せいれき 2XXXねん
地球人口は 完全にパンクし
あらゆる国家 思想 宗教をねじ伏せて
とある国の とんでもないプロジェクトが実行され
世界は 変わった…
気がつけば俺は、物心ついた時から幼なじみの少女の事ばかり気にかけていた。
成人を間近に控え、周囲の人間は次々とパートナーを決めていた。
俺がずっと一緒にいたいと思った相手は、スクール時代を共に過ごした友達でもなく、政府が推奨するパートナーでもなく、幼い頃から知っている彼女の事だった。
だが、それは…決して許される感情ではなかった。
―旧日本、とある居住区画ドーム内 教会―
『おめでとーっ!』
『嫁さん、幸せにしろよー!』
男「はあ…」
祝福されにこやかに手を振る新婚カップルを見て、憂鬱になる。
最近は友人の挙式に招かれてばかりだ。
幼「何ため息ついてんのよ、男」
ああ、マガジンのアレ?
男「いや…俺の番が回って来る事は無いんだろうな、と思うとな」
幼「えっ? 何でよ、あんた政府の推奨パートナーリストも五桁くるようなスペックじゃない」
男「嫌なんだよ、そういうのは」
幼「ふーん…じゃあ自分でかわいい子探せばいいじゃない。
そうねえ…あんたみたいなゴツいのには、華奢でかわいい子なんか似合うんじゃないかしら」
男(こいつはまた、人の気も知らないでこういう事を言う…)
>>8
似たような話あるの? タイトル求む
『おーい、幼ぁーっ!』
幼「あっ、友だ! ごめん男、わたしちょっと外すね!」
男「はいよ」
心底嬉しそうな笑顔で走り去っていってしまう幼。
男(あいつ…よく友と一緒にいるよな。
あいつもあんな美人、まんざらでもない感じだし…もしかして、やっぱりそうなんだろうか。はああ…)
折角のご馳走も喉を通らない。
今日のような日に特別に支給される、合成肉ではない本物の肉料理も、男の気分を晴らしてはくれなかった。
―集団住居前―
『じゃあねー、男くーん!』
男「おー、またなー…うぃー、ひっく…」
二次会、三次会で飲み過ぎてしまった。ついやけ酒をしてしまうのは自分の悪い癖だ。
―男の家―
男「親父ー、たらいまー…」
父「おう。って何だ、酒くせーなあ」
男「これが飲まずにやってられっか…うくっ…」
父「お前どんだけ飲んだんだよ…ほら、息吐いてみろ」
親父は男の前に、左手の甲を差し出した。
手の甲には「酔っ払い測定アプリ」と表示されている。肌に貼るタイプの、極薄の汎用端末だ。
男「ふぇー? 酔ってねいよお…」
父「るせぇっ」
親父は右手で握りこぶしをつくり、男の腹にゆっくり押し込んだ。
男「おふっ!?」
男の情けない声と共に、ピピーッという古めかしい電子音が鳴り響く。
端末の画面は真っ赤に染まり、“NONDAKURE!”という文字かチカチカと表示されていた。
父「めちゃくちゃ酔ってんじゃねえかよ…ほら、こっち来い!」
男「ふぇ…」
親父は男の肩をかつぎ、男の寝室まで連れていった。
―男の寝室―
父「ほら、飲め」
男「ん…」
男は手渡された錠剤と水を、一気に飲み干した。
男「げほっ、ごほっ…」
父「おいおい大丈夫か? ったく、いくつになってもガキだな」
男「うー…オヤジ、ごめん」
父「気にすんな。いいからもう寝てろ」
男は片親だった。
親父は早くにパートナーを病気で亡くすという、医療技術の発達した現代においてはごけ珍しいシングルファザーだった。
つがいを亡くした後、政府は早々に新たなパートナーをすすめてきたらしいが、
親父は『俺のパートナーはあいつだけだ』と言って二人目の相手は探さなかった。
男「おやすみ、親父…」
父「おうよ」
親父はニカッと笑って部屋を出ていった。
世界規模の人口調整で血縁も何もない養子の親子だったが、それでも親父はただ一人の俺の親父だ。
男「結婚、かぁ…」
親族の規模が極端に狭い現代において、未婚者の末路は悲惨だ。
パートナーなきまま生涯を終えるものなど、全人口の0.1%にも遠く及ばない。
男(俺ももう諦めて、誰かと一緒にならなきゃダメなのかな…)
窓の無い明かりの消えた部屋で、届かないものを掴むように手を伸ばす。
男「ん?」
左手の甲がチカチカ光っていた。
男「ああ、端末を貼ったままだったな」
男「新着メッセージだ。誰だよ、こんな時間に」
端末を視線の操作で操り、メッセージBOXを開く。
“あなたが 心を自由にしたいのならば この箱を開いて”
男「…はあ? 差出人、不明…?」
有り得ない。
個人情報は全て政府がタグ化しており、端末によるメッセージのやりとりには必ず送信者情報が表示される筈だ。
男「おいおい、アプリまで添付されてるだと…」
こんな事は、男が生まれてからの十数年間で一度も経験した事がなかった。
男(どこの誰か知らないが、海賊通信なんて一級の反則行為だぞ。食料の配給が一切受けられなくなるレベルだ。そしてこんなものを受信してしまった俺も、黙っていると危ない…
明日もどうせ休みだ。酔いが覚めたら、治安局に届け出よう)
―翌日 中央公園―
“天候:快晴 政府推奨移動手段:日光浴をしながらの徒歩”
端末には政府からのお気楽なメッセージが表示されていた。
男「何が日光だよ、人工の光のくせに…」
男は最寄りの治安局支部に向かうのに、中央公園を抜ける近道を選んでいた。
男(しまったな…徒歩推奨の日なら公園なんて歩くべきじゃなかった)
周囲をちらっと見回す。
『あはは、そら!』
『ちょっ、やめなさいよー』
そこいら中で子連れとカップルが、まぶしい輝きを放っていた。
男(くそっ、どうせ俺には無縁の世界だよっ…!)
