梓「IN FOREST」(116)

HAPPY BIRTHDAY YUI


ピンポーン

梓「……」

梓「寝てるのかな」

梓「だったら……直接起こすしかないよね」

梓「ふふっ」

年甲斐もなくイタズラ心が騒ぐ。
と言ってもこっそり上り込んで起こすだけなんだけど思わずにやついてしまった。
朝から人の家の前でにやにやしているのもあれだから早く入ろう。
それに秋の終わりだけあって寒いし。

キャリーケースを立て掛けてトートバッグからスペアキーを取り出した。
慎重に差し込み静かにドアの鍵を開ける。
たまには私がイタズラしたっていいよね。
そうだよ、昔は私が色々されてたんだし……色々……。
やっぱり普通に起こすのやめようかな。

梓「おじゃまします……」

そーっとドアを開いて玄関に侵入。
重いキャリーケースも音を立てないように玄関へ置いた。
初めてこの部屋に来てから今日で二週間ちょっとか。
私の誕生日前日に偶然再会してこのアパートに連れてこられて、
それから色々あってスペアキーを預かる事になり、気が付くと入り浸るようになっていた。

玄関の左手に台所、右手にお風呂とトイレ、奥の部屋には布団が敷かれている。
家主には気付かれなかったみたいだけど、同居人が私の侵入を察知してお出迎えしてくれた。
黒い毛並みが綺麗な子だ。

  「……なー」

梓「おはよう、あずにゃん3号」

本当の名前は少し違うけれど私はそう呼んでいる。
だって被ってるんだもんなぁ。

そんなあずにゃん3号と一緒に忍び足で奥の部屋へ。
盛り上がった羽毛布団が僅かに上下していて、顔も半分埋まっている。
相変わらず寒がり。
さてどうやって起こそうかな……そうだ。

冷えた指を擦って常温まで戻し、すやすや寝ている顔に近付けた。
閉じたまぶたに触れても反応がない。
よく寝てる。
今日以外だったらゆっくり寝かせておいてもいいんだけど。
なんて思いつつも声はかけない。
私は吹き出しそうになるのを堪えながら寝ている人のまぶたを開けてみた。

無理矢理開かれた瞳は真っ直ぐ天井を向いていて焦点が合っていない。
ここで漸くピクリと反応して唸った。

梓「ぷふ……くふふふっ」

ダメだおかしい。
何だかわからないけどおかしくて笑いが止まらない。
本当にただのいたずらっ子だ私。

  「ん……んぇ?」

私の笑い声と指の感触で目が覚めたらしい。
流石に悪い気がするのでちゃんと声をかけよう。

梓「おはようございます、唯先輩」

唯「はぁ~……あずにゃんおはよ」

大きい欠伸をしてゆっくりとこちらを向く唯先輩。
まだ眠そうだけどあんまりのんびりしてもいられない。

唯「……ねむ、さむ」

梓「一応早めに起こしましたけど今日は絶対に遅刻できませんよ」

唯「ふあぁ……」

梓「ほら、支度して下さい。その間に朝食用意しますから」

唯「んー……」

梓「シンガポールが待ってますよー」

唯「っ! そうだ、今日シンガポール行くんじゃん!」

わあ、起きた。

唯「ふーっ、寒っ」

唯先輩がタンスから服を見繕い始めたので私は台所へ移動した。
朝食の用意と言っても食パンをトーストして冷蔵庫にある出来合いの惣菜を出すだけなんだけどね。

唯「あずにゃんは朝ご飯食べたー?」

梓「家で食べてきましたー」

唯「そっかー」

梓「朝食出来ましたよー」

唯「ありがとー」

さて、先輩が朝食を食べている間に旅行の予定を確認しておこう。
本日11月25日、これから空港に向かい4泊5日シンガポールの旅へと赴く。
今日は金曜だけど唯先輩は有給パワーを発動。私は求職中だから……まあ、うん。
ホテルでチェックインするのは夕方か夜になるかな。
今日はまったり過ごすとして、明日以降は観光したり先輩が楽しみにしてるプールで遊んだり。

今回は宿泊するホテルがメインかもしれない。
去年出来たばかりで55階建ての高層ホテルが3棟連なっていて、
その3棟のホテルは屋上にある船を模した巨大空中庭園で連結している。
そこに空と繋がっているかのような野外プールがあり、先輩はそこに行きたがっている。
インフィニティプールって言うんだっけ。
私もすごく楽しみだったり。
何しろ唯先輩が『シンガポール すごいホテル』なんて単語でネット検索してすぐに見つかる程だ。

唯「はぁ~早く泳ぎたいなぁ」

梓「その割には珍しく寝坊してたじゃないですか」

高校の頃の唯先輩なら珍しくも何ともないんだけど、社会人になった唯先輩が寝坊した所を見た事がない。
と言っても先輩と再会したのは最近だし、むしろお泊りした時は私が寝坊しちゃってるんだけど……。
おまけに自炊もしてるし頼れるしで気が付いたら私の方が甘えちゃってたり。
やっぱり一人暮らしするとしっかりするものなのかな。

