天井亜雄「私は、何を為すのだろうか」 (1000)



ごろり。
寝転がった視界にはごく僅かな陰影。
左手の方にぷらりと細い紐が垂れ下がり、上に辿ると消えた明かりが映る。

隙間の空いた扉の向こうは暗い暗い闇だ。
真っ黒な拳銃の中でも特に深い銃口を思わせる。
その奥を掴もうとするように、あるいは遮るように掌を向け私は息を吐いた。
気の抜けた溜息だった。

あの日の夢はもうあまり見ない。
破裂音を最後に目醒める夢は。

銃声の後、自身は少しずつ変わってしまったと思う。
それでいてあの時の私は確かにどこかで息衝いている。
そう自覚している。

ぼすり、とベッドに落とした手は無意識に布団の端をまさぐった。
寒い。
頭まで被りこむと耳に冷気を感じなくなる。
こうしていれば暖かく、じきに夜も越せる。

かつて、こうして掻き寄せていたのは「安心」「保全」「保障」。
しかし私はそれで身を守り損ねた。
今、周りにあるものは。
私を拠って立たせているものは。

「私は……」

白衣やベッドや培養槽、それに様々な顔。
追い求める目標があり。
あるいは未だ形すら掴めない願望もあるのかもしれない。

「私は、何を為すのだろうか」

吸い寄せる眠気に任せながら、ぼんやりと思う。




SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1343888765



・タイムリープした天井亜雄が安価で幸せになりたい2スレ目
 現在2周目、本編三年前の冬

 前)天井亜雄「今は……いつなんだ?」

・幸せの定義=目的は展開や心境によって変動します
 現在は「貢献」自らの研究を医療分野に役立てる……です

・死亡、廃人化、タイーホ等で目的達成不可になった場合、記憶を引き継いで過去に戻ります

・Q.天井って一方さんパーンしたあの天井?
 A.その天井だけどこの時間軸ではパーンしてない


・連投、連続で安価取るの不可(詳細は下の方で)

・無効安価は下、またあまりに状況にそぐわない安価は参加者に是非を問うかも

・禁書目録小説、超電磁砲漫画の単行本刊行分は既読
 DVD等の特典SS、ドラマCD、超電磁砲アニメ、ゲームの知識は基本wiki頼り

・遅筆+ネット環境が残念なのでまったり進行になりますがよろしくお願いします


【安価の連続について】

・基本的に連続取得NG
 コンマは(連投でなければ)同じ方が取っても可&連続の判断に含めない

 >1 (行動安価)
 >5 (コンマ判定)
 >9 (コンマ判定)
 >13 (設定安価)
  ※各安価間の本文省略

 上記のような場合、>1 と>5 と>9 を同じ方が取るのはOK、
 >1 と>13 を同じ方が取るのはNG、という感じでいきます





【時系列】
2周目スタート時を1年目と表記
目安として、春:3-5月 夏:6-8月 秋:9-11月 冬:12-2月


    |1周目         |2周目
1年目春|クローン部門に異動  |クローン部門に異動、医療部門に重点

   夏|           |
   秋|           |
   冬|           |
2年目春|           |

   夏|           |
   秋|           |冥土帰しの治療協力
   冬|           |長点上機学園の付属施設に移籍
3年目春|           |

   夏|           |
   秋|           |開発の指導開始
   冬|           |木山と提携
4年目春|           |

   夏|(一方通行vs軍隊)  |能力者暴走事件のため避難
   秋|(美琴DNA提供)    |
   冬|           |接続部分の製作着手
5年目春|           |接続部分の完成、絶対能力進化実験への招聘

   夏|           |木山の要望により一方通行と接触
   秋|           |地震の頻発
   冬|           |今ここ
6年目春|           |

   夏|           |
   秋|量産型能力者計画着手 |
   冬|量産型能力者計画頓挫 |
7年目春|絶対能力進化実験着手 |

   夏|           |
   秋|           |
   冬|           |
8年目春|           |

   夏|           |
   秋|           |
   冬|           |
9年目春|           |

   夏|絶対能力進化実験頓挫 |


【現在の天井】
仕事:医療クローニングの分野で筋ジストロフィー治療を研究中
   布束、木山、Sプロセッサ社と共同、提携
   絶対能力進化実験の参加依頼を断る

身体:概ね健康
   同年代男性の平均より若干勝る筋力
   実際の運動もそこそこ

精神:トラウマ(芳川→ある程度改善、一方通行→ほぼ完治、最終信号→現状維持)
   以前より自分をコントロールできるように
   ちょっと研究外の人付き合いに慣れた





偶然だ、いや必然だ。

例えば本当にただの符合。
例えば被験者への一種の口止めとして幻生はテレスティーナを養子にし、それなりの肩書きを与えている。

天井は数日迷った末に木山のメールアドレスを呼び出した。
そこに意味が存在するかを判断するのは生徒を助けるべく奔走している彼女本人であるべきだ。


天井「忙しくなると言っていたのに呼び出してすまないな」

木山「いいや。情報提供なら歓迎だよ」

急いで来たのか彼女の頬は若干上気しており、しかし例の如く服を脱ごうとはしない。
研究室と体温の暑苦しさにも気が回らなくなっているようだ。

必ずしも直接話す必要は無く、テレスティーナの情報を示唆する情報源のURLを送るなどでも良かった。
だが互いに裏を覗いたことのある身、つい慎重になってしまうのだった。

天井「期待させておいて無関係だったら申し訳ないのだが」

PDAに書庫のデータを表示させ、渡す。
木山は少し汗ばんだ手で受け取り、画面に視線を落とす。
すぐにその目は眇められた。

木山「ふむ。確かに白とも黒とも断言できないね」

デジタルの情報を注視しながら、彼女の右手がテーブル上を彷徨っている。
……そういえば向こうも急いでいるかと今日は茶の類を出していない。
はっとしたようにPDAのサイドに戻る木山の手を何となく気まずく見送った。

木山「――だがありがとう、十分に価値のある内容だ。冥土帰しとも協力して調べてみよう」

上げた顔は表情だけで圧力を感じさせるようなものだった。
紙に芯を突き立てる鉛筆のように、真っ直ぐな目。

天井「…………あまり無理はするなよ」

それを受け止めるとあれこれが喉に詰まり、辛うじて口にできたのは一言だけ。
あぁ、と木山は席を立つ。

一、二ヶ月掛かるという準備。
それに、テレスティーナの調査。
冥土帰しの名を出したことは一人で危険には足を踏み入れないという意思表示なのかもしれないが。

天井(突飛なことをしなければ良いが)

去る背中を見送る。

水面下で子供のために動き続け、天井という協力者を強引に用意し、第一位にも臆さない木山である。
目標を捕らえた時の行動力は嫌というほど知っていた。




青髪「な、たまにはええやん?」

布束「By Jove! 調子の良いことね」

二月のとある休日。
がらりと実験用に取った一室のドアを開けると、二人のそんな声が聞こえた。
……さて、今日与えた課題にきちんと取り組んでいるなら物音などしないはずだが。

天井「取り敢えず何十分保った?」

少年本人には聞かず、布束に言葉を向けてみる。

布束「A little. 具体的には六分四十二秒ね」

まぁ予想はしていた。
十代に入って少し、ましてあの性格の彼に瞑想など土台無理な話だった。
いっそ「外」の禅寺でも連れて行けば何とかなるかもしれないが。

青髪「だってじっとして何も考えないとか逆に疲れるやろ。ってか寝るやろー、この部屋ぬくぬくやし」

天井「それで残りの五十分以上を雑談に使っていた訳か」

飄々と笑う少年を見て、肺の奥から諦めを零した。
個人の思考や嗜好を極限まで抑えた状態を作ることで、バイタルに万人共通の部分が現れないかとか、そういう実験だったのだが。
そもそも前提が成り立っていないのだった。

ちなみに投薬、暗示といった一般的な開発以外の多様な実験を経験することで、微々たるものとはいえ彼の能力は成長傾向にあるらしい。
どうせなら耳と尻尾を同時に生やせるとかではなく、他人の肉体に干渉できるようになって欲しいものだ。

布束「そういえば……青髪君が今度どこかに出掛けようと言うのだけれど。Particularly, あなたも来る?」

青髪「えっ、ちょ、センセ誘うん? 意味無いやん? コブ付きとかどーなん!?」

ほう、それはどういう意味で布束を誘ったのか。
無表情だが気安い雰囲気で天井に話す少女と慌てふためく少年、構図は一目で明らかである。
もっとも青髪が布束に特別な感情を抱いているというより、女子と一緒にお出かけ、という状況に舞い上がっているとも見える。

天井「しかしこの寒い季節によく外出する気になるな」

青髪「せやろ! センセはお歳、じゃなかった忙しいんやから休日はゆっくりすべきやで!」

見るからに必死だ。
ふむ、一応ここ数週の土日は予定を空けられるが……。


>>+2
一緒に行くかどうか




天井「……だがたまには外の空気も吸わねばな。研究者をしていると快適な室内に篭りがちになって困る」

青髪「鬼ッ! 悪魔ッ! 人でなしッ!! そこは空気読んで引くとこやろー!!」

わざとらしく間を置いて応えれば少年は悔しそうに地団太を踏む。
脚力強化でもすればそれなりに威力もあるだろうに、彼の靴底はぺしぺしとリノリウムを叩くのみである。

布束「Probably, むしろ空気読んだ結果じゃないかしら」

天井「そうだな」

青髪「な、お姉さんもグルだったん? ボクとのことは遊びだったん!?」

どこまで本気なのか、最終的に布束が紙鉄砲を持ち出すまで青髪少年はあることないこと嘆いていた。


青髪「酷いわーボク傷ついちゃうわーでも美少女含む二人掛かりでおちょくられんのも味なものというか、
   長い目で見て美人局プレイに目覚めそうやというか」

天井「………………で、どこに行くという話だったんだ? 私はそういうレジャー施設などには疎いのだが」

遊び過ぎたか。
哀愁を通り越して怪しい雰囲気を醸し始めた青髪少年に水を差した。
人前でしないでくれ、そんなマニアックな話を。

布束「まだ決まってないわ。Tell you what, お勧めの場所とかあるの?」

青髪「おー、ボクが華麗にエスコートしたるで! っても案は幾つかあるんやけどな。
   安定の第七学区のショッピングモール周りかー、第六学区で色々遊ぶかー、いっそ普段行かん学区に足を伸ばしても良いかもしれんね」

他に要望があれば乗るけど、とこれは布束に向けた台詞だろう。
当の彼女は拳を口元に考え込んでいる。
長くなるかもしれない、「お歳」である天井は早々にパイプ椅子に着くことにした。

天井「普段行かない、とは?」

青髪「んー、第一学区とかは見てもつまらんやろし、特色の強い学区をぶらぶらって感じになりそうやね。
   飛行機とか好きなら第二十三学区とか、ゲージュツな気分なら第九学区とか」

時間に余裕ができやすく、出歩きたい盛りの年齢である。
レジャー施設や観光スポットについての知識は研究者二人を凌駕しているようだ。
心なしか目が輝いている布束を前に、少年は満更でもなさそうにしている。

布束「第六学区って、映画館と、Additionally, 横目でゲームセンターを見たことくらいしかないのだけれど。他はどんな感じなの?」

青髪「何でもあるで! カラオケとかそういうのから、カジノ的な店まで……って睨まんといてやセンセ。
   ゲーセンに毛が生えたようなお遊びカジノやしお金も賭けへんよー」

学生の街だしそんなものか。
他にもお遊び雀荘だのボーリング場、体育施設と幅広くあったと思う。
ギャンブル風味の店でも敢えて能力使用可能な施設がそれなりにあるはずで、それが学園都市らしいといえばらしい。

青髪「第七学区ならやっぱり店を回るかー、どっかで駄弁るかとかやね」

布束「Now what? んー……」

ふむふむと布束は真剣に考え込んでいる。
テーブルに肘を付くと、座っている椅子がぎしりと鳴った。


>>+2
どうするか
(どれかに一票投じてみる、流れに任せる、etc)


>>18
いや、割と上手いおっさん多いと思う
大学の教授達バンバン200以上のスコア出すし
一部の教授に至ってはごくごく普通に300出すし


・移動なう
 20時台くらいに再開します


・急に離脱して済みませぬ、ぎりぎり復帰ました


ざわざわざわ。
遠く、雲を散らした薄い空。
相応に冷えているのに若者達は今日も元気である。

休日のアミューズメント学区は当たり前に混み合っている。
それ以上に、天井はなんとなく周囲から浮いているのを感じた。

布束「どうしたの? Queerly, そわそわしてるわね」

青髪「ほら、センセおっさんやし……いや何でもないで」

ぎり、と睨みつけたものの、実際反論の余地が無いのだった。
白衣ではなく平凡な格好をしているが、地味色コートの三十代はこの街並みにこの上なく場違いに思える。
都市の外ならまだ子供連れの父親と上手く勘違いされただろうが、家族単位でこの街に住む例は少ない。
件の木原などは養子の可能性があるとはいえ縁者ごと都市民のようだが。

天井「学園都市でこのメンバーでは確実に違和感があるか……」

布束「そう思うから浮くのよ。That's why, 普通にしていれば大丈夫」

彼女なりの普段着、ゴシックロリータも珍しい服装だと思うのだが、流石に堂に入ったものだ。
確かにそうしていると奇異の視線も浴びていない。
長袖のひらひらとした服に、前閉じの短いファー付きマントのようなものを羽織っている。
下はスカートだがロングブーツ、それに手袋や耳当てと非常に暖かそうである。

青髪「んじゃ、鉄板のゲーセンから行ってみよか!」

橙のダウンジャケットを着込んだ少年は髪色との関係で随分鮮やかだ。
人混みをひょいひょいと抜けていく彼とそれに続くモノトーンの布束の背を眺めながら、天井もカラフルな看板の並ぶ通りに足を踏み入れた。


布束「……!! ……っ!」

きゅんきゅん、という音が響き嫌にリアルなゾンビのようなものがもがき倒れていく。
相対する天井達三人はステージに合わせ汚れた軍服を着ている。
バーチャルを用い画面の制約を廃したシューティングゲーム――らしいが無性に恥ずかしい。

青髪「ちょ、三人で背中合わせとか格好良いんやけど危ないんやない!?」

天井「囲まれているのだから仕方ないだろう!!」

きゅん、きゅんきゅん。
ごつく大きいプラスチックの銃は反動がほとんど無い。
おかげである程度の距離をもって正面の敵を迎撃できているのだが。

青髪「三人やと背中が三角になるやん! こう、隙間から何か出てきそうで――っ!?」

ぼこり。
背後の地面から不吉な音。
と、共に冷たくぐしゃりとした感触が足に触れ――

「ひゃっ!?」「んぎゃ!?」「うおぁ!?」

Game Set.

機械音声が投影された遥か上空から降る。




天井「クレーンゲーム? 都市製のゲームにしては普通というか……」

派手な色の箱の中にぬいぐるみや、腕時計、携帯ゲーム機までが並ぶ一角。
天井自身詳しくはないが、UFOのようなクレーンといい外のものと大差無く見える。

青髪「んー、これ能力使用可なん。その上で誰がやっても難易度が同じになってるらしいで」

布束「You mean... どういうこと?」

少年の指に合わせ、箱の一つに噛り付いている小学生くらいの男子に目を遣る。
その子供は片手をボタンに添え、もう片手をガラス窓に当てている。

子供「んーーーー!!」

掴む力が弱いらしくぎりぎりで引っ掛かっているぬいぐるみを念動力か何かで支えているらしい。
周囲でやんやと囃し立てる友人達をよそにクレーンは穴に近付き――、

突如、揺れた。
ゲームの箱全体がぐらんぐらんと。

天井「…………身も蓋も無くないか?」

ぽとり、あえなくぬいぐるみは仲間達の山に帰ってしまった。

青髪「クレーンっちゅうか、いかにして内臓の能力測定器を出し抜くかが肝らしいで」

その後何気無くパネルの前に立った布束は、単純な物理計算は苦手なのだけど……などと言いつつさくさくと景品を穴に落としていた。
小学生達が唖然としてそれを眺めていた。
不条理だ。


青髪「ゲーセンはこんなもんやねー。他にもどっか行かへん?」

天井「荷物を置いて遊べるところでないと困るな」

もふもふ、もふもふとひよこ型の人形焼きのようなものを食べる二人を尻目に、天井はビニール袋一杯のぬいぐるみを両手に抱えている。
大量の戦利品と共に店を去り、露店の菓子を買ってつらつらと歩く。
集合は十時だったが、時既に正午を回っていた。

布束「Apologizing... 気付いたらこんな数になっていたのよ。えーと、あなたも食べる?」

竹を模した小さなフォークで差し出されたひよこを少し屈んで口にした。
学園都市では率直に変な食べ物が多いが、これは中のジャムが正体不明なだけで美味しい。
布束はともかく青髪少年と天井はこの量ではとても昼食に足りないのだが。

青髪「…………センセ、爆発せぇへん? それはそれとして次どうしよか」

天井「何だ急に。まずは昼を摂らせてくれ。その後は……あれとかはどうだ?」

指差した先には。

布束「No matter how, ボーリング場?」

瓢箪を細くしたような形、白地に特徴的な赤のライン。
誰もが知るピンの特上に大きいものが、平たい建物の屋根に鎮座していた。




木の色そのままの床はワックスでぺかりとライトを反射している。
がこん、ばらばらばらと特有の音があちらこちらで響く。
受付で借りた硬いスニーカーに履き替え、三人も指定のレーンに向かった。
あまりに運動向きでない服装だった布束はポロシャツのようなウェアも借りている。

布束「Think of it, 食後すぐに運動ってどうなのかしら……」

天井「少しずつ慣らせば大丈夫じゃないか?」

我ながら医療系の癖に無責任である。
かくいう自身も、ボーリングは初めてでないとはいえ習熟している訳でもない。
食事云々以前に筋肉痛が心配でもあった。

天井(しかし散々鍛えたりしたのだ、スポーツも多少は勘が利くのではないか?)

青髪「んー、何やら自身あり気やね。折角やから勝負せん?」

天井「勝負? 何を賭ける気だ」

学生同士ならいざ知らずこの歳の差で奢りだのと言っても重みが違う。
ゲーセンでの各々のゲーム代はともかく、先のひよこ焼きも天井の財布から出たものであるし。

というか筋力増強などに能力を使わないとはいえ、肉体系能力者の青髪は基礎体力や運動センスが高い。
失礼だが布束の一人負けが見える。

青髪「そうやね、お姉さんはハンデで+30点、最下位の人は一番の人が指定したコスプレを」

布束「却下」

青髪「何やー負けるのが怖いん??」

布束「Be shocked. そんな取って付けたような挑発には乗らないわ」

賢明な判断だ。
というか自身と青髪少年の間にハンデを付けないということは、彼は結構できるのだろうか。


>>+1
ボーリングの腕前
※コンマ判定  ★修正+10
  - 4:ファンブル
  5-49:失敗
 50-94:成功
 95- :クリティカル

成功度により順位などが変わります

>>+2
青髪と布束の順位
※コンマ判定
  - 4:ハンデ無しでも布束が上
  5- 9:ハンデを加えて布束が上
 10- :青髪が上



今更だが前スレの閑話地味に面白かった



ごろごろごろ、転がっていたボールがピンにぶつかり、抜けるような音が拡がる。
少し逸れた軌道は正面の一本に当たらず、左側を削ぐように吹き飛ばした。
ふらふらと揺れる真ん中寄りの数本を見守るが持ちこたえられてしまった。

天井「五本……」

青髪「一投目なんてそんなもんやでー、次で残り倒せばOKや」

球を投げたのは、実は数年ぶりである。
前の職場のレクリエーションで同僚達と行ったのが最後ではなかったか。
最初の数投は感覚を思い出すための捨てとしても、どこまでやっていけるか。

天井(まずは上手く中央に通すことからだな……。一度掴めればまだ何とかなる!)


布束「正直ハンデ30でも足りないわ。Results from, 私これで三回目なのよ……っと!」

サイズも何となく小さいような軽い球はごろんごろんと斜めに進み、右奥の三本を辛うじて巻き込んだ。
白々しい照明の下で、く、と軽く唇を噛みながら戻ってくる。

天井「私と傾向が似ているな、まずは真ん中を上手く狙いたいのだが」

青髪「投げる時、円……の四分の一? 扇形? を描くようにすると良いで」

布束「If you meant, 弧、かしら。次は意識してみるわ」

ボールが重過ぎる可能性も考えたが、しばし帰って来た球には「6」と書かれている。
以前炎天下に行った運動実験の雪辱を晴らすとかで最近運動しているらしい布束にとっては、逆に少し軽いくらいかもしれない。


青髪「いっくでー!!」

軽快に放たれたボールは若干右に寄り、ぱかんと半分以上を薙ぎ倒す。
勢いもあり、中心を捉えていればストライクも出せるような球。

布束「六本ね……。How should, 軸がずれる癖は全員一緒なのかしら?」

青髪「そう思うやろ? こっからがボクの技や」

いつにも増して悪戯めいた笑みを浮かべている少年をこの時は強がりだと思っていたのだが。
第二投、残りを削り切れなかった天井とガーターの布束を尻目に、彼は堂々のスペアを決めたのだった。
固まっていた四本に、まるでボールが吸い込まれるように。




天井(レーンのマークを上手く辿るように……)

布束「Don't mind. 少しずつ角度が修正されてるわね」

天井「もう少しでうまくいきそうなんだがなぁ」


布束「えっ、Truly, こ、これってストライク!?」

青髪「正真正銘ストライクやで! ホントに三回目なん?」

天井「二フレーム目でもうストライクか。凄いな!」


青髪「ふっふー、残りの二本を落としてまたスペアや!」

布束「――Wow, あなた、もしかして!」

青髪「あ、流石に気付いてもたか。せや、真ん中当てて失敗すると変な形に残ってまうやろ?
   ほなら最初からスペア狙いで右、左、って倒せば安定して稼げるんやないかと思ってなー」

天井(く……っ、確かに残りのメンバーが突出して上手くなければそれで充分戦える――のか)


青髪「お、センセ、ストライクやん!」

布束「やったわね!」

天井「あぁ」

天井(そうだ。見えた――理解したぞ、中心線! 思えばずっと身体操法の教室に通っていたのも、きっとこの瞬間の――!)




がこん、がこんとひしめくボールから自身の使っているものを取る。
九フレーム目はストライク、ここまでで確定しているスコアは110。
対する青髪少年は129だが――前フレームにボーナスは無し。

鳩尾の前にボールを掲げ、距離を隔てた十本のピンを見据える。
ふ、と周囲の音声が抜け落ち、視覚さえ僅かな幅のレーン以外がシャットアウト。
軽く踏み出しながら右腕は滑らかに曲線を描き――

布束「      !!」

青髪「    !?」

ぱかぁぁん、と。

鋭い音が戻ると同時、正面のピンが弾けた。




青髪「――いや、ちょ、最後三フレームおかしいやん!? 最初の方のスコアからして、スペアストライクストライクは詐欺やて!!」

天井「人の足元を見てせこい戦法を取るからだ」

青髪「自分のスキルに合ったスタイルと言ってや!」

布束「Crikey. あなた達よくやるわね……。私は自己ベストだし満足だけど。後半揮わなかったのが心残りかしら」

せこい、などとは言ったが地道に点を稼ぎ続けた青髪少年とは最終的に僅差だった。
天井が148でトップ、次いで146の青髪、布束はハンデを入れて94である。

青髪「そや、センセが急に上手くなるからビビッてもうたわ。おかげで八、九フレームのミスがなぁ……」

天井「まぁ実際あれがなければ届きもしなかったな」

一種のビギナーズラックというか、意表が付けたのが大きかった。
こちらがある程度最初から中心を捉えた状態、かつ青髪少年がストライク狙いに切り替えていたら全く別の勝負になりそうだ。

と、やれやれと眩しい天井を仰いでいた少女がおもむろに釘を打ち込む。

布束「Excuse me? 今にももう一戦始めそうだけど。もう三時よ」

青髪「そやねー、他の場所も回りたいしそろそろ出よか。……あ、そういえば」

ひょいとボールを掴んで少年は意地悪げに言う。
わざわざスニーカーの紐と格闘している布束の気を惹いてから、だ。

青髪「優勝者さん、もし罰ゲームありやったらお姉さんにどんな格好させてたん?」

びしり。
急激に体感温度が下がり。
ふざけて、普段の白衣やゴスロリもコスプレみたいなものじゃないか、などと言おうものなら一瞬で首が飛ぶ、そんな空気。

あー、だのえー、だのお茶を濁しながら、有耶無耶にするために体良く自動販売機のアイスを奢らされたのだった。
不条理だ。



・調子に乗りました、時間掛け過ぎワロタ
 最後安価無くて申し訳ないのですが今日はこれにて
 明日は午前に用事があるので適宜午後から始めます
 よろしくお願いします


・正直執筆の1/3くらいスコア計算してました
 青髪以外は特に普段プレイしないということでパンピーの範囲ですが、
 >>19 あたりの教授と比べるとアレですが結構盛ったつもりです


>>29 ありがとうございます
 見事に前スレの終わりを空けておいて頂いたので、事務連絡の隙間に滑り込ませられました
 おかげさまで誘導含めきっかりです
 皆様ご協力ありがとうございました



おまけ:三人のスコア表

正式な書き方ではありません
各々上段から、
フレーム数、一投目に倒した本数、二投目に倒した本数、そのフレームまでの合計スコア
です

ミスあったらごめんなさい

天井
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

5 6 6 9 10 9 8 7 10 10 8
2 2 4 -   - 1 3     2

7 15 25 43 62 71 80 100 128 148


布束
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

3 10 2 3 4 1 6 - - 2
-   3 3 1 9 - 1 4 1

3 18 23 29 34 50 56 57 61 64


青髪
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

6 7 8 8 7 9 7 5 8 5 7
4 3 1 2 3 1 3 3 1 5

17 35 44 61 80 97 112 120 129 146



・再開します
 今日もよろしくお願いします
 多分夕方くらいまでになります


ボーリング場の外には変わらず学生達の影が見える。
看板代わりの巨大なピンを目指して歩き、多少は区の外れの方に来ていたのだが人足は絶えない。
桃や紺、色々のコートが忙しなく行き交っている。

天井「日暮れまでそう無いというのにまだ賑わっているんだな」

青髪「そーいうところがオッサンなんやて。ここはいつも人一杯や」

アーケードの下ならともかく、建物から出たばかりの身体にはビル風が染みる。
気温のピークの二時を過ぎれば後は冷えていくだけだ。
実用性より装飾を重視した服装の少女は自身を抱くように腕を組んだ。

布束「Oh, bother! 出る前に次の行き先を決めておくべきだったかしら……あら?」

ぱた、と編み上げのブーツの歩調が乱れた。
立ち止まり細い路地の向こうをじっと見詰めている。

青髪「そっちは何も無い……ちゅうか区境の方やで」

天井「第十九学区だったか? 繁華街の裏手が寂れた地区というのはまるで図ったようだな」

街自体に何か目に付くものがあったのかと二人で学園都市の略図を脳に浮かべる、が。
そうではないと布束は首を振った。

布束「今、女の子が横切ったのよ。Somewhat, なんだかふらついていたような……」

青髪「何やて!? 具合が悪いのかもしれへん、助けに行かんと!!」

真剣な様子で駆け出す少年。
言動は至極正しいのだが、普段の台詞を知っていると――

天井「私達も行くか。見てすぐに駆け寄らなかったということは今にも倒れそうな様子ではなかったんだろう?」

布束「ええ」

ともあれ、布束を伴って後に続く。
路地を一本入れば別世界、というのはアミューズメントに特化した第六学区では必ずしも当てはまらない。
だが隣区に近いここでは街並みの雰囲気も混じりあい、一気にうらぶれた空気が濃くなった。
ビルの壁、清掃ロボットの届かない高さを落書きや張り付いたガムが占めている。

その子を見付けたらさっさと元の通りに戻った方が良さそうだ。




青髪「な、なぁ。君、大丈夫なん……?」

??「――――――」

運動能力の高い青髪少年は早々に追い付いたようだ。
だが。
遠目で見るだにその子は熱に浮かされたような様子だ。

天井「この子は……?」

青髪「ずっとこんな感じなんよ。センセ、お姉さん、何か分かる?」

走り寄ってみれば彼女は青髪少年よりも一、二歳年下といったところか。
ずっと遠くの方を眺めている、というか実在の物体に焦点が合っていない。

??「――の? どこ? どうして、前より遠く」

うわ言のように口の中で繰り返される言葉。
どこ、どこ、と場所を問うばかりで意味のある文章の形をなしていない。
青髪に手を掴まれてなお、何かを求めるように彼女の身体は揺れた。

布束「催眠状態、とは違う。むしろ能力を制御しきれていないような……。Once, 刺激しないように場所を移せないかしら」

天井「誘導してみるか?」

青髪「そやな。おじょーちゃん、こっちやで」

あまり力を掛けず青髪がゆっくりと手を引き、布束が背を押す。
天井は一歩引いて辺りに気を配った。
この子を呼んでいる何か、あるいは場所柄スキルアウトなどがいないとも限らない。

抜けてきた路地を逆行し数メートルで大通りに復帰する、そう気が緩んだ時だった。

??「どこなの。どこに、いないの? ――――!!!」

ばしっ、と。
それまで従順だった彼女は唐突に三人を振り払い、歩道の中央に躍り出た。

布束「No way!! もしこの子が暴走でもしたら――」

??「呼んでるの! どこ、どこなの!?」

その瞬間。


ずぅ…………ん!

遠くから伝わるように、大地が震えた。


――第七学区を中心に地震が発生しました。第七学区を中心に地震が発生しました。

――最大震度五弱。屋内にいる者は実験器具、コンロ等の確認をしてください。


街頭のモニタが一斉に急を告げる。
小さな揺れが続いているにしても、際立った激震だ。
その割にこの第六学区には大した被害は無く、震度二程度か。


――屋外にいる者は看板などから距離を取ってください。繰り返します。


??「あ、あぁ。どこ……、の…………」


第一報から、行動の指示。
二次災害が無かったこと。
速報は移り変わっていく。

それを背景に、名も知らぬ女の子は糸が切れたように崩れ落ちた。


>>+2
??について、今どうするか


春上かな…冥土の所に連れて行った方がいいのだろうか…



天井「何だったんだ……?」

くたり。
彼女の上体を起こすと、呼吸や脈はあるようだが揺すっても起きない。
側頭部で結われた一束の髪だけが所在無げに飛び出している。

天井「取り敢えず病院に行こう」

布束「……待って。地震の前後、彼女の様子は明らかにおかしかった。Needless to say, この子が犯人とは思わないけれど」

だが意図せず起因となっている、あるいは予知能力の変種の可能性もある。
単純な怪我人の場合と違い都市の管轄下にある病院が必ずしも安全とは限らない。
咄嗟に布束が叫んだように暴走状態にある能力者だったら――木山が漏らした実験が頭を過ぎった。
裏側を覗き見たことのある研究者二人はどうしても危険に備えてしまう。

青髪「せやかて、ほっとく訳にも……」

そうだ。
医師でない自身にはこの子供の容態を的確に判断したりはできない。
吐息は眠っているようで十中八九気絶しているだけだと思うが、この都市に限っては精神系能力など考慮するファクターが多過ぎる。

天井「冥土帰しのところなら大丈夫だろう。目を醒ましたら話を聞いてみよう」

布束「そうね。……After that, 話の如何でどうするか考えましょう」

青髪に手伝ってもらい背負うと、少女の力無い身体はとても軽かった。


>>+2
??が目覚めた時に話を聞くメンバー
※天井は参加
(複数可、天井の単騎可)


なんて言ってるかわからん…ww
じゃあ青髪は「看護師のおねーさん」にあやしてもらって、天井と布束、そしてなぜか偶然そこにいて少女を見た木山


>>53 すみません、基本的に天井以外の行動は安価で指定できません
 ……ので、木山を確実に居させるためには天井が何らかの形で呼ぶ必要があります

 木山は呼びますか?


あ、ごめん、いいですよ書きながら付け足した部分なので呼ばなくて


>>60 ご返答ありがとうございます、了解です


明かりを付けても、深夜の病院は暗い。
入院患者用のレクリエーションルームの一つを待機場所に宛がわれ、天井と布束は所在無く椅子に掛けている。
ドアに付いたガラス窓の向こうはどこまでも底冷えのする黒。

もう夜の十時である。
女の子は結局一種のショック状態から気絶したということだったが、この時刻では話を聞けるのは明日になりそうだ。
布束は頑として帰ろうとしないため、そろそろ交代で睡眠を取った方が良いかもしれない。
ちなみに青髪少年も彼女が心配だと残っていたのだが、舟を漕ぎ始めたので看護師に預けた。

天井「……調べられることは調べておくか」

携帯から書庫にログインする。
研究室で調べるのに比べると閲覧制限が厳しいが、簡単な情報なら手に入るだろう。
こっそり確認した彼女のIDにあった名、「春上衿衣」を条件に検索を走らせた。

布束「あの子のデータ? Expressly, 何か見付かったかしら」

天井「携帯では大したことは分からんな。春上衿衣、第十九学区の小学校に在学――」

身を乗り出す布束に当たり障りの無さそうな範囲で記述を読み上げる。
精神感応の異能力者、受信を専門とし自身の思考を他人に伝えることはできない。
能力系統を知り、つまり春上が地震を起こしたのではないとうことに布束は安堵したようだ。

その他には、学校の正式名称などくらいしか収穫は無い……いや。
校名を別に探すと、それは置き去りの保護施設と併設されているものだった。
ごくプライバシーに関わることであるため、言葉に出す前に飲み込んだが。

布束「精神感応……。By any chance, 思考の流入を取捨選択できずに心神喪失状態になっていた、とかかしら」

天井「誰かを探していたようだったのは……」

布束「思考の元の人間が誰かを探していてそれに引き摺られたか、Otherwise, 思考の元の人間を無意識に辿ろうとしたか」

当然、あくまで可能性の話である。
だが数の少ない精神系能力者、しかも受信に特化しているとなれば原因をそこに感じてしまうのもやむなしと思う。
片手で髪を掻くと、一日歩き回っていたせいか常よりごわごわした。

天井「異能力者では他人の精神を強引に読み取るのは難しいだろうが。レベルが低いからこそ制御しきれていない可能性があるな」

あの夢遊病のような状態の記憶が本人にあるかが問題だが、その辺りを聞けば地震との関連性が分かるだろうか。


>>+2
特に聞きたいことがあれば
※指定以外は話の流れで聞きます
1つまで、複数書いてあった場合最初のを採ります




こつこつ。
スライド式のドアを小さくノックすると、それより小さくか細い返事があった。

春上「はい、なの」

ふわふわした感じの声に許可を得てフラットな境界を跨ぐ。
一人用の病室はこじんまりとし、外の陽光だけを取り入れて落ち着いた暖かさが溜まっていた。
シングルサイズ、というか病院らしいベッドの上で、茶色の髪の子供が身体を起こしている。

冥土「君をここまで運んでくれた人達だね」

怯えさせてしまっただろうか。
僅かに浮いた眉を宥めるように医者が間を取り持ち、一歩下がるが。

天井「天井亜雄、長点上機の付属施設で働いている。――まぁ、君とは偶々居合わせただけなのだがね」

頬を引き攣らせることなく、自然に笑えたと思う。
最近伊達に小中学生とばかり話してはいない。

布束「The same, 同僚の布束砥信よ。急に気を失うからびっくりしたけれど、具合は良いみたいで安心したわ」

春上「あ……。春上、衿衣なの。運んでくれてありがとうなの」

歳の近い布束を前に、彼女はなお緊張を解いたようだった。
きょときょとと不安げだった視線は落ち着き、指は布団を握るのを止める。
普通に話すのは初めてだが大人しい印象のある子だ。

天井「どういたしまして。それで、起きたばかりで済まないのだが少し質問しても良いだろうか?」

春上「?」

何を聞かれるのだろう。
途端に警戒心が浮き出すのに、内心苦笑した。
やはり初対面の成人男性ではこんなものか。

布束「最近地震が多いでしょう? あなたはそれを予知できるんじゃないかと思ったのよ。
   Anyhow, 地震の前後、ちょっと不思議な様子だったから」

春上「ううん、私の能力は精神感応。予知能力じゃないの」

知っている。
だが、

布束「Ah... なら、他人が予知したビジョンを拾っているのかもしれないわ。あの時も誰かを探しているようだったけれど――」

特に打ち合わせをしていた訳ではない。
だが天井では構えられてしまうと見て取ってから、合図も無く聞き手をスイッチする。
流石布束。

ならばこちらのすることは一つである。

天井「失礼だが私は外で待っているよ。ところで冥土帰し、別件で話が……」

冥土「ふむ、分かった。春上君、お話が終わったら呼んで欲しいね?」

退出する合間にちらりと布束の方を見ると、いってらっしゃい、とばかりに目が合った。




天井「……ふぅ。他に話があるというのも実は本当なのだがな」

構造上デッドスポットになっているという休憩所で、天井はぐでりとソファに沈んだ。
顔の横までせり出している背後の観葉植物のハート型の葉を指で摘む。
高齢であるのに真っ直ぐに背の伸びた医者は対面にすとんと腰を下ろした。

冥土「詳しい事情を話してくれるのかい? 奇遇だね、僕も話すべきことがある」

そう言って、彼は左手で額を覆う。
らしくないことに酷く沈痛な面持ちだった。

天井「何か……あったのか?」

冥土「いや、過ぎてしまったことではあるんだ。先に君の話を聞いても良いかい?」

天井「分かった」

こちらの話は長くはならない。
先ほどの病室で、冥土帰しも居る前で切り出していたのだから。
春上と地震に関係がある可能性、また既知かもしれないが書庫で得た情報を渡す。

冥土「そうか……。まず、いかなる意味でも彼女は地震の原因ではないね?」

天井「何故断言できるんだ?」

冥土「昨日の大きな地震、あれは僕達のミスだからだ」

硬質な声は、発した本人の肺腑を抉ろうとするようだった。
僕達とは言うがここにいる二人という意味ではないだろう。

天井「木山の件、か?」

冥土「そうだ。……やっと彼女の教え子達を一つの場所に収容できてね?
   今まで通り治療法を探していたんだが。やはり覚醒に近付くと暴走能力が発現したんだ」

ならば今までの地震も子供達が原因ということなのか?
何故昨日だけあれだけ大きな――

天井「『複数の能力者による共鳴、共振』……か?」

どこかで知ったフレーズだった。
確かAIMを介した現象の一つだ。

冥土「全員、十人を同じ場所で起こそうとしたのが問題だった。今まで小さな揺れ程度しか起こったことが無かったからね?
   油断していつも通り治療を試み……結果があれだ」

二次災害も無かったから気にするな、など到底慰められる雰囲気ではない。
続報を見るに重傷者は多くないがゼロでもないのだ。
医者の心中はとても推し量れるものでは無かった。

冥土「――そういう訳だ。だから彼女が地震の発生に関わっていることは無いよ」

天井「……そうか」

どんな言葉を掛けても薄いものになる気がした。
天井が何を言おうと言うまいと、冥土帰しはこれからも医者として全力を尽くしていくだろう。
同じ間違いを犯さぬよう気を付けながら、木山の教え子を診るだろう。
傷を負った者がいるなら助けるのだろう。

天井「戻るか」

故に発した語はほとんど意味を持たない数音で。
それでも何か言おうとしたのは伝わっただろうか。

冥土「そうだね、戻ろう」

冥土帰しは先に立ち、後姿でひらりと手を挙げた。




>>+1 ちょっとだけ話した春上への第一印象
※コンマ判定  ★修正+15
  - 4:ファンブル
  5-49:失敗
 50-94:成功
 95- :クリティカル


・天井と冥土は途中離脱しましたが後で情報は共有します
 布束側の情報はそこで

・というところで今日はこれまでに
 ご参加ありがとうございました





―― NGシーン ――


ちなみに青髪少年も彼女が心配だと残っていたのだが、舟を漕ぎ始めたので看護師に預けた。
あの女性の看護師……何となく生えていた猫耳と尻尾を尋常ではない目で見ていたが、大丈夫だろうか。

あれはケモナーの視線だった。
嘗め回すようだった。
ぶっちゃけ唇の端から液体が垂れていた。

天井「……調べられることは調べておくか」

何か大変なことから目を背け、携帯から書庫にログインする。
きっと彼は今頃美味しく頂かれているはずだ。


※獣形嗜好《ケモナー》



・あっ安価先の修正忘れてました
 ↑とこのレスは安価下扱いでお願いします


・安価追加

>>+3
情報共有の際、布束に木山の件を伝えるか



・酉忘れてました>>1 です


・おおぅ本人です
 携帯からだと酉忘れがちで困る


・二日ぶりですね、今日もよろしくお願いします
 しばらくは現状のまま騙し騙しやっていくことになりそうです……(※ネット)


病室の前の壁に寄り掛かり、誰に聞かれても問題の無い雑談などをしていると、ひょこりと布束が顔を出した。

天井「話は終わったのか」

布束「えぇ。The last, あなたも挨拶していったら?」

勿論やぶさかではない。
気が付いたばかりに、こちらの都合で押し掛けてしまったのだから。

病室内に引っ込んでいった布束を追うと、彼女はベッドの横に立っている。
その足元には背もたれの無い丸椅子が置かれている。
春上は相変わらずベッドの上で患者スタイルを崩さないが、顔色などは初めて会った時よりもむしろ良好だ。

春上「あっ……さっきのおじさん、改めてありがとうなの!」

天井「どういたしまして。だがおじさんではない、天井だ」

春上「天井さん、ありがとうなの!」

緩く笑う少女は、先ほどの様子に比べ随分と無邪気だった。
最初に感じた少し気弱な感じと相まってどうにも小動物のようである。
そういえば横で目を逸らして……笑いを堪えているらしい布束もどこか雰囲気が柔らかい。
年下の同性と話すことなど少ないからだろうか、情報収集などは脇に置いて、二人とも会話自体を楽しんだのかもしれない。

布束「そういう訳で、私達は退散するわ。As well, あなたもすぐ退院なんでしょう?」

春上「うん。一応検査だけしてお昼には帰って良いって言われたの」

なら良かった、そう言いながら布束はベッドサイドのメモ帳に何か書き付ける。
ぴり、と千切られた紙には黒く細かい字で英数字が並んでいた。

布束「Fortuitous, これも何かの縁だし渡しておくわ」

春上「……うん! ちょっと待って、私も書くの」

相好を崩してメモ帳に向かい、彼女が手にした紙片は二枚。
……二枚?

春上「はい、天井さんもどうぞ」

天井「あ、あぁ、ありがとう。待ってくれ、こちらも今書く」

少女達のメルアド交換の儀式に自分が含まれているとは思わなかった天井は、慌ててペンを走らせる羽目になった。




その後起こした青髪少年も春上と色々話したらしい。
昨夜看護師に見守られながら就寝したこともあり、全面的にほくほく顔で帰っていった。
彼も口を開かなければ愛嬌のある顔立ちである。
年上の女性に可愛がられるタイプかもしれない。

冥土「ふむ。一通り調べたが今は全くもって健康だね?」

天井「それは重畳だ。……本人は何と言っていた?」

日曜とはいえ冥土帰しは多忙である。
食事時に合わせ、軽い昼食を取りながら三人で顔を突き合わせていた。
彼の私室と化しているスタッフルームの一つで各々が中身の違うサンドイッチを手にしている。

布束「あの時のことね。Regretable, 本人も記憶が曖昧らしいのだけれど。ただあの子、友達を探しているそうよ」

天井「『どこ』と言っていたのはその友達のことなのか」

冥土「僕も少し調べたのだがね。彼女は特定の条件下、決まった相手にのみ本来以上の能力を発揮できるらしい」

天井が携帯から調べたデータにはそこまで記載が無かったが、治療の必要上医療従事者にはまた別のセキュリティレベルが設定されているのだろう。
開発官として研究所のPCから接続すれば天井にも閲覧できるかもしれない。

布束「That's it! その友達、今は遠くに居るらしいの。異能力者ではそこまでの距離は聞き取れないはずだもの」

天井「しかし、声が聞こえるのなら住所なり聞けば良いのではないか」

冥土「能力で『送信』……春上君から質問ができないにしても、携帯で連絡は取れるはずだね?」

つまり、普通の手段では通信できないというのか?
置き去り、今は遠くに居る、音信不通。
まさか彼女の友人も何らかの非道な――。

天井「……『受信』している内容はどんな物なんだ?」

布束「呼び掛けてくる、としか。言い辛いらしくて、踏み込んで聞けなかったのよ。Finally, 地震との関係も分からないままだし」

やはり布束としては気になるのはそこだろう。
そもそも春上が地震の原因として扱われることを心配して、ここにいるのだから。
無関係だ、それだけ伝えてもきっと本当には納得できない。

天井(この辺りが潮時か……)

テーブルの下で、小さく手を握った。




洗いざらいというには遠い。
だが木山と子供達についての問題を、アウトラインを辿るように口にする。

木山の教え子が非合法な実験のため意識不明に陥っていること。
彼女と冥土帰しがその子供達を助ける為に奔走していること。
地震の原因についても冥土帰しが簡単に説明した。
共同研究者に不穏な印象を与えるのは良くないだろう、と脅迫の件は伏せておく。

布束「…………裏の実験、ね」

天井「あぁ。とはいえ例の絶対能力進化実験の時とは違い、どこかから圧力が掛かることもない。
   上層にとっては既に終わったことで治療するなら勝手にしろといったところなのだろう」

布束「随分詳しいのね。Just like, あなたも一枚噛んでいるように聞こえるのだけれど」

う、と天井は目を逸らした。
危険だと布束を絶対能力進化実験から遠ざけておいて、自身は他の事に首を突っ込んでいるのだから。

天井「危険なことは一切していないさ。表の範囲でできる調べ物とか、そういった程度だ」

最近まで「準備」とやらで多忙だった木山がどこまで踏み込んでいるのかは分からないが。
というか第一位に接触を持ったりもしたのだった。

布束「In that case, どうして隠していたのよ。薄々何かあるとは思っていたけれど」

天井「あまり大っぴらにするようなことでもないだろう。木山も神経質になっているしな」

布束「結局今話しているのだから同じじゃない」

天井「う」

横では、すっかり言葉を挟めなくなっていた冥土帰しが呆れたように溜息を吐く。
どうも本気でやり合うと口ではこの少女に勝てないらしい。

だが……。
むくれた布束を宥めながら、思う。

地震と春上のあの状態は本当に無関係なのか。
置き去り。
まさかとは思いつつも、その単語が脳裏を離れない。


>>+1
春上に関して何かすることがあれば

>>+3
木山の件について何かすることがあれば

・行動安価の複数指定について
 1つまで、と明記されている場合以外は複数書いても大丈夫ですが、
 多く書けば書くほどそれぞれの効果は下がります

 またあまりにも多すぎる場合、適宜こちらで数を減らします


>>+4
新学期入ってからしばらくの研究の進度
※コンマ判定  ★修正なし
  - 4:ファンブル
  5-49:失敗
 50-94:成功
 95- :クリティカル

成功度により進度が変わります




・安価追加

>>+1
春上について木山に報告する際、布束に色々喋ったことを言うか



当面の問題は木山である。

あれから数日、行き詰まりっぱなしの研究もそこそこに、天井はPCの前で頭を抱えていた。
開いたブラインドの外では低い西日が敷地を赤く染めている。
適切に調温された研究室の中から見ていると、ただじわじわと暑そうな光である。
本当は冷え切った大気を暖めることさえできない程度のものだとしても。

天井「特定の相手にのみ大能力相当の強度となる……冥土帰しが言っていたのはこれだな」

きちんとソースに目を通せたのは大きい、だがそれだけだった。
置き去りである彼女には親族、出身地などの記載も無く、現在と同じ保護施設での所属記録が残るのみ。
開発の成果は早く出ている方で数年前、小学校低学年の頃から現在と同じ強度を持っていたらしく、逆に言えばそれからの伸びは少ない。
そういった表面的なデータしか得るものは無い。

天井「強度が上がる相手の名前でも書いてあれば楽なのだがな」

春上の聞く声が木山の生徒のものなら、治療の助けになる可能性がある。
だがそれを確かめるには木山の情報を頼るしかないようだった。
画面上のカーソルが、判断を迫るように瞬いている。

天井「はぁ。何とか言い方を考えねば」

後に露見することを考えると、布束に話してしまったことはこちらから報告した方が良いだろう。
だが先日の地震で動揺しているだろう木山がどう反応するか分からない。
天井の弱みをもって釘を刺してくるか。
布束をどうこうするとは流石に思えないが……。

メールにて、あちらを訪問する形でアポイントを取る。
胃が痛い会合になりそうである。




木山「布束博士にあのことを話した、だって?」

とん。
軽く突いた木山の拳がテーブルの上の茶器を鳴らした。
赤みの強い野苺茶の表面がたぷりと波立つ。

天井「……そうだ」

予想はしていた。
だが実際に硬い態度を向けられると磨り減るものがある。
対面した茶色の瞳は底知れなさと共に、明確な苛立ちを浮かべている。

木山「事後承諾は止めてくれという意図は伝わらなかったか。あの時もっとはっきり言えば良かったのかな」

天井「済まない」

木山「こちらが無理矢理巻き込んだとはいえ。もう少し緊張感を持ってもらわねば、私も対応を考えざるを得ない」

言葉に出して、いや遠回しにでも脅迫めいたことを言われるのは久しい。
あるいは。
接続機と超能力者による治療法算出が失敗している時点で、天井に期待された役割は終わっているとも言える。
指示が無い限り大人しくしていろということなのかもしれなかった。

天井「勝手なことをして悪かった。だが別件を追っていたら貴方の件にぶつかったんだ。
   もしかしたら何かの形で役に立つかもしれない」

だから、敢えてそれを上書きするように言葉を被せた。
あの地震前後の錯乱、何かに突き動かされるような様子は偶然の産物とは思いがたい。

天井「目覚めない子供達の中に、別の施設から来た者は居ないか? 施設の名は――」

木山「急にどうしたんだい、いや待ってくれ。…………そうだね、一人居るが」

デスクに移動しカタカタとPCを操作する木山は、そう答えた。

当たりだ。
これで十中八九、春上と木山の生徒達が繋がった。


木山「つまりその子が子供達の一人の声を聞いている、ということかい」

天井「多分、だが。しかし地震の際に覚醒し掛け、暴走した生徒の声を聞いたならうわ言を呟くような状態も納得できる」

木山「ふむ……。そうであれば一度会ってみたい……が」

と、そこで木山は鬱陶しそうに頭を振った。
前に零れた一束の髪をゆさりと手で払う。

天井「問題があるのか?」

木山「どうもね。子供達の居場所を探られているような形跡があったらしい」

天井「な……ッ、都市上層か!?」

生徒達を助けようとする動きは重要視されていないのではなかったのか。
それとて、木山が泳がされているという事実から推測したに過ぎないのだが。

木山「いや。現在子供達は冥土帰しの手によって一箇所に集められているのだがね。
   上層が本気であの子達を何かに利用しようとするならとっくにされているだろう、と。それがあの医者の見立てだ」

天井「面倒なことになったな。他に嗅ぎ回られるような心当たりは?」

木山「思い当たるところは無いが……。だからこそ、これ以上この件を口外しないよう重々承知しておいてくれ」

じろり、と隈付きの目で睨まれてしまった。
天井が話した相手、冥土帰しや布束がどこかに漏らしたとは木山も思っていないだろうが、傍受などの可能性もゼロではない。
こちらも気を付けた方が良さそうだった。


・ちょっと出てきます
 続き……といっても1、2レスをまた夜に



・再開&本日ラストです


ちらちらと長点上機学園の敷地内の樹に白いものが見える。
雪ではない。
ごく仄かに赤系統を溶かした淡色は梅だ。

三月中旬、時候柄の花をぼうっと視界に納め、啜るコーヒーは苦味の強いブラックである。
所詮自動販売機の紙カップなのだが。
とはいえ力を抜いて窓の外を眺めるなら、やはり常飲の野菜ジュースより安物でもコーヒーや茶の類が良い。

布束「お疲れね。背中が枯れてるわよ」

いつの間に近付いたのか、声はすぐ斜め背後から聞こえた。
ゴスロリなのだが和服と足して割ったような装いの布束が、缶のコーンスープを手に立っている。

天井「風流と言え。どうにもな、最近は実験もできないし」

布束「青髪君、忙しいものね」

四月から彼は中学校に進学する。
むしろ今まで元気に研究協力していた辺り、受験のシビアな高ランク校でないことは明らかなのだが。
それだってクラスの面々ががらりと変わる新学期は重要な期間だろう。

だがそういった都合以前に、思い付く実験を端からやり尽くしてしまった、という切実な問題があるのだった。

天井「部活動などを始めたら今までのようにはいかないだろうしな。
   研究費も少ないなりに安定してきたし、他の協力者の脊髄でまず実用化を目指そうと思う」

患者に能力を適用するに当たり何らかの処置が必要なのは、元々能力者本人の肉体のみに効果を発揮する肉体変化だけである。
電撃使いおよび念動力に関してそのハードルは無い。
来期以降も相変わらず補助金は最盛期の七割程度出る予定であり、追加で一人分の脊髄を複製して保持するくらいなら余裕で――、

と、背にぎしりと重みが掛かった。
ふわりとコーンの匂いが漂って、消える。
腕を組んだような形で少女が寄り掛かっているらしかった。

布束「……こんなところで黄昏ているから。もぅ、落ち込んでいるのかと思ったわ」

耳元でちゃぷん、と小さな水音がした。

天井「あれだけ実験を失敗したのだから悔しくはあるがな。できることが全て潰れた訳でもない。
   青髪君の肉体変化だって、何か方法を思いついたらまた実験に付き合ってもらうさ」

かなり挫折に強くなったのは確かだと思う。
それも、耐えられるようになったというより慣れたと表現すべきか。
進まない事項に囚われることがなくなった訳ではないが、以前より神経を削るような思考をしなくなった。

あるいは他に懸念事項があるからかもしれないが。

布束「なら良いの。そうすると、反射的な能力行使のパターン採取の続きね。続きと言っても半年ぶりくらいだけれど」

ふぅっ、と呼吸音と共に負荷が消える。
私も準備しておくわ、とまるで軽やかに、布束は去っていく。
飲み物まで買ったのなら少しくらい座っていけば良いものを。

どことなく背中に物足りなさを感じながら、天井は残ったコーヒーに口を付けた。
そうだ、スランプになろうとなるまいと、季節は進んでいく。
問題が起ころうと起こるまいと。




保存してあったサンプルから、新たに培養したのは電撃使いの男子生徒のものである。
クローン破棄の憂き目に合う以前に、一番完成に近いと読んでいた。
今日は初期の処理のみ、実験ができるにはまだしばらく掛かる予定だ。

天井「あー……木原幻生か」

ぱたぱたとその名を打ち込む指も慣れたものだ。
木山の生徒達の問題について、天井が調べられる取っ掛かりは関連する人名か団体名程度しか無い。
今では仕事の合間、空いた時間に何となく検索するのが癖になってしまった。

彼らの暴走状態を収めるため、投与された能力体結晶の成分を厳密に特定する。
それに必要なのが「体晶のファーストサンプル」または「木原幻生の実験記録」ということだった。

天井「テレスティーナが最初期の実験の被験者である可能性は高いとのことだったが」

冥土帰し曰く、時期的に木原幻生が主導した能力暴走実験の開始とテレスティーナの暴走が重なるらしい。
もしかしたら彼女こそまさにファーストサンプルの元であるかもしれないのだが。
この辺りは木山から又聞きで確認したところである。

天井「しかし木山の実験の例からして、被験者が実験の詳細やら成果の行方やらを知っているだろうか」

冥土帰しはそれ以外の方法で暴走を抑えられないか奮闘しているようだが、今のところ見つかってはいないようだ。

子供達の居所を探っていた者は未だ不明。
そのため木山と春上の面会は現在待ったが掛かっている状態である。
春上と木山の生徒の関係に確証が取れたとして、春上を彼らの下に連れて行く際に誰かの目に留まるのを警戒しているのである。

天井「いかんせん情報が足りないな、これでは」

そうしている間にも画面の中の建物が揺れた。
動画サイトに投稿された、多分固定カメラの映像だろう。
一際大きく跳ねた後、横倒しになった風景のぶれが止まり、しかし人混みはごった返している。

あの地震の日だ。
現れた大型の車両からは駆動鎧が湧き出し、崩れた看板などを撤去している。
中には派手な桃色の駆動鎧などもあり、彼らが揃って纏う印章は、

天井「あぁ。これが先進状況救助隊か。警備員も到着していないのに随分レスポンスが早いんだな」

こういった状況の専門部隊だからだろうか。
忙しなく移り変わる動画の上のタイトルは「第七学区地震・MARの活動」。
有志が投稿した、災害状況を伝えるよくある動画の一つである。


>>+2
木山の件について何かすることがあれば

1つまで、複数書いてあった場合最初のを採ります


・今日はこれまでに
 ご参加ありがとうございます

 しばらくは繋がった隙を見てぼちぼち進めようかと
 あまり更新できない日もあるかもしれません、済みません



・おはようございます
 本開始は午後からの予定です


・安価での条件分岐について

 今回は指定された行動自体が「幻想殺しについて聞いている」という前提が無いと成り立たないため、
 聞いていないなら○○という分岐はOKとします
 駄目だった場合に何も行動しないのも勿体無いですし

 例ですが、□□して失敗したら▲▲、のような指定は複数不可の安価ではNGです
 他にも考えられるケースがあると思いますが、
 ここで想定しきれないので発生してから対応する方向でご了承ください

 なお、あまり細かい分岐はご容赦ください


>>+1
上条の幻想殺しについて聞いているか
※コンマ判定
  -49:聞いている
 50- :聞いていない



>>106
 天井「そうだ、何か違和感があると思ったんだ」
 布束「違和感? Abruptly, 何かあったの?」
 天井「その英語表現だ。>>106 の時、いつもと話し方が違わなかったか?」
 布束「あの時は……、There comes... 和装だったからよ。……私だってTPOくらい弁えるわ」
 天井「……和装…………?」

 ※和ゴスは和装に含めます by 布束


考えても考えても、明快な答えは出ない。
どうしても判断材料が足りなかった。

本業はパターン検出および解析実験に入ってしまえば、言ってみればしばらく単純作業になる。
生じた脳の余剰領域は木山の件でできることを与えられた条件からぐるぐると思考しているのだが。

天井「現状視野に入れている以外にも可能性はありそうなものなのだが」

この手の問題に関わっていない誰かと雑談でもしてみるか。
首を逸らせて、背もたれの上部にぼふりと乗せる。
研究室の電灯はこうして見ると近く、狭苦しくも思える。
空気が淀んだら、状況が膠着したら風を通す。
鉄則である。

天井「しかし黄泉川とでは確実に呑みになるしな」

誰かの視点を借りると言う意味ではアルコールが入っていても問題はないのだが、何か閃いても次の日には忘れそうである。
青髪少年は先の理由でしばらく顔を見せる予定は無く、

天井「うん? そういえば」

彼の話題の中に、都市伝説じみた友人の話があった気がする。
道を歩けばこの街ではすぐ撤去されるはずの空き缶に蹴躓き、買い込んだ食品をぶちまけ、
勢いでスキルアウトにショルダーを入れるレベルで不運であるとか。
そのくせ女性には異様に好かれ、そのせいで余計面倒に巻き込まれるとか。

青髪にとっては友人の不幸っぷりやモテ具合が重要だったらしく、能力についてはあまり話題に上らなかったのだが。

天井「確か、能力を打ち消す能力だったか。眉唾ものだが、確かめる価値はあるか?」

今のまま生徒が目覚めれば能力が暴走し、災害を引き起こす。
そうでなくても、暴走状態を引き起こすような脳の状態のまま覚醒することは彼らにとって負担だろう。
だがあてのない昏倒状態よりも、覚醒した方が治療の幅が増えることも確かだ。
最終的な判断は冥土帰しや木山に任せることになるだろうが。




青髪『どーしたん? センセ。急に電話しても良いかなんて』

天井「いや、少し聞きたいことがあってな」

青髪『うん? 実験のお誘いなら、三月中やったら何とかいけるでー』

そう長く掛かる用事とも思えないし、かといって能力がどうのを携帯メールで打つのも互いに不便である。
メールでは了解だけ取り、こちらから電話を掛けさせてもらった。

天井「いや、それは大丈夫だ、ありがとう。君が中学生活に慣れてから改めて打診させてくれ。
   今日は別件でだな……以前ちらりと言っていた、クラスメイトの無効化能力について知りたいのだが」

青髪『あー、そんな話もしたっけな。ボクの場合だと、そやねー。生やした尻尾とか掴まれると消えるで』

聞いたこともない能力だが、AIM系か。

少年に連絡を取る前に、彼のクラスを指定して書庫で検索を試みてはいるのだが、そのどれにも符合しない。
開発に力を入れている校風ではないらしく、青髪少年がクラスで一番高レベルだったくらいだ。
逆に珍しい「全くの」無能力者までいた。
異能力者に干渉するなら、少なくとも強能力者級であると思われるのだが。

天井「……どんな系統なんだ?」

青髪『ボクもあんまり詳しくはないんやけど、念動系とか火炎系とか、分かり易いもんやないと思うわ。あと……』

彼には珍しく、何かを言い淀んだ。

青髪『いや、あんまりボクが喋るのも変かと思ってな。なんやったら本人に会ってみるってのは?』

天井「あぁ、確かに不躾だったな。取り敢えず検討させてくれ。いずれ、取次ぎを頼むことになっても良いか?」

青髪『まーセンセなら大丈夫やろ。ただ、珍しい能力やってのはボクにも分かる。変な所に話が行かんよう頼むわ』

実際の出身地と関係が無いらしい似非関西弁は崩れていなかったが、言わんとすることはごく真剣だった。
彼も強度が高くないとはいえ希少能力者である。
研究対象として値踏みされ、貴重だからこそ手出しを遠慮されるような、そういった気配を肌で感じたことがあるのかもしれない。

天井「話したとしても冥土帰しとその協力者か、あとは布束くらいだ。外には漏らさないよう約束する」

青髪『お姉さんにはセンセと一緒にポロっと話しちゃってるしなぁ。っと、これでも二人のことは信用しとるからやで。
   ほな、それ以外には広めんといてやー』

いつもの調子に戻って、さっくりと別れを告げる。
切断音の続く携帯電話を耳に当てたまま、天井は上を仰ぐように目を閉じた。
あれほど陽気な彼がふと研究者への警戒を覗かせる。
日常レベルで裏側が根を張っているような、この都市には言いようのないおぞましさがあった。




しかし分かったことといえば「能力を打ち消す能力」が異能力者の青髪に効くくらいなものである。
取次ぎに関しては請け負ってもらえたが、当の友人が了承するかはまた別問題であるし。

天井「先に冥土帰し達に相談しておくのも手だが、能力の具体的なところが分からないのではな」

AIMに干渉するものなのか、精神系統の一種なのか。
青髪少年は、一般的な区分の能力ではないと言っていたが、あるいは特殊な原石か何かか。

そういう意味ではまず本人に会うのが早い。
彼と同じクラスなら、同じく四月から中学進学である。
面会するなら今月中に済ませてしまった方が迷惑にならないだろう。

天井「懸念があるとしたら……現在の状況だな」

能力の無効化。
それは時に高位能力者を恐れる研究者達にとって、喉から手が出るほどのものではないだろうか。

青髪の言からするとどうも普段から研究協力している風でもない。
これは天井の予想だが、大多数の研究者には存在を知られてすらいないのだろう。
学生である限りすべからく身体検査は受けているはずで、その結果は書庫へと毎回反映される。
だがクラス、どころか一学年分丸々のデータに目を通しても、それらしき記載は無いのだ。

偶然か、何かの作為か。
覆い隠されるように普通の学生生活を送っているという無効化能力者。
天井は肘を付いた手を額に、しばし考えを巡らせた。


>>+2
青髪の友人について、どうするか
(取次ぎを頼む、先に冥土帰し達に相談、etc.)


