千早「ひとりぼっちになってしまったわ……」
千早「は、春香」
春香「……」
千早「あ、あの」
春香「千早ちゃんは抜け駆けした、裏切り者だよ……裏切り者……」
千早「……」
春香「……」
千早「ち、違うの、冗談のつもりだったの」
春香「冗談? はっ? 冗談で実際に付き合うの? 突きあっちゃうの?」
千早「そ、それは……」
春香「表面では歌にしか興味がないなんて言いながら、裏ではそんなことを考えてたんだね」
千早「違うのよ……」
春香「何でそんなことしたの? WHY? 何故? 私達は親友じゃなかったの?」
千早「わ、私は春香を裏切るつもりなんて……」
ドン
春香「もういい、千早ちゃんなんて知らないよ」
千早「は、春香……」
春香「クッキーもあげない。そう、、私の美味しいクッキーももうあげないから」
千早「ごめんなさい春香」
春香「千早ちゃんなんて……一人でおからクッキーでも食べてればいいんだよ……」
千早「春香……」
千早「ダメね私は……」
真「あっ、千早……」
千早「おはよう真」
真「う、うん」
千早「……」
真「……」
千早「ね、ねぇ、真」
真「な、何かな?」
千早「その……私とプロデューサーのことなんだけど」
真「……」
千早「えっと、その、私はね……」
真「そ、そういえば雪歩おそいなー、ちょっとボク探してくるね」
千早「あっ」
真「じゃ、じゃっ」
千早「はぁ……」
千早「真もまだ、ちゃんと話してくれないわね」
千早「でも、まだ真はいい方……よね」
千早「……」
ガチャ
千早「あっ、おは……」
雪歩「……裏切りもの」
千早「は、萩原さん」
雪歩「板、まな板、壁、絶壁、ミラーフォース銀幕の鏡壁」
千早「あの、萩原さん?」
雪歩「千早ちゃんいたんですかぁ? どうしたの?」
千早「萩原さん、話があるの……」
雪歩「話? そうなの? どんな話? 何かを出し抜く話? 何を出し抜くの? ナニを出したり抜くお話?」
千早「えっ?」
雪歩「あっ、ごめんね千早ちゃん、そんな話を千早ちゃんがするわけないよね」
千早「え、えぇ」
雪歩「けど、なんのお話なの? もしかして、この期に及んでプロデューサーを奪った事を謝るつもりでもないだろうし、なんだろー?」
千早「……」
雪歩「千早ちゃん、なんのお話なの? もしかしてプロデューサーと千早ちゃんのお話? わぁー、聞きたいなぁ」
千早「……」
雪歩「幸せそうで千早ちゃんが羨ましいですぅ」
千早「ふ、ふふ」
雪歩「まぁ、そのせいで事務所はギスギスしてるんだけど」
千早「……」
雪歩「二人以外は地獄に落とされた感じかかなー」
千早「……」
雪歩「皆、他の娘の事を思って手を出さない所があったのに、それが破られたんだもん。当然だよね」
雪歩「あっ、でも千早ちゃんが悪いわけじゃないんだよ。だって別に約束してたわけじゃないんだもん。そんな雰囲気に流された私達がバカだったんだよね」ニコッ
千早「……ごめんなさい萩原さん」
雪歩「ごめん? なんで謝るの千早ちゃん? 千早ちゃんは悪くないよー」
雪歩「むしろ悪いのは私達だよー」
千早「えっ」
雪歩「千早ちゃんがプロデューサー好きなのに私達は何も考えずにプロデューサーの事を好きだなんて話してたんだもん」
千早「……」
雪歩「ごめんね、千早ちゃんも苦しかったよね、私達がどれだけプロデューサーの事を好きか聞いてるのは」
ふえぇ……キャラ崩壊させないと皆祝福しちゃう気がするよぉ……
雪歩「あんな真顔で聞かれてるから千早ちゃんの気持ちに全然気づかなかったの、ごめんね」
千早「……」
雪歩「ポーカフェイスだね、千早ちゃん」
雪歩「真ちゃん遅いなー、どこにいるんだろう」
千早「真ならさっき、萩原さんを探しに外に行ったわ」
雪歩「そっか、じゃあ私ももう行こうかな、プロデューサーが来たら私邪魔になっちゃうもんね」
千早「そんな事ないわ」
雪歩「気にしないで、たとえ二人だけだとしても事務所に幸せな人がいるのはいいことだもんね、例え二人だけでもね」
雪歩「じゃあ、ばいばい千早ちゃん」
千早「想像以上にきついわ……」
千早「でも、これは私の決めた運命」
千早「いや、神に決められていた運命なのだから」
響「えっ、千早なに言ってんだ!?」
千早「ひゃ、が、我那覇さん!?」
千早「い、いつからここに?」
響「えっと……春香がおからクッキー食べればいいんだって言ってた時くらいかなー」
千早「け、結構前からいたのね」
響「なんか、深刻な雰囲気で出てにくかったんだぞ」
千早「そ、そうなの……」
響「うん」
千早「……あの、我那覇さんにも話があるの」
響「自分、全然怒ってないから大丈夫だぞ」
千早「え」
響「プロデューサーが千早の事を好きになっちゃったのはちょっと嫌だけど……」
響「プロデューサーが喜んでるならいいかなって思ったんだー」
千早「我那覇さん……」
響「だから、自分は全然気にしてないぞ、おめでとうな千早」
千早「あ、ありがとう我那覇さん」
響「けど、ちょっと寂しくなるなー」
千早「寂しく?」
響「うん、よくプロデューサー自分の家にご飯食べに来てもらってたんだ」
響「自分、両親がいないから他人と……プロデューサーと一緒にご飯食べる事ができて本当に嬉しかっんだ、へへっ」
千早「……」
響「いぬ美達とは家族だし、いつも一緒だけど……はは、やっぱりプロデューサーがいなくなっちゃうのは寂しいな」
千早「……」
響「あんまーもすーもいなくなって、プロデューサーもいなくなっちゃうんだな……」
