ID:CVe2PnJA0
優希「なーなー、みんなは誰にチョコ渡すんだ?」
咲「えっ?」
和「いきなりどうしたんですか?」
優希「だって来週は乙女たちの大イベント、バレンタインデーだじぇ!」
優希「誰にチョコ渡すか気になるじょ!」
和「まったく優希は……」
優希「のどちゃんは誰に渡すんだ?」
和「わ、私は、その……」チラッ
咲「?」
和「あっ……も、もちろん麻雀部のみなさんにですよ!」
優希「咲ちゃんは?」
咲「私!? 私も麻雀部のみんなと、お父さんとお姉ちゃんにかな」
和「そういうゆーきはどうなんですか?」
優希「わ、私か!? 私はその……ほ、本命チョコを……京太郎に……////」ゴニョゴニョ
咲「わー!! 優希ちゃん、京ちゃんに渡すんだ!!」
優希「咲ちゃん声が大きいじぇ!!」
咲「あ、ごめんね」
優希「でも肝心のチョコが上手く作れないんだじょ……」
和「ゆーきは料理関係はからっきしですからね」
咲「そうだ! だったらみんなで一緒に作るっていうのはどうかな?」
和「みんなで……ですか?」
咲「うん! 私もあまり上手い方じゃないから、一人で作るのは不安だったし」
咲「みんなで作ればきっと上手くいくと思うよ!」
優希「咲ちゃん、それいいアイディアだじぇ!!」
和「楽しそうですね」
咲「どうせなら染谷先輩と部長も誘ってやろうよ!」
優希「いいじぇ!! みんながいれば怖いもんなしだじょ!!」
和「ではバレンタインデーの前日……13日の午後にしませんか?」
咲「うん!」
優希「わかったじぇ!!」
ガラガラ
先生「授業始めるぞ!!」
咲「あっ、先生来た」
和「それでは、場所などは後で決めましょうか」
優希「了解だじぇ」
咲(それにしても優希ちゃん、ついに京ちゃんに本命チョコ渡すんだ……)
咲(本命チョコを渡すって、どんな気持ちなんだろうな)
咲(……分かんないや)
咲(今まで義理チョコしか渡したことなかったからな……)
咲(でも、今年は分かるかもしれないな)
咲(だって、生まれて初めて本命のチョコを渡したいなって思える人ができたから……)
咲(姫松高校の……末原さん)
咲(去年の夏のインターハイ二回戦)
咲(何度も心が折れそうになりながらも、最後まで諦めないで打つ姿)
咲(カッコよかったな……それが末原さんの第一印象)
咲(その後あった、姫松や千里山、阿知賀との合同合宿)
咲(後輩の子に麻雀の指導をしながら、楽しそうに笑ってた)
咲(練習が終わった後も、一人で牌を磨いたり、部屋の掃除を最後までしてた)
咲(優しくて、面倒見がよくて、責任感の強い人)
咲(気が付いたら末原さんのことばっかり見てる自分がいた)
咲(これって……恋なのかな?)
咲(でも、女の子が女の子を好きになるなんて、どう考えてもおかしいよね)
咲(たぶん末原さんも、そう思ってるはず)
咲(だからこれは恋じゃなくて、憧れなんだろうな)
咲(……やっぱり今年も本命チョコは渡せそうにないな……)ハァ
――――――――――
ピンポーン
和「お待ちしてました咲さん」ガチャ
咲「おじゃまします」
和「すみません、せっかくの休日にお呼びしてしまって」
咲「ううん。暇だったし、全然いいよ」
和「それで今度のチョコ作りなんですが、染谷部長の家の厨房を借りることができそうです」
咲「えっ、本当!?」
和「はい。染谷部長のお店でもバレンタインにチョコを配るらしく、どうせなら私たちも一緒に作らないかと」
咲「よかった! 家庭科室とかも考えたけど、京ちゃんに見つかったらマズイもんね」
和「……」
咲「楽しみだな。早く当日にならないかな」
和「咲さん」
咲「何?」
和「何か悩みでもあるんですか?」
咲「……えっ?」
和「チョコ作りの話の後から、少し様子がおかしいように感じまして」
和「実は今日お呼びしたのも、そのことです」
和「もし私でよかったら、話していただけませんか?」
咲(ど、どうしよう……)
