由比ヶ浜「ヒッキー、起きて!そろそろ起きないと講義間に合わないよ?」ユサユサ
八幡「んっ……もうそんな時間か」
由比ヶ浜「おはよ、ヒッキー」
八幡「……おはよう、由比ヶ浜」
由比ヶ浜「朝ごはん、もう出来てるから顔洗ってきたら?」
八幡「……また黒いスクランブルエッグと黒焦の食パンじゃないだろうな?」
由比ヶ浜「ち、違うし! 今日のはちゃんと上手くできたもん! いいから、早く顔洗ってきて!」
八幡「へいへい……」
八幡(……大学生活が始まって早半年)
八幡(そして、由比ヶ浜との半同棲生活が始まって半年か)
八幡(切っ掛けは……なんだろうか)
八幡(強いて言うなら、由比ヶ浜が俺と同じ大学に受かったからか。私立大の上位校にまさかあいつが受かるなんて夢にも思わなかった)
八幡(まあ、雪ノ下に付きっきりで……あと、たまに俺も付き合って一緒に勉強をしていたからな。あいつがどれだけ努力したかは知っている)
八幡(んで、大学生活が始まる少し前に何故か小町から一人暮らしを勧められた。いつだったか、俺が大学に通っても実家暮らしをすると聞いて喜んでいたのに)
八幡(親もそれに便乗し、いつの間にか家を半場追い出される形で一人暮らしが決まった)
八幡(大学から歩ける距離にある、少し古びたアパートの一室を借り、新たな学生生活の準備をしていた矢先……)
由比ヶ浜「あっ、ヒッキー。顔洗ってきたんだね。それじゃ、食べよっか」
八幡(隣にこいつが越してきた)
八幡(最初は、互いに一人暮らしは慣れてないだろうから色々と協力しよう、という話だった)
八幡(一人分の料理を作るより、二人分を作った方が楽だから、とか。洗い物も一緒にした方が水道代が浮く、とか)
八幡(一緒に食事をして、一緒に買い物して、一緒に掃除して、気付けば……)
八幡「……なあ」
由比ヶ浜「えっ? も、もしかしてまた失敗した!?」
八幡「いや、料理の言葉じゃねえよ。つうか普通に旨い。上達したな」
由比ヶ浜「ほ、ほんと!? よ、よかったあ……」
八幡「なあ、由比ヶ浜」
由比ヶ浜「えへへ、なあに?」
八幡「そろそろ自分の部屋に戻ったらどうだ?」
由比ヶ浜「えっ?」
八幡「えっ? って、なんで驚くんだよ。普通に考えろよ、おかしいだろ。なんで自分の部屋隣にあんのに俺の部屋で寝泊まりしてんだよ」
由比ヶ浜「だ、だって、こっちの方が便利だし……服とか、全部こっちに持って来ちゃったし……」
八幡(最近、やけにかわいらしい収納ケースが増えたと思ったが……まさか服を全部持ちこんでいたのかよ。通りで部屋に戻らない訳だ)
八幡「何の為の部屋だよ……」
由比ヶ浜「ちゃ、ちゃんと掃除はしてるよ!」
八幡「知ってるよ。つうか俺も手伝っただろ」
由比ヶ浜「うん、ありがとうね。ヒッキー」
八幡「……お、おう」
由比ヶ浜「えへへ」
八幡「……おい、勝手に会話終わらすな」
由比ヶ浜「えっ?」
八幡「だから、そろそろ自分の部屋に……」
由比ヶ浜「あの、さ、ヒッキー」
八幡「んだよ」
由比ヶ浜「め、迷惑、だった?」
八幡「は?」
由比ヶ浜「その……あたしが、いて……」
八幡「……別に、迷惑じゃない」
由比ヶ浜「ほ、ほんと?」
八幡「……ああ」
由比ヶ浜「そ、そっかあ、よかった……」
八幡(……この生活を始めて、自分が少し変わった気がする)
八幡「……別に、居ても構わないが、その、たまには自分の部屋に戻れ」
八幡(具体的に言えば、由比ヶ浜に甘くなった気がする)
由比ヶ浜「うん、考えとく」
八幡「お前なあ……」
由比ヶ浜「あっ、ヒッキー! そろそろ出ないと不味くない!?」
八幡「げっ、もうこんな時間かよ。由比ヶ浜、戸締まりは任せたぞ」
由比ヶ浜「うん。あたしは昼からだから、部屋の掃除しとくね」
八幡「ああ、頼む」
由比ヶ浜「あっ、そうだヒッキー。確かヒッキーの今日の授業終わるのって」
八幡「分かってるよ。帰りにスーパー寄って帰るつもりだ。特売には間に合う」
由比ヶ浜「えへへ、さすがヒッキー」
八幡「主夫希望者舐めんな。んじゃ、行ってくる」
由比ヶ浜「うん、行ってらっしゃい。ヒッキー」
バタン
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