小鳩「あれからもう10ヶ月かぁ………」(205)
前作
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落ちた時、完走したとき
-会社 オフィス-
小鳩「ふぅー」
カチャカチャ、カチャカチャ
小鳩「(………最近、仕事おもしろくないなぁ………疲れるばっかりで………前と変わらないはずなのに………)」
カチャカチャ、カチャカチャ
小鳩「(なんでだろう………)」
カチャカチャ、カチャカチャ
小鳩「(………やっぱり………あんちゃんと離れたから………)」
カチャカチャ、カチャ………
小鳩「………はぁー」
ダッタッタッタッタッタ
マリア「おっす小鳩ぉ!」ドン
小鳩「おわぁあ!?」ガタン
マリア「あははは、ビックリしたかぁ?」
小鳩「なんだマリアか………」
マリア「ぼけーっとしてたからなぁ、勢いつけて脅かしちゃったよ」
小鳩「もぉー、なんでこっちの部に来てんの、あんた下の階で受付でしょ」
マリア「だってなぁー、ずっと座ってるのもさぁー」
小鳩「理科さんに見つかったらどうすんの………」
マリア「大丈夫だって、あの人どうせ社長室からは出てこないんだから、引きこもりなんだからなぁ、あははは」
小鳩「あんたねぇ………」ヒョイ
マリア「………?………何?」
小鳩「あれ」ヒョイ、ヒョイ
マリア「………え?」クルッ
理科「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!」
マリア「うわぁあ!な、何で!?」
小鳩「あ、あたし知らないっと………」
理科「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!」
マリア「あわわわわわわ」ガクガク
理科「………保険をかけておいて正解でしたよ………いつかこうなるんじゃないかと思って………マリアちゃんのところだけ監視しておいたんです………」
マリア「そ、そんな、ズルい………」
理科「マリアちゃん!仕事サボって何やってんですか!」
マリア「えっと………その………小鳩がちゃんと仕事してるかなぁーと思いまして………偵察に………」汗ダラダラ
小鳩「(………してるってば)」
理科「小鳩ちゃんはマリアちゃんより数年もここに勤めてるんですよ!なんでマリアちゃんがそんな心配出来るんですか!」
マリア「えっと………その………」
理科「いくら隣人部の仲だったとはいえ、入社したてのマリアちゃんに任せられるのは今はこれくらいなんです!しっかり仕事してくれないと………!」
マリア「あの………小鳩が最近元気なかったから………それで………」
理科「あっ」
小鳩「………」
理科「………そうですね」
小鳩「………理科さん、マリアの思うツボですよ」
マリア「うっ」
理科「分かってますよ………でも理科も思ってたんです、小鳩ちゃん最近元気ないなって………」
小鳩「別に………そんなことは………」
理科「でもマリアちゃん!」ギロリ
マリア「ひっ!」
理科「仕事をサボったことは許しません、理科の部屋まで来てもらいますよ、説教してやるんだから」ガシッ
マリア「うわぁぁぁん!小鳩ぉ!助けてぇ!」ズルズルズル
小鳩「言わんこっちゃないんだから………」
理科「………小鳩ちゃん」
小鳩「は、はい」
理科「今日、仕事の後どうです?久しぶりに付き合いませんか?」
小鳩「え………」
理科「このところ仕事ばっかりで大変だったでしょう?たまには愚痴でも聞かせてください」
小鳩「でも………」
理科「社長命令です」
小鳩「………わかりました」
理科「じゃあ夕方に、あとでメールします」
マリア「小鳩ぉ!助けろぉ!うわぁぁぁん!」ズルズルズル
バタン
小鳩「はぁ………」
-居酒屋-
ワイワイ、ガヤガヤ
マリア「うぅ………酷い目にあった………」
小鳩「あのねぇ、マリアはコネで入ったんだから、会社の入り口でサボられたんじゃ理科さんの面目丸潰れでしょ………」
マリア「だってさぁ、ホントに暇だったんだよ、1階はわたし1人だし………受付使う人全然いないし………」
小鳩「受付でゲームしながらポテチ食べてる人間に、誰も案内頼もうなんて思わないって」
マリア「結局全部没収されたし………」
小鳩「当たり前でしょ」
マリア「うぅ、小鳩まで………」
小鳩「はぁ、これじゃあシスターやってた頃と変わらないなぁ………」
マリア「い、いや!これでも変わったんだぞ!」
小鳩「………例えば?」
マリア「インスタントばっかりの生活じゃなくなった!」
小鳩「昼ご飯、カップラーメンだったじゃん………」
マリア「か、家事は自分でするようになった………」
小鳩「部屋汚いじゃん………あとあの匂いどうにかならないの?」
マリア「………立派な社会人になった」
小鳩「さっきまで社長に説教されてたのに?」
マリア「うぅ………」
小鳩「だらしないなぁ」
マリア「…………」
小鳩「しっかりしてよ、もう大人なんだから」
マリア「………………小鳩だって」ボソッ
小鳩「え?」
マリア「小鳩だって………馬鹿やってた頃あったじゃん………」
小鳩「………なに?」
マリア「隣人部の頃」
小鳩「うっ!」
マリア「ニヤリ」
小鳩「あ、あれは若さ故の過ちというか………」
マリア「くっくっく………我が名はレイシス・ヴィ・フェリスティ・スメラギ………」
小鳩「ちょ!やめ………!」
マリア「おや?頼んだはずの供物がまだ届いておらんな………ここの店員は一体何をやっておるのだ………」
小鳩「ま、マリア!お願いだからぁ!」
マリア「くっくっく………いいだろう………我を愚弄したら最後どうなるか………この夜の帝王の名を以てその体に………!」
小鳩「やめろって言っちょろーが!」パァン!
