【姉御】ボーイッシュなあの子が可愛い【メガネ】 (63)



春の涼けさの残る6月の夜のこと、月に照らされた男女が向き合うように立っていた


「ぼ、僕は君が好きだ!!」


少年は少し緊張しているのか、頬が紅く染まっていた

しかし、視線だけは彼女から1mmも逸らさなかった

先程まで少年を応援するように五月蝿く鳴いていた虫たちが一斉に鳴り止んだ


「…………」


少女も視線をそらさず少年を見つめ、そしてゆっくりと口を開けた





SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1363611602


少年の名前はメガネ。彼女いない歴=年齢のどこにでもいる高校生童貞

少女の名前は姉御。勝気な性格だが素直に自分を出せない初心女子校生

これは、そんな二人が織り成す甘いを越した恥ずかしい物語である








季節は戻って四月


入学式と書かれた立看板の前で真新しい制服を着て写真を撮る家族の横を

一人の少年は携帯を見つめながら歩いていた

『ごめんね……、母さんも父さんも行けなくなっちゃった』

と書かれたメールを見て溜め息を零した

(今どき親同伴じゃなくて悲しむ高校生がどこにいるんだよ……)

彼の名前はメガネ。彼女いない(ry……の今年入学の一年生だ

メガネは適当に返信を終えると、止めていた足を再び進ませようとしたとき



ドンッ!!


「うわぁ」

「ちょ!!」

二つの驚いた悲鳴が交差すると同時に、バランスの崩れた二つの影は地面へと倒れていった

「いててて……」

少年は衝撃の痛みに顔を歪ませながら

「ハァ……酷い目にあったなぁ」

と溜め息混じりに愚痴をこぼした


「酷い目ににあったのは……」

「はい?」

少年は先程から腹辺りに、柔らかい感触が乗っているのに気付き

声のする方へ視線を向けると腹にまたがるように座るショートヘアの少女が

拳を握り締め何かを呟いていた

「えーっと、大丈夫?」

少年はとりあえず、少女の心配をするように声を掛けた

「だ、大丈夫なわけねーだろ!!///」

少女は叫ぶと同時に握り締めていた拳を力いっぱい少年の腹めがけて振り落とした

「で、ですよねー……ぐふっ」

そう言い終えると彼は静かに意識を手放した






次に彼が目覚めたときは、見知らぬ白い天井を見上げていた

「あれ?ここどこだ……」

少年がベッドから身を起こそうとしたとき

「気がついた?」

どこからか可愛らしくともくすぐったくとも聞こえる声が聞こえてきた

少年は立ち上がると、カーテンの奥から聞こえた声の主を確かめるべく

勢い良くカーテンを開けた

「あれ?確かに聞こえたんだけどな」

そこを開けると小学5年生ぐらい?の女の子が、子供デスクに座っていただけだった


「ねぇ、君以外の誰かがいなかったかお兄ちゃんに教えて欲しいなぁ?」

メガネは相手を怖がらせないように、なるべく下から頼み込んだ

「…………」

しかし女の子は聞こえていないのか、黙々と目の前に広げられたノートに何かを書き込んでいた

メガネは聞こえていないものだと思い、気づかせる為に女の子の肩に触れた瞬間



「へぇ……?」


気の抜けた声を上げたのはメガネだった

と次の瞬間、視界が逆さまになったかと思うと本日二回目の地面との接触をしていた

(な、なんだ?何が起きたんだ!?)

突然のことで理解できていないのか、目をパチクリさせ当たりの様子を見渡した。すると


「おうおうおう、ガキの分際で調子のってんじゃねーぞ。テメーのせいで仕事が増えちまっただろうがぁ!!」


「えっ?」


メガネは声のする方へ視線を向けると先程の女の子が意地悪そうな顔で自分を見下ろしていた



「これはどういうことでしょう……?」


メガネは姿勢を正すと無意識なのか、目の前の女の子に対し畏まった口調で質問をしていた

「理解出来てないようだから、しょうがねぇから教えてやる!講堂前でお前が倒れてたから保健室(ココ)に運ばれた。以上」

「凄くわかりやすいけど、もの凄く適当に聞こえる……いやいやそうじゃなくて」

メガネは、ここに運ばれた理由は少しだが予想できていた

いま引っ掛かっているのは、目の前の可愛らしい容姿からは、考えられない動きで軽々と投げ飛ばされたことだった


「そういえば、さっきのは何!?子供とは思えない動きだったけど、てか君は何者なんだ?」

「あぁ……そういっぺんに質問してんじゃねぇよ。まったく、これだからガキはめんどぉだぜ」

女の子はヤレヤレと言いたそうに椅子に腰掛けてタバコに火を点け始めた

(僕よりガキな子がタバコ吸ってるぅぅぅ!!)

