【モバマス】LiPPS「虹光の花束」 (944)

モバマスss初投稿です

LiPPSがメインのお話ですが、オリジナル設定が多く盛り込まれています

ss速報VIPを使用するのは初めてなので、何か不備がありましたらご指導をお願いします

海が好きだ。

泳ぐのが好きなわけではないのだけれど、波の音を聞きながら、海岸から揺らめく蒼を眺めていると、心に溜まった淀みがなんとなく流されていくような心地になれた。

だから、放課後はいつもこの海岸で、陽が沈む海を眺めていた。

ただ、今日はそれでも少し収まりが付かないほど、私は疲れていた。

奏「今日はなんか...いろんなこと、ありすぎたな...」
 「結局高校生活も、ただの遊びなのかしら...」


今日もまた、私は、自分がなんなのかわからないまま、ごちゃまぜの感情が洗い流されるのをただただ待っていた

そんな状態だったからかしら

???「ちょっと、そこの君!」


あの人に目をつけられて、そして...


???「アイドル、やってみないか?」

新しい道、アイドルとしての道を踏み出すことになったのは

プロローグ [Budding Fate]

奏「...あなた、誰?サングラスに深くかぶった帽子...正直すごく怪しいのだけど」

???「おっと、すまないね名乗りもせずに。俺、こういうものでね。」

そう言うと男は一枚の紙を差し出してきた

奏「あら、名刺?プロデューサー...あなたが?」

P「兼社長のPだ。よろしく。」

社長?
もう一度名刺をよく見ると確かにそこには、[811プロダクション社長兼プロデューサー]と書かれていた
目の前の男は、とても社長なんて大それた肩書を背負っているようには見えないけれど

奏「ふーん...私をアイドルに...? 冗談でしょう? そういう人、多いのよね」

以前にも街中でアイドルにならないかと声をかけてきた人はいたけど、誰も彼もが私を本気で求めてるようには見えなかった
きっと、この男も同じだろうし、いつも通り適当にあしらおう、そう思った
でも...

P「本気だ、それに今もっと本気になった」

奏「え?」

思いの外真剣な顔で返してきたので、少し戸惑ってしまう

P「君をスカウトする人多いんだろう? なら他の奴に持ってかれる前に絶対ここでスカウトしておかないとな」

奏「ふーん...本気、なのね」

正直、その言葉を信じれたわけじゃない。
でもその時の私はヤケになっていたから、少しだけ確かめたくなった。
目の前のこの男が、どれだけ私を欲しているのかを


奏「じゃあ...今、ここでキスしてくれる? そうしたら、なってもいいよ?」

P「わかった」

奏「えっ?」

即答!?

P「キスすればなってくれるんだな?」

奏「...ふふっ、まさか乗ってくるなんて。あなた、本気なのね。それとも、満更でもなかった?」

P「そりゃあ、初対面の子とキスするのは抵抗あるけど。君がアイドルになってくれるんなら、いくらでもやってやるさ」

奏「...ふふふっ!」

P「ちょっ、なんで笑うんだよ」

奏「だってあなた、すっごく顔赤いんだもの!」

奏「ふふっ...!いいよ、そこまで本気なら付き合ってあげる。」

P「ホントか!?」

奏「ええ、よろしくね。私のプロデューサーさん?」

P「いよっしゃああああ!...つっても、今日は遅い時間だからまた明日、名刺に書いてある住所の場所まで来てくれ。そこで詳しい話をしよう。」

奏「分かったわ、それじゃあまた明日」

P「じゃあな!...えっと」

奏「速水 奏。すぐそこの○○高校の学生よ」

P「そうか、じゃあまた明日な速水!...ん?」

奏「奏でいいわ、それじゃ、また明日ね」

こうして、私はアイドルの道へと連れ出された

明日は、このつまらない日常から少し抜け出せる、そんな予感を感じながら...

P「高校生だったんだ...OLかと思った...」

プロローグが終了したところで今回はここまで
8割ほどは既に原稿が書きあがっているので残り2割を書きつつ合間合間に投稿していきます

次回更新は3月22日の夜の予定...ですがもしかしたら23日以降になるかも

今更ながら間違えてRの方でスレ立てしていた事に気づきました
ですがどっちみち後でちょっとブラックな描写があるのでとりあえずこのまま行こうと思います

では、続きを投下していきます

次の日の放課後、私はすぐにもらった名刺に書かれたビルへと向かった
そこには、811と分かりやすい看板がでかでかと掲げられた4階建てのビル、そしてその扉の前には

P「来たか奏!」

昨日の男、そして、これから私のプロデューサーになる男が待っていた

「ようこそ!我が811(ハッピー)プロへ!」

Chapter1 「Welcome to Happy Production!」

奏「4階建てのビル丸ごと一つ...意外と大きい事務所ね...いや、むしろ芸能事務所としては小さいほうなのかしら?」

P「まー全体的に見たら小さいほうかな。でも、建物だけは設立三か月にしてはでかい事務所だと思うよ。」

奏「設立三か月!?」


聞いたことのない名前とは思ったけど、まさかそんなに新しいプロダクションだったなんて...

P「それに場所はでかいんだけど、実は所属アイドルが君を含めて二人しかいないから、かなり部屋が無駄になってるのさ」

ということはプロデューサー含めても3人...確かに場所を持て余すわね...