咲(隠してたつもりだったけど、和ちゃんにはバレてたんだ……)
咲(でもこんな悩み、和ちゃんにも話せないし……)
咲(いや、いっそのこと和ちゃんに相談してみようかな)
咲「あ、あのね……」
和「何ですか」
咲「の、和ちゃんは……」
咲「女の子同士の恋愛って、どう思うの……かな?」
和「」
咲「ご、ごめんね急にこんなこと訊いて……ひいたよね?」
咲「おかしいよね、女の子同士でだなんて」アハハ
和「咲さん!!!」ガシッ
咲「えっ!?」ビクッ
和「おかしいだなんてそんなオカルトありえません!!!!!」
咲「の、和ちゃん!?」
和「人を好きになったら相手に男性も女性も関係ありません!!」
和「それに今はiPS細胞というので同性でも子どもができる時代なんです!!」
和「つまりそれは同性での交際を認めているというも同然なんですよ!!(暴論)」
咲「……」ポカーン
和「……こほん、失礼しました」
咲「あ、あの……和ちゃんの言うことも分かるけど……やっぱり同性での恋愛ってどうなのかな?」
和「と言いますと?」
咲「例えば、恋人になったら……き、キスとかしたりするでしょう?」
咲「女の子同士でキスをするのとか、少し想像できないし……」
和「なるほど。それなら丁度いいモノがあります」ガサガサ
咲「何?」
和「今深夜に放送している『阿知賀Trick』というアニメです」
和「これを見れば咲さんの疑問も解消されるはずです」ピッ
シズ『アコ遅いよ!!』
アコ『仕方ないじゃない! シズがあんな時間まで電話してくるんだから!』
咲「なんだか阿知賀の穏乃ちゃんと憧ちゃんに似てるね」
シズ『わー、そんなくっつかないでよ~』キャッキャッ
アコ『し、シズが他の子と!?』ガーン
咲「くすっ、シズちゃんモテモテだね」
シズ『ねぇアコ。私たちは他の子たちとは絶対しないことしようよ!』
アコ『じゃあ……き、キスとか?』
咲「……え?」
アコ『……んっ』チュッ
シズ『ちゅっ……はむっ……んん……』チュッチュッ
咲「あわわわわわ////」
和「いかがでしたか、咲さん」
咲「えっと……その……すごかった////」プシュー
和「女の子同士のキス……想像できそうですか?」
咲「……う、うん」
和「咲さん。あなたに必要なのは踏み出す勇気です」
咲「……」
和「さあ、自分の気持ちに正直になって下さい!」
咲「……うん。そうだよね、なんかスッキリしたな」
咲「ありがとうね和ちゃん。私、自分の気持ちに正直になるね」
和「それでは!?」パァ
咲「うん!! 私、末原さんが好き!」
和「…………………………………………………………えっ」
咲「ずっと女の子同士の恋愛はおかしいって思ってて」
咲「きっと末原さんに対する想いは恋じゃなくて憧れなんだなって思ってた」
咲「ううん、無理やり、そう思ってただけ」
咲「でも和ちゃんのおかげで吹っ切れたよ!」
咲「ありがとうね和ちゃん!!」
咲「私、末原さんに本命チョコを作って渡すよ!!」
和「」
咲「? 和ちゃん、どうかしたの?」
和「……いえ。……そうですか、頑張ってくださいね」ニコッ
咲「うん!!」
和「……さよなら、私の初恋」グスリ
バレンタインデー前日
優希「いよいよ明日だじぇ!!」
咲「そうだね!!」
まこ「おお、優希だけじゃなくて咲も気合入っとるのう」
咲「はい!!」
和「そういえば竹井先輩は?」
まこ「あー、久のヤツは、『私は貰う立場だから、作るのはパス』だって言って、今日は来とらんよ」
優希「部長らしいじぇ」
和「あの……部長は染谷先輩なんですが……」
まこ「ええって。ワシは部長なんてガラじゃないからのう」
まこ「というか、久が部長にしっくりきすぎなんじゃよ」
咲・和・優希「あー、確かに」
まこ「そんじゃあ四人でチョコ作り開始するとしようか!」
―調理工程 キングクリムゾン―
優希「できたじぇー!!」
咲「私もできたよ!!」