・遅くなりました、ギリギリ3時前
 いつもご参加ありがとうございます




このメンバーで直接集まるのは、実は初めてだ。
冥土帰しの施設研究室のローテーブルを挟んで主である医師と木山、それに天井がソファに付いている。
冬は例年床から暖気がもたらされていたはずだが、今回は妙に効きが悪い。
応接スペースの周りだけ点けられた照明が薄ら寒かった。

冥土「木山君、暖房の設定は高くないかな?」

木山「いや、丁度良いよ、ありがとう」

そういうことか。
天井はゆっくりと出されたコーヒーを飲んだ。
横に居る女研究者は体感温度が上がるとすぐに涼を取ろうとする。
しばらくの付き合いで冥土帰しはそれを学んだらしい。

冥土「天井君はこれを使うと良いね?」

暗色のタータンチェックの塊、それは彼自身も膝に置いているストールと同じ物だ。
何とも準備の良い。
暑がりの木山以外にはどうしても暖が足りないのだ。


天井「わざわざ時間を取らせて済まない。直接役立つかは分からないのだが……。
   能力を打ち消す、という能力者の情報が入った。生徒達の暴走を抑えるのに力を借りれないかと思ってな」

木山「聞いたことがない能力だね。裏付けはあるのかい?」

ふむ。
書庫の情報及び、簡単に調べてみた範囲では、それらしき記述は一切無かった。
むしろ学生達が好んで使用する類の信憑性の低い掲示板には「どんな能力も効かない少年」などが七不思議として書かれていたが。
それが青髪少年の友人を指しているかどうかは微妙なところである。

天井「その能力者のクラスメイト、私の研究に協力してくれている少年から直に聞いた話だ。
   少なくとも彼の肉体変化は解除できるらしい」

木山「あぁ、異能力者……あのAIMの持ち主か」

ちら、と冥土帰しに目を遣ると、小さく頷いたようだ。
また木山も共同研究者として青髪のAIM拡散力場の分析や再現を担当している。
ごく間接的な知人のようなものだ。

冥土「詳しいことは分からないのかい? どういった原理だとか」

天井「あぁ、まだ。書庫を調べてもそういった能力が見付からなくてな。
   もし助けになりそうだったら実際に会ってみようと思うのだが……」

あらかじめ二人に話を通したのは、幾つか聞いておきたかったからだ。
まず実際に治療に当たる立場として、無効化能力が助けになるか。
次いで協力を仰ぐ気があるか。

最後に、その能力者の置かれている立場を考えて、接触しても大丈夫かどうか。
単純に天井達の安全だけでなく、より難しい立場の子供達と引き合わせることで、何らかの引き金とならないかということだ。




それぞれが思案げにカップに口を付ける。
一拍置いて、まず話題の能力について考察を進めることにした。

天井「起こる現象から考えれば、能力系統はAIM系か精神系が色濃いと思う」

木山「そうだね……精神系統だとしたら、その場凌ぎではなく恒久的に暴走を抑えることができるかもしれない」

天井「そういえば、今までその手の能力者に力を借りる案は無かったのか?」

あの記憶では、精神系能力者の最高峰として第五位に君臨する超能力者がいたはずだ。
もっとも都市の宣伝塔だった第三位と違い、今の段階で能力開発を受けているかさえ不明なのだが。

冥土「検討はしたんだけどね? 能力行使に干渉できるほどの者に心当たりが無いんだよ」

すると、後の第五位はまだ高位ではないか、どこかの研究所に囲い込まれているか。
ただ研究者にとって、思考を読まれ、改竄されかねない高位の精神系能力者は一種の鬼門である。
それこそ圧倒的な力を持つ第一位や、電子情報の操作に長けた第三位よりも。
おいそれと「強過ぎる」精神系能力に接触するには二の足を踏むのも確かだ。

冥土「または、AIM系の能力だとしても、暴走の伝播を防げるかもしれないね?」

天井「では少なくとも話を聞いて、協力要請も考慮する価値はあるか」

木山「いや、それなのだが……。この前、生徒の声を聞いているかもしれないという精神感応者の話があったろう。
   あれと同じでね。探られた形跡がある以上、ある程度効果が予想されない限りあまり動きは見せたくないんだ」

春上の時と同様か。
現在冥土帰しと木山はなるべく子供達を収容している施設に近付かず、各々で調査や治療法確立をしているらしい。
勿論最低限の健康チェックは行っているが。
その際にこっそりと同行させる程度なら、例えば冥土帰しの病院を経由すれば現実的には目を惹くようなものではない。
念には念をということだ。

また地震の一件があるため、現在は暴走状態への対応が完了してから覚醒させる方向で纏まっているとのことである。

天井「ではなおさら能力の詳細が判明しないと決まらないな。だが……」

木山「それは、以前協力してもらった彼よりも面倒な状況なのかい?」

むむ、と難しい顔をして木山は唸った。
彼、とは第一位のことか。

木山「珍しい力とはいえ、おそらく高位能力者ではないんだろう? そこまで危険だとは思えないのだがな」

それはそれで一つの見方だが、天井は真逆だと思う。
強度や序列はともかく、能力の特異性では都市でもかなり上位に位置するのではないか?

天井「だが書庫に能力が載っていないのが気になってな。私の端末では制限が掛かっているだけかもしれないが……」

それはそれで、一介の開発官などには見せられないということだ。

冥土「ふむ。仮にその能力者が恣意的に研究などから隔離された環境に置かれているとしても、治療の協力程度なら大丈夫ではないかな?
   能力自体を研究したり、それを発表するのでなければ。知ったのだって裏情報などではなく知人伝手だしね?」

天井「そうか……」

再び沈黙が降りる。
誰とも無く、各人の前のコーヒーに手を伸ばす。

――かたん。

木山「おっと零してしまった、染みる前に」

冥土「これで拭いて欲しいね? どうしても着替えたいなら入院着がある」

どこからともなく取り出されたタオルがばさりと飛んだ。
手馴れ過ぎだ一体何があった。


>>+2
相談を踏まえ、どうするか
(取次ぎを頼む or 頼まない)




青髪『ほな、明々後日の十時に病院で。なぁ、最後に確認するけど、会う目的は……』

天井「冥土帰しへの治療協力だ。プライバシーの問題があるから詳細は伏せさせてくれ。
   友人の能力をどうこうするつもりは一切無い、確約する。必要上、測定などはすると思うが」

青髪『りょーかい、や。それは本人と相談したって。
   あいつこういうの初めてやろし緊張しないようにボクも付いてくけど、必要やったら席外すから』

そう電話で約束を取り付けたのが三日前。
歳甲斐も無くそわそわと、今はまさに人待ち状態である。
会合の場はいつか青髪と対面した検査の待合室のような部屋だが、病院の出入口の一つの前に立っている。

それとなく、会いたがっている人がいると伝えてあったのか、擦れ違いも無く話は纏まった。
用があるのはこちらなので冥土帰しの病院まで来させるのは心苦しいが、
機密上の問題と、ここなら測定機器を準備しておけるため足を運んでもらうことにした。
長点の研究室でなくこちらを選んだのは、研究者ではなく医療関係者として会うためである。


立春からはや一ヶ月以上。
昔の人間が考えた暦ではとっくに春だとしても、気温が上がってくれる訳でもない。
日によっては突風と共に暖気が押し寄せてくる日もあるが、今日は「三寒」の方に該当するようだ。
陽光が暖めた体温を削ぐように空気が皮膚をなぞっていく。

天井「外に立ちつくす季節ではないな。申し訳ないが、中のロビーで待たせてもらうか」

最後にちらりとロータリーを取り巻く木々を眺める。
薄紅色は、これも梅なのだろうか。
教えてもらった長点の梅とはかなり形が違うのでなんとも判別が付かない。

天井「……ん?」

枝を透かして、青っぽいものが見えた。
それは芝生を横切り、きょろきょろ見渡して車の無い私道も横切り駆けてくる。
アスファルトの上にさも鮮やかに。

その後から転がるように、派手に黒髪を跳ねさせた少年が追ってきた。


>>+2
天井は……
※青髪の友人への対応



・安価はもう少しお待ちください


挨拶もそこそこに、暖められた室内に案内した。
二人ははあはあと息を切らし、頬の赤さを見るといらぬ気遣いだったかもしれない。
小さな丸テーブルの奥に二人並んでちょこんと座っている。

天井「飲み物は冷たいものの方が良いか?」

青髪「もちやで! センセ律儀に早くから待っとるんやもん、急いでまったわー」

??「ちょ、青ピお前、あ、お気遣いなくっ!」

遠慮無く要求する青髪に困惑したか。
黒髪の純朴そうな少年はわたわたと手を振った。

天井「あまり硬くならないでほしい。わざわざ来てもらったのはこちらなのだから」

振舞うといっても、室外すぐ傍の自動販売機で買った缶ジュースだ。
「まるごとブルーベリー牛乳」「キュウリソーダ」「ニガヨモギ茶」。
研究棟の良心的な販売機と違い、まともそうなものを厳選してこれである。

天井「好きなものを選んでくれ」

むしろ飲めそうなものを。
あらかじめコンビニで用意しておけば良かった。

??「じゃあ、お言葉に甘えて」

青髪「センセ、ニガヨモギな。まだキュウリのがましやわー」

ぷしりと缶を空ける音が沈黙の中に三つ、響く。
天井は九ヶ月だかぶりに飲料で後悔を味わった。

天井「ふぅ、……改めて、長点上機学園付属施設の天井亜雄だ。ここに勤務している医師の手伝いを少ししている」

上条「あっ、上条当麻です、今度から中学生になります」

缶を置いて、少年……上条がぺこりと頭を下げた。
青髪の話からもっと破天荒な性格を予想していたのだが、普通に人当たりの良い少年だった。




上条「えっと、俺の能力のことで話があるって聞いたんですけど……」

天井「あぁ。ある患者が、能力の暴走状態を止めらずに困っていてな。上条君の能力を聞いて、抑えることができないかと思ったんだ」

上条「暴走ですか。うーん、右手で触っている間なら止められるかもしれません。一杯広がる能力だと厳しいですけど」

協力についても、条件や報酬を出して頼み込むまでもなく好意的だ。
しかし右手、とは。
能力行使部位が限定されているために強度が低く判定されているタイプなのか。

天井「接触が条件……はともかく、右手限定となると、精神系統ではないのか」

青髪「なっ、カミやんがモテるのは能力だったんか!?」

上条「お前は黙ってろ! えーっと、俺の……幻想殺しは天然物で、身体検査にも引っ掛からないんです。
   0.1も0.05もないホントの無能力者らしくて。多分精神系でもないと思うんですけど」

おおよそ想定外の話だった。
天然物、つまり原石ならこの都市にも少数居り、一般的な開発を経た能力者とは毛色が違うこともあるが。
それでも基本的に何らかの方法で数値化して六段階の分類に当て嵌めるはずだ。
効果を示す能力を持ちながら検出できないなどとは……。

天井「と、済まない。では、今日も一応機器を持ってきたが、それでは測定できないのか」

上条「多分……。何だか済みません」

絶句してしまったこちらに対し、申し訳無さそうに頭を掻かれると何とも気まずかった。
つまり書類上は情報操作などなく本当にゼロなのだろう。
検索した時に何となく目に付いた「全くの」無能力者が、探していた本人だったのだ。

青髪「まー実演してみれば良いんよ。ちょっと待っててな」

クリーム色のカーテンの向こうに少年は消えていく。
そういう訳で、上条が触れた途端ばちんっ!! と痛そうな音を立てて兎耳が引っ込むのを、天井は目の当たりにしたのだった。


上条「と、こんな感じなんですけど。俺、役に立てますか?」

青髪「痛い……まじ痛いわ……。どうして長い兎さんにしたんやろ、ボク……」

頭を押さえて唸っている少年を完全に無視して上条は小さく首を傾げた。
友人というより悪友なのか、この二人は。
少年達は時折缶に口を付けており、丁度中身が尽きそうな頃合いだ。

天井「そうだな。主治医に相談してみないと何とも言えないが……手伝ってもらえそうかどうか、追って連絡させてくれないか」

上条「分かりました。誰かの助けになれるなら嬉しいです」

来たる春のように、屈託無く上条は笑う。
……いや。
子供らしい明るい表情の中に、僅か馴染まない大人びた色があったように感じた。

れっきとした才能を持ちながら無能力者の烙印を押されることで、悔しい思いをすることがあったのだろうかと、
自身にはそのくらいの想像しかできなかったが。

天井「――と、帰る前に確認したいのだが。今まで打ち消した能力は……」

口頭で過去に能力を使った際の確認だけをし、天井は二人を見送った。
冷えはするが、穏やかな陽の下を青と黒の頭がどんどん遠ざかっていく。
じゃれ合うようにジャブを入れたり突然駆け出したり。
眩しいものに目を細めるように、まんじりともせず植木をくぐる背中を見ていた。




天井「……ということだ。念のため青髪君のAIM拡散力場を計測していたが、右手の周りだけすっぽり消失していた。
   上条君自身にはAIMは見られなかったよ。
   能力のオンオフはできないらしいから、『他人のAIMを一切消し去った状態』が彼のAIM拡散力場と言えなくもないが」

数時間後、多忙な冥土帰しは保留として木山に上条のことを伝えていた。
どうせ外出したついでである、帰り道を大きく逸れて直接彼女の研究室を訪れたのだ。

木山「そうか。範囲は右手の周りのみ、かい?」

天井「いや。本人の話だと、起点は必ず右手だが消え方や範囲は相手によるらしい」

水流操作能力者の力が及ぶ一繋がりの水に対して、一端に触れただけで全体を打ち消したり。
青髪少年の場合だと、耳に触ったら耳だけが消え、尻尾は残ったり。
その違いがどこから来るのか、本人にも分からないし調節もできないらしい。

木山は眉間に指を当て、脳裏の図形か計算式かを睨んでいるようだ。

木山「持続時間は?」

天井「基本的に触れている間のみ、だ。対象が放出し続けるタイプの能力だと離した瞬間にまた発現するし、
   一度途切れたら終わりのものなら消えたままだそうだ」

木山「最大出力」

天井「発火能力の大能力者が放った火球の流れ弾を消したことがあると。どうしてそんな状況になったのかは聞かないでおいた」

青髪は、カミやん不幸やからー、と笑っていたが。
まあ学園都市ならたまにあることだから困る。

木山「うぅん……。それだと、治療に劇的な効果は見込めない、かな。取り敢えずは保留だね。
   念のためその子とラインは持っておいてくれるとありがたいが」

申し訳無さそうであり、落胆したようでもある。
半ば予想はしていたが「動く」こととの差し引きでメリットを見出せなかったか。

木山「色々と情報を見付けてきてくれるのに……。腰が重くて済まない」

天井「いや。非合法の実験絡みだからな。慎重になるのも分かるさ」

木山「そうか、そう言ってもらえると助かる」

浮かぶのいつものぼんやりとした笑み。
ただ、以前からある隈に加えてどことなく疲れたような、そんな空気があった。
生徒達に一番心を砕き、思うように試行錯誤できないことをもどかしく思うのは、間違いなく木山だ。

二言三言、せめてもの慰めを口にし、天井は研究室を辞した。




天井「うぅむ、当てが外れてしまった」

自身の研究室の、珍しくデスクの前ではなくソファに埋もれてみる。
青髪の会話から無効化能力のことを思い出した時は、これで治療が進むか、と気力も湧いたものだが。

閃きが全てを打開することもあるし、そうでないこともある。
だが木山の様子を思うと遣りきれなかった。
せめて少しでもこの情報が役に立てば良い。

天井「打ち消し、打ち消し。どうにか治療に応用できないものか」

疲労感はあるものの眠気は襲ってこない。
頭上の模様を追うのを止め、全身の力を抜いた。
ビニール製だが柔らかいクッションに分散した体重を支えられていると、ふと何も無いところに浮かんでいるようにも感じる。

天井「……既に見えている情報を、既に試した方法で探っても限界だ」

情報収集にしても、データベースや資料を漁るだけではもう埃も上がらない。
現状の中で足掻いていても事態は動かない気がした。
今回は上手く嵌らなかったが、新たに方法を探すか。
あるいは、

天井「一歩、踏み込むか……か。だがそれは」

木山の生徒達のことを話した時の、咎めるような布束の目が思い出されて。
責めている、そう装った純粋な心配だった。
今でもありありと視線が心臓に刺さるような気がした。

絶対能力進化実験の時と違い、この件で天井が面倒なところに足を突っ込んでも、無関係な彼女に累が及ぶことはないだろう。
だが。

天井「できるのか? 私には。湿地に渡された足場から敢えて外れるようなことが、できるのか?」

問いに答える者は無い。
声は弱々しい空調の震えるような音に紛れ、溶けていく。

顔を手で覆い、天井は静かに考えを積み上げる。



天井は……
木山の件で、これからの大まかな方針について

 a. もう少し様子を見る
 b. 「体晶のファーストサンプル」について踏み込んで調べる
 c. 「木原幻生の実験記録」について踏み込んで調べる
 d. テレスティーナについて踏み込んで調べる(状況によっては接触も)
 e. 春上の協力を得る(生徒達に会わせる)ことを木山達に勧める
 f. 上条の協力を得る(生徒達に会わせる)ことを木山達に勧める
 g. 新たな方法を探す(具体的な内容を付記してください)


【8月8日0:00~23:59で、最初に4票入ったものを採用】

1人1票で、1レスに複数書いてあった場合最初のを採ります
同一IDは先のもののみ有効(変更したい場合は明記してください、ただし4票確定後の変更は無しで)

日が変わるまでにどれも4票にならなかった場合は一番多いもの、
同数なら先にその票数に達したものを採用します

「g. 新たな方法を探す」に関しては、具体的な内容別のカウントです
誰かに賛同する場合は明記するか安価でご指定ください
具体的な内容の無い「g」はノーカンです


・今日はこれまでに、ありがとうございます
 最近開始時刻と執筆が遅くてすみませぬ

・明日は所用によりお休みです
 ねんがんの カーテンをてにいれるぞ!

 安価、どうぞよろしくお願いします


大事なのでもう一回
【安価は明日の0:00から】



・沢山のご参加ありがとうございました
 今回は先取制でしたが、普通に得票制でも良かったかもしれませんね
 いずれにせよ「f」で進行いたします

・今日の開始は(接続が悪くなくても)遅くなりそうです、すみません
 多分進めはできると思うのでよろしくおねがいします



・遅くなり過ぎましたが開始します……大変お待たせして申し訳ないです
 今続きを書いているのでもう少々お時間を


天井はベランダの柵に寄り掛かり、ゆらりと街の闇を眺めた。
数日で新年度となる暦はまさに春を示し、年を通じても一、二を争うような過ごし易い気候である。
たまに隣室の住人が同じように外に出て煙草を吸っているが今日は姿が無い。
喫煙者でない自身としては運が良かった。

天井「やはり軽率には動けんな……」

誰かではなく自分の内側に確認するように、ぽつりと呟く。
足踏みしてしまっている子供達の治療に一石を投じられればと思っている。
だが冒す危機には慎重になった方が良いだろう。

調査などは冥土帰し達もしているはず、それで成果が上がらないのに、
伝手が無い天井が首を突っ込んでもどれだけのものを得られるか。
形振り構わなければ目はあるかもしれないが……。
余計なものを釣り上げて二人や生徒に火の粉が降り掛かっては元も子もない。

天井「アイディアに固執するつもりはないが、彼の能力――幻想殺しと言っていたか。
   こと『能力』の問題に関しては相当の切り札たり得ると思うのだがな」

大能力者の能力を打ち消した彼の影響力は、単純に考えて同等かそれ以上。
計測機器にさえ検出されれば超能力者の序列を塗り替えるかもしれない。
だが今回は相性が悪いのも事実である。

一般に、暴走能力者への対処と言えば捕縛、そして麻酔ガスなどによって昏倒させるのが主流だ。
ほとんどの場合意識が途切れてしまえば能力の発現は止まり、目覚めた時には状態も治まっている。
冷酷な言い方をすればPCに再起動を掛けるようなものだ。

天井「しかし、木山の生徒達の場合は違う。暴走状態のまま眠り、暴走状態のまま覚醒する」

デフォルトの状態から逸脱して能力を振り撒くのではない。
体晶によって、乱された状態がデフォルトに固定されてしまっているのだ。
本人達に重い負担を強いながら。

そういう持続的な症状と、限定的な範囲かつ一時的に能力を消し去る上条の力は、あまり噛み合わない。

対応し切れなかった分のAIM拡散力場は容易に他の生徒と共鳴、増幅し、さらに周囲に拡がっていくだろう。
異常な値を示すAIMが引き金となり、普通に生活している学生達の自分だけの現実を掻き乱してしまう。

天井「あの規模の地震が再発するのは絶対に避けねばならんしな……」

眼下には幾分大人しい夜景がある。
学生の街を謳う学園都市には分かり易い歓楽街などもなく、遊戯店の扇動的な電飾も存在しない。
街路や河川敷に灯った、防犯と景観のための控えめな明かりだけが、しかし数多く下の方に積もっている。

こうしていれば見えずとも、あの災害の爪跡は消え切ってはいないのだ。
アスファルトの小さな断層や捻じ曲がった車止めや、そういった形でまだ残っている。
この街のことだから気付かないうちにどんどん修繕されていくのだろうけれども。

天井「――共鳴、か。まるであの光のようだな」

遠く鉄橋の縁に、青と緑がぽかりと浮かんでいる。
幾つも幾つも人や車の進行方向に沿って交互に並ぶ電灯。
隣り合った二つはそれぞれが自らの届く輪を広げ、重なり合った部分は混じり合った繊細な色味をなしている。

天井「ん……? 今、何か……」

ずっと向こうの色彩。
互いに侵食する、双方の光。

――互いに。




木山『うむ……申し訳ないがそれは私の専門分野だからね。既に検討したことはあるんだ』

電波を通した声はフラットに聞こえる。
そもそも木山はいつも、笑みにせよ困惑にせよ苛立ちにせよ、ぼんやりと靄を透かしたようにしか感情を表さないことが多いが。
どうも電話だとそれがより強調されているようだ。

天井「だろうな。ということは不可能なのか?」

木山『いいや、理論的には試す価値はあるのだがね』

天井「つまり懸念があって実行には移せなかった――」

思い付き程度のことをわざわざ連絡するのは、
しかもずっと以前から子供達のことを考え続けている木山にそれをするのは若干の抵抗があったのだが。
強いて番号をダイアルしたのは、以前に打ち捨てられた案でも現状ならば実現不可能ではないと考えたためだ。

木山『そうだ。課題は三つ。共鳴させる能力者が必要なこと。失敗してその能力者も暴走した場合が危険なこと。
   暴走を沈静化した状態を維持するのが難しいこと。……うん、そうか、確かに今ならできる、のか?』

素人考えの、単純な話である。
暴走状態が平常となっている生徒達により一時的に他の能力者のAIMも暴走するなら、逆も起こるのではないか、と。

天井「共鳴する相手と維持については、私の研究に提供してくれたAIMの擬似発生で補えないか。
   機械なら生徒に引き摺られて暴走することもない」

まず一人ずつ隔離して起こすというのは最低限の前提である。
暴走を防げなかった場合に子供達の間で共鳴が起これば前回の二の舞だ。

木山『安定してからの維持はともかく、始めは機械再生では無理だね。共鳴とは相互に呼応し、変化していくものだ。
   もちろん暴走側の激しさに押し切られないよう、擬似AIMでの補強も必要だろうけれど』

天井「では、やはり厳しいか」

木山『……いや、大丈夫だ。それはこちらで用意する』

は、と耳を疑った。
彼女は今まで、自分の生徒を助けるために故意に他の学生を危険に晒すような言動はしてこなかった。
先の言葉はまるで、きっと追い詰められて幻想御手事件を起こしたのだろう、天井の見知らぬ「木山」のような――、

木山『あぁ、違うよ。誰かを試金石や生贄にする気は無い。どうせ予備実験も必要なんだ、その時に詳しく話すさ』

天井「――そうか」

短く返す。
信用して良いものか、迷わなくはない。
だがこの相手は人を散々脅すなりしたくせ、そういえば嘘を吐かれたことは無かったとも思う。

天井「そういえば機械を使うのでないなら、暴走に備えこの間の――上条君にも協力を頼んでみないか。
   安全圏に待機してもらい、彼の手に負えそうなら消してもらう程度になるだろうが」

以前一人ずつ治療をしていた段階でも、小さな地震は頻発していた。
幻想殺しなる力でそれを防げるなら御の字である。
もちろん彼自身を危険な目に遭わせることもできないが。

木山『確かに、言い方は悪いが保険……か。だがそれは予備実験が終わり、最終段階に入ってからだね。
   子供達の移動もそうだ。誰からも分かるような「動き」は、有効性が確かめられるまで見せたくない』

それはもっともだ。
目に付いた方法に飛び付くあまり警戒を怠って、全てを瓦解させてはどうしようもない。
生徒達を探しているらしき者が、一体何を目的としているのかもこちらは知らないのだ。

木山『そういう意味では……天井博士との研究を隠れ蓑にさせてくれないだろうか。
   あんな始まりだったにも関わらず色々考えてくれる貴方に、これ以上を求めるのも図々しいのだけれど』

ふむ。
頻繁に予備実験を行うなら、確かに冥土帰しの下だけではやりにくいかもしれない。
天井が研究でAIMの発生に用いている長点の機器は質も高く、流用すれば進めやすいだろう。

そして積極的に協力することは、天井自身が研究に割ける時間などを圧迫するということでもある。


>>+2
がっつり協力する or しない




天井「あぁ、私との研究を名目に使う分には構わないが――」

木山『? 助かるよ』

横から口ばかり出しているようではあるが、自分の持つ研究テーマを放り出して手伝いばかりすることはできない。
そちらを疎かにする訳にはいかないし、したくもないのだ。

天井「とはいえそれを装うために頻繁に実験に顔を出したりするのは難しいぞ」

ふと、耳元で小さな息の音がした。
それは平坦だった今までとはがらりと違い、色を帯びた、笑みのようだった。

木山『貴方も律儀だな。そもそも共同研究とはいえ一緒に作業することは少なかったじゃないか。
   私も今はほとんどそちらに協力できていないしね。
   もう助力を強要するつもりも――あぁ、済まない、上条君へのコンタクトなどは結局頼むことになるか』

こちらも大げさな予防線を張ったものだが、木山も大概極端である。
今更連絡役くらいで気後れするとは。

天井「それくらいは問題無い。できる範囲なら手伝うし、どうしても必要なら場所なども融通するが……。
   私も今色々と厳しい、あまり当てにはしてくれるな。まぁ今までと同じようなものだ」

くすくすと、もう微苦笑を超えた声が聞こえた。
背負う物の重さから、どこか疲れた感じの雰囲気を漂わせている彼女には珍しい。
おどけるような丸みを帯びた音だ。

木山『ふむ。今までと言えば、第一位と引き合わせてもらったり、色々大事があったじゃないか。
   それらと同じならこれからも期待できそうだ』

天井「止めてくれ、私を過労死させる気か」

木山『ふふ、なんてね。能力暴走絡みの実験だし、むしろしばらくは冥土帰しの監督下に入ることになると思う。
   また連絡が取り辛くなるかもしれないから、貴方の側で用があったら、前のようにメールを投げておいてくれ』

そうして、木山は一つ大きな呼吸をした。
ゆるく押し出された呼気の中には、もう砕けた気配は無かった。

木山『――できることを、それも一度は無理だと追い遣った方法を貴方が提示してくれた。本当に、ありがとう』

実際のところこの方法では根本的な治療はできていない。
だが上手くいけば、少なくとも生徒達から暴走という苦痛を除き、意識を取り戻させることができる。
それから改めて体晶などについて調べれば良い。

光明を見出した木山の言葉には強く血が通い、すとんと真っ直ぐに届いた。




一先ず上条にメールを送ると、PCの画面の中は高速でスクロールするウインドウだけになる。
研究に使う刺激のデータを、パターンに細かな数字を代入して自動生成しているのだ。
翌日、研究室でのことである。

協力を請うか決まるまで少し時間が掛かりそうだと少年には謝罪交じりで報告したが、
そちらの方が都合が良い、と向こうの返信に気にした様子は無かった。
青髪への実験依頼を控える理由と同じこと、上条もしばらくは中学に慣れるため忙しいのだろう。

もっともどちらの少年も、どうしても必要だと頼めば多忙中でも了承しそうな雰囲気であるが。

天井「ふぅ。四月……半ばには実験に入れるな。流れ作業のようなものとはいえ、早くこの段階を終えて次に進みたい」

着々と脊髄の培養も進んでいる。
反射による能力行使のデータ測定は早々に済ませ、いかにして身体を動かすかの大関門に掛かりたいところだ。

木山の件も混迷の時期は脱したと考えて良いだろう。
体晶について、いっそ少し裏に踏み込んで調査を……と悩む必要ももう無さそうだ。
今までに倣い「木原幻生」などの語にはアンテナを張っていようとは思うけれども。

天井「何だか、急に動き出したな。どれもこれも」

目の前の小さな四角の中、黒地を流れていく白い英数字のように。
通勤鞄から取り出した紙パックにぷつりとストローを刺し、勢いよく野菜ジュースを啜った。


>>+3
何かこれからしたいことがあれば
※長期間掛かることや心掛け、方針的なのでも可
複数書いてあった場合最初のを採ります


・少し離れます
 明日の夜から帰省することになり、また間が空いてしまうので、
 今日は行けるところまで続けようかと思います



・復帰ました


電撃使いの大能力者、今はとっくに卒業し大学生をやっている青年の、限定的な複製。
身体のごく一部、それに加え外付けの機械により補助された能力の僅か一部。
検体として十ヶ月ぶりほどに対峙したクローンは、以前と同じ姿でアルミフレームのケースに収まっている。
おかしなものだ、先代はこの手で処分したというのに。

天井(そういえば妹達も――。不思議なものだな、複製体とは。「これ」と「あれ」は結局同一なのか、違うのか)

いつも慣れ親しんでいるものが、突然新たな切り口を見せ、迫り来ることがある。
まさにその感覚だった。
同じ漢字ばかり見ていると不意に意味が消失する瞬間とは丁度真逆のような。
ケース越しに脊髄に諸々を接続していたのを止め、まじまじと回転させてみる。
ひゅ、と蛍光灯の白光が枠の上を走る。

布束が、クローンは人であるかという問いをぶつけてきたことがあった。
それより単純な疑問だ。
人間であれ、実験動物であれ、あの頃の第一位が言っていたような人形であれ。

ミサカ一号とミサカ一〇〇〇一号は合同だったのか。
身体動作についてはマニュアルを叩き込まれているはずなのに廊下で転ぶなどというへまをしたミサカ三一四号は、
擦り剥いた膝の分だけ、他のミサカから異なっていたのか。
そういうアクシデント、実験までに経る体験の差異、それらが生じる前の培養槽の中でなら完全な一対一対応を得られるのか。

天井「……作業自体が退屈だと変なことを考えるな」

やおら頭を振り、眼前の個体から、全く同じに見える前の個体のイメージを引き剥がした。

ぷつぷつ、かちりとコードを繋ぎ、微弱な能力を逃さないための観測機を準備する。
PCの処理能力に任せて延々プログラムを回し続けるだけの実験である。
そういう類だからこそ時間という資源は貴重なのだ。

たまには思考を無為に遊ばせるのも良い。
だがそれはセッティングを終えエンターキーを押してからだ。

ここしばらく青髪と患者のクローンの保全くらいしかしていなかった気密度の高い実験室で、
身体が覚えているようにすらすらと準備は進む。




どちらかというと天井自身の作業はデータの整理、分析に尽きる。
反応があった部分だけ抜き出し印刷した表は、見るものが見ないと意味の生じない数値の羅列だった。

一日中実験室で機器のお守りをしているのはあからさまに非効率だ。
情報漏洩防止のためネットワークから隔絶されている各種機材とは別に、
監視用の多機能カメラだけが外……、研究室のPCに逐一報告を上げている。
それを横目に、デスクに肘を突いた天井は一人ごちる。

天井「既に済んでいた触覚の刺激に加え、午前一杯を掛けて視覚の六割が完了、と」

クローンの脊髄含む一連の実験装置に、通すべき刺激はまだまだあった。
視覚の残り、聴覚嗅覚味覚、加えて平衡覚。
自分だけの現実の中でのみ存在する、電磁波を捉える特殊な感覚。

進む割合が遅いのはPCなどの性能によるものではなく、純粋に用意した刺激のパターンが膨大なのだった。
また各刺激により能力が発現したかを確認するため、信号を送るのに微妙に間隔を持たせる必要がある。

天井「まぁ、こればかりは仕方ないな。ゆっくりと数字を読ませてもらおう」

細く空けた窓からは瑞々しい歓声が聞こえている。

あれは多分新入生だ。
入学して半月も経たない彼らには、互いに切磋琢磨し合うという名目の下、能力を披露する行事があるのだ。
注目の的は超能力に迫るような強度か、特異な希少価値か。

再び響く声と一緒に今度は吹き込む風が乱れたので、広範囲の大気に何かしでかしたのかもしれない。

天井「ん?」

それで意識が逸れたのか。
目を眇めて注視していた用紙の向こうで、モニタの右端にアラートが浮いている。
それも二つも。

天井「メールか、気付かないものだな。今日はぼうっとし過ぎか」


 From: 木山春生
 Sub: 落とした
 添付: (1004745.jpg)

 ずっと機会が無かったが、この際なので送っておこう。


天井「は……? 何がしたいのだ、これは」

まさか知人のアドレスを装うウイルスメールかとも思ったが、都市と長点、二重のチェックでも検出されていない。
怪訝に思いながらも添付ファイルをクリックし。

天井は盛大に溜息を吐いた。
携帯で撮ったと思しき粗く小さい画。
地べたに、「落とした」という割にちょこんと鎮座したデジタルカメラ、それだけの写真だった。

天井「まったく、迂遠なことこの上ない」

つまり、落として壊してしまったという暗喩だった。
木山がこちらを強請るために使っていた画像は電子データであり、完全に消去したという証明が難しい。
だから敢えての表明ということだ。
今後「頼む」ことはあっても「脅す」ことはしないと。

昔にも同じことを思ったが、律儀なのはどちらだろうか。




天井「もう一件は……」

マウスを繰る手が止まる。
自身には、立場上学生のメール相手が多い。
青髪に上条に、研究協力してくれている三人、事後フォロー的に一度コンタクトを取った春上。
送信元は彼らの中でも抜きん出て特殊な印象を抱く少女だった。


 From: 御坂美琴
 Sub: 講習会の内容についての相談

 お世話になっています、御坂です。
 以前お話した講習会に参加してきました。
 そこで教わった内容に関して疑問があるので、相談に乗って頂けないでしょうか。

    :
    :
    :


いつも通り開発に関わる遣り取り、それに少しの雑談。
ある程度日常のことを話す程度の関係になっても、きちんと礼儀を持った態度。

天井「広い意味で優秀な学生なのだが、な」

とりわけ、少し前に妹達のことを回想していたからだろうか。
どうしても重なるのはあの小さな最終信号だ。

クローンの司令塔に抱く複雑な心境は、第一位などに対して持っていたのとはまた別種のもの。
姿形が似た御坂とメールするくらいなら特に困難は無いのだが。

天井「放置しておくのも、拙いか……」

去年に短期治療を受けてあまり改善が見られないまま、触れないでおいていた。
無理に治療を急いで傷口を抉ることになっても面倒だし、息を吐く期間も必要だと思ったからだ。
だがウィークポイントとなり得るものを後生大事に持つ道理も無い。

意を決して財布から小さな診察券を抜き出し、天井は携帯のボタンに指を滑らせた。


・安価はもう少しお待ちください
 次のレスに入れます




幸い研究でも木山の件でも精神的に余裕ができ、つまり有効に使える時間が増えた。
折角独学や通院で色々な方法を経験したのだ、試したいメソッドを探してみるのも良いかもしれない。
そんな訳で、プリントアウトした用紙を主治医の先生に見せたところ、別の医院を紹介してもらう形になったのだ。

療法士「うん、では天井さんは何を目標にこの治療を?」

担当になったのは、自身より二、三歳くらい年上の女性だった。
いわゆる妙齢の女性で容姿も整っているのに、その言葉の持つ艶めかしいイメージが無い。
本人の前では流石に口を噤むが、お茶目なおばさん一歩手前、という風情だ。

天井「トラウマを直したいのです。少し事情が複雑なのですが、ある女の子に対してと。……あと多分借金について」

療法士「ふむ、それは――」

天井は病院というより、長点にある歓談スペースのような部屋に居る。
過剰に開けている訳ではないが、造りが普通を意識しているようにも感じた。

来院目的と症状や、治療の方針について話したが、良く分からないというのが第一印象だった。
自分で持ち出した治療法とはいえ、トラウマに聞くことや概要くらいまでしか調べていない。
そうするに、ふと立ち上がった彼女が小さなバスケットを持って戻ってきた。

療法士「どうぞ」

丸い陶器の皿にクッキーが一枚、まとめてずず、と差し出された。
ふっくらとした見た目はソフトクッキーなどと呼ばれる種類のものだったと記憶している。

療法士「どうぞどうぞ」

天井「はぁ、頂きます」

もそもそと焼菓子を口にする。
やはり、外側は一応硬いものの中身はしっとりとしたタイプだ。
表面にも浮いていたから分かっていたことだがチョコチップが入っている。

療法士「どうでした?」

天井「えぇと……」

二極で言うなら美味いとは思うが、甘味が強く沢山食べたくはない。
多分スーパーで安売りしていても自分から手に取ることはないはずだ。

天井「ごちそうさまです、美味しかったです」

療法士「ふむ、ではもう一枚」

え、と思う間にバスケットからもう一枚のクッキーが現れ、おもむろに皿に置かれた。
食べろと言うのか。
多く欲しい味ではないとはいえ数枚なら気にするほどでもないが……。

療法士「美味しい、とのことでしたね。ではその美味しさの『前』は、天井さんが美味しいと思う要因は何でしょう。
    味覚……いえ、まず見た目や匂いから。どんな刺激があるか、クッキーがどんな風かだけに着目してみてください」

天井「これも治療ですか」

療法士「ん、さわりだけですが治療に必要な練習です。まぁ思考実験だと思って、さぁさぁ」

そう言われればやってみるしかない。
目を若干寄せながら、クッキーをつまんだ。




ずしりとする。表面はざらついている。きつね色。
チョコチップがところどころにあり、茶色い。チョコチップはつやが無い。
あぁ、丸い。だが歪んでいる。端が崩れる。
バニラの匂い。焦げたチョコレートの匂い。甘い匂い。

外はさくりと、途中から鈍くなる。口の中でも崩れる。
甘い。
中は少し冷たい。外は温度を感じない。
チョコチップは……舌に触れた瞬間に冷やりとする。甘さはその後に遅れてくる。
ざらざらして、その後ペースト状になる。
顎を伝わる振動。
始めはざくざくいうがそれからはもごもごとしか聞こえない。
ちなみに目は回らないし電磁波も出ていない。


クッキーはこんな風だった。
これで良いのかどうかは何とも分からないが。
前半は小麦の円盤を弄びながら、後半は飲み込んでから捲し立てるように言うと、相手はふむふむと頷いた。

療法士「ところで最後のは何ですか?」

天井「いや、今取り組んでいる実験が頭を過ぎりまして。……これで、何が?」

一種の尺度というか、治療を始めるにあたって傾向などを測るものだと思ったのだが。
にっこり、と見事な笑みで彼女は別のことを言った。

療法士「これ自体が練習です。クッキーを食べて、美味しいとか甘い素晴らしいとか、受け取るインプレッションをですね。
    実際にある出来事……味とかそういうのから切り離す。味や形はただの事実として受け取ってみるということです」

終わってから考えると、いつだったか布束にケーキの描写を求められた時と似ている。
だがこちらの感想を除外するという点で異なる訳か。

天井「トラウマ治療に繋がるのか良く分からないのですが……」

療法士「クッキーとかはあくまで訓練ですから。
    要は物事を受け入れるのに慣れる、そういう技術を習得しようということですね」

それから、もう少し色々と内容について説明を受けた。
手法の肝は必ずしもこれだけでなく、トラウマ治療の場合はストレスへの対処を身に付けるであるとか。
地道というか気の長い話だ。
だが訓練、技術として少しずつできるようになっていこうというのは筋トレと同じで分かり易い。

他にも先程のクッキーの練習は瞑想のようなものに基いているなど、
精神論的な話題に及び、予定時間はすぐに切れてしまった。




天井「瞑想、か……」

ほとほとと、靴音を鳴らす夜の道。
綺麗に真ん中から欠けた月がぼんやりと進行方向に浮かぶ。

東洋哲学が云々という最後の方の話題は、興味深いと同時にどこか恐ろしかった。
敢えて言うなら、物事をそのまま受け入れるという技術の方も。
なぜなら。

死ぬ、という、あの意識。
記憶の中で天井が本当に一度死んだのか、死の直前で目を覚ましたのか、それは分からないし結局同じことだ。
死ぬ、とそうはっきり自覚したのだから。

天井(あれを、どう受け入れろというのだ)

あの恐怖の激情を貫く弾丸の感触から分離できたとして、どうすれば良い。

それは人間なら誰しもが持つ恐怖かもしれない。
だが一度それを本当に体験した天井には、過度に生々しく、耳元で泥臭い息を吐いているのだ。
トラウマを克服できるかとは別に、これは永遠の課題かもしれなかった。


治療の効果
>>+1
※コンマ判定  ★修正+5
  - 4:ファンブル
  5-49:失敗
 50-94:成功
 95- :クリティカル
ただしコンマ自体が0-4/95-99の場合、修正の値によらず必ずファンブル/クリティカル


・ググった程度の知識で書いています
 弁証法的行動療法に興味がある方はきちんとしたソースをご確認ください
 この文中の事項を信用しちゃダメ絶対

・うまいこと文中に描写仕切れなかったのでここで告知
 【借金】へのトラウマは特にありません

・眠気がマッハなので今日はおしまいです
 >>177 でも書きました通り週末に掛けてお休みします
 戻るのは火曜の予定ですが、もし遅れるようでしたら別途書き込みます
 いつもと違う時間にありがとうございました




・夜更けにこんにちは
 明日帰宅の予定ですが、交通機関の都合により時間が遅くなるかもしれませぬ
 ネット状況が悪くなければ1、2レスでも進められればと思いますが……

 連絡のみ失礼します


・お舞わせいたしました、ちょっとだけ進めます
 諸事情という名の眠気と暑さにより今日は数レスです……申し訳ない


五感などを模した刺激を与える実験と、気になる部分の再試験、および数回の追加実験。
シンプルな実験とはいえ実施してみると意外と手間だった。
何事も机上の理論通りとはいかないのだ。

座った状態、へそより少し高い辺りに広がる実際の机はこざっぱりと片付けてある。
ここにも昨日までは、ホチキス止めの印刷データが散乱していた。

天井「作業量と所要時間が比例する以上、覚悟はしていたが」

五月に入って早八日。
データ取りと整理の反復からは解放されたばかりだ。
砕片と化した大量の紙に代わり、今は纏められたデータがPCの中にロックを掛けられ眠っている。

やっと、研究の肝である身体動作補助に着手できる。
今までに積み上げてきた成果は皆このための準備だったのだから。

天井「ここに移ってからはずっと同じテーマを追って……もう三年か」

脳を用いない能力再現。
外的刺激に対する反射的能力行使パターンの洗い出し。
機器と患者のシームレスな接続法。
肉体変化能力の患者の身体への適応。

最後の課題だけは一時保留にしてあるが、本筋を阻害することはない。

天井「実験室の環境で上手く身体動作を再現できたら、装着型の機器として試作し、臨床実験だな」

スムーズにできるかは別として道筋は見えている。
製作は接続部分を依頼した縁で再びSプロセッサ社に頼むのが妥当だろう。
布束も円滑に共同作業ができていたようであるし、下地がある分意思疎通がしやすい。
その際に気になるのは……、

天井「あの実験との関連性、だな」

以前それとなく情報を集めた時には、天井達と提携した部署は絶対能力進化実験との繋がりは無かったと思われる。
次に依頼する頃にもその状況が続くなら強いて警戒することも無いだろうが。
部署間では人員の移動などがあるにせよ、各々の方針に従って動くはずだ。
そう、こちらからわざわざ別部署に探りを入れたりしない限りは危険は少ない。

天井「まだ先の話だが……。今から調べておいた方が良いだろうか」

だが折角調べても、現在と次回のコンタクト時ではまた環境が変化している可能性もある。
また過剰に実験の周りをうろついて「この都市」の目に留まるのは避けたいところだ。
必要になってから最低限の調査で済ませた方が良いだろうか。




天井「しかし、気になる部分もあるのだがなぁ」

ちらり、と机の端の方に目を遣ると、紙とプラスチックでできた安っぽいオブジェクトが見えた。
保険会社のロゴが小さく入った卓上カレンダーである。
可も無く不可も無いパステル調のそれは、ご自由にどうぞ、と廊下に積まれていたうちの一つだ。

指の腹で重なった一ヶ月ずつのカードをずらし、下にある後の月へと、次々と。
十の数字が目に入った瞬間、ひくりと手が止まった。

天井「……記憶の中では、今年の夏に量産型能力者計画に手を付けるはずだった」

潰れた計画は同時期に進行していた絶対能力進化実験に吸収され、自ずと天井もそちらに関わることとなったのだ。
そう、「同時期」に進められていたのだ、あの実験は。
自身が関与するまでにはある程度骨格が出来ていたから、その直前にスタートした訳ではない。
確か三、四ヶ月前だっただろうか?
いずれにせよ天井が計画に取り掛かっている半年の間に立案されていたはず。

天井「私が量産型能力者計画を行わなくとも、あの実験が始まることは理解できる。元々が別ラインの研究だったのだから」

では、どうして現実には二年近くも早く実験が算段されたのか。
実験の開始時期が同じまま、妹達の流用や布束の参加が無いことにより進度が遅くなるなら納得できる。
あるいは天井達の分、別の優秀な人材が加入して逆に速く進むことも、まぁ、あるかもしれない。
しかし開始自体がずれるというのは?

冥土帰しに相談した時も、これについては特に得るものが無かった。
相手は「前の記憶」など持たないのだから当然かもしれなかったが。

天井「今更、あの記憶を疑うということはすまい……いや、必ずしも、全く同じとは限らないのか?」

それとも本来同じであるはずのものが、どこかで回り回ってずれてきているのか。
他の、新製品の発売時期やらに不整合は感じない。
実験だけに影響するような何かを――、

天井「あの計画が無いことくらいしか、思い付かんな」

気掛かりではある。
因縁深い実験のことだけに。
だが低額とはいえ補助金も安定した今、下手に藪を突くのにも躊躇いがある。


>>+2
絶対能力進化実験について、現時点で調べたいことがあれば




触れるもおぞましい実験だと思う。
それにより自身が被った影響は勿論、実験自体の質も裏でしかまかり通らないようなものだ。
故に。

天井「故に、知るべきか」

常識的に考えれば、触らぬ神に崇り無しといったところだ。
だが思い出すのは突如訪れた茶封筒。

天井はあの記憶を頼りに危険を遠ざけてきたのである。
食い違った時期に振って湧いたような招聘、ああいったことがこれからも起こる可能性があるとしたら。
思わぬ形で、布束共々実験に取り込まれないとも限らない。

天井「しかし変に刺激するのも良くない。……地道に調べるしかないな」

自身には、直接的に裏側の情報を得るコネクションなりが無い。
ある程度なら自然と耳に入ってきた以前とはえらい違いである。
情報と引き換えに裏に沈む気も今のところないのだから仕方がないが。

天井「前回調べたのは、大掛かりな培養に使えそうな施設の状況だったか」

実験の呼び声が掛かった直後だった。
それを元に、既に何らかのクローン生産計画があるか推察したのだ。
今回の焦点は記憶との齟齬であるからやはり一番は時期の問題だ。
現在の進行状況をまずは知りたい。

そしてできればその先についても考えてみたいところではある。
何故、量産型能力者計画が無いことで実験の立案が早くなるのか。
あるいは別の理由。

天井「いや、違うか。これでは因果関係が捩れている」

前の記憶の中で量産型能力者計画を開始した時点には、実際にはもう実験準備が始まっている。
計画の有無が直接的な原因ではないのだろうか。

天井「――ソースが無いままごちゃごちゃ考えても無駄か。結果を見て再度検討しよう」

いずれにせよ、危険を冒さない範囲となると間接的な手段にならざるを得ない。
目ぼしい実験施設から、天井は手を付けていった。


>>+1
調査の成果
※コンマ判定  ★修正なし

  - 4:ファンブル
  5-49:失敗
 50-94:成功
 95- :クリティカル





 To: 冥土帰し
 Sub: 臨床実験の件

 ご無沙汰しています、天井です。

 以前同僚と計画していた実験について、その節はありがとうございました。
 あの件でもう一つご助言頂けないかと思い、ご連絡しました。

 実験の指揮を執ることになっていた方について、現在どういった方面で
 活動されているかご存知でしょうか。

    :
    :
    :


天井「多分これで伝わるだろう、うん」

木山に並んでまどろっこしいメールを好むあの医者のことである。
きっと意図は汲んでくれるはずだ。
どうしてだか頭痛を感じ、天井は額を押さえた。

唯一と言っていい、裏の事情にもある程度通じた知人。
自分だけでできる頼りない調査を補うため少しだけ頼ることにした。
ただ冥土帰しも最近は木山の件に、当然本業でもいつも通り忙しいだろうから、もし分かるなら教えて欲しいくらいのスタンスである。

天井「出来る限りはこちらで辿ってみよう」

彼に訊ねたのは、少し気になっていた実験の主導者。
参加依頼の手紙にあったのは、記憶の中でも見たことがある名だったのだが。
とにかくこれに関しては伝手無しに調べることは難しい。
自身でできるのはもっと地味な手段だけである。




かたかたかた。
心地好い空気が開け放った窓から流れ込み、それを背に受けている。
対照的に、モニタのライトの届く範囲はどうにも淀んで感じられた。

天井「設備関係は特に動きが見えなかったが……」

記憶では天井の計画が始動する頃である、何らかの兆候を予測して肩透かしを食らってしまった。
もっとも自身が調べ損ねた可能性もある。
その確認も兼ねて、今はクローン分野の研究者の論文発表頻度などを洗っている。

三人、四人。
ここ半年から一年に掛けて、途中経過も含め本人の研究を公にしていない者が、数人。
勿論スランプや何らかの事情の可能性もある。

天井「だが、これまでの論文を見ると、いずれも一定の成果を挙げている――中堅どころのようだ」

もしこれが、実験の参加要請を受けての空白だったとしたら。
具体的なフェイズを示す状況証拠は見当たらなくとも、当たり前だが進行はしているのだろう。
できればクローンの製造に入っているか、はたまた戦闘を行う実験そのものをしているのかを知りたかったが高望みか。

天井「……ん?」

ふと、ある文字列が天井の目を惹き付けた。
芳川桔梗。
もはや疎遠になってしまい、恐怖感もほぼ乗り切った今となっては繋がりは薄いのだが、あの記憶で最後に焼き付いた人物だ。
気にならないといえば嘘になる。

天井「何だと? 芳川は普通に自分の研究をしている……」

コンスタントに参加している学会では時折壇に上ることもしており、そのテーマは絶対能力進化とはほど遠い。
カモフラージュでないとは言い切れないが、以前の記憶では末端の研究員は誰もそういったことに気を配っていなかった。
当然である、実験の規模からいって、それだけ成功すれば莫大な金と裏での名誉が手に入るのだから。

と。
ぶぅぅん……ぶぅぅん……机の天板を震わせて携帯電話が光った。

天井「早いな、冥土帰しか」

あぁ、そういえば。
この医者と彼女は知り合いだったか。
もしかしたら参加すべきかと冥土帰しに相談し、止められたのかもしれなかった。




冥土『やあ、久しぶりだね?』

天井「こちらこそ。面倒な話題ばかり振って申し訳ない」

たまたま仕事の合間だったのだろうか、老いてなお衰えない声が耳を打った。
激務をこなしている彼に疲れが見えることはほとんど無い。
患者を不安にさせない術を心得ているのだろうか、普段はずっと揺ぎ無いイメージを湛えている気がする。

天井「メールの件の前に、木山博士の予備実験はどんな具合だろう。中々本人と連絡する機会もなくてな」

冥土『順調と言って差し支えないね? 僕としてはああいった方法にはあまり賛同できないのだけどね』

天井「……一体どんな実験をしているんだ。
   あなたがストップを掛けないということは非人道的なものではないのだろうが」

冥土『そうだ。誰かを犠牲にするようなやり方じゃあない。
   それに彼女、止めても聞かないだろうしね? 僕も最善を尽くすだけさ』

本当に、何をしているのだろうか。
能力暴走関係の実験で、なおかつ人道にもとらないとは。

冥土『それで本題だ。天井君、あの実験に踏み込む気かい?』

天井「……いや。実験に参加したいといった意味で興味がある訳ではない。
   ただ何かの間違いで関わるのを避けたいだけだ。表向きは別の実験の募集を装うとか、な」

少し苦しい理由付けだった。
何せ今手掛けている自身の研究があり、しかも遂に本丸に辿り着いたところなのだ。
条件の良い外部実験の要請が掛かったとしても受ける可能性は低い。

しかし、嫌に鮮明な記憶があり、それと差異があるから気になるなど世迷い言も良いところである。

冥土『君があんあものに参加するとは、僕も思っていないよ。
   だが、そもそも天井君から聞くまで僕はあの実験を知らなかったからね。
   君が思うほど僕は多くのことを知らされてはいない。見付からなくても勘弁して欲しいね?』

天井「いや、もし耳に入っていれば知りたい、くらいのつもりだった。無理に調べてくれなくても大丈夫だ」

どうも、知見が広い彼をつい頼ってしまうことが多いのだ。
表に出さないとはいえ多忙な医者にあまり寄り掛かるのも悪い。

冥土『そうかい? まぁ何か分かったら伝えるよ。――君も、引き際を誤らないようにね?』

天井「あぁ。気を付ける」

冥土『ただ……表向きの実行者が誰でも、結局同じことかもしれない』

彼曰く、主催は「この都市」そのもの、だったか。
それが統括理事会を指しているとして、名目上の責任者など所詮飾りということか。
それとも。




異なる時期。
異なるメンバー。
天井も布束も芳川も参加しない、それでも進む実験。

天井「それは、上にとっては能力者だけではなく、研究者や管理職も――」

冥土『多分、君の思う通りだよ』

ぞわり。
背骨伝いに冷たさが這い上がる。

「替えが効く」。
最終的に成果が出れば、盤上の駒が何であっても詰みさえすれば構わないということ。
能力的に他の人材で補えるどころではなく、使い捨てにしても良い、そういう意味での。


礼を言って分かれた電話の切断音。
全身を預けた椅子。
遠い生徒達の声。

不意に呆然とした天井には、何もかも頼りなく思えた。


>>+2
もう少し踏み込んで調べるかどうか
(調べる場合、その内容)


・というところで今日はここまでに
 結局夜まで掛かっちまいました、お付き合いありがとうございます



・日が沈むと途端に涼しくなりますね
 申し訳ありませんが前述の通り今日はちびっとです


根本を固定され、細い腕がぐたりと横たわる。
保存液から上げられたと思えば種々の電極やコードに繋がれ。
どこか寂しげなそれに一度だけ触れ、天井は台を離れた。

患者の複製を使用する実験はしばらくぶりである。
空気に触れた肉体の一部を人工の光が寒々しく照らす。
もし破損しても作り直せるものとはいえ、掛かる費用は少なくもない。
最大限に留意して、プログラムは組んだはずだ。

天井「よし……こちらの準備は大丈夫だ」

布束「Okey. 実行するわ」

かしりとどこか抜けたキーの音が響く。
電撃使いの複製を中心に据えた一連の危機に命令が下る。
パターン名で表すなら触覚00082、触覚01904の同時送信、それに視覚00516をごく僅かにずらして交互に。
理論上、これで患者の指を動かす電気信号と99.97%一致するはずである。

機械の振動が伝わらないよう特殊な銀色のシートの上。
一ミクロンの動きも逃さないための精密撮影装置が二方向から監視する中。
その肌色は――、

――――動かない。

天井「No use... 信号はどう伝わっているかしら」

同時、あるいは連続した刺激により、複雑に能力を再現できることは既に確認している。
それはただの電子機器ではなく学園都市の能力を用いる理由でもあった。
元々人間の脳により発現する力はごく繊細で、生体電気に馴染みやすいのだ。
波形や強弱調節の問題も重ね合わせることで解消できる。

天井「うぅむ……やはり金属線を通したのに問題があるか」

腕の側の計測機器を舐めるようにチェック。
微弱なパルスが上手く患部に伝わっていなかった。
最終的な構想では患者の首の裏か背に沿って補助機を固定し、直接能力を流し込む予定である。

天井「実験環境でもそのように整えた方が、遠回りなようで一番の早道かもしれないな」

念のため他に用意したプログラムも試し、やはり結果が出ないことを確認して。
ぼやきながら、天井は腕を培養機に返した。

天井「まったく、次から次へと課題が持ち上がるのだから」

布束「そうね。Despite the fact, 着実に進んではいるのだし」

天井「やりがいがあると言えば、そうだな。来週は環境を変えながらやってみよう」

白衣の二人と対面するように置かれた容器。
物言わぬクローンは覆いに隠れるまで、つややかなガラスの向こうに淡々と浮かんでいた。


伝染ったか



日暮れのジムである。
今日は失敗、とはいえ長らく待ち望んだ実験だ。
差し引きはゼロとして、計算の端数に生じた正でも負でもない何がしかを、押し遣るように腕を動かす。
皮膚の表面にぽつぽつと汗が浮かび、自重に負け流れていく。

動作に意識を巡らすというのは、身体を鍛えるのにも実は必要なことで、
そういう意味ではトレーニングを始めた頃は特に気を付けていた。

別に精神集中などではない。
正しいフォームで負荷を掛けなければ効果が十分に得られないからだ。
注意しなくても身体が再現できるようになってからはそこまで集中してはいなかったが。
むしろ、ぼうっとしていたり別のことを考えていたりもする。

天井(久々に気にしてみると……少し、肘が落ちているではないか!)

例の心理療法は本来の目的であるトラウマ治療を含めまだ効果を実感する段階には到らない。
ただたまに、慣れ故の盲点を発見する副作用があった。

天井(いかん、これはいかんぞ。偏って筋肉が付くのは良くないからな)

上腕の角度に留意しながら、何度も、何度も。
それに集中すると熱を持った身体以外が消失し、動きだけが浮き彫りになるようだ。
繰り返しながら修正、教科書的な形へと。

外からの刺激をまるで無視していることといい、
動作の向上に固執する点で、ただ単純に「する」ことを「する」のからはかけ離れていることといい。
瞑想の一種などと言われる治療のプログラムとしてはどうも違うような気もする。
というよりどうも、まだ感覚が掴みきれていないのだ。

がしゃん、がしゃん、がしゃ。
一セットを終え手を離し、タオルで顔を拭った。

黄泉川「よっ、精が出るじゃんねー」

天井「うん? 今日は早いんだな」

後から声が掛かる。
小さなショルダーバッグを片肩に掛けているので、多分終わって汗を流してきた後のようだ。
トレーニング前後通してジャージでいるため定かではないが。

黄泉川「おう。残業も訓練も無かったじゃんよ。気合入れて運動してやった!」

天井「ご機嫌だな」

黄泉川「最近は地震も無いからな。原因究明に当たってた連中はともかく、現場の私達としちゃ一安心じゃん」

まだ気は抜けないけどな、と豪快に笑いペットボトルの飲料を飲み干した。
拭き残しらしいシャワーの水滴がつぅっ、と頬を流れている。
そうか。
原因となっていた子供達を、暴走状態のまま起こそうとしていないため地震も止まったのだ。




黄泉川「まー事件なんてあっちこっちで起こるけどな。拳を交えて説得してやるのも努めじゃんよ!」

本当に気分が良さそうだ。
問題を起こした学生が、「説得」の甲斐あって素直に改心でもしたか。
この教師は寝ても醒めても生徒ばかりを考えているらしい、道を踏み外した者がもう一度戻れるなら何よりの喜びだろう。

天井「では最近は特に面倒も無いんだな。こう、名門校でサバイバルゲームが流行ったりとか、手の掛かる噂も」

黄泉川「はぁ? サバゲーじゃん?」

思い切り怪訝に眉を顰められた。
だんだんと視線が呆れを帯びたものへと変わっていく。

黄泉川「……どっかの怪しい掲示板でも見たじゃん? 信頼性のあるソースなら教えて欲しいけど。
    知り合いの学生が危険な域にハマってるなら一発ぶん殴って止めるのが大人の義務だぞ?」

天井「違うわ! いや、金の掛かる趣味とかでネットの特集を見ただけだ。私の知人にそんなのは居ない」

一瞬迷彩服でエアガンを構える布束を想像してしまった。
……似合わん。

黄泉川「って、もし事実だとしても部外者に警備員の情報は流せないけどな。
    それに限っちゃあ本当にそんな流行はないじゃんよ。私の知る限りは」

天井「と、引き留めて悪かったな。また時間があるときにでも呑みに行こう」

ひょいとバッグを直す姿にそう掛ける。
今日はどちらも酔いたい気分、つまりもやついた物を抱えてはいないようだ。
別に何も無くとも晴れやかに呑めば良いのだが、それにしては二人のタイミングが合わなかった。

黄泉川「ん、また今度じゃん!」

元気に去っていく背中。
どことなく、トレーニングへの熱意が削がれてしまった。
回数、セット数は決まっているため気もそぞろに続けはするが。

天井(噂は、流れていない……)

それは、別のことに思考が向いたからだった。
唐突に黄泉川へと振った話題は、天井が参加した時の絶対能力進化実験を参照したものだ。
どんなに人目を封じても誰かの視界をよぎることはある。
またそれを誤魔化すための情報操作の結果でもある。

銃器を持った妹達の様子から、お嬢様学校の生徒――御坂美琴がスリリングな遊びに興じていると、噂が立ったことがあるのだ。

天井(つまり、屋外実験は始まっていないか。仮に入っていてもまだ初期段階だ)

騒々しいマシンの音、インストラクターの弾む声。
懸念事項は全てを吹き飛ばしていく。

つまり現在の絶対能力進化実験の進行状況は、クローン製造前から屋外実験が始まってすぐのどこか。
大きく絞れたとは言い難いが。
前回の場合も屋外実験に移行したのはもうしばらく後の時期だ。
少なくとも、記憶に比べ進みが大きく速いことはないようである。


・所用により今日はこれで
 やっぱり安価まで行けませんでした
 繋ぎ回的な感じでご容赦ください


>>230-232 リロって呆然とする簡単なお仕事
 天井「No use... → 布束「No use...
 で脳内補完よろしくです



・おぉ、板繋がってる
 ムービーシーンからお送りします


天頂近くから照射される光が強烈に影を落としている。
木々の根本にくっきりとうずくまった黒。
遠く望むグラウンドにはそれ以外の姿は無い。
涼しい廊下の窓から、天井は敷地の正門の方を眺めていた。

体育の授業で運動する生徒も見えないのは、今が期末考査中だからである。
試験の名目で行われる学内能力測定に向け近頃は開発にも力を割いたものだった。
しかしそれも全ては過去、後は結果を聞けばもう夏休みだ。
名の通り休めるのは学生ばかりだが。

天井「青髪君も夏休みか。……丁度良いかもしれないな」

生体信号を模した電流を、患部に直接打ち込む実験はなかなか手間取っていた。
能力者本人とは別の皮膚や脂肪を隔てているからか、狙った場所に発現するのが難しいのだ。
どうも、ずれが出てしまう。

肉体変化でも問題だった行使者と対象者の食い違い。
これを克服するため、再度青髪少年に協力を仰ぐつもりでいた。
電撃使いの少年――今は青年となった彼とは、何せ大学に進学してしまい活動時間が合わせ辛いのだ。

正直言って目先を変えたくもある。

天井「それに、上条君も」

別件だが、部活動に入らなかったらしい上条の予定が空きやすいのは僥倖である。
なぜなら――、

天井「来たか」

仰々しいゲートで一度止まった青い車体が、滑らかにロータリーを抜けた。
跳ね上げ式ドア、左ハンドルの高級車。
「重要な予備実験」のため木山春生が訪れる。




木山と二人、このために確保した広めの実験室で機器をいじる。
冥土帰しは知己である教授に挨拶してくると一時離脱していた。

木山「ふむ、ありがとう。迷惑は掛けないつもりだったのだが、どうしても精密な観測装置が必要だったんだ」

天井「気にするな。時々のことだしな、無理なら遠慮なくそう言っている」

先日に打診を受けたところによると、治療に際した予備実験の中でもターニングポイントに当たる実験、だそうである。
設備の使用予定や諸々を確認し、問題無さそうだったので長点で行うことにしたのだ。
機器周りの消耗品などの費用は木山持ち。
また筋ジストロフィーの治療研究を名目に行うことについては冥土帰しが上司に取り成してくれている。

天井「正常なAIM拡散力場から暴走状態への影響を探る。
   ……その割には、貴方と冥土帰し以外には連れてきていないようだが」

木山「正常側は機械再生だよ」

天井「それは不可能だと以前に言っていなかったか?」

部屋の真ん中には歯医者の治療台のようなゆったりとした椅子が設えられ。
取り囲むようにAIM出力装置や観測機器が幾つも並ぶ。
それらを制御するPCが載ったテーブルに、木山は軽く腰をもたれさせた。

木山「相互に共鳴させ続けて暴走の抑止まで持ち込むことは不可能だね。
   だが、暴走したAIM拡散力場が正常なものに影響され、落ち着く方向に変動することが確かめられれば良いんだ」

なるほど、理論が実現可能かどうかの焦点ではある。
彼女は傍にあった袋詰めの洗浄液を手に取りくるくると眺め回した。

天井「だが、暴走能力者など居ないではないか。ベッドごと生徒を運んで来たのか?」

木山「まさか。安全性がはっきりするまであの子達には行わないよ」

溜息を吐いて天井は丸椅子にどっかりと腰を下ろす。
側頭を拳で刺激してみる。
勿体ぶっているというより会話のテンポが違うだけだとは思いつつ、例によってまどろっこしい。

天井「では誰が――」

木山「私だが」

天井「…………何だって?」

木山「だから、私を一時的に暴走状態にして正常なAIMと干渉させるんだよ」

ふるり。
色白な手の中にある液体のパックが、不自然に揺れた気がした。




水流操作、無能力者。
それが木山の身体測定の結果だそうだ。

木山「紅茶にミルクも溶かせないような強度だよ。
   やはり固定観念に縛られた大人が、自分だけの現実を確立するのは難しいらしい」

まぁ好都合だがね、と彼女は呟いた。

効果範囲は触れたもののみ、一応容器越しでも大丈夫らしいが。
現象としては平らな水面に僅かなさざ波を立たせる程度。
それ以上の制御もできない。

冥土「まさか自分に開発を行うなんてね?
   僕としては反対だったんだが……なら生徒を実験台にするのかと詰め寄ってくるんだから」

結局止められず、木山が開発を終えて戻ってからは暴走状態を作り出す実験をしていたそうだ。
靴と白衣を脱いだ彼女は中央の椅子に身体を沈め、ヘッドホンのようなものを付けた。

天井「体晶でなくても暴走状態など誘発できるのか」

冥土「擬似的、かつ一時的なものだね? 発想はほぼ木山君のものだ。
   音楽を起点とした共感覚性を利用して、一種のノイズを脳に与えて能力を乱す――。
   安全性には配慮したから聞いている間しか暴走は起こらないよ?」

元が無能力だからだろう。
目を閉じて聴覚に委ねている木山の周りに異常現象は見られない。
ただ観測機に繋がれたモニタから、不規則なアラートが響いていた。

天井「重ね重ね無茶をする……。AIM発生装置の方はもう入れて良いのか」

冥土「あぁ、大丈夫だね?」

ぱち、と乾いた操作音。
眠るように横たわる木山は微かに首を傾げた。

木山「……ん…………ぅ」

苦しそうではない、が。
乱された状態のAIMにさらに外力が加わったのを、本人も感じているのだろうか。

冥土「――うん、良好だね? 記録は……自動的にされているか。よし、もう止めてくれるかい?」

機械音が、確かに少し安定したものに変化した気がする。
天井がスイッチを落とし、冥土帰しがヘッドホンを外すと、それさえも止んでしまった。

不意の沈黙。
衣擦れだけが空気を震わせる。

天井「……これだけか。簡単に成功したな」

木山「そんなものだよ。重要な転換点が、ちょっとした実験の中にあったりね」

疲労の滲む声で、薄く木山が笑った。

確かにそうかもしれなかった。
今までだって、行き詰まりを打破してきたのは大掛かりな研究装置ではない。
むしろ発想の転換と、それを実証するだけの小さな実験だった。




準備と撤退含め、二時間も掛からなかった。
少しだけ伸びた影を縫って、車の艶やかな青は遠ざかっていく。
紙カップを手に後輪を見送った。
木山の台詞に影響されたか、つい購入したのはアイスミルクティーである。

天井「ここまで漕ぎ付けた以上、夏休み中に決めるつもりだろうな」

手伝ってもらう上条の都合もある。
今回の結果に予備実験を重ね、なるべく早く覚醒に漕ぎ着けたいところだろう。

実際の治療では正常なAIM拡散力場として木山自身を使い、
様子を見ながら三、四日程度に分けて全員を目覚めさせたいとのことであった。

天井「最悪五日くらいは掛かるとして……。
   冥土帰しも何らかのカモフラージュを入れるだろうが、嗅ぎ回っていた連中は欺けるだろうか」

木山か冥土帰しに上条がどこかで合流し、治療の場へ。
それが、五回。
あまり知られてはいないが上条の特異性も併せ、どこかで目を付けられなければ良いのだが。

天井「居所を探っていた不確定人物、現況不明の木山幻生、最初期被験者と思しきテレスティーナ……」

予防線を張るにしても、かといってこちらの情報が増えてはいないのだ。
どうしたものか。

手にした紅茶を啜れば、かき混ぜるまでもなく甘ったるい、チープな飲料の味がした。


>>+3
何か木山の件でしたいことがあれば


・お待たせいたしました、本日もよろしくお願いします




天井「行動するにも判断材料が少ない。もっと調査するか」

とはいえ幻生やテレスティーナに関しては、天井の手の届く範囲では調べ尽くしたといって良い。
ここで焦って相手に手掛かりを晒しては逆効果だ。

そうなると、新たに情報を得られるのは。

天井「生徒達の方から……になるな」

彼らを探っていた何者かが居る、それが悪い方向に働くのを防ぎたい。
率直に対象から考えてみることにした。

居所を知りたがる、その意味はピンからキリまでである。
連絡を取りたい。
何かに利用したい。
一番危険な可能性としては、命を狙っている。

天井「いずれにせよ、その要因があるはずだ」

子供達の属性を一つずつ見直してみるか。
ともあれ、こんなところで立っていても仕方がない。
手にした紅茶風味飲料を干し、研究室に向かった。


「学園都市の能力者である」「数年前の時点で小学生だった」「置き去りである」。
――これらは流石に無視しても良いか。
能力者にしろ特定の年代にしろ、この街にはごまんと居る。
これらと接触したいとして、敢えて現在行方不明の人間をターゲットにする必要性が無い。

天井「強いて言えば……『外』にいる血縁者が探している可能性か」

置き去りとは親が学費の支払いを放棄した学生のことであり、
面会のために名乗り出などしたら未払い分を請求されてしまう。
子や孫などに会いたいが、金は払いたくないと考えれば――、

天井「いや、物理的なり電子的なり、ここに侵入する手間と危険を考えれば学費よりも高く付く」

頭を振り払い、形になり掛けた思考を横に置いた。


「小児用能力教材開発所付属小学校の生徒だった」。
――これも重要ではなさそうだ。
以前この学校について調査した時にも特筆すべきことがなかったように、木山が関わった実験の後も細々と存続している。

天井「書庫でサーチすれば、過去、現在共に他に所属生徒は居るはず」

たん、とキーを押すと、ずらりと名前が表に並んだ。


「木山春生の生徒である」。
――これは、微妙なところである。
彼女が教鞭を執った対象は例の子供達のみ、ゆえに彼らであるべき理由にはなる。

天井「木山に私怨でもあるか、取引材料として……?」

ただ実験以前の彼女の研究はそこまで突出したものではないから、後者は違うかもしれない。




「暴走能力者である」「体晶を用いた暴走実験の被験者である」。
――この二つは怪しい。
特殊な物質を投与され、恒久的な暴走状態に固定された能力者。
その希少性はある種の研究者には垂涎ものだろう。

天井「実験自体が伏せられたものだから、まず疑うべきは関係者か」

木原幻生を除き実験に参加した研究者、数人は居るはずだが調べは付いていない。
幻生を外したのは、主導した本人なら当時の被験者を探さなくとも、実験を再現できると考えたためである。
また広い意味ではテレスティーナも関係者か。

天井「まぁ人の口に戸は立てられない。裏の人間なら知っていてもおかしくはないか」

そうすると考慮する範囲が一気に広がってしまうのだが。


「多発していた地震の原因である」。
――これも、あり得る。
地震を止めようとしたか、兵器などに研究価値を見出したかは別として。

天井「素人目にも、頻度や揺れ方が普通ではなかったからな」

学生間に、抑制が必要なほど噂やらが飛び交うほどに。
研究者なら、それが暴走、共鳴したAIM拡散力場に端を発することや、
計測により原因となっている地点に思い当たっても不自然ではない。
災害関係と大雑把に検索しても、いくつかの研究所が見付かるほどである。


「一人は、春上衿衣の友人である」。
――あまり考慮する意味は無いか。
春上以外にでも、それぞれの生徒の友人などが探しているとしたら。
学園都市では学生でも調査などに長けた者は居るだろう。
それだけなら、見付かったとして直接的なリスクは低い。

天井「逆にその関係者の方が重要人物だとしたら?」

例えだが、高位能力者と生徒の誰かに繋がりがあり、アキレス腱として抑えられる可能性。
だがそれなら実験直後から確保されていたのではないだろうか。
天井は溜息と共に考えを保留に決めた。


最後。
「一人は、春上衿衣の能力が高く発揮される相手である」。
――どうだろう。

天井「特殊な状況下での能力の強化……そんなことを研究している者も居るだろう」

よく取り沙汰されるのは双子などだが、そういった件のサンプルとして春上共々欲しているかもしれない。
ただ書庫での春上の扱いがそこまで厳重でないのが反証要素だろうか。


……思い付くまま文字を並べたテキストエディタを前に、天井はぼきぼきと身体の骨を鳴らした。
調べたことといったら数回、書庫や他のデータベースで検索を掛けただけなのだが。
もう二時間以上過ぎている。

念のため木原幻生など既知のワードでも追検索したが、目ぼしいものは無かった。

天井「広い意味で、能力の暴走に目を付けられている色が濃いのだがなぁ」

どうにも分かり易い手掛かりは落ちていない。
はぁ、と息を吐き、自動販売機に向かうことにした。
口寂しい。
それに、先の安っぽい味がどうにも癖になってしまったようである。


>>+2
これを踏まえ、何か木山の件でしたいことがあれば


・情報集めというより状況確認になってしまいましたが
 二時間以上過ぎたのは>>1




天井「あー……」

何となく首から背にかけて突っ張っているような感触があり、腕を交互にぐりぐりと回す。
そうするうちに自動販売機の透明なドアの中ではカップに液体が満たされたようだ。

そもそも、ものを考えるのが本業で、調査は天井の得手ではない。
作業量以上に疲労を感じてしまっても致し方ないと思う。

天井(取り敢えず、次はMAR周りを見てみるか……)

テレスティーナ=木原=ライフライン。
彼女は幻生の実験の被験者であると同時に、災害対策部隊であるMARの長だ。
結び付けて考えるのは早計だが、テレスティーナを足掛かりにこれらについて調べるのも良いだろう。
特にMARは公的に活動している団体であり、情報源も多いはず。

だるさがへばり付く身体を宥め、踵を返す。
夏空はまだ青みを残しているがもう四時過ぎだ。
木山の実験に付き合ってから、ずるずるとそちらばかりに時間を使ってしまった。

天井「……はぁ」

いっそ、切り替えて今日は調べ物に集中しよう。
夕方に向かう静かな長点の敷地を見下ろし、天井はまた肩を回した。


>>+1
調査の成果
※コンマ判定  ★修正+10

  - 4:ファンブル
  5-49:失敗
 50-94:成功
 95- :クリティカル





第一に、少し思い違いをしていたことがあった。

天井「先進状況救助隊は、警備員の部署の一つだったのか」

組織されたのが比較的新しいこともあり、試験的に色々な部隊が作られるような類だと思っていた。
そのため幻生がテレスティーナに身分として与えたのかも、などと考えていたのだ。

天井「いや、警備員の一部とはいえその可能性は消えてはいないのだがな」

その場合木原幻生の影響力の大きさはどれほどか、ということになってしまうが。

基本的に教師の兼業で構成される警備員の例から外れ、研究者のテレスティーナが隊長を務めていること。
併設で独自の研究所を持っていること。
これらから推測するに、半外部の協力組織と呼んだ方が正確だろうか。

天井「活動内容は災害時の救助……」

幅広く地震や火災、ビルの倒壊などの際に力を発揮している。
犯罪、暴走といった能力者の鎮圧は範囲外だが、それで生じた二次災害には対応しているようだ。
瓦礫の撤去などを円滑に行うために、数は多くないが駆動鎧が活用されているとのこと。

設立は一昨年の秋。
第一位の暴走事件の時に耳にしなかったと思えば、まだ存在していなかったのだ。
もっともその直後に興されたのは、四ブロックが壊滅したあの事件で災害救助の重要性が訴えられたからかもしれない。

天井「ネット上での評判はそこそこ、といったところだな」

大まかにブログや掲示板などを読んだ限りでは、あまり悪い印象は受けない。
ある意味敵を作りやすい犯罪対策などと違い救助がメインでは当然かもしれない。
良くない噂や都市伝説も特に見当たらない。
強いて言えば……。

天井「ピンクの駆動鎧、ねぇ」

混乱した被災地に、目にも鮮やかな駆動鎧が颯爽と現れる。
またそれを操るのは凛々しいお姉さんである。
そんな与太話が多少流れている。

一人だけ派手なカラーリングの装備とは、まさか隊長だったりはすまいな。




天井「おぉ、確かに桃色のが居るな」

どこか覚えがあり、以前に見た動画を探し出してみれば、その通りの姿の駆動鎧が動き回っていた。
関連動画の幾つかにも同様である。

天井「…………ん? 少し、引っ掛かったような」

彼らの活動を収めた動画は見付けただけで十数本。

そのうち地震、置き去りの子供達が起こしたものだけに共通点がある。
微震のものも含めて、だ。

天井「どれも駆け付けるのが早い……。他の災害では、警備員や消防隊と同程度だというのに。
   あの一連の地震に関しては、必ず一般の警備員よりも先に活動している」

災害時には警備員の本隊よりMARが優先して配備されるようになった、という推測は成り立たない。
地震より後、第八学区の木の電柱が強風で倒れた事故ではかなり本隊が先んじているのだ。

そして。

天井「撮影のタイミングかもしれないが。
   他の映像では桃色の駆動鎧の登場率はまちまちなのに、地震の記録には必ず映っている」

偶発的に起こる通常の災害と異なり、AIM拡散力場を介して起こる地震は予測が立てやすいのだろう。
黄泉川によると、警備員の中でも原因解明を目指す人達が居るそうであるし。
地震自体を防げなくとも、直前に発生を察知して隊を動かすことはできるのかもしれない。

そう、納得できたはずだ。

その部隊を束ねるのが、木原幻生の孫であり、暴走実験の被験者であったりしなければ。


>>+2
黄泉川に、特に聞きたいことがあれば
※指定以外は天井が話の流れで聞きます
1つまで、複数書いてあった場合最初のを採ります


・今日はここまでに
 最近あまり進めないのですが、ちょっと暑くて朦朧としてるのでお許しください

 明日はネットが切れなければ普通に続けます
 土日は所用によりお休みです


・ここのところ1レスの行数を詰め込みがちなのですが、もう少し区切った方が良いでしょうか
 ご意見がありましたらお聞かせ頂ければ幸いです


乙 このくらいでいいと思うよ
安価なら下

最近起こる地震についてだけど、警備員よりも先進状況救助隊が現場に現れんのクソ速いですよね?
警備員の中でも原因解明を目指す人達が居るそうであるし、AIM拡散力場を介して起こる地震は予測が立てやすいのだろうとは思う。
地震自体を防げなくとも、直前に発生を察知して隊を動かすことはできるのかもしれない。現実100%それが出来てるし。
なら何故その方法を他の警備員等に教えないのか。
おかしくね?


>>256 ご意見ありがとうございます
 改行限界スレスレだったりするので気になっていたのです

 これからも読みやすさへのご指摘がありましたら遠慮なくお願いします


・連続取得について
 一応>>3 に書いていたのですが、場所も説明も分かりにくいかったと思います、申し訳ありません
 システムもちょっと面倒ですみませぬ……

 ちなみにコンマ安価には取った人の意図が反映されないため、
 連続かどうかの判断では無視して考える、というつもりでこのシステムにしています


再安価
>>+2
黄泉川に、特に聞きたいことがあれば
※指定以外は天井が話の流れで聞きます
1つまで、複数書いてあった場合最初のを採ります


>>257 支援


・再安価ありがとうございました
 説明の不十分さにより取り直しになってしまい申し訳なかったのですが、
 改めて>>265>>257 から続けます




ちりりん。
音の方を見上げると、引き戸に風鈴が括られていた。

板前「らーっしゃい!」

店主の快活な声が響く。
少しランクの高い居酒屋といった風情の店。
有名どころから聞いたこともないものまで、様々な一升瓶が通路沿いの棚に詰まっている。

天井「二人で」

板前「はいよ。カウンターとテーブル、どっちが良いです?」

天井「テーブルで……ボックス席があればそこが良いのだが」

従業員「はい、ご案内します」

騒々しすぎず、しかし変に気取ってもいない。
生魚が旨いというこの店を前々から主張し続け、初来店だが当たりの予感だ。

黄泉川「ありがとじゃん! 生、大ジョッキで」

天井「あー、私も生。中ジョッキで」

店員「かしこまりました!」

熱いおしぼりと入れ替わりにお決まりの注文。
面倒な指定にも関わらず壁に区切られた席に案内してくれた店員は、一礼して去っていった。

三方が白壁、残りが開けたごく小さなスペースの一つである。
奥側の壁には丸い飾り窓が付いている。

黄泉川「珍しいな、いっつもカウンターなのに」

天井「そんな気分だったんだよ」

黄泉川「何だ、男泣きでもする気じゃん?? 似合わないじゃんよ」

失礼な。
まぁ天井が沈んだ様子でないからこその軽口だろう。
落ち込んではいないが、内心真剣な天井はうるさい、と軽くいなした。

プロである店主はともかく、他の客と隣り合って話せる内容ではないのである。




黄泉川「よっしゃ、かんぱーい!!」

天井「乾杯」

ぐっぐっぐっ、満面の笑顔で、女教師の喉にビールが消えていく。
いつもながら清々しい呑みっぷりだ。
天井はほど良くジョッキを空け、お通しのゴボウを突いた。

天井「お、旨いぞ。これ」

黄泉川「ん? どれどれ」

沢山煮込んだのか、繊維が良い具合に柔らかくなっており、味も染みている。
ふわりと醤油ベースの匂いが鼻を抜ける。
当たり確定だ。

そういえば、訓練のせいか最近妙に分析的になっている気がする。
主に食事方面で。
美味しい、酒が進む、最近根菜をよく食べるな、など雑念が混ざっており、方向性を誤っている気はするが。
舌は順調に肥えているかもしれない。

天井「……いっつも幸せそうに呑むよな」

黄泉川「当然じゃん! 気持ち良く呑まなきゃ肝臓を満たすアルコールさんに失礼じゃんよ」

発想がおかしい。
いや、作った人や材料に感謝しろ、と同じと言えなくも……。

天井「なぁ。例えばビールの、何が美味しいのか考えたことはあるか?」

対面の教師は、はぁ? といった顔で首を傾げた。
そうして黄金色の炭酸水を怪訝そうに眺めている。
何となく気になって口に出してしまったが、良い気分を遮ってしまったか。

天井「あー、変なことを聞いて悪かった」

黄泉川「…………んむ。喉をさ、炭酸が流れ落ちてくのが良いじゃんね」

しばし考えた後、どこかしみじみと彼女は言う。

黄泉川「弾けて、ざぁぁぁっと。何ていうか、滝みたいじゃんよ。荒々しくて、涼しい、そういう爽快感じゃん」

ビールといえば、喉越し。
一般的な回答なのかもしれないが、心底好きなんだなぁと思わせる語り口だった。
再び、ぐいとジョッキを傾ける。

黄泉川「つーかどうしたんじゃん? 医療系から飲料開発に転向でもしたのか? 市場調査?」

天井「いや、何となくだよ」

黄泉川「まー良いじゃん。私のビールへの愛を聞いたんだ、オニーサンも語るじゃんよー」

つられてしんみりしている場合ではなかった。
まずい。
これは絡み酒モードだ。

ぎしりと頭をホールドされて、酒が回るまでの場繋ぎに不用意な話題を振ったことを少し後悔した。


・安価は次レスに、もうしばらくお待ちください



・口調、語順など弄りました
 大意は変わっていない……はず


――頃合だろうか。

黄泉川「だーかーらー! 頭でっかちの政治家が治安維持に口出すなってことじゃんよー!!
    こっちの捜査権限潰しやがって!!」

呑みに誘ったのはこちらである。
相手には切羽詰った鬱憤は無いはずなのだが、不満は常に溜まっているようで。
ぐだぐだに酔いの回った黄泉川は散々上層を扱き下ろしている。

全ての警備員が清廉潔白ではないのだから、現場が力を持ち過ぎるのも問題だろう。
そう思ったことは秘密である。

天井「また何か事件か。地震の調査だって終わっていないだろうに。……と、管轄が違うんだったか?」

黄泉川「今の担当案件は秘密ー。あれ、管轄がどうとか言ったじゃん?」

言った。
原因を調べているのは現場とは別、みたいなことを。
ボックスの外に漏れないよう声を潜める。

天井「あれも究明は進んでいるのだろう? 地震の時はいつも救助隊がすぐに駆け付けていたのだから。
   予測ができるなら原因にも届きそうなものだ」

黄泉川「んー……」

お猪口を握ったまま、黄泉川の首から上が四十五度くらい傾いだ。
微妙に焦点の合わない目で清酒の水面を見詰めている。
決定的なことを口にするのは踏ん切りが必要である。
天井はひりつく精神を押し殺した。

天井「あの地震は特殊だ。AIM拡散力場を介して起こる地震なら、予測して隊を動かしておくこともできるだろう。
   ――なあ。なぜ他の警備員はそれを知らされていない? 救助隊――MARは警備員の一部署のはずだが」

ゆらり、と。
酔った視線が彷徨いながらこちらを絡め取る。
あくまでぼんやりと――、

黄泉川「……どうしてAIMが原因だと知ってるのか、とは訊かないじゃん? あんたは学者先生だしね。
    どっかで感付いて、自分で測定して確証を得てもおかしくないじゃんよ」

一つ、隠すそぶりも無く認めた。
呂律は半ば回っていない。
しかしアルコールのもたらす激情が抜け落ちると、その言葉は普段より淡々としている。

黄泉川「どうしてそれを質問するのか。それだけ話してもらうじゃん」

泥のように濁った目が、濁ったままにぎらりと尖った。


>>+2
天井は……
※どう返答するか
(大まかな方針でも可、具体的な台詞の場合若干語調を弄るかもしれません)



・sage入れたままでした
 このレスに当たったら安価下扱いでおねがいします



どうして先進状況救助隊に興味を持ち、あまつさえ組織的に繋がりのある黄泉川にそれをぶつけるのか。

MAR及び隊長のテレスティーナに不信感を抱いているからである。
もし木山の生徒を探っている者と関連があるのなら、万が一彼らが害される前に予防策を打ちたい。
学生を守る、という理念は黄泉川とも共通のはずである。

だが、

天井「やり方が引っ掛かるからだ」

黄泉川「……ふむ」

木山が、きっと十人の生徒達のためだろう、あの記憶の中で幻想御手事件を起こしたように。
冥土帰しは粛々と患者の治療をするように。
そしてこの教師は警備員に所属し、過ちを犯した子供を殴り飛ばすように。

立場も方法も違うのだ。
少なくとも今は、手の内全ては明かさない。

天井「手柄を独占したいのか、『外』の警察の囮捜査ばりに身内にも伏せる意図があるのか……私には分からんが。
   緊急時の救助を担う部隊が人員を最大限に活用できないのは正常でないと思う。おかしいか」

視線の鈍い光は、どこか惑っている。
こちらに突き付けた切っ先の、遣り場を忘れてしまった風に。
責めるようで申し訳ないが黄泉川も何か思うところがあるのかもしれない。
天井は言葉を継ぐ。

天井「第七学区地震の時、私は中心地にいなかった。だから状況の悲惨さを直視してはいない。
   だが、例えば二年前の能力者暴走事件では私も避難したんだ。まだ中学生の同僚と一緒にな。
   酷い混乱だった。もっと――『きちんと』活動している災害対策部隊がその頃に居れば良かったと思う」

黄泉川「あんた……意外と熱血じゃんね? 普段は理詰めなのに」

体育会系を地で行く彼女ならその印象は好ましいものだと思う。
しかし言葉は酷く寂しく、呟くようにテーブルに落ちた。

黄泉川「…………悔しいじゃんよ。そうだ、あいつらには絶対何かある。でも突き止める方法が無いじゃん。
    同じ警備員の部隊相手じゃ強権なんて無いし、災害時はあっちが指揮系統になることだってある……」

いつもいつも、彼女が嘆いていることと同じだった。
天井がネット上のリソースで気付ける違和感なら、黄泉川も感じていたのだろう。
AIM拡散力場を原因としていることも既知のようだったし。

一介の警備員に絶対的な権限など無い。
地震が多発していた頃の苛立ちは、信用できない面子のせいでもあったのかもしれない。


>>+2
天井は……
※黄泉川への対応
(大まかな方針でも可、具体的な台詞の場合若干語調を弄るかもしれません)



・展開の都合、というか会話にする関係で語調をかなり弄ったのと、はしょったり地の文にしたり
 大意は変わっていない……はずですが、
 折角書いて頂いたのにそのまま使えず申し訳ありません


天井「方法が無い、か。そう悲観することもないと思うが」

黄泉川は顔を上げない。

天井「一介の警備員でも、もし次に地震があったらMARを見張ることはできるだろう」

黄泉川「仮定でも『次』なんて止めて欲しいじゃんよ! ……折角今は収まってるっていうのに。
    そうなったとしても、私だって救助に出動するじゃん。あいつらを睨んでる暇なんて――」

救助を盾に裏のありそうなMARは勿論、人身を傷付ける災害とて憎いか。
機会として「次」を提示したところにだけ、応えに力があった。
分かっている。
そもそも木山達の治療が順調に進むなら、次の地震など無い。

天井「なら今までの彼らがどう動いているかを詳しく見てみるんだ」

黄泉川「――っ、やったじゃんよ。別に私だって手をこまねいてた訳じゃない。それでも尻尾が掴めないじゃんよ!」

どんっ! と。
畳を打ち抑えた声で吼える。
ぎりりと奥歯を削っている。

天井「……悪かった。しかし、最後まで聞いてくれないか。
   お前が言うように私は現場を知らない学者先生だが、だからこそ違う視点もあるはずだ。
   大したことは言えなくとも何か思い付く切っ掛けになるかもしれない」

黄泉川「……、そこまでは、別に馬鹿にしたつもりで、言ったんじゃないじゃんよ…………」

噴き出した溶岩のような激情は、ぐるぐると荒れ狂いながらまだ彼女の中に留まっているようだった。

ちら、と小さな動作で水を頼む。
若い店員はわたわたとカウンターの奥に駆けて行った。




黄泉川「……良いじゃんよ、落ち着いた。話してみるじゃん」

天井「あぁ」

怒りの限界を一度振り切り、据わった目の黄泉川が促す。
前に垂れていた長髪をぐいと払った。

テレスティーナ率いる先進状況救助隊が、目立った動きを見せているのはあの地震関係のみ。
それは何を目的としているのか。
特に、警備員の到着を遅らせる理由があるのか。
MARの側に立ってみれば、探るべきはそこにある。

天井「……本部や付属の研究施設の監視カメラなどを、理由を付けてチェックすることは?」

黄泉川「九割方、厳しいな。さっきも言ったがこっちには優越権は無いじゃんよ。
    全く無理ではないけど、何か確証を得た後の詰めとしてじゃなきゃキツいじゃん」

MARは部署でありながら、一つの組織だ。
なるほど、捜査などの理由を付けても向こうで確認すると突っぱねられてしまうか。

天井「地震発生前に動き出していることを確定できれば良かったのだがな」

黄泉川「……それは確定済みじゃん」

それだけ断定的に告げて、彼女は冷水を口にした。
目を細め、ふいと視線を外している。

天井「分かった」

あまり外に漏らすべきでない根拠か。
出動記録やそういったものから逆算したのだろうか。
そんな物があるかは知らないが、公的機関はその辺りの書類が細かそうである。

天井「本部そのものが無理なら現場の動画や付近の防犯カメラの映像はどうだ」

黄泉川「一応ある程度目は通したじゃん。……気を付けるポイントとかはあるか?」

天井「……目的の分析。わざと警備員に先立って現場に到着しているなら、MARだけで何かしたいのかもしれない。
   これは例だが――」

単に手柄を立てたいなら、なるべく多くの負傷者を搬送しようとする。
救助を急いでいるのと見分けが付け辛いが。

囮捜査……は極端だが、例えば地震の「犯人」を想定して怪しい動きをしている者を探すなら、
作業しながらも周囲を窺っている。




天井「もしくは救助にかこつけて他の事をしているか。データ収集とかな」

あるいは物体的なサンプルの採取や、その場に居た被害者を選別しようとしているのかもしれないが。

言葉を咀嚼するように、黄泉川は目をきつく閉じた。
眉間に皺を寄せながら首を捻っている。

黄泉川「……AIMを測ったりはするじゃん? 原因を探るために」

天井「調査や予測用以外にデータを取って、別の研究に流用している可能性もある。穿った見方だがな。
   考えてもみろ、能力者が発するAIM拡散力場がこれだけの災害を引き起こすのだぞ?」

あの生徒達が下手な連中に確保されたら、一体何をされるか。
酷な考えかもしれない。
だが学生を一種の研究対象とする側の視点は、きっと真っ直ぐな教師には馴染みが無い。

黄泉川「………………」

黄泉川は何も言わなかった。
微動だにしない。
ただ硬質に引き結んだ唇だけが微かに震えた。

天井「それに万が一原因を分かっていて放置していたなら、都市の住人を危機に晒す人体実験のようなものだ。
   逮捕したりはできないか」

黄泉川「ブタ箱にぶち込めるかは微妙じゃん。主導か放置か、他にも色々絡むから。
    けど社会的な制裁はかましてやれるじゃんね」

低い声音は対面しているだけで鳩尾を圧迫される錯覚がある。
じり、彼女の目の奥に熱が篭っていた。
どろりと灼けるマグマのように。

天井「AIMに関してなら知り合いに専門家が居るから、なんなら紹介する。
   捜査協力という形で聞いてみれば良い」

黄泉川「あそこの隊長自身がAIMの研究者だからな。データを持ち出すのは難しそうじゃん。
    でもできるところから手を付けてやる」

子供を弄ぶ者の影は、正義感の強い黄泉川を確かに奮起したようだ。

天井「そうか、なら名前だけ――」

黄泉川「待つじゃん」

――あぁ。
だがその矛先は今、こちらを向いている。

黄泉川「もう一度……いや、質問を変えるじゃん。お前は何をしたい?
    怠慢な救助隊を咎めたいだけにしては熱が入っている。陰謀を暴きたい、というのも違う感じじゃん。
    なぁ。何が目的なんだ?」


>>+2
天井は……
※どう返答するか
(大まかな方針でも可、具体的な台詞の場合若干語調を弄るかもしれません)




何を誤魔化しても暴かれるような気がした。
黄泉川という名の、対面した姿に縛られてどこにも逃げられなかった。

テレスティーナの所業を突き止める、何のために?

木山か。
顔も見ぬ子供達か。
友を呼ぶ春上か。
形の無い倫理か。

天井「――私は」

それらの、理由かもしれない切れ端を検討する前に。
するりと文章が滑り落ちていた。

天井「日の当たるところで、生きていきたい」

黄泉川「……日の、当たる…………?」

僅か瞬きの前の迫力も忘れ、彼女はぽかんとしている。
会話から飛躍した一文に拍子抜けでもしたように。

天井「あ……いや、」

口にしたその時にも、まだ意味を理解し切れない。
思考の間隙から抜け出した言葉。

黄泉川「まっとうに生きたいってことじゃん? それでこんな面倒に関わるのか?」

天井「そうじゃない。警備員のお前とはまた違う方向性だが、研究者などやっていると色々が目にするのだ。
   裏側、だな。それを――」

それらを、


それらを?



★目的の変更判定

ぽろっとそんな台詞を零した天井は心境が変化しているのかもしれません

>>+1
目的の変更先
 a. 正義
 b. 平和
 c. 真実
 d. 保身(初期とは別内容)
※上記以外でも行動に沿ったものなら

>>+2
コンマ判定
 -19:上記で決まった目的に変更
20- :変更無し




天井「……私は、直視したくないだけなのかもしれない。
   だが、手の届くかもしれないところにあるそれらを、どうにかしたいと思うのは間違っているか」

どこか違う。
上手く説明にならない。
舌に乗った時は間違いなく形になっていたのに、今は輪郭もあやふやで、空回る思考に混ざっていってしまう。

黄泉川「……嫌な可能性に気付いてしまって、それを取り除きたかったじゃん?」

天井は苦しげに首を振る。
非合法なことを視界に入れたくないのなら、目を閉じれば良かったのではないか?
要求が無くなった時点で木山と縁を切れば?

何故、できることを探したのだろうか。

天井「言葉にできない。どうしても――」

黄泉川「お前は、」

再び、硬さを帯びた声。
だが責めるようでもない。
掴み損ねたものを追い迷走している天井を引き戻すような響きだ。

黄泉川「始めはMARが職務を果たしていないっていう義憤だったか、
    地震で知り合いが怪我したとか他に理由があるか、それは置いとくじゃん」

ただ静かに、厳格に。

黄泉川「お前は、テレスティーナが研究とかのために子供を利用するとしたら、防ぎたいと思うんだな?」

天井「あぁ」

それは迷わない。
黄泉川とこんな話をした直接の目的は、木山の生徒の安全のためなのだから。
裏への恐れや自身へ注がれる心配を全て投げ打つことはできないけれども。

黄泉川「……なら追求は止めといてやるじゃん。私もね、かなりヤバい研究所を攻撃したことがある。
    お前はああいう連中のきな臭い感じはしない。後ろ暗い目的じゃない、ってことで保留にしとくじゃん」

天井「恩に着る」

それっきり、黙ったままで互いに酒を掲げた。
どちらともなく触れた器は、ちん、と軽い音を立てる。

手札を伏せあった上での合意は信頼というより妥協なのかもしれないが。
釣り合った一点を液体に留め、二人は静かに飲み干した。


・目的変更無し(「貢献」自らの研究を医療分野に役立てる)
 口に出したものは、未だもやっとしているようです

・目的の変更判定について
 以降、「平和」の追求を優先する行動時に同様の判定が入ることがあります
 変更の確率は判定の度に上昇します(最大80%)

 しばらく「平和」を追求する行動を行わないと、目的の変更先はクリアされます
 また、「貢献」とも「平和」とも違う方向性の行動を取った場合、再度変更先を安価します




タクシーの運転手に金を払い、エレベーターで階を上り。
金属ドアの向こうのベッドに横たわれば、天井は一人だった。


もやもやと、思考を遮る霧がまだ残っている。
それでも端からどこかに消えていき、捉えることはできないのだと妙に実感する。

非道な実験の犠牲になった子供達を救いたい。
なるほど、立派な意見だ。
だが、過去には保身のために奔走した自身が何故そんなことを望むのか。

「今」は裏に関わっていないのだから、罪悪感とも違う気がする。
ただ過去と現在との相違点が、違和感としてずっとこびりついている。

そう知った。


天井「いやいや、時間が無いんだ。考えるべきことは他にある」

もう数日で夏季休暇である。
木山達が夏休み中の決着を期するとして、治療を複数回に分けることを考えれば初回は八月中旬頃か。
今から一ヶ月ほど……もっと早い可能性もある。
多少なら押し留められても、差し迫った危険を説明でもしない限り木山が焦れてしまうことも否定できない。

天井「テレスティーナは黄泉川の方でも追ってくれるだろう。機密は教えてくれないだろうが……」

差し障りの無い範囲なら訊けるだろう、多分。
またMARを怪しんでいる警備員とコンタクトを取ったことは一応木山達に伝えておこうと思う。

黄泉川との会話を吟味するに、MARは地震を軸に動いている可能性が高そうだ。
テレスティーナやMARの一員が生徒達を探っていた者と同一なら、地震の原因として求めているのか。
そうすると、上条から辿って所在を特定されることより、移送の方が危険かもしれない。
覚醒の手順上、一人を隔離できる施設への移動は必須なのだが。


>>+3
木山の件について、何かしたいことがあれば
※1つまで、複数書いてあった場合最初のを採ります

【後○回自由安価、とは設定しませんが、時間に限りがあります】


・恥ずかしながら誤字修正
 >>269 >>273 の黄泉川の台詞中、黄泉川→天井の二人称
 × あんた
 ○ お前

・今日は以上です、お付き合いありがとうございます
 明日、明後日は私用にてお休みです

・ちょっと来週以降、来れる頻度が下がります
 週三回はキープしたい所存ですので、これからもご参加頂けると嬉しいです



・こんばんは、連絡のみです
 明日は用事がありお休み、明後日(火曜)の再開とさせていただきます

 曜日不定で週三回くらいの更新になると思われますが、可能な限り前日までにアナウンスいたします
 ご了承ください

 明後日はよろしくお願いします


・大変おそようございました、今日もよろしくお願いします
 安価は次々レスで


一先ず黄泉川に言ったような内容を、木山達にも伝えよう。
その上で生徒達の移送が必要かと現時点での計画を確認しておこうか。

翌日もテスト期間である。
開発担当をしているとはいえクラスを持たない天井は、学期末のこの時期はそこそこ余裕がある。
夏季休暇中の課題も組み終わっているため表向き業務は研究しかない。
当然そちらも進めるべきだが、この状況では治療の件に比重を置くのもやむなしか。

PCの画面端にぽこんとバルーンが浮かぶ。
木山からで、電話して大丈夫かと送ったメールに対し、簡潔な了承の返信だった。
携帯電話から彼女の番号を呼び出す。

木山『もしもし。何かあったのか』

一コールもしない内、ぷつ、と回線が繋がった。
急用じみた連絡の取り方だったため向こうは心配しているようだ。

天井「いや、緊急事態ではない。以前話したテレスティーナについての続報と、治療の際の手順を確認したかっただけだ」

木山『そちらで何か分かったか。こちらの調査は芳しくなかったところだ、ありがとう。
   覚醒の為の大詰めに掛かり切りだからね』

時間があれば共鳴による暴走の沈静化について実験を繰り返しているのだろう。
被験者も兼ねている木山には最低限の休養も必要そうであるし。

生徒達が原因となっていた地震の時だけ先進状況救助隊の動きが不審であること、
それを感じていた警備員の知り合いが現在MARとテレスティーナについて調査していること。
その辺りを簡潔に告げた。

天井「それと、可能性は低いが警備員の方から貴方にデータの検証依頼があるかもしれない。
   勝手だが、AIMの専門家として名前だけ紹介させてもらった」

その場合、作業自体は増えてしまうが、公式にテレスティーナの調査に噛めるなら悪い話ではないはずだ。
天井が拾った動画データなどと合わせ黄泉川にメールで送っておいたのだ。




木山『ふむ、それは構わない。もう一つの、治療の手順というのは?』

天井「治療自体より、準備段階の方だ。結局現在の施設から移送は必要なのか?」

木山『あぁ……。今子供達が居るのはごく小さなところでね。団体の病室がいくつかだけあるような場所なんだ。
   治療は数日に分けて行うが、その日治療する子達だけ機密性の高い個室のある施設にそれぞれ移す予定だ』

移動は必須か。

訊いてみると、今の施設に移動した際は冥土帰しの伝手でそれぞれ幾つかの病院を経由して集めたらしい。
元々ばらばらなところに居たため目立ち辛かったのだろうか。
それでも、その時点から目を付けられていたなら露見しそうなものだ。

天井「待て、居所を探られた形跡があるのはいつ頃だったんだ?」

木山『あの大きい地震の直後だよ。貴方が精神感応者の情報を持ってきてくれた頃だ』

すると、あれを切っ掛けに相手も本格的に動き出したのかもしれない。
もっと以前から泳がされていた可能性もあるが、それなら地震後すぐに確保されていてもおかしくない。

木山『移送は治療の状況にもよるが、一日に二人から四人の予定かな。
   冥土帰しのところの病院車で一度に運ぶことも考えたが、流石に人目を引く。
   機材運搬用に偽装したワゴン車か小型バスくらいの車両を使うことになるだろうね』

誰かがこちらを注視しているかもしれない状況ではそれでも不安である。
しかも三、四回同じことをするのだ。

天井「……上条君との合流は?」

木山『検査でも何でもでっち上げて、冥土帰しの病院に呼ぶ。そこからこっそり同乗してもらえば良いだろう』

当然、でっち上げとは対外的なもので、本人にはあらかじめ話を通しておく訳だ。
やはり上条より、生徒達の移動段階が危険そうである。
木山や冥土帰しも随時方法は考えるだろうが、こちらでも色々検討してみるか。

天井「分かった。念を押すが、上条君への連絡の関係もある。少なくとも二週間前には教えてくれよ」

木山「あぁ。いつも助かるよ」

彼女の声には張りがあるが、同時に疲れも纏わせている。
あまりにも用件しか話していないなと内心苦笑しながら、天井は通話を打ち切った。


子供は全員で何人なんだ…?


>>301 ちらっとしか書いてなかったですが、十人です


子供とはいえ人間が複数。
どうしても大掛かりになってしまうのは仕方ない。
とはいえ心許ないのも事実だ。

天井「人物xがMAR関係者だと確定すれば、やりようも……いや」

咄嗟に浮かんだ、別に騒ぎを起こしてそちらに救助隊を引き付ける、などという発想を放り投げる。
それではこちらが犯罪者だ。
また立て続けに不審なことが起こったら、何か隠したいことがあると言っているようなものである。

黄泉川の調査で上手く埃が出たら押さえてくれる可能性もあるが、それを当てにして動くのは不安定に過ぎる。
MARは生徒達を探っていた人物とは無関係の可能性もあるのだ。

天井「いかに自然に運ぶか、か」

研究室の窓から敷地内の駐車場を見下ろした。
教員や研究員の私用車や、長点所有の運搬用車両が整然と並んでいる。

一般の道路ではなく裏路地の類を辿るのは逆に目立ちそうだ。
大型の車両にも種類があり、例えば軽食の移動販売車などなら患者を乗せているとは思われないだろう。
だがそんな車が医療施設に横付けになっていたら異様なこと請け合いである。

モノレールやバスといった他の交通機関を利用することも一瞬考えたが、
担架などに乗せ上手く偽装したとしても三人だけで複数の子供は運べないだろう。
天井も運転はできる、三台の一般乗用車に分けて運ぶのは一つの案だ、が。

天井「人の出入りが少ない施設に突然車が押し掛けるのも変だろうか?」

出発点が木山の研究所なり冥土帰しの病院なり、どうしても経る手順というものがある。
即ち、現在生徒が居る施設にて移動手段に彼らを乗せ、目的の施設で下ろす。

天井「能力者の街とはいえ施設間を空間移動で、とはいかんしなぁ」

そういった能力者は総数が少ない。
それに昔のSF小説で描かれた所謂「テレポート」よりも、実際の能力は意外に飛距離が短いのだった。
基準として本人の身体やそれに準ずる質量を転移できる者が大能力者にランク付けされるが、
その中でも平均して一〇〇メートルに届くかどうか。

ものの試しに書庫を検索しても、アポートなど空間移動系全般、強度で絞り込みを行わずに五十数人。

天井「…………ん? なんだこの値は。データのミスではあるまいな」

かちかちと流し読んでいた能力の記述。
その中に、異常とも思われる学生が一人、居た。




能力名、座標移動。
強度は大能力。
一般的な空間移動が行使者本人、及び接触した物体を転移させるのに対し、離れた地点Aから地点Bへの移動が可能な能力。
原点を介さない転移は柔軟性に富むだろう。

そして。

天井「最大飛距離七〇〇メートル以上、重量三〇〇〇キロ程度……」

繰り返しになるが、一般に高位の空間移動能力者でも一〇〇メートル、また数百キログラムが良いところだ。
数値が誤りでないなら大能力者の枠に収まっていることさえ不思議である。
顕微鏡レベルでの精密性が無い限り、工業価値は超能力者に並ばないということだろうか。
しかし一般的なスケールでは精度も高水準を保っているようだ。

天井「何かの間違いではないのか。事実だとしたら……桁違いの能力者も居るものだな」

特異かつ最高峰の第一位や発電系能力の頂点である第三位を天井は知っているとはいえ、
あまりに他の空間移動能力者から飛び抜けているのはインパクトがあった。

その能力に相応しく名門中学校の一角に在校。
本人の名は、結標淡希。

天井「――これだけの有効射程なら、離れたところから乗降車させることもできるか……?」

あわよくば、停めておいた複数の車などを経由して更に足取りを眩ませられるかもしれない。
また空間移動系の能力は転移させた物体が行き先の物体を押しのけるように移動する。
つまり、カプセル様の保護機ごと転移すれば、最悪失敗しても壊れるのは車の方だ。

有効そうな手だった。
幾つかの問題を無視して良いなら、だが。

天井「当然、面識など無いからな。普段から実験やらに協力しているのかも分からん」

伝手が無いこと、依頼を受けてもらえるか分からないこと。
自身の生徒に研究協力を頼んだ時や、電撃使いの開発という共通項で御坂と繋ぎを取った時よりも難しそうだ。

他にも、事情をどこまで話すのかということ。
歳若い学生だからこそ冥土帰しの顔も効かないだろう。
状況だけ見れば辺りを憚るように、まるで木山達の方が違法な人体実験をしようとしているとも取れる。
良からぬ連中に狙われていると言って信用が得られるだろうか。
それにこの少女自身、口は堅いだろうか。

天井「うむ……。能力を見ればまさに活路だが」

拳で、こつこつと側頭を叩く。
こつこつと、そうしている間にも時間は刻まれていく。
天井は並ぶデータを睨んだ。


>>+2
どうするか




天井「……先に方法だけ考えてみるか」

ふぅっと息を吐いて手を組んだ。
青髪少年の口利きで上条と会ったのと違い、この結標という少女と天井達の間には中継点が無い。
無い以上はこちらで作らねばならない訳だ。

天井「一度使った手だが、研究上での実験協力を捻り出すか」

一方通行を木山と会わせる為にしたことと同じ。
研究者が能力者にコンタクトする手段としてはスタンダードだし、連絡先についても最悪向こうの学校を通せば良い。
しかし、万能な第一位の場合に比べそれらしき名目を考えるのが難しそうである。

天井「複雑な演算を要する空間移動自体は私の研究、筋ジストロフィー患者の身体制御と噛み合わせが悪い……。
   実験環境にこじつけるなら『落下時など不自由な状態での制御実験』とか、そんなところだろうか」

離れた地点同士で転移させられる能力なら、設備の整った実験室内で延々落下状態を作ることができる。
とかなんとか。
若干無理はあるが、この案を使うことになったらまた考えるとしよう。

天井「もしくは、初めから依頼のために面会するかだが」

第一位の時は彼が長点に籍を置き、また居所も不明だったためあのような手順を踏んだ。
今回の場合なら直接会いに行くことも可能である。

その際は長点上機学園の研究者ではなく冥土帰しの協力者として名乗るのが良いだろう。
善良な名医としての名が知れていなくとも、きちんとした医療機関に勤務する医者というだけである程度信憑性はある。

あるいは御坂のようにメールから入るか。
あの時は御坂の学校が一律のメールアカウントを生徒に付与していたからできたことである。
結標に対して同じ方法を使えるかはきちんと調べてみないと分からなかった。

天井「それと、依頼の交渉に関してはあらかじめ木山達と相談しなければな」

どの程度事情を話すかという匙加減は、天井が勝手に決めて良いとも思えない。
少し話しただけで受けてくれた上条のような相手なら問題はないのだが。
互いを見極めるという意味で、当事者の木山と直接会わせる必要もあるかもしれない。

――こんなところだろうか。
いずれにせよ全く縁もゆかりも無い相手への連絡である。
方法にもよるが、依頼が上手くいくかに関わらず少し時間は掛かるだろう。


>>+2
どうするか



>>+2
接触の方法はどうしよう?



肘を突いて物思いに沈んでいた天井は、おもむろに頭を振った。
ぱさ、とサイドの髪が頬に掛かる。
最近気を取られることが多く若干伸びていた、この件が片付いたら散髪に行こう。

天井「依頼をどうするかは考えていても仕方がないな。まず会ってみなければ性格も分からん」

本題の前段階として、やはり研究の方面から攻めることにする。
初めから移送のことを持ち出すのは早急だと思ったのだ。

後は連絡先だが……。

天井「まずは直接メールできないか調べてみるか」

御坂の時は学校アドレスの存在が出てきたため、それを使用できた。
結標に繋がる情報が見付かると良いのだが。
何しろ今は時間があまり無い。
ざっと洗って発見できなければ次の方法を考えた方が良いかもしれない。


>>+1
調査の成果
※コンマ判定  ★修正+20

  - 4:ファンブル
  5-49:失敗
 50-94:成功
 95- :クリティカル




・起きてますよー


天井「ふむ。この学校もアドレスを学生に付与しているようだが……」

校名などそれらしい英単語を幾つか検索してみると、同じようなアドレスが引っ掛かる。
御坂の学校と同様、生徒番号を用いたものだ。
このようなシステムを採っている学校組織は多いのかもしれない、が。

天井「弱ったな、任意で変更できるようになっているのか」

生徒番号と@以下のドメインだけのアドレスも散見されるが、そうでないものもある。
どうも、英数字と番号を組み合わせた形にできるようだ。
確かに番号をそのまま使う方式では、天井のように知人以外からも容易にメールが送れてしまう。

祈るような気持ちで、結標の生徒番号を当て嵌めたアドレスの後半だけで検索。
と、

天井「これは……」

それらしきサイト名を、天井はクリックした。




☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆

 ◎テストー!!!(3日目)
                7月17日 20:37


 やっと3日目だし……(;´▽`A

 しかも苦手な古文があってサイアク(*・ε・*)

 能力でカンニングするのOKな学校って多いケド、

 わたしのトコ厳しいんだよねー(〃´o`)=3

 やるならバレないようにやれとか。。。

 先生が言うことかッ(ノ-_-)ノ ~┻━┻・..。;・'

 しないけどさ(笑

 あーーーー、絶対80点切ったわ古文( ̄□ ̄;)


 ムカつくしS田のヅラ飛ばしてやろーかしら。。。


☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆

 〈4件のコメント〉


 ○● さんより        7月17日 21:02

  カンニングなんて能力向上のためでも
  褒められたことではありませんの
  あわきんさんは潔白な方ですのね


 あわきん より        7月17日 22:35

  > ○●さん
  コメントありがとうvV

  潔白って(笑
  だって教室にAIM測定器あるんだもん。。。
  カンニングさせる気ナイよね先生(≧ヘ≦)

  ところで○●さんって何て読むのー??


    :
    :
    :


☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆

 ◎Profile

  名前:あわきん

  性別:♀

  年齢:中2

  能力:ひみつ

  連絡:awa2kin-s0120164★mail.~
  (★を@に変えてね!)


☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆




何だか連絡一つに手を尽くしている自身が哀しくなった。
画面にはセンスは良いデザインの、しかし派手な色彩が踊っている。

学校からのアドレスを事も無げに公開しているが、
無料アドレスより迷惑メールフィルタが充実しており逆に安心だからだろうか。
学校のサーバに掛かる負担を考慮してあげてほしいものだ。

天井「……まぁ、高位能力者とはいえ中学生だ」

とはいえ、使い手が幼かろうと彼らの能力が強大であることを、天井は知っている。
子供だからといって必ずしも純真ではなく、大人などより深みにあることもある、そういうことを。
特に空間移動系など直接的な殺傷力になり得る。
年齢相応の面を見たからといって、一つも油断する訳にはいかないのだが。

天井「しかし……どうもな」

これまでも調査の過程で掲示板やブログを見ることはあった。
今に限って妙な気分になるのは、これを書いたのが飛び抜けた力を持つ大能力者だと前提知識があるからだろうか。

記憶の中、後ろ暗い場所に身を置く学生のことも、ちらりと目にしたことがある。
あるいは路地裏にたむろするスキルアウトも。
もしかしたらあの第一位さえも。
どこか、どうしようもなく子供な部分を持っているのかもしれない。


>>+2
実験の名目は「落下時など不自由な状態での制御実験」で良いかどうか
(変えたい場合、できれば案も)


・しかし寝るます
 というところで今日はこれまでに
 安価などご参加ありがとうございました


・週3日ペースとか言いつつ、ちょっと所用により土日から纏まったお休みを取ります
 具体的にはバイト探し
 期間等詳細は後ほどご連絡します


・前レスの名前欄は

 Oo。 あわきん's Blog 。oO

 でした
 ちゃんと出てなくて泣きそう



・こんにちは、今日も進めます
 安価待ってご飯食べてから書くので3~4時台になるかもしれませぬ


・紛らわしい仕組みで申し訳ありません >>連続判定
 一言にしますと「コンマは安価に含めない」です

 また>>1 自身そこまで厳密にチェックしていた訳ではないので、
 過去を辿ると連続が通っているのも見つけたのですが、遡って修正はしません
 (今から変えてしまうと話に齟齬が出て破綻する恐れがあるためです、ご了承ください)

 もう少し気を付けて確認するようにいたします


再安価
>>+2
実験の名目は「落下時など不自由な状態での制御実験」で良いかどうか
(変えたい場合、できれば案も)


それで良い


・酉間違えました恥ずかしい

・再安価ありがとうございます
 >>344 から続きとまいります



うむ、それにしても、もう少しもっともらしい題目は無いだろうか。
そうしてしばらく考え込んでいたものの妙案も浮かばない。
椅子の背を倒し、普段はあまり使わないボールペンをくるくる回していた天井は、諦めて身体を起こした。

天井「ここで時間を浪費している訳にもいかないか。会う切っ掛けになれば良いと割り切ることとしよう」

かちり。
起動したメーラーソフト、新規編集の真っ白な画面を睨む。
送信元は長点で使っているメールアドレスだ。
Iの字のカーソルだけが数回瞬き、天井はキーボードに指を乗せた。

向こうからすれば全くの他人から突然メールが送られてくることになる。
多少の警戒は仕方ないにせよ、なるべくそれを軽減せねば。

天井「長点上機学園付属施設の名簿と……昔発表した論文が収録されているデータベース……」

最低限、身分とまともな研究をしていることを示すために幾つかサイトを付記する。
スパムメールと間違われないよう、URLを直接記述するのではなくサイト名だけに留めた。
こちらから提示しなくとも向こうが勝手に調べるであろうが念のためである。

簡潔な挨拶、協力を請いたい実験の概要。
まずは会って話せないかという旨。
それに、身元証明のためのサイトなど数行。

天井「研究上は、駄目でも問題無いとはいえ……。あちらの件の切り札になるかもしれない相手だ、上手くやりたいな」

うっかり覗き見たブログの内容によれば、昨日、十七日が考査の三日目ということだった。
教科数によっては今日もテスト期間かもしれないが、メールを読むのは終了後だろうから送っても大丈夫だろう。
終業式のある明日にもテストを行う可能性は少ない。

たん、と軽い音と共に、一通のメールは電子の網に放り出されていく。
後は待つだけだ。
椅子を回して視線を遠くに遣り、天井は一時的に研究の方へと思考を切り替えた。


夕方、やっと夏の日が落ち掛かる時分に数度の遣り取りをし、何とか会ってみるところまで漕ぎ付けた。
名門校の生徒らしい整った文面からは不審も信用もまだ読み取れない。
相手にとっても、休みで予定が空くし話だけでも訊くかという雰囲気だ。

天井「何となく澄ましたようなイメージはあるな。そういう年頃か?」

大人びたメールは単にブログでの口調とギャップがあるからそう感じるのかもしれない。

向こうが候補を挙げ、こちらが選んだ日時は二十日の午後、五時から長くとも七時まで。
つまり明後日だ。
状況の進行としては良いペースだろう。
願わくは、面会の内容も実を結べば良いが。

茜色が鈍っていく外気を背に、深く息を吸った。


>>+2
明後日の対面時にどんなメンバーで会うか
※天井は参加
(連れていけるのは研究関連で妥当な人のみ、複数可、天井の単騎可)




結標の通う学校は長点と同じく第十八学区にある。
学校のサイトをチェックすると学生寮も同学区のようだった。

面会場所については色々悩み、半個室の席がある落ち着いた喫茶店を予約してある。
布束のレビューを参考に堅苦しくも馴れ馴れしくもならないよう選んだつもりだが、正解かは分からない。
事前に下見した限りでは成人女性をターゲットにした風情で、同行した布束によると所謂「綺麗め」だとか。
その割には浮ついた空気が無く天井にも居易かった。

そういう訳で約束の日の夕方である。
といっても空は未だ水色を保ち、まさに学業から開放されたばかりの学生達がそこここに歩く。
余った区画を整備しただけのような何も無い小さな公園の前に天井は立っていた。

天井「暑い……」

日陰に居り、時間的にも涼しくなる一方といっても暑いものは暑い。
持参した鞄から重要度の低いファイルを取り出しばさばさと扇いで待つ。

多方面から風流さが足りないなどと言われそうだが、団扇か扇子でも用意するべきなのか。
暑いなら脱げば良いという極端な人物を知っているだけにその辺が疎くなって困る。
今日はあくまで研究の話題から入るということで連れて来なかったが、彼女は今も冷房の効いた実験室に居るだろうか。

植木で区切られた地面を軽く振り返る。
公園は奥側にも出入口があるのだ。
結標はどちらから来るだろう。

天井「そろそろ時間だが、まだ見えないな、――?」

ひゅ、と。
ほとんど聞き取れない小さな音がした。
続いて、さり、と地面を踏むような。

天井「!?」

??「――驚かせてしまったかしら。ちょっと前の用が長引いちゃって、急いで来たのよ」

再び道路側に向き直った時、既にその少女は傍に立っている。
赤味を帯びた茶の長髪を二つに結い、目は少し気が強そうな。

??「結標淡希よ。あなたが天井博士?」

天井「あ、あぁ」

タンクトップにショートパンツ、緩めにパーカーを羽織った結標は、にこりと笑った。


>>+2
天井は……
※結標への対応の方針



・参考:あわきんトラウマ事件は中三の時
    (本編の二年前、このスレ現状の一年後)


結標「へぇ、洒落たお店」

店側も居心地には気を使っているのだろうが、想定客層が高めの店内で少女はゆったりと座っている。
葉の種類まで一々書かれた紅茶のメニューをふむふむと眺め、萎縮した様子は特に無い。
道中に弄んでいた、服装にそぐわない警棒のようなものは、今は腰のベルトに挟まっていた。

天井「良かったらケーキのセットを頼もうと思うが、食べられる気分かな」

相手が子供の場合、敬語を使うことと丁寧であることはイコールではない。
結標の方が気軽に話しているのに合わせ礼儀を失しない範囲で天井も口調を崩していた。

結標「あら、じゃあ遠慮無く。カヌレと……紅茶の銘柄は詳しくないのよね。ダージリンにしておくわ」

天井「カヌレ……?」

結標「外側がカリカリした、どっちかっていうと焼き菓子よ。ケーキセットのメニューにあるのは珍しいかも」

黄泉川と話した居酒屋と少しだけ構造の似た席である。
意外とがっしりとしたテーブルを壁際に、その前後はアンティーク調の飾り棚。
棚にはところどころドライフラワーや良く分からない置物が鎮座している。

残り一辺は藤でできたパーテーションで、適度にプライベートな空間を作っている。
勿論注文や配膳の為に全面は塞がっておらず、密室で違法行為が行われるのもそれとなく防いでいた。
天井と結標では武力的に、危険があるとしたら成人男性のこちらだろうが。

開発官として高位能力者に慣れたとしても、手にしたメニューだけで首を刎ねられる能力に僅かな不安はある。
表には出さないし相手もそんなことはしないだろうけれど。

ウェイトレス「――ご注文をお伺いします」

天井「ん、あぁ。ケーキセットを二つ。彼女がカヌレとダージリン、私はこのラズベリーのケーキとカモミールティー」

ウェイトレス「かしこまりました」

メニューを棚に差し、そっと去る店員。
一瞬、互いに口を開かない空間、に遠い席の囁きと弦楽器の音が流れた。

天井「――改めて自己紹介を。私は天井亜雄、筋ジストロフィー患者の動作補助機器を研究している。
   まずは簡単にそれについて説明させてもらって良いかな」

結標「えぇ。お願い」

紅茶が淹れられ、運ばれるまでの微妙な時間は前提の説明に使うことにした。
心持ち姿勢を正した少女を前に、ここ数年取り組んできた研究テーマの概要を口にする。




筋肉が衰える病と、学園都市の能力を利用した身体制御の可能性。
クローン技術を取り入れた、機器による能力の再現と応用。
それらを淡々と伝えていたはずだった。

天井「具体的な方法は省くが、脳以外の神経系と人格データ、擬似AIMにより、
   限定的に能力と同様の現象を引き起こす――ん、気になるところが?」

結標「いえ、その……その段階は、脳を使わない再現は成功しているの?」

言葉だけを取り出せば単に興味を持ったとも取れる。
しかし。
少女はずっと、同年代の中ではお姉さん的と評されるような落ち着きを保っていたはずだ。
今は見開いた目を辛うじてこちらに合わせ、驚きと、打ちひしがれたような色に表情を染めていた。

天井「……ごく単純かつごく微細には。一応このことは口外しないでくれると助かるよ」

言葉に反応したか、きゅっと唇を噛んでいる。
天井はただ戸惑うしかない。
能力に誇りを持つ高位の者には、装置で代用できることが受け入れ難いのか。
今までの協力者にそういったタイプが居なかったため想定を損ねていた。

天井「とはいえあなたの様な複雑な能力はとても無理だし、成長もしない。決まりきった動作をする機械に過ぎないが」

結標「それは。でも……研究が進めば、強度を上げたり私みたいな能力も?」

テーブルに乗った細い手が拳を握り、関節は白い。
小刻みに震え始めた様子は尋常ではなかった。
驚愕を通り越し恐怖のような。

天井「例えば電撃使いの能力で、ある程度電圧を上げることはできるし、現在試みている。
   しかし私の手法では、完全に自在に電気や磁気を操るのは今後も不可能だろう。あなたの座標移動もだ」

事実だ。
所詮、天井がしているのは反射的能力行使のパターン化と組み合わせ。
人体を動かすという、限られた用途の動作や信号にそれらを対応させているだけなのだ。

結標「本当に……?」

天井「あぁ」

縋るようだった。
ほっとしたようだった。
目に見えて身体の緊張が緩んでいた。
そこまで、機械による再現が許せないのか。

……それだけではないような気もした。

結標「なら、良いの。大丈夫。もう大丈夫。…………ごめんなさい、取り乱して。」

天井「いや、こちらが無神経だったよ、申し訳ない」

能力だけがアイデンティティー。
能力だけがプライド。
結標が仮にそういう個性を持っているとして、能力が否定されたならあんな風に恐れるだろうか?
激昂ではなく慄くのは何故。

他人の心情など、知ることはできないが。



・半端なところで恐縮ですが、外出予定のため本日はこれで
 最後に安価無しで申し訳ないです

 続きは明日に(ネットに万が一のことが無ければ)
 どうぞよろしくお願いします



・久々に ネットが 超不調
 取り敢えず夜にまた繋がるか試します
 今日は進められても少しだけになりそうです、すみません



・時間を置いてチェックしているのですが、やっぱり繋がらないみたいです……
 待って下さっている方、申し訳ありません
 明日こそ繋がったら続きます


 何が辛いって禁書wikiとか類語辞典が見れな(ry

常時接続で契約しているんなら、
頻繁に繋がらない現象には、プロバイダに強く文句を言って良い。


・ひゃっはーネットだー
 こんにちは、再開いたします

>>363 アドバイスありがとうございます
 今使っているネットは自分で選んで契約したのではなく、家賃に込み、感度の悪い微妙な無線LANなのです
 半ば諦めているのでバイトが決まったらイーモバイルを挿そうかと思っていたり

・来ないと思いますが念のため、ここ数日の板荒らしはスルーかつ安価下扱いにいたします


遠目に様子を窺っていたらしいウェイトレスが、表面上は何事も無かった風に注文の品を運んできた。

結標には、縁の高い中くらいの平皿に、焦げ茶で円柱形に近い焼き菓子。
形状は実際もっと複雑で真上から見ると凹凸のある花のように見える。
あれがカヌレというらしい。
天井の前にある、薄紅や赤が層になったケーキに比べかなり地味で、添えられたアイスに掛かるソースがほぼ唯一の彩りだ。
だが、とても香ばしい。

茶はそれぞれ丸い陶器のポットで置かれ、小柄なカップに一杯分ずつ、店員が注いでいった。

天井「一先ず食べようか」

結標「……えぇ。いただきます」

互いに、飲み物を一口。
すぅっとした甘い匂いが口蓋に広がる。

気まずい。
少女はぎこちない手付きで、カヌレを切り分けようと試みていた。
見た目の印象よりも外は硬いらしく、銀のナイフで四苦八苦する。

かつん、ようやっと刃が通り、後は開かれた内側からあっという間に切り分けられていった。
一欠けが小さな口に運ばれるのを見て天井もケーキに手を付ける。
味は良く分からなかった。

結標「お上品に食べるのって大変ね。いっそ手掴みで齧り付けば良かったかしら」

肩を竦め、しかし表情は少しだけ緩む。
その姿はクラシックな店内に再び馴染みつつある。
衝立の向こうに飾られた絵画の女性のように。
落ち着いたばかりで実験の話題を続けるのも何だし、しばらくは雑談でもしていようか。

天井「……しばらく夏休みだが、名門校だと講習などが詰まっていたりするのかな」

結標「名門って言っても、ウチは高位能力者がそこそこ在籍してるってだけよ。
   常盤台みたいに厳しくもないし……だから実験協力とか受ける余裕もあるんだけどね」

話は一瞬で元のところに戻ってきた。




結標「ねぇ。思ったんだけど、博士の研究って機械が能力を使う訳ではないわよね。厳密には」

どころか喰い付いてきた。
純粋に興味もあるのか、もしくは機械に再現できるはずがないと確認したいのだろうか。

天井「行使するのは、脳ではないが人体のパーツだからな。能力の主体はあくまで人間だと言えなくもないよ」

結標「脳でないなら思考も演算もできない……人間だと言い切ってしまうのにはハードルが高そうね。
   なら、能力に必要な要素を、どこまで人間以外が肩代わりできるか、というのが命題かしら」

天井「ふむ。どちらかというと病の治療という目的に主眼があるのだが。理論的にはそうなるか」

あの機械において能力を発現するのは人間かどうか、か。
よくよく引っ掛かる問いだ。
逆説的に、「能力を使えるのは人間だけだ」とすると「あれの中の脊髄は人間だ」ということになる。

結標「……本当に、空間移動は再現できないの? その装置の原理を詳しく知らないから何とも言えないけど、
   演算が複雑なだけならCPUの性能を上げればいいじゃない」

相手の話を聞きながら甘味を口にし、飲み込んでは応えを返す。
これでは同僚と摂る昼食と変わらなかった。
遣り取りに気を取られ、ラズベリーの複雑な香りも内装に垣間見える深い木の色もあったものではない。

天井「詳細は伏せさせてもらうが、私の手法で起こせるのは、電撃使いなら微弱な静電気程度のものなんだ。
   それを同時か短時間に何度も発生させ、重ね合わせることで必要な力を得ている。つまり――」

結標「十一次元上の現象を重ね合わせるのが難しい?」

天井「そういうことだよ」

流石大能力者と言うべきか、理解が早いことだ。
そもそも空間移動は、読心能力などと並んで一般の物理現象から遠い能力の一つである。
念動力や肉体変化とて常識からは逸脱しているが、
具体的な力、体組織の限られた変質という形で、まだ数値化しやすいのだ。

ふぅん、と呟きそれっきり少女は焼き菓子に意識を移す。
いや、一度、面白いわねと呟くのを天井は聞いた。

天井(しかし、どうしたものか。今は錯乱する様子も無いが……実験協力の時点で問題があっても困るぞ)

そろそろ二人の食べているケーキも減りつつある。
茶で口を潤すだけになったら、本題の依頼に話を進めなければならないだろう。

始めは研究内容に過剰な反応を示したものの、どちらかというと興味に移りつつあるようだ。
予定の実験の内容はそこまで時間を圧迫するものではなく、多くはないが妥当な報酬も提示できる。
このままいけば受けてくれる可能性が高い。

天井(不安だ……研究に関わってもらって平気だろうか)

だがここまできて、こちらから依頼を取り下げるのは不誠実だとも思う。
かち。
ぼうっとしていた自身のフォークが、空になった皿を突いた。


>>+2
どうするか



・遅くなりました


少女は天井よりゆっくり食べている。
一片のカヌレを小さく咀嚼し、もう一つ、それから目先を変えてアイスを掬う。
漂うカラメルのような匂いはとても甘そうだが、カヌレかアイスのどちらかは控えめな味なのかもしれない。

ふ、と目が合った。

結標「あら。食べるのが遅くてごめんなさい」

天井「昼が少なくて腹が減っていたんだ、私ががっついてしまっただけだよ」

結標「分かるわ、ついフォークが進むもの」

微かに笑う姿だけでは、強大な能力の持ち主には見えなかった。
年齢も容姿も有する武力と比例することはない。
まして、ここまでの会話や澄ました佇まいを思い返せば、能力への自意識は高い方だと見て取れるのだが。

天井(だからこそ、研究が気に食わなくとも潰すような真似はしない……か?)

