P「やればできるーきぃっとーぜぇったーいーわたしなんばわーん」 (110)

P「はあ……参った。大学も残り7日で卒業だというのに就職が決まらない」

P「このまま就職浪人なんて、洒落にならないぞ……」

?「キミぃ!」

P「ん、俺ですか」

?「ティンときた! どうだい、うちでアイドルのプロデュースをしてみないかい!?」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1379068156

P「???」

P「あの、急にそんなこと言われても、よくお話が……」

高木「ああ、すまないね。私は765プロダクションというアイドル事務所の代表取締役、高木と申すのだが」つ名刺

P「はあ、これはどうも」

高木「立ち上げて2年足らずといったところでね。日々、こうして街を歩き、人材確保に努めているのだが……」

P(社長、自らがスカウト? どんだけ人員が足りてないんだ)

高木「キミを見た瞬間、ティン! ときたんだよ!! キミこそ我が事務所が欲する逸材だと!!!」ガバッ

P「ち、近い! 近いです!」

高木「どうだね!? キミならば必ずやアイドルを頂点にまで導けるだろう!! 私の眼に狂いはない!!」ズズイッ

P「つ、唾が飛んでますっ! 唇がっ、近い!!」

高木「頼む! 我が事務所のプロデューサーになってくれっ!!!!」ズズズズズッ

P「な、なります! なるから離れてくだっ」チュッ

――――

P「ここだ……」ザッ

P(趣のあるビルだ。想像していた事務所とちょっと違うかな)

P「1階が食堂で2階に事務所が入ってるのか」テクテク

P「失礼します」ガチャ

高木「お、来たかね?」

P「はい、今日からお世話になります」

高木「うん、うん! いい顔をしている。若い頃の自分を思い出すなあ」

高木「おっと、感傷に浸ってる場合ではないな
   どれ、社員とアイドルたちを紹介しよう。付いてきたまえ」

P(ふう、緊張する。社長の勢いに圧され、プロデューサーになってしまったが、
  これから先、俺はやっていけるのだろうか……)

高木「音無くん、律子くん、こっちに来てくれたまえ」

高木「紹介しよう、今日からうちのプロデューサーを務めてもらうPくんだ」

P「Pと申します。よろしくお願いします」カチコチ

高木「彼女は事務員の音無くん、そして彼女がキミと同じプロデューサーの律子くんだ」

小鳥「音無小鳥です。よろしくお願いします」

律子「秋月律子です。よろしく」つ握手

P「ど、どうも(うわあ、二人ともすごい美人だなぁ。さすがはアイドル事務所)」ドキドキ

高木「うむ、これから同じ釜の飯を食う仲間だ。ともに助け合うように。
   それではアイドルたちを紹介しよう。うちのアイドルはみんな粒ぞろいだ」

高木「アイドル諸君、少し集まってもらえるか」

ワイワイ ゾロゾロ……

P(おお、さすがはアイドル。可愛いなんてものじゃないな。言葉では表現できない華やかさがある)

P(1,2,3…全員で9人。俺は一体、どの子を担当することになるのだろうか)

高木「ウオッホン! 紹介しよう。今日からキミたちのプローデュースを担当することになったPくんだ」

P「Pです。よろしくお願いします」

P(ん? キミたち……?)

アイドル一同「よろしくお願いします!」

高木「それではPくん、早速、アイドルたちとミーディングだ。彼女たちの特徴をしっかりと把握するようにな」

P「あ、あの社長、その前に、俺はどの子をプロデュースすればいいんですか?」

高木「ん、どの子って、そりゃあ、ここにいる全員だが」

P「ぜ、全員!!? ち、ちょっと待ってください」

P「先ほど紹介された秋月さん? も、プロデュース業をされるんですよね!?」

高木「おお、そうだった。伝え忘れるところだったが、実はここにいるアイドルの他に、あともう3人いるんだ」

高木「水瀬くん、三浦くん、亜美くんといってね。今は仕事に出向いていないんだが……
   あ、ちなみに亜美くんはここにいる真美くんの双子の妹だ」

真美「ヨロヨロー」ニッコニコー

高木「律子くんはその3人からなるユニット、竜宮小町を担当している
   ほら、竜宮小町! うちの看板を背負ってもらってるんだけど聞いたことないかなあ」

P「すみません、実は芸能界とか疎くて……」

高木「そうか。まあ、そこらへんはこれから学んでくれればいい」

高木「それより、この前、Mステに竜宮小町が初出演したんだけど、いやー、実に最高のライブだったなあ!
   録画してあるから後で観るかい? あ、うちは口パクで歌わないよ! 全部、生で歌ってるからね!」

高木「おっと、話が脱線してしまったな。いやー、私の悪いクセだ。いけない、いけない
   とにかく、律子くんはその3人のプロデューサーを務めている
   プロデュース業でわからないことがあったら、彼女に訊くといい」

P「はあ……い、いや、そうじゃなくてですね、
  この業界のこと全く理解していない、素人同然の俺に
  いきなり9人全員プロデュースしろといわれても荷が重すぎます 
  せめて、俺も3人くらいから……」

高木「キミぃ! 弱気になってはいかん! キミは私が連れてきた男だ! 大丈夫、自信を持ちなさい!!」

P「あ、はい…い、いえ。ですが……」

高木「アイドルたちを任せたぞ! 彼女たちの未来はキミの力にかかっている!! それではしっかりと頼むよ!」ハッハッハ…

P(い、行ってしまった……しっかりとプレッシャーをかけて)

P(9人? 俺が? 一人で? 9人全員をプロデュース!!?)

P「  」顔面蒼白 サーッ

?「プロデューサーさん」チョンチョン

P「うわっ!!!」ビクッ

?「わっ、驚き過ぎですよ」

P「あ、ああ、すまない。えっと、キミは……」

春香「天海春香です。プロデューサーさん、これから一緒に頑張りましょうね!」

P「こちらこそ……みんなも、よろしく頼む……」

ヨロシクオネガイシマス! ウッウー アフゥ…

P(9人……)

――――

P(765プロに入社して2か月が経った)

P(この2か月、律子や音無さんの助けを借りながらも
  身を扮して必死に働いてきたが、全くの成果を上げることができなかった)

P(アイドルの売り込み、オーディション、営業に走り回る日々。しかし……)

P「今週の予定は貴音と響の地方ロケだけ……」

P(くそ……だから言ったんだ。俺じゃあ力不足だって
  なんだよ9人って、一人だって目が回るってのに……!!)

高木「キミぃ!」

P「し、社長!?(なんだ? まさか締め上げられちゃう!?)」ビクッ

高木「今月もお疲れ!」つ給与明細

P「あ、ありがとうございます(ビックリした。心臓止まるかと思った)」

P(今月の給料……)ゴクリ

ビリビリ ペラ

P(手取り20万……今日まで毎日、深夜まで働き、まだ一度も休みがないってのに、たったのこれだけ……)

P(とんでもない所に就職しちゃったな
  芸能界ってやっぱ俺みたいな凡人に勤まるような生半可な場所じゃない)

P(限界だ……俺には向いてなかったんだこの仕事。なんだよティンときたって)

P(もう、辞めてしまおうか……)

春香「プロデューサーさん」ヒョコッ

P「お、おお、春香、どうした」アセアセ

春香「クッキー焼いてきたんです。よかったら食べてください」

P「ああ、ありがとう。それじゃあ、遠慮なく……」サクサク

P「おいしい……! すごくおいしいよこれ」

春香「本当ですか? 嬉しい!」

P(そういえば子どもの頃、おふくろがよくクッキーを焼いてくれたっけ)シンミリ

春香「……よかった、プロデューサーさん笑ってくれて」

P「え?」

春香「最近、なんだか元気、少ない気がしたから」

P「……」

春香「みんなも心配してましたよ。あまり無理をしないでくださいね」

P(……春香)

P(このまま本当に辞めてしまってもいいのか)

P(竜宮小町に人気があるとはいえ、赤字続きの765プロを支え続けるだけの力はおそらくない
  このまま、伊織たちにおんぶに抱っこでは間違いなくうちの事務所は倒産するだろう)

P(もし、そうなったら、俺はともかく、春香たちはどうなる。他の事務所に移籍してもらえるのか)

P(なにより、トップアイドルになるという彼女たちの夢が潰えることになってしまったら、俺は……)

P「…………」ギリッ

――1か月後――

P「それでは収録に行ってきます」

小鳥「はい、気を付けていってらっしゃい」

P(やよいと真美の幼児向け番組の収録が終わったら、次は貴音のサスペンスドラマの撮影)

P(そして、まことの音楽番組のバックダンサーとしての出演)

P(よし、よし……相変わらず小さな仕事しか貰えないけど、数は確実に増えている)

P(それにアイドルたちの特性も理解出来てきた)

やよい「うっうー! みんな、上手にお歌を歌えましたねー」

真美「んっふっふ~、でも次はもっとスピードが早くなるよー! ついてこれるかなー?」

幼児「これるー!!」キャッキャ

~~♪

P(やよいに幼児向けの教育番組はうってつけだな
  やよいには幼い弟や妹がいるから、幼児の扱いにも慣れている
  純心でどんなことにも一生懸命、そのひたむきさには好感が持てる)

P(真美は従来の明るさとノリのよさで、
  幼児向け番組はもちろん、バラエディとの親和性が抜群だ
  それに大御所と共演しても物怖じしない度胸がある
  特に亜美と組んで活動する時は力を存分に発揮できる)




P「すまないな貴音、台詞もない端役でしかも死体役だなんて」

貴音「いいのです、プロデューサー。これもかけがえのない貴重な経験
   たとえ、どんな仕事でも真摯に誠実にこなすまで
   演じてみせましょう、悲しき運命を迎えた死に体を!」

P(貴音はアイドルたちの中でもプロ意識が高く、
  どんな仕事もそつなくこなす実現力がある
  それにミステリアスな雰囲気の中にもチャーミングで可愛いらしいところもある)

監督「本番いってみよー! 3・2・1(キュー)」 

貴音「  」グッタリ

ぐー

監督「ん? なんだ今の音」

貴音「すみません。わたくしのお腹の音です」

P「……」

真「プロデューサー! どうでしたか、ボクのダンス」

P「ああ、練習の成果が存分に発揮できていた。すごくキレのあるいい動きだったよ
  一緒に踊っていたプロのダンサーに全く負けていなかった」

真「本当ですか? へへっ、やっりぃ~!」

P(真は運動神経抜群で、ダンスはアイドルの中でも響と同じく一歩抜きんでている
  はじめは彼女の要望通り、女の子らしい仕事を振っていたが……)

