櫻子「ラーメン二郎!」向日葵「ですの?」(328)

櫻子「ヤサイマシマシニンニクアブラカラメ」

向日葵「は?」

櫻子「ヤサイマシマシニンニクアブラカラメ!」

向日葵「ついに狂ったんですのね……」

櫻子「く、狂ってなんかないやい!」

向日葵「で、今の呪文みたいなのは、一体なんですの?」

櫻子「べーっ、向日葵には教えてやらないよー」

向日葵「なんだかちょっとムカつきますけど、櫻子が狂ってしまったのなら仕方ありませんわね。教えて頂かなくても結構です」

櫻子「う、うるさいな!」

向日葵「では、本当は会いたく無いのですが、また明日」

櫻子「向日葵なんて、寝坊してそのまま学校来るのが面倒になって休んじゃえばいいのにー!」

向日葵「いつも寝坊で遅刻ギリギリなのはあなたでしょうに……」

立った

・書き溜め有り、完結済
・多分なフィクションを含みます
・40分の人じゃありません

~大室家 玄関~

櫻子「~♪」ガチャッ

向日葵「……」

櫻子「……えっと」

向日葵「はい」

櫻子「はいじゃないが……。なんでうちの前にいるんだよ……」

向日葵「今日は家族が外出しているのを忘れていたので、こちらで夕食をご一緒させて頂こうかと。あ、でも決して、櫻子と一緒に食べたいと思って来たわけではないので」

櫻子「なら、一人寂しく食べてればいいじゃんか」

向日葵「…………。流石に寂し過ぎるので、櫻子と一緒でも我慢しますわ……」

櫻子「むっか~。大体、さっき『また明日』って言ってたじゃん。それで家族がいないからってだけでわざわざ私に会いに来るなんて、自分で言った事も忘れてんの?」

向日葵「事情が変わったんですわ。というか、忘れていましたって言ったじゃねーですか」

櫻子「おお、そっちも忘れておったか。きっと脳に栄養が回ってないんだね、おっぱいに取られてばっかで」

向日葵「では、あなたの脳みそ引っこ抜いて、私の足りない脳の足しにしてもよろしいかしら?」

櫻子「若干オブラートでも、それはそれで怖い……」ガクブル

向日葵「それで?」

櫻子「なにさ」

向日葵「あなた、今からどこかに出かける予定でしたの?」

櫻子「うん、ご飯」

向日葵「あら、家で夕食を取るんじゃ――そういえば、家の中が静かですわね」

櫻子「なんか私しかいないみたい」

向日葵「櫻子もでしたの。ということは、あなたも一人寂しく夕飯を取る所でしたのね。それでは私が何か作って――」

櫻子「だが断る」

向日葵「ってなんでですのー」

櫻子「今日はもう外に食べに行くって決めてるの。あと突っ込まないよ」

向日葵「外食ですの? お金はちゃんと持っていて?」

櫻子「へへっ、じゃ~ん」ピラッ

向日葵「あら、野口先生」

櫻子「これだけあれば何でも食えるよ!」

向日葵「では、私もご一緒しようかしら?」

櫻子「えっ? ついてくんの?」

向日葵「べっ、別に私は櫻子と一緒に夕食を取りたいと思っていたとか、全然まったくそんな事これっぽっちも考えて――」

櫻子「だが断る」

向日葵「ってなんでですのー」

櫻子「これから行く所は、戦場だから……! あと突っ込まないからね」

向日葵「戦場って……。また何か、漫画かアニメに影響されたんですの?」

櫻子「違うよ……あそこは本当に戦場なんだよ……」

向日葵「はいはい。で、その戦場のお店はなんという名前ですの?」

櫻子「二郎」

向日葵「どなたですの……?」

櫻子「二郎は二郎だよ」

向日葵「二郎って――はっ……! ま、まさかあなた……お付き合いしている男性が……!」

櫻子「ちょっ?! な、なに勘違いしてるんだよ! そ、そんなのいるわけないでしょ!」

向日葵「そうだったんですのね……。では私は、誰もいない家で、一人寂しく目刺と納豆だけの夕食を取る事に致しますわ……」

櫻子「いや、それいくらなんでも侘し過ぎ……って、ああ! こらちょっと待てって!」ガシッ

向日葵「っ……!? な、なんですの……?」

櫻子「二郎なんて人は知らないってば! 私は、ラーメン二郎に行くの!」

向日葵「ラーメン二郎……? な、なるほど……お店の名前でしたのね……。私とした事が、とんだ勘違いを……てっきり櫻子に愛想を尽かされたのかと――」

櫻子「?」

向日葵「なっ、なんでもありませんわ! ええと、ラーメン二郎だったかしら? 聞いたことありませんわね、ラーメン屋さんですの?」

櫻子「違うよ、二郎は二郎だよ」

向日葵「違うんですの? でもラーメン屋さんじゃないのに、ラーメンという名前をつけてるだなんて、おかしな話ですわね」

櫻子「二郎は二郎だから二郎っていう食べ物なんだよ」

向日葵「言っている意味がわかりませんわね。なんだか帰り際も様子がおかしかったですし、仕方ないですからやっぱり私もついていって差し上げますわ」

櫻子「くっ、来るな!!」

向日葵「えっ……?」

櫻子(向日葵なんかを、あの二郎に連れて行ったら……それこそ本当に死んじゃうかもしれないし……)

向日葵「櫻子は……私と一緒にご飯を食べるのが……そんなに嫌なんですの……?」

櫻子「えっ……」

櫻子(げっ……! 向日葵のやつ……もしかして泣きそう……?)

向日葵「そうですか……わかりましたわ……。では私は、誰もいない家で、一人寂しく梅干と沢庵だけの夕食を取る事に致しますわ……」トボトボ

櫻子「さ、さっきより侘しく……って、ああ! デジャヴュだけど、こらちょっと待てって!」ガシッ

向日葵「っ……!? な、なんですの……?」

櫻子「しょ、しょうがないからついて来ても……いいかな……なんて」

向日葵「さ、櫻子……!」パァァッ

櫻子(うっ……か、かわ――いいわけないだろ! なに考えてんだ私は!)

櫻子「ほ、ほら! さっさとしないと置いていくよ!」スタスタ

向日葵「あ、待って櫻子……!」

櫻子(で、でも流石に向日葵を二郎に連れて行くわけにはいかないから……。しょうがない、今日は他のところで我慢しよう……)

向日葵「で、ラーメン二郎というのはどちらにあるんですの?」

櫻子「え?」

向日葵「だって今日は、そのラーメン二郎という所に行くのでしょう?」

櫻子「はっ、はぁぁぁぁ!?」

向日葵「ちょ、ちょっと? びっくりするじゃないの」

櫻子「いい向日葵!? さっきも言ったけど、二郎は戦場なんだよ!? あんな所に向日葵が行ったら、即撃墜! ゲームオーバーだよ!」

向日葵「そ、そうなんですの?」

櫻子「大体向日葵みたいな軟弱な生き物は、二郎に近寄る事すら出来ないよ」

向日葵「なんだか言い方がムカつきますわね……」

櫻子「ていうか、向日葵ってそもそもラーメン屋行くイメージ無いんだけど」

向日葵「確かに……ラーメン屋さんには一度も入ったことがないかもしれませんわね」

櫻子「そっか。じゃあせっかくだから、今日はラーメン屋行ってみる?」

向日葵「だったら、そのラーメン二郎に行きましょう」

櫻子「どうしてそうなった」

向日葵「櫻子、さっきとっても嬉しそうでしたから」

櫻子「は?」

向日葵「とっても浮かれていましたわよね。ならそのラーメン二郎という所は、とっても美味しいに決まってますわ」

櫻子「え……?」

向日葵「あなた、好物を食べる前っていつもあんな感じですのよ」

櫻子「なん……だと……?」

向日葵「というわけで、ラーメン二郎に案内してくださる?」

櫻子「だが――」

向日葵「断るの禁止ですわ」

櫻子「先回りされた……だと……?」

向日葵「どうしても連れて行ってくれないんですの?」

櫻子「当たり前だよ! あんなとこに向日葵を連れて行くなんて……」

向日葵「なんだか怪しいですわね。もしかしてあなた、私にラーメン二郎を知られるのが嫌なんじゃないの?」

櫻子「え? なにそれ」

向日葵「あんなに浮かれるほどのおいしいものが食べられるお店を、一人で独占したいなんて、随分と幼稚ですわね」

櫻子「むっかー……」

向日葵「それとも、そのラーメン二郎は、実は私に勧められる程のお店ではなかったと――」

櫻子「そ、そんなに言うなら連れて行ってあげるよ! でも後悔すんなよ! 行きたいって言ったのは向日葵なんだからな!」

向日葵「相変わらず単純ですわね……。まぁそこがまた可愛らし――」

櫻子「なんか言った?」

向日葵「い、いえ、別に。……なんでもねーですわよ」

櫻子「? 変な向日葵」

向日葵「案外遠いんですのね、お腹がすきましたわ」

櫻子「これくらい歩いてお腹すかせた方が丁度いいって」

向日葵「量が多いんですの?」

櫻子「二郎だからね」

向日葵「回答になってませんわね……」

櫻子「おっ、そろそろかな」

向日葵「っ……?! な、なんですのあの行列は……!」

櫻子「え? いや普通だけど」

向日葵「こんな高岡の片田舎のラーメン屋さんに、あんな行列が出来るなんて……」

櫻子「まぁ基本20人待ちくらいだからね。今日はまだ15人程度だし、ちょっと少ないくらいかも」

向日葵「行列=有名店=美味しい……。これは櫻子が上機嫌になる理由も、わかる気がしますわね……」

櫻子「何そのスイーツ脳」



※ 富山県高岡市にラーメン二郎はありません。

向日葵「それにしても……このニンニクの匂い、なんとかなりませんの……? お店の外まで匂って来るなんて、お洋服に匂いが付かないかしら……」

櫻子「いや、だってこの匂いあっての二郎だし」

向日葵「あ、櫻子。あなた、たまにお口がニンニク臭いと思ったら、このせいでしたのね?」

櫻子「えっ……マジで……?」

向日葵「まったく、ちゃんと歯を磨かないと駄目でしょう? 一応女の子なんですから」

櫻子「ご、ごめん……。でも、歯を磨いたくらいで二郎の匂いがとれるとは……」

向日葵「あんなニンニク臭を漂わせていたんでは、色々と幻滅してしまいますわ。その……例えば……キス、の時とか……」ゴニョゴニョ

櫻子「なんか言った?」

向日葵「ななな、なんでもないですわ!」

櫻子「? 変な向日葵。あ、本日2度目だ。あと1回で3回だね」

向日葵「ムカつきますわね。でも3回達成すると、何かいいことでもあるんですの?」

櫻子「んーと、櫻子ちゃんのちゅーが貰えます」

向日葵「ちゅ、ちゅーですの!?」

櫻子「ただしニンニク臭たっぷりのお口でちゅーです」

向日葵「非常に惜しいですけど、流石に遠慮しておきますわ……ムードの欠片もないですし……」

櫻子「ぐだぐだしてないでさっさと並ぼうよ。もうお腹すいたし」

向日葵「……この娘は……。でもまぁ、それもそうですわね」

櫻子「15人待ちだと、大体30~40分位かなぁ」

向日葵「結構待つんですのね」

櫻子「この待ち時間も醍醐味だけどね」

向日葵「櫻子の癖に難しい言葉を使うんですのね」

櫻子「にゃんだとー!? って、あ、あれって――」

結衣「えっ? お、大室さんに古谷さん……? どうしてこんな所に……」

櫻子「船見先輩こそ。もしかして、先輩もジロリアンだったんですか?」

結衣「まぁ隠してたわけじゃないけど……実は結構来てるんだ。ほら、私一人暮らしだから、食事の融通できるし」

櫻子「そうだったんですかー! いやー、知らなかったなー。実は私もちょくちょく来てるんですけど――」

向日葵「櫻子」クイクイ

櫻子「何だよ向日葵、今大事な話してるのに」

向日葵「ジロリアンってなんですの?」

結衣「えっと、簡単に言えば、二郎が大好きな人の事だよ」

櫻子「そうそう。まだ一度も食べた事の無い向日葵は、確実にジロリアンじゃないけどね~」

向日葵「ぐぬぬ……なんだかよくわかりませんが、確実に調子に乗ってますわね……」

結衣「えっ? 古谷さんは二郎はじめてなの……? だ、大丈夫……?」

向日葵「なにがでしょうか?」

櫻子「あー、向日葵の奴無理矢理ついてきたんですよ。せっかく私が止めてやったっていうのに」

結衣「うーん……。それなら、今からでも列を抜けた方が……」

櫻子「ですよねー? それなのに向日葵ったら駄々こねて、私を散々困らせてそれでも来たいって言うから仕方なく――」

向日葵「断固として帰りませんわ!」

櫻子「なんですとー!?」

向日葵「今更私を除け者にしようだなんて、そうはいきませんわよ」

結衣「ま、まぁそこまで言うならいいんじゃないかな……あはは……」

千歳「あらあら? 皆さんお揃いで~」

千鶴「こんばんは……」

結衣「え? 千歳に千鶴? もしかして2人も……」

千歳「実はな、ちょっと前に、千鶴がたまに行くラーメン屋さんがあるっていう話聞いてな? それ聞いてうちも来てみたんやけど、これがハマってしもうてな~」

千鶴「姉さん、意外とこういうの好きみたいで」

千歳「うちも今では立派なジロリアンや~。まぁ千鶴には勝てへんけどね~、なんせ殆ど毎日行ってるみたいやから」

千鶴「姉さん、それ内緒……////」

櫻子「毎日……凄い……」

向日葵「そんなに凄いんですの?」

結衣「毎日かぁ。でも私も結構来てたつもりだけど、千鶴を全然見かけなかったのはなんでだろう?」

櫻子「そういえば、私も見かけた事ないですね」

千鶴「いつも行くの、夕方一番最初だから」

結衣「ってことは、学校終わって夕方からの開店待ちしてるとか……?」

千鶴「……////」コクン

千歳「あはは、それで家帰ってきて夕飯も食べるんやもんね~。千鶴は食いしん坊さんやな~」

千鶴「ね、姉さん!////」

結衣(う、嘘……)

櫻子(二郎食べた後に夕飯とか……)

向日葵(間食にラーメンを食べても、千鶴先輩はお肉が付いているように見えませんわね。ダイエットでもしてるのかしら?)