マリア「おごぉ!」
ガラガラガラ
理科「すいません、お待たせしましたぁ」
小鳩「もぉー、遅いですよー」
理科「思ったより会議が長引いてしまって………ってマリアちゃんどうしたんですかその顔?理科、殴りましたっけ?」
マリア「いや、ちょっと小鳩に………」ヒリヒリ
小鳩「ジロッ」
マリア「あ、いや、何でもないです………」
理科「そうですか………あ、すいませーん、ビールと焼き鳥くださーい」
店員「はいよー」
ワイワイ、ガヤガヤ
理科「しかし女だけで居酒屋ってのもアレですねぇ」
小鳩「理科さんが誘ったんじゃないですか」
理科「そーなんですけどね、あははは」
マリア「そうだぞ!社長だったらもっと良いとこ連れてけ!」
理科「あ゙?」ギロリ
マリア「あ、あはは、何でもないです………え、枝豆おいしいなぁ、モグモグ」
理科「ところで2人とも、1人暮らしにはもう慣れましたか?」
小鳩「えっと………」
マリア「ぜーんぜん、料理とかワケわかんないし、掃除とかも面倒くさいし」
理科「マリアちゃん、シスターやってた頃と変わらないじゃないですか」
マリア「うう………理科にも言われた………」
理科「小鳩ちゃんは?」
小鳩「私は家事は出来るので、なんとか………」
マリア「むー」
理科「寂しかったりしないんですか?」
小鳩「そ、それは………」
理科「ん?」
小鳩「その……少し……」
理科「ずっと小鷹先輩と暮らしてきたんですもんね、寂しくて当然ですよ」
小鳩「………」
マリア「そうか?わたしもババアと離れたけど全然寂しくないぞ?むしろ嬉しいぞ?」
理科「あっちはきっと寂しがってますよ………」
マリア「そうかなぁ?」
小鳩「………あんちゃん………元気かなぁ」
理科「元気に決まってますよ、なんたって新婚さんなんですから」
マリア「あのお兄ちゃんがなぁー」
小鳩「………」
理科「理科たちもすっかり大人ですよねぇ………」
小鳩「………グスン………あんちゃん………」
マリア「あはは、泣くなって」
小鳩「………ぅぅ………グスン」
理科「ささ、もっと飲みましょう」
マリア「おー!」
小鳩「………うん」
ワイワイ、ガヤガヤ
-小鷹宅-
星奈「………えへへ」
ピコピコ、ピコピコ
星奈「も、森島先輩………こんなところで………」
ピコピコ、ピコピコ
星奈「ひ、膝の裏!?………こ、これは………じゅるり………」
ピコピコ、ピコピコ
ガチャン
小鷹「ふぅー、ただいまー」
星奈「え………あ、しまった!」
小鷹「帰ったぞー………星奈?」
星奈「あ、あははは………お、お帰りー」
小鷹「………」
星奈「き、今日もお疲れ様!」汗ダラダラ
小鷹「おい………それって………」
星奈「あ、あはは………」
小鷹「………」
星奈「お、お風呂にするぅ?ご飯にするぅ?それともア・タ・シ?」
小鷹「………」
星奈「………こ、小鷹?」
小鷹「ゲ………」
星奈「ゲ?」
小鷹「ゲーム卒業出来てねぇじゃんかよぉお!」
星奈「ゔわぁぁぁぁぁぁん!ごめんなさぁぁぁぁぁぁい!」
-食卓-
小鷹「第1回、家族会議を行います」
星奈「………はい」
小鷹「議題はこれです」ドーン
星奈「ぅぅ………」
小鷹「なんと押し入れいっぱいに隠してありました」
星奈「ご、ごめんなさい………」
小鷹「お前なぁ………ギャルゲーとかもうやめるって言ってくれたじゃないかよ」
星奈「………はい」
小鷹「俺、あの時お前のことホントにスゴイやつだって思ったんだぞ?俺の為に自分からやめるって言ったんだから………」
星奈「はい………言いました………」
小鷹「というわけで全部捨てます」ヨッコラセ
星奈「ちょ!ちょっと待ってぇ!」ガシッ
小鷹「だってなぁ」
星奈「ご、ご飯作るの忘れたのは謝るから!お願いします!どうかそれだけはぁ!」
小鷹「家事全部すっぽかしてるだろーが!」
星奈「ゔわああああああん!ホントにお願いだからぁぁぁ!小鷹ぁぁぁぁぁぁ!」
小鷹「あのなぁー」
星奈「い、家出るわよ!?泣くわよ!?パパ怒るわよ!?」
小鷹「あぁ、天馬さんにも言っておくか………」
星奈「それもやめでよぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
-喫茶幸村-
小鷹「………ということがあったんだ」
夜空「ズズズ」
コトッ
夜空「………」
小鷹「………」
夜空「………馬鹿かあいつは」
小鷹「だよなぁ」
小鷹「困ってんだよ、結局その日は許したんだけどな、同じような事がそれから何度かあってさぁ」
夜空「ならいっそ全部捨ててやるのが一番なんじゃないか?」
小鷹「俺もそう思ったんだけど、流石に可哀想でな………」
夜空「時間制限を設けるとかは?」
小鷹「あー、ダメだった、1度試したんだけど、あいつ我慢できずに俺が帰ってくるまでずっとやってたみたいでさぁ」
夜空「小学生かあいつは………」
小鷹「その方がまだいいんだけどな………」
夜空「で、あいつ今なにしてるんだ?今日は連れて来なかったのか?」
小鷹「平日に溜まった分の家事をやらせてるよ、1週間もサボってたからなぁ」
夜空「ホントに子供みたいだな」
小鷹「でもそういうとこ、嫌いになれないんだけどな………」
夜空「………そうだな」
小鷹「そういえば、本はどうなったんだ?」
夜空「え?」
小鷹「ほら、なんか本を書いてるとか言ってたじゃんか」
夜空「ああ………初めてのことだからな、今少し練ってるところだ」
小鷹「へぇー、どういうのなんだ?教えてくれよ」
夜空「だ、ダメだ!恥ずかしい………」
小鷹「そ、そうか………」
夜空「出来るまでは誰にも見せたくないから………」
小鷹「でもいつかは読んで見たいなぁ、夜空の書いた本………」
夜空「うぅ………なんだか照れるな………」
小鷹「完成したら見せてくれよ、ダメか?」
夜空「そうだなぁ………じゃあ特別に読者第一号にしてやろう」
小鷹「ホントか?」
夜空「ああ、ただいつになるか分からないぞ?本当に出来るかも分からないし………」
小鷹「いやいいって、ゆっくり作りなよ、俺も気長に待つからさ」
テクテクテク
幸村「姉御………わたくしも姉御の書いた本を読んでみたいです………」
夜空「え、幸村も?」
小鷹「ああ、いいじゃないか、これで読者第二号だ」
夜空「お、おい………ホントに期待し過ぎないでくれ………何だか急に書くのが怖くなってきた………」
小鷹「期待しようぜ、な、幸村」
幸村「はい………読める日を心から楽しみにしております………」
夜空「ほ、ホントにやめろってばぁ!」
小鷹「あははは」
-小鳩宅-
ガチャン
小鳩「ただいま………」
シーン
小鳩「はぁー………」
TV『日本!日本!わぁぁぁぁぁぁ!』
小鳩「………」ピッ
TV『じゃーぱねっと♪じゃーぱねっと♪』
小鳩「………」ピッ
TV『今日行われた裸祭りでは多くの参加者が………』
小鳩「………」ピッ
TV『なんと松子デラックス1000人分に相当するケーキが………』
小鳩「はぁ………」
ちょっと休憩
-会社 受付-
ガヤガヤ、ザワザワ
マリア「ふわぁあ~」ムニャムニャ
社員a「おはようございまーす」
マリア「はいおはよー」
