<新子家 憧の部屋>
憧「………………」カタカタカタ..
憧「………っ!出来た……」
憧(やった!インハイが終わってから2ヶ月、ようやく完成した)
憧(あたしの恋を叶えるアイテム、しず専用ゲームが!)
憧(このゲームさえあれば……恋愛に興味が薄いしずもあたしを恋愛対象として意識し、恋心を抱く!結果、しずと付き合える!!)
憧「ふふふ……あはははは!!あーーーっはははははははは!!!!」
憧(長年に渡る片想いは……明日、終わる!)
憧(そして、しずとの愛に満ちた学校生活が始まるんだ!!)
翌日 放課後―――
<阿知賀女子学院 麻雀部部室>
憧「ほらほら、早く早く!」
穏乃「ぅわわ、押すなって……やるのはいいけどさ、私パソコンもゲームも全然やらないから何がいいとか全然分からないよ?」
憧「それでもいいからさ。ほらマウス持って……あ、みんなも座って座って」
灼「……………ん」
玄「う、うん……」
宥「そう……だね」
憧「さぁ始めましょ!これをクリックしてスタート!」ウフッ
穏乃「うん………」カチカチッ
画面『ときめき阿知賀女子学院メモリアル』
穏乃「わ、この絵……うちの校門だ」
憧「リアルさを重視したからね」
穏乃「なるほど。あ、それでこのゲームってどんなゲームなの?」
憧「恋愛シミュレーションだよ。主人公が女の子と付き合おうと頑張るゲーム」
穏乃「へえ~……えっと、まずは主人公の名前を決めるんだね……ん?主人公の名字って『高鴨』なんだ?」
憧「うん。それ以外の名字が思いつかなくてさ」
穏乃「あ、主人公の絵……完全に私じゃん」
憧「そうなのよ。しずの写真を使わせてもらったの。他にモデルがいなくって……勝手に使っちゃってごめんね?」
穏乃「ううん、それはいいんだけど………ちょっと気になる事が…」
憧「何?」
穏乃「女の子の私が女の子と付き合うの?」
憧「うん、そうだよー」
穏乃「え?でも……変じゃない?」
憧「玄!」ボソッ!
玄「っ!お、女の子同士の恋ってありだと思うなー!」
穏乃「え」
憧「ほら、玄もそう言ってるし、問題ないよ」
穏乃「うーん……灼さんはどう思います?」
憧「っ!」バチッ!(灼にウインク)
灼「………玄と同意見」
憧「っ!」バチッ!(宥にウインク)
穏乃「宥さ」
宥「お、女の子同士の方があったか~い!」
穏乃「そうですか……意外と普通なのかなー?うーん」
憧(よし!みんなが常識であるかのように答えれば、女の子同士の恋愛が普通だとしずに認識させる事が出来る!狙い通り!)
穏乃「まぁいいや……えっと名前か。ゲームだし、自分以外の名前を付けて遊んでみようかな?」
憧「え!?そ、それはちょっと……」
穏乃「?ダメなの?」
憧「あー、ダメじゃないけど……どんな名前付けても、キャラクターは『しず』って呼ぶから……」
穏乃「?じゃあなんで名前を付けさせるの?意味ないんじゃ……」
憧「うん……そうだね。ちょっとミスった」
憧(自分の手で名前を入力させる事で感情移入の度合を高める作戦だったんだけど……裏目に出たか)クッ
穏乃「そっか。じゃあ……し……ず……の……っと」カチカチ
しずの『今日は阿知賀女子学院の入学式!』
穏乃「お、始まった」
しずの『これから3年間、共に過ごす仲間と出会う日だ!よぉぉし、頑張るぞー!』
穏乃「おお……なんか私っぽい……」
しずの『早いとこ体育館に行って、近くにいる人と話でも……うっ!』
しずの(まずい………お腹の調子が……トイレに行かないと!)
