まどか「ほむらちゃんが一人でたき火してる……?」(403)

最近寒すぎ

ピュゥ…

ほむら「ささ………さぶっ!」ブルッ

冷たく曇った空の下、ほむらが一人震えていた。

ほむら「………ふぁ……あ………っくしゅ!」ズズッ

ほむら「うう……。は、はやく暖まりたいわね……」ブルブル

辺りは紅葉の盛りも過ぎた木に囲まれ、冷たい風が吹いている。
コートの中にしみこんでくる寒さに、このまま棒立ちで耐えているのは難しそうだ。

ほむら (……うん。はじめちゃいましょう)

土と石がむき出しの地面にしゃがみ込む。

ほむら「えっと……。最初は、細い枝で火を付けるのよね……」

隣に山と積まれた、先ほど自分で拾ってきた枯れ枝を品定めする。

ほむら (……この枝は良さそうね) ポキッ

大振りな枝も、手で折っては細く分かれた小枝だけを集めていく。

ほむら (あ、まず着火用の種を用意しないといけないのよね……)

ほむら「えっと……。枯れ葉を真ん中に置いて……」

タイヤ跡のような特徴的な形をした、スギの枯れ葉を重ねて置く。

ほむら (こういうのが燃やしやすいって聞いて拾ったけれど……。本当かしら?)

ほむら「あとは木を上にのせて……」イソイソ

枯れ葉の上に、それを支えのようにして細枝を立てかける。

ほむら (空気が入りやすいように、あんまりみっちり詰めない方がいいんだったわよね……?)

ほむら (………)

ほむら「……これでいいのかしら?」

そうして、静かに焚き火の開始準備が完了する。
小さく可愛らしい円錐は、適当に組んだ割にはなかなか様になっている。

ほむら「そうだ、チャッカマン出さないと……」ザッ ザッ…

立ち上がり、荷物に駆け寄って自分の鞄を漁る。
時間がないわけでもないのに、寒さになぜか急かされているように感じる。

ほむら「あれ?」

ゴソゴソ…

ほむら「あ、あったわ。忘れたかと思った……」

カチッ ボボッ…

ほむら (どうかしら……)

組んだ細枝の間から、ライターの先端を差し込んで枯れ葉に火をともす。

ボワッ パチチッ…

ほむら「あっ、ついた」

炙られてすぐに燃え始める。

ほむら (本当に燃えやすいのね……。先人の知恵って偉大)

ほむら (待ってたら燃えてくれる……?)

そのまま燃え広がる炎を、期待を込めて見つめてみたが…

パチ… チチッ… シュン……

ほむら「あ、あれっ? 消えちゃった……」

枝に火をつけることなく、スギの葉は黒い燃えがらを残して沈黙した。

ほむら (風があるからかしら……。風上に座り直して……) ノソノソ

カチッ ボボッ…

ほむら (今度こそ……!)

それから3度4度と繰り返し…

ほむら「くっ……!」

相変わらずうまく火を付けることが出来ない。

大きさが悪いのかと、もうちょっと小枝を大きめに組んでみたり、
火種が少ないのかと枯れ葉を増やしてみるものの、なぜだかすぐに消えてしまう。

ほむら (繰り返す。私は何度でも繰り返す……。火が付くまで、決して諦めない) カチッ

実際の心はそろそろ諦め気味になりつつも、もういちど直した組み木の中にライターを差し込むと…

パチッ… ボワワワッ!

ほむら「きゃあっ!?」ドテッ

急に大きな炎があがり、驚いて尻餅をつく。

ほむら「び、びっくりしたわ……」ドキドキ

ほむら (拾ってきた枯れ葉に、何かヘンな物が混じってたのかしら……?)

パチチッ パチッ…

しかし怪我の功名と言うべきか、その大きな炎のおかげで火が安定してきたようだ。

ほむら「これは……枝の方も燃え始めてる……? やったっ!」

片手が、つい小さなガッツポーズをしてしまう。

ほむら「はぁ……。あったかい………」

まだ小さくもゆらゆらと揺れる炎が、露出した顔や手を暖める。
それが血流に乗って身体を巡り、じわじわと内側も暖めてくれる。

ほむら「っと、あまりぼんやりしてたらまた消えちゃうわね……」

火は最初のスタートを切ったばかりだ。
放って置いたらすぐ消えてしまう。

ほむら (まだ小さめの枝じゃないとダメよね……) ガサッ

小振りな枝の残りを、 火の上にのせていく。と、

ほむら「あつっ!」

思った以上の熱さに手が引ける。

ほむら「そろそろ軍手もはめないと駄目かしら……」ゴソゴソ

上着のポケットから取り出して、少し乾燥しているが綺麗な白い指先を通す。
化繊よりは、ちょっとだけ値の張る綿軍手。

ほむら「これでよし。もうちょっと木を増やして……」ガササッ

パチチッ… チッ…

しばらく火の相手を楽しんでいると、

「あれ? もう燃やし始めてんのか」ザッ ザッ…

枯れ葉を踏みならしながら、もう一人の少女が顔を出した。
すらりと細い足を露出し、見ているこちらが寒くなりそうな恰好だ。

ほむら「あら、杏子。お疲れ様」

杏子「……よいしょっと」ドサッ

ほむらの積んだ枯れ枝の隣に、二回りばかり大きな枯れ枝の束を置く。

ほむら「ずいぶん沢山拾ってきたわね……」

杏子「まーな。結構、燃やしてると足りなくなるもんだよ?」

ほむら「そうなの……? まあ、多くて困る物ではないと思うけれど」

杏子「そうそう。おー、あったけぇ……!」

ほむらの隣にかがんで、無防備な笑顔で手を火に向ける。

ほむら「……この寒さなのに、よくそんな格好で歩き回れたわね」

杏子「あん? もう慣れてっからな。寒いっちゃ寒いけど」

ほむら「ふふ、小学校でクラスに一人はいる男子みたい」

杏子「ほっとけ!」

パチッ…

杏子「しかし、よく点火できたなー。結構難しいモンだと思うが」

ほむら「ええ、苦労したわ。5回目ぐらいでようやく……。なかなか枝に燃え移ってくれなくて」

杏子「あー、それ枝が湿ってたんじゃねーか……? 昨日、天気悪かったって話じゃ?」

ほむら「そういうことなの……? まぁ、ちゃんと燃え始めたからいいのよ」

杏子「そーだな。 新聞紙なんかも持ってきてたけど、要らなかったみたいだな」

ほむら「……準備が良いのね」

杏子「え、そりゃあ。やったことないって言われたら、あたしが頑張るしかないじゃんか。いろいろ持ってきたぞ」

ほむら「なんだか『嫌々だけどやってやるよ!』って感じだったじゃない」

杏子「いやまー最初は不安だったからな……。でも思い直すと、
   普段偉そうなあんたらの鼻をあかす機会としちゃー悪くないと思ってな。へへ」

ほむら「……ふうん。それで……思いの外はしゃいでいた、と?」

杏子「う、うるせーよ……。ほら火を見てろ火を!」

ほむら「ふふふ」

杏子「そうそう、こんな懐かしいモンも拾ってきたぞ」ガサゴソ…

杏子「ほら」ヒョイ

枯れ枝の山を漁り、これまた特徴的な、ヘアピンのような形をした枯れ葉を突き出す。

ほむら「……? 何それ?」

杏子「え? マツの枯れ葉。これもよく燃えるんだけど……あら? 見たこと無い?」

ほむら「ええ、記憶にないわ……」

杏子「あれ、そうか……。これをこうしてだな……」

二つの葉を互いに噛み合うよう、折れ目で引っかける。

杏子「んで両方を引っ張って、先に切れたほうが負けーって遊び。知らねーか?」

ほむら「全く」

杏子「うーむ……。日本人なら誰でもやってると思ってた……」

ほむら「どちらが切れるかなんて運次第じゃない。面白いの?」

杏子「ばっか、どの葉っぱが強そうかとか、どうやって引っ張ると強いかとか考えるのがいいんだろ」

ほむら「そういうものかしら……」

杏子「さて、あたしも手伝わなくっちゃな」ザッ

立ち上がると、

杏子「………このへんでいいか」ガサガサ…

なにやら集めた枝を、火の周りを囲むように並べ始める。

ほむら「……? 何をしているの?」

杏子「干してんだよ。こうやって火の近くに置いとくと、湿った木も乾いて燃やしやすくなるからな」ガサガサ…

ほむら「あ、ああ。なるほど……。散らかして遊んでいるのかと思ってビックリした」

杏子「あたしに対するその酷い認識、なんとかなんねーのかな……」

ほむら「今日の働き次第で変わるかも知れないわね」

杏子「いい方向に変わることを祈っとくよ」

ほむら「近くに並べればいいのよね? 私もやる」ザッ

杏子「ああ、ほむらはじゃあ、一応買ってきた薪の束あるだろ。あれほどいて、細く割っといてくれよ」

ほむら「え? 枝があるのに?」

杏子「買ってきたのは濡れて無いだろ? 先に乾いてる方使うんだよ。
   そのほうが、煙が少なくていい火になるからさ」

ほむら「へぇ、そうなの……。わかったわ」

ほむら (よし……)

束を留めるタガを外し、一本の太めの薪を地面に立てて対峙する。
右手には、おろしたての丈夫なナタを強く握っている。

『せっかくなら丈夫でデカいやつにしようぜ、魔獣狩りにも使えるぞ』

『何そのスプラッタな魔法少女は……。遠慮しておくわ』

『それを言うなら、剣だろうが矢だろうがスプラッタには違いないと思うけどなー』

『世間的なイメージの問題よ……』

そんな会話をしながら近所のホームセンターで仕入れた、なかなか上等な一品。
それを両手で握り直し、大きく頭の上に振りかぶり、

杏子「え?」

ほむら (一気に殺る!)

思いっきり振り下ろす。

ほむら「てやっ!」ブンッ

スカッ ドスッ!

薪は微動だにすることなく、ナタは無残に地面へと突き刺さった。

ほむら「………」

杏子「おい……。冗談だよな………?」

ほむら「つ、次は外さないから……!」

杏子「待て待て、そーじゃねーって、頼むから落ち着け!」ガシッ

ほむらの両手を掴んで止める。

ほむら「え?」

杏子「それは斧じゃねーっての。見ちゃらんねー……。ほらちょっと貸してみな」

ほむら「あ、うん……。はい」ヒョイ

杏子「よし。まずはこーやって、刃を当てて……」トントン…

片手で薪を持ち、端にナタの刃を当てて薪ごと持ち上げ、軽く叩く。
すると、少しずつ刃が薪の中に食い込んでいった。

杏子「こんなもんか。ここまでやったら、くっついた薪と一緒にナタを振り上げて……」ブンッ

杏子「そらっ!」バキッ!

強く振り下ろすと、ナタの重みで一気に薪は二つへと割れた。

杏子「こうやるんだよ。分かったかい?」

ほむら「………」

ぽーっと、杏子の顔を見つめるほむら。

杏子「……どうした? 間抜けな顔してるぞ」

ほむら「間抜けとは失礼ね」

杏子「だって、普段そんな顔しないだろ」

ほむら「………そうね。早速鼻をあかされた感じで腹立たしいのが半分」

杏子「おい」

ほむら「正直感心して、見直してしまったのが半分。どんな顔をすればいいか分からないのよ」

杏子「……なんっか、その………。素直じゃねえよなぁ……」

ほむら「褒めてるわよ?」

杏子「へいへい、ありがとうございまーす」

ほむら「それにしても……」

ほむら「どこで覚えたのよ、そんなアウトドアな知識。私の家に来る前だって、野宿してたわけじゃないでしょう」

杏子「まあ、ホテルのある街中ならな。ただ、魔獣狩りのために遠征とかしてたからなー」

ほむら「遠征?」

トントン… バキャッ!

薪を細くしながら続ける。

杏子「魔獣の発生って、何か安定しないじゃん? 多いときはうんざりするぐらい湧くのに、
   ここ最近みたいに全然居ない時期もあるしさ」

ほむら「そういえば、一週間ほどご無沙汰してるわね……」

杏子「そんであまりにも暇だなーって時には、ちょっと遠出して狩ってたんだよ。昔はね」

ほむら「え、でも……それって、他の魔法少女と縄張り争いになるでしょう?」

杏子「普通の街に行けばそーなるな。だからあたしが行ったのは、人里離れた山奥とか、
   魔法少女の居なさそうなド田舎とか、そういう場所だよ」

ほむら「……そんなところに居るの? 魔獣が」

杏子「あたしも期待してなかったよ。気晴らしにちょっと出かけるかーって程度で」

杏子「そしたらさー、意外と居るんだよこれが。誰も倒さねーぶん、気性の荒いのがたくさんな。
   人が少ないから、一度倒すとそう次は湧かないみたいだったけど」

ほむら「へぇ……。結構危ないコトしていたのね」

杏子「最初はまー、『そういや泊まる場所ねーじゃねーか!』って寝袋持って行ったぐらいだったが……」

杏子「ある時、寒いし獲物も居ないからって早めに寝て、夜中に起きたら……目の前でおっさんが焚き火してたんだ」

ほむら「それはつまり、いわゆる一つの不審者のこと?」

杏子「ちげーよバカ。……あー、でも最初は不審者扱いしたな。突然しらねー奴が目の前に居たからな」

カランッ… パチチッ…

割った薪を火に加えていく。

杏子「誰だよって槍を向けても落ち着いてるもんで、とりあえず話を聞いてみたら、
   近所の集落に住んでるおっさんだったらしくてな」

ほむら「へぇ、貴女も人の話を聞くことがあるのね……」

杏子「森を歩いてたらあたしが一人で寝てたから、心配で見ててくれたんだってさ」

ほむら「……悪い人では無さそうね」

杏子「ああ。何か、不思議と安心感ある人だった。口数が少なくて、でも堂々としていて……。
   あとは立派なヒゲのせいかな」

ほむら「ふうん……」カランッ…

杏子「……ま、そんで成り行きで、おっさんの家にお邪魔させてもらって、メシ食わせてもらって」

杏子「詳しく話したわけじゃねーけど、何か訳ありなのは分かってくれたのかね。
   いろいろ教えてもらったんだよ、その人にさ」

ほむら「そう……。そんな知り合いが居たのね……」

杏子「今は、もう会うこともねーけどな」トントン…

杏子「だからま、今日は頼ってくれていーんだぜ? この杏子様を」ニッ

キメとばかりに、立てた親指で自分を示して笑いかけるが、

ほむら「……そうね。せいぜいコキ使わせて貰うわ」

相変わらずつれない返事。

杏子「……はぁ。もうちょい優しさが欲しいなぁ………」

ほむら「今日は優しい方よ?」

杏子「そうかぁ……?」

パキチチッ…!

威勢良く薪がはじける音がする。

杏子「……うん、そろそろ太めの薪も入れて良さそうだな」ポイッ

ほむら「近くにいると、熱すぎるくらいね……。でもあったかくて、きもちいい」

杏子「不思議なもんだよな、夏は凍えるぐらいの冷房が欲しくなるし、冬は汗かくぐらいの暖房が欲しくなるし」

ほむら「無い物ねだり?」

杏子「かなぁ」

ズル…

ほむら「……単純に、温度差があると心地よい、というものなのかも」

ズルズル…

杏子「ああ。ちょっと分かる」

ズルズル…

ほむら「………ねぇ」

杏子「ん?」

ほむら「そろそろツッコみなさいよ」

杏子「え、やっぱあたしの役目なの?」

ほむら「当たり前でしょう」

杏子「でもこれ、もう答えが分かっちゃっててアレというかその……」

ほむら「いいからほら」

杏子「分かったよ。えーっと、……うしろからなんかへんなおとがするなーっと」クルッ

棒読みで振り向く。その先に杏子が見たのは、

マミ「お……重い………」ズルズル…

得意のリボンで、自分の身長を大きく超える枯れ枝の束をまとめ、
辛そうな顔でそれを引きずるマミの姿だった。

マミ「ふぅ……! 疲れた……」ガララッ

リボンを解き、枝を山と積んで一息つく。

ほむら「遅いと思ったら……」

杏子「さすがにそれは多すぎねーか?」

マミ「え? いいじゃない、多くて困る物でも無いでしょう」

ほむら「貴女自身が運ぶのに困ってたじゃないのよ……」

マミ「だって、拾う度に次の枝が見つかるんだもの」

杏子「ゴミ拾いじゃねーんだから……」

マミ「な、なによう。二人してやけに辛辣ね。ねぎらってくれてもいいのに……」

杏子「あー、うん。ご苦労様とは言っておく」

ほむら「マミも張り切っているわね……。悪い事じゃないけれど」

マミ「暁美さんだって勉強もせず、家で熱心に下調べしていたでしょう」

ほむら「っ……! 何故それを」

マミ「あら、やっぱりそうなのね? うふふ、あったかーい……」ザッ

両手を火に向けて屈む。この姿勢ばかりは、3人とも変わらない。

マミ「ふふ、直火ができるキャンプ場があって良かったわよね。やっぱり風情があっていいと思う」

杏子「地面でやらないでどこで焚き火やんだって思ったけどな……。何だっけ、焚き火台だっけ」

ほむら「ええ……。たしか、こんな形の……」

手で逆ピラミッドを描いて示す。

ほむら「しかも高いのよね。安いのでも5,000円ぐらい、高いのだと1万円を超えて……」

マミ「ちょっと私たちのお財布には厳しい物があるわよね……。
   でも、一応1,000円ぐらいのもなかったかしら?」

ほむら「火を扱うのに、あんまり安すぎるのは不安なのよ。前に安物のコンロに炭入れてバーベキューしたら、
    1回使い終わる前に穴が空いたことあったわ」

杏子「そりゃヒデェな……」

ほむら「同じコトになったら、バーベキューより危ないもの。あまり安さばかり追求してもね」

マミ「そうねぇ……」

杏子「……けど、そもそも何で直火じゃダメなんだ? 台無くても焚き火は出来るだろ」

ほむら「それは……。たしか、地中の微生物や虫に影響が、とかいう話だったはず……」

マミ「微生物……?」

ほむら「地面で火を燃やすのだから、地中も相当に熱くなるでしょう。
    それで、地中の微生物や虫が死んでしまうのを避けるため……らしいわよ」

杏子「………? そんなに問題なのか?」

ほむら「要は、少しでも自然環境に影響を与えないように、ということのようね」

マミ「なるほどね……」

杏子「うーん……。地面で火を燃すなんて、大昔からどこでもやってんだろ? 何か納得いかねーな」

ほむら「まあ……そうね。環境への影響はあくまで建前で、散らかした燃えがらを片付けないような、
    マナーの悪い客が多いのが一番の理由、という意見も読んだわ」

杏子「………何かめんどくせー話だな」

マミ「携帯電話とペースメーカーの関係みたいね……?」

ほむら「ええ……」

マミ「でも、自然に出来るだけ影響を与えないようにって考え方自体は大切じゃないの?」

杏子「そーかもしれんが……ううん」

ほむら「そう深く考えなくても。 いずれにしろ、ここは直火が出来る場所なのだから」

杏子「そーだな……」

マミ「ええ」

パキッ… チチッ…

時折、火の粉が風に乗って飛んでいく。

乾いて良く燃える薪を追加してから、火はぐっと大きな物になっており、
着ている服の中にも直接熱線が届いているような程に暖かい。

杏子「……よしよし。そろそろ、お楽しみの準備を始める頃合いだな」

ほむら「いよいよね」

マミ「オッケー、まかせて!」

ほむら「あ、でも……。三人とも離れたらまずいわよね」

杏子「うん? 火ならあたしが見てるから、二人で行ってきなよ」

ほむら「そう? わかった」

マミ「じゃあ行ってくるわね」トトト…

杏子「おう、待ってるよ」

二人が洗い場の方へと姿を消す。

杏子「………ふぅ」

一人、立ち上る煙を目で追いかける。
空に消えていくその先は、雲の切れ目に少し青空が覗いていた。

――洗い場――

ほむら「いろんな物を持ってきたのね……」ガサッ…

食材の詰め込まれた大きなビニール袋を覗く。

マミ「うん、焼けそうな物は片っ端から……」

ほむら「食べきれる?」

マミ「分からないわね」

ほむら「………」

マミ「……そういうあなたの持ってきたそれ、全部サツマイモなのよね?」

もう一つの、同じぐらい大きく膨らんだビニール袋を指さす。

ほむら「ええ」

マミ「食べきれる?」

ほむら「多分、無理………」

マミ「……うん。お互い、量を調整した方が良さそうね……」

ほむら「そうね……」

ガササッ…

ジャバババ…

ほむら「冷たいぃ……!」

蛇口から流れ出る拷問のような水流に、思わず手が引ける。

マミ「そ、そのうち麻痺するから我慢なさい……」ジャババ…

隣で、果敢に野菜を洗い続けるマミ。

ほむら「やるわね……。うう、給湯器が欲しい……!」ジャバ…

我慢して、サツマイモを洗い始める。

マミ「いつもお湯で洗っているの?」

ほむら「当たり前じゃない、この寒い時期に水なんか使ったら死にかねない」

マミ「でも……。手が荒れない?」

ほむら「……? 冬は乾燥するから、仕方ないんじゃない?」

マミ「それもあるかもしれないけれど、お湯を使うと余計に酷くなるのよ。
   私は洗い物を水でするようになってから、全然荒れなくなったわ」

ほむら「そうなの? たまに、あかぎれたりするけれど……」

マミ「冷たいのが辛いなら、ぬるま湯ぐらいまで……。できるだけ温度を下げてみるのも効果があると思う」

ほむら「なるほど……。やってみようかしら……」

ほむら「ラスト!」ゴロンッ…

マミ「ふぅ、とりあえず洗い終わったわね……」

キュッ…

感覚の失われた手で蛇口を閉める。

ほむら「厳しい戦いだった……」

マミ「ふふ、お疲れ様。でもここからが本番よ?」

ほむら「うう……。今にもダッシュで火に逃げ帰りたい……」ブルブル

マミ「こらこら。えっと、お芋は……」ガサガサ…

足下の鞄から、アルミホイルとキッチンペーパーを取り出す。

マミ「はい、これ」ヒョイ

ほむら「えっと……? 包めばいいのかしら?」

マミ「水でよく濡らしたキッチンペーパーでお芋を包んで、その上からアルミホイルをしっかり巻くだけよ」

ほむら「また水なのね……。それだけでいいの?」

マミ「ええ。一応、破れちゃわないように、アルミホイルは何重かぐるぐる巻いた方がいいかも」

ほむら「わかった」ガサガサ…

ストン… ストン…

ほむらがアルミホイルの塊を積み上げていく横で、マミは包丁を滑らせている。

ほむら「それは?」

マミ「うん? こっちはホイル焼きで、こっちはそのまま串で焼こうかなって」

二つのボウルを指さしながら答える。

ほむら「おいしそうね……」

マミ「えへへ、私もちょっと待ちきれない、かな」ストン…

ほむら「そっちのじゃがいもなんかはホイルに入れるのね?」

マミ「ええ、焼き芋とおんなじ」

ほむら「味付けとかは?」

マミ「あとでバターとか塩とか、お好み次第よ」

ほむら「いいわね。……なら、包むのを手伝うわ」

マミ「あら、ありがとう。包み終わったら、こっちのボウルに入れておいてもらえる?」

ほむら「了解」

ガサガサ…

――しばらく後――

杏子「………」ガサッ…

近くで見繕ってきた石に座り、火ばさみでいじりながら、相変わらずぼーっと火を眺める。

杏子 (うん。確かに、燃やすって、儀式的な感じあるよな………)

浮かんでは消えていく考え事を、適当に相手していると、

キュルル…

意志とは関係無く、自分の中から音が聞こえてきた。

杏子「う。……腹、減ったな………」

杏子「まだかな、あいつら。そろそろ来てもいーんだけど……」スリスリ

可愛らしい音を立てたお腹をさすりながら呟くと、

ザッ… ザッ…

杏子「おっ! 来たか!」クルッ

後ろから足音が響き、大慌てで振り向く。

マミ「あら、待ちくたびれた? お待たせ。準備できたわよ」

銀色に包まれた幸せの種を山と抱え、ようやくマミとほむらが凱旋した。

杏子「おお……。いっぱいあるな」ガサッ…

大小様々、しかし一様に同じ銀色で包まれたそれは、どれが何なのかさっぱり分からない。

杏子「……これ、中身は?」

ほむら「私の袋の方は全部サツマイモだけれど……」

マミ「私の袋は、開けてからのお楽しみという所ね」

杏子「なんだそりゃ。闇鍋みたいだな」

マミ「失礼ね、おいしいものしか入ってないわよ」

ほむら「お望みなら、タバスコたっぷりのハズレ玉とか……。用意してあげても良いわよ」

杏子「いや、遠慮しとく……」

マミ「あれ? いいな、そのイス。どうしたの?」

杏子「ん? ああ。すぐそこに落ちてたヤツだよ。探せばまだあるだろ」

マミ「そっか。暁美さん、私たちも探してきましょう?」

ほむら「奪い取るという選択肢は……」

杏子「ねぇよ」

ほむら「チッ」スタスタ…

ズズッ… ドスン

ほむら「ふぅ……」

マミ「ただいま」

火を囲み、3人分の座席が完成する。

杏子「おかえり。結構良さそうなの見つけてきたな」

マミ「ええ。他の人が使っていったのかもね、ちょっとコゲ跡が……」

ほむら「まあ、座る分には問題ないでしょう」

マミ「そうね」

杏子「んじゃ、とりあえずは焼き芋かなー」ガサガサッ…

ほむら「焼き芋から? 最後のシメって感じがするのだけれど」

マミ「時間がかかるのよ」

杏子「そうそう。低めの温度でじーっくりやると、甘くて美味くなるんだよ」

ほむら「へぇ……」

杏子「だから、そうだな。下の方、ちょっと地面を掘るぐらいに置いて、
   灰をかぶせて埋めといてくれ」

ほむら「わかった」

マミ「うん……。いいかな」パンパンッ

軍手を叩き、付いた灰と土を払う。
サツマイモの包みはみんな、灰の中へと姿を消してしまった。

ほむら「これだけでいいの?」

杏子「ああ。待ってりゃ美味しく焼けるだろうよ」

マミ「楽しみ……♪」

杏子「あとのアルミホイルはまぁ、適当に投げ込んでおけばいいよ。結構おき火も出来てるし」

マミ「おき火?」

杏子「ん、この炭みたいに、炎を上げずに赤く燃えてるのがおき火。
   見た目のわりに温度が高くて、安定してて、直接焼いたりして調理するにはこっちのがいいんだよ」

マミ「へぇ……。炭火焼きみたいなものね」

杏子「そうだな」

ほむら「じゃあ、本当に適当に投げ込むわよ?」

杏子「いいよ」

ポイッ ドササッ…

火の中にまんべんなく、ホイルの包みが投げ込まれる。

ほむら「あとは待つだけ?」

杏子「ああ」

ほむら「何か……。すごい、手抜きをしているような感覚があるわね」

杏子「そんなもんだよ。シンプルで美味けりゃ、言うことねーだろ」

ほむら「美味しいかどうかは、まだわからないんじゃない?」

杏子「大丈夫大丈夫。それより、待ってる間は串で何か焼こうぜ」スッ

足下から、待ち構えていた3本の鉄串を取り出す。

マミ「そうね。それ用に切ったのもこっちに……」ガサ…

ラップをかぶせたボウルを出すが、

杏子「あー、それもいいけどさ。やっぱ最初は……コレだろ」ガサッ

マミを制し、ポケットから袋入りのお菓子を取り出す。

マミ「あら。そんな準備もしていたのね。ふふふ、それはどちらかというと、最後のデザートじゃないの?」

杏子「いやでもほら! すぐ焼けるしさ……!」

マミ「分かってるわよ、食べたいんでしょう。私にも串をちょうだい?」

ほむら「え……? それ、マシュマロよね?」

杏子「そうだよ。焼きマシュマロ、焚き火したらやんなきゃ損だろ!」

ほむら「……?」

マミ「もしかして知らない?」

杏子「あり……?」

ほむら「……悪かったわね。知らないわよ………」

頬を膨らませてそっぽを向く。

杏子「いやいや、ンなことで怒んなって。ほら、ほむらも串」

ほむら「………」

むくれたままそれを黙って受け取る。

杏子「そしたらこのマシュマロをさ……」ピリリ…

マミ「粒が大きいわねー。それ、外国のもの?」

杏子「じゃねーかな? 袋に英語書いてあるし。食べ応え会っていいんだよ」

杏子「よし、開いた。あとは串に刺して」プスッ

握られたまま待っている、ほむらの串に刺してやる。

杏子「それを火で炙るだけだよ。うまいから、やってみな?」

ほむら「本当かしら……」スッ

口ではそう言いながら、内心期待して火の中に突っ込む。だが…

マミ「あ、ちょっと!」

ほむら「え?」ボワッ

警告は既に遅く。直接触れた炎がマシュマロに燃え移り、
すぐに真っ黒なコゲたカタマリになってしまった。

ほむら「………」プスプス…

悲しそうに黒コゲマシュマロを見つめる。

杏子「……悪かったって。ほら」ゴリッ… プスッ

自分の串でほむらの消し炭をこすり落とし、新しいマシュマロを刺してやる。

マミ「結構、コゲやすいのよね……」

杏子「ああ。炎からは離して、そーっとゆっくりあぶるといいよ。コゲないよう、ぐるぐる回しながらな」

ほむら「うん……」

今度は3人、ゆっくりと遠火で炙る。

ほむら (あ……。茶色っぽくなってきた………)

辺りに、甘く焦げるカラメルの香りが漂う。

ほむら「なんだか……ぷるぷるしてきてる?」

杏子「そうそう、そろそろ良いんじゃないか?」

ほむら「そう?」

杏子「中は熱いから、気をつけて食べなよ」

ほむら「わかった」

そっと、串を口元に持って行き、

サクッ…

一口囓る。

ほむら (………!)

ほむら「すごい……。外はカリッと焼かれてるけれど、中はとろっとろで……。
    口いっぱいに甘さが広がるわ……」

ほむら「ぜんぜんマシュマロっぽく無くなるのね……」

杏子「な? 美味いだろ!」

ほむら「ええ……。ふふ、貴女が好きそうなのも、良く分かったわ」

杏子「誰だって好きだろこれは。……ああ、甘い物苦手な奴もいるか?」

マミ「うふふ、私のも丁度よさそう。いただきまーす」

マミも自分の串を火から下ろし、大振りなマシュマロをかりりと囓る。

マミ「うーん、あまーい……!」

目をつむって、贅沢な甘さを堪能する。と、

ボトッ

マミ「あぢッ!?」

はいていたジーンズに、串の残りから熱々とろとろの弾丸が落下した。

杏子「おい……。マミもそれ、ちょい焼きすぎだな。やけどしてねーか?」

マミ「う、うん……。大丈夫だと思うけれど、これ……」ゴシゴシ

ジーンズにひっついたマシュマロを擦るが、

マミ「ごめんなさい、借り物なのに……。落ちないかも」

ほむら「別にかまわないわよ? 汚してもいい服装として貸したんだから」

マミ「そうだけれど……」

杏子「それ貸してたのか。マミ、そんなの履いてるの見掛けねーもんな」

マミ「ええ、あまり似合わないと思うし」

杏子「え? そうでもないだろ……?」

マミ「そうかしら?」

ほむら「……そうよ。安心なさい、貴女はどんな珍妙な服を着たって、
    その胸にくっついてるモノがある限りは……。誰も文句は言わないわよ」

マミ「ちょっと……。それ、結構傷つくのだけれど……」

ほむら「………」

二人とも、げんなりした顔で見つめ合う。

杏子「なに突然、どっちも得しない喧嘩してんだよ……。ほら、マミ、新しいマシュマロ」

マミ「あ、ありがとう」プスッ

杏子「ちなみに……」ゴソゴソ…

鞄から箱入りのクラッカーを取り出す。

杏子「クラッカーも用意してあるからな。挟んで食べてもうまいぞ」

マミ「完璧な布陣ね……」

ほむら「これが焼けたらやってみるわ。2枚もらえる?」

杏子「ああ、今開けるからちょっと待ってくれ」

ピリリッ ガサッ…

ほむら「ふぅ……。なかなか良かったわね、マシュマロ」

マミ「そろそろ他の串焼きも始めましょうか」

杏子「ぶっちゃけ、あたしはマシュマロ食えたら満足なんだけどな」

マミ「あら。この中身を見ても、同じセリフが言えるかしら……?」

改めて、ボウルの中身をご開帳。

ナス、ネギ、ミニトマトといった野菜もあれば、
ソーセージや厚みのある牛肉など、なかなか豪華な取りそろえだ。

杏子「おー、肉もあるのか。これは是非とも食べにゃーならんな……」

ほむら「一人で肉ばかり食べないでよ?」

杏子「分かってるって。あたしは野菜が嫌いなお子様ってわけじゃないんだ」

ほむら「そうね、貴女は好き嫌いは無さそうね」

杏子「ほむらはあんのか?」

ほむら「………納豆、ダメ、ゼッタイ」

杏子「あー。意外と普通だな。マミは何だっけ、セロリだっけ?」

マミ「………決して食用ではない、理科の実験用植物がどうかしたかしら?」

ほむら「まあ、苦手な人は多いわね……」

マミ「……あ。そうだ、忘れてた。先にお湯を沸かしたい」

杏子「お湯?」

マミ「紅茶淹れたいのよ。一式持ってきたわ」

杏子「ああ……。好きだなぁ、ホント」

ほむら「私も一杯欲しいわね」

杏子「あたしはコーラあるからいーけど……」

クーラーボックスから飲みさしのペットボトルを取り出し、軽く揺する。
そのフタをからからと外し、

杏子「ふぅ、うめぇ」

笑顔で一口喉を潤す。

杏子「……え? 何二人して見てんだ?」

ほむら「いえ……」

マミ「………紅茶を強制するつもりはないけれど。この寒いのに」

ほむら「それも、あれだけ甘い物食べた後にコーラって、何だか。焼き芋もそれで食べるの?」

杏子「当たり前だろ?」

マミ「………」

杏子「ま、あたしの飲み物はどうでもいいだろ。お湯湧かすんなら、やかん持ってきたのか?」

マミ「ええ。ちょっとまって、鞄に……」ゴソゴソ

マミ「はい、これ」

どこにでもある、沸くと笛の鳴るやかんを取り出す。

杏子「うーん、これ、多分ススだらけになるけど。大丈夫か?」

マミ「ええ、昔使っていたものだから。壊れても問題ないわよ」

ほむら「そういえば買い換えてたわね。あのなんだか容量も少ないし、持ち手も熱くなるし、
    もうどうしようもないのに値段だけは高いやかんに」

杏子「あー、あれか……」

マミ「か、カワイイからいいじゃないのよ!」

ほむら「まあお洒落ではあるけれど……」

杏子「これ、そのまま焚き火のヨコに置いといても結構温まるけど……」

ちらりと、マミの引きずってきた枯れ枝の山を見る。

杏子「丁度よさそうな枝もあるみたいだし」ガサッ

できるだけ太めで長く、丈夫そうな枝を見繕う。

杏子「即席でトライポッドでも作っちまうか? 雰囲気出るし」

ほむら「トライポッドって?」

杏子「要は三脚だよ、ほら、三角形に枝を組んで、上から吊すやつ」

マミ「なるほど、アレね」

杏子「そう、アレ」

ほむら「……どうやって?」

杏子「そんな難しいモンでもないよ。ちょっと待ってな……」

そう言うと、見繕った3本の枝を焚き火の上で合わせて、適当な位置をさぐる。

杏子「……うん。このへんかな?」シュンッ

大体の位置を決めると、槍を召還して…

グリリッ

枝の立つべき位置に、軽く穴を掘る。

杏子「あとは、えっと……」ゴソゴソ…

仕上げに、鞄からロープを取り出して、慣れた手つきで枝3本を組み合わせ、結んでしまう。
それを穴に合わせて広げて立てれば…

杏子「ほら、できた。まぁ、やかん吊すぐらいなら大丈夫だろ」

マミ「やるわね、佐倉さん……」

マミ「……あれ? でも、どこに吊すの?」

杏子「あー、忘れてた。えーっと、何か曲がった枝を……」ガササ…

再び枯れ枝の山を漁る。

杏子「お、これ良さそーだ。こいつを適当な大きさに切って」ザシュッ

また取り出した槍で、V字に曲がった枝を綺麗に裁断する。
それを針金で、トライポッドの頂点からぶら下げれば…

杏子「よっと。これでいいだろ、枝の曲がったところに引っかければ」

マミ「鮮やかなお手並み……」

ほむら「本当にしっかり働いてくれるわね……」

杏子「おーおー、もっと褒めてくれていいんだぜ」

マミ「思うに、あの槍が反則なのよね……。私たちの武器と違って、汎用性が高すぎる」ヒソヒソ

ほむら「そうね……。鉄串の代わりにしてマシュマロ焼いたりもできそうよね……」ボソボソ

杏子「……分かってはいたけどさ。つめてぇなーおい」

ほむら「ふふ。それじゃあ、やかんにお水を汲んでくるわね。ちょっと待ってて」トトト…

マミのやかんを手に立ち上がり、駆けていく。

マミ「あ、ありがとう! ゆっくりでいいわよ!」

コロン…

燃えかけの木がくずれて落ちる。

マミ「ふぅ。……良かった、わね」

杏子「ん?」

マミ「暁美さん。楽しそうで良かったわ」

杏子「ああ……。そうだな………」

並んで、静かに火を見つめる二人。

杏子「マミが今日の提案をした時は、ちょっと、どっちに転ぶか分かんなくて怖かったけどな」

マミ「やっぱり、そうかしら……?」

杏子「だって……なぁ。今はもうあれだけど、最初はあいつ、ホントに死にそうな顔してただろ」

マミ「ええ……。あの子の話を聞く限り、仕方ないとは思うけれど」

杏子「ああ。突然、だもんなぁ………」

マミ「………」

杏子「それを、さ。せっかく時間かけて落ち着いたのにさ、思い出させんのもなーって………」

マミ「それは……違うでしょう」

杏子「……?」

くるりと、杏子の方へと向き直る。

マミ「思い出させる……って。そもそも、忘れた訳じゃないでしょう?」

杏子「え? あー……、うん。まぁ……そうだろうな………」

マミ「あなたは、忘れたの?」

杏子「……まさか。忘れるはずがねーよ。覚えてる、いつまでだって」

マミ「うん。私だって、もちろん忘れていない。忘れては、いけないはず」

杏子「うん……そうだな」

杏子「………悪かったよ」

マミ「ううん。そんなに非難をしているつもりでもないの。ごめんなさい」

杏子「………」

また二人、火を見つめて並ぶ。
そのまましばらくの間、ただ黙って座り続けていた。

ほむら「おまたせ……って、どうかしたの、二人とも」

少し空気が変わっていることを感じて、怪訝な顔をする。

杏子「あ、いや……」

マミ「……何でもないわよ? おかえり、汲んできてくれてありがとう」

ほむら「私も紅茶、飲みたいもの。……ここにぶら下げればいいのよね?」

杏子「ああ」

ほむら (……大丈夫かしら?)

そっと、木で出来たフックに引っかける。
ぎしりと音を立てるが、さほどの不安感も無くやかんは火の上で宙づりになった。

ほむら「……丈夫ね。見た目以上に」

杏子「鍋だって吊そうと思えば吊せると思うぞ。今日は串だけど」

マミ「そうね。お湯が沸くまで、好きなのを焼いて食べましょう」

杏子「にひひ、やっぱ肉から行きたいよな。厚みがあって高級そうだよなー」

菜箸を使って、器用に自分の串を肉へと通していく。

マミ「そうよ? ステーキ用の和牛肉を、串で焼けるように切ったの。結構高かったんだから」

ほむら「私もお肉、頂こうかしら……」

ジジッ… ポタッ… ジュジュゥ…

串に刺された肉から汁が滴り、火の中で美味しそうな音を立てる。

杏子「んまそーな匂いだ……」スンスン

マミ「ちゃんと焼きなさいよ?」

杏子「わーってるって!」

ほむら「これ、味付けはどうするの?」

マミ「ああ、それなら……」ガタタッ…

クーラーボックスを開けて、中から調味料を取りだして並べる。

マミ「塩、コショウ、醤油……」トン トン トン

杏子「準備万端だな……」

マミ「あとポン酢とか、ナスに良いかなって田楽味噌なんかも作ってきたわよ」トン トン

ほむら「ポン酢! 良いわね。分かってるじゃないマミ」

杏子「やっぱ塩じゃねーか?」

ほむら「塩の万能性を否定はしないけれど、まだまだね……」

マミ「私は醤油にしよっかな……」

ほむら「どれどれ……?」ムグッ…

焼きたてのあつあつを一口囓る。

ほむら「あふふ……」ハフ…

マミ「うん! いいわ……。口に広がる醤油と肉汁の素朴な味……。たまんない……」モグモグ

杏子「ホントに高い肉だなこれ……。やーらけーわ」モグモグ

マミ「でしょう? たまにはいいわよね」

思い思いに感想を口にしながら、贅沢なステーキを頬張る。
吊されたやかんからは、いつの間にか湯気が立ち上っていた。

ほむら「次は……うん。ポン酢があるなら、ナスに行かないと失礼な気がする」

杏子「いやそこは味噌で行くべきだろ」

マミ「うーん……。トマト焼こうかな?」プスッ

ほむら「そんなものも入ってたわね。……焼くとどうなるんだろう、トマト」

杏子「あたしはソーセージを貰うよ」プスッ

ほむら「やっぱり肉ばかりじゃない……」

杏子「いやいや、次はナス行くってば」

ほむはふはふ

ピュイイイィィィィ…

そうして三人がただ串で焼くだけのごちそうを頂いていると、
火にかけていたやかんが沸いたことを告げた。

マミ「あ、沸いたわね!」

立ち上がり、待ちかねたとばかりにフックからやかんをひったくると、

マミ「うふふふふ……」トポポポ…

クーラーボックスを台にして、準備万端なティーポットに沸き立てを注ぐ。
ポットから立ち上る湯気に混じって、フルーティな茶葉の香りが広がっていく。

マミ「カップも暖めてと……」トポポ…

二人分のマグカップにも、同様にお湯を注ぐ。

マミ「うん、あとは待つだけ!」

杏子「ほんと、好きだよなぁ……。紅茶中毒じゃねえのか」

マミ「そんなこと無いわよ。毎日……そうね。8杯も飲んでないと思うし……」

ほむら「ギリギリ踏み外してません、って所ね……。カフェインは結構怖いわよ」

杏子「そういや、沸かさなくても魔法で出しても良かったんじゃねーのか?」

マミ「ダメよ、あれは飲むにはちょっと……」

ほむら「え? あれ、完全にただの飾りだったの?」

杏子「まさかおままごとセットで決めポーズしていたとは……」

マミ「違うわよ! 出せるようになるまで、それなりに苦労はしてるもの。飲めなくは無いけれど……」

ほむら「……美味しくない?」

マミ「なんだかね、安っぽいティーバッグみたいな味になるのよね……。
   本当に美味しい紅茶は手間もかかった高級品だから、仕方ないと思うけれどね」

杏子「そんなもんかねぇ……」

ほむら「まぁ……。分からなくはないわね。魔法を使っても、結局人が作ってる物だもの」

杏子「銃だって、確か自分で錬成したんだろ?」

マミ「工業製品的なものはそこまで難しくないのよ。本なんかで調べながら、半年ぐらいで出来たし」

杏子「そんなもんか」

ほむら「……紅茶は?」

マミ「たしか………。2年ぐらい? かかったと思う」

杏子「………マジで?」

ほむら「変なところで努力家ね……」

マミ「もういいかしら……」ハムッ

コゲ跡のついたミニトマトを口に入れる。

マミ「はふふ……。うん、甘さとか、味が濃くなってる……。おいひい」モグモグ

杏子「へぇ、焼くだけで変わるもんか……」パリッ!

音を立てながら、ソーセージの皮を食い破る。
同時にはじけて飛ぶ汁がまた、見ている者の食欲も誘うようだ。

杏子「うっめー! ……ん、これハーブか何か入ってる?」

マミ「レモングラス入りじゃなかったかしら。ちょっと変わり種よ、悪くないでしょう?」

杏子「ああ」モグモグ

ほむら「焼きナスも柔らかくていいわ……。おろしショウガが無いのが残念だけれど」モグモグ

マミ「なかなか渋いわね……」

杏子「そーいや、そろそろ投げ込んだホイル焼きのほうもいい頃合いじゃねーかな」モグモグ

マミ「あ、そうね。火ばさみで拾って、開けてみましょうか。紅茶も注いでおくわ……」トポポ…

ほむら「……えっと。どれにする? いっぱいあるけれど」

杏子「じゃ、あたしはこのデカいのを……」ガサッ

杏子「っちち! 冷まさないと火傷するな……」

三人、大小異なる包みを手にする。
ほむらは小さな、杏子は大きな、マミは中くらいの包み。

杏子「よし、開けるぞ……」

マミ「汁が出るかも知れないから、気をつけてね」

杏子「ああ」ガササ…

ススと灰が付いた、厳重な包みを開ける。
酸味を含んだ果実の甘い香りが、シナモンの香ばしさに混じって漂う中には…

杏子「おお、焼きリンゴか!」

赤い皮も色あせ、じゅくじゅくと蜜を滴らせた林檎の姿があった。

マミ「その通り。ふふ、あんまりちゃんと詰め物はしてないけれど、それでも美味しいはずよ」

杏子「……そっか、あんたらは包んでたから中身分かるんだよな」

ほむら「ものによってはね。一番大きいのは、どう考えてもリンゴ以外無いから……」

マミ「えっと……はい、これ」ヒョイ

フォークと、バターを取り出して杏子に渡す。

杏子「ん? バター?」

マミ「ええ。本当は中に詰めて焼くといいのだけれど、溶けて流れ出ちゃいそうだったから。好みで付けてみて」

杏子「どれどれ……」シャクッ…

一かけバターを乗せてとかし、かじりつくと…

杏子「……うん! うまいぞ!」モグモグ

満面の笑みでその味を肯定する。

杏子「へへへ、この濃厚な甘さ、滑らかな舌触り……! こいつはいいものだ」

ほむら「私は何だろう……」ガサッ

対照的に、かなり小さなアルミホイルを開く。中には…

ほむら「あら、しいたけじゃない」

杏子のむさぼる果実には及ばないものの、独特の豊かな香りをいっぱいに放つ椎茸が詰まっていた。

ほむら「っと、汁が零れちゃってるわね……。勿体ない」ズズッ…

旨味の詰まった液を、ホイルから直接すする。

ほむら「うん、いい味が出てる。こればっかりは、醤油かしら? ……マミの中身は?」

マミ「え? これは多分、じゃがいもよ」ガサガサ…

言いながら開けると、ほくほくと湯気を上げながらジャガイモが姿を見せる。

マミ「包んでるときから楽しみだったのよね、じゃがバター♪」

うあああああああああああああああああああああああああああ

杏子「なんだなんだ、そっちも美味そうじゃねーか」ハグハグ

りんごを囓りながら目線を送る。

マミ「心配しなくても、あなたの分だってあるわよ」

ほむら「そうね。あと1人や2人増えても問題ないぐらいの量があるもの」

事実、火の山に眠る銀包みは、まだまだ減っているようには見えない。

マミ「せっかくなら、キュゥべえも来れば良かったのにね」

ほむら「一応、誘いはしたのだけれど……」

杏子「用事でもあったのか?」

ほむら「いえ、いつもの調子よ。『焚き火? 君たちだってガスコンロぐらいは持っているだろう。
    どうしてわざわそんなことをする必要があるんだい? まったく人間てやつは――』」

杏子・マミ「「わけがわからないよ」」

いつものセリフをハモる二人。

ほむら「……ふふふ、そういうこと」

杏子「分かってねぇなぁ、本当に分かってねぇよ……。かわいそうなヤツだ」

たまらん

                  ∧ /| __
               __..:::{>゙´: : : : : : : `ヽ-.、
              _//: : : : : : : : : : : : : : : : ∧∧
             `フ./.: : : : : : ;i : : : : : : : : : : {: :} ; ‐-.、
             ,´: :i : : /!/|∨l: : :i!: : : : : : : : ;' : : : : : :`ゝ
.              i: :/: : :/γ¨ヽ !: : j|:/i: ; :i: : : :! : : : : : : : !
        ,  ゚ 0 ─  /: :i   (::ソ w/γ¨ヽ:!: : : | : : : : : : : |  / ̄ ̄`',
         ゚ ,,、,r-'⌒:  | ' ' ' ,    (::ソ |: j-、; : : : : : : |` ,! ハ ハ !
      。 ゚ r-'⌒`ー-'´ヾ\   ァ-、 ' ' ' ; /.ノ|/!:∧:ト、 j 。 l フ ム l
        ヾヽ、_,,,、-、/ミ,ヽヽ / ノ_,-...イ /:'`ヽ      ∠  ハ ッ j
          ー = ^~、 ̄/´ ̄`\、  〃ヾ ゚ \      ヽ フ   /
 jヽjvi、人ノl__     / / V          <`'''-ヽヾ  |       ` ̄ ̄
 )   ハ   7      / i{ ●       }ii'-、_,,ン ノ 。
 )   フ    て   /  八  、_,_, ● 八  - ニ
 7   ッ    (  __ヽ、__ 个 . _  __,-=-,___

ほむら「ん………」コクコク…

ほむら「ふぅ。お茶もいいわね……」

吐息を白い蒸気に変えながら呟く。

ほむら「こんなにゆるゆるするの、久々かも………」

マミ「ふふふ。……受験勉強、進んでる?」

ほむら「……やめて、その単語を聞かせないで」フルフル

露骨に嫌そうな顔で首を振る。

マミ「あらー? 私が去年苦しんでいたとき、散々弄ってくれたのはどこのどなただったかしら……」コクッ…

ほむら「反省してるわよ……。当事者になって、このプレッシャーがようやく分かったわ」

マミ「それは良かったわ。でもね、私も他人事になると、このからかってみたい気持ちが分かるようになったのよね♪」

ほむら「くっ……」

杏子「そんな悩むモンかねぇー、受験ってのは……」モグモグ

ほむら「限られた時間、迫り来る本番、いくら覚えても足りない気がする焦り……。貴女には一生分からないわよ」

マミ「あらあら。それはちょっと侮蔑が過ぎるわね。最近は佐倉さんも勉強しているのよ?」

ほむら「………何ですって?」

ほむら「佐倉杏子が勉強? まさか、そんな……。そんなことがあったら、因果律そのものに対する反逆よ。
    貴女は神にでもなるつもりなの?」ガクガク

杏子「おい……。さすがにあたしも怒るぞ?」

ほむら「失礼、冗談よ。でも、ホントに何で?」

杏子「え、いやそれは……」

マミ「うふふ。それは、佐倉さんが学校の先生になりたいからよ」

杏子「おいマミ!」

ほむら「………へ?」

素で驚いた声を上げる。

ほむら「……本気で、言ってるのよね?」

杏子「な、何だよ。悪いかよ!」

ほむら「いえ、そうは言っていないけれど………。どういう風の吹き回し?」

本当に意外そうに、興味津々で尋ねるほむらの問いに、

杏子「………マミもほむらも、将来がどうのみたいな話してたから」

ちょっと恥ずかしそうに、うつむいて答える。

杏子「……あたしもさ。将来、仕事しないとなぁって思って……」

ゴクッ…

気の抜けかけたコーラを一口。

杏子「……っふぅ。あたしなんか、そんなに何ができるってわけでもねぇけど……。
   ガキの相手すんの、嫌いじゃねぇなーとか……思って。はは、笑えるかもしんねーが」