京子「おーい! 結衣ー!」

結衣「あ、京子。遅かったな」

京子「いやー、ちょっと迷っちゃってさ~。結衣の言ってた、ラーメン太郎?」

結衣「二郎だ、わざとだろ」

京子「えへへ、バレた? で、そのラーメン二郎に来るの初めてだったし。あれ、向日葵ちゃんに櫻子ちゃんに千歳まで。おお、ちっづる~!」

千鶴「ちっ……」

千歳「あらあら歳納さんまで? えらい賑やかになってきたな~」

向日葵「こんばんは」

櫻子「こんばんはー。歳納先輩、二郎は初めてなんですか?」

京子「うん、そうなんだよ~。結衣の奴がたまに行くって話聞いてさ、一緒に行く事になったんだけど」ジトー

結衣「な、なんだよ……」

京子「それが結衣の奴さ~。私が待ち合わせにちょーっと遅れただけで、置いて行ったんだよ~? 酷いと思わない?」

向日葵「どのくらい遅れたんですか?」

向日葵(歳納先輩の事ですから、ちょーっとと言っても1時間くらいは遅れてそうですわね。櫻子と同じタイプですし――)

結衣「10分……」

櫻子「え? たったの10分ですか?」

京子「そうだよ。いつもの私に比べたら、あってないようなレベルだよ」

向日葵「先輩さーっせんっしたー!」

京子「えっ? ど、どしたの向日葵ちゃん……?」

櫻子「なんか今、凄い失礼なこと考えられてる気がする……」

向日葵「コホン……。でも、たった10分程度の遅刻なら誰でもありそうなものですけど……」

京子「そうだよねー? なのに結衣ったら、怒って先行っちゃったみたいでさ」

結衣「べっ、別に怒ってなんか……」

京子「え、じゃあどうして置いていったのさ」

櫻子「もしかして~、二郎が待ちきれなかったとか!」

結衣「っ?!」

向日葵「こら櫻子。船見先輩があなたと同じ思考回路だと――」

結衣「そ、そうだよ……」

向日葵「は?」

櫻子「ほらやっぱり~。船見先輩は、生粋のジロリアンとお見受けしました!」

京子「え? マジで? そっか~、結衣がそこまでして食べたいラーメン屋さんなんて、なんだかワクワクするな~!」

結衣「わ、悪かったとは思ってるけど……////」

京子「というわけで結衣、後ろに入れて~」

結衣「えっ……?」

京子「ホイ、っと」

櫻子「あ……!」

向日葵「?」

千鶴「バカ! 歳納お前っ……!」

京子「んえ?」

『ギルティー!』ガシッ

京子「ほえ?」

『ギルティー! ギルティー!』ワッショイワッショイ

京子「あ、あ~れ~」

『ギルティー! ギルティー! ギルティー!』ポイッ

千歳「歳納さん……なんて罪深いことを……」

櫻子「あれはギルティされても仕方ないですね……」

向日葵「ぎ、ぎるてぃってなんなんですの……?」

結衣「まあ、くれぐれも横入りはしないように、って事かな……」

櫻子「恐ろしくて絶対出来ませんけどね……」ガクブル…

向日葵「確かに社会の常識ですものね……。で、でも、あれはいくらなんでもやりすぎでは……?」

結衣「そ、そうだ。古谷さんも二郎初心者だったよね。今のうちにギルティされないように、色々教えておこう」

向日葵「私もぎるてぃされてしまうんですの……?」

千歳「大丈夫や。注意点さえ守れば、ジロリアンの方々は皆淑女やで~」

千鶴(流石に淑女はないと思う……)

櫻子「ひ、向日葵! 絶対ギルティーされたら駄目だよ!」

向日葵「なんだかよくわかりませんが、気をつけますわ……」

結衣「うん。じゃあまずは、注文の仕方からかな。二郎は食券なんだ。まずは食券を――ってもうすぐ私達の番じゃないか」

千鶴「ロット、私達5人みたいですね」

結衣「そうだね。まぁ友達同士だし、ある意味丁度よかったかも」

千鶴「船見さん」

結衣「?」

千鶴「ロットバトル、しませんか」

結衣「なっ……!」

千歳「あ、だったらうちも~。いっつも千鶴に負けとるし、ここらで一発姉の意地見せたる!」

櫻子「じゃ、じゃあ……私もやります!」

結衣「仕方ないな……受けて立つよ、千鶴」

向日葵「櫻子、ロットバトルってなんですの?」

櫻子「ん~、簡単に言えば早食いかな?」

千鶴「違う」

櫻子「へ?」

千鶴「ロットバトルは、ただの早食いじゃない。二郎の全てを、流れるように美しく味わう勝負の事。勿論そこには早さも含まれるけど」

千歳「あらあら、千鶴が珍しく熱くなってるね~」

千鶴「……////」

結衣「早く食べないとずっと席を占拠しちゃってて、お店に迷惑がかかるっていう意味でね。まぁ結局は早食いって言うのも、間違ってはいないんだけど……」

櫻子「ま、まあ向日葵には関係ない話だよ。この勝負は、私達4人でするから引っ込んでて!」

向日葵「……勝負ですわ」

櫻子「え……?」

向日葵「勝負ですわ、櫻子!」

櫻子「な、なんだってー!?」

向日葵「あなたの前で勝負の舞台にすら上がれないとは、この次期生徒会副会長 古谷向日葵の名折れですわ!」

櫻子「次期副会長は私――って、そういう問題じゃなくて! 今の話聞いてた!?」

向日葵「勿論ですわ。要するに早く食べればいいのでしょう?」

櫻子「ま、まあそういう事なんだけど……」

向日葵「だったら問題ありませんわね。お下品な櫻子とだけでしたら遠慮したところですが、今日は上品な先輩方もご一緒ですし、私が早食いしてもなんら不自然ではないですわ」

櫻子「むっかー……だったら勝負だ! 向日葵!」

向日葵「望む所ですわ!」

結衣「ほ、ほら2人共食券買わないと」

櫻子「あ、すみません。買ってきます」

向日葵(うっ……店内はさらに凄い匂いですわね……。それにこの熱気……ラーメン屋さんって、どこもこんななんですの……?)

櫻子「ほら向日葵、ボーッとしない」

向日葵「え、ええ。櫻子はどれを買うんですの?」

櫻子「実は今日初挑戦なんだけど……これ!」ピッ カラン

向日葵「大豚ダブル……ですの?」

櫻子「二郎最強のメニューだよ……。これを食べるのが長年の夢だったんだー!」

向日葵「案外安いんですのね、野口先生で十分ですわ。でしたら、私も」ピッ カラン

櫻子「えっ、ええええええ?!」

向日葵「ど、どうしたんですの、そんな素っ頓狂な声を上げて。他のお客様に迷惑でしょう?」

櫻子「だって向日葵……食べれ切れるの……?」

向日葵「早食い勝負なのでしょう? だったら同じものを頼まないと、勝負にならないじゃありませんの」

櫻子「そ、そりゃそうだけど……」

向日葵「大体、いくら初めて来たとはいえ、私が櫻子如きにハンデを貰うというのもおかしな話でしょう?」

櫻子「一々言い方がムカつく……。もう、どうなっても知らないからね!」

結衣「どうしたの? 私もそろそろ食券――って、2人の持ってるそれ……もしかして大豚ダブル……?」

向日葵「いけませんでしたか?」

結衣「い、いや、そんな事は無いんだけど……。じゃあ私もたまにはいってみようかな、せっかくのバトルだし」

千歳「ほな、うちらもそれでええな?」

千鶴「なんでも平気」

結衣(にしても2人共、案外食べるのかも……。大室さんはジロリアンみたいだし、古谷さんなんて、その……胸があんなだし……////)

向日葵「せ、先輩……そんなに私の事をじっと見て、どうされたんですの……?////」

結衣「あ、いや、その……ごめんね……////」

櫻子「…………。おっぱい禁止!!」グワシッ

向日葵「きゃっ……! な、なにをするんで――」

千鶴「静かにして」

櫻子・向日葵「すみません……」

『ゴメイサマデスカ? ニメイサマオサキニドウゾー』

結衣「丁度2人横並びであいたみたいだね。大室さんと古谷さん、どうぞ」

櫻子「はい、じゃあお先に。ほら、向日葵行くよ」

向日葵「え、ええ」

櫻子「いざとなったら……私が向日葵を守るから……」ボソッ

向日葵「? なにか言いまして?」

櫻子「な、なんでもないよ」

向日葵(改めて店内を見ると、女性ばかりですのね。でも……皆さん、その……体格のいい方ばかりで……)

櫻子「ほら、水自分で注いでいって」

向日葵「セルフサービスなんですのね」

向日葵(このコップ……なんだかベタベタしているような……。なんだかお水にも、油が浮いているような気すらしますわね……)

櫻子「食券、置いて」

向日葵「これでいいのかしら?」


※ この世界には二郎ですら男の居場所は無いですが、現実の二郎はほぼ男しかいませんので、あしからず。

櫻子「おっちゃん! 麺固めね! あ、こっちのも」

『アイヨー』

向日葵「麺は固めが美味しいんですの?」

櫻子「他にも理由はあるけどね」

向日葵「? よくわかりませんわね」



結衣「あ、さっきコールの説明とかするの完全に忘れてた……。古谷さん大丈夫かな……」

千歳「千鶴が張り切って、ロットバトルとか嗾けてたからやね~」

千鶴「ご、ごめんなさい……」

結衣「まぁ大室さんがついてるし、多分大丈夫だと思うけど……」

千歳「あの2人、ラブラブやからね」

千鶴(そうなんだ……////)

『ダイノカター ニンニクハー』

櫻子「ヤサイマシマシニンニクアブラカラメ!」

『ヤサイマシマシニンニクアブラカラメ』

櫻子「くーっ! これが言いたかっただけだよ! これで私も、一人前のジロリアンの仲間入りって感じがするね!」

向日葵「帰り道で言ってたのは、これの事だったんですのね。で、それなんなんですの?」

櫻子「え?」

向日葵「いえその、ヤサイとかニンニクがどうのって……」

櫻子「あれ? 言ってなかったっけ?」

向日葵「いえ、まったく」

櫻子「えっとそれはトッピングを聞かれた時に――」

『ダイノカター ニンニクハー』

向日葵「ヤサイマシマシニンニクアブラカラメ、でいいんですの?」

『ヤサイマシマシニンニクアブラカラメ』

櫻子「」

櫻子「どうしてこうなった」

向日葵「同じものを頼まないと意味がないと言ったじゃありませんの」

櫻子「そ、そうだけどさ……」

向日葵「そもそも、あなたが最初に説明しないのが――」

『オマチドー』 ドンッ

向日葵「」



※ 定番の二郎の参考画像
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向日葵「なんなんですのこれは……。お野菜とお肉の……山……?」