穏乃「ふむ……『』が喋りで、()が心の声なんだね。っていうか、いきなりトイレ……」
◎トイレ◎
しずの『はぁ~、すっきりしたぁ』ガチャリ
??『…………』
穏乃「おおっ!?この人は……」
しずの『おや?あなたは?』
??『初めまして!私は松実 くろ!阿知賀女子の2年生です。以後お見知りおきください!!』
穏乃「す、すげー!!玄さんの声だ!」
憧「ふふん。玄に頼んで録音してもらったんだ~」
穏乃「おお……じゃあこれ演技?すっげー上手ですね!」
玄「え?あ、ありがとー//」
穏乃「絵も玄さんの写真使ってるから完全に玄さんだよ~!さぁ、これからどうなる~♪」カチカチッ
しずの『私は高鴨 しずのです。それでは手を洗うので失礼します』スタスタ
穏乃「あ、あれ?」
くろ『…………………』
しずの『………………』ジャバジャバ..バタン
穏乃「出てっちゃった………ねえ、こういうのってもっと話したりとかしないの?」
憧「しないねぇ」
穏乃「そうなんだ……残念……」カチカチ
しずの(そんなこんなで入学式は終わった)
穏乃「えっ?もう?」
しずの(そして私は再びトイレに用を足しに来た)
穏乃「またトイレ…」
しずの『ふぅ~、すっきりしたぁ……』ガチャ
??『………………』
しずの『ん?あなたは?』
??『私は鷺森 あらた』
穏乃「おおおお!!灼さんだ!灼さんも声付きだぁ!」
しずの『私は高鴨 しずのです。それでは』スタスタ ガチャ バタン
穏乃「………また会話なし……しかも手洗ってないし……」
憧「ごめん、それは普通にミス……」
穏乃「……ねえ、なんで会話しないの?」
憧「えと……容量とか時間とか色々問題があって……」
穏乃「容量……よく分かんないけど大変なんだね……」
しずの『あ、いっけね。流し忘れてた!トイレに戻ろう』スタスタ
穏乃「………………」
ジャーー
しずの『よし、流したぞ!教室へ戻ろう』ガチャ
??『……………』
しずの『あれ?あなたは?』
??『私は3年生の松実 ゆうです……』
穏乃「宥さんも声付きで凄くいいんだけど……」チラ
憧「な、何かな?」
穏乃「……なんでみんなトイレで出会うの?恋愛ゲームならもっといい場所があると思うんだけど?それとも恋愛ゲームってトイレで出会うのが普通なの?」
憧「ざ、斬新さを狙ったというか……」
穏乃「そう……」ハァ..
憧(さすがにやりすぎかな?でもあたしを引き立てる為には周りを下げるのが手っ取り早いし、玄たちに許可もらったもん……問題はないよね)
しずの『私は高鴨 しずのです。それでは』ジャバジャバ
穏乃「やっぱり全然会話なし……」
しずの(今日はこれで下校か……色んな人と出会ったけど、いまいちピンとこなかったなぁ……)テクテク
ドスン!
??『きゃっ』
しずの(わ、誰かとぶつかっちゃった!)
穏乃「…………」
しずの『ご、ごめん!考え事してたから!大丈夫!?』
??『うん……あたしは大丈夫』
しずの『!!!』
穏乃「お、憧か。憧との出会いはトイレじゃないんだね」
しずの(この子……超絶可愛い!!)
穏乃「………あれ?主人公の反応が……」
しずの(ううん、多分この子より可愛い子はいると思う。でも私の中では1番可愛い!そう、つまりこの子は……私の好みにドストライクなんだ!)
穏乃「玄さんたちと全然違う……」
しずの(まず目がパッチリしてるのがいい!体もちょうどいい肉付きで痩せすぎてもいないし、ラインが……―――)
しずの(―――それはつまり日本人離れしているのとは違い、庶民的な感性も持っているに違いない!)
穏乃「長すぎる……もう5分経つよ………普通、大丈夫って言ってから5分間ずっと無言だったら気味悪がって逃げるよ……」
しずの(視線が自然と太ももや指先にいっちゃうよ……あの指で触れられたら……あの太ももを撫でたら………ああ……いけない想像が!)
