阿良々木暦「こよみドラゴン」(22)

阿良々木暦が先天的に怪異に近い存在だとしたら?
そんなifから始まるストーリー。原作ブレイク。

暦「なあ火憐ちゃん、月火ちゃん」

火憐「んー?」

月火「どうしたのお兄ちゃん。そんな改まった顔で。全然面白くないよ?」

暦「いや、月火ちゃん。別段、僕は面白い話をしようなんて思っていないのだけれど。まあ今はそれも置くとして」

火憐月火「?」

暦「ちっとやそっとじゃ語れない、そう…とても大事な話があるんだ」

暦「だから静かに聞いて欲しい。まあ、出来ればだけど」

火憐「うーん。なんだか分かんないけど、そこまで言うんだったら聞いてあげるぜ!兄ちゃん」ダラー

月火「特にすることもないし、私としても時間を持て余してるから、聞いてあげる」ダラー

暦「はー、お前らなぁ…。確かに僕は火憐ちゃんと月火ちゃんの二人に対して、良好な兄妹関係を構築しているとは言えないだろう」

暦「でも、僕たちは血の繋がった兄妹のはずだ。それこそ切っても切れない間柄じゃないか。だから、せめてこっちを見ろ!お願いだから僕の目を見て聞いてくれええッ!」

月火「それでお兄ちゃん」

火憐「大事な話って、なに?」

暦「ああ。まずはご協力に感謝する。僕はお前達みたいな出来のいい妹様'sを持てて幸せだよ」

月火「それはどういたしましてのありがとう」

暦「…ゴホン。早速だが、本題に入ろうと思う。今までお前達には内緒にしていたことなんだけれど、僕は今日から家を空けることになっているんだ」

火憐「ええっ!?何で?」

月火「…………」

暦「かなり前のことになるんだが、僕はある友達と一緒に海外に留学する約束をし
ていたんだ。特に目的はないけど、見聞を深めるには丁度いいかなって思って」

暦「父さんと母さんには当時に話しを付けていたんだが、火憐ちゃんと月火ちゃんに伝えるのを忘れてたんだ」

火憐「へぇー。すごいな兄ちゃんは。やっぱり高校生にもなると自由に生きてみたくなるのか?」

暦「ああそうだ」

月火「ねえ、お兄ちゃん」

暦「どうした月火ちゃん」

月火「お兄ちゃんに友達っていたの?」

暦「」グサッ

暦「そ、そりゃいるだろうさ。だって僕は高校生なんだぜ?もう、さ、3年生だぜ?友達の一人や二人、いて当然だろ」タラーッ

月火「でもお兄ちゃん、友達なんか必要ないって言ってなかった?」

暦「ささ、さあードウダッタカナ?」

月火「じーっ」

暦「あは、ははは、は」ビクビク

月火「まあいいや。今回はそういうことにしといてあげる」プイッ

暦「い、いやー。月火ちゃんが何について話しているのか僕には皆目見当が付かないけれど。……ありがとう」

火憐「兄ちゃん?」

暦「よし、もうそろそろ時間だな」

暦「じゃあな大小シスターズ。僕はしばらく家には帰ってこないけど、心配して枕濡らすんじゃねぇぞ?」

火憐「へっ!心配無用だぜ、兄ちゃん。あたしたちは、別に兄ちゃんなしでもやっていけるって」

暦「言うと思ったぜ、このでっかい方の妹め!」ワシャワシャ

火憐「どうしたんだ兄ちゃん。いきなりあたしの頭なんか撫でて」

暦「別に。火憐ちゃんはお兄ちゃんが妹の頭撫でるのに、何か理由が必要だとでも思ってるのか?」

火憐「おお!今日の兄ちゃん、何かすごいな!」

暦「今日だけじゃない。お前達の兄ちゃんはいつもすごいんだぜ」キリッ

火憐「…やばい。一瞬だけど、兄ちゃんにクラっと来た」

暦「ヒャッホー!オーケーオーケー。今の僕は妹の全てを受け入れる寛大な心を持っている。近◯相◯上等ォ!」