社員b「マリアさん、おはよー」
マリア「はいおはよー」
社員c「おはようございまぁぁぁぁぁぁす!」
マリア「はいおはよー、お前うるさいよー」
テクテクテク
マリア「ん?」
小鳩「テクテクテク………」
マリア「………………」
小鳩「テクテクテク………」
マリア「………………」
小鳩「テクテクテク………」
マリア「………は?」
理科「え、小鳩ちゃんが?」
マリア「うん、パジャマで出社してた」
理科「そ、それはなんというか………かわいいというか………」
マリア「最近特に疲れてるみたいだなぁ、何だか元気もないし」
理科「確かにこの前見たときも、何だかぼーっとしてたような………」
マリア「なぁー、やっぱりお兄ちゃんが原因じゃないのか?」
理科「まぁ、恐らくは多分………」
マリア「どうにかなんないかなぁ」
理科「そうですねぇ………」
-会社 オフィス-
理科「小鳩ちゃん」
小鳩「あ、理科さん………」
理科「(あ、まだパジャマなんだ………かわいい………)」
小鳩「すいません………スーツ忘れちゃって………」
理科「そんな格好じゃ他の社員に示しがつきませんよ」
小鳩「そうですよね………すいません、1度家に戻ります………」
理科「いえ、大丈夫ですよ、ちょっと理科の部屋まで来てください」
小鳩「あ………はい」
-社長室-
理科「えーっと、これだと合うかな?」ガサゴソ
小鳩「………」
理科「はい小鳩ちゃん、これ着てください」バッ
小鳩「ホントにすいません、スーツをお借りするなんて………」
理科「いえこれくらいはいいんですよ、ただ小鳩ちゃんと少し話したいと思ってたから………ちょっと掛けてくれますか?」
小鳩「………はい」
理科「紅茶です」カチャン
小鳩「どうも………」
理科「最近、なんだか調子が良くないって聞きましたよ?」
小鳩「なんだか疲れてるみたいで………今日のも多分そうなんじゃないかと………」
理科「1人暮らしは………やっぱり辛いですか?」
小鳩「そんなことは………」
理科「小鳩ちゃん、本心を言ってください、社長命令です」
小鳩「………辛いです」
理科「ですよね」
小鳩「家に帰っても誰もいないのは………スゴく………寂しいです………」
理科「ふむぅ」
小鳩「でも、社会人なんだから堪えなきゃいけないことだと思って………マリアだってそうだし………」
理科「小鳩ちゃんの場合、家に誰もいないというより、小鷹先輩がいないという方が大きいんじゃないですか?」
小鳩「ぅぅ………」
理科「やっぱり寂しいですよね」
小鳩「………グスン」
理科「まったく………仕方ないですねぇ」
小鳩「え?」
理科「チャララララララ、どこでもドア~(似てない)」ペラリ
小鳩「………」
理科「………」
小鳩「………あの」
理科「ごめんなさい」
小鳩「………これは?」
理科「ご、ゴホン!特別に休暇を差し上げます、小鳩ちゃんは良く働いてくれているし………この封筒にはその手続きと、それから向こうまでの切符やら何やらが入ってます」
小鳩「向こうって………何ですか?」
理科「なにって………決まってるじゃないですか」
小鳩「………?」
理科「小鷹先輩のところですよ」
ちょっと休憩
-小鷹宅-
星奈「え、小鳩ちゃんが来るの?」
小鷹「ああ、さっき直接連絡があってな、明日遊びに来るんだって、何だか急だよなぁ」
星奈「小鳩ちゃんが………うちに………うへへへ」
小鷹「顔、顔」
星奈「ご、ごめん、つい」
小鷹「それで昼間のうちに来るらしいから迎えに行ってくれないか?俺、仕事休めないし、早めに帰るようにはするからさ」
星奈「分かったわ!任せて!」グッ
小鷹「………大丈夫だろうか」
星奈「何よ、襲ったりなんかしないわよ」
小鷹「真っ先に出るのがそれかよ!」
星奈「い、いや!ホントにそんなつもりないから!」
小鷹「お前なぁ、前科一犯なんだからな?」
星奈「大丈夫だって、ちゃんと迎えに行くから」
小鷹「だといいんだけど………」
ー会社 受付ー
マリア「ふわぁあ~」ムニャムニャ
社員a「おはようございまーす」
マリア「はいおはよー」
社員b「マリアさん、おはよー」
マリア「はいおはよー」
社員c「おはようございまぁぁぁぁぁぁす!」
マリア「はいおはよー、お前うるさいよー」
ガヤガヤ、ザワザワ
マリア「………」
ガヤガヤ、ザワザワ
マリア「………今日は小鳩遅いなぁ」
ー駅ホームー
アナウンス『ドア開きまーす、ご注意ください』
プシュー
小鳩「ふぅー、ホントに遠かったなぁ、やっと着いた………」
ーバスプールー
小鳩「あんちゃん迎えに来るって言ってたけどどこに………ん?………あ゙!」
星奈「ルーンルーン♪」
小鳩「せ、星奈がいる………なんで………あんちゃんは………?」キョロキョロ
星奈「(小鳩ちゃんまだかなー♪)」
小鳩「あんちゃんいない………」
星奈「(まだかな~♪)」
小鳩「………」
星奈「♪~」
小鳩「………に、逃げよう」
-町内にて-
テクテクテク
小鳩「そういえば今日平日だったんだ………あんちゃん来ないに決まってんじゃん………馬鹿だなぁ………」
テクテクテク
小鳩「どうしよう………家まで歩けば時間つぶせるかなぁ………」
夜空「ん?小鳩か?」
小鳩「えっ」クルッ
夜空「ああ、やっぱり小鳩だ」
小鳩「よ、夜空さん!」
テクテクテク
夜空「なんだ、来るなら来るって教えてくれたら良かったのに 」
小鳩「すいません、昨日の今日だったので………」
夜空「1人で来たのか?」
小鳩「あ………えっと………迎えが来てはいたんですけど………」
夜空「ああ、その様子だと星奈が1人で来たんだろうな」
小鳩「………はい」
夜空「あいつの今までの行いが祟ったと思えばいいさ、気にするな」
小鳩「そ、そうですね………」
-バスプール-
星奈「(………小鳩ちゃん遅いなぁ)」
-喫茶幸村-
カランカラーン
幸村「おや………これはこれは………お久しぶりです、小鳩の姉御………」
小鳩「お久しぶりです、幸村さん………あの、やっぱり姉御って………」
幸村「ああ、失礼しました………いらっしゃいませ、小鳩殿………」
小鳩「ど、どっちもなんかなぁ………」
夜空「急に来ることになったらしくてな、幸村、コーヒーを頼む、小鳩も同じでいいか?」
小鳩「あ、はい、お願いします………」
幸村「かしこまりました………」テクテクテク
小鳩「いいお店ですね」
夜空「ふっふっふ、そうだろう、実は建設に私も立ち会ったんだ」
小鳩「そうだったんですか?」
夜空「ああ、ここを建てるとき色々と注文をつけてな、私好みにしてもらったんだ」
小鳩「ゆ、幸村さんの立場は一体………」
夜空「まったく苦労したんだぞ、テーブルなんか特にこだわってな、建設直前で注文を追加したら現場ともめてしまったんだ、仕方ないから私も投資して、出来るまでに3年もかかってしまったよ」
小鳩「完全に私物化しちゃってるんですね……」
夜空「私のお気に入りだ」
幸村「どうぞ………」カチャ
小鳩「ありがとうございます」
幸村「テクテクテク………」
夜空「ズズズ」
小鳩「ズズズ」
コトッ
夜空「そういえば、どうして急に来ることになったんだ?」