櫻子「行くぞおおおおおお!!!!!」ガツガツガツガツ

向日葵「さ、櫻子? ちょっとお行儀が……」

櫻子「いいから黙って食べなって! 大体、ロット勝負してるの忘れたの!?」

向日葵「そ、そうでしたわ……。仕方がありませんわね……い、いただきます……」

向日葵(で、でもこれ……どうやって食べたら……? とりあえず上のお野菜から……)パクッ

向日葵「あら……? 見た目に反して意外と……」ハフハフ

向日葵「おいしいじゃありませんの」モグモグ

向日葵「でも、ラーメンなんですのよね? 麺はこの下にあるのかしら、一向に見えませんわ……」

櫻子「ちょ、向日葵。その食べ方じゃ麺食べれないでしょ……」

向日葵「その……どうやって麺を食べたら……」

櫻子「ある程度まで肉と野菜を食べたら、穿り返すしかないよ」

向日葵「穿るって、そんなお下品な……」

櫻子「でも早く麺食べないと、伸びて大変な事になるよ……?」

向日葵「あ、櫻子、あなただからさっき固めって――」

櫻子「そゆ事。まずは肉、それと一緒に麺、最後に野菜を片付けるのが基本。麺を穿る為に食べる野菜は最小限」

向日葵「麺はわかりましたけど、お肉もなんですの?」

櫻子「向日葵って好きなもの――肉は最後に取っておくタイプだよね? それ絶対駄目だよ、先に片付けないと入らなくなるから……」

向日葵「わ、わかりましたわ……もう情けはいりませんわよ?」

櫻子「心配だ……」ズルズル

向日葵(お肉ばっかり最初に食べていいなんて……ちょっと幸せですわね……////)モグモグ

千鶴「ごちそうさま……」ドンッ

櫻子「なっ!?」

千歳「あかん……また千鶴に負けてもうた……」

結衣「ぐっ……一番最後に着席したはずなのに……。どうやら週7通いは嘘じゃなかったみたいだな……」

千歳「お、お腹が……苦しい……うう……」

千鶴「でも姉さん、後ちょっとだから頑張って。先に出てるから」

結衣「千歳も後ちょっと?! ま、負けられない!」ズビビッ

櫻子「最初に席に着いたってのに、この体たらく……。でも私だって、あとちょっと!」ムシャムシャ

千歳「ま、負けへんで~……」ズルズルッ

向日葵「…………」

向日葵(あ、やっと麺が……。太麺……おいしいですわ……////)チュルチュル

結衣「ごちそうさまでしたっ!」ドンッ

千歳「ああ……船見さんにもタッチの差で負けてもうた……。うちも、ごちそうさまです……」ドンッ

櫻子「ええっ!?」

結衣「悪いね千歳。でも、出てきたのは私のがちょっとだけ早かったし、実質同着くらいじゃない?」

千歳「そう言ってもらえると嬉しいわ~。うちら、いいライバルになれそうやね?」

結衣「そうだね。打倒千鶴目指して頑張ろうか?」

千歳「そういうわけで、お二人さん、お先にな~」

結衣「頑張ってね、二人とも」

櫻子「な、なんてこった……。船見先輩はともかく、千歳先輩には勝てると思ってたのに……」

向日葵(でも結構しょっぱいんですのね……。食べ続けてるとお水が――)

櫻子「飲むな!」

向日葵「ひっ……!?」

向日葵「ど、どうしたんですの……また急に大声を上げて」

櫻子「水は飲んじゃ駄目だって」

向日葵「どうしてですの? 大体お水を持って来いって言ったのは、あなたじゃありませんの」

櫻子「その水が飲める分、二郎を詰め込むんだよ。胃の容量には限りがあるんだし……」

向日葵「…………。わ、わかりましたわ。でも、本当にこれ以上情けはいりませんわよ?」

櫻子「……って向日葵、全然減ってないじゃん……」

向日葵「ま、まだまだこれからですわ!」チュルチュル

櫻子(無駄に上品……。でも、必死になって麺啜る向日葵……ちょっとかわい――)

櫻子「――くなんてねーし!!////」

『ギル『オジョウチャン チョットシズカニネー』

櫻子「ひっ……!? す、すみません……」

向日葵「櫻子、あなたちょっと浮かれすぎじゃありませんの?」

櫻子「い、いいから! 早く食べる!////」バクバク

向日葵「変な娘ですわね……」チュルチュル

向日葵(さ、流石に苦しくなってきましたわ……。でもまだ、半分以上残ってますわね……うぷ……)

向日葵(櫻子は後どのくらい――)

櫻子「ごっそーさんでしたー!」ドンッ

向日葵「なっ……」

櫻子「くっそー……私もまだまだ修行が足りない……。っていうか、口が小さいから、一度に入る量が少ない!」

向日葵(そこがいいんじゃ――わ、私はまた……////)

櫻子「向日葵……まだ半分は残ってるね……」

向日葵「……」

櫻子「じゃあこの勝負は、私の勝ちってことで」

向日葵「うぅ……うっぷ……」

櫻子「じゃあ先に――って向日葵……顔色凄く悪し、辛そうだけど、大丈夫……?」

向日葵「こ、このくらい……平気――」

櫻子「ああ、もう……! ほら、どんぶりこっちに寄越して」

向日葵「櫻子……?」

櫻子「代わりに私が食べるから、先に出てて」

向日葵「で、でも……」

櫻子「じゃあ向日葵、残り全部食べられるの?」

向日葵「それは……」

櫻子「私はまだまだ平気だし。それに速さじゃ負けちゃったけど、量なら勝てるって証明にもなる」

向日葵「いいんですの……?」

櫻子「同じロッターの不始末を片付けたってなれば、このロットバトルだって実質的な私の勝ちに繋がるしね」

向日葵「さ、櫻子……!」

櫻子「かっ、勘違いすんなよ!? これは私の為にやってる事なんだから! だからほら、どんぶり頂戴」

向日葵「その……ごめんなさい……」

櫻子「い、いいってそんなの! 私が勝手にやってるだけなんだし……」

向日葵「でも……本当に……ありがとう……」

櫻子「う、うん……。ほら、早く出てってば」

向日葵「そうしますわ……」

~店外~

向日葵「うう……吐きそうですわ……。先輩方は、あれを何食わぬ顔であっさりと……」

向日葵「櫻子に至っては、私の残した分まで食べてるわけですし……。なんだか、自分の存在が恥ずかしくなってきますわ……」

結衣「あ、古谷さん。大丈夫だった?」

千歳「ふらふらやけど、大室さんより先に出てきたってのは凄いね~」

千鶴「確かに。とてもじゃないけど初心者とは思えない」

向日葵「いえ……その……実は――」



結衣「なるほどね……」

千鶴「大豚ダブル1杯半は、流石に私でもちょっと……」

千歳「大室さん……無茶しとるなぁ……」

向日葵「私がいけないんですの……うう……」

結衣「え? ちょ、ちょっと古谷さん?」

向日葵「私が意地を張って、あんなものを頼んだばっかりに……ぐす……櫻子をあんな目に……」

千歳「あかん、古谷さん。目を背けちゃあかんて!」

向日葵「千歳先輩……?」

結衣「そうだね。今この瞬間も、大室さんは二郎と戦ってるんだ。私達には見守るくらいしか出来ないけどね」

向日葵「うう……先輩……おえっぷ……」

結衣「だ、大丈夫? とりあえず排水溝の方に……」

千鶴「……」ピコーン

千歳「うん? 千鶴、どしたん?」

千鶴「ごめんなさい、ちょっとコンビニ行ってきます」

千歳「随分急やね? ほな、ここで待っとるからね~」

千鶴「うん」

結衣「急にどうしたんだろうね……相変わらず、千鶴の考えてる事はよくわからないな」

千歳「でも、意味も無く何かする娘やないし、きっと何か思いついたんやないかしら」

~店内~

櫻子(……とは言ったものの……)

櫻子(流石に辛い……麺ももう延びきってるし……)

櫻子(あ、向日葵、肉は全部食べたんだ……。ちゃんと私の言う事聞いてくれてる……)

櫻子(っていうかよく考えたら、これって……その……向日葵の食べかけ――)

櫻子「行ける気がする!!!」ズバババッ



櫻子「――っしたぁ……」ドンッ

『ハイヨー オジョウチャンガンバッタネー』

櫻子「……いえ……そんな……」

『マタタノムヨー』

櫻子「と、当分……おうっぷ……いいです……」

~店外~

櫻子(駄目だ……死ぬ……おええ……)

向日葵「あっ、あの……櫻子……!」

櫻子「ひ……まわ……り……。待ってて……ぐえ……くれたの……?」

向日葵「櫻子……えっと……コレ……」スッ

櫻子「あ……」

櫻子(黒烏龍茶……? 向日葵が……私に……)

