さやか「ブラックジャック先生なら恭介の手を治せるはず!」(87)

恭介「僕の手はもう二度と動かない。奇跡か、魔法でもない限り治らない!」

さやか「あるよ!」

恭介「えっ!?」

さやか「魔法は無いけど、奇跡ならあるんだよ!」

さやか「奇跡を生む天才外科医ブラックジャック先生なら恭介の手を治せるはず!」

さやか「あのー、あたし美樹さやかっていいます。ブラックジャック先生ならどんな怪我や病気でも治せるって聞いてここまで来ました!お願いです恭介の手を治してください!」

BJ「あー美樹さやかっていったかな、お前さんそうやって何の説明もなくただ治して下さいって言われても困るんだがね」

さやか「あー確かにそうでしたねー。ごめんなさい、あたし恭介の手が治るかもと思ったら興奮しちゃって。順を追って説明しますね」

さやか「恭介っていうのは、神童と呼ばれるほど将来を期待されていたヴァイオリニストでした。だけどある時、交通事故で片手が動かなくなってしまったんです」

さやか「それでも最初はお医者さんからは治ると言われて治療をし続けていました。なのに、つい先日先生からもう治る見込みはないって…」

さやか「お願いです!もうブラックジャック先生にしか頼れないんです!だから…」

BJ「ふむ、ところで君とその恭介ってのはどういう関係なんだ?」

さやか「え!」

BJ「そこまで必死になるんだ、よっぽど大切な人なんだろうな」

さやか「えーと///幼なじみです、そうただの幼なじみなんです!」

BJ「なるほど…。じゃあ、お前さんはその幼なじみのために2000万払えるか?」

さやか「に、2000万!!!!」ガビーン

さやか「えーと何個か桁が多いなあ…。み、耳が悪くなったのかなー…。に、2000円の聴き間違いですよねー」

BJ「お前さんの耳はどこも悪く無い。それに普通の病院で手術するとしても2000円では絶対無理だな」

さやか「2000万なんて値段、普通ありえませんよ!」

BJ「あいにく私は無免許医なんでな。保険も効かないし手術も法外な値段になるんだ」

さやか「ち、ちょっとこれは恭介のご両親にも聞いてみないと…」

BJ「私は恭介の両親がどうとか聞いてるんじゃない。さやか、おまえさんが払えるかどうかって聞いてるんだ」

さやか「そんなあ、中学生がどうやったって払える額じゃないよー!銀行に強盗しろってでも言うんですか?」

BJ「まさか。私も今すぐ払えるとは思っていない。さやかが大人になってから少しずつ払ってくれればいい。いわゆるローンってやつだ」

さやか「2000万となると、何年かかるんだろ…」

さやか「少し、考えさせて下さい…」

さやか(手が治らないと知った時の恭介、今にも死んでしまいそうな顔してたな…。もしかしたら自殺してしまうこともあるんじゃ…)

さやか(やっぱり恭介の事を考えたら2000万なんて安いもんだよ!)

さやか「…わ、わかりました先生!あたしも覚悟を決めます!」

さやか「2000万円払います!」

ブラックジャックの家

恭介「さやか、ほんとうに治るの?また、ぬか喜びさせられるんじゃないかって凄く心配だよ」

さやか「大丈夫だよ恭介!絶対に治るから!」

さやか(…あたしだって凄く心配だよ!)

BJ「それでは手術を開始する」

ピノコ「ちぇんちぇー。待合室にいら女の子ってこの上條恭介って子の恋人さんやの?」

BJ「ピノコ、手術中だぞ、集中しろ」

BJ「注射器」

ピノコ「あい」

BJ「メス」

ピノコ「あい」

…1時間後

さやか(神様、仏様、BJ先生…どうか、恭介の腕を治して…!)

