【わたてん】みやこ「将来の夢?」ひなた「うん」 (29)

※私に天使が舞い降りた!短編

ひなた「作文の宿題が出たんだ!」

みやこ「あー、あったあったそういうの」ナツカシー

花「将来の夢とか決まってないし……こういう宿題嫌い」

みやこ「だよねー、私も苦手だったよこういうの」

みやこ「小学生のうちから将来の夢なんて分からないもんね?」

花「まあお姉さんみたいなニートにだけはならないよう気を付けます」

みやこ「ニートじゃないからね!? 大学生!」

乃愛「アタシはもう書くこと決まってるもんねー」

みやこ「へえ、ノアちゃんはもう将来の夢決まってるんだ」

乃愛「もちろん! こんなにカワイイ子がやるお仕事なんて決まってるでしょ!」

みやこ「あ、モデルさんとか?」

乃愛「カワイイからモデルやるって浅はかだなぁ、ミャーさんは」

みやこ「スミマセン……」

みやこ「じゃあ女優さんとか?」

乃愛「ブブー」

乃愛「答えはユーチューバーでしたー」

みやこ「あー、そっかユーチューバーかー」

みやこ「……え?」

乃愛「アタシがユーチューバーになれば再生数爆稼ぎ間違いナシね!」

ひなた「ノアはかわいいからなー」

乃愛「でへへ」

みやこ「え、ユーチューバー? 本気で?」

乃愛「どうかしたの?」

みやこ「いやー、まあ、うん、ユーチューバーかぁ」

みやこ(小学生のなりたい職業ランキングでユーチューバー急上昇、ってこの前ニュースで見たけど)

みやこ(ホントに人気なんだなぁ……)


ひなた「花は何書くんだー?」

花「うーん……」

花「私もユーチューバーにしようかな……」

みやこ「ほぇ!?」

みやこ「ちゃんと現実見えてそうな花ちゃんまでユーチューバー!?」

乃愛「遠回しにアタシのことディスってない?」

花「正直まだなりたいものなんて全然分からないです」

花「けど先生が言ってました」

花「『将来やりたいことがわからない人は、自分が好きなこと、自分が得意なことが何かをまず考えてみましょう』って」

花「私の好きなこと……それはお菓子を食べること」

花「じゃあパティシエになる? それは違う」

花「私は不器用だしお菓子を作ることは別に好きじゃない」

花「じゃあ得意なことは? お菓子をおいしく食べること」

花「つまり……『お菓子レビュー動画』を作れば私の好きなこと・得意なことを生かせる……!」

花「そう考えるとユーチューバーもありかなって」

みやこ「う、ん……」

ひなた「そっかー、2人ともユーチューバーで書くのか」

みやこ「ひなたは将来何になりたいの?」

みやこ「まさかひなたもユーチューバー……とか?」

ひなた「いや、わたしはあんまり興味ないかなー」

みやこ「そ、そっかー」ホッ

ひなた「わたしは将来そーり大臣になりたい!」

乃愛「おおー」

みやこ「私の安堵を返して!」

ひなた「ダメかー?」

みやこ「いやいやさすがに無理があるでしょ総理大臣はさ」

ひなた「そーり大臣が無理なら先生になりたいかなー」

みやこ「おー、いいんじゃない?」

ひなた「あーでもお医者さんにもなりたいしー、弁護士さんにもなりたいしー、何かの会社の社長にもなってみたいしー、お巡りさんも捨てがたいかなー、それからそれから……」

みやこ「節操がない!」

ひなた「一つに絞るのって難しいなー」

乃愛「もういっそユーチューバーでいいんじゃない?」

ひなた「それが無難かなー」

みやこ「結局ユーチューバーじゃん! ユーチューバー人気すぎ!」

ひなた「みゃー姉はユーチューバー否定派なのかー?」

乃愛「さっきからシブい顔してるよね」

みやこ「いやー、否定派ってほどじゃないんだよ?」

みやこ「けどさー、うーん……実際稼げる人ってほんの一握りなわけでしょ?」

みやこ「収入も安定してなさそうだし……」

みやこ「現実的に考えてどうかなーっていう……」

花「でも、小学生の将来の夢ってそんなものじゃないですかね」

花「あんまり小学生のうちから現実志向なのもどうなの? という」

みやこ「小学生の花ちゃんが言いますか」

乃愛「でもさ、前にニュースで見たけど、昔はスポーツ選手とかタレントが人気だったんでしょ?」

乃愛「その2つも一握りの人しかなれないし、安定もしてないよね?」

みやこ「そ、それは……」

乃愛「しかもさ、今から何十年か後って今の職業の半分くらいはAIに代わられちゃうんでしょ?」

乃愛「じゃあ今の職業だって安定してるかビミョーじゃない」

みやこ「うーん……」

乃愛「けどユーチューバーみたいに動画で何かを紹介したりプレゼンする職業は簡単には無くならないと思うの」

乃愛「だってそういうのって人間がやってるからこそ見るって人が多いじゃない?」

乃愛「V-tuberみたいの進化版みたいなのが出て一部AIにとって代わられたとしても、全部はなくならないよきっと」

乃愛「もしユーチューバー一本で食べていけないとしても、『ネットで誰かを楽しませてお金を稼ぐ』って形のお仕事はこれから増えていくと思うし、一つの収入源として選択するのはアリだと思うの!」

乃愛「どうせ小学生のころの夢なんて叶わないのが大半なんだし、それなら副業として現実味のあるユーチューバーを今のうちから意識しておくってのはむしろ現実的だよ!」

みやこ「うおお……なんだこのユーチューバーに対する熱い想い」

みやこ「まあ確かに、副業というか小遣い稼ぎとしてならいいかもね」

ひなた「じゃあユーチューバーで作文書いてもいいかー?」

みやこ「いいんじゃない?」

乃愛「やったー」

花「というかお姉さんの承認は別に必要ないですけどね」


みやこ「でも、時代は変わったなぁ……」

みやこ「私が小学生のころはユーチューバーなんて職業なかったもん」

ひなた「そうなのか!?」

花「そもそもパソコンが一般の家庭には無かったんですよね?」

みやこ「それはあったよ! そこまで昔の人じゃないよ!」

ひなた「じゃあさ、みゃー姉が小学生のころの将来の夢って何だったんだ?」

みやこ「うーん……」

乃愛「こういう作文の宿題は昔からあったんだよね? 何書いてたの?」

みやこ「何書いてたっけなぁ……」


☆☆


みやこ(小学生)「将来の夢? 別にないかなぁ……」

みやこ(小学生)「作文とか面倒だし、適当になんか無難なの書いとこ、薬剤師とか」


☆☆


みやこ「まあこんな感じ」

乃愛「ユーチューバーより適当じゃん!」

花「本気でユーチューバー目指してる小学生のほうが立派ですよねこれ」

みやこ「うっ……」

みやこ「昔から将来の夢とか考えるの苦手だったんだよね……」

みやこ「進路志望とかこういう作文も適当に流してきたし……」


☆☆


みやこ(中学生)「将来の夢? 特にないかな……」

みやこ(中学生)「まあ高校生になればやりたいことも見つかるよねきっと」

みやこ(中学生)「高校? まあ適当にいけるとこに行けばいいや」



みやこ(高校生)「将来の夢? 特にないかな……」

みやこ(高校生)「まあ大学生にもなればさすがに見つかるでしょ」

みやこ(高校生)「受験する学部? まあ適当に受かりやすそうなところでいいや」


☆☆


乃愛「ミャーさん、今は将来どんなお仕事したいって思ってるの?」

みやこ「え? 特に無いかな……」

乃愛「……」

みやこ「まあ就活までにはさすがにやりたいことも見つかるでしょ」

乃愛「絶対見つからないやつじゃん!」

みやこ「えー? 見つかるでしょ、多分」

乃愛「ミャーさん過去から学んで! その問題は時間では解決しないよ!?」

乃愛「何か私たちの宿題よりミャーさんの将来のほうが気になってきたんだけど」

花「というかもう『将来』っていうほど遠い未来じゃないですよね」

みやこ「いやな現実を突きつけてくるなぁ」

乃愛「一回真剣に考えてみたら? 自分が本当に何をしたいのか」

みやこ「ま、まるで私がこれまで一度も将来について真剣に考えてこなかったみたいに……!」

花「考えたことあるんですか?」

みやこ「まあ……無いけど」モゴモゴ

花「そういうところですよ」

みやこ「スミマセン……」

乃愛「花ちゃんも将来の夢決まってないって言ってたよね……?」

乃愛「正直に自分の気持ちにきいてみようよ」

乃愛「ミャーさんは社会に出てから、どうやって生きていきたいの?」

みやこ「うーん……」

みやこ「そもそも社会に出たくない」

みやこ「働かずにのんべんだらりと暮らしていきたい」

乃愛「ダメ人間すぎる……」

ひなた「だいじょーぶ、みゃー姉はわたしが養ってやるからな!」

みやこ「ひなた……」ウルウル

ひなた「みゃー姉は安心してひきこもってていいぞ!」

みやこ「よし、これで私の未来は明るいなぁ」

乃愛「それ明るいの? ミャーさんの人生それでいいの?」

みやこ「理想形だね」

乃愛「ひなたちゃんもそれでいいの!?」

ひなた「理想形だな」

乃愛「うーん、この歪んだ姉妹愛」

花「でもひなたが大学卒業するのってまだ10年くらい先ですよ」

みやこ「うわ、そのころ私29? がけっぷちだなぁ」

乃愛「29でニートだったらすでに転落してるよ!」

みやこ「そっか、私が大学卒業してから7年くらいは何とか自分で稼がないといけないんだ……」

みやこ「うーんどうしよ……もうユーチューバー目指そうかな」

乃愛「結局!」

みやこ「アレだ、お菓子作りRTAとか配信したら結構ウケるかも!」

乃愛「真剣に考え始めた……」

みやこ「いやー、人生設計が面白いほどに決まっていく! 意外とちょろいんじゃない? 人生」

乃愛「人生をなめ腐っている……」

花「まあひなたがこの先もずっとお姉さんに懐いてるとは限りませんけどね」

ひなた「私はずっとみゃー姉だいすきだぞ!」

花「そうかな? 中学生くらいで反抗期になるかも」


☆☆

【前日の夜でも大丈夫! バレンタインデー手作りチョコRTA】

みやこ「さっきチョコをレンチンしておいたのは、ここでの湯煎の時間を短縮するためだったんですね」

ガチャッ

ひなた「みゃー姉やめろよそれ(配信)」

みやこ「湯煎では焦ってお湯がチョコに入らないようにしましょう(3敗)」

ひなた「聞いてんのか!」

みやこ「型に流し込んだら氷水につけて……」

ひなた「おいひきこもり!」

みやこ「急~冷~」アワワ

☆☆

みやこ「うわああ何か普通にありそうで怖い!」

みやこ「ねぇひなた、なんかほしいものがあるなら買ってあげよっか?」

ひなた「えー?」

乃愛「媚びの売り方がひどい!」

みやこ「はー、何か将来自分が働くってことを想像しただけで憂鬱になるよ」

みやこ「あーあ、異世界に転生してアドバイザー的なことやりつつのんびり暮らせたらなー」

乃愛「今まで挙がった中で一番現実見えてない夢!」

☆☆

みやこ「それでは歯磨き粉のチューブの端っこをもってフリフリしてみてはどうだろう」

市民「やや! 歯磨き粉が無駄なく最後まで使えるではないか!」

姫「すごい! 抱いて!」

☆☆

みやこ「こんな感じでさ」

乃愛「ひけらかす知識がショボイ!」

みやこ「はぁ……なんかもう疲れたなぁ、こんな話してるとさ」

乃愛「ミャーさんもっと真剣に考えようよ……」

みやこ「……嫌だよ、先のこと考えるなんて」

乃愛「そんな、アタシたちと違って大学生なんだから」

みやこ「そうだよ、私だけみんなと違って大学生……」

みやこ「なんで、私は小学生じゃないんだろ……そんなのひどいよ」

乃愛「何かすごい方向性でボヤき始めた……」

みやこ「小学生のときも、中学生のときも、高校生の時も、人生全然楽しくなった」

みやこ「ずっと何かに苦しみながら毎日生きてたんだ……」

乃愛「ミャーさん……」

みやこ「大学生になってから、みんなと出会って、それでやっと変わったんだ」

みやこ「毎日が楽しいって思えるようになったんだよ」

みやこ「……けど、それも長くは続かない」

みやこ「いつかは就職してこの家を出なくちゃいけない」

みやこ「いや、多分それよりも前に……みんな中学生になったら私からは離れていってしまうよ」

みやこ「ううん、もしかしたらもっと早く……来年かも」

ひなた「みゃー姉……」

花「まったく……」

花「ねえ、お姉さん」

みやこ「花ちゃん……?」

花「大学生にもなってやりたい仕事の一つもない、勤労意欲のかけらもないお姉さんはダメな人です」

みやこ「慰めてくれるんじゃないの!?」

花「甘えないでください」

みやこ「うぅ……」

花「でも……私も同じです」

花「将来の夢なんて無いし、先のことだって考えたくありません」

花「だって今が……こうやってみんなで集まって、お姉さんのお菓子を食べてお話するのが……一番楽しいから」

みやこ「コスプレするのも?」

花「それは全然楽しくないです」

みやこ「さいですか」

花「だったら夢の無い女の子どうし、一つ決めておきませんか」

みやこ「何を……?」

花「私が大きくなって……そのときになってまだお姉さんにも、私もやりたいことが見つけられてなかったら……」

花「そのときは2人でケーキ屋さんでも開きましょう」

みやこ「え」

花「お姉さんはどうせ接客はできないでしょうから、私がやります」

花「お姉さんはお店の奥でひたすらケーキ作っててください」

みやこ「花ちゃん……」

花「もちろんまかないはケーキで」

みやこ「ケーキ屋さんにまかないとかあるの?」

乃愛「うふふ、じゃあそのときはアタシも接客やろうかな」

乃愛「カワイイアタシがいれば繁盛間違いナシ!」

ひなた「じゃあわたしは店長やるぞー!」

花「それはお店がつぶれそう」

乃愛「うんうん」

ひなた「なんだとー」

みやこ「みんな……」

花「だからもう、働かないなんて選択肢はありませんよお姉さん」

花「他の夢を見つけるか、ケーキ屋さんになるかどっちかです」

みやこ「……」

みやこ「うん、頑張ってみるよ」

みやこ「ありがとね、花ちゃん」

花「……はい!」

~翌日の放課後~


乃愛「なんだかんだで作文もちゃんと書けたし、ミャーさんも更生の第一歩を踏み出せたしでよかったね」

ひなた「ありがとな、花」

花「今日はその分いっぱいお菓子作ってもらう!」フンス

ひなた「ただいまー」

ガチャ


みやこ「おかへりー」グデー

ひなた「みゃー姉!?」

乃愛「何かいつにもまして覇気がないような……」

花「お姉さん……?」

みやこ「いやーなんかさ」

みやこ「ケーキ屋になるなら別に大卒じゃなくてもできるしー」

みやこ「最悪大学ダブってもいいかなって思うとなんか気が抜けて……」

乃愛「……」

みやこ「アレでしょ? ひなたが店長やってー、花ちゃんとノアちゃんが接客もろもろやってー」

みやこ「私はひたすらケーキ作ってればいいわけでしょ?」

みやこ「で、制服も日替わりでいろいろカワイイの作ってー、花ちゃんにも着てもらってー、ついでに写真も撮ってー」

みやこ「えへえへ人生バラ色だぁ……」

花「……」

花「やっぱりお姉さんはクビです」プイ

みやこ「なんでー!? っていうかまだ雇ってもらってないよね? 待ってよ花ちゃーん!」

ひなた「ダメだこりゃ」



END

ありがとうございました
みんなもわたてんss書け

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