが多い

モバP(ん? でも、後続に結構差をつけてるな)

モバP(あらら? ラスト直線コースに入ったところでもまだ大差つけてるよ)

―――

侍(ミスターブシドー! 最後の直線頑張るでござるよ!)

馬「ひひーん」

侍(っく、後ろから続々と馬が迫ってきてる!)

馬「ひひーん」

侍(なに? 拙者に出会えたことに運命を感じている?)

侍(……)

侍(拙者もでござるよ!)

実況<ラスト直線! サムライシップ逃げ切れるか!?

実況<後ろから足の速い馬が続々とやってきている!

実況<逃げ切れるか!? 逃げ切れるか!? 逃げ切った!

実況<大荒れだー。サムライシップと○○騎手一着でゴールイン

ワァァ

実況<おおっとここで○○騎手ゴーグルと帽子を外したー

実況<ん? あれは○○騎手じゃないですね?

実況<あれは……侍です! 侍がサムライシップに乗っています!

実況<ちょんまげの侍が天高く拳を突き上げてガッツポーズをしています!

モバP「」

その後、侍はこっぴどく怒られましたとさ

お終い。

ふぅ……小ネタは難しいね。

やっぱりギャグは苦手やわ

でも、ギャグだから細かいことなにも考えなくていいから楽しい。

侍「凛殿少しよろしいか?」

凛「いいよ」

侍「この新明解国語辞書にのっている「かわいい」の意味がよくわからないでござる」

凛「なんでよ。そのくらいわかるでしょ」

凛「どれどれ」

かわいい(形)
 
自分より弱い立場にある者に対して保護の手を伸べ、望ましい状態に持って行って



やりたい感じだ。



凛「ふん」ビリ

※まじでそう書かれています。

今日は疲れたでござるな。

読みたい人がいれば続きかくけどどうする?

あ、三話目ね

読みたいけどキツイなら無理しないで

伏線やらなんやらの量を考えると

ざっと一話二話含めて7話分だから

そこらへんを把握して読み進めていってね

>>256

うむ、ちょっと体の様子を伺う。

それから、侍さんの幼馴染の件は胸糞なのかな?

注意書きしてなかったからごめんよー

安価したりすれば読者も楽しめるかな?

なるべく読者が楽しめるような配慮はしたいんだけど

一回爆死したことあるからどうしようか。

安価するなら+3とかにすれば失敗は少ない
選択安価ならコンマで決めたりとか

>>261

むむむ、なるほど。

あまり自分よがりになりたくないからそっちのほうがいいかな?

それとも、俺の物語を楽しみたい人がいればネタに困らない限りはしないようにするけど。

うむ。了解した。

小ネタでは遊園地やら動物園やら海水浴やら考えてたから

行くメンバーや行動を安価でやるか。

とりあえず続きは明後日の夜にでも書こうかな

新田ちゃん最高!

拙者人を待たせるのは好きじゃないでござる

今日も書きたいでござるよ

―――10月中旬
事務所

侍「美波殿ー。今日はどらまのおーでぃしょんでござる」

美波「えぇ!? と、唐突ですね……」

侍「拙者が履歴書を送っておいたでござる」

侍「書類選考が通ったので今日が二次でござるよ」

美波「そ、そうですか。それにしても、そういう「履歴書」や「書類選考」って言葉は覚えたんですね」

侍「仕事の覚えが悪いと拙者が困るより、亜異怒瑠が困るでござるよ」

侍「故に、こういう仕事関係の言葉はP殿にしっかり叩き込まれ頭に入っているでござる」

美波「そうですか。一般教養も頑張ってみたいですし無理はしないでくださいね?」

侍「拙者、毎朝素振りをしっかりして、ごはんを食べているので心配はご無用でござる」

美波「なら、いいんですけど……」

侍「美波殿痛み入るでござる」

侍「それから凛殿も同様に突破してるでござる」

侍「しかし、おーでぃしょんの前に仕事が入っているから別々にいくでござるよ」

美波「それは構わないんですけど……」

美波「みくちゃんが凄く落ち込んでいますよ?」

みく「ずーん……にゃ」

侍「みく殿、どうしたでござるか?」

みく「な、なんでみくも書類送っておいてくれなかったのにゃ!」

侍「?」

美波「みくちゃんは自分だけ一人除け者扱いされたと思ってるんですよ」

侍「あぁ、それは申し訳なかった」

侍「これは拙者の独断でござる」

みく「余計に酷いにゃ!」

侍「みく殿には向いていないと判断したのでござるよ」

侍「語尾に特徴的なものが来ているためおそらく、みく殿にはちと演技は辛いでござろう」

みく「……確かにそうにゃ」

侍「亜異怒瑠の特徴と性格は拙者がしっかりと把握してるでござるから売り込み方は拙者に任せてほしいでござる」

侍「代わりと言ったらあれでござるが、みく殿にはせいりょうざいのCMの仕事が来ているでござる」

侍「それで、我慢してはいただけまいか?」

みく「……わかったにゃ。みくのプロデューサーは侍Pちゃんだからその意向には従うにゃ」

侍「かたじけない」

美波(さ、侍Pさんがプロデューサーらしいことを言っている……)

美波(これはモバPさんが凄いのか、侍Pさんの飲み込みが早いのか……)

寝る。

どうせ明日は日曜日だし朝早くからやる予定。

―――

侍「現地に着いたのはいいでござるが、未だ、刻限があるでござるな」

美波「ちょっと早めに着すぎたみたいですねー」

美波「うーん。とりあえず喫茶店にでも入りますか?」

侍「きっさてん?」

美波「えっと……茶屋? のようなものです」

侍「おぉ、そうでござったか」

美波「侍Pさんはこうやって時間があるときはいつもどうしているんですか?」

侍「座禅でござる」

美波「え?」

侍「座禅でござる」

美波「そ、そうなんですか」

美波(ちょっとそれは私には辛いかなー……)

美波(よかった。喫茶店に入ることを提案して)

―――
喫茶店

店員「しゃいませー」

店員「ご注文はおきまりっでしょうかー?」

美波「私はアイスコーヒーをお願いします」

美波「侍Pさんはどれにしますか?」

侍「……」

美波「どうかしましたか?」

侍(なにを頼めばいいのかわからないでござる……)

侍「せ、拙者も同じもので良きでござる」(震え声)

美波「そうですか。では、アイスコーヒーを二つ」

侍「……」ジー

美波「……」クス

美波「それからそこにあるケーキを二つ。よろしくお願いします」

侍「あ、いや拙者は……」

美波「私が食べたいんですから付き合ってもらえますか?」

侍「そ、そうでござるか。な、なら致し方ないでござるな」

美波(ふふ)





――



美波「それにしても侍Pさんコーヒー、飲めたんですね」

侍「? 飲み物でござるからそれは無論。拙者に好まぬものはないでござる」

美波「そうですか」

美波「途中で気がついたんですけどもしかしたら勝手がわからなくて注文したのかと思って心配しちゃいましたよ」ニッコリ

侍(出来ればもう少々早うに気付いてもらいたかったでござる)

侍(しかし、このこーひーはただの水)

侍(飲めるであろうから心配は無論のはず)

侍(いざ、参らん!)

ゴク

侍「にが!」

美波「ど、どうかしましたか!?」

侍(な、なんだこの飲み物は……)

侍(見た目は黒く味も最悪ではないか)

侍(この時代は良きものが多いゆえ油断しておった……)

美波「もしかしてコーヒーダメでした?」

侍「……すまぬ。勝手がわからのうござって美波殿に合わせたでござる」

美波「もう、言ってくれれば教えてあげますよ?」

侍「かたじけない」

美波「それじゃ、ケーキも食べたことないんですか?」

侍「片腹痛いとは思うかもでござるが、拙者けーきを食べたことがないでござる」

美波「そうだったんですか」

美波(てっきり私は食べたことがあって我慢してたのかと思ってた)

侍「しかし、いかようにしてこのケーキを食べれば良きでござるか?」

美波「あぁ、これはフォークを使って食べるんですよ?」

侍「ふぉーく?」

美波「これです。みたことありますよね?」

侍「それでござるか。拙者使いようがわからなかった故使ったことがこざらん」

美波「お箸より使うのは簡単なんですよ。こうやって握って」ス

侍「かたじけない」

美波(これじゃあまるで子供の相手をしているみたい……)

美波「こうやってやるだけです」

美波「ね? 簡単ですよね?」

侍「これは確かに容易でござる」

美波「あとはこれを口にもっていくだけで食べる」

侍「それでは戴くでござる」

パク

侍「これは!」

美波「ど、どうしたんですか?」

美波(もしかして戦国時代にはこういった甘い洋菓子はなかったから口に合わなかったのかな?)

侍「美味でござる!」ガタ

美波「周りの人が見ているんで席から立ち上がらないでください!」

一同「」ジロジロ

侍「これは失敬」

美波「もう、びっくりさせないでくださいよ?」

侍「いやー、それにしても美味でござるなー」

侍「拙者かような食べ物は口にしたことがこざらぬ」

美波「喜んでくれてなによりです♪」

―――

トゥルルル

侍「む? 美波殿少し失礼するでござる」

美波「はい。(携帯?)」

侍「拙者、侍でござる。P殿でござるか。うむ、うむ。御意。それではよろしくお願い致す」



侍「美波殿。P殿が仕事を終らせてもう会場に着いたようでござるから、拙者達も行くでござるよ」

美波「は、はい」

美波「それにしても携帯いつの間に買ってたんですか?」

侍「つい、先週のことでござるよ」

侍「無いといろいろと不便でござるからな」

侍「そういえば美波殿の電話番号も聞いておきたいでござる」

美波「それは構いませんよ」

美波「でも、凄いですね。その短時間で使い方を覚えたんですか?」

侍「いえ、電話の取り方と掛け方のみでござる」

侍「めーるは拙者には少々困難極まるゆえ……」

美波「それなら、私とみくちゃんで教えますよー」ニコ

侍「真でござるか!? なら、よろしく願いたい」

美波「えぇ♪ それじゃあ、電話番号の交換を」

侍「うむ」




美波「これでよしっと。用も済みましたし行きますか?」

侍「そうでござるな。いざ参らん!」

美波(その掛け声はどうにかならないのかな)アハハ……

――

オーディション会場 控え室

モバP「台本は丁寧に覚えなくてもいいからな。自分をしっかり見せるんだぞ」

凛「うん。わかってる」

美波「わかりました」

モバP「それからこのオーディションの話は侍が取ってきたものだからしっかり気合入れろよ」

美波「そうなんですか!?」

侍「たいしたことではござらんよ」

モバP(連ドラのオーディションの話を持ってくるのは新人には難しいんだけどな……)

凛「やるじゃん」

侍「これもP殿と凛殿の教育の賜物でござる」

モバP「お前がしっかりやってるからこういう結果になってるんだ」

モバP「俺はやり方を教えただけだからな」

凛「私もたいしたことはしてないよ」

侍「かたじけない」

モバP「よしよし。みんなに気合も入ったな」

モバP「俺はトイレに行ってくるから大人しくしてろよ」

侍「拙者も少し外の風に当たってくるでござる」

凛「迷子にならないでよ」

美波「流石に、それはないですよ」

侍「肝に銘じておくでござる」

モバP「それじゃ、行ってくるな」

訂正 美波「流石に、それはないですよ」

   美波「凛ちゃん。さすがの侍Pさんでもそれはないよ」

―――

侍「こ、ここはいずこでござるか……」

侍(いつもばP殿かみく殿。美波殿がおったから迷子になることはござらんかった)

侍(こういう場所で一人行動をするのは初めてだったでござる……)

侍(困ったでござるなー)

侍「侘しいところだ。一旦ここはどこかに移動するでござる」スタスタ

?「……」グスングスン

侍「あそこにいるのは……おなごか?」

侍「……」

侍(放っておけないでござる)

侍「そこのおなご、よろしいだろうか」

?「え……?」

侍「拙者の名前は侍。何故泣いているのか気になったのでな」

侍「一体どうしたのだ?」

?「え、っとその。わたし……」ビクビク

侍「怖がらなくても心配無用でござる」

侍「拙者は、泣いているおなごをほっとけなかっただけでござるから」

?「はぃ……」オロオロ

侍「申し遅れたでござる。拙者の名は侍。モバプロダクションでプロデューサーをしているでござる」

?「モバ……」

?「もしかして、モバPさんがいるところですか!?」グイ

侍「と、突然どうしたのだ……?」

?「あ……すいません……」シュン

智絵里「わ、私の名前は緒方智絵里っていいます……」

智絵里「えと……昔、私はモバPさんの担当アイドル……だった人間です」

侍「おぉ! そうだったでござるか!」

侍「しかし、どうしてこんなところにいるのだ?」

智絵里「それは、その」

侍「遠慮せずに、申し出てみるでござる」

智絵里「はぃ」

智絵里(口調は変だけど……モバPさんのところの人だからきっといい人のはず)

智絵里「実はその、怖くなっちゃい、まして」

侍「怖く?」

智絵里「人前で話すのも苦手なのに急に演技なんて……」

侍「智絵里殿も今日のおーでぃしょんを受けるでござるか?」

智絵里「……」コク

智絵里「でも、無理ですよ……わたしには無理ですって」グスン

智絵里「怖いです」

侍「その旨は自分の担当ぷろでゅーさーに言ってないでござるか?」

智絵里「いえませんよ……」

智絵里「きっと言っても甘えるなで終了です……」

侍「そうで、ござるか」

侍「……」

侍「拙者も怖いでござる」

智絵里「え?」

侍「拙者実は……き、きおくそうしつだったでござるよー」

侍(黙っておかないといろいろと厄介になるのでな。これがべすとでござろう)

侍(しかし、記憶がなくなっている部分も確かにあるゆえ嘘ではないでござる)

侍(合戦中にこっちに来たことは覚えているでござるが合戦中の出来事は記憶にござらん)

侍(ゆえにどういった手法でこっちに来たのかはわからぬ)

侍「気がついたときには右も左も拙者はわからなかったでござる」

侍「それはもう不安だったでござるよ」

智絵里「……」

侍「しかし、モバP殿が拙者を助けてくれて今こうして仕事をしておる」

侍「そして、その仕事も怖いことだらけでござった」

智絵里「侍さんも怖いんですか?」

侍「そうでござる」

侍「きっと、今日のおーでぃしょんに来ている人たち全員怖い気持ちでいっぱいでござるよ」

侍「智絵里殿が弱いのではござらぬ。そう思うのが当たり前でござるよ」

智絵里「だったとしたら、侍さんもみなさんも強いです」

智絵里「わたしのように逃げないで頑張ってて……」

侍「確かにそうでござるな」

侍「もし、智絵里殿に勇気が沸かないのなら拙者が勇気の出るお呪いをするでござる」

智絵里「おまじない?」

侍「そうでござる。拙者もいつぞやのみく殿のうんどうかいで知ったものでござる」

智絵里「そ、そうなんですか?」

侍「いくでござるよ?」

侍「ふれー!ふれー!ちっえっり殿! 頑張れ頑張れ智絵里殿! 頑張れ頑張れ智絵里殿!」

智絵里「ちょ、ちょっと! 恥ずかしいですよ!///」

侍「ふー。でもなんだか元気をもらったのではござらぬか?」

智絵里「……はい。少しだけ臆病な気持ちがどこかに行きました」

侍「それはよかったでござる」

侍「もし、また談合したければここの連絡先に電話するでござる」カキカキ

智絵里「……やっぱりモバPさんに似てますね……」

侍「そのお言葉。拙者には勿体無いでござる」

智絵里「女の人に優しくて、真っ直ぐで……」

侍「当然でござるよ」

智絵里「ありがとうございます。今日一日は頑張れそうです」ペコリ

侍「……また泣きそうになったときは拙者のお呪いを思い出すでござる」

智絵里「はい……!」

智絵里「侍さんもファイトです」ニコ

侍「御意」ニコ

?「ここにいたのか智絵里」

智絵里「」ビク

クール系P「またどこかに消えたのかと焦ったんだぞ」

智絵里「す、すいません」

クール系P「全く……」

クール系P「? 誰だ?」

侍「あ、拙者、モバプロダクションの侍でござる」

クール系P「……お前が侍か?」

侍「そうでござるが……失敬。どこかでお会いしたことがござるか?」

クール系P「会ったことはないが、よーく知ってるよ」

クール系P「頭の悪そうな能無し侍口調のプロデューサーだってな」

侍「……」ピクピク

侍(落ち着くでござる。相手は他所のぷろでゅーさー。心を静めるでござる)

侍「そうだったでござるか! いやー、拙者もゆうめいになったでござるなー」

クール系P「こりゃ、モバPさんも眼力がなくなったな」

侍「……」ピクピク

クール系P「こんな野郎に目をつけるなんて。独立してから腕が鈍ったのか?」

侍「……撤回するでござる」プルプル

クール系P「きこえねーよ」

侍「拙者の殿を愚弄した言葉を撤回しろと言っているでござる!」

侍「拙者の中傷なら受け入れる!」

侍「しかし、P殿の悪し口は見過ごせぬ!」

侍「貴様のような男にP殿を貶めるような発言は拙者我慢ならぬ!」

侍「撤回するでござるよ!」

クール系P「イヤだね」

侍「貴様……!」

智絵里「……」オロオロ

凛「いた……」

凛(遅いと思って探してたら……)

凛「なにやってるのあれ?」

凛(なんかもめてるし)

凛(それに、もしかしてあれって……)

凛「面倒くさくなる前にPを呼んでおこう」

トゥルルルル

ガチャ

モバP「凛? どうしたんだ?」

凛「もしもしP? 今どこ?」

モバP『トイレの個室の中だ』

凛「よかった。だったら急いで私の指定する場所まで来てくれない?」

凛「侍Pとクール系Pが言い争いっぽいのしてるから」

モバP「本当か!? わかったすぐに行く」

凛「うん。お願い。どうもP絡みみたいだから」

モバP「けどな、凛。行きたいのはやまやまなんだけど……」

凛「どうしたの?」

モバP「トイレに入ったのはいいんだがな」

凛「?」



モバP「トイレットペーパーがないんだよ」



凛「……………馬鹿じゃないの」

モバP「あぁぁぁ凛! 待ってくれこのままじゃ出れない――」



侍「貴様! どうしてもその言葉を取り消さなぬというのか!」

クール系P「当たり前だ」

侍「何故P殿を愚弄するか!」

クール系P「事実を述べているだけだ」

クール系P「お前のような無能を見ていればそんなのすぐにわかる」

侍「なに!?」

侍「貴様は拙者のなにを知っている!」

クール系P「知ってるよ。まぁ、そこそこ成果を上げてはいるみたいだけど……」

クール系P「お前はモバPさんに指導してもらうような器じゃねーよ」

侍「貴様!」

侍「だったら貴様はぷろでゅーさーの器ではない!」

侍「智絵里殿を見ていれば一発でわかるでござる!」

侍「なにゆえ、貴様は智絵里殿をどらまのおーでぃしょんを受けさせる!」

侍「智絵里殿は嫌がっているし、向いていなさそうではないか!」

クール系P「馬鹿かお前」

侍「貴様に馬鹿にされる覚えなどないわ!」

クール系P「今回の役は智絵里なら必ず通る。そう判断したんだよ」

侍「しかし、智絵里殿は泣いておった!」

侍「そこまでして仕事をさせる意味はないでござる!」

クール系P「ははははは! なに言ってるんだよお前」

クール系P「アイドルは金を稼ぐための駒なんだよ。いちいち意見なんて尊重してられるか」

クール系P「仕事になるから今回はオーディションに参加させた。それのなにが悪い?」

侍「向いていないのに「やりたい」と言われれば尊重しないのはわかるでござる」

侍「しかし、智絵里殿は「やりたくない」でござった!」

侍「それでは亜異怒瑠が笑えぬ出はないか!」

侍「そんなのは拙者認めぬ!」

クール系P「お前に認められなくてもこっちは迷惑しねーよ」

侍「人の神経を逆撫でして……!」

クール系P「大体、アイドルなら笑顔だろ。なぁ智絵里」チラ

智絵里「え……?」

智絵里「え、えと……は、ぃ」ニ、ニコ

侍「このような見るからにやらされている笑顔。何奴がみて楽しいと申すのか!」

侍「拙者には理解できぬでござる!」

侍「いたいけなおなごにこのようなことをやらして貴様、恥ずかしく――」

モバP「そ・こ・ま・で・だ」

侍「P殿!」

クール系P「モバPさん……」

モバP「全く二人して……」

モバP「どうした。今日は随分おしゃべりみたいじゃないか」

クール系P「俺は別に」

侍「P殿聞いて下され! こやつが!」

モバP「わかってる」

侍「……」

モバP「ちょっと待ってろ」

侍「御意」

クール系P「モバPさん。あの話は本当なんですか?」

クール系P「この男を自分の弟子にしたって」

モバP「弟子ってのは大袈裟だけどその解釈であってる」

クール系P「なんでこいつなんですか!」

クール系P「俺にはなにも教えなかったくせにどうしてこいつには!」

モバP「お前よりこいつのほうが上。俺の見立てではそうなってる」

クール系P「………なんでそいつが選ばれるんだよ……」

クール系P「見ててくださいよ。すぐにでもモバPさんを越えますから」

モバP「……期待してる」

クール系P「それじゃ……」スタスタ

智絵里「……」ペコリ タッタッタッタ

凛「……」

クール系P「モバPさんを呼んだのはお前か?」

凛「だったら?」

クール系P「なんでもない」スタスタ

智絵里「こ、こんにちは」ペコリ

凛「うん。久しぶり」

智絵里「じゃ、じゃあわたしはこれで」スタスタ

凛「ねぇ、クールP」クル

クール系P「…」クル

凛「やきもちなんて女々しいところあったんだね」

クール系P「……」

クール系P「生意気なガキ……」スタスタ

凛「人のこと言えないでしょ」ボソ





侍「……」正座

モバP「他所のプロデューサーには口出しするなっていったはずだが?」

侍「拙者もいろいろと我慢してたでござる」

侍「智絵里殿のあんな姿を見ても堪えていたでござる」

侍「見るからにつらそうな、言葉にしなかったでござるけどやりたくなさそうにしてたでござる」

侍「だが、あのプロデューサーの態度を見たら黙ってはいられぬかった」

侍「しかも彼奴は亜異怒瑠のことを駒と言っておったのでござる!」

侍「そんなことを言われては堪える事はできぬ……」

侍「それに、元々の原因はP殿を愚弄したことが始まりでござった」

侍「P殿の腕が鈍ったなどと世迷言を言ったからに……」

モバP「そうか……」

モバP「けど、事実あいつは腕がいい」

モバP「アイドル業界で有名なPっていったら間違いなく名前が挙がるだろうな」

モバP「少数精鋭の765事務所のところの眼鏡。アイドル事務所最大手の俺が昔いた事務所のクール系P。そして俺」

モバP「この三人は必ず名前が挙がる」

モバP「やつは考え方があれだが、確実にお前より仕事が出来る」

侍「……」

モバP「悔しいか?」

侍「御意」

モバP「自分の考えが間違っているようで悔しいか?」

侍「…」コク

モバP「じゃあ、今日からさらに厳しくするからな」

侍「御意!」

モバP「それじゃ、そろそろオーディションが始まる」

モバP「控え室で待ってる新田ちゃんに声を掛けに行くぞ」タッタッタッタ

侍「あ、まつでござる!」タッタッタッタ

―――

一週間後 事務所

侍「ただいまー。でござる」

ちひろ「おかえりなさーい」

侍「今日は上手く行ったでござるよ!」

ちひろ「それは大儀である」

侍「かたじけない」

ちひろ「あ、そうえいば。このまえ美波ちゃんが二次選考で落ちて凛ちゃんが三次で落ちたオーディションの話がありましたよね?」

侍「……そんなのもあったでござるな」

ちひろ「あれ、最終的には智絵里ちゃんで決まったみたいですよ?」

侍「そうでござるか」

侍「いやー、拙者のお呪いが役に立ったでござるか!」

侍「良き良き」

侍「ちひろ殿。少し外に出るでござる」

ちひろ「え、はい。わかりました」

――

侍「………」ポタポタ

侍「く、や……しいでござるるぉぉぉぉぉ!」

侍「次は、次こそは……必ず奴を……討ち取ってみせる!」

end

所属アイドル

モバP担当

渋谷凛 佐久間まゆ ???

侍P担当

前川みく 新田美波

次回予告

「親」

3話終らせたから後4話くらいかな?

付き合ってくださいね

小ネタいくかー

一回だけ行動を選択させる安価をとりたいとおもいます。

凛「おはようー」

凛「って、誰もいないの?」

まゆ「おはようございます」

凛「まゆ一人だけ?」

まゆ「あと、侍Pさんもいますよー」

まゆ「向こうの部屋でアニメを見てますぅ」

凛(アニメ? なに見てるんだろ)

セカイハマルデメリードーランド

凛(ん? どこかで聞いたことがある曲……)

凛「ねぇ、侍Pなに見てる――」

凛「えぇ……」愕然

侍「凛殿! 一緒にみるでござるか!?」

凛「見るも何も……」

凛「プリキュアって……」

侍「ぷりきゅあ、らぶりん――」

凛「お願いだからそれ以上はやめて」

侍「そ、そうでござるか?」

凛「まーゆ!」

まゆ「なんですか?」ニヘ

凛「説明して」

まゆ「侍Pさんがなにか映像作品を見たいっていうからみせてあげたんですよ」

まゆ「勧善懲悪ものが好みかなーっとまゆは思ったんでぇ」

まゆ「あれを見せたんですよ」ニヘ

凛(確かに侍Pが好きそうな勧善懲悪ものだけど……)

まゆ「凄いんですよー。初代から飽きずにずっと見て」ニヘ

まゆ「まゆの前だけですけど初代から最近までのキャラ全員の変身の合言葉もしっかり詠唱できますよぉ?」

凛「……新田さんとみくが気付く前に矯正する」

まゆ「え?」

まゆ「あんなにも楽しそうに見てるのにいいんですかぁ?」

凛「間違いなくあの二人の仕事に支障が出るレベルだよ。あれ」

侍「ひゃっほーい! かっこかわいいでござる!」

凛「ね?」

まゆ「うーん。まゆは気になりませんけどぉ」

凛「違うものを見せてプリキュアを頭の外に出させる」

まゆ「なにを見せるんですか?」

凛「それは>>333

1 北斗の拳

2 水戸黄門

3 子連れ狼

4 筋肉マン


過疎ってるからある程度時間掛かるでしょ

ちょっとだけやることやってきちゃいます。

2

凛「侍P。そろそろプリキュアは卒業しようか」

侍「いやしかし、拙者はまだ」

凛「いいから。つぎはこれ」

侍「水戸黄門?」

凛「戦国時代からしばらくしてからの物語だから侍Pも楽しめるよ」

侍「おぉ! そうでござるか。では早速」

凛(よしよし、釣れた。後は待つだけ)

まゆ「……」ニヘ

数日後

凛「おはようー」

凛「って誰も居ないの?」

凛「ん? なんかここに書置きが……」



侍『拙者世直しのために日本をぐるっと回ってくるでござる』



凛「」

まゆ「あーあー。凛ちゃんのせいで侍Pさんどっかにいっちゃいましたね」ニヘ

凛「」

end

すべてはまゆの掌の上

ちょっと風呂は言ってから次の話を書きます

ちなみにドラマを作るために起爆剤ry

ご了承くださいね

後、投下してる最中とかその他にも別に雑談は構わないんで好き勝手に使ってくれて大丈夫ですよ。

―――12月―――

公園

侍「今日も冷えるでござるなー」

侍(しかし、みく殿が頑張ってる褒美としてくれたまふらーのおかげで暖かいでござる)

侍(営業はあまり達者にこなすことは出来なかったが、てんしょんをあげていくでござる)

侍(しかし、景色は変ってしまったもののこの時代にも四季の美しさというものは存在するのだな)

侍(昨日視聴した京の都の映像はまっこと美しかったでござる)

カァー カァー カァー

侍「む? カラス?」

?「こらいじめちゃダメだってばー!」

侍(おなごが黒い鳥に襲われておる……)

侍「いかん!」

侍「やめるでござる!」

カァー カァー

侍「ふぅ。危なかったでござるな」

?「本当ですね」

?「すいません。どうもありがとうございます」ペコリ

侍「拙者はなにもしとらぬでござる」

?「そんなことないですよ。この子も助かりましたし」

犬「ワン」

侍「犬……でござるな」

?「はい! さっきカラスの群れに襲われて大変だったんですよ」

?「あ、自己紹介がまだでしたね」

愛梨「私の名前は十時愛梨っていいます」

侍「拙者の名は侍。宜しくお願いいたす」

愛梨「侍……って!」

愛梨「わ、私のことは斬らないでください! 斬っても美味しくないです!」

侍「いや、拙者は辻斬りではござらん。しかも、取って食おうというわけではござらぬ」

愛梨「本当ですか?」

侍「ほ、ほらを吹く必要はないでござる」

とときんの一人称アタシだったね。すまぬでござる。

愛梨「もう、びっくりしましたよ。そうならそうと先に言ってください」

侍「す、すまぬ」

愛梨「それにしても、そのちょんまげはどうしたんですか?」

侍(拙者のことを侍だと認識してからその問い掛けでござるか?)

侍「せ、拙者は侍でござるから、その、この髪型は」

侍「…………」

愛梨「…………」

愛梨「あ、そうか! 侍さんだった!」

侍(ど、どうもやりにくいでござるな)

侍「それにしもその犬、どうしたでござるか?」

愛梨「うーん。どうやら捨て犬のようです」

愛梨「こんなに可愛い柴犬の子供なのに……」

愛梨「このまま放っておくのもあれですし、怪我もしています」

愛梨「でも、私の家はアパートで犬は飼えないので……」

愛梨「どうしよう。友達にでもあたってみようかな?」

侍「……」

侍「そうだったでござるか」

侍「お主も捨てられたでござるか……」

犬「くぅーん」

愛梨「?」

侍「……しばし愛梨殿。拙者の事務所まで同行願えるでござるか?」

愛梨「事務所? 侍さんの家ですか?」

侍「そうでござるな。家のような暖かい場所でござる」

愛梨「どういう意味です?」

侍「なんでもござらんよ。それでは拙者について来てくだされ」

愛梨「は、はい」

侍「それにしても愛梨殿肩を出して寒くないでござるか?」

愛梨「?」

侍「拙者のまふらーを貸すでござる」シュ

愛梨「……」

侍「暖かいでござるか?」

愛梨「アタシ暑いんで大丈夫ですよ?」

訂正 愛梨「でも、私の家はアパートで犬は飼えないので……」 ×

   愛梨「でも、アタシの家はアパートで犬は飼えないので……」○

―――

侍「ただいまー。でござる」

犬「ワン!」

愛梨「お邪魔しまーす」

ちひろ「どうしたんですか……って、どちら様でしょうか?」

侍「先程公園で知り合った十時愛梨殿でござる」

愛梨「こんにちは」

ちひろ「そ、そうですか。後、そっちの犬は……」

侍「うむ。先刻公園で鴉に襲われているところ助けたでござる」

ちひろ「へぇ、可愛い子犬ですね。とりあえず中に入ってください」

愛梨「……」

侍「どうしたでござるか?」

愛梨「変ったおうちですね!」

侍「いや、第二の家という意味で先程は……」

侍「まぁ、いいでござる」

みく「にゃ!? 侍Pちゃんどうしたのにゃ?」

侍「みく殿いたでござるか」

みく「そんな寂しいこと言わないでほしいにゃ」ダキ

侍「はは、みく殿は寒がりゆえこうやって抱きつくのが好きでござるなー」

みく「にゃ、そういえばそっちの人は誰にゃ?」

愛梨「こんにちわ。十時愛梨です」

みく「こんにちわにゃー……」

みく(なぜか、少しだけみくのセンサーに触れたにゃ……この女侍Pちゃんに近づけないほうがいいにゃ……)

ちひろ「とりあえずどうしますか」

犬「ワン!」

みく「犬にゃ?」

ちひろ「そうなの。みくちゃんは犬嫌い?」

みく「猫の方が好きだけど……嫌いってほどではないにゃ」

侍「捨て置かれていた故お腹が空いているのではなかろうか?」

愛梨「あ! そうですよ!」

ちひろ「じゃあ、牛乳があるんでそれを飲ませてみますか」

―――

ガチャ

凛「おはようー」

侍「おぉ凛殿。いまちょうど子犬に食べ物を与えるところでござった!」

凛「子犬?」

犬「ワン!」

凛(子犬……目の前には牛乳……)

凛「まだ、飲ませてないよね?」

侍「そうでござるが……」

凛「みんな正座」

一同「え?」

―――
ガチャ

モバP「おーい。凛子犬用のミルク買って来たぞ」

犬「ワン!」

凛「ありがとう」ナデナデ

一同「……」ズーン

凛「ちひろさん」

ちひろ「はい……」

凛「ネットとかで調べることができたよね?」

ちひろ「ごもっともです」

凛「はぁ……」

凛「牛乳を飲ませると個体にもよるけどお腹を壊したり幼犬の場合衰弱死することもあるんだよ?」

凛「軽率すぎ」

一同「すいません」

みく(なんでみくまで……)

モバP「そのくらいにしておけってみんな反省してるから」

凛「わかった」

侍「しかし、よかったでござる」

侍「凛殿の知識がござらんかったらその犬に酷い目をあわせるところでござった」

凛「全くもう……それでこの子犬はどうするの?」

犬「ワン」

愛梨「アタシの家では飼う事が出来ないからどうしようか迷ってたんですよー」

侍「事務所に来れば誰か宛が出来るかもしれないと思い連れてきたでござるよ」

モバP「それは無理そうだなー」

侍「そうでござるか?」

モバP「だから、事務所に飼うことにしよう」

ちひろ「ちょ、ちょっと!」

ちひろ「ここで飼うのはどうかと思いますよ!?」

モバP「お願いだよちひろー」

ちひろ「……もしかして前々から犬を飼いたかったけど、自分の家では犬が飼えないからここで飼ってしまおうとか思ってませんか?」

モバP「ソンナコトナイヨー」

ちひろ「ダウトです! 面倒をみるのは私になるんで勘弁してくださいよ!」

訂正 モバP「だから、事務所に飼うことにしよう」×

モバP「だから、事務所で飼うことにしよう」

ちひろ「私も犬は好きですけど仕事の支障になるのは勘弁してほしいです!」

侍「お願いするでござる」

愛梨「お願いします!」

凛「私も柴犬と触れ合ってみたい」

みく「侍Pちゃんがお願いするならみくもお願いするにゃ」

ちひろ「……もうわかりましたよ」

ちひろ「その代わり、仕事がないときはこまめに事務所に顔出して面倒みてくださいね?」

一同「はーい」

モバP「みんなに言われたら引けないよな?」

ちひろ「意地悪ですよみんなー」

ガチャ

まゆ「おはようございますぅ」

美波「おはようございます」

侍「おぉ、良き時間に来たでござるよ」

美波「どうかしたんですか?」

侍「先刻この犬がここで飼う事が決まったでござる」

モバP「新田ちゃんとまゆは犬アレルギーとかないよな?」

まゆ「まゆは大丈夫ですよ」

美波「私も大丈夫です」

モバP「よし、そうと決まれば名前だな」

ちひろ「それでは紙を配るので各々好きな名前を書いて発表してください」

侍「みんな書けたでござるか?」

一同「」コク

侍「それではまず拙者のから発表するでござる」

侍「拙者が考えたのは――これでござる!」

『亜異怒瑠』

凛「却下」

侍「即答でござるか!?」

凛「さすがにそれはない」

侍「……すまぬでござる」

安価かとおもた

愛梨「それでは次はアタシですね」

侍「拙者のかたきをとってくだされ」

愛梨「任せてください!」

愛梨「アタシが考えたのは――これです!」

『メソポタミア一世』

一同「………………?」

ちひろ(それは古代文明では?)

モバP(しかも、一世って……)

侍「よくわからないでござるが響きがいいでござるな!」

愛梨「ですよね!」

ワァー ワァー ワァー

みく(天然と侍が二人揃うと手がつけられないにゃ)

>>359

うわー! 最終的に決めるときにそうしようと思っていたのに言わないでください!

故に、みなも考えてもらいたいでござる。

>>361

間違えた。アイドルとモバP、侍、ちひろが出した中で決めてもらいたいと思っています。

でも、安価やったほうが面白そうですし

とりあえず後のメンバーが出す名前は安価でやってみましょう

そして、安価が全て出揃ったたらまた安価して正式な名前を決めましょう。

モバP「次は俺の番だな」

モバP「俺が決めた名前はこれだ!>>367

フーミンかげろしゃぶ

『フーミン、げろしゃぶ』

モバP「これのどちらかにしよう!」

ちひろ「今の世代の人はわからないので却下です」


正し安価を取ってこれが採用になったばあい フーミンでFA

まゆ「じゃあ次はまゆの番ですねー」

まゆ「まゆが考えたのはこれです。>>372

アネモネ

『アネモネ』

モバP「おぉいい名前だな」

侍「おなごっぽい可愛らしい感じでござるな」

凛(いや、違う。真の意味は別にある)

凛(これはPへのメッセージ……)

まゆ(凛ちゃんには気付かれちゃいましたか……)

この犬は雄雌どっちなんだろ?
安価下

凛は実家が花屋さんだからね

花言葉くらいしっているはず。

>>374

女の子です。すいません明記してなかったです

凛「じゃあ、次は私ね」

凛「私のはこれ。>>380

(シエル、チェレステ……うーん、尻尾が巻いてるからマキってのも悪くないかも)

『キテル』

侍「キテル?」

モバP「来てる?」

みく「着てるにゃ?」

凛(いえない……結局決まらずに頭の中に思い浮かんだ文字の尻尾だけを取ったとは……)

凛(しかも、思いついた順番から巻き戻して尻を取ったことを……)

凛(言えない……)

まゆ「……」ニヘ

美波「それじゃあ、次は私の番ですね」

美波「私のはこれです>>386

クロス

『クロス』

侍「拙者勉強したので知ってるでござるよ!」

侍「確か、交差するとかそういう意味だったでござる」ドヤァ

美波「えっとー……そうなんですけど」アハハ

美波(ここは黙っておくほうがいいかな)

美波(本当はラクロスから取ったんだけど……)

美波(侍Pさん嬉しそうだし)

侍「♪」

モバP(大人だなー)

みく「じゃあ次はみくの番にゃ!」

みく「みくはこれにゃ!>>389

クリーム

『クリーム』

みく「どうにゃ!」

一同「……」

みく「? どうしたにゃ?」

モバP「いや、凄く真面目に考えてくれてたんだなって……」

ちひろ「みくちゃんならシュレディンガーとか名づけそうですけど」

みく「みんな酷いにゃ!」

みく「みくは真面目だからしっかりこういうのは考えるにゃー」ベー

凛(そういえば猫って生クリームが駄目なんだっけ)

ちひろ「じゃあ次は私ですね!」

ちひろ「私は……これです!>>392

マネー

『マネー』

侍「お金……でござるか?」

ちひろ「はい!」

愛梨「お金は……怖いですよ!」

ちひろ「わかってますよ!」

モバP「ちひろごめんな。あまりスタドリ買って上げられないのと給料が悪いからついにマネーの化身に……」ポタポタ

ちひろ「違いますよ!」

ちひろ「事務所に置くんだったらどうせならお金が少しでも入ってきそうな名前がよかったんです!」

凛「ごめん。ちひろさん。気付いてあげられなくて。これ、私からの気持ち」

ちひろ「な、なんで凛ちゃんに10円玉を恵んでもらわなくちゃいけないの?」

みく「ごめんにゃ」

ちひろ「なぜ、みくちゃんにガムを渡されなきゃいけないの?」

美波「すいません。私ちひろさんがまさか……ごめんなさい」

ちひろ「なぜ、ラクロスの球を渡されなきゃいけないの!?」

まゆ「……」ニコ

ちひろ「なぜ、コンビニのクーポン券を渡されるの!?」

犬「くぅーん」

ちひろ「なぜ、犬にまで心配されているの!?」

ちひろ「みなさん勘違いしてます!」

ちひろ「別に私は貧乏とかそんなんじゃ」

一同「……」生暖かい目線

ちひろ「なんで………私ばっか……こんな酷い目に……」ポタポタ

マネーき犬になるように、ということですね

モバP「それじゃあ、ここまで決まったから最終的に投票で決めるか」

モバP「それで異論はないな?」

一同「」コク

モバP「じゃあまずは――」

――――

侍「決まったでござるな」

侍「おぬしの名前は今日から>>402でござる!」

>>395

あっちゃー

今日はもう寝るんで明日には決まってるといいです

それから、リアルが多忙になりそうなんでしばらく更新できないかもです

もっと面白くするんで頑張ります。

みく

で、765の眼鏡とやらは出てくるのかね?