こんな光景は見るに堪えない。
つかつかと歩みを早め、公園の出口を目指す。
幼「あっ、男じゃない」
男「えっ?」
不機嫌に足音をならしていた男を、聞き慣れた声が止めた。
男「幼? 何やってるんだ、こんなところで」
幼「何って…」
友「あれ、男くんじゃないか」
男「…!」
幼「見てのとおり、友と一緒に散歩してたのよ」
友「今日は天気がいいからね」
何だ…そういう事か。
幼「で、あんた一人で何してたの?」
男「いや、ちょっと治安局に…」
幼「治安局? 何よ、あんた何かしたの?」
男「ばっ…違えよ! ちょっと気になる事があっただけだ」
幼「ふぅーん… あっ、ねえ。よかったら一緒にお昼食べない? いいよね、友?」
男「えっ…」
男は友の方を見る。
友「うん、いいよ」
友はにっこりと笑った。
眉目秀麗とはこの事だろう。なんとも整った顔立ちをしている。
おまけにこいつは運動神経も格別によく、スクールでの成績も常にトップクラス。
全女子の人気の的、という言葉がぴったりだった。
別にそんな事はどうでもいいが、幼とこいつと俺で食べるメシなんてうまい訳が無いのはわかりきっていた。
男「いや、やめとくよ…」
幼「何でよ。治安局の方が大事ってわけ?」
男(こいつは本当に、俺の気も知らないで…!)
幼「男?」
男「うるさいっ」
幼「え…? ちょっと、男!?」
男は踵をかえし、来た道を一直線に走って引き返した。
幼「あっ… どうしたんだろう、男…」
友「さあ…」
そんな三人のやりとりを、遠巻きにいくつかの影が見ていた。
「―成る程、彼がそうなのか」
「ありゃああからさまですね…先に治安局に目をつけられてなきゃいいですが」
「あの娘のおかげでひと手間はぶけたな。まあ、なんとも不憫な状況のようだが」
「上側じゃ珍しく無い事ですよ。何にせよ、よく見張ってないとね」
―男の部屋―
男(くそっ…!)
2、3時間前に起きたばかりの寝台にふて寝する男。
男(俺だって…俺だって、幼を守れるようにあらゆる努力はしたんだ…!)
ものぐさな自分がこれまで、推奨パートナーが一万にまで及ぶほど、がむしゃら自分を磨いてこられたのは。
全ては、幼に認められたいがためだった。
男(だけど…こればっかりは、どうしようもないだろっ…!)
目の奥から悔しさがこみあげてくる。
男はシーツに顔を埋め、声を押し殺して叫んだ。
タイム
1時間くらいしたらPCに乗り換えてきます
セルフ保
もうちょい待って
ごめんね
>>1です
お風呂入ってきます
>>78
誰
たらいま
今からPCセット次第やります
セルフ保
たまにネット繋ぐと更新くっそ重いセルフ保
てす
―夜 男の部屋―
男「っ―」
目が覚める。端末の時計は、とても遅い時間をさしていた。
ふてくされてかなり寝過ごしてしまったようだ。
男「寝すぎだ…頭、痛え…」
“不在着信 7件”
男「ん…?」
視線で端末を操作し、着信履歴を見る。
着信は全て幼馴染からのものだった。
男(何だよ…放っておいてくれよ)
端末から目を離そうとすると、またも着信通知が表示される。
男「…」
仕方が無いので出る事にした。
耳の後ろに左手をのばし、通話用の受信端末をオンにする。
男「…もしもし」
幼「やっと出た」
男「…何だよ、こんな時間に」
幼「あんたこそ、こんな時間まで通話に応じないで何してたのよ」
男「寝てたよ」
幼「寝てた? はあ…呆れたわ、そんな時間の使い方をするような奴じゃないと思ってたけど」
男「…余計なお世話だ」
幼「まあいいわ。流石にもう寝る気はしないでしょう。
ねえ、少し話さない?」
男「…? 別にどれだけ通話しても構わないけどよ」
幼「違う。外で話さない? って言ってるの。
少し夜風にあたって、頭を冷やしなさいよ」
男(夜風ったって、ただの空調だがな…)
端末を見ると、今夜は少し涼しめな調整にしてあるようだった。
男「まあ、悪くないかもな」
幼「でしょ? じゃあ、あの公園で待ってるわよ」