まこ「どれどれ……おお、二人とも美味しそうなんができとるな」
優希「ふふん! 私はでっかいハート型チョコで勝負だじぇ!!」
優希「タコスチョコとどっちにするかで迷ったんだが、やっぱり直球勝負でいくじょ!!」
和「全力で止めて正解でした……」ゼェゼェ
まこ「咲の方は……トリュフチョコか」
咲「はい。もしかしたら甘いのが苦手かもと思いまして、二種類作ったんです」
咲「半分は甘いミルクチョコで、もう半分はビターチョコの少し苦いチョコなんです」
まこ「なるほどな。それにしてもハート型とは……いつの間にそんな相手ができたんじゃ?」
咲「えっ!? それは、その……」ワタワタ
優希「おおー!! 咲ちゃんにも想い人がいたのか!?」
和「……」
咲「あ、あー、そうでした!! 私家に帰らないと!!」
咲「それでは失礼しますね!!」
咲「それとこれ、一日早いですがチョコです!」
まこ「ん? 明日じゃダメなんか?」
咲「明日は大阪に行かないといけないので、今日お渡ししますね!」
咲「これは部長と京ちゃんへの義理チョコですので、染谷先輩渡しておいていただけますか?」
まこ「それは構わないんのじゃが……」
咲「ありがとうございます!! ではまた!!」バタン
優希「……行っちゃったじぇ」
まこ「うーん、どうやら咲がチョコ渡したい相手は大阪におるみたいじゃな」
和「……」
優希「ん? どうしたんだ、のどちゃん? 元気ないじぇ?」
和「えっ!? そんなことないですよ!」
まこ「……」
まこ「優希。スマンがお使い頼んでもええか?」
優希「いいけど……どうしたんだじょ、いきなり?」
まこ「少しチョコが足りんくなってしまってのう」
まこ「ほれ財布。余ったらタコス買ってきてもいいんじゃぞ」
優希「本当か!? 超特急で行ってくるじぇ!!」ダッ バタン
まこ「……ふぅ、行ったか」
和「あ、あの……染谷部長?」
まこ「……知ってたんじゃろ、咲の好きなヤツが誰か」
和「……」
まこ「ほれ、今はワシしかおらんけえのう。我慢せんでええぞ」
和「……うっ……うう……!!!」ポロポロ
まこ「泣きたい時は思いっきり泣きんしゃい」ナデナデ
和「うわああああああん!!!」ポロポロ
バレンタインデー当日 清澄高校 部室
久「おじゃまするわね」ガチャ
和「お久しぶりです竹井先輩」
京太郎「って、なんて数のチョコなんですか!?」
久「ふっふーん、私クラスにもなると、こんなの当然よ」
まこ「去年よりも多いんじゃないかのう?」
久「よかったらこれ、みんなで食べて。私一人じゃ食べきれないのよ」
和「いいんですか?」
久「いいのよ」ポリポリ
京太郎「あれ、それ変わったチョコですね?」
久「これ? 黒糖チョコよ。変わってるけど美味しいのよ」
京太郎「いいな部長~。オレなんて部のみんなの除いたら一個だけですよ」
優希「んっ!?」ピクッ
久「いいじゃない。一個でも貰えたのなら」
まこ「それで、誰から貰ったんじゃ?」
京太郎「阿知賀の玄師匠ですよ。合宿の時に意気投合しまして」
久「へえ、やるじゃない」
京太郎「にしても師匠のチョコ、おもちチョコなんですよ」
京太郎「さすが師匠、見事なおもちッス」
京太郎「とはいえ本命チョコは貰えず。まあ義理を貰えるだけマシですかね」
和「ゆーき」ボソボソ
優希「お、おう……二人きりになったらちゃんと渡すじぇ」ボソボソ
久「そういえば咲がいないわね?」
京太郎「本当だ。どこいったんだアイツ?」
まこ「ああ、咲ならチョコ渡しに大阪に行っとるぞ」
優希「結局咲ちゃんの意中の相手、聞きそびれたじぇ」
和「……頑張って下さいね、咲さん」
久「……ねえ、咲って一人で行ってるんじゃないわよね?」
まこ「ん? 多分一人じゃないのかのう?」
京太郎「だったら咲のヤツ、無事に目的地に着けるのか?」
和・優希・まこ「……あっ」
大阪
咲「ふふ、どうせ今頃迷子だと思ってるでしょうけど」
咲「さすがに私だって学習するよ」