小鳩「え………あ………その………」モジモジ
夜空「小鷹に会いたくなった………とか?」
小鳩「………はい」
夜空「女の一人暮らしだもんな、寂しくもなるか」
小鳩「最近、特に堪えられなくなってきて………」
夜空「そうか………」
小鳩「夜空さんはそういうことないんですか?」
夜空「え、私か?…………うーん、最近はない………かな………」
小鳩「………最近?」
夜空「一度小鷹が帰って来ただろう?あの時以来、寂しくなることはなくなったかなぁ………」
小鳩「え、なんでですか?だって夜空さん………」
夜空「………まぁそうだったんだけどな、何だか星奈のことを考えたら不思議とそう思えたんだ………なんでだろうな………」
小鳩「大人なんですね………」
夜空「ふふ………そうかもしれないなぁ」
小鳩「………」
夜空「そういう小鳩こそもう大人だろう、あれとかもういいのか?もうやってないのか?」
小鳩「え?」
夜空「ほら、あの、レイシス・ヴィ・フェリスティとかってやつ」
小鳩「………すいません、ホントに勘弁してください」
夜空「くっくっく………処女の生き血はいかがかな、我が主よ………」
小鳩「よ、夜空さん!」ガタッ
夜空「あははは」
小鳩「ぅぅ………」
夜空「小鷹にはなんて言って来たんだ?」
小鳩「あんちゃんにはただ遊びに行くって言ったんです………寂しくて来たなんて言えなくて………」
夜空「そうだな、あいつきっと心配するだろうからなぁ」
小鳩「でもどうすればいいのか………相談するのも出来なくって………」
夜空「んー」
小鳩「………」
夜空「なぁ小鳩」
小鳩「………なんですか?」
夜空「たまには相手の事なんて考えなくてもいいんじゃないか?」
小鳩「………夜空さんはもう少し考えた方が良いと思います」
夜空「うっ………ま、まぁそう言わずにな、困ったときは、後のことなど考えず誰かを頼っても良いんじゃないかということだ」
小鳩「………」
夜空「頼ってみないと分からないことってあるだろ?それに………小鷹ならきっと力になってくれるさ」
小鳩「………そうですね」
夜空「なんなら、私でもいいんだぞ?」
小鳩「それは遠慮しておきます」
夜空「むー」
小鳩「………えへへ」
-町内-
テクテクテク
小鳩「………え、じゃあ一緒に来てくれないんですか?」
夜空「ああ、仕事の都合でこっちに来てたんだ、もう図書館に戻らないといけないからな、ここらでお別れだ」
小鳩「そ、そんな………」
夜空「あんまり星奈が絡んでくるようだったら警察でも呼べばいいさ、番号分かるか?」
小鳩「じょ、冗談言わないでください!あんなのと2人でいられるわけないじゃないですか!」
夜空「小鷹が帰ってくるまでの辛抱だな」
小鳩「夜空さん結婚式のとき見てたでしょ!?私、あいつに身ぐるみ剥がされて襲われかけたんですよ!?」
夜空「あ………ああ………あれは酷かったな………」
小鳩「マリアが止めてくれたからよかったけど………ぅぅ」
夜空「そのせいで星奈のやつずっと気絶してたからな、シュールな結婚式だった………」
小鳩「きっとまた襲われます………」
夜空「被害届は出してやる」
小鳩「よ、夜空さん!」
夜空「まぁ小鷹に早く帰るように言っておいてやるから、今日は大人しく家に向かうんだな」
小鳩「そんなぁ………」ガクッ
-小鷹宅 リビング-
ピコピコ、ピコピコ
星奈「結局小鳩ちゃん来なかったなぁ………3時間も待ったのに………」
ピコピコ、ピコピコ
星奈「どうかしたのかなぁ………少ししたらまた駅まで行ってみようかな………」
ピコピコ、ピコピコ
星奈「ああ………紗江ちゃんかわいいなぁ………ふかふか………」
TV『あたしが守ってあげる!』
星奈「え?」
TV『バキッ!バキッ!バキッ!バキッ!バキッ!バキッ!』
星奈「ちょ、ちょっと!なにフラグ折ってんのよ!い、イベントが………!」
TV『可哀想だけど、仕方がないよね』
星奈「だ、誰よあんた!立ち絵もない癖に!ふざけんじゃないわよぉ!」
TV『先輩………そんな………』
星奈「さ、紗江ちゃん!ち、違うの!行かないで!」
TV『さようなら………』
星奈「紗江ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
-町内-
テクテクテク
小鳩「はぁ………やだなぁ星奈に会うの………また襲われたりしたら………」
テクテクテク
小鳩「星奈がいなければすぐにでも家に向かうのに………」
テクテクテク
小鳩「あんちゃん………どうして星奈なんかと………」
テクテクテク
小鳩「あのままずっと一緒にいたかったのに………」
テクテク………ピタッ
小鳩「ぅぅ………グスン………」
-会社-
マリア「じゃあ、小鳩はお兄ちゃんのところに行ったのか?」
理科「ええ、2日ほど休みをあげたので、しばらくは寂しくなりますね」
マリア「小鳩のやつきっと喜んでるだろうなぁ」
理科「でもあっちには星奈先輩がいますから、ゆっくりは休めないでしょう、それでも元気になってくれればいいんですけど………」
マリア「わたしにも休暇くれたらなぁ」
理科「小鳩ちゃんはキチンと働いていたからご褒美として休暇をあげたんです、マリアちゃんもしっかり働いてください」
マリア「ぶー」
理科「でないと没収したPS vitaも返しませんからね」
マリア「ぅぅ………分かりました」
-小鷹宅 玄関前-
小鳩「………あ、この家だ」
『Kodaka & Sena』
小鳩「………はぁ」ポチッ
ピンポーン
小鳩「………」
シーン
小鳩「………ん?」
ピンポーン
小鳩「………」
シーン
小鳩「も、もしかしてまだ駅に………どうしよう………」スッ
ガチャン
小鳩「あれ………開いてる………?」
-小鷹宅-
ピコピコ
星奈「まさかさっきの子が隠しキャラだったなんて………一体どんな子かしら………早く立ち絵を拝みたいわぁ………」ワクワク
TV『は、はじめまして………あたし………上崎裡沙
っていいます………』
星奈「裡沙ちゃん来たーーーーー!はぁはぁ………なにこれ!ちょー可愛いんですけどぉ!」
TV『あなたの望むことなら………なんだって………』
星奈「や、やばい!なにその台詞!裡沙ちゃんやばすぎ!マジ天使!裡沙ちゃんマジ天使!」
TV『やっぱり………大きい胸の方が良いんですか?………努力はしてるんですけど………』
星奈「ど、努力!?………うへへ………おじさんも一緒に手伝っちゃいますよぉ?」
小鳩「………」
TV『………今日は………その………うちに泊まりに来てくれませんか?』
星奈「うっひゃぁぁぁぁぁぁ!なにこれ!?いきなり初夜!?だってそうでしょこれ!?男と女が泊まりとなれば後はベッドの上で激しく求め合って………!」
スパァン!
星奈「うごぉ!?」
小鳩「昼間っからなにやっちょるんばい!」
ちょっと休憩
-数十分後-
小鷹「もう小鳩来てるだろうな、元気にしてたかなぁ」
ガミガミ、ガミガミ
小鷹「………ん?」
ガミガミ、ガミガミ
小鷹「な、なんだ?…………家の中からか?」
ガチャン
小鷹「ただいまー、星奈ぁー?」
バンッ!