存在自体がグレーゾーンなものならともかく、正式な表の実験なのだ。
妨害が表沙汰になれば、最悪犯罪扱いである。
都市の学生として立場を損なうような愚かな行いはすまい。

結標「――ん、ごちそうさま。美味しかったわ」

天井「どういたしまして」

少し温くなったカモミールティーを味わう。
当初の予定通り、依頼から関係を築けるように努力してみよう。




天井「これが実験の計画書だ。あなたには、機器の動作実験に協力してもらえればと思っている」

ケーキの乗っていた皿が撤去され、丁寧に拭き清められたテーブル。
二組のポットとティーカップは脇の方に寄せて、天井は数枚の紙を手渡した。

結標「ふぅん……つまり、データを取るのに充分な時間、落下状態を維持したい訳ね」

天井「そういうことだ」

ぺらり。
緩やかに区切られた空間に乾いた音が響いた。
今回に限れば、あくまで実験の条件を受け持ってもらい、
クローニングのためのサンプル採取などはしないため抵抗は少ないと思われる。

結標「実験は一回?」

天井「現段階では。自由落下が能力の制御に影響を与えないこと、あるいは影響のデータが確かめられれば良い。
   実用化が進めば、被験者が装着した状態で同様の実験を行いたいが……これは未定だよ」

そもそも彼女とコンタクトを取るためにでっち上げた実験なので、一回目でさえ半分未定状態である。
無事実験に漕ぎ着けたら、数日で必要な機材を揃えねばならない。

結標「……というか、加速度を掛けたいなら落下じゃなくても良いんじゃないの?
   車に乗せるとか、紐状の物に括って回転させるとか、方法はあると思うのだけど」

そこを突かれると痛い。
それらしき理屈を用意してはあるが――、

天井「いや、支えの無い落下状態というのが重要なんだ。
   装着した患者が万が一足を踏み外したりした場合、素早く正確な動作ができないと困るだろう?
   車やエレベーターに乗るだけでは、動作に急を要することは少ないからな」

という建前である。
考えてきた台詞を並べ立てるのに、つい早口になってしまった。
畳み掛けるようで怪しくなかっただろうか?

結標「ふむ。その他条件は……あ、ここに書いてあるか」

天井「あぁ。準備の関係があるから明々後日以降、都合の良い時間帯を指定してくれて構わないよ」

少女はあまり気にしなかったようだ。
サイドの髪を片手で弄びながら、目はじっと文面をなぞっている。

結標「――そういえば、私みたいな学生に依頼することは多いの?」

何ということもない一言だった。
第一位について口にすることは避け、こちらも簡単に返答する。
クローン元の彼らにもプライバシーの問題があるため能力名などは明かせない。

天井「当然、能力のサンプル……というと言い方は悪いが、再現のためのオリジナルは皆学生だ。
   今は大学に進学している者が数人、それにあなたと同年代の者も居るな」

結標「同年代?」

まぁ、これくらいは良いだろう。
氏名や学校を言わなければ。

天井「一つ下、今年度で中一の少年だな。もっと以前から参加してくれているのだがね」

結標「分かったわ。受けましょう」

ん?




結標「できれば、そう、他の協力者にも会ってみたいわね。その歳が近い子って忙しいかしら」

天井「最近は彼との実験も無かったから、訊いてみないと分からないな。
   ただ今回の実験は他の能力者を元にした装置で行うから、彼が居てもすることは無いと――」

結標「良いの、色々お話をしてみたいだけだから。あっ、別に研究について探りを入れる訳じゃないのよ」

何だろう、この積極的な態度は。
どうも研究とは別の方向で妙な予感がする。
雲行きが怪しいというか。

天井「あ、あぁ……。連絡はしてみようか。
   だが向こうの都合になるから、無理かもしれないというのは覚えておいてくれ」

多分、女の子が会いたがっていると伝えたら万障繰り合わせて飛んで来るとは思う。

結標「うーん、じゃあできるだけそちらに実験の日程を合わせるわ」

天井「そ、そうか。では日時はメールで相談ということで良いかな」

結標「えぇ、そうしましょう」

この満面の笑顔である。
感情を表に出す度合いとして、天井の研究内容に動揺していた時より激しいように見える。

押し切られるままに話を決められ、さっさと立ち上がり、気が付いたら革風の伝票入れを持って会計に向かっていた。
レジの横できょろきょろと調度を眺めている結標の髪が揺れ、まるで犬の尻尾のようだった。


結標「じゃあ、よろしくね」

天井「こちらの台詞だよ。よろしく頼む」

軽やかに、座標移動も使わずに去っていく後ろ姿。

天井(青髪少年は実家に帰っていた――などと誤魔化すこともできるが。どうしようか?
   そもそも、何にこんな危機感を感じるんだ?)

その不安の出所は分からない。
一抹どころでない感情を抱えながら、天井は藤色の天を見上げた。


>>+2
結標と青髪を引き合わせるか


・ちょっと睡眠欲が酷く文が書けないので一度離脱します
 夜にまた来ると思います



・オハヨウゴザイマス

>>+2
結標との実験時にどんなメンバーで会うか
※天井と青髪は参加
(連れていけるのは研究関連で妥当な人のみ、複数可、天井と青髪のみ可)



強化樹脂のコンテナに、敷き詰めた高級な緩衝素材。
脊髄。
演算用のCPU、AIMの擬似発生装置。
電流の観測機器、これらを制御するPC。
そして、全てを賄うバッテリー。

これらが今日の実験の舞台装置である。
主役は言わずもがな、とある大能力者だ。

天井「……収めれば収まるものだなぁ」

七月二十三日。
これまでの実験で使っていた機器を極力小型の物に置き換え、そのため少し下がった性能でも能力が発現する限界を見極め、
機械達は現在二立方メートルほどのコンテナに押し込められていた。
場所も、いつもの実験室ではなく学校棟の高い吹き抜けの能力実習室を借りてある。
実験終了後は結局機材を床に落とすことになるため、そちらにも緩衝材を敷いている。

木山「これで準備は大丈夫かな。まだ開始予定まで二十分以上あるが」

上下方向に広く、床面積の割に開放感のある一室。
音を漏らさない特殊な壁の中に立っているのは木山と天井だけだった。
彼女はこの実験を口実に、結標と、ついでに上条を見極めてもらう為に呼んでいる。

また布束も今日は来ているのだが、そちらは――、

天井「取り敢えず、向こうに戻るか。布束に任せ切りだからな」

何に追い立てられたのか約束の四十五分も前に正門前をふらふらしていた結標と、
そのうち上条を誘って訪れるはずの青髪少年の応対を頼んでいるのだ。




結標「そ、……そんなのって! そんなのってないわ!!」

だから、そんな台詞が聞こえてきたのは布束達が待機している休憩スペースに向かっていた時だった。
余りに哀れな声だったもので天井達は血相を変えて駆けつけた。
のだが。

青髪「ど、どしたん、お姉さん」

結標「……いいえ、何でもないの。ちょっと驚いただけよ。背、高いのね」

少年の肩を力無く掴んでいる結標と、黒い犬耳と尻尾を生やした挙動不審の青髪と、
彼らをぽかんと眺める布束がただ突っ立っているだけだった。

天井「どういうことだ」

布束「It's hard to say... 彼女、出会いに飢えていたみたいよ」

天井「……どういうことだ」

頭が痛かった。
同じく疲れ切った表情の布束と、興味深そうに眺めながらさり気なくブラウスを脱ごうとする木山。
それをやんわり押し留める向こうでは取り留めない会話が続いている。

結標「というか何でこんなもの付けてるの? わ、ふさふさね」

青髪「ちょ、くすぐったいわー。付けてるんやなくてちゃんと生えてるで。ボク肉体変化やから」

結標「えっ。……あなた、強度は? 骨格変えたりできる?」

上条「やっと見付けた……おい青ピ、俺はここ来るの初めてなんだから置いてくなよ!」

結標「あら、あなたも彼と同い年?」

不運にも青髪とはぐれていたのか、遅れて現れた上条も加わり、大した騒ぎである。
あなたが集めたんだからどうにかしろ、と呆れた布束の視線が痛い。




中学勢が思い思いに喋り立てていなくとも、自己紹介だけで一作業だった。

各方面の協力あって成り立っている研究であるが、こうも大所帯になるのは珍しい。
メンバーとしても、結標は天井以外と、上条は天井と青髪を除いた顔ぶれと面識が無く、
それこそ新学期のクラス替え直後のように名前などを確認しなければならなかった。

年齢のほぼ変わらない布束が一線の研究者であることに、学生達が驚いたり。
上条の幻想殺しについては伏せてもらい、そもそも研究に直接関わって彼は若干肩身が狭そうだったり。
そんな少年に結標はやたらと友好的だったり。
青髪が妬いたり。

天井(……疲れた。酷い茶番だった)

開始予定をもう二十分は過ぎている。
演習室のフロアに立つのは自身と布束、結標だけで、残りは併設のモニタルームに押し込んでいた。

木山に必要な相手と接触してもらう為、実験を前半と後半に分け、その境目で布束と交代してもらうことになっている。

結標「念のため適当な物で座標を確認したいのだけど。何か無いかしら」

布束「Here, これを使って」

体育倉庫から失敬したバスケットボール。
手渡すまでもなく、それは華奢な掌の上から掻き消えた。

ひゅ、ひゅん。
ひゅん。

結標が軍用の懐中電灯を振るう度、落下してきたボールが部屋の上部ぎりぎりまで舞い戻る。
無機質な部屋に、何度も何度も落ちる球体。
騙されているような不思議な光景。

黒い棒が空を切るのを止めた途端、それは音も無く緩衝材の上に落ちた。

結標「演算自体は同じ数値の繰り返しだから良いけど、こう連続すると疲れるわね」

天井「済まないな。なるべくプログラムは短く組んだから、その間何とか頼むよ」

さも、研究のために必要なんだという風に。
この実験自体が茶番のようなものだった。


>>+2
実験後にしたいことがあれば




得る物が無かった訳ではない。

落下している途中の能力データはコンテナ内のPCに記録し、後で確認したのだが、平常時より少しだけぶれがあった。
脊髄だけでは感覚器が無い。
本来三半規管で感じ取るべき落下の刺激が、事実落ちているにも関わらず入力されないことで、
現実との齟齬により多少発現に影響があったらしい。

天井(実用化の際には患者の感覚信号を流用して補正が必要そうだ)

すぐに取り組むべき課題ではないが、いずれ解決しなければならない問題である。

布束「――ふぅ。Don't worry, 破損のある機器は無いみたい」

天井「この緩衝材、都市の新素材だけあるな。後は軽く片付けて皆と合流しよう」

実験前も喧々囂々としていた休憩スペースでは、三人の学生と木山が待っている。
折角だから食事でも行くかと言ってみたところ意外にも全員が賛同したのだった。
治療手順確定に向けた激務を縫って来ているはずの木山は、他の面々が参加を表明してから乗ってきたため、
結標や上条ともっと話しておきたいのかもしれない。

布束「On the way, これだけ実験室に運んでおきましょう」

コンテナに再度機械類を押し込み、台車に乗せて。
人が居ないとがらんと寂しげな演習室を後にしたのだった。


寿司! 寿司食べたいで!
中華とかでも良いんじゃないかしら。
ふむ、食べたいものがばらばらだね。そうするとファミレスかな。
えー、折角天井センセの奢りなんやし豪華なとこにしよーや。
お前は本当に遠慮しろよ青ピ!

布束「Good grief. 静かに待っていてって言ったのに」

L字型のテーブルを囲んだ連中は、予想通り思い思いに駄弁っていた。
多少は声量を抑えているようだが元気盛りの中学生が三人も居る。
後日教授辺りからお小言を貰うのが目に見えるようだった。

天井「あー、行きたいところは決まったのか。流石に高級料亭などは無理だからな」

青髪「回んない寿司!」

窓からのぎらぎらした光を一身に浴び喰い付いてくる少年は、直前の台詞を聞いていたのだろうか。

天井「……他は?」

布束「お高いフランス料理」

おまえもか布束。
冗談だろうが悪戯に首を傾げ、目はいつもより輝いている気がした。

結標「あまり拘りは無いけれど、野菜料理があると嬉しいわ」

上条「あっ、俺は何でも。あいつに付いて来ただけなのに、俺までありがとうございます!」

実に健気だ。
唯一の良心ではなかろうか。

木山「と、バラバラなのだよ。全員の要求を辛うじて満たすなら、ファミレスかフードコートになると思うのだがね」

木山は淡々と肩を竦めてみせる。
そうやって傍観していたなら、意見を纏めてくれていても良いだろうに。

天井「ちょっと待ってくれ、店を探すから。青髪君は耳とか消しておくようにな」

忙しなく携帯を操作し口コミサイトなどを辿っていく。
成人男性は一人、この個性的なメンバーを率いて行くのは思ったより大変そうである。


>>+2
どんな店に行きませう



・遅くなりもうした
 ムービー流して今日は終わりです


上条「ご飯が、パンが、スパゲッティが沢山! 幸せだー!!」

青髪「本能レベルでカロリー摂取を優先しとる辺りがカミやんやね。どうせなら海老とか食えば良いんに」

上条「馬鹿野郎っ、急に慣れない物入れたら腹壊すだろ!」

結標「温野菜、温野菜っと」

布束「Good gracious! 確かに副菜が充実してるのね。あ、このジュレ凄く綺麗」

皿やトレイを持って散っていった学生達を見送り天井は大きく溜息を吐いた。
騒いで目を付けられたら追い出されるからなと釘を刺したせいか、テンションは高いのに声が小さい。
できたら長点でもそうして欲しかった。

木山「随分奮発したね」

天井「ちょっと待て、他人事のように言うが私達で割り勘だからな」

シャンデリアまで持ち出し高級感を演出する店内は、変にごてごてしておらず趣味が良い。
床が磨かれた黒い石材なのもそれっぽかった。

木山「分かっているさ。今日の実験からして、結標君と会うために組んでくれたようなものだろう?」

勝手に動いたのはこちらだが、そう言って貰えると満更ではない。
例え第四学区のちょっと良いバイキングに足を運んで財布の中身が削れたとしても。

――いや、大人四〇〇〇円、中学生二八〇〇円、ネットのクーポンを突っ込んでマイナス一〇〇〇円、
木山と等分して支払いが九一〇〇円ずつ。
やはり痛い。

木山「豪勢だね。本当に寿司とフランス料理と中華が同居しているとは」

天井「この建物に入っている複数のレストランで試験的に共同運営しているらしいぞ。ランチのみだが」

エアカーテンならぬ霧のカーテンの中、宝石のように鎮座している寿司。
ややこしい名の鮮やかなソースが掛かった鯛のポワレ。
他にもパエリアやらベトナムカレーやら世界各地の料理がずらりと並んでいる。

席を守る代わり、先に汲んで来てもらった烏龍茶で喉を潤した。

天井「――二人は、どうだ? 頼めそうか」

木山「どちらも良い子だとは、思うよ。……上条君は治療に立ち会ってもらう訳だから誤解も生まれにくい。
   だが、結標君の場合移送を頼むことになるから、ある程度事情を説明しなければいけないだろうね」

結標が信用できる人間として、だからこそ中途半端に情報を伏せるのは危険である。
昏睡した子供達をこそこそと運ぶなど、どうしたって知らなければ木山の方を疑うだろう。

木山「今日決めるのは止めておこうと思う。明日にも冥土帰しと実験があるから、彼とも相談するよ。
   貴方にもまた話を聞くかもしれない」

天井「分かった、慎重にな。この時間でもう少し二人とも話してみると良いさ」

裏に関わることはデリケートな問題だ。
知る人間が増えれば本人達に悪意が無くとも漏れる危険性は増すのだから。
ここは選択肢を増やせただけ良しとしておこう。




戻った四人と交代にローストビーフやサラダを盛って帰れば、
食べていて良いと言い置いていたのに、彼らは行儀良く大人二人を待っていた。

天井「悪いな。だが本当に良かったんだぞ、時間制限もあるのだから」

布束「いやね。In a manner, こういうのは揃って食べ始めるものよ」

天井「……そうか。では」

――いただきます。

自然と音頭を取れば、何か学校の先生になったような心地がした。
天井には教職への志向は無いし、そもそも開発官として指導経験も重ねているのだけれど。


席は丸テーブルで、深い紅と白のクロスが重ねて掛けられた上の、中央に小さな花瓶。
天井から時計回りに青髪、上条、木山、結標、布束と座っている。
木山としては話したい相手に挟まるように上手く陣取ったというところだが、

青髪「自然に木山センセの隣確保するとかカミやんマジ爆発せーよ。この年上趣味」

上条「むしゃむしゃがつがつえぐえぐうまうま」

木山「欠食児童のようだな、彼は。学校でもいつもこうなのかい」

青髪「ほわ!? そ、そーやで。カミやんは不幸の避雷針やから良く財布落とすんよー」

木山「不幸か。じゃあ今喉を詰まらせているのもそうなのかな」

上条「ーーッ!! ~~~~!!??」

青髪「うわ、ちょ、水! 水!」

がたがたと食器が揺れる。
そんな彼等を結標は口を尖らせて眺め。

布束「そういえば、あなた年下趣味なの? Just before, そんな感じだったけど」

結標「まぁね。守ってあげたくなるタイプが好きかも。可愛い系って言うのかなー……」

布束「At any rate, 青髪君を縮めるのは厳しいものがあるわよ。確かに無邪気な性格だけど」

結標「学校にぐっとくる子が居ないんだもん。上条君といい、二人とも良い感じよねー。
   というか布束さんこそオジコン? 博士とこなれた雰囲気じゃない」

布束「There! 変なこと言い出さないで!」

天井「……そういうのは対象が居ない所で話してくれ、頼むから」

結標「大丈夫よ、あっちはパニックで聞いちゃいないでしょ」

天井「いや……」

こちらは真横で聞いているのだが。
息を吹き返した上条を横目で確認しつつ、ミートソーススパゲッティをくるくると巻いた。




木山「しかし結標君の格好は涼しそうで良いね」

結標「その褒められ方は良く分からないわ……。ちなみに能力上の意味もあるんだから、これ。
   沢山着込んでると演算が面倒なのよ」

暑がりな研究者曰く涼感溢れる服装は、丈の短いプリントシャツとデニムのミニスカート、革編みのサンダルである。

布束「Relevantly, こちらを見るのはどういう意味なのかしら」

天井「対照的だと思ってな。ほら、夏でもよく長袖の上着を羽織っているだろう」

布束「良いじゃない。For, あまり綺麗に焼けないの、私」

天井「そうか、そういえば日傘も差していたな。いや、ああいう薄い……レースか? あの上着とか似合うと思うぞ」

布束「――――、」

ぐるりと見渡すと、めいめい好きなものを食べ、落ち着いてきたようだった。
空のグラタン皿やメロンの皮がそこいらに置かれている。

木山「――解せないのはだね。結標君のように初めから涼しい格好をするのは咎めれないのに、
   気温に応じて脱ぎ着するのがどうして駄目なのかと」

上条「」

青髪「」

結標「ちょ、ちょっと! 何ボタン外してるのよ!」

木山「むぅ、君も止めるのかい」

上条「あ、あの先生、ここレストランですから! 他のお客さん居ますから!」

木山「だってカレーを食べたら暑くなったんだ。仕方ないじゃないか」

結標「だってじゃないわ、駄目なものは駄目! あぁ、早くボタン戻して!」


とんとん、と天井の肩を叩く者があった。
振り向けばそこには予想通り、笑顔を引き攣らせた店員が立っていた。
一段落したとはいえ、九十分制限のうちまだ半分も経っていないのに。




木山「良く分からないが、悪かったとは思っている」

天井「分かってくれ。一目があるところでは暑くても下着を見せるな」

大体水着と変わらないじゃないかとか不貞腐れている研究者は放置。
即刻追い出されてしまった店内を未練深く睨み、嘆息した。

天井「済まないな、君達も。折角のバイキングだったのに」

結標「気にしないで、充分頂いたわ。ごちそうさま」

上条「普段の食生活に比べたら夢のような時間でした」

天井「そ、そうか」

能力強度の低い学生に、支給される奨学金は少ない。
まして希少な力を持っているにも関わらず数値化されない彼が不憫だった。

青髪「残り五十分より価値のあるもん見せて貰ったしな。ロマンが無きゃ人間生きてけないんやで!」

天井「そうか」

店から出るなり犬耳を復活させていた青髪には特に言うことは無い。
結標と背丈がどうのと話していたので、もしかしたらその為だけにレベルが上がるかもしれないが。
この少年はそういう性格である。

布束「放っておくと収拾が付かないわよ。At once, 締めてしまったら?」

天井「あー、そうだな。今日の実験はありがとう。食事も気が置けず楽しかった」

誰ともなく、ごちそうさまー、こちらこそ、など声が返った。
午前に実験を行い、真昼に遅れてレストランに入ったから、今は一番暑い時間帯だ。
困った大人が服を着ている内に解散するに限る。

天井「これからも力を貸してくれたら幸いだ。また皆で昼食にするのも良いな。
   ――これにて解散、各自気を付けて帰ってくれ」

結標「実用化ができたらまた呼んで。布束さんも第十八学区でしょう? 送って行きましょうか」

布束「Thanks. でも大丈夫、これから長点に戻って研究の続きなのよ」

長点上機学園も同学区なのだが、結標は納得したように何も言わなかった。

結標「ん、それじゃ」

空気の音を残し、結標が溶けるように消える。
去る所は始めて見るが幻のように跡形も無く。

それから、それぞれが帰路に付くのを見送って天井も踵を返す。
長点に戻るのは自身も同じだ。
日陰を探し、じわじわとアスファルトから立ち上る熱気の中を二人で行く。
来る時にも乗ったモノレールの駅に向けて。

布束「賑やかだったわね」

天井「そうだな」

黄泉川と呑んだり布束と昼を摂ったり。
そういう機会は多いが、あまり大人数で時間を共にすることは無かったのだ。
医療系の同僚と学会の打ち上げをするような仕事の延長を除いては。

木山の子供達の移送手段として、結標と接触する――そんな打算的な目的だった実験から、よもやこうなるとは。
暑く、暑く、思考は働かず。
敢えてからっぽの頭のままで、十分弱の道を歩いた。




>>+2
結標について、どうするか
(木山と冥土帰しに委ねる、依頼を勧める、etc.)


・ということでこれにて
 時間酷く掛かり過ぎてワロエナイ
 いつもお付き合いありがとうございます

 >>330 の通り、来週に掛けてお休みします
 取り敢えず金曜まで
 早く戻れたら戻りますがあまりご期待なさらないで頂ければ
 また、来週の土日が空くかは今日明日で決まるので、それだけ月曜くらいまでにご連絡します



・こんばんは、遅くなりましたがご連絡のみ
 今週末も所用により無理な感じです、最短で来週月曜復帰の予定になります
 それより後になりそうな場合は再度書き込みます

 大分空いてしまいますが、見掛けたときにまた読んで頂けたら幸いです


・お久し振りです
 来週の月、木に面接が入ったので、
 何事も無ければ火曜に再開ます
 ご連絡のみ、失礼いたします


・「9月になったし夜に進めた方が良いかなー」
   ↓
 【サーバが見つかりませんでした】←今ここ

 お待ち頂いているようで申し訳ないです
 短めの文と次の行動安価だけは何とか今日中に差し込みたい所存です

お疲れ様です。

ちなみに、アンチウイルスソフトは何ですか?
最近、ノートン先生がネットに繋がらない不具合があったみたいですが?


・大変すみませんが今日はこの1レス&安価のみにしておきます
 ↑ではああ書いておりましたが、更新時間帯は不定にしておきます
 全く進めない日は今まで通りご連絡する形に

>>416 セキュリティソフトは無料のアバスト先生なので、回線自体が弱いだけかと思われます
 そのうちイーモバイルに移行すれば多分大丈夫、かと……


布束「All right then, 私は部屋に戻るから」

天井「あぁ」

研究室が並ぶ廊下、布束はひらりと手を振った。
酷暑から逃れた棟内の休憩スペースしばし涼んでいたのだが、互いに暇な訳ではないのだ。
今からも、人格データの面から患者と能力の齟齬の問題に取り組むのだろう。

……そういえば彼女と二人だけのスペースはいつも通りと言えばいつも通りだったのだが、
騒がしい昼食の後だと妙に物寂しかった。

しかし、服が微妙に汗臭い。
あれだけ歩いた上にクーラーで乾かしたのだから当然である。
長点には泊り込み覚悟の研究者のためのシャワールームなども特に無いのでどうしようもなかった。


天井「せめて着替えでもあればなぁ」

天井の研究室。
無いもの強請りをしながら、デスクの前ではなくソファに腰掛けてみる。
濃密な半日だった。

名目としてでっち上げた実験ではいずれ考慮すべき点が発見できた。
他のメンバーと研究にと留まらない会話ができた。
何より、木山に上条と結標を紹介できた。

天井「冥土帰しとも相談すると言っていたし、後は向こうの判断だな」

どうするか、の判断までは天井にはし難い。
自身も充分巻き込まれてはいても本当の意味で当事者かと言えば否。
依頼するとしたら必要に応じ連絡くらいは取るが、
昼食の折にめいめいアドレスの交換などしていたようだから木山が直接話を付けるかもしれない。

脱力するままに上を向くと、空調機の平べったい四角がひっきりなしに稼動している。

天井「黄泉川……も特に何も知らせてこないしな」

動いている状況などを逐一教えて貰えるとは流石に思っていない。
だが、それこそテレスティーナが失脚したなどの大きな変化があれば伝えてくれるだろうと思う。

天井「伝えてくれる、……よな?」

多分。
前回の筋トレではタイミング悪く彼女と遭遇しなかった。
会えばそれなりに話もできるだろう。

ともあれ。

天井「テレスティーナについては黄泉川の方の進展待ち、結標についても木山の判断待ちか」

見えない不安と、移りつつある状況――子供達の覚醒が具体的になってきたため、色々と行動してみた。
しかし今のところそれらは自身の手を離れている。
これからどう転がるかも測りかねる。
どうしたものだろう。

水分補給のためペットボトルに口を付け、ごくごくと中身を嚥下する。




>>+2
何か木山の件でしたいことがあれば


・参考:なつやすみのできごと

 夏休み前
  黄泉川とテレスティーナについて会話
  結標にコンタクト

 7/20
  結標と対面、実験依頼

 7/23
  結標交え実験後、布束、木山、結標、上条、青髪と昼食

 現在、23日午後


・ということで今日はこれまでに
 微レスで失礼しました


黄泉川と飲みに行き、雑談等をしつつ、なるべくナチュラルにテレスの件についての調査進行具合を聞き、自分でも研究の合間に先進状況救助隊の活動記録から推察。また、夏休み前から現在にかけて、テレスが個人的に動いた時の記録は念入りに見る。
後日、なるべく早く木山達と結標の作戦参加をするか検討。


・安価ありがとうございます

 付記するの忘れており申し訳ないのですが、夏休み中は状況が変わりやすいので1つずつ行動を決めたく思います
 >>420-421の方いらっしゃいましたら、4つのうちからご指定頂けないでしょうか
 (別の物にする、記述を付け加えるのは今回は無しでお願いします)



・上げていませんでした
 19:00までに↑の方と連絡が付かなければ、4択で安価出します

あー…さすがにあれはダメか。すまん。じゃあ23日午後からテレスの研究について詳しく調べてみるで


・こんにちは、ぼちぼち進めます

>>424 明記しておりませんで、お手数お掛けしました
 しばらくは1つのみの安価でまいります
 (安価時にも書くようにいたします)


ふむ、下手に動かずにできることといえば、調査がすぐに思い付く。
特に現在気に掛かるのはMARやテレスティーナだ。
しかし、その辺りの動きは既にできる範囲で調べているのだった。

天井「いや。もっとシンプルに行くか」

疲労と満腹感がもたらす渦のような眠気を振り切った。
ソファから立ち上がると、空気が動きひやりと涼気が首元を過ぎる。
とはいえこの気温の下、外に繰り出すでもなく、行き先は十歩と要さないデスクである。
研究者とはげにインドアなものだ。

天井「そう、研究者……。相手も研究者だからな。その成果を辿ってみるのも意義があるかもしれない」

例えば木山について調べた時は、公への露出のブランクに疑問点を感じ取った。
最近は絶対能力進化実験に関して、幾らかの研究者がそれに参加しているのではないかと推測を立てている。

天井「警備員という公共性の高い組織に半分所属している分、情報源は多そうだ」

勿論、警備員だからこそ、捜査中の事例については機密度が高いだろうが。
まずは論文などのデータベースで主要な発表を漁ってみるところから始めよう。

まだ幾分眠気は残るが、体内に篭った熱はほぼ逃げている。
PCもこの季節は辛いのだろう、しきりに音を立てるファンをBGMに天井はキーボードを操作する。


>>+1
調査の成果
※コンマ判定  ★修正+15

  - 4:ファンブル
  5-49:失敗
 50-94:成功
 95- :クリティカル
ただしコンマ自体が0-4/95-99の場合、修正の値によらず必ずファンブル/クリティカル





以前、初めてテレスティーナの経歴を目にした時にも研究の傾向は読んでいる。

天井「確か、大分類としては木山と同じAIM系だったな……」

データベースで彼女の名前のリンクをクリックすると、見たことのある画面が表示された。
姓名、テレスティーナ=ライフライン。
別表記、テレスティーナ=木原=ライフライン、Kihara Lifeline, Telestina。

天井「うん? この表記だと『木原』はミドルネームというより、苗字に含まれるのか?」

少なくとも洗礼名という意味でのミドルネームではなさそうである。
日本語圏の苗字そのものなので、当たり前といえばそうなのだが。
両親の姓を並べて名乗っているか、それこそ木原家に養子に入ったのか。

天井「と、脱線したな」

するすると画面をスクロール。
主な論文の欄に乗る表題を見るに、記憶どおりAIMを専門としているようだ。

天井「複数の能力者による共鳴、共振。能力の大規模干渉……地震の件そのものだな」

地震の原因は未だ公表されていないが、それを知る身としては災害調査のデータから得た研究であると考えられる。
一番上、共鳴に関する論文の詳細を表示。
本文をダウンロード。
アブストラクトや書誌データを眺めやり……、

天井「待て、おかしくないか」

す、と肝が冷えた。
タブを並列して、各論文の概要ページだけを幾つも幾つも並べる。
追うのはそれら研究の分野。
それに、発表年月日のみ。

かちかち、とマウスの音が神経に響いた。
頭の中で古い順にソート。
彼女は若く、研究歴も長くないが、成果は満遍なく出している。
それこそ二、三年前……地震が起こるよりも昔から。

天井(テーマは……キャリアを通してほぼ一貫している。AIMの相互干渉について、だ。
   それに地震の発生前後で飛躍して理論が向上していることもなさそうだ)

自身には専門外の内容だから、学会などで受けた評価からの逆算になるが。

天井「因果関係として、地震の調査から研究成果に繋がっているのでは、ない……?」

つまり、AIMの共鳴などを主に研究している研究者がたまたま災害救助隊を主導し、
最近たまたまその専門分野が原因となる事件が起こっている。

無邪気に偶然を信じられるほど、天井は純粋な人間ではない。
仮に、もし地震の原因が木山達であると知らなかったら、テレスティーナが原因と疑っていただろう。
それ位には作為的を感じる事実だった。

天井「だが、そうすると事の順序が分からんな」

テレスティーナは以前からAIMについて研究しており、かつ災害の原因を調査できる立場に立っている。
そんな折、地震が起こる。
だが地震を引き起こしたのはテレスティーナではあり得なく、また木山や冥土帰しと裏で繋がっているとも思えない。

どういうことだろうか。




またもう一つ、少しだけ違和感のある点があった。
テレスティーナの手掛ける範囲に、能力暴走関係の研究が無いのだ。
当然、AIM拡散力場や能力の研究をしているからといって、その中で暴走について触れなければならない道理は無い。

だが、彼女はMARの研究施設の所長だ。
あくまで『事件』ではなく『災害』と『能力』の積集合、共通部分を考えた場合、
能力の暴走と無意識での能力発動が大きなファクターになるのではないだろうか。

テレスティーナの研究はそのどちらにも関わらず、AIMの干渉が能力強度や精度に与える影響、
また、複数人で能力を発揮し、単なる合計より大きな数値を出すには、などの一辺倒である。

天井「本当にそちらの方向は対象外の可能性もあるが……」

データベースで調べられるのは、所詮まっとうに発表された成果のみである。
企業などなら技術を社外秘にすることは当然あるし、

天井「表に出せない研究も、然りだな」

そもそも初めからきな臭い件だ、可能性は決して無視はできない。

だが、感覚的にはどうも分からなかった。
彼女本人が強制的な能力暴走実験の被験者であるなら、その研究を忌避してもおかしくないとも思うのだ。
自身が受けた非道な行いを他人にするか――といった倫理感を持ち出さなくとも、
当時の苦痛に直結するような分野に自ら踏み込むだろうか。

天井「――ともあれ。木山は同分野だからな、地震と研究の因果関係の食い違いだの、
   暴走の研究に触れていないことには気付いているだろう」

テレスティーナの内心に思いを馳せていても、事態は好転しない。
ゆるゆると惑う思考を払った。

彼女については木山達もそれぞれ治療と平行して調べているはずだ。
むしろこれらのことに早々に思い至ったからこそ、大胆な調査には出ないでいるのかもしれない。
あちらも忙しい、敢えて報告しなくとも何かのついでに確認しておけば良いだろう。

天井「私の方で更に調べるとすると……」

彼女の研究について、少なくともPCの前で得られる情報は充分調べたと言って良いだろう。
後は互いに研究者であることを利用しMAR以前の所属機関や本人にコンタクトを取る方法も考えられる。
しかし、上手くやらねば天井の身元、ひいては木山達の存在を悟られてしまうかもしれない。

天井「ふぅー。駄目元でハッキングでも……はは、危ないか」

息を吐いて力を抜くと、追い遣った眠気が帰ってくる。
集中して理解できない論文の文字を辿っていたせいか、薄暗くなりつつある窓の光に気付かないでいた。

いずれにせよ、今日は調査はここまでにしておこうか。
ブラウザに表示されているテレスティーナの経歴と論文一覧をブックマークし、ぷつりとウィンドウを閉じた。


>>+2
「テレスティーナの研究」についての調査を続けるか
続ける or ひとまず打ち切る
(続ける場合は方法も)




しばし、腕を組んでみる。
それこそ木山幻生の行っていた実験ほどではないだろうが、
伏せられている裏の実験……しかも存在すら確かでない物を追うのは障害が大きい。

天井「無理に探りに行くよりは、取っ掛かりとなる情報を待つべきか」

黄泉川の進捗は勿論、テレスティーナやMARが焦って状況を動かしてくる可能性もある。
最近は地震も起きていない、向こうにしても手掛かりが無い状態かもしれない。
……と、これは子供達の居所を嗅ぎ回っていた者が、彼女と繋がっているという前提の見解である。
しかし研究分野と所属機関、現在の状況を照らし合わせると、テレスティーナが無関係とは思えなかった。

天井「仮に善意の行動だとしたら、笑い話で済むしな」

どこか救助隊での彼女の動きに不透明なものを感じるから負の方向に想像を働かせるのであって、
実は過去に実験の被害にあった研究者が学生を救うために奔走しているというなら、別に良い。
微妙な立場の子供達を思えば、対策は無駄にもならない。

あくまでテレスティーナが木山の生徒を狙っているという固定観念に囚われないよう、事実と推測を切り離す。
そうやって自身に言い聞かせていても疑いは根強く思考に残った。


鮮烈なライトのせいで、妙に色彩がくっきりとしたジムの広いスペース。
果たして今日は警備員と出会うことができた。

と、言っても天井が一通りプログラムを終え、シャワーと着替えまで済ませた後にふらりと長い髪が見えたのだ。

天井「おう。最近は会わなかったな」

黄泉川「オニーサンか。何だ? 今日は大分お疲れじゃんね」

天井「あー、昼間も色々出歩いたんだよ。それに実験の準備で機材の運搬とかな」

そう、ずっと気になっていた微妙な皮膚のべたつきも、ここのシャワーで解決したのだった。
元々の服も汗の臭いがしたため今は替えのジャージの一組に着替えており、不本意ながらそれで帰るつもりなのだ。
始終緑ジャージのこの女のように。

天井「というかお前の方が疲れていないか? ……最近また忙しいのか」

黄泉川「あー、色々頑張ってるじゃんよー」

視線に乗せた含意を、やれやれと竦めた肩がいなす。
少なくとも、先の調査ではテレスティーナの周囲に表立った波風は立っていないように思う。
そういった情報がどの程度外に出るかは怪しいのだけれど。

天井「そうか。まぁ、区切りが付いたらまた色々愚痴ってくれ」

黄泉川「あっはっは、そーじゃんね! 乞うご期待ってとこだ」

疲れていながら、雰囲気が弛むことはなく。
軽く手を挙げ黄泉川は女子更衣室に消えていった。

――まぁ、彼女がしている作業や調査について全てを晒すとは思っていない。
業務上の守秘義務として。
ただ、あの様子なら本当に現在進行中なのだろう。

ぱた、と閉じた更衣室のドアを背に、天井もジムの自動扉をくぐった。


>>+2
何か木山の件でしたいことがあれば
※1つまで、複数書いてあった場合最初のを採ります



・えぇと、大変申し訳ないのですが明日の準備がありますゆえ今日はこれまでに
 ご参加ありがとうございます

 事前連絡通り明日はお休み、明後日に続きをば
 土日は最近の例に同じく来れない可能性が高いです、そのご連絡も金曜に
 ストーリーが急場なのにしょっちゅう居なくなって済みませぬ

・安価は下でお願いします

AIMジャマーやキャパシティダウン等の機械を用いて
AIM拡散力場や能力使用に干渉する技術に関して
危険なく調べられる範囲で調べてみる


・おそようございます
 >>441 から進めてまいります


ひらひらと瞼の裏に行き来する明るさがある。

天井「…………ん、む」

青い布がふわりと広がり、捲れ、元のドレープに戻る。
開け放していた窓から風が入り遮光カーテンを揺らしている。

天井「!?」

がばり! と置時計を掴むと、起床時間より三分ほど前を指していた。
寝坊ではなかったか、良かった。
目覚ましのスイッチを切り首を捻り。
ようやっと、まともな思考が浮上してくるのを待った。

また日が過ぎ、朝になった。

焦っているな。
昨日色々あったからか疲れが名残る身体と、どうにも気が張ったままの頭。
額を押さえて大きく上体を反らした。

天井「黄泉川は……昨夜話したのだった。木山の方は連絡がないだろうか」

携帯電話とPCのアドレスを全てチェック。
予想通りではあったが、特に連絡は無い。

天井「流石に昨日の今日では決まらんか。もう冥土帰しと話し合ったのかも不明だしな」

冥土帰しは木山の生徒だけを治療しているのではなく、病院には何人もの患者を抱え、新来だってやってくる。
昨日の昼に解散してから都合良く時間を取れたかは分からない。
それに、結標に協力を仰ぐかは木山にとってシビアな問題だ。
独自に身辺調査などに時間を割く可能性もある。

だから、状況の進展を期待してメールボックスを開いても、彼女からのメールは無いと思ってはいた。

天井「ふぅ……。治療の目途も立ちそうで、ただ一度生徒の居場所を探られた痕跡があっただけなのだがな。
   まぁMARのこともあるが」

どうしてこうもピリピリするのだろうか。
勿論、木山の子供達の出自、境遇のせいだ。
それとも神経質になり過ぎだろうか?
できることも分からず右往左往していることも尻目に、何の問題も無く治療が済むのかもしれない。
希望的観測だろうか?




天井「ただ結標の協力を得られるなら、移送段階で誰かの目に留まる危険性はかなり減ると思われる……。いや、」

結標に頼むかは未確定である。
しかし、能力を用いて事に当たる可能性があるなら、能力者への対策くらいは調べておいた方が良いかもしれない。

能力の行使を妨害するには、何より演算の阻害。
特に空間移動系は演算が複雑なため少しの要因で能力が使えなくなるという。
例えば痛み。
もっと穏当なものなら五感への強い刺激、光や音といった。
警備員が使用するスタングレネードは概ね能力者の無害化のためにあるのだ。

天井「他にも……直接的に能力を阻害する方法の存在は耳にしたことがある」

前回の絶対能力進化実験において、天井が活動していた施設にはそういった処置はされていなかった。
それも、第一位自身が実験に意欲的だったからだろう。
あれが全力で反抗するようなら研究者側も対策を講じていたはず。

天井「もしくは、平研究員の私には縁が無かったが。進化実験の責任者クラスなら身辺にそういったものを敷いていたかもな」

今日はその辺りを調べてみようか。
ふらふらと洗面所で歯ブラシを咥えながら天井は伸びをする。


>>+1
調査の成果
※コンマ判定  ★修正-5

  - 4:ファンブル
  5-49:失敗
 50-94:成功
 95- :クリティカル
ただしコンマ自体が0-4/95-99の場合、修正の値によらず必ずファンブル/クリティカル



n7YWDDtkCQって昔イギーってコテやってた人だよね?
よくスヰススレ立ててた人。

知ってるかもしんないけど、川井俊夫が生きててツイッターを始めたから教えとくわ。スレ汚しスマソ。
https://twitter.com/machina1122



手元には、プリントアウトした論文を。
画面には、つらつらと検索したWebサイトを。

念のため調べてみるとはいえ、姿も見せぬ相手がこちらの行動に随時対応してこれるかは分からない。
根を詰めないよう、研究と平行して情報を探すことにした。
丁度本業の方も能力行使者と対象の齟齬について関連論文を漁っていたところなのである。
論文を二、三本流し読んでは、キーボードを叩き、行き詰ったらまた他の論文を印刷する。

デスクワーク一辺倒。
研究者の中でもサーチが好きかは人によるが、天井はそれなりに親しんでいる。
もっとも研究に必要な程度の技能であって、情報戦と呼べるような技術は無い。

天井「……論文の方は、どうにも駄目だな。多重能力だの夢物語の域になってしまう」

青髪の肉体変化のように本人のみに作用する能力を他者に適用する。
それは言い換えれば他人がその能力を行使するようなもので、
そして一人が複数の能力を保持することは不可能だと結論されているのだ。
もっと別の見方が必要か。

天井「うむ、こちらは……。阻害、抑圧、無効化、……上手くいく検索語が無いな」

カタカタカタ、グレーのキーボードが音を立てる。
能力研究の一環として、研究者側の自衛として、能力への対抗策は幾つかヒットしている。
しかしどれも仮説の段階を出ず、実用化の文字はどこにも見えない。

――成功した理論を下手に公表して、逆に能力者に対策されては意味が無いから、故意に伏せられているのかもしれない。

ぱたりと、そう暑くもないのに紙束で扇いでみる。
国際会議場などなら、「外」の人間を安心させるために能力からの防護を打ち出したりは……していないな。
他にその手の施設は無いだろうか。

天井「…………お?」

カチリ、手が止まった。
開いたページは味も素っ気も無い、文字だけが並ぶサイト。
少なくとも来賓を迎えるような華やかさとは対極にある。

少年院。
関わらないに越したことのない、犯罪に手を染めた学生を更生させるための建物だ。
その公式サイトの、報告書と変わらないような文面の中に一文がある。

天井「当院では収容している学生の能力を制限している――か」

これで、何らかの形で能力対策が実用化されていることははっきりした訳だ。
もっとも先の会議場や研究所やらに出回っていないため、
費用が莫大に掛かる、装置が大規模で移動ができないといった何らかの制限はありそうである。

天井「と、こんなものか……? くそっ、公開されていない情報が多すぎるだろう、この街は。
   何が学生と研究の都市なのだかな」

伏せられているものに、必ずしも後ろ暗い事情があるのではないだろう。
少年院の場合なら危険行動をする学生に原理を知られないためだろうから。
それにしても、科学技術の発展を標榜している割には内部でさえ秘密主義が過ぎると思う。


>>+2
「能力に干渉する技術」について踏み込んで調査を続けるか
続ける or ひとまず打ち切る


>>447
 >>1 はコテを使ったことないので酉が被ったのかと思います
 意外と被ることってあるんですね




布束は近隣の大学の蔵書を読みに行くと言っていた。
同僚も外部で実験があるとかでここ数日所内で見掛けない。
誰も居ない休憩スペースでサンドイッチやおにぎり数個を淡々と齧るのもなんなので、昼は研究棟の食堂で摂ることにした。

定食屋寄りとカフェレストラン寄り、二店ある内の今日は後者。
入り口で食券を買い、セットのサラダやスープを自分でトレイに乗せる。
職員に券を渡すと、照り焼きチキンスパゲッティがしばらくして窓口から出てきた。

天井「混んでいるな。時間帯をずらせば良かっただろうか」

顔だけは知っているような他分野の研究者やこちらの棟まで出張ってきた学生で、席は七割方埋まっている。
端の方に二人掛けの小さなテーブルを見つけ、天井は人を縫って席に着いた。

麺は流石に測ったようなアルデンテではないが、よくある学生食堂で出されるようなふやけたものでもない。
適度な歯応えと僅かに甘味のある醤油味、それに刻みネギがさっぱりしている。
一口飲んだわかめのスープはどうということもない味だが、ここの食堂はスープ三種がおかわり自由である。
逆に言えばスープだけ。
一度ここで論文を読むのにおかわりで粘ったら腹が水っぽくなったことがある。

天井(と、今は論文より検索の方をどうにかしたいがな。能力妨害の手法……どうにかして知ることはできないか)

特に、その手段をテレスティーナやMARが利用できるかについて。
彼女もまたAIM拡散力場の専門家だ。
AIM面から干渉して能力を抑圧する方法を知っているとしたら厄介である。

また実現が容易な能力者対策があれば、反対に木山の生徒達を狙う相手が能力者を率いていても対処できるかもしれない。

天井(現時点で、相手が行動に出た場合への備えはほぼ無いからな。もう少し本腰を入れて調べてみるか)

直接MARの周囲を突くのは、テレスティーナの研究や挙動について深く調べるのと同じ面倒がある。
少し距離を置いて、MARと取引のある企業を当たってみるか。
仮にも公的機関である、主要取引先として自社サイトに載せている企業があるかもしれない。
あるいは地道に行くならやはり掲示板といったソースや、警備員、MARの活動記録から攻めることになりそうだ。

それとも。


>>+1
どうやって調べませう
複数可、但しそれぞれの方法を試すので多いほど時間が掛かります



・安価はもう少々お待ちください


天井「能力者を抑えることもある警備員なら何か知っているだろうか――?」

警備員には駆動鎧始め、部隊にもよるが色々な装備が支給される。
物によっては試験配備の段階で使い物にならないとはねられることもあるらしいが、さておき。
進行形でテレスティーナを洗っている黄泉川なら、向こうとの関連でも情報が得られるかもしれない。

かちゃり、空になったスープカップを置く。
黄泉川の出現パターンからいって、次にジムに出現するとしたら明後日だ。

天井(それまでは安全な範囲で調べておこう。研究も放置はできないしな)

自身が持つ情報では、できることに限界を感じているのも確かである。
取り敢えず黄泉川にコンタクトは取ることにして、後は彼女の進展か木山の判断待ちが妥当そうである。


二十六日、夜。

黄泉川「――で、今日はまた何があったじゃん? 先日も言ったけどお前の興味を惹くような進展はまだ無いぞ?」

天井「いや、今日は、関わりはあるが別の小用だよ」

黄泉川「ふぅん。その割に随分またこんな場所を改めて」

彼女がジムに現れたのは、前回よりも遅く、日が変わる三十分ほど前だった。
通常の任務に加え独自にMARを追っているのだ、作業量も多いに違いない。
というかそんな状況でもトレーニングには顔を出すのが黄泉川らしいというか、何というか。

激務であれ、呑みを所望する時特有の鬱屈した雰囲気が無いため、気安い洋食屋に連れ込むことしばし。
注文と交換に運ばれた水を口にし、今に至るのである。
例によって半個室のある店だ。
黄味を帯びた照明の下、一気に干された黄泉川のグラスがからんと鳴った。

天井「警備員というのは、高位能力者の学生を取り押さえることもあるだろう? どういった対策をしているのかと思ってな」

こちらが切り出すと拍子抜けしたような微妙な顔をされた。
と、それは徐々に妙な笑いに変化し、

黄泉川「――それが聞きたいことじゃん?
    おーまーえーは、あっちの件で人を焚き付けといて、んな良く分からんことで引っ張ってきたのかー?」

ぎらついた目で、黄泉川は指をわきわきさせている。
……あぁ。
カウンター席のおでん屋とかにしなくて助かった。

天井「待て、落ち着け。……と、ここは私の奢りなんだから大目に見てくれよ。晩飯代には安いだろう」

黄泉川「はー……ま、それもそうか。でも大雑把にしか教えないじゃんよ。
    つーか子供ととドンパチする気じゃないじゃんね? 大人がやって良いのは愛の拳までじゃんよ?」

天井「ドンパチも拳の語り合いもせんわ! ……話せるだけで良いから頼むよ」

折り良く運ばれてきた食事を楽しみながら荒っぽい話題をしばしテーブルに載せる。
黄泉川がハンバーグ&サイコロステーキセット、天井がハヤシライスだった。

ちなみに天井がここ二日で調べた範囲では有用な知見は得られていない。
もはやこの警備員頼りである。




天井「ふむ。噂で言われている装備と変わらんということか」

黄泉川「まぁね。それに私は基本的に直接生徒を狙う武器は使わないじゃん」

まずは防御用の大きな盾、「外」でも機動隊が使うような小窓付きの四角いあれだ。
それにスタングレネードや空砲。
彼女は決して使わないらしいが麻酔針を撃つこともあるとか。
単純に武力として駆動鎧や銃器の類もあり、子供に向けてこれらを振るう者が居ると憤慨しながら黄泉川は語った。

天井「能力を無力化したりはできないのか?」

黄泉川「そんな便利なモンはそうないじゃんよ。少年院とか拘置所にあるのは馬鹿でかい機械で賄ってるんだ。
    現場じゃ基本的に腕とか捻り上げて演算の余裕を失くすか、やっぱ音と光じゃんね」

天井「つまり大きな建物なら設置できるんだな」

黄泉川「確かアレは無駄に高いし場所や電気も大量に食う。詰め所を守るのに一々そんな物使わないじゃん。
    それこそMARみたいな半独立部隊だって、資金やらの制限で置いてないと思うけど」

そうか。
MARが必ずしも馬鹿正直に警備員本隊へ装備を報告しているとも思えないが、金や敷地の問題からは逃れられない。
また、MARの本部で異常な電力消費があれば黄泉川が既に突いているだろう。
少年院で採用されている類の対能力機器については、テレスティーナも使用できないと見ても良いかもしれない。

黄泉川「――待つじゃん。まさか、そういうことか? お前が聞きたかったのは、テレスティーナのことか?」

天井「あ、いや……」

黄泉川「お前の事情は知らないけど、カチ込みなんざ掛けるなよ?
    仮にも警備員の一隊だから滅多なことは無いと思うが、あそこには駆動鎧も十数機はあるじゃん」

それに、と黄泉川は続ける。
一度言葉を切ればきりりと発する雰囲気が引き絞られる。
警備員として現場に立つだけあって、研ぎ澄まされた厳しさは一般の研究員には太刀打ちし難い。

黄泉川「対能力者用の装備、を聞いたじゃんね?
    まさかとは思うが……子供を矢面に立たせるようなことがあれば、容赦しないじゃんよ」

――直後、まぁお前に限ってそんな事は無いと思うけど、と彼女は緊張を不意に解いた。
だから天井には黄泉川の言に応える機会を失う。
張り詰めた空気はそこで終わり、残ったのは普段のトーンの、会話の応酬だった。

今、テレスティーナか他の人間か、ともかく子供達を狙う仮想敵に対して、
武力として能力者を頼みにしているつもりはない。
しかし。
敵を想定するような状況で上条や結標を巻き込むということは、きっと黄泉川に言えば殴り飛ばされるだろう。
そんな行動だと思う。




――そしてまた、事態は進む。


 From: 木山春生
 Sub: (無題)

 変な時間に済まない。

 あれから理由をこじ付けて二回会った。
 医師とも相談した。
 事情を話した上で、依頼しようと思う。

 機会を作ってくれてありがとう。

    :
    :
    :


固有名詞がやたらと伏せられたメールは、自宅のPCに届いていた。

包み隠さず状況を話し、また子供達の状況も実際に見せた上で依頼する。
その際、現在子供達が居る施設に連れて行くため、人目を気遣い木山との二人だけで話すとのことだ。
事情を知る人間が増えるリスクと、得られる安全を考慮した、彼女としても苦渋の決断だろうと思う。

天井「依頼が受けて貰えれば移送はかなり安全になるだろう、な」

三次元の制約を無視した移動は傍目に非常に追い辛い。
AIM拡散力場の存在のため全く痕跡が無い訳ではないが、大掛かりな車両などとは雲泥の差だ。

天井「……さて、他にすることがあるか、だが」

闇雲に考えても仕方が無い。
治療本番の手順に添って考えてみるか。

いずれにせよもうかなり遅い。
ごろりとベッドに横になると、灯りを消した部屋で天井は考え考え指を折った。




現在、子供達は一箇所の施設で昏倒したまま栄養管理などを受けている。
この状態では暴走による地震は起こらない。
だが一度居所を探られたことがあり、今も彼らを探している者が居ると思われる。

天井「目的は不明だが、テレスティーナ率いるMARが地震との関連で探索している可能性はそれなりにある」

また木山や冥土帰しが維持治療のため訪れているが、周囲に気を使っているためか子供達の居場所は割れていないようである。
ただ相手が焦れて動き出した場合、どう出るか分からない。


治療法は木山のAIMを用い、子供達の暴走したAIMと共鳴させ正常な状態に持って行こうというもの。
これは一時的なもののため、正常な状態になった後は擬似AIM発生装置を常時稼動させ安定させる。
それらが終了してから覚醒の処置を行う。

天井「治療法の細かい詰めは二人がしているし……私では手伝いにもならんな」

なお治療には一定の時間を要するため、何日かに分けて行われると思われる。
また暴走へのストッパーとして、施設内で上条に待機してもらう。


治療は、万が一生徒が暴走した時のため、AIMが外に漏れない隔離室で一人ずつ行う。

天井「そして、今の施設にはそういった設備は無い、と」

可能な施設は冥土帰しが用意しているらしいが、子供達の移送が必要である。
結標が依頼を了承するなら、施設から停車しておいた車などを座標移動で経由し、移動のための大型車へ。
道中はその車両で稼ぎ、目的の施設に近付いたら逆の手順で施設内に座標移動。
結標の力を借りられない場合は車両を偽装する、割り切ってスピーディに動く、など詳細は未定だ。

移送についてはその日治療する生徒だけを毎回連れて行くか、初日に全員を伴って行くかが考えられる。
目に留まる危険をより避けられる方を、手段により選ぶのだろう。
座標移動に頼るなら多分、最初に全員、だ。

なお上条や結標とは適宜合流するが、相手は地震方面からこちらを探っており、彼らから辿られる可能性は低いと踏んでいる。


最後に。
こちらが動く前に子供達の居る施設を特定されてしまうか、移送時に見付かった場合について。
仮想の相手が単に善意で探していたなら良いが、強硬な手段で生徒達か木山達を害そうとする危険性がある。

天井「社会的にか、武力的にか、……」

テレスティーナなら、MARの権限で地震の原因として摘発する形を取るかもしれない。
誰にせよ裏の後ろ盾があり前後を気にしない相手なら、強引に攻撃されることもあり得る。
関わる人間が少ないため、金銭を餌に切り崩されることは無いと思うが……。




天井「これくらい、か。私が今何かするならどの辺りだろう」

タオルケットの重みだけが全身に掛かる。
吸水性の良い軽い布が、しかしどうも纏わり付く。

天井「難しいな」

大きく分けるなら、おおよそ三つに分けられると思う。
現状での防御や情報収集か、移送の準備か、万が一への対処か。

ごろり。
寝返りを打つ。
室内はただ暗く、夜のひんやりした気配と気怠い湿気が混在している。
まるでそのままに、これからどう転がって行くか見えなかった。


>>+3
どの方面について動いてみるか
 a. 現状での防御や情報収集
 b. 移送の準備
 c. 万が一への対処
 d. その他(上記に含まれることでも、現時点で具体的にあれば)
 e. 状況が変化するまで待機

※選択肢、dの詳細記述共に1つまで、複数書いてあった場合最初のを採ります


・参考:なつやすみのできごと

 夏休み前
  黄泉川とテレスティーナについて会話
  結標にコンタクト

 7/20
  結標と対面、実験依頼

 7/23
  結標交え実験後、布束、木山、結標、上条、青髪と昼食

 7/26
  黄泉川と食事、対能力装備について会話
  木山からメール、結標に依頼する意向

 現在、26日深夜(26:00的な意味で)


・今日はこんな感じにて
 安価、また読んで頂きありがとうございます
 悩みどころが続きますがお付き合い頂いて幸いです

 土日はやはり無理だったので、続きは月曜に
 来週も何回か面接で来れない日があると思いますがご了承ください



・こんばんは
 どうも眠くてキーが打てないゆえ夜に開始ます
 後ほど


・まだ月曜……!


