エレン「惨劇の日」(50)

※オリありのifものです。許せる方のみお進みください





ある日、ちょうど一年くらいか、俺は訓練兵団を除隊した。

いや、した、ではなくさせられた、だった。

理由は釈然としなかった。ただ、急かされる様に追い出された。

ただそれだけだった。

それから随分と色々あったと思う。ただ、気づけばここトロスト区に母さんと二人で小さな食堂をやりながら何とか暮らしている。

そんな俺達の食堂も今日は特別に忙しい。

そう、今日は訓練兵の卒団式の日だからだ。

コニー「おーい、エレン!!酒が足んねーぞwwwwwww」ゲラゲラ

エレン「はーい、ただいまー」

ナック「おーい、こっちもだ!!」

エレン「へいへい…」

今日は卒団式の夜だけあって、みんなハメを外してる。

トーマス「ウボロロロロ……」

外し過ぎだ馬鹿野郎。

キース「すまんな、イェーガー。ここの支払いの責任は私が持つ」ペコリ

教官、それはただの柱です。

キース「……む、どうしたイェーガー!?返事がないぞ!?」ヒック

キース「何だ、まだあの事を引きずってるのか!?」ヒック

教官、単なる柱に絡まんで下さい。

柱が教官に絡まれている間にも別の奴が絡んできた。

ジャン「おいエレン!!」ヒック

エレン「……何だよ」

ジャン「何でお前の母ちゃんはあんな美人なんだよ!?」ゲフーッ…

知るか、馬鹿。

ジャン「ミカサもいるしよぅ…。何でお前ばっかり…」ウルウル

泣くなしがみつくなうっとおしい。

マルコ「なにやってるの、ジャン。エレンが困ってるじゃないか」

ジャン「うう……」メソメソ…

ようやくマルコに引きとられて行くジャン。

これで少しは静かになるかと、

クリスタ「一番、クリスタ!!脱ぎます!!」

脱ぐんじゃない。

ユミル「止めてええ!!誰かクリスタを止めろおおお!!」

クリスタ「私は自由なんだあああああああ!!」ヌギヌギ

脱ぐクリスタに止めるユミル。はしゃぐ野郎の自由を。

しかし、クリスタの自由も野郎の希望もあっさりと砕かれる。

アニ「……あんたら、ハメを外すのはいいけど、加減ってものを考えな」

何故か給紙を手伝ってくれているアニの一喝で店内の狂騒はやや落ち着きを見せる。

まあ、ほんの一瞬だったけど。


アニ「全く、あいつらときたら……」ハァ…

カルラ「まあ、良いじゃない。折角の日なんだから」クスッ

アニ「けどね……」ハァ…

母さんがアニをたしなめているのを見る。こう見ると普段の厳しい顔のアニが年相応の雰囲気を見せるので、少し嬉しくなる。

サシャ「そうです!!折角の無礼講なんですから!!」モグモグ

テメーはもう少し遠慮を覚えろ。

ミカサ「アニ、次はこれもお願い」

厨房に入るミカサが仕上がった料理をアニに渡す。

こう見ると中々堂に入っている。本当になんでもこなす奴だな、と感じる。

ミカサ「……あの、エレン…、そんなに見つめないで欲しい…」

エレン「何でだよ?」

次の瞬間、横には鬼を殺すようないや巨人でも逃げ出すような形相のアニが横にいた。


…………何故だ?