いくでござる! たぶん

>>405

出番は少ないと思うでござるけどもしかしたら出るでござる

――数日後――



愛梨「それにしても、クリームちゃんはいい子ですね!」

侍「そうでござるなー」

愛梨「教えたことはなんでも覚えるし、頭いいんですかね?」

クリーム「わん!」

侍「散歩をしていても急に走り出さないでござる」

愛梨「それからあんまり吼えないですし」

愛梨「人懐こいし本当に可愛いですねー」

侍「事務所内の亜異怒瑠でござるからな」

愛梨「みなさんちゃんと面倒をみてくれますし、クリームは恵まれてるね」

クリーム「わん、わん!」

愛梨「あ、そうだ! 侍さん、この散歩が終ったらアタシの家に来ませんか?」

侍「それは構わないでござるが……拙者この後仕事があるので難しいでござる」

愛梨「そうですかー。だったら夜は大丈夫ですか?」

侍「それだったら心配無用でござる」

愛梨「よかったー。お礼がしたかったから断られたらどうしようかと思いましたよ」

侍「いやいや、そんなことはしないでござるよ」

愛梨「はは、そうですよね!」

侍「拙者も楽しみにしているでござる」

―――

愛梨「ただいまー」

愛梨母「おかえりなさい」

愛梨「ねぇ、お母さん。今日の夜友達連れてきていい?」

母「えぇ!? め、珍しいわね」

愛梨「だめ?」

母「ダメではないけど……ちょっと待っててね」

母「うん。今日はたぶんあの人も帰ってこないだろうから大丈夫よ」

愛梨「本当!? よかったー」

母(愛梨が女の子の友達を連れてくるなんて本当に珍しい……)

母「その人って公園で一緒に犬を拾ったって人?」

愛梨「そうだよー」

母「どんな人なの?」

愛梨「えーっと……髪型が特徴的でー」

母(なんだろう? 巻き髪とかなのかな?)

愛梨「身長はちょっと高いくらいでー」

母「うんうん」

愛梨「後は少し口調がおかしいかも」

愛梨「顔はかっこよくて、行動とかは可愛い感じの人」

母「うん?」

母(口調がおかしくてかっこ可愛い系の人?)

母(ど、どういう人なんだろう)

愛梨「まぁ、夜になればわかるよ!」

母「そ、そうね」

母(な、なんだか胸騒ぎがするわ……)



―――


愛梨「あ! 侍さーん! こっちです」

侍「おぉ、そこでござったか」

侍「すまぬ。ちひろ殿に事務処理の仕方を教わっていたら遅れたでござる」

侍「最近になってぱそこん? の使い方を覚え始めた故」

愛梨「へぇー。私はパソコンさっぱりですから凄いですね!」

侍「本もしっかり買って勉強中でござる!」ドサ

愛梨「うわー。凄く大きい」

侍「拙者も古本屋で買ったときはこれほどの分厚さなのかと驚いたでござる」

愛梨「ちょっと、貸してもらってもいいですか?」

侍「御意」

愛梨「み、未知の世界の言葉がたくさん書かれている……」

侍「拙者も最初は悪戦苦闘で辞書とにらめっこしながら頑張り申した」

侍「きーぼーどの使い方からねずみの使い方」

侍「拙者、基本的なこともおぼつかなかったでござる」

侍「最初起動させることに成功したときは舞い上がったものだ」

侍「喜びすぎて凛殿に頭を叩かれたでござるが」

愛梨「やっぱり侍さんって凄いんですね!」

侍「それほどのことではござらんよ」ドヤ

愛梨「それじゃあ、私の家に案内するんでついてきてください」

侍「御意」


本のタイトル 「XPの使い方大全」

―――

愛梨「お母さんー。つれてきたよー」

母「あー、まっていまし……た?」

侍「拙者の名は侍。お初にお目にかかる」

母「えっと……はぁ……」

母(お、お、、お落ち着くのよ私)

母(連れてきたのが男だからって早とちりはいけないわ)

母(愛梨は『友達』っていってたんだから)

母(けど……)

母(愛梨も年頃……)

母(今まで彼氏なんて出来てなかったし連れてきたこともなかった)

母(けれど今回ばかりは)

母(もしかしたら、もしかしたら)

母(彼は愛梨の……!)

母(しかも、年上って!)

母(恥ずかしいから友達と誤魔化したのかもしれないわ!)

母(ここは思い切って聞いてみましょう!)

母「えっとー、愛梨とは公園で知り合ったんですよね?」

侍「そうでござる。子犬を一緒に助け申した」

母「そのー。その後は一体どういう関係で?」

侍「その……後、でござるか」チラ

愛梨「うーん」

侍(一緒に散歩をして……)

愛梨(一緒に体を動かしているから……)

侍・愛梨「体同士の関係です!」

母「」

母(え、なに)

母(体同士の関係?)

母(わ、私の耳がおかしくなったのかしら)

母(でも、さっき確かに……)

母(愛梨が不浄の道に、愛梨が不浄の道に)

母「愛梨が不浄の道に……」チーン

侍「大丈夫でござるか?」

愛梨「お母さん?」

―――

母「あぁ、そう。二人で犬の散歩をしていたの」

侍「そうでござるが……他になにかあるでござるか?」

愛梨「お母さんなんか勘違いしてた?」

母「ううん。別に!」

母(ひとまず安心したわ)

母(そうよ。愛梨はそんな子じゃないわ)

母(侍さんだってスーツにちょんまげの人だけどいい人そうだし)

母(それに……)

愛梨「あ、侍さんご飯粒ついてますよ」

侍「おぉそうでござるか」

ウフフ アハハ

母(二人の後ろにお花畑があって蝶々が飛んでるし)

母(愛梨と侍さんから放たれている人畜無害なオーラが合わさるとこんな風に……)

母(それに、二人とも天然だからどう足掻いても間違いは起こらないわよね)

母(おそらく、同じ部屋に二人っきりになってもなにもしないと思うわ……)

母「それで、侍さんは一体どんなお仕事をしているんですか?」

侍「拙者は亜異怒瑠プロデュースをしておるでござる」

母「アイドルプロデュース?」

侍「おっと、名刺でござる」

母「はぁ……」

母「ここに書いてある所属アイドルの渋谷凛って……」

母「もしかして、最近テレビに出始めてるあの」

侍「そうでござるよ」

母「それじゃあ、ぎょ、業界の人じゃないですか!」

愛梨「えぇ!? 本当ですか!」

侍「いや、愛梨殿は凛殿と喋っているではござらぬか……」

愛梨「り、凛ちゃんってあの渋谷凛ちゃんだったんですか!?」

侍「そ、そうでござるよ?」

愛梨「アタシ、全然きづかなかった……」シュン

愛梨「握手してもらえばよかった」

侍「凛殿は忙しいでござるけどまた会えるでござるよ」

愛梨「じゃあ、今度会ったら握手してもらいます!」

母「あのー……うちの愛梨にもしかしてアイドルをやらないかとは……」

侍「勿論、頼んだでござるけど断られてしまったでござる」

母「えええー! 愛梨勿体無いわ!」

愛梨「いや、アタシにはそういうのはちょっと無理かなって」

侍「そんなことないでござるよ」

侍「拙者、実はまだ諦めてないでござる」

母「愛梨!」ガシ

愛梨「なに、お母さん?」

母「あなたは可愛いわ! だからきっと……」

愛梨「うわー! もう親馬鹿炸裂させないでよ!」

母「ごめん……」シュン

アハハ アハハ

ふと思う

いちゃらぶ要素なくね?

なくてもいいよね?

ね?

わかったでござる。

いちゃらぶとかすっかり頭の中から抜け落ちてた

そうだよね。モバマスだったらやっぱりいちゃいちゃしたいよね

ってなわけでモバPと侍さんのいちゃらぶを……

需要ないですよね。拙者的にはみくちゃん出番少ないのと日頃の扱いが酷いから光を当ててあげたい。

侍(愛梨殿の母上は娘思いでござるな……)

侍(しかし、ちと違和感が拭えないのはどうしてだ?)

侍(なにかが喉に突っかかっているような……)

侍(それに)

侍「母上殿つかぬ事をお聞きするがその体のあざはどうしたでござるか?」

母「……あぁ、これですか」

母「ちょっと階段で転んでしまって」

侍(階段?)

愛梨「……」

侍(む、いきなり空気が悪くなったでござる)

ガチャン

愛梨「!」

母「うそ、どうしてこういうときに限って!」

母「今日は来ない日なのに!」

母「愛梨と侍さんは向こうの部屋にいってて!」

侍「? どうしたでござるか?」

愛梨「いいから来てください!」

ガララ

愛梨父「おうー。帰ったぞー」

母(あ……!)

父「……」

侍「……」

父「……誰だお前」

侍「せ、拙者の名は侍。えーっと」

父「おい! これはお前の男か!?」

母「違いますよお父さん! 愛梨の友達です!」

父「なに!? 友達だ……?」ギロ

侍「そ、そうでござる」

父「こんなふざけた格好したやつがか?」

父「喋り方もおかしいしよー」

父「おいお前。本当に友達なんだろうな?」

侍「……」

侍(酔っているでござるな)

父「なんとか言ってみろよ!」ダン

母「あなた、やめてください! お客様ですよ」

父「どこからどうみてもあやしいじゃねーかよ!」

父「こんなやつはきゃくじゃねー!」

父「なんでこんなやつを家に上げた!」

母「そんなの……私の勝手です」

父「俺にたてつくのかよ!」ダン

母「もうやめてください!」

母「こんなみっともない姿――」

父「このや、ろう!」フ

愛梨(手に持ってる酒瓶で――!)

パリン

ポタポタ

侍「……父上殿。暴力は……いけないでござるよ」

母「侍さん!」

父「……な、なんだよお前」タジタジ

父(こいつ……一体なんなんだ……目が……)



父(目が、冷めていやがる)



父(殴られたのに、なんちゅう目をしてるんだよ)


父「ケッ」

父「きぶんわりーな」スタスタ

ガララ

ガチャン

愛梨「侍さん! 大丈夫ですか!」

侍「心配無用」

母「でも!」

母「ちょっと待っててください今、包帯とかとってきますから」

侍「……それは構わないでござるが」

侍「……」

侍「母上殿、少々無理なお願いをしてもいいでござるか?」

母「はい?」

侍「拙者をしばしの間でいいのでここに置いてほしいでござる」

母「置いてほしいって……正気ですか!?」

母「みてわかったでしょ! うちの夫は……」

侍「わかっているから置いてほしいのでござる」

母「え……?」

侍「他の家の事情に顔を突っ込むのは拙者としてもやりたくないのだが……」

侍「すまぬ。しばし、置いてほしいのだ」土下座

愛梨「侍さん? また、怪我、しちゃいますよ?」

愛梨「これ以上アタシと関わるのは――」

侍「あの程度で愛梨殿と縁を切るほど、拙者は柔ではござらぬ」

愛梨「でも!」

侍「お頼み申す。拙者、わがままを聞き届けてほしい」

母「……わかりました」

母「愛梨。自分の部屋に戻ってなさい」

母「私は侍さんと少しお話しするから」

愛梨「……」

愛梨「わかった」スタスタ

―――治療中―――


母「……あの人についてちょっと話したいとおもいます」

侍「御意」

母「さっきの通り……彼は少々気が立っていて私に暴力を振るってきたりします」

母「世の中ではDVと呼ぶのでしょうか」

侍「愛梨殿は……?」

母「さすがに、子供に手をだすことはありません」

母「それに、愛梨には部屋を与えているので夫が来たときには出ないようにいいつけているんです」

侍「……母上殿は大丈夫でござるか?」

母「私は……大丈夫です」

母「それに、彼は元々こんな人ではなかったんですよ」

侍「というと?」

母「おかしくなってしまったのは5年ほど前」

母「夫が経営していた工場が潰れた事が原因です」

母「それを機に私たちは多額の負債を背負ってしまいました」

母「なんとか夫は他で働いてその借金を返すことは出来たんですけど……」

母「ちょうど借金の返済が終ってすぐにリストラにあってしまったんです」

母「それからまた職を探して再出発しようとしたんですけど」

母「なかなか職は決まらずに最終的にはなにもしなくなってしまいました」

母「日中はパチンコと競馬に明け暮れ夜は無職の仲間と麻雀」

母「典型的なダメ亭主になってしまったんです」

母「そして、夫が働かなくなると、生活ができなくなってきます」

母「だから、私が働きに出るようになったんですけど……」

母「その辺りですかね。私に暴力を振るうようになったのは」

侍「……後ろめたい気持ちが原因でござるな」

母「はい」

侍「母上殿に働かせている罪悪感と自分への劣等感でイライラして」

侍「そして、母上に暴力を振るってしまう」

侍「そうなると居心地が悪くなり外へと出て行く」

侍「さらに、手を出したことの罪悪感で余計に……」

侍「……」

母「よくそこまで分析できましたね?」

侍「入ってきた瞬間わかったでござるよ」

侍「父上殿がどういう気持ちでここの家にあがったのかなんて……」

侍「拙者と同じ匂いを感じたでござるから」ボソ

侍「きっと、いろんな感情が駆け巡っていたことでござろう」

侍「……続きをどうぞ」

母「はい」

母「しばらく、するとうちに怖い顔をしたお兄さん達が来るようになりました」

母「理由はわかっています」

母「夫はパチンコやら競馬をやって使っているお金をやりくりするために、危ない貸し業者さんに手をつけたんです」

母「そして、連日怖い顔をしたお兄さんとかがうちに来るように……」

母「一応、元金はもう返していて後は利子分だけなんですけど……」

母「それがとてもじゃないですけど私に払えるような額ではなかったんです」

侍「そうだったでござるか……」

侍「辛い話をさせてかたじけない」

母「別に……いいんですよ」

母「それで、侍さんはなぜここにいたいんですか?」

侍「ほっとけないから。それだけでござるよ」

母「……危ない、ですよ?」

侍「心得ているでござる」

母「そうですか……」

母「それじゃあ、今日はもう遅いので愛梨の部屋で寝てもらってもいいですか?」

侍「愛梨殿の部屋……でござるか?」

母「きっとあの子心配していると思うし」

母「それに、いろいろと精神的にも……」

侍「了解したでござる」

母「頼みました。私じゃもう。なんて声を掛けていいのかわからないので」

侍「御意」

――

コンコン

侍「失礼するでござるよ」

愛梨「はい」

ガチャ

愛梨「……お父さんの話ですか?」

侍「うむ」

愛梨「そうですか……」

愛梨「隣、いいですよ」

侍「御意」

ボフ

侍「愛梨殿は父上のことをどう思っているでござる?」

愛梨「もちろん……好きですよ」

愛梨「そりゃ、今はちょっとあれですけど……」

愛梨「昔はとっても優しかったので」

侍「そうで……ござるか」

愛梨「どうして、侍さんはうちのお父さんを見ても平気なんですか?」

愛梨「普通の人がみたら怖がっちゃうのに……」

愛梨「侍さんのお父さんもあんな感じだったんですか?」

侍「いや、拙者の父上は優しいお方でござった」

侍「しかし……実は拙者、真の父親というものを知らないでござる」

侍「真の家族も……」

愛梨「聞いても……いいですか?」

侍「……」コク

侍「拙者実は一度親に捨てられたことがあるでござる」

愛梨「え?」

侍「生まれて、数ヶ月で拙者はとある町商人の家の前で捨てられておった」

侍「そして、そこの主人がそれを見つけ拙者を育てたでござる」

侍「まっこと、優しい方でござった」

侍「捨て子である拙者を真の息子のように接してくれて怒るときは怒る」

侍「褒めるところは褒めるを徹底しておったでござる」

侍「そこの母上も優しくて拙者は幸せ者でだった」

侍「一家で食事をとるときはいつも明るく暖かかったでござる」

侍「今日あったことを嬉々として話したものだ」

侍「しかし、そんな日々は脆くも崩れていくでござる」

侍「拙者が12になる頃に父上は亡き者になり申した」

侍「その日の夜は珍しく目が赤くなるほど泣いたでござる」

愛梨「その……なんかすいません」

侍「大丈夫でござるよ」

侍「だから真の父親という存在も真の家族というありかたも」

侍「拙者にはよくわからないでござる」

侍「しかし、ここにも美波殿の家のような暖かみがほしいと拙者は思ったでござる」

侍「おそらくあれが、本来の家族のありかただと拙者は感じたでござる」

侍「まぁ、そうなると拙者の家族も本来のありかたになってしまうでござるが」

愛梨「……アタシの家も家族団欒があっていつも笑っていました」

愛梨「そんな日がまた来るといいな」

侍「来るでござるよ」

侍「拙者がなんとかするでござる」

愛梨「本当ですか?」

侍「心配無用でござるよ」

愛梨「そうですか……」

愛梨「それにしても、どうしてここに残るなんて」

侍「なんだか、愛梨殿の父上に軽い親近感が沸いてしまったでござる」

侍「その話の続きでござるが」

侍「父上が死んだ後母上はおかしくなってしまわれた」

侍「拙者が家にいるといつも疫病神だといわれるようになり申した」

侍「それを言われるのがイヤであまり家には帰らなくなったでござる」

侍「しかし、時間が経てばまた家に帰るようになるでござる」

侍「もしかしたら、あの暖かみがあるかもしれないと思い……」

侍「だが、そんなことはなかったでござる」

侍「家に帰ればいつも通り母上に嫌味を言われる」

侍「そんなある日拙者は母上に手を上げてしまった」

侍「おなごには優しくあれと常に言い聞かせておったが……」

侍「拙者は手を上げてしまった」

侍「凄い罪悪感に苛まれたでござる」

風呂に戻ったら再開

風呂から戻ってきたら再開


侍「いっそのこと腹を切ろうかとも考えたでござる」

侍「なんて親不孝な息子だと」

侍「まぁ、結局、最後に平伏だけして家を完璧に出たでござる」

侍「その後父上がよく拙者に言っていた『男として生まれたなら侍(おとこ)として死ね』を思い出し」

侍「戦……ではなくその――」

侍「亜異怒瑠のプロデューサーになったでござる」

愛梨「そうだったんですか……」

侍「拙者が愛梨殿の父上になにか言い出せなかったのは昔の自分と重なったからでござる」

侍「状況は違えど家に居づらいのは一緒でござるし回数は違えども手を上げたのは同じでござる」

侍「そして、拙者の場合修復不可能でござったが愛梨殿の父上はまだやり直せると踏んだ故」

侍「こうしてここに残ることを決意してなんとかまた優しい父上に戻ってもらいたいと思った所存でござる」

侍「お節介だとは思うが、拙者の我侭に付き合ってくだされ」

愛梨「……はい。わかりました」

侍「かたじけない」

侍(拙者は暖かい家族を取り戻すことができなかったでござるけど……)

侍(きっとここの家族ならまた取り戻すことが出来るはず)

侍(それは愛梨殿のためでもあり父上母上のためにもなる)

侍(どこまで出来るかはわからぬが、全力を尽くし)

侍(ここの家族の暖かみを取り戻してみせるでござる!)

―――

愛梨「zzz」

侍「よく寝ているでござるな」

愛梨「お父、さん……」

侍(寝言でござるな)

愛梨「私……一緒に……また動物園にいきたい」

愛梨「優しい頃に……戻ってよ」ホロリ

侍「……」

侍(拙者の前では我慢してたでござるか)

侍「借金…・・・」

トゥルルルル

侍「はい。もしもし、でござる」

モバP「おう。今日は家に戻らないのか?」

侍「御意。少しやることが出来たゆえ」

モバP「そうか……」

侍「それから、しばらく休みをもらいたいでござる」

モバP「へぇー。珍しいな」

モバP「……OK。わかった」

侍「かたじけない」

モバP「その代わりクリスマスだけは事務所に顔出せよ?」

侍「御意」

モバP「どうやら、やらなくちゃいけないことがあるみたいだな」

侍「……拙者には叶わなかった願いを叶えさせてやりたい家族がいる故」

モバP「そっか」

モバP「……無茶はするなよ」

侍「御意」

モバP「それじゃあ、復帰する気になったらまた電話しろ」

モバP「アイドルたちには俺が伝えておくから」

侍「かたじけない」

モバP「それじゃあな」



侍「……」

ピ ピ ピ

侍「もしもし、侍でござる夜分遅くにすまぬでござる。美波殿の父上でござるか?」

侍「少し訪ねたいことが――」

一時間小休止

退屈な文が続いてすまぬ

再開するでござる

―――翌日―――

パチンコ店店内

愛梨父(ちくしょう。今日も全然あたりゃしない)

愛梨父(……)

愛梨父(なにやってんだろーな俺は)

愛梨父(こんなふらふらしてちゃ、なんもはじまんねーのに)

父(終いには愛梨に変な虫が集る始末)

父(まったく)

父(なにがおかしくなっちまったんだろーな)

父(社会が悪い景気が悪い?)

父(そりゃ、そういう具体的じゃない敵のせいにするのはらくだ)

父(けど)

父(結局は手前が一番悪いってことは気付いてるんだけどな)

父(かっこわりーな俺)

父(自分の配偶者に手をだすとか逃げては職を探さないとか)

父(なさけねーな)

侍「隣いいでござるか?」

父「てめぇは昨日の……」

父「なにしにきた」ギロ

侍「よくここに入り浸っているという話をきいただけでござる」

父「チ 帰る」

侍「拙者、このからくりについては少し詳しくないでござる」

侍「教えてもらえないでござるか?」

父「……」

父「いいか? まずは――」

父(本当。なにやってんだ俺は)



侍「おぉ! たくさん玉がでるでござる!」

侍「これは良きことでござろうか!?」

父「お、おう! 俺もこんなにたくさん出てるのをみるのは初めてだ……!」

侍「時にして……この出た玉はどうすればいいでござるか?」

父「お前なんも知らないんだな……」

侍「実は知人(モバP、ちひろ)にこういうのはあまりやらないほうがいいと教わった故」

父「しょうがねーな。俺がさらにいろいろ教えてやるよ」

侍「真でござるか!? かたじけない!」

父(悪いやつではなさそうだな……)

父「よし。それじゃ、これが終ったら次は競馬場に行くか!」

侍「御意! 血が滾るでござる!」

父(なにやってるんだろーな俺は)

―――

競馬場

侍「久しぶりでござる!」

父「なんだ。きたことはあるのか?」

侍「一度きりでござるがあるでござる」

侍「馬券の買い方は分からぬが」

父「だったら俺が金を渡せば買ってきてやるよ」

侍「頼むでござる」

父「それじゃ、何番を買うかいってみろ」

侍「そうでござるなー」

父「選び方を教えてやるよ」

父「まずは馬体をみて――」

侍「1-8-3」

父「え?」

侍「これを1000円でよろしくお願い致す」

父「あ、あぁ」

父(本当にそれでいいのかよ)


レース終了後

侍「やったでござるー!」

侍「やはりあの馬、調子が良きでござったか!」

父「うそだろ……200倍だから20万円……」

侍「拙者の目に狂いはなかった」

父「おまえすげーな! どうやったんだよ!」

侍「む? 馬の加減を見て決めたでござる!」

父「よ、よしじゃあ次のレースも――」

父(なにやってるんだろーな俺は)

―――

父「いやー、お前本当すげーな」

父「結局25万も儲けたのかよ」

侍「いやいや。拙者は大したことをしておらぬ」

父「よし、この後はどこにいくか?」

父「麻雀でも――」

侍「どうぶつえんに行きたいでござる」

父「動物園?」

父「だって、もう夕方だぜ」

侍「拙者、一度も行ったことがないでござる」

侍「その代わりといってはなんでござるが、今日の競馬で当たったお金は全額父上殿に譲るでござる」

父「……」

侍「さらに、ぱちんこのもつけるでござる」

父「わかったよ」

侍「かたじけない」

―――

夕方 動物園。

侍「は、鼻が長いでござる!」

侍「体も大きくて拙者のみたことがない生き物でござるよ!」

侍「父上殿! あれはなにでござるか!?」

父「ゾウだよ。象」

侍「ぞう、でござるかー。力強い響きでござるな」

父「お前本当に見たこと無いのか?」

侍「恥ずかしながらその通りでござる」

父「そうか」

父「……」

父「像はな、雌と子供で群れを形成し、雄は単独か雄同士で別に群れを形成して生活をするんだ」

父「大昔にはマンモスっていうのがいて、その象に毛がたくさん生えていたんだ」

侍「あれに毛でござるか!」

侍「ま、摩訶不思議ででござるなー」

父(メスと子供で群れを形成するっか……)

父(うちがまさにそうだな)

父(……)

父(なにやってるんだろーな俺)

父(こうして野郎二人で動物園なんて)

父(しかも相手は侍口調のわけのわからないやつだし)

父(こうならなら愛梨と一緒に来たかったな)

父(それなら少し雰囲気が出るだろ)

父(……)

父(そういえば愛梨も動物園に連れてきたはゾウをみて喜んでたな)



幼女愛梨「おとうさん! あの大きなお鼻はなに!?」

父「んー? あれはご飯を食べるときに器用にあの鼻を使ったり水を飲むときに使っているんだよ」

幼女愛梨「へぇー。お父さんの下のお鼻もああいうのが出来るの?」

父「こ、こら愛梨。そういうのは言っちゃいけません。それからお父さんはできないからね?」

幼女愛梨「ごめんなさーい」

父「よしよし。ほら、それじゃ、肩車してあげるよ」

幼女愛梨「やったー!」ヒョイ

父「どうだ! たかいだろー!」

幼女愛梨「キャキャキャ 高い高いー!」

父「象さんがよく見えるだろ!」

幼女愛梨「うん!」

訂正 父(こうならなら愛梨と一緒に来たかったな)×

父(こうなるなら愛梨と一緒に来たかったな)


……

父(そんな時間はもう戻ってこないんだろうな)

父(もう二度と、戻って、こないんだよな)

父(どんなに……頑張っても)

父「……なんでだよ……」

侍「……」

父「どうして、俺がこんな目にあわなきゃいけないんだよ……」プルプル

父「家族のために必死に働いてきた」

父「家族の笑顔のために死に物狂いで働いた」

父「そこまで裕福ではなかったけど楽しかった……」

父「なのにどうして俺は今こうしているんだよぉぉ!」

父「なんで! なんで上手くいかないんだよ!」

父「頑張ろうと思ってもまた失業、失業、失業!」

父「うんざりなんだよもう!」

父「なんで俺に家族を養う権利をそうやって奪っていくんだよ!」

父「挙句の果てはひもだよひも!」

父「男としてこんなになさけねーことはないよな!」

父「なんなんだよ畜生!」

父「妻に暴力は振るうし娘には冷たい目で見られる!」

父「わけわっかんねーよ! 真面目に働いてきた俺がなにしたってんだよ!」

父「わかんねーよ……わかんねーよ……」

父「もう、どう生きたらいいのかわかんねーよ……」

父「なぁ、教えてくれよ。俺はどうすればいいんだよ!」

侍「……」

父「……悪い。お前に聞いてもなにもこたえられねーよな」

侍「……拙者にはよくわからぬ」

侍「けど、一ついえるのは……」

侍「愛梨殿は父上殿を冷たい目などでは見ておらぬ」

父「え……?」

侍「いつ、優しい父に戻ってくれるのか期待しているでござる」

侍「決して、軽蔑などはしておらぬ」

父「……」

侍「……まだ、やり直せるでござるよ」

侍「本人のやる気しだいでござるが」

侍「生きている限り、前を向き歩くことは可能でござる」

侍「後退するのは死んでからでも遅くないでござる」

侍「父になったからには、父として死んでいってもらうでござるよ?」

侍「途中放棄は拙者が許しませぬ」

父「……」

父「俺は、あそこに戻っていいんだよな?」

父「また、みんなが笑えるような食卓を作れるよな?」

父「遅すぎるなんてこたぁー。ねーだろうな!」

侍「拙者が保障するでござるよ」

侍「……」

侍「さぁ、立てい! もう、貴様の再生の道は始まっているでござる!」

侍「愛梨殿と母上殿に変った姿をみせて驚かせるでござる!」

父「あぁ……やってやるよ!」

父「また、みんなが笑ってる食卓と、みんなで笑って動物園にきてやるよ!」

侍「それでいいでござる!」

侍「このときのために、拙者、父上殿が働けそうな職場を見つけておいたでござる」

父「本当か!?」

侍「御意」

父「けど、もし俺が再起できなかったらどうしてたんだ?」

侍「初めて会ったときに腐っておらぬことを雰囲気から察した故、こうした事前準備をしたでござるよ」

侍「新田……という人物から紹介してもらったでござる」

父「お前、そこまでして……」

父「……なんてお礼を言ったらわからないな」

父「ありがとう……ございます」

侍「まだ、お礼を言うのは早いでござる」

侍「がんばるのはこれからでござるよ」

父「そうだな!」

893風な男A「あらあら。十時さんここにいたんですかー?」

893風な男B「お金もしっかり払わずに動物園とはいいご身分ですねー」

父「お前ら……!」

父(なんで、ここにいるんだよ!)

父(自業自得っていうか、そういえば借金をどうにかしないといけないんだった)

893風な男A「困りますよー? しっかり払ってもらわなきゃ」

893風な男B「そういえば、おたくの娘さん結構可愛いしもう年も18歳なんですよね?」

893風な男B「払えなかったら働いてもらうしかないですよねー?」

父「た、頼む。娘だけは! 愛梨だけは勘弁してくれ!」

父「こ、ここに30万ある! これを足しにしてくれ!」

893風な男A「まぁ、全然足りないですけどいいですよ」

893風な男A「また、来るんでよろしくお願いしますよ?」

父「……」
 

侍「貴様ら、待てい!」

893風な男A「んだよおめーは」

侍「その言葉、そのまま貴様に返す」

893風な男B「俺らはグ・リ・マ・ス組みの人間だよ」

893風な男B「覚えておけよ」スタスタ

侍「しかと、覚えておいた」

侍「……」

侍「大丈夫でござるよ?」

父「え?」

侍「借金の件は拙者に任せてほしい」

侍「考えがあるでござるから」

父「い、いいのか!? あいつらだって……」

侍「大丈夫でござる」

侍「それより、クリスマスイブ……に仲直りをするでござる」

父「愛梨と妻とか?」

侍「そうでござるよ」

侍「この時代にはさんたさんがいるでござる」

侍「きっと、そのさんたがとっておきのくりすますぷれぜんとをしてくれるでござる」

―――クリスマスイブ―――

父「な、なぁ? 俺のスーツ姿。おかしくないよな?」

侍「立派でござる」

父「……そうだよな」

父「ありがとうな。こんなに面倒を見てくれて」

父「なんてお礼を言ったらいいか」

侍「お礼はいらぬ」

侍「その代わり笑顔を愛梨殿や母上殿にプレゼントしてくだされ」

侍「いぶでござるが、まぁ、この際どうでもいいでござる」

父「大雑把だな」

父「本当にありがとう。行ってくる」スタスタ

侍「……ふぁいとでござるよ」

侍「さて、拙者は自分の仕事をするでござる」

グリマス組 本部

構成員A「大変です! カチコミをするって電話がいまさっき!」

ザワザワ

組頭「しずまれい!」

ピタ

組頭「迎え撃つ準備を」

ハイ

幹部「……こんな日に珍しいですね」

幹部「しかも本部にアタックなんて」

組頭「どういう人間が来るのか楽しみだわい」フォッフォッフォ

幹部「暢気にしないでくださいよ……」

構成員A「きたぞー!」

構成員B「ひるむなよゴラァ!」

幹部(さて敵は……一人?)

幹部「おい、貴様! 一体どこの組の人間だ」

侍「拙者の名は侍」

侍「ちと、用件があってここに参った」

侍「しかし、どうもそちらは力付くが好きなようなのでな」

侍「こういう手法をとらせてもらっている」

侍「そして、どういう人間かと問われればそうでござるな……」

侍「拙者は、プロデューサー侍でござる!」

幹部「なにをふざけている!」

侍「ふざけてなどおらん!」

侍「ここの責任者に会いたい」

幹部「……」

幹部「いやだと言ったら?」

侍「先程の通り力任せに突破するでござる」

幹部「ここにいる人間だけでもざっと50人はいるぞ?」

幹部「通れるわけ無いだろ」

侍「……」

雪 シトシト

侍「この日は真っ赤な服を来たさんたがやってくる日でござるなー」

幹部「それがどうした」

侍「もしかしたら……スーツを来た真っ赤なサタン(あくま)が来るやもしれぬぞ」ガチャリ

幹部(ポン刀?)

幹部(しかも……なんだこいつの目は……)

幹部(10人20人殺してきた目じゃない)

幹部(間違いない、あれは100人以上は斬っている)

幹部(まるであれじゃあ……)



幹部(百戦錬磨の戦国時代の人間だ――)


侍「拙者の刀に食われたい者! 前に出よ!」

構成員「ビビンジャネー! いくぞー!」

ウォー!

―――

組頭「外の騒ぎがなくなったわい」

組頭「そろそろくるじゃろうか」

カサー

侍「拙者の名は侍。しばし、力付くでここまで来させて貰った」

侍「外で伸びている者はみな、峰打ちでござるから安心せい」

組頭「フォッフォッフォ 知っておる知っておる」

組頭「まぁ、そこにかけるがよいぞー」

侍「失礼致す」

組頭「それで、今日は一体どういった用件じゃ?」

シャキン!

組頭「日本刀を机に突き立ててどうしたのじゃ?」

侍「お願いいたしたいことがあるでござる」

侍「とある家族の借金をちゃらにしてもらいたいでござる」ドゲザ

組頭「……」

侍「都合が悪しきことは知っているでござる」

侍「しかし、もう元金は返しているでござる」

侍「それに不当な利子は――」

組頭「借用書に利子なんて書いておらんぞ」

組頭「故に警察は介入してこない」

侍「それは知っているでござる」

侍「しかし、その汚い手口に拙者は腸が煮えくり返っている」

侍「だから、そっちがその気ならこっちは弁護士を雇うでござる!」



組頭「……」ギロ

侍「……」

組頭(たじろかぬか)

組頭「フォッフォッフォ いいじゃろう」

侍「真でござるか!?」

組頭「こちらとしても裁判沙汰は困る」

組頭「よかろう。なかったことにしてやるぞい」

侍「かたじけない!」

組頭「まぁ、ここまでやっといてなんじゃが」

組頭「実はお前さんのいう金貸しは実質的にわしの組のことではない」

侍「な!?」

組頭「実際はわしらの名前を勝手に借りていた業者でござるよ」クイ

サササー

幹部「おら!」

893風な男A「ゆ、指が!」

893風な男B「も、もう勘弁してくださいよ!」

侍「お前たち!」

侍「……すまぬ。拙者の勘違いでござった」

組頭「ええぞーええぞー」

組頭「わしは気にしておらぬ」

組頭「幹部君は少し気にしているがな」

幹部「……できればもう一度だけ手合わせ願いたい」

組頭「これはこてんぱんにやられておるな」

組頭「それにしてもお主。わしの気にあてられても平気とは大したものだな」

侍「そんなことないでござる」

侍「十分迫力があったでござる」

組頭「悪鬼の如くお主には叶わぬぞ」

組頭(本当にさっきは鬼かと勘違いしたぞ)

組頭「少し気になるのは……」

組頭「お主、なぜ一つの一家のたまにそこまで身を粉に出来たのだ?」

侍「……幸せになってもらいたかったらでござる」

侍「情けというわけではござらぬが……」

侍「ただ、そこの家族が不幸なのは間違っていると感じた故」

侍「拙者は自分の意思を尊重するためにこうしたでござる」

組頭「そうか……」

組頭「……」

組頭「清き明き心か……」

侍「どうしたでござるか?」

組頭「お主を見ていたらその言葉がピッタリ当てはまってな」

組頭「くもりなき晴天のような心」

組頭「正直で真っ直ぐ。誠実で忠実」

組頭「日本人古来の美徳的な部分をお主は持っておる」

組頭「きっと、お主の周りにはその太陽に当てられて人が大勢集まっていることだろう」

組頭「それはこの腐った世の中ではちと眩しすぎて人に嫌われることもあるだろう」

侍「拙者の心はたまに曇るときがあるでござる」

侍「そのように持ち上げられても……」

組頭「晴れて良し 曇りても良し 富士の山 元の姿は変わらざりけり」

組頭「曇っていようがお主の美しさは変らんよ」

組頭「そして、その心を買われ『神』にも好かれているはずだ……」

侍「……」

侍「拙者には勿体無いお言葉でござる」

組頭「フォッフォッフォ 気に入った気に入った」

組頭「なにか困ったことがあればすぐわしに相談せい」

組頭「力になってやろう」

侍「かたじけない」

組頭「幹部君もおぬしのことは気に入ったようだ」

幹部「……人間として学ぶべきことは多そうです」

侍「拙者はそれほどだいそれてはおらぬ」

組頭「いいのーいいのー」

組頭「いっそのことうちの若頭にならぬか?」

幹部「それはいいですね!」

侍「ちょ、ちょっと! なに勝手に言ってるでござるか!」

組頭「良き良き、今日は楽しいのー フォッフォッフォ」 

―――クリスマス―――

事務所

侍「飾りつけはこんな風でござるか?」

みく「えぇ!? センスないにゃー」

侍「そうでござるか?」

美波「ここをもうちょっとこうしたほうが……」

侍「おぉ! いいでござるな!」

愛梨「みなさーん! アタシがケーキ作ってきましたから食べてくださいねー!」

ちひろ「クリームは離乳食で我慢しててねー」

クリーム「わん!」

凛「はいP。プレゼント」

モバP「おう! ありがとうな!」

まゆ「まゆもプレゼントがありまーす」

モバP「二人とも嬉しいぞ!」

凛・まゆ「それで、どっちのほうが嬉しいの?」

モバP「え」

ガヤ ガヤ ワイ ワイ

侍「いやーそれにしても楽しいでござるな」

愛梨「そうですねー」

侍「……」

愛梨「……」

侍「父上はどうでござった」

愛梨「はい。とても落ち着いていました」

愛梨「あんなに楽しい食事はいつぶりでしょうね……」

愛梨「本当に良かったです」ホロリ

侍「……よかったでござるな」ナデナデ

愛梨「それから、アイドルになる話受けようかなって思ってます」

侍「真でござるか?」

愛梨「はい。お父さんもお母さんも賛成してくれて」

侍「そうでござるか……」

侍「それではこれからもよろしく致す」

愛梨「はい! プロデューサーさん♪」

組頭サンタ「メリークリスマス!」

一同「おぉう! 本物のサンタだ!」

侍(いやー、こんなにもノリノリにやるとは思ってもみなかったでござる)

幹部サンタ「め、めりー、くりすます」

組頭「フォッフォッフォ 愉快じゃわい!」

組頭「いやー、若いおなごがいっぱいおって眼福じゃー」ス

凛「やめてください」ペシ

組頭「……」

組頭「フォッフォッフォ ばあさんを思い出すのー!」

組頭「それではプレゼントを配るのでみんな集まれー」

一同「はーい」

トゥルルル

侍「ちょっと失礼致す」

侍「もしもし、でござる」

美波父「あぁ、今大丈夫?」

侍「問題ないでござる」

父「そっちは楽しんでるかいー?」

侍「美波殿も大はしゃぎでござる」

父「ワッハッハそれはよかった」

父「それから、十時さん。いやー、いい人材っぽいから有効活用させてもらうね」

侍「おぉ、それは良かったでござる」

父「最初は大丈夫かなー……って思ったけど会ってみたら一目で分かったよ」

父「それから借金のほうは大丈夫だった?」

侍「御意。父上殿のおかげでござる」

父「そっかそっか。それじゃあまたなにかあれば連絡頂戴ね」

侍「御意」



侍「ふぅ……」

侍「また、忙しくなるでござる」

end

小ネタは……まぁ、今度でいいかな

とりあえず、続きは明日書けるといいかな?