ほむら「いいえ。そんなことはないわ……」

杏子「………そっか。うん、まぁあとは、自分がさ。学校ってのに興味がある」

ほむら「………」

杏子「行けなかったし、もう自分が生徒として行くことはねーからな。
   ……だったら、先生として行ってみるのも、面白いんじゃねーかって」

ほむら「なるほど、ね……」

マミ「それなら、ちゃんと勉強して大学出て、教員の資格取らないとねって。高卒認定試験の話をしたのよ」

ほむら「……えっと、大検って呼ばれていたあれのこと?」

マミ「そうよ。内容は若干異なるみたいだけれど、同じ物」

杏子「勉強もしねーといけねーし、金もためねーといけねーし、大変そうだけど。やりがいはあるなって……」

杏子「丁度、ほむらが受験勉強に集中するためってんで、今はマミの家に居候中だからさ。
   ためしにマミから勉強教わってんだよ。結構面白いな、アレ」

ほむら「………」

ほむら「……ごめんなさい」

杏子「……ん?」

何となく目線は合わせづらく、そっぽを向きながらも…

ほむら「笑ったりして。ごめんなさい」

心からそう告げる。

杏子「ああ、気にしちゃねーから安心しろって。いつも通りのほむらじゃねーか」

ほむら「………」

ほむら「あと、がんばって。応援してる、から………」

杏子「……はは。ああ、がんばるよ。ありがとなっ」ニッ

ほむら「………///」

笑う杏子の顔を、ほむらもまた横目で見ながら照れ笑いをする。

マミ「でも……」

杏子「ん?」

マミ「先に頑張るのは、暁美さんの方だと思うけどな~」ボソッ

ほむら「………!」

ほむら「貴女ねぇ……!」

杏子「容赦ねぇな……」

マミ「ふふふ。まぁ、私は二人ともあまり心配していないってコトよ」

ほむら「何よそれ……」

マミ「暁美さんも何だかんだで出来るコトは知ってるし。判定も悪くなかったのでしょう?」

ほむら「それはまぁ……」

マミ「なら、自信を持って良いじゃない。緊張しすぎるのも損よ?」

ほむら「むむ………」

マミ「佐倉さんも、特に数学なんかは、始めたばかりとは思えない出来映えよ」

ほむら「え、そうなの?」

杏子「いや……。何か、パズルみたいで面白いもんで……」

ほむら「……うらやましい頭してるわね、ちょっと脳みそ半分寄越しなさい」

杏子「さすがに死ぬからやめてくれ……」

杏子「次は小さいの行くかな……?」ガササ…

火ばさみで灰の中を漁る。

杏子「っと。これにしよう」

ほむら「そうね……。じゃあ、さっきよりは一回り大きな……これ」ガサッ

マミ「私は……焼きリンゴにしようかな。美味しそうに食べる佐倉さん見てたら、食べたくなっちゃった」ガサ…

杏子「………?」ガサガサ

開けてみて、白い半月の形をした粒に首を捻る。

杏子「なぁマミ、これ何だ?」

マミ「え? ……ああ、それニンニクじゃない。おいしそう」

杏子「……あー。ニンニクの匂いすると思ったら、これ自体がニンニクなのか」

手で摘んでまじまじと眺める。

マミ「意外と知らないもの……なのね?」

杏子「スライスしたのとか、皮剥く前のなら分かるけど……。へぇ、ほくほくしててうめーじゃん」モグモグ

ほむら「なるほど、料理しないものね、貴女……」

マミ「醤油合うわよ、醤油」

ワリオマンみたいになってしまうのだろうか。

ほむら「私のは……」ガサ…

先ほどとは違い、今度はいろいろ詰まっている。
小さな鮭の切り身に、エリンギ、タマネギ、ニンジン。

ほむら「ああ、鮭のホイル焼きね」

振られたレモン汁の香りが混じって立ち上る。

杏子「お? 妙に豪華な包みもあるんだな?」

マミ「ホイル焼きって聞いたら、真っ先に浮かんで食べたくなったから入れてみたの」

ほむら「これ一つで、普通に晩ご飯のおかずよね。バター貰うわね」

マミ「うん。だからその代わり、お腹いっぱいになっちゃわないように、小さく一人分に切ってあるわけ」

ほむら「………うん、美味しい。タマネギもニンジンも甘みが出てるし……。
    鮭はもうちょっと柔らかいうちでも良かったかも……」モグモグ

杏子「くそ、早くそいつも頂かないと……!」モグモグモグモグモグ

マミ「だーから、そう急いでニンニクを食べ尽くさなくても大丈夫だってば……もう」

杏子「冬は何かさ、人の食ってるモン見るだけで美味そうでたまらないんだよなー。何でだろ」

ほむら「……そうね、きっとそれは、湯気が原因じゃないかしら」

マミ「ああ、分かるかも。白い息で肉まん食べてる人とか見掛けると、お腹すいちゃうわよね……」

なんで湯気も出ていない文字媒体なのにこんなにおいしそうに見えるんだろう。
多分キャラのせいだ。あとさやかのせいだ。

うまそうだ…深夜に見るようなものじゃないな…ごくり

カラン…

時折追加される薪で炎は保たれる物の、
ほとんどはおき火や灰になって、静かな焚き火に変わりつつある。

杏子「……そういやマミ」

マミ「うん?」

杏子「昨日の晩、せっせと作ってたアレはまだ出さねーの?」

マミ「ああ! そうね、そろそろ出しとかないと……」ガサゴソ…

クーラーボックスを漁る。

ほむら「何? まだ何か隠し持っていたの?」

マミ「ええ。これよ」

出したその手には、ラップに包まれたクリーム色のカタマリが3つ乗せられていた。

ほむら「……? 何これ」

マミ「パン」

杏子「パンだな」

ほむら「パン?」

マミ「パンの生地よ。焚き火でこれを焼くの」

ほむら「焚き火で……焼けるの?」

マミ「意外とふかふかとしたのが焼けるらしいわよ?」

ほむら「そうなの……? 何となく怪しいわね」

マミ「大丈夫よ、ちゃんと強力粉をこねて、イースト菌で発酵させるところからやってるんだから!」

杏子「ギッタンバッタンうっさかったなぁ……」

ほむら「それもホイルで包んで投げ込むのかしら」

マミ「いえ違うわ……あ、でもその前に、暖かいところに出して二次発酵させるの」

ほむら「二次発酵?」

マミ「生地を改めて膨らませるのよ。30度以上にしないといけないから……」ガララ…

枯れ枝の中から、太めで安定していそうなのを一本取り出し、焚き火の横に置く。

マミ「……このへんでいいかしら。ここに、生地のラップを緩めて」ピリリ…

三つの生地に空気が入るようにして、枝の上に並べる。

マミ「これで30分ぐらい暖めればいいと思う」

ほむら「へぇ……」

杏子「お、パンの匂いがする。ちょっとお酒っぽい」スンスン

ほむら「焚き火一つで、随分いろいろな料理の仕方があるものね……」

杏子「ダッチオーブンなんかあると、凝ってるっぽいけど豪快な料理作れるぞ」モグモグ

ほむら「何またその妙な名前のモノは……」

杏子「鋳物で出来た、すげー丈夫な鍋だよ。フタをして、火のなかに丸ごとつっこめる」

ほむら「たしかに豪快ね……」

マミ「竹の筒にご飯を詰めて、炊き込みご飯とか作ることも出来るらしいわよ」

ほむら「竹筒で?」

マミ「ええ。結構美味しく炊けるらしくって。最後に竹を割って食べるんだって」

杏子「いろいろあるもんだなぁ」

マミ「今回は、竹筒なんてどこで手に入るか分からなかったし、パンにしたのだけれどね」

杏子「でも食べてみてぇな……。竹筒ごはん」モグモグ

ほむら「………三人集まって、またやればいいわ。別に手紙を書かなくたって、焚き火はできるもの」

マミ「ふふふ、そうね。楽しみにしておきましょう」

杏子「……うん。そうだな………」

マミ「これ、ニンニクかな……」ガサッ…

ほむら「しいいたけかも」

三人とも、ずいぶんとお腹もふくれてきたせいか、
幾分まったりした空気を纏いながら、ホイル焼きの残りをつまんでいく。

杏子「ん。そういや………」ムグ…

ほむら「どうしたの?」

杏子「ほむらの高校で思い出したけど。第一志望はマミと同じとこなんだよな?」

ほむら「……ええ。行ければ、ね」

マミ「行けるってば……」

杏子「いや、っつーことは、この先も……見滝原にいるんだな、って思って」

ほむら「………? え、当たり前じゃない」

杏子「でも、元々ココに来たのって……。見滝原中央病院に入院するため、だったよな?」

マミ「そういえば……」

ほむら「………そうよ。心臓が悪かったから、いい先生にって」

杏子「それが治った今、その。親元に帰ったりはしないんだな、って………」

ほむら「………」

心が痛い胃が痛いおなか減った何か食べたい
ほむほむェ…

つんつん。持っている火ばさみで、適当な銀包みを突きながらほむらが続ける。

ほむら「……そんなに、嫌かしら。私が居るの」

杏子「ばばば、バカッ! そんなわけねーだろ! むしろ一緒に居て欲しいよ!」

マミ「そうよ。私だって、暁美さんと一緒に居たい……」

ほむら「………」

杏子「そうじゃなくってさ。……あたしが、ほむらの家に住まわせて貰ってるのとか。
   そういうのが足かせになってたら、ちょっと……。悪いなって思って」

杏子は杏子で、ホイルの中の鮭を食べるでもなくフォークで弄る。

ほむら「………ふふ、何だ。そんなこと」

杏子「そんなことって……」

ほむら「邪魔だとか思っていたら、貴女に直接そう言うわよ。
    私はそういう人間だって知ってるでしょう……」

杏子「……嘘つけ。我慢するタチだって知ってんぞ」

ほむら「………」

マミ「それはつまり……」

ほむら「………ええ。私だって、貴女たちと……。一緒に居たい、のよ………」

ほむら「そもそも、今でも見滝原にいるのは、私自身のわがままだもの」

マミ「わがまま?」

ほむら「ええ。すっかり治って元気になったことを知った親に、すぐ戻ってきたらどうかって言われたわ」

杏子「そうなのか……」

ほむら「……でも、断った。最初は、転校してきたばかりだから、って理由だったけれど……」コクッ…

ほむら「今はもう、完全にわがままよ。この先もずっと見滝原にいるつもりだし……」

マミ「許してもらえてるのね?」

ほむら「……多分、私がずっと病院にいたからとか、一番の心配事が無くなったからとか、
    そういうのがあるんでしょうね。かなり自由にさせてもらってる。有り難いことにね」

杏子「………」

ほむら「……魔法少女の縄張りとか、そういう面倒事も理由に無いとは言わない」

ほむら「でも、やっぱり一番は……。信頼できるマミや杏子と一緒に居たいから。それは、私の意志だから」

マミ「………ふふふ」

杏子「………へへ。そっかそっか」ガシッ

杏子が、ほむらの後ろから寄りかかる。

ほむら「な、何よ……」

杏子「あんたもようやく、素直になったなーと思ってさ」ナデナデ

ほむらの黒髪をなでつける。

ほむら「ちょ、ちょっと、やめてよ……。今更恥ずかしくなるじゃない……///」

マミ「珍しくカワイイところ見せてるわねー……」プニプニ

ほむら「マミまで……///」

マミ「ふふふ。でも、一つだけ約束して?」

ほむら「……何?」

マミ「……大事にしなさいよ。ご両親は」

杏子「そうそう。出来る限り、大切にな」

ほむら「……二人とも、自分たちがそれを言うことの重さを分かって言ってるわよね?」

マミ「あら、当然じゃない」

杏子「当たり前だろ? それがわかってんなら、せいせい親孝行することさ。顔見せてやんなよ?」

ほむら「………うん。分かってる。いつ死ぬか、分からないものね。お互いに……」

マミ「うん。そういうこと………」

杏子「………」

シュシュ… コポポ…

マミが再び、ポットにお湯を注いでいる。

ほむら「……ねえ、そろそろ30分は経ったんじゃない?」

マミ「あ……そうね。じゃあ二人とも、枝を用意してもらえるかしら」ガタッ

杏子「枝? なんだかんだで便利に使ってるが……」ガラ…

マミ山の枝をまた崩す。

マミ「そうね……。うん、このくらいのがいいかな」ヒョイ

その中から、ちょうど丸めた新聞紙ぐらいの枝を拾い上げる。

マミ「これの先っちょに、アルミホイルを巻くのよ」

杏子「ほう?」ガサガサ…

ほむら「ふうん?」ゴソゴソ…

言われるまま、二人とも自分の枝を拾ってホイルを巻き付ける。

ほむら「できたわよ」

マミ「そしたら、これを巻き付けるの」

若干膨らんだような、二次発酵済みの生地を配る。

ほむら「巻き付ける……って、この枝に?」

マミ「そうよ。枝は、焼くための串みたいなものよ」

ほむら「なるほど。ホイルを巻いた上にってことよね?」

マミ「ええ」

杏子「お、伸びる伸びる。……ちょっと面白い」ビヨーン

マミ「できるだけ薄めに細長く延ばして、ぐるぐる巻き付けるといいみたい」

ほむら「ふうん……」ビヨーン

ほむら (……たしかに面白いわね) ビヨビヨン

遊びながら、延ばしたもちもちの生地をホイルに巻き付ける。
丁寧さに性格の差が出るが、三人それぞれが同じたいまつのような棒を完成した。

杏子「……こんなんでいいのか?」

マミ「良いと思う。あとは、焼くだけよ」

ほむら「火に突っ込むのよね?」

マミ「突っ込むって言っても、炎に当てずにじっくり炙る感じ。
   焼きマシュマロの惨劇を繰り返さないでね……」

ほむら「分かってるわ……」

ジジッ… パチッ…

赤く光る火の上で、棒をくるくると廻しながら炙る。
少しずつ、生地の表面が乾いてきて、色も濃くなってきたように見える。

ほむら「あっ……。膨らんできた、かも……」クルクル

マミ「いい感じね。あんまり焦ると、焦げちゃうからね」クルクル

杏子「うまそう……。隣のパン屋の匂いがする……」スンスン

ほむら「あー、そういえば。杏子のバイト先、隣はパン屋だったわね」

マミ「商店街の話?」

杏子「ああ。朝行くと、抗えない匂いがぷんぷん漂ってくるんだよ……。毎回買わされてる」

ほむら「貴女の食い意地が張ってるだけじゃないの……」

杏子「いや、あれはマジで恐ろしい威力なんだって」

マミ「焼き上げの匂いをばらまくお店は本当に犯罪的だと思う……。シュークリームとか、私も無理……」

杏子「だろだろ? マミは分かってくれると思ってたよ」

マミ「何て言うかこう、平衡感覚が狂うのかしらね……? 気づいたら足が店の方に向かっているの」

ほむら「貴女たちは……。まったく」

マミ「お店のご主人はお元気?」

杏子「ああ、元気だよ。最近あの子見掛けないねぇ、とか言ってたぞ、買いに来いよ」

マミ「そうね。寒くなったから……湯豆腐なんか、したいかも」

杏子「いいねぇ、サービスしとくよ奥さん」

マミ「サービスできる立場じゃないでしょうが」

杏子「まーな」

ほむら「思いの外続くものなのね……。マミのコネでバイト始めるって聞いたときは、
    何日で辞めるものか楽しみに見ていたのだけれど」

杏子「ヒデェなおい……。あたしも不安だったけどさ。丁寧に色々教えてもらえるから、感謝してるよ」

マミ「ご主人がかなり優しいものね。菩薩みたいな人よ」

杏子「その代わり、おばさんがマジで怖いんだよな……。一度怒ると手が付けらんなくって。
   人間の皮被ってるけど、魔獣に近いぜ、ありゃ」

ほむら「怒られるのは、どうせあなたのミスが原因でしょう?」

杏子「ぐ……。まぁな……。でもミスも減ってるんだって、最近は!」

ほむら「そこはゼロにしなさいよ。もう結構経ってるんだから………」

ジジッ… パチッ…

そのまま10分ほどもすると、3人のパンはすっかりきつね色で焼き上がる。

マミ「そろそろ良いのかしら?」

ほむら「ホントにパンっぽく焼き上がったわね……」

マミ「ねぇ……。驚きだわ」

杏子「いや、あんたが驚いてどーすんだ」

マミ「私だって焚き火で焼くなんて初めてだもの。食べて見ましょう?」

杏子「ああ」

火から棒を下ろし、できあがりをまじまじと見つめてみる。
不均一なコゲ跡はあるが、適当に回して炙っているだけだったにしては上出来だ。

ほむら「あつっ……」ズルルッ

柔らかく膨らんだ焼きたてパンを握り、使っていた枝を引っ張って外す。

マミ「あら、ふかふか……」ミリッ…

両手で引っ張り、まんなかから二つに破く。
ほとんど音もなく、バターの香りと共に真っ白なスポンジが顔を出した。

杏子「おおー……!」

あー、どっかで聞いたことがあると思ったら、近くの公園で祭りしてるときによくするパン焼きかー。
あれって普通の焼いたパンとは違ってもちもちしてるんだよな。あれにウィンナーとかいれて食べたときはもう蝶☆サイコー!

マミ「どれ……」ハムッ

かみつぶす。
柔らかく潰れるスポンジの中から、口の中に漏れていく熱い匂い。

マミ「うん、成功ね……! ちゃんともっちり感もあるし……」モムモム

ほむら「焼きたてって幸せ……」ホムホム

杏子「淡泊な感じがいいな……。さっきまでの濃い味とは、また別でさ」モムモム

マミ「そうね」

ほむら「もうちょっと量があったら、さっきのソーセージなんか挟んでも良かったかも」

マミ「うーん、たしかに……。でも、これ以上は食べ過ぎになっちゃうもの」

杏子「あたしはまだまだいけるぜっ」

ほむら「底なしの胃袋、何とかしないとそのうち困るわよ……」

マミ「それにこの後、お芋だってあるのよ?」

杏子「もちろん忘れてねぇさ。大事なシメだからな。出来上がってるとは思うけど、見てみるかい?」

マミ「うん、お願い」

杏子「んっと……」ザッ ザッ…

おき火と灰をどかしながら、火ばさみで中を探る。

杏子「あ、これか。どれ……」モゾッ…

そっと、中から掘り出して汚れを払う。

ガサッ…

包みのホイルを開いた中に鎮座する、紫色が鮮やかなサツマイモ。

マミ「………」

ほむら「………」

杏子「……どうだっ」パカッ

何とはなしに、三人が注目する中でそれを手で半分に割ると、

マミ「あら……!」

ほむら「グレイト……!」

中から湯気を上げて、完璧な黄金色が顔を出す。
どんな黄金よりも、きっと素敵な笑顔を与えてくれる、そんな色。

杏子「ふおぉぉぉ……!」

杏子の目も、まん丸く黄金色に輝いているようだ。

「「「いただきまーす」」」

素晴らしいできあがりの焼き芋を前に、なぜだか改めて挨拶をしてしまう三人。

マミ「皮も浮いていて剥きやすいし、言うことなしね」ピリリ…

杏子「はぁ!? 皮も食えよ、何勿体ないことしてんだ」ハムッ

マミ「ごめんなさい、中身の食感を邪魔するこの皮だけは譲れないの……」

ほむら「しっとり、ねっとりしていて最高……。たまに、ぼそぼそした焼き芋もあるけどアレはダメね」モグモグ

マミ「あら、あれはあれで良さがあると思うわよ?」

ほむら「そうかしら……」

マミ「お芋を買ってから数日おいて、少し水分を飛ばす感じにするとほくほくした仕上がりになるのよ。
   私も、しっとり派だけどね」

杏子「限りなく甘さが引き出されてるのに、しつこすぎない。見た目のわりに繊細だよな、焼き芋」ゴクッ…

そんなことを言いながら、芋をコーラで流し込む。炭酸はもう、ほとんど抜けている。

マミ「だから佐倉さん……」

杏子「ん?」

ほむら「やめなさいマミ、ツッコむだけ無駄よ……」

QB「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん!みんなのアイドル、インキュベーターこと、QBだよ☆」
QB「なにやらおもしろそうなやめてくれ暁美ほむら銃を突きつけるのはやめてくれ僕はただおいしく焼きあがった芋をたb」ターン
QB「僕は死なないよ!何度でもよmあぶねっ!」ターン
QB「助けてくれマミ!僕はただ芋を食べたいだけなんだ!今日は契約も迫ってないし!仕事のノルマもないんだ!だから助けてくれ!」
QB「…何をしてるんだいマミ?佐倉杏子の槍なんかもってなにをやめておねがいしますしんでしまいます頼むから芋をたべさせt」
QBがログアウトしました

マミ「ふう、もう12月なのね……」ピリリ…

早くも二個目の焼き芋を剥きながら、一言。

杏子「ん? どうした」モグモグ

マミ「一年経つのも早いなって。もう今年、終わっちゃう……」

ほむら「年寄りみたいなこと言ってるわね……」

マミ「だってなんか、年末って喪失感あるのよ」

杏子「まだあと一ヶ月もあるじゃねぇか……。気が早いな」

ほむら「先月頭ぐらいからクリスマスクリスマス言ってる世間様を見ると、
    そんなに気が早くもない、かもしれないけれど……」

マミ「クリスマス………」

何故か遠い目のマミ。

杏子「クリスマスなぁ。普通に家族で祝い合うイベントなのに、いつからカップルでイチャつく日になったんだか」

ほむら「そうね。プレゼントの商戦は分からなくも無いけれど、伝統的な行事を魔改造しすぎてるわよね」

マミ「そ、そんなことは………」

ハロウィーンはもう存在自体がハロウィーンの魔法少女がいるしな。
クリスマス?もう去年もやっただろ?今年もやる必要性無くないか?いらねーだろ?サンタも毎年働きづけで疲れるだろうし今年くらいは休ませてやろうぜ。去年もやったんだしいいじゃん。もうさ。(必死)

ほむら「あら……? オトナなマミ先輩は、一緒に過ごす相手のアテがあるのかしら」

マミ「な、無いわよ……。けど……」

杏子「興味アリ、と」

マミ「それは………」

ほむら「へぇ……?」

杏子「まぁ、分かりやすいんだよな。最近なんか、熱心に漫画読んでると思ったらさ……」

マミ「ちょっと、佐倉さん!」バッ

杏子「おっと」ススッ

伸ばして制しようとするマミの腕を、するりとかわす。

ほむら「漫画?」

杏子「いわゆる少女漫画……ってやつか? カッコイー男が出てきて女が惚れたみたいなの。
   ここんとこ、やけにそーいう漫画ばっか買い漁ってんだよ」

ほむら「……ふぅん。分かりやすいわねぇ」ニヤ

杏子「だろ? あたしにゃ、何が面白いのかわかんなかったんだけどなぁ……」ニヤ

マミ「何よ、二人してニヤニヤして! もう……///」

マミさん…25日ぼっちだからって…(ぶわわっ)
一人ぼっちはさみしいしな、QB「ボクが近くにいるよ、マミ」

ほむら「なに、学校に気になる男の子でも居るのかしら」

マミ「そういうわけじゃ……。うう、悪かったわね、つまらない漫画に興味持って!」

杏子「そんな話はしてねーだろ」

ほむら「ねぇ。ちょっと先を行く、先輩の話を聞いてみたいだけよ」

マミ「そういう悪意のある『先輩』の使い方はやめなさい……」ハァ…

両手で顔を覆い、深いため息をつく。

ほむら「それで……。ほんとに、居ないの? 男の子には興味有るんでしょう」

マミ「う………。うん、高校には……居ない、わね」

杏子「……? 他の場所で知り合ったのか?」

マミ「そうじゃなくて……。最初はふと、何となく興味を持って、
   クラスの子なんかも改めて眺めてみたりしたのだけれど………」

ほむら「冴えない顔した男の子ばかりで嫌になるな、と」

マミ「違うわよ! そういうのじゃなくて、ただ、何だか……頼りないの」

杏子「頼りない?」

いるじゃないですか。頼りある後輩が、目の前に二人も。
でももう何も怖くなくなったりするのはやめてな。

マミ「お付き合いするって、実際どういう感じかなんて知らないけれど……。
   でも、どんな人が良いのかなって考えると、頼れる人が良いなって思って……」

ほむら「……年上好き?」

マミ「……そう、なのかしら。何て言うか、せっかくならその、
   あ、あ、甘えたい……というか………///」

ほむら「………ふふふ。そうね、マミならそうかもね」コクリ

勝手に納得してうなずくほむら。

マミ「何よ、私ならって……///」

マミ「……それで、同学年の男の子を見てみても、やっぱりまだ……子供なの、よね」

ほむら「手厳しいわね……」

マミ「私自身がまだまだ子供だから、当たり前なのだけれどね。
   結局、そんな頼れる男の人に出会う機会もないし。漫画読んだりしてるだけよ」

杏子「ふーん。なるほどね。まぁ、今のところ男にゃ興味ないけど……。
   あたしも父さんみたいな頼れる人なら安心できるかなぁ……」

ほむら「………」

頼りある奴で、年上…?
QB「じゃあボクしかいないじゃないか!」
QB「僕と付き合って幸せにごめんなさいやめてくださいその銃をおろしてくださいお願いします空砲でもショック死してしまいますだからおねgあぶねぇ!」ッターン
QB「頼むよマミぃー!僕と付き合って幸せになってほしいんだー!おねg」ッターン
QBがログアウトしました

杏子「そういうほむらは?」

ほむら「え、私? 何が」

マミ「暁美さんにも無いの? 好みの男の人のタイプ」

ほむら「え、私も男の子に、ほとんど興味がないのだけれど……」

マミ「でもイメージみたいのぐらいは……?」

ほむら「そうね……。下僕が欲しい、かも………」

マミ「………え?」

ほむら「跪かせて、ほむら様って言わせてみたい」

杏子「………本気か?」

ほむら「ええ。男の子に限って言うなら、そういうイメージしか無いわね……」ファサッ

黒髪をかき上げ、今日初めての決めポーズ。

マミ (若干、期待通りだけれど………)

杏子 (でもやっぱ、ねぇよな、これ………)

ほむら「?」

――その後、しばらくして――

杏子「いやー、楽しんだな今日は……」

マミ「そうね……」コクッ…

赤く光るだけの焚き火を見つめながら、ぼんやりと会話する。

ほむら「お腹もいっぱい……」

アルミホイルの包みはもう無くなっており、
今は全て、ゴミ袋の中で小さく丸められた塊になっている。

空はもう薄暗く赤色を帯びており、夜の到来を知らせているようだ。

杏子「それじゃ、まぁそろそろ……」

マミ「ええ……」

ほむら「本番ね……。まっ暗になる前の方が、いいわよね」

マミ「うん。ちょっと片付けて、準備しましょうか」ガタタ…

ほむら「あ、手伝う」ガサ…

食器、調味料のたぐいをとりあえず片付けていく。

杏子「あたしは、またちょっと火をおこしておくよ」カランッ…

QB「僕が暁美ほむらの下僕に、だって?ふふん、ちゃんちゃらおかしいよ。それこそ訳が分からないよ」
QB「でもまぁ、マミの下僕なら考えたけども、暁美ほむらはさすがにな、い、わ、け、で、も、ありませんむしろ大歓迎ですのでお願いしますそのカンプピストルをしまってください大爆発するとさすがによけきれませんのでたのみm」ドゴゥン
QB「復活のアイドル、インキュベーターことQBだよ!全く!下僕でもいいっていってるn」ドゴゥン
QBがログアウト(ry

ほむ。

ヒュゥ…

心なしか、冷たくなった風が吹き抜けていく。

ほむら「……寒くなってきたかも」ブルッ

マミ「ちょっと火から離れるとね。上着、また着たら?」

ほむら「ええ………」トトト… ファサッ

暑さと汚れの恐れから、脱いで木に引っかけていたコートをまた着直す。

杏子「ん……。こんなもんでいいか」カラン

ほむら「あ……。燃えてる」

戻ると、新たな薪でまた焚き火に炎が戻っている。

杏子「このぐらい燃えてれば、まぁ、いいだろ。……燃えにくいもん、あるか?」

マミ「私は大丈夫だと思う」

ほむら「私も問題ないわ」

杏子「……んじゃ、始めよう。えっと、あたしはそこの鞄に入れてあるけど」

ほむら「私も鞄に」

マミ「私も多分、こっちの鞄だったと……」

マミ「………」ガサッ…

杏子「………」ゴソゴソ…

ほむら「………」ゴソ…

三人、黙ったままで自分の鞄を漁る。そして、

マミ (これね……)

杏子 (あった)

ほむら (……うん)

おもむろに取り出した手には、それぞれ封筒が一封ずつ握られている。

ガサガサ ゴソ…

それとは別に、またそれぞれ違った小物を一つずつ取り出して、
三人は焚き火の前へと戻ってきた。

杏子「……ほむら、本当に黒い封筒にしたんだな」

ほむら「私の色だもの。こだわりがある」

マミ「どこで売ってるのよ、そんなの……」

ほむら「ネットで大体手に入るわよ。それより、まずは……」

杏子「……そうだな。あたしから行くか」

ほむら「……中身は」

杏子「見せるわけねーだろ………」ザッ

火の元へと数歩近寄り、

杏子「………」ポイッ

持っていた茶封筒を火の中に投げ込む。

ボッ…

すぐに、炎が燃え移り飲み込まれる。
封筒の焦げ跡越しに一瞬見えた便せんも、あっという間に灰へと変わった。

杏子 (時間かけて書いたんだが……。あっけねぇなー……)

杏子 (あとは……) ゴソッ ガサガサ…

ポケットに手を突っ込み、封筒と似たような色の紙袋を取り出す。
中から取りだしたのは…

マミ「……たい焼き?」

引きちぎるように、その冷え切ったたい焼きを半分にする。
そして右手の半分を、

杏子「くえよな………」ポイッ

そのまま火の中に放り込んだ。

どういう事だってばよ…あ、理解しました
QB「わけがわかったよ」

ジジジ…

冷たく、しっとりと水分を含むたい焼きはなかなか燃えづらい。
ゆっくりと中の水分を蒸発させながら、砂糖の焦げる匂いを漂わせて黒く染まっていく。

杏子 (冷た………) モグモグ

左手に残した半分は、自分で囓る。

ほむら「……いいの? 食べ物、無駄にしちゃって」

杏子「ん……? 無駄なんかじゃねーよ」ザッ…

くるりと振り返り、数歩また戻ってくる。

杏子「さっきから……さ。美味いモンの匂いばっか届けてただろ。
   食いモンも届けてやんなきゃ、可哀想だと思わねーか?」

マミ「……ふふ。そうかもしれないわね」

杏子「ま……。一番の理由は、別だけどな………」

立ち上る煙の行方を見送りながら呟く。

杏子「……たい焼きがさ。最初で最後なんだよ。あいつと、いっしょに分け合って食ったのは」

マミ「そっか………」

ほむら「………」

マミ「じゃ、次は私……かな」ヒョイ

背中に回していた両手を前に回す。
片方は、可愛らしい花柄の洋封筒。もう片方、少し大きさのあるそれは…

ほむら「ぬいぐるみ……?」

マミ「うん。編みぐるみ」

黄色、黒、赤、青、そして……桃色。
5色の髪色を持つ5人の女の子が、みなにっこりと笑い、輪になって手を繋いでいる。

杏子「へぇー……。こっそり作ってたの、これか……」フニ…

かなり出来映えの良い編みぐるみに、手を伸ばして触る。

杏子「……すげぇな。良くできてる」

マミ「ふふふ。いいでしょう? 頑張ったもの」

杏子「この縦ロール、よく再現できたな………」フニフニ

マミ「そこは苦労したわ……」

ほむら「手が込んでるわね……。ちょっと、勿体ない………」

マミ「だって。贈り物だもの。……手は抜けないわ」

杏子「………だな」

QB「…わけがわかる…けど、そんなことするわけがわからない…っていうのはまだ僕が感情を完全に手に入れてないからかな」
QB「でも、ここに茶々をいれるのはさすがの僕でも野暮だっていうことはわかるよ」
QB「じゃあ、僕はマミの家に戻ろっかな」ぽてぽて

QBは、ログアウトしました。

ほむら「この子は……」フニ…

ほむらも手を伸ばし、桃色の髪の子を触りながら訊く。

マミ「……うん。まどかさん」

杏子「………」

マミ「暁美さんが、前に描いていた絵を参考に作ってみたのだけれど……どうかしら。似てる、かな?」

ほむら「………ええ。とても。まどかの愛らしさが、よく出ているわ」フッ

あまり見せない、優しい顔で微笑む。

マミ「そう……? 良かった………」

ほむら「ちょっとだけ、借りてもいい?」

マミ「え? うん、いいわよ……?」ヒョイ

訝しげに差し出されたそれを、

ほむら「ん……」ギュッ…

そっと、強く抱きしめ、顔をうずめる。

ほむら「……ありがとう」

マミ「ええ………」

ほむぅ…

マミ「それじゃ……」ザッ

返して貰った編みぐるみを手に、炎の前に立つ。
火の中では、まだたい焼きの一部が燻っている。

マミ (……たしかに、手放すのが惜しいくらい、手間かけちゃったかな)

少しばかり躊躇うが…

マミ「………えいっ」ポイッ

ドサッ ボボ…

投げ込まれ。手紙も、編みぐるみも、飲み込まれていく。
燃えやすい繊維だったのか、炎もやや大きめだ。

マミ (届くと……いいな)

遠い目で火の向こう側を見つめる。

そのまましばらく待つと、やがてみんな姿を消してしまう。
炎の大きさもまた、落ち着いたものに戻った。

マミ「うん。出来たわ」ザッ

見届けて、戻ってくる。

杏子「最後は……」

ほむら「……私、ね」

QB「ひとりで、月を見る」
QB「これはとっても、さみしいなって」
QB「誰かが言ってた気がするよ」
QB「でも」
QB「大切な人からの物があるんなら」
QB「それはきっと、寂しくないんだろうな」

QB「そうだろう?神さま?」

ほむら「………」スッ…

杏子に批判された真っ黒な封筒を取り出し、暗い紫色のリボンをそっと重ねる。

マミ「それは……」

杏子「リボン……?」

二人は見たことのない、ただの古びたリボンに疑問の顔色。

ほむら「………昔、使っていたのよ。まどかと……初めて出会った頃。
    本当にもう、遠い、遠い、昔の話」

マミ「そうなんだ……。今は、その」

ほむら「ええ。この……赤いリボン」

自分の頭を触りながら。

ほむら「これが、まどかからの贈り物だって……。それは、話したわよね」

杏子「ああ」

ほむら「あれ以来、お返しはしないといけないなって思っていたから……。
    贈られても、まどかも困るかもしれないけれど。これしか、思いつかなくて……」

杏子「……いや。いいと思うぞ」

マミ「うん。私も」

ぼくもそう思うよ

ほむら「……ふふ」ザッ…

炎を前に立ち、何となく笑みがこぼれる。

ほむら (何だろう……。不思議と、気持ちが楽になるような……?)

ほむら (………これが、儀式の効果、なのかな。きっと)

ほむら「よろしくね……」ファサッ

炎にたくすように一言つぶやき、封筒とリボンを投げ入れる。

ボワッ… ゴゥ…

ほむらからの贈り物も、一瞬で火に飲まれる。
やっぱり素材のせいだろうか。いちばん大きな炎で燃えたように見えた。

ほむら「うん。これでいい。これで……」

見届けて、顔を上げる。

マミ「行っちゃった、かな……」ザッ…

杏子「きっとな……」ザク…

後ろから、二人も近くに寄ってくる。

マミ「それじゃあ、あとはみんなで……」

ほむら「ええ。祈りましょうか。空に向けて………」

焚き火だけでなく空も、燃え尽きるかのように深い赤色をしている。

ほむら「………」

杏子「………」

マミ「………」

それに向けて、目をつぶったまま、全員で静かに祈りを捧げる。

恰好は様々だ。

ほむらは、立ったまま両手を握りしめて。
杏子は、膝をついて両手を握っている。
マミは、手のひらを胸元で合わせて。

皆、自分の想いを心の中で唱えながら。
その内容も、やっぱり三人様々に異なっていただろうが、
届いて欲しい想い自体は殆ど同じはずだった。

目を閉じると聞こえてくる、風の音、木々の声、そして目の前の炎の音。
その中で、ただ黙って弔いを続ける三人。

やがて、誰からともなく目を開けた頃には、もうすっかり日が沈んでいた。

――まっ暗な空の下で――

焚き火は、最後まで燃やし尽くすべきだ。

どうしてもと言うときは水で消すのも仕方がないが、
そうすると燃え尽きていない薪や炭がそのままになり、
扱いづらく、かさばるゴミとなって残ってしまう。

白い灰になって、自然に消えるのを待って、それから片付けるのがいい。

そう説明する杏子に頷き、三人はまだ火を囲んでいた。

杏子「……っふぅ」コクッ…

カップを借りて、紅茶を一口いただく。

杏子「暖まるなー、紅茶」

ほむら「ようやくコーラから離れてくれて、ほっとしたわ」

杏子「え? 空っぽになっただけだぞ」

ほむら「まぁそうだけれど……」

マミ「夜も……火があると、安心するわね。炎はもう無いけれど」

ほむら「この、こぢんまりした感じが良いわよね。
    周りがまっ暗で、火の周りにだけ閉じ込められているような感じが………」

蝋燭の火みたいな感じ、ね。わかるようなきがする

そのまま今日一日が、平和に終われば良かったが…

キィン… ィン…

ほむら「……!」

彼女たちの、選んだ定めを思い出させる音が響く。

マミ「え、これは……!」

ほむら「魔獣ね。近いんじゃない、これは」

マミ「こんな山奥で? まさか……」

杏子「ほらー、あたしの言ったとおりだろ? 結構手強いぜ、多分」

マミ「え? ホントなの……?」

三人、のそのそと立ち上がる。

杏子「ま、腹ごなしってことで、良いんじゃねぇか。サクッと片付けちまおう」パンパン

お尻の砂を叩いて払う。

ほむら「ええ……。火は、仕方ないわよね? 水をかけて消すしか……」

マミ「あ、そうね。放っておく訳にはいかないし……」

杏子「……仕方ないだろ。ちょいと片付けが面倒になるがな」

用意してあったバケツに汲んだ水を、ほむらが持ち上げる。
それを持って焚き火に近づいたその時、

ジュシュゥ…!

突然。大きな音を上げ、残っていた火がすべて消えた。

ほむら「………へ?」

杏子「………ん?」

マミ「……水、かけてない……わよね?」

ほむら「ええ………?」

謎の現象に首をかしげる。

杏子「消えてる……よな」

まじまじと見るが、赤く光っている部分はもう何処にもない。
灰の近くに手を近づけても…

杏子「あれ、熱くない、というか……冷たい?」

何故かさっぱり熱が感じられない。

マミ「不思議なこともあるものね……」

ほむら「………」

マミ「うん……。消えてるし、濡れても居ないわね」カパッ…

マミがポケットから携帯電話を取りだし、その明かりでもういちど確認する。

杏子「……あれ。これなら、また後で燃やしちまえるんじゃねえか?」

マミ「そういえばそうね……」

その方向でまとまりそうな二人を無視して、

ほむら「……いいえ。これは、ちゃんと消さないといけないわ」ザババ…

ほむらがバケツの水を注ぎ込む。

マミ「あっ」

杏子「おい、せっかくの幸運を!」

ほむら「……まだ火が残っていたらどうするの?」

杏子「う……確かに。……しゃーねぇ、諦めよう」

マミ「そうね」

残念そうに、濡れた火の後から興味を失う二人。

ほむら (……何度もごめんなさいね、まどか)

ほむら (でも、私は、貴女に頼るばかりではいられないから……。
    場所が違っても、並んで歩いているような、そういう関係が良いの………)

杏子「そんじゃー行くぞ! てめぇら!」シュン

マミ「一気に決めるわよ!」シュン

ほむら「はいはい」シュン

テンションを上げて、魔法少女姿へと変身する。

ほむら (うっ、やっぱ冬は冷えるわね、この恰好………) ブルッ

杏子「はぁー、しかしついてねぇ連中だな。あたしら3人が揃ってる側だぜ」

マミ「ええ。"見滝原の魔女<ストレーガ>"三姉妹が揃った前にのこのこ現れるとは……。哀れな魔獣もいたものね」フッ

杏子「その自称、気に入ってんだなー……」

マミ「え? 良くない?」

杏子「あたしは、まぁ、必殺技の名前を叫ばされなければ。何だって良いよ……」

マミ「冷たいわねー」

ほむら (改変前を思い出すから、やめてほしいのだけれどね………)

マミ「うん、それじゃあなたたち、武器を出しなさい」

杏子「あ、やるんだ、アレ」

マミ「せっかくの時間を邪魔されたからね、本気モードになりたいのよ」

シュン…

言われるまま、得意の獲物を召還する三人。
マミは銃を、杏子は槍を、ほむらは弓を。それを…

マミ「行くわよ!」

掛け声に合わせて、

「「応!」」ガキィン!

互いに頭上で打ち付ける。

マミ「よーっし! ボコボコにしてやるわよ!」フンッ

ノリノリで、魔獣反応の方角へ早足のマミ。

杏子「おい、コレやっといて一人で行くなって!」トコトコ…

ほむら「貴女ホント好きね、これ……」テクテク…

その後ろからついて行く二人。

杏子「あたしも嫌いじゃないけどなー、マミはテンション上がりすぎ……」

ほむら「あれでむしろ真剣に戦ってくれるから。仕方ないわ………」

ぼやきながらも、互いに信頼の見られる三人。
彼女たちの戦いは、これからも終わらずに続いていく。
円環の天使が迎えに来る、その時を信じて…

気のせいだろ。マミ、あんこ、ほむほむ、えんかんの神、ほら、全員いるじゃん

――――――――――
―――――

「行っちゃったね」

「うん………」

「もう、あんたは仕事が山積みなんだから。ほむらばっか見てちゃダメだよ?」

「わかってるよー!」

「おまけに火をつけたり消したりするの手伝うぐらいで、奇跡の無駄遣いなんかしちゃってさー」

「うん、だからわかってるって。ほむらちゃんにも怒られたもん。……でもでも。
 見てて良かったって、そう思ったでしょ? 今回ばかりは」

「………うん、そうだね」

「ほむらちゃんを見てるとね。先輩の神様たちが忙しい中でも、たま~に奇跡を起こしてあげちゃう、
 その気持ちが分かるなって……。それでつい……」

「それ自体は否定しないわよ、あたしも」

「ティヒヒ。がんばってね、ほむらちゃん。杏子ちゃん、マミさんも……」

「じゃ、わたしたちも。お仕事がんばろっか!」

「おう!」

~fin~

はい、読んでくれた方はお疲れ様です。ありがとうございました。
寒かったんでほむほむと焚き火したかったんです…


ほのぼのした食事会の後の送り火でジーンと来た

あと違ったらすまないが、もしかして>>1
まどか達がマミさんを城崎温泉に誘う話書いた人か?

>>385
良く分かりますね…。ビビった

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年03月21日 (土) 20:34:44   ID: iODrU0Ez

ぼんびーでいつも腹へってるんだが、キャラとお話が良いおかげで妄想パワーが捗り、満腹感を味わうことができた
ありがとう

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