男「君はここで何をしているんだい?」
少女「まちあわせ?」
男「うしろにいるのはご両親かな」
少女「ううん、おとなりさん」
男「僕がいうのはなんだけどここは危険だよ」
少女「でもいけにえをしないとかえれないの」
男「生け贄ねぇ、ただの人間を貰っても困るんだよなぁ」
少女「ダメなの?」
男「僕が欲しいのは変わり者だからね」
少女「わたしはかわりもの?」
男「性格は変わってるけど、まいっか。うちに来るかい?」
少女「でももりの神さまにいけにえしないと」
男「あぁそれは僕のことだから」
少女「ほんと?」
男「それともこのままお隣さんみたいに、食われるのがいいかい」
少女「やだ」
男「なら決まりだ。迎えを用意するからあまり動かないでくれよ」
少女「うん」
少女「馬?」
男「少し距離があるからね」
少女「とおいの?」
男「あそこに白いのがあるのは見えるかい?」
少女「うん、たかいやつ」
男「あそこまでいく」
少女「ほぇ~」
男「馬は乗れるかい?」
少女「わかんない」
男「だめか」
少女「ごめんなさい」
男「いやなに、謝ることじゃないさ」
少女「わかった」
男「どうせ時間はある、話しでもいけば夜にはつくよ」
少女「えー」
少女「つかれたー」
男「まだ半分も来てないんだけどね」
少女「もうあるけない」
男「ここで夜を明かすのは面倒なんだけど」
少女「でも足いたい」
男「じゃあこれから言うものを用意してもらえるかな?」
少女「やだ」
男「やだっ……用意してくれたら歩かなくて済むよ」
少女「やる!」
男「君が踏んでも割れない枝を10本と葉っぱをたくさん」
少女「それだけ?」
男「これだけさ」
少女「ウソじゃない?」
男「僕は契約に関しては忠実だからね」
少女「えだっておったのでもいい?」
男「大丈夫だよ。あぁあまり遠くには行かないでくれよ」
少女「なんで?」
男「獣とか追い払うのが面倒だからね」
少女「犬とか?」
男「犬いるね、狐に熊に蛇、たまに龍もやって来るし」
少女「りゅう、ヘビのでかくてハネのあるやつ?」
男「ん~、龍にも色々あるからね。羽がないのもいるし」
少女「ハネなかったら飛べないよ」
男「土の中を泳ぐんだよ」
少女「それってミミズのこと?」
男「そうともいう」
少女「あつめたよ」
男「じゃあ目をつぶって10数えてみようか」
少女「おとなりさんみたいにいなくならない?」
男「ならないならない」
少女「ウソつかない?」
男「もちろん」
少女「わかった。い~ち、に~、さ~ん、……
少女「ななのつぎってなんだっけ?」
少女「あれ」
男「ん?」
少女「いすだ」
男「椅子だね」
少女「座ってもいい?」
男「椅子に座る以外に何か使い方はあるのかい?」
少女「おかあさんはよくなげてた」
男「誰に?」
少女「そんちょさん。それでよくこわれてた」
男「村長が?」
少女「ううん、かべ」
男「まぁ椅子に座ってもらったわけだけど」
少女「おしりチクチクする」
男「葉っぱだからね」
少女「いたいー」
男「ただ座り方は逆がいいかな」
少女「ぎゃく?」
男「背もたれ、その板を抱きしめる感じに座った方がいいかな」
少女「こう?」
男「うん、ギュッと掴んだかい?」
少女「うん、それで?」
男「『走れ』」
少女「ほぇ?」
少女「わー、いすってはしれたんだー」
男「四つ足だからね」
少女「しらなかった」
男「だろうね、じゃあ僕は先に戻るよ」
少女「うん」
男「……、もしかして楽しい?」
少女「うん」
男「まぁ蔦で結んだし大丈夫か」
少女「うわぁでかいエントツ」
男「塔だけどね、さぁ開いてるから入ってくれ」
少女「カギは?」
男「掛かってないよ」
少女「危ないよ?」
男「普通はここまで来れないから大丈夫だよ」
少女「ほんと?」
男「現に君のお隣さんが食われてただろ?
あんな感じでここを守ってくれる。あんなのが沢山いるし、死なない」
少女「うわぉ」
男「それに折角きてくれた客人に居留守を使うのは失礼だしね」
少女「いるす、お母さんよくやってた」
男「さぁ立ち話もこれまでにして中に入ってくれ」
少女「うん」
少女「あかない」
男「ありゃ、錆びてるのかな」
少女「どうするの?いすなげたらあく?」
男「空かないかな。ん~」
少女「あかないのに、どうやってでてきたの?」
男「その辺にあった身体を拝借したからなぁ」
少女「じゃあいっしょにおす?」
男「あー、ごめん」
少女「?」
男「それ引くんだわ」
少女「おじゃましまー」
男「されます」
少女「くらいー」
男「すぐになれるよ」
少女「うー」
男「そこの階段をのぼった先に机がある」
少女「机も走る?」
男「10本足だから走らない」
少女「えー」
男「そこに僕が待ってるから」
少女「いっしょにこないの?」
男「あぁ、でもすぐに行くよ」
少女「わかった」
少女「こんばんは」
男「やぁこんばんは」
少女「さっきとおなじ?ちがう?」
男「中身は同じだよ」
少女「なかみ?」
男「疲れてないかい?少し古いけど焼き菓子あるよ」
少女「わーい」
男「さてと、改めて聞くけど君は生け贄が何かはわかってるかな?」
少女「えっと、神さまのおせわをすることっておかあさんがいってた」
男「お世話ね」
少女「うん」
男「しかしみてのとおり不自由はしていないからね」
少女「そうなの?じゃあわたしはあらない?」
男「世話役なら不要だけど、生け贄としてなら必要かな」
少女「ほんと?」
男「あぁ、試してみたいことが幾つかあってね。
もし君が僕に協力してくれるなら、君に力を貸そう」
少女「協力?」
少女「あっおなかすいた」
男「……大事な話の途中なんだけどね」
少女「でもきのうからなにもたべてない」
男「昨日から?」
少女「うん、神さまのところにいくんだから、からだをきれいきれいしなさいって」
男「……食べると汚れるからね」
少女「うん、でもちょっとだけたべた」
男「なにを?」
少女「はっぱ」
男「食べものなら食料庫にいくらでもあるはずだからあとで好きにしたまえ」
少女「どこ?とおい?」
男「地下にある青い扉だよ」
少女「くさってたりしない?」
男「たぶん大丈夫」
少女「たぶん」
男「中を閉鎖してからだいぶ立つからね。何かしら不具合があってアレがおかしくならない保証もないか」
少女「もしダメだったら、がしる?」
男「干し肉があるからしばらくは大丈夫かな?」
少女「肉!」
男「肉は大丈夫かい?最近は肉食を禁じる宗教があるらしいけど」
少女「好き!大好き!かたいのやわかいのじゅわっとするみんな好き!」
男「……そうかい」
少女「うん、すき」
男「じゃあまずは食料庫の確認、それから話し合いをしよう」
少女「お肉たべたい」
男「……夕飯を食べたら、話し合いをしよう」
少女「うん!」
少女「あかない」
男「ん~、中から閉じられたっぽいし、こりゃ無理かな」
少女「にくー」
男「ここは穀物とかばっかで、干し肉は隣だよ」
少女「開けていい?!」
男「いいよ」
少女「おじゃましまーす」
男「……どう?」
少女「にく、のもり!てんごく!」
男「生々しい天界だなおい」
少女「もきゅもきゅ」
男「あの」
少女「あげないよ」
男「うん、そのままでいいけどさ、これからの話を聞いてくれるかな」
少女「ほれはら」
男「僕は君に居場所、そして求めるものを与えよう」
少女「ごくん、うん」
男「代わりに君はその身体を僕に提供してもらう」
少女「おてつだい?」
男「そう、研究の手伝いだ」
少女「けんきゅー?」
男「僕は探しているものがあって、それを求めるための手伝いだよ」
少女「探し物って?おかね?」
男「不老不死」
少女「ふろーふし、おいしい?」
男「死なないってことだよ」
少女「死なない……おじぃみたいにならないの?」
男「かな?」
少女「私もなれる?」
男「研究がうまくいけばなれるかな?」
少女「それって面白い?」
男「つまらないだろうね。いや、詰まらなくなると言った方が正確なのかな?」
少女「?」
男「もし断るなら村まで送ろう。受けてくれるなら……あの干し肉をみんなあげよう」
少女「うける!」
男「じゃあこっちの紙に手のひらを置いてもらっていいかな」
少女「うん」
男「右手あげて」
男「左手あげて」
男「背中みせて」
男「舌だして」
男「……肉は飲み込もうか」
少女「ん」
男「あぁそうだ」
少女「?」
男「いや、君がいた村は何か困ってたことはあったかい?」
少女「犬がうるさかった」
男「他には?」
少女「ぱんがやわかかった」