過去、というか記憶の中にある後の時間では、最終信号を用いてクーデター紛いのことを画策した天井である。
しかし自分自身、戦闘や戦術に秀でた所がある訳ではない。
社会戦、情報戦についても同様に。

だらしなく研究室のチェアに座りあまり使わないボールペンをくるくる回す。
出勤直後の身体は体温が少し高く、集中管理の冷房設定が歯痒い。

天井「だが、現時点で一番脆そうなのがそこなのだよなぁ」

そこ、即ち強硬に木山や子供達にアプローチが加わった場合。
主体は不明だが、仮想的にテレスティーナやMAR。
治療に入る前にも後にも起こり得る上に、天井はもちろん木山や冥土帰しにも有効な対策は無さそうだ。
この瞬間にでも生徒達が運び出されている可能性はゼロではない。
木山達が兆候を感じていないため、無いと思いたいが。

天井「対抗策、か」


相手が武力で強引に押さえ付けに来たとする。
木山……は拳銃程度は使えるかもしれないがそれだけで、開発したという能力もレベル〇。
冥土帰しが荒事に長けているとは思えない。
天井自身も似たり寄ったり、拳銃は撃ったことがあるが現在は非所持である。

誰かに頼るとすると。
一番は警備員の黄泉川だろうか。
木山の行動理念に全てが相容れなくとも、急場の二択でこちらに理があれば動いてはくれないか。
他に武力を持っている知人では……、

天井「能力者、か」

それが強度を決める指針ではないが、大体の目安として強能力は軍において戦術的価値を持つ程度と言われる。
ただ、その選択は。

深く思考に沈む前、選択肢を洗うために一度頭を切り替える。
また僅かに伸びた髪が視界を掠め鬱陶しかった。


権力を振りかざされた場合、身内で一番頼れるのは冥土帰しだろうと思う。
ただその人脈は「強い」というより「広い」であり、実際に絶対能力進化実験の時も現実に歯噛みしていた印象がある。
あるいは、地位や、それこそ武力を持ち得る知人が居たとして、巻き込み傷付けることを避けているのかもしれない。

天井「私や木山は結局一研究者だしな。接触できる権力といえば……」

ふと。
間接的になら接触できる可能性がある、全容を把握できない力の存在がよぎったが。
一旦それのことも冷静に脇に寄せた。


他に現実的に考えられるのは情報的に攻撃されることだ。
天井が絶対能力進化実験に従事していた頃、関連機関を分散させざるを得なくなったのは、
参加研究所が何者かによって電子的などの襲撃を受けたからである。

天井「そんな手荒な真似でなくとも、身柄の権利を捏造されたりとかな」

移送した施設のセキュリティを乗っ取られて、木山や冥土帰しが入れないようにコントロールを受けるとか。
どこを狙うかにもよるが、方法はそれなりにありそうである。

そういえば以前、木山が第一位の情報を得るため少しだけ書庫に侵入したらしいが。
彼女はハッキングなどの技能があるのだろうか。




天井「どこから考えてみようか……」

今日も新しく印刷した論文の、読み終えた束でがさがさ涼を取る。
室内は気温自体は冷えているため気流が心地好い。
のんびりと午前の空気を楽しんでいる暇も無いのだけれど。


>>+2
どういったアプローチへの対処を考えるか
 a. 武力面
 b. 社会面
 c. 情報面
 d. その他(上記に含まれることでも、現時点で具体的にあれば)

※選択肢、dの詳細記述共に1つまで、複数書いてあった場合最初のを採ります




相手の正体同様、目的やスタンスも知れていない。
仮定テレスティーナが強引に子供達に何かしようとしたとして、まずありそうなのは社会的に圧力を掛けてくることだろう。
武力や情報戦といった直接的な手段は隠蔽などが面倒なのだ。

それも、天井がかつて関わった実験ほどの規模なら行えていたが。
あれすら噂という形で消し切れない痕跡が人の口に上っていた。

天井「何せ地震の発生源なのは確かだからな。そこを突くなり、治療法の当てがあるとちらつかせるなり……。
   特に相手がテレスティーナなら立場上口実には事欠かない」

権威への反抗はその場だけでできるものではない。
逆に例えば黄泉川にMARの話をしたのも、長い目で見れば一応対策にはなっている。
相手の後ろ盾である公権力から本人を切り離すという意味で。

だがこれは相手がテレスティーナであるという言わば決め打ちであり、誰と問わず効果のあるものではない。

天井「やり方は色々あるが……。探りを入れてきた相手について、何とか正体を確定させるのも手だな」

ただ今まで散々考えてきたように、天井の能力やコネクションでは深い調査はできかねる。
こちらも身の安全を度外視すれば必ずしも不可能では無いのかもしれないが。

天井「他にも、相手より大きい説得力を用意しておくか」

医療に関して、こちらには冥土帰しというスペシャリストが付いている。
相手が治療法や設備など、子供達を治すためとしか言わないのであれば、こちらは彼の存在を根拠にそれを跳ね除けられるだろう。
同様に地震の原因として追究された場合はMARと同等以上の身元保証人が居れば良いと言える。
またあくまで正当を装い一種の研究素体として求められるなら、研究者や施設としてより評価の高い者が。

更に言うなら、この閉鎖的な都市において無理を通せるだけの立場があれば事は容易だ。
最も天井や木山がそういった立場に就くことは勿論、そういう人間と知り合うのも難しいだろうが。

天井「――――間接的になら。いや」

あの手紙は捨てたではないか。
念入りに裁断までした。

あれの主導者はこの上なく大きいが、しかしあれには関わらないと決めたはずだ。
第一、コンタクトを取ったとしてこちらの要求を聞く理由が向こうにはあるか?
あれは天井が居らずとも進んでいくというのに。
実行するにしても相当上手く立ち回らねば、

天井「はは……可能性を挙げただけとはいえ、私も神経が太くなったものだ」

選ばずとも、選択肢として考慮するという自体が。
長点上機学園で全うな研究を続け、少しはあれを冷静にシナプスに通せるようになったのか。

あれ。
その根本的主体はこの都市そのもの。
一炊の夢のような記憶の中に始まり、天井の生活に影を落とす――。

天井「絶対能力進化実験、か。よくもこのタイミングで思い返せるものだ」


>>+2
これからの方針
 a. 相手の正体を踏み込んで調査
 b. 保安的な意味で秀でた人や組織を捜す
 c. 研究的な意味で秀でた人や組織を捜す
 d. 絶対能力進化実験に接触してみる
 e. その他(上記に含まれることでも、現時点で具体的にあれば)

※選択肢、eの詳細記述共に1つまで、複数書いてあった場合最初のを採ります




天井「やはり一番警戒すべきは、地震の再発防止だのの名目で来られることだろう」

何せ事実という重みがある。
それに人物xがテレスティーナ以外だったとしても、木山の生徒達を求める理由として地震の要因であることは考え易い。
ならそこを攻められる可能性は当然考慮すべきだろう。

彼らを監視下に置くもっともらしさ、しかもMARより必然性を持って。

ふー、と気の抜けた息にキーを叩く音が重なり、天井の前には綺麗なデザインのWebサイトが現れた。
動画や写真を効果的に使い、精力的に活動する人々が全面に押し出された画面。
主に都市の外から閲覧されることを目的として作成された、治安維持機関の紹介ページだ。

天井「都市の安全は訓練を積んだ教師による警備員と、学生が自主的に組織する風紀委員により守られています、か」

整備された景観。
MARではないが、事故の救助を行う駆動鎧姿の大人。
イベント会場のような場所で交通整理を行う学生。

誰も、この写真の端にある細い路地の先の世界など想像もしないだろう。
ましてクリーンな外観の研究所の中でどんな実験が行われているのかも。

天井「……愚痴だな、これでは。ともあれ表向きの保安はこの二つの組織で賄われているのは確かだ」

警備員には既に、黄泉川という既知がいる。
かつ本人の言によれば現場での彼女とテレスティーナの発言力は、若干向こうが上ということだ。
こと災害関係に関しては。

天井「MARが強権をもって生徒達を確保しに来る事態に至ってしまえば、黄泉川では止められんか」

もっとも一般の警備員がMARより下、という訳ではない。
部隊間の優劣は特に無く、テレスティーナ達が災害救助の専門家だというだけだ。
仮に警備員の上層が子供達の身柄を預かるというなら彼女らもそうそう押し切れないだろう。




風紀委員は本来校内での治安維持を担当しているはずなのだが、
街頭や先のサイトなどで見る限り警備員に協力する形で校外でも活動している。
ニュースでは繁華街で能力者の起こした事件に対し、彼らの健闘が報じられることもある。

天井「警備員とは一応独立した組織、指揮系統や行動単位の構成も当然違うだろうな。
   学生である限り能力者なのは確定だし、それを生かしてパトロールなどをしているのだろう」

というか街のパトロールは明らかに校内の活動を逸脱している。
その辺りの境界は曖昧なようだ。

天井「ただ、少なくとも建前では被保護者に位置付けられている子供だ。大事の際にはあくまで補佐か」

過去に第一位が暴走した事件でも、中継に映ったのは機動隊のような姿が主。
それこそ空間移動のように一般の技術で大体の効かない技能や、本当に強力な能力ならともかく、
基本的に風紀委員の権限は警備員より下と見て良い。
実際に風紀委員がどれだけの事件に貢献しているかは知り得ないが、
学生の自治という対外的アピールのために設置されている面も確かにあるだろう。

天井「他に治安維持と言うと――」

他に思い当たるのは碌でもない裏側の鎮圧法。
「そういう」ことが可能な者を雇い、障害を排除してもらう類だ。

当然、明文化された規則にも公の慣習にも則らない、やられたらやり返す、やられる前にやるような、むしろ自衛か。

天井「……あれはまた別か。木山の生徒の保護という目的から離れているしな」

それが合法かは置いて、無法者に対しての一種の治安維持であるとは言えるのだろうが。
現状で公的に生徒達を監督下に置くという役には立たなそうだ。

天井「ふむ……。今から私が警備員になる訳にもいかんしな。そういった人脈を探すことになるが」

しきりに揺らしていた論文の紙束は、細かい折り目が付きすっかり萎れている。
凝りを解しがてら立ち上がってそれをシュレッダーに入れると、丁度学校棟の鐘が鳴った。
まだ昼ではなく三時間目の終わり。
それでも、考えているだけでしっかりと時間は飛び去っていくものだ。


>>+2
どうするか
 a. 警備員の上層と繋がりを持てないか考える
 b. 風紀委員と接触を試みる
 c. その他

具体的にしたいことがあれば付記しておいてください
無ければ天井が適宜行動します

※選択肢、詳細記述共に1つまで、複数書いてあった場合最初のを採ります


・そんなこんな、行動の方針決めまでで終了です

 明日は所用により午後~夕方以降の開始です……用が無い時もそんなものだという事実
 ともあれご参加ありがとうございます



・ごめんなさい
 急な事情によりしばらく休みます
 最近こんなのばかりですが

 落ち着いたら+バイトが確定してから再開します
 取り敢えず週一くらいで生存報告はします

 ちょっと本当に急ですみません


・生存報告なう
 急用は落ち着きました
 あとバイトの面接を複数受けてたり結果待ちだったり

 もうしばしお待ちください


・生存戦略なう
 今週もまだ無理でした

 碌に再開できないのに週一でご報告はくどいやもしれませんね、すみません
 そんな中でもレスくださりありがとうございます


・気が付けば今週の平日が終わっておりました

 来週月~木までシフトが入りましたゆえ、金曜に復帰ます
 多分夕方頃から、あまり進まないかもしれませぬがご容赦ください

 変更などありましたらまた書き込みます
 よろしくお願いします


・1ヶ月以上ぶりの再開です
 ご心配お掛けいたしました
 様々なお気遣い、ご声援、ありがとうございます

 今日は携帯からぽちぽちやっていきますのでよろしくお願いします


・あらすじ

 天井亜雄は学園都市の研究者である。

 一世一代のプロジェクトが頓挫し重い借金を背負った彼は、都市に反逆を企てるも失敗。
 超能力者第一位と元同僚の研究者に追い詰められ、致命的な傷を負う――。


 目覚めると天井はベッドの上に居た。
 それは病院や収容所ではなく、過去に自身が借りていた部屋のものだった。

 時計、ニュース、それに自分自身の姿。
 全て、天井が学園都市に来たばかりの頃に戻っていた。
 それともあの実験や、クローンの司令塔を使った都市外との取り引きが夢だったのか。

 何も分からないまま、天井は「二周目」の人生を歩み始める。


 未来の記憶から、都市の闇に関わるのを避けた天井は、合法的な医療用クローン研究の道に進んだ。
 冥土帰しの縁により長点上機学園の付属研究施設に所属。
 同僚の布束砥信や他機関の木山春生らと共に筋ジストロフィーの治療法を研究している。

 だが、木山に探りを入れた際に弱みを握られ、彼女には度々謎の要求をされるようになる。


 研究がある程度進んだ折、天井と布束にそれぞれ手紙が届けられた。
 「絶対能力進化実験」――あの記憶の中で参加し、天井の転落を決定付けた裏の実験。
 それも、何故か記憶より二年ほど早い招聘である。

 二人は冥土帰しとも相談し実験とは距離を置くと決める。
 資金面で圧力を掛けられたものの、彼らが折れることはなかった。


一方、木山からは面倒な依頼が続く。

 患者の補助のために開発している機器の試作段階の品を貸し出し。
 因縁の第一位と接触し、木山と引き合わせ。

 それらの出来事の中で彼女の目的が昏睡状態の生徒達を目覚めさせることだと知る。
 また生徒の一人の友人、春上衿衣との接触や不可解な地震を通し、天井も木山の事情に関わることになる――。


・参考:なつやすみのできごと

 夏休み前
  黄泉川とテレスティーナについて会話
  結標にコンタクト

 7/20
  結標と対面、実験依頼

 7/23
  結標交え実験後、布束、木山、結標、上条、青髪と昼食

 7/26
  黄泉川と食事、対能力装備について会話
  木山からメール、結標に依頼する意向

 現在、27日お昼前


・前回の安価

 地震の原因として社会的に攻められた場合の対策を考えてみる
  ↓
 保安的な意味で秀でた人や組織を探す
  ↓
 風紀委員と接触を試みる



警備員か、風紀委員か、それ以外――例えば裏の連中か。
警備員なら少なくとも黄泉川より上の相手と接触できなければ新たに得るものは望めまい。

天井「しかし、上の者となると……」

都市の公的な治安維持機関である警備員の上層は、つまり都市の上層に近しいと考えられる。
そしてこの閉じた世界は必ずしも正義に準じていない。
……自身に言えたことでもないと思うが。
科学の発展という至上命題や利害関係に雁字搦めにされているのだ。

「子供を守る」という、署名でも募集したら諸手を挙げて賛同されそうな目的のためでも、お偉方が腰を上げるとは限らない。
全ての警備員や関係者が黄泉川のように真っ正直な人間ではないだろうから。

天井「ならば風紀委員に当たってみるべき、かな」

警備員と風紀委員では、立場としては前者の力が強い。
能力を持ち、訓練を受け、学園の風紀に貢献していても、所詮は学生と見る向きも多い。
黄泉川のように守るために危険な任務から遠ざけようとする者もあれば、単に侮る者もあるだろう。

しかし彼には彼らの強みもあると思う。
それは開発によって得た力や副次的に発生することがある突出した才能。
何より、「大人の事情」に直接縛られていないということ。

ふ、と四時間目のチャイムを聴いた。

残念ながら、天井の個人的な知人に風紀委員は居ない。
過去に開発を担当した電撃使いの学生達も該当していなかった。

天井「どうしたものかな。長点には支部も無し、黄泉川に伝手を……と、流石に殴られそうだ」

黄泉川はテレスティーナの件やそもそもの業務で多忙だ。
まして、子供を危険に巻き込むなよと最近何度も釘を刺されている。
この期に及んで風紀委員を誰か紹介してくれなどと頼めば、今度こそ制裁が振ってきそうである。
物理的に。

すっかり暑さの抜けた体内には、抑えた冷房も心地好い。
だがずっと研究室で座っていても事態は動かないのだ。

天井「さて、どう動こう」


>>+2
どうするか
 a. 取り敢えずどこかの支部を見に行く
 b. 町で巡回している風紀委員に困り事を装って話し掛ける
 c. 何とか黄泉川の伝手を頼る
 d. 長点に在籍している風紀委員を探して接触する
 e. その他(具体的にお書きください)

※選択肢、eの詳細記述共に1つまで、複数書いてあった場合最初のを採ります


原作キャラではいなかったよな



天井「ふむ。……まぁ、何も繋がりの無い相手よりは学内で探した方がスムーズか」

都合良く今は授業中、そして次は昼休みである。
何か話す切っ掛けのありそうな生徒が居れば、直接会いに行くのも難しくない。
天井はおもむろに書庫の画面を立ち上げた。

見慣れた機能的なデザインのページにキーワードを打つ。
学籍、長点上機学園。
備考欄に風紀委員。

天井「できれば電撃使いだと話の種ができるのだがな」

能力別、ソート。

この学校は能力至上主義、外に置き換えれば進学校のような雰囲気であるが、ヒット数は意外に多い。
だが考えてみれば風紀委員は能力を実践する格好の機会である。
それに将来の進路のことを考えても、生徒にとって所属するメリットはあるのだろう。

天井「それか私の分野と近い研究をしているなどでも良いが」

学生が内外に研究協力する、また人によっては主体的に研究目標を持っていることはままある。
だがそこまで楽にはいかないようだ。
というか、長点で隣接分野の研究が行われているなら、そもそもこれまでにコンタクトしているはずだ。
こちらからなり、向こうからなり。

何にせよ全校に三十数人の風紀委員が在籍しており、また電撃使いの者も数名。
全員が同じ支部に所属するのではなく、近隣のいくつかの支部にばらばらに配属されているようだ。
数人リストアップし休み時間に探してみよう。

天井「しかし、開発の話から始めて風紀委員の活動まで持っていくのは少し骨か……?」

容疑者の拘束時の出力制御について云々、などと話を運べば不可能ではないだろうが。
立ち上がり、腰に手を当てるとばきりと鳴った。
どうにも身体が凝ってならない。


>>+2
何か話し掛ける際の話題があれば
(特に無ければ開発方面から話します
 また三年生、男子、など特定の相手にしか当てはまらない話題の場合、該当しそうな学生を選びます)


・風紀委員の支部に関して

 基本的にアニメ版の設定に準じ、細かい部分は勝手に補完しました
 支部は必ずしも各学校敷地内にある訳ではなく(敷地内の場合もある)、
 また別の学校の生徒が同じ支部に所属したりもする……といった感じです


>>506
 Yes. 展開によっては名無し風紀委員だけになるかもです



・原作の端役キャラにちょっと性格など捏造入ります


風紀「えっと……、そうですね。そもそも全力で能力を撃つことはほとんどありません。
   不良などを相手に派手に立ち回るイメージがあるかもしれませんが、実際することの八割は、こう……」

天井「身も蓋もないが、地味な仕事ということか。
   確かに普段の見回りや、行事の時には人の誘導などもしているようだが」

放課後、学校の敷地から駅に向かう道沿いの喫茶店である。
二年のとある女子が快諾してくれたため、場所と時間を改め聞き取りをすることになったのだった。
半屋外の席はがっしりとした柵と、他には張り出した屋根で日光を遮っているだけなのだが、暑さは感じない。
工場などのエアカーテンと似た仕組みで空調の冷気を閉じ込めているらしい。

風紀「は、はい。はっきり言えばそうです。時々ひったくり犯とかに電撃を使ったりはしますけど……。
   でもやっぱりやり過ぎないよう気を使いますし、私は体術の方が多いです」

色々と悩んでみたものの不自然にならない話題というのも難しく、結局現場での演算などについて知りたいと申し出ていた。
人間相手に能力を行使することもある実践、いや実戦のシチュエーション。
訓練とは違う戦闘における能力運用に開発官が興味を持ってもおかしくないはずだ。

風紀「犯罪者といっても……その犯罪の程度にもよりますが、基本的に重傷を負わせるようなことはしません。
   もちろん一般の方に危害を加えようとしている時などは、手段を選ぶ暇もありませんが」

それでも後遺症が残るレベルの攻撃を加えることはしない、と少女は締めた。
こくりとカフェオレを飲みどこか不安げにこちらに視線を向ける。
……電撃使いには我が強い性格が多いと思っていたのだが、珍しいタイプのようだ。

天井「では、そうだな。守秘義務上話せる範囲で構わないから、実践で使った能力の応用について教えてくれないか。
   例えばさっき言ったひったくり犯、逃げる対象を足止めするのに――」

その時。
ピリリリリリリ!! と。
控えめながら良く通る、単調な電子音がテーブルの雰囲気を止めた。




風紀「――はい。今十八学区に居るわ、場所は――探知した? うん。うん」

鳴ったのは彼女の携帯で、一度こちらに黙礼してから問答無用で通話している。
どうにも尋常ではない。
地味な仕事ではない、もう一割が目の前で展開されているらしい。

風紀「了解。急行します。そちらも気を付けて、『あお』」

天井「え?」

話を振られたのかと思った、が、鋭い目付きになった風紀委員はじっと店外を睨んでいる。
突然フランクに呼ばれたのではなく電話の先に宛てた声のようだ。
二、三頷いて、ピ、と回線は途切れた。

風紀「――申し訳ありません、先生。ちょっとトラブルがあったらしいのでそちらに向かいます。
   続きは、また今度お時間を合わせますので……」

腕章を付けながらきりらと引き締めた表情が、飲んでいたドリンクの上を彷徨い一瞬揺らいだ気がした。

天井「良いから急げ。時間を取ってもらったのはこちらだ」

風紀「ありがとうございます。すみませんが、失礼します」

ぺこり、頭を下げたかと思うと彼女は足早に去っていった。
木製の丸テーブルに、二つのグラスとおしぼりが残る。
天井はぐいとアイスコーヒーを飲み干した。

天井「緊急時に支払いを気にしてどうする、生真面目な生徒だな」

もうここに用は無い。
彼女は丁度店内を回って出入口をくぐるところだ。

天井「さて、……行ってみるか」

思い掛けない「見学」の機会である。
開発官が興味を持ってもおかしくはないはずだ、多分。

現状、長い目で見て少しずつ信用を得ている暇はない。
どう動くにせよ活動に近付いてみるのは意味があるだろう。
周りの様子を見て、危なければ避難すれば良いと思える分、都市の裏を探ったりするのよりは気が楽だった。

天井「図太くなったものだな、私も」

これが危機意識の欠如かどうか、一考の余地はあるが。
ぺらぺりの伝票を手に取り、ポケットの財布に手を伸ばしながら天井は立ち上がった。


・続きは少々お待ちください




店を出て十分ほど、天井は既に後悔していた。

裏通りは昼夜問わず基本静かなものだ。
現在も、人気の無さという意味ではその通り。
ただ覗き込んだ一本の路地を別にして。


ドッ、グシャリ、と鈍い音が壁に響いている。
時折ぴしりと紫電が走った。
すえた空気に混じって血が匂った。

乱闘だった。

か弱い一般人、といった風情の者は見えないから、元はスキルアウト同士の衝突か。
人数はそう多くない。
風紀委員が「トラブル」と表現したように、さほど大事件ではないのだろう。

いかにもな、擦れた外見の男女が十数人。
幾らかは地面に倒れ伏し、残りは思い思いの凶器を振るう。

その中を二つの腕章が縫う。
ついさっきまでおどおどと受け答えをしていた彼女。
それにもっと小柄な、荒事とは無縁に見える茶髪の少女。
たまに細く漏れる電撃の他は、滑らかな身体捌きだけ、それだけで暴徒と渡り合っている。

天井「――――」

全身が強張っている。
感嘆、ではない。

天井「――――なんだ、これは」

慄いている。
あの第一位を前にしてさえ、表面上は平静を装えたというのに。

――天井が知る暴力というものは、そういえばあの超能力者が関わるものばかりだ。
それはいつも、名の通り一方通行な暴虐。
唯一別の相手に突き付けられた拳銃は、暴力とは違う色を持っていた。
だから。
拳や、ナイフや、割れた瓶や、そういったものが正面から潰し合う様を、天井は初めて目の当たりにしたのだ。

この角のこちら、音が聞こえた時点で止めておけば良かった。
ガラスの破片が掠り、小柄な少女の頬からふっと散った赤を目で追いながら、天井は心の底から後悔していた。


>>+2
それはそれとしてどうするか


・こんなところですが、今日はこれまでに
 短かったですがご参加ありがとうございました

 次回は多分来週の金曜になります
 (ちょっとシフトが手元に無いので、間違えていたらまたご連絡ます)

 間が空いて申し訳ないですが、よろしければ、また一週間後に


逃げ出した一人を黄泉川直伝の護身術で取り押さえ、事情聴取の為風紀委員の支部へ。
流石に筋トレとかしてるし何とかなるんじゃないか?黄泉川に遊び半分で教えられてそうだし。


・おはようございます
 今日は本文は投下できませぬが、安価のみご協力ください

>>+1
黄泉川直伝護身術を習っているか
※コンマ判定

  0- 4:習っている(遊び半分)
  5-49:習っている(遊び九割、飲み屋でヘッドロック掛けるのと同列レベル)
 50-99:習っていない





・ありがとうございます

 一度、呑みの席でそんな話をした事があるようです
 具体的には
  腕を捕まれた時の抜け方
  ナイフを振りかざされた時の対処
 など基本的な動作について、天井を実験台に披露されたり、逆に黄泉川相手に数回練習してみたり

>>517 の方がいらっしゃいましたら、「誰か逃げてきたら取り押さえる」でOKかお書き願います
(こっちに逃げてくるかはランダムです)
本日中にレスが無い場合はOKかどうか安価にいたします


ID変わっちゃってるかもしれませんが517です
ありがとうございます。>>1さんの書きやすいようにして下さい。オーケーです。


>>524
 ご返答ありがとうございました!

 IDが変わっているようですので(ご無礼ながら)念のため今日中は待機いたししますが、
 >>524 で次回はまいる予定です
 来週までしばしお待ちください

お手数かけてすいません。出掛けてしまっていて…
帰り次第家から書き込ませてもらいます。日が変わるかどうかの時間になりそうですが…


>>527
 あああ恐縮です
 このまま日が変わるまで待っていただければ>>524 だけで大丈夫です

 自分もこんな時間になってしまいましたが、どうかご無理なさらず
 変な書き方で気を使わせてしまって申し訳ないです


・ところで、シフトを確認したところ次回は木曜でした
 25日の方で、よろしくお願いします


ギリギリ間に合ったかな?517及び524のはずです。


>>529
 お手数お掛けしました
 確認レスありがとうございます……!



・オソヨウゴザイマス
 明日早いのでそんなに居られないのですが、今晩もよろしくお願いします


暴徒たちは劣勢だ。
二人の風紀委員は的確に彼らの数を減らしていく。
気を抜くことは一瞬でも許されないだろうが、鎮圧は時間の問題とも思われる。

天井「あ、あぁ…………」

足が竦むことなど何度もあった。
記憶の中で実験が頓挫してから、今ここに到るまで。

特に天井を苦しめたトラウマは現在を覆い隠す過去の恐怖だった。
ならば、眼前に広がるのは未来の恐怖。
少女達の敗北を予測してのことでない、逃走したスキルアウトがこちらを傷付けることを憂うでもない。

現実味を持っていなかった、踏み込むかもしれない未来。

天井(考えていた。木山の生徒達に手が及んだ時にどうすべきか。社会的に、情報的に、それから、)

「武力」的に。

考えて何かできると思っていたのだろうか、血を吸った角材にさえ怯えている自分が。
銃器や駆動鎧に対すれば吹き飛ぶような一般人が。

天井(違う! 私自身が武力衝突に加わろうというのではない……対抗する手段を探しているだけだ!)

しかし、強硬策を持ち出す可能性が想定されるような相手に、それが通じるか。
裏で手回しするだけの立場にあれば武器を向けられることはないと?

そして、そうやって亀のように首を引っ込めていれば全て上手くいくと?

直接的な力だけではない。
木山に脅されていた頃。
絶対能力進化実験への参加を強いられそうになった時。
できたのは、耐えることばかりだった。

天井「クソッ……クソッ!!」

強く噛み合わせた奥歯が痛い。
目の焦点をたった今投げ飛ばされた男に合わせると、不意に目眩がする。
暴徒達は劣勢で、もはや一つの弾みでもあれば瓦解しそうだ。

ぎりぎりと眉間が焦げ付く。


>>+1
暴徒がこっちに来るか&上手いこと対処できるか
※コンマ判定  ★修正-20

  0- 4:ファンブル
  5-49:失敗
 50-94:成功

 95-99:クリティカル
ただしコンマ自体が0-4/95-99の場合、修正の値によらず必ずファンブル/クリティカル





ごぉん!!
打ち倒された女の持っていた鉄パイプが、室外機にぶち当たり酷い音を響かせる。

暴徒「ってられっか! 権力の犬が、背中にゃ気を付けとけ!!」

それが契機だった。
未だ動けたスキルアウト数人が逃亡。
一人はより暗い路地の奥に、一人は建物同士の薄い隙間に、そして一人は、

天井「…………!」

現場からこちらが潜む角まで幾ばくか。
距離はあった、逃げるだけの。

だが。

天井(街の喧嘩にも震えていては、結局……ッ!!)

恐れと、良く分からない怒りのようなものが足を止めさせた。




暴徒「な……、」

天井「あああああああああああああああッッ!!!!」

出会い頭、向こう脛を蹴る。
骨が衝突して足が痺れる。

暴徒「んだてめぇ!! 舐めた真似しやがってブッ殺すぞ!!」

体勢を崩しても相手は倒れない。
逆に節くれ立った手が天井の腕を掴んだ。

軋む。

唾の掛かりそうな近くに歪んだ顔がある。

天井「う、あああぁあぁぁぁぁぁぁ!!?」

敵の足の甲を踏み付けようと、
届かない。
必死に捻る腕は鉄骨の隙間に突っ込んだように動かない。

暴徒「粋がってんじゃねぇよ! 死ねジジィ!!!」

ズン…………!! と。
衝撃が走った。

腹にめり込んでいく腕を見た。
くの字に吹き飛ばされて背中からも衝撃。
目の前が黒い。
黒く痛い。

天井「あ、ぅぐ」

暴徒「――っち、――――て」

耳を塞ぎたくなるような怒声も、もう聞こえない。
貧血のように感覚が失せる。

暗い霧の中の視界、男が振り上げた足、




??「――――――!!」

鮮烈な飛び蹴りが空気を裂く。




風紀「せ、先――!? どう――、い――――く病院に!!」

??「――、すぐ――――」

全身に鐘が鳴っている。
ごうごうと身じろぎの度に痛む身体を離れ、天井の意識は沈んだ。


>>+1
怪我のヤバさ
※コンマ判定

  0- 4:色々と重傷、一週入院コース+その後も様子見
  5-29:一ヶ所骨折、一日入院コース+しばらくギプス装着
 30-84:数ヶ所強打、数回通院コース+しばらく動くと辛い

 85-99:意外と軽傷、一回診察コース+数日痛む程度



護身術クリアしてこれなんだからキッツいなぁ



ぼやけた白をバックに覗き込んでいるのは見知った人物である。
カエルに似た顔だった。

冥土「患者として会いたくはないと前に言った気がするんだがね?」

天井「冥土、帰し……」

身体の痛みは鈍い。
代わりに、浮ついたおかしな感触がある。

天井「…………」

それに、左腕が動かない。
反対の手で探ると硬質な感触が上腕を包むようにあった。

冥土「麻酔が掛かっているからね? 腹部を殴られたようだが、幸い内蔵に損傷は無いよ。ただ左の鎖骨が折れている」

背中を打った時かもしれない。
あれは十八学区であったことなのに、冥土帰しの病院に居るのは何故だろう。
天井の経歴、過去に共同研究をしたことを汲んで、わざわざ学区を跨いで搬送されたのか。

冥土「少しぼうっとしているが、記憶や意識ははっきりしているかい? 後でまた検査に付き合って貰うよ」

天井「……大丈夫だ、わかった」

救急車とはそんなに融通が利くのか。
物は考えられているのにぐるぐると思考が回る。
質疑だけが際限無く浮かび、どうしてか応答が構築できない。
記憶喪失にはなっていない、と思う。

冥土「ふむ、受け答えは大丈夫のようだ。頭は打っていないはずだが、念には念を入れて、ね?」

長点の、風紀委員の生徒に話を聞きに行った。
急な呼び出しで席を立った彼女を追って、乱闘現場を見た。
殴られた。
蹴られそうになった。
もう一人の風紀委員が跳んで、あれは助けられたのか。

天井「どう、なったんだ」

冥土「喧嘩のことかい? 逃げた者含めて、監視カメラの映像などから全て取り押さえたそうだよ?
   不本意ながらこの街にはよくある事件といえ、回復したら君にも事情聴取があるとのことだ」

麻酔をおいても、気が重い。
勝手に後を追って一般人を守る仕事を増やしたとなれば、流石に顔向けし難い。

天井「風紀委員の二人は……」

そのために余計な傷を負ってはいないだろうか。
いずれにせよ謝らねば。

冥土「君が寝ている間に一人には会ったがね、酷い怪我は無いようだったよ。手当ても自分達でしたみたいだね?」

天井「そう、か」

ふぅ、と、息は深い深いところから出た。
医師から視線を外し、横たわった目に映る範囲をゆっくりと見渡す。
白と淡い暖色で埋まった、無個性な部屋。

冥土「……検査まではまだ時間がある。少し眠ると良いね?」

困ったような苦々しい表情を浮かべる冥土帰しだけが、部屋の中で意味を持っていた。

木山の件と乱闘騒ぎ、直接関連はないが彼は何か察しただろうか。
そういえば職場に話は行ったのか。
きっと、詳細に伝わっていれば布束は怒るだろう。

色々な事が頭を巡り、天井は何も言わずに目を閉じた。



・むぅ、また半端ですが今日はこれにて
 天井をボコるだけで終わってしまった……
 いつもご参加ありがとうございます

 次回は11月2日の予定です、遠いですがよろしくお願いします
 ちなみに11月前半は暇め、後半は忙しめ、12月以降は暇めになりそうです(シフトが)


>>550-553
 すみませぬ、ランダム要素が欲しいのでこれからもやっぱりコンマは入ります
 護身術は遊び九割の方だったので判定厳しくなりました


最後に安価のみ
>>+2
今回の乱闘の件について冥土帰しに話すか
(あれば、どのくらい詳しく話すかも)


たまには良い思いしてくれよ天井……

↑名無しNIPPERってなんだよww

はやく恋人つくろうぜ!

>>564
携帯からだと
『VIPにかわりましてNIPPERがお送りします』
って名前が『名無しNIPPER』に見えるんだ
>>563は『名無しNIPPER』って名前にするのが普通だと思ったんじゃないか?
ちなみに>>564も『名無しNIPPER』に見えるから携帯だと中々面白い事を言ってるように見えるぞww
このスレに関係ない事でごめんな


・こんばんは

 急用という名の接待により次回の予定を11月3日に変更いたします
 申し訳ありませんが、よろしくお願いします



・帰宅ました
 ちょっと異様に眠いので夜にまた来ます……


・おはy ……大変おそようございます
 明日は夜番なのでしばらく粘れる予定です
 どうぞよろしくお願いします


詳細な検査の結果は、あらかじめ聞いていた怪我の度合いと大差無かった。

ベッドサイド、カルテを持った冥土帰しが立ったまま告げる。
鎖骨が折れているものの手術はせず、固定具で押さえて回復を待つらしい。
まぁ、まだ若いからね? と医師は笑った。

天井(若い、と言ってもな……)

研究者としては若手とも呼ばれるし、あの記憶の最後にはまだ数年届かない。
だが医療用クローン研究の道に進んだ頃から比べたら確実に時を重ねてきた。
この年月で、時間と引き替えに何をしてこれただろう、ぼんやりと天井は追想する。

冥土「固定具は防水性があるから風呂に入っても平気だよ? ただし左腕は極力動かさないこと、勝手に外さないこと」

天井「待ってくれ、骨が繋がるまでこれは外せないのか? ……この下は洗えないのか」

冥土「大丈夫。定期的に通院してもらうから、その際に外して拭き清めれば良い。
   ――僕は患者に必要なものは何でも用意するよ」

天井(その台詞は風呂の問題ごときに使って良いのか?)

重要なことではあるのだが。
他にも、片手では髪が荒い難いかもしれないねとか、それは自分で何とかするとか、そんなことばかりを話した。

検査室を幾つか巡り、再び戻った病室である。
実生活に即した話題が尽きると一瞬だけ声が途絶え、天井は仕方なく窓の外に視線を逃がす。
何だかんだで午前十時を過ぎた陽射しは強い。
間近に居る訳でもないのに互いの呼吸音が聞こえそうだった。

天井「――訊かないんだな」

冥土「君が話そうとしない限りはね? 僕はどうしたって一介の医者だ」

一介の、にしては随分大御所だな。
茶化すように口にしようとした言葉も、少しの笑いも、しかし喉で止まってしまった。

どうしたって。
そこに込められた意味が不意に理解できてしまったために。




冥土帰しは飛び抜けた医療従事者である。

それは多分目標ではなく、何もかもを治療に懸けた結果そうなったのだ。
文字通り、人生におけるリソース全部を、患者達のために注ぎ込んできたのだろう。

彼の人脈は広く影響力もある、それなのに絶対能力進化実験の時などに手をこまねいていたのは、
頼った相手を巻き込んでしまうことを憂いているのかもしれない、と考えたことがある。
今は、冥土帰しは本当に手段が無く臍を噛んでいたのだと思う。

訳ありの患者を多少匿うとか、医療分野の研究者をそれなりの施設に捻じ込むとか、そういったことには融通が利く。
だが例えば動かせる武力があったり、政治に口を挟めたりはしない、きっと。
それは逆説的に、冥土帰しの人脈が医師として生きる中で築かれたものだということだ。

医療というフィールドが彼の戦場の全てで、それ以外のことは苦しみながら置いてきたのではないか。
ただ患者を救い続けるために。

天井「――――あの時動かなければ、これからも動けない気がしたんだ」

冥土「……ふむ」

話題の転換を感じ取ってか、冥土帰しはパイプ椅子を引いた。
長くなるかもしれないのに、多忙な彼はとことん付き合ってくれる気のようだった。

天井「以前相談したことがあっただろう、布束を連れて」

例の招聘の時だ。

天井「あなたは耐えろと……反抗はせず、しかし屈せずにいろと言った。そしてそれは正しかった」

冥土「圧力のことは辛かったね?」

天井「研究費が止められて焦らなかったと言えば嘘になる。だが現に今、私も布束も研究を続けられている」

医師は首を傾げて促した。
続く接続詞を予期しているように。

天井「しかし、」

しかし。
耐えることは万能の手段ではなく。
こと今回は、相手も出方も分からない。

天井「不得手な分野でも、動かなくてはいけない時もある。今に限らず、な。
   別に颯爽とスキルアウトを取り押さえたかった訳ではない。木山の件で、私が矢面に立って何かできるとも思わない。
   ――ただ、足を竦ませていてはいつまで経っても動けないと思ったんだ」




冥土「……木山君から、空間移動系の高位能力者に伝手を作ってくれたと聞いたよ。
   乱闘の場に居合わせたのも、ゆくゆくは彼女と生徒達のためだね?」

天井「風紀委員と何とかして繋ぎを取りたかった。警備員には信用できる既知が居て、MARやらについて情報交換をしているが……。
   違った面から見れば視野が広がるかもしれないと、な」

ふぅ、と脇から息が漏れる。
含まれた感情は呆れではなさそうだったが、読み取ることは叶わなかった。

冥土「動いているじゃないか、既に。
   実際、君の助言や――結標君、だったね、彼女を紹介してくれたことは本当に助けられている」

天井「だがいつも足りないんだ。仮にMARが生徒らを確保しようとしているとして、保安を盾にされたら逃れられるか。
   駆動鎧の一隊に囲まれてどうにかできるか――。考え過ぎかもしれないが、本当にそうなってからでは……」

冥土帰しは黙り込んでいる。
彼も彼で患者を守るために手を尽くしているだろう。
しかしただの研究者である天井以上に、彼は一介の医者だ。

――予防医療、というものもあるが、医療は基本的に発生した怪我や病に対処するものである。

自分の前に現れる、既に傷付いてしまった人々を見て。
老年の名医がどれ程のものを思って生きてきたか、天井には知る由も無い。



★目的の変更安価

スキルアウトと遣り合った天井は心境が変化しているのかもしれません

>>+2
目的の変更先
 a. 献身
 b. 闘争
 c. 助力
 d. 正義
※上記以外でも行動に沿ったものなら

ちなみに献身と助力は対象が違います(どちらが何かはヒミツ)

>>+3
コンマ判定
  0-19:上記で決まった目的に変更
 20-99:変更無し




【2周目・スタートから6年強/本編2年前時点】
目的:「貢献」→「献身」木山と生徒達を助ける


天井「……だが、動けていると言うなら。闇雲に行動するつもりはないが、できることがあるはずだ」

一度目蓋を閉じ、ぐ、と眉間に力を入れた。
降り掛かる災難に、自身は対する力を持っていないと思っていた。
だが天井なりにしてきたことは、意味があると冥土帰しは言う。

冥土「――そうだね。君にも、僕にも、できることはあるはずだ。ただしこんな無茶はしない方が良いと思うがね?」

天井「善処する。変に目立ってMARなり――生徒達を狙っているかもしれない誰かに付け入る隙を与えたくないしな」

風紀委員の二人にも迷惑を掛けてしまった。
それに、

冥土「そういうことだけじゃない。いたずらに危険に身を晒すことはない、ということだよ?」

激痛に意識を手放した瞬間、以前に死を感じた時とあまりに感じが違ったため、目覚められないとは危惧しなかった。
しかしもっと重傷ならあり得ただろう。
後遺症が残っていた可能性もあるのだ。
更に言えば、直接的な武力衝突の場にあって今後も無事な保証は無い。

天井「わ、分かったよ。こういうことは避ける」

冥土「ふむ、そうしてくれると助かるね。命を助けるのは医者の仕事だが、命を守るのは自分自身だよ?」

あぁ、と頷く。
無意識に「しない」ではなく「避ける」と言ったことに、天井は気付かなかった。
窓から滲む陽光が眩しい。


冥土「と、体の調子はどうだい? そろそろ麻酔が切れ始める頃だけれど」

天井「……痛むのか?」

恐る恐る左肩に目を遣る。
拉げた車のドアに挟まれたり拳銃で胸を撃ち抜かれたりしたこともあるが、そもそもが研究生活の天井である。
苦痛への耐性は、そこまで、無い。

冥土「肩はきちんと固定して動かさないでいる限り大丈夫。ただ腹部と背面全体の打撲が、ね」

そう言われると痛いような気もしてくる。
我慢できない時のために湿布薬を処方するとのことだが……。

冥土「問題が無ければ退院、あと風紀委員に連絡するけど。早めに事情聴取はしておきたいそうだね?」


>>+2
風紀委員に連絡してOKか


・目的変更にあたって、アナウンスが2つほど

 1)研究自体が目的ではなくなりましたが、安価やストーリー上で何かない限り研究は続けます

 2)目的の達成が終了条件のため、1周目の最後(原作5巻の時期)とはずれる可能性があります
  (4巻までの時期に終了、6巻からの時期に食い込む、など)


ok


・おうふ、済みませぬ、一応連投は無しです、よ……
 取り敢えず>>+1 で、でも2:45までに無かったら↑で行きます
 夜中ですし人居るか分からないので

Ok


>>583>>585 もありがとうございました
 続き書いてきます



夏休みだけあり、冥土帰しが連絡すると風紀委員の彼女達は三十分程で来られるとのことだった。
あの現場に実際に居た二人だそうである。

長点上機学園は名門校ということもあり自由参加の夏期講習を行っているが、
昨日話した女子生徒は風紀委員の仕事とバランスを取りながら出ているのだろう。
自身の事情聴取のために講習を休ませてしまった可能性に思いを馳せると、気まずさは募るばかりである。

天井「もう一人に至ってはどこの生徒かも分からんしな。中学生、位だと思ったが……」

書庫でざっと目を通した長点の風紀委員の中には見ない顔だったと思う。
くるくると右手で上衣のボタンを留めながら、曖昧なイメージを掘り返す。

天井「しかし、ここで事情聴取とはなぁ」

現在居るのは、まだ病室なのだった。
関係者への聞き取りは記憶が薄れない内に、が鉄則らしく、体調と気分に問題が無いならとすぐの面会を求められたらしい。
それを伝えた冥土帰しはとっくに職務に戻っている。

昨日の服は汚れと細かな破れで着れたものではなく、入院着のまま会うのもなんなので、
売店で購入した前開きの半袖シャツ――カットソーとか書かれていたシンプルなものに着替えた。
懸念の打撲には痛んできたので念のため湿布を貼った。
売店まで歩いても問題無かった位で、耐えられるなら本来使用しない方が良いらしいが、面会中に酷くなっても厄介だ。

天井「はぁ。……『事情聴取』などと物々しく言われると緊張するな」

現場まで尾けた疚しさがあるとはいえ、立場的には被害者の側である。
犯罪者のように扱われるものではないと分かってはいるのだが、やはり負い目がある分落ち着かなかった。


>>+2
聴取の際、現場に行った理由について何と説明するか
(特に無ければ開発官として興味を云々、になります)


・と、いうところで切りが良いのでここまでに
 事情聴取は纏めて次回やります
 本日もご参加、読んで頂きありがとうございました

 次回は6日になりそうです



そういや今の天井くんの外見ってやっぱりちょっと陰気なおじさんのままなのかな?
内面が変われば外見の印象も変わってたり……はしないか


・ごめんなさい、何かどうしても書けないので今日はお休みさせてください

 ちょっと間置いて11、12、14日のどこかから再開します
 進みも遅くなっているのに本当に申し訳ありません


>>590-591
体格は程良く健康的になっています
服装センス(原作でもこのスレでもあまり描写無いですが)、髪型などは一周目と同じ、
雰囲気は変化しているかもしれませんが天井本人にはよく分かりません


次回までには復帰してきたいと思います


・こんばんは
 次回は来れたら12日の夕~夜に来るます
 無理でしたら14日に
 取り急ぎご連絡まで


・今日は無理でした……明日のバイトまでに読まねばならない本ができましたゆえ
 次回は明後日になります


・おそようございます
 なんとしてでも事情聴取は終わらせる構え
 今日もよろしくお願いします


考えてみれば、訪ねられる側になることは少ない。
こんこんというノックの音に応えながら思い付いた。
共同研究者――木山やSプロセッサ社の担当の元へはこちらから足を運ぶことがほとんどで、
特に交流のある学生達――青髪少年、上条、結標との初対面も出先だった。

風紀「失礼します……具合はどうですか? 先生」

??「失礼しまーす」

天井「あぁ、手術するほどのものではないから大丈夫だ。……昨日は、手間を増やして申し訳なかった」

病室の窓と引き戸は丁度対面に付いており、夏の白い陽で二人の姿はくっきりと照らされる。
長点上機学園の少女はもちろん昨日話した相手。

風紀「いいえ。こちらこそ、先生を巻き込んでしまい申し訳ありませんでした」

天井「いや、勝手に追ったのは私だ。不用心だったよ」

やはり面倒を掛けた居た堪れなさがあり、まず謝ってしまったが、彼女の方も責任を感じているようだ。
少し沈んだ表情が覆いきれていなかった。

??「――うん、でも不幸中の幸いだったかも。頭に血の上ったスキルアウトにやられて骨折で済んだと思えばね。
   オジサン、結構鍛えてるの?」

もう一人は見知らぬ制服に身を包み頬にガーゼを貼っている。
セミロングの茶髪、まだ少しあどけない風貌、年は布束と同じか少し下くらいだろう。
人目には付かない事情聴取も仕事の一環だからか、二人とも揃いの腕章をしっかり装備していた。

風紀「あお……」

開けっ広げな物言いに先輩格の少女は軽く睨みを利かせるが、言われた方はどこ吹く風である。
ついでにその呼称は非常にこちらの心臓に悪い。

天井「程々にな。しかし喧嘩などとは普段縁が無い、無茶をしたと思うよ」

??「うんうん。場慣れしてない人は気を付けなきゃダメだよ。私らは……能力者とか以前に、これでも訓練受けてるんだから」

天井「ああ、肝に銘じる」

今考えれば、暴動の熱気に中てられたのかもしれない。
素手だったとはいえ、アスリート並に鍛えている者も居るというスキルアウトの前に立ったとは。

風紀「――と。では、少しだけお話をお願いしますね」

天井「良ければ座ってくれ。残念ながらこれしか無いのだが」

売店に立った際に用意しておいたパイプ椅子を勧める。
では、と二人が背もたれを引いた瞬間だった。

ピリリリリリリ!!
――よくよく、彼女との面会は妨害が入るものらしい。




??「って、ここ病室でしょ? 携帯、大丈夫なの?」

天井「この区画には電磁波に悪影響を受ける精密機器が無いらしい。
   その辺りは考えて配置されていて、病室の四割は携帯程度なら使えると――、
   というか彼女が電源を切っていないということは、君達も知っていたのではないのか?」

??「あー……、受付の人が言ってたかも。そして聞き流したかも」

きちんと病院で電源を落としていたという意味で真面目なのか、説明を聞いていないという意味で不真面目なのか。
応答している先輩風紀委員を尻目に、後輩は自分の携帯電話の電源を操作した。
暢気に話しているのは、室内に響く通話中の声がそこまで切羽詰まっていないからである。

ふぅ、溜息と共に電話を切り、少女は眉尻を下げてこちらに向き直った。

風紀「――申し訳ありません、別件で呼び出しが入りました」

??「ヤバい用ではないんですよね? センパイ」

風紀「えぇ、口論の仲裁。大事にはならないと思うけど、急ぎではあるから――」

口喧嘩でもいずれ力に訴える可能性もあるし、そうなるとこの街では周囲に被害が広がりやすい。
天井が目で促せば、少女は手早く椅子を畳み頭を下げた。
こちらは任せるわね、後輩に向けた言葉には、分かりました、と頷きが返る。

風紀「毎回慌しくて失礼します。間に合うようでしたら戻ります」

天井「気を付けてな」

骨折したばかりの自身が言うことでもないと思うが。
はい、通る声と微かな開閉音を残し、彼女の姿はドアの外に消えた。


??「――じゃあ聞き手減っちゃったけどよろしくね」

茶髪の風紀委員が肩を竦める。
……茶髪の風紀委員《ふうきいいん》とは妙な取り合わせだ、と天井は内心で苦笑する。
いわゆる「遊んでいる」雰囲気でもないが。

かなり気安いタイプのようだから、ほぼ初対面でも空気に困ることはなさそうだ。

天井「あぁ。こういったことは初めてだがよろしく頼むよ。
   先輩に聞いているかもしれないが、天井亜雄、長点の研究者だ」

少女はショルダーバッグからPDAを取り出し、こちらもオフにしていたらしい電源を入れる。
それから弾かれたようにこちらを向き、にこりと口角を上げた。
確かに幼さを残しながら、落ち着きと活発さが混在したような不思議な笑みだった。

柳迫「そういえば名乗ってもなかったよね。柳迫碧美、第三十四支部所属。今度こそよろしく!」



>>512 でもちょっと書いていましたが
 柳迫さんに捏造がログインしました


柳迫の能力について

>>+1
能力系統

コンマ判定
  0-19:念動力系
 20-39:発火能力系
 40-54:水流操作系
 55-69:風力使い系
 70-79:光学操作系
 80-89:空間移動系
 90-94:精神感応系
 95-99:  ※

>>+2
レベル

コンマ判定
  0- 9:大能力者
 10-39:強能力者
 40-69:異能力者
 70-89:低能力者
 90-99:無能力者

能力系統が0-94の場合、詳細はレベルと相談して>>1 が捏造します
95-99(※)の場合、詳細含め自由安価を取ります
レベルのみ上で決まったものに準じます




・自由安価ktkr

>>+2
柳迫の能力
(大雑把な系統でも具体的でも、また先ほどの選択肢にないものでも可)

なおレベルは強能力で固定なので、内容によっては上方/下方修正が入るかもしれません

.キ マ イ ラ
合成生物

脚がチーターになったり爪が虎になったりドラゴラムしたり

強能力ってことは青ピより上??


・柳迫の能力が決まりました
 3人中2人と知り合いになった件
 >>620 青ピは異能力なので上です

先ほど書くのを忘れていましたが、
※この安価の決定は周回を跨って適用されます
 当スレ内における設定を決める安価だと思ってください


合成生物《キマイラ》
強能力

肉体変化系
中でも身体能力の強化に重点を置いている能力
モデルとして他の生物の身体構造の一部を詳細に分析し、自身の身体に再現する
演算が複雑なため、あらかじめ演算式を組んでおく必要がある
なお形態上の変化だけならもっと簡単である
いずれの場合も変化に掛かる時間は数秒~十数秒

できること
○身体の一部を、演算式を組んである他の生物のものに機能まで変化させる
 ex:よく聞こえる猫耳
○身体の一部を、即興で他の生物のものに形態だけ変化させる
 ex:ただの飾りの猫耳
>>608 の例の脚、爪など有用そうなものは既に演算を組んでいます

できないこと
×機能のみの向上(人間の姿のままでの身体強化)
×他人の姿への変化
×全身の変化
×複数部位や別の生物の同時変化
能力が成長すればできるかもしれません

……みたいな

レベル3としては強力そうなのと能力名のイメージから、一点特化型にしました
ドラゴラムは架空の生物なので未元物質さんと化学反応を起こすところから……


ちなみに例の乱闘の際には普通の姿で戦っていたので素の格闘もそこそこできます




うん、と柳迫は軽く姿勢を正す。
椅子が床と小さな音を立て、背筋が伸びても、どこか砕けた風情なのは彼女の性格だろうか。
一瞬窓の外の青葉に目を遣って、おもむろに口を開いた。

柳迫「じゃあ順を追って、ということで。オジサンがあの場に居たのは、直前まで話してたセンパイを追って、で良い?」

天井「そうだ」

柳迫「そもそもセンパイと一緒に居たのは――」

それは揉め事の鎮圧に向かった彼女にも聞いているだろう。
改めて照合するのはどちらかを疑ってではなく、単に本人からきちんと確認するためだと思われる。
いずれにせよ虚偽を述べる理由も無い。

天井「私の専門は医療分野なのだが、電撃系統の開発指導も多少しているのだ。
   それで、戦闘という特殊な場面での能力の制御などについて、聞かせてもらっていた」

柳迫「ふむー。では追い掛けてきたのは?」

問題はここである。

天井「詳細は聞かなかったが、風紀委員が駆け付けるべき事態が起こったのは分かった。
   彼女は冷静に現場に向かったが……なにせ学園都市だ、どんな事件があるか分からないと思うと、な。
   最悪引き返せば良いと考えてしまったせいもある」

まぁ結局退き際も見分けられず、怪我だけ負ってしまったのだが。
そう結ぶ。

実際に風紀委員として能力を使うところを見学したかった、ではあまりに野次馬臭い。
いざという時に備えて風紀委員と何とか繋がりを作りたかった、などもっての外だった。
……その目的をいまだ、諦めてはいないことも。

柳迫「うーん、次、なんて無ければ何よりだけど、危なさそうな気がしたらすぐ逃げた方が良いと思うよ」

声が、被害者を労るような響きを持つ。
罪悪感がじわりと忍び寄り、先ほど彼女が見ていた樹木に目を細めた。

天井「身に沁みたよ」

我ながら厚面だ。
騒動に近付いて、負担を掛けて、それでも生まれた接点に食い付いていこうというのだから。
ぐ、と目を閉じこめかみを圧す。

柳迫「オジサンは、ずっとあの場所に居たの?」

天井「あぁ。時間は……茫然としていて分からないが、五分以上は、乱闘を見ていたと思う」

柳迫「スキルアウト達が逃げ出す五分以上前から、と」

天井「そうだな、着いた時には数人が倒れていた」

ぐりぐり、ぱたぱたと、指は事務的にPDAに情報を打ち込んでいる。
うーんそれなら十分くらい前かな、と呟きながら。




まだ中学校や高校の学生。
もしもの頼りに彼女達を、例え伝手だけでも当てにしていると知ったら激昂する知人がある。
また理由を繕うことに、良い顔をしないだろう何人かに思い当たる。

天井「それでしばらく息を呑んでいた。君達が優勢なのは見て分かったが、その、万が一もあるしな」

だが。

天井「逆にスキルアウトが自滅して必要以上の負傷をするかもしれない。
   外から見ている人間が居れば、すぐ救急車を呼ぶこともできる」

だが。
あの場を離れなかった訳、スキルアウトに対した訳。
あの時衝き動かした個人的な感傷を天井は伏せる。

天井「一人がこちらに向かってきた時も、……知人に簡単な護身術を聞いていたのもあってな。
   止められるのではないかと咄嗟に動いていた」

風紀委員との面識を、簡単には諦められない。
現状の、迫っているかもしれない脅威を思えば。

柳迫「――そっか。うー……、もし、そういう時に無視できない性質なら、
   普通に鍛えるとか護身術習うとかじゃなくて警備員に入って訓練した方が安全かも。
   オジサン、開発官やってるなら一応教師にも当て嵌まるよね」

難しいことを考えるように、風紀委員は拳を額に当て唸っていた。
あっけらかんといた態度でいるものの、先輩と同じく、無為に誰かが被害を受けるのは嫌なのだろう。

天井「警備員、か」

そういう時に無視できない、そのフレーズは従来天井とは対極にあるようなものだった。

いつから、追い詰められた自棄以外で無茶などするようになっただろう。
研究を続けようと圧力に耐え続けた時か。
それとも。

どうして――。

柳迫「とと、事情聴取自体はこれでOK。センパイの知り合いで長点の研究者、身元とかはばっちりだし」

天井「――、大した話はできなかったが、大丈夫だったか」

柳迫「うん、オジサン怪我させられた側だし、規則で状況確認が必要なだけだったから。
   ……センパイにも終わったってメールしとかないと」

一気に、目の前の状況に引き戻された。
話すべきことを話し終えた今、ふんふんと携帯を弄る彼女もここを去るだろう。
顔と名前を互いに知ったというのは収穫だが、繋がりと言うには薄い。

天井(どうする……。警備員の話題も出たことだし、その線で話を振ってみるか?)


>>+2
何か話したい内容があれば
(1つまで、複数書いてあった場合最初のを採ります)
無ければ天井が「その線」で軽い雑談を振ります


・というところで今回はこれにて
 明日というか今日は早いので寝るます
 次回は21日の予定です
 ご参加ありがとうございました


今日はおやすみか
まあリアル優先だよな
ゆっくりやってくれい


・こんばんは、今日もよろしくお願いします
 遅筆と携帯入力の二重苦でお送りします

 >>628 もともと昨日はお休みの予定ですー
 お気遣いありがとうございます、遅々としてホント済みません


天井「――なぁ。昨夜のような事件は多いのか?」

柳迫「うん? 多いも何も、夜の裏路地ってのはああいう場所だよ。
   夜間の見回りは基本的に警備員の管轄だけど、対応しきれない小競り合いももっとあるだろうね。
   スキルアウトもピンキリだから全員が荒っぽい訳じゃないけどさ」

ふー……と柳迫は肩を竦めた。
聴取が終わったからか大分気が緩んだ様子で、やれやれとビニールの背もたれに体重を掛けている。
少し話をする余裕はあるだろうか。

天井「そうなのか。皆ああいった感じなのかと思っていた」

柳迫「定義が『武装無能力者集団』だから、仲間内でつるんでる無能力者が自衛のために警棒一本持っててもスキルアウトなのよー」

メール送信が終わったようだ。
画面も見ずに弄っていた携帯を少女はポケットにしまい、やれやれと首を振る。
茶色の髪がぱさりと揺れた。

柳迫「かと思えば銃持ち出して強盗するような連中もいるし。
   スキルアウトの中にも指揮系統とか縄張りとか、暗黙のルールはあるみたいだけどね」

話題を切り上げようとはしないし急いではいなさそう、だ。

……ただ会話を繋ぐだけではいけない。
単に厄介事を相談するなら、最寄りの支部の知らない風紀委員でも良いのだ。
木山の生徒達、都市でもかなり後ろ暗い部分の問題について、間接的にでも助けを請うには、
事前にある程度人となりを知っておかなければ。

天井「その強盗や、喧嘩を止めに入るのは怖くないのか? 私は……思い返しても恐ろしいよ」

柳迫「どっちかっていうと神経がイガイガする――ヒリヒリする? 感じ。
   銃器を相手にする時の訓練とかも受けてるし、ちゃんと対処すれば当たらないって知ってるし、
   でも油断してて弾掠っちゃったこともあるから。難しいよー」

天井「ず、随分あっさりと……」

拳銃などは所詮直線上にしか撃てないから銃口の前に立たなければ平気とも言われるが。
弱冠十数歳にして自分を殺傷できる威力を前に判断ができるなら、流石学園都市育ちである。
確かにここには銃器より危ない能力がありふれている。

柳迫「って言っても大事になると警備員が来てくれるから、撃たれたりはあんまりないよ。
   危なかったら一時退避するしね。私これでも慎重派なの」

暴力を前に思考停止しない、逃げる時は迷わない。
あはは、と笑う姿に強がったところは無く、この街の学生らしい等身大の危機意識を持っているようだった。

そして言いようから、都市の裏側を知る匂いはしないと推測する。
彼女がそれを聞いた時にどうするか判断が難しいところだ。

……もっと、踏み込んでみるか。

天井「とはいえただの学生でいればもっと安全じゃないか。慎重派ならなおさらだ。
   犯罪やらを無視できないなら警備員になれと私に言ったろう……君はどうして風紀委員をしているのか、聞いても良いか」

言外に、彼女自身が、そういう性質なのかを。




途端に少女の眉間に皺が寄った。
今日一番に顔を顰めて、目の焦点を遠くに合わせたまま視線を行き来する。

天井「あ、いや、忘れてくれ。済まない、変なことを聞いて。痛み止めで思考がふわふわして駄目だな」

柳迫「…………ん? ヘーキヘーキ、別に大層な理由があるんじゃないし。何でか、ねぇ」

再び小さな拳が額の中央を押さえている。
脳を整理するように目を伏せ、ちらりと唇を舐め。
気分を害したのではなく言葉を選んでいるようだ、が。

天井(承知の上で立ち入ったことを聞いたとはいえ、気まずい……。適当に飲み物でも用意しておくべきだった……)

手遊びに触れるものもないベッドの上、ただの十秒程度が長い。
たっぷり間を取って風紀委員が口を開くと、天井はやっと鳩尾の重さから逃れた。

柳迫「えーと……チョーノーリョク、憧れるじゃない?」

天井「あ、あぁ。学園都市の一番の謳い文句だしな」

柳迫「そうそう。で、ココに来て、開発やって。超能力者には至らなかったけど、結構な希少能力ゲットして。
   さてどうしよう、って思ったのよ」

どうしよう?
能力の中身も気になるが、どうしよう、とは。

天井「といっても……希望する進路に合わせて勉強や開発をしていけば良いんじゃないか。
   あるいは学生生活を楽しんでおいたりな。希少能力なら奨学金にも色が付くだろう」

柳迫「そう考えてみたんだけど、チョーノーリョクって意外と使い道無いなー、って思って。
   化学とか生物とかの勉強は将来研究者になるなら役立つけど、この能力はどうしたら良いんだろうって」

なるほど、能力の向かう先か。
能力はミクロにおいては既存の物理法則から外れ、工業にも応用されている。
だが発電、発火など現象そのものは他の方法で代替可能なものも多く、また全ての能力が工業に馴染む訳ではない。

柳迫「だから、まずは能力でできることをしてみようって風紀委員になったわけ。
   まぁまだ将来の仕事とかには結び付かないけど、使ってみて分かることってやっぱりあるかな」

天井「能力……できること……」

強力な力を行使する欲とも、持つゆえの義務――ノブレスオブリージュとも違って聞こえる。
どうにも、不思議な感じがした。

柳迫「はは、Judgmentの名にはそぐわない自分本位な理由かもだけど。
   学園都市の平和は私が守るッ! みたいなこと言えなくてごめんね?」

天井「いや、参考になったよ。私も色々考えてみる」

まるで身勝手なように言うが、能力を揮う場として風紀委員を選んでいる時点で良心の強い性格だとは思う。
路地裏で思うままに過ごす選択肢もあったのだから。
そうすると、やはりシビアな部分に足を踏み入れたことがないというのが気掛かりか。
それに、

天井(強いて踏み入れさせて良いのか。いや上条や結標に声を掛けているのだから今更か――)

と。
こんこん、ノックと共にドアの向こうから昼食を知らせる声が掛かった。

柳迫「おっと。じゃあそろそろお暇しようかな」

天井「後の予定もあるだろうに引き止めて悪かった。ありがとう」

柳迫「んにゃ、事情聴取を盾に今日の講習はサボるから!」

実に良い笑顔である。
……良心はあれ、真面目ではないかもしれない。


>>+3
何か最後に言うことがあれば
(大まかな方針でも可、具体的な台詞の場合若干語調を弄るかもしれません)


・数十分出掛けてきます(今夜はまだ続けます)
 安価は出先でも確認しておきますゆえ



・戻りました


柳迫「それじゃ。これからは暗い夜道には気を付けてね」

天井「襲う側の捨て台詞だ、それは」

ぱち、と腕章を外し、柳迫は軽やかに立ち上がる。
先輩が閉じていった椅子をちらりと見て自分のものも重ねた。

天井「あぁそれから、私は開発官で、一応教師な訳だが」

んー? と首を傾げる少女に、冗談めかして言う。

天井「サボるのはほどほどにな。少なくとも教師の前で公言することじゃあないぞ」

柳迫「ふふー。心得たよオジサン、……いや、センセ?」

返ったのは、奔放な笑み。
最初から最後までマイペースな子である。


天井「ふぅ……どっと疲れた」

あの年頃の女子生徒のバイタリティを思い知った気がする。
布束や結標も同年代だが、研究者、高位能力者という肩書きから二人とも早熟な部分がある。
要は、女子特有のテンションにあてられたのだ。

天井(そういえばレベルは聞かなかったな……。希少能力とも言っていたし、あとで書庫を見てみるか?)

