あかり「あかりはいつでも傍にいるよ」(158)

\アッカリーン/

あかり「こんにちはー」

ちなつ「あ、あかりちゃん」

あかり「ちなつちゃん、先に来てたんだね、探しちゃったよぉ」

ちなつ「ごめんねー、結衣先輩に早く会いたくなっちゃって」

あかり「え?」

ちなつ「え?」

あかり「今日は結衣ちゃんも京子ちゃんもお休みだよ?」

ちなつ「……え?」

ちなつ「……」ズゴーン

あかり「ち、ちなつちゃん、そんなに落ち込まないでー!」


結衣先輩がいないなんて、今日はなんてついてない……。
せっかく結衣先輩のために美味しいお茶の葉を持って来てたのに。

ちなつ「はーあ……」

思い切り溜息を吐いてやると、いるのかいないのかわからないあかりちゃんが
「大丈夫だよぉ」と声をかけてくる。

ちなつ「大丈夫ってなにが?」

あかり「結衣ちゃんたち、明日帰ってくるから!」

ちなつ「京子先輩はいらないけど」

あかり「えっ」

ちなつ「うぅ、結衣先輩~……」

修学旅行に行ってしまったときのほうがもっと辛いけど、
一日だけ校外学習でいなくても辛いものは辛いんです、結衣先輩……。

あかり「ちなつちゃん、元気出して」

ちなつ「出せるかってんだー」バーンッ

あかり「ひぃっ」ビクッ

ちなつ「え?なに、あかりちゃん?」キョト

あかり「う、ううん……」ガクブル

ちなつ「……はあ……」

あかり「……そ、そうだ!ちなつちゃん、お茶飲もう!」

ちなつ「お茶ぁ?」

お茶といえば持って来たお茶っ葉。
イコール結衣先輩。
先輩に会いたくて会いたくて仕方が無いというのにお茶なんて。

あかり「あかり、ちなつちゃんのお茶、すっごく飲みたいんだぁ!」

あかりちゃんの真直ぐな笑顔を見ると、そうも言えなくなる。
私はしかたないなあと立ち上がった。
今日持って来たのは明日、先輩が来てから淹れるとして、他に何かあったっけ。

ちなつ「あかりちゃん、何が飲みたい?」

あかり「うーん、何でもいいや、ちなつちゃんの飲みたいものでいいよ!」

ちなつ「そっか」

と、言われましても。
私もなんでもいいから聞いてるわけなのに。

がさごそと入れ物を探りながら私は考える。
昨日はアップルティー、その前はレモンティー、その前の前は渋く緑茶……
偏るのはだめかなあ。

あかり「なんだかちなつちゃん、すごく真剣だねぇ」

ちなつ「えっ、そう?」

まあお茶汲みとしてプライドというかなんというか。

けどよくよく考えてみれば今日はあかりちゃんだけで、毎回のお茶の種類のことなんて
気にしなくてもいいのか。

ちなつ「よし、それじゃあ普通に抹茶で」

あかり「ふ、普通に?」

ちなつ「前に京子先輩、お茶の道具あるって言ってたよね?」

あかり「そういえば、言ってた気がする、かも……」

どうせあかりちゃんと二人っきりなんなら今までやりたくてもできなかったことに
挑戦すればいいのよちなつ!
あかりちゃんなら何でも手伝ってくれるんだから!

ちなつ「じゃあ早速探そっかー」

あかり「えぇ!?でもあかり、どこにあるか知らないよ!?」

ちなつ「そのへん探せば出てくるでしょ」

あかり「そんな簡単に行くかな……」

ちなつ「どうして?」ガサゴソ

あかり「だって、京子ちゃんがいっぱい物突っ込んだりしてるから……」

ちなつ「いくら京子先輩でも……」

そう言いながら私は押入れを開けて。
「ちなつちゃーんっ!」とあかりちゃんの焦った声が聞こえたときには時既に遅し。
ガラクタの津波が私を襲ってきていた。

なにこれなんの別アニメよ!?