月火「…………」

暦「じゃあ、そろそろ行くよ」

火憐「お土産よろしくな、兄ちゃん!」ビシッ

暦「おう!月火ちゃんも、元気でな」ニコッ

月火「」ゾクッ

月火「…うん、お兄ちゃんも」

月火「またね」

暦「……ああ、またな」

ギイイ、バタン

火憐「行っちゃったなー、兄ちゃん」

月火「……そうだね」

火憐「どうしたんだ、月火ちゃん」

月火「ううん。何でもないの」

火憐「そっか。ならいいや」

月火「……………………お兄ちゃんのばーか。プラチナむかつく」ボソッ

暦「そのことだったら忍野、僕は何度も言ったはずだ。いつ暴走するかも分からない力に怯えて、ビクビク過ごすくらいなら、僕はその力を制御してやる」

忍野「抑え込むワケでもなく?」

暦「ああ。抑え込むにも、いつか必ず限界が来るはずだ。そんな不安定な爆弾を抱えたままなら、僕はあの家で暮らせない」

忍野「でも阿良々木くん。君の進む行こうとする道は、さすがの僕でもおすすめ出来ないかな」

暦「それは、忠告か?」

忍野「そうだよ。友人としての、ね」

忍野「君のは怪異というより体質に近い。吸血鬼という最強の怪異に刺激され、眠っていた力が呼び起こされたというのが僕の推論だ」

忍野「僕は怪異専門だからね。その類いの神話にはあまり精通していないんだけれど、これだけははっきり分かる。それは到底、人の手に負えない力だよ」

>>8 投稿順ミスです

忍野「やあ、阿良々木くん。意外に早かったね。僕としては、もう小一時間待つ気でいたんだけど」

暦「いや。仲の悪い兄妹のスキンシップなんざ知れてるよ。それに、僕に友達がいないこと、知ってるだろ?それより忍野、これからどこに向かうんだ?」

忍野「ん?委員長ちゃんには何もなし、か。まあ僕がとやかく言うことじゃないしね。僕らが行くところは確か…あれ?なんて場所だったかな」

暦「おいおい」

忍野「いやあ、申し訳ないね。何せ誰にも知られない場所を用意したから、危うく僕も忘れてしまうとこだったよ」

暦「どんなとこだよッ。いや、むしろ気になる!」

忍野「楽しみは残して置くものだよ、阿良々木くん」

忍野「そうだね。最後にもう一度聞いておこう」

忍野「本当に、いいんだね?もうセカンドオピニオンを選択する気はないってことで」

>>8に続く

忍野「この場合、手に負えられないのは阿良々木くんじゃなく僕の方だけど。つまり君は、一人で勝手に助かるしかないんだ。いくら吸血鬼のスキルも得たからといって、元からある力にどんな作用するかも分からない」

忍野「最悪、君は死ぬよ?」

暦「ふん。分かってるよ、忍野。でもなぁ、僕はさっき思ったんだ。早いとこ家に帰って、かっこいいお兄ちゃんの姿を見せて安心させてやらなきゃってな」

暦「僕はあの二人が生まれた時から、二人のお兄ちゃんだったんだ。大嫌いな妹たちだけど、僕はあいつらのお兄ちゃんで、側で守っていてやらねぇと危なっかしいんだ」

暦「だから僕は死なない。死ねないんだ」

忍野「いや~。そうだね。何となくだけど今、阿良々木くんなら、と思わされたよ」

忍野「妹さんたちが待っているんだろう?早速行こうじゃないか。時間は多いに越したことはないからね」

暦「おい忍野!ちょ、歩いていくのか?」

忍野「僕は言ったはずだ。ここから先は誰も知らないんだ。だから勝手に助かるしかない。お楽しみは取っておくとするよ、次に会うときが楽しみだからね。バイバイ阿良々木くん」