BJ「ふぅ…」

さやか「先生!手術は?手術は成功したの?」

BJ「ああ…成功だ」

さやか「…」

さやか「やったー!!ありがとうございます!本当にありがとうございます先生!」

BJ「手は治ったが、前のように動かすには長くきびしいリハビリが必要だ。おまえさんが頑張って支えてやれ」

さやか「はい!」

数週間後

恭介「おはようさやか!」

さやか「もう学校に来ても大丈夫なの恭介?」

恭介「うん、大丈夫だよ。それにBJ先生が手を前のように動かすようにするには、生活を怪我する前の生活に戻して、手を慣れさせた方がいいって言ってたんだ」

さやか「そっかー(なんか、こうしていっしょに登校するのなんて久しぶり///)」

仁美「お久しぶりです上條くん。もう退院なさったんですの?」

恭介「久しぶりだね志筑さん。今日から学校に行くんだ」

仁美「そうですの…」

放課後

さやか「仁美が相談事なんて珍しいね。それで…話って何?」

仁美「恋の相談ですわ。私ね、前からさやかさんに秘密にしてきたことがあるんです」

さやか「え?」

仁美「ずっと前から…私…上條恭介君のこと、お慕いしてましたの」

さやか「そ、そうなんだ。あはは…まさか仁美がねえ。あ、なーんだ、恭介の奴、隅に置けないなあ…」

仁美「あなたは私の大切なお友達ですわ。だから、抜け駆けも横取りするようなこともしたくないんですの」

仁美「上條君のことを見つめていた時間は、私よりさやかさんの方が上ですわ。だから、あなたには私の先を越す権利があるべきです」

仁美「私、明日の放課後に上條君に告白します」

仁美「丸一日だけお待ちしますわ。さやかさんは後悔なさらないよう決めてください。上條君に気持ちを伝えるべきかどうか」

さやか「…」

さやか(仁美の目、真剣だった…。仁美の言ってた事は冗談なんかじゃない…)

さやか(仁美が告白したら恭介はどう返事するのかな。恭介と仁美が仲が良かったなんて話も聞かないし、つきあったりなんかしないよね?)

さやか(でも、もしかしたらって事もあるし…)

さやか(そうならないためにもあたしが先に告白すれば…)

さやか(ううん、そんなのできないよ!もし断られたら…今の関係まで壊れてしまうかもしれない…)

さやか(だ、大丈夫だよ。恭介はヴァイオリン一筋だから、女の子に興味がないはず…)

さやか(…)

さやか(自分でこんな事言ってむなしくなってきた…)

2日後

恭介「…でね、志筑さんに告白されちゃったんだ」

さやか「へー…、あの仁美がねー…。恭介もまあイケメンな方だし…」

恭介「返事は、もう少し待ってもらいたいんだって言ったんだけど…」

さやか「恭介ーそれは駄目だよ…。お、女の子を待たす男子は嫌われるぞ…。それで恭介はどうすんの?」

恭介「うん、凄く迷ってるんだ」

さやか「…自分の気持ちに、素直になるのが一番なんじゃないかな?『本当の気持ちと向き合えますか?』ってやつだよ」

恭介「そうだね、さやかの言うとおりだ。決めた、僕は志筑さんの気持ちに応えようと思う」

さやか「…え!?」

さやか「い、良いんじゃない!あたしも親友の仁美と幼じみの恭介がカップルになるなんて…凄く嬉しいよ!」

恭介「ありがとう、相談に乗ってくれて。さやかには感謝してるんだ、いつも僕を支えてくれて…」

さやか「うん…。困った事があったらいつでもさやかちゃんを頼ってくれたまえ!なんてったってあたしは恭介の幼じみなんだから!」

さやか(今、あたしが告白したらどうなるかな…)

さやか(恭介は仁美の気持ちに応えるって言ってるんだから無理だよね…。でも、あたしが恭介の手術代を肩代わりしたって事を言えば…)

さやか「…恭介、あたし先に帰る…。ちょっと急用を思い出した…」

恭介「え…」

さやか「じゃあ…さよなら!!」

恭介「ちょっと待ってさやか!」

さやか(あたし最低だ!!手術代を払った事を盾に、恭介とつき合おうとしていた!)

さやか(あたしなんて恭介に告白する資格さえない!)

恭介「待って、さやか!!」

さやか「え!?」

恭介「危ないー!!さやかああ!!」

キキィ――――― ドン

「キャー!!」

「女の子がトラックにひかれたぞ!!」

「誰か!救急車を!」

「急患でごんす」

恭介「ああ…さやか…」

恭介「お願いですブラックジャック先生!さやかの体を治して下さい!他の医者は匙を投げてしまい、先生しかいないんです!」

BJ「手術を引き受けてもかまわないが1つだけ条件がある」

恭介「何でもします!さやかは僕の大切な親友なんです!」

BJ「手術代として2000万円もらおうか」

恭介「に、2000万!!??」ガーン!