男「他には?」
少女「まおとこがどうとか?」
男「……」
少女「あと>>30 ?」
干害
男「それかな?」
少女「?」
男「いやなに、君がきた理由がなにかなとね」
少女「わたしがくるとあめふるの?」
男「僕が降らせるんだよ」
少女「えっ、できるの?」
男「面倒だけどね」
少女「どうやるの?どうやるの?」
男「話し合いだよ」
少女「だれとはなすの?」
男「僕の古い知り合いだよ」
少女「お友だち?」
男「知り合いだよ」
少女「ふあぁ」
男「今日は遅いし続きは朝にしようか」
少女「うん」
男「寝所は用意してないから、その辺で寝てくれ」
少女「だいじょうぶ」
男「お休み」
少女「おやふみなはい」
男『いいかい?君の仕事はこの手紙を届けて、読み上げるだけだ』
少女『でも、わたしよめないよ』
男『大丈夫だよ。読めるようにしたから』
少女「はい」
狼「我は文字が読めん」
少女「だいじょうぶって……えっと、あの人が」
狼「なら人の子、お前が読め」
少女「でもわたしよめない」
狼「いいから読め」
少女「むぅ、あれ?」
狼「それでなんと書いてある」
少女「えっと、『そのままだと彼女がいさめにくるよ』?」
狼「……わかった。止めよう。それとな」
少女「いさめ?」
狼「人の子!我の毛を弄ぶでない!」
少女「もふもふ」
狼「えぇい、いじるな!編むな!よるな!」
少女「にくたぷたぷー」
狼「それは筋肉じゃ!」
少女「にくー」
狼「噛むな!」
狼「人の子、そちがあやつの使いでなければ食ってるところじゃ」
少女「もふもふ」
狼「……」
少女「ねぇ狼さん」
狼「なんじゃ」
少女「わたしはたべてもおいしくないよ」
狼「誰が食うか!」
少女「あっ、そこをみぎに」
狼「どうみてもまっすぐじゃ!」
男「おや、珍しいね」
狼「それは我のセリフぞ。なんじゃこの娘」
男「僕に捧げられた生け贄だよ」
狼「そういう意味ではない!」
男「じゃあ新しい研究体だよ」
狼「研究…相変わらずそれか」
男「うん」
狼「ちっ」
少女「ふかふか」
狼「それで、なぜ主が我に干渉する」
男「あぁ、君があの山で寝泊まりしてるせいであたりの地脈が乱れて天候不純みたいなんだよ。
それを僕に解決させるための生け贄がその子、そして原因が君だ」
狼「ふん、人とは天気程度のことで仲間を売り渡すか」
男「そりゃ人だからねー」
狼「主も人とは違うと言いたそうな口振りじゃの」
男「うん、僕は研究の為なら僕自身を差し出すつもりだから」
狼「まぁよい、我が動いて解決するなら是非もない、お主と争いごとは厄介だしの」
男「助かるよ」
狼「それはそれとして風呂を貸してはくれんか」
男「風呂?いいけど、珍しいね」
狼「貴様の娘が我の背中をヨダレまみれにしたんだ」
男「うわぉ、たぶん沸いたままだからいってきなよ」
狼「覗くよ」
男「覗かないよ」
少女「んにゃ」
男「おそよう」
少女「肉は!?白いもふもふでモギュモギュのお肉」
男「……今は風呂に入ってるよ」
少女「ふ…ろ?」
男「身体の汗をながしてるんだよ」
少女「みずあびのこと?」
男「水じゃなくてお湯だけどね」
少女「おゆはだめ」
男「だめ?」
少女「ゆでるは味がなくなる。ゆでるより焼く!どこにいるの」
男「……地下の左、白の扉だよ」
少女「わかった!」
男「……天狼も人にかかればただの肉、か」
狼「なんだ、お主も入るのか?」
少女「かまゆで」
狼「釜茹でではなく風呂だ」
少女「ふろ」
狼「そう風呂だ。身体の汚れを落としてくれる。
ここのはいいぞ、なんせ沸き立てを流しっぱなしだから湯は常に綺麗だ」
少女「もったいない」
狼「せき止めても他の場所から溢れるだけじゃ、ならば有効活用してる方がマシというものじゃ」
少女「ちょっと待ってて」
狼「ん、まぁよいが?」
男「おや、ずいぶんはやいね」
少女「カギ」
男「なんのだい?」
少女「しょくりょうこの、あけるっていってたよね」
男「あぁ、あそこならもう開いてるよ」
少女「わかった、やさいもらうね」
男「……野菜?」
狼「なんじゃそれは」
少女「やくみ」
狼「薬味……あぁ、香草のことか」
少女「うん、たぶん?」
狼「しかしなぁ人の子、ネギと生姜はまだしも、人参やカブは薬効があまりないぞ」
少女「でもおかあさんは入れてた」
狼「ふむ。それにこういった物は予め粉にしたり砕いたり火を通したり干したりしておくものじゃ」
少女「そうなの?」
狼「うむ」
少女「……きってたかも」
狼「そうじゃろそうじゃろ」
おやすみ
常套句ですが、起きてスレ残ってたら続けます
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