おやすみなさい。

――二月――

事務所

侍「……」

クリーム「わん」(どうかしたの?)

侍「拙者、実は悩み事があるでござる」

クリーム「くーん……」(突然そんなこと言われても……)

侍「いや、そんなことを申しても困るのはわかっておる」

侍「しかし、このような相談。クリームにしか出来ないでござるゆえ」

侍「一緒にこうやって過ごしてきて意思疎通が出来るようになったでござるから」

侍「どうか、拙者の戯言に付き合ってほしいでござる」

クリーム「わん!」(うん! いいよ!)

侍「む? 相談に乗ってくれるでござるか?」

クリーム「わん!」(無問題!)

侍「おぉ! そうでござるか!」

侍「ごほん」

侍「拙者、うんてんめんきょしょうがほしいでござる」

クリーム「わん?」(運転免許証?)

侍「左様。アイドルの送迎に便利でござるから」

クリーム「わん……」(なるほど……)

侍「しかし、モバP殿に相談してもきっと笑われるでござる」

クリーム「わん」(そんなことないと思うけど)

侍「いや、ぱそこんもろくに使えないのに自動車など十年早いと一蹴されるでござるよ」

侍「けれど、免許証はほしいでござる」

侍「故に! きょうしゅうじょとやらに行く前に事前練習をしてその成果をモバP殿にみせるでござる!」

クリーム「わ、わん?」(じ、事前練習?)

クリーム「わん、わん、わん?」(でも、普通事前練習なんて出来ないものじゃないかな?)

侍「ふふ、これで練習するでござるよ!」

クリーム「わん?」(ゲーム?)

とある作品と同時進行プラス忙しいため更新出来てませんが気長に待っててください。

今日はとりあえずこれで終りです。

明日か明後日には絶対書きますから待っててください。

代わりと言ってはあれですが、もし、暇でしたら過去作品をどうぞ。

モバP「え?野球の試合ですか?」

モバP「え? 野球の試合ですか?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1369840558/)

モバP「え?バスケットボールの試合ですか?」

モバP「え?バスケットボールの試合ですか?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1369923814/)

モバP「え?洋館の調査ですか?」

モバP「え?洋館の調査ですか?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1370099281/)

スポーツシリーズの人だったのか
いつか余裕が出来たらフットサル期待

>>477

ちょっとした時間に書き溜めているんでおそらく一ヶ月以内には投下出来ると思われ。

待っててください。

まぁ、こっちも勿論頑張りますけど。

さぁ、生き抜きもしたし頑張るか。

侍「これさえあれば拙者も多少は技術を上げることができるでござる!」

クリーム「わふ……」(そう単純ではないと思うけど)

侍「まぁ、見ているでござる」

クリーム「わん!」(うん!)

侍「これで上手くなれば少しは拙者も認められるでござるな」

侍「操作まにゅあるはばっちり頭の中に入っているでござるよ」

侍「いざ、参らん!」


侍「ま、全くダメでござる……」

クリーム「わん……」(壁に追突しまくってるだけだね……)

侍「どうしたらいいのでござろう」

侍「このままでは拙者、免許が取れないでござる」

クリーム「わん」(諦めるしかないね)

ガチャ

みく「おはようにゃー」

侍「み、みく殿でござるか!?」

みく「? なにしてるのかにゃー?」

侍「えーっとこれは……」

侍「ゲームです」

みく「それは見ればわかるにゃ!」

みく「それと口調がおかしくなってるにゃ」

うわー。最近眠気に全然勝てないー。

どうせ明日早起きするし。その時に書こうそうしよう。

寝ます。

みく「なんでこんなのやってるにゃ?」

みく「確かに、いつも侍Pちゃんゲームをやってたりするけど……」

侍「拙者、格闘ゲームは得意でござる」

みく「凛ちゃんとよくやってたにゃ」

侍「しかし、どうもこのゲームは難易度が高いでござるよ」

侍「拙者には扱いきれぬ」

みく「……ちょっと貸してみるにゃ」

侍「御意」

数十分後

侍「おぉ! みく殿! 凄いでござる!」

みく「こんなのやればすぐにできるにゃ」

侍「みく殿、拙者にその技を伝授していただけないでござるか」

みく「ふふ、しょうがないにゃー」

みく「みくが人肌脱ぐにゃ」

侍「かたじけない」

みく「てなわけで、にゃ」

ポン

侍「……なに故、拙者の胡坐を掻いた上に座るでござるか?」

みく「こっちのほうがいろいろと指示しやすいにゃ」

侍「そうでござったか!」

侍「それでは、よろしくお願い申す」

みく「了解にゃ」

みく(うわー、侍Pちゃんの体大きいにゃー)

みく(それから……これは香水、にゃ?)

みく「侍Pちゃん香水をつけてるにゃ?」

侍「? こうすい?」

みく「にゃ? 知らないのにゃ?」

侍「存じてないでござる」

みく(でも、この匂い、どこかで嗅いだことがあるようにゃ……)

みく(きっときのせいにゃ)

みく「それじゃ、始めるにゃ」

侍「……」

みく「その調子にゃー」

みく「みくが教えた通りにすれば間違いないにゃ!」

侍「……」

みく(凄い集中力にゃー)

みく(こ、これならもうちょっと体を密着させてもばれないはずにゃ……)

ガチャ

みく「にゃ?」

?「……」スタスタ

?「おはようございま……す?」

侍「おぉ、美波殿おはようでござる」

みく「み、美波ちゃんにゃ?」

美波「……みくちゃん、ちょっといい?」

みく「い、いやにゃ」プイ

美波「別に私は怒ってるわけじゃないよー?」

美波「ただ、女の子としてそういうのはやりすぎなんじゃないのかな?」ニコ ピクピク

美波「抱きついたりするのは……百歩譲っていいとしましょう」

美波「でも、膝の上に座るのは、恋人同士でもないのにやるべきことではないと思うなー」ピクピク

みく「これはちゃんと侍Pちゃんに許可をもらってるから別に問題ないにゃ」

美波「そうなんですか?」

侍「? まぁ、許可はしたでござるが」

美波「え……?」

美波「ほ、本当なんですか?」

侍「うむ」

美波「……」シュン

侍「みく殿がこの体勢の方がゲームの指示を出しやすいと申したので」

美波「あぁ! なんだそういうことだったんですか!」

美波「よ、よかったぁ……」ボソ

美波「じゃあ、みくちゃん。退きましょうか」ニコ

みく「い、いやにゃー」

みく「折角獲得した位置をみすみす捨てることはしないにゃ!」

美波「どうしても退かない気なの?」

みく「そうにゃー」

みく「今日からここがみくの定位置にゃ」ダキ

侍「ははは。みく殿はスキンシップが好きでござるなー」

美波「……」

美波「そっちがその気なら……私だって……」

クリーム「わふ……」(怖いからあっちで寝た振りしてよ……)

今日はほんの少しだけ書き溜めてるから8時頃になったらちょくちょく投下するよ。

美波「えい」ダキ

侍「……!」

侍「み、美波殿。どうしたでござるか」(震え声)

みく「にゃー!」

美波「みくちゃんのように甘えてみたくなっただけです……えへへ」

侍「そ、そうでござるか」

侍「美波殿も甘えん坊でござるな……」

侍「しかし、その離れてもらった方が拙者としては」

美波「ダメ、ですか?」

侍「そう言われてしまうと断れないでござる」

みく「にゃ! 侍Pちゃんなんで美波ちゃんが抱きついてから顔を真っ赤にさせてるにゃ!」

侍「否、別にそんなことはないでござる!」

みく「ダウトにゃ!」

ガチャ

愛梨「おはようございまーす」

愛梨「ってあれ?」

愛梨「みんななにしてるの?」

侍「す、スキンシップでござる」

愛梨「面白そうですね! アタシも参加させてください!」ダキ

美波「あ、愛梨さん!」

みく「これ以上は定員オーバーにゃ!」

みく「てか、みく一人で、すでに定員にゃ!」

ガヤガヤガヤガヤ

トルゥゥゥ

侍「あ、電話でござる」スタ

みく、美波「あぁ……」

愛梨「誰からだろう?」

侍「もしもし、でござる。……はい! そうでござるか! じゃあ、今日はいつも通り行けばいいでござるな?」

侍「時間は……夜の? わかったでござる。それじゃあ、きるでござるよ」

ピ

みく「誰からにゃ?」

侍「し、仕事先の人からでござる」

侍「そろそろ、営業しにいく時間でござるから事務所を出るでござる」アセアセ

タッタッタッタ ガチャン

美波「なんか……」

愛梨「妙に怪しいと言うか……」

美波「なにか隠し事でもしているのかな?」

みく「もしかして……女にゃ?」

美波、愛梨『……!!!!』

美波「ど、どうしてそう思うのかな?」

みく「侍Pちゃんから香水の匂いがしたにゃ」

みく「しかも、今さっき思い出したけど、あれは最近女の子の間で流行っているものだったにゃ」

みく「みくも友達に一度だけ嗅がせてもらったことがあったにゃ」

みく「そして、侍Pちゃんは香水のことを知らなかったにゃー」

美波「つまり、侍Pさんは自分でつけたものでは無いと?」

愛梨「じゃあ、誰かの香水が移ったってことになるね」

夜、西武新宿駅

侍「…………」

侍(時間にはまだ余裕があるでござるな)

みく「ここまでは普通の営業だったにゃ」ヒソヒソ

愛梨「特に変ったところもなかったね!」ヒソヒソ

みく「でも電話の感じだとここからが本番にゃ」

美波「なんか罪悪感が……」

みく「あ! 改札口を出たにゃ!」スタスタ

愛梨「探偵さんみたいで面白いね!」スタスタ

美波(顔を隠している女の子三人が尾行している図って……)

美波(しかも、アイドルが自分のプロデューサーを追いかけているって)

美波(前代未聞じゃないかなー……)

みく「美波ちゃん! 早くするにゃ!」

美波「あ、うん」タッタッタ

―――歌舞伎町―――

侍「……」スタスタ

愛梨「人が多くて見失いそうだね……」

みく「確かにそうにゃー」

美波「でも、なんで歌舞伎町なんか……」

美波「女の人と会うならもっとこう」

美波「爽やかな場所じゃない?」

愛梨「そうだよねー。まぁ、ここはただ単に目的地の通過点に過ぎないのかも」

みく「いや……もしかしたら……にゃ」

美波「え! もしかして……」

美波「キャバクラ?」

愛梨「きゃばくら?」

みく「可能性としては無くないニャ!」

みく「侍Pちゃんが給料を何かに使っている姿ってみたことないにゃ」

みく「そうなってくると……」

美波「つまり、キャバクラでお金を使っていると?」

みく「そうにゃ」

美波「侍Pさんがそんなところに行くとは思えないけど」

みく「侍Pちゃんも男の子にゃ」

みく「アイドルに手を出せないからつい、そういう場所で発散しているのかもしれないにゃ!」

みく「みくとしては手を出してもらっても全然大丈夫なのにこれは許せないにゃ!」

美波「いや、それはアイドルの発言としてどうだろうね」アハハ

美波(内心は同じ気持ちだけど……)

侍「……あ、いたでござる」

不良A「こんにちわっす!」

不良B「兄貴、こんばんわです」

みく「にゃ? 男と話しているにゃ」

美波「あれって……」

愛梨「知り合い?」

美波「……ちょっとだけね」

みく「もうちょっと近づいて話を聞いてみるにゃ」

不良A「急に呼び出してしまってすいません」

侍「構わぬ。拙者も別件で用事があったでござるから」

不良B「いやー、こいつが会いたい会いたいって四六時中言ってたんで俺も困ってたんですよ」

不良A「うっせばか! 余計なことを言うなよ!」

不良A「ごほん。兄貴。先月はどうもありがとうございました」

侍「たいしたことではござらぬよ」

不良A「ダメ人間の俺にこうやって優しくしてくれるのは兄貴だけっすよ」

不良A「そして、兄貴。俺決めたことがあるっす」

侍「なにをでござるか?」

不良A「俺、アイドルのプロデューサーになりたいっす!」

侍「おぉ! それはまことでござるか!?」

不良A「はい。俺屑でどうしようもない人間だったっすけど」

不良A「兄貴に会えて変ることが出来たんで……」

不良A「その兄貴に近づくために同じ職につきたいと思ったっす」

不良B「女を犯そうとした男がアイドルのプロデューサーとか絶対向かないと俺は思いますけどね」

不良A「だから! あれは違うって言ってるだろ! 俺だってそんな気さらさらなかったんだよ! ただ、あの反応が面白くて言ってみただけなんだって!」

不良B「はは、確かに今思い出してもチキンなお前にそんなこと出来るわけ無かったよな」

不良A「それはそれで癪だな……」

侍「なにはともあれ、拙者は嬉しいでござるよ」

不良A「そうっすか! 俺も兄貴みたいに真っ直ぐな男になるためにがんばるっす!」

不良A「女に対しても誠実で……優しい男になれるようにもなるっす!」

侍「そうでござるな」

侍「真の強さは拳の強さではなく、心の強さ」

侍「忘れてはおらぬな?」

不良A「勿論っすよ」

不良B「実は兄貴。俺もやりたいことがみつかったんですよ」

侍「なにになるでござるか?」

不良B「教員です」

侍「教職でござるか!」

不良B「はい。俺やAみたく誰にも理解されないで苦しんでる餓鬼っていっぱいいると思うんですよ」

不良B「だから、そいつらの気持ちを俺ならきっと汲み取ってやれる存在になれるかなって思って」

不良B「変……ですかね?」

侍「いやいや、立派でござるよ」

不良B「ありがとうございます。今から勉強頑張ってなんとか大学入りして絶対になってやりますよ!」

侍「うむ。ファイトでござる」

不良A「……」

不良B「……」

侍「む? 二人ともどうしたでござるか?」

不良A「本当にどうもありがとうございました」ペコ

不良B「本当にどうもありがとうございました」ペコ

不良A「これ……俺らからのお礼の品っす」

侍「これは……万年筆でござるか?」

侍「しかもなかなか上物……」

不良B「それを俺らだと思って使ってもらったら嬉しいです」

侍「……御意。大切にするでござる」

不良A「それじゃあ、俺らはここらへんで失礼しますね」

不良B「これ以上ここにいたら涙堪えられなくなるしな」

侍「なにかあったらまた相談するでござるよ」

不良A「はい! では、今日はこれで……」スタスタ

侍(頑張るでござるよ)スタスタ

この二人のドラマはまた別の機会で書きたいと思います。

みく「さ、侍Pちゃんって本当に何者にゃ……」

愛梨「うちのお父さんと同じく、更生させられた人なんだね」

美波「侍Pさんて凄い人だよね」

美波(私が会ったときはあの人達死んだような顔付きだったのにさっきはいきいきしてた)

美波(きっとあれも侍Pさんのおかげなんだね)

みく「にゃー。でもどうやらキャバクラじゃなかったようにゃ」

愛梨「そうだね。じゃあ、一体どこに向かうんだろ?」

みく「ついていってみればわかるにゃ」

みく「それじゃ、再開にゃ」スタスタ

―――新宿二丁目―――

侍「……」スタスタ

みく「さっきから迷い無くここまで進んでいるにゃ」

美波「きっと通いなれた道のりなんでしょうね」

愛梨「うーん。でもここらへんってなにかあったかな?」

みく「みくはあんまり新宿は詳しくないにゃ」

美波「私も電車の中継地点として使ってたくらいだからわからないなー」

侍「……」ピト

愛梨「あ、止まった」

侍「時間的にもピッタリでござるな」

みく「店の中に入っていったにゃ!」

美波「えっとー、看板を見ればどんなお店かわかるよね」

美波「どれどれ」

『GAY♂BAR☆』

みく「」

美波「」

愛梨「げいばー?」

愛梨「競馬ならお父さんに連れてってもらったことがあるけど……」

愛梨「ん? みんなどうかしたの?」

みく「た、確かにあそこに入ったにゃ?」

美波「私の目が狂っていなければ……」

みく「つまり、あそこに入ったって事は」

みく「侍Pちゃんはホモ?」

美波「……」

愛梨「ほも?」

みく「でも、みくのアプローチが全然聞いていなかったことを考えるともしかしたら……」

みく「嘘でしょ……」

愛梨「口調おかしくなってるよ?」

美波「……」グスン

愛梨「え!? な、なんで泣き出して――」

みく「ふえぇ……」

愛梨「みくちゃんまで!」

愛梨(ど、どうしよう)

愛梨(みんなが泣き出しちゃった)

愛梨(ここは私の一発芸で場を和ませるしかない!)

愛梨「あ、愛梨カッター!」

グスン グスン ウエーン

愛梨(だめだった!)

モバP「ん? どうしたんだお前らこんなところで」

愛梨「あ! モバPさん! ちょうどいいところに」

愛梨「実は――」

モバP「あいつがゲイバーに単独で入っていった?」

愛梨「はい。そしたら、みんな急に泣き出しちゃって」

モバP「……はぁ。なるほどな」

モバP「おーい。二人とも聞いてくれー」

モバP「簡潔に述べると侍はホモじゃないぞノンケだ」

みく「……でも確かにさっき」

モバP「別にゲイバーはホモだけが使うものではないんだけどな」

モバP「女性の愛用者も結構多いんだぞ」

モバP「って話が逸れた」

モバP「侍はレコード会社の人と話があるからあそこを使ってただけなんだ」

モバP「クライアントさんの趣味でな」

美波「レコード、会社」

モバP「もしかしてあいつ伝えてなかったのか」

モバP「今日決まったことなんだけどな」

モバP「お前達三人。ユニットでCDデビューが決まったんだよ」

一同「え?」

今日はここまで。

事務所

美波「……」

みく「……」

愛梨「あー、眠い―」

侍「ど、どうしたでござるか?」

侍「美波殿とみく殿。少し様子がおかしいでござるなー」

美波・みく「別に」

侍「あはは……」

凛「原因はもうわかってるからいいでしょ」

侍「……すまぬ!」ドゲザ

モバP「みんなももう許してやれよ」

まゆ「そうですよぉ」

ちひろ「侍さんはみんなを驚かせようとしただけなんですから」

美波「それはわかっていますけど……」

みく「みく達のココロは無駄に弄ばれたにゃ」

モバP「その表現はいろいろとおかしいだろ」

侍「拙者、素直に伝えておけばよかった、と反省しているでござる」

モバP「はぁ……真面目だなぁ」

モバP「元はと言えばこいつらが勘違いしたことが原因なんだぞ?」

愛梨「あ、アタシはしてないですよ!」

愛梨「大体その……言葉の意味すら知らなかったし」モジモジ

凛「まぁ、でも女の子からすると自分のPがそんなところ入ったらショックだよね」

モバP「案外、ゲイバーって楽しい所なんだぞ?」

モバP「日頃のストレスを発散できるというか……」

凛「ふん!」ガツ

モバP「イッテ!」

モバP「今お前、ヒールで足を踏んだのか!?」

凛「よく愛用してるんだ」キ

まゆ「……まゆもそのお話もうちょっとだけ詳しく聞きたいです」ニヤニヤ

モバP「いやいやいや」

モバP「し、知り合いにそう聞いただけだって」

ちひろ「ヒント。あの三人とモバPさんが出会った場所」

凛「……」ニッコリ

モバP「ち、ちひろ! お前!」

ちひろ「てへ☆」

まゆ「ちょっと向こうで話し合いをしてきますねぇ」

凛「ほら」

モバP「ち、違うってば!」ズルズル

モバP「ちひろー!」

ちひろ「あ、事務処理がまだ残っていました」

モバP「この畜生!」

凛「子供みたいにジタバタしないで」

モバP「し、死ぬ!」

バタン

モバP「アー!」

侍「……」

みく「逝ってしまったにゃ……」

ちひろ「お坊さん呼んでおきましょうか?」

愛梨(ほ、本当に容赦がない)

ちひろ「それでみなさんどうするんですか?」

みく「……なんかもう、どうでもよくなったにゃ」

美波「はい……私も少し怒りすぎました」

美波「ごめんなさい侍Pさん」ニコ

侍「美波殿!」

みく「ごめんにゃ……」

侍「みく殿!」

愛梨「アタシは最初から怒ってないから大丈夫ですよ!」

侍「愛梨殿ー!」

愛梨「ふふふ」

侍「あはは」

愛梨「ふふふ」

侍「あはは」

みく(相変わらずこの二人の周りはお花畑にゃ)

ちひろ(私には少し眩しい……)

侍「許してもらえたところで早速でござるが、CDでびゅーの件を詳しく申すでござる」

侍「みく殿はとっくの昔にしているでござるな」

みく「前の事務所のときにゃー」

侍「みく殿はそろでびゅーをしているでござる」

侍「凛殿もまゆ殿も同様でござる」

侍「そして、今回は……」

侍「みく殿。愛梨殿。美波殿の三人でゆにっとでびゅーでござるよ!」

愛梨「なんか響きがとってもかっこいいです!」

侍「そうでござろう」

侍「それで、もう一つ伝えておきたい重要なことはゆにっと名がまだ決まってないでござる」

美波「ユニット名?」

侍「左様。なので、今から決めたいと思うでござる」

みく「急にゃ……」

侍「まずは、拙者が考えたものを教えるでござるよ」

侍「拙者が考えたユニット名はこれでござる!」

>>522

しばらくの間書けるかわからないので安価だけ先にしちゃいます。

みくが考えたもの>>523

美波>>524

愛梨>>525

ちひろ>>526

踏み台

みくはマゲだよ!

歩く○クロス

三色小町

エナドリチャージ1000

侍Pが考えたもの>>528

ネライ
(ネコ・ラクロス・イヌ)

『ネライ』

侍「どうでござる!」ドヤァ

みく(無駄に色紙に達筆に書かれてるにゃ……)

美波「念のため聞いておきますけど……」

美波「一体、どういう意味なんですか?」

侍「ネコ・ラクロス・イヌ。でござる!」

愛莉「あぁ! そういう意味ですか!」

ちひろ「三人の印象的なものの頭文字を取ってそうしたんですね」

みく「なかなか面白いにゃー」

ちひろ「この世はわたしのためにある」ボソ

美波(その歌はたぶんあの三人にはわからないんじゃないかな)アハハ

侍「次はみく殿が考えるでござる」

みく「と、突然にゃ! まだなにも考えてないにゃー」

侍「直感でやるでござる! 制限時間は10秒!

みく「ナイトメアな難易度にゃ!」

侍「10、9――」

みく「あぁ! もう、これにゃ!」

ドン

『みくはマゲだよ』

ちひろ「え……ひどくない?」

みく「みくのアイデンティティを盗まないでほしいにゃ!」

愛梨「みくちゃんってマゲなの?」

みく「違うにゃ! 侍Pちゃんの要素を取り入れようとしたらおかしくなっただけにゃ!」

美波「みくちゃん、落ち着いて……」

みく「やり直しを要求するにゃ!」

侍「しかし、拙者は悪くないと思うでござるよ」

みく「にゃ? そうにゃ?」

みく「うーん。だったらこのままでいくにゃ」

ちひろ(意思が弱い……!)

侍「じゃあ、次は美波殿。よろしく頼むでござる」

美波「はい。私は大丈夫ですよ」

みく(みくにももっと考える時間がほしかったにゃ……)

美波「私が考えたのはこれです!」

ドン

『歩くセクロス』

愛梨「?」

侍「?」

みく「にゃ……にゃ……」

ちひろ「え、えっと……」

美波「みなさんどうしました?」

ちひろ「下ネタはまずいと思うの?」

美波「わ、私そんな変なもの書きましたか!?」

みく「確かめてみるにゃー……」

美波「私が書いたのは歩くラクロスで――」

美波「……」

侍「美波殿? 顔が真っ青でござるよ?」

美波「違うんです! これは書き間違いなんです!」

侍「美波殿。どこが書き間違いでござるか?」

ちひろ(うわぁ……そこを自分で言わさせるって……)

愛梨「アタシもわからないよ……」

美波「み、見ないでください! わ、私の痴態を……!」

侍「いや、だから拙者は――」

美波「汚れた私に侍Pさんは振り向いてくれない!」タッタッタ

侍「み、美波殿どこにいくでござるか!」

みく「そっとしておくにゃ……」

ちひろ「触らぬ神になんちゃらですよ」

侍「そ、そうでござるか……」

侍「じゃあ、愛梨どのいくでござる」

愛梨「はい! アタシのはこれです!」

ドン

『三色小町』

ちひろ「とんでもないのが来ると思ったら……」

みく「意外とまともにゃ……」

愛梨「三色団子がそこにあったのでこんな名前にしてみました!」

侍「これは……良い名でござるな」

侍「拙者、これが一番気に入ったでござる」

みく「どうしてにゃ?」

侍「小町という意味を考えるでござる」

ちひろ「えっとーなんでしたっけ?」

みく「な、なんか習った気がするにゃ」

愛梨「?」

侍「小町は美人。という意味を持っているでござる」

侍「そして三色というのは十人十色で考えるとわかりやすいでござる」

みく「みくたち三人には三人三色別々な色があるってことにゃ?」

侍「そうでござる。まぁ、ここでは三人は三人の美しさがあるって方がしっくりくるでござるな」

愛梨「そうだったんですね!」

ちひろ「いや、愛梨ちゃんが考えたものでしょ」

愛梨「そ、そうでした」

みく「なかなかいい名前だったにゃ」

侍「美波殿がいないのがちと、寂しいでござるな」

侍「それでは最後にちひろ殿。締めで頼むでござる」

ちひろ「わかりました! 私が考えたのはこれです!」

ドン

『エナドリチャージ1000』

ちひろ「これで絶対売れますよ!」

侍「そ、そうでござるな」

みく「みくたちが売れるんじゃなくてちひろちゃんが儲かるだけにゃ……」

愛梨「えっとー……こういうのってステルスマーケティングって言うんですよね!」

ちひろ「ち、違いますよ」

みく「ステマというにはだいだい的過ぎるにゃ!」

みく「これじゃあ、締め担当じゃなくて落ち担当にゃ!」

ちひろ「それに一体どんな違いがあるのかな?」(ニッコリ)

みく(こ、怖いにゃ……)

美波「……さっきは取り乱しました」

侍「もう大丈夫でござるな?」

美波「……」

ちひろ(そりゃ、あんなことがあったら顔見れないよね……)

侍「それでは投票を開始するでござる!」

侍「一番票を獲得した名前が決定でござる」

侍「それではみんな挙手するでござるよー」

――

侍「結局、満場一致でござるな」

みく「消去法にゃ」

美波「……」

愛梨「え? あ、アタシのですよね? これ?」

侍「そうでござるよ」

侍「みく殿。愛梨殿。美波殿のユニット名は」

侍「三色小町で決定でござる!」

――二月後半――

事務所

侍「♪」

侍「ゆにっとでびゅーも成功したでござるしこのままこうはくに出場するでござるよ!」

侍「このまま国民アイドルへは拙者が導くでござる!」グ

ガチャ ドン

凛「……」スタスタ

侍「あ、凛殿。おはようでござる」

凛「……」スタスタ

侍(具合でも悪いでござるか?)

ガチャ ドン

モバP「お? 侍か。ちょうどいいところにいた」

侍「P殿! 拙者になにかようでござるか!」

モバP「あぁ、結構重要だな」

侍(まさか! 拙者の頑張りが認められてお褒めの言葉でござるか!)

侍(き、期待してもいいでござるな? な!)

モバP「単刀直入に言うぞ」

モバP「お前にはうちの事務所をやめてもらう」

侍「……え?」

今日はここまで

侍「せ、拙者、勉強がまだ甘かったでござる、な」

侍「やめる、というのは褒め言葉の意味もあったでござるか」

侍「拙者またひとつおぼえたでござる!」

モバP「違う。言葉のままの意味だ」

侍「……せ、拙者夢でも見ているでござるか?」

侍「あ、頭が上手く回らないでござる」

モバP「……」

モバP「お前は今日限りで、うちの事務所から出てってもらう」

侍「そ、そんな……じょ、冗談でござ――」

モバP「侍。お前はもう不要なんだ」

侍「じゃ、じゃあ拙者がぷろでゅーすしてきたみく殿、美波殿、愛梨殿はどうなるでござるか!?」

モバP「俺が引き継ぐから安心しろ」

侍「拙者、それは許さぬでござる!」

侍「みく殿、美波殿、愛梨殿をトップアイドルにするのは拙者の仕事でござる!」

侍「なに故P殿に任せねばならぬのだ!」

侍「大体、拙者がなぜやめねば――」

モバP「これは命令だ!」

ピリピリ

侍「……」

モバP「まぁ、無職にさせるのは可哀想だから、侍の新しい就職先は俺がすでに手配している」

モバP「家もボロアパートだけど都心のいい物件を借りることに成功した」

モバP「そして、その新しい雇用先だけどな」

モバP「侍には、明日から765プロで働いてもらう」

侍「なにゆえ…拙者がそのような」

侍「……」フラフラ

モバP「あ、おい!」

ガチャ ドン!

モバP「ったく。最後まで話聞けよ……」

ちひろ「随分突っ張った言い方でしたね」

モバP「いたのか……」

ちひろ「理由も言わないで可哀想じゃないですか?」

ちひろ「私ならあんなこと言われたら発狂ものですよ」

ちひろ「それにあんな言い方って……」

モバP「そうかもしれないな」

モバP「さてと、次は新田ちゃんにみく。十時ちゃんが面倒になりそうだな」

ちひろ「当たり前ですよ」

モバP「きっとなんでやめさせたのかって明日辺りに詰め寄ってくるだろうからな」

凛「……」

モバP「お、そういえばさっきから凛、ソファに座ってるけどなにも言わないな」

モバP「お前も侍がいなくなるのには反対なのか?」

モバP「まぁ、凛には説明してあるからそんなことはないと思うけど」

凛「……」ス

モバP「?」

凛「……」スタスタ

凛「……」フ

パチン

ちひろ(ビンタ!?)

凛「私、もう行くから」スタスタ

ガチャ ドン

モバP「おーいってぇ……」

モバP「気持ち入ってたなー」

ちひろ「大丈夫ですか!?」

モバP「……自業自得だ。大丈夫」

――次の日――

765プロ 事務所前

侍「ここが765プロでござるか……」

侍「少数精鋭のアイドル事務所、でござったな」

侍「有名な事務所の割には……ちと、小さすぎる気がするでござるな」

侍「あまり、P殿の事務所と変らないでござる」

侍「しかし、P殿のところにいたときよりはずっと忙しいはずでござる」

侍「……P殿」



モバP『お前は今日限りで、うちの事務所から出てってもらう』



侍「……」

侍「く、くよくよしていても仕方ないでござる!」

侍「切り替える出ござるよ!」スタスタ

侍「だが……もし、拙者の力量不足であるならなに故ここに……」

侍「P殿の事務所よりもこっちの方が断然忙しいはずでござる」

侍「なにか理由があるでござるか?」

侍「ま、考えても仕方ないでござるな!」

侍「辛いときこそ笑顔でござる!」

侍「おー! そんなことを考えていたらもう事務所の扉の前でござる!」

侍「それでは、気を引き締めて入るでござる!」ガチャ

侍「おはようでござる!」

小鳥「! えっと……どちら様でしょうか?」

侍「拙者の名は侍! 本日からお世話になるものでござる!」

小鳥「あー。お話は聞いてますよ」

小鳥「すいません。今はプロデューサーさん、外に出てしまっているので……」

小鳥「後、数分したら戻ってくるので待っていてください」

侍「御意」

小鳥「待っててくださいね。お茶、出しますから」

侍「構わぬでござるよ。拙者も今日からここの一員でござる」

侍「お気遣いは無用でござる」

小鳥「そ、そうですね。逆に失礼ですよね」

小鳥(変った人だわー……)

侍「一つだけ尋ねたいことがあるでござる」

小鳥「なんでしょう?」

侍「……奇妙なドリンクを売りつけたりはしてこないでござるか?」

小鳥「はい?」

侍「あ、いや。そういうことなら拙者も懐を気にする必要はないでござる」

小鳥「懐?」

侍「それにしても……すまぬ。失礼でござるがお名前をよろしいでござるか?」

小鳥「私の名前は音無小鳥です」

小鳥「見ればわかると思いますけど、ここの事務員をやっています」

侍「そうでござるか。小鳥殿からはその……」

侍「欲の匂い(主に金欲)が感じられぬから、すこし、驚いたでござる」

小鳥「はぁ……?」

侍「事務員と言うのは、お金に厳しいイメージがあったゆえ」

小鳥「どんな偏見ですか?」アハハ

侍(ちひろ殿が天使だったら、小鳥殿は女神でござるな)

ガチャ ドン

赤羽根P「音無さん。すいません。ようじ――あ」

侍「ご無沙汰でござる」

赤羽根P「侍君!? ごめんな! こんなに早くくると思わなくて」
 
侍「問題ないでござるよ」

赤羽根P「電話で指定した時間より三十分も早くてびっくりしたよ」

侍「迷惑だったでござるか?」

赤羽根P「そんなことはないさ。むしろ好印象だ」

侍「そうでござったか。安心したでござる」

赤羽根P「こうして顔を合わせるのは……三度目か?」

侍「そうでござるな。響殿とみく殿が一緒に仕事をしたときに会っているでござる」

赤羽根P「確かあの動物番組だったよな?」

赤羽根P「って、こんなことはどうでもいいか」

赤羽根P「さっそく侍君には仕事をしてもらうことになっているから」

侍「……御意」

小鳥(最初、入ってきたときよりも段々と元気がなくなっているような気が……)

小鳥(きっと気のせいよね)

赤羽根P「ちょっと厄介な仕事なんだけど……」

赤羽根P「響が沖縄で明後日映画の収録ロケがあるんだ」

赤羽根P「俺と律子……も会ったことがあるから大丈夫だよな」

赤羽根P「ちょうど今の時期は忙しくてな。俺達がロケに行っちゃうと他の子まで手が回らなくなるんだ」

赤羽根P「だから、今回は侍君にその現場に行ってもらおうと思うんだ」

侍「そんな重要な現場に拙者を送ってもいいんでござるか?」

赤羽根P「モバPのところの弟子なら、心配ないさ」

侍「しかし、拙者は……」

赤羽根P「……」

赤羽根P「向こうで世間話でもしようか」スタスタ

侍「ぎょ、御意」

侍「……」スタスタ

侍(拙者に、ここの事務所のアイドルのプロデュースなど)

侍(本当にできるでござろうか……)

侍(P殿に捨てられた拙者には無理でござる)

侍(拙者は、また捨てられてしまったでござる……)

侍(まっこと優しかったP殿がなに故拙者をやめさせたのか)

侍(理由は皆目検討もつかないでござる)

侍(折角手に入れた居場所でござったのに……)

侍(……どうして拙者はいつも決まった家に収まることが出来ないのか)

侍(わからぬ。わからぬ)

侍(拙者の一体なにが悪いと申すのだ!)