千早「……」
響「ふぅ……」
千早「我那覇さん」
響「なんだ?」
千早「我那覇さんの気持ちよく分かるわ……私も弟を亡くしているから」
響「……」
千早「だけど、私も我那覇さんと同じくらいプロデューサーの事が大切なの。プロデューサーを我那覇さんに渡すことは出来ないわ」
響「……うん、そっかー」
千早「だからプロデューサーと私と我那覇さんと我那覇さんのペット達で一緒に暮らしましょう」
響「………………………………ん?」
千早「幸せな家庭ってペットを飼っている所が多いと思うの」
響「う、うん?」
千早「だけど、動物のお世話とか私苦手だから」
響「だ、だからいぬ美達をってことか?」
千早「違うわ、むしろ我那覇さんがペット。我那覇さんなら私、美味くお世話が出来ると思うの」
響「………………………………は?」
千早「それに我那覇さん犬みたいで可愛らしいし、プロデューサーも喜んでくれると思うの」
響「え、えへへ、自分可愛いのか?」
千早「えぇ、愛くるしいわ」
千早「だから是非我那覇さんには我が家のペットになって欲しいの」
響「ぬわ!?」
千早「一緒に暮らしてください、お願いします」
響「え、えっと……」
響「は、はい///」
千早「良かった、よろしくね我那覇さん……いや、響ちゃん」
響「~~/// じ、自分、よ、用事思い出したから」
バタン
千早「あっ、我那覇さん行っちゃったわ」
千早「つい感情的になってしまったけど……」
千早「我那覇さんも許してくれたみたいでよかった」
千早「他の事務所の皆にもちゃんと謝らないと」
ガチャ
やよい「おはようございます」
千早「た、高槻さん」
やよい「あっ、千早さ……ふ、ふーん」
千早「あの、高槻さんちょっと話があるのだけれど」
やよい「ふ、ふーんだ、聞こえませんよー」
千早(た、高槻さんが無視!?)
千早「……うぅ、高槻さん」グスッ
やよい「わわっ、で、でもちょっと聞こえました」
やよい「な、なんですか千早さん」
千早「あの、私とプロデューサーについてなのだけど」
やよい「うー、き、聞きたくないです」
千早「お願い高槻さん、私、高槻さんにはしっかり聞いてほしいの」
やよい「……は、はい」
千早「私とプロデューサーは付き合うことになって、その……高槻さんを裏切るような事をしてごめんなさい」
やよい「ゆ、ゆるせないかなーって」
千早「……」
やよい「ち、千早さんお料理できないし私の方が色々な料理が作れるます」
千早「お、お料理作るの頑張るわ」
やよい「それに私、家事も大好きだしお世話もちゃんとしますよー」
千早「わ、私も……」
やよい「千早さんお料理苦手っていってました……それじゃあプロデューサーも可哀想かなーって」
千早「……うぅ」ジワッ
やよい「で、でも勉強すれば美味しいお料理作れるかもー」
千早「勉強……なら、高槻さん教えてくれないかしら?」
やよい「えぇー、千早さん恥も外聞もないんですか!?」
千早「確かに恥ずかしいわ……けど、それ以上に高槻さんと仲良くなりたいの。だって私は高槻さんの事大好きだから」
やよい「千早さん……」
千早「ダメかしら?」
やよい「ダメじゃないです。私も千早さんの好きです……」
千早「許してくれるの?」
やよい「許せないけど、仲直りはしたいなーって」
千早「よろしくお願いね、高槻さん」
やよい「はい」
千早「ふふ、私プロデューサーがいなかったら、きっと高槻さんと付き合っていたわね」
やよい「え?」
やよい「なに、バカみたいな意味わからない事いってるんですか?」
千早「あれ?」
千早「よかった、高槻さんも私を許してくれて……」
千早「そ、それに大好きだなんて/// 高槻さんはやっぱり可愛いわ」
ガチャ
貴音「……」
千早「四条さん。おはようございま──」
パチン
千早「イタッ」
貴音「千早……如月千早あなたという人は!」
ペチン
千早「イタッ」
千早「や、止めてください四条さん。た、叩かないで下さい」
貴音「私の怒りはこんなものでは納まりません」
貴音「油断させて私から大切な人を奪おうなど……失望しました」
ペチン
千早「イタッ」
千早「す、すいませんその事で四条さんには謝りたい事が」
貴音「言い訳など聞きたくありません」ペチン
千早「板っ」
千早「板、板いです四条さん」
貴音「板い? 私の方が如月千早、あなたの何倍も心を板めています」
千早「……四条さん」
貴音「不意うちで私から大切な人を奪い、一緒暮らそうなど……」
貴音「私には耐えられません」ペチン
千早「板」
貴音「この、この」ペチペチ
千早「……うっ、謝っても許してもらえないかもしれないですけど」
千早「抜け駆けする形でプロデューサーに告白して、ごめんなさい!」
貴音「? そうですか、別に今その話はどうでもいいのです」
千早「え?」
貴音「今は愛しの響について話しているのです!!」
千早「え?」
貴音「プロデューサー? 確かにらぁめんを一緒に食べに行く機会が減るのは悲しいですが、今は別にどうでもいいのです」
千早「んあっ!?」
貴音「愛しの響きを……愛しの響と一緒に暮らしあんな事やこんな事をしようなど……許せません!! 絶対に!許せません!!」
千早「えっ、は、はい」
貴音「さぁ頬を出しなさい如月千早! ぶってあげましょう!!」
千早「わ、分かりました我那覇さんには断りを入れますから」
貴音「なんと、響にそんな酷い仕打ちをするきですか!!」ペチン
千早「イタッ。ど、どうすれば……」