咲「ちゃんと事前に目的地までの地図を用意したからね」ドヤァ
咲「えっと、地図によると、この道をまっすぐ行けば姫松高校だ」
咲「あう……ドキドキしてきたな……上手く渡せるかな私」
?「あれ? 咲ちゃんやないの!?」
咲「えっ?」
竜華「やっぱり咲ちゃんや!! 合宿の時以来やん!!」
咲「あー!! 清水谷さん! 園城寺さんも!」
怜「どうも」
咲「お久しぶりですね。でもなんでお二人が姫松高校にいるんですか?」
竜華「? 何言うてんの? ここ千里山やで」
咲「……あれ?」
――――――――――
竜華「なるほどな。姫松行こう思うて間違ってこっち来てもうたか」
咲「はい……そうみたいです」シュン
竜華「丁度よかったわ」
怜「実は監督が姫松に行く用あってな。暇やしウチらも監督の車乗せてもらって遊び行こう思っててん」
竜華「せやから咲ちゃんも一緒に行こうや!!」
咲「いいんですか!?」
竜華「もちろん!」
咲「わあ……ありがとうございます!!」ペッコリン
竜華「それにしても」ジー
咲「? どうかしたんですか?」
竜華「やっぱ咲ちゃん可愛いわ~!!」ダキッ
咲「はわっ!!?」
俺「それにしても」ジー
咲「? どうかしたんですか?」
俺「やっぱ咲ちゃん可愛いわ~!!」ダキッ
咲「はわっ!!?」
竜華「玄ちゃんも可愛かったけど、咲ちゃんも可愛いわ~」スリスリ
咲「あ、あ、あの!?」
竜華「やっぱ妹ってええな~」
怜「…………浮気もの」ボソ
竜華「はう!?」ビクッ
怜「……私というものがありながら、他の女に手ー出すなんて」ゴゴゴ
竜華「違うんや!! 私は怜一筋や!! 浮気なんてせーへんよ!!」
怜「ふーん」ジトー
竜華「怜ー、かんにんしてーな!!」ワタワタ
――――――――――
ブロロー
竜華「なあ怜、そろそろ許して―な!」
怜「……しゃあないな。膝枕してくれたら許したるわ」
竜華「ホンマ!? 膝枕くらいナンボでもしたるで!!」ポンポン
怜「ふぅ……やっぱ竜華の膝枕は最高や」ゴロン
咲「あのー……」
怜「ん? どないしたん?」
咲「お二人ってすごく仲がいいんですね」
怜「そらそうよ。私ら恋人同士なんやから」
咲「えっ!?」
竜華「ビックリしたか? でもホンマの話なんよ」
咲「そ、そうなんですか……羨ましいですね」
怜「おや? 咲はこっち側の人間か?」
竜華「もしかして咲ちゃんがチョコ渡したい相手って……」
咲「は、はい……末原さん……です……////」
竜華「はー、末原さんか。ちょっと驚いたわ」
怜「なるほどな。頑張りや、咲」
咲「はい……」
怜「……」
竜華「いいなー末原さん。咲ちゃんからチョコ貰えるんやから」
怜「竜華は私からのチョコがあれば十分やろ」
竜華「まあ、それはそうやけどな」
パーキングエリア
咲「監督さんと清水谷さん遅いですね」
怜「トイレが混んどるんやろ」
咲「……あと少しで姫松ですね……」
怜「……」
咲「……なんか緊張してきました」アハハ
怜「……怖いんか?」
咲「えっ……?」
怜「末原さんにチョコ渡すんが、ホンマは怖いんとちゃう?」
咲「それは……その……」
怜「言わんでもええよ。咲の気持ちは分かる。だって……」
怜「私とまったく同じなんやもん」
咲「あの……同じって……?」
怜「私から告白したんよ、竜華に」
咲「えっ、そうなんですか? てっきり清水谷さんからだと」
怜「卒業したら竜華と一緒におられんくなるかも思うたら、じっとしてられへんくなってな」
怜「いっちょ告白したろ思うて、放課後竜華を校舎裏に呼んだんや」
怜「でもな、いざ竜華を前にしたら、何も言えんくなったんよ……」
怜「もしフラれたら、今までのような関係では居れんくなる」
怜「最悪、気持ち悪い思われて、軽蔑されるかもしれん」
怜「そう考えたら、言葉が出えへんくなったんや」
咲「……」
怜「竜華が受け入れてくれたから、私は今幸せやけどな」