赤羽根P「座ってくれ」ボフ

侍「かたじけない」ボフ

赤羽根P「それにしてもカタカナ言葉随分はっきり喋れるようになったな」

赤羽根P「俺が最初会ったときはアイドルとかおかしな発音だったのに」

侍「勉強の成果でござるよ」

赤羽根P「なぁ、もしかして自信なくしているのか?」

侍「そ、そんなことはないでござる! 拙者は……」

赤羽根P「モバPに捨てられた……って思っているわけか」

侍「そうでござる……拙者は捨てられたでござる」

侍「もしかしたら、拙者の力量不足が原因かもしれぬでござる」

侍「先ほどは違うと考えていたでござるが……どうもそれ以外に理由は思いつかないのでござる!」

侍「拙者の……頑張りが足りなくて……」

赤羽根P「事情は上手く話せないけどさ。モバPは侍君のこと認めていたんだ」

侍「では、なに故こんなことに!」

赤羽根P「モバPは……もう自分のことで手一杯になり始めてしまっているんだ」

侍「そ、それはどういう意味でござるか?」

赤羽根P「……ごめん。詳しくは言えないんだ」

侍「どうしてでござるか!」

赤羽根P「どうしてもだ。ごめんな」

侍「……」

赤羽根P「あいつの今の状態だと、短期間のうちで侍君を俺クラスのプロデューサーに仕立て上げることが出来なかったんだ」

赤羽根P「だから、わざわざ俺に頼んでここに働いてもらうことになった」

赤羽根P「激務のここなら、短期間のうちに間違いなく成長するだろうから」

侍「短期間? ちょっとまってくだされ! なんでそんなに焦って拙者を成長させようとしているでござるか?」

コテハン戻すの忘れてた

赤羽根P「悪い! 言えないんだ」ペコリ

赤羽根P「これはあいつの望みでもある」

赤羽根P「俺は硬く口止めされていてな。本当はこういうヒントのようなものも与えてはいけない約束だったんだ」

赤羽根P「でも、信じてくれ! モバPは侍君のことを嫌いになったとか。出来が悪いとかでこういう措置をとったわけじゃないんだ!」

赤羽根P「お願いだ……黙ってここで働いてくれないか?」

侍「……わかったでござる」

赤羽根P「本当か!?」

侍「一旦私情は置いておくでござる」

侍「その代わり。種明かしをされるのはいつでござるか?」

赤羽根P「4月の初めあたりだと思う」

侍「御意。では、それまで拙者は無心になって仕事をし続けるでござるよ」

赤羽根P「……侍君も辛いだろうけどあいつも悩んでこの決断を出したんだ」

赤羽根P「許してやってくれ」

侍「もういいでござるよ」

侍「その話を聞いたら、拙者。少し楽になったでござる」

侍「P殿の期待にこたえるためにも! 拙者、頑張って成長するでござるよ!」

赤羽根P「強いな。侍君は」

トゥルルル

ピ

赤羽根P「はいもしもし」

赤羽根P「えぇ!? ダブルブッキングですか!?」

赤羽根P「はいはい。わかりました。すぐに行きます!」

赤羽根P「悪い! 詳しい話は音無さんから聞いてくれ!」

赤羽根P「俺、行かなきゃいけないから!」タッタッタッタ

ガチャ ドン

侍(拙者は捨てられたわけではなかったでござるか)

侍(しかし、気になるでござるな)

侍「は! いけないいけない。その事は頭から切り離すでござる」

侍「今は成長することだけ考えるでござる」

―――

モバP「……」カタカタ

まゆ「……」

まゆ「あの……」

モバP「? どうかしたか?」

まゆ「な、なんでもないですよぉ?」

モバP「話しかけてきたんだからなにかあるんだろ?」

まゆ「本当に……なんでもないんです」

モバP「そうか」

ダッダッダッダ

ガチャ ドン

みく「にゃー!」

愛梨「おりゃー!」

美波「どういうことなんですか!?」

モバP「あー、来たな」





みく「モバPちゃん! 説明を求むにゃ!」ガシ

美波「そうですよ! 私、あれじゃあ納得がいきません!」

愛梨「アタシもみんなと同じ気持ちです!」

モバP「みく……落ち着け。締まってるから。苦しいから」

みく「だったらとっとと言うにゃ!」パ

モバP「か、開放された」

モバP「大体、なにについて説明してほしいんだ?」

みく「とぼけても無駄にゃ! ネタは上がっているにゃ!」

モバP「はぁ……」

モバP「俺が侍をクビにしたことか?」

愛梨「そうです!それです!」

美波「詳しい説明をよろしくお願いします!」

モバP「まぁ、別にクビにしたわけじゃないんだけどな」

みく「だ、だって侍Pちゃんは今、765プロに……」

モバP「あれはー、なんていうのかな? 武者修行的な?」

美波「そんなてきとうな言い方って!」

モバP「わかってる。納得がいかないんだろ?」

モバP「でも、修行って面では間違っていないんだ」

愛梨「どういう意味ですか?」

モバP「あいつには四月までに力をつけてもらわなければならないんだ」

モバP「しかも、俺や765の眼鏡クラスの力をな」

モバP「そうなると、取れる仕事が少ないうちより765に行ったほうが短い期間で間違いなく成長する」

モバP「短いスパンで成長させるには765に突っ込むしかなかったんだよ」

モバP「うちじゃ、経験地をあまり稼げないからな」

みく「ど、どうして短期間で侍Pちゃんを成長させようとしているにゃ?」

モバP「それは……」

モバP「……」

まゆ「Pさんは4月の頭にここの事務所からいなくなっちゃうんですよー」

まゆ「それで、全業務を侍Pさんに任せることになるから今のままの侍Pさんではダメと判断したんです」

モバP「……そうだ」

モバP「あいつは俺に頼り過ぎている面があるからな」

モバP(出て行く前に、突き放したいい方をしたのは……軽く俺のミスだったかもな)

モバP(まぁ、そこは赤羽根が上手くフォローしてくれるだろ)

みく「うそ……そんな」

美波「じょ、冗談ですよね?」

愛梨「え? い、いなくなるって旅行ですか?」

モバP「んなわけないだろ」

モバP「俺はアメリカに行く。それだけだ」

みく「それだけだって、おかしいにゃ!」

みく「大体、アメリカでなにするつもりにゃ!」

モバP「ヘッドハンティング……ていうのかな?」

モバP「実績を買われてアメリカの芸能事務所からスカウトされてるんだよ」

美波「で、でも英語が話せなきゃ――」

まゆ「Pさんは学生の頃に語学留学の経験があるんですよぉ?」

みく「そ、それはわかったにゃ! でも、まゆちゃんに凛ちゃんはどうするにゃ!?」

モバP「全て、侍に任せるつもりだ」

モバP「大体、そのために修行に出させたわけだし」

モバP「事務所運営はああみえても優秀なちひろに任せるから安心しろ」

愛梨「自分のアイドル丸投げってひどくないですか!?」

みく「まゆちゃんもそれでいいにゃ!?」

まゆ「まゆは……構いません」

美波「まゆちゃん!」

まゆ「まゆはPさんの意向に従うだけです」

まゆ「それに……アメリカの芸能事務所で働くのはPさんの夢だったんですよ?」

モバP「まゆ! お前そのこと知ってたのか?」

まゆ「まゆはPさんのことならなーんでも知ってますから」

まゆ「語学留学するのもアメリカで働くためだったんですよね?」

モバP「……」

まゆ「なら……行っちゃやだ、なんて言えるわけないですよ」

みく「……」

愛梨「……」

美波「……」

モバP「まゆ、辛い思いさせて悪いな」

まゆ「大丈夫ですよー?」

まゆ「会いたくなったらいつでも会えますから」

まゆ「それに、まゆがもーっと有名になればまゆの元気な姿を電波に乗せて、Pさんに届けることが出来ますよ?」

モバP「……そうだな」

まゆ「まゆは……いつまでも待ってますから」

みく(ここまでくると)

美波(わたしたちには)

愛梨(なにもいえないね)

モバP「みんなもこれで納得してくれたか?」

モバP「俺がいなくなると同時に侍はここの事務所に帰ってくるから」

モバP「しばらくの間。お前らのプロデュースは俺に任せてくれ」

美波「わかりました……」

愛梨「うん。アタシもそれで納得しました」

みく「みくは……まだ確認したいことがあるにゃ」

モバP「なんだ?」

みく「侍Pちゃんに別れはちゃんと言うにゃ? それと凛ちゃんはどう思っているにゃ?」

モバP「侍は……お前らが見ていないところでちゃんとするさ」

モバP「あまり、人には見せたくないようなことも起きるかもしれないから」

まゆ「どういう意味ですかー?」ニタァ

モバP「違う! 変な意味じゃない!」

モバP(アイドルたちの目の前で泣くのはごめんだからな)

モバP「そして、凛だけど……」

モバP「まだ、理解をもらえてないんだ」

みく「やっぱりそうかにゃ……」

みく「凛ちゃん最近おかしかったにゃ」

美波「あ、それは私も……」

愛梨「アタシも見ました!」

モバP(……やっぱりそうか)

モバP(頼むから凛。変なことだけはしないでくれよ……)

――

渋谷家 自宅

凛(Pがアメリカに行くことは心の整理がついたけど……)

凛(Pが遠くに行っちゃういやな気持ちはいまでも変らない)

凛(離れ離れになったら悲しいし)

凛(でも、まゆからあの話を聞かされたら止めるわけにも行かないよね)

凛(だから、私はもう引き止めることはしないし。怒らない)

凛(てか、最初から怒ってなんてなかったし)

凛(問題なのは、最後に私が大きな仕事を取ってPを安心させること)

凛(まゆはバラエティ番組のレギュラー一本取っちゃったしPはまゆに関しては喉の突っかかりはないはず)

凛(けど、私は今月ローカル番組の仕事しか取れてない)

凛(このままだと、Pを安心させてアメリカに行かせるなんて無理)

凛(あー、もうどうすればいいの!)

凛(このままだと……)ゴロゴロ

凛(うー)

凛(今月取れそうなのは今、最終選考まで残ってるドラマのオーディションだけ)

凛(よし。ここをなんとしてでも突破してみせる!)

トゥルルル

凛「」ビク

凛(だ、誰からだろ)

凛(? 見たこともない番号)

凛(仕事関係の電話かもしれないし一応出ておこ)

ピ

凛「渋谷ですけど」

?『あ、もしもし渋谷ちゃん?」

?『○監督だけど」

凛「ど、どうも」

凛(今受けてる作品の監督さん?)

凛(てか、どうして私の番号)

監督『今日はね。渋谷ちゃんに耳寄りの情報をプレゼントしようと思ってね」

凛「はぁ……一体なんでしょうか」

監督『今度のドラマのヒロイン渋谷ちゃんにやってもらおうかと思っているんだよ』

凛「ほ、本当ですか!?」

監督『急に連絡しちゃった理由がこれなんだ』

監督『もしかして、仕事中だった?』

凛「だ、大丈夫です!」

凛(や、やった!)

凛(でも、どうして事務所を通さずわざわざ直接?)

監督『でもね。実は正式に決まったわけではないんだよ』

凛「え……」

監督『あぁ、心配しなくてもいいよ』

監督『確実にする方法があるから』

凛「な、なんですか?」

監督『なーに。ちょっとした奉仕活動だよ」

凛「奉仕活動?」

監督『渋谷ちゃんって男性経験ある?』

凛「はい? な、ないですけど……」

監督『へぇ。そうなんだ」

凛「?」

監督『いやねぇ、早い話ね?』

監督『ぼくと一緒に寝てくれないかな?』

凛「……は?」

――沖縄――

浜辺

侍「清清しい陽気でござるな」

侍「海は青いし、空気も美味しいでござる!」

侍「さて、生き抜きもしたでござるし」

侍「戻って響殿の演技をじっくり見るでござるよー」

タッタッタッタ

蘭子「わ、煩わしい太陽ね(おはようございます!)」

侍「蘭子殿? 休憩でござるか」

蘭子「よくわかったな、村雨を継ぐ物よ」(はい! 侍さん♪)

侍「いやー、しかしびっくりしたでござるよ」

侍「ここに来たときに蘭子殿がおったでござるから」

侍「なんだかんだで結構会ってるでござるな」

蘭子「フフ、力を持つもの同士惹かれあうのは必然。これも運命だったのよ」(私もびっくりです!)

蘭子「幾度と問いかけようと思ったが貴様の村雨に当てられて中々容易ではなかった」(何度も話しかけようとしたんですけど、タイミングがあわなかったんですよー)

訂正

侍「なんだかんだで結構会ってるでござるな」×

侍「お久しぶりでござる」○

蘭子「力を持つもの以外とは相容れぬから村雨を継ぐ者は重要だわ」(現場で話せる人がいないんで侍さんがいると楽しいんですよ?)

侍「そうでござるな。なんだかんだで蘭子殿とは付き合いが長いでござるからな」

侍「拙者が事務所に入りたてのころ、仕事をしたときに最初に知り合ったアイドルでござる」

侍「その後も結構な回数一緒に仕事をしているでござるな」

蘭子「月日の流れによって私たちの共鳴度は高まっていった」(おかげで仲良くなれましたよね♪)

蘭子「時として村雨を継ぐ物よ」(あの、侍さん)

侍「どうしたでござるか?」

蘭子「猫神、エロスがいないが……どうかしたの?」(みくさんに美波さんはここの現場にはいないんですけど……なぜ、侍さんが?)

侍「ちょっとした事情でござる」

侍「今は765で働いているでござるよ」

蘭子(聞いたらまずい話題かな?)

蘭子(もう、この話は終わりにしとこ……)

蘭子「村雨を継ぐ物よ。貴様に良いものを見せてやりましょう」(侍さんに見せたいものがあるんですけどいいですか?)

侍「構わぬ」

蘭子「我が、魔力が込められ絵画!」(私が書いた衣装です! どうですか?)

侍「おぉ! かっこいいでござるな!」

蘭子「で、ですよね!」

侍「?」

蘭子「あ、あわわ……ごほん」

蘭子「流石は村雨を継ぐもの!」(さ、侍さんはやっぱりわかってくれますね!)

蘭子「しかし、我が下僕はなんにも理解してはいない!」(でも、私のPさんはこういう衣装はダメって言うんですよ……)

侍「……拙者が口添えをしておくでござる」

蘭子「真か!?」(本当ですか!?)

侍「うむ。そうすればきっと着れるでござるよ」

蘭子「あ、そ、その……ありがとう、ございますぅ」

侍「礼には及ばぬでござる」

蘭子P「おーい。蘭子ちゃん。そろそろ始まるから!」タッタッタ

蘭子P「あ、侍さん。ごめなさい。蘭子の面倒みてもらってたみたいで」

侍「そんなことないでござる」

蘭子P「あと……ちょっとお願いしたいことがあるんですけど」

侍「なんでござるか?」

蘭子P「今度、蘭子の言語を教えてくれませんか?」ボソボソ

侍「御意。その代わりと言ってはなんでござるが」

侍「蘭子殿が自分でデザインした衣装を作ってやってはくださらぬか?」

侍「そして、それを着させてやってほしいでござる」

蘭子P「……わかりました」

侍「交渉成立でござる」

蘭子P「そうですね」

蘭子P「じゃあ、蘭子ちゃん。ぼくはさきに行ってるから」

蘭子「先に行け、我が下僕よ」(わかりました!)

トゥルルル

侍「蘭子殿。しばし待つでござる」



侍「もしもし」

凛『……侍P」

侍「凛殿? どうしたでござるか」

凛『そっちは沖縄?』

侍「そ、そうでござるけど……」

侍「大丈夫でござるか? 声のトーンが低いでござるよ?」

凛『いつものことでしょ……」

侍「そ、そうでござるか……?」

凛『ねぇ。侍P。絶対に誰にも言わないって誓ってくれる?』

侍「ぎょ、御意」

凛『私ね……おかしくなっちゃったみたい』

侍「病気でござるか?」

凛『たぶん、そう』

凛『この前のドラマのオーディション私が最終選考まで残ってるの覚えてる?』

侍「もちろんでござる」

凛『そこの監督にね……』

凛『寝たらヒロイン役をあげるって言われたの』

侍「!」

侍(ま、枕営業――!?)

侍(どうしてでござるか!? 最近ではそういうのは少ないとP殿から聞いておったのに!)

侍「もちろん断ったでござるな!?」

凛『うんうん。OKしたよ』

侍「あ――」

凛『明後日に監督さんと会う予定なんだ」

侍「ふざけるでない!」

侍「お主、なにを言っているのか分かり申しているのか!」

凛『喋り方、昔に戻ってるよ?」

侍「それはP殿が一番嫌っていた手法ではござらぬか!」

侍「なに故その手を使う!」

凛『私は……どんな手を使ってでも大きな仕事を掴み取りたいから』

侍「なにを言っておる!」

侍「焦る必要はないではないか!」

凛『時間はないの!』

侍「……」

凛『このままだと、安心させてあげられない……』

侍「なにを言っているでござるか?」

凛『……侍Pにはわからないよね』

凛『ごめん』

侍「ま、まつでござ――」

プツ

プープープー

侍「……」

蘭子「ど、どうかしたんですか?」オドオド

侍「怖がらせたでござるな。すまぬ」

侍「……」

ピ ピ ピ

トゥルルル

ガチャ

赤羽根P『侍君? どうかしたのか?』

侍「拙者、今から行かなくてはならぬところが出来たでござる」

赤羽根P『えぇ!? 今、沖縄だろ! じゃあ、響の付き添いは……」

侍「すまぬ! 助けてやりたいアイドルがいるでござる!」

赤羽根P『その子を助けるために……?』

侍「御意」

赤羽根P『……そういうところ。モバPそっくりだ』

赤羽根P『わかった。いいだろう。俺が沖縄に向かう』

侍「い、いいでござるか!?」

赤羽根P『どうせ、ダメといっても行くんだろ?』

侍「……かたじけない」

赤羽根P『その代わり戻ったら馬車馬のように働かせるからな」

侍「わかっているでござる!」

侍「それでは切るでござる!」



蘭子「村雨を継ぐ物よ。旅立ちか?」(侍さん、どこに行くんですか?)

侍「東京に戻るでござる」ヌギヌギ

蘭子「な、なんで洋服を脱いでいるんですか!?」アワワ

侍「これで動きやすくなったでござる」

蘭子「ふ、褌一丁になっちゃったじゃないですか!」

侍「お手数だが、蘭子殿。そのスーツは後日。拙者の事務所に届けてほしいでござる」

蘭子「え?」

侍「モバプロダクションに」

侍「それではいってくるでござる!」

ザッボーン

蘭子「えぇぇぇ!? お、泳いで行くんですか!?」

侍「頼んだでござるよー」

侍(あれは間違いなく凛殿からの救援信号)

侍(拙者が助けてやらねば)

侍(P殿にもいえない。アイドルにも相談できない)

侍(さぞ、辛かったでござろう)

侍(そして、最終的に我慢できず、苦肉の策として拙者)

侍(待っているでござる!)

――

モバP「くっそ!」ガン

モバP「はぁ……」

モバP(机を蹴っても仕方ないよな)

モバP「なんで、電話に出ないんだよ。凛」

モバP(なんだよ、この胸騒ぎ)

モバP(凛……)

ガチャ ドン

モバP「……誰だ」

クール系P「俺です」

モバP「お前か……」

モバP「わざわざ俺の事務所までなんのようだ」

クール系P「随分イライラしてますね」

モバP「……」

クール系P「凛のことですか?」

モバP「! お前! どうしてそれを……」

クール系P「ちょっと、良くない噂を小耳に挟んだんです」

モバP「なに?」

クール系P「凛が今受けているドラマのオーディションの監督」

クール系P「若い子に枕をさせることで有名みたいですよ」

モバP「凛がやるとでも?」

クール系P「はい」

モバP「あいつがそんなことするわけないだろ!」

クール系P「いつもの、凛なら間違いなくしないでしょうね」

クール系P「けどモバPさんがいなくなってしまうっていう精神攻撃を受けている状態だったとしたら」

クール系P「おそらくあいつのことだから、何か一つでも大きな仕事を取ろうとするはずです」

モバP「……どけ!」タッタッタ

クール系P「無闇に走って!」

モバP「……」

クール系P「どうなるっていうんですか?」

モバP「じゃあ、どうしろっていうんだよ!」

クール系P「あの監督が良く使っているホテルの住所です」ヒョイ

モバP「これ……」

クール系P「俺からの……お礼のつもりです」

クール系P「今までありがとうございました」スタスタ

ガチャ ドン

モバP「……ありがとよ」

――

東京湾

カップル男「なぁ……スケベしようや……」

カップル女「ちょっと。もうやめてよね」

カップル男「いいじゃんかよー」

カップル女「えー? 仕方ないなー」

カップル男「まじ! じゃ、じゃあ!」

カップル女「いいよー?」

カップル男「き、キス――」

侍「プハァ!」

カップル女「ぎゃぁぁぁぁ!」

カップル男「あ、頭にワカメを乗せた侍がう、海から……」

侍「……」タッタッタッタ

カップル男「は、走って去っていった……」

侍(思いの外時間が掛かってしまったでござる!)

侍(今日が刻限のはず! 急ぐでござるよ!)

――

ホテル 一室

監督「うん。じゃあぼくが先に風呂は行っているから待っていてね」

凛「はい……」

監督「いやー、渋谷ちゃんレベルの可愛い子はおじさんも初めてだよ」

凛「……」

監督「緊張しているのかな?」

監督「まぁ、男性経験無いから当たり前か」

監督(遊んでそうで意外だよな)

監督(快楽を教えてあげればそれに溺れて毎週……むふふ)

監督「それじゃ、待っててね」





凛(なにやってるんだろう私……)

凛(馬鹿みたい)

凛(一人の男の人に安心してもらいたいからって自分の体売るなんて)

凛(さいてー)

凛(こんな私をPはどうおもうのかな?)

凛(きっと、幻滅するよね)

凛「はぁ……」

凛(……)

凛(だめだな。私)

凛(こんなことしてもPは喜ばないし安心もしないのに)

凛(私は、ドラマの役のために知らない男の人に体を触られるのか……)

凛「……」プルプル

凛「こわい……こわいよ……P」

凛「なんで、こんなことに……」

凛(全部。全部私が悪い)

凛(私の精神が弱いのがいけなかった……)

凛(私の実力不足がいけなかった……)ポタポタ

監督「ん? 泣いてるけど、どうかしたの?」

凛「すいません……やっぱりなかったことにしてくれませんか?」

監督「えぇ? なに言ってるの? もうおじさん我慢できな――」ス

凛「さ、触らないでください!」

監督「……」

監督「おい、出て来い」

893A「……」ニヤニヤ

893B「……」ニヤニヤ

凛「え……?」

凛(うそ、なんで!)

凛(も、物陰に隠れてた!?)

監督「まだまだ、他の部屋にぼくのお友達がたくさんいるんだよ?」

監督「今日は頑張ってもらわないとね」ニッコリ

凛「い、いや!」タッタッタ

893A「おいおい逃げんなよ。楽しもうぜ」ガシ

凛「さ、触らないで!」

893B「おー! こりゃやりがいがあるな!」

凛「や、やめて!」

凛(……自業自得なのかな?)

凛(もう、この状況で助けて)

凛(なんて叫んでも誰もきてくれないよね。ドラマじゃないんだから)

凛(全部、全部。私の責任)

監督「おい、脱がせ」

凛(でも……思うだけならいいよね?)

凛(助けて―――P!)

ガチャ ドン !

モバP「凛!」タッタッタ

凛「P!?」

凛「な、なんで……」

モバP「俺のアイドルになにしてんだよ!」ドン

893A「グ!」

モバP「おら!」ガツ

893B「うぐ……!」

モバP「凛! フロントまで一直線で走れ!」

凛「でも!」

モバP「いいから!」

凛「……わかった!」タッタッタ

監督「あらら、逃げられちゃった」

監督「まぁ、ここのホテル全部がぼくたちの貸し切り状態だから」

監督「外に逃げるなんて不可能なんだけどね」

モバP「おいお前! 俺のアイドルに手を出したつけはでかいからな」

監督「おー、怖い怖い」

893A「おら!」ガツ

モバP「ガハ!」

モバP(こいつ気絶してたはずじゃ!)

893B「さっきのおかえしだ」ゴツ

モバP「……ぶは」

モバP「クゾ……ダレ……」

監督「……嬲り殺せ」



――

凛「はぁ……はぁ」タッタッタッタ

凛(ごめん! P!)

凛(私が馬鹿だっただけに……!)

凛(こんなことになって……!)

893C「はい、お嬢さんストップ」

凛「え!? な、なんで出口のドア付近に……」

893C「見張っておいて正解だったな」

凛「く……!」

893C「ここから先は通行――」

ゴキリ

893C「え?」バタリ

893C「……」

凛「だ、誰?」

幹部「私です」

凛「幹部さん?」

凛「どうしてここに……!」

幹部「侍さんを連れて来ました」

凛「うそ! だって侍Pは沖縄でロケ――」

侍「拙者はここでござる」

凛「ど、どうしてここに……しかも、黒服なんて着ちゃって……」

侍「……P殿は上でござるか?」

凛「そ、そうだけど……」

侍「幹部殿。凛殿を頼み申した」

幹部「はい」

凛「ま、待って! 危険だって!」ガシ

侍「大丈夫でござる」

凛(え? なに、この目。怖……い?)

凛(う、動けない)

凛(それに……)

凛(侍P、なんか生臭い)

侍「行って来るでござる」

幹部「それでは、これを」

侍「竹刀……でござるな」

幹部「今の侍さんだと、手加減できるかどうかわからないのでこちらにしてください」

侍「御意」

幹部「随分、怒ってらっしゃいますね」

侍「あの話を聞かされたらこうなるでござるよ」

侍「……幹部殿」

侍「どのくらい暴れていいでござるか?」

幹部「死人が5人ほど出るくらいなら問題ないかと」

侍「わかり申した」

侍「凛殿を頼んだござる」タッタッタ

侍(今回だけは感謝するでござるよクール系P殿)

幹部「侍さんマジだな」

幹部「こりゃ、処理が大変そうだ」

凛「幹部さん。どうして侍Pと一緒に?」

幹部「非通知でうちの組にとある人物からの電話があったんです」

幹部「クール系Pとかいうやつからで侍さんにある情報を伝えてくれと言われました」

幹部「そして、急いで侍さんを探し出してそのことを説明したらあんな風に……」

幹部「褌一丁で街中を滑走してたときはさすがに声を掛けるのをためらいましたけどね」

凛「褌で?」

凛(もしかして……沖縄から泳いできたの?)

――

モバP「……」

監督「水を掛けて起こしてあげてよ」

監督「全くたかが数分殴られただけで気絶しちゃうなんて」

893A「おら」

バシャ

モバP「う……」

モバP「この……野郎」

監督「あ、起きたー? まだまだゲームは終らないよ」

監督「それにしても、渋谷ちゃん遅いね」

監督「捕まえ損ねちゃったかな?」

監督「見てきてよ」

893B「はいはい」

ガチャリ

ベシン!

893B「ぐへ……!」

監督「ん?」

侍「……」ユラユラ

侍「P殿、大丈夫でござるか?」

モバP「さむ……らい?」

侍「立てるでござるか?」

モバP「あ、あぁ……」

893A「てめぇ!」

バシン!

侍「遅い」

893A「……」パタリ

侍「P殿。凛殿が下で待っているでござる」

侍「早く行ってあげるでござるよ?」ニコ

モバP「でも――」

侍「拙者は、問題ないでござる」

侍「さぁ、早く」

モバP「……悪い!」タッタッタ

監督「やれやれ。めちゃくちゃにしてくれちゃって」

監督「どうしてくれんのさ?」

侍「貴様のしてきたことは耳に入れている」

侍「健気に奮闘しているおなごに対し、甘い餌で釣って遊んでおるようだな」

侍「自分ひとりだけ相手をすればいいようにと言ってから」

侍「その中身は暴力団の性欲の捌け口に使っておった様子」

侍「まぁ、ちゃんと役を渡しているところは良心的と評価すればよきか?」

監督「だまされるほうがわるいだけじゃん」

監督「世の中そんなにあまくないのにね」

侍「……なるほど。それが貴様の考えか」

監督「大体、女も馬鹿だよね」

監督「自分が有名になりたいからってあの子みたく自分の体ささげちゃうんだから」

侍「……確かにそうかもしれぬな」

侍「しかし……それを逆手にとって弄んでる貴様のほうがよっぽど害悪」

侍「故に! 拙者が、貴様を成敗致す」

侍「まっこと不思議でござるよ。こんなにも怒っているのに冷静でござる」

侍「だが……体はコントロール出来ないようだ」

侍「貴様を切りたくてウズウズしておる」

監督「なにそれ? 時代劇?」

監督「面白くないよ?」

監督「それにさ。後ろ見てみなよ」


893 ゾロゾロゾロゾロ

監督「実は他の部屋にも人がいたんだよね」

監督「どうみても君の負けでしょ?」

監督「試合しゅーりょー」

侍「……いくでござる」ス

――

モバP「凛!」

凛「P!」

幹部「……」スタスタ

モバP「大丈夫だったか!?」

凛「私は大丈夫だけど……P怪我してる……」

モバP「……問題ないって」

モバP「それより、顔をあげてくれるか?」

凛「?」

パシン

凛「い……たい」

モバP「なに考えてるんだよ!」

モバP「もっと自分を大切にしろって!」

凛「わ、私は……」

モバP「わかってる。俺を不安にさせまいと大きな仕事を一つとって安心させようとしたんだろ?」

凛「……うん」

モバP「最初から不安なんて感じてない」

モバP「俺はお前ならトップアイドルになれるって信じてるから」

凛「……」

モバP「凛を一目見たときから俺は確信を持ってたんだよ」

モバP「こいつは間違いなくトップアイドルになれるって」

モバP「だから、凛を置いていくのが不安だとか思ったことなんて一度も無い!」

モバP「むしろ、帰ったときにどれだけ成長してるか楽しみだったくらいだ!」

凛「そう……だったんだ」

モバP「だから……俺が海外に行く前に大きな仕事を取ろうって頑張らなくていいから……」

モバP「焦らずやっていけって……」

モバP「場所は違えど、ずっと見守っててやるからさ」ダキ

凛「うん……」 

凛「ごめんね……私馬鹿だった……」

凛「もう……あんなことしないよ」

凛「ごめんね。心配かけちゃって」ポタポタ

モバP「お互い様だ……」ナデナデ

凛「P、アメリカ行っても頑張ってね」

モバP「まだ、いかないって」

モバP「だから、それまでの間、一緒に頑張ろうな?」

凛「そ、そうだね」ニコ

凛「ガンバろね」

モバP「そうだ。俺にも一発ビンタしてくれよ」

凛「なんで?」

モバP「俺もお前の気持ちちゃんとわかってあげられなかったからな」

モバP「これでお相子にしよう」

凛「その必要はないって……」

モバP「どうして?」

凛「私、この前事務所で思いっきりやっちゃったから」

モバP「あぁ、そういえばそうだったな」アハハ

凛「代わりに……だけどさ」

モバP「どうした?」

凛「キス、で許したあげるよ」

モバP「……わかった」

モバP「こっちに顔向けて」

凛「ん……」

チュ

――

幹部「案外自販機遠いな……

――

893「グエ……」

監督「お、おまえなんなんだよ!」

侍「……」ユラユラ

監督「キチガイが! なにあの人数倒してるんだよ!」

侍「まさしく、死屍累々」

監督「なに自分で言ってるんだよ!  部屋が血だらけじゃねーか!」

侍「心配無用。たぶん死んではいないでござる」

監督「ふ、フフ。馬鹿が」

監督「俺の知り合いの怖いお兄さんたちの事務所はすぐそこにあるんだよ」

監督「呼べばすぐに来るんだ」

監督「待ってろよ」

侍「勝手にいたせ」

監督「ごのやろ!」

ピッピッピ

トゥルルルル

監督「もしもし? 俺だ」

組長『こんな忙しいときになんだ!」

監督「どうかしたのか?」

組長『お前のせいで今うちはグリマス組から総攻撃を受けてるんだよ!」

監督「は……?」

組長『な、なんでだ? なんであのお方がここにいるんだよ!』

組長『まず、前線なんかには出てこないはずなのに!』

組長『し、死んだ……』

?『フォッフォッフォ わしの友達に手を出したらこうなるんじゃ』

組長『ヒ! 悪いが、お前との関係はここまでだ!」

組長『じゃあな!」

監督「あ、おい!」

プツ

ツーツー

監督「ざっけんなよ!」

侍「? なにもしてこないのか?」

侍「ならば、もう斬っても良きか」

監督「ま、待ってくれ!」

監督「な、なぁ……抱きたい女はいないか?」

監督「俺ならいくらでも紹介できるぞ!」

侍「声が震えておるぞ」

侍「そんなに、怖がらずともよい」

監督「た、頼むよ!」

監督「抱きたい女の一人や二人いるだろ?」

侍「そうでござるな……」

侍「あ、おったおった」

監督「だ、誰だ?」

侍「拙者の幼馴染でござる」ニコ

監督「え?」

侍「まぁ、もし抱けるとしても、貴様なぞには頼みたくはないがな」

侍「大人しくここで散れ」

監督「ま、待ってくれ――」

侍「二度も聞きとうない」

侍「消えろ。外道」

バシン

今日はここまで

――四月――

居酒屋

ガヤガヤ

モバP「ふー、この一ヶ月。本当にいろいろなことがあったな」

侍「そうでござるな」

モバP「結局あの監督はお前が殺さずに、警察に逮捕させたんだろ?」

モバP「ニュースにはならなかったみたいだけど、その話を聞いたときには驚いた」

モバP「てっきりやっちゃってたのこと思ってたからさ」

侍「拙者は裁く側の人間ではない故。やつは法の下で裁かれるべきだろうと判断したでござる」

侍「それよりも、P殿がなに故拙者を765に送ったのか聞かせてほしいでござる」

モバP「そういえば……まだ言ってなかったな」

モバP「凛の一件が終った後に、侍はなにも言わずに立ち去ったからな」

モバP「わかった。教えてやるよ」

侍「御意」



カクカク シカジカ

侍「アメリカに……で、ござるか?」

モバP「そうだ。大きな海を渡って海外に俺は旅立つ」

モバP「すると、侍の面倒はもうみれない」

モバP「だから、俺がいなくなったことでうちの事務所が弱くならないように」

モバP「765へと、侍を修行に出したんだ」

モバP「それに、赤羽根と仲良くなってれば困ったときに助けてもらえるしな」

侍「そうだったでござるか……」

モバP「ああやって突き放した言い方をしたのはお前のメンタルを鍛えるためでもあったんだ」

モバP「って、言ってもすでに強靭だったからあまり意味はなかったけどな」


侍「いやいや、そんなことはなかったでござる」

侍「あの言葉は拙者の心にグサリと突き刺さった」

侍「赤羽根殿がいなかったら拙者は壊れていたでござる……」

モバP「ごめんな。事情も言わないで」

侍「いい経験になったでござる。心配は無用」

モバP「そう言ってもらうと幾分か気が楽になる」

モバP「それで、765はどうだった?」

モバP「忙しかっただろ」

侍「そうでござるな。休む暇などなかったでござる」

モバP「今度は5人一気にプロデュースだからそのくらいの忙しさになると覚悟しておけよ」

侍「ぎょ、御意」

モバP「赤羽根はなにか言ってたか?」

侍「拙者にはこれからはライバルだ、という言葉が」

侍「P殿には……あまり女の子を泣かせるのは良くない。っといっておったでござる」

モバP「その言葉、そのままあいつに返してやりたいな……」

モバP「ピヨはなにか言ってたか?」

侍「ピヨ?」

モバP「事務員の小鳥だよ」

モバP「昔いろいろあってな。知り合いなんだよ」

侍「そうでござったか。P殿にはアメリカに行っても頑張ってください、っていっておったでござるよ」

モバP「相変わらず普通な回答だな……」

侍「拙者には……しょうじょまんが? と男がたくさん出ている漫画本をプレゼントされたでござる」

モバP「……前言撤回。やつはアブノーマルだ」

モバP「侍、男がたくさん出ているほうは即刻捨てろ。お前にはよくないものだ」

侍「そ、そうでござるか?」

モバP「そういえば、お前と出会ってから一年が経とうとしてるのか……」

侍「目を閉じれば……拙者がここに来たときのことが鮮明におもいだされるでござる」

モバP「侍は最初ッから面白いやつだったよな」

侍「P殿は初めから優しかったでござる」

モバP「……」

モバP「そんなことない」

モバP「優しくなんかない」

モバP「なぁ、侍。まゆと凛。それから、うちの事務所を頼んだ」

侍「御意」

侍「しかし、ちひろ殿は……?」

モバP「あいつは逆にお前のことを頼んであるからな」

侍「そうでござったか」

モバP「その代わり、スタドリエナドリ以外進められても絶対に買うなよ?」

モバP「あいつはああ見えて詐欺師――じゃなかった」

モバP「商売上手だから言いくるめられるなよ」

侍「ぎょ、御意」

モバP「……」

侍「どうしたでござるか?」

モバP「いや……こんなにもお前らとの別れが辛くなると思っていなくてな」

侍「拙者も……同じでござる」

モバP「侍からはいろんなことを教えてもらった」

モバP「感謝しているんだぞ?」

モバP「俺も侍のようにもっと真っ直ぐになれるように努力するからな」

侍「拙者には勿体無いお言葉でござる」

侍「それに、教わったことが多いのは拙者のほうでござる」

侍「P殿のためにも頑張るでござるよ」

モバP「あぁ……そうだな」ポタポタ

侍「泣かないでもらいたいでござる」

モバP「ごめんな……気持ちが、抑え切れなくて……」

侍「生きている限り……また会えるでござるから」

侍「死別するわけではござらぬ」

侍「だから、泣かないでほしいでござる」

侍「さぁ! P殿! 今日はずっと笑顔でござるよ!」

モバP「……そうだな! オラ! 飲め飲め!」

ドンチャン ドンチャン

空港

モバP「うぅー。頭痛い」

モバP「なんで侍はあんなに酒が強いんだよ……」

ちひろ「体質の問題ですよ」

モバP「そうだろうけど、納得いかないな」

モバP「……」

モバP「やっぱ、ちひろ以外はこれないか」

ちひろ「みんな、お仕事ですから」

モバP「いや、むしろ俺としてはそっちのほうがありがたいからな」

ちひろ「そうですよね」

モバP「それじゃあ、ちひろ行ってくる」

ちひろ「はい♪」

ちひろ(よし! これでもうあの事務所に私の邪魔をする存在はいない!)

モバP「それから、侍には昨日忠告しといたんだけど」

ちひろ「なんですか?」

モバP「侍に変なものを売りつけるなよ」

ちひろ「げ……」

ちひろ「そ、そんなことしませんってば!」

モバP「……」ジト

ちひろ「いや、ほんと」

モバP「はぁ……」

?「ハァ……ハァ」タッタッタ

モバP「ん?」

凛「P!」

モバP「凛!? どうしたんだ?」

凛「この前あったドラマのオーディション。監督が変ったのはしってるでしょ?」

モバP「あ、あぁ」

凛「変ってからあったオーディションで、私、ヒロイン役で合格したの!」

モバP「ほ、本当か!?」

凛「うん。さっき連絡があって」

モバP「そうか……よかったな」

凛「これもあれも……全部Pのおかげだよ」

モバP「なにいってるんだよ。凛の実力だ」

凛「それから……これ」ヒョイ

モバP「紙袋?」

凛「みんなからの贈り物。今日見送りが出来ないからって」

モバP「……ありがとな」

凛「うん」

モバP「それじゃあ、今度こそ行ってくる」

モバP「じゃあな」

凛「ま、待って!」

モバP「? どうかしたか?」

凛「私……Pが帰ってくるころにはトップアイドルになってるから!」

モバP「……焦ってまた変なことするなよ?」

凛「大丈夫。私の体はPのものだから」

モバP「な……!」

ちひろ「ヒューヒュー」

モバP「煽るな!」

――アメリカ――

モバP「あー、疲れた」

モバP「ったく。凛もとんでもないこと言ってくれたな」

モバP「そうだ。この紙袋にはなにが入ってるんだ?」

モバP「見てみるか」

モバP「えーっとまずは……みくからか」

モバP「なんだこれ? 猫耳?」

モバP「あ、手紙が……」

みく『モバPちゃんがこれをつけて仕事をすれば絶対アメリカでも猫が流行るにゃ!』

モバP「……みくの家に今度魚でも送っておいてやるか」

モバP「つぎは十時ちゃんか。どれどれ?」

モバP「なんだこれ? 箱と手紙?」

愛梨『アタシはケーキを作りました! どうぞ、食べてください!』

モバP「……腐る可能性は考えていなかったのか?」

モバP「えーっと次は……ちひろ?」

モバP「しかも、手紙だけだし」

ちひろ『スタドリ、エナドリは! お金さえ払ってくれればアメリカにも送りますよ♪ ただし、送料は自己負担ですけど」

モバP「……日本に帰ったらしばき倒す」



モバP「なんかもう、見るのいやになってきたな」

モバP「えーっと次は、新田ちゃんか」

モバP「なんだろう。この安心感」

モバP「……なんだこれ? 写真と手紙?」

美波『モバPさんが寂しくないように侍Pさんの写真を送っておきますね!』

モバP「うわ……」

モバP「しかも、侍の寝顔とかの写真かよ」

モバP「次は……凛か」

モバP「凛ならきっとましなもの……」

モバP「リードと首輪!?」

モバP「これにはどんな意味が込められてるんだよ!」

モバP「て、手紙は! 手紙はないのか!」

モバP「ないし」ガックシ




モバP「最後はまゆか」

モバP「一番、やばそうだよな」

モバP「どれどれ」

モバP「ん? 手作りの、お守りか?」

モバP「……ラストにしてはインパクトがなかったな」

モバP「けど、一番まともな贈り物だったな」

モバP「あれ? お守りのなかに紙のようなものが……」モゾモゾ

モバP「あ、出てきた」

婚姻届

モバP「」

end

いちおつ。……ん?終わり!?