穏乃「………」ハァ
??『あたしは新子 あこ!あんたは?』
穏乃「あ、やっと終わった」ホッ
しずの『え?私は高鴨 しずの……』
あこ『そっか!これからよろしくね!しず♪』
しずの『!!』
しずの(この一言で、私は恋に落ちた……)
穏乃「え!?恋に落ちちゃうの?初日に!?」
憧「まぁ……そういう事もあるじゃん?」
穏乃「でも………ええー?」
~1年目4月3週~
穏乃「あれ?画面が変わった」
憧「そう。本来はこの画面で勉強とかオシャレとかのステータスを上げるシステムにするつもりだったんだけど、そこまでは作れなくてね」
憧「ここで出来るのはデートに誘う事だけ。デートに行く事で仲良くなって好感度が上がるんだ」
穏乃「なるほど……これがデートのボタンかな?……あ、デートに誘いますかって出た!」
憧「そしたら誘いたい相手をクリックして、行きたい場所を選ぶとデート出来る」
穏乃「ほうほう」
憧(…あたしの予想だと、初日に恋に落ちたって事であたしを誘うはず……魅力をあれだけ描写したんだから強く印象に残ってるだろうし)
穏乃「やっぱり………玄さんかな?」
憧「!!!」
穏乃「デート場所は………玄さん、どこがいいですか?」
玄「え?えっと……ど、動物園とか?」
穏乃「分かりました!動物園へレッツゴー!」カチッ
憧「おかしい……あたしの読みが外れるなんて……」
◎動物園◎
しずの『うわぁ~!動物がいっぱいだ!』
くろ『ふぅ~む、なるほどなるほどなるほどー』
しずの『あっ!ライオンだ!かっけー!!』
くろ『ふぅ~む、なるほどなるほどなるほどー』
穏乃「ん?」
しずの(やっぱり動物園は楽しいなぁ~)
くろ『ふぅ~む、なるほどなるほどなるほどー』
穏乃「………ねぇ」
憧「何?」
穏乃「玄さん、ふぅ~むなるほどしか言わないんだけど」
憧「……う、うん」
穏乃「なんで?」
憧「その……テキストを書く時間の問題と、あまり玄に手間をとらせないようにと思って……だから録音したのは登場シーンとこのセリフだけなんだ」
穏乃「………じゃあしょうがない…か……」
くろ『ふぅ~む、なるほどなるほどなるほどー』
1.私もそう思う
2.いや、違うんじゃないかな?
3.どっちでも合ってる
穏乃「ん、何これ?」
憧「選択肢だね。この3つのうち、どれかを選ぶ事で好感度が変化するの」
穏乃「ふぅ~むなるほどって問いかけられても答えようがない気が……でもどれか選ばないとダメか………じゃあ、1で」カチッ
しずの『私もそう思う』
くろ『ふぅ~む、なるほどなるほどなるほどー』
しずの(どうやらあまりいい印象を与えられなかったみたい)
穏乃「どうしろっていうのさ」
しずの『あー、楽しかった!』
くろ『ふぅ~む、なるほどなるほどなるほどー』
穏乃「……………」カチカチッ
しずの『また今度一緒に来れたらいいね!』
くろ『ふぅ~む、なるほどなるほどなるほどー』
穏乃「……………」カチカチ
しずの『それじゃあまた!』
くろ『ふぅ~む、なるほどなるほどなるほどー』
穏乃「……………」
玄「……………な、なんかごめんね?」
穏乃「いえ……玄さんのせいではないですから……」
~1年目4月4週~
穏乃「あ、またデート画面か」
憧(今度こそあたしを誘うはず!)
穏乃「うーーん………じゃあ灼さんで」
憧「!!!」
穏乃「考えてみれば灼さんと遊ぶ事ってあんまり無かったですよね?」
灼「うん、そうだね」
穏乃「それもなんか寂しいなぁ……今度遊びに行きません?買い物とか!」
憧「!!」ガガーン
灼「えと……」チラ
憧「…………」シュン
灼「そうだね、いいかもしれない。でも買い物行くなら憧と3人で、とかみんなで一緒にってのはどうかな?ファッションのアドバイスとかしてもらいたいし」
穏乃「お、いいですね!そうしましょう!」
憧「っ!」チラ
灼「…………」コクリ
憧(ありがとう!!)
穏乃「よぉし、じゃあデートはショッピングに行こう」カチカチ
◎ショッピングセンター◎
しずの『待たせてごめんね!』
あらた『はるちゃん……』
穏乃「ん?」
しずの『まずはあの店に行ってみよう!』
あらた『はるちゃん……』
穏乃「これは…………憧?」
憧「……玄と同じ理由」
穏乃「そう………」ハァ
穏乃(絵も声も灼さんそのものだし、もっと色々喋ってくれたらスッゲー面白そうなんだけどなぁ……)
あらた『はるちゃん……』
1.やっぱりセクシー系でしょ?
2.カジュアルが1番!
3.ゴスロリかな
穏乃「あ、また選択肢だ…」
穏乃(灼さんの質問が分からないけど、このシチュエーションなら大体が予測できる!どれが似合う?的な事だろうから…)
穏乃(この3つだと……1のセクシー系は灼さんっぽくないし、3のゴスロリは似合うだろうけど普段着にはちょっと……となると2だ!)ピッ
しずの『カジュアルが1番!』
穏乃(どうだ!この推理!)フフン!
あらた『はるちゃん……』
しずの(どうやら悪い印象を与えてしまったみたい)
穏乃「あれ!?な、なんで!?」
憧「えっと……この質問は確か……『おばあちゃんが1番苦手な服はなんだと思う?』だから…」
穏乃「ええっ!?」
憧「3が正解。1は普通」
穏乃「そ、そんな……分かる訳ないよ……おばあちゃんの苦手な服を聞くってどんな質問だよぉ……」
ピロリロリン
穏乃「ん?」
画面(今の選択によってあなたは『あらたのおばあちゃん嫌い』の称号を獲得しました)
穏乃「な、何それ……」
憧「これを獲得すると、おばあちゃんといる時の灼さんの好感度が上がらなくなるの。ちなみに灼さんとのデートは2分の1の確率でおばあちゃんも来るから」
穏乃「えええ!?」
憧「とまぁ、こんな感じでいくつかの称号があるから気を付けて」
穏乃「気を付けてって……質問が分からないのに……」
穏乃(っていうか称号に凝るよりもう少し喋る様にして欲しかった……)
~1年目5月1週~
憧「しず?次こそあた」
穏乃「宥さんと植物園に行こう♪」
憧「……………」
宥「ご、ごめんね?」フルフル
◎植物園◎
しずの『すごい草だなぁ……』
穏乃(宥さん……お願い!いっぱい喋って!)カチカチッ
ゆう『あったか~い』
穏乃(う、嫌な予感……他のセリフ……来い!)カチカチッ!
ゆう『あったか~い』
穏乃「……………」ハァ
ゆう『あったか~い』
1.芸術的だね
2.よく分からないなぁ
3.それよりお腹空いた
穏乃「……2でいいや」カチ
しずの『よく分からないなぁ』
ゆう『あったか~い』
しずの(すごくいい印象を与えたみたい)
穏乃「………え、正解なんだ?」
ピロリロリン
画面(あなたは『分からないっ子~ゆう編~』の称号を獲得しました)
穏乃「これは?」
憧「宥姉とデート時に3分の1の確率で選択肢を全部『分からない』に変える称号だね。『分からない』を選ぶと好感度が下がる」
穏乃「ええ~、嫌な事しかないじゃんかぁ……もう……」カチカチ
しずの『また来ようね!』
ゆう『あったか~い』
穏乃「………あとさ、あったか~いしか言わないって事は……この宥さん、暑がりじゃね?」
憧「………」ハッ
~1年目5月2週~
穏乃「はぁー……次は……」
憧「っ!」ウィンク!
玄「ふぇ?……あ、憧ちゃんなんかどうかなー?」
灼「……それはいい考え」
宥「わっ、私は絶対憧ちゃんにするー!」
憧「みんな同じ意見!?それじゃあ誘わない方がおかしいみたいな雰囲気じゃないの!!ねぇしず!?」
穏乃「こ、声が大きいよ………もともと順番的に憧を選ぶつもりだったし」カチカチ
しずの『あこちゃんをデートに誘ったぞ!』
憧(やった!しずがあたしを誘ってる!)
◎公園◎
しずの『犬を散歩させてる人がいるね』
あこ『わぁぁ、あの犬可愛い!!』タタッ
しずの『あ、待って!置いてかないでよ!』
穏乃「あれ?ちゃんと喋る……?」
憧「当然!あたしはフルボイスだからね!テキスト量もハンパないよ!」
穏乃「そっか……」
しずの『犬、好きなんだ?』
あこ『うん!超好き!』
穏乃「あー……ちゃんと反応が返ってくるっていいな……」
憧「でしょ!?やっぱり会話が成り立たないと恋愛は進展しないもんね!」
穏乃「うん」
あこ『ねえ、しずはどんな犬が好き?』
1.ミニチュアダックスかな
2.ゴールデンレトリバーかな
3.犬自体嫌いかな
穏乃「これは2だね……ああっ!間違えた!」
しずの『犬自体嫌いかな』
穏乃「3にしちゃった……好感度下がっちゃうよぉ…」
あこ『そんなしずが好きだよ』
しずの(ものすごくいい印象を与えたみたい)
穏乃「あれ?……3で良かったのか………ねえ憧?」
憧「何?」
穏乃「憧って犬嫌いだっけ?」
憧「ううん」
穏乃「???」アレー?
