女騎士「くっ、凍える!」(26)

女騎士「カジノで大負けして身ぐるみはがされちゃったZE!」

女騎士「せめてもの情けか、下着だけは勘弁してもらったが…この時期にこの格好は命にかかわる」

女騎士「とは言っても無一文。服を買う金が無い。どうしたものか」

ブルッ

女騎士「さ、寒い…震える…な、何やら下腹部に違和感が…」

ビュービュー

女騎士「風が強くなってきた…寒い…」

ブルッ
ジワッ

女騎士「くおっ…こ、これは…」

ジワワッ

女騎士「尿意…」

ーー尿意ーー

尿意とは、尿の気配。尿の予感。
避けようの無い、絶対排出の宣告。
膀胱からの微弱な電気信号が神経を疾走し
脳内に張り巡らされたニューロンとかニュートロンとかシナプスとか
なんかだいたいそういう感じで
アンモニア、塩分糖分、愛しさや悲しさ
僅かばかりの心強さを含んでいる。

それが尿であり、あるいは宇宙。
誰しも膀胱に秘めている、ただひとつの真理(せいかい)。

女騎士「そう、尿とは宇宙。私という存在、父と母…そのまた父と母…一族…生命が誕生したその奇跡…ありえない確率がッ!私をッ!尿をッ!」

ブルッ

女騎士「故に!漏らすことは恥では無い!断じて、断じてだッ!」

ブルルッ

女騎士「あとはその覚悟…覚悟が…覚悟だけが…足りない…」

キッ

女騎士「足りない覚悟は…勇気で…補う!」

ニヤッ

女騎士「…そうだろ、勇者?」

巡り合い宇宙(またお前かの意)

チョロロロロロ…

女騎士「長々と説明しているから!私は!漏らしてしまったではないか!」

チョロロロロロ…

女騎士「ま、まだ弱い勢い…しかしあと三分もすれば大洪水!それまでになんとかしなければいけない!なのに私にはどうすることも…できない…」

チョロロロロロ…
ズズッ

女騎士「き、来た!大洪水の前触れ!唯一許された懺悔の時間!猶予!走馬灯流れるめくるめくジェットコースターロマンス!薬物服用にも似た!射精にも似た!地獄極楽!はぁっ!ヌンッ!」

女騎士「溢れるスーパーパワー!ウーッ!ハーッ!」

チョ

その時不思議な事が起こった。
尿の大洪水は発生せず
そのエネルギーは全て女騎士の膀胱に逆流し、破裂した。

ボムッ!

女騎士「はうわっ!」

女騎士「ぐふっ…膀胱が破裂した…今の私は瀕死だ…」

バタリ

女騎士「ぐふっ…」

女騎士「このままでは出血死だ…とにかく血を止めねば…だがしかし、私は治癒魔法を使えないし、薬草も持ち合わせがない…つまり血を止める手段が、今の私には無い…」

女騎士「ぐふっ…」

女騎士「こんな時はどうすればいい…どうすればいいんだ…」

女騎士「教えてくれ…勇者…」

フラッ

女騎士「…」

そうして女騎士の意識は遠のいた…

・・・・・

『せかいが、おわるよ』

『せかい?』

『うん、おわっちゃう』

『せかいって?』

『にんげん、まもの、てんし。みんなのいる、ばしょ』

『にんげん?まもの?そんなもの、せかいのいちぶ?』

『うん』

『ちがうよ、にんげんもまものも、せかいじゃ、ないよ』

『』

『だいてんしさまが、いってる。てんしいがいは、ふじゅんぶつ。せかいは、てんしだけのものだって』

『ちがうよ』

『ちがわないよ』

『ちがう、ちがう!』

『じゃあ、きみは、せかいじゃ、ない』

『?』

『だってきみには…きみのちには…』

・・・・・

・・・・・

女騎士「うぅん…」

女騎士「はっ」

女騎士「ここは…?」

?「気がついたかい」

女騎士「お前は?それにここは?」

?「ここは多目的トイレ、そう、今なにかと話題の多目的トイレさ」

女騎士「そんなところに私を連れ込むとは、物好きもいたものだ」

?「ここに、ね」

女騎士「で?その物好きはどこのどいつだってんだい?名乗りなよ」

?「俺は教師。とある高校で数学を教えている」

女騎士「おいおい世界観ガン無視な奴が出てきたな…って言うのは野暮か。そもそも多目的トイレがあるくらいだしな」

教師「そう、ファンタジー世界に教師がいるんじゃあない。近代世界に女騎士がいるのだよ」

女騎士「ふっ、令和の時代に女騎士か…ずいぶんバズりそうな話だ」

教師「こうやって多目的トイレでお喋りも悪くないんだがね…時間がない。話を聞いてくれ」

女騎士「話?よくわからんが聞くとするか」

教師「理解が早くて助かる。早速だが君には俺の所属する『組織』に入ってもらう」

女騎士「組織?」

教師「とある勢力と戦うために結成された愛と勇気の組織さ、そこに入って、戦ってもらう。つまり君の戦闘力に惚れてスカウトに来たって事さ」

女騎士「ほぅ」

教師「君は剣技、体技ともに素晴らしく魔法も使える。戦術の心得もある。組織はそんな優秀な人材を欲っしているのさ」

女騎士「ふぅん」

教師「給料も出る、福利厚生も手厚い。私生活のサポートも充実している。私が保証する。どうかな、私たちの組織…いや、会社…『ブラック(株)』に入ってくれるかな?」

女騎士「会社…ブラック…ふぅん、ブラック会社ねぇ」

教師「ブラック会社という呼び方は止めたまえ。ブラック(株)だ」

女騎士「いいだろう、入社してやるよ」

教師「話が早い」

女騎士「とりあえずは何か着るものをくれ。今の私は無一文だし全裸ゆえ」

教師「何か着るものと急に言われても…」

ガサゴソ

教師「白ブリーフしか持ってないなぁ」

女騎士「いや黄色いが」

教師「白ブリーフしか持ってないなぁ」

女騎士「主に股間部分が黄色いが」

教師「白ブリーフしか持ってないなぁ」

教師「白ブリーフしか持ってないなぁ」

女騎士「こいつ…」

教師「まさか女騎士さんとあろう方が!この!黄色くて!ガビガビの!白ブリーフを穿けないとでも!言うのかね!?」

女騎士「…」

女騎士(試されている…のか…)

教師「凶悪なオークは倒せても、たった一枚のブリーフは穿けないようだなぁ!?」

女騎士(安い挑発…乗る価値もない…ない、が…今の私は全裸…たとえブリーフ一枚であってもありがたい…)

女騎士(あの綿生地のブリーフ…あったかいに違いない…あのブリーフ…その…優しさに…包まれたなら、きっと…)

!!!!!

その時である!
女騎士の脳裏にかつての記憶が断片的に甦ったのである!

『全世帯…繰り返し使える布ブリーフ……二枚配布…ます』

『これは…新……未知の…防ぐ…』

『自宅で…』

『ステイ…』

『ブリーフ…ウイズブリーフ…』

『ガビガビ…』

キィン…

女騎士「ぐっ!?」

女騎士(今の…フラッシュバック…記憶…私の記憶、なのか…?)

教師「どうしたね、顔色が悪いようだが?」

女騎士「なぁに、ちょっと興奮してめまいがしただけさ」

教師「興奮?」

女騎士「そうさ…ブリーフを穿ける…いや、穿かせて頂けるという幸せによる興奮だよ!」

ガシッ バッ

教師「!、ブリーフを!」

女騎士「私はブリーフを穿くぞジョジョー!」

スポヌーーン

ギャギャギャ!

女騎士「ブリーフ完了」

教師「す、既に穿いている…!?」

女騎士「ブリーフは無闇にかざすものでは無い…ブリーフは牙無き者の為に己の心に穿くものである!!」

教師「な、なんて説得力だ…こうも見事にブリーフを穿くとは…女騎士とはブリーフと共にあるべきもの、と…そう思わずにはいられない!そんな女騎士…君に!最大級の敬意を俺は!」

女騎士「さぁて、じゃあ案内してもらおうか…ブラック(株)に、な」

【続く】

・・・・・

~とあるビル、2階~

教師「ここだ。ここが俺らの組織、ブラックだ」

女騎士「ここか。それよりもいまだに私はブリーフ一丁なんだが」

教師「よく職務質問されなかったな」

女騎士「それはそれで大丈夫なのか」

教師「小さいことは気にしない。それより早く入ろうぜ」

女騎士「入らいでか!」

ガチャリ

女騎士「ブリーフ一丁で失礼する、今日からここで世話になる女騎士だ!ちなみにブリーフの黄ばみは私のものではない!断じて私がつけた黄ばみではない!」

その部屋は、ただっぴろく
椅子が二つ。二つだけあり
いづれも人が座っていた。

一人は緑色の怪物、みんな大好き…そう、オークだね!
もう一人はローブを羽織り三角帽を被った少女…俗に言う魔法使いというやつか。

オーク「ほぅ…君が。教師から話は聞いているよ」

魔「…ブリーフ女…変わった趣味の新人」

女騎士「趣味ではない!」

女騎士「趣味ではないが、ブリーフの履き心地は想像以上で正直普段使いしたいと思っている私がいる」

オーク「ほぅ…ブリーフの素晴らしさに気づいたかね。見所のある新人だな!よぅし!君に俺のとっておきブリーフを差し上げよう!既に販売停止となっており、かの有名なテレビ番組、ブリーフ鑑定団で500万円の評価額を叩き出した!プレミアムなブリーフだ!」

ヌギィッ!

オーク「しかも脱ぎたてだ!」

女騎士(!)

女騎士(初対面でいきなりブリーフを脱ぐとは…このオーク、ただものではないな)

オーク「さぁ、履きたまへ」

ザザッ

教師「待ってくださいよオークさん。彼女は既に俺が渡したブリーフを穿いているんですぜ?」

オーク「ほぅ…それで?」

教師「オークさんのプレゼントしたブリーフを穿くには俺の渡したブリーフを脱がなきゃあならない…それはいかがなものかと思いましてねぇ!?」

オーク「ふむ…嫉妬、かね」

教師「!」

カァッ

教師「し、嫉妬!?この俺が!?」

オーク「無理もない。そのくらいに魅力的だよ、彼女は…女騎士は!」

女騎士「この私が魅力的…ふふ、悪い気はしないな」

ニヤニヤ

オーク「さぁて、どうするね女騎士…俺のプレミアム・ブリーフを穿くもよし。教師の黄ばみブリーフを履き続けるもよし…選択権は君にある…」

カチン

女騎士「選択権…?権利…」

女騎士「ブリーフ与奪の権を他人に握らせるな!」

オーク「握らせる…?違うな、握るのは君じゃあない…私だ!私が握るのだ!ブリーフも!そのほかあらゆる物を!私が!私だけが!」

ズザザッ

オーク「握るのだ!そう、そこにいる愚かな数学教師の命…そしてTNKさえも!」

ズザザッ
ガシィッ
モニュッ

教師「アヒィ」

オーク「生殺与奪の権も!TNKも!私に握らせるのだ!フゥーハハハ!」

女騎士「な、なんて傲慢な…」

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