名前が分かるなら検索は容易だ。
ちなみに先輩は電撃使いの強能力。
柳迫も能力を切っ掛けに風紀委員を志したくらいである、少なくとも異能力はあるのではないだろうか。

……事件の被害者と取り調べる人間という関係上、特に連絡先を交換したりはしなかったが、
二人の風紀委員とはそれなりに話すことができた。
所属支部を聞いたので会おうと思えばそれほど難なく会えるはずだ。
電撃使いの彼女は校内で捉まえることもできるし。

天井「まぁ、まずは退院だな」

かちゃり、スプーンを食べ掛けのプレートに置いてスープを啜った。
ご飯と海苔、焼いたほっけ、野菜炒め……和食を基調とした病院食は、美味しいがいかんせん薄味過ぎる。
特徴の無さは部屋の調度と同質だ。
濃い味を調達しようにも、売店まで足を向けるのは億劫で、自動販売機は学園都市仕様でレパートリーが怪しい。

天井「さっさと帰って……長点に行こう」




上司の教授に報告をし、研究棟内の販売機で馴染みの野菜ジュースを購入し。
適度な冷房と射し込む日光と自身の疲れに誘われ、そのまま休憩スペースに座り込んだのか拙かった。
いや、遅かれ早かれこうなっていたことは間違いないのだが。

布束「Look here! 骨折したってどういうこと、平気なの!?」

天井「だ、大丈夫だ。手術も無く、しばらく固定しておけば繋がるらしいから」

もちろん布束にはすぐに無事だと話すつもりであったし、
他にも木山には子供達を狙う連中に襲撃されたなどの事件ではない、と伝える気でいる。
だが、

布束「あなた、喧嘩したって! 今日の朝聞かされて、もう、何があったのかと……!」

予想以上に焦って、それに今は安心した様子の彼女を前にすると、改めて怪我を後悔した。
泣いてはいないが頬は赤く、年相応に布束は一度地面を踏む。
足元の影に引かれるように天井は項垂れた。
それは謝罪でもあった。

天井「……心配させて済まなかった。昨日の夕方、スキルアウトの乱闘に巻き込まれてな。
   骨折だが生活に支障はほぼ無いし、痛み止めも貰ってある。こんな目に遇わないように気を付ける」

布束「――Tell the truth. 巻き込まれた、だけなのね?」

一度は安堵を浮かべた布束も、視線をじっとリノリウムに向けている。
柔らかく広がったモノトーンのスカートを、強く掴んだ両手が白い。

絶対能力進化実験、その主催者の権力の一端を彼女は知っている。
春上と出会った時に木山の件についても話している。
急にこんなことになれば裏を想像もするだろう、問う声がか細いのも――、


>>+2
どう応えるか
(大まかな方針でも可、具体的な台詞の場合若干語調を弄るかもしれません)






天井「――――――っ」






何かを思う空白は無かった。

スキルアウトに立ち塞がったのが思い詰めての衝動なら、今はそれさえ感じない。
動作を指示する思考が脳を巡る先に椅子を立ち、がたりという音を聞き、腕が動いた。
言わない。
間接的だが生徒達の問題――非合法の危険のために風紀委員を追ったこと、
焦燥感から無理を冒したこと、
言えない。
心労を掛けたのは自身なのにおこがましい、
まるで慰めるように腕を回すのかと、


天井「――巻き込まれただけだ。本当に、心配させてしまったな」


これらは全て後で考えたことだ。



緩く包むように抱く。
ボリュームのある服も崩さないように。

初めそっと触れた髪は滑らかに手を滑り、何度も何度も繰り返した。
反対の腕は、微かに震えだす身体をどうしていいか分からずに僅かに力を強める。

布束「…………ぅ、ならっ、どうして怪我したの」

天井「電撃使いの――風紀委員の学生と開発の話をした。途中で呼び出しが入って、つい気になって尾けた。
   鍛えているからと過信して逃げもしなかった」

布束「You idiot...!! ほんとうにばかよ! 信じられない!」

スカートを握っていた細い指はいつの間にか離れ、天井の胸に触れる。
それからはっとしたように腹の辺りにしがみ付いた。
薬で誤魔化した感覚ごしにぼんやりと痛む。

天井「そうだな、それだけだ。私も布束も誰にも狙われてはいない。
   研究は無事続いているし、子供達の方も治療の準備が進んでいる。ここに危険はない」

布束「……! …………っ!!」

天井の肩に寄せた頭は決して重みを掛けてこない。
一度だけ胸に当たった指で、鎖骨を固定する異物を察したらしかった。
彼女の方がこんなに動転していながら。

天井(本当に……馬鹿なのだろうな、私は)

日光の当たる背よりただただ腕の中が熱い。
ひくりと喉を鳴らしながらも天井を気遣う身体。
息苦しさを少しずつ吐き出すように、小さな嗚咽を聞いていた。



・短いですが今日はここで締めです
 もっと砂糖を吐けるようになりたい

 今回は最後の安価なしです、済みません


・明日から怒濤の連勤なので次回は30日以降になります
 詳細は来月のシフトが出てからご連絡いたします
 今日もお付き合いありがとうございました!


・こんにちは、レスありがとうございます

 次回は30日に来れそうです
 間隔が開いてしまいますが、よろしくお願いします
 休憩時間にて、取り急ぎ用件のみ……


・こんばんは
 どうにも筆が進みませぬ……前回ラストの続き+安価一回で今日は終わりそうです

 というかまだ投下分も書けていないので、後でまた来ます
 今夜中(というか日が昇る前)には
 度々ごめんなさい


・大変深夜にこんばんは
 これしか書けなかったです、そして眠いです


一人、研究棟の自室から窓を覗くと、空はぼんやりと橙を帯びていた。
もう少し赤味の強い色の雲がぽかりと浮かび、流れる。

布束『Won't you please, あんまり怪我しないで』

窓枠に手を付いて遠いビルの連なりを眺めた。
今は腹部も、折れた鎖骨の周りも痛まない。

あれからしばらくああしていて、布束の震えが治まった後も、二人とも研究に戻る気にはなれなかった。
どちらともなく天井の研究室に移動してつらつらと言葉を交わした。

思えば、絶対能力進化実験への不参加を決めた日も、どうでもいい日常の話をして歩いた。
最近は――上条、結標を木山と引き会わせるための昼食会以来、ゆっくりとこういう会話をしていなかったと思う。
どうせ仕事をしないのならと外の喫茶店にも誘ったのだが、赤らんだ迫力のある眼光で睨まれてしまった。
涙に腫れた目蓋を押さえていたから多分気にしていたのだろう。
デリカシーのないことを言ってしまったか。

天井「あぁ、私が出掛けて買ってくれば良かったな」

思考の上っ面を言葉にする。
近隣のケーキショップを思い浮かべながら、
バックグラウンドでは無意識に膨大なことを思っているのが、自分でも何となく分かった。
ただ処理されていく情報の合間を縫うように布束の台詞がずっと響いている。

ぽつりと天井が話題を口にし、布束が一文二文と返す。
そんな問答が途切れ少女が部屋を辞した時だった。
ドアノブを後ろ手に振り返り、静かな声で。

怪我しないで。

返事を待たず、豪奢な服を着た背は扉の向こうへ。

――できる限り。




電源を入れて放置していたPCが不意に自己主張する。
ブラインドも開け放したままだった室内はいつの間にやら茜深い。

天井「ん。メールか」

折しも木山から。
結標に事情を打ち明け、協力を頼んだということだ。
向こうからの返答は少し考える時間が欲しい、だったらしいが、話した様子では好感触であったと。

天井「まだ決定ではないが……喜ぶべきだろうな」

生徒達の移送がネックになっている状況で、高位の空間移動系能力者である結標はまさに救いの手だ。
普通の手段では追えず、仮にAIM拡散力場から割り出そうとしても、
そんな悠長に解析している間にこちらは現場を離れられる。
喜ばしいことだ。

天井「……駄目だな。どうも昨日の夜が尾を引いている」

柳迫と対面している時に、しきりによぎった感傷。
つまり、能力者や風紀委員だからといって、ただの学生を引き込んで良いのかということ。
勿論結標の場合とて、事情を話した上で向こうに判断を委ねている。
ついこの間まではそれで充分だと思っていたが。

天井「あんな場に居合わせてしまうとな」

人が潰し合う光景は、衝撃だった。
スキルアウト相手で大変な目に遭って、しかし木山の件に首を突っ込んでいけば、
もっと危険なものが待ち受けている可能性もある。
そんな可能性に身を晒して良いものだろうか。

だが真逆に、乱闘を制した風紀委員の二人を思うと、能力者の持つ力の大きさをも思い知る。
結標のように武力衝突以外でもそれは助けになるだろう。

天井「私は……黄泉川では、ないからな」

木山への返事と、今回の怪我の報告、
特にこの件が彼女の抱える問題とは無関係であることを慎重に綴りながら、天井は一人ごちる。
小さく吐き出した息にどんな感情が篭もっているのか、自身でも良く分からなかった。




天井「あぁ、そういえば柳迫の能力を調べようと思っていたのだった」

それにしても、どっと疲れが来た。
事情聴取や布束との対面もあったが、そもそも傷を癒すために身体が休息を求めているのだろう。
何度かマウスを弄ると天井は背もたれに反った。
樹脂や金属でできた椅子がぎぃと鳴る。

今日は、もうやめておこう。
木山の件については明確な期限など無く、何かしておくなら可及的速やかに――としか言えないのだが、
このコンディションでだらだらPCと向かい合っていても成果は目に見えている。

天井「動くのはまた明日からとして、方針だけ考えておくか」

期せずして二人の風紀委員と知り合えた。
これから機会を作るとなると、直接支部を訪れるか、パトロール中を狙うか。
管轄区域で小さなイベントなどあれば、警備に駆り出されているところに会えるかもしれない。
長点の彼女の方だけなら校内で捉まえても良い。

天井「今のところはこのままにして、万が一の際に相談するというのも手だが」

結局二人の性格や考え方の、細かいところは分からないままだ。
正義感や良心はあれ、それがどちらの方向に出るか。
緊急時に相談を持ち掛けた場合、警備員に指示を仰ごうとする可能性もある。
その時敵がもしMARだったら……。


>>+3
風紀委員方面について、どうするか
(方針、または具体的にしたいことがあれば)


・お待ちいただいた上で申し訳ないのですが
 明日(というか今日)は早いのでこれにて
 次回は7~11日のどこかで来ます


・こんにちは、安価ありがとうございます
 来れそうなので次回は明日、7日に
 よろしくお願いします

酉忘れた
↑は>>1 です


・こんにちは
 今日もぼちぼちお願いします


天井「うむ……。重要なのは能力の高低よりも風紀委員という立場だが、調べておくに越したことはないな」

言いながら、かちかちと余計なウィンドウを片付けていく。
同時に一時保留という形で脳を整理する。

書庫にアクセスするには自宅より研究室が好都合である。
しかし、単純に検索を掛けて結果を確認するだけの作業でも今の集中力では大事な事項を見逃してしまいそうだ。
やったつもりで情報の取り溢しがあるのでは後々足を引っ張られかねない。

天井「まずは書庫の閲覧を朝一に。それと、決めなければいけないのは長い目で見た風紀委員への対応か」

既に事件が起こっている訳ではないため、その話題を持って駆け込むともいかない。
木山の件を打ち明けるには向こうのことをまだ良く知らないし、また勝手に動き過ぎるのも避けたい。
改めて上手くこの問題と風紀委員を結び付けるのは難しそうであるが。

ぐったりと脱力し、目を閉じ、開き。
無機質なPCのモニタ上にぱらぱらとスクリーンセーバーが降り始めた。
金平糖とスーパーボールを足して割ったような立体が画面の底辺で幾度か跳ねる。

天井「こちらの事情以外の方向性で、何とかしてMARに目を向けることはできないだろうか。
   別の相談でも、最終的にそちらに辿り着ければ良い」

警備員な黄泉川は互いにある程度手の内を伏せながらも、先進状況救助隊を調査しているはずだ。
それと合わせると対策がテレスティーナ周りの一点読みになってしまうのが懸念といえば懸念か。

天井「黄泉川と話した時は……地震の調査と、MARの挙動の不審点から持ち掛けた。今回もその線で行けるか?
   しかしあの時は黄泉川の側でも既に怪しんでいたしなぁ……」

輪を掛けて伝える内容には工夫が必要だろう。
では他の可能性は?
根拠は無いが、子供達を探っていた何者かをMARと断定して相談するか。
この場合木山達の事情をいかに伏せて人物xだけに焦点を当てるかが肝だ。

後は……荒唐無稽なでっち上げでは見透かされるのがオチか。
そもそも天井とMARには直接の接点も無いのだし。

天井「粗探しに本部の近くまで行ってみるか? ……いやいやいや」

罪状をこじ付けに特攻とは、何だか当たり屋のようである。
昨日やらかしたばかりの固定具を服の上から確かめ、天井は首を振った。




翌朝。
十分に睡眠を取り疲れも思考も回復したと、そう思っていたのだが。

天井「…………本当か、これは」

研究室に来たら真っ先にする、そう決めていた作業で、天井は早速呆然としていた。
目の前に表示されているのは何の変哲もない、見慣れた検索画面。
しかし並んだ文字は驚くに値するものだ。

柳迫碧美、中学二年。
肉体変化。
強能力。

本人による登録名は「合成生物」。
かなり弾けた名称だと思うが、能力の簡単な説明を読む限り、名は体を現しているとも言えそうだ。

天井「いや、しかしあの時特に外見は……」

スキルアウトとの格闘を思い出す。
身軽に大柄な男性を蹴り飛ばしてはいたが、明らかに能力と分かる変化は無かった。
もっとも先輩と同じく可能な限り能力は使わないという方針かもしれないが。

それにしても、つくづく希少能力者と縁がある。

都市内で三人しか居ない肉体変化の保有者の内、二人と面識。
先日知り合った上条少年もかなり特殊なようであるし、記憶の中では因縁の、実際には数度対面した第一位は他に類を見ない能力だ。
肉体変化ほどではないが空間移動も珍しく、特に起点と終点を固定しない結標の能力は特異と言える。

天井「――まぁ、偶然というか、成り行きなのだが」

木山絡みでコンタクトを取った上条達はともかく、青髪少年は本業での安穏とした付き合いである。
希少能力だから何かあるでもなく、あくまでそういう縁なのだろう。
それより今は、顔見知り程度の風紀委員への縁が切実に欲しかった。

天井「まず何か相談を持ち込むとして……、やはり注意する対象はMARに絞るか。
   誰かに狙われている、などと雲を掴むような話では流石にどうしようもないだろう」

相手は別の場所に居る可能性もあるが、まずは名前が挙がっているところから。
そうでもしないと動きようがない。
課題は相談の内容だが。


>>+3
 a. 黄泉川に話したのと同じ方向で話す(地震の際の不審な動きなど)
 b. 詳細は伏せつつMARに学生が狙われていると話す
 c. イマジネーションを駆使してひねり出す
 d. 先にMARの近くを訪れてみて考える(近くをぶらつく程度)
 e. その他(具体的にお書きください)



・間空き過ぎワロエナイ


今日は痛み止めを飲んでいない。
そのせいか腹筋の辺りに重い感覚があった。
黄緑のスクリーンセーバーを眺めながらゆっくりと腹をさする。
「手当て」の語源はこうした動作にあるらしく、実際に掌の温度と揮発する水分が温湿布の役割を果たすそうだが。
現代人にとってはまぁ気休めそのものだった。

天井「ふうぅ……むしろ痛いのは頭だ」

もっと正確には悩ましい。
MARに注視していて欲しいから、風紀委員に頼むのである。
その過程ですぐにばれるような嘘を交えてもしょうがない。

天井「そうすると、私の手持ちでは地震の時の動き位しか指摘できないのがなぁ」

だが、以前調べた際には他に取り立てて怪しい部分は無かった。
今更漁り直しても成果があるかどうか。
直接赴くのは、例え遠巻きに眺めるだけでも関係者と遭遇する可能性がゼロではないのがネックである。

カードはそうそう交換したり増やしたりできるものではないのだ。

天井「話し運びに不自然な点があるとすれば、『何故今頃なのか』と『何故彼女達に相談するのか』」

黄泉川と過ごした、張り詰めた飲み屋の夜から、もうしばらく経っている。
前提として地震やその原因について愚痴を溢していた彼女ならともかく、
どうしてここで会ったばかりの風紀委員に以前の話を持ち掛けるのか。

簡単でそれなりにもっともらしい答えとしては「今まで他に頼れる人が居なかったから」などが考えられるが。

天井(す、すまん、黄泉川……)

MAR方面に嗾けておきながら口先だけとはいえ戦力外扱い。
本人も知らぬところで、なにとなく気まずい気分になるのだった。


>>+2
「何故今頃なのか」と「何故彼女達に相談するのか」について、
他に案や付け足したいことがあれば




さて、熱気が地層のように堆積した夕方である。
完全下校時刻には早いが人の足は徐々に寮やマンションへ向かう。
そんな中、天井はある中学校の近くの公園で、車止めにもたれて立っていた。

本業は学業である風紀委員は、公式には完全下校時刻までに解散となる。
パトロール中に遭遇した事項を報告書に纏めるデスクワークの余地を考えれば、その少し前に支部に帰還するはずだ。
事件を見掛ければ時間制限など気にしない者も多いのだろうが……。

天井「通らんな。まさか非番か?」

呟きは遠く手を振り合う子供の声に紛れていく。

支部に押し掛け、二人の内のどちらかを呼び出すのは簡単だ。
動作自体は簡単だが、他の風紀委員に不審感を持たれることだろう。
この件は広めたくない。

一番楽なのは先輩を長点の校内で捉まえることだったのだが、何の不幸か今日は二年の補講が無かったのだ。
それで次善の策としてこうして張り込んでいる。
陽が高いうち――支部に出勤する時間を狙わなかったのは、中に通される羽目にならないように。

夕焼けが燃えるような光を落とす。
赤黒い影は、五分前より左にずれている。

柳迫「――ん? センセ?」

腕章を指でくるくる回しながら、現れたのは後輩だった。
特徴の無いセーラー服が見事な暖色に染まっている。

天井「一日ぶりだな。仕事が終わったら、少しだけ話を良いか?」

柳迫「何? 昨日の事件に実は黒幕が居て、センセはその顔を目撃したとか?」

天井「いや……似たようなものかもしれないが、あれとは別件だ」

へ、と言わんばかり、少女は首を傾けた。
次いで、とにかく入りなよと促されたが、丁重に辞退。
頭の角度が深くなったものの、柳迫は訝しげに頷いた。

柳迫「ふーむ。私は別に良いけど、もう二、三十分掛かるからね。どっかで時間潰しててね」

天井「あぁ、了解だ」

数言交わしたタイムラグを取り返すように、彼女はたたた、と駆けて行く。
むわりとする空気は、冷え始めていた。




朝からこの時間まで、何もせず過ごした訳ではない。
ずっと、どう話そうか迷っていた。

風紀委員は大人である警備員に比べ、一面では制限が厳しく、他面で縛りが緩い。
MARに対しても直接的に動きやすいかもしれない。
ならばある程度込み入ったことまで告げて、興味と義憤を抱いてもらえば。
だが、どこまで話す。

天井(具体的なこと、固有名詞は伏せるとして……)

研究室にて、戯れに「説得 コツ」で検索したら、どうしようもない情報商材が大量に釣れたりもした。
さもありなん。
簡単に舌が回るようになるなら誰も苦労はしないと無言で窓を閉じた。

柳迫「お待たせ」

天井「悪いな、仕事帰りに」

柳迫「ダイジョーブ、明日は非番だし。寮も近いから万一バス無くなっても平気よー」

行こっか。
そう彼女が先導する。
天井の立っていた後ろ、人気の無い公園の中へ。

柳迫「こっちの方が聞かれないでしょ。ハンバーガー屋とか喫茶店って意外と席近いし」

指摘されては、唯々諾々と従うのみ。




天井「率直に言う。手を貸して欲しい」

きょとん。
鋭い部分を見せられたばかりでは、見開いた目は一層子供らしさが際立った。

天井「……MARを知っているか」

柳迫「先進状況救助隊でしょ? 警備員の。隊長の駆動鎧、すっごいピンクだよね」

かしゅん。
ブランコに腰掛ける柳迫の手が、炭酸の缶を開ける。
公園内で調達したためどぶろくコーラ(ノンアルコール)なる酷い代物だが、意外と美味そうに喉に流していく。

ブランコの柵に座った自身は一番まともそうだった空豆烏龍茶を。
……予想通り豆臭い。
手持ち無沙汰に、一口だけ付けた缶を揺らした。

天井「しばらく前に地震が多発していただろう。たまたま気付いたのだが、あの時彼らの動きが妙だった。
   まるで事前に発生を予測しているように現場に到着していた――出動時間を逆算しても確かに揺れる前になる」

柳迫「それって……あ、いや、何かの方法で本当に予測していたんじゃない?」

風紀委員は、何かを言い淀む。
……あぁ、治安維持組織の一員としてAIM拡散力場が原因であることを知っているのか。
それならば予測できる可能性を考えてもおかしくないし、部外者の天井には言えないだろう。

天井「それだけではない。必ずMARだけで先行しているんだ。
   予測が立つのなら、他の警備員にも通達して急行させるべきだろう。自分達だけで向かう理由は何だ」

柳迫は、うへーと顔をしかめた。

柳迫「それってさ、MARだけ活躍しようってこと? ヤダねー汚い大人って。縄張り争いってヤツ?
   まー、精度が微妙とか候補が複数出ちゃうとかで、警備員全体を動かすには不確実なのかもね」

天井「それでも動かすはずだろう。救助を第一に考えていると言うなら」

ぐ、と缶を握り畳み掛ける。
汗の浮いたアルミが指の熱を僅かに奪う。

天井「それに災害に特化した部門だ、あの妙な地震の原因究明もそこが主に担うのではないか?
   緊急事態に手柄を優先するような集団が発生源を突き止めたとして、素直に鎮静化に貢献するかどうか。
   あえて放置や、地震をコントロールしようとしないと言い切れるか?」

――少女は戸惑ったように遊具の鎖を鳴らした。

柳迫「いや、そうだとしたらヤバいけど……。あくまで警備員の一部門だよ?
   多少災害時に優越権はあるかもしれないけど、そこまで勝手ができるのかな。第一、最近地震無いし」

そう、暴走したままでの覚醒治療をしなくなったため、AIMの共鳴による地震は起こらなくなった。
加えて彼女が生活してきた境遇。
風紀委員なら、黄泉川と同じように、不当に捜査を押さえ付けられた経験くらいはあるだろう。

だが。
人体実験、裏の連中。
能力者が使い捨ての物として扱われるような場を少女は知らない。
都市の上層がどんなに酷薄か知らない。

故に、地震の件だけで警備員の一隊を危険だと認識するには――弱い。

天井(く……このままで協力を要請しても厳しいか……?)


>>+3
何かワンクッション挟む内容があれば


・ここで切るのも何だかなー……と思いつつ、今日はこれまでに
 いつも遅筆に付き合って頂きありがとうございます

 次回は20日の予定です
 また跳びますね、本当に申し訳ないです
 しかもよりによって場面の途中

おまえらふざけんな、24日は俺の誕生日だろうが


・こんばんは
 書けない病発症中です、あれから何にも進んでないです

 しかし最近投下していない&年内にもう来れなさそう&今日は世間も>>691 の誕生祝いで盛り上がっていますゆえ、
 本編とは無関係な小ネタでもやってみようかと

 ハァ? 会話の途中で中断しておいて何言ってんの? と思われるかと存じますが、
 許せる方はお付き合い下さい。
 許せない方はテッラさん風に罵声を浴びせてくれても良いのよ?


詳細

・安価にて、これまでの登場人物を1~5人お書き下さい
 その面子で過ごす24日を書きます
 あとシチュの指定があれば手短に

・ここでの設定をベースにしますが、スレや原作で面識のない人物でも無理矢理接点があることにします
 また何があっても本編とは無関係です
 つまりパラレルです

・会話文のみの小ネタになります
 >>1 はその手のセンスがあまり無いですが石投げないで

以上です。
夜景の見えるレストランからディナーの合間に参加してやんよ! という方はよろしくお願いします。


>>+2
名前を1~5人分、あればシチュをどうぞ


※子供達は天井を介して知り合い


青髪「猫耳サンター!!」(>∀<)

柳迫「犬耳ミニスカサンター!!」(>∀<)

青髪「!?」クワッ

布束「Come now! あまり騒がないで頂戴。青髪君は無駄に開眼しないの」

柳迫「信砥はフツーのゴスロリなのね。こんな日くらい赤とか緑とか着れば良いのにー」

布束「嫌よ、それにこの手の服(※サンタコスプレ)って丈短いのばかりじゃない」

柳迫「えー。その細い脚はもっと露出すべきだよ」ペタ

布束「Eek!? 冷えた手を当てないで!」

青髪「突発女子トークktkr」

天井「…………おい」

柳迫「お、センセ。遅かったね」

布束「大丈夫、私達が早く来過ぎただけよ。Besides, まだ五分前だし」

青髪「いやいや、女の子待たせるなんて紳士失格やで? 少なくとも三十分は見とかんと――」

天井「………………おい! 私が聞いた話では能力制御のための野外実験の筈だが!?」


布束←白衣off

青髪←サンタ

柳迫←ミニスカサンタ


布束「Why, ちゃんと二人とも能力使ってるじゃない。格上の同系統能力を見て真似ることは彼にとってもプラスよ?」

天井「さっきから脚しか見ていないだろうが」

布束「」クリティカル!

青髪「あいたっ」

柳迫「ちょっと、センセを丸め込む間くらい合わせてよ」

天井「お前達……いや、良い。普段着で来いと言われた時点でおかしいとは思ったんだ。
   何故か夜だしな。何故かレストラン前集合だしな」ハァ

青髪「いや、それで黙って来る辺り先生も期待してたんちゃう? 例年通り寂しい一日を過ごすくらいなら、と――」

柳迫「しっ」

天井「……入るぞ?」ヒクヒク




カランカラン

店員「いらっしゃいませー!」

天井(流石に賑わっているな……あ)


ワイワイガヤガヤ
ッシャー ノメー

黄泉川「五番、黄泉川いっきまーす☆」ゴキュ ゴキュ ゴキュ

チョッ カラダニワルイデスヨ
マダマダ イケルジャンヨー


天井「よし、出るぞ」

店員「四名様ですか?」

布束「予約を入れていた布束よ」

店員「かしこまりました! こちらのお席にどうぞー」

天井(あああああぁぁぁ……)




※なんやかんやで天井卓に黄泉川乱入

柳迫「あ、ピザ最後の一切れ食べて良い?」

黄泉川「おう食え食えー! 無くなったなら追加注文するじゃん? 今日は天井オニーサンの奢りだー!!」

天井「分かってた分かってたさどうせこうなるんだってな」ゴクゴク

布束「Say, 結構酔っているみたいだけれど、平気?」

黄泉川「もーまんたいじゃーん? こいつ案外酒強いじゃんよー」

布束「」ムゥ

青髪「あのお姉さん、超綺麗なんにどうして悪寒がするんやろ。まるでID腕立てでも強要されそうな……あれ? ご褒美やん?」

天井(こいつが志望校の体育教師なのはふせておくべきか)

柳迫「え、黄泉川サンはセンセとよく飲むんですか? 何か恥ずかしいネタとかあります?」

黄泉川「酔っ払った話じゃん? そうだなー、こないだ実験が行き詰まったとか呟きながらビールに海老を」

天井「おいばかやめろ」

布束「Sigh... ジョッキは培養槽じゃないわ」

青髪「なにそれ怖い。てかビールと海老で見当が付くんも大概やで」

黄泉川「よぅっし! 魚介類に語り掛け続ける系男子のオニーサンにー? 黄泉川先生が気合い入れてあげるじゃんよー」ガシ

天井「まて首はほんと う  に」

布束「Even, 現役警備員だけあるわね」

柳迫「あっ、私も締め技練習したいんだけど良いかな?」

青髪「なんや、先生ばっかり妬ましいわ」(´-ω-`)

天井(ふこうだ…………)




天井「」

布束「ねぇ。さっきからこの人ピクリとも動かないんだけど……」

青髪「気にせんでえーねん! 美女と美少女にオとされるなんて天罰もんや!」

黄泉川「へえぇ、柳迫は風紀委員か。今度一緒に訓練したいじゃんねー」

柳迫「是非やりたいですね。さっきの腕固め教えてほしいです」グッ

布束「もう彼を練習台にするのは止めてあげてよ? Really, 貴方達がやり過ぎるから――」

ガサッ

柳迫「ん? 今何か落ちた?」

黄泉川「……あっ、早く起きるじゃんよ天井のオニーサンっ!」ドカッ

天井「グフォッ!? 何をする!」

黄泉川(悪い、でも鞄からコレが落ちたじゃん)ヒソ

天井(! 恩に着……ないからな? そもそも私が人事不省に陥ったのはお前のせいだからな?)ヒソヒソ

青髪「お二人ともどしたん。天井先生、爆散するん?」

天井「あぁ、いや……何だ」

布束「どうしたの。起きて早々言葉を濁して」

天井「……実験のつもりだったのは本当だが、今日が何の日かは分かっていたからな。
   一応、用意してきた」スッ

つ【 】【 】【 】

布束「well! これ……」

柳迫「良いの? センセってあんまりイベントに関心無いと思ってたよ」

天井「突き返されても困るからな。受け取っておいてくれ」

青髪「先生むっちゃ良い人やね! あんがとさん!!」

柳迫「わー、ありがとう! 何だろ何だろ」

天井「家でゆっくり空けてくれ」

布束「Thank you. ……じゃあ、これは私達三人から連名で」スッ

つ【  】

天井「! ……ありがとう。まさか貰う側になるとは思わなかった」

柳迫「へへー。開けるの楽しみにね!」

青髪「サプライズ成功やね――」

ワキアイアイ




ツンツン

天井「ん?」

黄泉川「私もプレゼント欲しいじゃんよ……一升くらい」(´・ω・`)

天井「うっ」



gdgdのまま終了!





>>+2
名前を1~5人分、あればシチュをどうぞ
今のメンバーと重複があっても大丈夫です

天井と木山で飲みにいく話を是非。連投だからあれだが一応希望を述べてみたり


>>705 おkです
今日は(番外編ですし)固いこと言わない方向で



※本編より親密かもしれない


木山「ふぅん、随分高そうだ」キョロ

天井「身も蓋もない感想をありがとう」ハァ

木山「ふむ。確かに金銭の尺度で表すのは無粋だったよ。
   それに見合った店だと言いたかったんだ」

天井「気に入ったなら良かった。だが実はそこまで高くないぞ?」

木山「そうかい? しかしそちら一面の窓は丁度イルミネーションが見頃じゃないか。
   この時期は予約を取るのも大変そうだ。いつも来る店なのかな」

天井「いくら私でもこの手の店にお一人様は厳しいさ。下見に来た時は針のむしろだった」

木山「そうか。…………ぐ○なび学園都市版」ボソ

天井「!?」

木山「聖夜特集…………」ヒソ

天井「み、見たのか貴方も!? ……悪かったな、洒落た店には疎いんだ」

木山「いいや。わざわざ調べてくれたんだろう? 光栄だよ」クス

天井(……ん? あの特集は確か……パーティ用とはページが分かれていたし)

木山「いや、それにしても――」

天井「脱いでも良いのはジャケットまでだからな」

木山「」(´・ω・`)

天井「頼むから。叩き出されるような真似はしないでくれ。頼むから」

木山「何も繰り返さなくても良いじゃないか」




店員「どうぞ」コト

つ ナッツ

天井「決まったか?」

木山「ん、これで」ス

天井「ふむ。ではホワイトルシアンと、私はこれで」

木山「こら医療屋。ドイツ語なら読めるだろう?」

天井「エルディンガー・シュネーヴァイセで……そもそも読み仮名振ってあるからな?」

店員「かしこまりました」

木山「ドイツビール?」

天井「この前飲んだら美味かったんだ」

木山「私のはどんなだろう。白くてロシアらしい」ワクワク

天井「知らないで頼んだのか……」ハァ

木山「好奇心で、ね」




木山「最近調子は? 次の学会に向けて修羅場とか言っていたけれど」

天井「ぼちぼちだよ。……相変わらずだな、普通なら仕事の話題など嫌がるだろうに」

木山「あぁ、ぐ○なびの受け売r」

天井「うるさい」

木山「別に良いじゃないか。それとも趣味についてでも熱く語るべきかな。
   あるいは最近読んだ本? リニューアルした水族館?」

天井「行ったのか?」

木山「いや。イルカとサメが人気らしいが、私はサイトで見たマンボウが気になる」

天井(行きたいのか……)

店員「こちら、ホワイトルシアン。エルディンガー・シュネーヴァイセです」コト コト

木山「なんと。こちらもぱっと見ビールみたいだ」ジィッ

天井「ほら」スッ

木山「ん」スッ


「「      」」キィン




※回ってきたなう

店員「マスカレードでございます」

木山「おぉ、カラフルだ」シゲシゲ

天井「酒、強いんだな……」

木山「貴方は次は?」

天井「これを飲んでからだな。まぁゆっくりやるよ。しかし仮面舞踏会とは」チビチビ

木山「?」

天井「不穏な名前だと思ってな。事件でも起こりそうな」

木山「数年来の共犯者が何を言う。私が巻き込まれたなら道連れだ」プク

天井「……共犯者なら私達が犯人なんじゃないか」

木山「うん? そうなるのかな? うぅん……それにつけても」ゴソ

天井「フリーズ。そのままゆっくり手を下ろすんだ」

木山「しかし暑」

天井「脱ぐな」

木山「ボタン一個だけ」

天井「駄目だ」




木山「暑い。眠い」クテー

天井(背骨どこにやった)

木山「むぅ。酒、強いね」

天井「貴方が飛ばし過ぎなだけだと思うが」

木山「知らないカクテルが沢山あって、つい……」ポワー

天井「そろそろ締めよう。最後に何か食べるか」

木山「んー……? おじや……」

天井「チーズと茸のクリームリゾットで」チラ

店員「かしこまりました」




木山「んむ……ごちそうさま」(ρ_-)

天井「」

木山「どうした、行こう」フラー

天井「……そうだな」

木山「おっと」グラ

天井「ちょ、おい!」ハシ

木山「……んー。暑……くない」

天井(どうする。まさかこんな前後不覚になるとは)

木山「今日はありがとう、楽しかったよ」フニャ

天井「あ、あぁ。こちらこそ」

木山「では、またな」フラー

天井「待て! どっちに行くつもりだ!」

木山「? 駅に決まっているじゃないか。変な事を訊くな」

天井「時計を見ろ! 最終下校時刻はとっくに過ぎて……こら車道に出るな! た、タクシー!!」



有耶無耶のまま終了!



木山先生は量飲めるけど酔うと子供っぽくなると可愛いなぁと思いました、まる。

※この番外編に出てくる人物、場所、団体などは、本編とは一切合切パラレルです


・良い時間になったので寝るます
 台本形式でも書くの遅くてワロタ

・次回は年明けてから、殺伐とした本編に戻ります
 明後日シフトが出るので一度連絡に来ます

 今日はイレギュラーにご参加ありがとうございました!

天井(背骨どこにやった)
ってつまり椅子の背もたれが低くて上半身が∩って感じになったのか?
つまり胸が上に突きだされた状態に……?


>>720 その発想は無かった
 お好きなけしからん姿をご想像ください

 遅くなりました、年始は10日か11日にまいります
 来年中には決着を付けたいところです

 それではよいお年を!


・あけましておめでとうございます

 10日と11日、どちらに来るか連絡せずすみませんでした

 色々理由を付けて先のばしにするのに定評のある>>1 ですが、
 なんか熱出しました
 身体痛いけど熱は高くないのでインなんとかさんではなさそうですが

 今日は休養します
 奇しくも禁書最新刊の発売日、本物をお楽しみください
 明日は体調を見て考えます
 ごめんなさい


・こんばんは、だいたい治りました
 体調お気遣いいただきありがとうございました
 ちょっとですが続けます

 昨日はあっさりと熱下がったし新刊滾るわーとか言って小ネタで遊んでいたら
 また熱が出て午前中ダウンしてたアホの子です


ず、と茶を一口啜る。
不味い。
缶を膝に下ろし、天井は息を吸った。
公園の敷地はもはや夜気が濃い。

天井「――済まない。今まで隠していたが、私は地震の原因を知っている。
   あれは、とある実験の犠牲になり眠ったままの生徒達が、無意識に起こしたものだ」

柳迫「犠牲……?」

ふいとこちらに視線を向けたまま、柳迫は停止した。
意味がまるで分からない。
そんな無表情。

柳迫「ねぇ……。ごめん、私の理解がおかしいのかな。
   センセ、災害の原因を知ってるのに、警備員や風紀委員に黙ってる――そういう風に聞こえるんだけど」

天井「これだけなら、先ほど私がMARを疑った理由と大差無いだろう。いや、もっと悪いか。
   だが頼む、判断するのは最後まで聞いてからにしてほしい。包み隠さず話すつもりだ」

結局、事態の深刻さを伝えるにはリアルな状況を開示するしかないのだ。

柳迫「…………」

微妙な色の空の下、少女の顔は硬質なプラスチック素材にいつの間にかすり替わったようだった。
ただ僅かに髪が揺れ、それを頷いたと解釈して天井は言葉を進める。

天井「置き去りを対象にした非合法な実験が、過去に行われた。
   能力の暴走を意図的に引き起こし、データを採取する。そういう実験だ。
   当然、被験者の安全など考慮されず、置き去りの生徒達は暴走状態のまま長い昏睡に入った――」

実験の概要。
生徒の治療に尽力する人達。
その方法はほぼ確立し、後は詳細を煮詰めるだけの段階だということ。

柳迫「な……! それが事実なら、どうして公の施設で治療しないの?
   さっきのMARの話じゃないけど手柄を立てたいとかではないんでしょう!?」

天井「実験そのものが裏の存在だ。大事にしては関係者が生徒の存在ごと揉み消そうとする可能性がある。
   また、あれだけのエネルギーを発生させられる、非道な方法が知れ渡るのも危険だ」

柳迫「……っ、うぅん、続けて」

これだけではMARに繋がらない。
天井はさらに口を開く。

実験の責任者である男と、テレスティーナとの関係。
テレスティーナ自身の過去の暴走経験。




天井「これらを踏まえて地震発生時のMARの挙動を見ると、必ずしも警備員に打ち明けるのが適切ではない。
   そう私達が考えたのも分かってもらえないか」

柳迫「でも! それはMAR、テレスティーナって隊長にも言えることじゃないの!?
   自分も過去に何かあったから、他の警備員にバレないように発生源の学生を保護しようと――!」

天井「あぁ。そうかもしれない」

びくり。
柳迫の肩が震えた。

天井「だが、そうでないかもしれない」

声がぶつりと空気を断つ。

天井「この都市はどういう場所か。人は善意だけで動いているのか。
   最悪の事態を想定するのは被験者達の安全を考えてのことだ」

柳迫「――そんなの。そんなの! 確かに仕事でも不透明なことはあるよ! 研究者の人を怖いと思ったこともある!
   でもそんな、人体実験とか警備員の暗躍なんて……っ」

本当に。
目を見開いた彼女の周りには、黄泉川のような本当に学生思いの大人が居るのだろうなと思った。
それも学園都市の一面なのだろう。

天井と柳迫の認識の違い。
それは、対面する二人が手にした缶飲料のようなものかもしれない。
この地で育つ彼女は、幸運ゆえに、あるいは無自覚の危機意識ゆえに不味いものに当たらない。
舌に触れる限り違和感が無いから、そもそも土台が異様なものと気付かない。

柳迫「……、……っ! だいたい、どうして……。どうしてそれを私に言うの? 何のため?
   センセの話じゃ、風紀委員だって信用できないってことになるじゃない」

天井のしたことは、製造過程や成分表の裏を暴くような行為。
海底を這うような声を出しながら、柳迫は波間を迷っているようにも聞こえる。
今までの常識、学校や風紀委員で学ぶこと、衝撃の言葉、どれを信じるかを。

天井「なぜなら――」

これは、分かれ道だ。


・前回と前々回の安価を適用中
 続き+今回安価はもう少しお待ちください



天井「手が足りないんだ、今の私達には。組織を相手取るために。
   無理強いはできないが、先の話に感ずるところがあればどうか力を貸してほしい。
   それが君なのは……」

くい、と頭を捻り柳迫は促した。
足場のぐらつく中でも、こちらを見定めようとするように。

天井「風紀委員としての仕事現場を見た。取り調べの後には、唐突な質問にも答えてくれたな。
   顔の広い方ではないが、私も色々な人間に会う。その中で……君なら信用できる。力も、正義感もある」

彼女は飄々とし、強く、また四角四面ではないが誠実だ、それがごく短期間での印象だった。
天井は一息に、彼女を必要とする理由までを言い切った。
どうか、その能力でできることを模索していた柳迫の琴線に触れるように。

天井「治療前の護送で、一度周囲の目を掻い潜る必要性がある。……君が居ればその成功率を上げられる」

そして。

柳迫「――ごめん。訳分かんない」

ぞくり、風が背を撫でた。
冬の海から吹き付けてくるような一筋だった。

柳迫「内容からして、見境無く声掛けてるんじゃないよね。そんなに軽い話じゃない」

でも、と少女は続ける。

柳迫「じゃあどうして会って数日の相手にそれを言えるの?
   私の何が分かる……なんて思春期みたいだけどさ。実際、信用だの正義感だの、判断できるほど何を知ってるの?」

相手を知るのに必ずしも時間が要る訳ではないと思う。
だが二日という期間は、この局面で頼るほどの信用には足りなかったのか。
彼女にとって。

柳迫「それとも以前から調べて……それは無いか。私は能力が珍しいってだけでごく普通の風紀委員だし」

まずい、か。
こちらは下心を持って事件現場に居合わせた負い目もある。
そこから疑われては、もはや信頼関係を築くも何も無いが……。


>>+2
天井は……
※どう応えるか
(大まかな方針でも可、具体的な台詞の場合若干語調を弄るかもしれません)


・前回までを消化したところで、今日はこれまでに
 短くってごめんなさい

 次回は15日か16日に
 無理そうだったらまた連絡いたします

 不甲斐ない進行ですが、読んでくださりありがとうございます!


・再起動ました

 続き書いたのですが、遅くなったので明日ゆっくりやります
 また一回分落として終了とかになってもアレですし

 珍しくブツは出来ているので明日は確実に行けますです
 ではでは


・おはようございます
 安価待ちながらちょっと食料を調達しに出てきます


柳迫「もし人を見る目がどうとかで煙に巻くなら――」

じり、と少女の目が細くなった。
戦闘態勢に入った、のではない。
彼女の立場なら今ここで天井を痛め付けなくとも、取り得る手段は多いのだから。

天井「そこまで抽象的な話ではないよ」

――誰かを信用する理由。

いつか、冥土帰しと出会った時に彼の求めに応じたのは、多く打算を含んでいたと思う。
布束や青髪との馴れ初めは研究者として。
こちらがリスクを負うような選択ではなかった。

天井「確かに、君について私は多くを知らない。会ってから二日、一緒に居た時間はせいぜいが数時間だろう」

柳迫「……そう。立ち入ったことも話したけどさ、それだけだよね」

黄泉川にMARの件を相談したのは、それまでの付き合いで彼女の姿勢を知っていたから。
利用されていたにも関わらず木山に手を貸すのは、事情に同情したのか?
十数分の会話で協力を持ち掛けた上条は?
結標は?

天井「だが、その……何だ、笑わないでほしいのだが」

信用は必ずしも時間の長さではない、と思う。
継続的な付き合いが裏打ちしている関係もある。
それこそ誰から見ても実直な相手も居る。

天井「君に声を掛けた理由は、私が知っている、信用できる人々と似たようなものを感じるからだ。
   研究者としてはあるまじき理由だが」

しかしまさしく、研究のように数値化できるものではない。
気を許しても大丈夫だと思える彼らへの心情はそれぞれが別個だ。
少なくとも規定の時間や条件を達成し、値が切り替わるように成立したものでは、なかった。

風紀委員の少女は吟味するように拳で額を叩く。
やがて、ゆっくりと、

柳迫「じゃあ、センセ、教えて。何で……それとも何がセンセの知ってる誰かと似てるのかな」

それは天井に問い、同時に彼女本人にも厳密に問うているようだった。
この人を信用するかどうか、と。


>>+2
天井は……
※どう応えるか
(大まかな方針でも可、具体的な台詞の場合若干語調を弄るかもしれません)


・1レス分くらいあったので諸々再構成しました
 大意を汲み取れていれば良いのですが
 折角書いて頂いたのにそのまま使えず申し訳ありません


天井「本当に申し訳ないが、君の能力を調べさせてもらった。怒らないでほしい」

柳迫「……ふぅ、そっか。でも系統は珍しいけど、研究的には大したことないよね?
   ガチガチに特化し過ぎてて他の方向性への応用が難しいんだって」

表面上は平坦な口調を装いながら、慎重にこちらを探っているのを感じる。

研究者を「怖いと思ったこともある」程度の柳迫。
逆に言えば怖いと思う経験はあったということだ。
まして、信じるかは脇に置いても人体実験のリークをした直後である。

天井「それでも驚いたよ。以前から研究で、肉体変化を使う学生に協力して貰っているのでな。
   学園都市で三人の内、二人に会うとは。……といって、その彼は猫耳を生やして遊んでばかりいるような子だが」

しかし敢えてそれには触れず続ける。

柳迫「……話が見えないんだけど。似てるってのはその人なの? 同系能力者だから自分だけの現実が近いとか」

回りくどかったか。
眉を顰めたのを見て取って、天井は口を急いだ。

天井「いや、似ていると思ったのはある警備員だ。
   そいつはふざけて良く絡んでくるし酒飲みで、だが真に生徒達のことを思って行動している」

柳迫「それが私と?」

天井「あぁ。君は能力を使って何ができるか考えた時に、無意識に治安の維持に役立てようと思ったのだろう。
   他愛の無い使い方もあっただろうに、銃に撃たれる危険のある風紀委員を選んだのだろう」

少女はゆっくりと目蓋を閉じる。
話す内、日の落ちきった園内は暗い。
不意に点いた照明により半分だけ光の当たった顔は、その数瞬作り物のようだった。

天井「サボりなどをしても……仕事に関しては誠実に見えたしな」

心中でのみ、溜息を吐く。
実際、彼女に事情を明かしても良いとした根拠はこの位である。
事情聴取の最中や後に天井を案じていた態度、あの真剣さは本物だと思うのだが……。

天井(最悪、協力が無理でも今話した件は口止めできないだろうか。
   仮に悪意が無くとも情報が広まれば感付かれる可能性も上がる)

そう考えた時だった。

柳迫「……その人、会わせてくれないかな」

天井「警備員か?」

ふるふると首を横に。

柳迫「いや、肉体変化能力の学生って人」

青髪少年に、か。
天井の言葉の真偽を見定めるためかとも思うが、彼女の表情は妙にきっぱりとしていて意図が窺えない。
子供を巻き込むことを嫌う黄泉川と対面させるよりは安全だろうが。


>>+2
柳迫を青髪と会わせるか

>>1
長過ぎたのは私のせいですので全く問題ありません。
正直途中に関しては青髪の台詞を言わせて
シリアスブレイクとキャラ崩壊を狙っただけですので
安価の通り蛇足です。
むしろ分かりやすく改良して頂いてありがとうございます。


>>742 わざわざありがとうございます
 色々考えて頂いたからこその長さだと思います、もっと活かせれば……
 青髪の台詞は言わせたかったのでこちらにぶち込みました


ここで要求を突っぱねても仕方ない。
むしろ柳迫の方からアクションがあったことは喜ぶべきだろう。
取り付く島も無く別れ、警備員や支部内に洗いざらい話されるよりは数段ましだ。

天井「あぁ、分かった。ただ彼は私の本来の研究に協力してくれているだけだ。
   地震や暴走能力については一切ノータッチだし、……できれば黙っていてくれないだろうか」

柳迫「うん、それで良いよ。逆に研究の内容は話題にしても平気?」

天井「詳細は一応部外秘扱いだが、守秘義務を全うしてくれるのなら」

静かに少女は頷く。
これが彼女の判断を左右するなら、上手くいくことを願うばかりだ。

天井「ちなみに、例の件で治療に参加している者にも繋げると思う。どうする?」

木山は結標の説得で好感触を得ているとのことだ。
また冥土帰しの高名は、風紀委員の柳迫に届いているかもしれない。
彼らから話を通してもらい信憑性を上げることはできないだろうか。

柳迫「うぅん、取り敢えずその人だけで。できれば早く予定を合わせたいな」

天井「そうか。では連絡してみる」

第一に青髪少年との面会を望むらしい。
ならばと天井は携帯のアドレス機能を起動した。

――とはいえ、彼女を引き込もうとしているのは天井の判断である。
別の意味でもいずれ木山達と対面する機会があれば良いのだが。




青髪『はいはーい、どしたん? 実験のお誘いなら布束さん同伴で頼むでー』

飛び込んだ声は、呆気無さ過ぎるほどに普段通りだった。

天井「いや、別件だ。あー、能力と研究協力について話を聞きたいという人が居るのだが」

青髪『どないな人やろ。この前の木山先生みたいな人やったら即決やで!』

天井「……学生だよ。君より少し年上の女子学生」

青髪『行く。いつでも行く』

普段通りに青髪だった。


スピーカーから声が漏れていたせいか顔が微妙に引き攣った柳迫に都合を聞き、明日の夕方ということで落ち着く。
――念のため伝えておいた方が後腐れないかもしれない。

天井「本当に大丈夫か。彼は、
   『超能力メイドロボとか作れるんちゃう!? しかもボクの能力ってことは外見自由自在!?
    ロリから熟女まで対応した完全無欠っぷりのうえアンドロイド属性が標準装備とか!! たまらんわぁーー』
   などとのたまう性格だぞ……根は善良だと思うが」

柳迫は何と言ったら良いか分からないという表示で、鞄に引っ掛けてあった腕章を指差した。
なるほど。
彼女なら問題無いだろう。

柳迫「――とにかく。その人と会ってみるまでは何とも返事できないよ。
   ただ、できれば先に聞いておきたいんだけど、具体的に私に何をさせたいって話なの?」

ふと、緊張感を孕んでいた声の調子がいくらか凪いでいることに気が付く。
拍子抜けするような「日常」は、むわりと漂っていた空気を逃がしてくれたらしい。
それについては彼に感謝しないこともなかった。


>>+2
どう応えるか
※させたいことの内容 or 言わない

聞こえは悪いが作戦実行時のデコイを頼む

ID:I1R+tVPAOはクソ安価のAOだからスルーするべき
安価は>>745


・スーパーでジャガイモ選んでる間にエラいのが……
 皆様の反応を鑑みても「状況にそぐわない」安価に該当すると思いますので、
 >>747 からの>>745 でいきます

 帰宅したら書くので少々お待ちください



さて、柳迫に求める役割か。
そもそも当日の動きについて細かく相談したわけではない、現状での考えを述べるしかないだろう。

天井「私達には人手が足りておらず、厳密な作戦をたてる段階には至っていない。
   よってこれは可能性の段階だが……聞こえは悪いのだが患者を移送する際のデコイを頼めないかと思う」

柳迫「うん。デコイか」

おや、と思う。
予想以上に反発も喰い付きも無い。
厳密ではない、と言ったため突っ込んで訊き返すことを避けたのか。
それとも信じるかの判断までは情報に対して色眼鏡を掛けないようにしているのか。

天井「こちらの動きが感知されないのが最良だが、もしもの時に相手の目を逸らす必要があるからな」

これまたあっさりと彼女は納得したようだ。
囮という、危険を伴う響きには思うところがないのだろうか。
あるいは筋の通った説明が聞きたかっただけなのかもしれないが。

柳迫「うん、じゃあ確認は終わり。明日、四時半によろしくね」

天井「あ、あぁ」

翌日の待ち合わせ場所と互いの連絡先を確かめる。
顔に出さず唖然とする天井を尻目に、風紀委員は何の未練も見せず公園を去っていった。




天井「そういえば、青髪少年の話を持ち出した辺りから、やけに淡々とした感じだったな」

激昂はもちろん、静かに怒っていた風でもない。
それよりじっと考え込むあまり上の空、というのが近い。
最悪こちらに不利な何らかの策を練っていた可能性もあるが、自分から言い出した以上明日の夕方までは待つだろう。

天井(いや、あるいは。私のことを危険な研究者だと判断した場合)

それこそ人体実験も辞さない人間だと思われたとすると、自身と青髪の関係はどうか。
希少能力者を言葉巧みに飼い殺しているように見えるのではないか?

天井(反対に、明日の夕方までに最速で体勢を整え、青髪を保護しに来る……?)

待ち合わせから対談場所への移動までは同行する予定である。
話を周囲に漏らされずとも、天井が誤解で押さえられてしまえば動きが制限される。
それを契機に誰かに感付かれてもいけない。

天井(そうではない。突拍子も無いことを聞かされて考え込んでいるだけではないのか)

あれだけ言っておいて、柳迫を疑うのか。
しかし彼女の人格が信用に値することと、
向こうがこちらを信用……少なくとも保留にしたか推し量るのは、また別の問題ではないか。

誰も居なくなった公園で、一人不味い茶を空にする。
複数の電灯により交差した遊具の影をしんと見詰めた。

午前には折れた骨の検診もある。
その後に対談の場所を確保するとなると、他に大きく動くことはできない。

明日は、どうしようか。


>>+2
 a. 柳迫に話した通り、場所のセッティング(と検診)
 b. 場所のセッティングと、万が一に対応する準備(反証・応戦など)
 c. 青髪共々待ち合わせに行かない(検診は行く)
 d. その他(具体的にお書きください)

※dの詳細は複数可、但し時間的に厳しい場合は書いた順にできそうなのを試みます
 全部無理な場合は安価下

念のため、荒らしっぽいのは安価下で


・今日はこれまでに、ご参加ありがとうございます
 文章量は多くないですが久々に安価を結構出せたかと……

 次回は22日の予定です


・私事ですがモバゲーの禁書ゲームをやってみました
 天井も(強くないけど)カードになっており、
 フレーバーテキストや台詞がことごとく小物で、実に天井で良いです



・間に合わない……
 1投下だけでもしたいのですが多分日付変わります
 22日中にできなくてすみません


・なんと1レスだけです、睡魔に負けました
 安価も無くてごめんなさい

 次は28日に来れるかと思います


固定具を着けた身体に夏の夜は堪える。
自然の風で涼を取ることはとうに諦め、空調機の世話になっていた。
クーラー病など懸念することもなく、都市製の機械は冷やし過ぎない温度、快適な湿度を実現する。

自室のベッドの上に天井は横たわっていた。

他の寝具は薄水色のタオルケット一枚。
その色彩も、室内の暗さに沈んでいる。

天井「明日は……どうなるのだろうか」

公園を離れてから天井は、以前結標との会話に使った喫茶店を予約した。
念のため、青髪と落ち合う場所や時間をメールで確認しあった。
それだけである。

天井「これで良かったのか。しかし柳迫が私を敵と認識していたとして、何ができた?」

例えば尾行。
住居を突き止めたとして、帰宅後に何をしたか、誰とコンタクトを取ったかは分からない。
盗聴やハッキング。
これなら彼女の思惑に触れることができるかもしれない、だがいかんせん天井にはスキルが無かった。

天井「許されるのはただ待つのみ、か」

あの場で柳迫に語った彼女を評する言は出任せではない。
自ら風紀委員という立場に身を置き、良くも悪くも素直だと思う。
ふいと寝返りを打つと、閉ざされたカーテンに華奢な姿を描いた。
そして隣に、似ていると告げた警備員を想起してみる。

黄泉川の子供に対する真摯さには驚愕すら覚える。
それでいて彼女に木山の生徒達について打ち明けていないのは、立場やスタンスの問題があるからだ。
目的のためなら能力者――学生に協力を求めるのも惜しまない木山のやり方と黄泉川の性分はは相容れないだろう。
決して子供を危険な目には遭わせない。
そういう強固な考えを主に飲み仲間としての付き合いで感じていた。

天井「今更だな。悠長にやっている時間は無いのだから。彼女を呼び止めた時点で賽は投げられていた」

反して柳迫について、物事の優先順位だとか行動原理、判断の癖、そういうことを天井は知らない。
本人に言った通りに。

だから、彼女から受けた何事にも率直な印象を頼りに明日の無事を願う。
またそもそも相手に疑念を抱かれている段階で、下手な動きを勘ぐられるのも避けたかった。

天井「……難儀なものだな。こちらの情報を受け入れてもらうためだけに、先に無条件降伏とは」

肺に溜めた息がほの暑い空気に溶けていく。
客観的なデータや利害の絡み無しに、誰かを説得するのはなんと難しいことか。
相手の人の良さによってどうにかなったこともままあれど――。
最悪な始まりから安定した関係に到っている木山の例は、一種の奇跡なのかもしれない。

天井「……最悪、上司に連絡を取れば全うな研究をしていることは保証してもらえるか」

纏め役の教授の顔を思い浮かべる。
できれば研究関係に話が行って、また布束に心配させるのは避けたいが。

つらつらと悩む寝る前特有の思考も、しかしゆっくりと眠りに呑まれていった。



・最近進まないのは明らかに二度寝癖が原因

 こんばんは、いつも夜ですみません
 毎度のごとく今から書きます
 明日のシフト(遅番)に差し支えない時間まで頑張るます


・28日26時なう……すみませぬ


青髪「ほんで、その風紀委員のお姉さんとはどこで知り合ったん?
   お世話になるようなことでも……ちょっと待ちぃ、ついに布束さんに手ぇ出した? このロリコンめ!!」

天井「人聞きの悪いことを言うな! スキルアウトの乱闘に巻き込まれただけだ!」

待ち合わせも、以前結標と会った第十八学区の公園……の横にある店舗の軒下である。
今日も今日とて脱水症状が危惧される猛暑だ。
アットホームな造りの雑貨屋には何人か学生の客が入っており、張り出した屋根を借りる二人組が疎まれている様子もない。

青髪「……うわぁ」

天井「何だ、はっきりしてくれ」

青髪「ついに先生も能力発現やね。不幸体質《ハードアンラック》、低能力。ちなみにカミやんは安定の超能力やから」

止めてくれ、げんなりとした視線を向け天井は肩を竦めた。
もっとも自身の場合首をわざわざ突っ込んだ結果なので不運というより自業自得だ。

青髪「ま、重要なのはまだ見ぬ待ち人の方や。どんなタイプなん? 可愛い系、綺麗系、元気系、それとも先生の大好きなロリ系?」

天井「まだ引き摺るか。あー、気さくな感じだぞ。一応元気系……と言うのか?」

容姿はそちらの方面に疎い天井から見ても整っていると思う。
顔は綺麗系などと漏らしたら面倒そうなので口には出さないが。

わっふう! とか暑苦しい奇声を上げる少年を横目に辺りを見渡した。
風紀委員らしく柳迫は周辺地理に詳しいようだった。
昨日口頭で伝えたこの場所も一度で承諾したし、迷うことなく辿り着くだろう。

時計の針は四時十分、約束の二十分前を指している。
同行者は少女の属性とやらについて興奮気味に語る。

天井(多分無いと思いたいが……臨戦態勢の風紀委員がダースで現れたら笑うしかないな)

ここに来るまでも、天井は万が一の対策は打っていない。
予定通り冥土帰しの居る病院に行き。
予約した喫茶店がお気に召さなかった時のために別の店やカラオケボックスを近隣で見繕っておき。

天井(流石にノーガードに過ぎたか……?)

と、いつの間にか騒いでいた青髪の声がぴたりと止む。

蒸し器の中のような道路に揺らぐ影。
空気を孕む制服、急いだ足取り。

柳迫「……お待たせ。こんなに早く来てるとは思わなかったよ、暑い中ゴメンね?」

浮かべた笑顔は固く、皮膚の下にすぐ緊張が塗りこめられたようだったが。
少なくともこの場に来たのは彼女一人だった。




予約していた店に、柳迫は素直に案内された。
代金はあらかじめ青髪に渡してあるので問題無い。
むしろ道中、洒落たドアをくぐるまで展開されていた彼のマシンガントークの方が心配の種である。

天井「本能に忠実な発言は控えろと……釘を刺すのを忘れてしまった」

受け答える少女の雰囲気、あれは明らかに引いていた。
変に刺激するのも天井としてはご遠慮いただきたいし、青髪が保護でなく連行されても後味は悪い。

天井「大丈夫だよな。大丈夫、大丈夫……はぁ」

一人涼を求めて入ったコーヒーショップで当たり障りない研究データを広げ、書類とは別件で頭を抱える。
場所取りしか面会の準備をしなかったのは失策か。
待ち合わせのギリギリまで青髪少年の矯正に励むべきだったかもしれない。

ちなみに、本日唯一のイレギュラーとして午前中、風紀委員――電撃使いの先輩が長点のアドレスにメールをくれていた。

天井(おじゃんになった前回の続きを話そうか、というただの予定合わせだ。
   柳迫の態度がはっきりしてからの方が良いかと思い日程は保留にしたが……)

柳迫が彼女に相談の上、探りを入れてきた可能性もあるものの、勘ぐっても詮が無い。
色々な意味で体当たり気味に柳迫との約束に臨んだのだった。

天井「どうして彼に進退が懸かるような事態に……胃が痛む気がするのは殴られた後遺症だな、きっと」

次の診察は二週間後。
その前でも、折れた周辺が痛んだり、また誤って強い衝撃を与えたりしたら自覚症状が無くとも来るようにというお達しである。

天井(いや、心労は以前世話になった心療内科の領分だな)

病院に足を向け薬を処方されるまでもなく、処断は今日中に下るはずなのだが。
アイスコーヒーは泥水のように重く。
店を出るのに合わせて送られるはずのメールが、酷く遠かった。




柳迫「前置きは無しにするね」

暮れ時、公園。
場所の絶対座標は異なるものの、文字にすれば前日のリフレインのような光景。
ただここには腰掛ける遊具も自動販売機も無く、申し訳に置かれたベンチに間を開けて座る。

天井「あぁ。頼む」

柳迫と青髪を待ったのは一時間と少し。
連絡を受けて合流の後、渋る少年とは下校時刻を理由に別れている。

柳迫「……ひとまず、センセのこと誰かにチクったりはしないから」

天井「それは――」

信じてくれたということか。
発言の続きは、思案気な表情を目にして飲み込んだ。
それも、悩むポイントが多過ぎる難解な問題を前にしたように目を細めているのだ。

柳迫「センセ。センセが昨日言った通り、苦しむ子供を助けたくて走り回ってるっていうなら――協力するよ」

天井「ありがとう」

ここまであっさり承諾されるとは。
驚いたが、感謝はすぐに口をついた。

いや……承諾、なのだが、妙に言い回しが引っ掛かる。
証左のように柳迫の目は複雑な色を含んだままに見える。
はふ、と少しだけ抜けた音が聞こえた。

そうか。

天井「苦しむ子供を助けたくて走り回ってるっていう『なら』か」

うん、と茶髪の頭が揺れる。
その拍子に目元が隠される。

柳迫「センセのこと、疑いたいんじゃない。病室で話した時もお人好しなのかなって気がした」

口元だけではその感情は窺えず、声は平静。
だが何故か、何かを堪えているようにも聞こえた。
上げた顔は元のように難しいまま。

柳迫「まさかとは思ってたけど、能力関係でどうこうしたいんじゃないって青髪クンと話してなんとなく分かったし」

天井「では」

柳迫「私も昨日からずっと考えたんだ。
   良い人そうだから……そういう、印象とかで決めることじゃないと思った。まして、まだ会って数日だしね」

最後だけ、悪戯じみた笑みで少女は首を傾げた。

風紀委員だからとは言わなかった。
あるいは、能力者だから。
曲がりなりにも戦闘力を持つから。
入る語までこちらには知れない。

天井「おかしな動きや偽りがあったら容赦はしないということだな」

肯首はせずも、笑んだままこちらを見る目は緊張に満ち、挑むようですらある。
綱渡りをしているのは天井の側だというのに。

柳迫「ついでに、センパイとかに話しても良いかは知りたいかな。事情だけに、広まらない方が良い?」


>>+1
会話を踏まえて、協力してもらうか

>>+3
風紀委員の先輩(名無し電撃使いの人)に話しても良いか



・すみませぬ、もうちょっと続けたかったですが睡魔に呑まれます
 今日はこれにて、次回は4日に来ます
 ご参加&この間のレスありがとうございました

 安価は1つずつ下にずらしてください
 (このレスから>>+1、>>+3で)


・こんばんは、安価ありがとうございます

 念のため安価に間を開けたのですが、2つずれて重なるのまで考えてませんでした

 このような場合、2個目は1個目に押し出されて1つ下(>>+1)にずれる、ということでお願いします

 このレスはただの説明なので安価下で

 >>765 で纏めてずらしたのは、>>1 のレスで安価の隙間を潰さないためです
 分かりにくい説明ですみません

もう一度センパイと話してから決める


・意味通るので>>770 でおkです
 ではでは、また4日に


・起きました
 寝汚くてすみません、ぼちぼち書いています


・お待たせいたしました


天井「その判断は待ってくれないか。彼女とは本当に少ししか話したことがないんだ。
   幸いまた対面する当てはある、それからでは駄目か」

柳迫「んにゃ、大丈夫だけど。こっちで勝手に相談しない方が良いのね?」

天井「あぁ。慎重を期させてくれ」

昨日のように、あっさりと風紀委員は頷いた。
だからこそ読めない部分はある。
実際のところ、どの程度天井の説明を受け入れ、どの程度話の裏を危惧しているのか。

柳迫「ちなみにセンパイはちょっとお堅いけど真面目だよ。
   私が大雑把だからか知らないけど、なんかそういうタイプに縁があるんだよね……」

天井「参考にするよ」

だが、危険な動きを見せない限り力を貸してくれるというなら、実質全面協力のようなもの。
何せ打ち明けた内容が紛れもなく事実で、全てなのだから。
ただ怪しく見える行動を取ったり……念のため、敵に付け入られることには注意すべきか。
こちらの協力者を一々洗い出し篭絡してくるというのは考え過ぎかもしれないが。

天井「――では、これからよろしくな。何かあったら連絡してくれ。
   機会を見て他の面子にも紹介する」

柳迫「オーケー。情報共有はよろしく」

ん。
一音と共に柳迫は立ち上がり、ぐいと伸びをした。
未だ周囲には碌でもない暑さが満ちているが、その表示は幾分さっぱりしている。
中途半端な立場とはいえ方針が定まり、後は行動するだけ。
そんな快活さがあった。

そうして事の重大さとは裏腹に軽く、二人は閑散とした公園を後にしたのだった。




さて。
弱冷房の効く研究室に一度戻り、光る画面を眺める。
そういえば外のモニタではブルーライトがどうのと言われているらしいが、都市製、しかも研究施設配備のこれは高性能である。
にも関わらず天井は目頭の辺りを押さえた。

天井「どうしたものか……」

一種の現実逃避である。

柳迫の先輩、電撃使いの彼女については良い。
柳迫にもああ言ったのだ、再度話を聞く方向で連絡を取りアポイントメントまで漕ぎ付けている。
急過ぎて翌日は無理だったが明後日、八月一日の昼過ぎに会うことになった。

天井「難関はこちらだ。治療法の詰めに掛かりきりだろう、気が立っていないと良いが」

メール作成画面の宛先欄には見慣れた文字列。
木山春生のアドレスだ。

春上と出会った時、その場に居た布束に簡単な事情を話したことへは非常に眉を顰められた。
上条や結標と連絡したのは天井だが、協力を求めたのは木山の意志が大きい。

会話の流れとはいえ一から十まで柳迫に伝えてしまった今回は、久々に女流研究者の逆鱗に触れる可能性がある。

天井「治療の実行が近付く今、内部に軋轢を起こす位なら黙っているのも手か」

その場合、木山には協力者の存在自体を伏せ、柳迫には冥土帰しとだけ引き会わせるか。
柳迫に口裏を合わせてもらい、あたかも木山の承諾を得てから事情を知らせたように装うか。
どうにか取り繕わなければならない。

それとも伝えるなら、どこまで言おう。
また、結標の返事を待ってからの方が余裕を持って話ができるだろうか?