あこ『あ、しず!あっちにクレープ屋さんがあるよ!食べよ?』
しずの『おっ、いいね!食べよう!』
穏乃「………………」カチッ
あこ『ふふっ、ほっぺにクリーム付いてるぞ?……ペロッ』
しずの(ドキッ!可愛いあこちゃんに舐め取られちゃった……大胆だけど尻軽さは微塵も感じない。むしろ清楚さと清潔感が溢れてる……)
穏乃「………………」カチカチッ
あこ『あーあ、もうこんな時間………もっとしずと一緒にいたかったのに……くすん』
しずの『今まで生きてきた中で1番可愛いくすんを聞かせてくれてありがとう!私ももっとあこちゃんと遊びたい……でも時間は時間。また今度デートしよう!』
穏乃「…………なんか……いいかも」
憧「っ!そ、そう!?」
穏乃「うん……今までは会話が成立してなかったりで、正直面白さが分からなかったんだけど……このデートはなんかいい感じ」
憧「へ、へー……そうなんだ……」フーン..
穏乃(相変わらず主人公の反応がちょっと変な気もするけど)
憧「じゃあアレじゃん?しずはさ、これからあたしを攻略しちゃう流れに乗ってるんじゃないのかなぁ!?」
穏乃「攻略?」
憧「……だから……その……あたしと付き合う事を目指す……って事」
穏乃「あ、これ恋人を作るゲームだっけ、忘れてた」
憧「もー、し~ずぅ~♪」
憧(露骨な照れ隠し!可愛いやつめ~)ニヘー
穏乃「……そだね。憧とデートする方が楽しいし、憧を攻略するよ」
憧「!!」
憧(やった……大・進・展!!)オッォォ
穏乃(だって他のみんな同じ事しか言わないんだもん)
~1年目6月1週~
穏乃「……そういえばさ、デートボタンの横にあるこのボタンは何?」
憧「好感度表示ボタンだよ」
穏乃「好感度見れるの?見たい見たい」カチッ
さくらこ『わぁー、しゅげー!』
穏乃「お、桜子だ」
憧「桜子が好感度が1番高いキャラを教えてくれるよ」
穏乃「1番高いキャラだけ?……って事は」カチ
さくらこ『あこちゃんだァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ア゛』
穏乃(桜子ちゃんの後ろに憧の写真がたくさん出てきた……)
憧「やったね!」
穏乃「……うん……でもこれって好感度表示っていうのかな……」
~1年目7月2週~
◎グラウンド◎
穏乃「あれ?デート画面じゃない……学校だ。なんで?」
憧「イベント発生だね。ある時期になると必ず起きるイベントだよ」フフフ
しずの『今日は待ちに待った運動会!頑張るぞー!』
穏乃「7月に運動会?」
憧「うっ……そこらへんはスルーして」
しずの『あ、くろさん!』
穏乃「おっ……これはもしかして……」
穏乃(イベントの時はちゃんと喋ってくれるかも!)ドキドキ
くろ『ふぅ~む、なるほどなるほどなるほどー』
穏乃「……………」
しずの『くろさんも頑張って!』
穏乃「…………」カチカチカチ!
くろ『ふぅ~む、な』
穏乃「…………」カチカチカチ!
くろ『ふぅ~』
穏乃「…………」カチカチ!
くろ『ふ』
玄「うぅ……なんか悲しいよ……」
【二人三脚レース】
あこ『しず!あたしたちのラブラブラブラブラブラブパワーで勝とうね!』
しずの『おう!』
穏乃「二人三脚レース………これなんか操作するの?」
憧「ううん、そこまでは作れなかった」
穏乃「そっかー、残念……私に出来るのは応援するだけかぁ」カチカチ
しずの(レースが始まる直前に、私たち以外のペアがみんな棄権しちゃったみたい)
穏乃「え?なんで?」
しずの(私とあこのラブラブラブラブラブラブさを前にして、負けを認めたみたい。それだけ私たちがお似合いって事だね。嬉しい!)
憧「そういう事ってあるんだぁ……ビックリだね?」
穏乃「…………うん」
【借り物競争】
しずの『はぁはぁ……一体何を借りればいいんだ?』カサカサ
-髪を束ねている子-
しずの『心当たりがあるぞ!あの子だ!』
1.あこ
2.くろ
穏乃「簡単だね!」
憧(うんうん)
穏乃「玄さんだから2!」
憧「ええっ!?」
穏乃「?なんで驚くの?右側でちょっと束ねてるじゃん」
憧「……………」ジィー..