奏「丸ごと買い取るんじゃなくて、ワンフロアだけとかにすればよかったんじゃない?」

P「あとあと人も増えるかなーと思ったから思い切って丸々買い取ったんだよ。まあ立ち話もなんだし、入って入って」

言われるがままビルの中に入り、プロデューサーの案内通りに進み、事務室と書かれた扉を開けた。

???「Pさんおかえりー」


事務室に入ると、ソファに座っていた女性が和菓子のようなものをつまみながら私達を出迎えてくれた。
この子がもう一人のアイドルかしら?
確かに、人の目を引き付けそうな綺麗な白い肌をしていて、スタイルもいい。
アイドルと言われても不思議ではない容姿ね

P「ただいま周子、この子がウチの新しいアイドルだ。」

奏「はじめまして、速水 奏よ。」

周子「よろしく奏ちゃん」
  「それにしても、Pさんすっごいエッr...別嬪さん連れてきたねー」

今エロいって言いかけなかったかしらこの人

P「ちなみに高校生だぞ」

周子「マジで!?年下!?」

奏「あら?そう見えない?」

周子「いやOLかと思ってたわ...っとと、あたしの自己紹介がまだだったね」

周子「あたしは塩見 周子。ここのアイドル兼事務員やってまーす。」

奏「アイドル兼...事務員?」

周子「いやーあたし実家から追い出されちゃってさー、なけなしの貯金で東京来たはいいけど、お金がなくなる前に住むとこと仕事見つけないと家に強制送還されてお見合いさせられるとこだったんだよ。」
  「そんな感じでいやーどうしたもんかなーってすぐそこの公園で黄昏てたら、Pさんがあたしをスカウトしてきたんだ。」
  「んで、住むとこもPさんの住んでるアパートの部屋が空いてるから大家さんに口きいてやるって言われてこりゃラッキー!って思ったんだけど...」

P「まだ設立したばっかですぐに生活できるほどのギャラ貰える仕事なんて用意できなかったからな。そこでどうせ人手も足りないしってことで」

周子「アイドルのついでに事務員として雇ってもらったってわけ!いやー仕事少なくて楽な割に給料高い仕事見つかってホントラッキーだったわ。」

P「まあ周子は絶対アイドルの素質あるって思ったから、こりゃ初期投資してでも確保するしかないって思ったのさ。」
 「ていうか、仕事が少ないのは今のだけだからな! 多分...」

奏「実家から追い出されたって...大変だったのね。これからよろしくね、塩見さん」

周子「周子でいいよー。 こちらこそよろしく!」

P「んじゃ顔合わせも済んだところで、まずは奏のポテンシャルを見ておきたい」
 「レッスン場へ案内するからそこで一通りテストを受けてくれ」

奏「わかったわ」

周子「あ、あたしも見たい見たいー!」

P「もちろん、周子も見ててやってくれ。経験者なら、何かアドバイスとかできるかもしれないしな」

奏「お手柔らかにお願いするわね、先輩」

周子「まっ、あたしも先輩ってほど経験ないんだけどさ。でもまあ、任せとき!」

=====レッスン場======

奏「ふぅん、ここがアイドルのレッスン場なんだ...意外とシンプルなのね」

案内されたレッスン場は、壁の一面が鏡張りになっていることを除けば、大した装飾もない普通の部屋だった
もっとカメラとか音響とかの機材でいっぱいになってるのかと思ってたけど

周子「まあ余ってた部屋を適当に改造しただけだからね」

P「んじゃ一通り見ていくか、周子、サポートを頼む」

周子「りょうかーい」

奏「はぁ...はぁ...」

先導してくれる周子に合わせて一通りやってみたけど...

奏「どうだった?ご感想は?」

P 周子「「すげぇ!」」

奏「あらそう?全部見様見真似だったのだけど」

周子「奏ちゃん本当に初めて?正直素人とは思えんかったけど」

P「ボーカル、ダンス、ヴィジュアル、すべてに置いて初心者とは思えないポテンシャルだったが...」

奏「...昔から、たいていの事は出来てたのよ。だからこそ、今までずっと悩んできたの」
 「何でもできるということは、何者でもないということ、自分が一体何のかわからないから、何を目指して生きるべきなのか分からなかった、でも...」

想像以上に過酷だったレッスンに必死に打ち込んでいる内に、私はどんどんその行為に夢中になっていって、心が晴れやかになっていくのを感じていた

奏「久々に、すがすがしい気分になれたわ、きっと今まで、雑念ってものに惑わされ過ぎていたのかも。」
 「とりあえず、アイドルというものに興味がわいてきたことは事実ね」

P「そっか。レッスン、楽しんでくれたようでなによりだ」

周子「ウチの社訓は、『全力で楽しむ!』だからね。楽しんでやるのが一番!」

奏「社訓が、楽しむ...?」


社訓ってもっとお堅い言葉が並んでるものな気がするけど...