貴音「どうするもこうするもありません。頬を出せばいいのです」
千早「くっ……」
貴音「さぁ、歯を食いしばりなさい如月千早」
千早「し……四条さんも一緒に住みましょう。我那覇さんと一緒に」
貴音「!!」
貴音「わ、私と響が一つ屋根の下で?」
千早「は、はい……あ、あと私とプロデューサーも」
貴音「それはとても、とてもよい提案ですが……」
千早「な、何かダメですか?」
貴音「ひ……響は嫌がらないでしょうか?」モジモジ
千早「だ、大丈夫じゃないですか? 分からないですけど」
貴音「で、ですが……」
千早「た、確か我那覇さん新しく動物飼いたいって言ってた気がします」
貴音「ひ、響がですか?」
千早「はい、四条さんが新しいペットになればいいんじゃないですか?」
貴音「……千早」
千早「ひゃ、ひゃい」
貴音「千早、感謝します。さっきは感情的になって申し訳ありません」
千早「い、いえ」
貴音「しかし私が響の新しいペット……ふふっ、楽しみですね」
貴音「にゃ……にゃぁ、にゃ~。こんな所でしょうか」
千早「…勢いでペットにしちゃったけど、あれで大丈夫なのかしら」
千早「だ、だからって次来る人にもこんな接し方でなんとかなるわけ……」
ガチャ
千早「あっ、おは……」
亜美「やっほー」
千早「あ、亜美……」
亜美「おはよ、千早お姉ちゃん」
千早「え、えぇ……」
亜美「どったの?」
千早「その、私とプロデューサーについてのことで……」
亜美「あ~なるなる」
千早「亜美はどう思ってるの?」
亜美「亜美? んーよくわかんないけど、兄ちゃんが誰かのものになっちゃった、ってのはちょっち寂しいかなー」
千早「それはそうよね……ごめんなさい」
亜美「でもしょうがないっしょー。兄ちゃんが決めたことなんだし」
千早「亜美……」
亜美「皆も兄ちゃんのこと好きだったんだよねー? でも、しょうがないじゃん?」
亜美「千早お姉ちゃんが告白してオッケーってことは、千早お姉ちゃんが好きだったってことだし」
千早「そ、そうかしら」
亜美「うんうん、きっとそういうことだよー」
千早「……なんていうか、ありがとう亜美」
亜美「え? どして?」
千早「いえ、皆私のこと……なんだかんだでやっぱり恨んでるみたいだったから」
亜美「あーまあ仕方ないよね」
千早「えぇ、仕方ないの。でも、だから亜美にそう言ってもらえて、すごく救われた」
亜美「えっへっへ、照れるよー」
千早「あ、そう言えば真美は? 一緒じゃないのかしら?」
亜美「あ、真美? 真美はねー」
亜美「今日でもう1週間、意識が戻らないんだ~」
千早「……え?」
亜美「あ、千早お姉ちゃんのせいかどうかはわかんないけど、急にね」
千早「そ、そんな……だって昨日も……」
亜美「それ、亜美だよ? バレたら大変だって、亜美が二人分頑張ってたんだ」
千早「あ、亜美……」
亜美「正直シンドイ! けど、真美のためにも頑張らなきゃって思うんだよね」
亜美「事務所もなんか、今あんな感じだし?」
千早「……」
亜美「真美は兄ちゃんのこと好きだったのかなぁ? んーなんとなくそんな気がする」
千早「真美……」
亜美「千早お姉ちゃん? 亜美は亜美だよ? 真美じゃないよ?」
千早「え? い、いえそういう意味で言ったわけじゃなくて、私のせいで真美が……」
亜美「真美は今、休んでるんだよ? 亜美だよ?」
千早「あ、いや……」
亜美「ねぇ? 亜美、だよ?」
千早「あ、亜美……」
亜美「そう、亜美。あ、でもたまに真美だけどね~」
千早「……」
亜美「あ、そろそろ仕事だー。そんじゃまたね、千早お姉ちゃん」
千早「……真美?」
千早「でも、そんな……私のせいなのかしら」
千早「……本当なら、そのうち謝りに……」
ガチャ
伊織「……」
千早「あ、水瀬さ……」
伊織「はぁ、喉が渇いた」
千早「え……」
伊織「ねぇ」
千早「あ、は、はい」
コトッ
伊織「……何これ?」
千早「の、飲み物だけれど」
伊織「えっと、飲み物が欲しかったんだけれど」
千早「だ、だからこれを……」
パシッ! …バチャッ
千早「あ……」
伊織「はぁ、喉が渇いたのよねぇ」
千早「何が飲みたいのよ」
伊織「さぁ」
千早「……」
伊織「ねぇ、聞こえてるんでしょ?」
千早「だ、だから何を……」
伊織「どっかの誰かさんの甘ーい言葉じゃなきゃ、耳に届かなくなったのかしら」
千早「……水瀬さん」
伊織「あぁもういいわ。無駄に会話をするだけ、水分の無駄ね」
千早「……私が悪かったのなら」
伊織「何が?」
千早「その、プロデューサーとのことで……」
伊織「あぁ、それね」
千早「私はその、抜け駆けとかそういうつもりじゃ」
伊織「いいのいいの、私興味ないから。ぜひとも勝手にやってて欲しいんだけれど」
千早「……」
伊織「言うとすればその、偽善的な態度かしらね?」
千早「え?」
伊織「盗った自覚があるのにどうしてそう易々と謝れるのかしら。私には理解できないわ」
千早「あ、いえそれは……」
伊織「謝れば許してくれるとでも? それとも謝るふりして皆に見せびらかしたい、とか」
千早「そんなわけ!」
伊織「じゃあアンタがすることって、何?」
千早「え……」
伊織「もしかしたらアンタには、私がプロデューサーのことで嫉妬してるように見えるかもしれないけど」
伊織「この事務所のことだけ見たって、アンタのせいでバラバラなのよ? ちゃんと理解してるのかしら」
千早「わ、私は……」