玄「た、束ねててごめんね……」
しずの『くろさんのクラスへ行こう!』タタッ
女A『松実さんは早退したわよ』
穏乃「へ?そ、早退……?」
しずの『残念……他の子にしよう』
穏乃「という事は……」
しずの『心当たりがあるぞ!あの子だ!』
1.あこ
穏乃「……だよね……うん………」カチ
しずの『可愛いあこがいる!』タタッ
あこ『え?あたし?そんな………あたしなんて大して可愛くないし……』
しずの『そんな事ないよ!あこはスッゲー可愛い!スタイルだっていい!』
しずの『見かけだけじゃない!頭もいいから私に勉強を教えてくれるじゃん?その時にあこの甘い香りがしてドキドキするんだ!』
穏乃(また始まった……これ長いんだよなぁ……)ハァ
しずの『その香りはどう表現したらいいんだろうなー?……とにかく私が大大大~~~っ好きな香りなんだ!ずっと一緒にいたいぐらい!』
あこ『しず……そこまであたしの事………嬉しい』ポ
しずの『あこが喜んでくれると私も嬉しいよ……』
あこ『しず………あっ!他の子たちがゴールへ向かってる!あたしたちも急ごう!』
穏乃(あ、やっと先に進みそう)ホッ
しずの『あこ……その冷静な判断力も大好きだよ』
あこ『え?しず?』
しずの『……私が授業中に先生に当てられて、答えられずにオロオロしてた時も、あこが可愛く助けてくれた』
しずの『その可愛さは今なお進化中!私にとってあこは女神みたいな存在で、この先も欠かす事はできない!』
穏乃「………………」
しずの『大学に入っ』カチ
あこ『そこまで言』カチ
しずの『食べちゃい』カチ
あこ『ファーストキ』カチ
しずの『抱きしめ』カチ
穏乃「……………」カチカチ
憧「あ、あの……会話を楽しまないの?」ネェ
穏乃「だって長すぎるんだもん」
憧「え……長すぎる?」
穏乃「うん」
憧(ひなと同じ事言ってる……)※山谷ひな…阿知賀こども麻雀クラブにいた子。所存。
憧(ゲーム作りを手伝ってもらった時、感想を求めたら長いって言われたっけ……あたし的にはこれでも大分削ったんだけど……)
穏乃「…………」カチカチカチ
~1年目11月3週~
【文化祭】
あこ『今日は楽しかった!また来年も一緒に回りたいな』
しずの『うん!私も!』
穏乃「………文化祭のイベント……セリフがちょうどいい長さになってるね。いい感じ」
憧「そ、そう!?じゃあここから先もいい感じが続くよ!」
穏乃「へぇー、それは楽しみ」ニコ
憧(文化祭以降のイベントテキストの添削は全部ひなに頼んだから正直心配してたんだけど……むしろ助かった……ありがとう、ひな!)
~1年目12月4週~
◎松実館◎
くろ『ふぅ~む、なる』カチ
あらた『はるち』カチ
ゆう『あったか』カチ
あこ『はい。しずへのクリスマスプレゼントだよ♪』
しずの『わぁ、ありがとう!………オルゴールだ……可愛い』
あこ『あたしの好きな曲が流れるんだ』
しずの『へぇ~………いいメロディ……』
あこ『でしょ?……いつかしずと2人きりで聴けたらいいな……なんて……』ポ
しずの『あこ………』
穏乃「ぅあ……なんか……照れる……//」
憧(おっ、好感触!!)
玄「私たちの絵、隅の方に集められて重なってる……なんか寂しいよぉ」
宥「セリフも聞いてもらえない……」フルフル..
