田中摩美々「放クラなんてやかましいだけじゃないですかぁ」 (25)


〜事務所〜


ガチャ

田中摩美々「……」トコトコ

P「お、摩美々か、お疲れ様。悪かったな、付いて行ってやれなくて」

摩美々「別に、問題ないですよー」

P「撮影、どうだった?」

摩美々「普通でしたぁ」

P「そうか、摩美々にとって普通なら、まあ上手くやったんだろうな」

摩美々「そういうのいいですからー。私、ノド乾いちゃいましたぁ」

P「ああ、わかった、ちょっと待ってろ……そういえば他のメンバーは?」

摩美々「みんな直帰ですよー。私はちょっと、事務所に忘れ物をしちゃったんで」

P「そうか。摩美々ももう上がるか?」

摩美々「そうですねー……」

P「この後は……放クラのメンツが事務所に揃うと思うけど」

摩美々「げえ……それじゃ、帰りますねー」

P「おいおい、げえはないんじゃないか?」

摩美々「逆に、私が放クラと喋ってる姿、浮かびますかぁ?」

P「それは……まあ、確かにそうだけど」

摩美々「放クラなんてやかましいだけじゃないですかぁ。私は上がりますねー」

P「あ、お、おい摩美々」

「あら、私は話したいことがたくさんあるのに、帰ってしまうの?」

P「あ」

摩美々「げ」

有栖川夏葉「ねえ摩美々? 喉が乾いているんでしょう? お茶を淹れたから、飲んでいかないかしら?」ゴゴゴゴゴ

摩美々「うへぇ……」



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摩美々「というかプロデューサー、夏葉がいるなら先に言ってくれればよかったのにー」

P「ここで俺に振られてもなあ」

夏葉「いいえ摩美々、私だって別に、怒っているわけではないの」

摩美々「それなら帰ってもいいですよねー」トコトコ

夏葉「同じ事務所の仲間からの客観的な評価だって、フィードバックに値する情報ですものね!」ササッ

P「しかし、まわりこまれてしまった」

摩美々「実況しなくていいですからぁ」


夏葉「それで、私たちのどこが不満なのかしら?」

摩美々「別に不満とは言ってませんケドー」

夏葉「あら、摩美々の中では『やかましい』は褒め言葉に分類されるのかしら?」

摩美々「ちょっと私とは合わないだけですしー」

夏葉「それは良くないわね!」

摩美々「別にいいじゃないですかー」

夏葉「いえ! 女の子は誰だっていつだって放課後がクライマックスなのよ。そこに合うも合わないもないわ!」

摩美々「そういう姿勢がですねー」

夏葉「まだご不満かしら?」

摩美々「むしろ不満が晴れる要素がなかったですケドー」

夏葉「なぜ?」

摩美々「話聞いてましたぁ?」

夏葉「まどろっこしいわね! それなら共に筋トレを――」

摩美々「勘弁してほしいんですけ――」

ガチャ

小宮果穂「おつかれさまです!!!!!」

夏葉「あら果穂。お疲れ様」

果穂「夏葉さん! 摩美々さんも! お話ししてたんですか!?」

夏葉「ええ、軽い世間話をね」

摩美々「んー……」


摩美々「じゃあ今度こそ私は」

夏葉「いえ、せっかく果穂も来たのだから、お話ししましょう?」ガシッ

摩美々「はぁ?」

夏葉「ね?」ニッコリ

摩美々「だからぁ、私には合わないって言っ」

果穂「そうだ!!!」

夏葉「?」

摩美々「?」

果穂「摩美々さん! この前はヒーローショーを一緒に見に行ってくれてありがとうございました!!!」ペコリ

摩美々「っ……」

夏葉「!?」


夏葉「果穂、摩美々とヒーローショーを見に行ったの……?」

果穂「はい! 先週、夏葉さんと樹里ちゃんは地方ロケ、凛世さんは学校が長引いて、ちょこ先輩はつまみ食いの罰のレッスンで誰もいなくて!」

摩美々(智代子は何してんのー?)

果穂「でもその日! 近くのデパートにジャスティスレッドが来る日だったんです……! あたし、どうしても行きたくて……! そうしたら、摩美々さんが付いてきてくれたんです!」

夏葉「摩美々……優しいじゃない……!」

摩美々「はぁ〜〜〜〜〜????? ちょうどデパートで買いたいものがあったからそのついでですケドー?????」

果穂「ちゃんと隣で座って、最後まで見ててくれました!」

摩美々「スマホいじってる方が浮くって思っただけですしー」

果穂「みんなで一緒に『ジャスティスレッドー!』って呼ぶときもちゃんと言ってました!」

摩美々「聞き間違いだと思うケドー」

果穂「行き帰りにははぐれないように手を繋いでくれて!」

摩美々「いなくなったら面倒って思っただけー」

果穂「一緒にソフトクリームも食べました!」

摩美々「もういいでしょー……!」ムニムニ

果穂「ひゃっ!? ふぁふぃふぃふぁん〜」

夏葉「……ふふっ」

摩美々「なに笑ってるんですかぁ」

夏葉「意外と面倒見がいいのね」

摩美々「はぁ〜〜〜〜〜?????」


摩美々「あの時は気が向いただけですからー。次は行きませんしー」

果穂「えっ……そ、そうですよね……ヒーローショーなんて、摩美々さんには子供っぽいですよね……ごめんなさい……」シュン

摩美々「うっ……ま、まあ、また気が向かないとは言ってませんケドー……」

果穂「本当ですか!!!」キラキラ

摩美々「くっ……」

夏葉「摩美々……」

摩美々「うるさぁい」

夏葉「まだ何も言っていないわよ」


摩美々「もういいですよねー? 私は帰って……」

ガチャ

杜野凛世「皆さま……お疲れ様です……」

果穂「凛世さん!」

夏葉「お疲れ様、凛世」

摩美々「どうして増えるんですかぁ?」

夏葉「事務所集合だもの。さっきプロデューサーも言っていたでしょう?」

凛世「摩美々さんとお話をされていたのでしょうか……?」

果穂「はい!!」

摩美々「別に何も……」

夏葉「ええ! 楽しく談笑していたわ!」

摩美々「強情ー……」


摩美々「私はいつでも帰る準備はできてますケドー」

果穂「ええー!? もっとお話ししましょう摩美々さん!」

摩美々「だからぁ、私は放クラとは合わないですしー」

夏葉「そんなことないわよ!」

摩美々「それを判断するのはまみみ自身ですしー」

凛世「ああ、そうでした……」ポンッ

夏葉「?」

果穂「?」

摩美々「?」

凛世「摩美々さん……先日お借りした漫画をお返しいたします……心躍る、よき作品でした……」ペコリ

摩美々「っ……」

夏葉「!?」


夏葉「凛世、摩美々に漫画を借りていたの……?」

凛世「はい……ちょうど、チームまりあでの打ち合わせの際、凛世が智代子さんの影響で漫画を読むことに楽しみを見出したと伝えたところ、おすすめの漫画を持ってきてくださったのです……」

夏葉「摩美々……優しいじゃない……!」

摩美々「はぁ〜〜〜〜〜????? 凛世に合わなそうな漫画を貸して困るのを見ようと思っただけですケドー?????」

凛世「人々が騙し合いのゲームに巻き込まれる話だったのですが、その中でも正直に人を信じ続ける主人公の心の強さに胸を打たれ……」

摩美々「私的にはキレイすぎるラストだと思いましたけどー」

凛世「きっと摩美々さんも、この漫画を通して人を信じることの大切さを啓蒙したかったのではないかと思うばかりです……」

摩美々「そんな人間に見えますかぁ?」

凛世「巻数が多く……非力な凛世を気遣い、2度に分けて届けてくださいました……」

摩美々「途中で落として汚されたら困るじゃないですかぁ」

夏葉「もはや気遣いの女ね!」

摩美々「はぁ〜〜〜〜〜?????」


摩美々「深読みはよくないと思うんですケドー?」

凛世「また、何かおすすめの漫画がありましたら……」

摩美々「えー?」

凛世「あ……申し訳ありません……差し出がましいことを……。凛世は感想の共有などが不得手でございます……そのような者に漫画を貸しても、何の意味も……」シュン

摩美々「う……別に貸さないとは言ってませんしー……」

凛世「心よりの感謝を……」キラキラ

摩美々「くっ……」

夏葉「摩美々……」

摩美々「うるさいですってー」

夏葉「だからまだ何も言っていないわよ」


ガチャ

園田智代子「お疲れさまー! もうみんないる? いち、にぃ、さん、よん……お、やっぱりみんないる……アッ違った! 樹里ちゃんじゃなくて摩美々ちゃんだ! チョコ食べる?」

摩美々「人が増えるペースが早くなってませんかぁ?」

果穂「ちょこ先輩! お疲れ様です!」

智代子「お疲れさま果穂ー! うりうり〜」ムニムニ

果穂「ひゃっ!? ふょふょふぇんふぁい〜」

夏葉「ふふっ……今日2回目ね」

智代子「あれ? 夏葉ちゃんもさっきやった感じ?」

果穂「いえ! さっきは摩美々さんです!」

智代子「へぇ〜」ニヤニヤ

摩美々「その気持ち悪いニヤケ顔、やめてくれないー?」

智代子「ひどいっ!?」


智代子「でもわかるよ摩美々ちゃん……! 果穂のほっぺた、触りたくなるよね!」

摩美々「別にそういうあれでもないですしー」

夏葉「それで、智代子は摩美々とどんな交流をしているのかしら?」

摩美々「なんでそういう前提で話し始めるんですかぁ?」

夏葉「いいえ、私だってもう気が付いているわ……!」

摩美々「さっきまでのは偶然ですしー」

智代子「あ!」

夏葉「!」

智代子「そういえば摩美々ちゃん、この前はお菓子くれてありがとね! おかげさまでレッスン乗り切れたよ〜!」

夏葉「さすが摩美々ね!」

摩美々「別に、食べきれないから処理してもらっただけで」

果穂「摩美々さん優しいです!!! すごいです!!!」

摩美々「だーかーらー」

凛世「チームまりあでも……あさひさんを落ち着かせるために飴を持ち歩いておりました……」

摩美々「別にアメはいつも」

夏葉「さすが摩美々ね!!!」

摩美々「しゃべらせてくれませんかぁ……!?」


摩美々「っていうかぁ、もう過半数も揃ってるなら、私は帰ってもいいですよねー?」

ガチャ

西城樹里「悪い遅れた! ……あれ? なんで摩美々がいるんだ? あ、そういえば摩美々! こないだは一緒に野球見に行ってくれてサンキュな! 助かった!」

摩美々「はぁ〜〜〜〜〜?????」

夏葉「まだ誰も何も言ってないでしょう」


樹里「あれ……アタシなんか変なこと言ったか?」

果穂「摩美々さんと一緒に野球を見に行ったんですか!」

樹里「ああ、チケットをもらったはいいんだけど、プロデューサーと果穂は仕事、夏葉と凛世はレッスン、チョコはつまみ食いの罰のレッスンで誰もいなくてさ」

摩美々(智代子そのパターン多くないー?)


樹里「あんま興味なかったろうに、ありがとな」

摩美々「まあ、暇つぶしにはなりましたケドー」

果穂「あたしも行ってみたいです! 次は連れてってください! 樹里ちゃん! 摩美々さん!」

摩美々「いや、私は別にー」

樹里「お! じゃあ次は3人で行くか!」

摩美々「さっき『興味なかったろうに』って言ったのに、また誘うんですかぁ?」

果穂「そうですよね……行きたくないですよね……」シュン

摩美々「も〜〜〜〜〜」


智代子「そういえば、どうして摩美々ちゃんはここにいるの? あ、悪い意味じゃなくてね! 珍しいなって!」

摩美々「そこの人が帰してくれないからズルズルいっちゃったんですよー」

樹里「夏葉が?」

夏葉「ええ。最初は、摩美々の言葉の真意を聞き出すことが目的だったけれど……わかったわ!」

摩美々「え?」

夏葉「さっきの言葉……あれは、本当はみんなのことが大好きなあなたの……”照れ隠し”!!! そうでしょう!?」

摩美々「はぁ〜〜〜〜〜?????」


智代子「さっきの言葉?」

夏葉「いいえ智代子、それはもういいの……心で通じ合う関係に、野暮な詮索は不要よ!」

摩美々「通じ合った覚えなんてないんですケドー? 大好きなんてこともないですしー」

果穂「え……」シュン

摩美々「ハメ技やめてくれませんかぁ〜〜〜〜〜?????」


夏葉「って……あ……!!!!!」

樹里「ん……今度はどうした?」

夏葉「気が付いてしまったのよ……この中で、摩美々との間に語るべきエピソードがないのは私だけだって……!」

摩美々「どうでもいいことですよねー」

凛世「なんと……!」

果穂「そうなんですか!!!」

智代子「それはよくないね!!!」

摩美々「まさにこのノリが合わないんですってー」


夏葉「というわけで! この後の食事に、摩美々も連れて行こうかと思うの!」

摩美々「はぁ?」

果穂「賛成です!!!」

摩美々「え……ちょっと」

凛世「良き提案です……」

摩美々「いや……ってか仕事じゃないの……」

智代子「仕事は午前で終わり! 今日はみんなでご飯って決めてたの! 行こう行こう! 摩美々ちゃん、好きな食べ物は!?」

摩美々「行くなんて言ってな」

夏葉「それじゃあ出発よ!」

摩美々「ちょっ……」

みんな「おおー!!!!!」

摩美々「……」

摩美々「……」

摩美々「……」

樹里「ま、摩美々……ぐったりしてるけど、大丈夫か?」

摩美々「もう好きにしてくださいー……」グデー


P「お、出発か。気をつけてな。あまり遅くならないように」

夏葉「当然よ!」

摩美々「プロデューサー……いたんですねー……」

P「いや、最初からいたろ? そんな目で見ないでくれって」

摩美々「あまりに喋らないので死んだかと思いましたぁ……」

P「こっちにトゲを向けるなっての。働いてたんだよ。いってらっしゃい」


摩美々「やっぱり……」


夏葉「ほら! 行くわよ!」

樹里「準備できたか?」

凛世「お忘れ物の無きよう……」

智代子「何食べよっかな〜♪」

果穂「さぁ! 行きましょう!!!」


摩美々「やっぱり放クラなんてやかましいだけじゃないですかぁ……」



おわり





ありがとうございました。


直近の過去作


鷹富士茄子「どうしてほたるちゃんは私のイベントを走ってくれないんですか!?」

佐久間まゆ「まゆはどんなプロデューサーさんでも大好きです……!」P「本当に?」

久川颯「えっと……”常識キャリブレーションミーティング招待状”……?」(pixivのみ)

浜口あやめ「珠美殿に宿りし!」道明寺歌鈴「武の神髄……?」


などもよろしくお願いします


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