小鳩「なんで主婦が昼間っから鼻の下伸ばしてんですか!」
星奈「も、申し訳ありませんでした………」
小鳩「星奈さんもうアラサーでしょ!?結婚して主婦なんでしょ!?ゲームなんかやってて恥ずかしくないんですか!?」
星奈「か、返す言葉もございません………」
小鳩「ていうかあなた女でしょ!?なんでギャルゲーなんかしてるんですか!?ふざけちゃってるんですか!?」
星奈「ほ、本当にごめんなさい………もう許して………」
小鳩「それになんですかこの押し入れ!?なにこのゲームの量!?ほとんどギャルゲーだし!?限度ってもん越えちゃってるでしょうがぁ!」
星奈「こ、小鳩ちゃん………もうこのくらいで………」
小鳩「星奈さんが全部悪いんですよ!」バン
星奈「こ、小鷹も帰ってくるし………夜ご飯も作らないといけないから………ね?」
小鳩「あんちゃんなんでこんなのと結婚したんだよぉぉぉぉぉぉ!」
星奈「こ、小鳩ちゃん………」
小鳩「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
小鷹「と、とんでもないことになってるな………」
ゴクゴクゴク
コトン
小鳩「ふぅ………」
小鷹「落ち着いたか?」
小鳩「うん………あんなに叫んだの初めてだったかも………」
小鷹「壮絶だったからな………」
小鳩「なんか、体に溜まってたものが全部出たみたい………今スゴいスッキリしてる」
小鷹「で、出来ればあれが最後であって欲しいな……_」
小鳩「だって星奈が………」
小鷹「まぁ、ゲームのことは俺が言っとくから、俺もどうにかしようと思ってたところだし………」
小鳩「………分かった」
小鷹「それより久しぶりに来たんだ、今日はゆっくりしていけよ、小鳩の話もたくさん聞きたいからな」
小鳩「うん!」
星奈「ご飯出来たわよー」
小鷹「おーう」
小鳩「プイッ」
星奈「ぅぅ………小鳩ちゃん………」
-居酒屋-
ワイワイ、ガヤガヤ
理科「………いつもは寂しい女3人ですけど、小鳩ちゃんがいないともっと寂しいですねぇ」
マリア「わたしは小鳩の分も奢ってもらえるからいいけどなぁ」ガツガツ
理科「………呑気ですね」
マリア「だって実際そうだし」
理科「マリアちゃんのそういうところ………素直に羨ましいです」
マリア「いっつも馬鹿にしてるくせにー」
理科「それはマリアちゃんが仕事をしないときだけですよ」
マリア「むー」
理科「理科だって、たまには何も考えたくない時ぐらいあるんです………」
マリア「………」ジー
理科「………なんですか?」
マリア「理科ってさ」
理科「はい?」
マリア「お兄ちゃんのこと好きだったでしょ」
理科「んなぁ!?」ガタン
マリア「でしょ?」
理科「ど、どうしたんですか急に!こんなのいつものマリアちゃんじゃありませんよ!」
マリア「むー、失礼だなー、わたしだってそういうこと考えたりするんだぞ」
理科「そ、そりゃあそうですけど………でもなんでいきなり………」
マリア「なんとなく」
理科「なんとなくって………」
マリア「どうなの?」
理科「き、嫌いではありませんでした………」
マリア「曖昧だなぁー」
理科「そ、そういうマリアちゃんこそどうなんですか?実は陰でこっそり狙ってたんじゃないですか?」
マリア「うん、大好きだった」
理科「ぐっ、なんて素直な………」
マリア「でもなぁー、お兄ちゃんのこと考えたら結局なにも出来なかったんだよ」
理科「………?」
マリア「あのときは隣人部のみんなでいることの方が大切に思えてさぁ………きっとお兄ちゃんもそう思ってたと思うんだ………聞いたわけじゃないけど」
理科「………そうですね」
マリア「でもまぁ、星奈が1番乗りしちゃったんだけどな、わたしもなんかしとけばよかったなぁって時々思うんだよなぁ」
理科「マリアちゃん………」
マリア「理科の言うように、あの頃の私も呑気だったんだろうなぁ………」
理科「………えへへ」
マリア「むー、笑うなよぉ」
理科「あ、いえ………違うんです………」
マリア「………?」
理科「もしかしたら………マリアちゃんが1番大人だったのかもしれませんね………」
マリア「あはは、なんだか照れるなぁ」
理科「………うそです」
マリア「なんだよもぉ!」
理科「あははは」
ワイワイ、ガヤガヤ
-翌日 -
チュンチュン、チュンチュン
星奈「ん………んん………」
チュンチュン、チュンチュン
星奈「………ん?」
チュンチュン、チュンチュン
星奈「え………あれ!?」
ダッタッタッタッタッタ
星奈「小鷹ぁ!」
小鷹「よぅ、遅かったじゃんか」
星奈「こ、小鳩ちゃんは!?」
小鷹「さっき出かけたよ」
星奈「え?」
小鷹「夜空に呼ばれたらしくってな、朝から図書館に行ったよ」
星奈「あぁ………てっきり帰っちゃったのかと思った………良かったぁ」
小鷹「夕方には戻るって言ってたから、夜ご飯の買い物はそれまでに行くからな」
星奈「うん、分かった」
小鷹「………あのさ」
星奈「ん?」
小鷹「ゲームのことなんだけど………」
星奈「………うん」
小鷹「明日には小鳩も帰っちゃうし、安心して戻れるようにしてやりたいんだ」
星奈「………分かったわ」
小鷹「限度があれば俺は別にかまわないんだけどなぁ」
星奈「なんか、やってると夢中になっちゃうのよね………何も聞こえなくなるし………なにより楽しいし………」
小鷹「重症だな………」
星奈「でも………そうね、いつまでもこんなことしてられないわよね」
小鷹「お前なりに解決してくれればいいから………無理のないようにな」
星奈「うん………ありがと」
小鷹「よし………じゃあ溜まってる家事をやるか」
星奈「おー!」
-図書館-
ウィーン
小鳩「す、スゴいところだなぁ………ここで夜空さんが働いてるんだ………」
夜空「小鳩、よく来たな」
小鳩「あ、夜空さん………スゴいですねここ、東京ドームくらいあるんじゃないですか?」
夜空「ふっふっふ………そうだな………そしてここで働いている私も選ばれし者というわけだ」
小鳩「それでもジャージなんですね………」
夜空「それは気にするな………向こうに静かなところがあるから、話はそこでしようか」
小鳩「分かりました」
-図書館 応接室-
夜空「はいコーヒー、幸村みたいには上手く入れられなかったが」カチャン
小鳩「いえ、ありがとうございます」
夜空「ズズズ」
小鳩「ズズズ」
コトッ
小鳩「それで、話ってなんなんです?」
夜空「うん………それが………だな………」モジモジ
小鳩「………?」
夜空「その………実は今………本を書いているんだ………」
小鳩「ああ、知ってますよ」
夜空「え、なんで!?」
小鳩「あんちゃんから聞いたんですよ」
夜空「あ、あいつ!まさか言いふらしてるのか!?」
小鳩「あー、隣人部のみんなには教えてたみたいです」
夜空「そ、そんな………」ガクン
小鳩「夜空さん?」
夜空「急に書けなくなってしまったんだ………」
小鳩「えっ?」
夜空「書き出しは良かったんだ………自分でも名作と思える作品が間違いなく出来つつあったんだ………」
小鳩「そ、そういうの、自分で言っちゃうんですね………」
夜空「でもこの前、小鷹に期待してるって言われてから………急に書けなくなってしまって………」
小鳩「それで私に?」
夜空「………うん」
小鳩「そうだったんですか………」
夜空「頼めないか?」
小鳩「でも私、文学なんて分かりませんよ?」
夜空「1人の読者として感想を言ってもらえればいいんだ、出来ているところまでだが………」
小鳩「で、でも………」
夜空「頼む!小鳩にしか相談出来ないことなんだ!」