灼「そう落ち込まずに……ここは応援に徹しましょう」
~2年目8月1週~
◎海◎
あこ『う~ん、いい天気!やっぱり海は最高!』
しずの『あ、焼きそば売ってる。買いに行こう!』
??『へっへっへ……キミたち可愛いねぇ』
しずの『えっ!?だ、誰ですか!?』
穏乃「あ、この人は……」
??『私は赤土 はるえってもんだ』
あこ『……なんの用ですか?』
はるえ『なぁに、可愛い子と遊びたくってねェ』
穏乃「赤土さんはちゃんとテキストがあるんだね?」
憧「うん。ハルエの場合は声無しの代わりにテキストだけは書いたから」
穏乃「………それなら玄さんたちも声無しでいいからそうして欲しかった……」
はるえ『なぁ、私と一緒に火遊びしようや』グイ
あこ『嫌っ!やめて!』
はるえ『いいじゃねえか、夏の醍醐味だろうが!あぁあん!?』
あこ『よくないです!あたしは………あたしの体はしずだけのものなのっ!!』
しずの『っ///』
憧(出たっ!どうよこのセリフ?ときめいてくれた!?)チラ
穏乃「………あは……ははは……なんか照れちゃうなぁ//」ポリポリ
憧(!!超いい感じ!)グッ
はるえ『ちっ……なんだよ………興ざめだ!もう帰ってワンカップ飲む。じゃあな』
しずの『あこっ!大丈夫!?』
あこ『うん……ありがとう。あたしは平気』
しずの『そっか、よかった………で、あのさ……さっきのセリフ……』
あこ『あ………えと……あれは違うの。逃げる為に……う、嘘ついたんだ』
しずの『え……』
あこ『べ、別にあたしの体はしずの為にあるんじゃないんだから!』
憧(ここでツン!どうよ!)チラ
穏乃「なんだ~、嘘だったのかぁ……引っかかっちゃったよ」
憧(失敗した……デレでいけばよかった)ムゥウ..
穏乃(……でもさっきのセリフ、ドキッとしちゃったよ……ううん、今でもまだ……)ドキドキ..
憧(それから……)
憧(渾身のツンデレ作戦が失敗に終わった事で落ち込むあたしを尻目に、しずは黙々とゲームを進め、あたしを攻略していった)
憧(2年目の文化祭、2人で過ごすクリスマスイブ、初詣、バレンタインとホワイトデー……)
憧(1年目より距離が縮まった事を意識させるイベントをたくさん用意した)
憧(イベントCGの代わりに、あたしとしずの写真を合成してイチャイチャしてる雰囲気を前面に押し出し、付き合うとこんなに楽しいんだとアピール…)
憧(立ち絵のあたしも頬を染めっぱなし。たまに告白めいた事を言ってはしずをときめかせ、甘いムードを作り出す)
憧(少しずつだけど……しずがハマっていってるのが分かった)
憧(このままいけば、恋愛に興味が薄いしずを恋愛に目覚めさせ、なおかつあたしを好きになる様に仕向けるという目的を達成できるはず)
憧(だって、ゲーム内ではあたしそのものなキャラとたくさんデートしてほぼ恋人みたいな関係だったのに、現実では友達のままだもん)
憧(ゲームと現実のギャップを埋めたいと願うはず!)
憧(…………残るイベントは、エンディング前の告白のみ……あ、ちょうど今プレイ中だ……さて、どうなる………)ドキドキ
しずの『―――もう、あこが好きだって口に出していいんだね!』(2人抱き合っている)
あこ『うん……だってあたしたち、恋人同士なんだから!』
しずの『あこ……』
あこ『しず……ずっと一緒だよ』
~END~
穏乃「……………」
憧「………………」ドキドキ
穏乃「…………憧」
憧「な、何?」
穏乃「……………」
憧「………………」ゴクリ
穏乃「す……」
憧「…………」
穏乃「スッッッッ……ゲーよかった!」
憧「!!」
穏乃「恋愛シミュレーションゲームって面白いんだね!!すっかりのめり込んじゃったよ!憧とのイベントもよかったし!」
憧「し、しず………」
憧(やった………やった………)ウルッ..
玄(憧ちゃん……おめでとう)
宥(あったか~い)
灼(はるちゃんの扱いに引っかかりを感じたけど……なんだかんだでゲームを完成させたのは凄いよ……憧、お疲れ)フフ
穏乃「いっぱいドキドキしたよ!」
憧「うぅ……ありがとう……」グス
憧(何度も徹夜して頑張って作った甲斐があった……本当に……)
穏乃「………そ、それでさ」
憧「っ……うん!」ドキ
穏乃「憧にお願いがあるんだけど……//」
憧「あ、あたしからも……あるよ……//」
穏乃「え?じゃ、じゃあ憧から言って」
憧「ゃ、やだ……しずが先言ったもん」
穏乃「う……分かった……それじゃ、私から」
憧「…………」コクリ
穏乃「…………憧」
憧「…………はい」
穏乃「玄さんたちも攻略出来るやつを作って!お願い!」
憧「………うん、あたしも好き……………え?」
穏乃「憧とのデートイベントとかスッゲー楽しかったからさ、やっぱり他の人ともデートしてみたいよ!……玄さんとか特に//」
憧「……………」
玄・宥・灼「……………」
穏乃「あ、それとさ………の、和とかも攻略出来ると嬉しいかも……//」
憧「うぅ……」
穏乃「ダメ……かな?」
憧「…………………うわぁあああああん!!!」
穏乃「あ、憧?」
憧「しずのおバカ鈍感ハーレム願望女子高生~~!!!!わあぁあぁあん!!」ダダダダー!ガチャ バタン!