伊織「アンタが辞めれば、全て収まる。逆に辞めなかったら、どうなると思う?」
伊織「プロデューサーは真っ先にアンタをかばう。他のアイドルのモチベーションはどうなるかしらねぇ?」
千早「水瀬さん……」
伊織「何も脅してるわけじゃないの。単にムカつくだけ」
千早「……ごめんなさい」
伊織「はぁ……何それ」
千早「……」
伊織「どうせ謝るなら……そうね、ちょうどそこに溢れたお茶でも舐めなさいよ」
千早「これを……」
伊織「そ。誠意を見せるには醜く地べたに這いつくばって、許しを乞うなんて子供でもわかることでしょう?」
千早「……」
伊織「ま、別に無理にやれとは言ってないの……え?」
千早「……これで許してもらえるなら」
…ピチャ
伊織「……ばっかじゃないの」
千早「え……」
伊織「いいわ、そのまま続けなさいよ。全部よ、その水たまり全部」
千早「全部……」
伊織「早くしなさいよ」
千早「……はい」
ピチャッ……ピチャッ……
伊織「……」
伊織「アンタ、ついに頭まで行かれちゃったわけ? それとも何? こんな屈辱、プロデューサーとの関係に比べたら!」
伊織「そんなこと思って、内心じゃ私のこと馬鹿にしてるんでしょう? 事務所の皆のことも蔑んで」
千早「私は……そんなこと……」
伊織「……じゃあなんでそんな、そんなことできるのよ」
千早「……悪い事をしたのは、本当だもの」
伊織「っ……!!」
バシャッ!!
千早「きゃっ!!」
伊織「アンタのそう言う所!! 偽善偽善偽善!! ほんっと癪に触るのよ!!」
千早「……ごめんなさい」
伊織「どうして謝るの? アンタ、ホントどうかしてるわよ……」
千早「そうかもしれない……でも、ごめんなさい」
伊織「……ば、ばっかみたい。勝手にすればいいじゃない」
千早「……水瀬さん」
伊織「話しかけないで……」
千早「本当、ごめんなさい」
伊織「……」
千早「もちろん貴方だけじゃなくて、他の皆にも謝るつもりよ。でもそれは、ごまかしとかじゃなくてケジメ」
千早「今考えたら私の行動は軽はずみだったと思うし、最低だったと思うから」
伊織「……何でわざわざ私にそんなこと言うのよ。あんなことさせた嫌味?」
千早「……なんだかんだ言って、水瀬さんは事務所の皆のこと一番考えてると思うから」
伊織「なっ……!!?」
千早「だから、話したの。きっと分かってくれるって」
伊織「あ、あり得ないわ!! 誰がアンタみたいな最低な人間のことなんて!!」
千早「それでいいわ。仕方ないもの」
伊織「し、知らない……! アンタなんて……もう、勝手にすればいいのよ……」
千早「にゃ、にゃあって……」
貴音「ダメですか? では、にゃおんにゃんにゃん」
千早「ちょっと如何わしい感じがするんですけど」
貴音「では、どうすれば……千早! お手本を見せてください」
千早「えぇ」
貴音「千早ならば立派なペット姿をみせてくるはずだと信じていますよ」
千早「……」
千早「に、にゃ……で、出来ません」
貴音「千早、あなたはやはり私と響の中を壊そうと……」
貴音「頬を! 頬を出しなさい千早!!」
千早「……にゃ、にゃーにゃー///」
貴音「……ふむ」
千早「にゃ、ふ、ふにゃあー……か、勘弁してください」
貴音「もう少しやってもらわないと分かりません」
千早「うぅ……」
貴音「さぁ、千早」
千早「にゃん、にゃん」
貴音「ふふっ」ニッコリ
響「えっ、何やってるんだ……」
響「えっ?」
貴音「ひ、響、こ、これはペットになる為の特訓なのです」
響「ペット?……あっ」
貴音「ふ、ふふふ、気付いてもらえましたか響?」
響「もしかして貴音……」
貴音「そうです、私は響の為に──」
響「自分から、千早とプロデューサーのペット枠を奪おうとしているのか!?」
響「貴音、最低だぞ!」
貴音「えっ」
千早「えっ」
響「自分も貴音とペット枠をかけて勝負するぞ!!」
貴音「ち、違います響」
響「違う……」
貴音「そ、そうです響」
響「……勝負するまで無く、貴音の勝ちって事なのか!?」
千早「んあ!?」
響「んがー! もう、貴音なんて大嫌いだー」ダッ
貴音「ひ、ひびき!!」ダッ
千早「……二人とも行ってしまったわ」
千早「四条さんも、我那覇さんも許してくれたはず……多分」
千早「これで事務所の半分くらいの人に謝る事ができたかしら」
ガチャ
真美「おは……」
千早「真美、お、おはよう」
真美「……」
真美「……」
千早「やっぱり怒ってるわよね……」
真美「……」
千早「ごめんなさい、プロデューサーに……」
真美「謝るくらいなら返してよ」
千早「……えっ」
真美「兄ちゃんを真美に返してよ」
千早「か、返すなんてそんな物みたいには……」
真美「そうだね、兄ちゃんは物じゃないね」
千早「え、えぇ」
真美「だからずーっと千早お姉ちゃんが好きだとは限らないよね」
千早「……」
真美「もしかしたら兄ちゃんが違う人を好きになるかもしれないね、でもちかたないよね人間なんだもん」
千早「……」
真美「それに真美、兄ちゃんと遊んだりメールしたり電話するのは止めないから」
千早「……」
真美「だって兄ちゃんは真美のプロデューサーだもん、真美の事をしっかり知ってもらうのも仕事だよ」
千早「……」
真美「中学生だからまだまだだけど、高校生になったら真美も成長して、兄ちゃんも真美を好きになっちゃうかもね」
真美「そしたらごめんね千早お姉ちゃん、あっ、でも千早お姉ちゃんも真美から奪ったんだから一緒か」