人気女性アイドル「あ、あの! 菊地さん」

真「? はい」

人気女性アイドル「バックダンサーを務めてくださってありがとうございました!
         菊地さんのダンスが一番素敵でした!!」

真「ありがとうございます。ボクの方こそ、あなたのバックダンサーに選ばれて光栄でした」ニコッ

人気女性アイドル「  」ズキューン

人気女性アイドル「一目見た時からあなたが好きでした! 私と付き合ってください!!!」

真「……」

真「アノ、ボク、オンナノコ……デス」

P(どうにも女性ファンの方が多いようで、本人の願望に反して男役の仕事の方が向いてるみたいなんだよなあ)

P(今週はあと、響と雪歩の動物レポ、春香と千早の料理番組、美希のグラビア撮影)

P(文字通り真っ白だったホワイトボードの予定表がぽつぽつと仕事で埋まりつつある)

P(いつか、これを全部、仕事の文字で埋め尽くしてやる)

P(そして、彼女たちをトップアイドルに――)


――――


P「えっ!? 竜宮小町のアルバムがミリオン達成!!?」

小鳥「そうなんですよ! 先ほど社長に連絡がきたらしくて」

P「本当なのか、律子」

律子「え、ええ。なんだか実感わかないですけど……」

小鳥「おめでとうございます律子さん!」

P「お、おめでとう律子……」

律子「ありがとうございます///」

P「……」

高木「ウオッホン! 諸君はすでに知っていると思うが、
   竜宮小町のアルバムが百万枚セールを突破した。おめでとう!」

やよい「うっうー! すごいですー。おめでとう、伊織ちゃん!」

伊織「ふ、ふん! 別に大したことじゃないわ。私たちの実力なら当然の結果よ!」

真美「とかいって、顔はチョーニヤけてますぜいおりん?」ツンツン

亜美「真美、真美。今のいおりんの言葉を訳すと
  『最高! こんなに嬉しいことはないわ!!』になるんだよ」

伊織「だ、だまらっしゃい……///」ニヨニヨ

高木「そこで提案なんだが、どうだろうか。ミリオン達成記念に初の全国アリーナツアーをやってみないかね」

律子「全国アリーナツアー!?」

高木「うむ、この絶好の機会を逃す手はない。竜宮小町のさらなる躍進に繋がるだろう」

春香「すごい! アリーナですよ、アリーナ!」

あずさ「大きな会場でライブができるなんて、本当に夢みたいだわぁ。それも全国なんて……」

響「自分も早くステージに立って、歌とダンスを披露したいぞ!」

貴音「響、その願い、わたくしたちがこれからも精進を続ければ必ずや叶いますよ」

まこと「くぅ~、いいなあ。ボクもフリフリの衣装着て大きなステージに立ってみたいなあ」

エー マコチン ゼッタイニアワナイヨー ナンダトー キャッキャ ワイワイ

千早「……」

律子「伊織、あずささん、亜美。これからもっと忙しくなるわ
   初のアリーナツアー、最高のものにするために万全の準備で挑むわよ!」

伊織「当然よ! 必ず成功させてみせるわ!」



P(…………)

P(今は仕事を確実にこなす。それだけを考えろ)

雪歩「あ、あのっ、プロデューサー。お茶を…どうぞ……」コトッ

P「ん、ああ、ありがとう雪歩。いつもありがとな」ニコッ

雪歩「!」

雪歩「しししし失礼します!!」ピュー

P「……」

P(俺、雪歩に嫌われてるのかな)


――――


響「プロデューサー」

P「どうした響」

響「もう少しで収録が始まるってのに、雪歩がいないんだぞ」

P「そういえば……どこにも見当たらないな」キョロキョロ

響「雪歩、今日のロケ、怖がってたからな……」

P「え? それはどういう……」

響「雪歩は犬と男の人が苦手なんだ。ほら、今日のロケは大型犬がいるし、スタッフも男性ばっかり」

P「なぬっ!?」

P(ぬかった! 雪歩は動物を愛でるイメージがあったが全くの逆だったのか。くそ、人選ミスったか
  それに、確かに今日のスタッフは男だらけというか、なぜかみんなガタイがいい……)

スタッフ♂(あ~ら、765プロのプロデューサー、なかなかいいお尻してるじゃなぁい?)ゴクリ

P「!」ゾクッ

P「ゆ、雪歩を探してくる! 響はここで待っていてくれ」タタッ

P「雪歩~、おーい、どこだー……ん? おっと危ない、なんでこんな所に落とし穴が……」

P「やけに深いぞ……って、雪歩!!?」

雪歩「はうっ? プロデューサー!?」

P「雪歩、大丈夫か!? すぐに助け出してやるからな!」

雪歩「ちっ、違うんです。この穴、私が掘ったんです」つスコップ

P「えっ!!?」

雪歩「私、落ち込んだりすると穴掘って埋まる癖があるんです……」

P「……わかった。とりあえず出てきてくれないか。ほら、手を貸して」ヨイショ

雪歩「ごめんなさい。心配かけました」シュン

P「いや、俺の方こそ悪かったよ。響から聞いたよ。犬と男が苦手だって
  そうとも知らず、雪歩に動物ロケをさせるなんて」

雪歩「い、いえ! プロデューサーは悪くありません。今まで黙っていた私の責任だし……
   それに、このロケで苦手を克服できたらと思ってこの仕事を受けたんです」

雪歩「でも、やっぱり怖くて……」

雪歩「臆病ですぐ落ち込んじゃう性格を直したくてアイドルになったけど、
   やっぱり私じゃ無理なのかな……」

P「……」

P「雪歩は俺も怖いか」

雪歩「……はい」

P「でも、雪歩。俺を怖がりながらも、いつも美味しいお茶を入れてくれるじゃないか
  今だって、こうして俺ときちんと話が出来ている」

雪歩「でも……」

P「それに、実は俺もな……犬って苦手なんだ」

雪歩「えっ、そうなんですか?」

P「ああ。ていうか、動物全般が苦手なんだ。あいつら愛くるしい姿をしているが、
  口を開けば牙があるし、鋭利な爪だってある。正直、怖い」

雪歩「わ、わかりますぅ! グロテスクですよね!」

P「ぐ、グロ……まあ、だから、その、俺も動物への苦手意識をなくそうと思う
  俺も頑張るから雪歩も一緒に頑張ってみないか」

P「雪歩なら変われるよ。臆病なら、一歩ずつでいい。少しずつ、少しずつ自分を変えていこう」

雪歩「プロデューサー……」

雪歩「……わかりました。私、やってみます!」

P「いい子だ。よし、戻ろう。もう少しで収録が始まる
  が、その前に穴を埋めよう。誰かが落ちたりしては危ない」

雪歩「あ、はい」つスコップ

響「雪歩! どこ行ってたんだ。心配したんだぞー」

雪歩「ごめんなさい響ちゃん」

P(よ、よし……)ゴクリ

P「雪歩! ほら、犬! 大きいけど、け、結構大人しいぞ!」ナデナデ

P「よーしよし、いい子だなあ……!」ガクガク

響「プロデューサー? 身体がすごく震えてるぞ」

雪歩(プロデューサー……)

雪歩「わ、私も触ってみます! えい! あ、触れた……触れますぅ!」ダクダク ナデナデ

P「ああ! 触れてるぞ! 俺たち!!」ダクダク ナデナデ

響「二人とも、なんか滝のように汗が流れてるぞ!!」

犬(なんだこいつら。手がべっとべとだぞ。拭いてから触れよ……)

響(……と、思ってる顔だぞ、これは!)ハッ!

響「二人とも、この子を撫でるなら手を拭いてからにした方がいいぞ!」

犬(ほう…このお嬢ちゃん、できる……!)

雪歩「あっ、あ、そうだね。ごめんね、犬さん」フキフキ

P「ぜえ、ぜえ……ひ、響。雪歩のサポートよろしく頼むな」

響「う、うん、任せて!」

P(響は動物と心を通わせるのが上手だからな。とりあえずは大丈夫か)

P(それにしても、雪歩と自分が少し重なって見えた。一歩ずつ、少しずつ自分を変える、か)

美希「ねえ、律子」

律子「律子?」ジロリ

美希「…さん。ミキも竜宮小町に入れてほしいな」

律子「どうしたの急に?」

美希「ミキもステージに立って、ファンの前で歌って踊ってキラキラしたいの」

律子「……美希、竜宮小町は新メンバーを迎える予定はないの
   伊織とあずささんと亜美のバランスは非常によく保たれているから」

律子「それに美希にはプロデューサーがいるでしょ
   プロデューサーも今、あなたたちが一日でも早くステージに立てるよう、頑張ってくれてるわ
   美希がきちんと仕事をこなして、レッスンを怠らずに続ければ、きっと望みは叶うわよ」

美希「……わかったの」

P「……」

春香「プロデューサーさん? どうしたんですか、壁からこっそり覗いて」

P「い、いや、なんでもないんだ。よし、そろそろ収録に行こう。千早を呼んできてくれ」

スタッフ「休憩入りまーす」

P「お疲れ、二人とも」つドリンク

春香・千早「ありがとうございます」

P「春香はお菓子作りが得意なだけあって、料理の手際がいいな。番組Pも誉めてたよ」

春香「本当ですか? えへへ、嬉しいな」

P「千早は表情が少し固いかな。無理に笑えとは言わないが、次は明るい表情を意識して臨んでみようか」

千早「はあ……」

P(うーむ)

P(春香は他のアイドルに比べて特筆すべき特徴がないというか、
 『特徴がないのが特徴』というか、素直に言えば“普通の女の子”なんだけど
  明るく前向きな性格に、少し天然が入り、ドジを踏んじゃうところなんか、
  これぞ正統派アイドルという感じがする
  どんな仕事も春香は対応してくれるし、番組スタッフからの受けもいい)

P(対して千早は、どうも仕事を軽視している節が見受けられる
  音楽関係の仕事ではそれなりに力を入れてくれるんだけど
  さて、どうしたものか)




春香「あれ? 千早ちゃんどこ行ったんだろ」キョロキョロ

P「どうした春香」

春香「プロデューサー、千早ちゃん見かけませんでした? もう少しで収録再開するのに……」

P「いなくなったのか。わかった。俺が探してくる。時間までには連れて戻るから」タッタッタ

P(雪歩の次は千早か)

P「ん、遠くから歌声が……ここの倉庫か?」ギィィッ

P(いた……千早)

千早「~~♪ ~~~♪」

P(とても十代とは思えない歌唱力。貴音やあずささんも千早と同等以上の歌唱力があるけど、
  千早の歌には心を震わせるような魅力がある。きっと、これが才能ってやつなんだろうな)

千早「~♪ ……ふう」

パチパチパチ

千早「!」

千早「プロデューサー、いらしてたんですか」

P「よかったよ、すごく。千早は歌が好きなんだな」

千早「……私には、歌以外になにもありませんから」

P「……今の仕事は嫌いか?」

千早「嫌いというより、興味が持てないんです。歌うためにこの業界に入ったのに
   料理なんて、歌になんの関係もないことをやって意味があるのかって」

千早「私は歌手になりたいんです。アイドルはその足掛かりのつもりでした
   でも、今の私は歌も歌わせてもらえない……それが悔しくて」

千早「竜宮小町は音楽活動をメインに、アリーナツアーまで決めているというのに、
   片や私はこんなところで足踏みしている」

P「千早……」

千早「一度、律子に直談判したことがあります。竜宮小町に入れてほしいと
   結局、断られてしまいましたが……」

P(そういえば、いつか律子が言ってたな
  私には千早の歌を昇華させる自信がないって。あれは、こういうことだったのか)

P「……俺も悔しかったよ
  竜宮小町がアルバム百万枚を売り上げ、加えて全国アリーナツアーときたもんだ
  本来、仲間の成功を喜ぶべきなのに、口では賛辞を送っても、内心は焦り、妬んだ」

P「俺と律子じゃ、キャリアが違うし、プロデュース術もあっちの方が遙かに上
  頭では理解出来ていても、なかなか割り切れなくて」

P「でも、ここで諦めるつもりはない。俺はみんなをトップアイドルにしたい
  それは千早、お前もだ」

千早「……」

P「千早はまだ若い。まずはトップアイドルを俺やみんなと一緒に目指してみないか
  それからでも、歌手を目指すのは遅くないんじゃないかな」

P「どんな小さな仕事でも、いくらプライドに反する仕事でも、
  確実に一つずつこなしていくしていくことが、
  みんなを、千早をステージに立たせるための、一番の近道だと俺は思っている」

P「そのためには千早の力が必要不可欠なんだ」

P「頼りないプロデューサーかもしれないけど、どうか、俺を信じてほしい」ペコリ

千早「……」

千早「そろそろ戻りましょう。収録が再開されます」

P「千早……」

千早「あ…明るい表情、善処してみます……///」

P「千早!」

P「美希、今日の撮影は有名なカメラマンが担当してくれる
  あまり失礼がないようにな。って、聞いてるのか美希」

美希「zzz」

P「……」




パシャ パシャ

カメラマン「星井くん、次は切なそうに微笑んでみようか」

美希「えー、今そんな気分じゃないの」

P(み、美希……!)

美希「それより、こっちの表情がいいと思うな」

カメラマン「!」

カメラマン「ああ! いいよその表情! すごくいい!」パシャ パシャ

P(…………)

P(3か月経った今も美希の力量だけは測りきれずにいる)

P(何事にもモチベーションが低く、面倒くさがりでマイペース
  だが、独自の感性があるのか、目を見張るような成果を上げる時もある)

P(中学生とは思えない抜群のプロポーション。ビジュアルは765プロの中で随一)

P(歌もダンスも筋がいい。だが、レッスンはいつも軽く流そうとするきらいがある)


美希『美希もステージに立って、ファンの前で歌って踊ってキラキラしたいの』


P(本人もやる気がないわけではないはず、と思う。なにか本気にさせるきっかけさえあれば……)

P「ふう、そろそろ昼飯にするか……」ゴソゴソ

P「いただきます」モグモグ

小鳥「ふふ、プロデューサーさんの手作りおにぎりって、いつも大きいですよね」

美希「……」ピクッ

P「ええ、この仕事は体力いりますからね。沢山食べて力つけないと」

小鳥「あら、その苺ババロア美味しそう」

美希「…………」ピクッ

P「ああ、これ、コンビニの新商品らしくて、試しに買ってみたんです」

P「ん?」

美希「……」キラキラ

P「ど、どうした美希」

美希「そのおにぎりと苺ババロア……すごくおいしそうなの」ジュルリ

小鳥「美希ちゃんの大好物なんですよ。おにぎりと苺ババロア」

P「ああ、そうなのか」

美希「ちょうだい?」

P「え、いや、でも、俺の飯これしか……」

P「!」ティン

P「いいだろう」

美希「!」パアァッ

P「ただし! 条件がある」

美希「条件?」

P「今日のレッスン。本気でやってくれ」

美希「えぇ~。疲れるからヤなの」

P(ぬ、さすがに飯くらいじゃ釣れないか)

P「じゃあ、一週間分の苺ババロアもつけると言ったら?」

美希「やるの!」

P(……簡単な子だな)

P「交渉成立だな。ほら、あげるよ。あ、おにぎり食べかけだけど、それでもいいのか」

美希「?」

美希「ミキ、そんなの気にしないよ? いただきまーす」パクッ

美希「!」

美希「ああっ、すごい! 中にソーセージが入ってるの! こんなのミキ、考えもしなかった!!」パクパク

美希「おいしい! すごくおいしいの!!」パクパクパクパクッ!!

P「……美希、食べながら喋るな。ご飯粒が飛ぶ(俺の顔に……)」ピトッ ピトッ

P「よし、じゃあ、約束通り、美希の本気を見せてもらおうかな」

美希「いいよ。今日はおにぎりと苺ババロアのおかげですごくいいダンスが踊れそう! アハッ」

真「なに? おにぎりと苺ババロアって」

P「それではトレーナー、お願いします」

トレーナー「はい。みんな、今日の振りつけは難易度が高いわよ。しっかりついてきてね」

トレーナー「ミュージックスタート!」

~~~♪

美希「♪」

P「……」

P「…………!」

P(こ、この子は……!!)

――2か月後――

DJ『優勝は、チーム765!』

響・真「!」

真「や、やった! やったよ響!!」

響「真ー! 今まで頑張ってきて本当によかったぞー!!」ウワーン

P「はい、はい、そうです。チーム戦で優勝、個人戦では響が優勝で真が準優勝です」

P「事務所に戻り次第、あらためて報告します。はい、失礼します」ピッ

真「あっ、プロデューサー! 見てくださいこのトロフィ!! クリスタルが綺麗です!」

響「すっごくでっかくて重たいぞ!」

P「……」ガバッ

響・真「!」

真「ぷぷぷプロデューサー?///」

響「プロデューサー、せ、セクハラだぞ……///」

P「おめでとう、二人とも。本当に……」

響・真「……」

P「お前たちは俺の誇りだよ」ウルッ

真「へへ……///」

響「自分、完璧だからな///」

P「さ、インタビューを済ませて事務所に戻ろう。みんなが二人を待っている」

高木「ウオッホン! 菊地くん、我那覇くん、ダンス全国大会20XXガールズ部門、
   チーム戦優勝および、個人戦優勝、準優勝おめでとう!」

響・真「ありがとうございます!」

ヒビキン マコチン オメデトー アリガトー マコトチャン オメデトー ヒビキ オメデトウゴザイマス オイワイノ ケーキ デスヨ ケーキ

律子「やりましたね、プロデューサー」

P「ああ。響も真も本当によくやってくれたよ
  仕事の合間を縫って厳しい練習にも耐えてくれた
  これも彼女たちの大きな財産になる」

小鳥「プロデューサーさん、それからもう一つ、いい報せがありますよ」

P「いい報せ?」

小鳥「○○社のスポンサーとしての協賛が得られました」

P「本当ですか!?」

小鳥「ええ。貴音ちゃんが出演したCMのおかげでコスメの売上が倍増したらしくて
   どうやら、それが効いたみたいです」

律子「これで、あとは××会社の協賛を得るだけですね
   あそことは以前から懇意にさせてもらっているし、付き合いも長いですから、
   ほぼ確定的だと思います」

小鳥「そろそろアイドルたちに教えてあげてもいいんじゃないですか」

P「……いや、万が一ということもあります。アイドルたちをぬか喜びさせたくない
  それに今、雪歩がドラマ初出演で気持ちが少し不安定ですから
  変にプレッシャーかけて失敗させたくありませんし、とりあえずはまだ伏せておきます」


P(この2か月、アイドルたちの目覚ましい活躍により、世間から脚光を浴びる機会が多くなった
  やよいは料理の冠番組を持ち、あの気弱な雪歩がドラマのレギュラー出演)

P(メンタルの弱さは相変わらずだが雪歩の成長は特に著しく、
  他のアイドルたちも自身の成長を肌に感じるのか、以前よりも一層、仕事に励むようになった)

P(ただ一人、美希だけは未だに燻っている……)

トレーナー「ここのステップ意識して! タン・タン・タタタン・タン! 
      そう! 真くん重心をずらさない!」

真「はい!」

P(……)




トレーナー「オーケー。今日はこのくらいにしておきましょう。みんな、お疲れさま」

アイドル一同「ありがとうございました!」

P「みんなお疲れ」つドリンク

真「わあ、ありがとうございます!」

貴音「プロデューサー、どりんくはまだありませんか」

響「貴音、飲むの早っ!」

美希「あふぅ……」

トレーナー「プロデューサー。ちょっと、お話が……こちらへ」

P「はい……(やっぱりか)」スタスタ

トレーナー「週末のダンスイベント、美希ちゃんはメンバーから外した方がいいと思います」

トレーナー「最近の美希ちゃんのモチベーションの低さは目に余ります
      ダンスの完成度は他の3人と比べても遜色ありませんが、
      情熱や意志が全く感じられません」

トレーナー「このダンスイベントは××会社が主催と聞いています
      765プロが懇意にされているとはいえ、
      あんなダンスを見せられては、間違いなく失望されるでしょう」

トレーナー「幸い、一人抜けたくらいで、このダンスに影響はありません
      フォーメーションの修正も容易です」

P「美希は外しません」

トレーナー「ですが!」

P「美希なら大丈夫です」

トレーナー「……」フゥ

トレーナー「……わかりました」クルッ


真「プロデューサー、トレーナーと何の話をしていたんですか」ヒョコッ

P「ただの世間話さ。さあ、みんな、今日はもう遅い。車で送るから帰宅の準備をするんだ」

響「送ってくれてありがとうプロデューサー! おやすみなさい!」

P「ああ、おやすみ」

P(あとは美希を送るだけだな)

美希「……」

P(おや、珍しく眠ってない)

P「……美希、週末のダンスイベントだけど、
  ××会社という、うちの事務所と仲のいい会社が主催するんだ
  まあ、だから、完璧なダンスを披露しろっていいたいんじゃないなくて、
  美希は楽しんで踊ってくれればそれでいいから」

美希「……うん」

P「どうした美希。ここ最近、あまり元気がないように見えるぞ」

美希「ねえ、そこの人。ミキはいつになったらステージに立てるの」

P「……そろそろ、プロデューサーって呼んでくれないか、美希」

P「それに、ダンスイベントはステージで踊るんだぞ」

美希「そういう意味じゃないの。ミキが、ミキだけのステージで歌って踊ってキラキラできる場所をいってるの」

P「それは美希が仕事もレッスンも頑張るようになればすぐに立てるようになるさ」

美希「またそれ……もう聞き飽きたの」




美希「……」ガラッ

P「美希、また明日な。おやすみ」

美希「……」バタン ツカツカツカ…

P「……」

P「はあ……」

小鳥「どうしたんですか、溜息なんてついて」

P「少し、美希のことで……」

小鳥「最近の美希ちゃん、元気ありませんものね」

P「やっぱり、美希にだけ打ち明けた方がいいでしょうか」

律子「いいえ、その必要はありません。むしろ叱ってやるべきです」

P「律子?」

律子「プロデューサーは美希に甘いですよ
   あの子は筋がいいからどんなことも容易に出来てしまうが故、
   それが仇となって努力することを放棄しています
   いつか壁にぶつかった時、美希が挫けないように今から鍛えておくべきです」

P「しかし……」

律子「しかし、じゃありません。そもそもプロデューサーはアイドルたちを甘やかしすぎ(ry」

P(美希……)

小鳥(プロデューサーさん、全く聞いてない……)

――ダンスイベント当日――

prrrrr...

P「ん? 真から」ピッ

P「もしもし、真か」

真『プロデューサー、美希、そっちにいませんか』

P「事務所に? いや、いないけど……そっちに行ってないのか?」

真『はい……もう少しでリハーサルが始まるんですけど……
  ああ、もう! ボクたちどうしたらいいか!』

P「真、落ち着け」

P「主催者側には俺が電話をかけて美希はリハーサルには出れないと伝えておく
  真たちはとりあえず3人でリハーサルを始めてくれ
  本番までには美希をそっちに連れていくから」

真『わかりました!』

ブッ ツー ツー ツー

小鳥「もしかして美希ちゃん、まだ会場に出向いてないんですか」

P「はい……とりあえず、美希の実家にかけてみます」ピッピッピ……

P「はい、はい。そうですか。わかりました。はい、失礼します」ガチャッ

律子「どうでした?」

P「出かけると言って家を出たらしいんだけど、どこへ行ったかまではわからないって……」

律子「なにをやってるのよ、あの子は……!」

小鳥「本番まであと2時間ですね……」

春香「どうしたんですか」ヒョイ

P「春香、美希が普段行きそうな場所とか知らないか」

春香「美希の行きそうな場所? うーん……確か、よく何とか先生に会いに行くって」

律子「何とか先生? 学校の? トレーナーの?」

春香「カモとか言ってたような……」

P・律子・小鳥「カモ???」

P「カモって……鴨?」

小鳥「さすが美希ちゃん……さっぱり意味がわかりませんね」

律子「とりあえず、手分けして探しましょ。春香はここにいて
   もし美希が事務所に現れたら縄で縛ってでもここに留まらせておいて
   抵抗したらお尻を100発くらいぶってもいいわ……抵抗しなくてもぶちなさい」ギラッ

春香「は、はい……」ゾワッ

小鳥(律子さん、怖い……)ピヨ

P「とりあえず鴨のいる場所を検索したら、3か所ヒットした」つ地図

律子「じゃあ、私は東の方を探します」

小鳥「私は西を」

P「俺は北を探します。見つけたら携帯に連絡を」ダッ




美希「あふぅ」

美希「先生、人生、上手くいかないの」

カモ先生「……」

美希「ミキも先生みたく、楽してプカプカ浮きながらトップアイドルになりたかったけど
   そうはうどんがおろさ…そうはとんじる……まあ、いいや」

カモ先生(そうは問屋が卸さない……)

P(美希! いた……まさか、本当に鴨だったとは)ゼェ ゼェ

P(あまり時間はないが、車を使えばぎりぎり間に合う)

P「美希」

美希「!」

美希「そこの人……」

P「探したよ。さあ、イベント会場まで行くぞ。本番がもうすぐ始まる」

美希「行かない」

P「美希……」

美希「ミキ、アイドルやめる」

P「……トップアイドルになる夢を諦めるのか」

美希「トップアイドルなんてなれないよ
   そこの人も律子も、頑張ればいつかなれるなんて嘘ばっかり」

P「嘘じゃない。現に大きな仕事は増えてるし、
  やよいや雪歩なんて自分の番組やドラマ出演を果たしている
  美希だって本気を出せば」

美希「もういい! 聞きたくないの!!」ダッ

P「まっ、待ってくれ美希!!」ダッ

P(は、速い! なんでヒールであんなに速く走れるんだ!?
  距離がどんどん広がっていく! このままでは見失う……!)

P(くそっ、諦めてたまるか!! 俺は美希を、美希を!!)

P「あっ! あんな所に美味しそうなおにぎりが沢山!!」

美希「!!」ピタッ

美希「どこ? どこなの!?」

P「捕まえた!!」ガシッ

美希「ああっ!?」

P(さすが美希、こんな簡単な手に引っ掛かるとは。ちょっとこの子の将来が心配になってきたぞ……)

P「美希、話を聞いてくれ!」

美希「離して!」

P「お前なら絶対トップアイドルになれる!! ここで諦めないでくれ!!」

美希「ヤっ! ミキ、アイドルなんてやめるの! もう決めたの!!」

P「お前のファンはどうなる!? お前がアイドル辞めたらファンが悲しむぞ!!」

美希「ファンなんていないよ! ミキ、まだなにもしてないのに!」

P「ファンならここにいる! 俺がお前のファンだ!!」

美希「!」

P「……」ゼェ ゼェ

美希「なに、言って……」

P「覚えてるか、美希。いつの日だったか、
  俺がおにぎりと苺ババロアを引き換えに、レッスンを本気でやれと持ちかけたことを」

美希「……」コクッ

P「あの時の美希のダンスを見て、歌を聴いて、俺は心の底から感動したんだ
  初めてだったよ、こんな気持ち
  胸が込み上げ、涙が溢れそうだった
  そして俺は思った。この子の才能は本物だと
  この子は何百万、何千万人を魅了できる本物のアイドルになれる
  俺はそう、確信したんだ」

美希「……」

P「あの時からずっと俺は美希のファンなんだ」

P「美希には底知れない凄まじいポテンシャルが秘められている」

P「美希だけじゃない。春香や千早も、真も雪歩も、響も貴音も、
  やよいも伊織も、亜美も真美もあずささんも、律子だって」

P「みんなが自分の可能性を信じ、仲間を信じ、努力して、必死に頑張ってきたからここまでこれた」

美希「……」

美希「え……」

P「初ライブがクリスマスなんて、なかなか洒落てるだろ? 会場とるのに苦労したんだ」

P「だけど、ライブのためには××会社の協力が不可欠で、
  今日のダンスイベントは絶対に成功させなければいけばい」

P「アイドルたちの美しさ、かっこよさ、輝きを、魅力を、
  そして765プロは決して竜宮小町だけではないことを、先方に知ってもらう必要があるんだ」

P「そのためには美希、お前の力が必要なんだよ」

美希「……」

P「美希の気持ち次第で、どこだってステージになる、どこでだってキラキラ輝ける
  いつか見せてくれたあの輝かしいダンスを、また見せてくれないか」

P「ステージ上で美希が輝く瞬間を、俺はずっと心待ちにしているんだ」

P「プロデューサーとして、一人のファンとして頼む」

P「どうか、俺やみんなと一緒に、トップアイドルを目指してくれ……」

美希「……」

美希「おにぎり」

P「え?」

美希「今日のダンスイベントが終わったら、また、食べさせてほしいな」

美希「あのおっきな…ソーセージ入りの…おにぎり……」

P「美希……ああ、お安い御用だ」

美希「アハッ!」

P「よし、行こう! 近くに車を用意してある」ダッ

カモ先生(美希、いい人に巡り合えたようだな。その出会い、大切にするのだぞ)

あ、やべ。訂正

>>38の一番上の行に

P「……12月24日に◎◎アリーナで765プロのオールスターライブを開く」

これが入る

真「美希!」

美希「遅くなってごめんなさいなの!」

響「もう、心配したんだからな!」

貴音「さあ、美希。衣装に着替えなさい。わたくしたちの出番はもうすぐです」

美希「うん!」

P「ああ、美希は会場に送り届けた。もう大丈夫だ。それじゃあ」 ピッ

美希「プロデューサー」

P「ん?」

美希「ミキのダンス、ちゃんと見ててね!」

P「ああ、もちろんだ」


~~~~♪


美希「♪」

\キャー キャー/

「あの子たちのダンス、カッコいい!」

「なあ、あの金髪の子……」

「なんて名前だろうな。俺、ファンになっちゃいそう」


P「ほらな、俺の言った通りだ。こんなにも輝いている……」

やよい「お疲れ様ですー! ただいま戻り……」ガチャッ

真「……」

響「……」

貴音「……」

雪歩「……」ガクガク ブルブル

千早「……」

春香「あ、やよい。お帰り」

やよい「みなさんどうしたんですか? なんだか雰囲気が暗いかなーって」

春香「あはは、ちょっと、ね……」

コトノジュウダイサヲワカッテンノアンタハ!!

雪歩「!!」ビクッ

やよい「?」

やよい「会議室から声がしますね。お客さんがいるんですか」

真美「やよいっち、やよいっち。只今、閻魔さまが降臨なされてるから、
   静かにしておかないとおへそ取られちゃうぜ」

伊織「閻魔はへそ取らないわよ。雷さまでしょうが」

やよい「???」

千早(小首を傾げる高槻さん可愛い……)ホクホク

律子「このダンスイベントはうちの事務所を懇意にしてくれている会社が主催してたのよ!
   間に合ったからよかったものの、もし、先方の反感を買ってスポンサーの協賛を得られなかったら
   12月のオールスターライブの開催が不可能になっていたかもしれないのよ!!」

美希「それもう、プロデューサーから聞いたの」ボソッ

律子「あ゛あっ!?」ギロッ

美希「な、なんでもないのっ。です……」

律子「プロデューサー! 私は散々、忠告しましたよね!? アイドルを甘やかすと痛い目みるって!」

P「は、はい……」

高木「まあまあ、律子くん。もうそのへんにしてあげないか。二人とも反省してるようだし
   それにほら、結果的にスポンサーの協賛を得られたじゃないか
   これも、美希くんたちが頑張ってくれたおかげだ」

美希「アハッ、社長いいこと言うの!」

P(馬鹿! よせ、二人とも……!)