穏乃「………行っちゃった…………なんか泣いてたっぽいけど……」
玄「………穏乃ちゃん……さすがに……」
灼「気付いてあげようよ」
宥「うん……」
穏乃「え?どういう事ですか?」
灼「それは………」
穏乃「んー?だってゲームは凄いと思ったから褒めたし、泣く様な………あ」
灼「……気付いた?」
穏乃「はい…………私、ダメダメですね……ちゃんと謝ってなかった」ハァ
玄「え?」
灼「謝る?」
穏乃「ええ。最初の方、文句っぽい事言っちゃったじゃないですか?それを謝るの忘れてました」
宥「……………」
穏乃「憧が頑張って作ったゲームなのに……無神経でした」ハァ
玄「ええと……」
穏乃「今から謝りに……ダメだ。言葉だけじゃ軽すぎる」
灼「いや、そんな事…」
穏乃「そうだ!ただお願いするだけじゃなくて、玄さんたちとのデートイベントのアイデアを出して憧に負担がかかりすぎない様にしよう!行動で償う、これだね!」
宥「し、穏乃ちゃ……」
穏乃「そうと決まれば……家に帰ってプランを練ろう!よぉ~し、やるぞぉおぉ!!!」ダダダァ!ガチャ バタン!
玄・宥・灼「…………」
宥「穏乃ちゃん……強敵……」フルフル
灼「だね……」
玄「うん、悪気ゼロなんだもん……」
夜―――
<新子家 憧の部屋>
憧「もう……しずのおバカ……」
憧(あれから3時間以上も経つのに、ごめんねメールもしてこないなんて………2日間くらい冷たく接してやる)グス
♪~
憧「電話っ!?」ガバッ!
憧「………ひなか…………はいもしもし」
ひな『もしもし憧ちゃん?どうだったか気になる所存ー』
憧「ダメだったよ……」
ひな『……憧ちゃん……』
憧「ごめんね……ひなにはかなり手伝ってもらったのに……あ、まだお礼してなかったよね……今度ブタメン持ってくからさ…」
ひな『………うん、それで次はどうするの?作戦とか……』
憧「…………しばらくはいいかも」
ひな『え?』
憧「ちょっと休憩……かな?」ハハ
ひな『………』
憧「はぁ……」
ひな『憧ちゃんらしくないかも』
憧「ひな……?」
ひな『失敗したって前を向いて走るのが憧ちゃんだよ?』
憧「あ………」
憧(そうだ……過ぎた事を悔やんでもしょうがない……へこむより、とにかく前へ進まなきゃ!)
憧「ありがとう、ひな」
ひな『……元気出た?』
憧「うん」フフ
ピンポーン
憧「こんな時間に誰が…………あっ……もしかして……」
ひな『お客さん?それってきっと……』
憧「うん!ごめん、ちょっと行ってくる!」
ひな『……頑張ってね』
憧「ありがとう!」ダダッ!
憧(しず………しず………しずっ!!!)ダダダダッ!
憧「しずっ!!!」ガラララ!
やえ「こんばんは……夜分遅くすまない」
憧「……………え」
やえ「……新子さんが恋愛ゲームを作ったという話を鷺森から聞いててな。それでいても立ってもいられず来てしまった」
憧「………………」
やえ「その……お願いだ!さ、鷺森 灼を攻略出来る様にしてくれないか!」
憧「………………」
やえ「か、勘ぐるなよ!?別に鷺森に好意があるとかじゃないんだからな!」
憧「………か」
やえ「か?」
憧「帰れぇええええ!!うわぁぁあああん!!」ビェーン
やえ「な、何故泣く!?」
憧「わあぁああああああ!しずだと思ったのにぃいぃぃい!!!!!」ウワーン!
やえ「そんな事言われても…」
警官「む?キミィ!何をしたんだ!」
やえ「え?私は別に…」
警官「望さんの妹さんを泣かすとは……ちょっと来てもらおう!」
やえ「なっ!いきなり疑うとは……このニワカ警官!!」
警官「なんだと!?いいから来い!!」グイグイ
やえ「ニワカめぇえええ………」ズルズル
憧「わぁぁあああぁあぁあ!しずぅぅうぅうぅうう!!!!!!!!」ウワーン!
【完】
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