「あぁん、何か言いたげだな……テメェも吸いてぇんか?」

メガネは全力で首を横に振ると黙り込んでしまった



「保健医だ……」

「えっ」

「保健医だって言ってんだろ、聞こえてんなら返事しろガキっ!!」

「は、はははははい…………ん?ええええええええええええええ!!」

「なんだよ、うっせぇ野郎だなー……」

保健医と名乗る女の子は、眉間にシワを寄せながらメガネを睨んだ

メガネが驚くのも無理はない。自分よりも幼いと思っていた女の子が、保健医という冗談にしては笑えないソレであったのだから

「ほ、ほ保健医ってことは成人なさってるんですよね?」

「ガキの分際で大人様を疑ってんですかー?」

そういうと女の子はポキポキと指を鳴らしながら意味深な笑みを浮かべた


「…………すいませんでしたー!!」

メガネの奥底に眠る野生の勘が危険信号を発したのか無駄のない動きで地面にひれ伏した

「それでいいんだよ。まだケツの青いガキが余計なことなんざ考えてんじゃねえよ」

「は、はぁ……」

「賢く生きろ、じゃねーとあぁなるぞ」

メガネは保健医が指を指す方に近づいてみると



「あ……さっきの」


そこには先ほどの騒ぎで出会った少女がロープでグルグル巻にされていた

「んーんーんー!」

「えーっと、これも説明お願いできますか?」

「少しとっちめようとしたら、暴れたから本気で締めた。以上」

「んーっと……ご愁傷さま?」

メガネはグルグル巻きにされている少女に手を合わせるとドアへと歩いていった

「おいおい……何帰ろうとしてやがる」

「えっ?だって入学式が……」

「いいんだよ、そんなめんどくせーモン出なくて」

「ここで俺と話すか、そこのソイツを連れて入学式に出るかどっちがいい?」

(な、なんだよ、その究極の選択……そういうのってもっと大人になってから問われるもんじゃねーのかよ)

「さぁ!さあぁ!!さああぁ!!!……」

「んーんーんー」ウルウル…

「今夜のご注文はどっちだぁ!!」

「あ〜〜〜〜、もぉ〜〜〜!!」

メガネは何かを覚悟したのか、ゆっくりと口を開けた




「えー、以上をもちまして今年度の入学式を閉会します。新入生の諸君は各自の担任の指示に従いましょう」

ざわざわ……ざわざわ……

「ふー、なんとか出られた……」

メガネは額の汗を拭いながら椅子の背もたれに全体重を預けた

結局あの後、少女のロープを解いてやり、自由にしてやったところまでは良かったが、

ソレと同時に鳩尾にパンチを頂き「死ねっ!」と罵声を頂き

保健医には大笑いされながら体育館の場所を聞き出し、現在に至るのであった

(俺が何したってんだよ……ハァ、初日から最悪だ)

「おい!」

「……んあ?(いま悲観中なんだよ!そっとしておいてくれよ……)」

メガネは声をかけられたので、ダルそうに反応した


「入学初日から問題を起こすとか、やるなお前!こんなふざけた奴は見たことねーよ」

勘弁してくれと言いたげに溜め息を零すと身を起こした

「俺、友な!いやー、お前一躍有名人だぜ」

「……俺はメガネ宜しく。ははは、勘弁して欲しいよホント」

すると周りの人間たちも話を聞いて興味がわいたのかワラワラと群がってきた

(俺のバラ色になる予定だった高校生活が……アディオス)

メガネはできるだけ変に見られないように無難な受け答えで対処していった




「それじゃ大統領。そろそろお時間ですし、お部屋の方へいきませぬか?」

何のキャラだよと思いながら友からの誘いに素直に頷き案内されるように後ろについて行った

教室につくとさっそく友が意気揚々と座席を確認しに走り出した

(どうせ出席番号順だろ……いいや、予想つくし適当に座ってよ)