 こよみドラゴン(1) 了

続きはダラダラ書いて行く?予定です
寝ます

 こよみドラゴン(2)

 高校2年生を終えた春休みに、僕こと阿良々暦は怪異と呼ばれる存在に出会った。怪異とはどうやら人々の信仰やら畏敬だとかを集める存在で、世間一般で認識される生物とは違うものなのだけれど、僕が出会った怪異はその中でも特級の――――ズバ抜けて凄まじい吸血鬼であった。
 そして短い春休みの最終日。偶然の邂逅から始まった一連のいざこざに片が付いた。しかし、僕個人に至っては悩みの3分の1くらいが決着を見せただけで、悩み多き新高校3年生にとって差し迫る問題が残っていたのだ。
 よって、僕は高校3年生としてのスタートを周りの同級生たちより一歩遅れて切る羽目になった。加えて、今年もぼっちが確定した。
 始業式前夜、僕は僕がそれほど妹たちを嫌ってないことに気づいた。いや、あれは気づかされたと言うべきか。モノローグを語る時間も残りわずかとなったところで、僕はまた想う。

暦「火憐…ちゃん、月火ちゃん。――待ってろ、よ」

 今はまだ帰れない。こんな、無様に地面に這い蹲っている僕を。血だまりの中でもがく醜悪な姿の僕に、同情なんてして欲しくないから。ここは誰も居ない、僕一人しか居ない場所だけれど、だからと言って弱音を吐くことも怠けることも出来ない。
 僕が何処にいようが…例え、死にかけていたとしても、僕はあいつら二人のお兄ちゃんとして最後まで苦しんでやる。またね、なんて言われちゃあ、な。

???「おい、我が旦那(あるじ)様。そんなに妹御が気になるというのなら、さっさと終わらせるのが一番じゃ」

 ……沈黙。この世界は誰にも干渉し得ないと、忍野は太鼓判を押していた。それなのに、聞こえた。誰か、僕以外の女性の声。

???「うん?忘れたとは言わせんぞ?お主はこの私から、どれほど多くのものを奪ったと思うておる」

 忘れるわけがない。この声の主こそ、僕が助けた吸血鬼。そして、決して許すことなど出来ない怪異。

暦「なんでここにいるんだ。キスショット」

キスショット「ふむ。なぜだと思う――旦那(あるじ)様?」

暦「質問に質問で返すな。それと、変な声色で僕を呼ぶな。旦那様だって?僕の名前は阿良々木暦だ」

キスショット「相変わらずつれん男じゃ。モテない理由がよく分かる。しかし気にすることはない。儂が貰ってやるからの」フフッ

暦「馬鹿を言うな。これでも最近…まあいい。いい加減、僕の質問に答えろ。じゃないと今後一切口を聞かないからな!」

キスショット「あーあー。甲斐性なしはこれだから困る。せっかちさも合間って、何ともまあ――愛しいのぉ」ジュルリ

暦「っ!……………」

キスショット「これこれ。儂は別に答えぬと言ったわけではないぞ」

暦「…なら、早く説明しろ。お前がここにいる理由を」

キスショット「なんだ。本当に気づいておらぬのか…。仕方ないのー。教えてやってもよいのじゃが、教えれば儂は娶って貰えるかの?」

暦「断固拒否する!確かにお前の容姿はどストライクだけれど、それはあくまで人間の話であって、そもそもお前は吸血鬼だろ」

キスショット「何を言うかと思えば、そんな些細なことか」

暦「いや。僕にだって結婚する相手を選ぶ権利はあるッ!」

キスショット「しかし旦那(あるじ)様よ。お主はかなり頭が弱いのではないか?」

暦「あん?」

キスショット「主が特異な体質だというのは既にあのアロハ小僧から聞き及んでいるのじゃが、主は一度儂に吸血されているのを覚えておるかの?」

暦「最初に会った時だろ。覚えてるに決まってる」

キスショット「うむ。その時の儂の吸血行為によって、旦那様の眠っていた力が発現したのであろう?」

暦「そうだけど、それがどうしたって言うんだ」

キスショット「少しかわいそうになってくるの」ヤレヤレ

暦「哀れみの目で僕を見るな!」

キスショット「よいか?元々、人間とは存在を異にしておった主は、儂の吸血でも吸血鬼にまで至らなかった。しかし、あくまで吸血鬼のレベルまで到達しなかっただけじゃ。それの理由に、旦那(あるじ)様は治癒スキルを得ている」

暦「それで?」

キスショット「現在の旦那様は、特異な体質を持った吸血鬼もどき。つまりは儂の眷属ということじゃ」

暦「知らなかった…」

キスショット「同じ吸血鬼どうし、契りを結んで何の問題もない。むしろ、旦那様は儂以外の者と結ばれることは難しいの」

暦「吸血鬼は不死身…か」

キスショット「そういうことじゃ。残念ながらな」

暦「今度は一生独り身が確定か!ははっ、笑えねぇぜ!……はあ」ショボーン

書き溜め放出。明日も早いのでこれにて失礼します

キスショット「これほど相手にされんのは儂としても初めてかの?というより、他者に対して興味以上の感情を持ったのは久方ぶりか」

暦「お前なんかに好かれても僕としては何も嬉しくはないし、今の僕がお前に抱く感情は正直言って複雑だ。それこそ好意なんて論外極まりない」

キスショット「そうかそうか」

キスショット「まあよいわ。いずれ儂の魅力の虜にしてくれるからの。主のような男の一人や二人の籠絡出来ずでは、儂の威厳も地に落ちてしまう」ニヤリ

暦「く……!けれど、僕としてもかっこいい台詞を上で述べてしまっているから、そう容易く落ちるわけにはいかないッ」

キスショット「堂々巡りじゃの。儂は御前様をこんなにも好いておるというのに、御前様自身の童貞を拗らせたような負けず嫌いを発揮されては」ハァ

キスショット「嫌じゃ嫌じゃ。これだから童貞は」ヒラ

暦「ど、どど童貞ちゃうわ!しかしキスショット……何でお前は脱ぎ始めている!?」アセアセ

キスショット「おや。旦那(あるじ)様は服を着たままのプレイが良かったのか?儂はどちらでもよいのじゃが…」テレテレッ

暦「」

暦「か、かわええええええっっっっっ!!!!!」ウオオー

暦「ギャップ萌え!?これがギャップ萌えだと言うのか!!クソッ。何だってんだ、この生き物は!」

暦「おいキスショット!お前、僕に何をした?チャームか?男を誘惑するチャームでも使ったのか?言え!さもないとその熟れた身体を汚してやるぞ!」ガシッ

 僕は何を言っているのだろう。相手はあの吸血鬼だというのに。身体が火照る。全身が焼けるように熱い。一体全体、僕の身に何が起こっているのだろう。
 早く力の制御が出来るようのならないといけないのに。無駄な時間を過ごしている場合ではないのに。
 壊したい。今、目の前にいる吸血鬼を、この手で――破壊シタイ。
 ダメだ、意識が遠退いて行く……

「グウウウウ……」

キスショット「フフ。待ちわびたぞ、我が愛しき旦那(あるじ)様よ」

「グガアアアアアアッッ!!!」ザッ

キスショット「これこれ、そんなにがっつくではない」

キスショット「案ずるな。儂は逃げも隠れもせぬ。旦那様の欲望を受け止めるのが儂の務めじゃ」

キスショット「好きなだけぶつけるがよい。この身は既に旦那様のもの。それがこの世界唯一の理。他者が知覚することのない、キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードとその眷属の世界」

キスショット「ここには儂と御前様しかいない。だから安心して暴れるのじゃ」ニヤッ

「urrr…………guooooooooo!」



 こよみドラゴン(2) 了

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