向日葵「そ、その……代わりに食べてもらった、せめてものお礼ですわ……」

櫻子「あ……りがと……」ゴキュゴキュ

櫻子「ぷはぁ……! し、死ぬかと思った……」

結衣「お疲れ様。聞いたよ、頑張ったね」

千歳「大室さんやるわ~、敢闘賞や。ジロリアンの鏡やね」

千鶴「悔しいけど、今回は私の負け」

櫻子「あ……」

結衣「私達ももっと頑張らないとね」

千歳「当面の目標は、千鶴に追いつくことやけどね」

千鶴「私は姉さんとなら、いつでも」

千歳「ホンマに? じゃあまた近いうちに来よか」

結衣「その時は私も誘ってね。私も千鶴にもリベンジしたいし」

千歳「勿論や。それじゃ大室さん古谷さん、また明日~」

千鶴「さよなら」

向日葵「あの、先輩……! あ、ありがとうございました……」

千鶴「……」コクコク

櫻子「?」

結衣「じゃあ私も帰るよ。あ、そうだ、京子の奴拾っていかないと……」

向日葵「では、また明日」

櫻子「さよなら~」

向日葵「私達も……」

櫻子「……帰ろっか」

千歳「でも千鶴、よう気が利いたね~?」

千鶴「たまに私も買ってるから……」

千歳「大室さん、えらい助かってたみたいやし。古谷さんも喜んでたしな~」

千鶴「うん」

千歳「また行こな?」

千鶴「でも……」

千歳「そやね……。流石に毎日は……うぷっ……」フラッ

千鶴「ね、姉さんしっかり!」

千歳「ああ……刻が見えるで……」

千鶴「姉さん! 姉さーーーん!!」

結衣「おーい、京子ー? 確かこの辺りに放り投げられてたような……」

京子「ギルティーコワイギルティーコワイギルティーコワイギルティーコワイギルティーコワイ……」

結衣「ジロリアン……京子をこんなになるまで……」

京子「ギルティーコワイギルティーコワ……ユ、ユイ……?」

結衣「京子……もう大丈夫だから。ほら、一緒に帰ろう?」

京子「ウ、ウン……デモ……タテナイ……ユイ……オンブ……」

結衣「まったく京子は。しょうがないな、ほら」

京子「グス……ユイ……コワカッタ……」

結衣「はいはいよしよし。京子は晩御飯まだだったよね、帰ったら何食べたい?」

京子「……ラーメン……」

結衣「はいはいラムレ――えっ、ラーメン……?」

京子「……ヤサイ……ニンニク……アブラ……」

結衣「そ、それって……。わかったよ、作ってみる……」

京子「……ウン……」

向日葵「あの……」

櫻子「なに?」

向日葵「さっきは……」

櫻子「別にいいって」

向日葵「……」

櫻子「あのさ」

向日葵「……なんですの?」

櫻子「私、二郎は好きだけどさ」

向日葵「ええ……」

櫻子「もう行くのやめるよ」

向日葵「えっ……? あ、あんなに行くを楽しみにしてたのに……どうしてですの……?」

櫻子「んー、なんとなく」

向日葵「なんとなくって……」

櫻子「なんていうかね。向日葵が苦しんでるの見たからかな」

向日葵「……」

櫻子「向日葵、最初の方はおいしそうに食べてたじゃん? でも、途中からこの世の終わりみたいな顔になっててさ。それ見るの、結構辛かったんだー」

向日葵「そんな……」

櫻子「多分、この先も二郎を見る度にその事思い出しちゃうだろうし。私、そんなの嫌だから」

向日葵「櫻子……」

櫻子「だからさ、今度は普通のラーメン屋にでも行こうよ。それならずっと笑って――って、何言ってんだ私は! なし! 今のなしね!」

向日葵「櫻子は……それでいいんですの……?」

櫻子「え? いやまあ、二郎はちょっと名残惜しいけど……」

向日葵「あなたは……そこで諦めるんですの……!?」

櫻子「え? ちょっと、なに怒って――」

向日葵「そんなの! 私がライバルと認めた大室櫻子じゃありませんわ! ここで失礼します!」

櫻子「え……ええぇぇ……? なんだったんだろう……」

~翌日 学校~

向日葵「あの……船見先輩」

結衣「ん? ああ、古谷さん。昨日はあの後大丈夫だった?」

向日葵「ええ、お陰様で……。その、先輩はお料理が得意だと伺ったのですが」

結衣「うーん、得意ってわけじゃないけど……。急にどうしたの?」

向日葵「そして、生粋のジロリアンだという事も、昨日知りました」

結衣「あ、ああ……それはまぁ……」

京子「……ジロリアン……!? ユイ……コワイヨ……」ガタガタ

向日葵「歳納先輩は一体どうされたんですの……?」

結衣「き、気にしないで。とりあえず、京子の前では二郎の話題は避けてくれると――」

向日葵「私に、二郎のようなラーメンの作り方を教えていただけないでしょうか?」

京子「……ジロウジロウジロウジロウジロウ……!! アアアアアジロウコワイジロウコワイ……!!」

結衣「…………。ああ、えっと……じゃあ今日、うちに来てくれるかな?」

向日葵「よろしくお願いします」

~放課後 結衣の部屋~

結衣「実は昨日、あの後家で二郎を作る羽目になってさ」

向日葵「まさか……あの後にまたアレを食べたと……?」

結衣「いやいや流石にそれは……。実はギルティされた京子が、ジロリアンに洗脳を受けてたみたいでさ……」

向日葵「洗脳?」

結衣「ギルティの恐怖と洗脳とで、なんか半分壊れちゃってるんだよね……。それで、リハビリの為に家で二郎を作って食べさせたってわけ」

京子「ジロウジロウジロウ……ジロウハヤサイ……ヤサイハマシマシ……マシマシハメン……メンハサイショ……」

向日葵「なるほど……」

結衣「まぁ毎日続けさせてればそのうち治ると思うし、良かったらそれまでうちで練習していってもらっても構わないよ」

向日葵「はい、ありがとうございます」

結衣「ただし、作ったのは出来るだけ完食していってね」

向日葵「はい、この間は不甲斐ない所をお見せしまして……」

結衣「最初は大体皆残すって。私も最初は小にしたのに残しちゃったし……」

向日葵「船見先輩もですか……」

結衣「まぁ今じゃ完全に二郎中毒だけどね。もっとも、千鶴には勝てないけど」

向日葵「千鶴先輩、凄かったですね……」

結衣「でも、いつかは千鶴にも勝つつもりだよ。ところで、何で急に作り方なんて?」

向日葵「な、内緒ですわ……////」

結衣「…………ああ、なるほどね」

向日葵「もう、悟らないで下さい……////」

~10日後~

結衣「うん、もう完璧じゃない? これならお店に負けないくらいの味だと思うよ」

向日葵「先輩の教えがあってこそですわ。でも、本当にお店に負けない味でしょうか……」

結衣「大丈夫、これならきっと大室さんも満足するって」

向日葵「さ、櫻子は関係ありませんわ!////」

結衣「はは、そういう事にしておいてあげる。ほら京子、出来たよ」

京子「ブタブタブタブタブタノエサ……ナニ……?」

結衣「ほら、二郎風ラーメンだ。しっかり食べて克服しよう」

京子「モグモグ……ウメェ……」

結衣「うん、ちょっといつもの京子らしくなってきたかな」

向日葵「じゃあ私は、これで失礼します」

結衣「今日は食べていかないの?」

向日葵「ええ、すみませんが早く櫻子のところに――って何でもありませんわ!」

結衣「ははは、なら仕方ないか。今日使った食材は、持って行って使ってよ」

向日葵「ありがとうございます。先輩、本当にお世話になりました。歳納先輩もお大事に」

結衣「ほら京子、古谷さん帰るって。バイバイ」

京子「バイバイ……マシマシ……?」

結衣「うーん……やっぱりまだ駄目か」

京子「ニク……ウメェ……ヤサイ……ウメェ……メン……ウメェ……アブラ……アブラ!」

結衣「はいはい、じゃあ明日はアブラ克服ね」

~大室家~

櫻子(今日は私一人だっけ……夕飯どうしようかな)

櫻子(向日葵は最近用事あるみたいで、さっさと帰っちゃっうし、夕飯作ってって頼む事すらできないし……)

櫻子(そうだ、二郎に――っていけない。二郎は行かないって決めたんだった……)

櫻子(ああでも飢えるなぁ……体が二郎を求めている感じだよ……。あの化調の味が恋しいなぁ……)ピンポーン

櫻子「誰だろ……? はーい」ガチャッ

向日葵「ああああああの、櫻子!」

櫻子「ちょ、びっくりしたなぁ……。向日葵、なんかうち来るの久々な感じがするね」

向日葵「10日ぶりですわ」

櫻子「よく覚えてるなぁ……。あれ、向日葵……なんかニンニク臭いよ?」

向日葵「なっ……!? あ……コレですわね……」

櫻子「その荷物? くんくん……ホントだ。でも荷物だってよくないよ、まったく。女の子なんだから、身嗜みには気を使わないとね」

向日葵「ご、ごめんなさい……////」

櫻子「うーん、前にもこんなことがあったような……」

向日葵「それは、前に私があなたに――」

櫻子「そういえば向日葵さ、ちょっと太った?」

向日葵「え゛っ……!?」

櫻子「心なしか、おっぱいが目立たなくなってる気がしてさ」

向日葵「そ、そうかしら……!」

櫻子「あとは、顎のラインがなくなってるような……?」

向日葵「う゛っ……」

櫻子「お腹もちょっと出てるよね」

向日葵「ううっ……」

櫻子「何があったか知らないけど、食べ過ぎはいかんぞ向日葵君」

向日葵「ううぅぅ……」

櫻子「あ!」ピコーン

向日葵「……なんですの?」

櫻子「向日葵じゃなくて――」

向日葵「……?」

櫻子「ひまんわり、とか?」


ピシッ


ひまんわり「櫻子の……バカーーー!!!」ダッ

櫻子「ちょ、ちょっとひまんわり! 待ってよー!」ダッ

ひまんわり「うわーーーーん!!」ドスドス

櫻子「いやっ!? おそっ!」

向日葵「走ったら戻ったみたいですわ……」ゼェハァ…

櫻子「流石漫画……。で、何か用だった?」

向日葵「その……夕食はもう食べまして?」

櫻子「いや、これからだけど……今日私一人なんだ」

向日葵「で、でしたら……その……私が――」

櫻子「え? 作ってくれるの?」

向日葵「い、嫌だったらいいんですのよ?」

櫻子「全然、大歓迎だよ! あー、お腹減ったー」

向日葵「そんな事だろうと思って、食材を用意してきて正解でしたわ」

櫻子「おお、準備がいいですな」

向日葵「ではキッチンお借りしますわよ」

櫻子「ほーい」

向日葵「~~~♪」

櫻子「……この匂い、どっかで……?」

向日葵「はい櫻子、出来ましたわよ」ドンッ

櫻子「……こ、これって……」

向日葵「あなたの大好きなものですわ」

櫻子「なんで……二郎なのさ……」

向日葵「だって櫻子、好きなんでしょう?」

櫻子「そ、そうだけど……」

向日葵「それが私のせいで食べられなくなるなんて、許せなかったんですもの。ですから、お店に行かなくても食べられるように、ここ10日間ずっと練習してましたのよ?」

櫻子「なるほど、だからこの頃早く帰ってたのね」

向日葵「勿論あの味を掴む為に、作ったものは全て自分で食べましたわ」

櫻子「あ、だからひまんわ――」

向日葵「……なにか?」

櫻子「な、なんでもないです……」

向日葵「さあ、食べてみてくださいな?」

櫻子「……いただきます」ズルッ

向日葵「どう……ですの……?」

櫻子「……二郎だ。これ、二郎だよ向日葵!」

向日葵「そ、そう。喜んでもらえたようで嬉しいですわ」

櫻子「でも、なんかちょっと上品な感じがする」

向日葵「多少はアレンジしてありますわ。アブラもニンニクも化調も控えめですし」

櫻子「へえ、そうなん『ギルティー!』

向日葵「……? 櫻子、何か言いまして?」

櫻子「ううん、なんに『ギルティー!』

向日葵「今何か聞こえ『ギルティー!』

櫻子「……も、もしかし『ギルティー!』


ガッシャーーン! 『ギルティー! ギルティー! ギルティー!』

向日葵「まさか……このデ……体格のいい方々は、ジロリアン……!? な、何故あなた方がここに……」

『ギルティー! ギルティー!』

櫻子「ひょっとして……向日葵の上品な二郎に怒ってたりして……?」

『ギルティー! ギルティー! ギルティー!』

櫻子「や、やっぱりそうみたいだよ!?」

向日葵「そんな……何がいけなかったのかしら……?」

???「向日葵ちゃん、櫻子ちゃん……あなた達は越えてはいけない一線を越えてしまった……」

向日葵「だ、誰ですの!?」

あかり「皆の肝臓にどっきゅーん! ジロリアンになって帰ってきた赤座あかりだぴょーん!」ビシッ

向日葵「……」

櫻子「……」

櫻子・向日葵「「誰?」」

あかり「ふえぇっ!?」

あかり「ひ、酷いよ二人とも……。ここまで名前すら出てこなかった、ゆるゆり主人公の――」

櫻子「あー、はいはい、あかりちゃんね。なんか心なしか丸っこくなってるね」

向日葵「それで赤座さん、どうしたんですの」

あかり「うぅ……自己紹介すらさせてもらえないなんて……」

???「はいはい、じゃあちゃっちゃと済ませちゃいましょ」

向日葵「あっ……」

櫻子「もしかして、ガチなつちゃん!? こっちも丸っこくなってるけど」

ちなつ「誰がガチなつじゃい! さて、向日葵ちゃん、櫻子ちゃん。さっきあかりちゃんも言ったけど、あなた達は以下略」

向日葵「一体何が以下略」

ちなつ「当然よ。二郎はアブラ・ニンニク・化調があってこその二郎よ。それを控えめにするなんて、二郎を侮辱するもいいところだわ」

櫻子「で、でも、向日葵が作ったやつもおいしかったよ?」

ちなつ「おいしいおいしくないの問題じゃないのよ。二郎は二郎で無くちゃいけないんだから」

向日葵「最早会話になりませんわね……」

ちなつ「というわけで、二人はギルティでーす」

櫻子「なんか凄い雑!」

向日葵「私達も歳納先輩のように……」

ちなつ「歳納? ああ、京子先輩ですか。そういえば先人方が言ってましたね。列に横入りしてギルティを受けた、愚かな金髪謎リボンの娘がいたと」

あかり「京子ちゃん、最近元気無いと思ってたら、そういうことだったんだー」

ちなつ「まぁ京子先輩がどうなろうと、知ったこっちゃねーですしね」

櫻子「歳納先輩……やっぱりあの後……」

向日葵「しかし……まさか、二人がジロリアンだったなんて……」

ちなつ「ふふん、迂闊だったわね。私達の前で、二郎を侮辱するような事をするからよ」

櫻子「友達だと思ってたのに!」

ちなつ「友達だからこそよ。二郎を侮辱するような友達なんて、友達じゃないわ。安心して、しっかり矯正してあげるから」

向日葵「ひっ……」

あかり「でも、私達がジロリアンになったのはつい最近だよ? 実は……千歳先輩から、お勧めのラーメン屋さんがあるって聞いて――」

~4日前~

千歳「そこのラーメン屋さんが、また美味しいくてな~」

あかり「へえ、そうなんですかー」

千鶴「姉さん、何度も言うけど二郎はラーメン屋じゃないから」

千歳「あ、そやったな」

ちなつ「ラーメンですか……。私はあんまり興味ないですね、カロリー高そうですし」

千歳「そうそう、船見さんも常連やったんよ~」

ちなつ「それどこですか! 教えてください!」

千歳「え、ええけど……」

ちなつ「あかりちゃん! 早速今日の帰りに寄っていくわよ!」

あかり「す、凄い気合だね、ちなつちゃん……」

千鶴「待って。それなら、私もついていく」

ちなつ「え? 千鶴先輩がですか?」

千鶴「いきなり初心者だけで、二郎は厳しい」

あかり「もしかして、一見さんおとこわりのお店なのかな?」

ちなつ「あかりちゃん、それを言うならお断りよ……」

あかり「あ、そっか」

千歳「まぁおとこわりってわけやないんやけどな、色々細かいルールがあるねん」

ちなつ「伝染してるし……」

千歳「そういうわけやから、うちらが一緒に――って、千鶴あかんよ! 今日は綾乃ちゃん呼んで鑑賞会の予定やった!」

千鶴「そういえば……」

ちなつ「鑑賞会?」

千歳「ごめんな二人とも。そういうわけやから、二郎はまた今度に――」

ちなつ「ま、待ってください! その、ルールっていうの教えてください!」

千歳「吉川さん? う~ん、別にええけど」

千鶴「姉さ――」

千歳(千鶴、これはうちらが口出しする問題とちゃうで?)ヒソヒソ

千鶴(……)コクコク

千歳「ほな、今から言う事を良く聞いてな?」

ちなつ「はい、ありがとうございます!」

千歳「1、清く正しく美しく、散歩に読書にニコニコ貯金、週末は釣り、ゴルフ、写経!」

ちなつ「……はい?」

あかり「あの……先輩……?」

千歳「どしたの? ほら、復唱してな。1、清く正しく――」

千鶴「姉さん、それは社訓……」

千歳「えっ?」

~その日の放課後 ラーメン二郎~

ちなつ「さああかりちゃん、行くわよ!」

あかり「行列出来てるね、人気あるんだ~。うう……でも、なんだか凄い匂いだね……」

ちなつ「そうね……。でも、結衣先輩がこんなワイルドな所に来てるなんて、それがまたいいじゃない!」

あかり「そうなのかなぁ……?」

ちなつ「そうよ。さてと、さっさと並びましょう」

あかり「うん……」



ちなつ「案外早く入れたわね。ほら、食券買いましょう」

あかり(店内も凄い匂い……)