>>653

まだまだ、終らんよ。ただ、一つの区切りというだけです。

さぁ小ネタいってみましょう!

――四月中旬――

一軒家

侍「し、しまったでござる……」

侍「食材がもう底をつきてしまった」

侍「一人暮らしをしているときは気をつけていたでござるが」

侍「P殿に家を貸してもらってからは少々気が抜けていたようでござる……」

侍「今まではP殿と共同生活だった故、こんなことはござらなかったが」

侍「……おとなしくコンビニに行くでござる」

ガチャ ドン

訪問者は誰? >>658

訂正

――四月中旬――

一軒家

侍「し、しまったでござる……」

侍「食材がもう底をつきてしまった」

侍「一人暮らしをしているときは気をつけていたでござるが」

侍「P殿に家を貸してもらってからは少々気が抜けていたようでござる……」

侍「今まではP殿と共同生活だった故、こんなことはござらなかったが」

侍「……おとなしくコンビニに行くでござる」

ピンポーン

侍「む? 誰でござるか?」

訪問者は誰? >>658

ちひろさん

ガチャ ドン

侍「ちひろ殿? どうしたでござるか?」

ちひろ「へー、ここがモバPさんの住んでた家ですか?」

ちひろ「こんな家を貸してくれるなんて太っ腹ですねー」

侍「あの、拙者の話を聞いてもらいたいでござる」

ちひろ「あ、そうそう!」

ちひろ「今日は私がご飯を作りに来たんです!」

侍「ど、どうしてでござるか?」

ちひろ「疲れてるだろうからです! 最近になって侍さんの仕事量は増えましたからね」

ちひろ「だから、ここは私の料理で疲労回復してもらおうと思ったんです」

侍「ちなみに、料理の経験はあるでござるか?」

ちひろ「ないです! いつもはコンビニのお弁当です」

ちひろ「けどまぁ、食材はどれも高級食品ばかりを揃えたんで大丈夫ですよ」



侍「そ、そうでござるか?」

ちひろ「問題ないです」

ちひろ「じゃあ、早速お勝手を使わせてもらってもいいですか?」

侍「それは、構わぬでござるが……」

ちひろ「じゃあ、待っててくださいね!」

ちひろ「食材は量が多くて外に置いてきているんで取ってきますね」

侍「ぎょ、御意」

ドサ ドサ ドサ

ちひろ「今日持ってきた材料はこんなものです!」

侍(どうみても、一食分の量じゃないでござる……)

侍(確かに、今日は食材がなかったので助かるでござるが)

侍(さすがの拙者も流石にこの量は……)

ちひろ「えっとーまずは野菜をもっていけばいいよね」

ちひろ「お勝手に行ってきますね」スタスタ

侍「ちなみになにを作るでござるか?」

ちひろ「カレーです」

侍「おぉ! 拙者、大好物でござる!」

ちひろ「はい! 楽しみにしていてください」

侍「……いったでござるな」

侍(さっきから気になっているあそこの白い箱はなんでござるか?)

侍(魚……を保存でもしているかのような箱でござるな)

侍(ちひろ殿もいないでござるから)

侍(少しだけ、なかを覗いて見るでござる)

侍「御免」

パカ

マグロ の 頭

侍「……」

侍「これを一体どうやってカレーに使うのだろうか……」(震え声)

台所

ちひろ「♪」

侍「……」

侍(ばれないように気配を消すでござる)

侍(今までの工程を見る限りでは異変は見当たらないでござる)

侍(野菜を切ってそれを煮立った鍋の中に入れる)

侍(その後カレーのルーを投入)

侍(まだ、大丈夫でござる)

侍(しかし、油断は大敵)

侍(拙者も、命が掛かっている故。もしなにか危ないものでも投入し始めたら止めるでござる)

ちひろ「よーし。それじゃあさらに具を投入しよう」

侍(きたでござる――!)

ちひろ「まずは……食用カエル!」

侍(か、カレーにカエルでござるか!?)

侍(カエル自体は不味くはないでござるが……)

侍(カレーにはあわぬ)

ちひろ「あ、それから栄養足りてないだろうから……」

ちひろ「私のところで開発したサプリメントを入れちゃおっと♪」

侍(そ、それはまずいでござる! というか、不味くなるでござる!)

侍(栄養は十分すぎるほど取れているでござるよ!)

侍(し、しかし、まだ死ぬような事態ではないでござる)

ちひろ「あぁ、もう面倒だからてきとうにいれちゃおっと」ポイポイ

侍(今、なにが入ったのか全く分からなかったでござる!)

侍(さ、さすがにもう出ていったほうがいいでござるか?)

ちひろ「それじゃあ、最後に隠し味に……」

ちひろ「スタドリとエナドリをいれましょう!」

ちひろ「えい」ドボドボ

シュボン!

侍「か、かがくはんのうのようなものがいま!」

ちひろ「あれ? 侍さんいたんですか?」

侍「……い、今着たばかりでござる」

ちひろ「そうですか! 待っててくださいね」

侍(こ、殺しにかかってきているでござる)

――
メニュー

マグロの頭の丸焼き

緑色に濁ったカレー



ちひろ「さぁ、食べてください!」

侍「せ、拙者胃腸の調子がどうもよくないでござる」

ちひろ「大丈夫ですよ! 胃にも優しい料理ですから」ニッコリ

侍(どこに優しい要素があったでござるか……)

ちひろ「ほら、早く食べてくださいよ!」

侍「い、致し方ない」

侍(ここは侍らしく黙って食うでござる)

侍「いざ、南無三!」

パク

カラン

ちひろ「スプーン落とさないでくださいよー!」

侍「……」パタリ

ちひろ「さ、侍さん!?」

ちひろ「へ、平気ですか?」

侍「……」

ちひろ「ど、どうしよう」

ちひろ「ピクリともしない………」

ちひろ「黒焼きのイモリを入れるのを忘れたせいかな?」

侍「……」ムク

ちひろ「さ、侍さん!? 大丈夫ですか?」

ちひろ(良かった。起きてくれたみたい)

侍「……」

侍「ヒャッハー! お前を蝋人形にしてやろうかー!」

ちひろ「え」

侍「もう、俺様は我慢できねー!」

侍「溜まりにたまった欲求をここですべて発散するぜ!」

ちひろ「ど、どうしちゃったんですか!?」

侍「黙ってろビッ○!」

ちひろ「ビ――!」

ちひろ(まさか、私の料理を食べたせいで……)

ちひろ(侍さんの性格が変ってしまった!?)

ちひろ(こ、これはやばい……)

ちひろ(私が原因でこんなことになったとアイドル達が知ったら……)

侍「ファッ○ファッ○!」

ちひろ(間違いなく、私が殺られる!)

ちひろ(そ、その前になんとかしないと!)

ピーンポーン

ちひろ「だ、誰!?」

>>676

美波

美波「す、すいませーん侍Pさん、いませんか?」

ちひろ(こ、この声は美波ちゃん! こ、これは!)

ちひろ(私が出て行くのは問題がありすぎる! 変な誤解が生まれちゃう!)

ちひろ(でも、侍さんに出て行ってもらうことも出来ないから……)

ちひろ「ここは居留守に限る!」

ガチャ

美波「あ……開いてる」

ちひろ(なぜ、私は鍵を閉めておかなかったの!?)

ちひろ(こ、こうなったらどこかに隠れよう!)

ちひろ「む、向こうの部屋に隠れてよっと!」タッタッタ

美波「侍Pさーん? いませんか?」

侍「俺様は世界を征服してやる!」

美波「さ、侍Pさん!?」

ちひろ(あー! 邂逅してしまった!)

ちひろ(お、恐れていた事態が!)

侍「セクロス? セクロスじゃないかァ!」

美波「」

侍「俺様と一緒にセクロスしようぜヒャッハー!」

ちひろ(そ、それは美波ちゃんには禁句!)

ちひろ(あの一件以来かなり敏感になってるから!)

ちひろ(ど、どうしよう! 美波ちゃん、きっと泣いちゃう!)

侍「セクロ――」

美波「ふん!」

ゴツ

ちひろ「え」

美波「い、いけない! 反射的に手に持ってたラクロスのラケットで侍Pさんを!」

美波「だ、大丈夫ですか?」

侍「……」チーン

ちひろ「み、美波ちゃん!」

美波「ち、ちひろさん?」

ちひろ「じ、事情は上手く説明できないんだけど……」

ちひろ「と、とにかく早く侍さんを起こしてあげて!」

美波「は、はい……!」

侍「う……ここはどこでござるか?」

ちひろ「よ、よかったぁ……」

侍「拙者、なにやら悪い夢を見ていたでござる」

侍「なにか、美波殿に失礼なことを言ったような気が……」

美波「な、なんにも言われてないですよ」

美波(記憶が……ない?)

美波(上手く状況が飲み込めないけど……)

ちひろ「美波ちゃん。私は侍さんにご飯を作りに来ただけなの。だからへんな誤解はしないでね?」

美波「そ、そうなんですか? じゃあ、ここにある料理は」

ちひろ「それは私が作ったもので――」

美波「えぇー!? なら、私一口もらってもいいですか? どんな味が確かめてみたいので」

ちひろ「だ、ダメ――」

美波「戴きますね」

パク

ちひろ「あー!」

美波「……」

ちひろ「あぁ……」

侍「?」

美波「ヒャッハー!」

ちひろ「やっぱり……」

侍「」

end

次回『変る人』

―五月―

事務所

蘭子「……」カキカキ

侍「フ! フ!」ブンブン

ちひろ「竹刀を振るのはいいですけど、気をつけてくださいね」

侍「御意」

ブン ブン

みく「……ちょっと待つにゃ」

侍「どうしたでござるか?」

みく「どうしたもこうしたもないにゃ!」

みく「蘭子ちゃんは一体なにをしているにゃ!」

蘭子「?」

侍「絵を……書いているでござるな」

みく「そういうことじゃないにゃ!」

みく「どうして、平然と他事務所のアイドルがうちの事務所でくつろいでいるにゃ!」

蘭子「激高するな猫神よ」(お、おこらないでくださいよ)

みく「そりゃ、感情だって高ぶるにゃ!」

みく「侍Pちゃんはこれでいいにゃ?」

侍「そうでござるな……」

侍「事務所が賑やかになっていいでござるな!」キラン

みく「爽やかに言ってもだめにゃ!」

みく「他事務所のアイドルが事務所にいるのになにもいけないと思わないなんてPとして失格にゃ」

今日はここまで

侍「そ、そうでござろうか?」

ちひろ「いいんじゃないですか? 蘭子ちゃんの事務所とうちは仲もいいですし」

蘭子「裁きのイカヅチは落ちない」(じゃあ、問題ないですね♪)

侍「そうでござるな」

みく「だ、ダメにゃ!」

侍「? みく殿はなにが嫌でござる?」

侍「仕事現場では蘭子殿と仲がいいではござらぬか」

みく「た、確かにそうにゃ……」

侍「では、なぜいてほしくないでござるか?」

みく「それは……その……」

みく「あー! もう! 好きにするにゃ!」プイ

ちひろ(あーあ……)

侍「そうですか」

みく「にゃ?」

ちひろ「ん?」

蘭子「え?」

みく「今」

ちひろ「普通の敬語で」

蘭子「死の呪文を唱えたな?」(言いましたよね?)

侍「ゆ、油断してたでござる。最近では仕事先では敬語を使っていたゆえ」

侍「だから、私――拙者。敬語を使ってしまったでござる」

ちひろ「いや、べつに悪いというわけではないんですけど……」

みく「い、違和感しかないにゃ」

蘭子「……!」コクコク

侍「昔はあまり敬語などは意識していないでござったが」

侍「モバP殿の後釜に嵌ったからにはしっかりとした敬語を使うように心掛けているでござる」

ちひろ「まぁ、侍さんのキャラを嫌う人もいますからね……」

ちひろ「そういう相手にはモバPさんが対応してましたし」

侍「故に、最近ではずっと敬語でござる」

みく「あ、思い出したにゃ。そういえばこの前侍Pちゃん敬語使ってたにゃ」

蘭子「天変地異のようなことが……」(お、驚きです)

ちひろ「けど、その心掛けはいいことだと思いますよ」

侍「御意」

ちひろ「一応、モバPさんがいなくなった後も仕事は途絶えず取り続けてますから」

ちひろ「この調子で頑張りましょうね!」

侍「御意!」

ちひろ(侍さんが頑張る分だけ私の仕事量も減るしね)

侍「絶対拙者はモバP殿の後継者としての重責を果たすでござる……」ボソボソ

ちひろ「……」

ちひろ(空回り……しなければいいんだけどね)

蘭子「村雨を継ぐ物よ!」(あ! 侍さんちょっといいですか?)

侍「どうしたでござるか?」

みく(み、みくはもう関わらないにゃ。侍Pちゃんなんて知らないにゃ)

みく(別に侍Pちゃんが他のアイドルと浮気しててもみくは全然気にならないにゃ)

みく(全く盛ってこれっぽちも気にならないにゃ)

みく「……」

みく(そうにゃ! さっき入れたばかりの紅茶がすぐそばにあったにゃ!)

みく(これでも飲んでいるにゃ)カタカタガチャガチャ

ちひろ「みくちゃん? ティーカップもってる手が凄い震えてるよ?」

蘭子「刮目せよ!」(これを見てもらってもいいですか?)

侍「これは、なんでござるか?」

蘭子「我が作りし魔方陣!」(魔方陣です!)

侍「魔方陣?」

蘭子「これは我と村雨を継ぐもの専用のものだ」(私と侍Pさんだけが使える魔法陣なんです!)

蘭子「それで……だな。一緒に呪文を唱えてはくれぬか?」(あの……私と一緒に呪文を唱えてもらえますか?)

侍「それは構わぬ」

蘭子「ほ、本当ですか!?」

侍「うむ」

蘭子「えっと……じゃあまずは魔方陣が書いてある紙をテーブルに置いて……」

蘭子「そして、この魔方陣の中央に二人の手を持ってくるんです。手を繋いだまま」

蘭子「だから……あの……私の手を握って……もらえますか?」モジモジ

侍「こうでござるか?」ギュ

蘭子「そ、そうです」

蘭子(手、大きい……)

みく(みくはクールにゃ。脳みそもとてもクールにゃ。誰にも負けないくらいクールにゃ)カタカタボタボタ

ちひろ「みくちゃん、紅茶こぼれちゃってるよ?」

蘭子「じゃ、じゃあ、このまま手を魔方陣の中央に持ってきて……」

侍「御意」

蘭子(あ……今、肩と肩触れちゃった……)

侍「どうしたでござるか?」

蘭子「な……なんでもないですぅ……」

みく「……」プルプル

みく(お、落ち着くにゃ)

みく(あれは遊びにゃ)

みく(蘭子ちゃんは14歳。ああいう遊びが大好きにゃ)

みく(みくは冷静にゃ。無我の境地にゃ。悟りを開くにゃ)

蘭子「じゃあ、これを読んでください」

侍「御意」

侍「……新郎? となる私は、新婦? となるあなたを妻? とし、良いときも悪いときも、富めるときも貧しきときも、病めるときも健やかなるときも、死がふたりを分かつまで、愛し? 慈しみ貞節を守ることをここに誓います」

みく「ちょっと待つにゃぁぁぁぁぁ!」

蘭子「」ビク

侍「ど、どうしたでござるか!?」

みく「どうして唱える呪文が結婚式の誓いの言葉にゃ!」

蘭子「……」

みく「黙秘権は認めないにゃ!」

ちひろ「み、みくちゃん! 落ち着いて!」

みく「大体侍Pちゃんも侍Pちゃんにゃ!」

みく「どうしてあんなのを読んだにゃ!」

侍「いや、拙者は……」

みく「ま、まぁ侍Pちゃんを責めるのは筋違いにゃ!」

みく「そこの中坊!」

蘭子「……」ビクビク

みく「中2病でも恋がしたいなんて夢見るな、しばくぞ!」

ちひろ「みくちゃん! みくちゃん! 大阪の血が!」

侍「お、落ち着くでござる!」

侍「一体、どうしたでござるか?」

みく「侍Pちゃんが気付かないことをいいことに蘭子ちゃんは侍Pちゃんにとんでもないことを言わせたにゃ!」

侍「いや、拙者はべつにとんでもないことなど――」

みく「言ってたにゃ! これは卑劣な犯行にゃ!」

みく「例えるなら純真無垢な女優を騙し如何わしいビデオに出演させるくらい卑劣にゃ!」

ちひろ「わー! アイドルがそんなこと言っちゃダメだから!」

みく「もう、そんなのどうだっていいにゃ!」

みく「みくは怒っているにゃ!」

ちひろ「どうでもよくないからね!? 年齢を考えればそれくらいは言いそうだけど自重してよ!」

蘭子「……」

蘭子「い、いいじゃないですか!」

蘭子「私だってこんな風にイチャイチャしてみたかったんです!」

みく「あー! 開き直ったにゃ!」

みく「それに、イチャイチャしたことよりも侍Pちゃんに言わせた言葉が問題にゃ!」

蘭子「」プイ

みく「にゃぁぁぁ!」

ちひろ「みくちゃん相手は年下だから! ね? ね? 落ち着こう?」

みく「よろしいならば戦争にゃ!」

蘭子「我が死霊の軍に貴様を加えてやる!」(望むところです!)

ちひろ「あぁもう! 侍さん! 止めてください!」

侍「ふ――」

みく「黙ってるにゃ!」蘭子「黙っててください!」

侍「」

ちひろ「なに気圧されてるんですか!」

侍「こ、怖いでござる……」

ちひろ「893の事務所に単身乗り込んだ人物がなに言ってるんですか!」

ガチャ

愛梨「おはようございまーす!」

愛梨「ってあれ?」

愛梨「二人ともどうしたの?」

ちひろ「ちょっと……喧嘩しちゃってね」

愛梨「な、なるほど……」

みく「……にゃ?」

蘭子「……あれ?」

愛梨「え? い、いきなりどうしたの?」

みく「……」ジー

蘭子「……」ジー

愛梨「あ、アタシの手になんかついてるのかな?」アタフタ

みく「その左手薬指にある」

蘭子「指輪はなんですか?」

愛梨「え? これ?」

愛梨「この前、アタシが欲しそうに見てた指輪を侍Pさんに買ってもらったものだけど……」

愛梨「も、勿論最初は遠慮したんだよ! でも最近頑張ってるご褒美ってことで買ってもらったの」

愛梨「それに、そ、そんなに高いものじゃないよ?」

侍「毎日身につけているでござるか?」

愛梨「は、はい! そりゃもう! 寝るときもお風呂はいるときもです!」

侍「それは嬉しいでござるな!」

愛梨「そ、そうですか……えへへ」 

ゴゴゴゴゴゴゴ

愛梨「え?」

みく「……」ギラン

蘭子「……」ギラン

愛梨「な、なんでそんなに怖い目をしてるの?」

みく「今すぐにその指輪を捨てるにゃ!」

蘭子「我が地獄の業火で焼き尽くしてくれる!」

愛梨「な、なんでそうなるの!?」

ちひろ「左手薬指に男の人からもらった指輪をつけるのはちょっと……」

<ハズスニャー

<イヤダッテ

<ケシズミニスル

侍「あ、そろそろ営業先に行ってくるでござる」

ちひろ「こんなに状況を引っ掻き回してですか?」

侍「?」

ちひろ「あー、なんでもないです」

ちひろ「どうぞ、行ってきて下さい」

侍「御意」スタスタ

ガチャ パタン

ちひろ「……」

バタバタバタ

ちひろ「ねぇ、みんな。真面目な話するから一旦喧嘩は止めてくれない?」

シーン

みく「な、なににゃ?」

蘭子「?」

愛梨「どうか、したんですか?」

ちひろ「侍さんのことなんだけど……」

ちひろ「モバPさんがいなくなってから少しおかしい気がしない?」

ちひろ「たぶん、頑張りすぎちゃってるんだと思うんだ」

ちひろ「だからさ、みんなでフォローしてあげてくれない? 侍さんのこと」

みく「そんなのわかっているにゃ!」

愛梨「はい! 勿論です!」

蘭子「うむ!」(はい!)

みく「蘭子ちゃんは関係ないにゃ!」

ガヤガヤ バタバタ

ちひろ(頑張りすぎるあまり、自分を見失う……なんてこと。ないよね……)

ちひろ(心配しすぎかな?)

――八月――

控え室

みく「はぁ……」

みく(やってしまったにゃ……)

みく(ボケる場面でボケないで失敗したにゃ)

みく(有名なバラエティ番組の出演だったけど)

みく(おそらく次はよんでもらえないにゃ……)

みく(久しぶりのミスだから余計に落ち込むにゃー)

ガチャ

侍「……」スタスタ

みく「にゃ? 侍Pちゃん?」

みく(や、やばいにゃ! 落ち込んでるところ見られかもにゃ!)

みく「ど、どうしたにゃー?」

侍「今日のあの場面についてどう思いますか」

みく「え、えっと……し、仕方なかったにゃ。うん」

みく「次から頑張るにゃ!」

侍「次ってなんですか!」バン

みく「」ビク

侍「次はおそらくもうないんですよ!」

侍「掴めるチャンスを不意にしてしまったんですよ!?」

侍「あそこをきっちり決めていれば次もきっと呼ばれてました!」

侍「それに、落ち込む素振りも見せないってどいうことですか!?」

侍「反省してないんですか!?」

みく「そ、それは……あの……」

侍「モゴモゴ言ってても聞こえません!」

みく「ご、ごめんにゃ」

侍「私に謝らないでください! 今日呼んでくれたディレクターに謝ってください!」

みく「……」

侍「はぁ……」

侍「……」

侍「次からはちゃんとしてくださいね」スタスタ

ガチャ バタン!

みく「……」ポタポタ

みく「あれ? おかしいにゃ?」

みく「なんで怒られたくらいで涙なんか……」

みく「わ、わかったにゃ。きっと侍Pちゃんに怒られるのは慣れていないからにゃ……」

みく「前は優しく次頑張ろうって声掛けてもらってたから……」

みく「……」

みく「でも、今回はみくが悪いにゃ」

みく「侍Pちゃんが怒るのも無理ないにゃ」

みく「でも、ここ最近侍Pちゃん人が変ったみたいだなにゃ……」

みく「前みたく優しくないにゃ……」

――

事務所

美波「……」

侍「あ、はい。そうですか。わかりました」

侍「はい、はい。それでは失礼致します」

ガチャン

侍「はぁ……」

美波「ど、どうでしたか?」

侍「今回もダメでした」

美波「そ、そうですか……」

侍「……」

美波「……」

美波「あの……」

侍「どうかしましたか?」

美波「いえ……なんでもありません」

侍「美波さん。最近レッスン出てない日があるんですか?」

美波「えっと。はい。家でいろいろごたついてて」

侍「レッスン費はこっちで負担してるんですからちゃんと出てくださいね」

美波「はい……」

侍「このままだと、いつまで経っても脇役のドラマでしか出れませんよ?」

美波「すいません」

侍「今回のドラマのオーディションも受かれたはずでした」

侍「美波さん。最近覇気がないですよ」

美波「ごめんなさい」

侍「……私もあまり待ってあげられませんよ」

侍「それでは、私は一旦事務所から出ますんで」

ガチャ ドン

美波「……」

ちひろ「美波ちゃん。大丈夫?」

美波「はい……大丈夫です」

美波「ちひろさん。一つだけ聞いていいですか?」

ちひろ「なに?」

美波「あの人は……一体誰ですか?」

ちひろ「……」

美波「なーんて。馬鹿ですよね?」アハハ

美波「あれは侍Pさんで間違いないです」

ちひろ「そう、だね」

美波「なにが……変ってしまったんでしょうか」

ちひろ「なにもかも、じゃないかな?」

美波「まるであれじゃ、ロボットですよ」

美波「昔みたいな……無邪気な笑顔はどこにいったんでしょうね」

美波「今見る笑顔といったら営業スマイルだけです」

ちひろ「きっと余裕がないんだよ」





美波「可愛い仕草や行動もしなくなりましたし……」

美波「私に対する優しさも消えてるように感じます」

美波「ドラマだって例え落ちても笑顔で次に繋げようって言ってくれていたのに……」

美波「あれじゃあ、冷たいサラリーマンです」

美波「……どうしてこうなっちゃったんでしょうか」

ちひろ「美波ちゃん。侍さんは自分の道がわからなくなってるだけなの」

ちひろ「だから、見捨てないであげてね?」

美波「わかって、ますよ」

美波「それじゃあ、私は家に戻りますからこれで」

ちひろ「うん。またね」

ガチャ バタン

ちひろ(恐れてた事態が……)

ちひろ(侍さんは事務所を大きくしないとモバPさんを超えないと)

ちひろ(それに憑かれてて自分を見失っちゃってるよ)

ちひろ(分裂が……おきなきゃいいけどね)

訂正

ちひろ(って気持ちに憑かれてて自分を見失っちゃってるよ)

――

事務所

愛梨「侍Pさーん! ケーキ作ってきましたよ!」

侍「ケーキ?」

愛梨「はい! 今回も自信作です! 侍Pさん甘いケーキ大好きですよね?」

愛梨「最近、なんか気を張り詰めすぎてるような気がしてるのでこれを食べて疲れをとってください!」

侍「……」

侍「愛梨さん。ケーキ作ってる暇があったらダンスの振り付け覚えてくださいよ」

愛梨「え?」

侍「愛梨さんはちょっと努力が足りない気がします」

侍「それに、愛梨さんは三色小町の中で一番仕事が少ないんですよ?」

侍「危機感を持つべきです」

愛梨「……」

愛梨「アハハ! そ、そうですよねー!」

愛梨「アタシ、なにしてるんだろ……」

愛梨「ごめんなさい! これ、片付けちゃいますから」

侍「そうしてください」

凛「ちょっと待って」

愛梨「り、凛ちゃん? いつからいたの?」

凛「さっきからずっと」

凛「ねぇ、侍P。今の酷くない?」

侍「なにがですか?」

凛「折角侍Pを気遣って手間の掛かるケーキを作ってきたのに、どうして食べてあげないの?」

凛「まぁ、それは百歩譲っていいとするよ?」

凛「でも、あんな冷たい言い方ってないよ」

侍「私が、いつ冷たい言い方をしましたか?」

凛「今さっき」

侍「違いますよ。私は愛梨さんを思っていったんです」

侍「このままじゃ間違いなくほかの二人に置いてかれます」

凛「置いてかれてもいいじゃん。人には人のペースがあるんだからさ」

侍「そうかもしれません。しかし、それでは――」

凛「侍P、モバPを意識しすぎなんじゃないの?」

侍「……」

凛「なに焦ってるの?」

凛「まぁ、焦るのは別に構わないよ?」

凛「でも、それをアイドルにまで押し付けるのは違うよ」

侍「凛さん! 違います! 私は本当に愛梨さんを思って――!」

凛「だったら、気遣いに気付くものでしょ!」

凛「侍P、最近全然アイドルのこと見てないよ!」

愛梨「もうやめて!」

凛「……」

愛梨「凛ちゃんいいよ。アタシが悪いよ」

愛梨「だから、この話はもうお終い!」

愛梨「このケーキはアタシが帰って責任もって食べるから!」

愛梨「それじゃ!」タッタッタッタ

ガチャ パタン

凛「私も帰るから」

侍「……」

凛「最後に一つだけ」

凛「仕事以外では私に話しかけないでね」

ガチャ バタン

愛梨「人は変っちゃうもの……」

愛梨「だから侍Pさんが変っちゃうのもしかたないよ……」

愛梨「それに、時が経てばきっとまた笑ってる侍Pさんは戻ってくるよ……」

愛梨「それまで頑張らないとね!」

愛梨「ファイトぉ!」

――9月――

事務所

みく「……」

美波「……」

愛梨「み、みんなどうしたの暗い顔して」

みく「みんなに伝えたいことが今日はあるにゃ」

美波「私も、そうだよ」

愛梨「な、なんでみんなそんなに思い雰囲気なの?」

みく「みく、来月の頭から別の事務所に移籍するにゃ」

愛梨「移籍!? ど、どうして?」

みく「……ここにいるのが辛いからにゃ?」

訂正

みく「……ここにいるのが辛いからにゃ」

愛梨「つ、辛いってどうして?」

愛梨「だって、辛い要素なんてないよ?」

愛梨「凛ちゃんだって優しいし、ちひろさんだっているし」

愛梨「まゆちゃんだって面白いよ?」

愛梨「それにほら、侍Pさんもいるし!」

愛梨「移籍する必要はないよね?」

みく「その、侍Pちゃんが問題にゃ」

愛梨「え?」

愛梨「アタシや他の子といるのが嫌だ……とかじゃなくて?」

みく「違うにゃ。侍Pちゃん以外に理由はないにゃ」

愛梨「ど、どうして!? だってみくちゃんあんなに侍Pさんのこと――」

みく「みくが好きだったのは以前の侍Pちゃんだったにゃ」

みく「今の優しくない侍Pちゃんは……嫌いにゃ」

愛梨「それは……! そうかもしれないけど……」

みく「みくは自分を曲げないにゃ」

みく「だから、もう移籍は取り消さないにゃ」

みく「みんなには悪いけどごめんにゃ」

愛梨「侍Pさんには……?」

みく「ちひろちゃんには言ってるにゃ。侍Pちゃんには言ってないにゃ」

愛梨「でも、それってちょっと可哀想じゃない?」

みく「そうかもしれないにゃ」

みく「けど、みくは今の侍Pちゃんと喋るのが苦痛にゃ……」

愛梨「そう……」

愛梨「移籍しか道はないの?」

愛梨「確かに今の侍Pさんには愛着が持てないかもしれないけど」

愛梨「きっとそのうち昔の侍Pさんが戻ってくるよ?」

愛梨「人間は変っちゃうけど、頑張れば、元に戻れるから」

みく「いつっていつにゃ?」

愛梨「それは……わからないけど」

みく「みくは今すぐにでも変って欲しいにゃ」

みく「でないと……移籍をやめることは不可能にゃ」

愛梨「……」

みく「みくだってここを離れるのは嫌にゃ」

みく「でも、変った侍Pちゃんとこれ以上接するのはもっと嫌にゃ」

みく「だったら、過去を忘れないうちにどこかに行ったほうが――」

愛梨「なんで過去を見る必要があるの!?」

愛梨「未来に期待しようよ!」

みく「みくは今を生きているにゃ!」

みく「この一瞬一分一秒に生きているにゃ! 未来のことなんてわからないにゃ!」

愛梨「今を生きているんだったら、過去にすがるのはおかしいと思うよ!?」

愛梨「今を生きているんであれば目の前の状況に目を逸らさずに――」

みく「うるさいにゃうるさい! なにを言われようとみくは移籍するにゃ!」

 

美波「愛梨さん。ごめんなさい。私もこの事務所をやめるの」

愛梨「み、美波ちゃんまで!」

美波「パパの仕事の都合でね海外に行くことになったの」

みく「そ、それは一体どういうことにゃ?」

美波「私はそれについていくことになったの」

美波「最初はこっちで一人暮らしする予定だったんだけど……」

美波「私も、ついていこうかと最近思いを改めて……」

愛梨「それは侍Pさんが原因?」

美波「……」

美波「はい」

愛梨「……わかった。みんながやめるならアタシはもう止めないよ?」

愛梨「けど、アタシはなにがあってもやめないからね?」

美波「……」

みく「……」

みく「美波ちゃん日本からいなくなるのはいつにゃ?」

美波「明日の午後だよ」

みく「……わかったにゃ。じゃあ午前中には美波ちゃんの家にいくにゃ」

美波「うん……わかった」

愛梨「……」

ガチャ ドン

侍「おはようございます」

みく「みくはそろそろ帰るにゃ」スタスタ

美波「私も……」スタスタ

侍「どうしたんですか? 二人とも?」

みく「お世話になったにゃ」ペコリ  スタスタ

美波「お世話になりました」ペコリ  スタスタ

侍「? それは一体どういう意味ですか?」

ガチャ パタン

愛梨「あ! 侍Pさん! おかえりなさい!」

愛梨「コーヒー飲みます? あ! でも苦手でしたよね?」

愛梨「他の飲み物ないんで買ってきますね!」タッタッタ

侍「あの……」

ガチャ パタン

侍(泣いてた?)

ガチャ パタン

ちひろ「おは――って、どうして扉の前に立ってるんですか?」

侍「あ、いえ、なんでもないです」

ちひろ「そうですか」

ちひろ「侍さん。ちょっとソファに座ってもらってもいいですか?」

ちひろ「大事な話があるので」

侍「はい?」

ちひろ「とりあえずは座ってください」

侍「わかりました」

ちひろ「まず……ですけど」

ちひろ「みくちゃんが他の事務所に移籍することが決まりました」

侍「ど、どういうことですか!?」

ちひろ「なにも隠せずに言うと侍Pさんが原因です」

侍「わ、私の一体なにが悪かったんですか?」

ちひろ「……変ってしまったことです」

ちひろ「もちろん変ることが悪いとはいいません」

ちひろ「ただ今の場合だと……」

侍「私はどこも変っていません!」

侍「そりゃ、口調は変りましたけど!」

ちひろ「……はぁ」

ちひろ「気付いていないんですね」

侍「な、なににですか?」

ちひろ「ちなみに、美波ちゃんもやめることが決定しました」

侍「え?」

ちひろ「これはおうちの事情のようです」

ちひろ「どうやら海外に行ってしまうようで」

侍「でも、美波さんは19歳ですし! 一人暮らしをして!」

ちひろ「……やめるそうです」

侍「そんな……」

侍「私のどこがいけなかったんだ……」

侍「なんでこんなにも頑張っているのに誰もついてきてくれないんだよ!」

侍「モバPさんに負けじと頑張っているのにどうして……」

侍「どうして誰も理解してくれないんだ!」

ちひろ「そう言っている間は誰にも理解されませんよ」

侍「ち、ちひろさんまで……」

ちひろ「強いあなたはどこに消えてしまったんでしょうね」

ちひろ「すいません。優しくしてあげたいんですけどその気が起きません」

侍「ちひろさん教えてください。私のなにが――」

ちひろ「甘えないでください。私は知りません。答えは自分で見つけるものです」

侍「どうして教えてくれないんですか!? モバPさんなら――」

ちひろ「モバPさんはここにはいません! アメリカにいるあの人をここに連れてこないでください!」

ちひろ「侍さんはモバPさんに囚われすぎです!」

ちひろ「あの人のように完璧にこなす必要はないんです!」

ちひろ「いや、モバPさんも完璧ではありませんでした!」

侍「……」

ちひろ「おしゃべりし過ぎました。あくまでも私の意見です。答えはあなたの中にあります」

ちひろ「それじゃあ、後はあなたで考えてください」スタスタ

ちひろ(侍さんが変ってしまった原因は間違いなくモバPさん)

ちひろ(そこを改善すればたぶん昔の侍さんは戻ってくるはず)

ガチャ バタン

侍「……」

―――



保育園前

侍「……」スタスタ

侍(モバPさんに囚われすぎ……か)

侍(そんなつもりはないのに……)

侍(それより、変ってしまった私のところ)

侍(一体、どこが変ってしまったというんだ)

ワイワイ ガヤガヤ

侍「ん?」

侍(子供がたくさん……保育園か)

侍(こんなところに私の探しているものはない)

?「どうしたの~? そんなに怖い顔して!」

?「なにか困ったことがあるならありさおねえさんに言ってみてねー♪」

侍「……?」

侍「あの、すいません。どちら様でしょうか」

亜里沙「おねえさんの名前は持田亜里沙って言います!」

亜里沙「ありさ先生でいいですよ♪」

侍「えっと」

亜里沙「あぁ、ここの保育園の保母さんをしていまーす」

侍「ありさ……先生はどうして私に声を掛けたんですか?」

亜里沙「最初見たときは、不審者かと思ったんです」

亜里沙「でも、やけに困ったような、怖いような顔をしていたのでつい話しかけちゃいました」

亜里沙「どうか、したんですか?」

侍「あぁ、いえ。見ず知らずの人に喋るようなことではないですよ」

亜里沙「シクシク……ありさ先生じゃ頼りない?」

侍「……見ず知らずだからこそ話してみるのもいいかもしれませんね」

侍「実は仕事先で嫌われてしまいまして」

侍「どうやら原因は私が変ってしまったことのようなんです」

侍「でも、どこが変ってしまったのか分からないんです」

亜里沙「そうなんですかー……」

亜里沙「ありさ先生は以前の君を知らないからわからないですね」

侍「そう、ですよね」

亜里沙「でも、一つだけ言える事はありますよ?」

侍「え!? なんですか?」

亜里沙「笑顔が……足りない気がします」

侍「笑顔?」

亜里沙「はい。先生が診断するに笑顔不足ですね」

侍「え、笑顔不足……」

亜里沙「だって、さっきからありさ先生の目の前で笑顔作ってないじゃないですか」

亜里沙「だから、ここ最近も全然心からの笑みなんて作ってないのかなー、なんて」

侍「なるほど」


園児「ありさせんせー」

亜里沙「はーい♪」

亜里沙「それじゃ、子供に呼ばれてしまったので」

亜里沙「今度はありさおねえさんと一緒におうたでも歌いましょうねー♪」

侍「はい!」ニコ

亜里沙「あ、その笑顔とっても可愛いです」

亜里沙「じゃ、また今度」スタスタ

侍(そういえば、ここ最近みんなの目の前で笑顔になったことなんて一度もなかったな)スタスタ

侍(笑顔を作るときは大体仕事先の人だけだったし……)

侍(ちょっと前まではよく笑顔だったのに……)

侍(変わってしまったのはここか……)

侍(でも、ここだけじゃないはずだ)

侍(一度見つかればそれは連鎖のように広がるはず……)

侍(過去を思い出せ)

侍(今の俺となにが違うのか)

まゆ「うふ」

侍「おわぉ! ま、まゆさん?」

まゆ「困ってたみたいなんで助けに来ました」

侍「な、なんで知ってるんですか?」

まゆ「まゆは物知りですからー」

まゆ「昔の自分がわからない」

まゆ「そうじゃないんですかー?」

侍「……はい。そうです」

侍「でも、どうしてわかったんですか?」

まゆ「モバPさんが予想してたんですよ。おそらくこういう展開になるだろうって」

まゆ「だから……これを読んでみて下さい」

侍「これは?」

まゆ「侍Pさんが道に迷ったときに渡すようにモバPさんに渡されていたものですよ」

侍「で、では早速読んでみます」

今日はここまで

実はリアルで大変忙しくて更新が難しい状態です。

次書けるのはたぶん8月の後半くらいです。

気長に待っていてください。

たまたま時間が空いたので投下します。

『自分を見失うな』

侍「……これ、だけですか?」

まゆ「はい。たぶん、ヒントなんだと思います」

侍「ヒント?」

まゆ「モバPさんは侍Pさんが壁にぶち当たることをわかっていました」

まゆ「しかし、モバPさんが侍Pさんに答えをあげてしまうのは簡単です」

まゆ「けど、自分で気付かない限り進歩はありません」

まゆ「だからモバPさんはこんな回りくどいことをしたんだと思います」

侍「……」

侍(ちひろさんも同じようなことをいってたな……)

侍「私は自分を見失ってなんかいません」

侍「私はただモバPさんに負けないようにしているだけです」

まゆ「そうなんですかー? でも全然ダメダメですよ?」

侍「な! ダメなわけないですよ! 現に仕事の本数だって減っていません!」

まゆ「確かにそうですけどー。侍Pさんは一体なにがしたいんですか?」

侍「それは勿論プロダクションを大きくしてモバPさんのような――」

まゆ「馬鹿なこと言ってると怒りますよぉ?」ニヘ

侍「馬鹿なことなんて言ってません!」

まゆ「侍PさんはアイドルじゃなくてモバPさんを見過ぎています」

侍「当たり前じゃないですか! だって私はモバPさんに事務所を任せれているんですよ!?」

まゆ「初心忘れるべからず。ですよぉ?」

侍「なにを言ってるんですか?」

まゆ「ここまで言ってもだめなんですかぁ」

まゆ「わかりました。まゆについてきてください」

侍「……はい」

――

元モバP自宅 現侍自宅

まゆ「確かここに……ありました」

侍「それは?」

まゆ「去年のクリスマスのときの映像です」

侍「そんなものをどうするんですか?」

まゆ「見るんですよー」

侍「はい? 見たところでなにも変りませんよ」

まゆ「見るんです」

侍「……わかりました」

まゆ「じゃあ、再生です」ポチ

再生中

侍(こんなのを見て一体どうなるっていうんだ)

侍(確かに私は昔と変ってしまったみたいだけどこんなのを見て今の私が変るわけがない)

侍(大体、みんなどうしたっていうんだ)

侍(モバPさんに追いつこうと必死で頑張っているのに……)

侍(どうして誰もついて来てくれないんだ)

侍『おー、美味でござる!』

愛梨『本当ですか!? 嬉しいです!』

みく『それじゃあ、みくが食べさせてあげるにゃ!』

美波『ちょっとみくちゃん!?』

ワイワイガヤガヤ

侍(……)

侍「みんな……笑顔だ」

まゆ「けど、今はそんなことないですよね?」

侍「いや、そんなはずは……! あれ?」

侍(ここ最近。みくさんや美波さんの笑っている顔は見たことが……ない?)