……対する私は都会で一人暮らししていたものの会社に嫌気がさして退職。
その後再就職せず引きこもりみたいな感じになって友達や先輩からの連絡も見て見ぬふり。
あの時は完全に迷路に迷い込んでいて自分から身動きとろうとも思えなかった。
そんな状態のまま先日地元に帰ってきて、その時偶然唯先輩と再会して、こう、ね。
しっかりしつつも変わらない唯先輩に元気を貰って、もう一度頑張るぞって思ったんだ。
おまけに唯先輩からアパートのスペアキーまで渡されちゃって。
大事な物だからそれを持って消えないでねっていう首輪みたいな感じで。

唯「あずにゃんが来てくれるって言うから目覚ましかけなかったんだ」

唯「起こしてくれるかなーって。えへ」

こういうところも変わらないなあ。

今回の旅行には目的というか名目があって、まず私を立ち直らせてくれた唯先輩へのお礼を兼ねている。
唯先輩はずっと遠慮していたけど誕生日プレゼントという事にして飛行機のチケット代とホテル代は私が払う事にした。
という事で唯先輩への誕生日プレゼントとしての旅行でもある。
値は張ったけど、一人暮らしの時は貯金が趣味みたいになってたし仕送りもあったからお金はそこそこあった。
むしろ先輩の為に使えるのならあの何も得られなかった苦行にも意味が見出せるというものだ。
この旅行ではとにかく唯先輩に楽しんでもらわなきゃ。

それからもう一つ。
旅行先で、唯先輩の誕生日までに、返事をしなければならない。
私は11月11日に唯先輩から告白された。
ずっと前から好きだったと言われて、その時私は

どちらかと言えばセーフ

という何とも曖昧な言葉を返した。
その場では焦ってうまく返せなかったし、あとで考えれば考える程障害が浮き彫りになるし。
そりゃあ唯先輩の事は好きだけど、先輩の言う『好き』と同じかどうかわからなくて。
その後現在まで保留みたいな感じになっている。
2週間以上保留にしておいてその上先輩の家に頻繁に上り込んでいるという……。
先輩がいつでもおいでって言ってくれて、合鍵までくれたから……。
それに唯先輩は私を引きこもりから救ってくれた恩人だし、その反動からかひと肌恋しかったし、大切な人だし。
と、先輩の好意に甘えつつずるずると返事を先延ばしにしてしまった。

だから今回の旅行で決着をつけなければいけない。
舞台と日付を決めたのは私だけど、こうでもしないとまた先延ばしにしてしまう。

唯「あずにゃん、準備出来たよ!」

梓「え、あ、それじゃ行きましょうか」

いつの間にか支度の完了した唯先輩が私の前に立っていた。
まずは先輩に楽しんでもらわないと。

梓「忘れ物とかありませんか?」

唯「水着も入れたし多分大丈夫。あずにゃんおいで~」

……危ない、声を出すところだった。
唯先輩は黒猫のあずにゃん3号を抱き上げてケージに入れた。
この子は旅行の間お隣さんが預かってくれるらしい。

唯「よし、それじゃ出発!」

梓「はい!」



7時間ちょっとのフライトを終えて私達が目にしたのは常夏の空。

唯「……雨降ってるね」

梓「ですね……」

唯「えーっ、泳ぎたかったのにー」

梓「天気予報では曇りだったんですけどね。シンガポールは11月から雨季ですから」

唯「蒸し暑いのに……うぷ」

唯先輩はフライト時間のほとんどを寝て過ごしたけど結局酔ってしまったみたい。

梓「秋の日本から来ると余計にそう感じますね。とりあえずホテルに行きましょうか」

唯「そだね」

梓「……バスで」

唯「……うっぷ」

シンガポールに辿り着いた私達は空港からバスに乗りホテルへ向かう。
通りに並ぶ整った建物と点在するヤシの木。
バスから覗く景観はこれぞ常夏の先進国っていう雰囲気を醸し出していて、見ているだけで気持ちが踊る。
同じく外を眺めていた唯先輩も多少元気を取り戻していた。

唯「うわーすごいねー、高層ビルがいっぱい!」

梓「綺麗な街並みですね」

唯「そうだねー。あ……お腹空いてきたな」

梓「もうすぐ夕飯の時間ですからね」

唯「あれっ今何時?」

梓「18時過ぎです」

唯「まだ明るい感じなのに。雨空だけど」

梓「こっちは1年中7時から19時くらいまでが日照時間なんですよ」

唯「へえ~」

程なくしてバスが到着し、唯先輩を介抱しながら下車する。
唯先輩が「ようやく解放されたーっ」という顔で軽く身体をひねっているとふいに動きを止めた。
それから首だけがどんどん上に傾いていく。
先輩の視線を追ってみると写真で見るより数倍迫力のある建物がそびえ立っていた。
首が痛くなりそうなほど高い。しかも3棟。
おまけに屋上には船が乗っかっている。