P「ああ、アイドルってのは人に夢を魅せて楽しませる仕事だ、でも、そのアイドル自身が楽しんでパフォーマンス出来なきゃ観客は満足できない」
 「だからこそ、どんなときでもアイドルという仕事を楽しむ!それがこのプロダクションのポリシーなのさ」

奏「そう...なら私が全力で楽しめるよう、これからよろしくねプロデューサーさん?」

P「もちろん!全力でサポートさせてもらうよ」
 「まあ、とりあえず今日のところは一端ここでお開きにして、明日から早速一緒に頑張っていこうな」

奏「あら、今日はもういいの?」

P「テスト程度とはいえ、初めてにはキツかっただろ?今日はもう帰って休んだほうがいい」

周子「それに多分...アレもあるしね」

奏「アレ....? まあそうね...確かに、もう一度やれって言われたら最後まで持たないかも」
 「お言葉に甘えて、早めに休ませてもらうとするわ」

周子「じゃああたしも、お疲れさまー!」

P「いやお前はまだ事務仕事残ってるから残れ」

周子「えー! あたしだって早めに帰らせてくれてもいいじゃん!」

P「ちゃんとアイドル活動とは別で給料払ってんだからその分は仕事してもらわなきゃ困る!」

周子「うぐ...確かに高いお給料を貰ってるからそれを言われると言い返せない...しょうがないなぁ、また明日ね奏ちゃん」

奏「ええ、また明日」

こうして、私のアイドル人生の初日は無事終わった
帰り路を歩きながら、レッスンの時の感覚を思い返す
くだらない雑念から解き放たれたあの時の感覚...

「ようやく、見つけれたかも。」

ずっと探していた、心の空白を埋めてくれるもの...

奏母「あら、お帰り奏...どうしたの!?すっごく辛そうにしてるけど、何があったの!?」

奏「いや、その...き、筋肉痛...」

訂正、無事ではなかった....

次の日


P「さて、奏という大型新人も加わったところで、いよいよ我がプロダクションも本格始動しようと思う」

周子「おー!ついにあたしも、雑誌モデル以外の仕事ができるの?」

P「そうなる予定だ、でもその為にまず達成しなきゃいけないことがある」

奏「達成しなきゃいけない事?」

P「お前らにはまず、アイドルランクをEランクに上げてもらう」


奏 周子「「アイドルランク?」」

P「ああそっか、まずそこから説明しないとな」
 「アイドルランクってのはアイドルランク協会、通称『IR』っていろんなテレビ局の重鎮達が集まる組織が決めてるアイドルの格付けだ」
 「F~Sまでの七段階まであって、このランクがそのアイドルのおおまかな人気度を表すわけだ」
 「んで、お前らみたいな新人アイドルは自動的にFランクが割り当てられてるんだが、このランクをEに上げてもらう」

周子「ふーん ランク付けとか、意外と俗っぽいねーアイドル業界」

奏「ただランクをつけてるってわけじゃないんじゃない? 格を表すだけだったら、そんな大層な組織を作る必要がないもの」

P「鋭いな奏。実はアイドルランクは人気を表す目印の目的の他に、オーディションの応募条件にも使われているんだ」

周子「このオーディションはランクがどれぐらいないと受けられませーん的な?」

P「まあそんな感じだ」

奏「それで、ランクを上げるにはどうすればいいの?」

P「基本的にはファンの数だな、ファンの総数が規定以上になるとランクが上がる」

周子「じゃあ、地道にお仕事がんばってファン増やすとしましょうか」

P「まあそれも一つの手なんだが...今回お前らには特急券を手にしてもらう」

奏 周子「「特急券?」」

P「ランクアップの条件にはファンの数の他に、協会推薦ってのがある」
 「IRに『このアイドルは同ランクの他のアイドルとはもう格が違うな』って思わせれば、IR協会からランクアップの通知が来る」
 
奏「でも、私達みたいな新人が協会の目に留まる機会なんてあるの?」

P「時期に恵まれてな、ちょうど2週間後、あるオーディションが行われる、お前らにはそのオーディションの合格を目指してほしい」
 「それに合格できれば、まず間違いなく業界の目に留まるはずだ」

奏「そのオーディションって?」

P「城ケ崎美嘉のライブのバックダンサー、それを決めるLIVEバトルオーディションだ!」

to be continued...

Chapter1終了、今回はここまででー

次回は明日の夜...もしかしたら日付変わった後にもう一度投稿できるかもしれません

R板なんですけど…

>>47
一応物語後半の方で年齢制限が怪しくなりそうな描写があるのでとりあえず(このスレの間にそこまでたどり着くかは分からないけど)はR板のまま進行しようと思っているのですが...
通常板で立て直すべきですかね?

大丈夫そうなので今からChapter2の投下を始めていきます

Chapter2 「First Step」

周子「城ケ崎美嘉って今話題のあの!?」

奏「城ケ崎美嘉...」

モデルからアイドルへ転向し、今話題沸騰中のカリスマギャル
最近よくテレビで取り上げられているし、学校でも毎日のように休み時間にクラスメイトが話題にしてるのが耳に入るくらい今人気のアイドル
まだアイドル業界に疎い私でも知っているレベルのあのアイドルの、バックダンサーを?