メガネは小・中の席のパターンを思い出し適当な席に座った

「おい……」

「ん?」

席に腰掛けて一息つこうとしたとき、後ろから急に声を掛けられた

「またかよ、今度は……なんの御用でございましょうか?」ガクガク

そこには今日だけで三度目の顔合わせとなる例の少女がイライラしたように、こちらを睨んでいた


「そこ私の席だから……どけ」

「すすす、すいません。……というより一緒のクラスだったんですね。僕はメガネ宜しくね」

メガネは自分の持てる力を全て注いぎ、嫌味にならない口調と笑みで挨拶をした

「死ね……ゴミ」

そう言い終わるとハンカチを取り出し先程までメガネが座っていた椅子の上に敷いた

(ハハハ……さいですか)

メガネは俯いて座席表を確認しようとフラフラと歩きだした


「待てよ……」

「えっ?」

メガネは突然呼び止められて驚いた

「忘れもん」

そういうと少女はカバンから何かを取り出しメガネに投げつけた

「わわっ!!あれ、俺の携帯……なんで?」

「めんどくせーな、落ちてたから拾ったんだよ。それと……」




「さ、さっきは、助けてくれてサンキューな///」




ドキューーン


その瞬間、メガネはハートを何かに撃ち抜かれたような衝撃を受けた

「…………」

「おい、大丈夫か?」

少女は急に黙ってしまった目の前の男に不安を感じ動揺が隠せずにいた。そこへ


「聞いてくれー!俺とお前の席となりだってよ……ってアレ?」

意気揚々と戻って来た友が先ほどと空気が一変していることに気が付いた

「おーい、メガネー」

友は状況がいまいち掴めていないが、とりあえずメガネに話しかけてみることにした

すると先程まで微動だにしなかったメガネがゆっくりと口を開けた


「可愛……る」


「「えっ?」」

「可愛すぎるだろおおおおおおおお!!なんだよ、なんだよツンデレちゃんですか!?
 大好物だよバーカ!初めは無愛想だったのに、これは卑怯だろ!ふおおおおおおお!」

「お、おい……急にどうした!! お前からも何か言ってやってくれよ」

「か、可愛いって言うんじゃねー//////や、やっぱ死ねぇぇぇぇぇ!!」


ギャーギャーギャー

 < ナンダ、ケンカ カ?  < アサモ、アイツラ ヤッテタゾ < リアジュウ、バクハツ シロ−!!


「ダメだこいつら…………もう知らね」

友は自分の席に着くと深く溜め息を零した

(俺の高校生活が変態どものせいでどうにかなりそうな件について…………ハァ)

さてさて、どこにでもありそうな彼らの日常が静かに幕を開けた


以上、次回は水曜 夜10:00を予定しております。では



意外とこういう直球は少ないので期待



期待してます

乙ー

なぁ、知ってるか
女子『校』生ってのは女子校に通ってる生徒を指す言葉だ

そして
「女子『高』生は基本的に18歳未満だろうけど、女子『校』生だから18歳未満とは限らないんだぜ!」

とAVやエロゲが
「この作品の登場人物に18歳未満はいません!アウトな要素はありません!どう見てもセーフです!」
とごまかすために使う言葉でもあるんだぜ

姉御はどっちなんだい

乙レスありがとうございます

>>25
女子(高)生の間違いですね……
物語に出てくる生徒は、全員未成年です

ご指摘ありがとうございます

あのあとニコニコと教室に入ってきた担任もとい保健室の先生に声を掛けられた二人は

人が変わったように静かになり自分の席へと戻っていった


「はい、それじゃあ一年間あなた達の担任しますから宜しくね」


「うおおおおおおおお!!」


「きゃあああああ、先生かわいいいいい」


男子も女子も、その愛嬌のある口調と容姿の虜になってしまったようだ

(絶対、猫かぶってるよな……)

メガネは決して口に出さないように口元を隠しながら苦笑いを浮かべた

もう一人この真実を知っている少女の顔を見ると同じような反応をしていた

(それにしても可愛いかったなー///仕草とかは男っぽいと思ってたけど、笑うとやっぱ女の子って感じだな)ウンウン

などと一人で納得していると、視線を感じ取ったのか少女は振り向きコチラを睨きた


(あっ!気付いた…………おぉ、焦ってる焦ってる。照れてる顔も可愛いなぁ〜)