真美「なら謝る必要ないね、そうだよね千早お姉ちゃん? ね?」
千早「あっ、えっ……」
真美「あっ、そろそろ兄ちゃんと仕事の時間だから行くね」
千早「あっ、はい」
真美「じゃあ、今だけでも幸せにね千早お姉ちゃん」
千早「あ、ありがとう」
バタン
千早「……」
ガチャ
律子「あー、忙しい忙しい」
千早「律子」
律子「お疲れ様千早」
千早「律子に話があるのだけど」
律子「話? あーごめん、ちょっと今、仕事が忙しいのよ」
千早「仕事をしながらでいいから聞いて欲しいの」
律子「……そう」カタカタ
千早「プロデューサーと私の話なのだけど」
律子「あー、その話ね聞いてるわよ。千早はアイドルなんだからばれない様にしなさいよ」カタカタ
千早「えっ……お、怒らないの?」
律子「怒る? なんで?」カタカタ
千早「私がプロデューサーと付き合うなんて……嫌じゃないの?」
律子「会社に迷惑を掛けないならいいんじゃない? 個人の勝手なんだし」カタカタ
千早「そ、そう」ホッ
律子「それよりも、千早に仕事が入ってるんだけど」カタカタ
千早「え、えぇ、いつ?」
律子「えっと、明日から今月末までずっとよ」
千早「今月の最後までって、まだ今日は15……」
律子「なーに言ってるの、千早は実力あるんだから頑張ってもらわないと」
千早「でも、なんでこんな急に」
律子「気付いたのよ、これまで仕事を甘く入れすぎてたって」
律子「だからこれからはバシバシと仕事入れてくわよ」
千早「……これじゃあ、会えなくなってしまうわ」ボソッ
律子「そーだ、千早。あんた今度のプロモーション海外にする予定だから」
千早「か、海外!?」
律子「撮影には時間も掛かるし大変だと思うわ」
律子「けどこれは千早のステップの為なのよ」
千早「ステップアップ……」
律子「そう、きっと良い経験になるわ。トップアイドルを目指すなら絶対に行くべきよ」
千早「……」
律子「どうなの? トップアイドルを目指すんじゃないの?」
千早「……分かったわ」
律子「そう、じゃあ早速手配しておくわね」
律子「やっぱり今まで余裕あったのよねー」
律子「ショッピングとかよく遊んでるようだったし」
千早「そ、そうかしら?」
律子「そーよ、だってほら先週の日曜もプロデューサーと遊園地に遊びに行ったんでしょ?」
千早「え、えぇ」
律子「日曜なんかはイベントがいっぱいあるのよ。遊園地に遊びに行く余裕があるならアイドルとしてイベントに出演する事を考えるべきね」
千早「そ、そうかもしれないわね」
律子「私も仕事に生きる女として頑張るから、これからドンドン行くわよ」
千早「えぇ」
律子「よーし、やるわよー」
千早「じゃあ、私は邪魔だろうからあっちに行っているわね」
千早「……仕事ならしょうがないわよね」
千早「けど、私とプロデューサーならこんな障害きっと乗り切れるわ」
千早「だって私とプロデューサーは心が繋がっているのだもの」
千早「ふふっ」
美希「あれっ? 千早さんなに笑ってるのー?」
美希「何か面白い事でもあったのー?」
千早「み、美希」
美希「あはっ、面白い事なら美希も教えてほしいの」
千早「あっ、面白い事ではないのだけど」
美希「ふーん?、変な千早さんなの」
千早「……み、美希」
美希「なんなのー?」
千早「き、聞いて欲しい事があるの」
美希「あっ、美希も聞いて欲しい事があるの!!」
千早「じゃあ、美希から話して」
美希「うん、えっとね……えへへ」
美希「実はミキとハニー付き合うことになったの」
千早「えっ??」
美希「えへへ~、ハニーがね付き合おうって言ってくれてー、昨日も夜までハニーとずっと一緒だったんだ」
千早「……」(昨日プロデューサーはずっと私の家にいたのだけど……)
千早「えっと……」
千早(も、もしかして美希はプロデューサーの似た人と付き合ってるんじゃないかしら)
美希「それにね、ハニーこの前の日曜にも遊園地に連れて行ってくれたの」
美希「あはっ、ハニーってばジェットコースターに乗りたいってずーっとミキに言ってたの」
千早「……」
美希「アイスクリームも一緒に食べたの、ハニーはチョコを選んで美希は普通のバニラ味ですっごく美味しかったなー」
千早(ぜ、全部見られてたのかしら……)
美希「最後にはね、観覧車に乗ってずっとラブラブだったんだ、頂上でチューもしちゃったの☆」
千早「えっ!? ど、どうやって見たの……
」
美希「?? 何言ってるの千早さん?」
千早「ちょ、頂上なら他のゴンドラに乗っても見れないはずじゃ……」
美希「おかしな千早さんなの、アハッ☆」
千早「……」ゾワッ
美希「昨日もね、ミキが作ったパスタを美味しいていって食べてくれたの」
千早「な、なんで家の中の事まで……」
美希「ミキが作ったパスタ美味しい美味しいって食べてくれたんだけどね、実はソースはコンビニで売ってる100円ソースなの。けど、この話はハニーには秘密」
千早「えっ、ぁぅ……」
美希「だから、ミキこれからしっかり料理の勉強しないとなの、あふぅ」
千早「と、盗聴? 隠しカメラ!?」
美希「さっきから何言ってるの千早さん? 今日の千早さんは変なの、アハッ☆」
美希「ハニーに同棲しようかなーって思ってるの。そしたら新しいお家でずーっとハニーと一緒、ずっとずっと、アハッ☆」
千早「……いや」
美希「どこにお引越ししても一緒なの」
千早「……や、やめて」
美希「だってミキはハニーと結ばれる運命だもん」
アハッ☆
アハッEND
まだ残ってたのか
.