怜「でも、もし竜華に拒絶されてたらと思うと……今でも怖くて涙が出そうになるわ」
咲「……」
怜「せやから分かる。咲がどんだけ苦しい思いなんか」
咲「……はい、その通りです」
咲「友達に相談して、吹っ切れたはずだったんですが……いざその時になると、怖くなって震えが止まらないんですよ」カタカタ
咲「もし末原さんに気持ち悪いって言われたら……近づかないでって言われたら……」カタカタ
怜「……」
怜「咲、膝枕したるわ」
咲「えっ!?」
怜「まあええから、ほれ」ポンポン
咲「あ、あの……どうして急に?」
怜「そんなん気にせんと、ほら」グイッ
咲「わわっ」ゴロン
怜「どや、ウチの膝枕は?」
咲「えっと……その……気持ちいいです」
怜「そうか」
咲「……園城寺さん。なんで……」
怜「私な、いっつも竜華に膝枕してもらっとるんよ」
怜「竜華に膝枕してもらうと、しんどかった体が嘘のように楽になるんや」
怜「まるで竜華から力を貰ってるみたいにな」
怜「せやから私の力、咲にやるわ」ナデナデ
咲「園城寺さん……」
怜「怜でええよ」
咲「はい。怜さんありがとうございます」グスッ
竜華「あーーーー!!?」
竜華「怜何しとるんや!?」
怜「何って、見て分からんか? 膝枕や」
竜華「そら分かるわ!! なんで咲ちゃんに膝枕しとるんや」
怜「ふふふ、それは秘密やな」
竜華「うう~、私かて怜に膝枕してもろうたことないのに……」
竜華「ってかそれ、浮気とちゃうんか!?」
怜「いや、私のは後輩とのスキンシップや」
竜華「私やってスキンシップやったのに~!!」
怜「竜華のは……なんか目が本気やったし」
竜華「そんな~!!」
咲「くすくす」
姫松高校 部室
洋榎「あー、暇やで」
絹恵「お姉ちゃん、遊び来といて暇って……」
洋榎「だって暇なんやもん!!」
末原「まったく洋榎は……」
漫「末原先輩、ロンです!!」
末原「振り込んでもうたか。それにしても漫ちゃんも随分腕上げたな」
漫「姫松の主将として、先輩方のようになれるよう日々努力してますからね」
末原「よっしゃ、ご褒美にデコに落書きしたるわ」
漫「なんでですか!?」
由子「油性ペンならここにあるのよー」
漫「せめて水性ペンでお願いします!!」
コンコン ガチャ
竜華「こんちわー!! 遊びに来たで!!」
怜「どうも」
洋榎「待っとったで!! よっしゃトランプで勝負しようか!!」
末原「麻雀ちゃうんか!!」ビシッ
絹恵「お姉ちゃん、プロ行き決まってから麻雀三昧やったからな」
咲「あ、あの……」オドオド
洋榎「ん? アンタは確か……」
末原「宮永咲……か?」
咲「は、はい」
由子「珍しいお客さんなのよー」
末原「何しに大阪に……まさか麻雀打ちにか!?」カタカタ
咲「いえ、今日は違うんです!!」
洋榎「せやったら何しに来たん?」
怜「……」
怜「どしたん咲? 何、トイレに行きたいんやて?」
咲「え……?」
怜「でも場所知らんやろうしな……スマンが末原さん、案内したってくれんか?」
末原「まあええけど」
咲「あ、あの怜さん!?」
怜「頑張りや、咲!!」グッ
咲「あっ…………はい!」コクリ
末原「おーい宮永、トイレはこっちや」
咲「はい。今行きます」バタン
咲「……」
咲(よ、よし……怜さんが作ってくれたチャンス、絶対に無駄にはしないよ)
末原「こっちや」
咲「あ、あの!!」
末原「ん? どないしたん?」
咲「す、末原さん、少しお話があるんですがいいですか!?」
末原「なんや突然……まあええけど」
咲「あ、あのですね……」
咲(あれ……言葉が出ない……)カタカタ
咲(やだ、体の震えが止まらないよ……)カタカタ
咲(どうしよう……)カタカタ
怜『咲、負けんな!!』
咲(!! 怜さん……)
怜『アンタの想い、末原さんにぶつけたりや!!』
咲(……なぜだろう……)
咲(まるでそばに怜さんがいるみたいで安心できる……)
咲(いつの間にか震えが止まった……よし、今なら言える!!)