恭介「…さやかの両親に相談してみます」

BJ「駄目だ。おまえさんが払わなくちゃいかん」

恭介「そんな!こんなのあんまりですよ!中学生の僕が払えるわけないじゃないですか!」

BJ「今すぐ払えるなんて思ってないさ。大人になって少しずつ返してくれればいい」

恭介「いや、それでも…将来払える保障なんてないし…」

BJ「情けない奴だな。さやかはおまえさんの手を治すため2000万払うって約束したんだぜ」

恭介「え!?さやかが!!」

BJ「そうだ、恭介。おまえさんが世界一のヴァイオリニストになるって信じて」

きっと恭介は2000万を払わないって話になるよ

恭介「さやかが…僕のために…」

BJ「さあ、どうする?」

恭介「さやか…」

恭介「わかりました!将来、絶対に世界一のヴァイオリニストになってお金を返してみせます!だから、さやかを助けて下さい!」

BJ「それを聞きたかった」

BJ「ピノコ!オペの準備だ!」

ピノコ「あらまんちゅ!!」

…数時間後

さやか「あれ?ここどこ?ベットの上?確か…あたしトラックにひかれたんじゃ…」

恭介「気がついたんだね、さやか!ここはブラックジャック先生の家だよ」

さやか「恭介!…という事はあたし、ブラックジャック先生に助けてもらったんだ…」

恭介「さやか!ごめんよ!君がこんなにも僕の事を大切に思っていてくれていたなんて!なのに僕は…」

さやか「恭介…」

ピノコ「ちぇんちぇー。あの二人うまくいくかなあ?」

BJ「さあな。私に恋愛の機微なんて全くわからん」

BJ「だが、二人はこの事がきっかけでいっしょにいられる事の尊さに気づいただろうさ。あとは二人の本当の気持ち次第だろうな」

十数年後

コンサートホール

ピノコ「演奏楽しみやね、ちぇんちぇー」

BJ「そうだな」

さやか「先生、お久しぶりです」

BJ「もしかして、さやかか?」

ピノコ「綺麗になったのよさー」

さやか「ありがとうピノコちゃん」

さやか「先生、本当にありがとうございます。先生の手術がなければ、彼はこうしてコンサートなんてできる事はありませんでした。この恩は一生忘れません」

BJ「私は、治療費を貰う契約をし、その契約どおりに手術をしただけだ。彼がここまで立派になれたのは、二人の努力の成果だ」

さやか「いいえ、そんな事ありませんよ」

ピノコ「あ!演奏がはちまる!」

さやか「先生、それではまた後で」

BJ「ああ」

ピノコ「もう、ちぇんちぇーったら、あいくわらず、照れ屋さんなんだからー。感謝の言葉ぐらいしゅなおに受け取ったらゆいのにー」

BJ「本当に私は手術をしただけだ。頑張ったのはあの二人さ」

ピノコ「ちぇんちぇー、気づいた?さやかさんが薬指に指輪ちてたの」

恭介「みなさん僕のコンサートにお集まりいただきありがとうございます。僕はたくさんの方々の応援によってヴァイオリンで成功する事ができました」

恭介「特に一人の女性と一人のお医者さんの助けが無ければ、今の僕はないでしょう…。今日は、その二人のためにも演奏をしたいと思います!それでは聞いて下さい―――」

終わり

さやか「先生、それではまた後で」

BJ「ああ」

ピノコ「もう、ちぇんちぇーったら、あいくわらず、照れ屋さんなんだからー。感謝の言葉ぐらいしゅなおに受け取ったらゆいのにー」

BJ「本当に私は手術をしただけだ。頑張ったのはあの二人さ」

ピノコ「ちぇんちぇー、気づいた?さやかさんが薬指に指輪ちてたの」

恭介「みなさん僕のコンサートにお集まりいただきありがとうございます。僕はたくさんの方々の応援によってヴァイオリンで成功する事ができました」

恭介「特に妻の仁美と一人のお医者さんの助けが無ければ、今の僕はないでしょう…。今日は、その二人のためにも演奏をしたいと思います!それでは聞いて下さい―――」

終わり

僕ならこうしたよ
ありきたりな>>1やなぁ
才能ないで

最後まで読んでくれてありがとうございます
BJ先生のあの名言は図書館で読んだっきりでずいぶん時間が経ってるんで自分は覚えてないんですが
ネットで調べたら「その言葉が聞きたかった」と「それを聞きたかった」の2パターンでてきました
今、単行本が手元に無いんで、どっちが正しいかわからなかったです。すいません。

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