ジャン「平和だな(2)」 (35)

巨人がいなくなり一転平和になった世界で暮らすジャンの一人称で語られるお話です。

ほのぼのメインです。



ジャン「平和だな」 - SSまとめ速報
(http://jump.vip2ch.com/http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1375978363/)

これの続きで一年後という設定なのでよかったらこちらも読んでやってください。

Ifなので104期の主要メンバー達はそれなりに仲が良いという事にしてあります。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1378798316

すみません
書き置きが消えたので復旧作業中ですorz


必ず完結させますので気長に待っていただけると幸いです。

あげてきます

大した理由はないだろうが
ふと、目が覚めた。


傍の懐中時計から時間を確かめる。4時。




「スー………スー」



規則的に聴こえる細い寝息。





これが聴こえると俺はある衝動に苛まれる。


俺は身をよじらせてクリスタに近づくと、一目散に抱きついた。






冬がひょっこりと頭を出して辺りを伺い始める季節。



身を潜めていた寒さが
いよいよ悪意をもって俺たちに牙をむく季節。



(今晩もかなり冷え込むな………)








クリスタは来たる寒さを迎え討とうと今から重装備だ。



最近こいつはパジャマに凝っている。

もともと洒落っ気のあるやつだったが、
その底無しの情熱は遂に寝巻きにまで及んだ。




月曜は豚の着ぐるみ。


火曜は淡いピンクのモコモコ。


毛羽立った生地の風合いが素晴らしい逸品だ。



水曜は大胆不敵な黒い毛玉に変身する。



クリスタ曰く「たまには大人っぽくね」のコンセプトの元に購入された物だ。



今日は木曜だからピンクのドットが入ったもので
やはりモコモコしている。



以下、月曜のものから永遠にループし続ける。

このニット地のパジャマを着たクリスタは抱き枕として恐るべき効果を発揮する。




「よっと…………」




モコモコの内にクリスタを見つけ出す。



このフードの物はファーと呼ぶべきか、毛と呼ぶべきか。



「ふう。」




全てを腕の中に。



ボリューミーだが、それでもすっぽり収まった。




産まれたばかりの子羊の愛らしさ



それに当てられた放牧部族の趣だ。


子羊は人間の深い寵愛を一身に受ける。


よもやパイになどできまい。
愛で、慈しむ対象だ。





……………。






…………………。




(これだよな………)

暖かさ、柔らかさ、大きさ、
そのどれを取っても一級品だ。




香りもなんだか
香水をコロンと呼び変えた時に発生するような類の匂いだ。



よくわからねぇが。




この愛しのでかい毛玉の中身は
何もかもがやけに繊細で、



しかし、力一杯抱き締めずにはいられない。







リラクゼーションと名がつく物をいくつ試してもこの心持ちには到底及ばないだろう。





クリスタ「じゃーん?おきちゃっ
たのぉ?」

眠りを妨げられて尚、クリスタは優しかった。



俺のお袋を思い出す。



俺が暗がりを恐れて便所にいけないという理由で起こそうとするとお袋は俺を怒鳴りつけた。



結局、小便はぶちまけた。





「そうなんだ。わりい。
起こしちまったみてぇだな」



クリスタ「いいんだよー」




クリスタはのったりした声でそう言うと再びふにゃりと事切れた。




寝ぼけながらも身をすり寄せて俺の肩に腕を回してくれている。

この瞬間が何事にも替え難いのは言うまでもなかった。



どことなく、
世間の人間が愛情と呼ぶような物の片鱗を感じ取った気がした。




傲慢に聞こえるかもしれないが、
こいつが心を許してくれているのが良く分かるんだ。






(あー可愛い。………………幸せだ)









(あの時口説いといて本当によかったな………………大好きだぜ、クリスタ)




ようやく手にした幸せに対して俺が捻り出した感想はこの程度のものだ



そう、幸せだった。

こんな粗末な言葉でしか それを言い表わす事が出来ずとも、
これだけは確かだ。



来年の今日もこんな風なら。



多くは望まない。



「おやすみ、クリスタ」




こうして俺は赤子のように眠る。






(今朝の朝食はどっちが作るんだろうな……………)



………。

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巨人が消えて七年。


思いつく限り
何もかもが変わった。



携行兵糧は新鮮なトマトが添えられたサラダに。



立体起動装置は帳簿書類に。



ブレードは
すぐに先が擦り減っちまうペンに。



替え刃はインクのカートリッジに。



馬は馬のまま、
あそこまで速くはないが。



野戦マントは黒やベージュのコートに。



籍は兵団員ではなく、倉庫の帳簿員として。

俺達の関心ごとは巨人の生態やガスのふかし方から
来月の給料の使い道や生命保険に入るタイミングに。






もし俺の身に何かがあったとしたらそれは過労によるものだろう。




巨人に立ち替わる脅威があるとすれば、上司と火災ぐらいのもんだ。



とにかく無益に、退屈に、
しかし平和に、時間が流れている。


巨人なんてもういない。



思い出す必要もねぇ。


今はただの物語だ。


あるいは、そう思いたいのだけなのかもしれないが。






俺はこの日々が気に入っている。


ーーーーーーーーーーー。

書き溜め尽きましたwww

またすぐに書き足して続きあげてきますorz

少量ですが続きあげます

【今年の夏も……………】




ーーーーーーーーーーーーーーー。



「おい!エレン!そっちもっと詰めろよ!」



直腸から胃にかけてを
ダイレクトに刺激する激しい揺れ。





たまらず付け加える。





「ケツの真下が車輪なんだよ!!」




砂利道を走り抜ける間中、
俺のケツの穴は摩耗を続けている。




エレン「寄れったってこっちにはなんかでけぇのが入った水槽があるんだよ!」



サシャ「何かでけぇのではなくロブスターです!!!」



サシャが生死を分ける問題に直面したかのように騒ぎたてる。



「しらねぇよ!!」






エレン「くそっ!さっきから潮水が飛びまくって…………ちくしょう!下着までビチョビチョじゃねぇか!」



ミカサ「替えのパンツなら…………」



コニー「諦めろよ!!俺たち、海に行くんだ!!」

コニーが神の啓示を代弁するかのような力?さと説得力をもって俺たちに怒鳴りつける。



コニーの主張はめちゃくちゃだが、こいつなりの筋が通っているように思えてならなかった。




水槽はコニーの膝の上。




コニーは既に岩礁に打ち上げた海苔のようになっちまっていた。



コニー「な!」



そう言うと、
ずぶ濡れのコニーがニっと微笑んで見せた。


どこか、神秘的な白い瞬きを感じ、俺もエレンも押し黙った。

しかし、何が「な!」
なのかは分からねぇ。




水槽の中で人数分のロブスターがガチャガチャと音を立ててひしめき合っている。








クリスタは洞察に満ちた面持ちでコニーと海老の群れを眺めていた。




俺たちは五人と五人で向かい合うようにして座っている。



俺の列は奥から、コニー、エレン、俺の順だ。

エレンの正面はミカサ。


膝に携えられた大きなトートの中には水着や着替え、
更にはエレンの下着の替えなどが満載されているのだろう。








コニーはすでに「濡れて」とか「水が」とかそんな事は一切気に掛けない方針にシフトしたらしかった。




ライナー「おい!あとどれくらいかかるんだ!?」




アルミン「長くて30分てとこだ!!もう少しの辛抱だよ!!」



ベルトルト「そんなに!?」



ユミル「おいおい………………勘弁してくれよ」


ベルトルト「僕、揺れで……………さっきから気分が」


アニ「まさかあんた…………酔ったのかい?……」



ベルトルト「……………。」

アニ「は、吐きそうなら言うんだよ?なんとかす………」


ユミル「ベルトルさんよぉ………吐いたらゲロごとお前を突き落とすからな…………」


愛情のかけらも感じない辛辣なコメント。


ベルトルトのやつ気の毒にな。



クリスタ「こらユミル!」


クリスタがベルトルトに歩み寄り背中をさする。




ベルトルト「あぁあありがとうぅう」



間延びした返答。




灰色がかった顔は糖衣を剥がした便秘薬みたいだ。


……………。

(全く、素敵な休暇だな!!ちくしょう!!)

「おいみんな、もうすぐ海だからよ!今だけの辛ぼ………」




ビシャッ!!!



車輪が石に乗り上げ、


俺とエレンはロブスターの原産地と同じ塩分濃度に調節した潮水を全身に受けた。




コニーが言う。



「楽しくなってきたじゃねぇか!!!」




海まで30分、
たったの30分。



ライナーがそわそわしている様子からして、クリスタの横で何かスケベな事を考えているに違いない。



海まで30分。


きたねぇ荷馬車での移動はクソがつくほど快適だった。



(……………海まで30分!)

書き溜め再び終了です

遅筆で申し訳ないです

ーーーーーーーーーーーーーーー。

地獄のようなひとときを過ごし終え、
無事、海に到着した。





サシャ「これが潮風ですかー!!!わー海ですよ!みなさん!海です!」



クリスタ「わーほんとだ!!すごい綺麗!」





(……………。)





ベルトルト「ふー、……………ふー……………」



ライナー「おい、大丈夫かよ………」




(………………。)




ミカサ「エレン、早急にパンツを取り替えないとお腹を壊す恐れがある。これは看過できない。」

エレン「うるせぇな!大丈夫だって!お前は親かなんかかよ!」



ミカサ「妻」





……………。



とにかく、俺たちの海までの移動が苦難に満ちたものになった原因は三つだ




一つ目
【俺とアルミンがたった一泊のために凝ったペンションを狙い過ぎて予算を割き過ぎた点】




二つ目
【サシャが酒と食材に予算を使いすぎた上に、生きた高級ロブスターを馬車に持ち込むという凶行に及んだ点】




三つ目
【上記の理由で資金が枯渇し、
劣悪な荷馬車での移動に甘んじるしかなかった点】



「……………。」



アルミン「……………。」




「海…………だな」



アルミン「海……だね」



俺と同じ類のバツの悪さを感じているのだろうか。



海風が吹き付ける横顔がひどく寂しげだった。




ともあれ……海だ。


エレン「これが海か!!すげぇじゃねぇか!!」




コニー「青いな!!」



クリスタ「ねぇみんな早く泳ごうよ!ユミル!!」


ユミル「おいおい!そう焦るなよ!」




クリスタ「あっ!ジャーン!!泳がないのー!?」




遥か彼方で叫ぶクリスタに返答をする。




「先にペンションに荷物を運び込むんだー」


「お前も水着着ないと泳げねぇだろー」


クリスタが両手をぶんぶんふってそれに応える。

「わかったー!」

俺たちの道中の不幸の全てはペンションで払拭される事となる。



「おいおいおいおい…………………」



アルミン「こりゃすごいやジャン!」



「苦労して選んだ甲斐があったってもんだな……………」



アニ「へぇ………あんたらが選んだんだよね。いい趣味してるよ」



ライナー「さすが名参謀ってとこだな」



ユミル「だっせぇ言い方してんじゃねぇよライナー」



ライナー「何がだ!!」



どこか汚名返上を果たせた気がした。




みんな、今までのことは悪かった。


しかし全てはこれのためだ!



思いっきり無粋な言い方をするならば、
これは売れ残った海沿いのモデルハウスの使い回しだそうだ。




青い屋根とバルコニー。



これぞ夏といった風情。


美しいじゃねぇか。




庭に簡易のシャワーがあり、
中に入るとバスルームが更に二つ。



バーカウンター完備(酒は要持ち込み)のすごいペンションだった。



このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年08月10日 (日) 13:31:18   ID: o5ktFMvP

…終わったのかよ?はえーな…

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