ちなつ「ええっと……大豚ダブルがお勧めだったかしら?」

あかり「じゃあ、あかりもそれにしよっかな」

~15分後~

ちなつ「……」

あかり「……」

ちなつ「な、なんなのよコレ……全然減らないじゃない……」

あかり「ふえぇ……麺が延びすぎててとんでもないことに……」

ちなつ「結衣先輩も千歳先輩も、こんなのを普通に食べてるっていうの……?」

あかり「ちなつちゃん、どうしよう……? もう食べきれないよ……」

ちなつ「し、仕方ないわね。こうなったら残して――」

『ギルティー!』ガシッ

ちなつ「えっ?」

『ギルティー! ギルティー!』グググ…

ちなつ「ちょ、ちょっと! なにを――ごぶっ!?」

『ギルティー! ギルティー! ギルティー!』グイグイ

あかり「ああっ! ちなつちゃんがどんぶりに頭を突っ込まれて――」

『ギルティー!』ガシッ

あかり「ふぇっ!? も、もしかして……あかりも――」

『ギルティー! ギルティー!』グイグイ

あかり「おぶぶぶぶぶっ!?」

『ギルティー! ギルティー! ギルティー!』グイグイ

あかり(はうぅ……ニンニクと油まみれのスープの海で溺れちゃうよぉ……)

ちなつ(む、無理矢理口に麺を突っ込まれるなんて……! 私がそれを許すのは結衣先輩だけ――)



※ 実際の二郎ではこんな事はありえませんが、残すのは出来るだけ避けましょう。
   また、必ず食べきれるサイズを注文するようにしましょう。

~再び大室家~

ちなつ「――ってわけで、私達は二郎を残した事によってギルティを受けたわ」

あかり「あの時は死ぬかと思ったよね~。まさか、無理矢理全部詰め込まれるとは思わなかったよ。今じゃ、毎日欠かさず二郎を食べないとならない体になっちゃうなんてね~」

櫻子「あ、だから二人とも、気持ち太っ――」

ちなつ・あかり「「あーあー、聞こえなーい」」

向日葵「……。はっ! も、もしかして……あの日あのまま残していたら、同じ事が私の身にも……?」

櫻子「……うん」

向日葵「櫻子……あなた、もしかして私を守る為に……?」

櫻子「べっ、別にそういうわけじゃ……無いけど……。でも、ちょっと心配だったから……」

向日葵「櫻子……!////」

櫻子「な、なんだよ。そんな嬉しそうな顔で見ないでよ……////」

あかり「二人とも仲いいね……////」

ちなつ「って、イチャイチャしてんじゃねー!」

向日葵「はっ」

櫻子「あっ」

ちなつ「さああかりちゃん、私の下僕としてきびきび働きなさい」

あかり「えー? しょうがないなー……」

ちなつ「ほら、さっさと二人にギルティをかますのよ」

櫻子「ちょ、ちょっと待った!」

ちなつ「なによ、絶壁ちゃん」

櫻子「ガーーン……絶壁仲間なのに……。って、そうじゃなくて! 向日葵もギルティ対象なの?」

ちなつ「当然じゃない。なにせ、二郎を侮辱するようなラーメンを――」

あかり「あれ? でも向日葵ちゃん、自分で作ったラーメンの事を二郎って一言も言ってないよね?」

ちなつ「……え?」

向日葵「ええまぁ……」

あかり「周りの人が、勝手に二郎って思い込んでただけじゃないのかなぁ?」

櫻子「そういうわけで、向日葵は関係ないよね!」

ちなつ「ふん……まぁいいわ。ただでさえあんな油の塊をぶら下げてる人に、これ以上カロリー摂取させたらどうなることやら……」

向日葵「油の塊って……」

櫻子「カロリー摂取? どゆこと?」

あかり「へい、おまち!」ドンッ

櫻子「え……?」

向日葵「これって……」

ちなつ「そうよ。これがあなた達への、いえ、櫻子ちゃんへのギルティ、二郎大豚ダブル全マシマシの刑よ」

櫻子「なん……だと……?」

あかり「あ、茹でちゃった向日葵ちゃんの分の麺も足してあるから、実質麺マシだね」

櫻子「…………」

向日葵「うえ……これは流石に、見ただけで吐き気が……」

ちなつ「許すも何も無いと思うけどね。それを食べてしまったら、あなたは確実に純粋種のジロリアンとして覚醒する事になるのよ?」

向日葵「で、でも櫻子はこの間、大豚ダブルのヤサイマシマシニンニクアブラカラメを1杯半食べきってますわよ?」

ちなつ「甘いよねぇ、坊や。もとい向日葵ちゃん」

向日葵「……はい?」

ちなつ「あなたは全マシマシ、さらに麺マシの恐怖を知らないから、そんな事が言えるのよ」

向日葵「そんなに恐ろしいものなんですの? 櫻子……。櫻子? ちょっと聞いてま――」

櫻子「食べるよ」

向日葵「なっ!?」

櫻子「食べれば、少なくとも向日葵は助かる。だから――」

向日葵「何を言ってますの櫻子!」

櫻子「あかりちゃん、お箸」

あかり「あっ、は、はい!」

向日葵「ちょっと、人の話を――」

櫻子「向日葵黙って。早くしないと麺が延びちゃう」

向日葵「でも……それじゃあ私、櫻子守ってもらってばかりで……」

櫻子「そんなのいいんだよ」

向日葵「そんなのって……!」

櫻子「だって、私がやりたいだけなんだから」

向日葵「え……?」

向日葵「私が勝手に、向日葵を守りたいって思ってるだから」

向日葵「――櫻子!」

櫻子「じゃあ……行くぞおおおおおお――!!!!!」

~2時間後~

櫻子「…………あ……れ……?」

向日葵「櫻子――! 良かった……私、もうてっきり目を覚まさないかと……」

櫻子「向日葵……? えっと、私……」

向日葵「覚えてないんですの?」

櫻子「あ……ちなつちゃんとあかりちゃんは……?」

向日葵「あなたがアレを食べきった後、大人しく帰っていきましたわよ」

櫻子「私……食べ切ったんだ……」

向日葵「ええ……格好良かったですわよ……」

櫻子「よせやい……////」

向日葵「だって、本当に格好――」

櫻子「うぐっ……ううぅ……」

向日葵「さ、櫻子? どうしたんですの!?」

櫻子「ああぁ……おあぁっ……!」

向日葵「櫻子!? 櫻子、ちょっとしっかり――櫻子あなた……目が……」

向日葵(目が……まるで二郎のスープのように濁って……!?)

櫻子「の……のどが……か……わいて……」

向日葵「お水ですの!? ちょ、ちょっと待ってなさい!」ダッ



向日葵「櫻子、お水ですわよ」

櫻子「ああああああ! 違うっ! 違う違う違うっっっ!!!」ガッシャーン

向日葵「ひっ……!?」

櫻子「二郎……二郎の……スープを……!」

向日葵「櫻子……? ハッ……!」



ちなつ『それを食べてしまったら、あなたは確実に純粋種のジロリアンとして覚醒する事になるのよ?』

向日葵(まさか……吉川さんの言っていた事は、こういうことでしたの……!?)

向日葵(純粋種のジロリアン……櫻子が……? そんな……そんな……!)

櫻子「二郎……二郎を……二郎を寄越せ……!」ユラユラ

向日葵「どうすれば……。そ、そうですわ、船見先輩なら何か知ってるかも……!」ピッ TRRR…

結衣『もしもし、古谷さん? こんな時間にどうしたの?』

向日葵「そ、それが、二郎が、純粋種で、櫻子に」アタフタ

結衣『え? なに? 二郎がどうしたの?』

櫻子「二郎を……二郎を……!」フラフラ

向日葵「す、すみません。えっと、簡単に言うと、櫻子がジロリアンとして覚醒してしまったようでして……」

結衣『まさか……純粋種……? そんな……あれはジロリアンの中でも、全マシマシを食した物のみが覚醒出来ると言われていた伝説の……』

向日葵「どどどどうすれば治せるんでしょう!?」

櫻子「二郎……二郎……!」ガシッ

向日葵「痛っ! さ、櫻子!?」

結衣『うーん……私も、実際に見た事が無いからなんとも……。あ、そうだ』

向日葵「な、何か思い出した事でも!?」






結衣『とりあえずさ……。えっと、その、キス……でもしちゃったら……?』





向日葵「はい……?」




結衣『いや、なんとなく、安直だけど、ほら、お姫様、じゃなくて王子様?の眠りを覚ますみたいな~、とか? あはは……』

向日葵「流石に安直過ぎますわね……とても先輩の発想とは――」

櫻子「二郎おおおおおおおお!!!!!!!!」グイグイ

向日葵「ちょっと!? 櫻子落ち着いて――」

結衣『な、なんか取り込み中みたいだから、じゃあ私はこれで』ピッ ツーツー

向日葵「せ、先輩!? もしもし!? もしもーし!?」

櫻子「二郎……二郎……あああああ!!!!!!!!」ギュー

向日葵「櫻子、やめっ、ちょっとあなた、そこは胸――」

櫻子「アブラ……マシマシ……!」グニグニ

向日葵「あっ……いやっ! さく……らこ……はぁっ……んっ……だ……めっ……」

櫻子「アブラ……アブラの……固まり……!」モミモミ

向日葵「」プチッ





向日葵「そんな事言うお口は……! こうしてやりますわ!」





櫻子「!!」




~更に2時間後~

櫻子「あ……れ……?」

向日葵「気が付いたんですの?」

櫻子「向日葵……? さっきもこんな事があったような……」

向日葵「ひょっとして、覚えてないんですの?」

櫻子「えっと……あかりちゃんとちなつちゃんが来て……二郎の全マシマシを食べさせられて……」

向日葵「それを食べきった後、あなたは気を失ってしまって、こうして私が膝を貸していたんですわ」

櫻子「そうだったんだ……」

向日葵「その後、あなたが純粋種のジロ――」

向日葵(この事は、櫻子に言わない方がいいかもしれないですわね……。言ったら、その……さっきした事も……////)