とうつつを抜かしていると

「メガネ君、先生が話してる途中なんだから、ちゃんと聞かないと駄目ですよ!」

「え……あっ、はい!すいませんした」


「アハハ、先生の怒ってる姿も可愛い」

「おい、メガネ!あんま先生に迷惑かけんじゃねぇぞ」


メガネは周りの笑い声なんて、もはや気にならなかった

このままだったら殺される……とメガネは内心焦った。しかし、そんな予想は回避された

「も〜、初日から仲良くなった姉御さんが近くだからって、授業中に見るのは良くないですよ」

姉御と呼ばれた少女はドキッとし、アタフタと変な動作をしていた


(そっか、みんながいるから素がだせないのか……………っていうか姉御ちゃんっていうのか可愛い名前だなぁ)ニヤニヤ

メガネは安心したのか嬉しさからか気持ち悪い表情を浮かべながら先生の顔を見つめた

しかし、これも先生の思惑があっての言動だった

(今のガキは異性に対して臆病だからな……ちっとからかってみるか)

「もう、そんなに姉御さんと見つめ合いたかったら、前に出てきて堂々とやりなさい」

と言い終えると先生は心の中でニヤニヤしながら二人の顔を観察した

「な//////」

姉御は驚愕を隠せない表情で顔を真っ赤にしながら何かを訴えていた

(ハッ!勝気ぶってもやっぱメスガキだな……さーて次はっと)

優しい微笑みの裏側でケラケラと嘲笑いながら本来のターゲットであるメガネへと視線を移すと



ガタッ


「…………」


メガネは勢い良く立ち上がると、俯いたまま黙り込んでしまった

ざわ……ざわ……

周りも動揺しているのか、ざわつきながらメガネに注目した

(おいおい……、キレる十代ですってか。頼むからこれ以上問題を増やさすんじゃねーよ……)

自分の撒いた種なのだが悪びれもせず、ただメガネの動向を伺っていた

「いいんですね……?」

「えっ……」

クラスの連中は聞き間違いを懸念して、先ほどとは打って変わって沈黙に包まれた

「本当にいいんですね!!!やっふおおおおお////やっぱ、先生サイコーっす!!!
 おーーい、そういうことだから前に出ようぜ」


メガネは飛び跳ねるように姉御に近付き、袖を掴んで前へと連れていこうと引っ張った


「や、やめろおおおおお///」

「大丈夫だって。先生の許可も貰ったし!それに、こんなチャンスめったにないぞ」

「一生なくて困らねーよ!!!!うがああああああああ」

ジタバタと暴れる姉御を、まるで気にしていない様子で前まで出てくると,逃げられないように自分と教団との間に姉御を挟み肩を掴み

「いざ向き合うとなると、恥ずかしいな////」

と照れ笑いしながら、顔を真っ赤にし小刻みに震える姉御の顔を見つめる

「いや〜やっぱ可愛いわ///いま気付いたけど、がさつそうなのにちゃんとメイクとかして辺り女の子していて可愛いわ〜」

ペラペラと次から次へと聞いている方が恥ずかしくなってくる台詞を垂れ流していった

クラスの連中もメガネの大胆な行動に呆気にとられ、ドキドキしながら二人に注目していた


ただ一人を除いては

(えーっと、なんだ……。コイツ等あとで絶対に締める。はい、決定)

冷静に二人の様子を観察しながら、どんな締め方にするか考えていた

唯一の冷静な者の先生までもが、このカオスな状況を放棄してしまったためしばらく続くかにみえたが、案外、終焉は早かった

「さっきからふざけたこといってんじゃねぇぞ!!」

「ふざける?とんでもない僕はいたって真面目さ!可愛いものを愛でるのは動物の本能だろ?」

「私は人間だあああああ!!それに可愛くねええええ///」



「うわぁ、またヤり始めやがったよ……勘弁してくれよ」

「お、おい!友の奴が止めようとして返り討ちにあったぞ!!」

ギャーギャーギャー


もう祭りと化した教室は収集がつかないレベルになっていた

「何度でも言ってやるぞ?可愛い! 可愛い! 可愛い! 可愛い! 可愛い! 可愛い!」

「や、やめろおおおおおおおおお/////殺す! 絶対、殺してやる」

(はぁ…………そろそろ締めるか?)


その後、二人は天使のような優しい笑顔の先生に連れていかれ、そのあと暫く戻ってこなかったのは言うまでもないだろう


以上。次回は金曜の10:00になります

今日予定しておりました投下ですが
諸事情により明日夕方05:00となります

すいません



「はぁ、酷い目にあった……」

メガネは深く溜め息を吐きながら、先ほど先生から受けた説教と言うなの調教で負ったダメージが、まだ痛むのか鳩尾を摩りながらヨロヨロと教室に戻るため廊下を一人歩いていた

(姉御ちゃんも怒ってるのか先に帰っちゃったし、もう帰宅時間だし最悪だ……)

彼は、ブツブツと愚痴を漏らしながら、やっとのことで辿り着いた教室のドアを開けると

「おっせぇー!!待ちくたびれたぜ。さっさと中に入りやがれ」

(あっれー、僕は確か教室に戻ったはずだよな?なぜ、先生が教団の上に座って鞭を構えてるんだ……)

メガネは、何度も教室のプレートに書かれている『1−C』を確かめながら、ソワソワと落ち着きがなかった

「あ、あのー先生」

「あぁ……なんだよ」

先生は少しイ不機嫌なのか、ギロッとメガネを睨むと面倒臭そうに返事をした



「僕の今の頭脳では、この状況を理解できないのですが……説明して頂けないでしょうか?」

目の前にいる強者に媚び諂うのが板についてきたのか、メガネはできるだけ下に下〜にを心掛けて先生の前に正座をした


「それはな……」

「それは…………?」



急に声のトーンを低め真面目な顔をした先生を見て、つられるようにメガネも顔を強ばらせた



「暇だから少し付き合え」


「はあぁぁぁぁぁぁ!!」



メガネは腹の奥底から叫んだ

「うっせー!!」

バコッ

「いでっ!」

メガネは殴られた頭を摩って、涙目になりながら先生の顔を見上げた


「お前が問題ばかり起こしやがるから、職員室で話題になってやがるから居づらくなっただろうが!!」

「え、先生もそういうこときになさるんでs……あっ、猫かぶってるからか」

「なんか言ったかなメガネ君?そのメガネを叩き割って『地味男君』に昇格してやろうかぁ」

「すいません! すいません! すいません! すいません! (昇格どころか降格しちゃうよ!没個性だから仕方ないけど……)」

メガネは何度も額を地面に打ち付けたかいもあってか、なんとか左を決めた体制で話をすることが許可された

「たくっ、素直に嬉しいなら嬉しいと言いやがれ……余計な使っちまっただろうが」

「すっ、んません!すごく嬉しいです!すごく嬉しいので、そろそろ解放して……」

「そういやー、教室の見回りに来る先生は、あと一時間も経たないと来ないんだったなぁ……それまで頑張やメガネ君」

先生は天使のような可愛らしい微笑みで悪魔のような提案をしてきた


(考えるんだ……何か興味を惹く話題を提供しなければ、僕の左手は肩より上に一生あがらないぞ……)

「いや〜、今日もいいお天気ですね」

「そだな」

「で、では先生は春夏秋冬の中だったら、どれが一番好きですか?」

「梅雨」

「じ、じゃあ好きな飲み物は何ですか?」

「怯えて泣いてる野郎を見ながら飲み酒」

(駄目だ会話にならん……しかも、なんで趣味の悪い解答ばっかなんだよ)

メガネは項垂れるように俯きながら、考えるのを辞めようとしたとき


(そういや、初めて先生に会ったときも俺を投げ飛ばしたっけ……これはいけるかも)

(あぁ……コイツ急に笑い出しやがったぞ。可哀想に変な奴とは思っていたが、本格的に可笑しくなりやがったか)

先生は、急に表情を変えたメガネに対し嫌悪感を抱きながらも左手に掛ける力を緩めなかった

「ねぇ、先生!」

「あんだぁ……言っておくが手は離してやんねーぞ」

(何かが可笑しい……奴は何かしらの策を仕掛けてくるはずだ。こんな奴に尺だが一応用心しておいたほうがいいな)

不敵に笑うメガネに対し、いっそう警戒心を強めながらメガネの動向を観察した

「そう警戒しないでくださいよ……僕はただ先生に頼みたいことがあるんですよ」

「俺に頼み事を持ちかけるとわな……、いいだろう!もし俺が興味を惹くもんだったら解放してやるよ」

「本当ですか!」

(しめた、先生はこの提案に乗り気だ!あとは、僕の覚悟だけだ……)


「ただしっ!!俺の機嫌を損ねるようなもんだったら、その時はわかってるんだろうな」

先生はニタリと不気味に笑いながら、どう拷問するか思考がクラスチェンジしていた

「じゃあ、聞かせて貰おうか?テメーのちっぽけな脳みそで考え抜いた提案をよぉ!!」

(大丈夫だ!僕ならきっと上手くやれる)