―寂れた公園―
男「あの公園って…ここだよな」
人気の無い公園。古ぼけた遊具達が、風に揺られている。
幼「懐かしいね」
男「幼」
ベンチに腰掛けて待っていた男が立ち上がる。
幼「小さい頃はよく、スクール帰りに寄り道したよね」
男「…そうだな」
ぴゅうと吹いた風に、幼は髪を抑える。
幼「あの頃と、何も変わっていないね。…あたし達が大きくなった以外は」
男「…」
そうだ。何も変わっちゃいない。
古めかしい公園の遊具達も。
風に揺れる、幼の透き通った長い髪も。
スクリーンの夜空に浮かぶ、わざとらしいくらい綺麗な満月も。
男「本当にな。何も変わってないよ」
幼を想う俺の気持ちも。
残酷なくらい、時間は変化をもたらさなかった。
男はじっと幼の顔を見据えた。
幼「男? どうかした…?」
男「いや、何でも無いんだ」
幼「そう…」
男「…」
幼「…」
二人は何を言うでもなく、じっと偽りの月を見上げていた。
幼「…ねえ」
幼が沈黙を破る。
男「何だ」
幼「聞いて欲しい事が、あるんだ」
男「…何だよ」
幼は、はにかんだ顔で空を見つめたまま言葉を続けた。
幼「あたし…あたしね」
男「…」
憂いを含んだ顔で、言葉を詰まらせる幼。
男「…何だよ、もったいぶって。お前らしくも無いぞ」
幼「えへへ…ごめん」
無邪気に笑う幼。
その顔はとても綺麗で、その綺麗さの意味が何となくわかったからなのか、
男は何となく胸がざわつくのを感じた。
男「…早く言えよっ」
幼「うん…あたしね」
その口が縦に横に開いて閉じて、言葉を紡ぐのを何度も見てきた。
だからだろうか?
次に発せられたその言葉の、ひとつひとつの唇の形がくっきりと脳裏に焼きついて、
ただの途切れた音のように思えて、心の理解が追いつかなかったのは。
男「え…」
幼「ちょっと、聞いてた?」
男「今、何て言った?」
幼「もう、何ぼうっとしてるのよ!」
男は今度は聞き逃すまいと、頭をしゃんとして構えていた。
幼「だからね。あたし」
でもやっぱり、よく理解する事ができなかった。
いつかこうなる事なんて頭の片隅にはあった筈なのに。
いや。次々とパートナーを作っていく友人達を見送って、
むしろ覚悟を決めておくべきだったのに。
それを認めたらきっと壊れてしまうから、考えないようにしていたのだろう。
幼「あたし、友と結婚しようと思うんだ」
男「…え」
幼「え、じゃないわよ」
男「…」
幼「ちょっと、おめでとうの一言も無いわけ? あんた最近ぼーっとしすぎなんじゃないの?」
男(…嘘だ)
幼「それでね。…あんたって、これからどうするつもりなのかなって思ってさ」
男(嘘だ)
幼「相手探し、どうなのよ。いい加減、ひとり身でいられる歳でもないじゃない?」
男(嘘だ)
幼「結婚して、どこに身を置くつもりなのかわからないけど…あたし、あんたとは離れたくない」
男(嘘だ)
幼「ねえ、あたし達…ずっと“友達”だよね?」
男「ふざけるなっ!」
男はおもむろに立ち上がると、座っていたベンチを右足で思いっきり蹴りつけた。
幼「きゃぁっ!?」
驚いた幼がベンチから飛び跳ねる。
幼「ちょっと、どうしたのよ!?」
男「そんなに…そんなにあいつがいいのかよ」
幼「えっ…?」
男「俺はずっとお前を見てきたんだぞ…お前の良い所も悪い所も、たくさん知って…全部、全部…!」
突然声を荒げたかと思えば、だんだん涙まじりの掠れた声になっていく。
普通ではない男の様子に、幼はかなり困惑しているようだった。
幼「なっ…どうしたのよ男! やっぱりあんた、ここんとこ変よ…?」
男「俺は最初からイカれてるよ!!」
幼「…? わけわかんないわよ…! 会話になってない!」
男(っ… 相変わらずコイツは、人の気も知らないでっ…!)
わかっている。仕方が無い。どうしようも無いのだ。
こいつが鈍いのでも無い。俺が至らなかったのかもしれないが、そこでもない。
幼「どうしたのよ、男…! ねえ、私達友達だよね? 親友だよね!?