奏「でもそのオーディション、私達受けられるの?今人気のアイドルなんだから、それ相応のランクが必要なんじゃない?」

P「いや、このオーディションはむしろ低ランク...Eランク以下が条件のオーディションなんだ」

周子「なんで?」

P「バックダンサーのオーディションはメインのアイドルのランクより低いランクが条件になることが多いんだよ。」
 「下手に同等以上の実力のアイドルがバックダンサーになるとそっちにメインが食われることがあるからな」
 「城ケ崎美嘉のランクはDランク...だからEランクより下で探そうってわけさ」

奏「なるほど...」

周子「まって、もう一個質問!」

P「LIVEバトルについてか?」

周子「そうそれ!さらっと流すところだったけど初耳だよ、なにそれ?」

P「オーディションによっては、複数のアイドルに同時にパフォーマンスで競わせて審査するんだ、それがLIVEバトル」

競わせる...つまり

奏「審査員の目の奪い合いってことね」

P「そういうこと、本番に近い状況で競争させることで、より深く参加者の実力を見極めるって事さ」
 「パフォーマンスの完成度だけじゃなく、プレッシャー耐性、順応力の高さとかな」
 「そういうわけで、お前らにはこれから二週間、オーディションに向けてのレッスンに集中してもらう」

周子「うわぁ、いきなりキツいの来たなぁ...」

P「無理言ってるつもりはないぞ、無茶振りはしてるけど」
 「実際、奏と周子の才能は既にその辺の駆け出しを優に超えてる、しっかり準備すれば一つ上のEランクアイドルとも渡り合えるだろう」

奏「あら、そこまで期待して貰えてるなら、少し燃えてくるわね」

周子「まっ、あたしも拾ってもらった恩あるし、できる限り頑張るよ」
  「最近事務仕事ばっかだったしねー、たまには体動かさないと」

P「やる気になってくれたようで何よりだ。それじゃあ早速レッスンといこう」
 「今日はちゃんとトレーナーさんも呼んであるしな」

奏「あら?今日はプロデューサーさんがやるんじゃないの?」

P「昨日はテスト程度だから俺がやったけど、別に俺トレーナー資格持ってるわけじゃないしな」

周子「いつもは青木さんってトレーナーがレッスンしてくれてるんよ。Pさんの知り合いなんだって」

P「あっちも忙しい身だから、ウチに専属ってわけにはいかないんだけどな。今日は都合が合ったから、もうレッスン場で待機してもらってる」

奏「じゃあ、あんまり待たせるのも悪いし、早くいきましょうか」

==================レッスン場====================

....まあ、なんだかんだでちょっと舐めていたのかもしれない
昨日も出来てたし、今回もそつなくこなせるだろうと、そう思っていたのだけど...

ベテトレ「速水!足が動いていないぞ!まだバテていい時間じゃない!」
「塩見!喉からじゃない、腹から声をだせ!」
「二人とももう一度やり直しだ!いくぞ!1、2、3!」


昨日のは本当にただのテストだったのね...
帰るときにはきっと鉄塊になってるわ、私...

ベテトレ「今から10分休憩だ、10分後にもう一度最初から通すぞ」

周子「あ、青木さん...なんか今日めちゃくちゃキツくない...?」

ベテトレ「当然だ、二週間でLIVEバトルに勝てるようにするんだ。普通より激しいレッスンになるに決まっているだろう」
    「Pが言ってたように二人とも確かに素質はあるが、経験と体力が圧倒的に足りてない!よって二週間以内に最低限の基礎を身に着けてもらう!」    
    「今のうちに水分をとっておけ!次の休憩まで長いからな」