櫻子「えへへ……////」

向日葵「なんですの? 急ににやにやしだして」

櫻子「だって、膝枕……////」

向日葵「あっ……!////」

櫻子「向日葵」

向日葵「な、なんですの?」

櫻子「ありがとね」

向日葵「いいんですのよ、別に……////」

ビュウウウ…

櫻子「寒っ!?」

向日葵「そういえば、あの方達窓を割って入ってきたんですわね……」

櫻子「そだったね、後で弁償して貰わないと……ううぅ……」ブルブル

向日葵「そんなに寒いんですの?」

櫻子「向日葵と違って、私には余分なお肉が無いんだよ」

向日葵「その少ないお肉を更に剥ぎ取ってやりましょうか?」

櫻子「さーせんっしたー……」

向日葵「ほら、そんなに寒いのなら……」

櫻子「えっ……?」

向日葵「こうすれば、ちょっとは暖かいでしょう?」ギュッ

櫻子「あ……////」

向日葵「……////」

櫻子「だ、黙んなし……////」

向日葵「あ、あなたが先に黙り込ん――」

櫻子「うっ……」

向日葵「ど、どうしたんですの? まさか、また……!」

櫻子「向日葵さ……」

櫻子「口、ニンニク臭くない?」

向日葵「」

櫻子「女の子なんだから、そーゆー所は気をつけないとさー」

向日葵「」

櫻子「ていうかさ、この話するの何回目だっけ?」

向日葵「…………だ……」

櫻子「だ?」

向日葵「誰のせいですの!!!!!」

櫻子「うっさ!!??」

向日葵「大体! あなたの方がよっぽどニンニク臭いですわよ!」

櫻子「え゛っ? マジ?」

向日葵「マジもマジですわ! さっき、二郎を食べたのを忘れたんですの!?」

櫻子「あっ……そ、そうだった……」

櫻子「あれ? でも、向日葵は食べてないよね。なんで向日葵の口も、ニンニク臭いんだろ?」

向日葵「そっ、それは……////」

櫻子「あ、もしかして」

向日葵「っ……////」

櫻子「私に内緒で、二郎に行ってきたんでしょ!」

向日葵「はい……?」

櫻子「私が二郎断ちしてるの知ってて、一人で行くなんてずるいぞ!」

向日葵「…………」

櫻子「大体、この間行ったとき食べきれなかった癖に――」

向日葵「…………行くわけないじゃありませんの……」

櫻子「え? 行ってないの? じゃあなんでニンニク臭いのさ」

向日葵「それは…………知りませんわっ……!////」プイッ

櫻子「ううむ、謎は深まるばかりだ……」



さくひまはおしまい

おまけ


結衣「キス、か……」

京子「ユイ……キョウモ……トマッテイイ……?」

結衣「ああ、うん」

京子「ヨカッタ……ヒトリデカエルノ……コワイ……」

結衣「別に送って行くけど――ねえ、京子」

京子「ナニ……?」

結衣「ちょっとこっち来て」

京子「ドウシタノ……?」トテトテ

結衣「えっとさ」

京子「?」

結衣「ちょっとごめん」ムチュー

京子「!?」

結衣「……」

京子「…………んんっ……!?」

結衣「……!」

京子「ぷはっ……! え……? あ、あれ……?」

結衣「京子……お前……」

京子「いいいいい今! 結衣……え……?」

結衣「京子!」ガバッ

京子「ちょ!?」

結衣「よかった……戻ってきたんだな……ううぅ……」

京子「えーと……結衣、なんで泣いてるのさ?」

結衣「私だって……ぐす……ずっと……心配だったんだからな……ひっく……」

京子「なんだかよくわからないけど、泣きたいのは私の方だよ。あーあ、たった今、結衣に私の大事なファーストキスを奪われてしまったー」

結衣「え……」

京子「結衣さんや、この件どうしてくれるのさ、んん?」

結衣「だ、だって……。ていうか、ファーストキスって……この前千歳とだってしてたじゃないか……」

京子「あ、そういえば」

結衣「そういえばって、お前……はぁ……」

京子「んー、じゃあ、もう一回する?」

結衣「じゃあってなんだよ――えっ……?」

京子「する?」

結衣「う……えっと……うん……////」

京子「うん♪」

結衣「…………」

京子「…………」

結衣「京子……」

京子「……結衣、あのさ」

結衣「なに……?」

京子「えっと……口、ニンニク臭いよ?」

結衣「」

京子「まったくー、結衣だって女の子なんだからさぁ」

結衣「」

京子「これじゃあ、ムードもへったくれもあったもんじゃ――」

結衣「…………だ……」

京子「だ?」

結衣「誰のせいだ!!!!!」

京子「うるさっ!!??」



結京もおしまい




あれ…綾乃の出番どこいった…?

ちょっと不憫なので、続き書こうかな…

落ちてなかったら貼ってきます

常識程度のマナーがあれば初心者だけで行っても大丈夫かしら
食券とトッピングは何にしよう

というか、たまたま通りかかったおっちゃんが一番ヤバイの頼んじゃったらどうなるんだ

>>170
多分問題ない
けど店舗によって色々変わるみたいなので、下調べは入念にした方がいいかと

実際>>1も大して行ってるわけじゃなく、もう2度と行かねーと思ってるくらい――あれ、まだ9時なのに誰か来たみたいだわ

~数日後~

綾乃「ここが、千歳と千鶴さんのお勧めのラーメン屋さん?」

千歳「そやで~」

千鶴「杉浦さん、ラーメン屋じゃなくて二郎です」

綾乃「??」

千歳「あはは、あんまり気にせんといてや~」

綾乃「うーん、ニンニクの匂い以下略」

千歳「そのうち慣れるわ~」

綾乃「それにしても、千鶴さんから誘ってくれるなんて、珍しいわね」

千歳「そやな。千鶴、二郎の事がよっぽど好きみたいやね~」

千鶴「……////」コクコク

千鶴(杉浦さんを、純粋種のジロリアンに覚醒させてしまえば……きっと姉さんと……! じゅるり……)ダバー

綾乃「きゃあ! ち、千鶴さん、よだれよだれ!」フキフキ

千鶴「大丈夫です」キリッ

西垣「おや、そこに見えるは杉浦に池田姉妹。あんたらも二郎かい?」

綾乃「あら、西垣先生? もしかして先生もですか?」

西垣「おう、松本も一緒だぞ」

りせ「……」

千歳「か、会長も……!? 大丈夫なんやろか……」

綾乃「? なにがよ?」

西垣「私も松本も、そこそこのペースで来てるからな。そこの池田妹とは、たまに遭遇するぞ」

千鶴「……」ペコリ

千歳「そやったんですねぇ。あはは、うちの学校も段々と二郎に汚染されとるな~」

綾乃「汚染って、なんだか言い方が穏やかじゃないわね」

千鶴(大体合ってる……)

西垣「ふむ、ロットは丁度この5人みたいだな」

綾乃「ロット?」

西垣「どうだ、池田妹?」

千鶴「……受けて立ちます」

千歳「あ、うちもうちも」

西垣「松本、お前もやるだろ?」

りせ「……」コクン

綾乃「え? え? ちょっと、私が置いてけぼりに……」

西垣「つまり、ロットバトルだ!」

綾乃「意味がわからないんですが……」

西垣「なあに、単純に言えば早食い勝負――ん?」クイクイ

りせ「……」フルフル

綾乃「会長は、違うって言ってるみたいですけど」

千歳「確かに、ただの早食い勝負じゃないんやけどね? ん~、簡単に言えば、二郎のマナーをちゃんとお行儀良く守って、尚且つ素早く食べるって感じかなぁ?」

西垣「そうそう、そういう事だ」

りせ「……」コクコク

千鶴「杉浦さんなら、やらなくて大丈夫」

綾乃「そ、そう? まぁ早食いなんて、私には向いてないわよね……」

りせ「『もしかして、逃げるのかしら?』」

綾乃「!?」

りせ「『このロットバトルで私を倒さないと、生徒会長の座を譲る事は出来ないわよ、綾乃さん!』」

綾乃「……西垣先生、バレバレですよ」

西垣「おっと、流石に松本の後ろに隠れるのは無理があったか。小さいもんな、お前」ナデナデ

りせ「……////」

綾乃「まったく、いつもいつも冗談ばかりで――」

西垣「ああ、でも今のは松本も言ってたぞ?」

綾乃「え゛?」

りせ「……」コクン

千歳「というわけで、綾乃ちゃん、頑張りや」

綾乃「そ、そんな……早食いなんて……」

千鶴(幸運、杉浦さんをロットバトルに引き込めた)

千歳「ほら、うちらの番が来たみたいやで」

綾乃「えっと、食券買うんだったわね。どれを買えばいいのかしら?」

千歳「綾乃ちゃんは初心者さんやし、こっちの小――」

千鶴「これがいいと思います」ピッ カラン

千歳「千鶴!? それ、大豚ダブル……」

綾乃「あら、それがお勧めなの? 千鶴さん、ありがとう」

千鶴「ロットバトルするなら、皆同じものを食べないと気持ち悪いので。これ、差額です」チャリン

綾乃「差額?」

千鶴「私が勝手に押したので」

綾乃「別に気にしないでいいのに」

千鶴「いえ、これくらい安いもんです」

綾乃「??? あ、ありがとう……」

千歳「大丈夫やろか……。この間の古谷さんみたいにならないとええけど……」

『ゴメイサマデスカ? ニメイサマト、イチメイサマ、オサキニドウゾー』

千歳「綾乃ちゃん、千鶴。席、どうする?」

綾乃「そうね。私は初めてだし、誰かと一緒がいいんだけど」

千鶴「なら私と」グイッ

綾乃「え?」

千歳「あらあら、珍しいなぁ。じゃあ千鶴、綾乃ちゃんの事よろしく頼んだわ~」

千鶴「うん」

綾乃「じゃあ千鶴さん、お願いね?」

千鶴「はい」



西垣「あれ、なにかあるな」

りせ「……」コクコク

千鶴「麺、固めで。こちらの人のも」

『アイヨー』

綾乃「固め? その方がいいのかしら?」

千鶴「はい」

綾乃「……」

千鶴「……」

綾乃(間がもたない……)

綾乃「あ、あの、千鶴さん」

千鶴「?」

綾乃「食べる時の注意点みたいなのって、何かあるのかしら?」

千鶴「注意点……まずは麺から食べる事、です」

綾乃「そ、そう」

綾乃(一口目にスープを飲んで、通ぶったりするなって事かしら?)

『ダイノカター ニンニクハー』

千鶴「ヤサイマシニンニクアブラ」

『ヤサイマシニンニクアブラ』

綾乃「い、今のは?」

千鶴「二郎でのトッピングのコールです」

綾乃「私、そんなのわからないわよ?」

千鶴「次に杉浦さんが聞かれるはずなんで、こう言ってください。――」

綾乃「――? わ、わかったわ」



『ダイノカター ニンニクハー』

綾乃「えっと……ぜ、ゼンマシマシ?」

『ゼンマシマシ』


ざわ……

千歳「あ、綾乃ちゃん……?」

西垣「全マシマシだって……!? あいつ、やるな……!」

りせ「……!」パチクリ



綾乃「な、なんだか騒々しくなったわね……」

千鶴「大丈夫です」

綾乃「千鶴さんがそう言うなら、安心――」

『オマチドー』 ドンッ

綾乃「∵」



※ 二郎参考画像は>>51

キリ良く飯風呂ー

残ってたら続けます

綾乃「な……な……」

千鶴「な?」

綾乃「なんなのよコレぇえええぇぇえ!!??」

『オジョウチャン チョットシズカニネー』

綾乃「はっ! す、すみません……でも、これは……」

千鶴「いただきます」ガツガツ

綾乃「ち、千鶴さん……これどうやって食べたら……」

千鶴「……」モシャモシャ

綾乃(聞こえてないみたい……ていうか、食べるのはやい……)

綾乃(どうしよう……? さっき麺から食べろって言われたのに、これじゃあスープすら飲めないじゃない……)

綾乃「と、とりあえず上から食べて行こうかしら」パクッ

綾乃「あ、おいしいかも」モグモグ

~15分後~

綾乃「ううう……減らない……」

りせ「……」ゴトッ

西垣「なっ、なにィ!?」

千歳「会長が一番!? 一体あの小さい体の、どこに入ってるんやろか……」

りせ「……」ドヤァ

西垣「わかった、今回は私の負けだ。だが、2番手は譲らん!」モシャシャシャ

千歳「千鶴には……千鶴には勝つんや……!」ズビビビッ

千鶴「……」ズズーッ

りせ「……?」

西垣「どうした松本? 食べ終わったなら外で待っててくれ」

りせ「……」コクン

千歳「ぷはっ! ごちそうさまや!」ゴトッ

西垣「なっ! 池田姉にまで負けるとは……。ならばせめて3番手!」

千鶴「……」ズズーッ

千歳「千鶴、まだ食べとる……。うち、千鶴に勝ったんや……!」

西垣「おえっぷ……ごちそーさん……」ゴトッ

千歳「あ、先生は一歩遅かったですねぇ」

西垣「くっ……私とした事が……。出てるぞ」

千歳「あ、うちも出ます。それじゃ千鶴、綾乃ちゃん、頑張ってな~」

千鶴「……」ズズーッ

綾乃「」ピク…ピク…

綾乃「あ、あの……千鶴さん……?」

千鶴「なにか?」

綾乃「これ、どうやって食べたら……」

千鶴「麺が延びきって、物凄い量になってますね」

綾乃「もしかして……麺から食べろって、そういう意味だったのかしら……」

千鶴「ええ」

綾乃「で、でもしょうがないじゃ――うえっ……」

綾乃(声を出すと、お腹、というか胃と喉に……来る……)

千鶴「上の肉と野菜が凄い量で、それを食べきらないと麺が出てこない、なんて知らなかった。そう言いたいんですか?」

綾乃「~~~!」コクコク

千鶴「ちゃんと最初から、穿り返せば食べれました」

綾乃「……そ、そんな……それならそう言ってくれたら……」

綾乃「うぷっ……。でも、もう無理よ……食べきれないわ……」

千鶴「残すんですか?」

綾乃「ええ……お店の人や、お金を出してくれた千鶴さんには悪いけど……」

千鶴「そうですか」

綾乃「本当にごめんなさいね……」

千鶴「いえ、実はこの時を待っていました」

綾乃「……え?」

千鶴「ギルティ」パチンッ

綾乃「??」

ガタッ ガタガタッ

綾乃「え? え?」

『ギルティー!』ガシッ

綾乃「ちょ、ちょっと! 何するんですか!?」

『ギルティー! ギルティー!』グググ…

綾乃「いやっ……だ、誰か! 助けて!」

千鶴「無駄です、ここにはジロリアンしかいませんから」

綾乃「ジ、ジロリアン……?」

千鶴(ごめんなさい、杉浦さん。私はこうなるのがわかってて、わざとあなたに大豚ダブル全マシマシを注文させた。でも、それも全て姉さんと杉浦さんの為)

千鶴「さあ杉浦さん、完食してください」

『ギルティー! ギルティー! ギルティー!』グイグイ

綾乃「い、いやあああ――おっぷ……」ブクブク

綾乃(誰か……助けて……! 千歳……! 歳納……京――)