そんなに友との結婚が祝福できない…!?」
返ってくるのは的を外れた答え。
男(っ…)
言いたい。言ってしまって楽になりたい。
もう知った事では無い。異常者の烙印を押されようが、ドームから追放されようが、最悪命を落とす事になろうが。
この思いを背負い込んで生きていくには、心の容量がとっくにパンクしてしまっていた。
幼「男…? どうしちゃったのよ、男!」
男「…もう、限界なんだ」
幼「え…?」
男「気持ちを隠しておくのは、もう限界なんだ…!」
幼「なに、どうしたの…?」
俺は。もう、何年も前から。
ずっとずっと、最初がいつだったか思い出せないくらい。
どうしようもなく。本当に、本当にどうしようもなく。
男「俺は…お前が好きなんだよぉっ…!!」
幼「え…?」
男「っ…」
言ってしまった。…言ってしまったのだ。
もう、後戻りは聞かない。坂道を転がる石のように、止まる事ができなくなってしまった。
後はもう落ちていくだけだ。
幼「えっ…うっ、うん…それって…友達としてって…って、事でしょ?」
男「違う」
幼「ちがう…の…?」
男「…」
幼「友情じゃないって事は…愛情、なの…?」
男「…」
どんどん引きつっていく幼の顔。
俺はもう、全てを諦めていた。
さよなら、みんな。さよなら、父さん。
そして…さよなら、幼。
幼「それって…あんた…あんた…!」
はじめて聞く幼の悲痛な声。震えて掠れて、体の奥からやっと搾りだしているような…嘆きの声。
幼「あんた…女の子が好き、って事なの…!?」
男「っ…」
一番知られたくなかった事。
でも、知らせずにはいられなかった想い。
もう、後戻りのできないあの日々の思い出と。
かけがえのない、幼との今を引き換えにしても。
積年の言葉を、伝えずにはいられなかった。
男「ごめん…」
胸の奥から漏れたのは、なぜか謝罪の言葉だった。
幼「なに、ご、ごめん…? そんな… な、何で…? どうして…?」
男「…」
幼「かわいい男の子、ごまんといるじゃない… 推奨パートナー、五桁なんでしょ…?
何でわざわざ、女の私…? ねえ、え…? いつから…?」
男「ずっとだ…」
幼「ずっと… え? えっ? 小さい時から? 何で? どうして…?
だって…それって病気じゃない? 何で放っておいたの…?」
男(っ…!!)
※描写が下手で勘違いさせてしまった方が多くいる様なので、不本意ですが注釈打ちます。
推奨パートナーシステムは単に政府が進めるだけの“データ上は理想のパートナー”です。
ドームの住人は、自分で結婚相手を決める事もできます。
誤解を招いてごめんなさい。作中だけで説明できるようになりたいです。
―増えすぎた世界人口。
各国の政府がいくら制限を設けても、影で増え続ける子供達。
人にとってもはや種族繁栄という言葉は、“本能”や“義務”ではなく、
単なる“悪”、“罪”となりかわっていた。
そして…歴史の教科書が言うには、
“人間は増えすぎた世界人口を平和的に減らすために、同性愛を選択するように進化した”…らしい。
現代の管理下体制において、ヒトは同性愛者としてこの世に生を受けるため、
この言葉に得に疑問を抱く必要も無く、ドームの中でぬくぬくと暮らしていた。
試験管から生まれてくる、調整された子供達…
それがまた、試験管から生まれてきた子供をひとり授かり、育て。
配給された食物を食べ、生を全うし、死ぬ。
人類は永遠の理想郷を得たかのように思えた。
しかし、同性愛者が過去においてイレギュラーとして糾弾され、弾圧されたように。
生まれ出る筈の無い異性愛者はまた、イレギュラーとして存在し。
自らに疑問を覚えながら、孤独の淵で一人苦しみ、明るみになれば処断され。
彼等は、理想郷の膿とすら呼ばれた…
幼「ねえ、何で!? どうして治療しなかったの!?」
男「っ…!」
こうなる事なんて、わかっていた。
小さい時から。異性愛がいかに異端かなど、嫌という程思い知らされていた。
幼に対してこの感情を抱き続ける限り、自分は永遠に足かせをはめて生きる事になるだろうと。
そんな事は、幼少の自分にもわかりきった事だった。
それでも。それがどんなに不自然で、後ろ指をさされる事だとしても。
男「お前を好きだって事… お前の事が、何よりも誰よりも大切だって事…
忘れたくなかった… 消してしまう事なんて、できなかった!!」
幼「お、男…」
男「…」
返す言葉が見つからないといったふうだ。
いいんだ。返事なんていらない。
この事が明るみに出た時点で。既に、自分に未来などない。
そのうち治安局に知られて、収容所送りになるだけだ。
幼「あ…」
男「…」
それでも少し、胸が痛かった。
一縷の望みを、心のどこかで持っていたのかもしれない。
でももういい。彼女の反応を見ればわかる。
彼女は俺を、友達としてしか認識していない。
希望などなかった。一片も。こな一粒ぶんも、なかった。
「―失礼」
男「?」
突如、公園の入り口から低い声がした。
目を向けると、治安局の制服を着た男が中年の男が立っていた。