侍(愛梨さんのもどちらかというと作っている笑顔だった……)

侍(いや、それ以前に私は『おなごには優しく』ができていなかったんじゃないか?)

侍(みくさんが現場で失敗してしまった日。私はどんな態度を取った?)

侍(……)

侍(美波さんがドラマに落ちた日。私はなんて言った?)

侍「……」

侍(愛梨殿が拙者にケーキを作ってきてくれたときはどんなことをした?)

侍「……拙者は」

侍「拙者はなに故おなごにやさしくできていなかった……」

侍「それに、なに故みんなの心がわかっていなかったのだ……」

まゆ「たぶん、みくさんたちのことをしっかり見ていなかったからだと思います」

侍「……そうでござるな」

侍「拙者、モバP殿を追いかけている最中、もっとも重要なことを忘れていたでござる」

侍「第一に、拙者の目標は、事務所を大きくすることではなく」

侍「自分の理想のアイドルを作り上げ、みく殿、美波殿、愛梨殿をトップアイドルにすることでござる」

侍「拙者はモバP殿を追っかけすぎて大事なことを……」

侍「拙者は自分を完全に見失っていたでござる」

侍「事務所を大きくしてモバP殿に負けないように頑張っていたでござるが……」

侍「それに囚われすぎていてどうやら拙者は死んでしまっていたようだ」

ガチャ パタン

侍「誰でござる?」

ちひろ「私です」

侍「ちひろ殿?」

ちひろ「侍さん。あなたはあなたです」

ちひろ「等身大のあなたでも十分、うちの事務所はやっていけます」

ちひろ「変に完璧を目指そうとしないでください」

ちひろ「って、もう今のあなたなら言わないでもわかっていますよね?」

侍「……御意」

侍「拙者は、ありのままの己でこれからやっていくでござる」

侍「モバP殿にはモバP殿の。拙者には拙者のやり方があるでござる」

侍「おふた方。ご迷惑をお掛け申した。拙者はもう大丈夫でござる」

ちひろ「私は大丈夫です。過ぎたことは気にしないタイプですから」

まゆ「まゆは最初から気にしてませんよー」

ちひろ(それはそれでどうだろう……)

侍「……ちひろ殿。まゆ殿。拙者これから凛殿、みく殿、美波殿、愛梨殿に謝ってくるでござる」

侍「それで、都合がいいことはわかっているでござるが」

侍「みく殿、美波殿を引き止めたいと思うでござる」

侍「もし、無理でも拙者の中でしっかりとけじめをつけたいでござる」

侍「彼女達を悲しませてしまったことは事実でござる。取り消すことは出来ないでござるけど」

侍「拙者の我侭でござるが、しっかりと謝罪をしたいでござる」

ちひろ「そうですか。だったらまずは凛ちゃんからですかね」

ちひろ「今日は時間も遅いですし、ここから一番家が、近い凛ちゃんから攻略するのがいいですよ」

侍「御意」

侍「じゃあ、凛殿の家に行く前に一つだけお願いがあるでござる」

ちひろ「なんですか?」

侍「気合を入れるために拙者の顔を叩いてほしいでござる」

ちひろ「えぇ!? いいんですか?」

侍「御意。そうでもしないと腑抜けてしまった拙者に気合は入らぬでござる」

ちひろ「わ、わかりました。手加減はしませんよ?」

侍「無論」

ちひろ「で、では」ガシ

侍「ん? なに故拙者の肩を左手で掴む必要――」

ちひろ「ふ!」腹パン 

侍「グヘ!」

侍「……うぅ」

ちひろ「こんなんで膝を突いてちゃだめですよ?」ニッコリ

侍「か、顔でござる。拙者は顔を要求したでござる」

まゆ「侍Pさん顔真っ青ですよ?」

ちひろ「じゃあ、次はまゆちゃんの番だね!」

まゆ「まゆですかー? わかりましたー」

侍「な!? も、もう十分でござる!」

まゆ「いきまーす」ブルン

侍「アウ!」バダン

ちひろ「おぉ……まさかまゆちゃんにこんな回し蹴りがあるとは……」

まゆ「ちゃんと顔を狙いましたよ」ニヘ

ちひろ(ふー、スッキリした。気にしてないって言ったけどアイドルのメンタルケア意外と苦労したからね)

ちひろ(いいストレス発散になった!)

侍「で、では……」フラフラ

侍「行ってくるでござる」フラフラ

ちひろ「いってらっしゃーい♪」

ガチャ パタン

――

凛、自宅

凛「はぁ……」

凛(本当にあの二人どうにもならないのかな……)

凛(そりゃ、今の侍Pには問題はあるけど)

凛(人間、根の部分は変らない生き物だし)

凛(時間が経てば余裕も取り戻していつもの侍Pに戻るはずなんだけど)

凛(こんなこと言っても二人はもう耳貸してくれないよね)

凛(移籍に退所……)

凛(モバP寂しがるだろうな……)

ピンポーン

凛「はーい」

凛(親のいない日に限って……)

ダッタッタッタ

ガチャ パタン

凛「はい」

クリーム「わん!」

凛「クリーム?」

犬の着ぐるみを来た男「……」

凛「」

凛(犬の着ぐるみ着た人が……クリームと一緒に門の前で正座してる……)

凛「……侍Pだよね」

男「!」ブルンブルン

凛「違うの?」

男「」コクコク

凛「……いや、ばれてるから」

侍「……」

凛「ふざけてる?」

侍「!」ブンブン

凛「どうしてそんな格好してるの?」

侍「拙者とは話したくないと申しておった故」

侍「いろいろと迷惑掛けたことを謝りたかったでござるが」

侍「面と面では話してもらえないと思ったでござるから」

侍「このような物を被って登場したでござる」

凛「……声が篭って聞こえにくいから上、取ってもいいよ」

侍「御意」スポン

凛「髪型と口調。元に戻したんだね」

侍「拙者のスタイルはこれでござる」

凛「そう……」

凛「それから、なんで頬に痣?」

侍「気合の表れでござる」

凛「意味わかんないから」

凛「クリームを連れて来た理由は?」

侍「……凛殿が怖くてクリームに同席してもらったでござる」

クリーム「わん!」

凛(侍Pのほうが何十倍も怖いって)

凛「はぁ」

凛「私は別に謝ってもらおうなんて思ってないから」

凛「直接的な被害を受けたわけではないしね」

凛「全力で謝るならあの三人にしてよね」

侍「しかし――」

凛「私はいいから。それにもう気付いたんでしょ? 目見ればわかるよ」

凛「なら、いいよ」

侍「ぎょ、御意」

凛「けど、一つだけ約束して」

凛「必ずあの二人を連れ戻すって」

侍「そ、それは……拙者に出来るかどうかは……」

凛「返事!」

侍「ぎょ、御意! 絶対連れ戻してみるでござる!」

凛「うん。約束だよ」

凛「じゃあ、今日はもう遅いから明日行動してよ?」

侍「わかっているでござる」

凛「私はもう家に戻るから。また今度」

侍「夜分に申し訳なかったでござる」

ガチャ パタン

――次の日朝――

愛梨、自宅アパート

愛梨(美波ちゃん、今日行っちゃうんだよね……)

愛梨(あー、もう。どうしたらいいんだろう)

愛梨(できることなら行ってほしくないな……)

愛梨(みくちゃんも移籍しないでほしいな)

愛梨(このまま、三色小町は無くなっちゃうのかな……)

愛梨(でも、それは寂しすぎるよ)

愛梨(折角侍Pさんと一緒になってやってきたものなのに)

愛梨(侍Pさんはアタシのお父さんみたくちょっと道に迷ってるだけ)

愛梨(時間が経てば戻ってくる。なのに……)

愛梨「……」

愛梨(とりあえずアタシも美波ちゃんのところに行こうかな)

愛梨(けど時間的に厳しいから空港に行ったほうが無難だよね)

愛梨(もう行っちゃうのは取り消せないだろうし……)

愛梨(最後くらい楽しく見送りたいな)

愛梨(侍Pさんは……美波ちゃんのことを考えると呼ばないほうがいいよね)

<アイリドノー

愛梨「え? 外からアタシを呼んでる?」

愛梨「だ、誰だろ」ガラガラ

侍「あ、愛梨殿! 拙者の話を聞いて欲しいでござる!」

愛梨「さ、侍Pさん!?」

侍「まっことすまなかったでござる!」ドゲザ

愛梨「わわわ! 急に道路の真ん中で土下座しないでください!」

侍「拙者は愛梨殿をよく見ていなかった!」

侍「そして、愛梨殿がどんな思いをしていたのかも気付かなかったでござる!」

侍「さらには、拙者、愛梨殿の思いやりをゴミ箱に捨てるような扱いをしてしまった!」

侍「これは恥ずべき事でござった!」

侍「許してくれとは申さぬ! しかし、拙者に謝らせてはくれぬか!?」

侍「悲しませて、まことに申し訳なかった!」

愛梨「き、近所迷惑ですから! アタシよりもご近所さんに謝ってください!」

愛梨「ちょっと待っててください下まで行きますから!」

………

愛梨「ど、どうしたんですか?」

侍「……すまぬ」ドゲザ

愛梨「いや、あの。あんまり土下座は使わないでください」

侍「ケーキの一件のときはまことに申し訳なかった」

侍「拙者の配慮が行き届いていなかったでござる」

侍「折角も愛梨殿が作ってくれたケーキを拙者は……」

侍「食べもせず、さらには説教をしてしまった」

侍「その説教もデリカシーに欠けるものだった……」

侍「すまぬ……すまぬ」

愛梨「侍Pさん……」

愛梨「もう、大丈夫なんですね!」

侍P「え?」

愛梨「侍Pさんはちょっと風邪を引いてただけですよ」

愛梨「それが治った。それだけのことです」

愛梨「だから、許すとか許さないとかじゃなくて」

愛梨「しょうがなかったことなんです!」

侍「いや、しょうがないで済まされるような――」

愛梨「いいんです。だから謝らないでください」

愛梨「アタシは侍Pさんがこうして元に戻ってくれただけで幸せですから……」ニコ

愛梨「過去は振り返りません! 今こうしてアタシは素直に笑っています」

愛梨「後ろにはなにもありません。あるのは前だけです」

愛梨「だから、もういいんです」

侍「……かたじけない」

愛梨「それよりも! 美波ちゃんが今日の午後に海外に飛んじゃうみたいなんですよ!」

侍「今日でござるか!?」

愛梨「はい! だから、急がないとやばいです!」

愛梨「えっと……確かモバPさんがアメリカに行った空港だったと思います!」

侍「では、急いで――あ」

愛梨「どうかしましたか?」

侍「拙者、財布を家に忘れてきてしまったでござる」

愛梨「な、ならアタシ貸しますよ!」

侍「いや、しかしそれはプロデューサーとして」

パカッラパカッラパカッラ

侍「うん? 馬の蹄が地面を蹴る音でござるか?」

馬「ヒヒーン!」

侍「おぬしは!? ミスターブシドーではないか!?」

馬「ヒヒーン」

侍「なに? 拙者が困っているのを感じ取って厩舎から飛び出してきた?」

侍「確かに拙者は困っているでござる」

馬「ブルルン」

侍「う、うむ。実は遠くに行きたいのだが足がないのだ」

馬「ヒヒーン」

侍「なら、俺を使え? いいでござるか?」

馬「ヒヒン」

侍「気にするな……と申すのか?」

侍「……かたじけない」

侍「この恩は必ず返すでござる」

侍「愛梨殿。足を調達できたでござるから今から行ってくるでござる」

愛梨「えぇ!? この馬で行くんですか!?」

愛梨「一体何十キロあると思って――」

侍「拙者とブシドーとのコンビに不可能の三文字はないでござる!」

侍「いくでござるよー!」

馬「ヒヒーン!」

パカッラパカッラパカッラ

愛梨「い、行っちゃった……」

愛梨「……」

愛梨「侍Pさんなら大丈夫」

愛梨「信用しますからねー!」

そしてここまで

空港


美波「……」

美波父「どうしたんだい? 浮かない顔しちゃって」

美波「うんうん。なんでもないの」

父「そんなことないだろう? やっぱり侍君?」

美波「……うん」

父「まぁ、人は変ってしまうものさ」

父「けど、好きな人が変ってしまうのは辛いね」

美波「ち、違うよ!」アワワ

父「ハッハッハ、パパは別に構わないんだよー?」

美波「え!?」

父「あれ? 違うんでしょ?」

美波「もう! からかわないでよ!」

父「ごめんごめん」

父「……」

父「けど、本当にいいの?」

父「向こうにいったら当分の間は帰れないんだよ?」

美波「いいよ。私が決めたことだから」

父「そう……」

父「今は侍君のことは好きじゃないの?」

美波「……わからない」

父「じゃあ、美波は侍君のどんなところが好きだったの?」

美波「優しくて……強くて格好良くて……けど、可愛いところもあるところ……かな?」

父「今の侍君は、優しくなくて強くもなくて、可愛くもない?」

美波「うん。そんな感じかな?」

父「じゃあ、もう好きな要素はどこにもないのかー」

美波「……でも。内心ではまだ好きなのかも」

父「どうしてだい?」

美波「そのくらい侍Pさんが素敵な人だったから……かな?」

美波「って、言ってて恥ずかしいよね」

美波「けど、向こうに行ったらきっと踏ん切りもつくよ」

父「なかなか寂しい恋の終わりだね」

美波「そうかもね」

父「初恋がそんな終り方か……」

美波「ど、どうして初恋って――!」

父「不思議なものでね。自分の娘息子のはわかるんだよ」

父「血が繋がっているから……なのかどうかはわからないけどね」

父「それに……」チラ

父「初恋は実らないって言葉はあるけどそんなことはないんだよ」

父「向こうにあるテレビをみてご覧?」

美波「え?」

ニュースキャスター『ただいま入ったニュースです。今日の午前○○過ぎから、一般道を馬で走っている男が現れました。中継でお伝えします』

LIVE

一般道

サイレンの音

無数の白パトカー

パカッラパカッラパカッラ

警官『そこの男ー! 止まりなさい!』

侍『ふはは! 拙者とブシドーに追いつける者はこの世に存在せぬ!』

馬『ヒヒーン!』

侍『滾る滾るでござる!』

侍『今のブシドーと拙者は何人たりとも止めることは出来ぬ!』

警官『止まれって言ってるだろ!』

侍『すまぬ! 拙者には会わねばならぬ人がいるのだ!』

侍『もしも邪魔するのであれば!』

侍『力付くにでも突破するでござるよ!』

侍『ブシドー! 飛ばすでござる!』

馬『ヒヒーーーン!』

ニュースキャスター「なお――」

父「ハッハッハ。相変わらず面白いことするねー」

美波「え……?」

父「誰に会うために……あんな無茶してるんだろうね」

美波「わた……し?」

父「さぁ?」

美波「……ねぇパパ。お願いがあるの――」


8月の後半に書く(大嘘)

―――

空港

侍「くぬぬ。パトカーを巻くのに少し手間取ったでござる」

馬「ヒヒン」

侍「ブシドー! 助かった! 後はここにいれば警察が回収してくれるとおもうでござる!」

馬「ヒヒン」

侍「困ったときはお互い様?」

馬「ヒヒヒヒン」

侍「まぁ、そんなことはどうでもいい。女をあまり待たせるものじゃない?」

侍「……そうでござるな」

侍「行ってくるでござる!」タッタッタッタ

馬「ヒヒン」(手間の掛かる男だ……)

―――

ガヤガヤガヤ

侍「美波殿ー美波殿ーどこでござる!?」

侍「く……どうして人が大層いるでござるか!」

侍「これでは見つけられぬでござる!」

侍「おーい! 美波殿ー!」

一時間後

侍「時間が時間がないでござる!」

侍「ど、どうすれば……!」

侍(もしかしたらもうすでに出国……)

侍(いや、希望を捨ててはダメでござる)

侍「そうでござる! 拙者うっかりしていたでござる!」

侍「電話をすれば早いでござる!」

侍「電話をして、居場所を聞き出すでござる」

侍「こういうときに便利でござるなー」

トゥルルル

オカケニナッタオデンワハ

侍「む? もう一度」

トゥルルル

オカケニタッタ

侍「つ、繋がらないでござる……」

侍「もしや、もう飛行機の中で電源を切っている……」

侍「否! 諦めるなでござる!」

侍「まだまだ、探し足りないでござるよ!」

侍「そうでござる。人に尋ねてみるでござる」

侍「すまぬ。ちょっとよろしいか?」

男「すいません。今急いでいるんで」

侍「……」

侍「すまぬ。ちょっとよろしいか?」

女「すいません。飛行機がもう……」

侍「……」

侍「すま――」

男女カップル「急いでますんで」

侍「……」

侍「みな、時間に追われているのだな……」

侍「っと! 落ち込んでいる暇は無かったでござる!」

侍「美波殿ー!」

……

夕方。

侍「……」

侍「もうすぐ、日が落ちそうでござるな……」

侍「おそらく、もう美波殿はいないでござる」

侍「最後に、謝りたかったでござるなー」

侍「でも、美波殿はもう拙者の顔もみたくないのかもしれないでござる」

侍「だったら、こっちのほうがよかったのではないだろうか」

侍「あ、凛殿との約束を破ってしまったことになるでござるな」

侍「拙者は約束ひとつ守れないような男であったか……」

侍「……」

侍「拙者は、最低でござるな」

侍「おなごには優しくといっておきながら……」

侍「最終的には自分がおなごを傷つけているではないか」

侍「まっこと情けない」ポタポタ

侍「己に対する怒りで涙まで出てきたでござる」ポタポタ

美波「侍……Pさん?」

侍「え……?」ゴシゴシ

侍「み、美波殿?」

美波「侍Pさん!」ガシ

侍「おぉっと! きゅ、急に抱きつくのは危ないでござる」

美波「探したんです……よ?」ポタポタ

侍「いや、探していたのは拙者のほうでござる」

美波「テレビで侍Pさんが馬に乗っているのを見たんです……」

美波「それで……もしかしたら私のところに来てくれるのかな? って思ったんです」

美波「けど……なかなか来ないので……」

美波「違かったのかな、って思ったりして……」

美波「さっきまでずっと不安だったんです」

美波「それで、もしかしたら私の居場所がわからな、くて困っているのかもって探してたんですよ?」

侍(なるほど。二人とも動き回っているから、なかなか見つからなかったでござるか)

侍「美波殿。飛行機は?」

美波「パパに言って私だけ、直前で行かないことにしたんです……」

侍「そうだったでござるか……」

侍「とりあえず、一旦拙者から離れて――」

美波「だめです! 今離れたら泣いてる顔が見られちゃう……」

侍「ぎょ、御意。ではこのままで」

侍「拙者、美波殿に謝らねばならぬことがあるでござる」

美波「……」

侍「拙者は美波殿を傷つけてしまった」

侍「ドラマが落ちた日。あのような言い方をしなくてもよかったはずでござった」

美波「はい」

侍「そのほかにも拙者は美波殿に酷いことをしてしまった」

侍「失望……してしまったでござるな?」

美波「……確かにそうです」

侍「都合が良い事はわかっているでござる」

侍「だから、許してくれとは申さぬ」

侍「しかし、拙者に謝らせてはくれぬか?」

美波「……はい」

侍「かたじけない」

侍「美波殿……まっこと、申し訳なかった……」

美波「……私が傷ついてしまったのは事実です」

美波「例えあの言葉が正論であっても……」

美波「けど、私も侍Pさんに謝らないといけないことがあります」

侍「な、なんでござるか?」

美波「私は侍Pさんのことを信頼出来ていませんでした」

美波「どうせ、このまま一緒にいても侍Pさんは今のままだって……」

美波「愛梨さんは侍Pさんが戻ってくることを信じていました」

美波「でも、私は信じずに逃げようとしてしまいました……」

美波「だから、謝りたいんです。いいですか?」

侍「御意」

美波「すいませんでした」

美波「……」ス

侍(む、離れたでござる)

美波「これで、お相子ですね♪」ニコ

侍「つまり……それは……」

美波「我侭言ってすいません。私をもう一度だけアイドルにしてくれませんか?」

侍「ま、まことでござるか!?」

美波「はい!」

侍「では、事務所に戻ってくれるでござるな!」

美波「はい♪」

侍「……しかし、拙者がしたことは許されぬ」

侍「それに、また同じように美波殿を傷つけてしまうかもしれないでござるよ?」

美波「お相子って言ったじゃないですか」

美波「だから、もう以前の話は止めにしませんか?」

侍「かたじけない」

美波「でも……」

侍「浮かない顔をしてどうしたでござる?」

美波「日本に残るのはいいんですけど」

美波「私、家無し状態なんです」

美波「突然行くのやめちゃったから……」

侍「それは、難儀でござるな……」

美波「ど、どうしましょう?」

美波「最悪事務所で寝泊りしたり……」

侍「いや、その必要はないでござる」

美波「え……? どうしてですか?」

侍「幸い、モバP殿から受け継いだ家があるでござる」

侍「あそこは一人で住むにはちと、広すぎる故、美波殿一人くらい大丈夫でござるよ」

美波「え、えと。それはつまり……」

侍「拙者の家で寝泊りすればいいでござる」

美波「そ、それはつまり! あれですよね!?」

侍「そ、そんなに顔を近づけてどうしたでござるか?」

美波「い、いえ!」

美波(同棲ってことでいいんだよね! 同棲だよね!)

侍「美波殿。これからもよろしくお願いいたす」

美波「……」ポワポワ

侍「?」

美波「……」ヨダレ

侍「み、美波殿!?」

美波「は!?」

美波「す、すいません!」

美波「え、えーっと。これからもよろしくお願いします」ペコリ

侍「御意」

侍「後はみく殿でござるなー」

美波「……たぶん、みくちゃんは最難関だと思いますよ」

侍「どうしてでござるか?」

美波「頑固ですし、私が言うのは気が引けますけど」

美波「子供の部分もあって気持ちの整理が下手ですから、説得になかなか応じないと思いますよ」

侍「そうでござるか……」

侍「しかし、やってみなければわからぬでござる」

侍「当たって砕けろ。でござる」

侍「とりあえず、今日は遅いでござるから明日みく殿のところにいくでござる」

侍「美波殿。一緒に来るでござる」

美波「そ、それはやっぱり侍Pさんの家ですよね?」

侍「そうでござる」

美波「は、はい! 喜んで行きます!」

美波(さ、侍Pさんと同じ屋根の下……)ドキドキ

――次の日――

侍自宅

侍「それではいってくるでござる」

美波「はい♪ 気をつけてくださいね」

侍「御意」

侍「では」

美波「いってらっしゃ~い」

ガチャ バタン

美波(なんだか新婚さんみたい……)

美波(幸せ……)

美波「でも……」

美波「期待してたわけじゃないけど、夜はなんにもおこらなかった」シュン

みく自宅

みく(懐かしいにゃー。侍Pちゃんと一緒に撮った写真)

みく(……)

みく(みくも侍Pちゃんも笑顔にゃ)

みく(まぁ、もう昔のことにゃ)

みく(今の侍Pちゃんは侍Pちゃんじゃないにゃ)

みく(優しくないし……怒るし……怖いにゃ)

みく(侍Pちゃんは帰ってこないにゃ)

みく(なら、あそこの事務所を去ったほうがましにゃ)

みく(これは、決めたことにゃ)

みく(侍Pちゃんに何を言われようが、変える気はないにゃ)

みく(あんなやつなんて、みくはもう知らないにゃ)

みく「……なんだか気分が落ち込んできたにゃ」

みく「散歩でもして気分転換にゃ!」


……

みく自宅前

みく「……」

侍「……あ」

みく「にゃ?」

侍「みく……殿?」

みく(侍Pちゃん?)

みく「……誰にゃ」プイ

侍「え?」

みく「見ず知らずの人とは喋らない様にしてるにゃ」スタスタ

侍「みく殿……」

侍「ちょっと待ってほしいでござる」

みく「……!」タッタッタッタ!

侍「あー! まつでござる!」

みく「ついてきてほしくないにゃ!」タッタッタ

みく「侍Pちゃんなんて人知らないにゃ!」

侍「思い切り呼んでいるでござるよ!?」

みく「し、知らない……にゃ!」

侍「おわ!」

みくがなにかを拾って投げつけてきた!

>>785

侍「む……?」ピト

みく(にゃー! 大切な写真を間違えて投げてしまったにゃ!)タッタッタ

みく(で、でもこのまま立ち止まるのは……)

みく「……」

みく(あ、あんな写真なんかいらないにゃ!)

みく(気にせず走るにゃ!)タッタッタ

侍「この写真……」

侍「みく殿ー!」

みく「」タッタッタ

侍(まだ、関係は修復できそうでござるな!)タッタッタ

侍「みく殿! 待つでござる!」

みく「待てといわれて待つ人間はいないにゃー!」

侍「拙者、みく殿に謝りたいことがあるでござる!」

みく「き、聞く耳持たずにゃ」

みく「今の侍Pちゃんに謝られてもみくは嬉しくないにゃ!」

みく「みくは……みくは前の侍Pちゃんと話したいにゃ!」

侍「拙者は正気に戻った……はず。でござる!」

侍「おそらく以前の拙者でござるよ!?」

みく「し、信用しないにゃ!」

侍「ぐぬぬ……」

みく「もうついてこないでほしいにゃ!」

侍「じゃ、じゃあ! この走った状態で謝らせてほしいでござる!」

侍「拙者、みく殿に――」

みく「知らない知らない!」

みく「みくは聞こえてない!」

みく「もうみくは決めたの! 事務所やめるの!」

みく「侍Pちゃんとはもう今後一切関わらないの!」

みく「だから……戻ってたとしてもみくはあの事務所に戻らないよ!」

侍「みく殿……」

訂正

みく「だから……侍Pちゃんが戻ってたとしてもみくはあの事務所に戻らないよ!」

侍「で、では。それで構わないでござる!」

侍「でも、拙者はみく殿を傷付けてしまった! そのことだけはちゃんと謝りたいでござる」

みく「いらない!」

みく「謝らないで!」

みく「もうみくに関わらないでよ!」

みく(今の話を聞いてる限りだと、たぶん侍Pちゃんは元に戻ってる……)

みく(けど、みくはもうあの事務所から去るって決めた!)

みく(謝られたら……その決心が揺らいじゃう!)

侍「変に意地を張る必要はないでござるよ!」

みく「意地なんか張ってないよ!」

みく「侍Pちゃんはみくのことなんてなんもわかってない!」

みく「近づかないで! もうみくの前に現われないで!」

みく「」タッタッタッタ

侍「む?」

侍「み、みく殿! とまるでござる!」

みく「だから、止まらないって――」

侍「違うでござる! 目の前からトラックが!」

みく「?」

クラクションの音

みく「え」

侍「く!」ダッタッダッタッダ

トン

ドゴン!

みく「いた!」ドシ

みく「……」

みく「え?」

みく「侍Pちゃん?」

みく(じゅ、十字路のど真ん中付近で確かみくは後ろから来た侍Pちゃんに押されて……)

みく(そのままみくの代わりにトラックに引かれて……)

みく(きっと見晴らしが良かったから後ろから来た侍Pちゃんはトラックが来ていることに気付いてた……)

みく(けどみくは無我夢中で走ってたから気付かず……)

侍「……」グッタリ

みく「侍Pちゃん!」タッタッタ

みく「だ、大丈夫!?」

みく「ち、血が出てるよ!」

侍「……」

みく「へ、返事しないよ……」

侍「む……?」

みく「侍Pちゃん!」

みく「よ、良かったまだ意識が……」

侍「みく……殿」

みく「な、なに!?」

侍「すまぬ……」

侍「拙者はみく殿の気持ちがわかって……なかった」

みく「……」

侍「優しく……出来なかった」

みく「いい、もういいよ」

みく「みくのほうもわるかったよ……」

みく「変な意地張って……」

みく「元に戻った侍Pちゃんに、関わってほしくないなんて本当は思ってないよ?」

みく「侍Pちゃんが戻ったなら、今の事務所もやめたくない……」

みく「侍Pちゃんとまた一緒に過ごしたいよ……?」

侍「そうで……ござるか……」




侍「なら、また一緒に写真をとるでござる……」

侍「仲直り……の、印でござる」

みく「う、うん。わかった」

侍「良かった……拙者は、やり直すことが出来るでござるか……」

みく「そ、そうにゃ! なにもかも元通りにゃ!」

侍「そうか……まっこと、良きことでござるな……」

侍「……」グッタリ

みく「さ……侍Pちゃん?」

みく「あ……」

みく「え……」

みく「なんで、動かないの……」

みく「侍Pちゃん!」

みく「起きて! 返事して!」 

―――

手術室前

ちひろ「……」

凛「……」

まゆ「……」

みく「全部……全部みくの責任……」ポタポタ

みく「みくが……意地なんか張ったせいでこんな……」

美波「みくちゃんが背負う必要はないよ?」

愛梨「そ、そうだよ! 大体、侍Pさんはスーパーマンみたいな人だからこのくらいへっちゃらだよ!」

ちひろ(流石の侍さんでもトラックに跳ねられたらひとたまりもないはず……)

ちひろ(最悪死ぬ事だって……)

手術中のランプが消える

ウィィィン

医者「……」スタスタ

一同「」タッタッタ

ちひろ「あの、どうでしたか?」

医者「一応、一命は取り留めました」

一同「ほ……」

医者「ただ……」

ちひろ「ただ、なんですか?」

医者「脳に激しい衝撃を受けてしまっています」

医者「交通事故の患者に多いんですが……」

医者「遷延性意識障害って知っていますか?」

ちひろ「いえ、知りませんけど……」

医者「俗に言う植物状態」

医者「もしかしたら、彼はその状態になってしまうかもしれません」

ちひろ「……え?」

end

一応今日も時間取れたから7時くらいから開始するね。

――10月――

病室

侍「……」

みく「……」

みく(あれから2ヶ月が経ったにゃ……)

みく(侍Pちゃんは目覚めず、ずっと病室で眠っているにゃ)

みく(みくたちは、ちひろちゃんが侍Pちゃんの代わりを勤めてくれていて、スケットで赤羽根Pちゃんが協力してくれているから)

みく(なんとかアイドル活動を続けられているにゃ)

みく(侍Pちゃんがこうなってから)

みく(みく達三人は死に者狂いで仕事に取り組んだにゃ)

みく(その結果。元々右肩上がりの成長を遂げいていた三色小町は、CDを出すとオリコンランキングに食い込むほど成長したにゃ)

みく(テレビでの露出の回数も増えたし)

みく(今度やる歌番組に出演することも決定したにゃ)

みく(ファンも大勢出来て……)

みく(今は順風満帆にゃ)

みく「侍Pちゃん……みく達は頑張っているにゃ」

みく「だから……侍Pちゃんも頑張るにゃ」

みく「じゃあ、これからアイドル番組の収録にゃ」

みく「行って来るにゃー」

ガラガラ パタン

侍「……」ピク

――

スタジオ 控え室

愛梨「ふー。今日も楽しかったね!」

みく「そうにゃ~。でも同時に疲れたにゃ」

美波「みくちゃん張り切ってたもんね」

みく「みくはここ最近はいつでも張り切ってるにゃ」

みく「美波ちゃんも愛梨ちゃんも同じにゃ」

愛梨「うん。頑張ってるよ!」

美波「頑張るしか……ないからね」

みく「……」

愛梨「……」

愛梨「みくちゃん。侍Pさんどうだった?」

みく「相変わらず綺麗な顔してたにゃ」

愛梨「そうなんだ……」

みく「けど、元気そうだったにゃ」

美波「眠ってるのに?」

みく「そう……感じただけにゃ」

美波「……」

愛梨「で、でも! きっと侍Pさんは眠ってても私たちのことを見守ってくれているはず!」

みく「そ、そうにゃ! だから、みく達は安心して頑張るにゃ」

美波「そうだね♪」

美波(侍Pさんが事故にあった一週間は抜け殻のようだったのに……)

美波(今ではもう、そのことは乗り越えたみたい)

美波(みくちゃん。強くなったんだね)

愛梨「あ! そうだ! 今度病室にケーキを持っててあげようよ!」

愛梨「侍Pさんケーキ好きだし!」

みく「それはいい案にゃ!」

美波「もしかしたら、匂いに誘われて起きるかもしれないしね」

みく「侍Pちゃんならそういう可能性はありそうにゃ……」

キャッキャッキャ

アイドルA「うるさ……」

アイドルB「あー、今日調子に乗ってたあの三人組か」

アイドルA「三色小町……だったっけ?」

アイドルB「そうそう。確かそんな名前」

アイドルB「最近すげー、売れてるみたい」

アイドルA[へぇー。そうなんだ」

アイドルA「なるほど。売れてていい気になってるから、今日態度でかかったんだ……」

アイドルA「あの子達、ちょっと調子に乗ってるね」

アイドルB「そうだな」

アイドルB「潰すか?」

アイドルA「賛成。私たちの方が年上だしアイドル暦も長いからきっとびびるよ」

アイドルA「ねぇ。ちょっとうるさいんだけど」

美波「あ……すいません」

愛梨「ご、ごめんなさい」

みく「ごめんにゃ」

アイドルB「それに……あんたら、達態度大きくないか?」

みく「にゃ?」

アイドルA「私たちのほうが先輩なのに気を使わないってどういうこと?」

アイドルA「普通、先輩アイドルが一緒の控え室にいるなら、大人しくするものでしょ?」

アイドルA「今日の収録だって、私たちより目立ってたじゃない」

アイドルA「普通、ああいう場面では遠慮するものでしょ?」

みく「……」

アイドルB「おい、聞いてるのか?」

みく「聞いてるにゃ」

みく「ただ、訂正しなきゃいけない部分があるにゃ」

みく「みく達は別に目立とうとしたわけじゃないにゃ」

アイドルA「どういう意味?」

みく「普通のことをしたら目立っただけにゃ。別に意識とかはしてないにゃ」

アイドルA「あ?」

愛梨「み、みくちゃん?」

アイドルA「ブサイクな顔していきがらないでよ」

みく「人を顔でしか判断出来ないなんて悲しい人にゃ」

アイドルA「なにそれ? ひがみ?」

みく「ひがみはそっちにゃ」

みく「みく達の方が何倍も可愛いにゃ」

アイドルA「あんですって? もう一度言ってみなさいよ!」

みく「へちゃむくれはそっちの方って言ってるにゃ!」

アイドルA「この女――!」

みく「……愛梨ちゃん。美波ちゃん。次の仕事があるからもう行くにゃ」スタスタ

愛梨「ま、待ってよ!」タッタッタ

美波「あ、えと、その。すいませんでした!」

アイドルA「ちょっと待ちなさいよ!」

みく「……」スタスタ

アイドルA「今思い出したんだけど、あんたのところの正式なプロデューサー、不在みたいね」

みく「……」ピタ

アイドルA「アイドルが大変な時期に入院って……」

アイドルA「プロデューサー失格よね」

アイドルA「まぁ、そんなプロデューサーの元でやってるあなたたちもたかが知れてる――」

パシン

愛梨(平手打ち!?)