奏「み、水を飲める体力じゃないんだけど...」

周子「さ、最低限、これが、最低限...」




ベテトレ「10分経った!もう一度始めるぞ!」

周子「えぇっ!もう!?」

奏「あ、あと10分もらえないかしら...」

~~~数時間後~~~

ベテトレ「今日のところはここまでだ、解散!」

お、終わった...
やっぱり、身体動かせないわ...

P「お疲れ~....うっわーこりゃひっでぇ」

周子「Pさ~ん、聞いてないよこんなん...」

P「動かなくなるまでしごかれたのか、なるほどねぇ...お前ら、青木さんに気にいられたみたいだな」

奏「き、気にいられた...?」

P「あの人、期待してるアイドル程厳しくするんだよ、実際、さっき話した時お前らの事べた褒めしてたぞ」

べた褒め?
レッスン中は罵倒されてた記憶しかないのだけど...

P「まだ駆け出しで体力は足りてないが、二人とも伸びしろがとんでもないってさ」
 「初日からここまで耐えられたの初めてだって、なんか喜んでたよ」

周子「青木さんが喜んでるとこ...想像できないんだけど」

P「ホントだって、ほら、饅頭買ってきてやったから糖分補給しな」

周子「いや、プロデューサー、今饅頭とか食べる気力ないから...」

奏「右に同じよ...」

というか、今必要なのは水分と塩分ではないかしら?
饅頭なんて食べたら私達絶対干からびると思うのだけど...

P「...タクシー読んでやるから、今日はもう帰りな...」

そして...



ベテトレ「足が体に追いついてないぞ!もう一度だ!」
    

「振付が適当すぎる!ロボットじゃないんだからもっと緩急をつけろ!」
    

「違う!もっと観客に目を向けろ!俯いて踊る馬鹿がいるか!」


地獄のようなレッスンは続き、ついにオーディション前日...


周子「ハートはデコらず伝えるの~♪」
奏「本当の私をみてね~♪」

奏 周子「見てて~♪」



ベテトレ「よしっ!合格だ!」

奏「!」

周子「つ、ついに...やったー!」

P「よくやったなお前ら!」

ベテトレ「ああ、正直想像以上だ。もうレッスンのあと動けなくなることもなくなったしな」

つ、ついにやり遂げたのね...
慣れたとはいえ、まだ疲れが半端じゃない...けど

奏「今までにない高揚を感じるわ...ここまで本気になったの、生きてて初めてよ...」

ベテトレ「だがまだ終わりじゃないぞ、明日の本番、いい報告が聞けるよう期待している」

周子「そ、そっか まだ本番があったね...あたしたち、合格できるかなぁ」

P「じゃあお前ら、明日の合格の為に今からいいところに連れてってやる。レッスンをやり切ったご褒美ついでにな」

奏「いいところ?」

P「ああ、これだ」

そういってプロデューサーさんは鞄からひらひらと紙きれを取りだして、私たちに差し出した
これ、チケットかしら....えっ!?

奏「プロデューサーさん、これって!」

周子「城ケ崎美嘉のライブチケットじゃん!?」

P「今日のこのライブが、きっと明日のお前らの武器になる。」
 「だからお前らちゃんと見とけよ、アイドルってのが、どういう存在なのかを」

==================ライブハウス=============================

中へ入ると、既にライブハウスの中はほとんど満員状態
プロデューサー曰くこれでもまだ小さいハコらしいけど、それでも2000人はいるらしい

奏「これだけの人間がたった一人の人間に合う為に集まっているのね...」

周子「ほんと、不思議な状況だね。何が皆をここまで駆り立てるんやろ」

P「見ればわかるさ。ほら、始まるぞ」

会場が暗転し、どこからか音楽がが流れ始めた
それと同時に観客達もどよめきだす
そしてスポットライトが『彼女』に当たった途端、そのどよめきは

???「みんなー!今日は集まってくれてありがとー★」


ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!
ミカアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



まるで台風のようなエネルギーの塊へと変貌した

奏「なんて迫力...」

周子「凄い...なんかもう、凄いとしか言えない...」

今ここにいる人間全員の聴覚は、彼女の歌に囚われてしまっていた
彼女がステップを踏むたびに、心が高鳴りだした
誰しもが、彼女から目を離せなくなっていた

今この会場は、全て城ケ崎美嘉という『アイドル』に支配されていた





      奏 周子(これが、アイドル.....!!)

Pさんもおっかない人やわぁ、狙ったのかはわかんないけど



別に本当にアイドルになんてなれなくても、事務員の仕事でぬくぬく過ごせればいいやって思ってたけど
ちょっとした恩返し程度のつもりとはいえ、あんだけキツいレッスンやり遂げてみて
あたしでもこんだけやり遂げられるんやなぁって少しだけ自分に自信が着いて
もしかしたら明日のオーディションで人生変わるのかもかもなぁって小さな希望も抱いて
その上でこんなもの見せられたら



ちょっと本気でアイドル目指したいって、思っちゃうやんなぁ?

美嘉「皆ありがとー★今日はサイッコーに楽しかったよ!」
  「来週のライブも絶対見に来てねー★」


奏 周子「..........」

P「あれが今を駆けるアイドル...お前らは、どう思った?」

奏 周子「..........」

P「ど、どうした二人とも黙りこんで...生きてるか?」

周子「奏ちゃん、多分あたしたち今、おんなじこと考えてるよね」

奏「えぇ、きっと...ねぇPさん」

P「なんだ?」

奏「見てて、明日私達、必ず勝つわ...そして」

奏 周子「「絶対、アイドルになる!」」




to be continued...

Chapter2終了したところで、今回はここまで―