ちなつ「うぅ……」

あかり「ちなつちゃん、大丈夫!?」

ガラクタの底に埋りながら助けての手を差し伸べていると、誰かの手が私の手を
掴まえて引起してくれた。朦朧とした頭が一瞬結衣先輩だと勘違いしかけたけど、
そんなことはあるはずもなく、青い顔をしておろおろするあかりちゃんだった。

ちなつ「いたた……」

あかり「ちなつちゃん!」

ちなつ「あかりちゃん、ちょっとうるさい……」

あかり「ご、ごめん!でも、大丈夫?頭とか打ってない?」

ちなつ「軽く打ったかも……」

まあそのおかげで結衣先輩の幻を見れたから良しとする。
あかりちゃんが「保健室行ったほうがいいよぉ」と引っ張ろうとするのを、
私は笑って止めた。

ちなつ「大袈裟だよあかりちゃん」

あかり「でも変なとこ打ってたりしたら大変だよぉ」

ちなつ「ほら、平気だってば!」コオドリコオドリ

あかり「ちなつちゃあん!やっぱり変なとこ打ったんだよぉ!」

ちなつ「ち、違うよこれ!大丈夫って意味だから!」

あかり「ほんとに大丈夫?」

ちなつ「うん、大丈夫!」

あぁ、もうあかりちゃんは心配性なんだから。
それにこれで私の頭がおかしくなったんなら京子先輩のせいなんだから!
京子先輩のせいになって晴れて結衣先輩とラブラブで万々歳って思えば頭の痛みなんて!

あかり「そっかぁ……あかり本気で心配しちゃったよぉ」

ちなつ「ごめんねあかりちゃん。それじゃ探そっか」

あかり「えっ、まだ探すの?」

ちなつ「うん」キョト

あかり「あ、そうなんだ……じゃ、じゃああかりも手伝うね!」

ちなつ「あ、うん……」

――やっぱり私、保健室に行ったほうがいいのかも。
今一瞬、あかりちゃんの背後に羽が見えてしまった。

あかり「それにしても、本当にいっぱいあるねー」

ちなつ「京子先輩、一体どれだけ物を持って来てるんだか……」

あかり「ほんとだよねぇ。でもこれ全部京子ちゃんらしいよね」

ちなつ「全部京子先輩らしいって……」

私は畳みに散らばった様々な物を見下ろして、なるほどと納得してしまった。
ミラクるんの何かだったり一年生の教科書だったり、そりゃあ色々だけど。
京子先輩がドヤ顔で持って来たところを簡単に思い浮かべてしまうことができる。

ちなつ「持って来たのはいいけど持って帰るのが面倒臭くて放っておいたんだろうなあ」

あかり「そこも京子ちゃんらしいよねぇ」ニコニコ

そうかなと首を傾げながら、私はあかりちゃんからそっと目を逸らした。
あかりちゃんって本当に不思議な子だ。
この子なら誰が何してもなんでも許してくれるんじゃないだろうか。

あかり「けどこんなに物があったらさすがにお茶の道具なんて探し出せないよー」

ちなつ「うーん、そうだよねー……」

あかり「掃除ついでに物をどかしながら探してみる?」

ちなつ「あ、そうだね!そういえば最近部室の掃除してなかったし」

帰って来た結衣先輩がピカピカになった部室を見て、
「ありがとう、ちなつ……さすがちなつだよ結婚しよう」なんて……。
キャーッ!

ちなつ「いやだぁ、結衣先輩ぃー」バンバンバンッ

あかり「ち、ちなつちゃん……?」

ちなつ「ハッ!ご、ごめんあかりちゃん!さっさと初めて終わらせちゃおう!」

あかり「うん、そうだね!」

ちなつ「それじゃあ物どかしていこっか。大きいものは右でゴミみたいなのやいらなさそうなのは
    真ん中、小さいのは左側に置いてって!」

あかり「うん、あかり頑張るね!」

素直な返事にうん、と頷き返すと、私は腕を捲し上げた。
よーし、結衣先輩のために一肌も二肌も……。

あかり「ち、ちなつちゃん!」

ちなつ「なにっ?」クワッ

せっかく人が頑張ろうと想像の中に浸って……!
そこで私の思考は止まってしまった。

ちなつ「……」

あかり「ち、ちなつちゃーん!」

ちなつ「ひぃ、あかりちゃん来ないでぇ!」

どうして!?
どうしてあかりちゃんの頭に蝉!?今秋だよ!?季節はずれだよ!?
しかもどうして蝉の脱げ柄が!?