中年「男くんだね?」
男「あ―」
コツコツと革靴の音を響かせて近寄ってくる中年男。
中年「君の端末で不審なデータがやりとりされているようだったのでね。 動向をチェックさせてもらっていたんだ」
男「あ…は、はは」
乾いた笑いが漏れる。まさか、こんなに早く嗅ぎ付けられるものだったとは。
革靴の音は、四方からも迫ってきた。
幼「あ…」
見れば他にも三人の職員がいて、俺達を囲うように迫ってきた。
男「はは…」
そんな事をされなくても、俺に逃げる気などなかった。
異端者たる自分に逃げる先など無いのだから。
俺が抵抗するのを警戒しているのだろう。
局員達は、今にも殴りかかってきそうな気迫で俺を睨みつける。
中年「ご同行、願えるね?」
男「はい…」
観念している様子が少し伝わったのか、電子錠などの拘束を受ける事はなかった。
女性「あなたにも少し、お話を聞かせてもらう事にもなります。よろしいですね?」
背の高い女性の局員が、幼にも同行を求めた。
幼「お、男…」
おしっこタイム
幼はまだ混乱しているようだった。
無理も無い。心の整理なんてつく筈もない。
男「ごめんな、幼…」
幼「…」
悲しみをたたえた虚ろな目。大事なものが壊れてしまった時の目。
今の俺と幼は、そんな瞳をしていた…
―茂みの影―
「―ねえ! 彼、捕まっちゃいますよ!?」
「焦るな。そろそろ気がつく筈だ。我々の送ったメッセージと、あのアプリに…」
「そんな素振り全く無いですよ?」
「いや、まだだ。あの虚ろな目から立ち直った時、彼は思い出す筈だ」
「…前々から言おうと思ってたんですけど、あんなまわりくどい文章じゃ誰も気がつきませんよ」
「なっ…」
「もう面倒くさいからちょっかいかけますよ。いいですね?」
「いや待て。革命家というものはだな、第一印象で与えるカリスマ性が肝心で…」
「心配しなくても、あなたにカリスマ性なんてありませんよ」
「なっ―」
「いいからもう、強制起動しますからね。人さらいの準備をしてください」
「い、いやいや待て待て。まだ手を打つ余地は―」
「“パンドラ”、起動。彼の端末を書き換えます」
「あー」
―公園―
中年「まず、君の端末は没収もらう。左手の甲と、耳の後ろにあるね?」
男「はい…」
中年「では手につけている方から外させてもらう。左手をだsだま」
―公園―
中年「まず、君の端末は没収もらう。左手の甲と、耳の後ろにあるね?」
男「はい…」
中年「では手につけている方から外させてもらう。左手を出したまえ」
男は素直に言葉に従い、左手を職員に見せた。
職員がトン、と手の甲を指で押すと、端末が強制的に起動する。
通常持ち主以外の操作で端末は起動しないが、これは治安局員の特権だ。
中年「では、解除―」
男「―え?」
“君が思いを解き放ったならば、さぞ絶望を味わった事だろう”
端末が突如、聞いた事の無い音声を読み上げはじめる。
中年「なっ…これは、まさか―!?」
“しかし、絶望と共に君の前に飛び出したものがある。それこそは、我等―”
『“希望”だっ!』
男「!?」
公園のどこかから、今度は誰かが肉声で叫んだのが聞こえる。
と同時に、突如端末が強烈な光を発しはじめた。
男「うわッ!?」
中年「ぬおっ!?」
幼「きゃぁっ!?」
激しい青の光。すぐさま、赤の光。また青の光。
男の端末は、規格外の強烈な明滅を狂ったように繰り返す。
男(何だ―!? ただの汎用端末に、こんな機能なんて―!)
中年「くっ…既に接触していたか、総員、銃を抜けーっ!」
男「えっ!?」
とても物騒な掛け声が聞こえた。
男「なっ―」
腰から携帯銃を取り出した職員達。
その矛先のひとつは、男に向けられていた。
中年「撃てぇ!」
声帯認証で銃に命令する中年職員。
男「ち、ちょっと待っ―」
幼「ひっ!」
幼が身をすくめる。
男はどうなる事も覚悟していたが、まさかこんなわけのわからないまま射殺されるなんて思っていなかった。
男「っ―!」
光速のレーザーから逃れる術などない。
目を瞑って、自らの体が撃ち抜かれるのを覚悟する男。
だがその瞬間は、いつまでたっても訪れなかった。
男「?…」
おそるおそる目を開くと、中年職員はなぜか白目をむいてガクガクと痙攣していた。
女性職員「何だ…!?」
若い職員「気をつけてください! 銃のシステムに何かしら干渉が―ぐわぁぁああ!!」
髭の職員「ああぁあああ!!」
職員達が一斉に手首を抱えてうずくまる。
女性職員「た…端末…が…!!」
?「絶望したかあ、少年よ!」
男「はい?」
野太い声がした。声の主は、黒いレザーコートを着込んだ銀髪の中年男だった。
銀のオッサン「今はそれでいい。むしろ、何もかも吐き出してスッキリしただろう」
男「え? えっ?」
銀のオッサン「さあ、我々と共に来い。そして世界を革命しよう」
男「あ…? はっ…?」
眼鏡の女「部隊長、説明になっていません。時間を無駄にしないでください」
銀のオッサン「えー」
またも、意味不明な人物が乱入してくる。
