【艦これ】深海からの郵便物 (15)

「あー、なにこれー」
「すごーい。漫画みたーい」

散歩に出かけた睦月型が手紙の入ったガラス瓶を拾って帰ってきました。

誰かに宛てられた恋文でしょうか
遭難した誰かのSOSでしょうか

ひと昔前にはよくあったロマンチックなメッセージ

何ヶ月も波間に揺られたのでしょう。
あちこちに傷のついた瓶を受けとった大淀は割らないよう、丁寧に丁寧に蓋を開けると手紙を取り出し
集まった皆に読んで聞かせました。

大淀「第一回口頭弁論は明後日だそうです」

提督「……はぃ?」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1562992739

大淀「というわけで提督宛に出頭の命令が」
提督「まてまてまて」

提督「出頭ってどこの裁判所?理由は?」
大淀「えーと、書いてある座標はルソン島沖合80キロ水深200メートル」
提督「まてまてまて」

提督「水深?」
大淀「マレー第2地方裁判所だそうです。告訴理由は傷害及び器物破損の損害賠償請求」
提督「まてま…もういいや続けろ」

大淀「被害者側は慰謝料として70万円、損害賠償として350億円を求めています」

提督「なんだその額。あ! なんだイタズラか」
大淀「原告は集積地棲姫」
提督「うっ」

大淀「訴状、紛争の要点欄によると」

物資の調達及び管理を生業とする申立人は
数年前から提督(以下被告)による度重なる爆撃等、資材の破壊及び強奪に悩まされており

提督「や、やっぱり待て」
大淀「特に事実との相違はないと思いますが」
提督「そもそも軍務上必要に迫られて行ったことだぞ?」

大淀「この続きが原因でしょうね。読みます」

さらに近年では堀りなどに加えダメージコンテストなどと称した理由のない暴虐。
増加する被害額は到底容認できるものではなく告訴という手段を選択するに至りました。

大淀「大本営確認したところ」
「海域クリアまでは軍務と認めるがその後は知らん」とのこと

提督「うっ」

大淀「焼かれた食料や衣類、そして飢えた子どもたちの写真が資料として添付されています」

提督「うぐっ」

大淀「さて、明後日までに答弁書の作成、弁護士探し。そもそも現地も遠い」
大淀「これは忙しくなりますねぇ」
提督「明後日ってそんな無茶な」
大淀「投函日は2ヶ月前なので普通かと思われます」

提督「あああ そんな いきなり どうすればいい?」
提督「助けて黒髪メガネ!」
大淀「私はちょっと… 下手したら共犯として訴訟怖いので関わりたくなく」
大淀「ロケラン積めない方に相談されては?」


そして2日後

艦隊の弁護士霧島。
弁護士界のブラックジャックを連れた提督はマレーに旅立った。

第一回口頭弁論開始。

先方弁護士グループのターン!

敵弁護士A「ヒコクノケンリョクランヨウハアキラカ」
敵弁護士B「ヒガイトドケノテイシュツモシヤニイレテイル」
敵弁護士C「ケイジサイバンシタイカ?ドウダ?」

提督弁護士のターン!

霧島「全面的に非を認め300億程度の弁済で和解を求めます」

弁護士は逃げ出した。
提督は300億の負債を負った!!

提督「おいぃ!?」

霧島「だって被害届出されたら刑事裁判ですよ、被害届的に一発で禁錮刑」
提督「ば、ばかやろ。どうやって300億払う孫の代どころか子孫が永劫借金地獄」
霧島「提督 国家賠償法というのをご存知ですか?」
提督「ああ、あの公務中に与えた被害はその公務員個人の責任にならない…アレか!?」
霧島「ソレですよ」

霧島の眼鏡がキラリと光った。

公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたとき
国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。

あくまでも職務中の過失と主張。
和解で刑事罰を逃れ、民事は税金から賠償。

法の穴をついた霧島案。

「嗚呼」
提督は感嘆。

「さすがプロだ。 違うなぁ……」
即時和解に同意。

300億の弁済契約に記名捺印をした。

鎮守府に戻ると顛末を上層部に報告

提督「えっと こういう裁判で 300億払うことになりました」

提督「国賠で落ちますよね?」

上層部「んーとね」

「憲法第17条を解するに、同法令は行政の行為が善良な自国民とした『他人』に損害を与えてしまった場合を想定しており」

「深海棲艦は人とすら認められていねーから無理だろ。大体、勝手に別の国で和解成立させたもんが国賠の対象に
なるわけねーべボケ懲戒免職の稟議上げとくわ」
と、有り難いお言葉を頂いた。

提督「おい!!」

霧島「…最終決定を下すのは官庁であり、私は一案を提示させて頂いたのみ」
提督「300億だぞ!! 300億!!」
霧島「ご要望があれば分納交渉に当たらせて頂きます。月々30万返済として…あっ」
提督「?」
霧島「延滞金のほうが高いから永遠に終わらない」
提督「ぴゃー」


翌月、60回ローンの一回目5億の引き落としができなかった提督は
レ級に連れられて海底にあるという施設へと収容された。
海底トンネルの掘削現場に送られるという。

大淀(息できんのかな)

それから何ヶ月がたちついに一年が経過。
良いものも悪いものも。提督からの便りはなく、多くの艦娘はこう思った。

(息できなかったんだろうなぁ)




数年後

またしても浜辺に一本の瓶が流れ着いた。

慎重に封を開け中を確認すると写真が1枚
少し逞しくなった提督と彼に寄り添う眼鏡女性のツーショット。
写真には手書きのメッセージカードが添えられており、そこに書かれた文面は。


「結婚しました」


大淀はとてもとても驚いた。

(息できたんだ…)

同梱の手紙によると、二人の婚姻は深海史上、1、2を争う大ニュースとなり映画化もされたという。

種族を超えた愛
死闘の末の手に入れた一日外出券
運命の出会いと、相手の正体を知った時の驚愕。

「ああ、どうして貴方は被告なの?」
「そういう君は原告か」

瓶の中の手紙が繋いだ絆
今世紀最大の感動を貴方に…


同封された映画のチケットは公開期限が過ぎていた。

大淀(やっぱダメだろ、この通信手段…)

おわり

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