天井「結標の方も、前向きな雰囲気とは聞いたが確定ではない。
   新しい事項を放り込んではストレスに繋がるかもしれんな……」

メール画面を開いては閉じ、数文字タイプしては削除する。
無駄に時を浪費していると自覚しながら、天井は決断に迷っていた。


>>+2
木山に柳迫のことをどこまで伝えるか
(洗い浚い、事情を全て話したことは伏せる、伝えない、etc.)
また一部でも伝える場合、結標の返事を待つかどうかも


全部


・安価ありがとうございます

>>+1
結標の返事を待つかどうか



天井「――――」

ゆっくりと、肺を空にしていくように空気を吐き出した。
カチ。
僅かな指の動作が仮想のウィンドウを閉じ、再び開くことはない。

天井「話そう。軋轢も怖いが、いざという時に互いの持つ情報量が食い違うのは危険だ。だが……」

やはり、すぐはまずい。
例えば柳迫について話した直後に、結標から拒否の回答があればどうか。
木山はより冷静でいられなくなるだろうし、引き摺られて柳迫に過大な不信感を抱く可能性もある。

そも、長年の目的にあと一歩という今、木山は精神的に一種の極限状態と言えるかもしれない。
心労は少ない方が良い、今更だが。

天井「ひとまず結標の連絡待ちだな。向こうも切羽詰まった状況を知っているのだ、長く待たせることはあるまい」

可否の如何によって、冷静に話すタイミングを考えるべきだ。

そうすると、しておけることは……。

天井「彼女について調べるか」

このデスクなら書庫へのアクセス権限は自宅より強い。
以前はざっと流し見たデータを再度洗うこととしよう。




天井「ふむ。特に閲覧制限が厳しいことはないようだ」

第一位の例のように、高位能力者はデータが堅牢にプロテクトされている、もしくは登録さえ無いことがある。
記憶の中の妹達など存在自体が非合法な場合も同様。
そういう意味で、少女の個人情報は一般的だった。

天井「長点に所属、授業にも普通に出て風紀委員までしているのだ、当然か」

能力は電撃使い。
強度は強能力。
ただしその中では高めで大能力にもう数歩という辺りである。
傾向としては磁力などより電流そのものの操作を得意とし、制御が丁寧なようだ。

長点上機学園は能力の育成に力を入れる反面、一芸に秀でた生徒も受け入れている。
その中で彼女は前者。

天井「常盤台の入学条件が強能力だからな」

レベル3+とでも呼べる強度は名門校の内でも通用する。
本人も開発には積極的であり、自ら高校の範疇を越えた論文に目を通し、方法論を取り入れているようだ。

進学前は中の上程度の学校に在籍。
能力が発現したのは中学入学とほぼ同時なため、環境の変化が好影響だったのか。
ちなみに置き去りではない。

天井「……大したことは分からんな」

つまり経歴に関しては特筆すべきところが無いというのが感想だった。
水穂やら木山が教師を勤めた小学校やらの名前が見えなかっただけ良しとすべきかもしれない。

これ以上、踏み込んだ諸々は対面して掴むしかない。

天井「名目はこの間の続きだからな。始めは風紀委員での能力使用など、開発の話題から入るとして……」

腕を組む。
そうすると微妙に固定具に触れて、怪我の存在が思い出された。
打撲の方はたまに薬効の隙を突いて痛みながらも順調に治ってきているのだが。


>>+2
何か先輩風紀委員に振りたい話題があれば
(1つまで、複数書いてあった場合最初のを採ります)


・というところで今日はここまでに
 次回は11日か、無理だったら15日に
 ちょっとバイト休みの日に用が入ってしまい、遠くてすみませぬ

 いつも安価などありがとうございます!


この間ビアージオと友達になったんだよ☆


・おそようございます
 ひとまず>>785 で進めてみます、曲解になりますが


・休憩時間にこんにちは


・どの程度で無効安価とするかは難しい問題ですね
 今回は曲解で対応でき、ストーリーが崩壊したりもしないのでそのままいきます

 ですが、件の方は度々脈絡の無い安価をしていますので、
 今後を考え次回からAOの【突飛な台詞・行動・指定など】は無条件に安価下とさせていただきます

 普通に参加してくださっている方もいますので、内容で判断いたします
 他のAOの方にはご失礼を本当に申し訳ありません

 また別のIDでこのような事例があった場合には個別に対応いたします


・半端な対応かもしれませんがご理解いただければ幸いです
 書いている身として、「そぐわない」のか「主人公に不利」なのか「>>1 の好みでない」だけなのか、
 私情を挟まずに考えるのは難しく、事後に却下するのは極力避けたいのです

 長くなりましたが、次回もよろしくお願いします

基本的に>>1がルールだから>>1が不味いと思ったら改変なり下なり自由にすればいいと思う


・おそようございます
 今起きた……のはいつもの事ですが、諸用ありにて今日は無理です、すみませぬ
 15日は来られるはずです

・自分は難しく考え過ぎなのかもしれませんね
 ストーリーやらが崩壊しないようにぼちぼちやっていきます、はい

 ではでは


・お待たせいたしました
 板、しばらく前から復帰してたみたいですね
 今日もよろしくお願いします


抜けるような晴天はガラスの向こう。
夏の正午ともなれば太陽の位置は天頂に近く、射し込む光の角度も浅い。
ゆえに含まれる赤外線が身体に熱を与えることもなかった。

八月一日。
長点所属の風紀委員と、二度目の面談である。

中庸な価格帯の、個人経営の洋食屋は、昔ながらの喫茶店に近い柔らかな気配を満たしている。
相手を恐縮させないよう軽いランチセットだけが互いの前にある。

風紀「――はい。相手を無力化するためが大半。他にも連絡手段を封じるために携帯電話を狙うなどです」

天井「それも出来る限り避けると」

風紀「飛び道具と割り切ってしまえば便利ですが、制御ミスが大きな事故に繋がるので。
   能力を使わなければ治まらない事態に陥らないよう心掛ける、という戒めも兼ねて……」

ふむ、一つ頷いてアイスコーヒーを啜る。
風紀委員は小洒落た、量の少ないサンドイッチを静かに口にした。

風紀「勿論、必要なこともあります。距離や障害物で接近が難しい時、それに多人数相手ですとか」

前回の話では、風紀委員の仕事の内、荒事の割合はそう高くないということだった。
続くこの場は、頻度は少なくとも能力を使う際の具体例を聞いている最中である。

天井「簡単な書庫のデータを見せてもらったが」

最初から開発官として、電撃使いの風紀委員と見込んで声を掛けている。
彼女の場合は知り得る程度の情報をあらかじめ持っていても問題無いだろう。

天井「命中、出力共に制御は良好じゃないか。それでも実戦では気を使うか」

風紀「身体検査と違ってゆっくり演算できないので……。それに紙の上でも、連射性とかは今一つなんです」

確かに、高いコントロール性に比べ演算速度や持続力、最大出力は伸び悩んでいるようだ。

天井「あるいは逆なのかもしれないな。
   実用的な場面で、安全性のために制御を強く意識することが、コントロール向上に繋がっている可能性がある」

風紀「つまり仕事上で高出力などを発揮する必要があれば、そちらも伸びるのでしょうか。
   ですが保安を度外視する訳にはいきませんし」

天井「なに、実用的とは仕事や戦闘に限らない。そもそも気の長い話だが、例えば――」

名目として開発の面から話題を進めていたものの、名目になる程度には双方の共通項である。
本来の目的――彼女について知るという意味でもそう脱線ではあるまい。
そう割り切ると予想外に会話は展開していった。
最近読んだという論文の内容が脳内の「中古」フォルダにあり、久々に逆世代ギャップを感じたりしながらも。




風紀委員の皿にある、最後のサンドイッチが口に運ばれる。
薄切りのフランスパンにサーモンなどを挟んだそれが、はも、はも、と半分位消えていった。
天井は添えられたサラダを名残惜しく食べきった。

天井「そういえば、先日――」

左手にはグレープフルーツジュース。
ドリンクのみお代わり可だったため、普段あまり飲まないものを試してみたのだ。

風紀「先日?」

彼女も何杯目かの、今は紅茶の入ったグラスを傾ける。
開発から焦点はずれ、研究やら巡回でのハプニングやら話は転がっているのだった。

天井「飲み屋で変な男と話してな。ビアージオとか名乗るのだが」
風紀「うーん。イタリアか、その周辺の方でしょうか」

天井「いや、どう見ても日本人だった。最低でもアジア圏だな。通称のようなものらしい」

学園都市は科学の最先端。
学生であれ研究者であれ、その環境を欲して日本国外から移り住む者も多い。
日系外国人の可能性も捨てきれないのだが……。

天井「それより、雰囲気に気押されてしまってな。私より少し年下だかの、どこにでも居そうな風体なんだ。
   それでいて妙に目が淀んでいるというか。前の店でしたこま飲んだのかもしれないがな」

実際のところ、微小の心当たりはある。
それはかつての未来で垣間見た、特殊な人種の息遣いである気がしたのだ。

天井は、そういう空気に敏感な性質ではない、と思っている。
だからあくまで「気がした」だけ。
銃をちらつかせるでもなく、彼は混みあったカウンターの隣席に突っ伏したものである。

あれが実際裏の何かだったとして、飛び抜けて身も蓋もない。
警戒はしたものの最後まで管を巻いているだけだったのだから。
その後会うこともない。

天井「……仕事が過酷だと愚痴っていたし、修羅場続きだったのかもな」

風紀「私達も風紀委員の『仕事』なんて言いますけど、お金を貰っている訳ではありませんし。働くのって、やっぱり大変ですよね……」

天井「まぁ、確かにな。研究では年単位で主だった成果が出ないこともある。だがそれでも何らかの遣り甲斐はあるものだよ」

と、語りながら彼女の様子を伺った。
顎に手をやり唸っている姿は、思春期らしく進路や将来について悩んでいるのだろうか。
本名不詳の男に反応したかはよく分からない。

天井(あわよくばこの都市の裏側に触れたことがあるか、探りたかったのだが。
   雑談に毛が生えたようなものでは互いに何も分からんか)

からん。
三分の一ほど不透明な液体が残ったグラスで氷が少し崩れた。

彼女の食事は、残すところサンドイッチ半分。


>>+2
他に話したいこと、聞きたいことがあれば
(1つまで、複数書いてあった場合最初のを採ります)


どうして風紀委員になったか。
返答はどのようなものにしろ、賞賛するような反応を示す。


・おぉう、すみません……一応連投NGでやっております

 ですが人居なさそうなので、22:00までに他が無ければ>>797 でいきます


・では続き書いてきます

 どうかお気になさらず
 楽しんでいただけて嬉しいです



天井「それに、」

硬質な音を転機に天井は切り出した。
今日のこの一時間程度でこちらの事情を話すか全て決める必要は無い。
しかし彼女の性格や行動指針について、少しでも手掛かりを得ておきたかった。

天井「風紀委員の『仕事』が、いわゆる職業のそれに比べて……例えば責任の面で温いとは思わない。方向性は違うがな。
   何より、職業には生きる糧を得るという切実な原動力がある。君達は無償だろう?」

風紀「はい。無償でも、生活は保障してもらっていますから……」

強能力者である彼女には安定した奨学金が支給されているはず。
だからボランティアに明け暮れる余裕があるのだ、と。
言外にそう語っているのか、また別の意図か。

天井「だからこそだ。生きるのに必須ではないだろう、君の『仕事』は。
   自分の意思だけで激務に従事できるというのは、純粋に凄いことだと思うよ」

少女は一度目を丸くし、

風紀「そ、それは……皆そうですから! 支部の仲間とか、皆頑張ってるから私も頑張れますし。
   先生だって、生活するだけなら楽な仕事もあるじゃないですか! 忙しくても医療の研究を続けてる先生の方が凄いですよ!」

アイスティーに刺さったストローを掻き回した。
照れたように視線は彷徨っている。
誉められるとあがってしまうタイプだろうか、天井はつい笑いを漏らした。

天井「はは。比べられる事でもないさ。私は……昔居た研究所で医療部門に配属されてな。
   何故だろう、気が付いたらこの分野をひた走っていたようなものだ。
   君にも大なり小なり切っ掛けがあったのだろうな」

己の信念に従い、正しいと感じた行動をとるべし。

外部向けのサイトにも記述がある風紀委員の理念だ。
原則は学内のみを活動範囲とし、警備員やらに頭を押さえられることもあるという彼らだが、
その教えは自主性を強く肯定している。
その組織に所属し続ける彼女にも、駆り立てる理由や出来事があるのだろうか。




やがて、恥ずかしげにもぞもぞしていた彼女は小さく口を開いた。
手元には複雑に折り畳まれた紙ナプキンが落ちている。

風紀「私……小さい頃に風紀委員のお世話になったことがありまして」

天井「強盗にでも巻き込まれたのか? 昔からその手の事件は多いからな」

風紀「い、いえいえ。ただ迷子になっただけです。
   道が分からなくて、目茶苦茶に歩いて、いつの間にか学区まで越えてしまって」

カランカランとドアベルが鳴り、客がまた少し入れ替わる。
落ち着いてきたのだろう。
高校生の風紀委員は雑音など無いかのように、懐かしげに話す。

風紀「それで、見回りをしていた風紀委員のお姉さんが声を掛けてくれたんです」

天井「その風紀委員に送り届けてもらった訳か」

風紀「いえ、一緒に迷いました」

天井「えっ」

聞けば、詳細はすぐに語られた。
その風紀委員は研修明け、しかも目的地は管轄外の別学区。
涙目の子供を前に混乱し、PDAで地図を見るのも支部に連絡を取るのも思い至らなかった、と。

天井「待ってくれ。その人に憧れて風紀委員を志した流れかと思ったのだが」

風紀「それで合ってます。……その人、自分もパニックなのに、私が泣かないように色々お話していてくれたんです。
   後でその辺りの裏事情を知って、私も風紀委員になりたい、と」

冒頭からして、ドラマチックな救助劇を想像していた天井は、一瞬ぽかんとしてしまった。

風紀「という、それだけの話なんです。大それた理想とかでは……」

遅れて、しかし納得する。
風紀委員のメインは地味な仕事だと、以前彼女は言っていた。

天井「いや。それも大事なことだ。
   事件や事故を未然に防ぐのも、危険から身を以て一般人を守るのも、迷子のために骨を折るのも。
   同じく大事なことだろう」

風紀「――ありがとうございます」

結局、組織にはどの視点を持った人間も必要だ。
とはいえ、言葉に出されるのはやはり気恥ずかしいか。
少女は微かに笑い、俯いてサンドイッチに齧り付いた。


>>+1
電撃使いの風紀委員に木山の件で協力を依頼するか
 a. する(この場では話しません)
 b. しない
 c. 保留



・安価追加

>>+2
依頼するタイミング
 a. この後すぐ、場所を変えて
 b. 日を改めて
 c. 木山に柳迫のことを伝えてから
  (結標の返事待ち)



風紀「では、また。ごちそうさまでした」

天井「あぁ」

猛暑の屋外、お辞儀をして去っていく後ろ姿を見送った。
今日は非番と言っていたので、帰宅するのかどこかに用があるのか。
陽炎に揺らぐ制服は通りの角を曲がっていく。

天井「意外と打ち解けられた、か」

大人、開発官を相手にしている緊張は抜け切らないものの、個人的な話題にも応えがあった。
また――後のために言い出した連絡先の交換にも抵抗は無かったように見えた。

天井(彼女にも協力を請いたいからな)

後の、つまり依頼のためである。
柳迫にも言ったことだが、今の木山達には圧倒的に人手が足りない。
風紀委員は警備員とは別系統の治安維持組織。
権限の差ゆえに捜査力は劣るかもしれないが、第一線で活動している能力者というだけでも稀有なのだ。

天井(今日の会話だけで性格を掴めた訳ではないが、落ち着いて事情を説明すれば無下にはされまい)

犯罪者を取り締まるより困り事に手を貸すことを旨とする。
それはいわばディフェンス寄りの思考であり、護送など守りの作戦には適していると思われた。
また木山の生徒達の境遇さえ納得してもらえれば、少なくとも彼らに禍が及びかねない選択はしないだろう。

そう判断してのことである。

天井「まぁしかし、課題は順に解決しなければ」

少女への説明も一仕事だろうが。
先に懸案である木山との面会を済ませておきたい。
風紀委員の説得を先にし、仮に話が拗れた場合、木山に対して抱える爆弾が増えてしまう。

天井(つまり向こうからの連絡――ひいては結標の決断待ちか)

天を仰げばこめかみに汗が伝った。
もうすぐ午後二時、最も気温が上がる時間だ。
大きく鋭い太陽に天井は目を細めた。

結標から少し考えたいと返事があったのは四日前。
返答が遅いような気もするが、自身は木山と結標の間にどのような会話がなされたかも知らないのだ。
また事の重大さを理解し、慎重に考えている裏返しとも取れる。

待機というのは静かに重苦しいものだ、が。

天井「出来ることをしよう。新たな情報が無いかアンテナを張り続けるのでも。
   研究でも。休養でも。私達は、前に進んでいるのは確かだからな」

焦る心情を宥め、まずは木山にどう話すかシミュレートすることにした。


結標、依頼を承諾せり。

そんな意味のメールがあったのは、翌日、八月二日の夜だった。


>>+2
木山に柳迫の事を伝える際の方針
(何かあれば)


・というところで本日終了です、寝るます
 次回は20日の予定です
 お付き合いありがとうございます!


「人手は足りてるのか?」で切り出して、
「事情を話せば力を貸してくれると思うし、風紀委員で実力も申し分ない。作戦には囮役も必要ではないか?」的な。

詳しい事情はまだ伝えていない体で。


・こんばんは、安価ありがとうございます


>>810 ですが、>>779 にて木山に全て話すことになっているため、
 「初めは柳迫に詳細を話したことを伏せつつ、会話中に機を見て打ち明ける」流れになります
 よろしいでしょうか

 >>810 の方、駄目でしたら本日中に書いていただければ幸いです
 日が変わるまでに無ければ上記の方針でいきます

 よろしくお願いいたします


・ありがとうございます、ではそれで進めます
 続きは明日に

 投下日でないのにご確認&ご返答助かりました!


・ごめんなさいガチ寝してました
 書け次第落とすます



雨粒が激しく地を叩いている。
この季節には珍しくもない、夕立である。
都市内で開発された建材に囲われ、最適に調整された空調の恩恵を受けても、
熱帯のスコールじみた存在感は厚く存在していた。

木山「ここに来るのは久し振りだね、天井博士?」

コトリと、敢えて置かれたのは温かいティーカップ。
穏やかな匂いと色からロイヤルミルクティーかとあたりを付ける。

天井「互いに多忙の身だからな、木山博士。共同研究者とはいえ」

八月五日。
筋ジストロフィー治療の研究、それを名目にして天井は相手のホームを訪ねた。
既知の研究所は豪雨に隔離され、沈んでいく都市の中ここだけが取り残されたような奇妙な錯覚を起こす。
そんな気も知らず、対面に掛けた木山は静かにカップを口に運ぶ。

木山「…………」

天井「…………」

予想より、木山の様子は落ち着いている。
研究開発において水面下で次世代への気運が高まるような、張り詰めた熱気を僅か感じるものの。
打ち明けるなら早い内だ。

木山「怪我は平気なのかな。例の件は関係無いと書いていたが、鎖骨が折れたとか」

天井「違和感はあるが、生活に支障は無い。何せ名医に掛かったからな」

木山「そうか。だが無理はしない方が良い」

条件反射のような挨拶に始まり一種の近況報告。
その間も相手は急かさない。
だが世間話に興じる暇が無いのは、双方の共通認識だった。

天井「……移動の日取りは決まったか?」

木山「まだだ。だが二十日前後にはしたいと思っているよ。
   今は治療法の詰めの最終段階と、以前探りを入れてきた者を警戒しながら決行日を計っているところだ」

逆説的に、木山や冥土帰しでも居るかもしれない敵の尻尾は掴めていないようだ。
これまでその手の連絡が無かったため想定通りではあるが。




ばらばらとくぐもった雨音は止まらない。
苦い事情や諸々全てから切り離された感覚を、天井はざくりと断ち切った。

天井「率直に聞くが……実際に動く場面での手は足りているか」

木山はすとん、と頷く。
乾いた室内でも重みのある髪が一緒になって揺れた。

木山「メールした通り、協力を得られたからね。おかげで移動時の課題はかなり減ったよ」

天井「そうじゃない。万が一のことだ。当日、あるいは前後に敵性に干渉されたら?」

木山「――――」

無言は雄弁だった。
彼女も嗜みとして拳銃くらいは使えるかもしれないが、過度に期待はできない。
天井の腕も同様。
また木山が保持する水流操作は無能力、とても実戦には持ち込めないだろう。


天井「能力者相手なら上条少年が対応できるかもしれないが……。
   重火気や情報戦で来られた場合がな。対抗する当てがあるなら良いが」

木山「…………ふむ。つまり、貴方には当てがあると」

天井「できれば紹介したい」

良い流れだ。
木山は吟味するように睫毛を伏せている。

天井「この怪我をした事件の縁で知り合ってな。瓢箪から駒というやつか。
   名前は柳迫碧美、風紀委員をしていて――」


薄暗い降雨にぽつりと浮かぶ直方体の部屋。
しんとした灯りの下、つらつらと自身の言葉が流れていく。


>>+1 上手く話を運べるか
※コンマ判定  ★修正+15
  - 4:ファンブル
  5-49:失敗
 50-94:成功
 95- :クリティカル
ただしコンマ自体が0-4/95-99の場合、修正の値によらず必ずファンブル/クリティカル





天井「――ちなみに強能力者なのは用途の方向性がかなり限定されている為だろう。
   実際の戦力はもう少し上だと思う。風紀委員として受ける訓練も加味してな」

まずは能力など、表現は悪いがスペック面を言い連ねる。
対スキルアウト戦で目撃した様子を交えた説明に、予想以上に食い付きは良かった。

木山「そうか……。能力以上に、立場の力も大きいね。信用はできるのかい」

天井「あぁ。表面上は不真面目な態度を取ることが多いが、根は誠実な子だ」

だが正念場はここから。
事情を伝えても大丈夫だと、思ってもらわなければならない。

天井「事情聴取の後、良い機会と思い相談の形で色々と話したが、親身に答えてくれた。
   非道な目に遭った生徒の話をすれば憤慨してくれるはずだ」

木山「口は硬いかな」

天井「普段から守秘義務のある身分だ、問題無いだろう」

す、と白衣の腕が組まれた。
ローテーブルを向いていた木山の顔は目の焦点をぼかしたままに少し上がる。

不意に、ざらついた雨音に腹に響く低音が混じった。
瞬間、雷光。

カーテンの隙間、細い空が白く染まるのを背景に、向かい合う視線がひたりと交錯した。

木山「……もう一度聞こう。貴方から見て、信用できるんだな?」

天井「できる。唯一の懸念はこちらが良からぬことを企んでいると疑われることだが、
   冥土帰しの後ろ盾などを加えれば疑念も払拭できると考えている」

現実には、この信用は半ば事後承諾だが。
あの切り出し方でこちらを一方的に悪人と決めて掛からなかったこと、
生徒を助けるためなら協力するという言葉は、だからこそ確固たる事実だ。




木山「そうか。……確かに私達にはいざというときの力が足りない。
   頼れる者があるなら、それに縋るのもやぶさかではない」

張り詰めた緊張の糸も忘れ、天井はおや、と思った。
目を細め算段を立てる姿に何か違和感がある。
上条や結標への依頼を勧めた時は、もっと……。

天井「では、良いのか?」

木山「そうだね、近日中に場をセッティングしてくれないかな。頼むなら早い方が良いだろう」

天井「……」

願ったりな展開である。
ここで言葉を差し挟むのは自ら首を絞めるようなものだ。
しかし。

天井「焦っているのか」

木山「時間が無いという意味ならそうだね」

機嫌を損ねずに彼女に話を通すのが最終目的ではない。
本来の命題のため天井は口を開いた。

天井「以前に比べ性急に感じる。今月中にどうにかしたいというのは、ただの目安だろう?
   間に合わせるために事を急ぎ過ぎるのは――」

木山「天井博士。信用できると言ったのは貴方だよ。
   治療法の大詰めで、私自身が会って決める時間が取りづらいという事情は確かにある。
   だがそれに流されて判断を誤るつもりもない」

それとも、と木山は恐れの無い表情で脚を組んだ。

木山「やはり見立てに自信が無いというなら、早めに言って欲しいよ」

まじまじと変わらない真顔を見つめる。
絶句した数秒、天井はやっと言語を取り戻した。

天井「いや。それに実際に会えば、最終的にその結論に達すると思っていた。
   怒ってくれて構わない……実はもう、粗方の話はしてある」

木山「――性急なのはそちらの方じゃないか、全く。
   さっきああ言った以上、そう貴方を責められないな。忌々しいことだ」

木山は額に手をやって大袈裟に天を仰いだ。
最もコンクリートやらを透かし見ることができたとして、空は雨と厚い雲に覆われているのだが。


>>+1
風紀委員(名無し電撃使い)にも依頼したいことを木山に言うかどうか




ふぅ。
吐き出した息はどちらのものだっただろう。
言わなければいけないことを言った安心感で、天井はソファの背もたれに体重を預けた。
口を付けていなかった紅茶をくいと呷る。
冷房にいくらか冷めてしまっているが、じんわり甘く、美味い。

天井「性急ついでに……もう一人、頼めそうな風紀委員が居るのだが」

木山「なら訊くことは同じだよ。能力は、口の堅さは、信用できるのか」

天井「先ほどの子と同じ支部の先輩で、電撃使いの強能力だ。長点在学だから能力は確かだよ。
   気質は大人しく真面目。信用できるかは、ここで話題に上げている時点で私の見解は分かるだろう?」

相槌を打ちながら聞いた木山は、おもむろに指折り何かを数えた。
手の形は四を示している。

木山「高校生か。ここの生徒は開発のおかげか早熟だが、より年長の学生が加わるのは良いことかもしれない。だが、」

天井「まずいか?」

木山「いや、その子には頼んでみよう。私が心配しているのは人数だよ。
   単純に人を増やせば対応力は上がるが、誰かの目に留まる可能性も上がってしまう」

なるほど、風紀委員の彼女が承諾すれば、学生の協力者は四。
何人までなら安全ということはない、各人のポテンシャルとのバランスで考えていくしかない。
指標など無いのだから木山が危惧するのももっともだった。

天井「これ以上は手を広げない方が良いか?」

木山「必要な役割や、それへの適性によるからね。はっきりとは言えない」

天井「ならこれまで以上に慎重に、だな。件の風紀委員には話をしておくよ。
   それで、柳迫とも一緒に顔合わせをしよう」

そこまで言うと、木山はわざとらしく目を見開いた。
驚いたとばかりに。

木山「なんだ、そちらにはまだ事情を話していないのか」

天井「……悪かったよ、本当に」

木山「うむ」

やはり少しは気に食わなかったようだ。
木山は顎を上げてカップを傾けた。




天井「ともあれ、一度移動に関わるメンバーで集まった方が良いだろうな」

木山「確かにね。結標君が来るまでは計画などあってないようなものだったが、今は違う。
   風紀委員の二人には立案も期待できそうだ」

天井「そういえば、柳迫には話したのだが。本隊に代わって目を集める囮も必要ではないだろうか」

そうすると、その有効性、逆に「偽物で誤魔化すほどの本物がある」と思われるリスク……、
堰を切ったように検討事項が生まれ、二人の間に積み重なっていく。
ふと時計に目を遣った頃には、カップはとうに空になり、口寂しさまで感じる始末だった。

天の色合いも紺に傾き当然夕立の影もない。
外に出れば、道の所々にある水溜まりが、鏡のように存在を主張しているのだろうが。

木山「――まぁ、何だね。続きは他の面々を交えて今度にしよう。
   二人だけで議論していると、見方が偏ることだし」

天井「そうだな。長居をして済まなかった」

大丈夫だと、木山は薄ら口の端を上げた。
立ち上がりカーテンを捲る。
街は雨中から夜の暗がりに居場所を変え、その表面には隈のある横顔が映っている。

木山「一つだけ聞いてほしい。上条君や結標君を探し当てた、貴方の目は確かだと思っているけれど」

柔らかささえ感じるほど静やかな声に、天井もソファを離れた。
同じ目線で聞くのが最低限の礼儀である。
そう背筋がのびるような厳しさをも併せ持っていた。

木山「何かあった時に、責任が取れるのか。……そういう事態で『ない』のは理解してくれているかな」

例えば、何か不用意な行動から木山に注意が向き、生徒達の居場所が割れたなら。
もし彼等を兵器の研究素材と見るような輩が居て、身柄を奪われてしまったら。
取れる責任など無くなってしまうのだ。

ぎしり、と歯を食い縛る。
そんな苦いifを木山が口にする前に、天井は重く頷いた。

木山「うん。それなら良いんだ。それさえ忘れないでいてくれたら、良い」

それっきり研究者は背を向ける。
踵を返す僅かな時間、栗色の髪の合間に見えた淡い笑みからも、底に沈めた感情は分からなかった。


黒い水面を避けていく。
砂埃の混じる路上の水は、排気の溶けた空に浮かぶ星を正確に辿っている。
ただ一つも踏まぬように、天井は夜の道を歩いていった。


>>+2 風紀委員(名無し電撃使い)への依頼、および皆で作戦会議までの間に、
   平行してしたいことがあれば

※複数可、基本的に書いた順に試みます
 時間的に厳しい場合は中途半端になる可能性があります


・今日はこんなところで
 次回は25日を予定しております
 深夜開始かつ遅筆にも関わらず、ご参加ありがとうございました!

 昨日あんな寝たのにまだ眠い不思議……




・こんにちは
 すみません、ちょっと書けなくなりまして今日は休みます

 次に時間取れるのが6日以降なので、決まり次第また来ます
 こちらの都合で申し訳ありません……


・酉忘れましたが>>1 です


・一週間過ぎてたなう本当にすみません……!

 未だ事情に決着が見えず、まだ何とも言えぬ感じです
 来週頭には進展する(らしい)のでまた来ますかたじけないです
 ひとまず生存報告まで


・ごめんなさい、まだ駄目です
 またしばらく潜ります
 遅くとも3月末には一度来ます

 安価スレとして機能してなくて本当にすみません


・こんばんは

 リアル余裕が中々できません、毎度ながらごめんなさい
 ひとまず再開時期未定で凍結にしようかと思います
 再開までは月2回程度、保守兼生存報告を書き込みます(最近の現状とほぼ同じですが)
 待ってくれている方には本当に申し訳ないです

 要件のみですが、では
 再開時にはageますので、気が向いたらご参加いただけると嬉しいです


※本編とは毛の先ほども無関係です
>>1 はOPを動画サイトで視聴しただけ


< キボウダケヲ シンジ ツラヌイテー

天井「…………」ジー

布束「…………」ジー

天井「……ふぅ」

布束「……naturally, 毎週テレビの前で待機する仕事が始まるわね」

天井「そうだな……。それから、出演おめでとう」

布束「ありがと」

天井「何というか、実物より眼力がまろやかd 「寿命中断ッ!!」ぅごふっ!?」ドグシャ

布束「Then, ……何か言おうとしていたかしら?」

天井「なんで、も、ない。……脛はやめてくれ、鍛えられないんだぞ」ズキズキ

布束「脛? あなたの脚がどうかしたの?」

天井「うぐ……悪かった、悪かったから。しかしOPにも登場か。意味ありげで羨ましいな」

布束「あなただって出番あるじゃない。In case, 漫画版準拠なら」

天井「あんな出番嬉しくないわ! カタコト外人に食って掛かるシーンだけなんだぞ!」

布束「Really. 贅沢ね。禁書の方ではメイン回もあったじゃない」

天井「あれはメインとは言わない。ボスでさえないぞ、あの扱い」

布束「まぁ普通に考えて一方通行と打ち止め回よね。次点で芳川さん」

天井「ヒッ……打ち止め怖い打ち止め怖い! うわぁぁ!!」ガタガタ

布束「Oh... そういえばそんな設定もあったわ……」


〈とあるメタの研究者達・了〉



・魔が差しました
 あっ、予断を許さない状況は変わっていませんすみません石投げないで

 4月中にまた来ます

     _
              //.|
             //./|
           //./| |

          //./ /|. |
        //./|/::/| |          _______________
        □/ / // | |.          |
        | |/.;;;;//.  | ||.         | じゃあ、>>1は死刑という事で・・・。
        | | ;;;;;;//   | |||         |_
        | |.;;;//    | |.||     ∧ ∧  |/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
        | |//..    | | ||.    ( ・∀・)
        | |/.     | |. ||    (    )           ワイワイ  ガヤガヤ
 ______.| |___//| ||__ / | | |__

        | |   //  |. ̄∠/(__(__) /.|          ∧_∧ ∧_∧ ∧ ∧.
..∧_∧   (| |⌒/. ∧ ∧⊃イヤァァァ.     //|         (´-`;)(@・ )(;´∀)(
( ・∀・).(⌒| |//(;´Д`) ←>>1   //  |        ∧∧ ∧ ∧  ∧_∧. ∧∧
(    )  ̄| |/ (⊃ /  ⊂.⊃.   //   |       (∀・ )( ´,_ゝ)(   )(´∀`
| | |.   | |    /   └─┘ //   /.      ∧_∧ ∧ ∧ ∧ ∧. ∧_∧
(__)_)   | |  /         //   /       <_`  )(´・ω)(д゚` )(
        | |/         //   /.       ∧_∧ ∧ ∧ ∧_∧. ∧_∧ ∧
        ~~         //   /        (   )( ゚∀゚)(`   )(   )(゚д
.                //   /        ∧_∧ ∧_∧  ∧_∧ ∧_∧ ∧_∧
.               //   /         (д- )(   )( ´,_ゝ)(TдT)(∀` )


>>852 あれはギロチンじゃないよ、はんぺんだったんだよ!
 おはようございます

 すぐ再開、とはいきませんが、リアルの方落ち着いてきました
 6月中には戻ってきたいです

 覗いてくれている皆様には多大なる感謝を
 取り敢えず生存報告にまた来ます


・こんばんは、出先のPCから>>1 です

 6月8、9の週に一山あるので、再開は少なくともその後に
 用事諸々との兼ね合いになりますが……

 下山したらまた来ます
 では


・ひとまずリアルが落ち着きました

 22、23日のどちらかに来ようと思います
 また日が空きますが
 お気軽に覗いて頂けたら幸いです

 不在中、皆さまコメントありがとうございました
 おかげさまで何とか復帰できそうです



・こんばんは、連絡遅くなりました
 明日(23日)来ます
 今日は私用でタスクがあるので……

 では、おやすみなさい



・遅くなりました
 実に4ヶ月ぶりの再開です

 憶えていてくれた方、ありがとうございます
 初めて開いた方、少しでも楽しんで頂けたら幸いです
 牛歩進行なスレですがよろしくお願いいたします


・参考:なつやすみのできごと

 夏休み前
  黄泉川とテレスティーナについて会話
  結標にコンタクト

 7/20
  結標と対面、実験依頼

 7/23
  結標交え実験後、布束、木山、結標、上条、青髪と昼食

 7/26
  黄泉川と食事、対能力装備について会話
  木山からメール、結標に依頼する意向

 7/27
  長点の風紀委員(電撃使い)と会話
  スキルアウトの乱闘現場にて負傷、冥土帰しの病院へ搬送される

 7/28
  検査後、風紀委員による事情聴取
  結標は考えて返事をするとのこと

 7/29
  柳迫に協力依頼、問答の末、青髪と引き合わせる約束

 7/30
  柳迫と青髪の面会、柳迫からの返答

 8/1
  風紀委員と面会

 8/2
  結標が承諾との連絡

 8/5
  木山に柳迫の件を伝える
  風紀委員にも協力要請すると決める

 現在8/5終了


 8/20頃
  子供達の移送(予定)



・少し安価の内容を前後させます


長点の風紀委員の彼女に急なアポイントを入れたのが翌朝。
その昼には柳迫に話したのと同様の事情を伝え、期待通り協力に肯定的な返事を得ることができた。
こちらが淡々と事実を語る間、やや血の気の引いた顔色で、唇を引き結んでいた少女には申し訳なさも感じたが。

さらに次の日、八月七日。
天井は女子高校生と連れ立って、第五学区の街中をぶらぶら流しているのだった。

風紀「こ、この暑さは敵わないですね。発電能力で涼は取れませんし……」

天井「確かに、電気が流れる限り抵抗により熱が発生するからな……。だが無理と決め付けたものでもないぞ?
   応用の仕方や自分だけの現実の拡張で、それができる可能性を考慮して損はない」

風紀「応用……。えっと、最近持ち歩き型の扇風機が気になってるんですけど……。
   電化製品に通すような精密操作はかなり疲れるので、差し引きゼロな気もします」

太陽は中天に近く、日陰を伝うのにも限界がある。
蜃気楼が見えそうなアスファルトの上をタオル片手に歩く二人の声には張りが無かった。
コンビニで買ったお茶のボトルは急激に汗をかいた後、瞬く間に温くなっている。

遠目に見ればアンバランスな組み合わせだが、金銭を媒介にした擬似恋愛関係などにあるわけではない。
交わされる話題の通り表向きの目的は能力開発の野外実習。
本題は木山の生徒達の移送の際、通るかもしれないルートの視察である。

とはいえ始点――現在子供達が居る場所と終点――治療を行う施設の所在はまだ教えてもらっていなかった。
あくまで途中で通る可能性が高そうな地区、それもかなり大雑把な範囲だけ。
仮想的が天井をピンポイントでマークしているとはあまり考え難いが、世に絶対は無い。
念には念を入れ、こちらの動向から情報が渡るのを避けているのだった。

天井「……歩いているだけでは、どうにも分からんな」

風紀「でも、事前に見た地図と合わせれば推測できる部分もありますし。
   例えばあっちの高架道路の出口は、降りてくる最中に死角になる方向に広めのスペースが見えます」

天井「あの広場で待ち伏せるということか?」

風紀「えぇ……こちらの移動経路が読まれている前提の、可能性ですが」

完全に危険な箇所を洗い出すことはできなくとも、目で確認した情報は計画を決めるための材料になる。
その打ち合わせは明後日の午後に行う予定だ。
それまでも、足である車両や座標移動で経由するポイントについては木山の方で準備を進めているらしい。

天井「狙撃に適した地点などはあるのか?」

風紀「あります。というより、あり過ぎて絞りきれないというのが正確でしょうか。
   ただ危険性の度合いである程度順位付けはできると思います」

では、それも避けるように経路を組むことになるだろう。
この辺りの地区は、結標の力を借りる場合でも、万が一それが難しくなっても通るとのことらしいから。

天井「――この辺りで一度測定するか。先に電波状況を測定するから、そっちの木の下で待っていてくれ」

はい、と少し遠慮がちに少女は離れていく。

実環境での流動的な電磁波による出力・制御のぶれの抑制。
そんなテーマをでっちあげて街に出たため、開発の真似事もしなければならないのだった。

天井(炎天下、徒歩、形だけの実習……か。今日の夜はベッドに倒れこみそうだな……)

移送の大体の予定を聞いてから、研究の方は新しい問題に取り組むことを控え、ルーチンワークに徹している。
それでも木山の件だけで、自身の処理能力はぎりぎりまで行使されていると感じていた。

決行まで二週間弱。
医療研究という長いスパンの分野でさえ、転がり始めた状況は瞬く間に駆け抜けてしまう期間だ。
事態が本格的に動く前に一度、しっかり休んでおこう。




八月九日。
木山、冥土帰し、結標、風紀委員の二人、それに天井。
いつにない人数で部屋の主が気に入っているらしいローテーブルを囲み、時折烏龍茶で唇を湿らせる。

冥土帰しの私設研究室である。
夏の間だけ使われている籐椅子四つと、普段のソファ二つがぎっしりと密集していた。
風紀委員達は互いと天井以外に初対面だったが、簡単な自己紹介もそこそこに本題に入る。

木山「移送は、天井博士と行っている研究のための運搬を名目に行う。
   第五学区の端のとある大学で機材を借りる手続きができているから、そこから第七学区の実験場までを大型ワゴンで移動だ」

実験場というのも、長天や木山の所属する研究所のものではない。
スペースを取る実験をすると言って予約した外部施設だ。

結標「その大学と実験場は本来のスタート、ゴールじゃないのよね?」

木山「そういうことだ。今子供達が居る建物から大学、それに実験場から治療を行う施設の間の移動に力を借りたい。
   経由する地点は予備を含めて見繕ってあるよ。
   それぞれ四〇〇~六〇〇メートルの距離を計五箇所経由することになる」

結標「オーケィ。それを十人分ね、連続だとキツいけど……」

冥土「車の移動は三往復の予定だね? 大型とはいえワゴンにそこまでの人数は乗れないからね。
   その間にインターバルは取れると思う」

ギリギリまで伏せられていたが、この場には地図が用意され、焦点となる地点には印が付けられている。
高位の空間移動能力者はそれぞれを指で辿り、一つ頷いた。
距離的に乗車時間は片道十五分程度だが、休息に問題無いと判断したようだ。




それから、風紀委員の視点も交えてルートの絞込みに入る。
天井は、「以前」逃走に失敗した経験から少し引いた立場で見ていたが、緊張と熱がびりびりと高まっていくような感覚があった。
名医の管理するこの室内は、最適な気温に保たれているはずだというのに。

柳迫「そういえばさ、前に天井センセ、デコイがどうとか言ってたよね。
   私とセンパイは本隊とは別行動ってことで良いのかな」

天井「デコイを立てることによるリスクもあるから難しいところだがな。
   偽の移送部隊を護衛する振りか、逆に監視や尾行をする振りか……」

木山「リスクか」

風紀「囮だとばれた場合に、本隊の存在を示唆することになってしまいますからね……」

だが上手くいけば、本隊への目を逸らしたり相手の思考を誘導したりできるかもしれない。
結標の能力で移動の両端を誤魔化すとはいえ三往復もするのだ。
できるだけ安全性は高めておきたい。
偽の部隊をどう用意するかは問題だが。

柳迫「デコイをやらないならどうするの?」

木山「率直に万が一のための切り札として、一緒に移動するか連絡が取れる状態で待機してもらえると助かるのだが」

風紀「相手がMARだとしたら駆動鎧を所持していますよね。私達の能力では難しいと思います」

目を細め、脳内で算段を立てているように彼女は言う。
柳迫も拳で額を押し思考しているようだ。

天井「いや、直接交戦よりも『風紀委員がこちらについている』という事実が重要なんだ。
   警備員には風紀委員への強権があるが、治安維持のもう一方の柱を無碍には扱い辛いだろう」

できれば。
決行日までに黄泉川の側で動きがあり、警備員内で少しでもMARに疑念が向いているとより効果的だ。
もちろん敵がMARでなければ、風紀委員と相対するというのは躊躇する理由にもなる。

冥土「難しいところだね?」


>>+2
どちらの方に話を持っていくか
 a. デコイをしてもらう
 b. デコイはやめておく



・再開早々アレな話題ですが、流れにそぐわない安価について

 以前>>791 の方が書いてくれたこと、またAAageがあったことから、対処は柔軟にしていこうと思います
 できる限り「曲解・こじつけ」→「安価下」→「再安価」の順で対応する予定です

 スタンダードがころころ変わって申し訳ないです
 ちなみに連投・連続無効(ただしコンマは安価に含めない)は今までと同じです


・そういえば長期間情弱だった>>1 にネットが挿さりました
 懲りずに無線で接続にムラはありますが、以前のように一日止まったりはしないです




どちらを掴んでも、浮かび上がるものと沈むものがある。
天秤のような問題。
それでも片方を選ぶ根拠があるとしたら、

天井「いや。……仮に正面から武力をぶつけられた場合にどうしようもないことが分かっているなら、
   その状況に持ち込まないことに注力するべきではないか」

木山「つまり囮を立てた方が良いということかな」

天井「私はそう思う」

私的な意見の一つをメンバーの総意にするためには、長短を浮き彫りにし、詳細を詰めていかなければならない。
メリットをどう活用するか。
デメリットにどう対処するか。

冥土「ふむ。お茶が減ってきたね? ポットごと持ってこようか」

結標「向こうにあった冷蔵庫でしょう? 開けて良いなら私が行くけど」

結標が立ち上がると二つ縛りの髪が揺れる。
この距離なら座標移動で跳ぶこともなく――先ほどの話しぶりだとやはり能力の行使は疲れるらしいので、
歩いた方が楽なのかもしれないが。

順に注いでもらった茶でめいめい喉を潤す。

風紀「そうすると――囮に同行して護衛をするよりは、監視の方がそれらしいですね。
   本来の職務上、風紀委員に校外での護衛の仕事があることはまずありませんから」

つまり、風紀委員の彼女達はどこかで不正な情報の一端を掴み、生徒達を移送する人間を追う――という筋書きになる。
本当は良くないにせよ、確信が無かったので独断で動いたというふうに正規の任務でない言い訳も立つ。

木山「相手方に勘付かれて、情報を与えてしまう可能性についてはどう思う?」

天井「確かにそこは問題だが。『本隊が他にいる』だろうことが知れても、動きの詳細までは分からないはずだ。
   広い学園都市の中で偽者を一つ暴かれても、正解の一つを言い当てられる訳ではない。
   足取りを追えなくするために結標君の力を借りるんだしな」

名前が挙がったからか、少女はコップを口に当てたまま少し頷いた。




木山「では議題は二つだな。囮をどこから用意するか。それに、餌を通して相手にどういう偽の情報を与えるかだ」

一度噤んだ口の端に、木山はふと指で触れた。
多忙の疲れが祟ってか軽い炎症を起こしているらしい。
ただ馴染みの隈以外は顔色も悪くはないので、いざというときに体調不良では困るというのは本人も重々承知なのだろう。
横に居る医者の監督でもあるのかもしれないが。

冥土「医療関係なら、重症患者の転院を請け負うような専門の業者もあるね?
   偽の依頼をしたスタッフが重装備の駆動鎧に職質されるかもしれないと考えると心苦しいが」

とはいえ。
作戦メンバーのうち、木山と冥土帰しは子供達の容態に気を配るため本隊を離れられない。
自動車の運転をできるのは、残るは天井だけである。

それとも、詳細な事情を伝えるかは別として新たに誰かの協力を仰ぐか。
また非合法の輸送といえば、額によっては請け負う人間も裏には沢山居るだろう。
後腐れの無い相手を探して依頼するか。
そういった連中は職質に遭うのは御免かもしれないが。

柳迫「手段の方は置いといて、与える情報って? 囮も私達も積極的に向こうと接触はしないんだよね」

と、内に向いていた思考が引き戻される。
テーブルのどこかで、からんと氷の音がした。

木山「うむ、そうだね。だからそう複雑なことはできないが、それらしい動きをして別の場所に誘導するとか、そういうことだよ」

風紀「場所以外に何か、誤解を誘えそうなことはあるでしょうか……」

しばし、黙考。
中学生の二人から老齢の冥土帰しまで、それぞれが真剣に考えを巡らせていた。


>>+2
偽の移送は誰がするか
 a. 天井
 b. 知り合いに頼む
 c. 業者に依頼する
 d. 裏の人間に依頼する


>>+4(自由安価)
どのような偽の情報を与えるか
(あくまでこちらの意図なので、相手がどう動くかは分かりません)




ひと度声がなくなると、誰もがそれを破るのを躊躇っているようだった。
未だ姿の見えない敵と対峙しているのでもないのに、呼吸さえ音を立てずに行う。

再び溶けた氷が崩れる音がして、誰かがゆっくりと息を吐いた。

木山「……うん、ひとまず意識を本隊から離れた場所に逸らせれば良いのではないかな。
   あまり策を弄して裏を掻かれても嫌だしね」

天井「それなのだが」

場を仕切る木山の言葉を聴いて、やっと天井も緊張から解放された気がした。
ここはまだ、本番ではない。

天井「先に囮をどうするかという問題について――この件をあまり外部に広めるのは望ましくない。
   問題が無ければ私がしようと思うのだが」

柳迫「私達はセンセを尾行しろってこと?」

天井「そうなるな」

淡々と口にした提案を、しかし木山が待て、と止める。

木山「MARを相手にすることになったなら、警備員としての権力で妨害が入るはずだ。さっきから職質職質言っているが――」

結標「いきなり撃たれることはなくても、拘束されたりはするんじゃないかしら。大丈夫なの?」

天井「だったら尚更だ。公的な身分があり、それを証明できる方が向こうも強く出にくいだろう」

一概には言えないが、ここは言い切っておくことにする。

実際のところ天井の身分は長点や学会に由来するもので、これらは都市の掌の上である。
仮に都市の上層がその気になれば身分など吹かれて飛ぶ可能性もあるのだが。
絶対能力進化実験の件といい、何もかも見通しているそぶりの上層にしては、今回の相手は後手に回っている。
それが天井の持つ印象だった。

MARが敵に回ったとして、学校などの権威を無力化するほどの力は無いのではないか。
警備員内の地位も黄泉川の所属部隊と基本は同程度、災害という彼らのフィールドで多少優越権を持つ程度とのことだったし。

木山「貴方は……綱渡りが好きな性分なのかな。無茶をして余計な火傷を負うことが多くないかい」

はぁ、と呆れた溜息が共同研究者の口から漏れる。
余計な火傷とは、木山の研究所を嗅ぎ回って弱味を握られたことか――張本人に言われるのは納得がいかないが。
もっと釈然としないのは、似たような溜息が木山以外からも聞こえたことだ。

柳迫「センセ、やっぱりそういう性格なの?」

冥土「君の骨折はまだ完治していないのだけれどね?」

それもか。
多方から痛いところを突かれて、流石に少し口ごもる。

天井「ぐ……。だがな、業者に依頼するというのは、相手方に履歴を残すということだ。
   逆にその辺りが曖昧なアンダーグラウンドすれすれの人間では信用できないだろう。
   第一、囮というから尻込みするのであって、本隊の方がよっぽど危険だと思うのだがな」

むぅ、と、今度は木山が眉間に皺を寄せる番だった。
意識に引っかかるのか、口の端を親指でなぞっている。

木山「……確かに、大胆にならなければいけないのはお互い様、か。分かったよ、その配置でいこう」




天井「それでだ。現行の案だと囮は移送する人間を装う――つまり、今まで生徒達を匿っていた側の一員か、
   それに雇われた人間としてわざと尻尾を出すということだっただろう」

風紀「そうですね」

もっとも天井が木山達の一味であることは事実なのだが。

天井「ところで、探りを入れられた痕跡こそあれ、今日に至るまで生徒達の居場所は知られていないと思われる。
   尾行などで割り出されてもいないから、木山博士や冥土帰しが関係者だとも隠しおおせているはずだ」

木山「そう願いたいよ」

結標「私は一度、子供達に会わせてもらったわ。
   確かにあの時点で木山先生がマークされてたなら敵に場所も伝わっているでしょうし、
   何かアクションがあってもおかしくないのかも」

逆説的に、相手が攻めあぐねているのなら情報は漏れていないと推測できる。
それは幸運などではなく、木山達がそれだけ漏洩の防止に心を砕いていたということだ。

天井「そう、今までは蟻も通さぬ意気で秘匿を貫いてきた。
   移送という大きな局面とはいえ、だから、急にボロを出すのは見え透いているのではないかと思う」

ただでさえ、天井は隠密などに疎い。
ここにきて急に素人を起用するなど捨て駒と判断される可能性がある。

木山「…………、ではどうするつもりなのかな」

思案気に木山は目を閉じた。
そうすると隈が際立ち――先程は一定の健康状態を保っていると判断したにも関わらず、
持病に脅かされているようなか弱げな雰囲気を感じるのだった。

天井「……」

隈の鬱血のような色と、片端の荒れた唇を見る。

体調に気を使い、天井や冥土帰しと会うずっと前から一人で生徒達の治療を追い求めた強さがあっても。
強さがあるからこそ。
累積した疲れは、拭いきれないのだと思う。

天井「――そうだな。地震に疑問を持った第三者として振舞うのが良いと思う。
   独自に調査をし、AIMが原因だと突き止め、その出所を追っているような」

つまり、善意か下心か、地震について嗅ぎ回っている人物を演じるということ。
その上で原因なり地震の発生予測場所なりに駆けつける振りをする。
風紀委員の二人は、その挙動の怪しさに目を付けたとして調査、監視をすればいい。

風紀「確かに、研究者の先生が囮役なら、その方がしっくりくるかもしれません」




木山「そうは言うが……さっきも言ったが当日の挙動で大したインパクトは起こせないよ。
   その設定で囮として敵の目を引くなら、あらかじめ相応の準備が要るのではないだろうか」

そうなのだ。
何の準備もせず移送の日にAIM測定器を持って駆け回っても、相手の目に留まる可能性は低い。
こちらに興味を持ち、意識を向けさせるのは至難だ。

つまり、

天井「それはこれから……二週間も無いが、その間に少しづつ布石が打てればと思う」

過去に地震が起こった場所やAIMを辿り、要注意人物だと認識させる。
木山という本命と通じているのだから、まだ敵に知られておらず漏らしても支障の無い情報を用い、
あたかも相手方より真相に迫っているように見せ掛けることもできるかもしれない。

柳迫「でも、それってさ。本番までに直接接触されたらどうなるの?」

結標「接触? 職質とか?」

柳迫「それもあるけど、表立って協力を求められるとかさ。
   敵に食い込めるといえば聞こえは良いけどセンセの動きも制限されちゃうし、木山センセとは共同研究者なんでしょ?
   万が一そこから疑いが広がったら困るかも」

その通り、本命と通じているというのは急所でもある。
人脈を辿り木山に行き着かれては元も子も無い。

天井「敵の持つ情報は知り得ないからな……。
   現時点で木山博士や冥土帰しについて一切眼中に入れていないのか、
   疑念は抱きつつ確信を得られないだけの状態なのかも分からないし」

冥土「前者なら良いが、後者なら敵に頚椎を差し出すようなものだね」

もちろん接触があるなら、こちらも敵に見当を付けられる。
当日を切り抜ければいい現行案に比べ、事前の立ち回りが要求されそうである。
現行案では反対に、素人臭さを看過されないよう当日の動きを練らなければならない。

どちらにせよ、危険は付き纏う。
しかしそれは割り切ったはずだ。
移送現場を正面から押さえられ本隊や生徒達に致命的な危機が及ぶのを防ぐためには、囮の役を成功させねばならない。


>>+2
どちらの方法でいくか
 a. 研究者として地震の調査をする振り
 b. 地震の原因の一味として移送をする振り


・こんなところで、今日はお開きに
 (開始が遅かったせいで)あまり進めなかったですが……明日は早いので……すみませぬ

 大変久しぶりでしたのに参加して頂いてとても嬉しいです
 初めて見たという人もお気軽にどうぞ


・これからなのですが、少なくとも一ヶ月ほどは平日に来るのが難しいです
 ので、休日の用事が無い日に進めていこうと思います

 ひとまず、次回は30日に来ます
 それでは今日もお付き合いありがとうございました



・おはようございます

 週末の予定を勘違いしていました
 29日(土)に来ます、日曜はなしです

 取り急ぎ用件のみ失礼しますー

日曜用事だと思ったら土日用事だったでござる
可能な限り>>1 は頑張るので適宜石投げてください(テッラさん風に)
とりあえず土曜は10時から不可避の予定なう
今出先なう←察して
ごめんなさいごめんなさい帰宅から書けたら書くます


・教訓:連続稼働ウン十時間のグロッキー状態でスレに書き込んではいけない
 おはようございます、ちょっとだけ続きです


天井「……しかし、だ。移送の振りをして接触の可能性を当日に限ったとて、私から木山博士や冥土帰しに意識が向く危険性は同じではないか。囮として目的を果たすなら何らかの接触は必須だしな」

蛍光灯の光を目に焼き付けるように仰ぎ、目を閉じ、それから木山の方に向き直る。
信用できる身内で当日に動けるのは天井しかおらず、その上でリスクを比較。
自身を捕捉され木山達に辿り着かれる恐れはどちらも同じ。
メリットを比較。
現時点での仮想敵はMARだが、仮に相手からコンタクトがあった場合、こちらとしても不確実に結ばれた敵の像に焦点を合わせられる。

木山「貴方が動くという前提を見直すのは?」

天井「では今から囮を任せられる人物を探すのか……そんな訳にもいかないだろう?」

都市の裏側で行われた実験の被害者を助ける――裏とは決して表に出せないからこその裏であり、足の爪先をそちら側にさらすような木山の目的のために動ける人数は限られている。
ぐ、と寄せられた眉。
再び伏せられた目蓋。
しばし後に天井を射抜いた視線は、一つ覚悟を越えた色をしているように思う。

木山「……そうだな。ただし、可能な限り芋づる式に情報を与えることを防ぎたい。細かいことは後で詰めよう」

天井「ああ」

それは、仮に天井が敵に目を付けられた時に「本隊に迷惑を掛けるな、その身を餌に情報だけを持ち帰れ」ということだ。
それは、木山の絶対目標のためには当然というべき判断だ。

だというのに結論に至るまでの逡巡の時間を噛み締め、天井は間を置かず返答した。

木山は静かに、口端の荒れた下唇を湿らせる。
無機質な灯りがその口元に乗ると、ただの白光がまるで柔らかく丸みを帯びているような気がした。
妙に目を惹く色彩から天井はふらりと視線をずらす。




冥土「――。話は変わるが、上条君のこともあるね?」

僅かな言葉の隙間を縫ったのは冥土帰しである。
生徒達の万が一の暴走を抑えるという重要な役目を持つ彼だが、移送には関わらないためこの場にはいない。
風紀委員の二人には初出の名を簡単に説明する。

冥土「移送が終わり次第、僕たちは治療に入る。その際に彼にも同席して欲しいね?」

以前の予定では、冥土帰しの勤務する病院で待ち合わせて治療の場に向かうということだったが。
移送の途中で乗り合わせることに何か問題でも――、

天井(そうか。座標移動に彼の能力が不要な干渉を起こしても困るな)

木山「まぁ治療の直前に私か冥土帰しが迎えに行くのがベストかな。待ち合わせ場所を考慮して、冥土帰しの方が違和感はないだろうね」

これで木山の目的のために集うメンバーは全てだ。
生徒達の境遇を考えれば少ないのかもしれず、しかしその中で適材適所に役割を振り分けられているようにも思う。

柳迫「うーん、一回整理させて。本隊が木山博士と冥土帰しのセンセに、結標サン。座標移動で足取りをぼかしつつ三往復の移送をする、と」

天井「私は同日に囮として想定する敵勢力の攪乱。またそのために事前に伏線を張る」

烏龍茶を透かすようにコップをくるりと回す柳迫に、周囲が頷きで返す。
続けて皆が当日の計画を確認していく。

結標「風紀委員のお二人さんはそっちの尾行の振りね。この場合は囮に信憑性を持たせるってことかしら? 風紀委員もこっそり目を付けるだけの重要性があると思わせるってこと?」

風紀「そうですね。風紀委員の立場が相手への牽制にもなるのが望ましいのですが……」

木山「警戒はするのではないかな。仮にそうでないなら、敵は風紀委員さえ気にしない権力を持っているか、よほど切羽詰っているか……判断材料にはなる」

天井がもたらせるかもしれない情報と合わせ、敵方を浮き彫りにできる可能性もある。
勿論、本当は敵などおらず木山や天井が神経質になっていただけ……というオチが一番平和なのだが。

冥土「僕は一度病院に戻り、上条君と落ち合う。それから治療に入るよ?」

そこから後は、生徒達の治療に心を砕いてきた木山と、稀代の名医の仕事だ。
具体的な移送計画を議論している今、治療法の確立は最終段階だろう。

自分自身に能力開発を施し、一時的とはいえ故意に暴走さえさせた研究者がすらりと椅子を立つ。

木山「改めて言っておこう。今回の移送が終われば、後はあの子達を治療するだけだ。そのために――どうか、頼む」

そのつもりよ、と空間移動系能力者は不敵な表情を見せる。
もちろん、と風紀委員達は頷く。
誰に言っているんだい、と医師は胸を張る。

天井「当然だ。ここまでやってきたんだからな」

そうして。
木山は微笑み、また一つ確りと、覚悟を瞳に乗せた。




>>+2
ところで、天井は妙に木山の口元が気になるようだ
 a. 深く考えてみる
 b. 今はスルーしておく


・では、仮眠を取ってから出掛けるのでひとまずこれにて
 夜に来れたら来ます



・こんばんは
 投下分の半分くらい書けたのですが、眠気が自分を捕らえる方が早そうなので今日は寝るます
 明日の夜に一投下+安価を出して今週は終わりになりそうです
 細切れになってしまい申し訳ありません


・今夜もこんばんは
 ちょっとだけ続き


木山「ふぅ。家主までさっさと退出してしまうとは」

テーブルのあるスペースからは追加のソファが片付けられ、常の静けさを取り戻している。
コップやポットも学生達により綺麗に洗われ棚や冷蔵庫の中に。
今頃、水出しの烏龍茶はゆっくりと濃度を増しているはずだ。

囮として地震に迫る研究者を演じるにあたり、天井は木山と二人、方針の統一のために話し合う時間を取った。
それは先程のメンバーが解散したこの研究所で引き続き行われているのだが。
大事な機材、ことによれば研究成果もあるだろう研究室に二人を残し、冥土帰しも本業に戻ってしまっていた。

天井「エントランスはオートロックだから、他の戸締りを確認したら普通に帰って良いね? ……だからな。
   疑わずにいてくれるのはありがたいが、大丈夫なのか?」

木山「全くね。患者の保護には全力を傾けるくせに」

ただし今の天井達が冥土帰しに不利益な行動を取る理由は無い。
特に、打算とか利害関係とか、そういったものを考慮に入れれば余計に。
食えない部分もあるあの医者のことだ、そんな考え難い可能性より治療を待つ人間を優先したのだろう。

木山「コーヒーでも入れようか。さっきまであった飲み物が無いと口寂しい」

天井は最初の転機だった冥土帰しとの共同研究、それからも彼の知恵や人脈を頼りにしばしばこの場所を訪れている。
最近ずっと共同で治療に当たっていた木山も同様なのだろう。

天井「勝手知ったる他人の家だな」

木山「お互いね」

唇と喉が水分を求めて寂しさを覚えても、急に広くなったようなここに二人で居ることには違和感が無い。
主の離れた籐椅子、テーブルの上の何も置かれない平面。
がらんとした空気に物足りなく思わないのは、双方とも居慣れているからだと、天井は推察する。




椅子にふんぞり返って待つのも悪い、フィルターを出すといった大して意味の無い手伝いをしながら、焦げ茶の芳香を待つ。
引き出しから、二人はめいめい欲しい分の砂糖やらを抜き出してテーブルに戻る。

木山「早速だけれど、貴方の演じる立場について設定をはっきりさせておこう。
   貴方の公的な仕事は主に二つ、私や冥土帰しも共同で行っている筋ジストロフィーの治療研究、それから長点での能力開発」

かちゃり、口元に運んでいたカップを戻し、木山は指を二本立てた。

木山「このうち後者――開発と、それに関わる調査の過程で地震に疑問を持ったことにして欲しい」

天井「私が担当しているのは電撃使い限定だぞ?
   いや、地震の原因であるAIMの暴走は多種の能力者のものを介するのか。念動力などに限らず」

木山「そう。電撃使いの発する電磁波、風力使いの周囲に起こる気体の流動。
   現象としては全く別種でも、AIM拡散力場は共通項を接点に干渉し合う。
   開発で測定した電磁波のノイズから地震との関連を疑うことはあり得る訳だよ」