咲「末原さん!!」
咲「これを受け取って下さい!!」スッ
末原「ん? これは……そうか、今日はバレンタインやったか」
末原「これん為に大阪まで来たんか? ありがとうな」ニコッ
咲「あの……」
咲「私、末原さんが好きです!!」
末原「えっ……」
咲「どんな時でも諦めない末原さんが好きです!」
咲「優しくて面倒見のいい末原さんが好きです!」
咲「いつでも謙虚で、責任感の強い末原さんが好きです!」
咲「憧れとかじゃなくて、本当に大好きです!!」
咲「どうか私と付き合って欲しいです!!」
末原「……」
末原「宮永……本気なんか?」
咲「……はい!」
末原「そうか……せやったらちゃんと答えたらなアカンな」
末原「ごめんな。私は宮永とは付き合えんわ」
咲「あ……」
咲「そ、そうですよね……はは」
咲「すみませんでした末原さん……ご迷惑をお掛けしました」
咲「あ、私トイレに行く途中でした……」
咲「もう大丈夫です……道は分かりましたから……」
咲「だから末原さんは部室に戻ってもらって……」ポロ
咲「あれ……おかしいな……」ポロポロ
咲(ダメだったんだ……私、フラれたんだ……)
末原「宮永」
咲「ごめんなさい、なんでもないんです」ポロポロ
末原「スマンかった。言葉足らずやったわ」
咲「……えっ?」
末原「今はまだ、宮永とは付き合えんわ……が正しいか」
咲「あ、あの……それってどういう……?」
末原「宮永の気持ちはすごい嬉しかったわ」
末原「でも私は宮永のことほとんど知らん」
末原「正直、麻雀でボコボコにされた記憶しかあらへん」
咲「うう……」
末原「でもな、今日のアンタを見とって、なんやその……」
咲「?」
末原「か、可愛えところもあるんやって気づいてな……////」
末原「でも中途半端な気持ちで付き合うことはできへん」
末原「それは宮永に対しても失礼やしな」
末原「せやから今はまだ付き合えへんってことや」
咲「それじゃ……」
末原「ああ……宮永さえよかったら……友達から始めへんか?」
咲「えっ……」
末原「アカンか?」
咲「いえ!! 友達からで充分です!!」
末原「ありがとうな」
咲(これって……フラれたことにはならないのかな?)
咲(そっか……友達からか……ふふ)
咲(でも、欲を言えば和ちゃんが見せてくれたアニメみたいに)
咲「末原さんとキス……したかったな」ボソッ
末原「はい?」
咲「あれ?」
咲(えっ、えっ、えっ!?!?!?)
咲(まさか私、キスしたいって口に出しちゃってた!?)
咲(あーーーーーー、どうしよう、絶対変な子だって思われたよ!!)
咲(せっかく友達から始めることができたのに!! 私のバカバカバカ!!)
末原「宮永」
咲「ごめんなさい末原さん、なんでもないんです!!」
末原「んっ」チュッ
咲「ふぁ////」
末原「今はこれで勘弁な」
咲(あわわ……おデコにキスされちゃった////)ドキドキ
末原「さーて、そろそろ部室に戻ろうか」
咲「末原さん」
末原「ん? どうしたん?」
咲「……私、いつか唇にキスしてもらえるように頑張りますね」
末原「!!////」
咲「えへへ、私末原さんに好きになってもらえるよう猛アタックしちゃいます」
末原「そ、そうか。楽しみにしとるで……咲」
咲(恋人にはなれなかったけど……)
咲(アニメみたいなキスはできなかったけど……)
咲(今はこれで充分だよね)
咲「末原さんにバレンタインチョコを渡したい」 カン
代行、支援ありがとうです。
去年のバレンタインでは末咲でSS書いたので
今年は咲末で書きました。
またこの二人で書きたいですね。
去年の教えろや!!
>>94
末原「バレンタインキッスやな……」咲「そうですね」
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません