P「仁奈ちゃんが脱皮した?」 (34)

ありす「私達も直接見たわけじゃないので仁奈さんのものかどうかは分からないんです」

桃華「今朝、この部屋に落ちてたんですの」

梨沙「仁奈の抜け殻がね……」

P「本当だ……。仁奈ちゃんは今どこに?」

ありす「それが今朝から連絡が取れなくて……」

P「どれどれ……。 …………ダメだ。繋がらない」

晴「どうしちまったんだろーな……」

ありす「心配ですね……」

桃華「仁奈さんならきっと大丈夫ですわよ」

千枝「だといいんだけど……」

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P「それにしてもこの抜け殻…… 仁奈ちゃんがいつも着てる着ぐるみみたいだ。随分綺麗に脱皮したんだな」

梨沙「本当ね。ありす、ちょっと着てみたら?」

ありす「なんで私が着る必要があるんですか。梨沙さんが着ればいいのでは?」

梨沙「冗談よ。こういうのは晴がやってくれるでしょ」

晴「しょうがねーな……。ったくなんでオレが…………!?」

晴?「市原仁奈でごぜーます!」

梨沙「ちょ、晴!何悪ふざけ……って仁奈!?」

千枝「仁奈ちゃん?どこに行ってたの?心配したんだよ?」

ありす「そ、それより結城さんはどこに……?」

桃華「あの抜け殻を被った途端、晴さんの姿が仁奈さんの姿に変わったように見えましたわ……」

仁奈「みんなも仁奈の気持ちになるですよ!」

P「な、なにかマズい予感がする!」

P「とにかく皮を剥がすんだ!服を脱がせるみたいに!俺は後ろを向いてる!」

ありす「こんな時に何を言ってるんですか!?」

梨沙「このロリコン!変態!」

P「いいから早く!」

桃華「やりますわよ皆さん」

千枝「う、うん!」

ありす「恨みはありませんがおとなしくしてもらいます」

仁奈「仁奈に乱暴するですか……?」

千枝「は、晴ちゃんのためだから!ごめんね仁奈ちゃん!」ビリビリィィッ

ありす「そ、そんなに乱暴にする必要はなかったのでは……?」

千枝「ち、違うの!ちょっと引っ張っただけでビリビリって破れて……」

桃華「まあ仁奈さんの姿をしていましたけど元々は薄い皮でしたから……」

P「終わったのか?」

梨沙「終わったわよ。晴も気を失ってるだけで無事みたい」

P「よかった。とりあえずそこのソファで休ませよう。手伝ってくれ」

梨沙「アンタ大人の男のクセに小学生一人背負えないの……?」

P「そ、そういう大人もいるんだ!というか俺が触ったりしたらまた難癖付けるだろ!」

梨沙「はいはいその通りよ。ありす、私たちでやっておきましょう」

ありす「はい」

晴「う、うーん……」

梨沙「やっと起きた」

晴「あれ?オレは確か仁奈の皮を被って……」

梨沙「詳しい話は後よ。みんな心配してたわ。立てる?」

晴「ああ。問題ねーぜ」

桃華「あら、晴さん。目が覚めたんですのね?」

千枝「よかったぁ……」

桃華「今は今後の対策を練っていたところですの」

晴「そんな大事になってるのかよ……」


ありす「あ、晴さん……。お目覚めですか」

P「よかった……。だが安心できないぞ。ここからが大変だ」

千枝「大変……なんですか……?」

ありす「はい。私たちは今二つの問題を抱えていることになります」

桃華「この事態を解決するにはまず仁奈さんを見つけなくてはならない、ということですわね?」

ありす「一つ目はその通りです。しかし今朝から仁奈さんとは連絡すら取れないというのが現状です」

梨沙「それくらいの問題だったらアタシ達でも分かってるわよ」

千枝「それで二つ目の問題は何なんですか……?」

ありす「二つ目は……。これは非常に言いづらいことなんですが……」

P「俺から言うよ。二つ目はな……。仁奈ちゃんはそもそも存在していなかったかもしれないということなんだ……」

千枝「え……?」

P「さっき晴が仁奈ちゃんの皮を被って仁奈ちゃんの姿になったのはみんなも確認したと思う」

桃華「ええ……。確かに……」

晴「オレそんなことになってたでごぜーますか!?」

梨沙「晴、ふざけないで」

P「それで仁奈ちゃんの皮を破ったら元の晴の姿に戻った……。これが何を意味するか……」

梨沙「今までアタシ達と一緒にいた仁奈はあの皮を被った誰かだったってこと……?」

ありす「あくまで仮説ですが……」

千枝「そんなこと……」

晴「でもそれなら元々皮を被ってた奴はどこに行ったんだ?オレと同じならここで倒れてたんじゃねーか?」

桃華「今朝最初に来たのは私ですが、私が来た時には皮しかありませんでしたわ」

P「とにかく何か手がかりが見つからないことにはどうにもならないってことだな……」

千枝「そう……ですね……」

P「ここからは3チームに別れて手がかりを探っていこう」

ありす「確かにその方が効率的ですね……。桃華さん、私たちはどうしましょうか?」

桃華「そうですわね……。事務所内の方々に仁奈さんを見かけたかどうか聞き込みをするのはどうでしょう?」

ありす「そうしましょう。では皆さん、私たちは先に行ってますね」

P「ああ、他の人に迷惑かけない程度にな」

ありす「当然です。子ども扱いしないでください」

桃華「まあまあ。早く行きますわよ」

千枝「行ってらっしゃい」

P「千枝ちゃん、俺たちはどうしようか?梨沙と晴はどうするんだ?」

梨沙「とりあえず衣装室に行こうと思ってるわ。あそこなら仁奈が衣装で着てた着ぐるみとかもあるでしょ?」

晴「他にも事務所の中でよく仁奈が行ってた場所に行って仁奈を捜してみるぜ」

P「分かった。あんまりはしゃいで物とか壊すんじゃないぞ」

梨沙「分かってるわよ!」

晴「それじゃ行ってくるぜー」

千枝「行ってらっしゃい」

千枝「あの、プロデューサーさん……」

P「どうした?何か案が浮かんだか?」

千枝「千枝、ここで待ってちゃダメですか……?」

P「それはどうして?」

千枝「もし仁奈ちゃんが帰ってきた時にこの部屋に誰もいなかったら寂しいと思うから……」

P「そっか。千枝ちゃんは優しいな」

千枝「えへへ……」

P「じゃあ俺は一人で事務所の周辺を探してみるから、千枝ちゃんは留守番頼んだぞ!」

千枝「はい!仁奈ちゃんが見つかったらすぐに連絡くださいね……?」

P「任せろ!」

ありす「もう50人以上に聞き込みを行っていますが……」

桃華「めぼしい情報はありませんわね……」

ありす「ひとまずカフェで休憩にしませんか?」

桃華「そうですわね。情報も手に入るかもしれませんし……」


菜々「お待たせしましたー!ご注文のいちごタルトとローズティーです!って、あれ!?二人ともなんか元気ないですね?」

ありす「はい……。実は今仁奈さんを捜しているのですが全然見つからなくて……」

菜々「かくれんぼですか?仁奈ちゃんだったら今朝見かけましたけど……」

桃華「本当ですの!?」

菜々「は、はい!えっと、莉嘉ちゃんと一緒にみくちゃんに連れられてたような……」

ありす「情報提供感謝します。桃華さん、すぐに……」

桃華「こんな時こそ落ち着いて、余裕を持つのが大人のレディですわよ?」

ありす「……お茶を飲んだらすぐ行きましょう」

梨沙「晴!見てこれ!美優がこの前のグラビアで着てた水着よね!アタシにも似合うと思わない!?」

晴「梨沙じゃいろいろ足りてないだろ。それより仁奈の着ぐるみ探すんだろ?」

梨沙「分かってるわよ!だいたい晴だって足りてないじゃない」

晴「オレはそういうの興味ねーからいいの」

梨沙「まったく、アンタも少しは女の子らしく……って、きゃああああああ!!」

晴「どうした梨沙!?」

梨沙「脚!誰かに掴まれて……やだ……晴、た、助けて……」

みく「ご、ごめんにゃ……。驚かせるつもりは……」

梨沙「きゃああああああ!!しゃべっ、喋ったわよ!晴!早くなんとかしなさい!」

晴「落ち着け梨沙。みくだぞ」

梨沙「へ?みく……?」

みく「にゃ、にゃあ……」

梨沙「び、びっくりしたぁ……。こんなところで何やってるのよ……」

みく「ちょっと気絶しちゃってたみたいにゃ……」

晴「気絶ってもしかして仁奈の皮被ったのか?」

みく「アレのこと知ってるの!?」

梨沙「知ってるも何も。今それについて調査してるところよ」

晴「オレも被ったから仲間だな!」

みく「え……?か、被っちゃったの……?」

晴「お、おう……。でも破いたら問題なかったぜ……?それにみくだって今なんとも……」

みく「アレは絶対に被っちゃいけないものだったんでごぜーますにゃ!」

晴「仁奈のマネなんかしてどうしたんだよ」

みく「いけない……。もう侵蝕が始まって……」

梨沙「侵蝕って……。そういえばさっき晴も……。も、もしかして……」

みく「一回しか言わないからよく聞くにゃ。いい……?」

みく「仁奈ちゃんの皮を被った人は一時的に仁奈ちゃんの体になって、皮を剥がせば姿は元に戻るけど……」

みく「実はその時にはもう仁奈ちゃんに乗っ取られてるの……。“元の人の皮を被った仁奈ちゃん”になってるってことにゃ……」

みく「みくや晴ちゃんみたいに意思が強ければ仁奈ちゃんの侵蝕を遅らせられるけど……」

みく「やがて意識だけじゃなく何もかもすべて仁奈ちゃんに乗っ取られて、仁奈ちゃんがその人のフリを始めちゃうの……」

みく「みくはもうすぐ仁奈ちゃんになっちゃうけど、晴ちゃんはまだ助かるかもしれないにゃ……」

みく「これはきっと悪い夢だから……あのバクの着ぐるみがあれば……っ!にゃぁぁあああ!」

みく「ごめんにゃ……。もう限界みたい……」

梨沙「げ、限界って……」

みく「お願い!行って!みくはも……にゃあああああっっっ!!」

晴「ッ……!行くぞ梨沙!」

梨沙「でも!」

晴「いいから行くぞ!」



みく「にゃ、あああああああああああ!!!!」

みく(そうだ……一つ言い忘れてたにゃ……。みくの姿も必要なくなったら……最後は……)

ビリビリィッ!!

イチハラニナデゴゼーマス!

P「なんてこった……。仁奈ちゃんを見つけたことには見つけたんだが……」

P「少なく見積もってもう100人は見かけてるぞ!クローンか何かか!?」

P「しかも目の前で脱皮してはその皮を俺に着せようとしてくる……」

P「なんでこんなことになってるのかは分からないが、この仁奈ちゃん達は脱皮しても晴みたいに元の姿には戻らないのか……」

P「ということは何らかの手段で仁奈ちゃんは増えようとしている……?」

P「思っていたよりも遥かにヤバい状況のようだ……。みんなが心配だ。一旦事務所に戻ろう!」

ありす「あれは……莉嘉さん?」

莉嘉「あ、二人とも!アタシのこと捜してたんでしょ!?みんなから聞いたよー!」

ありす「よかった……。実は莉嘉さんに聞きたいことが……」

桃華「……」

ありす「桃華さん?どうかしましたか?」

桃華「いえ、なんでもありませんわ」

莉嘉「アタシに聞きたいことってなになにー!」

ありす「実は私たち仁奈さんを捜しているのですが全然見当たらなくて……。今朝莉嘉さんが仁奈さんと一緒にいたと聞いたものですから……」

莉嘉「あ!仁奈ちゃんなら……こっちこっち!」

ありす「やはりご存知だったんですね……。これで一件落着でしょうか……?」

桃華「いいえ。まだ終わっていませんわ」

ありす「桃華さん? それはどういう……」

莉嘉「……!」

莉嘉「へー!そうだったんだ。桃華ちゃんも仁奈達だったんでごぜーますね」

莉嘉「もう莉嘉ちゃんの皮はいらねーです……」

ビリビリィッ!!

ありす「えっ!?り……仁奈さん!? あ……晴さんの時の逆……?ということは……」

桃華「彼女は莉嘉さんの皮を被った仁奈さんだったということですわ」

ありす「え……?」

仁奈「莉嘉ちゃんのきもちになってたですよ!」

桃華「騙していてごめんなさい……」

ありす「そんな……桃華さん……最初から……」

仁奈「桃華ちゃんも脱ぎやがるですよ!」

桃華「いいえ……。私にはまだやることが残っていますから……」

桃華「ありすさんはまだ仁奈じゃねーですから、仁奈になるまでは私の姿の方が安心していただけると思って……」

ありす「そん、な……」

仁奈「じゃあ早く済ませるですよ!」

桃華「そうですわね」

ありす「こ、来ないで……いや、やめてください……嫌!」

桃華「ありすさん、落ち着いて……」ボソッ

ありす「え……?」

桃華「私はここまでのようですわ。ですので、今から言うことを落ち着いて聞いてくださいまし……」ヒソヒソ

桃華「今からありすさんに着せるのは仁奈さんの脱皮した皮に似せて作った偽物ですの」

桃華「一時的に仁奈さんの姿になりますが私たちのように意識までは乗っ取られませんから」

ありす「い、意識って……何の話ですか……?」

桃華「そして事務所のどこかに仁奈さんしか入れない場所がありますわ。そこにこの事件を解決するカギがあります……」

ありす「あの、何を言っているのか」

桃華「ごめんなさい。時間がありませんの……。それでは、ご武運を……」



仁奈「ありすちゃんもちゃんと仁奈になったでごぜーますね」

仁奈「やったー!仁奈が増えやがったですよ!」

タチバ奈(桃華さん……)

梨沙「はぁはぁ……晴……アンタも見たわよね?」

晴「ああ……。飛鳥がオレたちの目の前で仁奈になってたな……」

梨沙「あれから逃げたと思ったらどこに逃げても仁奈だらけなんて……こんなの聞いてないわよ!」

晴「……なあ梨沙、まだイケるか?」

梨沙「無理よ……。もうアタシもみんなみたいに仁奈に……」

晴「バカ。弱音吐くなんて梨沙らしくねーぜ?」

晴「オレ、実は気づいたことがあるんだ」

梨沙「な、何よ……?」

晴「仁奈に追われてた時、オレも一緒に襲われただろ?ってことは、あの仁奈達は既に侵蝕が始まってる奴とそうじゃない奴の区別がついてないんだ」

梨沙「確かにそうだったかも……」

晴「それでさ、さっき逃げてる途中、仁奈が大勢でマークしてて明らかに怪しいところが一箇所あっただろ?」

梨沙「あそこは確か……。会議室ね!」

晴「そうそう!絶対何かあると思うんだよな」

梨沙「まあ、あるでしょうね」

晴「だから、オレが囮になるから梨沙だけで行ってくれ」

梨沙「はぁ!?アンタ自分が何言ってるのか分かってるの!?」

晴「分かってるぜ。でもオレはもう仁奈なんだし、何されても変わんねーだろ」

晴「それにみくの話が本当なら梨沙がキメてくれればオレも助かるんだし、信じてるぜ」

梨沙「……分かったわよ。その代わり絶対ミスらないでよね!アタシまで危ないんだから!」

晴「ああ!任せろ!」

ゴゼーマス ゴゼーマス
ゴゼーマ ゴゼ ゴゼ ゴゼ
ゴゴゼ ゴゼ ゴゼ ゴゴゼゼ
ゴゼーマス!!

梨沙「近くまで来てみたはいいけど……」

晴「さっきより増えてやがるで、やがるな……」

梨沙「晴……ホントに大丈夫?」

晴「大丈夫だって!任せろ任せろ」

仁奈?「あれ……?晴さんに梨沙さん……?」

晴「仁奈!?ヤバっ!」

タチバ奈「私です。橘です」

梨沙「ありす?アンタもまさか……」

晴「いや、それにしては様子がおかしい……」

タチバ奈「お二人もあの会議室に?」

梨沙「そのつもりよ」

タチバ奈「あそこのドア、仁奈さんの姿じゃないと開けられないように改造されてるそうです」

晴「嘘だろ!?」

タチバ奈「ですから私が行きます」

タチバ奈「しかしあそこにいる仁奈さん達は同じ仁奈さん同士でも通してくれなくて……。しかも第一陣、第二陣と構えていて、一人で突破するのは困難なんです」

晴「俺が囮になって引きつけるぜ」

タチバ奈「助かります。それでも動かせるのは第一陣だけでしょう……。まだまだ会議室のドアには手が届きません」

タチバ奈「第二陣を突破するには少なくとももう一人必要だと思っていて……」

梨沙「アタシがやるわ。元々行くつもりだったんだし」

タチバ奈「お願いします。梨沙さんが仁奈さんになった時は私が引っ張って会議室に連れ込みますね」

梨沙「ええ。お願いね」

梨沙「よし、やるわよ!」

タチバ奈「はい!」
晴「おう!」

晴「まずはオレからだな……。じゃ、あとは頼むわ!」

梨沙「待ってなさい。すぐ解決してきてあげるわ!」

晴「へへっ……。頼もしいな……!」

晴「おーい、仁奈!オレはこっちだぜー!」

仁奈達「覚悟しやがれー!」ドドドド

タチバ奈「第一陣、去りました!梨沙さん、行きましょう!」

梨沙(晴……。アンタのパス、しっかり受け取ったわよ……)

梨沙「ほらほら!道を開けなさい!梨沙様のお通りよ!」

仁奈達「いてーです……。梨沙ちゃん、仁奈のこと嫌いでやがりますか?」

梨沙「……ッ!」

タチバ奈「惑わされないでください!」

梨沙「……分かってるわよ!」

仁奈達「梨沙ちゃんも仁奈になりやがれー!」ガバッ

梨沙「くっ……ううっ……」

タチバ奈「よし!今です!手を!」

ガシッ!

ガチャッ

タチバ奈「ふぅ……。やはり仁奈さん達は外からは阻んできても中には入って来ないようですね……」

タチバ奈「そうだ……。梨沙さんを戻してあげないと……」

仁奈「……」ガクガク

タチバ奈「仁奈さん?」

仁奈「ここは入っちゃいけねーですよ……。怒られるです……」ガクガク

タチバ奈(怒られる?誰に?まさかこの事件の黒幕……?)

タチバ奈(ごめんなさい梨沙さん……。もう少しそのままでいてください……)

タチバ奈「誰に怒られるんですか?」

仁奈「仁奈のくせにそんなことも知らねーですか!?」

仁奈「そんなの、ち……あ、あがああぁぁぁっ……!」

仁奈「苦し……息ができね、で……。あり、す、早く!」

タチバ奈「梨沙さん!?情報は惜しいですがやむを得ませんね!」ビリビリィィッ!!

梨沙「ぷはっ!」

梨沙「はぁ……はぁ……。アンタ殺す気!?」

ありす「すみません……。あのまま仁奈さんに喋らせていれば何かヒントが手に入りそうだったので……」

ありす「それより梨沙さん意識が……。意識まで仁奈さんになっていたはずでは?」

梨沙「まあね。でもここに来た途端苦しみ出して……仁奈の意識だけが気絶したみたいな感じ?」

ありす「とにかく無事でよかったです……。早速会議室の中を探索してみましょう」

梨沙「そうね。さっさと終わらせて晴のところに行ってあげないと」

ありす「はい……」

ありす(先程仁奈さんが言いかけていた“ち”というのは一体……)


梨沙「ねぇ、こんなの見つけたんだけど」

ありす「は、はい!?」

梨沙「これ、何かしら?着ぐるみよね?なんの動物?」

ありす「これは……獏でしょうか?中国の伝説上の動物で悪夢を食べると言われているとか……」

ありす「仁奈さんの私物でしょうか。市販品にしては縫い目も荒いですし不格好です……。タグも見当たらないし……」

梨沙「バク……?あっ!!」

ありす「どうかしましたか?」

梨沙「これよ!これがあれば晴を助けられるわ!」

ゴォォォォ!!!!!

梨沙「な、何!?」

ありす「外から来ます!机の下に避難しましょう!」

ドゴォン!!

梨沙「車……?」

ありす「あれはプロデューサーさんの……」

P「二人とも無事か!?」

ありす・梨沙「プロデューサー(さん)!?」

ありす「どうしてここが……?」

晴「オレが外に逃げたらちょうどプロデューサーが来たんだよ」

梨沙「晴!アンタも無事だったのね!」

晴「へへっ」

P「それで晴から二人が会議室にいるって聞いてな。外から車で突っ込んだんだ」

ありす「ここ五階ですよ?」

梨沙「アタシ達が窓際にいたらどうすんのよ……」

梨沙「そうだ。晴、これ。みくが言ってたバクの着ぐるみってこれじゃない?」

晴「おっ、サンキュー!……おー、何かがスーッと抜けていく感じだぜ」

梨沙「これ、アタシも着ておいた方がいいかしら?一回仁奈になってるし」

ありす「そうですね。念の為に……」


P「よし、まずは情報交換といこうか」

梨沙「じゃあアタシ達から」

梨沙「まず最初にアタシ達のルームにあった仁奈の皮を被ると仁奈になる。それはみんな見たわよね?」

ありす「はい。晴さんがそうでしたね」

P「そして仁奈ちゃんは間違いなく脱皮をしている。あれは仁奈ちゃんの皮だ」

晴「で、皮を剥がすと元の姿に戻るけど、実は戻ってなくて、その時に入り込んだ仁奈の意識に少しずつ侵蝕されるらしい」

梨沙「仁奈は元の人のフリをし始めるらしいけど、意識を強く保ってれば侵蝕を遅らせることができるらしいわ」

ありす「私が会った時には莉嘉さんはもう侵蝕された状態でした。最終的にはもう不要だからと莉嘉さんの皮を脱いで仁奈さんの姿に……」

ありす「桃華さんも……最初から……」

晴「だから桃華は一緒じゃなかったんだな……」

P「仁奈ちゃんがたくさん居たのもそういうわけか……」

梨沙「今頃はきっとみくも……」

ありす「それと先ほど梨沙さんが仁奈さんになっている間気になることを言っていました」

P「気になること?」

ありす「この会議室に入ったら怒られる、と。その……“ち”までしか聞き取れませんでしたが……」

P「“ち”……千枝ちゃんか……?」

梨沙「そうだ。アンタ千枝はどこに行ったのよ?一緒じゃなかったの?」

P「ああ、実はルームに残りたいと申し出てきたから残してきたんだ。もし仁奈ちゃんが帰ってきた時に誰もいなかったら寂しがるだろうからって」

晴「それだと千枝が危ねーんじゃねーの?」

梨沙「そうよ!アンタ何考えてんのよ!」

P「そんなこと言ったって。外がこんなことになってるなんて誰も思わないだろ!」

ありす「仁奈さんが言っていたことも気になります。とにかく一度ルームに戻って千枝さんに会う必要がありそうですね……」


タチバ奈「では私が千枝さんのところまで行ってきます」

P「頼んだぞ。俺たちは引き続き本物の仁奈ちゃん捜しをする」

タチバ奈「はい。それでは」

タチバ奈「ルームの前も仁奈さんで溢れかえって……」

タチバ奈「でも中に入ろうとする仁奈さんはいないようですね……。ということは千枝さんは無事なんでしょうか……」

タチバ奈「バレないようにそっと近づかないと……。って、あれは……!」


千枝「ただいま。ごめんね、ちょっと通してね。プロデューサーさん達を待ってないといけないから……」


タチバ奈「千枝さん……?」

タチバ奈「どうしてルームの外に……?い、いえ!それより仁奈さんに襲われていないのはどうして……」

タチバ奈「……考えるまでもありませんね……」

タチバ奈「やはりこの事件の黒幕は……!」


ガチャッ

タチバ奈「……」

千枝「あれ?仁奈ちゃん?入ってきちゃダメって言ったでしょ?」

タチバ奈「会議室の前と違って、こちらの仁奈さん達はおとなしくて助かりました」

千枝「仁奈ちゃん……じゃないね……。ありすちゃん、かな?」

ありす「……説明、していただけますか?」

千枝「うん……」

千枝『仁奈ちゃん、どうしたの?』

仁奈『千枝ちゃん……。仁奈、みんなともっと仲良くなりてーです……』

千枝『え……?今でも十分仲良しだと思うけど……』

仁奈『でもみんな仁奈の気持ち分からねーです……。仁奈はとっても寂しいのに、誰も気づいてくれねーです!』

千枝『それは……』

桃華『人の気持ちを理解するのはとても難しいことなんですのよ。仁奈さん』

千枝『桃華ちゃん……。そ、そうだ!仁奈ちゃん、私に仁奈ちゃんの着てる着ぐるみを貸してくれる?』

仁奈『いいですよ!』

千枝『んしょ……。え、えーっと……市原仁奈でごぜーます!……こ、こんな感じかなぁ?』

仁奈『すげー!千枝ちゃんも仁奈のきもちになったですか!?』

千枝『え、う、うん!もちろんだよ!』

仁奈『仁奈、いっぱい着ぐるみ持ってくるですよ!そしてみんなに仁奈のきもちになってもらうんだー!』

桃華「そして今朝事務所に来たら仁奈さんの皮が落ちてたので、昨日の今日で早速仁奈さんが用意したのだと思って私が着てみたんですの」

ありす「桃華さん!?どうして……」

P「既に仁奈化した人にもダメ元でこの獏の着ぐるみを着せてみたんだ。そしたらみんな元に戻ったんだよ」

ありす「プロデューサーさん、それに皆さんも……」

晴「外にはもう仁奈はいないぜ」

P「それにしてもすごいな。この着ぐるみは。お手柄じゃないか、千枝ちゃん」

千枝「え……知ってたんですか……?」

P「気づくさ」

晴「千枝が作ったにしてはボロボロだけど、今朝急いで作ったって言われれば納得だな」

梨沙「なんで会議室になんか隠して、しかも仁奈に入っちゃダメだなんて言ったのよ」

千枝「作ったはいいけどこれでみんなが元に戻っちゃったら、せっかくみんなが仁奈ちゃんの気持ちになったのにまた仁奈ちゃんが寂しくなっちゃうと思って……」

千枝「それに仁奈ちゃん、最近会議室で遊んでちひろさんに怒られてからあそこに入るの嫌がってたし……」

P(“ち”はちひろさんだったのか……)