あかり「なにか、なにかあかりの頭についてるよぉ~!」

ちなつ「こーなーいーでぇー!」

ドタバタ部室を走り回っているうちに、最初にダウンしたのはもちろんあかりちゃんだった。
ばたんと音がして振り返るとあかりちゃんがへなへな倒れこんでいた。

ちなつ「あ、あかりちゃん!」

あかり「あかり、もうダメだよぉ」

慌てて駆け寄ろうとしたところで、あかりちゃんの頭についていた蝉の抜け殻が
ぽとりとあかりちゃんの目の前に落ちた。

ちなつ「あかりちゃん、見ちゃだめーっ!」

あかり「え?」

ぱちっ。
目と目があったその瞬間に
心がトキメキ 胸がドキドキ
思考はパラドクス たちまち二人は恋に堕ちるエターナル!

とか、そうじゃなくって!

あかり「……」ワナワナ

ちなつ「あかりちゃん、お、落ち着いて!大丈夫!大丈夫だから!抜け殻だよっ!」

あかり「……蝉さんの、抜け殻」ポロッ

ちなつ「あかりちゃんっ!?」

うわあ、泣いちゃったよあかりちゃん!
どどどどどどうしよう!京子先輩、結衣先輩!

あかり「……吃驚しちゃったよぉ……けど、蝉さんの抜け殻なんて」

ちなつ「も、もしかしてあかりちゃんって蝉が嫌い?」

あかり「……ううん」

ちなつ「へ?」

あかり「蝉さんも蛇さんも好きだよぉ……蝉さんの寿命が短いこと知ってるけど、
    でもあかり、蝉さんの抜け殻だなんて見たくないよぉ……!」

あかりちゃん……。
なんだか私、すごく自分が恥ずかしくなってくるよ。

ちなつ「……あかりちゃん、ほら、立って」

あかり「ちなつちゃん……?」

ちなつ「後で一緒にお墓作ってあげよう、ね?」

自分でも驚くくらいに優しい声で私は言った。
まるで小さい子をあやしてるみたい。

あかり「……うん、そうだね」

でもあかりちゃんはようやく笑ってくれた。
きっとあかりちゃんは、子どもみたいな心もちゃんと持ってるんだろうな。
なんだかちょっと、あかりちゃんが羨ましい。

あかり「ごめんね、変なとこ見せちゃって」

ちなつ「ううん、いいよ。それにしてもどうして蝉の抜け殻なんてあったんだろうねえ」

あかり「あ、それは京子ちゃんが置いてったものだと思うよ」

ちなつ「えっ」

やっぱり京子先輩!
明日あかりちゃんを泣かせた罰として怒らなきゃ!

って……私がどうしてあかりちゃんのために。
その前に結衣先輩に会うという大仕事があるのにね。

あかり「それじゃあ再開しよっかぁ」

ちなつ「再開って言ってもさっき何も始めてなかったけどね」

あかり「ご、ごめんねー……」

ちなつ「あ、あかりちゃんのせいじゃないけど!」

あかり「そう……?」

ちなつ「うん、そう!ほら、あかりちゃんはそっちやって。私はこの辺りやるから」

あかり「わかったよー、ちなつちゃん」

改めて腕まくりすると、私は気合をいれて腰を屈めた。
ギクッ
うん?変な音がした気がしたけど、気のせいか。

ちなつ「なんかよくわからないの沢山あるねー」

あかり「そうだねぇ」

埃を被って真っ白になってるものも、真新しいフィギアだったり、本当に色々だ。
ていうか京子先輩は学校に何しにきてるのか。
私はぶつくさ文句を垂れながらもさっき自分で言った通り物をまとめていく。

あかり「ちなつちゃん、茶道の用具みつからないねえ」

ちなつ「うんー……」

本当にあるのか、激しく不安になってきた。
第一京子先輩の口からでまかせだったんじゃ。けれど確かにこの目で一度見たことがあるし、
でまかせなわけはない。

ちなつ「ないなあ……あ!」

あかり「見付かった?」

声を上げた私を、あかりちゃんが後ろから覗き込んできた。
私はううんと首を振りつつ見つけたそれをあかりちゃんに見せた。
少し埃をかぶっているけど、幼稚園の名前と、ふなみゆいの文字。

ちなつ「ねえ、これって!」

あかり「わー、懐かしいー!あかりたちの通ってた幼稚園の卒園アルバムだよぉ」

ってことは、結衣先輩の小さい頃のご尊顔が拝めるってわけね!
さすが結衣先輩!
こんな素敵なものを置いてってくださるなんて!