眼鏡の女「男くん…だったっけ。さ、彼等が痺れているうちに逃げるわよ。彼女にお別れをして」
男「…!?」
眼鏡の女「助けてあげるって言ってるの。このドームには二度と戻ってこられないけどね。さ、早く。こんな所で死ぬのは、馬鹿らしいわよ」
状況が飲み込めない。さっぱり全く飲み込めない。
銀のオッサン「少年よ、何も考えなくて良いぞ。おそらく今生の別れだ。とにかく思った事を、率直に。素直に言えばよろしいのだ」
男「は…あ…」
確かに、生き別れるにしろ死別するにしろ、幼とこんな混沌とした状況でうやむやに別れるのは、嫌かも知れない。
理解が追いつかない事、釈然としないことは沢山あったが、とにかく言うべき事は言っておくことにした。
幼「男…?」
幼の方も完全に状況に置いていかれているようで、先ほどから呆然としたまま固まっている。
男「えっと…」
幼を正面から見据え、別れの言葉を切り出す。
男「幼、ごめん。今までありがとう。俺は…君と出会えて、よかった」
幼「男…」
先ほどまで人形のような表情をしていた幼の顔に、少しだけ生気が宿った。
幼「う、うん…これからどうする気のか、わからないけど…」
すぅっ、と幼が息を吸い込んだ。
幼「私達、かけがえのない友達だった…たった一つ、それだけは確かだから」
男「幼…」
銀のオッサン(うんうん…良い話だ。青春だなあ)
眼鏡の女「もう…部隊長、ボケっとしてないでくださいで仕事してください!」
眼鏡の女は、男と幼が別れの挨拶をしている間、あくせくと治安局員達から武装を剥ぎとっていた。
銀のオッサン「あ、ああ…すまぬ」
眼鏡の女「もう… さ、行くわよ男くん。もうあまり時間がないわ」
男「あっ、はい」
眼鏡の女「幼さん。言うまでもないけど、あなたはただの被害者だから安心して取調べに応じるといいわ。包み隠さず、全て話しなさい。それがあなたの為よ」
幼「は、はい」
銀のオッサン「ようし、少年! 走れるな!? 我々の後について来るのだ!」
男「わ…わかりました」
銀髪の中年と眼鏡の女は撤退の準備を完了したようだ。
男「…じゃあな、幼…」
中年男達の後を追って、あっけなく去っていってしまう男。
幼「あっ…」
その別れも、想いの告白も、あまりに突然で。
幼は何の心の整理もつかないまま、たった一人の親友を失った。
幼「さ、さよなら…男…」
―ドーム内車道 ルートXXX―
銀のオッサン「しかし、去り際が駆け足というのも何とも締まらないものだなあ…そうは思わないか、少年?」
眼鏡の女「無駄口を叩かないでください」
銀のオッサン「良いではないか。我々はまだ知り合ったばかりだ。言葉を交わして理解を深め、信頼を得るのは大切な事だぞ。なあ、少年?」
男「はぁっ、はぁっ…!」
男に答える余裕などなかった。
男(何だ、この人達…!)
異常ペースで走り続けながら、息を乱さずに会話を投げかけてくる中年男。
銀のオッサン
「はっはっは…! 男くんよ、大分まいっているようだな! 無理も無い…君はとても優秀な少年のようだが、
それはこの温室のようなドームの中に限った話だ。政府は、民間人が外界と接触する事を極端に嫌ってい
る…それは、大衆の思考を一方向に向けて揃える為だ。ドーム世界の住人に、新しい刺激を与えてはいけ
ないのだ…君らは試験管から生まれ、外界を知らずに一生を全うしなければならない。そうでなくては統一
世界は存続できない。正史の実態、真実の歴史を知るのは限られた者達でなければならない。だが、だが
な! 雲の上の神様気取りの人間達がいくら世界を押さえ込んでいるつもりでも、我々のようなイレギュラー
は必ず発生する。そして世界を革命するのだ! 我々は何も、異性愛原理主義を戦いによって勝ち寄ろうと
している訳では無い。多数派と少数派、時代と正義、そこから生まれる摩擦と軋轢は必ず世界を歪ませる。
そこに必ず争いは生まれてしまう…しかし。我々のように平和に歩み寄るもののは、例え矛盾を孕み他者を
眼鏡の女「ああもう、うるさい!」
男「はぁっ、はぁっ…!」
未だにこの人達の実態はよくつかめないが、とにかく何もかもがドームの住人とは違っている事だけは確かだ。
銀のオッサン「おっ、着いたぞ」
男「え…?」
そこには。どこにでもありそうなマンホールが一つ、ぽつんとあるだけだった。
男「あ、あなた達は一体…何者、なんですか…」
やっと立ち止まる事ができた男が、息も絶え絶えに質問した。
眼鏡の女「尤もな質問ね。我々は地下の住人なの」
男「は…地下…!?」
眼鏡の女「そう。地下に居を構えるレジスタンス」
男「もしかして…俺を助けてくれた経緯を考えると…異性愛者のレジスタンス、ですか?」
眼鏡の女「まあ、大体はそういうイメージでいいのだけれど。正確には、政府を介さずに生まれた者達の、反体制の集いなの」
男「! じゃあ、あなた方は…」
銀のオッサン「思っている通りだ、少年よ。我々は試験管ベイビーではなく、生殖の結果生まれた人間達だ」
男(…!)