小鳩「わ、分かりました………やってみます………」
夜空「それで………これがそうなんだ」スッ
小鳩「な、なんだか緊張するなぁ………」
夜空「簡単でいいから、とりあえず読んでみて感想を聞かせてくれ、文学的な評論はしなくていいから」
小鳩「は、はい………」
夜空「モジモジ、モジモジ」
小鳩「………ペラ………ペラ」
夜空「モジモジ、モジモジ」
小鳩「………ペラ………ペラ」
夜空「ぅぅ………」
小鳩「………ペラ………ペラ」
夜空「小鳩………ま、まだか?」
小鳩「もう少しです」ペラ
夜空「ぅぅ………」
パタン
小鳩「ふぅー」
夜空「お、終わったか?」
小鳩「はい………ひと通り読み終えました」
夜空「それで、感想は………?」
小鳩「………」
夜空「こ、小鳩?」
小鳩「………その………ちょっと意外でした」
夜空「………え?」
小鳩「夜空さんがこういうもの書くとは思っていなかったので………あ、悪い意味じゃないですよ?もちろん良い意味で………」
夜空「どういう………」
小鳩「ライトノベルだったんですね」
夜空「………へ?」
小鳩「えっと………だから………ライトノベルだったんですね………夜空さんが書くジャンルとは思っていなかったので、ちょっと意外でした」
夜空「な、なにを………」
小鳩「んー、そうなると挿絵が必要になってきますね………これをどうやって乗りきるか………」
夜空「ば、馬鹿を言うな!崇高な純文学のつもりで書いたんだぞ!芥川賞も狙える名作なんだ!ラノベなどという稚拙なジャンルであるものか!」
小鳩「いえ………どう見てもこれは………ラノベです………」
夜空「馬鹿な………」
小鳩「………夜空さん、ライトノベル読んだことありますか?」
夜空「そ、それは………その………」
小鳩「まさか………」
夜空「………ない………です」
小鳩「………あなた司書でしょ」
夜空「し、司書にだって読まないジャンルはある」
小鳩「でもライトノベル読んだことないっていうのは………」
夜空「だってラノベに文学的な価値なんてないし………」
小鳩「読まないのに分かるはずありませんよ」
夜空「むぅ………」
小鳩「でも夜空さんの書いたこれ、面白かったですよ?」
夜空「ほ、本当か!」
小鳩「はい………内容が夜空さんらしいというか、らしくないというか………とにかく作品には引き込まれました」
夜空「そうか………それは良かった………」
小鳩「ただジャンルはもうライトノベルなので………知らないジャンルをこのまま書くというのは無理があるんじゃないでしょうか?」
夜空「むぅ、確かにな………」
小鳩「執筆は一度やめて、ライトノベルを知るところから始めてみたらどうですか?」
夜空「うーん、ライトノベルかぁ」
小鳩「偏見してたら、何事も損ですよ」
夜空「そうだな………よし、やってみるか」
小鳩「じゃあ図書館にある分から探してみましょうか」
夜空「分かった」
-夕方-
テクテクテク
小鳩「思ったことを言ってみただけだったけど………あんなアドバイスで大丈夫だったのかなぁ………」
テクテクテク
小鳩「でも、夜空さんの本おもしろかったなぁ、早く続き読んでみたいなぁ………」
テクテクテク
小鳩「あっ」
小鷹「よっ、小鳩」
小鳩「あ、あんちゃん、どうしたの?」
小鷹「どうしたって言われてもな、小鳩を迎えに来たんだよ」
小鳩「べ、別にいいのに………もう子供じゃないんだから………」
小鷹「まぁ、そう言うなって、久しぶりなんだ、一緒に帰ろうぜ」
小鳩「う、うん………」
小鷹「なんだよ?嬉しくないか?」
小鳩「いや………その………嬉しい………」
小鷹「まったくこいつぅ、可愛いなぁー」ナデナデ
小鳩「も、もう!やめてよあんちゃん!」
小鷹「ははは」
テクテクテク
小鳩「家事はもういいの?」
小鷹「ああ、途中から星奈が1人でやるって言いだしてな、追い出されちゃったんだ、なんだか張り切ってたなぁ」
小鳩「………なんで?」
小鷹「さぁな、もしかしたら小鳩の手前、かっこつけたいんじゃないかなぁ」
小鳩「あいつが張り切るとロクなことがないのに………」
小鷹「大丈夫だって、あいつやらないだけで家事はパーフェクトなんだから、俺よりずっと上手いんだぞ?」
小鳩「だといいんだけど………」
小鷹「そういや、なんで夜空に呼ばれたんだ?」
小鳩「えっと、かくかくしかじかで………」
小鷹「あー、そのことだったのか」
小鳩「夜空さん、かなりプレッシャーだったみたいだよ」
小鷹「それは悪いことしたなぁ………」
小鳩「あんまり軽はずみなこと言っちゃだめだよあんちゃん」
小鷹「あのときはホントに楽しみにしてたからなぁ………こんど謝っておかないとな………」
小鳩「でも夜空さんの本が読めるなんて楽しみだね」
小鷹「そうだなぁ………あ、そういえば小鳩は夜空の本がどんなのか見たんだろ?どういうのだったんだ?」
小鳩「それは………内緒」
小鷹「なんだよ、ちょっとくらい良いだろ」
小鳩「ダメ、夜空さんに口外しないって約束したんだから、あんちゃんでも駄目なの」
小鷹「………さいですか」
小鳩「でも、きっといい本が読めるよ」
小鷹「しゃーない、それまでは気長に待つか」
小鳩「うむ、それでよい」
小鷹「あははは」
小鳩「………えへへ」
テクテクテク
アハハハハハ
小鳩「………それでマリアが転げ落ちゃってさー」
小鷹「あはは、なんだよそれ、理科もびっくりだろ」
小鳩「そう、それで理科さんがマリアのことを………ん?」
小鷹「………どうした?」
小鳩「………あれ」
小鷹「ん?」
小鳩「………あそこ………なんか煙が上がってる」
小鷹「え、どこ?」
小鳩「ほら、あれ」
小鷹「あ、ほんとだ、なんだろうな………祭りか?」
小鳩「………火事?」
小鷹「この季節にか?ちょっと考えられないな」
小鳩「あ、あんちゃん………」
小鷹「ん?」
小鳩「あれ………うちから出てない?」
ちょっと休憩
ダッタッタッタッタッタ
小鳩「はぁ………はぁ………や、やっぱり………うちの方から上がってる!」
ダッタッタッタッタッタ
小鷹「はぁ………はぁ………!」
カンカンカンカンカンカン
小鳩「あ、あんちゃん!消防車が!」
小鷹「小鳩!俺が先に行く!星奈が無事か確かめてくる!」
小鳩「わ、分かった!すぐに追いつくから!」
ダッタッタッタッタッタ
小鷹「(くそ!何で1人にしちまったんだ!………星奈!)」
ダッタッタッタッタッタ
小鷹「(星奈に何かあったら………俺は………!)」
ダッタッタッタッタッタ
小鷹「ほ、ホントに火が………庭の方からだ!」
ダッタッタッタッタッタ
小鷹「星奈ー!無事かぁ!」
星奈「えっ!?」ビクッ
小鷹「せ、星奈………!」
星奈「ど、どうしたのよいきなり………ビックリするじゃない………」
小鷹「え………あ………」
星奈「あ、でもちょうど良かったわ、ほら見て」
メラメラ、バチバチ
小鷹「こ、これ………」
星奈「どう?これがあたしの覚悟よ、これならきっと、小鳩ちゃんも安心して向こうに戻れるわ」
小鷹「な………なにを………」
星奈「スゴイ迷ったんだから、ホントはこんなことしないで売っちゃっても良かったんだけど、明日には小鳩ちゃんも帰っちゃうって言うし、なによりこれならあたしの決意を間近で見てもらえると思ったのよ」
小鷹「…………お」
星奈「あたしなりに考えたのよ?準備するのも大変だったんだから」
小鷹「………お前は………何をやってるんだ?」
星奈「ちょっと聞いてなかったの?小鷹だって今朝言ったじゃない」
小鷹「だから………一体………」
星奈「もう………見てわかんない?」
小鷹「………」
星奈「押し入れにあったゲームを全部燃やしてるの」
スパァン!
