理樹「おそらく人違いで知らない人からキーアイテム的な物を渡された」 (13)

とある美術館

理樹「いや~美術館なんて久々に来たよ。来ヶ谷さんは?」

来ヶ谷「まあ嗜む程度にはね」

理樹(今日は来ヶ谷さんと美術館に来た。事の始まりはこうだ)


・・・・・・・・・・・・・・・

2日前

理樹部屋

理樹「やった!ドラ乗ったから倍満だ!」

真人「ぐぁぁ~~!?カンしたのが裏目に出ちまったっっ」

恭介「あ、そうだ。なあ理樹、知り合いのおっさんから美術館のチケットをもらったんだが期限が明後日までなんだ。捨てるのも勿体ないし、代わりに見に行ってくれないか?」

理樹「凄い唐突だね……美術館って言うけど恭介は見に行かないの?」

恭介「実は映画部の連中から役者を頼まれていてさ、どーしても時間が取れないんだ。一応貰ったチケットを渡しておく。1枚で2人まで入れるから誰か呼んでみたらどうだ?」

理樹「謙吾はどう?」

謙吾「あいにく俺もその日は道場で練習試合の審判を引き受けるんだ」

真人「おい理樹俺にも聞いてくれよっ」

理樹「……真人はどう?」

真人「美術館は静かすぎてすぐ寝ちまうから遠慮しておくぜ…」

理樹「そんな事言うと思ったよ!なんでわざわざ言わせたのさっ!」

コンコン

理樹「空いてますよー」

ガチャ

来ヶ谷「やあこんばんわ。理樹君、この間借りていた本を返しに来たよ」

恭介「お、来ヶ谷じゃねえか。なあ、理樹」

クイクイッ

来ヶ谷「なんだそのアゴをしゃくる仕草は?」

理樹「あっ、そっか。ねえ、来ヶ谷さん美術館とか興味ない?」


・・・・・・・・・・・・・・・

来ヶ谷「にしても人が多いな。流石、都会の美術館と言ったところか」

理樹「そうだねぇ」

理樹(確かに僕が昔、夏休みの宿題で美術館に行った時はほとんど人がいないようなものだったのに、ここは一つの作品に必ず誰か観ている人がいるほどの人気だった)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1550109955

理樹(そんなこんなで作品を見ていくと気になるものが目に留まった)

理樹「あっ、見て来ヶ谷さん。『友人との温泉』だって」

来ヶ谷「友人との温泉か……フフフ、あれは楽しかったな。君らの奇妙な声が面白かったよ」

理樹(おそらく来ヶ谷さんの言う奇妙な声とは、僕らが修学旅行の穴埋めに行った旅行
で温泉に入った時に、恭介達と女風呂を覗こうとしてしっぺ返しを受けた時のことなんだろう)

理樹「いやはや、まさか野口英世が出てくるとは思わなかったよ……というかアレどんな仕掛けで…」

「野口英世!」

理樹「えっ?」

理樹(僕らが思い出話をしていると、すぐ後ろの休憩スペースになっているベンチで座っていた年老いた紳士らしき人が立ち上がった。焦げ茶色のコートに身を包み、シルクハットにステッキと如何にもな風貌だった)

理樹「ご、ごめんなさい。うるさかったですか?」

爺「あなた、今この絵を見て野口英世の名を口にしましたね?」

理樹(最初は会話をしている事に怒られたのかと思ったけど、どうやら違う様子だった)

理樹「そうですけど……」

爺「とうとうこの時が来ましたか。いや、ずっと待ち続けた甲斐がありました!さあこれを……」

理樹(と、お爺さんは胸ポケットから一封の封筒を僕に渡した)

理樹「これは?」

爺「私の主人からでございます。もし、この絵を見て野口英世の名を言う者が来たら渡すようにとの事でした」

来ヶ谷「中には何が?」

爺「見れば分かるとのことです」

理樹(いったいなんの話かまるで分からなかった。しかしお爺さんは僕に手渡すとシルクハットを被り、出口の方へ歩いて行ってしまった)

理樹「ち、ちょっと!いきなりどういう……」

爺「………本来はこんな事を言うのも禁止
はされていますが、私はあなたに会えて光栄でした。是非ともその手で愛知の人々を救って下さい…」

理樹(一瞬立ち止まって言ったかと思うと今度こそそのまま歩いて行ってしまった)

理樹「ええ………」

来ヶ谷「理樹君、その封筒を開けてみようじゃないか」

理樹「えっ、勝手に開けちゃっていいの!?」

来ヶ谷「君がもらったんだ。誰も文句は言うまい」

理樹(確かによく分からないといえ一応僕宛のようだし権利は充分にあった。それにどうせ開けてみるしかないのだ。恐る恐る中身を取り出すと、それは一枚の写真だった)

理樹「……女の人だね」

来ヶ谷「綺麗だな」

理樹(その写真には田舎の街中をバックにピースをする一人の女性が写っていた。見たところ歳は僕らと同じくらいで、着ているワンピースが凄く似合っている印象だ)

理樹「なんでさっきの人はこんな写真を……」

来ヶ谷「……時に少年よ。少年はこの女性に心当たりは?」

理樹「ないなぁ」

来ヶ谷「愛媛の人々がどうのと言う話は?」

理樹「まったく分からない」

来ヶ谷「先程の人は君に見たら分かると言っていたね」

理樹「………」

来ヶ谷「理樹君」

理樹「……うん」

来ヶ谷「多分、人違いだな」

理樹「だよね!?」

1時間後

喫茶店

理樹(あの後、美術館を出てお爺さんを必死で探したがとうとう見つからなかった。しょうがないので僕らは喫茶店で作戦会議を開くことにした)

理樹「どうしようこれ……絶対なにか重要な写真だよ……」

来ヶ谷「うむ。サスペンス物でよくある奴だな。一見、何気ない写真だが、主人公達にとっては大切なキーアイテムで、これを元に色んな事情が解き明かされていくといった具合の」

理樹「どどどどうしよう!愛媛の人々を救えとか言ってたってことは逆に愛媛が危ないんじゃ!?」

来ヶ谷「正直愛媛なんかどうでもよくないか?何があるんだあそこ」

理樹「いやどうでもよくあるでしょ!色々あるでしょジャコ天とか!」

来ヶ谷「しょうがないな。では当面の目的はこの写真をさっきの紳士へ返すと言う事でいいかな?」

理樹「出来ればそうしたいけど……当てはあるの?」

来ヶ谷「あるのはこの写真だけさ。ここに写っているものを頼りになんとか手がかりを探すしかない」

理樹「この写真で……?」

来ヶ谷「例えば彼女の後ろに写っているスナック店…かすれていて見づらいが、よく見てみると『アップルシード星野』と書かれている」

理樹(よく目を凝らしてみると確かにそう書いてあった)

理樹「本当だ……」

来ヶ谷「こんな特徴的な名前は全国に何件もあるまい」

図書館

理樹(近くの図書館でパソコンを借りることにした)

来ヶ谷「それ見ろ。一件だけヒットしたぞ……場所もそう遠くはない。ここから電車で1時間ほどだ」

理樹「あっ、本当だ!」

来ヶ谷「理樹君、今日の予定は無いな?」

理樹(それは来ヶ谷さんなりの捜査開始の合図だった)


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田舎の街中

来ヶ谷「うむ。ここだな」

理樹(図書館で書き留めた地図を頼りになんとかスナックの近くに辿り着いた。写真はそう昔に取られたものではないらしく、写真と同じ場所に立ってもあまり年代経過は見受けられなかった)

理樹「とりあえずこのスナックに行ってみる?」

来ヶ谷「そうだな。聞き込みをしてみよう」

理樹(そういう来ヶ谷さんの声は心なしか弾んで聞こえた)

理樹「嬉しそうだね」

来ヶ谷「ふふっ、分かるかい?実を言うとこんな探偵ごっこをいつかやってみたいなと思っていたんだ」

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スナック

理樹(正直この時間帯に空いているか微妙だったが、運良く扉は空いていた)

ママ「うーんこんな子は店に来たことないし、見たこともないねぇ…悪いけど手助け出来そうにないわ」

理樹「そうですか…いえ、ありがとうございました」

理樹(とはいえ、そうトントン拍子で話が進む訳ではなかった)

来ヶ谷「まあこればっかりは根気よく周辺の人から聞いていくしかないな。次はどこに……」

カランカランッ

おじさん「約束通り今日も来たよママ~!……ん?高校生……?」

理樹(僕らが出ようとしたところへ何やら顔が真っ赤なサラリーマン風の男の人が店へやってきた)

ママ「店に来る前に出来上がっててどうすんだいまったく!いやね、別にこの子達は客じゃないのよ。人探しだって」

おじさん「人探し?」

来ヶ谷「こういう人を探しているんですが」

理樹(すかさず来ヶ谷さんが男の人へ写真を見せた。すると男の人は写真を確認するなり、急に酔いが覚めたように背筋を伸ばした)

おじさん「ああこの子か!知ってるよ!」

理樹「本当ですか!?」

おじさん「ああ。確かちょっと前までよくこの辺で募金活動をしていた子だっ」

理樹「へぇっ、まるで小毬さんみたいだ」

来ヶ谷「………むっ」

理樹(その時、来ヶ谷さんが一瞬妙な声を漏らした)

理樹「どうしたの」

来ヶ谷「……いや、なんでも」

理樹「そう?」

理樹(少しスナックのママさんに視線を移したかと思ったが、来ヶ谷さんはそれっきりだった)

ママ「え、ええと。それでアナタこの子が今どうしてるか分かる?」

おじさん「そうだなあ。この子は美人だったから度々町の噂にはなっていたが……ああ、そうだ。確かナントカって名前の花屋で働くことになったからしばらく募金活動は出来ないとか言ってたっけ」

理樹「そ、その店の名前は!?」

おじさん「ちょっと待てよ…確か……あ!そうだ、確かチェリーブロッサムって名前だったはず!」

理樹(幸運だった。まさかこんな短時間でこの写真の女性が働いている店の先まで分かるなんて!)

理樹「よーし、ありがとうございましたお二人とも!来ヶ谷さん行こう!」

来ヶ谷「……ああ、そうだな」

理樹(なんとなくだが、さっきから来ヶ谷さんの口調が歯切りの悪い感じがする)

バタンッ

カランカランッ

ママ「…………」

おじさん「…………」

休憩

間違えてた!訂正する
愛知と愛媛の人申し訳ねえな

>>2訂正


理樹(そんなこんなで作品を見ていくと気になるものが目に留まった)

理樹「あっ、見て来ヶ谷さん。『友人との温泉』だって」

来ヶ谷「友人との温泉か……フフフ、あれは楽しかったな。君らの奇妙な声が面白かったよ」

理樹(おそらく来ヶ谷さんの言う奇妙な声とは、僕らが修学旅行の穴埋めに行った旅行
で温泉に入った時に、恭介達と女風呂を覗こうとしてしっぺ返しを受けた時のことなんだろう)

理樹「いやはや、まさか野口英世が出てくるとは思わなかったよ……というかアレどんな仕掛けで…」

「野口英世!」

理樹「えっ?」

理樹(僕らが思い出話をしていると、すぐ後ろの休憩スペースになっているベンチで座っていた年老いた紳士らしき人が立ち上がった。焦げ茶色のコートに身を包み、シルクハットにステッキと如何にもな風貌だった)

理樹「ご、ごめんなさい。うるさかったですか?」

爺「あなた、今この絵を見て野口英世の名を口にしましたね?」

理樹(最初は会話をしている事に怒られたのかと思ったけど、どうやら違う様子だった)

理樹「そうですけど……」

爺「とうとうこの時が来ましたか。いや、ずっと待ち続けた甲斐がありました!さあこれを……」

理樹(と、お爺さんは胸ポケットから一封の封筒を僕に渡した)

理樹「これは?」

爺「私の主人からでございます。もし、この絵を見て野口英世の名を言う者が来たら渡すようにとの事でした」

来ヶ谷「中には何が?」

爺「見れば分かるとのことです」

理樹(いったいなんの話かまるで分からなかった。しかしお爺さんは僕に手渡すとシルクハットを被り、出口の方へ歩いて行ってしまった)

理樹「ち、ちょっと!いきなりどういう……」

爺「………本来はこんな事を言うのも禁止
はされていますが、私はあなたに会えて光栄でした。是非ともその手で愛媛の人々を救って下さい…」

理樹(一瞬立ち止まって言ったかと思うと今度こそそのまま歩いて行ってしまった)

理樹「ええ………」

来ヶ谷「理樹君、その封筒を開けてみようじゃないか」

理樹「えっ、勝手に開けちゃっていいの!?」

来ヶ谷「君がもらったんだ。誰も文句は言うまい」

理樹(確かによく分からないといえ一応僕宛のようだし権利は充分にあった。それにどうせ開けてみるしかないのだ。恐る恐る中身を取り出すと、それは一枚の写真だった)

理樹「……女の人だね」

来ヶ谷「綺麗だな」

理樹(その写真には田舎の街中をバックにピースをする一人の女性が写っていた。見たところ歳は僕らと同じくらいで、着ているワンピースが凄く似合っている印象だ)

理樹「なんでさっきの人はこんな写真を……」

来ヶ谷「……時に少年よ。少年はこの女性に心当たりは?」

理樹「ないなぁ」

来ヶ谷「愛媛の人々がどうのと言う話は?」

理樹「まったく分からない」

来ヶ谷「先程の人は君に見たら分かると言っていたね」

理樹「………」

来ヶ谷「理樹君」

理樹「……うん」

来ヶ谷「多分、人違いだな」

理樹「だよね!?」



理樹(なんとなく引っかかるところがあったので一応聞いてみた)

理樹「ところで来ヶ谷さん、さっき何を考えていたの?」

来ヶ谷「なに?」

理樹「ほら、さっきのおじさんが花屋の名前を言っていた時、ちょっと思いつめたような顔になっていたから」

来ヶ谷「ふむ・・・私は昔からよく表情が読めないと言われてきたが理樹君にはそう見えたんだね?」

理樹「えっ、いや・・・まあ、なんとなく思っただけなんだけど。気を悪くさせたならごめんなさい」

理樹(口調からして少し怒らせてかと思ったけど、来ヶ谷さんはどちらかというと嬉しげだった)

来ヶ谷「いやいいんだ。確かに少し考え事をしていたものでね」

理樹「そうなの?」

来ヶ谷「小さなことなんだが・・・あの客としてきた男だが、あまり酔っているようには見えなかったんだ」

理樹「・・・どういうこと?」

来ヶ谷「彼、顔が真っ赤だったろう?ママさんもたしなめていた通り、私も最初は酒を飲んでいたと思った。ふらふらと近寄ってきたしね。ただ、口から酒の匂いがしなかったんだ」

理樹「えっ、そうだっけ?」

来ヶ谷「これでも鼻は利くほうなんだ。それに、できあがっていた割には背筋はよかったからね」

理樹「ううん、つまりさっきの人は酔っぱらっていた振りをしていたってこと?なんでそんなことするのさ」

来ヶ谷「さあ、分からない」

理樹「それに口臭はともかく酔っていたって背筋が良い人はいると思うけどな」

理樹(昔、恭介と鈴の実家に泊まりで遊びに行った時、そこで一緒に住んでいたお爺さんの事を思い出した。あのお爺さんはいくら飲んでも意識はしっかりしてて、まったくよろける心配もなさそうなくらいだった)

来ヶ谷「そうだな。口臭も店に来る前にスプレーでも使ったのかもしれない。まあ、少し疑問に思っただけだ。さあ花屋に行こうじゃないか」

理樹(その会話を最後に僕らは花屋に行く間あまり喋ることはなかった。僕らをとりまくこの陰謀めいた現象で頭がいっぱいいっぱいだったのだ。おそらく来ヶ谷さんも同じことを思っているに違いない)



・・・・・・・・・・・・・


花屋前

理樹「ここだね・・・」

理樹(花屋は駅前に構えているこじんまりとしたところにあった。ガラス越しに店員さんが花を何本か包んでいるのが見えたが、写真の女性ではなさそうだった)

来ヶ谷「行こうか」

理樹「うん」

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