唯「うおお……すごーい!」

梓「おっきい……」

それにホテルの手前には入り江が広がっていて、
対岸の高層ビル群も合わせてホテルからの眺めに期待が持てる。

唯「よし、早く行こっ!」

梓「はいっ」

ホテルは外観だけでなく中身もすごかった。
吹き抜けになっていて開放感のあるエントランスや高級感溢れる内装を見るたびに感嘆が漏れる。
チェックインを済ませて私達が泊まる部屋に向かうとそこがまたすごくて、二人してすごいしか言えなくなった。
部屋は広く昨年オープンしたばかりだから内装も綺麗。
ふかふかのソファーとベッド。
大きなバスタブと鏡のあるバスルーム。
そして何と言っても入り江を眺められる一面ガラス張りの窓。
外は既に暗くなっていて、ライトアップされて色付いた夜景が広がっている。
暫く唯先輩と一緒になって窓に張り付いていた。

唯「ふぁぁ……この部屋が30階だから、屋上から見たらもっとすごいんだろうねぇ」

梓「これの倍くらいの高さですからね」

その後お腹の空いた私達はフードコートで夕食を取り、隣接するショッピングモールを見て回った。
このホテルは宿泊棟に隣接する総合ショッピングモールがあり、フードコートやショップの他にもカジノ等様々な施設がある。
とても1日じゃ周りきれそうにない。
唯先輩が次々に心を惹かれては物を買い込みそうになるので止めるのが大変だったけど、
目を輝かせている姿を見ると旅行をプレゼントしてよかったなと思えた。

部屋に戻って来て一息ついていると唯先輩が戦利品をゴソゴソし始めた。
置物に洋服にお菓子におつまみにボトル……ボトル?

唯「じゃあ飲もっか!」

梓「いつの間に買ったんですか」

唯「えっへへー。こんなに良い部屋と景色なんだよ? 飲まずにはいられないでしょー」

梓「そういうものですかね」

唯「そういうものだよ~」

私はあまり飲む方じゃないけど今日は久しぶりに飲みたい気分だ。
唯先輩の言うとおりこんな時は飲まずにはいられないのかも。

唯「何飲む?」

梓「ええと、唯先輩と同じものを」

唯「おっけー」

唯先輩のお誘いだし景気付けに丁度いい。
明日か明後日、唯先輩に返事をするんだから。
現地に来てそれを自覚するとやっぱり緊張してくる。
今日が25日だからあと2日もあるし大丈夫だよね。
いや、今日言っちゃうのもありか。
そうすれば胸のつかえが取れてもっと旅行を楽しめるかも?
そうだよ、ホテルで夜景を見ながらお酒……今しかないよ。

先輩が2つのグラスにボトルを傾けた。
ほのかなこがね色に気泡がはじける。

梓「シャンパンですか?」

唯「うん、高かったんだけど思い切って買っちゃった」

汗ばんだ手で先輩からグラスを受け取る。
先輩が乾杯の仕草を見せたので、私は力の入った指でそれに答えた。

唯「かんぱい~」

梓「か……かんぱいっ」



梓「……んぁぁ」

目が覚めるのと同時に気怠さを感じた。
それに頭も重いような……。
首をひねってベッドの傍にある時計を確認すると朝10時を過ぎている。

唯「あずにゃんおはよ」

目を覚ました私に気付いて唯先輩がベッドに近付いてくる。
先輩は既に服を着ていて朝の支度を終えているようだった。

梓「あ、おはようございます……」

唯「大丈夫?」

梓「え……あっ」

昨夜の記憶が断片的に蘇る。
後半は飲み過ぎて唯先輩に迷惑をかけたような……。
おまけに寝坊してるし。

梓「すみません……昨日はご迷惑を」

唯「あずにゃんってお酒弱いんだねぇ」

弱くはないつもりだけど旅行特有の解放感からかお酒が進んで……。
景気付けのつもりがチャンスを潰した上に逆効果。
何やってるのよ私。

梓「今日は……曇りですか。プールで泳ぎますか?」

唯「出来れば晴れた日がいいんだよね。それに今日はあずにゃん泳げないでしょ?」

確かに二日酔いの状態で泳ぐのはきついかも。

梓「う……すみません」

唯「まあまあ、今日はのんびりしてようよ」

梓「いえ、もったいないですし観光に行きましょう」

唯「うーん……」

梓「私なら大丈夫ですから」

唯「そう? じゃあご飯食べて午後から出かけよっか」

シャワーを浴びて遅めの朝食を取った後、私達はシンガポール観光へと出掛けた。
最初はホテルの部屋からも小さく見えていたマーライオン公園へ。
ここは代表的な観光地だから必ず行きたいと思っていた場所だ。