アイドルA「いった! なにすんのよ!」

みく「……今の言葉訂正するにゃ」

みく「みく達を悪く言うのは構わないにゃ」

みく「でも、侍Pちゃんの悪口は許さないにゃ!」

アイドルA「事実でしょ!」

みく「違うにゃ、侍Pちゃんはプロデューサーとして一流にゃ!」

美波「みくちゃん落ち着いて!」

みく「落ち着いてなんかいられないにゃ!」

美波「愛梨さん! そっち持って!」

愛梨「うん!」

みく「わー! 離すにゃ! 二人は侍Pちゃんが貶されてたままでいいにゃ!?」ズルズル

美波「お、お邪魔しましたー」ニコニコ

愛梨「お騒がせしましたー……」

――

みく「離すにゃ!」

美波「もう! みくちゃんダメだよ!」

愛梨「そ、そうだよ。仮にも向こうは先輩なんだし」

みく「にゃ! 二人はなんとも思ってないのにゃ!?」

美波「……悔しかったけど」

愛梨「あそこは我慢したほうがいいかなって……」

みく「なんでにゃ!?」

美波「今はいい時期だし問題を起こすのは……ね?」

みく「……」

みく「確かにそうにゃ」

みく「みく一人が暴れていたらみんなに迷惑が掛かるところだったにゃ」

みく「ごめんにゃ」ペコリ

美波「けど、ああいう所はみくちゃん侍Pさんと似てるね」

みく「にゃ?」

美波「後先考えずに自分の感情をストレートに訴えるところ」

みく「なんだか、嬉しいような、そうでないようにゃ……」

愛梨「い、一応褒め言葉だと思うよ?」

みく「そうにゃ?」

美波「勿論だよ」

みく「なら、有難く受け取っておくにゃ」

チャララ

みく「にゃ? 電話にゃ」

ピ

みく「もしもし」

ちひろ『みくちゃん!? 今……侍Pさんが目覚めたって病院から!』

みく「! 今すぐ行くにゃ!」


ピ

みく「ふ、二人とも! 侍Pちゃんが目覚めたらしいにゃ!」

愛梨「ほ、本当!?」

美波「うそ? ……だって植物状態なのに目覚めるなんて……」

みく「とりあえず二人も急ぐにゃ!」タッタッタ

――

病院

みく「ちひろちゃん!」タッタッタ

ちひろ「みくちゃん病院では静かに」ヒソヒソ

みく「ご、ごめんにゃ」

美波「ちひろさん。侍Pさんが目覚めたって本当ですか?」

愛梨「う、嘘じゃないんですよね?」

ちひろ「本当のことだけど……」

ちひろ「……」

ちひろ「みんな。落ち着いて聞いてね」

一同「?」

ちひろ「侍Pさんは昏睡した状態から目覚めたのはいいんだけど……」

ちひろ「記憶が……ないの」

みく「え……?」

美波「記憶が無いって……もしかして」

美波「記憶喪失ってことですよね?」

愛梨「あ、あのドラマとかで良くみる?」

ちひろ「うん……頭に強い衝撃を受けてるから仕方ないことだとは言われたんだけど」

ちひろ「で、でも心配しなくてもいいよ!」

みく「なんでにゃ?」

ちひろ「医者がいうには、一時的なものらしいから」

ちひろ「なにかの拍子にポンと思い出すって話してたの」

みく「な、なんだ……よかったにゃ……」

ちひろ「だから、みんな侍Pさんが記憶を取り戻すよう協力してくれない?」

みく「モーマンタイにゃ!」

美波「私も……力になれるなら!」

愛梨「アタシも頑張ります!」

ちひろ「じゃあ、早速中に入ろうか」

みく「な、なんだか緊張するにゃ」

愛梨「あ、アタシも」

美波「私も……」

ガラガラ

ヒューン

ちひろ「あれ?」

ちひろ(窓が空いてて……)

ちひろ「侍さんがいない!?」

みく「ど、どういうことにゃ!?」

ちひろ「もしかしたら、ここがどこかもわからず」

ちひろ「自分がなにものかもわからずその不安でパニックになってどこかに逃げちゃったのかも!」

ちひろ「みんな! 探しに行くよ!」

一同「は、はい!」

っと、まぁ。今日はこのくらいで。

退屈なシリアスパートが続いていますが、後ちょっとしたら元に戻るんで待っててください。

道路

侍「ふー。大丈夫でござるか?」

男「引ったくりにあったところを助けてくれて、ありがとうございます……」

侍「いやいや、当然のことをしたまででござる」

男「えっと、お礼に少ないですが……これを」一万円

侍「む? なんでござるか?」

男「? お金ですよ」

侍「な! 受け取れないでござるよ!」

侍「拙者は困っている人間を助けたに過ぎぬ。当然のことでござる」 

男「でも……わざわざ病院から私を見かけて駆けつけてもらったのにそれじゃあ、私の気がすみません」

男「どうぞ、お受け取りになってください」

侍「そういうことなら……」

男「はい。本当にありがとうございました。では」スタスタ

侍「……」

侍(さて、拙者もびょういんとやらに戻るでござるか)

侍(しかし……拙者はどの道から参ったでござるか?)

侍「もしかして、迷子、でござるか?」

侍「」汗

侍「し、しまったでござる」

侍「それに、ここがどこかもわからないでござる……」

ブロロロン

侍「!」スタ

侍「危なかったでござる……」


侍(た、大変なことになったでござる)

侍(拙者は自分が何者なのかもわからない)

侍(そして、ここがどこかもわからない)

侍(唯一の救いはなにもわかっていないのに落ち着いていることだけでござる)

侍(きおく……そうしつでござったか?)

侍(こんな状況でも落ち着いてられると言うことは、きおくそうしつする前の拙者は、相当なつわものだったに違いないでござる)

侍(しかし、落ち着いているだけではなにも変らないでござる)

侍「どうしたものでござるか……」

侍「人に頼ろうにも頼れる人間が拙者にはわからぬでござる」

ザワザワ

侍「やけに向こう側が騒がしいでござるな……」

侍「公園……のほうでござるか?」スタスタ

公園

?「我が血の盟約に従いその責務を果たせ!」

侍(なにかの、劇でござるか?)

子供達「ふざけるなー! おれたちはそんなけいやくをしたおぼえはないぞー!」

?「従わぬというのか……ならば我が手で葬ってやろう……」

子供達「みんなー! たたかうぞ!」

オー

?「ふっふっふ。貴様らのようなか弱い――」

蘭子「って、侍Pさん!?」

侍「む? お主、拙者を知っておるのか?」

蘭子(ど、どうしよう……)

蘭子(子供相手に遊んでるところ見られちゃった……)

蘭子(同年代の子とはこういうのできないからつい……)

侍「お主、聞いておるのか?」

蘭子「は、はい!」

侍「もう一度、申すぞ。お主は拙者のことを知っておるでござるか?」

蘭子「? 知ってるも何も……なんでそんなことを聞くんですか?」

侍「おぉ。どうやら拙者のことを知っておる様子」

侍「拙者は現在。きおくそうしつとやらになっているでござる」

蘭子「記憶喪失……ってあの記憶喪失ですか?」

侍「きおくそうしつにも種類があるでござるか?」

蘭子(ど、どうやら本当みたい……)

蘭子(ん、でもそれって……)

蘭子「……」

蘭子「村雨を継ぐ者よ」

侍「拙者のことでござるか?」

蘭子「私と村雨を継ぐ者は前世からの繋がりがあるのだ……」

侍「ぜ、前世でござるか?」

蘭子「つまり、私と貴方は一心同体」

侍「よ、よくわからぬ……」

蘭子「……」

蘭子「私と村雨を継ぐ者は前世で契りを結んでいる」

侍(な、なんだかわからないでござる……)

蘭子「もう! なんで私の言葉を理解してくれないんですか!?」

侍「あ、いや……そうやって普通に喋ってもらわなくては……わからぬでござる」

蘭子「だから……そのですよ……」

蘭子「私と……侍Pさんは」

蘭子「結婚の契りを結んだんです!」

侍「……え?」

侍「つまり……お主は拙者の夫婦?」

蘭子「そ、そうなんですよ!」

蘭子(記憶喪失ってすぐに戻っちゃうって言うし……)

蘭子(い、今のうちにいい思いをしても罰は当たらないよね)

侍「それは……すまなかった」

侍「拙者そんなことも忘れて」シュン

蘭子「そ、そんなに落ち込まなくても大丈夫ですよ」

蘭子(あー、でもやっぱりいけないことをしているような……)

訂正

侍「つまり……拙者とお主は夫婦?」

侍「まぁ、夫婦であることは一度置いておいて」

侍「お主……というのもなんでござるから名前を聞いてもよいか?」

蘭子「ら、蘭子です」

侍「蘭子殿。拙者びょういんに戻りたいでござるが……」

侍「拙者がいたびょういんを知っておるでござるか?」

蘭子「病院ですか?」

侍「左様。拙者、しょくぶつじょうたいとやらになっておって」

蘭子「しょ、植物状態ですか!?」

蘭子(そ、そんな話聞いてないよ……)

蘭子(最近見かけないと思ったらそういうことだったんだ……)

蘭子(みくさんが異常なまでに事務所に入れてくれなかったのはこれが原因だったんだ)

侍「む? あれは!」タッタッタ

蘭子(でも、こうやって立ってるってことはもう平気だってことだよね!)

蘭子(まぁ、記憶はないみたいだけど……)

蘭子(元気だし、きっと大丈夫!)

蘭子「あれ? 侍Pさん?」

タッタッタ

みく「蘭子ちゃんにゃ!」

蘭子「み……ごほん。猫神か」

みく「今はそういうのいらないにゃ!」

みく「侍Pちゃんを見なかったにゃ?」

蘭子「えっと、さっきまでそこにいたんですけど……」

みく「にゃー! どうして取り押さえておかなかったにゃ!」

蘭子「取り押さえる!?」

みく「とりあえず蘭子ちゃんも侍Pちゃんを探すのを手伝うにゃ!」

蘭子「は、はい!」

今日書くよ。

この侍、現代語……さては偽物でござるなッ!?
最近気温下がってきたから全裸待機はなかなか堪えるでござるよ

>>833

久方ぶり故、少々戸惑っているでござる。

感覚が戻り次第執筆する故、暫し待たれよ。

侍「いやー、よかったでござる」

女性「ありがとうございました……」

侍「気をつけるでござるよ。坂道で転んでしまったとはいえ、乳母車から手を放すのは迂闊でござる」

侍「もしかしたら、坂下の交差点で跳ねられてしまっておったかもしれぬ」

侍「……説教くさくなってしまったでござるな。すまぬ」

侍「まぁ、何事も無くよかったでござる」

女性「本当にすいません……あの、もしよければお礼をしたいんですけど……」

侍「おなごを助けるのは男の責務でござる。拙者はこれにて失礼する」スタスタ

公園

侍(む……? 蘭子殿は何処に行ったでござるか?)

侍(これは困ったでござるな)

侍(こうなることがわかっているなら幼児を連れたおなごに道を聞くべきであった……)

侍「どうしたらいいでござるか……」

侍「とりあえず、てきとうに歩を進めるでござるか?」

?「一人で遊んでないで、ウサコちゃんと一緒に遊ぼうよ♪」

侍「む? 人形……?」

あぁ、今日はもう書けなくなった……12月まではこうやってぼちぼち更新していくんで待っててください。

ゆーきやこんこん。今日は書くでござるよー!

ありさ「こんにちわ。お久しぶりですね」

侍「むむ?」

ありさ「どうしたんですか? ありさ先生だよー♪」

侍(片手に人形を持ったおなご…)

侍(彼女もまた拙者の知り合いでござるか?)

侍「すまないでござる。しばし、よろしいか?」

亜里沙「はいー?」

侍「お主は拙者を知っておる様子。出来れば拙者が何者なのか教えてもらいたいでござる。後はびょういんの場所も」

亜里沙「ええ!? どうしたんですか?」

侍「実は…かくかくしかじか」

亜里沙「そ、そうだったんですね……んー、でもありさお姉さんには少しわからないかも」

侍「どうしてでござるか? 声を掛けてくれるということは知り合いの中なのではないでござろうか」

亜里沙「えっとー、一日限りの関係だったからぁ?」

侍「い、一日限りの……関係、でござるか!?」

侍(な、なにか怪しげな匂いがするでござる……記憶を失う前の拙者は一体なにをしておったでござる?)

侍(い、いやまだ拙者が軟派者だと決まったわけではないでござる。もう少し話を聞くでござる)

亜里沙「はい。名前も聞きませんでしたしー…‥」

侍「な、名も聞かなかったでござるか!?」

亜里沙「ちょっと切羽詰まった様子だったのでそういうのは聞けなかったんです」

侍「そ、そうだったでござるか……迷惑だったでござるか?」

亜里沙「そんなことなかったですよぉ。むしろ嬉しかったです」

亜里沙「見ず知らずのありさお姉さんに中に溜まっていたものを吐き出してくれたので!」ニコ

侍「中に溜まっていたものを……吐き出す!?」

侍(やはり勘違いではなかったでござる……拙者はやはりこのおなごと繋がってしまっていたと見受けられる)

侍(しかも……一日だけでござる!)

侍(それに、拙者は結婚の契を交わしておったおなごもいた……)

侍(拙者はなんて軟派者だったでござるか!)

侍(情けないでござる! きおくそうしつまえの拙者が憎いでござる!)

侍(こんな男、世にいてはいけない!)

亜里沙「というわけで、ありさお姉さんはあたなのことがよくわからないんです」

侍「……そうでござったか」

侍「ちなみに、この辺りに大きな池はござらぬか?」

亜里沙「? どうしてですか?」

侍「この季節の池は寒そうでござるな…」

亜里沙「! も、もしかして入水する気ですかぁ!?」

侍「すまない。用事を思い出したでござる」スタ

亜里沙「だ、だめです! ありさ先生の言うことを聞いて! いい子だから~!」ガシ

侍「腰から離れるでござる! 拙者は…悪い奴でござる!」

亜里沙「記憶喪失のことで悩んでいるならまた先生が相談に乗るよ!」

亜里沙「だから、お願いだから先生の言うこと聞いて~!」

侍「また?」ピタ

亜里沙「さっき話したじゃないですか?」

亜里沙「中に溜まっていた悩みを全て吐き出してくれたって」

侍(中に溜まっていたものて……悩み、だったでござるか?)

侍「……拙者はどうやら勘違いしておったでござる」

亜里沙「? そうだったんですか?」

侍「もう、バカなことはしないでござる」

亜里沙「本当!? よかった~。やっぱりいい子ですね♪ ヨシヨシ」ナデナデ

侍「む……恥ずかしいでござるよ」テレ

亜里沙「でも、困りましたね。記憶がないなんて……」

侍「……」

亜里沙「怖く、ないですか?」

侍「どうしてでござるか?」

亜里沙「だって、自分が誰かわからないなんて不安じゃないですか」

侍「それはいらぬ心配でござる。妙に落ち着いているでござるよ…‥」

侍「ただ、どうしてもある場所に帰りたい。そういう思いがあるでござる。びょういん…も勿論帰らなければならないのだが」

侍「それとは違う。もっと大勢の人でわいわいしておって楽しい場所でござる」

侍「まぁ、それがどこなのかという記憶がないから困りものでござるが」

亜里沙「そうなんですか……記憶、戻るといいですね」

侍「そうでござるな」シュン

亜里沙「……」

亜里沙「わかりました! じゃあ、記憶が戻るまで亜里沙先生が面倒を見るよ~!」

侍「ど、どういう思考でそこに至ったでござるか!?」

亜里沙「困っている子を放っておけるほどありさお姉さんは大人じゃないんだよー!」

亜里沙「前にも思ったんですけど捨てられた子犬みたいで可愛いからというのも理由の一つです!」ギュ

侍「ちょ、ちょっと離れるでござる!」

亜里沙「うわー、さっきは気付かなかったけど筋肉質なんだね。ありさ先生びっくり!」

侍「や、やめるでござる! それに、拙者には結婚の契を交わした蘭子殿という相手が…」

亜里沙「蘭子ちゃん?」

侍「む? 知っておるでござるか?」

亜里沙「ここでありさ先生が担当している園児とよく遊んでもらっているから知ってますよ?」

亜里沙「でも……蘭子ちゃんまだ14なんだけどなぁ……もしかしてからかわれてるんじゃ」

侍「なに!? そうでござったか…」

亜里沙「そう! だから安心してありさ先生に面倒を任せてね!」


侍「しかし……」

亜里沙「本当に大丈夫なんだよ~。ねーウサコちゃん♪」

侍「……」

侍(このままさまよっていてもらちがあかないでござる)

侍(ここは素直に好意に甘えるべきでござるか?)

侍(びょういんに戻るのも一つの手でござるが、記憶さえ戻ってしまえばわざわざそこにいく必要もないだろう)

侍(それに)チラ

亜里沙「どうかしました?」ニコ

侍「いや、なんでもないでござる」

侍(どうしてか物凄くこのありさというおなごには甘えたくなってしまうでござる)

侍(仕様がない。頼れるものには頼るでござる)

侍「不束者でござるがよろしくお願い申す」ペコリ

亜里沙「うん! よろしくね♪ ウサコちゃんも大喜びだよー」

――亜里沙 自宅 お風呂場――

侍「ふー。いい湯でござる」

侍「しかし、本当に便利でござるなーこの時代は」

侍「む? なぜこの時代に生きていながらそんなことを思うでござるか?」

侍「まぁいいでござる……」ブクブク

侍(今わかっているのは拙者の名だけ)

侍(後は蘭子殿と知り合いだというのがわかっているでござる)

侍(まぁ、記憶に関しては焦ってもしょうがないでござる)

侍(気長に待つでござるよ)

ガチャ

侍(む、亜里沙殿が脱衣所に来たでござるか?)

亜里沙『湯加減どうですかー?』

侍「いい加減でござるよー」

侍「すまないでござる。なにからなにまで」

亜里沙『気にしなくていいですよ。ありさお姉さんが好きでやったことだからね」

侍「そう申してもらえると心が幾分か救われるでござる」

亜里沙「ではでは」ガララ

侍「な!」

亜里沙「じゃーん。今年買った水着だよー」

侍「な、なんでわざわざ……(しかも右手に人形まで付けて)

亜里沙「ビキニのかわいいやつがあったから買ったんですけど結局今年は海に行けなかったんです」

亜里沙「でも、人前で一度着てみたかったんですよー」

亜里沙「どうかな? お姉さん似合ってる?」

侍「そ、そうでござるな。似合っているでござるよ」

亜里沙「ほ、本当ですか? うふふ、ありがとうございます」

亜里沙「では、先生がお背中流してあげますよー♪」

侍「さ、さすがに悪いでござる」

亜里沙「遠慮せずにー」

侍「…わかったでござる」

訂正

亜里沙「では、先生がお背中洗ってあげるよー♪」○

出したいアイドルが多すぎて、完結するのに何年かかるかわかったもんじゃないな(白目)

侍(面倒を見てもらっているでござるから文句は言えないでござるな)

侍「ではよろしくでごぜる」

亜里沙「はーい♪」

コシュコシュ

ピト

侍「!」ピクン

亜里沙「あ、冷たかったですか?」

侍「それもそうでござるが…なぜ素手で拙者の背中を洗おうとしているでござるか?」

亜里沙「タオルとかでやると加減を間違えたらイタイイタイになっちゃうかなー、って先生は思ったんだけど……」

侍「ああ、そういうことでござったか…」

亜里沙「続けても大丈夫かな?」

侍「御意」

亜里沙「はーい♪」

亜里沙「んしょんしょっと」

侍「……」

ピタピタ ヌメヌメ

侍(……)

侍(不覚にもきもちいいと思ってしまったでござる)

侍(いかん! 雑念を払うでござる!)

侍(亜里沙殿は一生懸命背を洗ってくれているというのに拙者が不埒な考えを起こしてどうする!)

侍(心を無にするでござる…)

侍「む、そういえば亜里沙殿」

亜里沙「亜里沙でいいですよー」

侍「あ、ありさ」

侍「先程から片手でやっているでござるがどうしてでござるか?」

侍「人形を外してしまえばもっと楽に洗うことができるのではないでござるか?」

亜里沙「あー……これはこのままでいいんです」

侍「? そうでござるか?」

亜里沙「はい! それじゃあ背中流すよー。熱かったら先生にちゃんと言うんだよー」

侍「御意」

侍(少し、あの片手気になるでござるな)

――リビング――

亜里沙「いいお湯でしたねー」

侍「そうでござるなー」

侍(あの後はなんのハプニングも起きずに風呂場を出ることが出来たでござる)

亜里沙「じゃあ、今後についてお話しましょうか」

侍「そうでござるな」

亜里沙「えっと…記憶を戻すんですよね?」

侍「…」コク

侍「出来れば早急がいいでござるが焦っても仕方がないゆえ記憶の戻し方はゆっくり考えるでござる」

侍「しかし、そうなると亜里沙、に迷惑がかかるのではないかと思っているでござる」

亜里沙「そんなことないよー。亜里沙先生だいかんげーい♪」

亜里沙「それに、一人で食べるご飯や一人で寝るのはありさお姉さんには少し寂しいですから」

亜里沙「だから誰かいてくれるのは嬉しいんだよ~!」

侍「そうでござったか…」

侍「そういうことでござったらゆっくり考えるでござる」

侍「あ、しかし食費などはかかろう。少ないでござるがこれを」ス

亜里沙「一万円? いらないですよー」

侍「だが……」

亜里沙「いいんです。ありさお姉さんが好きで侍くんの面倒を見ると決めたんですから」

亜里沙「だから、お金は先生に渡す必要はないよー♪ ねー、ウサコちゃん」

侍「……」

亜里沙「納得いきませんか? では、その代わりと言ってはなんですけどありさ先生のいうことは絶対に聞くこと、いいね?」

侍「それなら、まぁ、御意」

亜里沙「うふふ」

侍「しかし、やっぱりせめて自分の食費だけでも稼ぎたいでござる」

侍「出来ればすぐにでも出来る仕事を明日から探すでござるよ」

亜里沙「もー、お金のことは考えなくてもいいって言ってるじゃないですか」

侍「いや、本来おなごは男が守るべきもの」

侍「守られているのはいやでござる」

亜里沙「わかりました。じゃあ、仕事が見つかるまでの間だけありさお姉さんがお金を出します。それでいいね?」

侍「御意」

亜里沙「あ! 亜里沙先生いいこと思いついたよ!」

侍「どうしたでござるか?」

亜里沙「えっとー、記憶喪失っていうのはなにか強い衝撃を与えると記憶が戻るって話をどこかで聞いたんですよ」

侍「まことでござるか!? 早速やってみるでござる」

亜里沙「わかったよー。ちょっとフライパン持ってくるから待っててね!」テッテッテ

侍(どうやら亜里沙の厄介にならずに済みそうでござるなー)

亜里沙「用意ができましたよー」

侍「かたじけない」

亜里沙「後頭部に結構思い切りやっても大丈夫ですか?」

侍「平気でござる。ばっちこいでござるよ」

亜里沙「じゃあ、行きますね……」

亜里沙「ありさ先生のー! 記憶復活クッキングスタートだよ!」

亜里沙「ウサコちゃんいくよー♪ せーの!」フ

バゴン

亜里沙(あれ……フライパンから出る甲高い音っていうよりかは鈍い音が……)

侍「…」バタン

亜里沙「さ、侍くん!?」

侍「我が生涯に、一片の悔いなし」ガク

亜里沙「悔いありまくりですよ!? 記憶もどってないですから! 戻ってきください!」

侍「…」ブクブク

亜里沙「泡吹いてる! ど、どうしよう…」アワワ

亜里沙「そ、そうだ結城さん家にどうすればいいか聞いてみよう!」

……

?「んで、どうして俺が呼ばれたんだよ…」

亜里沙「ごめんね! でも晴ちゃん以外に人いなかったから」

晴「晴ちゃん言うな。人が怪我しただけなら普通に救急車呼べばいいだけだろ」

亜里沙「いや、でもそんな大したことではないとは思うんだけど……」

晴「はぁ……ほらリビングまで案内しろよ」

亜里沙「う、うん」

亜里沙「彼なんだけど……」

晴「!」

晴「お前、毒でも盛ったのか?」

亜里沙「ち、違うよ! ありさ先生をからかうんじゃありません!」

晴「からかってねーよ! 本気だぜ!?」

晴「なんだ? ちじょうのもつれってやつか?」

亜里沙「意味もあまりわかってないのに変な言葉は使わないほうがいいと先生は思うなー」

晴「はぁ……なにをやったんだよ」

亜里沙「うん。実はこの人記憶喪失で記憶を取り戻そうとありさお姉さんがフライパンで頭を殴ってあげたの」

晴「ありささん。あんた本当に大人?」

亜里沙「ええ!? 晴ちゃん酷いよぉ…」シクシク

晴「だって普通に考えてんなのありえねーだろ!」

亜里沙「も、もしかしたら奇跡が起こるかもって思ったんだけど…だめだったみたい」

晴「うわ…しかしついてねーなこの人も」

侍「!」シャキーン

晴・亜里沙「!」ピク

晴「う、動いたぞ」ヒソヒソ

亜里沙「そ、そうみたいだね」ヒソヒソ

侍「い……」

晴・亜里沙『い?』

侍「イーエイ! ファックユーファックユー! チェケラチェケレ」

亜里沙・晴『』

晴「おいおいおい! なんかおかしくなってんぞ!?」

亜里沙「もしかしたらこれが侍くんの本当の姿なのかも……」

晴「んなわけねーだろ! 現実見ろよ!」

侍「ゴーイングゴーイング! サノバビッチ! イヤッハー!」

晴「ど、どうすんだよ!?」

亜里沙「ねーねーウサコちゃん」

晴「だから現実逃避すんなよ!」

亜里沙「もー、ありさお姉さんはどうすればいいの」シクシク

晴「こっちがなきてーよ!」

侍「ヘイユーヘイユー!」

晴「お、オレか?」

侍「……」ピト

晴「な、なんだよ。あんまジロジロ見んなよ!」

侍「フルキヨキ ミニスカ ニーソ ソレニハキカエテカラ デナオシテクルンダナ コノハナタレガ!」

晴「なにいってんだこいつ!?  大体ミニスカもニーソックすも古かねーよ!」

侍「オーイエェイ! ディスイズアペン! マイソンマイソン!」

晴「きいてねーし!」

晴(あー、超家かえりてぇ…)

晴「ありささん。こいつ、燃える日に出したほうがいいぜ」

亜里沙「侍くんは萌える人だけど可燃ごみには出せないよ!」

晴「うっせーしらねーよそんな話!」

侍「ヘイユーヘイユー」

亜里沙「あ、ありさお姉さんですか?」

侍「……」ピト ジー

亜里沙「……」テレテレ

侍「お嬢さん。今夜お暇ですか?」(イケメンボイス)

亜里沙「え……そ、そんな」テレテレ

晴「やっぱりオレ帰っていいか?」

晴「てか、俺とありささんとの扱いの差はなんだよ」

晴(ん? フライパンが落ちている……)

晴(そういえばこれで殴ったからこんな風になったんだよな)

晴「だったらもう一度やれば……」

晴「オリャ」

バゴン

侍「う……!」バタン

亜里沙「さ、侍くん!?」

――

侍「ハ!」

晴「お、どうやら起きたみたいだぜ」

亜里沙「侍くん! だ、大丈夫かな?」

侍「あ、えと、後頭部が尋常じゃないぐらいに痛いでござるが……なんで二人共目をそらしたでござるか?」

晴・亜里沙『なんでもないです』

侍「それ以外はなんでもないでござる。ただ、なにかとても悪い夢を見ておったような気がするでござる」

亜里沙「いいの。侍くん。辛いことは思い出さなくてもいいんだよ」

亜里沙「ありさ先生の胸の中にいれば辛いことは全て忘れられるからね」ギュ

侍「は、離れるでござるよ!」

晴(確かにあれは忘れたほうがいいよな)

亜里沙「あ、紹介しておきますね。隣の家の結城さんの家の子供さんです。晴ちゃんっていいます」

侍「なるほど。晴殿、拙者は侍と申す者でござる。不束者でござるがどうぞよろしくお願いするでござる」

晴「よ、よろしくな…」

晴(さっきとギャップがありすぎるだろ)

晴(しかし、古臭い口調の人だな)

亜里沙「あ、ねぇねぇ。晴ちゃんはなにか記憶の戻し方とか知ってる?」

晴「オレか? 俺は別に記憶喪失になったことないからわかんねーけど……」

晴「>>881とかすれば戻るんじゃねーか?」

侍を知ってる人に会わせてみるとか、思い出の場所に連れて行く

侍「なるほど…」

亜里沙「ああ、その方が早いね!」

晴(普通に考えればわかるだろ…)

晴(ありささんってしっかりしてるようでどこか抜けてるよな)

侍「しかし、思い出の場所と言われても記憶がないのでどうしようもないでござるな」

亜里沙「そうですね。あ、蘭子ちゃんに会ってみるのはどうですか?」

侍「蘭子殿に?」

亜里沙「そうです。そうすればなにか思い出すかもしれませんし、また別の知り合いに会えるかも知れないですよ?」

亜里沙「後は病院……って言ってもあそこらへんは病院がとても多くて探し当てるのは至難の技かもしれませんね」

侍「そうでござるな。拙者もあの病院の部屋は覚えているでござるが外装はちょっと思い出せないでござる」

侍「盗人を掴めるために必死だったでござるからな」

侍「しかし、蘭子殿に会うためにはどうすればいいでござるか?」

亜里沙「あの公園で待つしかないんですけど…」

亜里沙「蘭子ちゃん忙しいからたぶん滅多に会えないだろうなー」

侍「どうしてでござるか?」

亜里沙「蘭子ちゃんは『アイドル』なんですよ」

侍「!」ドクン

侍(今、アイドルという単語に体が反応したでござるか?)

侍(いや、たぶん気のせいでござるな)

晴「え!? ありささん神崎蘭子と知り合いなのか!?」

晴「有名人じゃん」

亜里沙「うふふ、って言ってもちょっとお互い知ってるくらいだけどね」

そういえばここから先色んなモバマスのアイドルとのドラマを作っていきたいと思っています。

そのためネタバレになってしまいますけどみく、愛梨、美波との邂逅がけっこーーう後のほうになってしまいます。

ただでさえ長い作品になりそうなのにさらに長くなりそうです。許してね。

晴「それにえっと…侍も知り合いってどういう関係だったんだ?」

侍「拙者にはどういう関係だったのかはわからないでござる」

晴「ふーん。そうなのか。まぁ、とにかくそいつと会えばなにか発展があるかもな」

侍「そうでござるな。とりあえず明日行ってみるでござる」

晴「あ! じゃあーさ。俺と一緒に明日公園でサッカーしねーか!」

侍「サッカー?」

晴「なんだ知らねーのか? だったら俺が教えてやるからさ! やろうぜ!」

亜里沙「おー、だったら亜里沙先生も一緒にやっちゃおうかなー♪」

晴「ありささん明日保育園だろ?」

亜里沙「あ、そうだった…」

侍「拙者はいいでござるよ」

晴「じゃあ決定な! 学校終わったら公園行くから4時半くらいに向こうで待っててくれよ!」

晴「そんじゃー、俺帰るから。侍、約束忘れんなよ?」

侍「わかったでござるよ」

晴「ありささんもじゃあーな」タッタッタ

亜里沙「うん。こっちこそありがとうねー」


侍「元気な男の子でござったな。しかし、随分と顔立ちが整っておったような」

亜里沙「……」ウトウト

亜里沙「あ、ごめんなさい。今なにか言いました?」

侍「いや、なにも申していないでござるよ」

侍「もう就寝した方がいいでござるな」

侍「しかし、拙者はどこで寝れば…」

亜里沙「勿論ありさお姉さんと同じベッドだよー♪」

侍「な! それは――」

亜里沙「ありさお姉さんのいうことはなんでも聞くんじゃなかったの?」

侍「……御意」

――

亜里沙「うふふ、なんだかドキドキしますね」モゾモゾ

侍「そ、そうでござるな」モゾモゾ

亜里沙「それに今日は疲れたでしょうから……ありさお姉さんも疲れて眠いんだけど」

亜里沙「今日はありさ先生の胸の中でゆっくり眠っていいですよー♪」ギュ

侍「ムグ!」

侍「あ、ありさ!」

亜里沙「なんでも言うこと聞く、絶対」

侍「御意」

侍(ここは大人しく眠ることにするでござるか)

侍(しかし、なんというか…柔らかいでござるな。それにとてもいい匂いがするでござる)

侍(甘ったるくて頭がふにゃふにゃになりそうでござる)



侍(それになんだか包み込まれているようで安心してしまうでござるな)

侍(暖かい……)

ふとその瞬間。拙者は誰かの顔を思い出した。しかし、その顔は霞がかっていてぼやけている。認識することが出来ない。

拙者は今、この状況と似たような体験をどこかでしたことがある。

それがどこなのかというのは思い出せない。必死にそれを思い出そうと記憶の断片を掴むが手のひらの間からするりと抜け落ちていく。

思い出すことはない。

ただ、それが酷く懐かしくその体験をしていた拙者は喜びに満ち溢れていたということだけがわかった。幼少の頃の体験であろうか?

しかし、感覚的にそれがもう思い出した顔の人物では体験できないのだというのを知っていた。

すると、無意識に瞼から涙が落ちた。

亜里沙「ど、どうしたんですか? ありさ先生なにかイタイイタイなことしちゃった?」

侍「違うでござる…なぜか、突然、涙が溢れてきたでござるよ」



侍「思い出したようなでも思い出したくないような」グス

侍「そんな記憶がよみがえりそうになったでござる……」

亜里沙「そうだったんですか……」

侍「すまぬでござる。あれ? おかしいでござるな。本当に涙が止まらないでござる」

亜里沙「いいですよ。好きなだけ泣いて。ありさ先生の胸の中は今晩侍くんの貸切だからね」ニコ

侍「みっともないという姿ですまないでござる」

亜里沙「そんなことないですよ(むしろかわいい!)」ニコニコ

訂正

みっともない姿を見せてしまってすまないでござる

侍「……」

亜里沙「落ち着いたかなー?」

侍「御意」

侍「恥ずかしいところを見られてしまったでござるな」

亜里沙「そんなことないですよ」

侍「いや、しかし……」

亜里沙「……」

亜里沙「じゃあ亜里沙先生の恥ずかしいところも見せちゃいます。それであおいこにしましょう」

亜里沙「よいしょっと」ゴソゴソ

侍(さっきまでずっと右手につけていた人形を取ったでござる)

亜里沙「じゃーん。これがありさ先生の右腕だよー」

侍「これは…! 火傷の跡、でござるか?」

亜里沙「はい、実は子供の頃にアイロンでやけどしてしまってそれ以来ずっと右手には手袋をつけていたんです」

亜里沙「私の右手は正直人には見せられないようなものなんです。とくに園児たちには」

亜里沙「きっと怖がっちゃうんじゃないかなーっと思っているんです。結構跡がひどいですからね…」

亜里沙「でも、手袋だけじゃきっと園児たちは疑問に思って手袋を取って欲しいと言われるかもしれません」

亜里沙「それでどうにかして違和感なく右手を隠したくてパペットを装着し始めたんです」

亜里沙「子供たちには喜んでもらえるし、右手も隠せるしでまさに一石二鳥でした」

亜里沙「これは私の恥ずかしいところです」

訂正

「これが私の恥ずかしいところです」

推敲適当だからてにをは間違ってるのは勘弁しておくんなまし。

侍「今でもその右手の跡は消えないでござるか?」

亜里沙「消せるものならとっくに消してますよ」

亜里沙「子供の頃も友達によく言われましたからね……正直今でも人に見せるのはちょっと気が引けます」

亜里沙「侍くんはこの手をみてどう思いますか?」

侍「そうでござるな…」

侍「拙者は綺麗に見えるでござる」

亜里沙「え…?」キョトン

侍「その右手の跡は亜里沙の拙者に対する信頼の跡でもござるよ」

侍「出会ったばかりの拙者に一生ものの悩みを打ち明けるなんて拙者のことをよっぽど信頼してくれたか、もしくは気に入ってくれたかのどちらかでござる」

侍「拙者はそのことが素直に嬉しいでござる」

侍「そして、その信頼の証がそのやけどの跡なら、拙者のとってその右手は綺麗なものに映るでござる」

侍「よって拙者はその右手を綺麗だと思うでござる」

侍「納得してくれたでござるか?」

亜里沙「う、うふふ。さ、侍くんって可愛かったりかっこよかったりよくわかんないね」

侍「そうでござるか?」

亜里沙「ありさ先生びっくりだよー。ちょっぴりドキドキしちゃったなー」

侍「まぁ、なにわともわれそれが拙者の気持ちでござるよ」

亜里沙「そう、なんですか…」

亜里沙「嘘じゃ、ないんですよね?」

侍「拙者、たぶん嘘は得意な方ではないでござる」

亜里沙「うふふ、わかりました」

亜里沙「じゃあ、そろそろちゃんと眠りましょうか。ありさお姉さん眠くて眠くて」

侍「そうでござるな」

亜里沙・侍「おやすみなさい」

数分後

亜里沙「……」

亜里沙「ありがとうね侍くん」ボソ

侍「……」

侍(どういたしましてでござる)

―― 翌日 ――

晴「おーい侍! おせーよ!」

侍「すまないでござる!」タッタッタ

侍「いやーなかなか働き口が見つからなくて困っているでござるよ」

晴「仕事探してんのか? まぁ、いいか」

晴「とりあえずサッカーボール持ってきたからやろうぜ」

侍「御意」

侍(どうやら蘭子殿の姿は見当たらないようでござるな)

侍(まぁ、いつか会えるでござろう)

侍「しかし、晴殿拙者はサッカーのやり方がわからぬでござる」

晴「あー、そうだったな。じゃあ、軽くリフティングでパス交換でもやってみるか?」

侍「りふてぃんぐ?」

晴「ああ、こうやって、っと」ポンポン

晴「地面に落とさないようにボールを蹴るんだ」

晴「ほれ、パスだぜ」ポン

侍「おっと」ポンポン

晴「おー! うめーじゃねーか!」

侍「これを晴殿に蹴ればいいでござるな」

晴「ああ、コツとしては優しく蹴る感じだ。強く蹴ると遠くに飛んじまうからな」

侍「よ」ポン

晴「うお、すげーピンポイント。侍、サッカーの才能あるな!」

侍「そ、そうでござるか?」

晴「そうだぜ」

侍「なんだか照れるでござるな」

晴「よし、次はドリブルだぜ」

侍「どりぶる?」

晴「見とけよー。こういうふうにボールを足に吸い付けるように蹴りながら進むんだよ」

侍「おおー! まるでボールが自分の手足のように動いているでござる」

晴「ほら、じゃあこっから俺からボールをとってみろよ」

侍「拙者が?」

晴「ああ、そのときになるべくボールだけをけるようにして奪うんだぜ」

侍「やってみるでござる」

晴「いくぜ」

侍「……」

侍(ボールだけを蹴るように)

晴(やっぱうまいといっても初心者だな。簡単に抜けそうだぜ)

晴(右――!)