星奈「痛ぁー!」
小鷹「この大馬鹿野郎ぉぉぉ!」
星奈「な、なんでこうなるのよぉぉぉ!」
カンカンカンカンカンカン
-数時間後-
夜空『じゃあ3人とも無事なんだな?怪我もないんだな?』
小鷹「ああ、家が燃えたわけじゃなかったからな、みんな大丈夫だよ」
夜空『はぁ………良かったぁ………』
小鷹「悪かったなぁ心配かけて、星奈にはキツく言っとくから」
夜空『いや、それでは駄目だ、私の気が収まらん、星奈に代わってくれ、直々に説教をくれてやる』
小鷹「あー、今は無理だ」
夜空『どうしてだ?』
小鷹「徹夜で正座させてるからな、これから明日の朝までは地獄を見てもらう」
夜空『それでもまだ足りないくらいだ』
小鷹「今はこれで許してやってくれ」
夜空『いつか必ずしばいてやる………』
小鷹「………ほどほどにな」
夜空『まったく………幸村なんてもっと心配していたんだからな』
小鳩「ホントに悪かったなぁ、幸村にも同じように伝えておいてくれ」
夜空『ああ、分かってる、ちょうどいま幸村のとこにいるからな、すぐに伝えておくよ』
小鳩「あんちゃーん」
小鷹「あ、いま行く………じゃあそろそろ」
夜空『ああ、くれぐれも本当の火事なんてよしてくれよ』
小鷹「ありがとな………それじゃあおやすみ」
夜空『うん、おやすみ』
ピッ
-リビング-
小鷹「じゃあ、予定よりも早く帰っちゃうのか?」
小鳩「うん、本当は明日の夕方までいようかと思ったんだけど、あんちゃん達がいないんじゃしょうがないし………明日の朝には出るよ」
小鷹「今日の騒ぎさえなければなぁ」
小鳩「やっぱり、1日かかるんでしょ?」
小鷹「消防署と警察署だからなぁ、もしかしたら明日の夜までかかると思うよ」
小鳩「はぁ………本当に馬鹿なんだから………」
小鷹「さすがに今回は大事だったなぁ」
小鳩「………」
小鷹「………どうした?」
小鳩「あのさ………」
小鷹「………ん?」
小鳩「あんちゃんって………星奈のどこが良いの?」
小鷹「えっ」
小鳩「そりゃあ容姿もスタイルも良いし、何でも出来るみたいだけど………でも………」
小鷹「………小鳩は星奈のこと嫌いか?」
小鳩「………少し」
小鷹「あはは、そっか」
小鳩「ま、真面目に話してるんだよ!?」
小鷹「いや、ふざけてるわけじゃないよ、それでも嫌いにならない小鳩が可愛くってさ」
小鳩「ぅぅ………」
小鷹「でもそうだな、どこが好きなんだろうなぁ」
小鳩「いい年してギャルゲーなんかやってるし………女の子相手に鼻の下伸ばしてるし………ボヤ騒ぎまで起こすし………」
小鷹「そうだなぁ、良いところ全然ないな」
小鳩「だったらなんで………」
小鷹「んー………」
小鳩「………」
小鷹「なんか………あいつのそういうところも含めて、嫌いになれないんだよな」
小鳩「えっ?」
小鷹「ゲームするのも、小鳩に絡むのも、馬鹿騒ぎ起こすのも………確かに迷惑だったりするけどな、あいつがすると嫌なことだけじゃないっていうか………うーん難しいなぁ………」
小鳩「………」
小鷹「多分、理屈とか抜きにしてあいつ全部が好きなんだな………嫌いなところも好きだし、好きなところも好きなんだ」
小鳩「………えへへ」
小鷹「わ、笑うなよ!」
小鳩「だって、あんちゃんまで馬鹿に見えたから、おかしくって」
小鷹「………なんだよそれ」
小鳩「でもね………私も馬鹿なんだなぁって………いま気づいた」
小鷹「………そっか」
小鳩「大人になっても、理屈なんか無しにいられるんだね」
小鷹「………そうだなぁ」
-玄関-
星奈「(ぅぅ………足痛いよぉ………)」ビリビリ
-リビング-
小鳩「あのね、これは言うつもりじゃなかったんだけど………本当は寂しくてこっちに来たんだ」
小鷹「え、そうだったのか?」
小鳩「うん………ずっとあんちゃんと2人で生活してたからさ………急にあんちゃんと離れて………辛くなって………」
小鷹「………」
小鳩「あんちゃん?」
小鷹「………本当はな、小鳩も一緒に3人で暮らすつもりだったんだ」
小鳩「えっ?」
小鷹「結婚したからって妹と暮らしちゃいけないなんてことないからな………3人で暮らせるなら、あのまま小鳩とも一緒に暮らそうと思ってたんだ」
小鳩「じゃ、じゃあどうして………」
小鷹「星奈に反対されたんだよ」
小鳩「えっ!?」
小鷹「ビックリだろ?俺もあいつの口からそんなこと聞くと思わなくってさ、あのときはかなり驚いたよ」
小鳩「ど、どうして………」
小鷹「『それだと小鳩ちゃんがあたしと同じになる』」
小鳩「…………え」
小鷹「自分と重なる部分が多いから、何かに長く依存してると、将来きっと自分と同じようになるからって………星奈がそう言ったんだ」
小鳩「星奈が………」
小鷹「スゴイよなぁあいつ………1番小鳩にべったりなのに………1番お前のために考えてくれてたんだ」
小鳩「そうだったんだ………」
小鷹「小鳩には悪いと思ったんだけどな………星奈の話を聞いたら………俺もそうするべきだと思ったんだ………でも、ごめんな、やっぱり寂しかったよな………」
小鳩「ううん………私………てっきり2人の邪魔だからって思って………恥ずかしいなぁ………」
小鷹「………今からでも3人で住んでみるか?」
小鳩「え………それは………」
小鷹「俺は別にいいんだぞ?星奈にも話してみるし」
小鳩「………」
小鷹「………小鳩?」
小鳩「………やっぱりいい………せっかく星奈が私のために言ってくれたんだし………私もそれに応えてみたい」
小鷹「………そっか」
小鳩「でも………星奈のことちょっと見直しちゃった」
小鷹「そういうところも、好きになれるだろ?」
小鳩「抱きついてくるのは嫌なんだけどなぁ」
小鷹「ははは」
-翌朝-
チュンチュン、チュンチュン
小鳩「ふわぁあ」ムニャムニャ
テクテクテク
小鳩「あっ」
星奈「はぁ………はぁ………ぅぅ………」ビリビリ
小鳩「(そういえば徹夜で正座してたんだっけ………)」
星奈「も、もう朝なのに………なんで小鷹来ないのよぉ………ぅぅ………」ビリビリ
小鳩「………」
星奈「こ、小鷹………もういいでしょ………助けてよぉ……_」ビリビリ
小鳩「………あんちゃんが起きるまでは駄目です」
星奈「え?………あ!小鳩ちゃん!」ダッ
小鳩「あっ」
ダッタッタッタッタッタッタ
星奈「小鳩ちゃぁぁぁぁぁ………うぐぇ!」ドテッ
小鳩「………」
星奈「な、なにこれ!やばい!足が超やばいんですけど!あ、あたしの足が!」ガクガク
小鳩「………夜通しで正座してたんですから、しばらく歩けませんよ」
星奈「そ、そんな!小鳩ちゃんが目の前にいるっていうのに!ふんぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」
小鳩「………」
星奈「このぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」ガクガク
小鳩「………」
星奈「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」ガクガク
小鳩「………はぁ」
スゥ
星奈「えっ?」
小鳩「………立てますか?」