まだまだ、宴の夜は終わらない。

アルミン「ちょっ、ちょっと止めてよ!?」///

何故か向こうでスカート姿のアルミンが絡まれている。

アニ「……何やってんだあんたらは?」

吼える女に隠れる少年。しかもスカート姿の。

まだまだカオスの夜は治まりそうにない。

ミーナ「…………ウプッ、ゲロゲロゲロ………」

……治まりそうにない。

ここで、一度中断します。
多分、アニ萌えはないと思います。

また、夜に続きを書けたらと思います。

では。





アルミン「……よっと、これでいいかな?」

アニ「まあ、こんなもんじゃない?」

呼んできた馬車に渡す訓練兵と呼ばれた酔いどれ集団をやっと押し込み安堵の息をつく。

アルミン「じゃあ、僕達はこれで」

エレン「ああ、気をつけてな」

ようやく長かった夜が終わろうとしている。

ミカサ「気をつけて、アルミン」

アニ「……あんたもだよ」

ミカサ「……チッ」

終わろうとしている……。

サシャ「アムアムアムアム」

エレン「……お前は本当にマイペースだな」

サシャ「?」アムアムアムアム

エレン「……さて、と」


体を伸ばし、もう一仕事片付けようとした時、

カルラ「あら、どうしたの?」

不意に1人の客が現れる。

よく見知った顔。


ライナー・ブラウンだった。

エレン「どーしたんだよ、もう宴会は終わっちまったぞ?」

軽く声をかけるが返事がない。

青ざめた顔で立ち尽くしているだけだ。

ようやく喉の奥から絞り出した声が聞こえる。

ライナー「な、なあ、エレン。酒をくれないか?」

エレン「……まあ、それはいいけどさ。どうしたんだ、凄い顔色だぞ?」

そう声をかけても返事がない。焦点の合わない目線を宙に舞わせるばかりだ。

エレン「……まあ、そんなところで突っ立っててもなんだからさ」

と、中に入るよう促したところ、

ライナー「うげえぇぇぇえ!!」

ライナーは吐いた。

びちゃびちゃと胃のなかを掻き出すように吐き続けた。

エレン「おい、しっかりしろライナー!?」

声も返さず一心不乱に吐き続ける。

中には赤い生肉のようなものが混じっていた。




エレン「……落ち着いたか?」

ライナー「……ああ」

ようやく落ち着いたのか、今は椅子に座って項垂れている。


母さんがライナーの後片付けをしているが、とりあえずコップを手渡してやる。

ライナー「……ああ、すまない」

手渡された中身を勢いよくあおるが、

ライナー「……おい、何だよこれ!?酒じゃねぇじゃねえか!!」




エレン「……落ち着いたか?」

ライナー「……ああ」

ようやく落ち着いたのか、今は椅子に座って項垂れている。


母さんがライナーの後片付けをしているが、とりあえずコップを手渡してやる。

ライナー「……ああ、すまない」

手渡された中身を勢いよくあおるが、

ライナー「……おい、何だよこれ!?酒じゃねぇじゃねえか!!」

エレン「当たり前だ。あんな吐き方した奴に酒なんか出せるか?」

そう言うと、そのまま押し黙る。

……やはり、今日のライナーは変だ。

ライナー「……なあ、そう言わずに、一杯だけ頼むよ、なあ…」

いつもはこんな風に言わない奴なのに、

エレン「……一杯だけだからな」

やはり、変だ。

飲み始めたら一杯ですむはずがない。二杯三杯と空けて行く。

そして、おもむろに語りだす。

ライナー「……なあエレン、俺は人間なんだ兵士なんだ、」

エレン「……ああ」

ライナー「それなのに何であんな事しなきゃならねーんだよ……」

言うや、手にした杯を一気に空ける。

エレン「おいっ、もうそろそろ……」

言い終わる前にライナーは寝入っていた。ネジが切れた玩具のように。

カルラ「……どう、ライナーは?」

エレン「……眠っちまったよ」


心配顔の母さんを余所にこいつはぐっすりと寝入ってやがる。


エレン「……さて、と」


どうするかと考えていたところ、また、店のドアが開く。

カルラ「ごめんなさい、今日はもう店終いだから」


ドアを開けたのはベルトルトだった。

ベルトルト「あ、いや、ライナーを迎えにきただけだから……」

カルラ「そう?ちょっとと待ってて、今何か飲みものを……」

厨房に母さんが消えるとベルトルトとが椅子に腰をかける。調度、向かいになるように。

ベルトルト「ねえ、エレン。聞いて欲しい事がある」

エレン「何だよ改まって」

ベルトルト「もしかしたら、明日、何か大きな事件が起こるかもしれない。その時は慌てずに非難して欲しい」

エレン「……は?」

ベルトルト「是非ともカルラさんを頼むよ」

エレン「……なんだそりゃ」

それじゃ、と自分の言いたい事だけ言うと、手早くライナーを担いで帰ってしまった。

カルラ「あれ、ベルトルくんは?」

母さんが帰ってくる間にそそくさと帰ってしまったのだ。

どう考えても、二人の様子はおかしい。

ベルトルトはあの柔和でおとなしい顔ではなく、異様に引きつった顔。

それに、何故か装備していたブレード。

そういえば、帰り際にぼそりと呟いていた。


「僕は取り返しのつかない事をーーーーーー」





翌日、空は澄みわたっていた。

昨日の狂騒も嘘のように片付けられ、またいつもの日常が始まる。

ハンネス「おーい、エレンー」

ハンネスさんが店に訪れたところ、



何処かで巨大な音がした。

徐々に大きくなる怒号、悲鳴。

そう、あの時と同じだ。

再び、壁が破られたのだ。

大きくなる悲鳴。

既に破られた壁から侵入しているのか、巨人共の姿があちこちに見えた。

ああ、あの時と同じだ。



人類は、再び惨劇の日を迎えた。






一応、終わりです。この後、何故かエレン無双やアルミン巨人化とか考えてましたけど、無理やり過ぎるので……

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom