なお「れいかが本気で怒るところか。私も少し興味あるかも」

やよい「でしょでしょ」

みゆき「なおちゃんまで……」

あかね「そんじゃ、今からみんなでれいかにちょっかい出すで」

あかね「生半可なおふざけじゃれいかも怒らんさかい」

あかね「せやから、ウチらも本気でいこか」

やよい「おっけー」

なお「まあ、一回怒らせちゃえばそれっきりなんだし」

みゆき「……」

授業

みゆき「自習はウルトラハッピーだけど、習字は苦手」

やよい「そうだ。えへへ」

みゆき「どうしたの、やよいちゃん」

れいか「……」
ｻﾗｻﾗ
やよい「調子はどう？　れいかちゃん」

れいか「あら、やよいさん」

れいか「おかげさまで。この『道』という字」

やよい「わお。れいかちゃん達筆だねー」

れいか「ありがとうございます」

れいか「ここ最近で一番うまく書けたつもりです」

やよい「そっかー。あっ！」

ﾋﾞﾁｬ

れいか「あぁ！」

やよい「あーごめん、れいかちゃん。机の上に墨汁こぼしちゃった」

やよい「れいかちゃんの和紙にもかかっちゃった？」

れいか「ええ、少々……」

やよい「そっか。れいかちゃんの自信作だったのにね」

やよい「本当にごめんね。わざとじゃないの」

れいか「気にしないでください」

れいか「また書き直せば済むことですから……」

やよい「うん、がんばってね！」

休み時間

あかね「……」

あかね「お、れいかが教室に戻ってきたで」

やよい「本当？」

あかね「はよ教室の扉開けい」

ｶﾞﾗｶﾞﾗｶﾞﾗ

ﾊﾟﾌｯ

れいか「きゃあ！」

あかね「よっしゃ、大成功や」

れいか「けほっけほっ。い、一体誰ですか」

れいか「教室の扉に黒板消しのいたずらをしたのは、けほっけほっ！」

あかね「いやー、すまんな。先生に仕掛けるつもりが」

あかね「まさかれいかが引っかかってまうとは思わんかったんや」

れいか「あかねさんの仕業だったんですか」

あかね「このとおり堪忍な」

れいか「いけませんよ、こんないたずらをしては」

れいか「誰であってもチョークの粉だらけになってしまっては困ります」

れいか「今度からはやめてくださいね」

あかね「せやな。気をつけるわ」

あかね「あかん。全然怒らへん」

やよい「あれだけのことすればれいかちゃんでも怒ると思ったのにな」

あかね「ほんま手強いやっちゃ」

なお「甘いね二人共」

なお「そんなことくらいじゃれいかは怒ったりしないよ」

あかね「ほお。随分の自信やな、自分」

なお「まあ、見てなって！」

なお「れいか、何してるの」ｸﾁｬｸﾁｬ

れいか「先ほどの授業の復習です」

なお「休み時間なのに勉強なんてさすがれいかだね」ｸﾁｬｸﾁｬ

れいか「すぐに復習しないと忘れてしまいますから」

なお「へぇー」ｸﾁｬｸﾁｬ

れいか「……」

れいか「ところでなお。さっきから何を口に含んでいるのかしら」

なお「ん？　ガムだよ」ｸﾁｬｸﾁｬ

れいか「ガム、ですか……？」

なお「れいかも食べる？」ｸﾁｬｸﾁｬ

れいか「い、いえ」

なお「そう」ｸﾁｬｸﾁｬ

れいか「なお、ここがどこなのかわかってるわよね」

なお「学校の教室でしょ」ｸﾁｬｸﾁｬ

れいか「それなら学校へのお菓子の持込みが禁止されていることも当然知ってるのでしょう」

あかね（一瞬、顔が曇ったな。やるやん）

なお「ああ、そういうこと。ごめんごめん、すぐ捨てるよ」

れいか「いえ。わかってもらえればそれでいいの」

れいか「いい加減にしてください！死にたいんですか！？」

れいか「いい加減にしてください！死にたいんですか！？」

なお「えっと、紙くず紙くずっとー」

なお「あ、丁度いいのがあった」

なお「ぺっ！」

ﾍﾞﾁｬ

れいかのノートに向かってガムのカスを吐き出す。

れいか「え？」

なお「噛み終わったガムは紙くずに丸めてゴミ箱へ。これ常識だよね、れいか」
ﾋﾞﾘﾋﾞﾘﾋﾞﾘ　ｸｼｬｸｼｬｸｼｬ

れいか「……」

ビューティーブリZARDで尖らせた氷を...

直球勝負すぐるww

れいか「……」

なお「どうしたの？　れいか」

れいか「なお、あなた……」

あかね（さすがのれいかもさすがに今のは辛抱できへんやろ）

やよい（ついに怒っちゃうのかなー）

れいか「どこか疲れているのではありませんか」

なお「え？」

これ誰ですか

れいか「今日のなおはいつものなおらしくありませんよ」

れいか「きっとどこか具合が悪いのでは」

なお「そ、そんなことないよ」

れいか「いえ。念のため、保健室で見てもらった方がいいわ」

れいか「私も着いていきますので一緒に行きましょう」

なお「そんな必要ないってば、れいか」

あかね（とんだお人よしやなー）

数分後

なお「ふぅ、やっと解放された」

あかね「お疲れさん」

やよい「でも結局、怒らなかったね。れいかちゃん」

なお「おかしいな。結構、自信あったんだけどな」

あかね「でもなおのおかげでよおわかったわ」

あかね「あれくらいんことせんと、れいかはイラつかんちゅうことが」

やよい「うん、とっても参考になった。私もさっきのくらいひどいことしてみる！」

みゆき「みんなもうやめようよ、れいかちゃんがかわいそうだよ」

スマイル★クズキュア

あかね「カタいこと言いっこなしや」

やよい「そうそう、ちょっとしたイタズラみたいなものだから」

なお「れいかは根に持つタイプじゃないからね」

なお「仮に一度怒らせても大丈夫だよ」

みゆき「そんなこと言っても、やっぱりこれよくないよー」

あかね「午後からはもう少しハードルあげていくでー」

やよい「おー！」

昼休み

みゆき「やったー。待ちに待ったお弁当」

れいか「お昼ご飯のときのみゆきさんは特に幸せそうですね」

みゆき「それはそうだよ。おいしいお弁当食べると、午前の授業の疲れがパーっと消えちゃう！」

みゆき「ウルトラハッピー！」

れいか「ふふっ。かくいう私も皆さんと囲んでお弁当を食べるお昼休みの時間は大好きです」

あかね「せやなー。ウチもやで」

あかね「おっ、れいか。なんや自分のえろううまそうなお弁当やないか」

れいか「そういうあかねさんのお弁当もなかなかお見事ですよ」

あかね「しかしなぁ、何か足らんなー」

あかね「せや。調味料や」

れいか「調味料？」

あかね「ソースやマヨネーズつこうて華付けんとあかん」

あかね「よっしゃ、ウチがぶっかけたる」

れいか「こ、このお弁当にソースですか……？　い、いえせっかくですが結構です」

あかね「ええって、遠慮すんなや。ウチの店、特製のソースとマヨネーズ持ってきとるんや」

あかね「今べったりかけたる！」

れいか「や、やめてください！　あぁ！」

ﾌﾞﾁｭ　ﾍﾞﾁｮﾍﾞﾁｮﾍﾞﾁｮ　ﾄﾞﾊﾞﾄﾞﾊﾞ

あかね「こんなもんでええやろ。どや、ごっつうまそうになったやろ」

やよい「本当だ。おいしそうー。いいな、れいかちゃん」

なお「よかったね、れいか」

あかね「大阪ではこれくらいの量かけるの当然や」

れいか「は、はあ」

あかね「そんじゃまあ、いただきまーす」

やよい・なお「いただきます」

れいか「いただきます……」

れいか「はむ…………ウっ」

みゆき「れいかちゃん……」

数分後

あかね「ごっそうさん」

みゆき・やよい・なお「ごちそうさまー」

れいか「……」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

あかね「なんや、れいかまだ食っとんのか」

れいか「ええ。食べ終わるのにもう少しかかりそうなので」

れいか「どうぞ皆さんはお先に教室に戻っていてください」

あかね「了解やー」

ｿﾞﾛｿﾞﾛｿﾞﾛ

みゆき「……」

みゆき「ねぇれいかちゃん、無理して食べてるんでしょ。もう残し方がいいよ」

れいか「そんなことありませんよ……うぷっ」

みゆき「れいかちゃん、大丈夫！？」

れいか「ええ、心配いりません」

れいか「せっかくのあかねさんのご好意でしたし」

れいか「なによりも私も手伝ったとはいえ、お母様に作ってくださった」

れいか「お弁当を残すことなどできません」

れいか「みゆきさん、私のことは気にせずあなたもお戻りください」

みゆき「う、うん」

校庭

れいか「うぅ、まだ胸焼けがするわ」

れいか「しかし、花壇の水遣りはちゃんとやらなくては」

やよい「あ、れいかちゃん。もしかしてお花の水遣り？」

れいか「はい。そうです」

れいか「毎日水をあげなければお花がかわいそうですから」

やよい「私もお手伝いするよ」

れいか「本当ですか。それではお願いします」

やよい「えいっ！」
ﾊﾞﾗﾊﾞﾗﾊﾞﾗ

れいか「？　やよいさん、花壇に何を撒いているのですか？」

やよい「除草剤だよー」

れいか「じ、除草剤！？」

やよい「それーそれー、もっと撒け！」
ﾊﾞﾗﾊﾞﾗﾊﾞﾗ

れいか「やめてください！　なぜそのようなことを！」

やよい「だって、この除草剤で雑草が枯れてくれればスーパーラッキーでしょ」

れいか「そんなことしてはお花も枯れてしまいます！」

やよい「平気だって。お花は枯れないよ。私が保証するから！」

れいか「そ、そういう問題では」

やよい「それそれー！　どんどん撒いちゃえ～」
ﾊﾞﾗﾊﾞﾗﾊﾞﾗ

れいか「お願いですから、本当にやめてください！　やよいさん！」

ﾄﾞｽｯ

れいか「あっ」

やよい「花壇にサッカーボールが」

なお「いやー、ごめんごめん。サッカーの練習してたら」

なお「ボールがこっちに飛んじゃってさあ」

れいか「そ、そんな……。アサガオが！」

れいか「……」

れいか「だめ、折れてます……。さっきまで元気でしたのに」

なお「あ、あの。ごめんね、れいか」

やよい「運が悪かったね、れいかちゃんもそのアサガオも」

れいか「……」

なお「れいか？」

れいか「なお。今後は気をつけて校庭で遊んでください……」

れいか「では私はそろそろ教室へ戻ります……」

ﾄﾎﾞﾄﾎﾞﾄﾎﾞ

やよい「なんか怒るというより落ち込んじゃったね」

なお「逆効果だったかー」

やよい「でもここでもう一押ししたら、今度こそ怒ってくれるかも。もう少し続けてみよっ」

なお「やよいちゃんも案外ワルだね」

やよい「そういうなおちゃんだって」

屋上

れいか「……」

なお「こんなところに居たんだ、れいか」

なお「教室にいなかったから探したよ」

れいか「なお」

なお「あのさ、さっきは本当にごめん」

れいか「……」

れいか「いえ、いいの。どのような生き物もいつかは土に還ってしまうもの」

なお「とりあえずさ、これで元気出してよ」

れいか「え。なんですか？」

ﾊﾟﾝﾊﾟﾝﾊﾟﾝ

れいか「きゃあっ！！」

れいか「はぁはぁ……。何なのですか、今のは」

なお「どう、元気出た？　爆竹だよ」

れいか「私、そういうものは苦手です……」

なお「大丈夫。面白いよ、これ。ほら」

ﾊﾟﾝﾊﾟﾝﾊﾟﾝﾊﾟﾝ

れいか「きゃあ！　い、いやっ！」

ﾊﾟﾝﾊﾟﾝﾊﾟﾝﾊﾟﾝ

れいか「やめてください！」