梓「観光地だけあって私達以外にも沢山人がいますね」

唯「だね」

入り江の傍へ行くとマーライオンの像が見える。
頭がライオンで身体が魚の白い像は思ったより大きくて、
入り江に向かって口から勢いよく水を吐き出している。
シンガポールとはサンスクリット語で獅子の国を意味する。
まさにシンガポールを象徴する存在だ。
やっぱり生で見ると違うなぁ。

唯「昨日のあずにゃんみたいだね~」

梓「……」

マーライオン公園を後にした私達は夕方頃まで街を散策した。
気温の高さと昨日のお酒の所為か汗をかいては水分補給していたけどおかげで二日酔いは大分楽になった。
散策の途中でラクサという辛い麺を食べたり、屋台でさとうきびジュースを飲んだり、別の店で山盛りのかき氷を食べたり。
散策というアバウトな計画は唯先輩によって食べ歩きに近いものに変わり、
相変わらず食べる事が好きな先輩につられて私も結構食べてしまった。
……おいしかったけど。

シンガポールは場所によって雰囲気がガラリと変わる。
ビル街のような近代的な場所もあれば、打って変わってエキゾチックな建物の並ぶストリートがあったり。
私達は行く先々で逐一感激して、童心にかえった気分でシンガポールを堪能した。
あと先輩はマーライオンの像やお土産を見つける度に私をいじってきた。

唯「はー楽しいね!」

梓「そうですね」

唯「あずにゃん調子はどう?」

梓「もう大丈夫です」

唯「よかった。それじゃあ最後にあそこ行ってみない? 金の肉まんが乗ってる建物」

梓「肉……ああ、寺院ですか。唯先輩にしては珍しいですね」

唯「む、そんな事ないでしょ」

梓「あそこは礼拝する場所だから食べ物はありませんよ。それに私がマーライオンしちゃうかもしれませんし」

唯「ごめん、もう言わないから許して」

梓「それは冗談ですけど私達の服装だと肌が露出し過ぎてて入れないかも……」

唯「えっそうなの!?」

梓「宗教上の理由ですね」

唯「じゃあやめとこ。……お?」

梓「あ、でも羽織るものを貸してくれるとか……って先輩?」

唯「あれなら大丈夫そうじゃない?」

唯先輩がよそ見しているには別の礼拝堂が見えた。
少し離れた場所にあるそれは小ぢんまりとしていてよく見つけたなあと感心してしまった。
シンガポールは多民族国家だけあって宗教も様々だ。
先輩の見つけた礼拝堂と寺院は神様も大きさも綺麗さも違うみたい。

梓「大丈夫そうですけど寺院にも入れると思いますよ?」

唯「いや、あっちにしよう。ああいう感じの所の方がご利益ありそうだし」

真面目な顔つきで何言ってるんだ。

梓「それってちょっと違うような……」

唯「まあまあ、ちょっと寄ってこ?」

梓「いいですけど」

先程の寺院へ一直線のメインストリートから脇道に逸れて歩く事数分。
錆びれた礼拝堂の周りは人も疎らだ。

梓「ええと、趣がありますね……」

唯「とりあえず入ってみよ」

中にもほとんど人はいなかった。
内装はこう、趣のある感じと言うか……失礼な事思うのやめよう。
唯先輩は適当な席に座ると私を手招きして呼び寄せる。
並んで座ると先輩は早速礼拝(?)を始めた。
目を閉じて真剣にお願いしてる。

……せっかくだから、私もお願いしてみようかな。
もしかしたらご利益があるかもしれないし……なんて。

私も唯先輩を真似て目を瞑り手を合わせた。

礼拝堂を最後の観光にして私達はホテルへ戻り夕食を食べる。
……予定だったけど道中食べ歩いた所為でお腹が空かない。
仕方がないので腹ごなしのつもりでカジノにチャレンジしてみる事に。
入り口には黒服の方々が配置されていて、中は赤い絨毯に金色の照明と煌びやかな空間だった。

唯「なんだかセレブになった気分だねっ」

とか言っていた割に開始早々ちいさな山を当てると

唯「わ、私今日はもうこれで! 換金してくる!」

なんて言い出した。
私も私で日和ってしまい

梓「そ、それがいいですよ!」

とか言ってしまった。
唯先輩も年を重ねたんだなあなんて思ったり。
セレブとは程遠いけどまあいいか。

結局軽い食事で済ませて部屋に戻った。



梓「しまったあぁぁぁ……」

気持ちよく目覚めて何気なく時計を見ると朝の7時。
まさに今太陽が昇っているであろう時間だ。

昨日は部屋に戻ってお風呂に入った後まったりしていて、気付いたら朝だった。
散策で疲れ切っていたからついベッドで横になって……。
いや、それ以前に楽しくてすっかり忘れてた……あああ。
今日は27日、唯先輩の誕生日当日。
私のぼんやりとしたビジョンでは27日深夜0時にお祝いして、あわよくば告白の返事をするはずだったのに。
いやいや、まだ今日があるんだから大丈夫……大丈夫だよ。
唯先輩は未だベッドで気持ちよさそうに眠っている。
顔を洗って気合いを入れよう。