律子「社長は黙ってて下さい!!!! 美希は社長に対しての口の利き方を気をつけなさい!!!!!!!」カッッ

高木・美希「      」

小鳥(……ここから脱け出したい。なぜ、こういう時に限って電話がかかってこない……)

律子「美希! あんたはようやく巡ってきた大きなチャンスを自分で潰すところだったのよ!」

美希「は、はいっ! それはもー、じゅーじゅー承知しているの! です!!」

律子「だいたいあんたはいつも(ry」

伊織「ま、あの馬鹿にはいい薬になったんじゃない」

真「でも、一向に終わる気配がないね。律子の説教」

貴音「かれこれ一時間が過ぎてしまいましたね」

響き「さすがに気の毒になってきたぞ」

亜美「修羅と化したりっちゃんは誰にも鎮められないのじゃー」

あずさ「そうなのよねぇ。前の亜美ちゃんの時も……」

亜美「うあうあー! あずさお姉ちゃん、それは言わない約束っしょー!」

真美「タタリ神よー、鎮まりたまへー」モノノーケータチーダケー

春香「せめて乙事主にしてあげてよ、真美……」

ガチャッ

春香「あ、出てきた」

律子「ふう……まったく」

小鳥(か、解放された……)ズーン

やよい「大丈夫でしょうか、美希さん、プロデューサー……」|д゚)チラッ


P「  」

美希「  」

高木「  」


雪歩「心なしかみんな真っ白ですぅ。なぜか社長まで」|д゚)

亜美「ふっ、いつかの自分を見てるようだぜ……」|д゚)

真美「亜美…よくぞ、生きて……!」|д;)ウルッ

律子「亜美、竜宮のミーティング始めるわよ。他の二人も連れてきて」

亜美「あーい」テクテク

ちょっと休憩
多分日付変わらないうちに再開する

正統派でいいね

律子のメガネ叩き割ってやりたい

こういうの凄い好きよ乙

面白いよ
でも素人のPに9人同時にプロデュースさせるとは
765プロはブラック企業やで~

>>47
どうしたの?叱られて怖くなっちゃったの?

うおお、レスサンクス(´;ω;`)
このまま終わりまでレスがつかなかったらどうしようかと本気で心配だった
ありがてえ……ありがてえ……!

続き再開

千早「プロデューサー」

P「おお、千早。どうした」プルプル

千早「大丈夫ですか。生まれたての小鹿みたいに足腰、震えてますが」

P「まあ、なんとか。それで、なにか用事か」

千早「……盗み聞きするつもりはなかったんですが、その、聞こえてきまして」

千早「ライブが、どうとか……」

P「ああ、もしかして、みんなも聞こえちゃったかな」

千早「はい。みんな、こっちを凝視してますからおそらく……」クルッ

アイドル一同「……」ジー ソワソワ

P「……じゃあ、みんなを集めようか」

春香「オールスターライブ!?」

P「ああ。そこでお前たちのライブ初披露となる」

真「や、やった……! あ、あのボク、フリフリの衣装が着たいです!」

雪歩「真ちゃん、それは絶対ダメ! そんな得しないこと私がなんとしても阻止するよ!!」

真「ええっ!?」

やよい「クリスマスにライブだなんて素敵ですー!」

響「初めてのライブがおっきな会場なんてすごいぞ!」

P「みんな、喜んでるところに水を差すようで悪いが、
  おそらく、このライブに来てくれるお客さんの大半は竜宮小町が目当てだ」

真美「う゛」

P「この中で最も知名度があるのは雪歩、時点でやよい、その次は貴音、
  他のみんなはほぼ同率といったところか
  とはいえ、真と響はダンス大会優勝の影響で仕事の依頼が急増してるし、
  ライブまで3か月あるから、春香たちもこれからの頑張り次第では知名度が変動するだろう」

P「だが、それでも竜宮小町の人気には劣るだろうな」

P「伊織たちがこれまで積み重ねてきた2年は、俺たちが頑張ってきたこの1年よりも遙かに重い
  竜宮小町の力は本物だ。IA大賞の最有力候補と言われているのは、みんなも知っているだろう
  なにせ、このCD不況と言われるなかで、特典一切なしのアルバムを百万枚売り上げたんだからな
  並大抵の努力で実現できることじゃない」

P「それは仲間のお前たちが一番わかっていると思う」

真「それは、確かに……」

美希「でも、そんなの関係ないって思うな」

春香「美希?」

美希「どんなにデコちゃんたちがすごくても人気があっても、ミキには全然関係ないの
   だって、ミキはデコちゃんたちに負けたなんて一度も思ったことないもの
   ライブで一番キラキラ輝いてるのがミキだって、お客さんたちに教えてあげればいいよ」

千早「私も、歌では誰にも負けるつもりはありません」

貴音「確かに竜宮小町の二年間に及びはしないかもしれませんが、
   わたくしたちの培ってきたこの一年だって決して無駄ではなかったはず
   周りの評価にとらわれず、わたくしたちは今できる最高のぱふぉおまんすを成せばいいのです
   そうすれば、自ずと結果がついてくるでしょう」

響「貴音の言う通りだな! 評価なんて気にしないで、自分は目一杯ステージを楽しむぞ!」

ソウダネ! ウッウー

真美「んっふっふ~、兄ちゃん! 真美たちにオドシはきかんのだ!」

P「ああ、そうみたいだな」

千早(固まってたじゃない、真美……)

P「再来週からライブのリハーサルが始まる。仕事やレッスンと並行して行うから、
  やよい、特に雪歩は今までに経験したことのない過密スケジュールになるだろう
  加えて、貴音以外はみんな学生の身分だから、学生の本分、学業も疎かに出来ない」

真美「うっ、眩暈が……」クラッ

やよい「真美、大丈夫? 頭が悪いの?」

真美「ううっ、やよいっち。ある意味間違ってないから傷つくよ……」

やよい「?」

P「ライブまでの3か月、息をつく暇もなくなるだろうが、体調管理はしっかりと行うようにな」

響「なんくるないさー! 自分、いつだってベストコンディションだぞ! 明日がライブでもいいくらい!」

真「ボクだって! むしろ、ライブだと思うと元気が湧いてきますよ!」

P「それは頼もしい。みんな、最高のライブにしような」

アイドル一同「はい!」

――――

雪歩「き、き、き、き、キス?」

P「ああ。だけど、カメラアングルでキスをしたように見せかけるだけで、本当にはしない」

雪歩「ほっ……」

P「そのかわり、相手役の俳優さんの唇と雪歩の唇を限界まで近づけることになる」

雪歩「やっぱり無理ですー!!」ピュー

P「ああっ、待ってくれ雪歩!」ダッ

律子「あんな調子で男嫌い克服できるのかしら……」

小鳥「でも、プロデューサーさんにはだいぶ打ち解けましたよね、雪歩ちゃん」

千早「……あの、プロデューサーは?」キョロキョロ

小鳥「プロデューサーさんなら、たった今、雪歩ちゃんを追って出てったけど」

律子「なにかプロデューサーに用事?」

千早「少し、相談したいことが……いなければいいです」テクテク…

小鳥(あの千早ちゃんが誰かに相談を持ち掛けるなんて……)

美希「ねえ、小鳥。プロデューサーどこ行ったの?」キョロキョロ

律子「美希もプロデューサーに相談?」

美希「違うよ。これからお仕事で、今日はプロデューサーも一緒だって」

P「ふぅ、なんとか納得してくれた……」ガチャ

美希「あっ! プロデューサー、お仕事行くの!」

P「ああ、そうだったな。それでは美希の同伴に行ってきます」

小鳥「はい、気を付けて」

美希「早く早く!」グイグイ

P「み、美希、腕にしがみつかないでくれ、歩きづらいって……」

ドタドタ……ガチャ バタン……

小鳥「なんだかプロデューサーさん、人気者ですね」クスッ

律子「みんな、プロデューサーを信頼しているんですよ」

小鳥「ええ。それに千早ちゃんも美希ちゃんも随分と変わりましたよね」

律子「それもいい方向に」

律子(私じゃ、きっとあの二人を……)

小鳥「律子さん?」

律子「いえ、私もうかうかしてられないなって」

番組P「よお、お疲れー、Pちゃん」

P「番組Pさん、今日はありがとうございました」

番組P「いやあ、なんのなんの。こっちもいい絵が撮れたし、むしろ感謝してるよ
    美希ちゃん、すごくいいよあの子! まさに百年に一人の逸材ってやつじゃないの?」

P「はは、恐縮です」

番組P「あんな子がいるなら、どうしてもっと早く教えてくれなかったかなー
    また、機会があったら美希ちゃんに出演をお願いするよ」

P「はい、その時はよろしくお願いします。それでは失礼します」




美希「どーだったプロデューサー? ミキ、ちゃんと出来てた?」

P「ああ、もちろん。いい絵が撮れたって、すごく喜ばれたよ
  また美希に仕事をお願いしたいってさ」

美希「アハッ、やったの!」

P(本気を出した美希のポテンシャルは俺の想像以上だった
  たった1か月で雪歩に並ぶ仕事と知名度を獲得してしまった)

P(俺はまだまだ美希を過小評価していたのかもしれない……)

P「よし、千早を拾ってレコーディングに行くぞ」

美希「レコーディング? ライブリハじゃないの?」

P「ふっふっふ……頑張ってる美希と千早にプレゼントだ」

美希「書き下ろしの新曲?」

P「ああ、ライブを記念して先行シングルを発売することになった
  タイトル曲はアイドル全員で歌うんだけど、
  カップリングの2曲を、それぞれ美希と千早のソロで歌ってもらいたい」

P「カップリングだからと手は抜いていない。聴いてもらえばわかるが、
  A面を張れるくらいの素晴らしい曲なんだ
  当然、ライブでも披露してもらうことになる。が、実はこの2曲、かなり難易度が高い
  発売はライブの1週間前、11月末までにはマスタリングを終わらせなければいけない
  それまでに完璧に歌えるようになるのは至難の業だ。だから二人を指名した」