あかり「ちょっと見てみる?」

ちなつ「もちろんっ!」

あかり「あかりも見てみたから嬉しいよぉ」

ちなつ「えーっと、結衣先輩の写真は……」

だいぶ手垢のついているアルバムを私は必死でめくっていく。
ずらりと幼い顔が並んでいる中、いくら私でも結衣先輩の顔を簡単に見つけるわけには
いかなかった。

あかり「あ、これなもりちゃんじゃないかなぁ」

ちなつ「な、なもりちゃん?」

あかり「こっちはゆりちゃん!」

ちなつ「えーっと……?」

あかり「結衣ちゃんや京子ちゃんのお友達で、あかりもたまに一緒に遊んでもらってたんだぁ」

ちなつ「へえ……」

私がまったく知らない顔を指しながら嬉しそうに話すあかりちゃんを見て、
なんだか私は複雑な気分だった。
あかりちゃんや結衣先輩たちとは中学で会ったんだから、知らない関係があって
当然なのに。

ちょっと寂しいっていうか。
……結衣先輩、早く帰ってこないかなあ。

あかり「あ、あった結衣ちゃんだよ!」

ちなつ「えっ?ど、どれ?」

あかりちゃんの声に私ははっと我に返った。
あかりちゃんの指す顔に目が釘付けになる。
あぁ、結衣先輩!小さい頃からなんて凛々しい!

ちなつ「この写真百枚欲しい」

あかり「えっ」

ちなつ「冗談だけど5枚は欲しいかな……」

あかり「そ、そうなんだ……」

ちなつ「京子先輩はこっち?」

あかり「うん、そうだよぉ。二人とも小さい頃から仲良しさんだったから、ほら」

ちなつ「あ……」

あかり「写真もほとんど二人一緒」

いいなあ、京子先輩。
突然、そう思ってしまった。いつでも結衣先輩の傍にいられる京子先輩が、
すごく羨ましかった。私ももう少し早く生まれてたら。

あかり「あかりも実はここに写ってるんだよぉ」

ちなつ「え、どこ?」

あかり「ここだよぉ!」

ちなつ「……あ、そうだね、うん」

ちなみにあかりちゃんは、
繁みの中にひっそりいたのが写っていた。

―――――
 ―――――

卒園アルバムは脇に置いておき、再開した片付けにようやく光が見え出したのは
もう放課後終了のチャイムが鳴り掛ける少し前だった。

ちなつ「ふう、あと少しだー」

あかり「ほんとだねぇ」

ちなつ「そろそろお茶に……って、あ!」

あかり「どうしたの、ちなつちゃん?」

ちなつ「本来の目的忘れてた!」

あかり「……あぁっ!」

そういえば私たちは茶道の道具を探していたんだった。
けれど見つけたら思い出すはずだし、片付けた中にもそれらしいものは何も入っていない。

あかり「……ないねぇ」

ちなつ「いったいどこに行ったってのよー……」

あかり「ちなつちゃん……顔怖いよ」

ちなつ「うぅー」

あーもう……。
結衣先輩結衣先輩結衣先輩結衣先輩結衣先輩結衣先輩結衣先輩……!
京子先輩のバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカ……!

なんかすっごいイライラする。

あかり「ちなつちゃん……」

ちなつ「なによー……」

あかり「ちなつちゃん、すごく顔色悪いよ!?」

ちなつ「えっ?」

あ、そういえばなんかいつもとちょっと違うかも。
ふらふらするし、腰のあたりが。
そう思った途端、私の身体がふわりと揺れた。

あ、倒れる。
冷静な頭のどこかでそう思った時、結衣先輩ではなくあかりちゃんが私を受け止めてくれた。

今度は結衣先輩の幻見えなかった。
思わずあかりちゃんかっこいいなあって思ったけど、あかりちゃんの顔がなんか
怖くてやっぱりかっこよくないやと前言撤回。
けどあかりちゃんの腕の中はあったかい。

あかり「ちなつちゃん!やっぱりさっき変なとこ打ってたんじゃないっ!?」

ちなつ「うーん……ていうか」

腰のあたりがズキズキする。
頭というよりは、腰がやられてしまったらしい。さっきギクッと音をさせたのは
私の腰だったのか。

あかり「大丈夫?立てる?」

ちなつ「た、立てないかも……」

さっきまではなにもなかったのに。
というより、意識したらひどい痛み。一度意識しだすと追い出すことなんてできなくて、
私はあかりちゃんの腕から離れると「いたたた」とおばあちゃんみたいに蹲った。

あかり「ど、どうしよう!誰か先生呼んでくる!?」

ちなつ「ううん、大丈夫なんだけど……」

あかり「あかり、こういうときどうすればいいかわからないよぉ」

ちなつ「私もわからないから大丈夫だよ、あかりちゃん」

あかり「だから大丈夫じゃないんだってばぁ!」

あかりちゃんの叫びに共鳴するようにチャイムが鳴った。
下校時間だ。

あかり「あ、帰らなきゃ……」

ちなつ「えぇーっ?あかりちゃん、それじゃあ手貸してくれる?」

あかり「だ、だめだよ無理して動いちゃ!」

ちなつ「でも、それじゃあもうすぐ見回りの人来ちゃうよ?今は杉浦先輩たちが
    知らないふりしてくれてるからいいけど、下校時間過ぎてもいるのバレちゃったら
    さすがに許してくれないでしょ?」

あかり「そ、それはそうなんだけど……」

そこに、まさにタイムリーに誰かの足音。
あかりちゃんの身体がびくんと震えたのがわかった。

あかり「そうだ、電気消しちゃえばいいんだよ!」

ちなつ「えっ」

あかり「それで、音も何も立てないでね!」

あの天使のようなあかりちゃんが校則違反でもするつもり!?
私が慌てて反論しようとするのを、あかりちゃんの手が塞いだ。

見回りの誰かがこの建物に入ってくる。
しばらく立ち止まった後――出て行った。

あかり「はあ……」

ちなつ「あ、あかりちゃん、いいの?」

あかり「わ、わかんないよぉ、けどちなつちゃんが……」

その時、かしゃんっと硬い音がした。
……え?鍵でもかけられた?

あかり「どどどどっどうしよう!」

ちなつ「あかりちゃん、まずは落ち着いて!」

あかり「そ、そうだけどぉ」

ちなつ「いい?鍵が中から開けられないなんてことあるはずないの」

結衣先輩と閉じ込められる展開ならばっちこいだけど、
少なくともこの学校でそういうことってないはずだ。

ちなつ「だから出られる!」キリッ

あかり「ちなつちゃん、そうじゃないよ……」

ちなつ「えー?」

あかり「鍵、私たち持ってないよね?」

ちなつ「うん、そうだけど……」

あかり「鍵がなきゃここ、開けっ放しになっちゃうよ。それはそれで違反に
    なっちゃうんだよぉ!」

う。
そういえばそんな話もあったようななかったような。
ここでひっそりしているか、鍵を取り返してまた返しに行くかのどちらかしか
手はない。

あかり「ちなつちゃん、歩けないよね?」

ちなつ「め、面目ない……」

いや、もとはと言えば京子先輩のせいなんだけど!

>>66
あかり「どどどどっどうしよう!」

ちなつ「あかりちゃん、まずは落ち着いて!」

あかり「そ、そうだけどぉ」

ちなつ「いい?鍵が中から開けられないなんてことあるはずないの」

結衣先輩と閉じ込められる展開ならばっちこいだけど、
少なくともこの学校でそういうことってないはずだ。

ちなつ「だから出られる!」キリッ

あかり「ちなつちゃん、そうじゃないよ……」

ちなつ「えー?」

あかり「鍵、あかりたち持ってないよね?」

ミスorz

思いもしない方向にいったので>>57から書き直す
面目ないです

>>57

ちなつ「……ごめんね、あかりちゃん」

あかり「ううん、平気だよぉ。それよりちなつちゃんは大丈夫?」

なんとか、と笑ってみせながら相変わらずの痛みに顔が引き攣っていないか
心配だ。
あの後すぐにあかりちゃんが先生から湿布を貰ってきてくれて立てるようには
なったけど、あかりちゃんに支えてもらわなきゃ歩けない。