暫くして唯先輩が目覚めたと思ったら先輩はハッとしてベッドから飛び起きた。
それから窓に駆け寄ってカーテンを開け放つ。
瞬間、眩しい程の光が部屋に差し込んだ。

唯「晴れだよあずにゃん! プール行こプール!」

2日間我慢していた唯先輩は今すぐにでもプールに飛び込みたいらしい。

梓「ご飯食べてからですよ。それと誕生日おめでとうございます」

唯「おお、ありがと~! じゃあご飯食べにいこ!」

この人はもう気持ちがプールにしか向いてない。
起きてから返事の事ばかり考えていたけど、このホテルでの一番の楽しみといったら空中庭園+プールだ。
先輩には楽しんでもらいたいし、何だかんだ言って私も楽しみだし。
それにそんな場所なら気分も盛り上がってすんなり返事できちゃったりするかも。

朝食を済ませてから屋上には更衣室やロッカーがない事を思い出して一旦部屋に引き返した。
宿泊客は部屋で水着に着替えてバスローブを羽織って屋上へ行く人が多いみたいなので私達もそうする事に。

水着は今回のために2人で買いに行った。
私は唯先輩に強く勧められてついその気になってトロピカルブルーなビキニを購入してしまった。
もうちょっと控えめな感じにしようと思ってたのに。
ただ水着自体は可愛くて、胸元にフリルとリボン、ボトムの両サイドにもリボンがついていてかわいい。
フリルが2段になっているショートパレオもついている。
唯先輩はかわいい似合ってるよーって言ってくれたけど大丈夫かな……。

対する唯先輩はちゃっかり自分の好きな物を選んでいた。
私よりもシックなブルーでグラデーション+ボーダーの水着だ。
トップはビキニを重ね着するデザインで、ボトムには水着+黒のデニムショートパンツを着用。
ショートパンツの腰の部分からちらりと覗く水着がポイント。
すごく似合っていてかわいかっこいい。ずるい。

ただ、買い物の後で気付いたけど色が青系で被っていた。

唯「どう? 似合ってる?」

梓「似合ってますよ」

唯「えへ、あずにゃんも似合ってるよ!」

梓「どうも」

唯「おっと日焼け止め忘れるところだったよ。紫外線怖いからね~」

唯「あずにゃんにも塗ってあげるね」

入念に日焼け止めを塗り準備は万端。
さあ行こう。




部屋から空中庭園へ行くにはまず55階までエレベーターで上り、そこでエレベーターを乗り換える必要がある。
55階の受付でカードキーを提示すると空中庭園用のエレベーターに乗れるのだ。
その間私達の期待は高まるばかり。
唯先輩なんかずっとそわそわしている。

長く感じたエレベーターが止まり、ドアから光が漏れると……

唯梓「わあぁぁ……!!」

ぞわぞわっと感動の波が身体を駆け巡る。
空がこんなに近くにあるなんて。

視界を覆う2種類の澄んだ青色。
プールと空の間に敷居はなくて、泳いでいる人のすぐ隣が地上200メートルの空になっている。

唯「お、泳いでて落ちないのかな……?」

と思ってしまうほどだ。
プールサイドにはヤシの木等の緑もあってまさしく空中庭園。
その神秘的な情景に感動したのは私達だけでなく、周りの色んな国の旅行客が揃って声をあげていた。

私達はバスローブを脱ぎ捨てて、逸る気持ちを抑え切れずプールに飛び込んだ。
そして恐る恐る水と空の境界へと近付く。

唯「ああー、こういう風になってるのかぁ」

梓「なるほど」

インフィニティプールの仕組みを理解した後、そのまま地上200メートルの絶景に見惚れていた。
部屋からの眺めも良かったけどそれより2倍も高くて窓もないから迫力が違う。
昨日散策したマーライオン公園やエキゾチックな街並み、さらには周りの高層ビル群までも見下ろせてしまう。
私達は感動しっぱなしで、飽きもせずずっとプールの端で肩を並べていた。

唯「……すごいね」

梓「……はい」

唯「きれいだね」

梓「ですね」

それからは2人してプールではしゃいで泳いで、お腹が空いたらプールサイドでご飯を食べてまた泳いで。
ずっと泳いでいたけど気温と日射しは常夏仕様だから寒くないし、全てを忘れて空中の楽園をエンジョイした。