P「千早と美希にはかなりの負担になると思う
  既存の曲に加え、もう2曲、歌とダンスを覚えてもらわなければいけなくなるからな」

P「無理だと思うならやめてもらっても構わない。どうする、二人とも」

千早「やります。やらせてください」

美希「ミキもやる! 自分だけの曲なんて最高なの!」

P「二人ならそう言ってくれると思ったよ。よし、早速始めよう」

――――

小鳥「はあ、今日の朝は冷えるなあ。早く事務所に行って暖まろう……」

ガチャッ

小鳥(あれ、暖房がついてる……消し忘れかしら)

P「あ、音無さん、お早うございます」

小鳥「プロデューサーさん? もしかして、また徹夜したんですか」

P「あー、いや、まあ……その」

小鳥「駄目ですよ、無理しないでください。身体を休ませることも大事だって、
   プロデューサーさんがアイドルたちによく言ってることじゃないですか」

P「それを言われては返す言葉がないですね」

小鳥「もー!」プクー

P(音無さんの怒った顔、可愛いな)

P「……」モグモグ

小鳥「プロデューサーさん、お昼ごはん、カロリーメイトだけですか?」

P「あと、ウィダーインゼリーもあります」チュー

小鳥「それだけで足りるんですか」

P「意外と腹、膨れますよ。それに今は、ご飯を食べる時間も惜しくて」ゴクン

P「おし、ジャケット撮影の打ち合わせに行ってきます」

小鳥「……行ってらっしゃい」

小鳥(前からワーカホリック気味ではあったけど、大丈夫かしらプロデューサーさん……)

やよい「……」

P「ふう……」

P(嬉しいことに新曲の録音が思ったよりも早く終わりそうだ
  みんなのスケジュールを調整して、一度、全員でライブリハをやってみるか)

P「ただいま戻りました」

やよい「おかえりなさい、プロデューサー」

P「おや、やよい。今日は収録現場から直帰だったはずじゃ……」

やよい「プロデューサー、これから家で一緒にお夕飯を食べませんか」

P「やよいの家でご飯?」

亜美「おっと、これは驚き! やよい選手が兄ちゃんをお家にご招待!?」

真美「外堀を埋めずにいきなり天守閣を攻めに行ったー!?」

P「……折角のお誘いありがたいけど、まだ仕事が残ってるんだ」

小鳥「私がやっておきます」

P「音無さん?」

小鳥「この資料をまとめるんですよね」

P「はい……あ、いや、しかし、それまとめるの時間かかりますよ。音無さんに悪いです」

小鳥「プロデューサーさん、やよいちゃんは心配してるんですよ」

P「心配?」

小鳥「ご飯もろくに食べず、深夜まで働き続け、事務所にずっと寝泊まり……
   こんな生活を続ければ、いずれ身体を壊します」

やよい「プロデューサー、栄養のある物を沢山食べて、ちゃんと休んでください
    プロデューサーが私たちのために頑張ってくれているのはすごく嬉しいけど、
    そのせいで倒れちゃったりしたら、私……」

P(やよい……)

P「……音無さん、お言葉に甘えて、資料のまとめをお願いしてもいいですか」

小鳥「はい、もちろんです」

P「それじゃあ今晩、ご馳走になってもいいかな、やよい」

やよい「うっうー! もちろんです!」

P「あっ、でも、アイドルの家に男が上がり込むのはまずいか?
  週刊誌にスクープされたら……」

亜美・真美「……」ニコニコ

P「ん、なんだ二人とも、その笑顔は」

亜美・真美「……」ニコニコ

P「……」




ブウゥゥン……

やよい「プロデューサー、あそこのスーパーに寄ってもらってもいいですか?」

P「ああ、わかった」

亜美「兄ちゃん、兄ちゃん。おやつはいくらまで?」

真美「五百円? 五千円?」

P「……五百円だ」

イラッシャイマセー

P「もやし、いっぱい買うんだな」

やよい「はい、今日はもやし祭りなんです」

P「もやし祭り?」

やよい「そうです。鉄板で沢山のもやしを焼いて、特製のソースを絡めるんです」

P「へえ、それは美味しそうだな。やよいシェフの料理、期待してるよ」

やよい「はい! えへへ///」


P「ん、やよい、野菜ばかりだけどお肉は買わないのか」

やよい「今日は特売の日じゃありませんからお肉は買いません」

P(……しっかりしてるな。そういえば、やよいの家は大家族だったっけ)

P「亜美、真美」ボソッ

亜美「な、なに、兄ちゃん」ビクッ

真美「ちゃんとおやつは五百円内に収めたよ?」ビクビク

P「……」

P「やよいに気付かれないよう、カゴに肉を入れてくれないか
  値段は気にしなくていい。俺が払う
  みんなができるだけ沢山食べれるような量の多いのを入れてくれ」

亜美「兄ちゃん、あんたって人は……」

真美「男の中の男!」

レジのお姉さん「牛カルビ980円」ピッ

やよい「はわっ、うし!!?」ギョッ

P「いいんだ、やよい。今日は俺のおごりだ」

やよい「え、でも、そんなの悪いです!」

P「やよいの気持ち、すごく嬉しかったんだ。そのお礼だよ」

やよい「プロデューサー……」

亜美「今晩はもやしと肉の夢のコラボレーション祭りだね!」

真美「まことに楽しみですなあ!」ジュルリッ

P(その後、亜美と真美と一緒に高槻家で夕飯をご馳走になった
  みんなで食卓を囲み、食べて、笑い、
  もやし祭りはその名に相応しく、最高に美味しかった
  こんなにリフレッシュできたのは765プロに入社して以来、初めてのことだった)

P「ありがとな、やよい。本当に美味しかったよ」

やよい「私の方こそ、お肉ごちそうさまでした。長助たちもすごく喜んでました
    また、みんなで一緒にもやし祭りをしましょう!」

P「ああ、またいつかな。あれ、そういえば亜美と真美は?」

亜美・真美「zzz」

P「……起こさないように車に運ぶか」

P(はしゃぎすぎて疲れたのか、いや、この子たちも仕事とレッスンの日々に
  相当疲れが溜まっていたんだろう。きっと、やよいも……)

P「よっこらせ、と」

亜美「う~ん、骨付きカルビがぁ」ムニャムニャ

真美「肩ロースがぁ」ムニャムニャ

P(夢の中でまだ食べてる……)

P「それじゃあ、やよい。また明日な」

やよい「はい、おやすみなさい」




ブウゥゥン……

亜美・真美「zzz」

P(なんだか親になった気分だな。寝顔が愛らしい
  この子たちのためなら、どんなに辛くても頑張れる……)

――12月・ライブ2週間前――

スタッフ「萩原雪歩さん、クランクアップです。お疲れさまでしたー!」

監督「萩原くん、お疲れ」つ花束

雪歩「わあ、ありがとうござますぅ」

パチパチ ハギワラサン ヒトコトオネガイシマス

雪歩「初めてのドラマ撮影で至らぬ点も多々あったと思いますが
   みなさんのおかげで無事、役柄を演じ切ることができました
   この素晴らしい作品に参加できたことを感謝しています
   本当にありがとうございました!」

ワー パチパチ オツカレー!

雪歩「プロデューサー、見てくださいこのお花、とってもきれいですぅ」

P「ああ。ほんとだな。さあ、あいさつ回りを済ませて事務所に戻ろう
  雪歩を祝いたいってみんなが待ってるらしい」

雪歩「あ、あの!」

P「うん? どうした」

雪歩「……ありがとうございました
   初めてのドラマ出演でわからないことだらけで、
   監督の指導が厳しくて、先輩俳優さんには怒られてばかりで、
   辛くて辛くて、逃げ出したくてたまらなかったけど、でに、
   プロデューサーがずっと私の傍で励ましてくれたから、
   最後まで諦めずに頑張れました!」

雪歩「プロデューサーには本当、感謝しきれなくて、あのっ! 
   言葉では言いあらせないほど、本当にっ!」

P「雪歩、落ち着け」

雪歩「はうっ、ごめんなさい! 私、なんてはしたない……」つスコップ

P「よせ、穴は掘るな。雪歩、やり遂げられたのは全て雪歩の力さ
  雪歩なら必ずやり遂げられるって俺は信じてたよ」

雪歩「プロデューサー……」

P「長い間、よく頑張ったな」

雪歩「///」

また訂正

>>68の雪歩の台詞で

×「辛くて辛くて、逃げ出したくてたまらなかったけど、でに、」

○「辛くて辛くて、逃げ出したくてたまらなかったけど、でも、」

でした。度々申し訳ない

雪歩「……私、2週間後のライブも必ず成功させてみせます。私のためにも、ファンのためにも
   それから……ぷ、ぷ、プロデューサーの…ためにも」

P「ああ、いいライブにしような。24日は雪歩の誕生日でもあるしな」

雪歩「!」

雪歩「知ってたんですか?」

P「もちろん。雪歩は俺の大切なアイドルだからな。あ、そうだ。なにかプレゼントほしいか
  雪歩ならお茶セットとか? あ、こういうの本人に聞いちゃまずいよな、はは」

P(言いながら思ったけど、他のアイドルたちも誕生日を祝ってやればよかったな……)

雪歩「……」

雪歩「……お茶」ボソッ

P「ん?」

雪歩「今度…二人きりで……お茶を、飲みに行きたいです……」ボソボソ

P「二人で? んー、しかし、アイドルが男と二人きりで出かけるのは色々と問題があるしなあ」

雪歩「私、人通りの少ない隠れ家的なお茶屋さんを知ってるんです! そこなら大丈夫です!!」

P「お、落ち着けって雪歩。わかった、わかった。でも、行くのは来年になってからにしよう
  ライブが終わって、一段落ついたら、ゆっくりお茶をしようか」

雪歩「はい! ///」パアッ

P(……今年一番の笑顔だな)

――――

P「千早、今日の公開収録だけど、お客さんがいるというだけで、
  普段のラジオ収録と変わらないから、千早はいつも通りにやってくれればいい」

千早「はい」




DJ「――じゃあ、この曲は765プロのみんなで歌ってるの?」

千早「はい。とても元気になれる曲です
   ライブでも披露するので楽しみにしていただければと」

P(千早、以前よりも自然な笑顔が出るようになった。普段は大人びて見えるけど、
  ああやって笑っているところを見ると、やっぱり年相応の少女なんだよな)