メガネは深く息を吸い呼吸を整え、そして……




「僕を先生の弟子にして下さい!!!!!」





「あぁ?」




「いや、だって先生の体格からは考えられない力を自分で体験したら誰だって力の秘密をお知りたくもなるでしょう?」

何を言ってるんだ?と言いたげに、先生は口をポカーンと開けたままペラペラと話すメガネの話をただただ黙って聞いていた

「ということで、楽しい学生生活には興味ありません。先生の弟子として生きていこうと決めました。お許し頂けますか?」

メガネは恐る恐る先生の顔色を確認しようと後ろを振り向いた瞬間


「いででででででででっ!!!」


メガネは先ほどとは比にならない程の激痛に悶えた

「ククク……クハハハハハハハハ!こいつは傑作だ、俺の弟子になるだぁ?ここまでくると馬鹿どころか変人の領域だなこりゃ」

「えーとっ、これはOKと解釈しても宜しいでしょうか?」

「いいぜ!お前みたいな馬鹿を上手く使える奴も居ないだろうし、俺が優しく調教してやるよ」

メガネは今頃になって、自らの発言を訂正したいと怯えながらも、まずは解放されt……




「……てない。先生、そろそろ解放していただけると嬉しいいのですが…………」

メガネは機嫌を損なわないように質問をした

「あぁ!!なに甘いこと言ってやがる!力が欲しいなら、身をもって学習するのが礼儀ってもんだろうがよ!!」

(結局こうなるんですね…………今度こそ本当にアディオス僕の学生生活)

教室には高らかに笑う先生の声と痛みに耐える悲鳴とが暫く響きわたっていた

以上。次回は月曜の夜10:00となります。では


「や、やっと解放された……」



メガネはヘトヘトになりながら、とぼとぼと誰もいない廊下を独り歩いていた

「まさか、延長するとは思わなかった……」

あの後、場所を変え先生の気が済むまで、特訓というなの調教に付き合わされたため

体の節々が悲鳴を上げているのが分かった

「あれが毎日、続くんだろうな……」

メガネは少し憂鬱そうに溜め息をこぼしていると

「あ、あのーメガネ君だよね?」

急に声を掛けられた為か、メガネは肩をビクッと震えさせて素早く後ろを振り返った

「きゃ!ご、ごめんなさい……」

目の前にいたのはメガネと年が同じくらいの少女が小さく悲鳴を上げながら蹲っていた


「あ、あの、どちらさまで?」

メガネは困惑したように、そう少女に声を掛けた

「突然すいません、同じクラスの『女』といいます。友君の前の席の」

「友の前の席……?」

メガネは自分の脳をフル回転させて思い出そうと頑張った

「お、思い出して頂けましたか……?」

「駄目だ……、まったく記憶してなかった」

メガネは、少し期待していたのか微笑みながら顔を覗かせている女に、申し訳なさげに言った

「そうですか……残念です」

「いやいや、これから仲良くなればいいじゃないの!!ほ、ほら友とも面識あるみたいだし」

今にも泣きだしそうに残念そうに俯く女に必死でフォローをいれた



「えっ!!いいんですか?」

「も、もちろん。てか、むしろ友達になって欲しいって頼みたいくらいだよ」

「はい、こちらこそ宜しくお願いします!!」

パァっと急に明るくなった女を見て、なんとか難を乗り越えたとホッと一息つこうとしたときメガネは、ある疑問に気が付いた

「そういえば、なんで下校時間過ぎてるのに帰ってなかったの?」

「そ、それは〜///」

女は少し恥ずかしそうに、体をクネクネさせながらチラチラとメガネを見つめてきた

(おいおい、さっきから体をよじれさせて、どうしたんだ?しかも顔も少し紅いし……ハッ!!)

メガネは、いま自分の人生で最高に頭が冴えていると思いながら得意げに女に告げた

「なんだ、早く言ってよ……僕の方から話そうか悩んでいたところなんだ」

「えっ///////メガネ君も……」

女は少し表情が緩み安心したようにメガネの顔を見つめた


メガネはその表情を見て確信し、頷くとゆっくりと右手を女の頭へと伸ばしながら口を開いた

「トイレなら少し歩いた先にあるよ!僕も実は我慢してたんだよね〜、ついでだし一緒に行こう」

そういうと先に駆け出し、ある程度進んだところで振り返って手招きをした

カツン……カツン……

「…………」

女はゆっくりとメガネの方へと歩み寄って来た

しかし、俯いて顔が見えないせいか、先程の柔らかい印象と違い、纏っている雰囲気が違って見えた

「えーっと、女さん……。どうなされたんですか?」

メガネはこの空気に見覚えがあった。というより今日だけで何回も目の前で見てきたためか、嫌でも体が察知していた


(いやいや、怒らせる場面じゃねーだろ!今の選択に間違いなんて……あっ)

メガネは致命的なミスをしていた……

そう、目の前にいる人物は紛れも無く女性なのだ、しかも花も恥じらう女子高校生なのだ

そんな少女に、ましてや面識もない少年に、トイレに行きたいことがバレてしまったら悶絶ものである

(やっべーよ、姉御ちゃんが可愛すぎて、全然気にしてなかったよ……)

この状況下に置かれても、姉御のことを忘れない彼は、特殊な人間と評価しなければいけない

「ご、ごめんね……、やっぱ女の子に対してトイレのお誘いは御法度だったよね
 じゃ、じゃあ僕は、トイレに行ってくるから少し時間かかると思うけど、ここで待っててね」

決まった、メガネは今度こそ確信しながら、女に背を向けた


(自分が、トイレから暫く戻らないと先に言っておくことで、女はその隙に安心してトイレに行けるという作戦……我ながら自分の才能が恐ろしい)

などと誇らしげに歩いていると、また肩を掴まれた

「痛っ、いつつつつつつつつっ!!」

しかも、先程よりも、かなり力が籠っていた

「い、痛いよ!女さん急にどうしたの……ヒィッ!」

振り返ると先程の温厚そうな女は立ってはいなかった、その代わり殺気を纏いながら般若が睨みながら立っていた

「お、女さんだよね?あれ、可笑しいなぁ、疲れているのか目の前に般若が見えるや……女さん、ごめんね先に帰るね」

そう言って立ち去ろうとするが、先程から肩に掴まれている手のせいで、一歩も動けなかった



(な、何がいけなかったんだ……。いや、そもそも目の前にいる者は人間なのか?)



(僕が疲れていることを考慮しても、この握力はゴリラ並みだぞ。そうか、コイツはゴリラと鬼のハーフなんだ)


などと現実逃避をしていると、耳から現実に引き戻される位、ドロドロとした低い声で

「顔から 潰されたい,それとも 腹から がいい かしら?」

そう告げられた瞬間、全身の鳥肌がゾワッと立ったのが、何とかメガネは感じ取れた

「私がトイレに行きたいって、いつ言ったかしら」

「一度もありません……」

「そーよねぇ、なのになぜ貴方は、私がトイレに行きたいと思ったのかしらぁ?」

(ここで間違えたら本当に終わる……)

メガネは、もう考えるのを止め、ゆっくり深呼吸し、ゆっくりと告げた

「だって、あんなに体をくねらせて、顔を紅らめていたら、誰だって勘違いしちゃうよ」

どうせ結果が同じなら、強気で言ってみようと、悪びれた雰囲気を隠しながら彼女を顔を見据えた


「っぐ、仕方ないでしょ!こっちだって、恥ずかしかったのよ///」

(おっ!悪くない反応だぞ、ここまま上手くやれば押し切れるかも)

メガネは、女の反応が良かったことに安心しながら、次に攻める一手を考えていた

「恥ずかしかったって事は、他にやましい理由があるってことだよね?」

「し、しまった!」

女は思わず手で口を押さえながら、焦っているのかメガネと視線を合わせようとしなかった

(やっぱりね、いける……あともう一息かな)