思い出したのは身体がふやけてきてプールから一旦出た時。
空は既に蒼然としていて太陽の沈んだ方角に僅かな赤みを残すばかり。
私には今日やるべき事があったんじゃないのか。

梓「あ゛あぁぁしまったぁぁぁ……」

唯先輩に言わなきゃいけない事が。

唯「あずにゃん、きれいにこげたね」

梓「ぐああぁぁぁ……」

唯「せっかくプール入る前に日焼け止め塗り合いしたのにね。もっとたっぷり塗った方がよかったかなぁ」

梓「あれ以上塗られても……ていうか日焼けし易いのすっかり忘れてました……」

唯「あはは、現地の人みたい」

梓「笑い事じゃないですよ! この年でこんなに日焼けしたら肌が……」

唯「うん……あ、まだ大丈夫だって」

梓「まだとか言わないで下さい。もう部屋戻る……」

唯「えー、夜景見て行こうよ。もう日も沈んだんだしさ」

梓「……そうですね」

唯「それに焼けた肌とトロピカルブルーがマッチしててかわいいよ! 私の目に狂いはなかった」

プールの傍にあるバーで腰を下ろして一息つくと疲れが一気に押し寄せてきた。
1日中プールに入っていたから当然か。
同じく疲れ気味の唯先輩とカクテルを交わしながらプールやシンガポールの感想を話し合った。

辺りはすっかり暗くなって、代わりにプールや周りの建物がライトアップしていく。
昼の爽やかなイメージから一転して雰囲気のある空間へと変化した。

眼下に煌めく摩天楼を眺めながらカクテルを舌にのせる。
気怠さも手伝っていつまでもこうしていたいと思った。
いつの間にか口数も減り、私達の間には静かな空気が流れている。

……言うなら今しかない。
途端に緊張してきてカクテルが喉を通らなくなった。
けどいいかげん言わなきゃ。
唯先輩から告白されて2週間。
返事をするのは遅れたけどその分毎日色んな事を考えて出した答え。
私は……。

梓「ゆ――!」

梓「……唯先輩?」

唯「……くー」

梓「はあああぁぁぁ……」

寝てた。
今日が終わるまであと数時間、やっとタイミングが掴めそうだったのに……。
でもそうですよね。
今日のプールずっと楽しみにしてたから思いっきりはしゃいでたし。
初日は私が迷惑かけちゃったし、昨日も沢山観光したし。
旅行の疲れが出て当然だよ。
私も寝ちゃいそうだったし。
だけどこんな所で寝てたら風邪引いちゃいますよ。

梓「唯先輩、起きてください」

唯「……ん、ごめん寝ちゃってた」

梓「私は大丈夫ですけどいくら南国だからって夜に外で寝るのはまずいですよ」

唯「だよね」

梓「そろそろ部屋に戻りましょうか」

唯「うん、そうするよ」

部屋に戻って即ベッドにダイブする唯先輩を起こしてお風呂に入ってもらった。
塩素の強いプールだからちゃんと洗い流しておかないと。
お風呂から上がった唯先輩がさっそくあくびをひとつ。
私は先に寝てていいですよと言い残してお風呂場へ向かった。

日焼けにお湯が沁みてどうしようもなかったので入浴は断念。
あとで化粧水いっぱいつけなきゃ。
洗面所で髪を乾かしながら、鏡に映るこんがり焼けた身体にため息をついた。
遊びほうけてるからこんな事になっちゃうんだよ。
私がお風呂に入る時は既に23時を過ぎていた。
唯先輩には今日という日を楽しんでもらえたから、それはよかったけど。
でも言うなら今日がよかった……なんて今さら思っても。
……私のばか。
もうタイミングも何も関係ない、何でもいいから明日の朝一で言わなきゃだめだ。

いくらか髪が乾いたところでバスローブを羽織り洗面所を出た。
部屋は少なめの照明で照らされている。
このくらい明かりがあれば化粧水とコットン取り出せるかな。

あれ、ベッドに唯先輩がいない。

唯「あずにゃーん、日焼けのケアするからこっちおいで」

ソファで唯先輩が手招きしてる。
テーブルには化粧水や乳液等が並べられていた。

梓「あの……眠かったんじゃないんですか?」

唯「そうなんだけどさ、ほら、今日って私の誕生日だし」

梓「……そうでしたね」

唯「あっ忘れてたの?」

梓「そんなわけないです」

唯「ほんとかなー」

梓「本当ですよ」

唯「まいっか、それじゃ背中出して」

梓「……はい、お願いします」

私は唯先輩に促されるままソファに座り、バスローブをはだけさせた。
2人でコットンに化粧水をぴちゃぴちゃ垂らして、私は自分の手の届く範囲に塗り始める。
唯先輩は私の首筋から背中へと少しずつ丁寧に塗っていく。
柔らかく押し当てられたコットンから化粧水のひんやりとした感触が伝わって気持ちいい。