千早「……はっ!」
千早「あ、あれは……夢?」
あずさ「あら、起きた? 千早ちゃん、大丈夫?」
千早「え? あ、あずささん……?」
あずさ「びっくりしちゃったわ~、事務所に来たら美希ちゃんとすれ違って、入ってみたら千早ちゃんが倒れてるんだもの」
千早「あ、美希……」ゾクッ
あずさ「何かあったの?」
千早「い、いえ……その、ありがとうございました」
あずさ「ふふっ、いいの。それより千早ちゃんこそ大丈夫?」
千早「え、えぇなんとか……」
あずさ「それならいいんだけれど」
千早「……あの、あずささん」
あずさ「なぁに?」
千早「……すみません」
あずさ「え?」
千早「私とプロデューサーの話です」
あずさ「プロデューサー?」
千早「美希とも、その話で少し……」
あずさ「あらまぁ~」
千早「みんなに一応謝らなきゃと思って、それで」
あずさ「そういうことだったのねぇ」
千早「はい、すみません……」
あずさ「もう、そんなに謝らなくていいのよ?」
千早「あずささん……」
あずさ「それで、話っていうのは?」
千早「……え?」
あずさ「え?」
千早「あ、あぁいえ。私がプロデューサーに、その……告白してしまったっていう」
あずさ「……あー」
千早「プロデューサーの方も、それで付き合ってくれると」
あずさ「そんな話が合ったのねぇ」
千早「あ、あずささん知らなかったんですか?」
あずさ「う~ん、知らないというか」
あずさ「プロデューサーさんって、どなた?」
千早「……え?」
あずさ「でも、千早ちゃんにそんな相手がいるなんて驚きね~」
千早「あ、あのあずささん?」
あずさ「どうしたの?」
千早「いえ、プロデューサーのことを……知らないんですか?」
あずさ「知らないっていうか、もしかして私の知ってる人?」
千早「それは多分知ってると思うんですけど……」
あずさ「でも……律子さんは女性でしょ?」
千早「い、いや……あずささん?」
あずさ「なぁに?」
千早「……」
あずさ「さっきから何か変よ、千早ちゃん?」
千早「本当にプロデューサーを知らないんですか……?」
あずさ「ごめんなさい、忘れちゃってるだけなのかもしれないけど」
千早「……私のせいなんでしょうか」
あずさ「え?」
千早「私のせいであずささんの記憶が……」
あずさ「そ、そんな。大げさよ」
千早「でも、もしそうならこれからどうすれば……」
あずさ「どうって?」
千早「とにかく……直接プロデューサーと会えば思い出すかもしれないですから。あずささん、今日のお仕事は?」
あずさ「お仕事?」
千早「あ、あずささん?」
あずさ「やだ千早ちゃん、もしかしてジョーク?」
千早「……すみません、言ってる意味がよく」
あずさ「あら? 私千早ちゃんに言ってなかったかしら」
あずさ「ついこの間、結婚退職することになって」
千早「……はぁ」
あずさ「だから私、お仕事はないのよ? でも、たまにこうして遊びにくるとやっぱり懐かしいっていうか」
千早「いや、でもスケジュールボードには名前が……まさか」
あずさ「ごめんなさい千早ちゃん、私がわかってないだけなのかもしれないんだけど」
千早「え?」
あずさ「さっきから難しい顔してるから。言いたいことあったら、遠慮なく言って?」
千早「あ、は、はい」
あずさ「ふふっ」
千早「えぇと、その……結婚っていうのはいつのお話で」
あずさ「つい最近よ~」
千早「……一応お聞きしますが、相手は」
あずさ「相手? えっと、そうねぇ。千早ちゃんに説明するなら」
あずさ「元同僚の男性、ってくらいかしら?」
千早「あずさ……さん……?」
あずさ「どうしたの、千早ちゃん?」
千早「いえ、その……えっと……」
あずさ「千早ちゃん、落ち着いて?」
千早「は、はい。で、ですからその……あずささんの、旦那様は……」
あずさ「とっても優しい人で、お仕事をしてた頃もすっごく頼りになって」
あずさ「ついこの間我慢できなくて告白しちゃったんだけれど、そうしたらびっくりOKしてくれて」
千早「……」
あずさ「今はすごく幸せよ~……ってごめんなさい! 私の話になっちゃって」
千早「あずささん、その人は……プロデューサーではなく」
あずさ「あら? 千早ちゃん知ってるの? そうそう、彼プロデューサーだったのよ~?」
千早「……いや」
あずさ「あ、もう少ししたらかえってお夕飯の仕度をしておかなくちゃ。ふふっ、あの人いつもお腹を空かせて帰ってくるのよ?」
千早「あ、あずささん」
あずさ「なぁに?」
千早「何度もすみません。ちょっと混乱してて……この事務所の、プロデューサーですか?」
あずさ「この事務所? えぇ、それはそうよ。私もここにいたんだから」
千早「……」
千早(どういうこと? あずささんの演技? それとも記憶が……あるいは、本当に……)
千早(いや、そんなことあるはず……でも、明らかに今までの人たちとは違って……何かこう)
千早「……ちょ、ちょっとすみません」
あずさ「えぇ」
千早(プロデューサーに電話して確かめれば済むこと。大丈夫、今までいろんなことを受けてきたんだもの)
千早(これくらい乗り越えなきゃ、他のみんなに申し訳がたたないわ)
千早「……」
prrrrr
千早「――――え?」
あずさ「あら? はい、もしもし~」
千早「あ、ず、さ……さ……」
あずさ「え? どうして千早ちゃんが?」
千早「どうして……あずささんがその携帯を……」
あずさ「この携帯? あ、そうそう忘れてたわ! 今日あの人、携帯を忘れて行ったの。それを届けに行ったんだけれど、迷っちゃって」
千早「そんな……」
千早(どういうこと……? あの携帯は本物のプロデューサーの携帯……え? それじゃあプロデューサーは?)