千早「プロデューサー、私のトーク大丈夫でしたか」

P「ああ、問題なかったよ。千早の曲にかける想いがよく伝わってきた。だけど、それより……」

千早「それより?」

P「表情がすごくよかった。笑顔が可愛らしかったよ」

千早「っ、か、からかわないでください」

P「からかってなんかいないさ。感じたことを言ったまでだ。本当に素敵な笑顔だった」

千早「すて……それ以上はもう、なにも言わないでください」

P「言わないよ。気を悪くしたのなら謝る」

千早「いえ」

千早「……」

千早「あの、プロデューサー」

P「ん?」

千早「カップリングの曲を私に歌わせてくれたこと、感謝しています」

P「礼には及ばない。あの曲を聴いた時、まっ先に千早が思い浮かんだんだ
  この曲は千早にしか歌えないって」

千早「私、トップアイドルを目指してみようと思います
   プロデューサーと一緒になら、それが実現出来るような気がするんです」

P「ああ、千早なら必ずなれるさ」

千早「でも、いつか、アイドルの頂に立つことが出来たら、
   その時はアイドル活動を辞めて歌うことに専念したいんです」

P「そっか」

千早「ですが、もし、そうなったとしても、
   その、プロデューサーにはずっと私をプロデュースし続けてほしいです」

P「……」

千早「駄目、でしょうか……」

P「駄目なものか。俺は千早の歌声が好きだよ。千早の歌を沢山の人に届けてあげたい
  そのためなら、千早を輝かせるためなら、俺は協力を惜しまないよ」

千早「……あ、ありがとうございます」

千早「///」

千早「私、プロデューサーに出会えて、その……」モジモジ

P「俺は千早と出会えてよかったよ。これからも一緒によろしくな」

千早「……はい! こちらこそ、よろしくお願いします!」

――――

P「――美希は真とやよいが出て行ったら、次に……美希?」

美希「……なぁに」ジーッ

P「疲れたか。なんだかぼーっとしてるけど」

美希「平気。大丈夫だよ」ジーッ

P「……なあ、最近、美希の視線がすごく気になるんだけど、
  俺になにか言いたいことでもあるのか」

美希「別にないよ?」ジーッ

P「……じゃあ、説明続けるぞ。ちゃんと聞いてるんだぞ」

美希「プロデューサーって付き合ってる人いるの?」

P「えー、今、言いたいことないって言ったじゃん……」

美希「いるの? いないの? いなそーって感じ。絶対にいないでしょ
   むしろ、女の子と付き合ったことがなさそうなの」

P(ぐぬぬ、この娘は……)

P「……プライバーに関する質問はお答えできません」

美希「アハッ、やっぱりいないんだ!」

P「嬉しそうに言わないでくれ。素で傷つく」

P(大学時代、仲良かったあの子……元気にやってるだろうか)グスン

美希「そっか、そっかー」ニコニコ

P「もういいだろ、この話は終わり。説明続けるぞ」

美希「はーい」ウキウキ

――――

トレーナー「ストップ! 春香ちゃん、また遅れてる。ターンを決めたらすぐに腕を伸ばす」

春香「は、はい!」

トレーナー「春香ちゃん、センターは一番お客さんの目が集中するポジジョンだから些細なミスでも目立ちやすいの
      センターを務めるのならもっと精度の高いダンスを意識して踊りなさい」

律子「春香、今日はミスが多いですね」

P「ああ。表情も普段より硬い」




トレーナー「そろそろ時間ね。今日は終わりにしましょう。みんなお疲れさま」

アイドル一同「ありがとうございました!」

春香「……」

千早「春香、気を落とさないで」

真「調子の悪い日だってあるよ」

美希「春香、こういう日は美味しいもの沢山食べて元気だすの! おにぎりとか!」

春香「う、うん。みんな、ありがとう」


P「……」

P「春香」

春香「あ、プロデューサーさん」

P「明日はいよいよシングルの発売日だな」

春香「そうですね。嬉しいけど、緊張します」

P「俺もさ。沢山の人に聴いてもらいたいよ」

春香「そうですね……。私もです」

春香「……」

P「どうした。元気、少ないな」

春香「……プロデューサーさん、どうして私がセンターなんですか」

P「ん、嫌だったか?」

春香「嫌だなんてそんな、センターに選ばれた時、すごく嬉しかったです。けど……」

春香「考えてしまうんです。私よりもセンターに相応しいアイドルが沢山いるのに、
   どうして私なんだろう、って」

春香「ぱっとしない私より、雪歩や美希みたいに華やかな子の方が適任なんじゃないかって
   実はみんなも内心では、私がセンターを務めることに不満を持ってるんじゃないかって!」

春香「……すみません。私、嫌なこと言いました」

中々よいではないか

P「春香がセンターに相応しいと思ったから、春香にしたんだけどな」

P「理由か、そうだな……。これはみんなに内緒にしてほしいんだけど、特に美希と伊織には」

P「俺は将来、765プロの看板を背負うのは春香だと思ってる」

春香「私が?」

P「ああ。確かに春香は、美希のようなオールラウンダーでもないし、
  千早のように歌えるわけでも、真のようなダンスができるわけでもない」

P「でも、春香のいいところは、ひたむきに努力し、諦めず、
  明るく前向きで、いつも笑顔で頑張れるところさ
  そういう姿を見せられると人は勇気をもらえるんだ」

P「実はそれってすごく難しいことなんだよな。俺には到底真似できない
  それが出来る人がこの世の中にどれだけいるだろうか」

P「なにも煌びやかで、美しく、可愛く、歌って踊れるだけがアイドルじゃない」

P「みんなを笑顔にし、勇気や元気を与えてくれる、
  それがアイドルとしての一番の理想形だと俺は思っている」

P「そして、それに最も近いアイドルは春香だと思った
  だから春香をセンターに指名したんだ」

P「みんながなにも言わないのは春香を認めている証拠さ」

P「自信を持て春香。春香こそセンターに相応しい」

春香「……っ」ブワッ

P「!」

春香「うわあぁぁぁぁぁぁん!」

P「は、春香? どうした!? 俺、なにか傷つけるようなこと言っちゃったか!!?」

春香「違うんです……私、わだじ、嬉じぐで……」ヒック

春香「私、なんにも取り柄がないから、いつも元気で明るくいようって」ウグッ

春香「でも、それが空回りしてるんじゃないかって、ずっとずっと不安で、怖くて……」グスン

P「春香……」

伊織「誰かの泣き声……?」

伊織「!」

伊織「春香! どうしたの!? ちょっとアンタ! アンタが春香を泣かせたの!?」

P「えっ!? ち、違う!」

伊織「じゃあ、なんで泣いてるのよ!」

P「あっ! いや、違わない! けど、違う!」

伊織「どっちよ!!」

P「これ、きれいな涙! きれない涙だから!!」

伊織「当り前じゃない! 春香の涙はきれいよ!!」

ギャー ギャー ウワーン……

――12月23日――

P「おや、みんな、まだ残っていたのか」

やよい「あ、プロデューサー」

P「明日はライブ本番なんだから、早めに家に帰ってゆっくり休めと言ったじゃないか」

真「すみません。でも、なんだか一人だと落ち着かなくて」

響「もう少し、みんなと一緒にいたいんだぞ」

貴音「プロデューサー、その手に持っている雑誌は」

P「ああ、これか。今日発売の音楽誌」

美希「ミキたちのシングル、ランキングに入ってる?」

真美「見して見して!」

P「ほら」パサッ

あずさ「まあ、2位!」

真「やっりぃ! すごいよ! 初シングルがTOP3に入るなんて!!」

伊織「当然よ。このスーパー美少女アイドル伊織ちゃんが歌ってるのよ」

亜美「んふっふ~、それに竜宮小町はすでに何度もTOP3に入ってるのだ」エッヘン

千早「ねえ、ここに曲のコラムが掲載されているわ
  『オールスターの名に相応しく、ダイナミックでパワフルな曲は
   リスナーを元気にさせてくれる。また、カップリングの完成度が非常に高く、
   抜群の歌唱力を披露している』ですって」

美希「アハッ、この記事書いた人、なかなかわかってるの!」

雪歩「みんな、お茶が入りましたよ」

春香「クッキーもあるよー」

真美「はぁ……あったまるのぉ」ズズッ

やよい「春香さんのお菓子、久しぶりですねー」

春香「ここ最近ずっと忙しくて、つくる暇がなかったから」

貴音「春香、とても美味しいですよ」サクサクサクサクサクサク

亜美「うあうあ~、お姫ちん、食べるの早すぎっしょー!」

響「みんな、早く食べないと貴音に全部食べられちゃうぞ!」

春香「沢山焼いたから大丈夫だよ。プロデューサーさんもどうぞ」

P「ああ。ありがたくいただくよ」

P(春香のクッキー)

P(心が折れかけたあの時、春香のクッキーがなかったら、
  今頃俺はここにいなかっただろうな……)

P「春香には感謝しないといけないな」

春香「なにか言いました?」

P「いや、なんでもない。ただの独り言さ」

美希「ミキ、聞こえたの。『春香には感謝しないといけない』って。どういう意味?」

P「なに、おいしいクッキーをありがとうって意味さ」

春香「えへ、嬉しいな///」

美希「む~、怪しいの……」

真「そういえば去年の今頃も、事務所に集まってこんな風に話してたよね」

P「へえ、それは楽しそうだな」

真美「ちっちっち。甘いな兄ちゃんは。当時の真美たちは仕事がすっからかんで、
   暇を持て余した悲しい集会だったのだ……」

春香「あはは、そうだったね。来年こそは仕事いっぱい取って、
   有名になってやるぞーって変に盛り上がってたよね」

響「沢山CD出して、1位取って、ワールドツアーやるぞー! っとか」

真「言ってた言ってた」クスッ

雪歩「クリスマスにライブが出来たら素敵だよねって」

貴音「その願いもついに明日、叶うのですね」

美希「これも全部、プロデューサーのおかげなの!」

P「俺だけの力じゃないさ。律子が、音無さんが、社長も、
  そしてアイドルのみんなが一丸となって頑張ってきたから、今の結果がある」

千早「それでも私たちは、プロデューサーに感謝しています
   プロデューサーがいなかったら、今の自分はありません」

貴音「よくぞここまで導いてくれました」

P「みんな……」

真美「こっから真美たちの快進撃が始まるっしょー!」

美希「デコちゃんたちにすぐ追いついてやるの」

伊織「あら、言ってくれるじゃない。竜宮小町だって負けてらんないんだから
   ……それはそうとしてデコちゃん言うな!」

P「……」

P(長い道のりだった。だけど、これがゴールじゃない。ようやくスタート地点に立てるんだ)

P(スタートラインに、ようやく……)