星奈「あ………うん………」
小鳩「ソファーまで運びますね」ヨイショ
星奈「あ、ありがとう………」
-リビング-
ヨイショ、ヨイショ
ドサッ
小鳩「ふぅ………水でも飲みますか?」
星奈「え?………あ………うん」
小鳩「ちょっと待っててください」
星奈「………」
テクテクテク
小鳩「はい、どうぞ」
星奈「………」ジー
小鳩「な、なんですか?」
星奈「………えへへ」
小鳩「………?」
ガシッ
小鳩「うわぁあ!」
星奈「もぉ!小鳩ちゃん!ホントに可愛いんだからぁ!」ナデナデ
小鳩「ちょ、ちょっと!やめてよぉ!」
星奈「そらそらー!」ガシガシ
小鳩「ちょ、ちょっとー!」
星奈「うりうりー!」ウリウリ
小鳩「あははは!くすぐったい!」
星奈「ほれほれー!」コチョコチョ
小鳩「んもー!やったなぁ!」バッ
星奈「きゃあ!」
小鳩「お返しだぁ!」コチョコチョ
星奈「あははははは!ギブ!ギブー!」
キャッキャ、キャッキャ
アハハハ、ウフフフ
小鷹「(………な、何やってんだあいつら)」
-駅-
アナウンス『下り方面の改札は1階の西3番乗り場から………』
小鳩「じゃあもう行くね、2人ともありがとう」
小鷹「ああ、気をつけてな、理科とマリアにもよろしく言っといてくれ」
小鳩「うん」
星奈「小鳩ちゃん、寂しくなったらいつでも来ていいんだからね」
小鳩「うん、ありがとう、また来るから」
小鷹「でも小鳩だってもう大人だからな、次来るときは婿付きかもしれないなぁ」
星奈「そ、そんな………!」
小鳩「あんちゃん、変なこと言わないでよ」
星奈「そ、そうよ!小鳩ちゃんはあたしのなんだから!」
小鷹「えー、でもいないのか?気になる人とか」
小鳩「そ、それは………その………」モジモジ
小鷹「ん?」
星奈「え?」
小鳩「………一応いるけど」
星奈「えええええええええ!?」
小鷹「ははは、じゃあ今度連れてこいよ、そんときはちゃんと迎えに行ってやるから」
星奈「………う、嘘でしょ!?小鳩ちゃん!?」
小鳩「もぉ!いたっていいじゃん!」
星奈「そんな………ぅぅ………ゔわぁぁぁぁぁぁん!あたしの小鳩ちゃんがぁぁぁぁぁぁ!」
小鷹「頑張れな、小鳩」
小鳩「うん」
星奈「ゔわぁぁぁぁぁぁん!そんなぁぁぁぁぁぁ!」
アナウンス『2番乗り場の上り電車は間もなく………』
小鳩「あ、もう電車来ちゃう!ごめん!もう行くね!」
小鷹「ああ、気をつけてな」
小鳩「また来るから!2人とも元気でねー!」タッタッタ
星奈「ま、待って!小鳩ちゃん!」ダッ
ピーッピーッ、ピーッピーッ
駅員『こ、こらー!そこぉ!改札越えるなー!』
小鷹「お、おい!よせ!」ガシッ
星奈「ゔわぁぁぁぁぁぁん!」ジタバタ
駅員『やめんかこらぁ!』
小鷹「せ、星奈!」
星奈「小鳩ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
-ホーム-
アナウンス『2番線に電車がまいります、白線の内側まで………』
小鳩「………ふぅ」
ガタンゴトン、ガタンゴトン
パァー
アナウンス『電車がまいります、ご注意ください』
小鳩「(またいつか………ここに戻ってくる………だからそれまで………)」
小鳩「………行ってきます」
-後日談-
ペラッ、ペラッ
理科「こ、これどう考えても理科たちのことですよね………ぅぅ………なんだか恥ずかしいなぁ………」
小鳩「でも面白いですよ?けっこう評判になってるらしいし………あ、この絵とか幸村さんのことですよね、上手いなぁ………自分で描いたのかな」
理科「挿絵はおそらく別の人にやってもらったんでしょうね、あの人、絵心は皆無ですから」
小鳩「………聞かれたら後が怖いですよ?」
理科「大丈夫ですよ、ここに夜空先輩が来るわけないんですから、あははは」
ポン
理科「ひっ!」ビクッ
マリア「ごめんごめん、寝坊しちゃって」
理科「な、なんだ、マリアちゃんか………もう………びっくりさせないでくださいよ………」
小鳩「ちょっとー、遅いよマリア」
マリア「いやー、昨日飲み過ぎちゃってさぁ、あははは」
理科「まったく………プライベートくらい時間を守れないんですか、社会人失格ですよ?」
マリア「いいのかなぁそんなこと言って?今の話、夜空にちくっちゃおっかなー」
理科「何言ってんですか………そんなことしたらマリアちゃんクビですからね」
マリア「な、なんだよそれぇ!社長だからってずるいぞ!」
理科「社長は何したっていいんです、特にマリアちゃんに関しては」
マリア「ぅぅ………いつか理科の会社を乗っ取ってやるぅ………」
小鳩「それよりマリア、ちゃんと持ってきた?」
マリア「え………なに?」
理科「忘れたんですか?今日は夜空先輩の本を3人で読もうって、この前言ったじゃないですか」
マリア「え、夜空の本もう出来たのか!?」
理科「………やっぱり忘れてたんですね」
小鳩「ちゃんと教えたはずなんだけどなぁ………」
マリア「夜空の本かぁー………どんなタイトル?」
理科「えーと、確か………ほら、これです」バッ
マリア「なんだこれ?ホントに夜空が書いたのか?馬鹿っぽいタイトルだなぁ」
理科「あーあ、いまの夜空先輩にちくっちゃおー」
マリア「え………あぁ!」
理科「マリアちゃん、迂闊すぎです」
マリア「ぅぅ………ごめんなさい………」
小鳩「馬鹿だなぁ………」ボソッ
マリア「あ!いま小鳩も馬鹿って言ったぁー!」
小鳩「え………ち、違うよ!今のはマリアに言ったんだよ!」
理科「命知らずが多いですねぇ」ニヤニヤ
小鳩「理科さん!乗らないでください!」
マリア「あははは!夜空に言ってやるからなぁ!」
小鳩「んもぉ!そんときはマリアだって同じなんだからね!」
マリア「え?あ、そっか!しまったぁ!」
小鳩「もぉ!馬鹿!」
理科「2人とも静かにしてくださいよ、周りの人に迷惑です」
マリア「なら言い出しっぺは理科だからな!3人一緒に道ずれだ!」
小鳩「そうですよ!理科さん!」
理科「え………えぇ!?」
マリア「よぉし!そうとなったらさっそく夜空に電話だぁ!」
小鳩「ちょ!そんなんしなくていいっちゅうに!」
理科「マリアちゃん!調子に乗りすぎです!」
マリア「あははは!」ピッポッパ
小鳩「こらぁ!電話するなぁ!」
理科「小鳩ちゃん!捕まえてください!」
マリア「あはははははは!」スタタター
小鳩「マリア!待てぇ!」ダッ
理科「逃がしませんよ!」ダッ
ドタバタ、ワイワイ
ヒュー
ペラペラペラペラ………パタン
『僕は友達が少ない』
-おしまい-
最後まで見てくれてありがとうございます
今回の話は小鷹たち隣人部の活動から10年+10ヶ月後の未来を想像して書いたのものです
>>1に貼った前作からの続きなのでもし興味があったらそちらも覗いてみてください、10ヶ月前の小鷹たちに会えます
それと、欲を言えば感想があるととても嬉しいです
賛否両論でかまいません
思ったこと、感じたことを伝えてもらえれば書き手としてそれ以上の喜びはありません
では、またどこかで
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