侍(む、右でござるな)シュ

晴(やば!)ピ

晴「あぶねー、取られるところだった…」

侍「晴殿、もう一度やるでござるよ」

晴「ああ」

晴(まぐれまぐれ。次はしっかりフェイントを入れよう)

晴(落ち着いて落ち着いて…)

晴(もう一度右に行こうとして――)

晴(すぐ左へ切り返す!)

侍(右方向への動きはふり、左にくるでござる)シュ

晴「な!」

侍「おお、取れたでござる!」

晴「う、うそだろ……」

晴「同年代の男子でも俺のドリブルは止められないんだぜ」

晴「侍! どうやって止めたんだよ!」

侍「あー、いや。体の動きやら晴殿の目線を見ていたらなんとなくわかったでござる」

晴「……」

晴(なんだよこいつ…)

晴(めちゃくちゃ面白いじゃん!)

晴(動きや目線で相手の動作を把握するとか同い年の男子でもできるやつなんていねーよ!)

晴「なー。次は侍がドリブルしてくれよな」

侍「いいでござるよ」

侍「いくでござるよ」

晴「ああ」

侍(えっとー、手加減しながら前に進む感じで)

侍(ボールを吸い付けるように…)

晴(ドリブル自体は上手いけど右に来るのがばればれ!)

侍(む。股が空いているでござるな)

侍(ここにボールを通せば抜けるのでは?)

侍「ほ」チョン

晴「え!?」

侍「おお、うまくいったでござる!」

晴「す…」

侍「?」

晴「すげー! 侍、あんた実はサッカー選手だったんじゃねーか!?」

侍「さっかー選手?」

晴「ああ、たぶんぜってぇそうだぜ!」

晴「ボールコントロールだって磁石が引っ付いてるじゃないかって思うくらいうまかったし!」

晴「海外の下部のチームに所属していてその正体はまだ世間一般には知られてないとかさ!」グイグイ

侍「お、落ち着くでござるよ」

晴「きっとネットとかで調べれば名前が乗ってるんじゃねーのか!」キラキラ

侍(純粋無垢な尊敬の眼差しでござるな…)

晴「なぁ、ちょっとこのわざやってみてくれよ!」

侍「む? いいでござるよ」

晴「本当か!?」

晴「じゃあ、えっとーこんな感じのわざなんだけどさ」

侍(晴殿はやはり子供だな)

侍(拙者にもこんな色をしていた時代があったのでござろうか)

侍(あったなのなら少しばかり思い出してみたいでござるな)

侍「ッ…!」ズキン

晴「どうかしたのか?」

侍(これは、過去の記憶でござるか?)

侍(山の中でござろうか?)

侍(おなごとふたりっきりそして――)

侍(な、なんだこれは!?)

侍「う……」ゲホ

晴「な、なんだよ! うわ、どうしたんだよ急に吐いたりして!?」

晴「た、体調悪かったのか? 無理させちまったか?」

侍「いや、違うでござる……」 

侍「とても、気分の悪い記憶が若干蘇ったでござる」

晴「そ、そうだったのか?」

侍「人間や場所までは思い出せなかったでござるが」

侍「その場面の映像だけは蘇ってきたでござる」

侍「おそらく拙者にとって一番嫌な記憶だったに違いないでござる」

晴「大丈夫か?」

侍「しばらく休めば問題ないでござるよ」

侍「休憩を挟んでまた再開するでござる」

晴「ああ……」

―― 夕方 ――

亜里沙家前

侍「ふー、汗びっしょりでござるな」

晴「そうだな」

晴「なぁ、本当に大丈夫か?」

侍「問題ないでござるよ。心配ご無用」

晴「ならいいけどな……」

晴「じゃあ、また今度技のコツとか教えてくれよ」

侍「御意でござる」

晴「それじゃあな」

侍「また明日でござる」

侍(今日はいい汗をかいたでござるな)

侍(しかし、あの記憶。現代のものにしては周りや服が随分と古臭かったでござるな)

侍(まぁ、記憶が混乱しておる様子。単なる気のせいでござろう)



晴「なぁ」

侍「む? どうしたでござるか? 確かに家に帰ったはずでは?」

晴「いや、家があいてなかったんだよ」

晴「兄貴達は部活で遅くなるし、親も帰りおせーしで」

晴「こういう日はいつもありささんの家で待ってるんだよ」

侍「そうでござったか。では、入るでござるよ」ガチャ

晴「ありささんから合鍵もらってんのか?」

侍「そうでござるよ?」

晴(相当信頼してるんだな。まぁ、確かに悪い奴ではないけどな)

侍「ありさはあともう少ししたら帰ってくるでござるな」

晴「じゃあ、それまでサッカーの動画でも見てようぜ」

侍「いや、その前にお風呂でござる。土まみれでござるからな」

侍「一緒に入るでござるよ」

晴「はぁ!? なにいってんだよ!」

侍「? なにを恥ずかしがっているでござるか?」

晴「当たり前だろ馬鹿!」

侍「まぁまぁ、そう申されずに」

晴「あ、ちょ! 脱衣所に連れて行くな!」

晴「は、離せよ!」

侍「そんなにお風呂が嫌いでござるか?」

晴「ち、ちげーよ! なんであんたと一緒に入らなくちゃいけないんだよ!」

侍「恥ずかしがらなくても大丈夫でござるよー。変なふうにはしないでござる」

晴「へ、へんなふうって――!」

侍「ほら、脱ぐでござる」

晴「あ! やめろ……! だ、誰か!」ヌギヌギ

侍「はっはっは騒いでも誰もこないでござるよー」

晴「キャ!」

侍「よし、上は脱げたでござるな……って」





侍「な、なぜ胸元を隠すためのものがついているでござるか…?」

晴「当たり前だろ! 俺は女だぞ!」胸元を隠しながら

侍「え」


俺は女だぞ 俺は女だぞ 俺は女だぞ

侍(その言葉が耳で木霊する中、拙者はお風呂に誘いその後脱衣所で発した言葉を一字一句思い出した)

侍(そして、ある一つの未来でほぼ確実に起こり得るであろう映像を作り出してしまった)

ニュースキャスター『東京都――で、小学生女子児童を脱衣所に連れ込み上半身の服を無理やり脱がせる事件が発生』

ニュースキャスター『容疑者の名前は侍。無職。年齢不明。男はふざけた口調で「女だとは知らなかったでござる。あれは事故でござる」などと供述しており――』

侍「……」タラタラ

侍(終わったでござる)

晴「……」プルプル

侍「あー、いやその」

晴「この、変態!」ゲシ

侍「い、痛いでござる! 蹴らないでくだされ!」

晴「うるさいロリコン! 気持ち悪い! どっかいけよ! バカ! バカ! バカ野郎!」ゲシゲシゲシ

晴「消えろ消えろ消えろ消えろ!」

侍「ま、間違えてしまったでござるよ!」

晴「普通気づくだろ! ウジ虫やろう!」ゲシ

侍(や、やばいでござる。こ、殺される…)

ガチャ

亜里沙「どうかしたのかな!?」

晴「ありささーん!」タッタッタ

亜里沙「な、なんで先生の背後に隠れるのかな?」

晴「あいつ、変態! ロリコン! 無理やり!」

亜里沙「お、落ち着いて晴ちゃん」

侍「あり……さ」ガク

とりあえず寝ようかな。

明日の朝、また投下するよ。

待たせてしまった人は本当に申し訳ない。

明日には1000到達するから期待しててくれ。

晴「い、一から説明するぜ! こいつが――」

亜里沙「そんな、侍くんがロリコンだったなんて…」

亜里沙「先生ショック」シクシク

侍「ご、誤解でござる!」

侍「拙者晴殿のことを男だと思っていたでござる!」

侍「だって、そうでござろう! その口調と服装では見間違えるのも無理はない!」

侍「そうではござらぬか!?」

亜里沙「まぁ、そう言われれば確かに頷けますけど…」

晴「で、でもよ!」

亜里沙「うーん。今回はお互い様じゃないのかな?」

亜里沙「先生は晴ちゃんにいつも言ってるよ? もっと女の子っぽくしなさーいって」

亜里沙「男の子っぽくしてるから間違われちゃうんだよ?」

晴「それは…! そうかもしれねーけど」

亜里沙「勿論、侍くんも悪いんだよ?」

侍「ぎょ、御意」

亜里沙「じゃあ、今回の件はこれで終わりだね」

晴「……」

亜里沙「晴ちゃん返事は?」

晴「チ わかったよ」

侍「御意でござる」

亜里沙「じゃあ、ありさお姉さんは今からお夕飯の支度をするよー」タッタッタ

侍「……」

晴「……」

侍「その、晴殿。本当に申し訳なかったでござる」

侍「乱暴してしまったこと謝罪するでござる」

侍「すまなかった」

侍「いくら勘違いしてしまったとはいえおなごに乱暴したのは許されぬことでござる」

侍「本当に申し訳なかった」

晴「……」プイ スタスタ

侍「晴殿……」

侍(嫌われるのも無理はないでござるか)

――

晴とモバPが会う前の公園 午前

蘭子「猫神よ。ここでやつの反応が途絶えた」(みくさん。ここで侍Pさんとはぐれてしまったんです)

みく「みくが駆けつけた時にはもう……」

みく(侍Pちゃん一体どこに行ってしまったにゃ)

みく(折角昔みたいにまた楽しめると思ったのに)

蘭子「あの……そ、捜索願も出していますからきっとすぐに見つかりますよ」

みく「そうだといいにゃ」

みく「ただ、ちょっともやもやするにゃ」

蘭子「ど、どうしてですか?」

みく「みくの直感では……」

みく「侍Pちゃんきっと女を作ってその女の家に転がり込んでるにゃ」

蘭子「いくらなんでもそんな…」

みく「いや、侍Pちゃんはかなりのモテ男にゃ。だとすれば一刻も早く侍Pちゃんを見つけなければいけないにゃ!」

新人P「おーいみくさん! いくっすよー」

みく「今いくにゃー!」

蘭子「? あの汚れを知らぬ小人は誰だ?」(あの身長が低くて童顔の男の人は誰ですか?)

みく「侍Pちゃんの代わりのプロデューサーにゃ」

みく「いつまでも赤羽根Pちゃんに頼ってもいられにゃいから新しい人間を補強したにゃ」

みく「まだまだ侍Pちゃんには及ばにゃいけどあの新人Pちゃんも頑張っているにゃ」

みく「それじゃあ蘭子ちゃん。みくは行くにゃ」タッタッタ

蘭子(んー、でも侍Pさんが戻った時にその新人さんのせいで居場所がなくなったりしないかな?)

蘭子(って考え過ぎかな。私も仕事にいこっと)

訂正

晴と侍Pが会う前

――

次の日 朝 亜里沙 家 前

侍「は、晴殿! いってらっしゃいでござる」

晴「…」プイ スタスタ

お昼 学校 教室内

侍「晴殿! 体操着を忘れていたでござるよ!」

晴「…」スタスタ

バサ

侍「そ、そんな乱暴に奪わなくてもいいでござるよ?」

晴「あんた、匂いとか嗅いでないだろうな?」

侍「そんなことしないでござる!」

晴「どうだか」プイ スタスタ

夕方 亜里沙 家 前

侍「晴殿お帰りでござる!」

晴「…」プイ スタスタ

侍「……」

亜里沙 家 食事中

侍「…」ボー

亜里沙「今日は元気がないですね?」

侍「そ、そんなことはないでござる」

亜里沙「晴ちゃんのことですか?」

侍「拙者は隠し事が下手でござるな」

亜里沙「ありさ先生はなんでもお見通しだよー♪ ねー、ウサコちゃん」

亜里沙「晴ちゃんもああ見えてまだ12歳ですからね」

亜里沙「簡単に人のことを許すことはできませんよ」

亜里沙「元気出してください。時間が経てば元通りになりますから」

侍「まことにそうなるでござろうか?」

亜里沙「大丈夫ですって。ほら、先生がナデナデしてあげるから安心して」ナデナデ

侍「しかし」

亜里沙「それだけ心配なら今週末にあるサッカーの観戦に晴ちゃんを誘って仲直り大作戦でもしてみますか?」

侍「サッカー観戦?」

亜里沙「なんと、先生のポケットの中にはあら不思議。今週末のサッカーの試合のチケットが入ってたよー。侍くん、いる?」

侍「い、頂くでござる!」

亜里沙「明日の夕方辺り誘ってみるといいですよ」

侍「かたじけない!」

亜里沙「うふふ。がんばってねー♪」

――

夕方 通学路

晴(ったく侍のやつ信じられねーぜ)

晴(あんなやつだとは思わなかったぜ)

晴(いや、勿論俺にも非はあるんだけどよ)

晴「……」

晴(いや、あいつが悪い。大体男同士でもあんなふうに無理やり服脱がしたりしねーだろ)

晴(ということはあいつ、もしかしてほもか?)

晴(考え過ぎか……)

晴(あーでも。無視するのはちょっとやりすぎたかな)

晴(そこは謝っちまわねーとまずいか?)

クソガキA「おい結城ちょっと付き合ってくれねーか?」

晴(あーやば。んなこと考えてたら面倒なやつに捕まった)

――

路地裏

晴「なんだよ。話でもあんのか?」

クソガキB「あんま舐めた口聞いてんじゃねーよ」

晴(田舎のチンピラかこいつは)

晴「もしかして告白か? だったらパス。帰るぜ」

クソガキC「ち、ちげーよ! 馬鹿かてめーは!」

晴「あー、もう面倒くせーな。話したいならもうちょっとサッカーうまくなってからにしろよ。三馬鹿トリオ」

クソガキA「おう、そのサッカーだよ」

晴(こいつも田舎のチンピラ風かよ。背伸びしてるのバレバレ)

クソガキA「お前が体育の授業で俺のこと抜き去ったりボールを奪ったりしただろ?」

晴「そんなこともあったなー」

クソガキA「そのときクラスの澪ちゃんも見てたんだよ!」

クソガキA「俺がどれだけ恥をかいたのか知ってんのか!?」

晴「なんだお前澪のこと好きなのか?」

クソガキA「そ、そんなんじゃねーし、べつに」

晴「はぁ…悪かったよごめんな。次はもっと上手くなれよ。これで満足か?」

クソガキB「おい! さっきから調子にのってんじゃねーぞ!」

クソガキC「女だからって暴力振るわれないとでも思ってんのか?」

晴「べつに。どうせ喧嘩でも俺のほうがつえーし」

クソガキA「チ 気持ちわるいんだよ男、女!」

晴「そろそろ帰っていいか?」

クソガキA「無視すんなよ! たまには女らしくしたらどうなんだよ!」

晴「!」

ドン

晴「あ、悪い。手が滑った」

クソガキB「こいつ! おいC! あれ使うぞ!」

クソガキC「おう!」

晴(鉄パイプ? どこに隠してたんだよそんなもん)

晴(でもちょっとやべーかも)

クソガキA「いっつ……おいやれ!」

クソガキB「オリャ!」ブン

晴「足―!」

バコン

晴「ッ!」バタン

クソガキB「え……?」

晴「ああああ……」

クソガキC「お、おいちょっとやばくねーか?」

クソガキB「お、俺ちゃんと加減したぞ?」

クソガキB「漫画の見よう見まねでやったのに…」

クソガキA「おいなにびびってるんだよ!」

クソガキA「こいつはもう動けないから後は素手でいくぞ」

クソガキB・C「お、おう……」

クソガキA「オラ!」

ボコボコ

晴「……」

クソガキA「こ、こんなもんか」ハァハァ

クソガキA「おい鋏もってこい!」

クソガキA「こいつの髪切るぞ」

クソガキB「そろそろやめたほうが……」

クソガキC「そ、そうだよ…もし大人に見つかったら」

?「おいキサマら」

クソガキA・B・C「」ピクン

侍「一体そこでなにをしておる」

晴(う……あれは侍?)

クソガキA「えーっとこれはそのですね」

侍「とっとと申せ!」

クソガキA「は、はい!」

クソガキA(な、なんだよこのおっさん。超こえー……)

クソガキA「えっと、あ、遊んでたらこいつが怪我しちゃったんですよ」

クソガキA「なーみんな?」

クソガキB・C「うんうん!」

クソガキA「こいつ男子の中でも一番やんちゃで――」

侍「三度は言わぬ。一体そこでなにをしておった」

クソガキA「え、だから遊んでて」

侍「遊んでいた? 違うであろう。男三人でよってたかっておなごを嬲っておっただろう」

クソガキA(こいつが女だってことばれてる!?)

クソガキA「いや、それは違いますよ」

侍「どこが違うと申すのだ!」

クソガキA・B・C「……」

侍「よってたかって男三人でおなごを甚振る。恥を知れ!」

侍「男としてキサマらは恥ずかしくないのか?」

侍「元来守るべき対象であるおなごをそのように扱って」

クソガキA「でも、僕らは」

侍「言い訳するのか?」

クソガキA「……」

侍「拙者が怒りをさらに撒き散らす前にここをされ。目障りだ」

クソガキA「す、すいませんでしたー!」ジャボボ タッタッタ

クソガキB「あ、おい待てよ! ってあいつ漏らしやがったぞ」タッタッタ

クソガキC「くそ!」タッタッタ

侍「……」

侍「晴殿!」タッタッタ

侍「大丈夫でござるか?」

晴「わざわざこなくてもよかったのによ」

侍「すまないでござる。拙者の到着がもう少し早ければ…」

晴「平気平気。あいつら喧嘩本当に弱いから」

晴「それに小学生の喧嘩だぜ? たかがしれてるだろ」

侍「晴殿がそういうなら……」

晴「ほら、こんなふうに楽勝に立て……ないな」

侍「足を痛めたでござるか?」

晴「打撲っぽいな」

侍「しょうがないでござるな」

侍「拙者がおぶっていくでござるよ」

晴「はぁ!? ふざけんな! ロリコンに体預けられるわけねーだろ!」

侍「変な意地を張っている場合ではござらぬ」

晴「……しゃーねーな」

侍「よいしょ」

侍「やはり軽いでござるな」

晴「うるせーよ! 早く進め!」

侍「御意でござる」テクテク

侍「……」テクテク

晴(こいつの背中……親父みたいにすげー広いんだな……)

晴(なんかこの背中に体預けていると妙に落ち着くな)

晴「しっかしあいつら今度あったら絶対ボコボコにしてやる」

侍「晴殿……」

晴「なんだ? 侍まで俺に女らしくしろっていうのか?」

晴「うちの家族や周りやありささんみたいによ」

侍「そうでござるな。出来るならもっとおなごらしくしてもらいたいでござる」

侍「なるべくなら、あのような出来事は二度と繰り返してほしくないでござる」

侍「おなごの傷ついてる姿は見たくはないでござるから」

晴「侍もそういうのか……」

晴「女らしくとかわかんねーよ」

侍「?」

晴「なー、教えてくれよ。女らしさってなんだ?」

晴「口調? 見た目? 中身?」

晴「俺にわかんねーよ。周りの言ってる女らしさってやつが」

晴「男兄弟が多いからってのもわからない理由の一つかもな」

晴「べつにいいじゃねーか。女でも喧嘩したりサッカーしても」

侍「拙者には女らしさというのはよくわからないでござる」

侍「女でも喧嘩したりサッカーしてもいいのかどうかも否定も肯定もしかねるでござる」

侍「拙者はさっきも言ったとおりよくわからないからでござるから」

晴「なんだよそれ」

侍「ただ、その女らしさというのは拙者にはわからぬが、晴殿が成長すれば知らず知らずのうちにわかるものなのだろう」

侍「色んなことを体験し、色んな経験をして成長をする」

侍「その過程のなかに女らしさのヒントが隠れていてそれを見つけ、理解し女らしさってものをきっと知るでござる」

侍「だから、今はそのままでいいでござる。ゆっくり焦らず成長して同時に女らしさというものを見つければいいでござるよ」

侍「まぁ、それでもやっぱりあのようなことは控えてもらいたいでござるけど」

晴「……」

晴「記憶もないくせによく言うぜ」

侍「そこをつかれるとなんとも痛いでござるな」アハハ

侍「しかし、記憶や体験を忘れているのにこういった発言をできるのは本当に不思議でござる」

侍「きっと重要な体験や記憶は脳ではなく魂に刻まれておるのだろうな」

晴「なに格好つけてんだよ」

晴「まぁでも。なんとなく心は軽くなったよ」

侍「……それはよかったでござるな」

晴「ああ」

侍「晴殿。週末にサッカーの試合を見に行こうと思っているでござる」

侍「もしよければ一緒に来てはくれないか?」

晴「ふふ、しょーがねーな。俺が一緒についていってやるよ」

晴「あ、その代わりガム奢れよー」

侍「御意でござる」ニコ

――

二日後 亜里沙 家 リビング

侍「……」

亜里沙「……」

オバサマ「……」

クソガキA「……」

侍(ふー、なかなか面倒なことになったでござるな)

侍(今朝インターホンがなったと思ったらこの男の子とその母親がたっていたでござる)

侍(要件は『あなたがうちの息子に暴力を振るった』ということらしいでござる)

侍(それで被害届けを出す前に事実確認をしたいということだったでござる)

侍(無論。拙者は手は一切出していない。叱り脅しはしたが手は上げていない。そこは大人として我慢していた。それに子供に手を上げるなど男として最低だ)

侍(さて、どうするでござるか)

亜里沙「侍くんちょっといいですか?」スタ

侍「どうしたでござるか?」

亜里沙「隣の部屋にいい茶菓子があるのを思い出したんです」

亜里沙「ただ、ありさお姉さんじゃ届かない場所に置いちゃったからちょっとついてきてもらってもいいですか?」スタスタ

侍「? かまわないでござるが…」スタスタ

オバサマ「…」イライラ

スー パタン

亜里沙「侍くんまずいですよー。あーもうどうやって侍くんを調べたんだろう…」ヒソヒソ

侍「む? どうしてでござるか?」

侍「拙者はなにもやましいことをしていないでござる」

侍「なにを恐れることがあるでござるか」

亜里沙「いくら侍くんが正しくたってあのオバサマには厳しいかも……」

亜里沙「オバサマってここら辺ではものすごいモンスターペアレントで有名だから」

侍「モンスターペアレント?」

亜里沙「えっとー、自己中心的なクレームを学校に入れる人のことなんです」

亜里沙「変に刺激すると面倒なことになるんです……」

亜里沙「昔オバサマの末っ子の担任をしたことがある保育士の先輩もオバサマには本当に手を焼いてたみたいですから」

亜里沙「だから、なるべく反論せずに穏便にことを済ませましょう」

亜里沙「でも、やんわりと殴っていないことはしっかり伝えるんですよ?」

亜里沙「難しいですけど一緒に頑張りましょう」

侍「御意でござる」

侍(我慢できればいいでござるが……)

オバサマ「まだなんですの!?」

亜里沙「あー、今行きます!」

亜里沙「それじゃあ、行きますよ」

スー パタン

亜里沙「ごめんなさい。茶菓子どこか別の場所においていたみたいで」

オバサマ「全く……あなたこの男の人の奥様?」

亜里沙「ち、違いますけど」

オバサマ「だったら恋人ね。すぐにこんなクズ男捨てたほうがいいわよ」

オバサマ「子供を殴るくらい頭がいってしまっている男ですから」

オバサマ「あなたは顔だけはよさそうですからすぐに男ができるでしょう」

侍(貴様のせがれはおなごに手をあげる卑怯者でござるけどな)

侍(子が子なら親も親でござるな)

オバサマ「本当は有無を言わさず届け出したかったけどうちの旦那が事実確認しろとうるさかったんですの」

侍「いや、しかし拙者はそこの男の子を殴ってはいないでござる」

オバサマ「どの口がいうのよ! みなさいよAくんの頬に出来た青痣を!」

オバサマ「これが動かぬ証拠じゃない!」

侍「いやそれは」

オバサマ「お黙りなさい!」

侍「……」ピクピク

亜里沙(侍くん堪えて!)

クソガキA「ママ……早く帰りたいよ。この人怖い」

オバサマ「ごめんねAくんもうちょっとの辛抱だからね」

オバサマ「うちの子が震えちゃっているじゃないの! どうしてくれるの!?」

亜里沙・侍(理不尽すぎる)

オバサマ「それにしても、汚い家ですこと」

オバサマ「あなたちゃんと掃除しているの?」

亜里沙「え、ええ。週に一回ほど」

オバサマ「週に一回!? あんただめな女ねー」

オバサマ「三日に一回はしなきゃだめよ」

オバサマ「それにお客様が来ているのに粗茶だけって」

オバサマ「やっぱり男がクズなら女もクズだったのね」

亜里沙「あ、あはは! そ、そうですねー……」

オバサマ「そうですねじゃないわよ! あんただいたいね――」

バン!

侍「……」ピクピク

オバサマ「なによあんた。急に机なんて叩いてどうしたの? はー、本当にクズね」

亜里沙「侍くん!?」

侍「訂正するでござる」

侍「拙者に対する侮辱はいくらでも受付よう」

侍「だがな! 亜里沙の侮辱は許さぬでござる」

侍「彼女は名も知らぬ、正体も知らぬ拙者を救ってくれた恩人」

侍「その恩人が侮辱され黙っているのは……一人の男として恥でござる!」

オバサマ「馬鹿じゃないの?」

侍「拙者はそれでかまわぬ。しかし、亜里沙に対する侮辱を撤回しろ」

オバサマ「嫌に決まっているじゃない」

侍「あくまでもそれを貫くと申すのか…」

侍「おい。Aと申したか」

クソガキA「」ビク

オバサマ「ちょっとなにAくんを呼び捨てで呼んでるのよ! 訴えるわよ!」

侍「恥ずかしいでござるな。このような親を持って。そして同時に悲しいでござるな。親にちゃんと自分を見てもらえず。猫を被った自分を見破ってくれないなんて悲しい以外に言葉がでてこない」

クソガキA「……」

オバサマ「あんたちょっとなに言ってるの!? 名誉毀損で訴えられたいの!?」

侍「貴様、なにも思わぬでござるか? おなごに手を出し、親に尻拭いをされそのうえ嘘まで申す」

侍「男として貴様は今どんな気持ちだ? 内なる自らの気持ちはどう申しておる?」

クソガキA「んなもん、恥かしいに決まってるだろ! 俺だってこんなことしたかなかったよ!」

クソガキA「でもよ! ああするほかなかったんだよ! 結城は喧嘩めっちゃ強いしよ! 勝つためにはあれしかなかったんだよ!」

オバサマ「ちょっとAくんどうしたの?」

クソガキA「うっせーくそばばぁ! 子供のことちゃんとみずに愛人ばっか見やがって!」

オバサマ「Aくん……どうしてそのこと……」

オバサマ「ちょっとどうしてくれるのよ! あなたのせいでAくんがおかしくなっちゃったじゃない」

侍「ここまできて人のせいにするか。怒りを通り越して呆れるでござる」

侍「話を戻すでござる。亜里沙に吐いた言葉を訂正しろ」

オバサマ「馬鹿じゃないの?」

クソガキA「馬鹿なのは母さんの方だよ……」

オバサマ「Aくん。本当にどうしちゃったの? 彼に脅されて怖くなっちゃったのよね?」

クソガキA「だから――!」

??「あの……ちょっといい、ですか?」

一同「!」

晴「こ、こんにちわ。結城晴っていいます」

亜里沙「はる……」

侍「殿?」

侍(晴殿にしては装いや言葉遣いが女性らしいというか……)

亜里沙(あれは本当に晴ちゃん?)

オバサマ「まぁまぁまぁ! もしかしてあなたたちの子供!?」

オバサマ「しかも顔中傷だらけ! こんなに可愛い顔しているのに!」

オバサマ「きっとあのくず男にやられたのね。本当にどうしようもない」

オバサマ「もう大丈夫よ。私と一緒に法廷に行きましょう。それであの腐った男を牢の中に入れましょうね」

晴(あ、えとそのー。なんだっけ……)

晴「ごほん。実はこの傷あそこにいるA君にやられてしまったものなんですよ」シュン

オバサマ「なんですって?」

オバサマ「まさかあなたもあそこの男に脅されて! 可哀想に」

晴(かわいそうなのはあんたの顔だよ)

晴「え、えと。でも証拠にかれのツイッターで私を殴たって投稿していたり。その他同級生のいじめを彷彿させるような文を投稿していたんですよ」

晴「これがそれをプリントアウトしたものです」ピラ

オバサマ「こんなものまで持たされてまぁ……相当おびえているのね」

晴(どういったらその思考回路になるんだよ)

クソガキA「母さんいいよもう帰ろう。結城の言ってることは本当だよ」

オバサマ「ちょっとどうしてくれるの! 本格的にAくんがおかしくなっちゃったじゃない!」

オバサマ「いいわ! あなたがその気なら法廷で会いましょ!」

侍「望むところでござる」

オバサマ「ふん。言ったわね。見てなさい。吠え面かかせてあげるから」

オバサマ「Aくん。いくわよ」ダッダッダ

クソガキA「……」タッタッタ

パタン

侍「む。亜里沙の侮辱を撤回させるのを忘れていたでござる……」

晴「どうせ侍のところに難癖つけて怒鳴り込んでくるだろうと予測して準備しておいてよかったぜ」

晴「なにが法廷で会いましょうだよ」

晴「まぁ、結局追い返せただけでその場で納得させるのは無理だったけどな」

晴「侍、大丈夫だ。あいつのオヤジは真人間だからAがどんなことをやっているのかっていうのはもう知っているはずだぜ」

晴「んで、うちの兄貴がそのオヤジと知り合いであのツイッターの情報を流したから間違いない」

晴「オヤジのほうから釘が刺されるだろうから訴えられることはないぜ」

侍「いや、それはいいでござるが、その格好どうしたでござるか?」

侍「拙者はそっちのほうが驚きでござる」

晴「まぁ、なんだ。女らしさってものを知ろうとこんな格好してみただけだ」テレテレ

晴「言葉遣いや仕草も兄貴に女らしいの教わったけどやっぱりどう女らしいのかはわかんねーや」

晴「それから、この洋服なんだけさ。似合ってる?」テレテレ

晴「えっと、プリーツスカート? 後は白のブラウス?」

晴「それから侍が前に言ってたニーソを履いてみたんだけど……」

侍「とっても似合っているでござるよ(拙者そんなこといっておったか?)」

晴「あー、そ、そうなんだ」テレテレ

晴「でもやっぱスースーして俺にはスカート合わねーな!」

晴「早くズボンに履き替えてー」

亜里沙「……」

侍「どうしたでござるか?」

亜里沙「えい」ギュ

侍「むごご! ど、どうひてえっしゃにウサコをおしつえけるでおあうあ!?」

亜里沙「先生からのお仕置きだよ。バツだよ」

亜里沙「なんでも絶対言うこと聞くって先生とお約束したよね?」

侍(あ! そ、そういえば拙者は我慢する約束を破ってしまったでござる)

亜里沙「もう、今回はたまたま運がよかっただけなんだよ?」

亜里沙「本当…ひやひやしたんだからね」ピト

侍「すまなかったでござる。次はしっかり守るでござるよ」

亜里沙「って、言っておきながらまた破るつもりですね?」

亜里沙「やっぱりもっとお仕置きが必要かな?」

侍「あはは…」

亜里沙「でも、あんな風に言ってもらえたのはちょっと嬉しかったかなー。なんて」アハハ

侍「そ、そうでござったか」

晴「…」ジトー

晴「お前ら付き合ってるだろ」

亜里沙「ち、違うよ! これはね、そのね! あれなんだよ!」アタフタ

侍「そうでござる! これで、それで、あれでござる!」アタフタ

晴(一体どれなんだ)

――

みく「にゃ!」

凛「どうかしたの?」

みく「今、侍Pちゃんがみくの見ていないところで浮気したにゃ!」

凛「……」

凛(悔しい。不覚にもその感覚に共感してしまった……)

end

予定をしていた話数よりもかなり増えそう。

風呂敷を大きくしちゃったからしかたないんですけどね。ちゃんと畳めるようなプランは考えてあるんでそこは安心してください。

もっともっと長い期間で作る作品になると思いますがよろしくお願いしますね。

小ネタ? っぽいなにか

――

晴「おい」

侍「みなまで言うなでござる」

晴「弁解はあるか?」

侍「腹を切る覚悟は出来ているでござる」

晴「はぁ……べつに切らなくていいぜ」

晴「ったく、なんで俺は週末に野球観戦なんてしてるんだよ」

侍「それは拙者がチケットをなくしたせいでござる。本当に申し訳なかった」

晴「ありささんそれ知ったとき顔は笑ってたけど目が笑ってなかったからな?」

侍「知っているでござる」

晴「俺はべつにいいんだぜ? 野球も嫌いじゃないからな」

侍「そう言ってもらえるが唯一の救いでござる」

晴「よかったな。たまたまうちの兄貴二人が野球観戦見に行くはずだったのに急に行かなくなって」

侍「まことにそうでござるな」

晴「うちの兄貴二人はキャッツのファンだからそっちのファンが多い席のはずだぜ」

侍「む? では今日はキャッツの応援をすればいいでござるな」

晴「そうなるな」

晴「ま、せいぜい楽しもうぜ」

晴「お、ここの席だな」

侍「どうやらそうでござるな」

晴「ふー。長い時間歩いたから座ると疲れが取れるぜ」

?「いやいや、これから応援で疲れちゃうからそれは意味ないよ!」

晴(うわ、変なのに捕まった)

友紀「あたしの名前は姫川友紀! よろしくねー!」

友紀「君は観戦するの初めてかな?」

晴「えっと、はい」

友紀「おっしゃ! じゃあ今日は心行くまで一緒に応援しようね!」

晴(うわー……)

友紀「ん、そこの人はお兄さんかな!?」

侍「ま、まぁそんなところでござるな」

友紀「お兄さんものすごーーく大笠原道小(おおがさわらみちしょう)選手に似てるね!」

侍「だ、誰でござるか?」

友紀「知らないの!? 全くしょうがないなー!」

友紀「大笠原選手はねキャッツのスター選手なんだよ!」

友紀「南の侍って呼ばれていて、今はちょっと年のせいか成績が悪いけど……」

友紀「でも、まだまだ全然すごい選手なんだよー!」

侍「おお、なんだか素敵でござるな!」

友紀「でしょでしょ! んでもってね」

晴(あーあ。これは仲良くなっちまうパターンだな)

晴(ありささん悲しむぞー。俺はしーらねっと)



侍「へー、なるほど。詳しいでござるな」

友紀「それは当たり前ー! ファンなら当然だしねー!」

友紀「いやーでもお兄さんのその侍言葉も素敵だねー!」

侍「そうでござるか?」

友紀「うんうん!」

侍「はっはは照れるでござるな」

友紀「それはキャラ付けでやってるのかな?」

侍「いや、気がついたときからこれでござった」

友紀「おおじゃあ生粋なんだ!」

晴(生粋の侍言葉ってなんだよ)

友紀「あ、そろそろ試合始まるよ」

友紀「二人共頑張って応援しようね!」

侍「御意!」

晴「はーい」

――

10回裏キャッツの攻撃

友紀「あー、だめか……」

晴(延長にもつれ込んで均衡状態はなかなか壊れないか)

晴(頼むから引き分けはやめてくれよなー)

侍「すまない。少しトイレに行ってきてもいいでござるか?」

友紀「えー! 一番いい場面でしょ!」

侍「しかし、先程から」

友紀「もー、じゃあ行ってきていいよー!」

侍「かたじけない」

――

侍「迷ってしまったでござる」

侍「ここはどこでござるか?」

打撃コーチ「大笠原! なにをやっているんだこんなところで!」

侍「あ、いや拙者は……」

打撃コーチ「いいからこい! それからユニホームはどうしたんだ?」

侍「あっと」

打撃コーチ「まぁいい。ロッカールームに行けばあるだろ」

侍(どこかでこの流れを体験したことがあるような……でござる)

――

11回裏 キャッツの攻撃

ノーアウト一、二塁

友紀「うおー! チャンスだー!」

友紀「お兄さんいないのもったいないなー! 早く戻ってこないとー!」

晴(それにしても侍本当に遅いな……なにやってんだ?)

友紀「ん? あの背番号は!?」

友紀「代打大笠原だー!」

観客 ワー ワー ワー

晴「すげー歓声」

友紀「うおー! 監督この大一番で勝負にでたでた!」

友紀「いやーでも大笠原なら絶対にうってくれるはず!」

――

侍(結局流されるがままここまで来てしまったでござる)

侍(とりあえず前の打者のおかげで簡単なルールはわかったでござる)

侍(ただ、バットの構えはどうするでござるか?)

侍「むー、一番構えやすい感じでいいでござるな」ス

観客 ザワザワ ザワザワ

実況「おおっとこの構えは!? 大笠原選手バッティングフォームを変えてきましたね」

解説「まるで居合い切りのような構えですね」

侍(どうしてかこの位置が一番馴染むでござる)

実況「さーこの打撃フォームが吉と出るか凶と出るか」

実況「外野の大谷はバックホームに備えます」

実況「ピッチャー第一球投げました!」

バスン

審判 ストライク!

侍「は、早いでござるな。それに低くてこれじゃまともに当たってくれないでござる」

侍「しかし目視できない速さではない」

侍「高めにさえ来てくれればしっかり捉えられるでござる!」

侍「それまでスリーストライクにならぬよう粘るでござる」

ファール

ファール

ファール

侍「よし、そろそろ高めにくるでござろう」

侍「呼吸を落ち着かせて物を切るようなイメージで振り切るでござる」

侍「しかし、なぜこのような構えが一番楽なのでござろう?」

侍「まぁ、いいでござる」

実況「ピッチャーモーションに入って投げました!」

侍(高め―!)

カキン

実況「ストレート打ったー! 大谷下がる、大谷下がる!」

実況「入ったー!」

実況「サヨナラスリーランホームランです!」

――

友紀「あれは! あれはまさしく!」

友紀「全盛期の大笠原ー!」

友紀「二年も待ってやっと……!」

友紀「うおー!」

晴「くっそ! まじで侍どこ行ったんだよ!」

晴「携帯繋がらねーじゃねか!」

実況「おっと大笠原歓喜のあまりにダイヤモンドの上でヘルメットをとってしまった!」

実況「おっと待ってください?」

実況「あれは、あれはちょんまげだ!」

実況「南の侍だ! 大笠原侍の姿になりきっている!」

晴「あれ……」

友紀「どうかしたのかなー!?」

晴「いや、あれ侍じゃね?」

友紀「? 大笠原選手だよ」

晴「いや、あれ間違いなく侍だよ」

友紀「なにいってるの?」

晴「……」

晴(あいつもしかして野球選手と間違われて試合に出たわけじゃないよな……)

晴(さ、さすがにプロ相手にホームランなんて打てるわけないしな……)

晴「うんきっと俺の勘違いだ」

晴「ははは」

end

定期的にこういうつまらないスポーツネタをやりたくなっちゃう病。

end

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