春香「プロデューサーさん?」

P「明日が楽しみだ」

――12月24日・ライブ当日――

亜美「ねえねえ! さっき下手袖からちらっと会場を覗いてみたけど、
   お客さんでいっぱいだったよ! すっごい光景!!」

真美「まぢっすか! えっ! まぢっすか!」

真「開演まであと10分! くぅ~緊張するー!」

雪歩「わ、私、緊張し過ぎて頭が真っ白に……」ガクガク

響「う~、自分もちょっとまずいぞ……」

あずさ「あらあら、みんな落ち着いて深呼吸しましょ。大きく吸ってぇ~、吐いてぇ~」

スウゥゥゥ ハァァァァ……スウゥ…ッ ゲホッ ゲホッ

伊織「ちょっとアンタたち、さっきまでの威勢はどこいったのよ?」

響「だって……」

真「ライブ慣れしている伊織たちに、この緊張感はわからないよ……」

伊織「私たちだって緊張してるわよ。ほら、しゃんとしなさいな」

貴音「真、雪歩、響、己を信じるのです。鍛錬の日々がわたくしたちを強くしてくれました
   大丈夫、わたくしたちになら出来ますよ」

雪歩「自分を信じる……」

真「……そうだよね。おっし!」

響「なんくるないさー!!」

千早「春香は大丈夫?」

春香「うん、自分でもびっくりなんだけど、なんだか妙に落ち着いてるの」

律子「みんな、大丈夫そうですね」

P「ああ」

やよい「プロデューサー」

P「ん、やよい。やよいは大丈夫か」

やよい「はい。だけど、一つだけ……あの、手を握ってもらってもいいですか」

P「ああ、いいよ」

ギュッ

やよい「……」

やよい「もう、大丈夫…です」パッ

やよい「えへへ、プロデューサーからいっぱい力もらっちゃいました///」

P「やよい……」

スタッフ「5分前です! スタンバイお願いします!」

やよい「うっうー! それでは行ってきます!」

タッタッタ……

律子「可愛いですね……」

P「ああ……」

律子「プロデューサー、最後になにかあの子たちに声をかけてあげてください」

P「俺が?」

春香「プロデューサーさん!」

律子「ほら、みんなもそうしてほしいみたいですよ?」

P「……そうだな」

P「みんな、自分を信じろ。みんななら絶対に大丈夫だ」

真美「兄ちゃん、それさっきお姫ちんが言ったー」

P「えっ、そうなのか」

貴音「ふふ、残念ながら」

伊織「もう、締まらないわね」

P「め、面目ない。」

P「……初めてのステージを目一杯楽しんでくれ
  上手くやろうとか、失敗がどうとか、そういうことよりも、
  みんなが掴んだこの大舞台を存分に楽しんでほしい」

P「そうすれば、お客さんも楽しんでくれる」

スタッフ「3分前です!」

P「よし、みんな行ってこい!」

アイドル一同「はい!」

亜美「あっ、大事なこと忘れてた! 円陣! 円陣やろうよ!」

伊織「いいわね。竜宮のライブではいつもやってるのよ」

あずさ「あれやると気合いが入るのよね~」

真「わあ、いいね! やろう!」

真美「よっしゃー、いっちょやるぜいー!」

オッシャー オラー 

美希「プロデューサー」

P「どうした、みんな輪になって美希を待ってるぞ」

美希「ミキのことちゃんと見ててね? ミキ、キラキラ輝いてみせるから」

P「ああ、もちろん。ずっとこの時を待ってたんだ
  美希やみんなの輝く瞬間をこの目に焼き付けるよ」

美希「アハッ///」

亜美「ミキミキー! 早くー!」

美希「じゃあ行ってくるね、ハニー!」

P「は、ハニー!?」

美希「お待たせなの!」

真美「はるるん! かけ声お願いしやすぜ!」

春香「えっ、私?」

真「ボクも春香にやってほしい!」

千早「私も春香にお願いしたい」

伊織「いいじゃない。春香なら気合いが入りそうだわ」

春香「……うん! それじゃあ、みんないくよー」

春香「765プロー…ファイトー!!」

アイドル一同「オー!!」


ワァァァァ……!

……………………
………………
…………
……

この日、オールスターライブは大成功で幕を閉じた

これを機にアイドルたちは爆発的な人気を得ることとなる

――3か月後――

P「……おお」

P「ホワイトボードの予定表が全て仕事で埋め尽くされている……」

P(アイドルたちのスケジュールは毎日ぎっしり詰まっている
  今では黙っていたってあちらからオファーがくる)

P(大きな仕事の連続、多忙すぎる毎日に目が回りそうだ)

P(これが嬉しい悲鳴ってやつか)

高木「キミぃ!」

P「し、社長!?」ビクッ

高木「今月もお疲れ!」つ給与明細

P「あ、ありがとうございます(ビックリした。心臓止まるかと思った)」

P(今月の給料……)ゴクリ

ビリビリ ペラ

P「おお……」

P(0がひとケタ増えてる!)

P「今まで諦めずに頑張ってきてよかった……」ジーン

P(これも全てアイドルたちのおかげだ
  これからもトップアイドルを目指して全力で彼女たちをプロデュースするぞ!)

P(ふふ、このお金でなにかパーっと大きな買い物でもしようかな
  高いお寿司か、ステーキか。おっきいテレビを買おうかな。いや、音の静かな掃除機?)

P(夢が広がる……)

P(そうだ、今こそ親孝行の時。おふくろがマッサージチェアをほしがっていたな
  今まで苦労かけっぱなしだったもんな。とびきり高級のマッサージチェアを送ってやろう)

美希「ハニー」

P「お、おお、美希」アセアセ

美希「さっきから一人でなにニヤニヤしてるの。気持ち悪いよ?」

P「きも……」

P「いやあ、ちょっとな。嬉しいことがあって」

美希「嬉しいこと? アハッ、わかったの! 
   ミキが今年で16歳になるから、やっとミキと結婚できるって喜んでる感じ?」

P「なんで美希の年齢を考えるんだよ。それに美希とは結婚しません」

美希「ブー。じゃあ、17歳まで待ってあげてもいいよ? 結婚指輪はお給料の3か月分?」

P「じゃあってなんだよ。だから子どもとは結婚しないって。美希はアイドルを続けたいんだろ」

小鳥(つまり、私はオーケーってこと?)ドキドキ

高木「キミ、ちょっと私の部屋まで来てくれないか」

P「はい。美希、時間になったらレッスンに行くんだぞ」

美希「あん、ハニーっ!」

P「失礼します」ガチャ

高木「うむ。そこの席に掛けたまえ」

高木「実は、キミを呼び出したのは他でもない、礼が言いたくてな」

高木「うちのアイドルたちは全員ランクAのトップ入りを果たした
   765プロは一躍有名になり業績はうなぎ昇り。赤字から黒字経営へ、
   資本金は大企業並に膨れ上がり、この貸しビルを買い取り、来月から建て替え予定」

高木「全て、キミのおかげだ。やはり、私の眼に狂いはなかった
   あらためて礼を云わせてもらおう。ありがとうPくん」

P「いえ、とんでもない。俺だけの力じゃありません。みんなの頑張りが繋がった結果です」

高木「謙遜することはない。これがキミの実力だ。胸を張りなさい」

P「社長……」

高木「ウオッホン! さて、実はもう一つ用件があってな。まずはこの履歴書を見てくれないか」

P(履歴書?)ペラッ

P(渋谷凛、神崎蘭子、高垣楓、双葉杏、島村卯月、速水奏、
  輿水幸子、城ヶ崎美嘉、莉嘉……姉妹か?)

P「この子たちは?」

高木「うむ。私がスカウトしてきた、うちの新しいアイドル候補生だ」

P「え゛っ!!?」

高木「いやあ、キミたちの頑張りを見ていたら、私も身体がうずいてね!
   この3か月、街に繰り出しては新しい才能の発掘に精を出したんだ」

P(……なにか、とてつもなく嫌な予感がする……)

高木「我々は晴れてトップ入りを果たした。だが、これで守りに入ってはいけない
   このアイドル戦国時代を生き残るには常に挑戦し、攻め続けることが大切だ
   新たな世代を育て、新時代を築くために!」

高木「そう、ニュージェネレーションだよ!」

高木「題して『シンデレラガールズプロジェクト』!!」

P「……」

高木「どうだろう! なかなかいいネーミングだと思わないかね!?」

P「……つまり、社長が仰りたいことは、この子たちをプロデュースしろと?」

高木「おっ、察しがよくて助かる。その通りだ」

P「ま、待ってください
  この子たちのプロデュースとなると、春香や美希たちはどうなるんですか」

高木「安心したまえ。もちろん引き続きキミにプロデュースしてもらうよ」

P「……」ポカーン

P(あ、安心の意味がわからない……)


P「……あの、せめて3人くらいは律子の方に……」

高木「いいや、律子君には竜宮小町のプロデュースに専念してもらわないといけない
   なんたってIA賞総なめしてしまった彼女たちには
   全国ドームツアーに、海外公演、映画、ドラマ、舞台と
   かつてないビックプロジェクトが連なっている。あまり負担をかけたくないのだよ」

P「お言葉ですが社長、こっちも春香と真の舞台が控えていますし、
  雪歩は映画のヒロイン役に抜擢されています
  それに千早のソロアルバムのレコーディングに、美希と響と貴音の新ユニット、
  真美とやよいだって……」

高木「キミぃ! 弱気になってはいかん! キミは私が連れてきた男だ! 大丈夫、自信を持ちなさい!!」

P「あ、はい…い、いえ。ですが……」

高木「アイドルたちを任せたぞ! 彼女たちの未来はキミの力にかかっている!! それではしっかりと頼むよ!」ハッハッハ…

P「…………」

P(じ、18人? 俺が? たった一人で!? 18人全員をプロデュース!!?)

P「  」サーッ



おわり

おつ
面白かったよ

さくさく読めて面白かったよ!

王道な展開で良かった
乙です

おつ!

よし、さっそくニュージェネの話を書く作業に着手するんだ!

乙!楽しかったぜ!
ニュージェネも期待してる!

王道ってやっぱいいな!
んじゃ、ニュージェネ編よろしく

おつ
見事なまでのブラックですね(白目)
そのうち100人以上同時プロデュースするんやな悲劇やな

新しいアイドル候補生の中にちゃんみおがいない・・・

>>99
でも月給数百万やから……

月給数千万貰っても良いレベル

おつ
モバマス編も期待

すまん、俺アニマスしか知らんから続編は書けない
書いたとしてもキャラの性格とか色々崩壊すると思う

???「今ならお得なセットがありますよ!」

奏さんに若干の違和感

やっぱり僕は王道を往くプロデュースを重点においたssですかね…

ニュージェネと765のPの取り合い修羅場が楽しみだや

やっぱり王道は強いなあ

俺の杏の名前を出したからには続くんだろうなぁ?(懇願)

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