次回更新はまた明日の夜...できたらいいなぁ(やや不安)

なお、Chapter3以降は一話一話が今までの倍くらい長くなるので、これまでのように一度の投稿で一話終わらないかもしれません

Chapter3の投下を始めていきます

朝七時、その時間に鳴るはずのアラームがよりも早く私はベッドを抜け出した
念のため予定より早い時間にセットしたはずなのに、遅刻するのがが不安だったのかしら?

それとも...





我慢できないくらいに、楽しみだったからかな?

事務所に向かうと、そこでは既に周子とプロデューサーさんが待っていた

周子「奏ちゃんも早起きしちゃったん?」

奏「ええ、よっぽど今日が待ち遠しかったみたい」

周子「あたしもそんな感じかな。軽く事件だよ、あたしが早起きって」

P「時間に余裕を持つのはいいことさ、遅刻するよりはな」



プロデューサーさんの車に乗り込み、会場へと向かう

今日、この世界にまた新しいアイドルが生まれた


私と周子、そして私達二人のユニット

その名も...




P「行くぞ、811プロ初のアイドルユニット」
 「『デュアルフルムーン』の初陣だ!」




            Chapter3 「Big Eater」




ユニットの名前が決まったのは、昨日の城ケ崎美嘉のライブが終わった後の事
事務所に戻って明日のスケジュールについて確認していた時の事だった

P「今日は解散の前に一つ、決めておかなければならないことがある」

周子「なに?」

P「お前らは明日、二人一組のアイドルユニットとしてオーディションに参加することになる」
 「つまり、ユニット名が必要なんだ」

周子「あぁ、ユニット名かー」
  「適当に『かなしゅー』とかじゃダメなん?」

奏「流石にそんなに適当じゃあ...ねぇ?」

P「もちろんダメだぞ」

周子「なんで?結構語呂もいいと思うんだけど」
  「ユニット名ってそんな重要なん?」

P「ユニット名ってのは審査員の目に一番最初に入るものだ。それがいかにも適当な名前だったらその時点で印象悪くなる」
 「ジャージ着た人とスーツ着た人、どっちがパッと見で信用できそうかっていったら断然後者だろ?そういうことだよ」

周子「なるほどねぇ、じゃあちゃんと考えないとだめかぁ」

奏「Pさんは何か案ある?」

P「...『かな&しゅーこ』?」

奏「却下よ」

周子「てか、それほとんどあたしのパクリやん!?」

P「だっていいのが全然思いつかねぇんだもん!俺昔からこういうの苦手だし!」」

周子「プロデューサーなんだからそこは頑張ってよ!」

P「いやーそういわれても...そうだ!奏はなんかあるか?」

奏「そうねぇ....」

確かに、急に言われてパッと思い付くようなものではない
でもこの二人に任せたらとんでもない名前になりそうだし...

奏「そういえばさっきのライブを見て思ったのだけど、アイドルってまるで満月みたいよね」

周子「どういうこと?」

奏「さっきのライブハウス、暗かったし、人もいっぱいいたでしょ?でも、そんな状況でも、彼女はその場にいる人々全ての心を狂ったように燃え上がらせた」
 「きっとアイドルって、そういう存在なんだと思う。地球のどんな場所、どんな暗い夜の中でも人々の目を、思考を奪って支配する、満月のような存在」
 「そして、私もそういうアイドルに、満月のようなアイドルになりたいって、そう思った。」

 「だから...そうね、私と周子、二つの満月...」

           




           『デュアルフルムーン』、なんてどうかしら?




周子「いやー無事に決まって良かったねーほんと」

P「ああ、これなら審査員に悪い印象を与えることもないだろう」

奏「ええ、『かなしゅー』よりはいいと思うわ」

P「そうだな、ホントに何考えてたんだろうな周子」

周子「いや、Pさんは人のこと言えないでしょ!」

P「あー聞こえませーん!...まぁ結局、どんなにいいユニット名でも中身が伴ってなきゃ合格はできない」
 「お前ら、準備は大丈夫か?」

奏「準備か...そうね、心の準備は...やっぱりまだ緊張はある、かな?」


初めてのオーディションだもの、嫌でも緊張はして、心臓はバクバクと高鳴る...

でも、恐怖はない


周子「大丈夫だよ奏ちゃん」
  「だって、あたしには奏ちゃんがいるし、奏ちゃんにはあたしがついてるし!」
  「それに、Pさんもちゃんと見ててくれるでしょ?」



そう、私達は一人じゃない

一人でレッスンを続けたわけでも、一人で戦いに挑むわけでもない





スカウトされる前、あの頃の、『普通の女の子』の速水奏には無かったもの

でも、今の『アイドル』の速水奏には、それがある


同じ道を、一緒に歩いてくれる仲間が
そして、私達を導いてくれる人が

奏「一緒にレッスンをした周子と、素人の私たちに技術を叩き込んでくれたトレーナーさん
 「そして、この道へ導いてくれたプロデューサーさん」
 「一人じゃないって分かってる、だから、怖いものなんてないわ」

 「覚悟は、とうに出来てる」

P「...そうか」
 「それなら、期待してる。」

周子「じゃあ、期待に答えられたらご褒美ってことで、今日のご飯奢ってよ。お寿司食とかべたい気分なんだ」

P「いいぞ、合格出来たらそれくらい奢ってやる」










周子「回らないやつね」

P「回転寿司です」

周子「ケチー!」

=========================オーディション会場===================================


周子「ここが会場...」

奏「思ったより普通の場所ね」

向かった先は、城ケ崎美嘉の所属している事務所、061プロダクションのあるビルの一室


奏「一応ライブするなら、何かしらステージでもあるのかと思ったけど」

P「流石にオーディションでそこまで予算かかる用意はしないだろ。061プロもそんなに大きい事務所ではないからな」

奏「あら、意外ね。あんな凄いアイドルがいるんだから大きな事務所かと思ってたのだけど」

P「逆に言えばあの子ぐらいしかパッとしたのが居ないっていうか...」

周子「控室、思ったより人少ないね。てか、少なすぎない?」

確かに、私達含めても控室のアイドルは5人...あまりにも少ない
っていうかあの3人ずっと固まってるから多分ユニットよね?
ということは...

奏「ねぇ...もしかして私達含めて2ユニットしかいなくない?」

周子「いやまさか...だって、合格したらあの城ケ崎美嘉と踊れるんだよ!?」
  「あたし達だいぶ早く着いたし、皆まだ来てないだけとかじゃ?」

P「いや...それがそのまさからしい...」

奏 周子「ええっ!?」

な、何故?
あれだけの人気アイドルなんだから、もっと、それこそ数十人以上応募者がきてもおかしくないはず...

P「『なんか少ないけどもしかして会場間違えてます?』ってさっき運営の人に聞いてみたんだけどさ」



運営(『間違えてませんよ、ただ...キャンセルが続出しまして』)



P「だってさ」

奏「キャンセルですって?」

周子「そりゃまたなんで?」

P「一週間くらい前まではやっぱ応募多かったんだけど、あのユニット...」
 「『ゴーイング娘』が応募した途端、皆キャンセルしちまったんだと」

奏「ゴーイング娘?」

周子「どっかで聞いたことがあるような...」

P「ゴーイング娘はEランクの中でもここ最近特に人気なユニット」
 「...おそらく、今一番Dランクに近いEランクユニットだ」

奏「そんな...」

つまり、私達より一つ上のランクの中でもトップクラスって事?
そんな相手とこれから戦うの...?

P「勝てるのかって?」

奏「え?」

P「いや、今の聞いてビビったかなって」

奏「...いいえ」
 「負けるかもしれない、確かに、少しそう思った。」

 「でも...それ以上に、"勝ちたい"」

周子「そやねぇ...確かに手ごわい相手だけど、それでも勝ちたいって気持ちに変わりはないかな」
  「どんな相手でも、奏ちゃんと一緒に、ちゃんとアイドルになりたいもん。だから、負けるつもりはないかな」

P「...なんだ、お前ら、しっかり仕上がってたみたいだな。安心したよ」
 「じゃあ本番に備えて、お前らに今回の作戦とちょっとしたおまじないを教えとく」

奏「おまじない?」

P「なんだかんだ初めてのオーディションで緊張は嫌でもしてるだろ?それを解すおまじないだ」

P「なあに簡単な話さ、我が社の社訓を思い出したまえ」

奏 周子「!」

P「人間、心に余裕がないときは何事もうまくいかないもんだ」
 「だから、こういう逆境の時こそ楽しむ心を忘れるな」

 「それさえ忘れなければ、きっとどんな時だって、最高の自分になれるはずさ...」

周子「奏ちゃん」

奏「なぁに?」

周子「今日は、最高に楽しい日になるね。きっと」

奏「ふふっ...そうね」


ううん、"きっと"なんて曖昧じゃない。
今日は最高の一日だって、そう確信してる


周子「じゃあ、行こうか、奏ちゃん」

奏「えぇ、行きましょ、周子」



いつもテキトーに流れてぬくぬく生きるのがしゅーこちゃんの信条だけど
今日は、ちょっと真剣になるとしましょか!

一端ここまででー、続きはまた夜に
なんでかなしゅーは公式で二人だけのユニットがないんや...フレしゅーとかなフレはあるのに


なお、扱いが悪くなりそうな登場人物は特にストーリー的に重要な立場じゃない限りは原作のアイドルを使わず今回のゴーイング娘の様に適当なオリキャラをその時その時で突っ込んでいこうと思います

オリキャラは基本その時だけの使いきりなので多分大丈夫...のはず

それでは、Chapter3続き投下していきます

Dに最も近いEランクアイドル

なんて世間では言われてるみたいだが、実はゴーイング娘の人気は何も全部実力ってわけじゃあねぇ
いろんなとこに金ばら撒いてゴリ押した"ハリボテ"ではある。
だがそれで十分だ、世間様からの評判を得るにはな

バカな民衆はマスコミや周りの評価に合わせて物事を評価する。
だからちょっとTV局やら出版社に金回して、いかにも人気アイドルっぽい宣伝をしてもらえば実力が伴わなくたって評価してくれる
ライバルになりそうな他の事務所のEランク共も、事務所のお偉いさんとちょっと「お話」すれば向こうが勝手にキャンセルしてくれる
Fランクのザコ共に至っては、ゴーイング娘の「看板」にビビってハナから逃げ出す
まあそりゃそうだ、負けるとわかってるオーディションを受けに来る奴はいない


そのはずだったんだが...まったく頭のおかしなな奴等もいたもんだ

ド新人のFランクの癖して、我が社に歯向かおうなんて。
しかも聞けばまだ出来て3か月そこらの底辺事務所だっていうじゃねえか
そんな底辺が、資金力もコネも圧倒的に上のウチと相手になると本気で思ってんのかねぇ

...あれが向こうのプロデューサーか
どんな頭のイカれた奴か、ちょっと確かめてみるとするかねぇ



ゴーイング娘P(以下ゴP)「よぉ、あんたが811プロのプロデューサーか?」

P「そうですが...そういう貴方はゴーイング娘のプロデューサーですか?」

ゴP「そうだよ、これからお前らが敗北する相手さ」

P「まだ始まってすらいませんが?」

ゴP「いーやもう終わってんの、ポッと出の事務所のポッと出アイドルが、俺たちに勝てるわけないだろうが」
  「それにしてもあのデュアルフルムーンとかいうユニットも可哀想だねぇ」
  「あんたみたいな頭のおかしいプロデューサーのせいで初めてのオーディションで無様に負けるんだから」

P「それは、あの子達の実力を甘く見過ぎですよ」

ゴP「実力ゥ?そんなもん意味ねぇよ」
  「所詮芸能界なんて金とコネ、それさえあればどんな女でもトップに押し上げられるのさ」