※ 実際の二郎ではこんな事はありえませんが、残すのは出来るだけ避けましょう。

   また、必ず食べきれるサイズを注文するようにしましょう。
   大事な事なので、2度ry

~店外~

千歳「千鶴と綾乃ちゃん、遅いなぁ……」

西垣「確かにな。杉浦はともかく、池田妹はもっとデキる奴だと思ってたんだが」

りせ「……」クイクイ

西垣「ん? どうした松本」

りせ「…………」

西垣「なに? 池田妹の様子がおかしかった?」

千歳「なにかあったんですかぁ?」

西垣「ううむ。何でも殆ど食べ終わってるのに、スープを随分とゆっくり飲んでいたそうだ」

千歳「もしかして、綾乃ちゃんのペースに付き合ってあげてるんとちゃいますかね?」

西垣「ならいいんだけどな。しかし、ロットバトルを受けておいてそれはないよなー。な、松本?」

りせ「……」

西垣「松本……?」

うむ、流石に千鶴酷い奴過ぎたかな
蛇足っぽかったし、やめとくか

~20分後~

千歳「いくらなんでも、遅すぎや……」

西垣「確かにそうだな。流石にちょっと心配になってきた」

千歳「うち、ちょっと見てきま――」

りせ「……!」ガシッ

千歳「か、会長?」

西垣「池田、気持ちはわかるがやめとけ。割り込みとみなされて、ギルティされるかもしれないぞ」

千歳「そうですけど……うちもう心配で心配で……。ハッ、ま、まさか2人にギルティが――」

ガラガラ

千歳「あ、千鶴! 綾乃ちゃん!」

千鶴「姉さん。遅くなって、ごめん」

綾乃「ううぅ……」

西垣「案の定杉浦はグロッキーか、肩まで借りちゃって情けないぞ」

千歳「綾乃ちゃん、大丈夫?」

綾乃「うぐっ……ううぅぅ……」

りせ「……!?」ギュッ

西垣「松本……?」

千歳「あ、黒烏龍茶買うとけばよかったなぁ。ごめんなぁ、うちうっかりさんで」

綾乃「ああぁ……おあぁっ……!」

千歳「あ、綾乃ちゃん? なんか様子がおかしいけど……」

西垣「まさか……!? おい、池田妹。杉浦は完食したのか……?」

千鶴「……はい」

西垣「バカな! 初心者、それも初来店の奴が大豚ダブルの、それも全マシマシを完食しただと!?」

りせ「……」ガクブル

西垣「ギルティか……」

綾乃「あああああああ!!!!!」

千歳「綾乃ちゃん、その目……!?」

西垣「まるで二郎のスープのように濁った目……。大豚ダブル全マシマシを食した者に、そこそこの確立で発現すると言われている――」

千鶴(純粋種のジロリアン……!)

りせ「……」ガタガタ

綾乃「ううぅぅ……喉が……渇いたわ……」

千歳「喉……? じゃ、じゃあうち、黒烏龍茶買って来るから、ちょっと待っててな?」

綾乃「違うわっ……! 私が……欲しいのは……」

西垣「二郎のスープ……だろう……?」

綾乃「……」クルッ スタスタ

千歳「あ、綾乃ちゃん……どこに……?」

『ナニヨアンタ』
『ワリコミトハ、イイドキョウネ』
『コレハギルティータイショウナノラ』

西垣「不味いぞ、力ずくでも杉浦を止めるんだ! 今のアイツは、二郎を食べる事しか頭に無い!」ダッ

りせ「……!」

千歳「全マシマシ食べ切っといて、まだですか!? そんなん、体が壊れてまう……」

西垣「満腹感なんて関係ない。とにかく自らの血液を二郎のスープに近づけようと、ひたすら二郎を摂取しようとするんだ」

千歳「で、でも、純粋種のジロリアンって、なんか凄いんとちゃいますの?」

西垣「別に純粋種のジロリアンだからって、戦闘能力が上がったりとかいう事はまったくないそうだ。むしろどんどん膨れ上がって行って、愚鈍になるんじゃないか……?」

千歳「そんな……大層な名前つけとるのに……」

西垣「このままじゃ、アイツは再びギルティを受けてしまう。とっとと捕まえるぞ!」

千歳「は、はい!」

千鶴(そう、純粋種はひたすらに二郎を食する事のみを求める。そこには、ジロリアンとしてのマナーなど一切無い)

千鶴(そして、純粋種を二郎の呪縛から解き放つ為に必要なのは――)

千歳「キ、キスぅ!?」

千鶴「……////」コクン

西垣「そ、それは私も知らなかったな……」

りせ「……////」

綾乃「はな……してっ……! 私は……二郎を……!」ジタバタ

千歳「キキキキキス言うても……誰がしたらええんやろ……」

西垣「それは……相手の指定はあるのか?」

千鶴「いいえ、多分無いです」

千鶴(嘘だけど。本当は、どちらか片方でも、相手の事を想っていないとダメらしいとかなんとか)

千鶴「というわけで、姉さんお願い」

千歳「え、ええええっ!? な、なんでうちが……」

千鶴「この中だったら、適役だから」

西垣「うんまあ、確かにこの中ならそうだな。杉浦の親友なんだし」

りせ「……////」コクコク

千歳「で、でも本当にうちでええんやろか? 綾乃ちゃん嫌がったり――」

西垣「今更何言ってんだ、この間あんだけ暴れておいて。ほら、ちゃっちゃとやっちまえ」

千歳「うう……千鶴、本当にうちがしないとあかん……?」

千鶴「……」

最早二郎がまったく関係なくなってきてしまった…。

またちょっと離れます。

帰ってきた
続けるけど、遅筆と謎展開は先に謝っておく

千鶴(姉さんは、きっと杉浦さんが好き。でも、杉浦さんは歳納の事が好きみたい。姉さんの事は、親友としてしか見ていない)


千鶴(杉浦さんが姉さんに、歳納の事を話しているのを何度か見た事がある)


千鶴(姉さんはいつものようににこやかに笑って受け答えしていたけど、どこか悲しそうな顔をしていた)


千鶴(鼻血だって、きっと自分を誤魔化しているのに過ぎないと思う)


千鶴(これじゃあ、姉さんが不憫でならない。私は、姉さんの、あの暗い顔はもう見たくないから)


千鶴(多少強引でも、私が姉さんと杉浦さんを繋ぐ。杉浦さんの気持ちを踏みにじったとしても――私は、姉さんに幸せになって欲しい!)

千鶴「うん、姉さんがしないと――」

綾乃「はな……せっ……!」バッ

りせ「……!」フラッ

西垣「松本!」ダキッ

りせ「……」

西垣「まったく……危なっかしい奴だな……」

りせ「……////」

千鶴「先生、何を惚気て――」

千歳「千鶴危ない!」

綾乃「二郎っっっ!!!」ガバッ

千鶴「っ!?」ドサッ

綾乃「見ぃつけた~……」

千鶴「えっ……?」

綾乃「二郎……!」ムチュー

千鶴「!?」

千歳「」

西垣「」

りせ「」

綾乃「んんっ……二郎……じろ……ん、んんっ……!?」

千鶴「」

綾乃「私……何を……?」

西垣「あー、いやー、その、なんだ、多分、アレだ」

千歳「アレって……?」

西垣「池田妹が、この中で一番二郎を摂取してたから、純粋種の二郎限定で鋭敏になった感覚に引っかかった……とかじゃないか?」

千歳「なるほど……」

西垣「もしくは、さっき最後までスープを啜っていたから、とかな……」

千歳「どちらにせよ、随分と強引な解釈やけど……」



綾乃「ちっ、千鶴さん!? どうして私が千鶴さんに馬乗りに……? ていうか、わ、私! 今、あなたと……!」

千鶴「……とりあえず、降りてください……」

綾乃「あっ? ああああごごごごめんなさい!」ヒョイ

西垣「まあなんだ。杉浦も元に戻って、ハッピーエンドだ。めでたしめでたしー」

千歳「そうですねー、あははー」

りせ「……」

綾乃「ええと……何があったか、説明して貰えませんか……?」

西垣「うむ、実はこれこれこういったわけでな……」



綾乃「なんですかそれ……何かのアニメの話ですか?」

千歳「それが、全部本当の事なんよ……」

綾乃「千歳まで……会長、全部冗談なんですよね?」

りせ「……」フルフル

綾乃「会長も……。千鶴さん、千鶴さんも――」

千鶴(なんで……私と、杉浦さんがキスしたら、戻ったの……?)

千鶴(もしかして、杉浦さんは……私の事が……?)

千鶴(そんなはずはない。流石に、杉浦さんが歳納の事が好きだって事くらいわかってる。わかってないのは、当の歳納くらい――)

綾乃「――さん、千鶴さんってば」ユサユサ

千鶴「あっ……は、はい」

綾乃「その……さっきの事なんだけど……」

千鶴「さっき……~~~////」

綾乃「ちょっと、黙らないでよ! 私だって……ちょっとは恥ずかしいんだから……////」

西垣「あー、で、杉浦はどこから記憶が無いんだ?」

綾乃「えっと……確か、ラーメンを食べ始めてちょっと経ってからですね……」

千鶴「えっ……?」

綾乃「なんか、お腹いっぱいになって、そのまま眠たくなって寝ちゃったような……?」

綾乃「で、起きたら……その……////」

西垣「池田妹と熱い口付けを交わしていたわけだな」

綾乃「もう、ハッキリ言わないで下さいよ!////」

千鶴「あの……」

綾乃「えっ? な、何かしら千鶴さん」

千鶴「その……覚えてないんですか……?」

綾乃「覚えてって……ええと……その、さっきのアレの事かしら……?」

千鶴「いえ……」

西垣「まぁまぁ、もうその辺でいいじゃないの! ほら、杉浦も今日は早く帰って休めって」

綾乃「はあ……」

千鶴「じゃ、じゃあ姉さん、帰ろう……」

千歳「へ?」グイッ

千鶴「いいから、早く」スタスタ

千歳「ちょっと、千鶴? あ、それじゃあ皆さん、また。綾乃ちゃん、気ぃつけてな~」

綾乃「ええ……」

西垣「ふむ……」

りせ「……」トテトテ

西垣「お、おい松本? なんだあいつ、私に何も言わずに帰っちゃうなんて、珍しいな……」

~翌日 七森中屋上~

千鶴(どうしてだろう……どうして杉浦さんは……)

千鶴(私は、姉さんと杉浦さんが、その……仲良くしてるのを見ているので十分なのに……)

カランカラン…

千鶴「? 空き缶?」

りせ「……」

千鶴「あ、生徒会長……」

りせ「……」スッ

千鶴「紙の束……? プリントか何かですか? わざわざすみま――」


『本当にそう思ってるの?』


千鶴「え……?」

千鶴「なんですか、これ……」

りせ「……」クイクイ

千鶴「めくれって事ですか?」

りせ「……」コクコク


『これであなたとお話できるから』


千鶴「お話って……」

りせ「……」クイクイ

千鶴「……」ペラ


『綾乃さんの事で、悩んでいるんでしょう?』


千鶴「……!?」

疲れた眠い
スレタイ見返して頭混乱して来た
二郎どこ行った…?