小細工レベルの話だが、可能な限り囮としての動きは木山や冥土帰し、生徒達から離れたところで行いたい。
内容としてもそこまで不自然ではないので天井は素直に頷いた。

天井「それから、下準備の内容だな。
   当日に敵の注意を集めるには、こいつの動向には目を光らせる価値があると思わせていなければいけない。
   重要度は低く、簡単には辿り着けないような情報があれば使えるのだが……」

ふぅむ。
木山はぼんやりとした視線を彷徨わせ、少し顔を俯けた。
ぱさりと頬に掛かる髪の陰で、やはり。
唇を舐める。

天井「なあ。食事や睡眠は取れているのか?」

たまらず、思考を遮って天井は訊ねた。
何のことか分からない、という顔の木山に、自身の口端を軽く叩いてみせる。

木山「ん、あぁ。冥土帰しにも突っ込まれてしまったよ。
   食事は出来合いのものが多いけれど、栄養は取れているはずだ。研究者なら自己管理は基本だろう?」

想定通りの答えが返って、何かばつの悪い気分で相槌を打った。
釈然としない。
木山の言葉に、ではなく。
答えの想定できる問いを投げかけたことに、答えを聞いても自身の中で収まりがつかないことに。




木山「それで、重要人物に成りすませそうな情報、だったか。
   …………、以前生徒の一人が収容されていた病院ではどうかな」

天井「――念のため聞くが、それが敵側に知れても問題無いんだな?」

木山「あの子達の居場所を探られたことがあったと言っただろう?
   まさにその病院のサーバに、不正なアクセスがあったんだ。幸いそこから情報が漏れることは無かったのだが。
   一度尻尾を掴みかけた場所に一研究者が独力で辿り着いたら、一目置かざるを得ないのではないかな」

過去の居場所として知られているから、敵にとって追加情報にはならないということだ。
不正アクセスを受けたことを盾に、生徒の転院先などのデータも既に破棄させているのかもしれない。
撒き餌として提供してくれる位だからその程度の対策はしていそうだった。

ともあれ、地震の発生場所の電磁波測定から始めて徐々にその病院に手を伸ばせば、
この件に関して高い洞察力を発揮しているように見せられそうだ。

天井「そうだな、危険が無いなら是非使わせてくれ」

木山は首を縦に振る代わりに瞬きをし、ある医療施設の名を告げた。
曲がりなりにも医療の分野に居る天井が耳慣れない名で、都市にある大小の病院の中でもかなり小規模なものと知れる。

木山「上手く使ってくれるよう頼むよ。餌が足りないなら――っ、痛いな」

無意識なのだろう、口元に運んだ爪が炎症を掠めたらしかった。

天井「矢鱈に弄るから治らないんじゃないか?」

木山「それも冥土帰しに言われたよ」

軽口を叩きながら、気もそぞろに木山の一挙一動を注視する。
彼女はうんざりとした表情を隠しもせず、鞄から小さな円柱を取り出す。

ドラッグストアで叩き売られるような、一本百円にも満たないそれ。
美容に気を使う女性が使うには手軽すぎ、だから天井でも見たことがあるパッケージ。

そんな安物のリップクリームでさえ木山が使うところなど想像できなかった。

天井(――――――あぁ)

白いスティックが曲線の上を滑る。
その瞬間、天井の背に、恐怖とは真逆の戦慄が降りていった。




>>+1 全然関係無いですが天井の今までの恋愛遍歴を決めておきます
※コンマ判定
  - 4:ぎゃは、素人ドーテーかよ! 人は見掛けによらないって嘘なんだねwww
  5-49:確かにその歳なら一度くらい異性と交際した経験もあるでしょう、とミサカは内心の驚きを隠し通します
 50-94:一般的な男性としては平均的じゃないかな\n まぁ博士が一般男性のレベr\n なんでもない、なんでもないreturn
 95- :え……って意外と豊富なアマイの武勇伝に身の危険を感じつつ、ミサカはミサカは培養器から脱走する準備を進めてみる


・今夜もこんばんは
 上の結果を反映させつつあと1レス書いて&安価出してから終わります




・こんばんは(3回目)
 上げ忘れました恥ずかしい
 安価は>>+1 でお願いします



久しぶりだった。

一度目、学園都市に入ってから、死の記憶まで。
二度目、目を開けた朝から、この瞬間まで。

最後に女性を意識したのは、都市への転職が決まり、電話ごしに涙を聞いた時。
その次に選んだパートナーは野心と保身だったから。

木山「んー…………」

赤を往復したリップクリームを離し、唇を噛むように上下を合わせる。
はっきりと、伏せた睫毛に色を見た。

木山は何も変わらない。
天井も、多分変わらない。
自分の中にあるものを見付けてしまっただけだ。

満足したのか円柱を仕舞い込み、木山はコーヒーのカップを持ち上げ、一転テーブルに戻す。

天井「もう空……でもないな。飲まないのか」

木山「あぁ。今はいい」

塗りつけたものがカップに付くこと、味や香りが混ざって嫌なこと。
それらを当たり前に気にすること。
女だということ。

木山「? どうしたのかな」

自身がこんな感情を、しかも同じ研究者に持っていることに驚いた。
生徒達の治療計画で大役を負い、精神が逃避していると勘違いしそうだった。

非道な実験を推し進めた人間でも、プライベートでなら生温い感情も抱くだろう。
一度死のようなものを経ても、対極に位置する生に失望するとは限らない。
だが相手は研究者だ。

例えばこの都市の研究機関では職場結婚が極端に少ない。
忙しく、実力主義で、誰もが危機感と共に生きているからだ。
女と思い誘えば寝首を掻かれる、そういう場所。
男に媚を売れば良いようにしゃぶり尽くされる、そういう風潮。

極端な話、研究者は無性生物だと思っていた。

天井(好きだ)

怪訝そうな木山に、なんでもない、と首を振る。

どうして、今、こんな大事な時に。
危惧する自分もまた居て、意外と冷静じゃないかと内心で苦笑した。



>>+2
木山への好意に関して、いつ行動を起こすか
 a. すぐ(なんならこの場で)
 b. 移送が終わったら
 c. 治療が一段落したら
 d. しばらくは胸に秘め様子見



・おまけ

布束「Congratulations. 念願の再映像化ね」

天井「…………」ズーン

布束「そ、そんなに落ち込まなくても」

天井「……客観的に見ると、小物臭さが……」

布束「Though, すごく良い声だったわよ?」

天井「話している内容コレだからな? しかもあんな必死になったうえで、末路がアレだしな?」

布束「それは私も大差無いじゃない」

天井「分からないぞ? 案外アニメで救済があるかもしれない。
   木山博士だって漫画版では捕まって終わりだが、アニメでは乱雑解放編でスポットが当たったしな」

布束「……That point, あなたは明確に撃たれた描写が……あっ」ボソリ


天井「…………」(´・ω・`)ズーン


・始終怯え調子の禁書に比べて、はっきり喋っていたので声の良さが際立っていたと思います
 小物臭いですが


・ということで、今日はこれにて
 飽きずに読んでもらえるなら幸いです
 ご参加ありがとうございました

 次は来週、また土日どちらかに来ます
 ではでは


bとcの死亡フラグ感がヤバい


・おは……おそようございます
 連絡遅くなりました、明日(土)は来れないので日曜来ます

 では、おやすみなさいませ


>>915
 天井「今度の移送が終わったら……木山に思いを伝えようと思

_人人人人人_
> 突然の死 <
 ̄YYYYYYYY ̄


・あつい
 遅くなりました、続きいきます


木山「休養が足りないのはそちらの方じゃないかな。あまりぼんやりされると不安になるのだけれど?」

天井「悪い。集中が欠けていたな……先ほどのミーティングに気を入れすぎていたらしい」

貴方が目の前に居るからだよ言わせるな恥ずかしい――とか。
言えるものなら、と嘆息する。

自身も対象も若かった学生や新社会人の頃と違い随分歳を重ねてしまった。
年齢なりの駆け引きなど触れてもこなかった、この街にあって。

天井「先日、風紀委員の彼女とルートの下調べをした時、野外での電磁波測定を装っていたんだ。
   折角だからな。そこから手を付けていこうと思う」

木山「? 地震、ひいてはAIM異常があったのは随分前の話だよ。数日前に測った数値から地震に辿り着くのは無理がある」

カップに手を付けかねている木山を尻目に、自分の分をゆっくりと啜る。
酸味と苦味が好みのバランスで両立したコーヒーで、ぞわぞわと胸郭を這う激情を収めておければ。
――そういえばこれを淹れたのも彼女だ。

天井「詳細はどうとでもする。例えば、記録した値がその地点での一般的な値かどうか、過去の測定値を洗ってみるとかな」

過去に女性と関係を持っていた時、何を思っていたかなど既に霞の彼方にあり、参考になりはしない。

味覚までもが自覚した感情を鋭敏に煽り立てようとし、天井はカップをテーブルに戻した。
……今は駄目だ。
今は駄目だ。
木山の気を散らし、天井自身も浮かれきって、揃って絶望に沈むなど馬鹿げている。

眠ったままの木山の生徒を治療する。
そのために、あれだけの面子が協力してくれている。

木山「一応それらしいと言えるかな。
   ではそれで……動きの一つ一つまで口を出すことはできないから、細心の注意を払ってほしい。
   むしろ、私や冥土帰しとの連絡は最小限にした方が良いだろうね」

天井「そうだな。どの段階から敵が私に目を向けるか分からない。
   貴方達とはただの共同研究者のスタンスを貫くようにする」

うん、と対面の木山は真顔で頷いた。
天井も表情を引き締め、心を無にして茶色の液体を一息に呷る。

不要な連絡はするなと牽制されてさえ信用されていると期待してしまうのだから、この自分は全く処置無し、といったところだ。




明けた八月十日。
天井は第五学区の基地局を後にした。
地理的に数日前歩いた周囲であり、もっと前には近くで地震が発生している。

日射病を防ぐため、量販店で購入した帽子を被ってきたのだが、長点を出がけにすれ違った布束からは微妙な視線を貰ってしまった。
そんなに似合わないだろうか。
屋内では当然取っていたため、先方の反応は伺えなかったし。

天井「意外と簡単に提供してくれたな。もっと根掘り葉掘り訊かれるかと思ったが」

鞄の中には、付近の電磁波の記録。
健康上の悪影響が無いことを示すため基地局のサイトで公開されている数値群の、もっと詳細な元データである。
能力開発のためと称し使用申請をしたところその日の内に許可が出たのだった。
担当者曰く、元々秘匿する内容ではないし、たまに似たような依頼がくるのだとか。

天井「見せても問題の無いデータを隠して、腹を探られるのも旨くないだろうしな」

実際ここ、ある携帯メーカーが試験的に運用している基地局に、裏表があるのか天井はあずかり知らない。
百パーセント清廉潔白な企業組織などそうありはしないと思うし、今はどうでもいい。

デザイン済みの行動として、天井はこれから似たような施設――電波塔などを幾つか回る。
可能な限りデータを集め、研究室で解析に掛け、地震との符号に目を付けるのだ。
地震により学生の感情が変動しAIM拡散力場に影響が出たのだと、普通なら思うところだ。
だが、少し気を付けて見れば、地震発生とAIMの揺れに時間的矛盾があることが分かる。

天井(すると、明日は地震についてデータ集めと、他の現場の電磁波測定だな)

結果の決まった道程を行動で写し取っていく。
不可解なはずの感覚は、天井には少し懐かしいものだった。
確かにこれなら核心へと優秀に切り込んでいくように見えるだろう。

目深に覆うつばにさらに手で庇を作り、ぎらつく空を仰いだ。
頬や顎に熱線が刺さりじわじわと汗が流れる。
いつかは人目をこれでもかと憚っていたのに、陰から伺う視線を求めているのだから不思議なものだ。

天井(見ているか。MARか、誰だか知らないが。喰い付いてきてみせろ――)


>>+3
移送に向けて、囮としての行動以外にしたいことがあれば
(1つまで、複数書いてあった場合最初のを採ります。
 また、囮が優先のため時間的労力的に完遂できない可能性があります)




PDAに出力した地震発生の日時、場所と、数地点の電磁波データを対照してみる。
グラフや地図にするまでもなく、どの発生箇所でも事前のAIM異常が見られた。

天井「こうすると一目瞭然だな。能力により災害が起こっているとみるか、
   ナマズなどのように無意識に察知した危機がAIMを不安定にしているとみるかは人によるだろうが……」

答えを知っている天井にとっては迷う必要の無い問題である。
特徴に乏しい味のアイスティーをストローで吸い上げ、行儀も悪く肘を付く。

十三日。
第十八学区の喫茶、小奇麗だがせかせかした印象のチェーン店である。
時間潰しや待ち合わせ目的だろう、入れ替わっていく学生に混じり、天井はかれこれ四十分ほど席を占有している。
今も、隣に座っていた男子学生が立ち、店員がテーブルを拭っていった。
スクロールし終えた画面を伏せ、ふぅと窓の外を眺める。

天井(次はどこに手を付けるのが良い――違うな、どこに手を付けるのが『それらしい』か)

地震の発生情報はニュース系から公共機関まで、複数のサイトから得ることができた。
特に震度が強めの箇所をピックアップし付近の電磁波を二日掛けて測定。
また並行して、恒常的に電磁波を測定している施設から多少のデータ提供も受けている。
最後については長点所属というネームの力もあるのだろう。

これで、実データから仮説を立てる段階にまで立てた訳だ。
一つの目標としては生徒が治療を受けていた病院まで線を繋ぐことがあるが――。

天井(一足跳びに病院はやりすぎだな。仮説検証のためにデータ収集を続けるのが得策か)

データ量を増やしつつ、解析している振りをしながら事件において重要なポイントに近付いていく。
また大きく行動を起こすのは移送当日のため、こちらの進度は早過ぎても遅過ぎてもいけない。

もう少し測定地点を増やすか、とPDAをしまいかけたところで、天井はふとある映像を思い出した。
立ち上がるそぶりを引っ込めたこちらにアルバイトから面倒そうな視線が飛ぶが、黙殺。
これ見よがしに三分の一は残ったグラスを口に運んでみせると、青年はふいと違う方を向いた。

天井「……私は地震について調べている。数値データだけでなく、体験談や研究者の見解もだ。
   情報源として個人サイトやコミュニティサイトを巡れば当然……」

無線LANに接続、動画投稿サイトへ。
呼び出したのは派手なピンクの駆動鎧以下数体が奮闘する救助現場である。
思えばテレスティーナ達をブラックリスト上位に位置付けたのも、これら動画がきっかけだった。

天井「こちらは正当な身分で地震に興味を持っている。とすれば、ソースに当事者を加えることも必定、か?」

木山達との関係を勘繰られるのは危険だが、最終的には囮として注目を集めなければ話にならない。
体当たりの感はあるが直接アピールするのも手だ。
敵がMARでなかったとしても、この行動が目に入れば件の災害を嗅ぎ回っているという姿勢が強く伝わるだろう。

天井(あとは……突っ込んで質問された時のために、それらしい仮説でも立てておくか。研究者らしく)

結標とのコンタクトといい、この間の経路チェックといい、
でっちあげばかり手際良くなっていくのは本職研究者として複雑なところである。
いや、「以前」も上司から急に成果を求められれば、実証データをつぎはぎして取り繕っていた気もするが。

率直に、AIM……ひいては能力行使により地震が起きたと考えることにするか。
現時点では別の、例えば意識に上らない程度の微振動などから地震の予兆を感知し、それがAIMに表れたとするか。

天井(それより、取り合ってくれるかが問題かもしれないな)

窓の彼方、夏休みの学生達を視界の半分に流しつつ、反対には欠伸を噛み殺す店員を見遣りつつ。
薄くなったドリンクを手に、天井は一人熱気の災害現場に意識を馳せた。


>>+2
MARで訊ねられた時の仮説をどうするか
 a. AIM拡散力場の異常や能力により地震が発生したのではないか、ということにする
 b. 意識下で感知した地震により事前にAIMが乱れたのではないか、ということにする
 c. まだそこまでの仮説は持っていないが、因果関係を見出したため情報収集していることにする
 d. その他(具体的に)




公にするのが躊躇われるような訪問ではない、そのスタンスを明確にするため、電話でアポイントメントを入れる。
本物の研究調査なら当たり前の事だ。

天井「――と、いうことで、現場で救助作業に当たっておられた方のご意見を伺えればと思うのですが」

隊員『ご要望、了解いたしました。少々お待ちください』

保留音をそのままBGMに、天井は椅子に凭れた。
あの場で電話を掛ける訳にもいかず、一度自身の研究室に帰還している。
サウナそのものの屋外はもちろん、冷房が過剰に感じたあの喫茶店に比べても、広くもない一室は落ち着いた。
健康のため抑えられた空調に天井の身体の方が慣れきっているというのは象徴的で、もしかしたらアパートよりも心安い居場所だ。

隊員『お待たせいたしました。明後日、十五日の午後十二時から十五時まででしたら可能ですが、いかがでしょうか』

天井「ありがとうございます。明後日ですね、では十二時にお願いいたします」

隊員『はい、承りました。ではお待ちしております』

とんとん拍子である。

簡単に口頭説明した面会の目的では、踏み込んだことは話さなかった。
相手がここ数日の天井の行動から既に見張っているとは考え辛いが、全くのゼロではない。
あまり仮説が飛躍しても、後ろに情報提供者、この場合木山が付いていることを推測されてしまうかもしれない。
一応その可能性は想定して動いた方が良いだろう。
それにスタート地点をうろついていた人間が突然確証を得たかのように動き出した方が、敵としては気になるのではないだろうか?

天井「控えめにしておけば、変に疑われることも避けられるだろう。
   あとは木山や冥土帰しについて余計なことを話さなければ良い。ただ、」

電話口の男性の声にも妙な感じ――口篭ったり、訝しんだ様子は無かった。
一つだけ気になったのが、応対の背後に苛立ったような口調が幾つか聞こえたことだ。
救助部隊なのだから出動前などは特に、荒々しい面もあると思うが。

天井「どちらかというと……業績不振で職場自体がピリピリしているような雰囲気か?」

MARは警備員の内部組織だから問題となっているのは業績ではないはずだ。
最近地震は無いが、他に厄介な災害に直面しているのか。
MARを完全に黒と見るなら、地震が無いことにこそ焦っているのか。

原因なんていくらでもこじつけられたし、どれにも決定打といえるものが無い。
ここで可能性に頭を悩ませるより生産的なことがあるだろう。
天井は測定器を再び借りに、長点の設備庫へと向かった。


・安価が無いのですが、今日はここまでに
 読んでいただき感謝です
 次回も休日、3連休に来ます


・そういえば前回書き忘れましたが、唇の炎症にメンソレー○ムで対処するのはお勧めいたしません
 そっとしておくか、ちゃんとした薬を塗るべき
 木山先生の真似、ダメ、絶対



・こんばんは
 日曜の予定が流動的で、来れる日が未定です、すみません
 明日は無理、明後日が不明、最悪月曜は空くはず
 確定しましたらまた来ます

 あつい


・おぅふもう日曜……
 今日は多分来れないです
 明日も遅くなるかもしれないですが、ちょっとづつ進めます

 いつもすみません
 取り急ぎ用件のみにて


・こんばんはの時間にこんにちは
 ちょろっと進めます


天井「あぁ……そういえば最近はさぼりがちだったな」

夕方、その場所の近くを通ったのは本当にただの偶然だった。
大き目の地震が起こった地点のうち、研究所など機密に厳しい施設の密集地区を避けた幾つかを回り、測定を行う。
たまたま一つがここ第二学区、天井がメンバー登録しているジムの近くだったというだけだ。

時刻は既に十九時近いが、夏の日は長い。
ぼやけた空には白い卵のような月が浮かびながら、空気は太陽の熱を引き摺っている。

とはいえしばらくしたらモニタを読むのも困難な暗さになる。
機材の入った鞄を肩に掛け直し帰宅する途中だった。
怠そうに道行く人々とは一線を引いた活力ある姿が現れたのも、だから偶然のはずだ。

黄泉川「あっ、……。久しぶりじゃん?」

半袖シャツを着てタオルを首に掛けた上体がぴくりとこちらを向く。
気が付いた瞬間、詰めた息には偶然以上の意味があるように思えたが。

天井「悪い。しばらく不定期にしか通っていなかったんだ」

黄泉川「責めてるんじゃないじゃんよー。忙しい時って誰にでもあるんだし」

天井「そうだな。しかし週に一日来れるかどうかだと、身体の鈍りが気になって仕方がないよ」

過去に類がないくらい、ここ一ヶ月ほどはトレーニングから疎遠になっていた。
主要な原因はもちろん骨折で、負傷箇所に過度の負荷を掛けることがないよう医師に厳命されている。
あまり運動から遠ざかるのも良くないだろうと許容できるメニューを聞きだしてはいたが、普段のように頻繁に通えはしない。
それに大詰めに近付いている木山の一件。
気分転換は思考の硬直を防いでくれるが、時間的制約というものがある。

結果的に用事の隙間を縫って、一週間に一回行くかどうかくらいのジム事情だったのだ。
時間帯もランダムなら常連と顔を合わせる機会も減るというものだ。

黄泉川「ん? その服の下、何か付けてるじゃん? 怪我でも……したのか」

ぐ、と黄泉川は眉を寄せる。

天井「あ、あぁ。少しな」

心配してくれるならありがたいことだ。
骨折の事を知らせていなかったのは、直接会った訳でもないのにメールでわざわざ伝えるのもおかしいと考えたからだ。
急にそんなことを言われても気を揉むだけだ。
現に今、こうしているように。

だが、

黄泉川「そっか、大変だったじゃん。アルコールが障ったりはしないんだろ? 少し呑まないか。
    見舞い代わりに奢っちゃうじゃんよ」

また。

出会い頭の緊張感を、二言目には掻き消したように。
顰めた眉に帯びていた物言いたげな色をふとどこかにやって警備員は相伴を誘う。

天井(黄泉川の方こそ……何か、用があるのか?)

忙しさ、疲れ、暑く淀んだ不快指数。
断る理由はどれも決め手にはなり得ず、天井は促されるままに足を進めた。




黄泉川は酒呑みである。
彼女に案内されるのはいつも、豊富な酒の種類、食事のレベル、それらの相性と三拍子揃い、
雰囲気やコストパフォーマンスにも秀でた店ばかり。
だが、今日はどことなく呑気に舌を喜ばせるのが躊躇われた。

つまみの揚げ空豆に手も付けず、一息にジョッキ半分を空けた黄泉川がふぅと息を吐く。

黄泉川「こっちも多忙っちゃー多忙だったじゃんね。夏休みってだけで羽目外しちゃう学生は多いからなぁ。
    それに、他にも色々重なってね」

もしかしたら、MARの方で進展があったのではないかと期待してもいた。
そう色眼鏡を掛けて聞けば、「色々」には深い意味があるのではと勘繰りたくもなる。
ともあれ向こうが近況を語るということは、暗にこちらにも報告を求めているのだろう。

天井「こちらは研究がな。夏休みは開発に掛ける時間が減る分、本業を進めておきたい」

移送計画を彼女に気取られるのはまずい。
学生を戦力に数える作戦は、容易に熱血教師の神経を逆撫でることが想像できる。
全て事情を話した上で慎重に説得すれば子供達の不参加を条件に協力を得ることができる可能性はあるが、
上の声一つで動きを止めざるを得ない彼女の立場はリスキーだ。

黄泉川「ふぅん、学校付きの研究者ってのも大変なんじゃん。夏休みっていっても、大人にゃ休む暇もないじゃんねー」

ぐるぐる、ジョッキを回す。
結局テーブルに一度も付かないまま金色の液体は黄泉川の喉に消えていった。

黄泉川「っつか、怪我は平気なのか? 無理言って引っ張って来ちゃったけど」

天井「変に力や衝撃を掛けなければ。見た目ほど酷いものではないよ」

固定のためのギプスをそうと見抜いたなら、骨折しているのも察しているだろう。
怪我をすることも手当てすること共に多い警備員なら重篤でないとも分かるかもしれないが、一応言葉にしておく。

黄泉川「なら良いけど。全く、何だってそんなことになってるんだか」

やれやれ、大仰に頭を振る黄泉川。
スキルアウトの乱戦に巻き込まれた件は知っているかもしれないと思っていたが、
管轄エリアかどうかも分からないし、路地裏の小競り合いなど掃いて捨てるような案件だ。
一々負傷者の名前に目を通してはいないのだろう。


>>+2
どう応えるか
(大まかな方針でも可、具体的な台詞の場合若干語調を弄るかもしれません)




天井「運悪く喧嘩に巻き込まれただけだ」

乱闘事件について知らなくても、警備員なら簡単に調べられるはず。
あからさまに嘘を吐くのは分が悪い。
さりとて、詳細に話し、風紀委員とコンタクトを取っていた事件前後の諸々に突っ込まれるのも問題だった。

三分の一も減っていなかった自分の分のビールに口を付け、呷る。
ここは何事も無い風に流してしまうに限る。

黄泉川「なんだって先生が柄の悪い殴り合いのとばっちりなんか食うじゃんよ。
    路地裏は都合の良い近道じゃないんだぞ?」

天井「その忠告は二週前の私に言ってやってくれ。もう夕暮れに裏通りなんぞには近寄らん」

黄泉川「はー……。カツアゲにでもあったのか」

黄泉川は、空になったジョッキの持ち手を握り、離す。
それはついさっき呑み干したろうに。
小さくジョッキが動く度、ガラスの表面に店内の黄色い灯りが揺れた。

天井「……いや、私は全くもって巻き添えだ。不良同士の諍いのようだったよ。
   路地の角からちらりと見てしまって、つい逃げ出す機を逸した。
   それで、現場から離脱しようとした一人にと鉢合わせた訳だ」

黄泉川「うわ。本当に災難じゃんね……。そういう時はいの一番に人通りの多いところまで戻るべきじゃんよ」

天井「事情聴取に来た風紀委員にも言われたよ」

と、風紀委員というワードは控えるべきだっただろうか?
難しいところだ。
できれば敢えて調べようと思わない程度には事情を明かしつつ、興味は引きたくない。
もし調べられた時のために虚言は語れない。

黄泉川「通報もしてほしいが、第一に身の安全だからな。大事に至らなかったのは不幸中の幸いじゃん」

天井(ふぅ。質問は終わったか……)

気の毒そうな、真面目な表情で腕を組む体育教師。
もうあんな目には遭いたくないものだ、などと肩を竦めつつ、天井は空豆に箸を伸ばした。




ぼろを出さないか、と神経を尖らす場面が過ぎてしまえば、酒も食も進む。
気の置けない時間は張り詰めていた精神への一種の特効薬である。
だが、相手が酔いつぶれてしまう前に聞いておかなければいけないことがあった。

天井「……ところで、だ。そちらはどうなんだ?」

出くわした路上で、入ったばかりのこの席で、ちらちら走っていた微妙な違和感は、
共通の話題――先進状況救助隊についてのものではないのか。
進展した、なり。
デリケートな局面だから万が一にも余計な真似はするな、なり。
何か言いたいことがあるのではと思っていたのだが。

黄泉川「ん。まだ何とも。動くための準備段階ってトコだし、実際やってみて効果があるかも分からないじゃん。
    駄目なら駄目で、次の策を講じるけどな」

天井「そうなのか。妙に口篭ったような雰囲気があるから、私はてっきり……」

そう言うと、黄泉川はテーブルにぐったりと突っ伏した。

黄泉川「てっきり、はこっちの台詞じゃん。
    この間会った時にゃ武装とかに興味津々、ぱったりとジムに顔を見せなくなって、挙句その怪我だ。
    早まって特攻でも掛けてボコボコにされたと思ったじゃんよ」

特攻と言うかは分からないが、あながち間違いではない、過去形か未来形かという差だけで。
……いや、ボコボコにされる気もないが。

黄泉川「いいか。身内……なんて思いたくないが、あいつらが裏でこそこそしてるなら私達で片を付ける。
    くれぐれも引っ掻き回して面倒事を増やすなよ」

天井「まぁ、私も忙しいからな。つるし上げに参加できる立場も力も無い。糾弾とかそういうのは、そちらに任せるさ」

黄泉川「そうしてくれ、じゃん」

木山始め、天井達の目的はMARの排除ではない。
MARが潔白であれ黒であれ、子供達の治療という目的の障害になるかは別問題だ。
また敵に対し自らの手で攻撃する必要も無い。
天井が囮などをするのも、あくまで子供達の安全度を上げるためだ。

疲れた溜息を聞きながら、自身も静かに空気を吐き出した。
明後日はMARを訪れることになっている。
まさかとは思うが、黄泉川と鉢合わせてこっぴどくやられないことを祈る。

天井「……まぁ、そちらも忙しいんだろう。今日は深酒はしないで早めに休むか」

黄泉川「気持ち良く酒も呑めないなんて、あいつらただじゃ許さんじゃん……」

据わった目で空中を睨む黄泉川。

警備員内の事情に暗い身としては、移送決行日までに黄泉川が行動に移れ、
有無を言わさずお縄にしてしまえれば良いと無責任に思っておこう。
こちらはこちらで、目の前のハードルをクリアしなければならない。


・うぐぐ、今日はこれまでに
 ちょっと途中外出の用ができたため、書くの遅れてすみませぬ&今日もラスト安価無しです……

 次回はまた週末に
 よろしくお願いいたしますー



・おはようございます
 所用により本日自由にできる時間が限られてしまったため、明日ゆっくりやろうと思います
 (久々に平日が空いているのです)

 当日に申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします


・進行スピード的に次スレは2・3回後に立てると思います
 当スレは鯖資源に優しいスレを自負しております、進行スピード的に(遠い目)


・申し訳ありません、諸事情により今日もできなくなりました
 具体的には打ち合わせの事前準備の準備、的な……
 本当にすみませんすみません

 次回すぐ始められるように初回投下分は書いておきます
 また予告ぶっちぎるのはアレなので次回は未定、最悪次の日曜までには来ます
 突然来ます


・次スレについて
 このスレの最後→次スレのアオリ(最初の投下)を繋げたいので、ちょっとタイミング測っています

 前回は誘導のためにレスを控えるなど無理を言ってご協力頂いたので、
 そこまでギリギリにはしないつもりです

 ここが多少余っても適当に埋めればいいですしね


・二週間ぶりにこんにちは(遅)
 懸案事項をヤり終えたので今日も進めてまいります


強化ガラスを大胆に取り入れた室内は開放感があり、実際にスペースとしても十分な広さを確保している。
スイッチ一つで透明な外壁の上半分に焦茶が射されサングラスのように光量を絞った。
隅にある観葉植物は、褐色の陽を浴びて独特の色合いを見せている。

八月十五日。
いかにもがっしりとした体格の男性に向かい合い、天井はMARの応接間に腰を落ち着けている。
電話越しに感じた慌しさのようなものは、今日は見て取れなかった。

隊員「おっしゃる通り地震の発生とAIM拡散力場の乱れには何らかの相関関係が見られます。
   我々としても、今後に生かすため調査を進めているところです。
   今現在は落ち着いていますが、同様の災害がこれからも起こらないとは限りませんからね」

天井「やはり、そうでしたか。対策に何か役立てられないかと、最近本業の合間に個人的に調べているのです」

隊員「地震が起こらないのは僥倖ですが、新しいデータが無いため、調査も過去の分析に限定されてしまいますからね。
   些細な内容でも、博士の目線で気付かれることがあったらご教授頂ければ幸いですよ」

いかにも体育教師、といった肉付きをしている割に、応対している隊員は事務員的な雰囲気も兼ねていた。
もっとも担当教科が体育だろうと、教職ならばデスクワークからは逃れられないだろうが。

ただ事前調査によると、教師陣のボランティアで成立している警備員の中で、MARは比較的異色な部署のようである。
災害対策専門として研究所と実働部隊を保持している関係か専任の研究者なども居るらしい。
現に以前テレスティーナの経歴を閲覧した際にも、彼女がどこかの学校で教鞭を取っているような記述は無かった。

天井「ちなみに、当たり障りの無い部分だけで良いのでデータを提供頂くことは……」

隊員「申し訳ありません。立場上プライバシーに関わる情報も多く取り扱うため、外部への開示は制限されております。
   部外秘を条件にデータ測定などをさせていただく場合も多く……ご理解願えればと思います」

天井「いえいえ、ご無理を言い失礼いたしました」

まぁ想定通りであった。
MARの白黒問わず、おいそれと人目に晒せない情報はあるだろう。
万一の漏洩を避けるため、重要度の区別によらず一切を非公開にするのもおかしくない。

少し毛足のあるカーペットに下ろした足を、所在無げに置き直す。
数十分の対面で引き出せた新規な情報は皆無と言って良い。
「地震について調べている」というアピールをできた以外にはさして進展は無さそうで――、

隊員「ところで天井博士。まだ、お時間はおありでしょうか?
   隊長が是非お話をお聞かせいただきたいと申しておりまして……」

おや?

天井「――直々にとは、光栄ですね。是非お会いしたいですよ」

この隊員に、会話中どこからか指示を受けるようなそぶりは無かった。
つまり事前から対面の要望はあったということだ。
事件の外周を嗅ぎ回るだけの一研究者の、一体どこに有用性を見出してくれたのか。
相手はどこまで掴んでいるのか。

食い付いた魚は算段以上に大きく、天井は鳩尾に走る強張りを隠して頷いた。




テレス「テレスティーナ=ライフラインです。本日はお時間ありがとうございます」

――第一印象は、デキる女。

一分の隙無く纏めた髪、細いフレームの眼鏡。
かちりとしたスーツは、猜疑心のせいか鉄壁の要塞に見えた。

天井「天井亜雄と申します。
   こちらこそ、急なアポイントメントにも関わらず隊長自らにお出でいただけるとは、恐縮です」

天井の周りには、「デキる」女性が多い。
だが木山然り黄泉川然り外見を繕うという習性をどこかに置き忘れた気があるし、
服装にはこだわりのありそうな布束も、ゴスロリに白衣を羽織るなど少しずれた面がある。
自身とて人のファッションに口を出せるような衣生活はしていないが。

ともあれ、エリート、キャリアウーマン、などの語を絵に描いたようなテレスティーナの姿はなかなか新鮮だった。
隊員の去った薄緑のソファに一礼して掛ける仕草も、硬過ぎず優雅過ぎず、自然でありながら流れるようである。

テレス「いいえ、お出迎えもできませんで。博士の研究はかねがね伺っておりますわ。
    『末端の複製移植における急性拒絶反応抑制のためのsis-3系投与と相互作用』でしたか。
    寡聞ながら、発表されたばかりの論文の内容を的確に展開されているとのお噂で」

天井「ありがとうございます。そんな昔のものをご存知でしたか。
   ご専門はAIM関連と存じておりましたが、医療系にもご興味が?」

テレス「AIM分野以外では流れを追う程度です、あまり首を突っ込むと馬脚が現れてしまいますから。
    総合科学雑誌を捲るのと大して変わりありませんわ」

にこりと相好を崩す長に合わせ天井は謙遜の笑いを浮かべる。
その顔面の皮一枚の内では、戸惑いと憶測が渦巻いている。

どういうことだろうか。

彼女が口にした論文は、天井が長点に移る前、医療分野での立場を築くために躍起になっていたころのものだ。
後の時間の記憶を駆使し的確に研究を発表してはいたが、専門外にまで名が轟くような派手な動きはしていない。
たまたま目にしたものが琴線に触れたのだろうか?

あるいは天井に話を合わせるため、過去の研究を洗ったのだろうか。
こちらだってテレスティーナやMARのことは下調べしている。
……だが、直接面会が叶ったことといい、天井にそれだけの有用性を見出したということだろうか。
地震に関して目覚ましい活躍など何もしていないというのに?

天井(やはり木山に目を付けていて、共同研究者の私を探りに? いや、木山達の地震への関与が割れている線は薄いはず……)




テレス「お電話でいただいた概要はお聞きしました。
    先ほどの者と二度手間になり申し訳ありませんが、私にも詳細をお教えくださいますか?」

天井「はい。特に大きな、震度4以上の地震が発生した6箇所の内の4地点でAIM拡散力場を測定し――」

がち、と強引に思考の歯車を切り替える。
実測データや予測との差など、具体的な数値を交えながら数日の成果を開帳する。
述べる内容はそれこそ定型の論文のようにあらかじめ整理しており、順を追ってなぞるうちにいっそ頭を冷やすことができた。

手渡した資料に目を落とし、テレスティーナは軽い相槌を打ちながら聞いている。
この程度の内容は既知のことと思うが。
こちらを見ていない間にと、心中の焦りに流れた汗をハンカチに吸わせた。

テレス「――ありがとうございます。私達もAIMと地震の関連性を確信し検証しているのですが……。
    恥ずかしながら、結論には遠いのが現状ですわ。今の時点のお考えだけでもお聞かせいただけませんか」

天井「申し訳ない。私の方も取り組み始めたばかり、まだ仮説と呼べるものは持っていないのです。
   こちらに伺ったのも、測定では浮き彫りにできないことをお聞きできればと考えた次第で」

テレスティーナは僅かに目を細める。
シャープな睫毛の影が落ち、残念そうにも見える。

テレス「そうでしたか。生のデータをお渡しすることはできませんが、答えられる範囲でお答えします。
    緊急時には私も出動しますので、現場の知識はご心配なさらずとも大丈夫ですよ」

にこりと整った笑みを浮かべる。
好んで見ることはほとんど無いが、ドラマの登場人物のようだと思った。
考えが読めない、どころか好印象を与える所作が洗練されており、胡散臭さなどを感じる余地も無かった。


>>+2, +4
何を聞くか
(各1つまで、複数書いてあった場合最初のを採ります)



・遅くなってすみません、ギリギリ今日に間に合いました……


何を聞けば、今の調査進度としてわざとらしくなく、また今後の演技にも役立つだろうか。
スタート地点としては、仮説もまだ無いという初歩的な位置から初めている。
まずは軽いジャブから入ってみるか。

天井「支障が無ければ、ですが。
   不審点、気掛かりだったことなど、現場で隊長が一番気になったことを教えていただけませんか。
   データ分析の中で注目している点でも良いのですが」

取りよう、答えように幅がある質問だが、相手がどう返答するかをこちらも測らせてもらおう。
テレスティーナは吟味するように腕を組む。
空調により気流が揺らいだのだろうか、それとも首を動かしたのか。
豊かに広がった髪がゆらと震える。

テレス「ええ、大丈夫です。――悔やむべきことですが、規模の大きい地震では必ず負傷者が出ています。
    ご存知のことと思いますが、一連の地震は非常に局地的なものですわ。
    学区の境を隔てただけで全く揺れを感知しない場合もあるくらいに」

天井「……? そうか。
   狭い範囲でしか被害が無いのに怪我人が出る、逆に言えば地震は必ず人の多い場所で起こるということですね」

なるほど、と唸る。
天井にとってこの問答はいわば茶番なのだが、確かに事実から法則性を推測するならそうなるだろう。
実際、不特定多数の能力者の無意識な暴走によって発生するという真実にも即している。

テレス「そうです。震度が小さく人的被害が無い件も網羅的に調べましたが、それらも同様に。
    特に企業街などより学校や寮の近くで頻発していることは、AIMとの関連性の裏付けでもあります」

被害者の話題を引き継ぎテレスティーナは物憂げに溜息を零した。
私達も救助に尽力しているが、それはつまり負傷者が出てからしか対処できないのと同義だ、と。
その言葉はいつか冥土帰しが口にしたものと似通ってはいたが。

天井(…………ふむ)

テレス「分析上では、観測されるAIM拡散力場の種類が一番の焦点になっています。
    博士がお持ちになったデータは電磁波――電撃使いのAIM拡散力場でしたわね?」

確認の言葉に、短く返す。
テレスティーナは満足そうに頷き、軽く腕を広げた。

テレス「勿論他の能力のAIMも測定し、地震前後に特異な乱れがあることを確認しています、が。
    観測されるAIMが毎回違うのです」

天井「同じ能力者が引き起こしているものではないということですか」

テレス「ええ。それだけでなく、能力の種類という大きな区分で見ても、共通性が無いのです。
    風力使いのAIMが測定に掛かる時があれば、掛からない時も。
    先ほどのデータでは全ての地点で電撃使いのAIMが見られましたが、実はそれが無い場合もありました」

今回持参した測定で必ず電磁波の乱れがあったのはたまたまということらしい。
考えてみれば、周囲に電撃使いが居ない状態で起こった地震も当然あるだろう。
人員や機材、時間を潤沢に使える彼女らの調査結果は参考になる、と場違いにも感心した。
研究ではなく「振り」の参考だが。




テレス「あまり大声では言えませんが……初期には特定の能力者の作為の可能性も考慮していたのですけれど。
    調査が進むにつれ考えを改めましたわ。
    それに……地震の特殊性についてはどこまでご存知?」

天井「強い地震でも局所的なこと、程度しか……。この件について調べているのに情けないお話ですが」

意識の端に追いやっていたアイスティーに口を付け言葉を濁すと、テレスティーナはばつが悪そうに肩を竦めた。

テレス「いいえ。混乱を避けるために私達が情報を抑えている面もありますもの。
    ――あの地震は、正確にはもっと複合的な現象です。
    目撃者の証言では地面の揺れ以外にも異常が報告されています」

物が浮かぶ、池の水が不自然にうねる、街灯が消える。
火の気が無い場所での小火。
器物の破損にしても、明らかに「地震」が原因でないような事例が多数あるとのことである。
とはいえこの情報自体は地震の所以を考慮すればもっともな内容だ。
むしろ。

天井「待ってください。今おっしゃったような現象が起こっているなら、まるで――」

能力暴走が要因だと、ほぼ答えを言っているようなものではないだろうか。

テレス「実証できたわけではありませんから、明言はいたしません。
    直接の引き金が『それ』だったとしても、『それ』を引き起こす諸悪の根源までは突き止められておりませんし」

天井「……かなり踏み入ったことまでお話しいただきありがとうございます。
   しかし、一介の研究者である私が、お聞きしてしまってよろしかったのですか」

テレス「長点上機の看板は身元証明として十分ですわ。個人情報が含まれる類でもありませんし。
    それに正直、救助隊の研究施設だけでは限界が見えつつありまして……、
    スタッフは皆優秀なのですけれど、同じメンバーで頭をつき合わせていても視界は拓けませんから」

情報を与えるから、着眼点を貸せということだろうか。
相手の方もかなり積極的だ。
天井を怪しみながらも餌をちらつかせているのか、あるいは暴走の発信源を見出すためには形振り構わないつもりなのか。

虎穴に入らずんば、と言う。

木山らに指摘された通り、無理が祟って窮地に陥ったこともある天井だが、安全策だけを取っていれば囮の役は務まらない。
乱闘事件の時のように追い詰められて選択肢を狭めてしまっているのではない。
必要な分だけ踏み込み、引き付け、逃げ切る。

テレス「他に、お役に立ちそうな情報はありますか?」

相変わらず微笑みの表情は均整が取れている。
事件の被害の話をしていた時は仄かに顔を悲痛に歪め、要所要所では真剣な目をし。
集団を率いる者として人当たりを意識したセルフコントロールの成果なのか、
邪心を覆い隠すためのものなのかは結局判断できなかった。

ならば、こちらも。
腹積もりを隠すように拳を脚の上で握り込み、天井は背筋を伸ばした。




天井「では。もし、調査の中で大元の原因に迫ることができたら。
   それが人か、組織か、偶発的な事象か……それを調べることすら、ただの研究者である私には心許ないのです。
   できれば緊急時にも対応できるよう、個人的にご同行いただくことは可能でしょうか?」

テレス「あら、当然です。危険が予測されるような状況に一般の方を放り込むような真似はいたしませんわ。
    かえって、同行の必要性が無いなら私達だけで行くことを申し出るかと」

つられて口元を引き締めていたテレスティーナは、拍子抜けしたように身体の力を抜き、髪を耳に掛けた。
さらに口調までも冗談めかし、

テレス「……ところで、『個人的に』というのは深い意味があるのかしら?
    オフでは何の権限もありませんから、私としては想定される状況に応じて人員と装備を整えて行きたく思います。
    二人きりではなくて、ね」

天井「そういう意味ではありませんよ。……ありがとうございます」

くすくすと煙に巻かれ、天井も吐息と共に脱力した。
そういう意味――彼女に女性として惹かれてはいないし、向こうも惚れさせて良いように使う気ではないはずだ。
例えば造作の整ったテレスティーナがその気なら、脚を組むだの色々やり方はありそうなもの。
敢えて安直に女性性を感じさせず、人としての好印象を与えながら、軽口を交え緊張をいなし――、

天井(主導権を……握られている、のか)

脊椎を引っ張られるような心地がした。
リラックスした体勢のままに、安定を求めてコップに手を出す。
だが、ゆっくりと伸ばされた指がガラスの冷たさに触れることはない。

テレス「期待してもよろしいかしら。
    私達も必死に調べてはおりますが、一度袋小路に入ってしまうと発想に柔軟性が無くなってしまって」

それに、と。
続いて放たれた台詞は、会話の主導権だのの些事を忘れさせるには十分だった。

テレス「こちらのカードをお渡ししたのは、天井博士、あなただからです。
    博士の研究は斬新で機を心得ていて、まるで世の中の潮流を、一つ上の次元から俯瞰しているみたい」

それとも、


博士には、未来でも見えているのかしら?


天井「――――――、」

テレス「ですから、もしかしたら簡単に地震の原因も突き止めてくれるのではなんて……、
    失礼しましたわ、善意で調査なさっている方にプレッシャーを掛けるものではないですね」

その表情は、今も端正だろう。
視界の中に確かに入っているのに、しかしまともに視覚情報を処理できていない気がした。


>>+2
どう応えるか
(大まかな方針でも可、具体的な台詞の場合若干語調を弄るかもしれません)



・すみませぬ、眠気がマッハなので今夜は寝るます
 次回も日曜までのどこかに
 安価ありがとうございましたー!

・次スレは次回の途中か次々回の最初、キリの良いとこで立てます


安価は>>+1 でお願いします



天井(な、に……か)

言わなくては。

今日の会話は元より全てが演台上の虚構。
無防備に内面を晒していないこと、囮役としてのを殻を着込んできたことが功を奏した。

天井「たまたまですよ。私自身、あの頃は奇跡のように時流に乗っていたと思います。
   現実には――こんなものがあれば便利だろうとか、効率化が図れるだとか、
   アイディアが降ってきただけなのですがね」

奇跡なのは、この場の対応の方だ。
三次元が歪む眩暈のような感覚は一息に正常を取り戻す。
表情、声のトーン、間。
どれにも不自然の無いことを口に出してから丁寧に検証する。

テレス「まぁ。天才型なのですね、羨ましいわ。
    研究者には発想、根気、実行力、どれも必要ですけれど、
    個人の発想センスはなかなか鍛えられるものではありませんもの」

この答えで納得したかは分からないが、深い追求は無い。
となれば、単純に研究発表のタイミングの良さに違和感を持ち、鎌を掛けてみただけなのかもしれない。
動揺を見せなかっただけでも上々だ。

剽窃やスパイなど研究には様々な抜け道がある。
天井がそうした手段を用いていたか、ひいてはそれを可能にするバックグラウンドの存在を知りたいのだろうか。

天井「近頃は勘が鈍ったか大きな成果も出せず……情けない話ですよ。
   それより、木原所長は研究者としても素晴らしいとお聞きしています。
   私も電撃使い以外のAIM分野では門外漢ですが、論文を拝見したことがあります。今はどんな研究を?」

ともあれ、こちらの懐の中身を包装して手渡す義理は無い。
地震の原因についてはかなり情報を融通された形だが、MARの素性に関してはさっぱりである。
少しでも手掛かりを引き出したい。

テレス「こちらの研究所は完全に先進状況救助隊と一体ですから……今は地震の件で掛かりきりですね。
    普段も学園都市特有の災害、能力関連の事項について原因や対策を追っていますわ。
    所内には能力やAIM関係無く――、
    例えば極限状態の心理を考慮したより安全な避難誘導法などを研究している者もおりますが」

求めているのは、そんな模範解答ではないのだが。

天井「あぁ。確かに救助隊専属ともなれば、災害方面に特化するのも頷けます。
   研究所のトップを務めながら部隊の指揮もされているのですから、頭が下がりますよ」

いいえ、と慎ましい微笑を浮かべるテレスティーナ。
秘めていた胸中の急所すれすれに刃を突き入れてきた影も無い。
それとも、いや、確実に、その瞬間でさえポーカーフェイスを崩していなかっただろう。

ちらりと彼女は腕時計に視線を滑らす。
そろそろ時間が、とさり気なく訴える動作にも嫌味は無く。

天井(全く――とんだ三文芝居だ)

残された数分のため、脳内を乱雑に駆ける文字列達を吟味する。


>>+2
最後に言うor聞くことがあれば
(大まかな方針でも可、具体的な台詞の場合若干語調を弄るかもしれません
 去り際なので長い場合は端折ります)


・こんn……ばんは
 進度的に今日でテレスティーナトークを終わらせて、その後、次回から次スレになりそうです
 既に夕方ですが今日もよろしくお願いします




天井「……ふぅ。長々とお時間をとらせてしまい申し訳ありません。
   一研究者にここまでのことを教えていただきありがとうございます。
   分かることがあれば、すぐ連絡いたしますよ」

テレス「こちらこそ。よろしくお願いしますね」

テレスティーナは、あの揺るぎない仮面の下で何を思うのだろう。
天井の手札をどれだけ読んでいるだろう。

彼女から来歴を指摘され、まるで時間が数十倍に引き延ばされたような一幕もあったが。
客観的な経過時間は四十分程度に過ぎず、隊員との会話を含めても二時間に満たなかった。

陽はいまだ高く、しかし都市製の遮光ガラスが、何物をも白日の下へは晒させない。

天井「そうでした、よろしければ緊急にご連絡できる番号をくださいませんか。
   危険が予想される調査などの際は先にご一報を入れさせていただきますが、その……万が一のために」

入室時と隊長との対面時にそれぞれ名刺交換は済ませているが、
一瞥した限り彼女の名刺に書かれているのは代表番号のようである。
即座に動くべき時に一々取次ぎを経る余裕は無いはずだ。

テレス「ああ、失礼いたしました。こちらに――」

手帳からパラリと一枚を引き剥がしペン先を走らせる。
初めからそういう用途のページなのだろうか、破れ目は整然としている。
黒いインクを追えば、番号、アドレス共に先ほどとは違う。

テレス「デスクの番号と、私しか閲覧できない緊急用のアドレスです。
    研究所のものですが、自宅や携帯にも転送しておりますからいつでもこちらにご連絡いただければ」

天井「ありがとうございます。私の方は、名刺の連絡先にいただければほぼ繋がりますので」

手早く資料の類を鞄にしまう。
テレスティーナに渡した分も彼女が一つのファイルに収めた。
折角なので出されたアイスティーの余りを飲み干せば、面会があったと証明するのは空のグラスだけになる。

この応接室には何も残らなくて良い。
草臥れた鞄の中にも。

天井「微力ながら、地震の再発や原因追及に協力させていただきます。一刻も早く安心を取り戻せるように」

敵にせよ無関係にせよ……油断ならない人間であること。
ことの他、自身に注意を向けているようであること。

確かに得るものはあった、と思う。

テレス「ええ。私達も一層の努力をしてまいりますわ。改めて感謝と、お願いを申し上げます」

最後まで互いの演技を剥がさぬまま。
コンマ一ミリづつ機器の出力目盛りを上げ下げするような、研究者同士の面会は終わった。




率直に、疲労度がとんでもない。
できることなら自室のベッドで情報の整理をしたいところだった。

研究室の椅子をきぃきぃと鳴らす。
ベッドより体重を預けてきた時間が長そうな自席だが、あくまでも仕事用。
限界までリクライニングしても横になっていると実感できる角度にはならないのだ。
室内の涼しさだけが磨耗した精神の味方である。

天井「かといって……残り日数が少ないからな」

自宅のPCではアクセス権限が低く、何をするにしても動きづらい。
さっさと考えを纏め、今日できることがあればしておきたい。

天井「メールも来ていたし、な」


 From: 木山春生
 Sub: 落下時のAIMのラグの調整実験の件

 突然済まない。
 22日の実験だが、都市の外まで出張が入って行けなくなった。
 私が居なくても大丈夫そうならそのまま進めて欲しい。

 支障があれば、連絡をもらえれば調整するよ。

    :
    :
    :


はぁぁぁ、と嘆息する。
最近だけで培養器幾つ分の幸せを逃しただろう?
そもそもそんなジンクスなど信じてはいないが。

天井「意味も必要性も分かる、他意が無いのも。が……どうしてあいつのメールはこう、疲れるんだ」

まさかテレスティーナからかと身構えていたら、例によって傍受を警戒した偽装メールである。
彼女の妙なウィットを解読するのは、現在のコンディションでは非常に響いた。

移送は22日。
この土壇場でまさか後ろにずれるとは思わなかった。
しかも、実験や研究の打ち合わせ文から必要なものを繋ぎ合わせると、どうも内的要因ではない。

詳細までは書かれていないが、MARが動き辛いと予想される日を選んだらしい。

天井「救助部隊が必要な事態を膳立てする気ではないだろうな」

まぁ、風紀委員を含む現在のメンバーでそのような手を使う訳もないのだが。

天井「日付の理由については詳しく聞いておくべきだな。こちらは直に隊長達を相手取るんだ」

心なしか重力に負けがちな指を叱咤し返信を打つ。
木山から送られてくるのは今度も遠回しな文章だろう。

天井はまた幸せを一掬い、架空の容器に叩き込む。




さて、今日についての一人反省会だ。

会話にした方が盲点に気付けるなど利点が多いのだが、ことこの件に関しては気軽に話せる人間がいない。
メール待ちでふわふわと漂いだしたスクリーンセーバーがせめてもの相手だった。

天井「まずは、地震の情報。これは新しい成果は無かった」

当然である、原因はこちら側に居て、今も治療を待っているのだから。
発生源のリアルタイム情報で木山達に勝る勢力は無いだろう。
厳密には地震の際の多様な現象については初耳だったが、既知の事実から容易に想像できる範囲の内容だ。

天井「次。地震に関わる、MARの情報」

つまり、あの組織がどれだけ地震について掴んでいるかということ。

あの災害がAIM拡散力場の乱れ、ひいては能力暴走によるものだとは突き止めている。
ただし具体的なトリガーやその場所については未特定。
ここまでが、「天井に知らされた」内容である。

天井「当然、ぽっと出の研究者に全てを伝えるはずはない。MARがどういう立場だろうと」

例えば黄泉川の言を信じるなら、彼女らは地震発生の直前には場所などを察知できるらしい。
今日聞いた状況はあくまで最低ラインということだ。


多色の立体が画面上を動き回る。
眺めるそれらは生徒に使う暗示ソフトのようで、天井は鬱陶しげに目を閉じる。

いっそ木山のように自身に開発を施し、予知系の能力でも手に入れば良いだろうに。
未来の記憶があっても、「前回」関わっていないことには天井は無知だ。
筋ジストロフィーの研究に取り組み始めてから、思うままに結果を出せないように。

天井(駄目だな……テレスティーナに言われたことが尾を引いている)

本当にモニターに移る映像が催眠術か何かに感じられて、ゆっくりと宙を仰いだ。
集中の欠落。
これすらあの女の思う壷だと言うなら流石に笑えない。
難攻不落の様相とはいえ、そこまで超越的な相手とも思えなかったが。




天井「先に……私に対するMARのスタンスを整理、だな」

事実だけを見るなら、破格の情報提供だった。
データの数値は開示されなかったが、情報漏洩防止等の契約を結ばない外部の人間なのだ、これは当たり前。
にも関わらずデータの先の推論までが手渡された。

天井「悪用するとは考えなかったのか? 長点のバリューで信用できるなどと言っていたが……」

明らかな不自然だ。
あちらも意図を持ってこちらを窺っているのだろう。

単純に考える頭の一つとして発信源特定を期待しているのか。
天井に裏があることを勘付いた上で泳がせるつもりか。
可能性は低いが全てばれていて、木山達の動向を測る指標にされているのか。

天井「テレスティーナも、こちらに渡す情報を厳密にコントロールしていた印象がある。
   何度かはぐらかされたしな」

ただ、地震関連のことはかなりぶちまけてくれたので、囮役としての幅は広がったといえる。
少なくとも能力暴走が原因だと確信を持つ、という演技のステップは不必要になった。

天井「最後、か。何故、私を重要人物のように扱ったのか」

きっかけは、いくらでも考えられた。

彼女の言葉通り研究発表のタイミングの良さが当時から気掛かりだったか。
裏に通じた人間なら、例の「実験」招聘や第一位との接触もきな臭い。
それとも、ここ数ヶ月で多様な人脈を築いていること。
純粋に数日の調査と自ら面会を申し込んだため。

あるいは協力者の誰かが目を付けられていた場合。
本命の木山、希少な能力者である上条、結標、柳迫。

天井「可能性が多い……というより、意図を察する手掛かりが無さ過ぎる」

まさに正鵠を射た、未来でも見えているのかしらという台詞ぐらい。
あれだって昔の研究を見た感想か、興信所にでも行動を洗わせての印象か、

天井(まさか、な)

事実として未来の記憶のことを知られているか。
更には、この異常な記憶の原因を、知っている?
馬鹿な。




ぽん。

螺旋を描くスクリーンセーバーを押し退けて小さな通知が画面に瞬く。
十数分前はあれだけ厭った木山作の暗号文に、縋るように解読を試みる。

天井「風紀委員と警備員の合同会議――?」

それが22日にあるから、MARが敵なら戦力を削れることを期待している、という。
協力してくれている風紀委員二人は役職付きではないため会議には不参加。
こちらの人員に影響は無い。

そもそも会議自体が電撃使いの彼女からの情報らしいのだが……。

天井「全員参加の大規模なものでないとはいえ、一週間前に決まった、と?」

落ち着かない。
急な会議だけなら、たまたま連続強盗でも起こっているだけかもしれない。
どうしてこれが今起こるのか。

移送。
テレスティーナの態度。
無造作に探られた天井自身の秘密。
唐突な治安部隊の会議。

後戻りできぬ回路のように、全てが動き始めている。
ばちりと頬を張られたようだった。

怯むなら怯め、進むなら進め、と。


>>+1
明日からの囮行動の方針
 a. 見当違いの箇所を調べるなど、わざと少し迷走する
 b. 能力暴走に関して的確に情報収集する
 c. 生徒が以前居た病院にすぐ辿り着く
 d. 一足跳びに発生源を探り始める

>>+3
今日の残り時間(現在大体15:30くらい)でサクッとしたいことがあれば
(1つまで、複数書いてあった場合最初のを採ります
 今日中に終わらなければ状況により中断か明日以降に持ち越します)


・ということで、今日はこれまでに
 前のレスから6時間弱ワロエナイ……状況整理で時間と幅を食いました
 ご参加ありがとうございますです

・次回の最初に次スレを立て、そちらで進めます
 まさか一年経っても決着が付かないとは、自分の遅筆さに驚くばかり
 長期休止とかもありましたしね

 いつもお付き合いありがとうございます
 牛歩なりに続けていきますので、これからも見掛けたらよろしくお願いいたします



・予告を書いていなかったことに気付き愕然とする午後


・次スレ立てました
 今回も思ったよりギリギリになってしまい、折角アドバイス頂いていたのになんだか申し訳ないです

天井「どうしてここまで来たのだろうな」
天井「どうしてここまで来たのだろうな」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1376207411/)

 こちらにてちょろちょろ進めてまいります


・以下埋めネタと呟き




>>1 は コミックガイド11.5を 入手した!

※コミックガイドの人気投票、新約7巻のネタバレ(今更)注意



天井「…………」モクモク

布束「…………」モクモク ペラリ

天井「…………」モクモク

布束「…………」モクモク

天井「……今日の議題だが」...パタン

布束「? どうしたの、急に」

天井「このコミックガイドの51ページを見て欲しい」

布束「Ah... 貴方の紹介ね。その……かなり直截的な文面だったわね」


 科学サイド|side Science
 天井亜雄 AMAI AO >>>

 『金に魂を売った外道』

    :
    :

 金のためなら平気で悪事に手を染める、救いのない俗悪な人物。


天井「……否定は、できないが。あんまりではないか? 外道でも俗悪でも泣くんだぞ?」

布束「Stop. 成人男性が泣いても多分同情票は得られないわ」

天井「くッ……!」(´;ω⊂)

布束「そ、そうだわ。票といえば人気投票では芳川博士より上位だったじゃない。
   That is, 敵役として一定の評価があたってことじゃないかしら。
   ただでさえ女性キャラの多い禁書目録で、健闘したと思うわ」

天井「そうか……ありがとう。ポジションの割に芳川に票が集まらなかったのは、投票者の分布もあるのかもな」

布束「それに原作5巻相当の話だと意外と登場シーンが少ないものね。ラストはとても印象的だと思うけど。
   新約では一方通行の帰還に伴って出番が増えているみたいよ」

天井「新約……生きて出番があるのが羨ましいよ」ズーン

布束(め、面倒くさいわ……!)




天井「話が逸れたな。大体、コミック版スタッフは私に何か恨みでもあるというのか」

布束「What? 他にも何かあったの?」

天井「前回のコミックガイド――5.5巻だな、あれだと紹介すらない」

布束「そうなの? ……あら、仕方ないわ。コミックだと貴方の出番は6巻だもの」

天井「うん、そうだったか……? どうも5巻のイメージが強くてな」ペラペラ

布束「Right. だから芳川博士も紹介されていないでしょう」

天井「ではそれは良いとして。電撃編集部編の『全テ』にも私の説明があるが、あそこまで酷評はされていないぞ」

布束「小説版のガイドね。Whoa. どこに置いたかしら……あった。確かに事実のみを述べた文章だわ」ペラリ

天井「だろう」

布束「まぁ、『全テ』は全体的に客観的な記述が多いし……。
   原作編集部が書いているだけに、主観や憶測を混ぜて以降の展開と齟齬が出ないようにしたんでしょう」

天井「以降、か。もう小物でも敵でも良いから再登場できないだろうか」

布束「私は超電磁砲アニメで救済待ちだわ。
   Possiblyby, 原作なら、復活そのものはできなくても誰かの話題に上る可能性もあるわね。
   本文にテッラの名前を見付けた時は驚愕したわ」

天井「しばらく出ていなかった人物に急に焦点が当たることもあるしな」

布束「あぁ、土御門君みたいな」

天井「土御門君みたいな。新約7巻の前半、ほとんど彼が主役じゃないか。
   下手をしたら15、19巻よりダーティな展開にも驚いたが」

布束「Unlikely, アニメオリジナルで登場できたとして、私も暗部落ちなんて展開じゃないと良いけど……」

天井「基本的に超電磁砲はそこまで都市の裏側に深入りしないからな。大丈夫じゃないか」

布束「そうね。……まずは登場しなければ話にならないけれど」

天井「…………」

布束「…………」ペラリ

天井「暇だな……」モクモク ペラリ

布束「Un... アイス食べる?」モクモク スッ

天井「頂こうかな」モクモク

布束「はい」ヒョイ

天井「ありがとう」


「「…………はぁ」」



〈とあるメタの研究者達3 ~出番待ち~・了〉


天井たんはビアージオと並んで貴重な俗物キャラ。



・ただの懺悔

 天井の設定に関して>>1 は幾つかエラい勘違いをしておりまして
 比較的初期に気が付いてはいて、このまま進めるしかないと腹を括っていたのですが
 (参加してくれている方も、指摘するのは野暮だと流してくれていたことと思います)

 ちょっと羞恥心がマッハになってきたので
 新スレ立てに乗じてここに埋葬していこうと思います

 あくまでこちらは今までの設定で進めていきます
 原作との食い違いについては、「このスレではこの設定」ということでご容赦を


・年齢

 1スレ目の>>47 にて

   >>1 は本編30後半、このスレ30前半くらいのイメージです

 とかぬかしましたね

 はい、20代後半らしいです天井さん
 10も上にサバ読んでごめんなさい天井さん
 老け顔ゲフン 天井さん
 一方通行が中年とか呼ぶから悪いんや


・専門分野

 これはマジで洒落にならないのですが
 天井の本来の専門はクローニング(ハード)ではなく人格プログラミング(ソフト)の方です

 冷静に考えれば、打ち止めの脳にウイルス打ち込むとかもろソフト側の所業ですね
 同時登場の研究者、芳川との個性化の意味もあるのでしょう

 訂正してしまうと話が崩壊するのでずっと知らん顔していましたが、
 他所で天井の話題になったときはお気をつけください


・これで本当に終わりです
 続きは次スレで!


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