それは、ドームの中で生まれた者達には考えもつかない奇跡だった。
男「じゃあ、もしかしてお二人は…」
眼鏡の女「はあっ!? ちょっ、違うわよ! 何勘違いしてるのよ、バカ!」
男「う、うわっ」
眼鏡の女が突然取り乱した。
銀のオッサン「うむ、我々は特にそのような関係には無い。こやつはただの、忠実で有能な私の部下だ」
眼鏡の女「なっ…!?」
男「…」
色々と思う事はなかったが、この人達の茶番に付き合っても仕方が無いので話を流す事にした。
男「えっと、それでこのマンホールからどこに行くんですか…?」
眼鏡の女「そ、そうです。こんなバカらしい事を話している場合じゃありません!」
銀のオッサン「うむ、全くだ。ハッハッハ!」
銀のオッサン「うむ、我々は特にそのような関係には無い。こやつはただの、忠実で有能な私の部下だ」
眼鏡の女「なっ…!?」
男「…」
色々と思う事はあったが、この人達の茶番に付き合っても仕方が無いので話を流す事にした。
男「えっと、それでこのマンホールからどこに行くんですか…?」
眼鏡の女「そ、そうです。こんなバカらしい事を話している場合じゃありません!」
銀のオッサン「うむ、全くだ。ハッハッハ!」
―地下道 エレベーター―
入り組んだ下水道を複雑な路順で歩き、更に隠された通路を何度も経ると、
とても前時代的な巨大エレベーターがそこにはあった。
ギギギギ、と今にも壊れて崩れ落ちそうな音を立てて、エレベーターは男達を地下の奥深くへと運んでいく。
男「げほっ、ごほっ…」
銀のオッサン「がははは、少年よ。ドームと違ってここは空気も極薄。おまけに埃っぽいときた」
男「本当に、ひどい場所ですね…」
男「で、何故ですか…?」
銀のオッサン「ん?」
男「どうして俺なんかを、わざわざ助けに来てくれたんですか…?」
眼鏡の女「決まってるじゃない。あなたが優秀だからよ」
男「え?」
眼鏡の女「我々は一人でも多くの同志を必要としている。あなたのようなケースはまさに、うってつけの人材だわ」
男「はあ…」
銀のオッサン「おっと、少年よ。肝心な事を忘れていたぞ」
男「?」
銀のオッサン「とりあえず助けてみたのはいいが…お前、これからどうする?」
男「えっ?」
銀のオッサン「我々としては、是非とも我等革命隊の構成員として戦力になって欲しいところだが…どうだ?」
男「えっ…えーっと…」
眼鏡の女「すぐに決める必要は無いわ。身の回りに色々な事が降りかかって、冷静に物事を考えられる状況ではないしね」
銀のオッサン「うむ。だがまあ、我々のカリスマ性はさぞ刷り込まれた事だろう。共に戦える日を楽しみにしているぞ、少年」
男「はあ…」
銀のオッサン「おっ、見えてきたぞ」
中年男はエレベーターの手すりによりかかりながら、はるか下方を指差した。
男「うわっ…」
がらんどうに開いた、地下の巨大空洞。
そこには、コンクリート作りの朽ち果てかかった建造物達が肩を並べ、ひとつの街を為していた。
男「すごい…まるで地中のドームだ…」
銀のオッサン「うまい事を言うな、少年よ」
男「ここは一体…? どうやってこんな地下街を…」
眼鏡の女「ここは、旧時代の人々が遺棄した地下都下よ。仰る通り、まさに前時代のドームというのが相応しいわね」
銀のオッサン「少年よ。どんな生き方をするにせよ、お前はもうこの誇りっぽい街で暮らしていくしかない」
男「…」
銀のオッサン「今は、これまでの世界との離別を嘆いても良い。後悔しても尚良し。思うざま悔やむがいいさ。そうしなければ、人は前に進めぬ」
男(… 俺は…)
エレベーターはどんどん降下し、地下街がずんずんと迫ってくる。
この街には、昼も夜も無いのだろう。あの温室じみた清潔な空調も無いのだろう。
うわついたくだらない中央公園も。端末に表示されるおめでたい天気予報も。
綺麗に整った頑丈な作りの住居ブロックもなければ、自分の帰りを待っている父親もいない。
挙式に誘ってくれる友人も、羨むような恋敵もいなければ。
あの寂れた公園も、風にきいきいと揺れる遊具も。
作り物の美しすぎる月も、それを一緒に見上げた幼馴染も… ここには、ないのだ。
それら全ての思い出を投げ打ってでも。自分には、伝えたい想いがあった。
銀のオッサン「少年よ…泣いているのか?」
男「えっ…」
気付かないうちに、頬を涙がつたっていたようだ。
男(今の自分は、空っぽだ… 伝えたい想いは吐き出して、帰る家も、これまで積み上げてきたものも、何もかも失った…)
男は頭上を見上げ、遥か遠くに目を凝らす。
その先にはただ暗闇で覆われた、大地の天蓋があるだけだった。
男(でも…きっとまだ、この何も無い空を見上げて…君を想いだす気がする…)
―数日して とある治安局支部―
局員「では、本日はこれにて終了です。もしかすると後日、お話を窺う事になるかもしれません」
幼「…」
局員「召致に応じるのは国民の義務ですので、その際はまたご協力をお願いいたします」
幼「はい…では、これで」
局員「おつかれさまでした」
聴取室の扉を開き、幼は外に出た。
友「幼っ!」
廊下のソファで待っていた友が、幼の姿を見るなり駆け寄って来る。
幼「友…」
友「心配したんだぞ、ばかっ…!」
友は幼を、ひしっと抱きしめた。
幼「泣かないで、友…あたしは大丈夫。大丈夫だから…」
友「大丈夫なもんか…! 私は気が気じゃなかったんだぞ! もう、ばかっ…! ばか、ばかっ…!」
子供のように泣きじゃくる友の姿を見て、幼の憔悴しきった顔に笑顔が戻った。
幼「こら、こんなところで恥ずかしいでしょ…もう…」
―集団住居ブロック 幼と友の新居―
幼「じゃあ、明かり消すよ?」
友「ああ。おやすみ、幼」
幼「うん、おやすみ…」
別々の寝床で就寝の挨拶をし、眠りにつく二人。
幼(ふう…やっと、落ち着けた)
あの日…男の唐突な告白から日常が一転し、それから心の休まった日などなかった。
幼(男…一体、どこに行ったんだろう…)
瞳を閉じる。小さい頃からの、ただ一人の幼馴染…かけがえの無い親友。
幼(私は、そう思ってただけだった…)
幼「って、ひゃっ!?」
友「へへっ…」
幼の腹部に突然、ひやっこいものが当たった。
幼「ちょっ…友っ!」
友「にひひ」
幼「あんた冷え症なんだから突然絡んでこないでって、いつも言ってるじゃない! 心臓が止まるかと思ったわよ、もーっ…!」
友「あはは、悪かったって。でも、籍を入れて日の浅いのに別々に寝る事は無いじゃないか」
幼「それは…そうかもしれないけど」
友「ねえ、幼。さっき何か考え込んでたでしょ」
幼「えっ…!?」
友「やっぱり図星だ。考え事してると寝息の調子がすぐ変わるんだもん」
幼「ちょっ、やだ…! そんな癖、気付いてたんだったらすぐに教えてようー! もー!!」
友「ふふ。からかうとすぐにもーもー言うから面白いな、幼は」
幼「も… っー! いいもん! 友の事なんて、知らないからっ!」
友「あはははははっ!」
そっぽを向いて寝込んでしまう幼。
友はそんな幼をやさしく包み込むように、後ろからそっと抱きしめた。
友「うん、やっぱり暖かいなあ幼は」
幼「あたしは冷やっこいのっ」
友「ふうん。じゃ、やめる?」
幼「やめなくていいっ!」
友「じゃ、このまま寝るね」
幼「…」
肌を寄せ合っていちゃついているうち、友の方が先に寝ついてしまった。
友「すー…」
友の寝息がつむじに吹きかかって、なんだかこそばい。
幼(もう、普段はそんな素振り見せないくせに。こういう時だけすっごい子供なんだから…)
幼も眠りに意識を委ねようと、瞼を閉じる。
幼「…」
愛する人に背中を預けて、心地よい冷たさの肌に身を委ねても。
やはり、考え込んでしまう。
幼(もしかしたら…男にも、こんな一面があったのかな…)
今までは想像した事も無かった。
友と過ごす毎日。家で待つ家族。次々と結ばれ祝福されていく、友人達。
そして…自分を支えてくれる、男という親友。
この幸せな日常を、今までの幼は微塵も疑った事は無かった。
幼(統一世界…理想郷…私は、この日常のどこかに綻びがあるなんて、全く考えた事はなかった。
でも…もしかしたらこの生活は、何か犠牲の上に成り立っているのかもしれない…)
幼「男…今、どこで何をしているの…?」
受け止め損ねた愛の大きさ。
時が過ぎるにつれ冷静に考えられるようになり、その輪郭がじょじょに見えてくる。
その度に少しずつ、幼の小さな胸が締め付けられる。
幼(男、避けちゃってごめんね…! もう一度逢って、ゆっくり気持ちを聞きたいよ…!)
国家。思想。宗教。主義。世間体。立場。
人のエゴと都合。見栄や嫉妬、憎しみや恐れ…
さまざまな要因が、愛を曇らせるこの世界で。
彼等が本当の愛にたどり着くには、まだ遠すぎた…
未完(ゝω・)vキャピ
スレタイの内容と大きく逸れてきたのと、地下編の構想が何と無くすぎるので一回締めます。
あともう体力もたないです。気付いたら6時じゃねえかおい
このSSは頭の中にあったものをアドリブで出したら以外とうまく纏まった、かな? 程度のものです。
けっこう気に入ってしまったので続きはいつかやりたいと思います。
1時間の保守を要求しておきながら2時間30分スレを空けるカス>>1のために保守してくれた皆さん、
面白いって言ってくれた方々、ここまで読んでくれた人たちみんなありがとでした。では
しておりますし、同性とはセックスもします
ただお産の知識などはありませぬ
万が一何かの間違いで孕んだら、父母ともに追放されます
避妊改良の技術・体制はとっくに整っていますが、まだ人類にそれをする勇気はないようです
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません