アルミン「アニってさ・・・」(36)
夜、倉庫
ガチャ
ベルトルト「・・遅れてゴメン、ライナー、アニ。・・・」
ドスッドスッドスッ
アニ「このっこのっこの! 馬鹿ライナー!!」ドスッドスッドスッ
ライナー「いた、いたいっ、いってえ! 謝ってんだろ! 執拗に向こう脛を狙うのをやめろ!」
ベルトルト「アニ・・・? どうしたの、テンション高いね・・・」
アニ「・・・ベルトルト、あんたもだ」ギロッ
ベルトルト「はえ?」
ライナー「イテテ・・・、・・・コイツに『青い目は暗いとこ見えやすそうで、”戦士らしくて”良いな』って言ったんだよ。
そしたら怒って」
アニ「乙女の瞳を『戦士』っていうなんてデリカシーがないんだよ・・・」
ベルトルト「えっ『戦士』って最上級の褒め言葉じゃないの?」
バシッ!! クル―――ドサアアッ
ライナー「べ、ベルトルトオ」
アニ「~~今までずっと我慢してたけど、あんたたちのそういう”戦士が一番”って価値観、本っ当ついていけない・・・!
考えるのは勝手だ、でもそれをわたしに押し付けるようなこと言わないで!
こっちは乙女なんだ、傷つくんだよ、これでもね。それが理解できるまで、悪いけど距離を置いてくれ」クル
ベルトルト「ちょ、ちょっとアニ」チングリガエシ
ライナー「・・わかった。その通りにしよう」
アニ「・・・っ」バタン!!
ベルトルト「ライナー・・・追いかけて謝ったほうが」ムク
ライナー「あいつだって俺たちが悪気ないことはわかっているだろう、謝ってどうなる問題じゃない。
・・・アニは俺たちと違って、根っからの戦士って訳じゃないからな。たまには戦士を休んだほうがいいかもしれん」
ベルトルト(・・・戦士って休んだりするものなの?)エー
・・・
アニ「・・・」スタスタ
アニ(やりすぎてしまった・・・。でも、顔を見て戦士みたいだなんて、あんまりだよ。確かに、わたしの外見はよくない・・・けど)
アニ(・・・鏡)ニコ
アニ「・・・」フッ(・・・怖い顔。最近、笑ってないからな・・・)
アルミン「ヨイショ、よっと・・・、っあ!」フラフラ ドンッ
アニ「!」(何、急に大きな箱ぶつけられて・・・)ペタ
アルミン「ご、ごめんアニ! 大丈夫かい!? ~~ああ、こんな箱、置いて・・・!」トサ
アニ「・・・ああ、平気。気にしないで・・・」
アルミン「そんな訳にいかないよ、女の子相手に・・・。ほら、手を。立てる?」ハイ
アニ「・・・、・・・?」
アニ(誰だっけ、この人・・。ここに来る前にもこんな姿を見ていたような・・・なんだろ)スッ
アルミン「よっと。本当にゴメン。大きな荷物を運んでいたから、前方不注意で・・・。怪我は?」ガシ ヒョイ
アニ「・・・平気」ボンヤリ
アルミン「そう・・・? とりあえず、それならよかった、安心したかな」ニコ
アニ「・・・」ニコ
ジャアマタネ ウン
アニ「あ」
アニ(・・・自然に笑ってた)
・・
翌日、図書館
パタン
アニ(わかった・・・、子供の頃、隠れて読んだ童話の王子様に似てるように見えたんだ。なに浮かれてるんだか・・・)ハア
アルミン「あ、アニ」
アニ「! アルミン」
アルミン「やあ。なに見てたの?」
アニ「別に、暇つぶしだよ。あんたは?」サッ
アルミン「僕はちょっと調べ物してるんだ」
アニ「ふーん。熱心だね」
アルミン「僕にはコレしかないからね」ハハ
スタスタ・・・
アニ(目が輝いてた・・・本当に勉強が好きなんだな)
・・
掃除時間
キイ
アニ「ねえ、ゴミだし終わったから。・・・?」(窓際に男子が集まって・・・)
ワイワイ
モブ男1「あーっ本当クリスタちゃんマジ天使~! こっから立ち話してるの見てるだけで眩しいわ」
モブ男2「だよな! あークリスタちゃんとふたりっきりで掃除してえ」
モブ男3「クソー羨ましいなアルミンのやつ、劣等生のくせにクリスタちゃんと楽しそうにしやがって・・・」
アニ「・・・」(・・・まあ適当にやっとくか)
モブ男1「つーかさ、・・・ぶっちゃけ『氷の女』も金髪碧眼小柄なのに、違いすぎだよな」
アニ「!」
モブ男2「オイ、お前それ言っちゃだめだろ~」
モブ男3「まあそこは女神と氷の女の違いだろ。マジいっしょに掃除してるだけで怖いわ~」
モブ男1「わかるわかる、いっつも怒った顔してるもんな。顔全然可愛くねえしよ・・・。俺いつキレて金玉蹴られるかと・・・」
アニ「ねえ」
モブ男「!!!」
アニ「ゴミ出し。・・・終わったから、もう帰っていいよ」
モブ男「お、おう・・」ソロソロ
アニ「・・・」
バタン
モブ男1「うわーっマジ焦ったわ!!」
モブ男2「どうしよ、俺次の対人格闘怖いんだけど・・・」
モブ男3「お前チンコちっちぇーから蹴られても同じだろ」ギャハハ
ワイワイ・・・
アニ「・・・」スタスタ
アルミン「――で、―――と思うよ」
クリスタ「なるほど! ―――で、―――なんだね」
アニ(・・・。本当に、アイツらの言うとおりだね。あの子らは眩しい・・・わたしは、あの子らと違う)
アルミン「―――だよ。! あ、アニ!」クルッ ニコ
アニ「!」
クリスタ「あ、アニ。お疲れ様~」
アニ「どうも・・・」
アルミン「じゃあそういうことだからね、クリスタ」
クリスタ「うん、よくわかったよ。本当にありがとう、アルミン。アニも、またね!」フリフリ
タタタ
アルミン「アニ、昨日話したことなんだけど―――」
アニ「・・・ねえ、」
アルミン「うん?」
アニ「わたしに話しかけないほうがいいよ。あんたも、氷の女と・・・なんて噂たったらイヤだろう。こんな顔のヤツと」
アルミン「・・・」
アニ「そういうことだから。じゃあね」クル
スタスタスタ
アニ(・・・なに浮かれてたんだろう、昨日から。そもそもこんなふうに馴れ合ったら、これまでの努力が・・・。
お父さんに戦士になれって言われたのに、こんな状態じゃ・・・誰にも合わせる顔がない・・、頭冷やさなきゃ・・・)スタスタスタ ・・・ピタ
アニ「・・・」チラ
―――シーン
アニ「・・・はっ」(イヤだな、なに振り返ってんだろ。追いかけて、なんて期待してたのか・・・本当に)ガシッ
アニ「?」(腕を掴まれ・・・)
アルミン「アニ!」グイ
アニ「アルミン」
アルミン「ちょっと来て!!」グイグイ
アニ「・・・は? ちょっ、アルミ、わ!?」バサ
アルミン「もう放課後だからいいよね! その外出用マント、借りてきたからつけて!!」スタスタスタ
アニ「ちょ、ちょっと・・・」トテトテ
・・
ガサガサ
アニ「アルミン、どこへ行くの」
アルミン「そこ、ロープがあるから気をつけて。あと、その草もトゲがあるからね」グイグイ
アニ「・・・?」トテトテ
・・
ガサガサ ・・・キラ
アルミン「・・・ついたよ」
アニ「え・・・? ・・・!!」
キラキラ
アニ(・・・湖だ。青い澄んだ湖、青い空と交ざってる・・・。・・・森が暗くて怖そうだから近寄らなかったけど、奥深くにこんな綺麗な場所があったんだ)
アルミン「・・・一見、厳しくて怖い雰囲気あるけどさ、深いところは澄んでいて・・・すごく綺麗だよね」
アニ「そうだね・・・」
アルミン「・・・アニのこと、なんだけど」
アニ「・・・。え」
アルミン「そんなにアッサリ返されると、ショックだなあ・・・僕なりに考えて言ったんだけど」ハハ
アニ「・・・っ、湖、キレイだね」フイ(なんなの・・・)
アルミン「アニの瞳の色とソックリだよ」
アニ(本当、なんなの?)「・・・あんなに綺麗じゃないから」
アルミン「そう言う人もいるかもしれないね。でも僕みたいに綺麗と思ってるヤツもいるよ、それは絶対のことだから・・・
それを伝えたくって」
アニ「アルミン、まさかそんなこと言うためにココに来たの?」
アルミン「我慢できなかった。・・・アニは顔立ちも美人だし、それなのに、勝手なこというヤツらがいるから」
アニ「・・・」ドキ(・・・そういえば、アルミンの目の色、輝いてると、空の色と似てる。・・・)
アニ「あんたさ・・・」ドキドキ
アニ(この景色みたいに、空が湖を照らしてくれたらいいのに)
アルミン「うん?」
アニ「・・・おもしろいね」
アルミン「・・・。・・・? ・・・!!」カーッ
アニ「・・? アルミン?」
アルミン「イヤ、あ、あああ、あの・・・」アワワ
アニ「?」
アルミン「よ、よく考えたらっ、ハハ、僕何してるんだろう!
ごめんアニ、キミも予定とかあったろうに、急にこんな・・・! ああ考えたら腕も掴んじゃったし、~~~だいたい、
キミに好きな人や、こ、恋人がいれば、男女二人でこんなところにいること自体嫌だろうに・・・っ、その、だから!」アタフタ
アニ「・・・っ」ハッ(わたし、何してるんだろう?)「・・・。アハハッ」
アルミン「・・・!」ドキッ
アニ「っフフフ、・・・アハハハっ、キャハハハハ・・・・っ! アハハハハ・・・!」クスクス
アルミン「・・・っ、アニ、」ドキドキ
アニ「アハハハッ、フフフフ・・・っ」
アルミン「ねえアニ! 僕、キミのこと「キャッハハハハ! ふふ、ふふふ・・・!」グス
アルミン「ア・・・、っ?」
アニ「・・・あはははっ・・・、っ・・・ふふ、はははっ・・・、~・・・! ふふ・・・ッ」ポロポロ
アルミン「・・・アニ・・?」
・・
2年後、地下室
カツン、カツン、カツン
ガチャ
アルミン(アニの笑った顔を見たのはあの2回を含めて、・・・3回だった)
ハンジ「氷漬けのアニの面倒が見たいなんて、仲間思いだねえ」
アルミン「そうでしょうか」
アルミン(4回目はない)コツ
ハンジ「ああ、誰にもできることじゃないよ。おっといけない、ちょっと待っていてくれ!」
カチャカチャ
ハンジ「さあ準備ができたよ、アルミン!」
アルミン「はい。・・・」カチャ
ハンジ「・・・」ゾク
ハンジ(・・・人間性を捨てるため、アニの拷問役を買って出るなんて、大したものだよ。本当に)
終わり
>>16から差し替え
アニ「・・・。・・・ふふ・・・。・・・アルミン・・・実はさ・・・頼みがあるんだ」グス
アルミン「! ・・・なにかな」
アニ「ここから・・・わたしを突き落としてくれない?」
アルミン「!! え・・・っ」
アニ「・・・ふふ」
アルミン「それは・・・できない」
アニ「ひどいな。わたしのこと、想ってくれてるって言ったじゃない? 勝手なヤツだね」
アルミン「それとこれは違うことだよ、アニ・・・。・・・。どうしてもっていうなら、僕が飛び降りる」
アニ「・・・それじゃ、逆だよアルミン」
アニ(今の気持ちのまま死んでしまいたいから言っているのに・・・)
アルミン「急にどうしたの? ・・・聞いてもいいかな」
アニ「別に。もう、どうでもよくなって。・・・どうせわたしは、恋とかしちゃいけないし」
アルミン「・・・。それは・・・どうして」
アニ「故郷の決まりだよ。イヤ違うな、わたしが自分で選んだんだ。恋なんてしないって」
アニ(お父さんの、「帰ってきて欲しい」って言葉を叶えるために。わたしは全部捨てて戦士になったハズなのに)
アルミン「・・・本当に? 自分で? ・・・そんなに辛そうな顔をしているのに?」
アニ(そうだ、・・・わたしは流されて戦士をやっていた。自分がなかった。昔から・・・中途半端だ。その結果こんなことに・・・)
アニ「・・・。・・・もう、死んじゃいたい・・・」グス
アニ(お父さんにも・・・ライナー、ベルトルトにも・・・アルミンにも、会わせる顔なんてないんだ・・・)
アルミン「・・・。アニ、手を」ヒョイ
アニ「?」ボンヤリ スッ
ガシ
アニ(昨日も思ったけど。・・・アルミンって、案外握力はあるよね。当然か、男だもんな)
アルミン「いっしょに飛ぼう」
アニ「・・・え?」
アルミン「立体機動装置はないけど。・・・今、ここから、二人で。もしアニが望むなら」
アニ「・・・本気?」
アルミン「僕は本気だ。・・・僕の命を捨てて、アニが幸せになれるなら、全然構わない」
アニ「・・・ハハ・・・どうしてそこまでしてくれるの? まともに話したのだって、昨日が初めてじゃないか」
アルミン「僕は・・・。・・・外の世界への本を読んだとき、その瞬間、死んでもいいから外の世界へ行きたいと思った」
アニ(目がキラキラとしている・・・空の色だ。勉強をしていたときと同じ)
アルミン「その気持ちは、5年経った今も変わってないし、きっと一生変わらない。・・・だから、僕は自分の中で
コレだと思った気持ちは、絶対に通すことにしているんだ。それで、その選択を後悔したことなんてないから」
アルミン「そして僕は今、アニが好きになった。だからアニのためならなんだって捨てると選択したんだ」
アニ「・・・!」ドキ「言うね。可愛い顔して・・・」
アニ「だったら・・・、だったら、わたしを普通の女の子にして。全部、全部・・・終わらせて欲しい」ドクン
アニ(罪をなかったことにするなんてことはできない。だから、罰して・・・どんな方法でもいいから、そうして、わたしを
まっさらな女の子に戻して欲しい)
アニ「アルミン、わたしを救って」ギュ
アニ(ここからいっしょに飛び降りれば、死んで償うことができれば、・・・アルミンと綺麗なかたちで生まれ変われるかもしれない!!)ドクン、ドクン
アルミン「いいよ、アニのためなら!」ギュッ
アニ「アルミンっ、・・・~~っ!」バッ
アニ(空と湖の色が混ざってるみたいに、あんな風に綺麗に・・・!!)
・・
ヒュウウウ・・・
アニ「・・・っ、う、・・・」ハアハア
アルミン「アニ、しっかり手を握って、いくよ!」グイ
アニ「!」ドサ
アルミン「・・・っはあ、よかった、引き上げられた・・・。アニ・・・怪我、ない?」ハアハア
アニ「・・・は、はは。(なんて情けないんだ・・・)ザマないね、結局死ねなかった」
アルミン「死ぬのは誰だって怖いよ。それより・・・僕はアニが死にたくないって言ってくれて、安心した」
アニ「・・・。面倒かけてごめん」
アルミン「全然。アニの本音がちょっとでも聞けて、僕はうれしいよ。アニは・・少しは、楽になった?」
アニ「・・・・。」
アニ(アルミンは兵士だ。わたしは・・・)
アルミン「・・・。戻ろうか」
アニ「ああ、先に戻ってよ。・・・いっしょにいるところ、見られたくないでしょう」
アルミン「アニ・・・」
アニ「行ってよ」ジッ
アルミン「・・・、・・・わかった」クル
スタスタスタ
アルミン(アニの目はさっきまでとはまるきり別人のようだった。本音を吐き出して、いつもの調子を取り戻したのだろうか。
しかし、そういうには、その目はまるで敵を見るような突き放した冷たい色をしていた)
アルミン(もう・・・まともに話すことはこれっきりになるんだろう、という予感がする)
アルミン(でももしそうであっても、僕の「アニを普通の女の子に戻すためならなんだってする」という気持ちは、
選択した以上絶対に揺るがない。何があっても)
アニ(アルミンは強い。一度決めたことを突き通せる。だが・・・わたしは弱い、いざ死のうとしたら、
お父さんやライナーたちの顔が浮かんで、本当に恐くなった)
アニ(なぜ弱いのか、と考えたことがある。勿論生まれつきかもしれない。でも仮説として、戦士として二つの真逆の考えに
板挟みになりながら成長すると、精神が歪んで結果弱くなってしまうんじゃないかということを考えた)
アニ(ライナーたちも弱い。戦士は弱い。兵士のヤツらみたいにまっすぐじゃない。・・だから飛び降りる瞬間の
強烈な恐怖はわたしに戦士であるという事実を突きつけるのには十分だった。そしてあんなときでもアルミンの目は輝いていた・・・)
アニ(もう、兵士―――アルミンとは話さない)
・・
アニ(そう、決めていたはずなのに)
・・・
2年後、地下室
カツン、カツン、カツン
ガチャ
アルミン(アニの笑った顔を見たのはあの2回を含めて、・・・3回だった)
ハンジ「氷漬けのアニの面倒が見たいなんて、仲間思いだねえ」
アルミン「そうでしょうか」
アルミン(4回目は・・・)コツ
ハンジ「ああ、誰にもできることじゃないよ。おっといけない、ちょっと待っていてくれ!」
カチャカチャ
ハンジ「さあ準備ができたよ、アルミン!」
アルミン「はい。・・・」カチャ
アルミン(アニ、遅くなったけど、約束を守るよ。僕の人間性を捨てるから、その代わりにこの手でキミを罰して罪から
救う。・・・今、普通の女の子に戻すからね)ギラ
ハンジ「・・・」ゾク
ハンジ(・・・アニの拷問役を買って出るなんて、大したものだよ。本当に)
終わり
このSSまとめへのコメント
これ、進撃中学の話ですか?
だったら対人格闘なんてないです。
進撃中学じゃないとしたら、
アニはアルミンに微笑まれただけで笑わないし掃除とかもないと思うんですけど。
少ししか見てないのでわかりませんが。
確かに
アルアニはキャラ崩壊ってレベルじゃかいよな。
特にアルミンが。
↑誤字った笑