やっぱり唯先輩はやさしい。
さっきまで悔やんで気負ってたのに、こうしていると楽になっていく。

梓「ねえ、唯先輩」

私が振り向くと柔らかい返事を返して私を見つめてくる。

良かった。
今日はまだ終わっていなくて、
こんなに落ち着いた気持ちで言う事ができた。

梓「この前の……告白の返事なんですけど」

梓「やっぱり私の好きは、唯先輩の好きと一緒だと思います」

梓「ちゃんとした返事を返すのが遅くなってごめんなさい」

この2週間胸につっかえていたものがきれいに取れた気がした。
これで唯先輩に心置きなく旅行を楽しんでもらえるだろうか。
唯先輩の事だから抱き付いてきたり――あっ。
今は日焼けが……っていうか私服着てない。

梓「ちょ、まっ……あれ?」

唯先輩はぼーっと私の顔を見ていた。
え、何、まさか気が変わったりとか……やだ。

梓「あ、あのっ!」

私が言葉を繋げようとした時、唯先輩の目からぽろぽろと涙が零れた。

梓「うえっ!? ちょ、唯先輩っ……」

意外な展開にあわあわしてると先輩が涙声でぽつぽつと喋り出した。

唯「っだってぇ……嬉しかったんだもん……」

唯「それに、最初は告白するだけでいいやって思ってたけど……あずにゃんが希望持たせてくれるし……」

唯「毎日大丈夫かも、やっぱり駄目かもって思ってて……待ってるの……やっぱり辛かったよ……っ」

梓「あ……」

やっぱり私ばかだ。
先輩はいつもあんなだから忘れかけていたけど、当然繊細な部分だってあるに決まってる。
そういう素振りを見せないだけで、なのに私は先輩に甘えちゃって……。
もっと、安心させてあげなきゃ。

梓「唯先輩……あの、ええと、先輩の事、好きですからっ!」

唯「……ほんと?」

梓「本当です」

唯「誕生日だからっておまけしてない?」

梓「してません」

唯「じゃあもう1回言って?」

梓「う……す、好き、です」

唯「もう1回」

梓「す、好きです」

唯「もういっちょ」

梓「好きですっ」

唯「ラスいち!」

梓「好きです!」

唯「泣きの1回!」

梓「ちょっと!!」

唯「えへへごめんごめん」

やっぱり唯先輩は唯先輩だった。

唯「だって嬉しいかったし」

梓「うう……」

あんなに連呼したら恥ずかしいよ……。
さっきまであんなに落ち着いた気持ちだったのに。
いつの間にか唯先輩が笑ってて私が恥ずかしがってて……いつもと変わんないや。

唯「やっぱりあずにゃんは可愛いなあ!」

梓「な、何ですかいきなり」

唯「んふふ~、あっずにゃーん!!」

梓「ぎゃあ!? 痛い! 痛いですっ!!」

唯先輩を引きはがした後、改めて化粧水を塗ってもらった。
さっきまで平気だったのにすごく恥ずかしい事をされているような気がする。
……そういえば告白された日以来抱き付かれてなかったな。