ありす「それで仁奈さんの手に渡らないようにしたわけですね」

晴「なんで仁奈達は千枝の言うことをそんな素直に聞くんだ?」

千枝「それはたぶん千枝が仁奈ちゃんの気持ちになったって嘘ついちゃったから……」

晴「仁奈の気持ちか……。千枝が襲われなかったこととか、意識を保ってたオレが襲われたのもそれで納得できるな」

千枝「知ってたのに黙っててごめんなさい……。それに危ないことに巻き込んじゃって……」

ありす「千枝さん、ごめんなさいは私達にじゃないですよ」

千枝「え……?」

梨沙「そうね。やることは決まったんだし、そうと決まればさっさと終わらせるわよ」

晴「だな!千枝、バクの着ぐるみってもう作れねーの?」

千枝「つ、作れると思う……けど……」

P「よし!残りの仁奈ちゃんになった人達も全員元に戻して本物の仁奈ちゃんを見つけ出すぞ!」

P「も、もう仁奈ちゃん見当たらないぞ……」

ありす「この辺りにはもういないんでしょうか……」

千枝「もしかしてプロデューサーさんの言った通り本物の仁奈ちゃんは最初から……」

桃華「そんなことありませんわ!」

千枝「桃華ちゃん……?」

桃華「あの時、仁奈さんの気持ちになったというのは本当に嘘なんですの?」

千枝「そ、そんなの……」

桃華「もし千枝さんが本当に仁奈さんの気持ちになれていたのなら……」

晴「そ、そうか!それってオレ達が侵蝕された時と同じだ!」

梨沙「ってことは、千枝が仁奈の気持ちになれたら……」

千枝「仁奈ちゃんは私から生まれる……?」

千枝「そっか……。私……私、仁奈ちゃんの気持ちになるですよーーー!!!」


ビリビリィィッ!!

千枝「はぁ……はぁ……」

仁奈「ここは……どこでごぜーますか……?」

千枝「生まれた……。産んだんだ、私が……仁奈ちゃんを……」

仁奈「千枝ちゃん……?みんな、どうしたですか?」

千枝「仁奈ちゃん!……っ!ごめん!……ごめんね!」

千枝「私、私やっと仁奈ちゃんの気持ちになれたよ……!」

千枝「もう、寂しくなんかさせないからね……?」

仁奈「千枝ちゃん……?苦しーですよ……」

P「仁奈ちゃん、もちろん千枝ちゃんだけじゃないぞ。俺達も一緒だ」

仁奈「よくわかんねーですけど、ありがとうごぜーます……!」

みく「その時みくは言ってやったのにゃ。それを使って早く元通りにしてあげるのも優しさにゃ!千枝ちゃんは優しすぎるのにゃ!ってにゃ」

莉嘉「ねー、その話面白くなるの?」

菜々「お待たせしましたー!ハンバーグとカブトムシです!」


梨沙「結局会議室の改造って意味あったの?」

桃華「ありましたわよ。あそこで本当に仁奈さんにされてしまったら入れなかったんですから」

晴「桃華が改造したのかよ!」

ありす「偽物の皮……便利でした……」



千枝「みんな、ちょっとは仁奈ちゃんの気持ちになってくれたかな……」

仁奈「千枝ちゃん……。もういいですよ。仁奈、みんなのきもちと戦って分かったですよ」

仁奈「人のきもちにはわからねーこといっぱいあるです。仁奈だってわかってもらえねーこといっぱいで」

仁奈「そうやって大きくなっていくんだって、プロデューサーが教えてくれたです」

千枝「そっか……。でも、本当にみんなの気持ちになれる大人になれたら素敵だね」

仁奈「千枝ちゃん……。仁奈、ちゃんと大人になれるか不安でごぜーます……」

千枝「大人になれるか不安、かぁ……」

千枝「ううん、仁奈ちゃんはきっとなれるよ!」

千枝(だって仁奈ちゃんはもう、私の──)



終わり

終わりです。仁奈ちゃん誕生日おめでとう。

プロデューサー諸君も仁奈ちゃんの気持ちになって仁奈ちゃんを産んでくださいね。

では。

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