あずさ「千早ちゃん?」
千早「あ、あのあず……」
あずさ「どうしてこの人の番号を知ってるのかしら」
千早「え? いえ、だってそれは」
あずさ「あの人のこと知ってたのね」
千早「それはもちろん知ってます。プロデューサーですから」
あずさ「プロデューサー? あぁ、千早ちゃんが言ってたプロデューサーっていうのは、そういう事なのね」
千早「それよりどうしてあずささんが……さっきの話を聞くと一緒に生活してるように聞こえて」
あずさ「それは結婚した者同士なんだから、一緒に住むことは当然でしょう?」
千早「いえ、でも……」
あずさ「それより、あの人に電話をしてどうするつもりだったのか、それを聞きたいの」
千早「あ、だからそれは」
あずさ「正直に答えてくれれば、大丈夫よ。だって千早ちゃんだもの」
千早「……プロデューサーは、私と付き合ってるんです」
あずさ「あら?」
千早「だからあずささんがその携帯を持ってることが変なんです!」
あずさ「変?」
千早「私の言ってることと、あずささんが言ってることが食い違っていたので確かめようと思って電話を掛けました」
あずさ「あら、そういうこと」
千早「……」
あずさ「私は何も変な事を言ってないけれど」
千早「そんな……じゃあプロデューサーは」
あずさ「プロデューサーっていうのがあの人だとしたら、千早ちゃんはどうしたいのかしら?」
あずさ「私から、奪うなんて。まさか、ねぇ?」
千早「……!!」ゾクッ
あずさ「ふふっ……ねぇ、千早ちゃん? 世の中にはきっと、いろんなプロデューサーさんがいるのよ。きっと、そういうことなんじゃない?」
千早「ち、違う……」
千早(頭が働かない……今までとは違う……プロデューサーとの関係を指摘されてるんじゃない)
千早(私とプロデューサーの関係が……なかったことになってしまう。それとも、本当に元から無かったの……?)
あずさ「それじゃあ私は、帰って準備をしなきゃ」
千早「ま、待ってあずささん!!」
あずさ「大丈夫よ千早ちゃん。きっとあなたの”プロデューサーさん”も、貴方の言ってることが本当なら何の問題もないわ」
あずさ「あの人と同じように、きっと千早ちゃんのこと待っててくれるはずよ?」
千早「そ、そんな……だって携帯が……それにあずささんだって!!」
あずさ「ふふっ、どうなのかしらね? それじゃあ、またね千早ちゃん?」
千早「あずささん!!」
バタン
千早「……意味がわからない。一体、何が……」
prrrr
千早「プロデューサー、から? ……あずささん、なの?」
ピッ
千早「……はい、もしもし?」
千早「―――!!!」ゾワッ
…プツッ
千早「……」
千早(電話口から聞こえてきたのは、プロデューサーの声)
千早(安心したのと同時に、全身を恐怖が包み込んだ)
千早(それじゃあさっき私がかけた携帯、あずささんが持っていた携帯は、何?)
千早(……あずささんは、一体)
ガチャッ
千早「あ、音無さ――んっ!?」
小鳥「ち、は、や、ちゃーーーん!!」
ドサッ
千早「ちょ、ちょっ! 音無さん!?」
小鳥「えへへー、ちはやちゃんだぁ~!」
千早(く、臭い!? こんな時間から、お酒……?)
千早「お、重いですから……とりあえずどいてください……」
小鳥「もー! せっかく来て上げたのにその態度はひどいんじゃないの!」
千早「音無さん、そんな感じでしたっけ……」
小鳥「小鳥は怒ってるんですよ!!」
千早(これは相当重症……とは言っても)
千早「……体調が悪かった、とか」
小鳥「うん? あー、そんなこともあったけど、大丈夫!」
千早「そ、それはそれは」
小鳥「それで、私は千早ちゃんに言いたいことがあってここに来ました!」
千早「は、はい」
小鳥「音無小鳥は、千早ちゃんからプロデューサーさんを寝取ります!!」
千早「はい……え?」
小鳥「以上! それじゃあ私はこの辺で……」
千早「ちょっと待ってください!」
小鳥「もー、何~? 私、眠いんだけど!」
千早(こんな悪酔い見たことないもの……そもそも酔ってるのかすら怪しいくらい)
千早「いろいろ言いたいことはあるんですが……とりあえず先に、謝らせてください」
小鳥「むぅー……」
千早「プロデューサーの件は、すみませんでした」
小鳥「……」
千早「その上で音無さんがそういうことであれば……私は」
小鳥「ふーん、その程度なんだ」
千早「え?」
小鳥「私が酔っぱらってるから、そういう妄想なんだとか思ってるでしょ」
千早「こ、小鳥さん?」
小鳥「……正直言うと、もういてもたってもいられないからヤケ酒っていうのはホント。でも、さっきのは本気」
小鳥「千早ちゃんがそういうことなら猶更でしょう?」
千早「私は……」
小鳥「……その様子だと、みんなに謝って回った?」
千早「はい。ちょうど音無さんが最後でした」
小鳥「そっか。じゃあ、ちょうどいいよね」
千早「え?」
小鳥「わかってると思うけど、皆プロデューサーさんのこと、好きなの」
千早「……はい」
小鳥「私も。でも、私より好きだ!って人、いると思う。だからって譲る気はないわ!」
千早「まあ、それは……」
小鳥「でも、結局一番最初に声をかけた千早ちゃんがプロデューサーさんを手に入れるっていうことに、何ら不思議なことはないじゃない?」
小鳥「無理やりにでも脅したならともかく、プロデューサーさんも千早ちゃんを選んだわけだし」
小鳥「何より、千早ちゃんだってその思い、本気なんでしょう?」
千早「もちろん、です。でも、やっぱり皆にいろんなことを言われて、後ろめたさがあるというか……」
千早「考えれば考えるほど、私なんかより……そう思ってしまうことが」
小鳥「甘いね」
千早「え?」
小鳥「そんなんで盗られて、後から文句言ったって誰も味方してくれないわ」
千早「……」
小鳥「今貴方にできることは、プロデューサーを他の人に盗られないように努力することでしょう?」
小鳥「今更友情だのなんだの綺麗事言った方が負けなの。仕方ないのよ」
千早「……でも、私は」
小鳥「だから私は、宣戦布告をしました!」
千早「え?」
小鳥「皆、それぞれいろんな考えがあるわよね。きっと」
小鳥「中には本当は心のどこかでプロデューサーさんと千早ちゃんのこと、応援してる人だっているはず」
小鳥「でも逆に、絶対に奪って見せるって人もいる。だったら私は、一番楽しそうなところに混ざろうかな、って」
千早「……と言いますと」
小鳥「ペットが二人、増えるんでしょう?」
千早「……あー」
小鳥「私は教育係をします! きっと千早ちゃん一人、ないしプロデューサーさんと二人じゃ大変だろうし」
千早「それは、ありがたいような……ありがたくないような……」
千早「そもそもあの話は本当に……」
小鳥「そんでもって! 隙あらばプロデューサーさんを寝取る!」
千早「……」
小鳥「妄想事務員だからって甘く見てると、痛い目みるわよ~? 知識だけは絶対に負けないもの!」
千早「音無さん、まだ酔っぱらってますよね……」
小鳥「当たり前でしょ! それで、私のダイナマイトボディで悩殺よ!」
千早「……?」
小鳥「あぁもうなんでピンとこないの! 今の子はこんなことも知らないわけ?」
千早「わかりましたわかりました……だから今日はもう帰った方が……」
小鳥「あーもうそうやって厄介払いする! どうせなら今日から千早ちゃんちに行く!!」
千早「お断りします」
小鳥「……」
千早「……音無さん?」
小鳥「皆、結局わかってるのよ。最後には、みんな笑って二人の事祝福するって」
千早「……」
小鳥「それは誰が言ったって同じこと。私が最初にプロデューサーさんに好きって言ったら、どうなってたと思う?」
千早「それは……」
小鳥「えぇ。プロデューサーさんがそういう人なんだから、仕方ないわよね」
千早「……だったら」
小鳥「猶更私が、なんて思っちゃだめよ。運がよかった。それも一つでしょう?」
千早「……」
小鳥「結局恋とか運命とかって、そんなもんで決まっちゃうのよ!」
小鳥「それでその出会いに一生懸命になれたら、退屈な人生よりは全然マシだと思わない?」
千早「確かに……」
小鳥「今は辛いかもしれないけど、うん。多分いや、絶対。765プロの皆は、千早ちゃんのことお祝いしてくれる」
千早「音無さん……」
小鳥「でも! 油断してたら盗るから! それは、恨みっこなし!!」
千早「そ、それは……」
小鳥「……なんて、いつもの妄想。ふぁ……本当に眠くなってきちゃったなぁ……」
千早「……」
小鳥「それじゃ……お休み……」
千早「……ってえ? こ、ここで寝るんですか!?」
小鳥「くー……」
千早「ちょ、ちょっと音無さん! ……はぁ」
千早「……でもいつもとは大違いですね。お酒飲んだ方が、すごみがあるというか」
小鳥「……失礼な」
千早「わっ!? ま、まだ起きてたんですか……」
小鳥「……んむ」
千早「……ふふっ」
千早「そう、よね」
千早(皆、許せないに決まってる。私だってそう思うはず。でも、皆……わからないけど、許してくれる。そんな気がする)
千早(でも……皆に謝って気が付いた。結局私のわがままだったってこと。だから、最後に)
ガチャッ
千早「……すみませんでした」
千早「まずは、謝らせてください。一番迷惑をかけていたのに、怖くて見ないふりをして」
千早「全部……任せて、頼りっぱなしにしてした」
千早「皆に謝って、もうあきらめようかとも思いましたけど」
千早「やっぱり……やっぱり私は……」
千早「プロデューサー、貴方が好きです」
P「……あぁ」
千早(皆、もう一度言わせて。ごめんなさい)
千早(それでも、私はプロデューサーに選んでもらった分。精一杯、追いつけるように頑張るの)
千早(……そしていつか。皆に面と向かって言えたら)
千早「……ありがとう」
――
―
同じ部屋に何故かペットみたいなのが住みついてしまったり
事務所に行ったら相変わらず陰湿な嫌がらせが続いてたり
仕事は忙しくてプロデューサーともなかなか会えないけれど
これはこれで、私は幸せだから――
――
―
「プロデューサーに好きって言ったら……どうなるんだろう?」
??「抜け駆けなんて、最低ね」
「え?」
終わり
イメージ的には美希と同じだけど超能力じみたことまで手を回せる強さっていうか
ハッタリが主だけど裏で何やってるかわからないあずささんって怖いよねっていう
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