ちなつ「まだちょっと痛いかも」

あかり「そっかぁ……」

これじゃあ明日一日ぶりに会える結衣先輩に思い切り抱き着きに行くのは
困難かもしれない。
ぐぬぬ、悔しいっ。

あかり「ち、ちなつちゃん、なんか暗いオーラーでてるよっ」

ちなつ「あ、ごめん。でもあかりちゃん、本当に送ってもらっていいの?」

あかり「うん。あかり、ちなつちゃんと最後まで一緒に帰れて嬉しい」

えへへと照れたように笑うあかりちゃん。
私はそっかと俯いた。
やっぱりあかりちゃんって不思議な子。ささくれ立った心がなんだか柔らかくなってくる。
それに、腰の痛みもあかりちゃんに触れられていると心なしかマシになっていた。

あかり「ちなつちゃんのお家ってここを曲がればいいんだっけ?」

ちなつ「あ、違う違う。次の角だよ」

あかり「あ、そっかぁ。暗い時間に来た事無いからわからなかったよぉ」

ちなつ「そういえばそうだねー。あかりちゃんの家に泊まったことはあるけど」

あかり「うん、楽しかったねー、お泊り会!」

そんなことを話しながら、家の前にたどり着く。
そして、珍しく家に電気が点いていないことに気が付いた。

ちなつ「あれ……?」

あかり「どうしたの、ちなつちゃん?」

ちなつ「家、誰もいないのかな」

あかり「えぇ!?」

今日お母さんはいるはずなのに……。
そう思った時、玄関の扉が音もせずに開いた。

ちなつ「あっ、お姉ちゃん!」

ちなつ姉「あら、ちなつ。お帰りなさい」

ちなつ「電気もつけないでどうしたの?ていうかお母さんは?」

ちなつ姉「えーっと、その……。あ、お母さん、今日は帰れないって」

ちなつ「そうなんだ」

と、突然お姉ちゃんの姿勢がぐんっと良くなった。
困ったように私たちを見比べているあかりちゃんに気付いたらしい。

ちなつ姉「ち、ちなつ、その子は?」

あかり「あ、あか……じゃなかった、私赤座あかりです!」

ちなつ姉「赤座……?じゃああなたが赤座さんの……!」

ちなつ「そういえばお姉ちゃん、あかりちゃんのお姉さんと友達だったんだよね」

ちなつ姉「あ、あ、あ、あ、あの!」

あかり「は、はい!」

お姉ちゃんがどうしてテンパってるのかわからないけど、
あかりちゃんすごいびくついてるよ!?びくついて私の身にまで及んでるんだけど!?

ちなつ姉「あの、いつも妹がそ、その、お世話になって……」

あかり「えっ、あの、こちらこそいつも姉が」

いやいやいや。
どんな会話をしてるんだ。

あかり「あ、ちなつちゃん」

ちなつ「ん?」

あかり「お姉さんがいるみたいだから、あかり、帰るね」

ちなつ姉「えっ」

ちなつ「えっ」

あかり「えっ?」

ちなつ姉「あの、赤座さん、泊まっていったら!」

あかり「で、でもそんな、悪いですよぉ。ちなつちゃんを送りに来ただけで……」

ちなつ姉「えっ、ちなつを!?」

あかり「腰を痛めたみたいだからその……」

ちなつ「お、お姉ちゃん、あかりちゃんが」

ちなつ姉「そんな!ごめんなさい、ますます泊まるべきじゃないかしら!」
     イモウトサンガチナツノモノニナレバヒツゼンテキニワタシモアカザサンニチカヅクコトガ……。