唯先輩は化粧水を塗り終わると今度はその上から乳液も塗ってくれた。
相変わらずやさしく塗ってくれる。

梓「……あの」

唯「ん?」

梓「先輩は私に、告白するまでに色々考えたりしましたか?」

唯「色々って?」

梓「例えばですけど、私がOKしたとしたらその後が色々大変だな、とか」

唯「あー……考えたねえ。やっぱりあずにゃんも気にした?」

梓「それはそうですよ。後半はほとんどその事を考えてました」

唯「私はそればっかり考えてたらあずにゃんが遠くに行って連絡取れなくなっちゃって……」

唯「だから再会出来たら絶対言うって決めてたし」

梓「そっか……」

唯「後悔先に立たずってね! ……まあ1度後悔したんだけど」

梓「私もさっきまでお風呂で後悔してました。今日までに言いたかったので」

梓「でも先輩は起きていてくれて、まだ間に合うんだって思ったらすんなり言えちゃいました」

唯「あずにゃんって夏休みの宿題ぎりぎりまでやらない方だっけ?」

梓「そんなのと一緒にしないで下さい。……本当はもっと早く言えたらよかったんですけど」

唯「その分色々考えてくれてたんでしょ?」

梓「えっと、はい」

唯「そっかぁ……2週間の心境の変化を細かく聞いてみたいな~」

梓「え゛っ、嫌ですよ」

唯「どんな事考えてたのか気になるじゃん」

梓「絶対言いません」

唯「どうしても?」

梓「駄目です。ご想像にお任せします」

唯「ええー」



梓「おはようございます。……唯先輩?」

唯「ぎゅー」

梓「ちょっ」

翌朝、唯先輩がベッドから起き上がったと思ったら真っ直ぐ私の方に歩いて来てそっとハグしてきた。

梓「ね、寝ぼけてるんですか?」

唯「んーん、寝ぼけてないよ」

梓「や、やめて下さい」

唯「肌痛かった?」

梓「それは大丈夫ですけど……」

唯「じゃあどうして?」

梓「どうしてって……ええと」

言われてみると、何となくダメな気がするんだけど特に理由を思いつかない。

私が何も言わないのをいい事にたっぷり抱き付かれた。
朝食を食べに行く時も

唯「手繋いで行こう」

と言われて、ダメですって言い返した後の

唯「どうして?」

にうまく答えられず結局手を繋いで歩き出した。

恥ずかしいっていうのはあるけどここは海外で、知り合いもいないし会う人みんな一期一会だ。
……まあ、そういう面で日本より厳しい国にいるんだけど。
昔から抱き付かれたりするのは嫌ではなかったし、今も胸が高鳴ってる。
私達は既に一歩踏み込んだ関係なわけでますます断る理由がない。
どうしよう、このままずるずると色々な事を受け入れていっちゃうのかな。
ここにいる間は何をしてもいいような、そんな予感さえする。

梓「……ダメになりそう」

唯「へ?」

1階に降りてレストランへ行くとスタッフが席に案内してくれる。
朝食を食べる場所はホテル内に数か所あり、朝はどこもビュッフェ形式なので毎回食べるのが楽しみだ。
唯先輩は毎回と言っていいほど食べたい物を一気に盛り付けるので後で泣きを見たり私が食べたり。
しっかりした面もあるのにそういうとこばっかり見せてくる先輩が何だか可笑しくて笑ってしまう。

唯「あ、何笑ってるの?」

梓「いえ別に。ところで今日はどうしましょうか」

唯「そうだなー、昼は観光して夜にプールでどう?」

梓「いいですね。夜のプールならこれ以上肌焼けないだろうし」

唯「でしょ。それと昨日行った礼拝堂もう1回行きたいな」

梓「気に入ったんですか?」

唯「それもあるんだけど、ご利益があったからお礼もかねて改めて礼拝にね」

梓「ご利益……あっ」

そういう事か。
私も改めて礼拝した方がいいかも。

帰国は明日だから今日が最後のシンガポール観光になる。
礼拝堂でお礼をしてから昨日周らなかった場所へ行き、食べて見て楽しんで食べて満喫した。
私は昨日で重荷が降りた事や異国の地で先輩と2人きりなのも今だけだからと目一杯楽しんだ。

唯「今日のあずにゃんはいつもより元気だね」

梓「そうですか?」

唯「それに手も繋いでくれるし。そうか……ついに素直な子になってくれたんだね!」

梓「……そうかもしれませんね」

ホテルに戻って休憩と夕食を取った後、2度目の空中庭園へと向かう。
日没後のプールは子供がいなくなり、大人だけの空間となっていた。
静かにライトアップされたプールはエメラルドの淡い光を放ち、夜景と合わせて幻想的な光景。
周りの人たちはそれぞれがそれぞれの世界に入り込んでいる。
そんな空気に当てられた私達は泳ぐこともせず、ただプールに入り空からキラキラした街を眺めていた。

唯「……ふへへ」

梓「何ですか気持ち悪い」

唯「ひどいなー」

プールの端に肘をついてぼんやりしていた唯先輩が拗ねた目でこちらを見る。

梓「だって」

唯「いやね、こうしていられるのが嬉しいなーって思って。もう無理だと思ってたから」

梓「……私とこうしているのが?」

唯「うん。あずにゃんてば都会で引きこもって連絡よこさないんだもん」

梓「それは何度も謝ったじゃないですか。それから感謝もしてます」

道に迷って立ち止まっていた私を救ってくれた。
私の手を引いて迷路から出してくれた。

梓「でも、そのまま別の迷路に連れ込まれるとは思わなかったです」

唯「何の事?」

梓「別の意味で大変だっていう事です」

私は身を寄せて、先輩の濡れた肩に頭を乗せた。

唯「……お? めずらしい」

梓「あの、これからきっと色んな事があると思うんです。いい事だけじゃなくて」

唯「うん、分かってる」

梓「それで、私は今じゃないと、こういう場所でこんな風に出来ないから」

唯「そっか」

梓「……」

唯「じゃあさ、今なら何でも出来ちゃったりする?」

梓「……出来ちゃうかもしれません」

ちゃぷと水が跳ねて唯先輩の身体が私から離れる。
私は先輩の方へ身体を向けた。
辺りは薄暗くて、視界には淡く光る水とそれに照らされる先輩の顔しか見えない。

エメラルドのプールに映る2人の影が絡み合い、1つに重なりあった。



END


ラクリマクリスティで唯梓は昔あったなあ

ttp://www.youtube.com/watch?v=YLwN76R1qAI
それにしてもインフィニティプール怖すぎて泳げねえよww


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>>101
SUGEEEEEEEEEEE

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