メガネはニヤリと口を弧の形にさせながら、小さく怪しげな笑い声を出した

「ハハハ……、墓穴を掘ったね!で、どんな理由か教えてもらってもいいかな」

「……調子に乗りやがって」

「なんだって、よく聞こえないから。もう一度お願い」




「私を待ってくれてたのよ」


「なにっ!?」



突然、背後から声が聞こえたかと思うと、次の瞬間にはメガネの体は宙を舞っていた

「お姉ちゃん!!」

「もう、時間になっても来ないから、心配して探しに来たんだから」

「ごめんね、この男に言い寄られてたの?」

女は姉と慕う少女に抱きつきながら、地面に倒れて気を失っているメガネを指さした

「まったく、可愛い妹に手を出さないでよね!次に妹に近づいたりしたら、もっと痛い目に合わせるよ!!」

「メガネ君なんか嫌い!」

フンッと言い捨て、姉に引っ付きながら女は幸せそうな顔をしながら、その場を後にした



「あぁ、こんな何してんだ?お前」


先生が、メガネの残念な姿を見つけるのは、もう暫く後のことである


以上。次回は、水曜の夜10:00の予定です。では

すいません、今日の投下は明日の夜10:00に変更にします

「あぁ、こんな何してんだ?お前」


先生が、メガネの残念な姿を見つけるのは、もう暫く後のことである


「はぁ〜……」

連日の特訓での疲労のせいか、メガネは独り窓から外の景色を見渡しながら溜め息をついていた

「まだ五月だというのに、もう俺の疲労は限界値に達そうとしてるぜ」

などとぼやいていると

「1・2・1・2・1・2」

と一定のリズムでグラウンドを走る道着姿の少女達が目に入った

(ははっ、この時期だから一年生の練習内容のうちに入ってんだろうな)

お互い大変だねぇ……と同情していると見覚えのある少女の姿が目に入った

「あれって、姉御ちゃん!?」

メガネは窓から身を乗り出し、グラウンドを走る集団をじっくり観察した

(確かに、さっき姉御ちゃんがいたはずなんだけどな……)

メガネは目を擦りながら、もう一度グラウンドを見つめなおした

「おい、旦那!旦那!」

「う、うわぁ!?」

メガネは突然、声を掛けられた為、一瞬バランスを崩しそうになった

「おおっと、そんなに身を乗り出したら危ねーぞ、メガネ」

「なんだ友、お前かよ」

メガネは、目の前でニヤニヤと笑っている友の姿を確認すると胸をなでおろした

「なんだとは、なんだよぉ〜!人がせっかく良情報を持ってきてやったのに」

「良情報……? いらねーよ、こっちは忙しいんだよ」

そういうとメガネは、またグラウンドを見つめ直した

「それが、姉御さん関係でも同じことを言えるのか?」

「何ぃ!!」

友は、わざと憎たらしい笑みを浮かべながら、メガネの反応を楽しんでいた

「友、いや友さん!詳しくお話を聞きたいので教室に戻りましょう」

「ふむ、わかればよろしい」

友は満足そうに、メガネの肩をポンッと叩き、脇を通り過ぎると

「付いてきな……」

「お、おう」

と背を向けながら手招きをした

メガネも少し遅れながら、慌てて友の後ろを追いかけるように駆け出した






教室に着くと、もう生徒は下校したのか、ガランとしていた

「ラッキー!誰もいないとは踏んでいたが、まさか先生まで外出中とかついてるぜ」

メガネは、例の猫かぶり教師が居ないと知ると、安心したのかホッと溜め息をついた

「ほんじゃあ、さっそく聞かせて貰おうか?その良情報とやらを」

「まぁ、そう焦んなって、これでも情報を集めんのに苦労したんだぜ」

メガネは焦る気持ちを落ち着かせようとするが、姉御絡みだからなのか、どうも上手くいかなかった

「あぁ〜もぉ〜、もったいぶってねーで、早く聞かせてくれよ」

「じゃあ、そっちもそれなりの物と交換な」

友は焦るメガネを見て、面白がっているのか、ニヤニヤとしながら答えた


「な、なんだよ金を取る気か?言っておくが、最近金欠で期待できる値じゃねーぞ」

「誰がお前なんかの少ねー金を欲しがるんだよ!!情報なら情報と交換に決まってんだろ」

そういうと友は、催促するようにバンバンと机を叩いた

「じょ、情報っていってもなぁ……」

メガネは困ったように、考える素振りをしながら俯いた

「ないなら諦めn」

「あった……。とっておきの情報がな!!」

急に叫び出したメガネに、驚きながら興味深そうに微笑んだ

「じゃあ、言ってもらおうか!そのとっておきを」

「ふっふっふっ!」

不敵に笑うメガネに不気味に思いながらも友は、身を乗り出した


「もったいぶってねえで、早く言えよ」

「ふっふっふっ!お前、女ちゃんと仲いいみたいだな……」

「な、なに!?」

「前から怪しいとは思っていたが、やっぱりな」

納得するように頷きながら、焦る友を見て笑う

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