あかり「えぇっ!?」

ちなつ「お姉ちゃん、なんか漏れてる」


ちなつ「ごめんね、あかりちゃん。お姉ちゃんが無理矢理」

あかり「ううん、いいよ。それにさっきちょうどまたお泊り会したいなって
    言ってたから、ほんとは嬉しかったんだぁ」

ちなつ「……ふーん」

私はあかりちゃんの笑顔を布団で遮断。
なんだか今あかりちゃんの笑顔を見てたら眩しくて目が壊れちゃいそう。

この時間、いつもなら結衣先輩のことしか頭にないのに今日は意識の隅に
あかりちゃんがいてうまく寝付けない。

急に消えてすいません
再開します

あかり「あ、そうだ、パジャマ貸してくれてありがとう」

ちなつ「ううん、持って来てないのは当たり前だもん」

あかり「ちなつちゃんとおそろいなんだね、これ」

ちなつ「お母さんが色違いで買ってきたからずっと置いてたままだったんだ」

あかり「そっかぁ」

ちなつ「もし気に入ったならあげるよ」

あかり「ほんと?わぁ、あかり嬉しいよっ!」

色々あって疲れているはずなのに、あかりちゃんは変わらず元気だ。
私は明日も学校で腰も痛くて早く眠ってしまいたいのに、今眠ったら悪い夢を
見てしまいそうで。だからあかりちゃんがこうして話しかけてくるのは迷惑だけど
すごくありがたかった。

ちなつ「ねえ、あかりちゃん」

あかり「なあに、ちなつちゃん」

柔らかなあかりちゃんの声。
私はそっと寝返りをうつと、あかりちゃんを見た。あかりちゃんもじっと私を
見ていた。ずっと私の背中を見ながら話していたんだ。

ちなつ「明日、結衣先輩帰ってくるよね」

あかり「うん、大丈夫だよ」

ちなつ「京子先輩も」

あかり「うん、元気に帰ってくるんじゃないかなぁ。何かお土産持って来てくれると
    いいよね。でもまだちゃんと部室の整理してないや」

ちなつ「あ、ほんとだ……」

あかりちゃんが笑って、私もつられて笑った。
明日は先輩たちが来る前にきれいに掃除しなきゃ。腰治ってるといいけど。

http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org2123772.jpg

そんなことを考えているうちに、次第に目がとろんとしてきた。
あぁ、寝ちゃいそう。

あかり「……ちなつちゃん」

ちなつ「……ん?」

あかり「結衣ちゃんたちがいなくて、寂しいよね」

ちなつ「……ん」

眠くて上手く頭がまわらないけど、あかりちゃんがとても悲しそうな顔をしたのは
わかった。結衣先輩ならきっとあかりちゃんにこんな顔をさせないんだろうなと
思った矢先、「私も結衣ちゃんたちがいないと寂しいんだぁ」と。

ちなつ「あかりちゃん……」

あかり「だからちなつちゃんの寂しいって気持ち、よくわかるよ。何度も
    どうして京子ちゃんたちと同じ歳に生まれなかったんだろうって、
    そう思った時もあるくらいだもん」

>>129
ちなあかああああああああああああああああっ!

意外だった。あかりちゃんがそんなことを考えていたなんて。
それに、私と同じこと……。

あかり「仕方ないってわかってるんだけどね」

えへへ、と自嘲気味に笑うあかりちゃんがぼんやり見えて、
私はまわらない舌で「わかるよ」と答えた。
あかりちゃんはえ?と首を傾げたあと、「そっかぁ」とやっぱり笑った。

あかり「でも、あかりとちなつちゃんはずっと一緒にいられるよね」

ちなつ「……そう、だね」

結衣先輩でもあかりちゃんを悲しい顔にさせてしまうのに、私なら今のあかりちゃんのように
こんなに幸せそうに笑わせることができるのかなあ。
そう思うと、少しだけ嬉しかった。

あかり「あかりだけじゃ頼りないかも知れないけど、あかりはちなつちゃんのこと
    大好きだから、一緒にいれて楽しいよ。結衣ちゃんたちがいなくても、だから」


あかりはいつでも傍にいるよ。

優しいあかりちゃんの声が直接私に語りかけてくるみたいだった。
その言葉に安心して、私はようやく眠っても大丈夫だと思えた。

ちなつ「……私も」

あかり「うん?」

私もいつでもあかりちゃんの傍にいたいな。

そう言いたかったけど、言えなかった。
でも、まあいいや。
明日もそのまた明日も、私たちは傍にいられるもんね。

おやすみ、あかりちゃん。

終わり

\アッカリーン/
京子「あかりはいい子」
結衣「ほんといい子」
ちなつ「あかりちゃんは不憫なんかじゃないよ!」

一年生コンビはちなあか、さくひまが至高
支援、保守ありがとうございましたー

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