大したヲチじゃないけど、最後まで書いた方がいいですかね…

りせ「……」クイクイ

千鶴(まるで……私の心を読まれてるみたい……)ペラ


『あなたはちょっとわかり辛いから、こうして紙にまとめてみたの』


千鶴(紙にまとめるって……。これ、完全に先読みしてるみたいけど――)

りせ「……!」ガシッ

千鶴「……一気にめくるのは駄目ですか?」

りせ「……」コクコク

千鶴「わかりました……」ペラ


『ごめんなさい、気分を害したなら謝ります』


千鶴「いいですよ。で、私と何を話すんですか?」

りせ『さっきの通り、綾乃さんの事』

千鶴「そ、それは……」

りせ『そんなに恥ずかしがらなくても』

千鶴「別に恥ずかしがってなんか……」

りせ『綾乃さんの事、どう思ってるの?』

千鶴(文字だと単刀直入だ……)

千鶴「どうって……姉さんと仲良くなってくれたら、嬉しいですけど……」

りせ『本当にそう思ってるの? Part2』

千鶴「……さっきからなんなんですか、本当にそう思って――」

りせ『じゃあ何故昨日、あなたと綾乃さんがキスしたら、綾乃さんは二郎の呪縛から解放されたの?』

千鶴「っ……! そ、それはきっと杉浦さんが……私の事を……」

りせ『それはあなたも知っている通り、ありえない』

千鶴「それは……そうですけど……」

りせ『だったら何故?』

千鶴「何故って……」

りせ『答えは簡単、消去法』

千鶴「消去法……」

りせ『あなたが、綾乃さんの事を、慕っているという事』

千鶴「……いくら会長でも、怒りますよ。私はただ、姉さんと杉浦さんが、仲良くしてるのを見れば幸せなんです!」

りせ『本当にそう思ってるの? Part3』

千鶴「このっ……!」

りせ「……!」ペタン

千鶴「あ……す、すみません……つい……」

りせ「……」フルフル クイクイ

千鶴(まぁ……今のアクシデントで、噛み合わなくなるはず……)ペラッ

りせ『ごめんなさい、怒らせるつもりはないの』

千鶴「……!?」ゾクッ

りせ『勿論、怖がらせるつもりもないの』

千鶴「じゃあ……じゃあこんな事して、一体何がしたいんですか!?」

りせ「……」クイクイ

千鶴「……」ペラッ

りせ『あなたが、綾乃さんの事で、苦しんでいるのを見るのが怖かったからかしら』

千鶴「怖い……?」

りせ『表面上では誰も理解してくれないと思う。けれど、あなたの愛の形は少し異常。なぜなら――』

千鶴「っ……!?」

りせ『なぜなら、あなたは姉に自分を投影して見ているから』

千鶴「違う……」

りせ『そうして、フィルター越しの片思いをしている』

千鶴「違う……!」

りせ『だから、姉と綾乃さんが幸せそうなのを見て、嬉しいと錯覚しているの』

千鶴「違うっ!!」

りせ「……!」ビクン

千鶴「私は……! そんな……そんな事……!」

りせ「……」クイクイ

千鶴「くっ……」ペラッ

りせ『でも、そろそろ自分に正直になるべき。そんな歪んだ形の思いを抱えたまま生きるのは、とても危うい事』

千鶴「だから……だからって……どうすればいいって言うんですか……」

りせ「……」

千鶴「私が……あの杉浦さんに……なんて言ったらいいんですか……」

りせ「……」

千鶴「杉浦さんは……勉強も凄く出来るし……美人だし……生徒会の副会長もやってて……」

りせ「……」

千鶴「姉さんとは、もうずっと前から友達だし……。私なんかが……今いきなり出て行っても……どうしろっていうんですか……」

りせ「……」

千鶴「それにこの間……杉浦さんには、あんな酷い事までして……。しかも、それを杉浦さんが覚えてなかった事に、ホッとしてるような私なんかが……」

りせ「……」

千鶴「しかも……杉浦さんは……きっと歳納の事を――」

ギィィィ…

千鶴「誰っ!?」

千歳「……うちや」

千鶴「ね、姉さん……!?」

千歳「ごめんな千鶴、全部聞いてしもた……」

千鶴「え……」

千歳「綾乃ちゃんの事……そんな風に思ってたなんて、うち知らんかったわ……」

千鶴「まさか……」

りせ「……」コク

千鶴「なんで……姉さんに……」

りせ「……」クイクイ

りせ『あなたを、一番理解してくれる人だと思ったから』

千鶴「余計な……お世話です……」

千歳「こら千鶴、そんな事言ったらあかんよ? 会長は千鶴の事心配して――」

千鶴「わかってる! わかってるけど……う……ううぅぅ……」

千歳「はいはいよしよし」ナデナデ

千鶴「ごめんなさい……ぐすっ……ごめんなさい姉さん……」

千歳「すみません会長、千鶴の事こんなに考えてくれて……」

りせ「……」フルフル クイクイ

千歳「え? これ、めくればええんですか?」ペラッ

りせ『あなたも、大事な友達だから』

千鶴「あ……」

千歳「やって。よかったなぁ、千鶴?」

千鶴「うん……」

りせ『またロットバトルしましょう』

千歳「はは、会長たら筋金入りやなぁ」

りせ「……」トテトテ

千歳「行っちゃったわ。千鶴、うちらももう帰ろうか?」

千鶴「うん……でも……」

千歳「?」

千鶴「その前に、行かないと」

りせ「……」トテトテ

西垣「おう、松本」

りせ「……」

西垣「昨日さっさと帰っちゃったのは、これ作ってたからか」

りせ「……」ペコリ

西垣「別に怒ってないって、一言言って欲しかったけどな。まぁ成功したみたいでよかったな」ナデナデ

りせ「……////」

西垣「さて、じゃあ――ん?」

りせ「…………」

西垣「そうか、最後まで見届けたいか。そういうのは出歯亀って言うんだが……監督責任って奴だな」

りせ「……」クスクス

西垣「それじゃあ、生徒会室にでも行くとしますかね」

~生徒会室~

千鶴「――という事があって……その……すみませんでした……」

千歳「ごめんな綾乃ちゃん、許したってな?」

綾乃「そんな恐ろしい事が、私の身に起こってたなんて……」

向日葵「まさか、杉浦先輩もアレの餌食になっていたとは、驚きですわ」

櫻子「びっくりだね、私とおんなじだー」

綾乃「えっ? 大室さんも?」

櫻子「はい。この間、家にジロリアン達が来て……」

綾乃「家にまで……それは恐ろしいわね……」

向日葵「そういえば、杉浦先輩はどなたと……その……////」

綾乃「?」

櫻子「杉浦先輩は、誰とちゅーしたんですか?」

千鶴「っ!?////」

綾乃「はい!?////」

向日葵「その……二郎の呪縛から解かれる為には、キ、キスが必要じゃありませんの……」

千歳(ああ、この娘達もやったんやね~)

綾乃「どどどどうでもいいじゃない、別にそんな事!////」

千鶴「やっぱり……どうでもいいですよね……」

綾乃「え?」

千歳(千鶴! 綾乃ちゃん、照れてるだけやって!)ヒソヒソ

千鶴「そ、そう……?」

綾乃「なによ、コソコソして。どうしたの?」

千歳「綾乃ちゃん、千鶴から話があるみたいなんや」

千鶴「……////」

綾乃「千鶴さんから? 何かしら――あああぁぁぁ昨日の事ならいいのよ!? 私、全然怒ってないから! その、ギルティ?については微塵も覚えても無いし……」

千鶴「えっと……その……////」

綾乃「な、なにかしら……?」

千鶴「私は、その……杉浦さんが――」

ガラッ

京子「あっやのー! ラーメンくれー!」

千鶴「」

千歳「」

京子「あれ? 千鶴がいる。どしたの?」

綾乃「はぁ……ラーメンなんてあるわけないでしょ? 大体いつも、プリンかアイスだったじゃない」

京子「あれ? 今私ラーメンって言った? なんだろー、最近事あるごとにラーメンって言ってる気がするなー、えへへ」

結衣「いい加減そこも治ってくれよ……。あ、失礼します」

千歳「ああぁぁ……」

西垣「いや、すまん。止める隙が無かった」

りせ「……」ペコペコ

千歳「そんな……先生も会長も悪くな――盗み聞きしとったんですか……?」

西垣「ま、まあな……。ほら、監督責任ってやつだ」

りせ「……」ペコリペコリ

千歳「まぁ千鶴がお世話になりましたし、それくらいは――って、千鶴!?」

千鶴「……」

京子「おーい、ちっづるー!」

千鶴「……」ワナワナ

千歳「あ、あかん……千鶴本気で起こっとる……」ガクブル

京子「どしたの? 顔真っ赤だけど、風邪でも――」

千鶴「歳納……お前っっ!!」

京子「ひっ!? ゆ、結衣ー! 千鶴が……千鶴が怖いよー!?」ダキッ

結衣「はいはい、大丈夫だから」ナデナデ

千鶴「ぐっ……」ギリギリ

結衣「ごめんね千鶴、また京子がちょっかい出して」

千鶴「……」

結衣「ほら、お前もちゃんと千鶴に謝れよ」

京子「……やだ」

結衣「駄々こねるなよ、お前が悪いんだぞ?」

京子「じゃあ……ちゅーしれ」

結衣「……え?」

京子「ぢゅーじで!」

千歳「へ?」

千鶴「なっ?」

向日葵「えっ?」

櫻子「は?」

西垣「ほう」

りせ「……////」

綾乃「」


結衣「ここで……?」

京子「うん……」

結衣「いやでも……皆いるし……」

京子「結衣は……やだ?」

結衣「嫌じゃないけど……恥ずかしい……////」

京子「私は平気だよ、結衣となら♪」

結衣「そういう事を面と向かってストレートに言われると、もっと恥ずかしいかも……////」

京子「じゃあ、もう平気だよね」

結衣「そういう問題じゃ――」

ドサッ

千歳「ああ、綾乃ちゃん!?」

千鶴「杉浦さん……」

西垣「ああ、まぁ、なんだ、その、お前達」

結衣「え? あ、はい」

西垣「杉浦が気絶している間に、出て行ってくれ」

りせ「~~♪」アアアー アアアー

西垣「松本、それ多分私しかわからんぞ」

りせ「……////」

結衣「わ、わかりました、失礼しました」

京子「ねー、ちゅーまだー?」

結衣「わかったわかった、部室でしてやるから」

櫻子・向日葵((負けてらんない……))

千歳「綾乃ちゃん、しっかり! 気を確かに!」ペシペシ

千鶴(複雑……)

綾乃「――よ」

千歳「あ、気ぃ付きはった? よかった、このまま召されてしまうんやないかと――」

綾乃「ヤケ食いよ!」

千歳「え?」

綾乃「今日くらい許しなさいよ! チクショー!」ガチャッ

櫻子「先輩……ごしゅーしょーさまです……」

向日葵「でも、冷蔵庫には確か何もなかったような……」

綾乃「ぐぬぬ……こうなったら、今日はもう解散よ! どこかに食べに――そうだ……二郎に行きましょう……!」

千歳「な、なんだってー!?」

西垣「お、おいおい大丈夫なのか? 昨日散々酷い目にあったってのに」

綾乃「止めないで下さい先生。今の私ならいける……そんな気がするんです!」

西垣「そうか……頑張れ」

千鶴「杉浦さん……二郎、私も付き合います」

綾乃「千鶴さん……ありがと。じゃあ、今日こそちゃんと、二郎のこと教えて頂戴ね?」

千鶴「はい、昨日は本当に――」

綾乃「もういいのよ、それは」

千歳「な、なんだかよくわからへんけど、丸く収まってるんやろか? あはははは……」

西垣「それじゃ私も付き合おうかな、松本も行くだろ?」

りせ「……」コクコク

千歳「それじゃあうちも。あら、昨日と同じ顔ぶれやね。大室さんと古谷さんは――」

向日葵「櫻子! 早く帰りますわよ!」

櫻子「向日葵こそ! 遅れんなし!」

千歳(はよ帰って、くんずほぐれつってとこやね……)

西垣「さて、ロットバトルリベンジといきますか! 今日は負けないぞ、松本?」

りせ「……」キリッ

千鶴「今日は私も、本気で行きます」

西垣「そういや昨日は手抜かれてたんだったな。純粋種が飛びついた池田妹の実力、どれほどのものか見せてもらおうか!」

千鶴「その言い方はやめてください……」

綾乃「ほら、皆早く行くわよ! 目指せ、えっと……ゼンマシマシ?完食!」

千鶴「それは……止めておいた方がいいと思います……」

千歳「あはは、せやね~」

綾乃「止めないで二人とも、今日は……食べなきゃやってられないのよっ……!」

千歳「この後、歳納さんにフラれた綾乃ちゃんが、その失恋パワーで大豚ダブル全マシマシを完食して、またもや純粋種に覚醒しかけたり――」

千歳「そして、またもや千鶴とキスしてもーたりするのは、別のお話」

千歳「そんなわけで、この二郎をめぐるお話も、ここで終わりやで~」

千歳「それにしても、出番無かったから不憫って理由で、即興で書き足された綾乃ちゃん……ますます不憫な娘になっとるねぇ……」

千歳「あ、そういえば赤座さんと吉川さん? どこ行ったんやろな~?」



あかり「1、清く正しく美しく、散歩に読書にニコニコ貯金、週末は釣り、ゴルフ、写経……」

ちなつ「声が小さい!」

あかり「で、でもちなつちゃん……これ社訓だよ……? いくらジロリアンって言っても、社員さんでもないのに……」

ちなつ「ごちゃごちゃ言わない! ほら続き! 2、世のため人のため社会のため! 3、Love & Peace & Togetherness!」

あかり「ふえぇ……。4、ごめんなさい、ひとこと言えるその勇気!」

ちなつ・あかり「5、味の乱れは心の乱れ、心の乱れは家庭の乱れ、家庭の乱れは社会の乱れ、社会の乱れは国の乱れ、国の乱れは宇宙の乱れ!」



6、ニンニク入れますか? おしまい

やっと終わった…
途中投げそうになったり、最後の綾乃・千鶴とか適当過ぎてすまない…
やっぱ即興でやると、どうしても滅茶苦茶度合いが増してしまうなぁ



ところで、今何時ですか

sageられまくってるのは、煽られてると受け止めていいのだろうか
さて、ヤケ食いしに二郎行ってくるか…

>>316
え、sageだとそう思うのか
多分他意ないぞ

近場の二郎休業だったなんてこったい


>>317
それならいいんだが、この落ちるの早い時間にsageられてると、
つまんねーからはよ落ちろって言われてるんじゃないかと邪推しちゃうのよ…

いやまぁ、単なる邪推です

VIP=age保守が染み付いてるイメージだったけど、あんまり気にしないようにするわ

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