  「逆に、それがないお前らはこの先どうやったって売れない。分かるか?」

P「...なるほど、だからか」

ゴP「あぁ?」

P「だからあんたのとこのアイドル、全然楽しそうじゃなかったんだなって」
 「さっき控室で見てた時、あの子達別に緊張してるようには見えなかったのに、なーんか表情暗いって思ってたんだよ」
 「そうやって事務所のゴリ押しと不正で売り出されてるのが分かってるから、折角アイドルとして活躍出来てるのに楽しめてないんだ」

ゴP「ハッ!何を言うかと思えば」
  「楽しみなんて必要ねえんだよ!アイドルは商品、ただ会社の為に売れることがプロダクションにとってのアイドルの存在価値なんだからな」

P「ハアァーーーー.......」

 「あんた、全然わかってねえな」

ゴP「なんだ、負け惜しみか?」

      



          P「今日食われるのはあんた達って事だよ」





ゴP「なんだと?」

P「あんたは分かってねえんだ、本当の『アイドル』ってもんが」
 「まあ審査を見てみろよ、そしたらわかるさ」




...こいつはとんだ馬鹿野郎だな
まぁいい、せいぜいイキっとけ底辺プロデューサー

ライブバトルの審査は3回に分けて行われる
そして1回の審査が終わるごとに、その審査での得点を表す星が3科目5個づつ、計15の割り振りわけられ、その結果が公表される
この結果を踏まえて、審査終了ごとに作戦を考えて次の審査に臨むのがライブバトルの定石だ

そしてちょうど第一審査の結果が発表された
まぁこの結果を見ればあの底辺も力の差ってのを思い知るだろう

...そのはずだった

ゴP「ど、どういうことだ!」

相手は底辺プロの底辺アイドルユニット一組

その上こっちより人数も少ないというどう考えても舐めてるとしか思えないやつらだ

なのに!



   ゴーイング娘  デュアルフルムーン
Da    ☆×2 ☆×3

Vi    ☆×1 ☆×4

Vo    ☆×2     ☆×3
          
現在合計 ☆×5     ☆×10


ゴP「何故だ!?なぜ負けてる!?」

P「おー、やるじゃんあいつら」

ゴP「クソッ、何やってんだあいつらは」

P「折角インターバルなんだしちゃんと指示出しに行ったらどうだ?」
 「第2、第3審査の結果次第では、まだ覆せるかもしれないぞ?」

ゴP「...チッ!」

言われるまでもなく、審査会場のゴーイング娘の元へ向かう


ゴP「おいてめぇら!何ヘマやらかしてんだ!」

ゴーイング娘1「ひっ!ぷ、プロデューサー...」

ゴーイング娘2「ごめんなさい...油断してました...」

ゴP「油断!?相手はFランクのド新人だぞ!?油断したって勝てる相手だろうが!」

ゴーイング娘3「で、でも...」

ゴP「...まぁいい、なら次の審査は本気でやれ」
  「あんな底辺共に負けたら...分かってるな?」

ゴ3「わ、分かりました」



これだけ釘を刺しとけば次は勝つだろう
ちょっとはやるみたいだが、奴らはどうせド新人
いくらゴリ押しで売り出されてるこいつらでも、素人に負けるほど安い実力じゃない

>>112
得点表がバグってました、修正版を上げときます

    ゴーイング娘  デュアルフルムーン
Da    ☆×2     ☆×3

Vi    ☆×1     ☆×4

Vo    ☆×2     ☆×3
          
現在合計 ☆×5     ☆×10

P「なんか穏やかじゃない指示だったな」

ゴP「うるせぇ、そういうお前は行かなくていいのか?」

P「もう話してきたよ、く○寿司とかっ○寿司どっちがいいか」

ゴP「何の指示だ!?」

しかもどっちみち回転寿司じゃねぇか!?

P「今日勝ったら奢る約束してんだよ」

ゴP「...今のうちにいい気になってやがれ」
  「もう勝ったつもりみてぇだが、次の審査はこうはいかねぇぞ」

P「びっくらポンやりたいからく○寿司のほうがいいって」

ゴP「聞いてねぇよ!ていうか聞けよ!?」

       第2審査結果

   ゴーイング娘  デュアルフルムーン
Da    ☆×0     ☆×5

Vi    ☆×2     ☆×3

Vo    ☆×1     ☆×4
          
現在合計 ☆×8     ☆×22


ゴP「はああああああああああああああ!?」


どういうことだ!?
なんで、なんで!?

ゴP「Daの星が、全部取られてるッ!?」
  「何故だ!?てめぇ...一体どんな手を使いやがった!?」

P「あぁ?そんなの言わなくても分かるだろ?」

ゴP「ッ!」

そうだ、こいつの言う通り原因は分かってる
審査の途中、ゴ2がステップを踏み外しやがったのだ
それを皮切りにダンスはめちゃくちゃ、他のアピールも乱れた
その結果がこれだ。

P「...いや、なんかちゃんとわかってなさそうだから教えてやる」
 「原因はあんただよ、あんた」

ゴP「あぁ?どういう意味だ?」

P「人は心が追い詰められてるときは何やったって失敗する」
 「格下に負けて焦ってる状況であんな怒鳴りつけたら、そりゃあうまくいかなくなるさ」

ゴP「舐めた口ききやがって...!!」

P「俺にキレるよりさっさとフォローに行ってやれよ、じゃないと次はDaの星どころじゃすまさねぇぞ?」

ゴP「...チッ!」



ふざけんな!俺のせいだと!
どう考えてもあいつらがあんなザコ共相手に腑抜けてるのが悪いんだろ!

再び釘を刺しに行くため、あいつらのところへ向かう

ゴP「てめぇらぁ...なんだあのアピールは」

ゴ2「ご、ごめんなさい!ごめんなさい!」

ゴ3「許して下さい...お願いします」

ゴP「うるせぇ!ごめんで済むわけねぇだろ!」

ゴ1「やめてよ!二人をいじめないで!」

ゴP「あぁ!生意気いうんじゃねぇ小娘!」



商品風情が舐めやがって...
このクソガキ、一遍痛い目見ねぇと分かんねえのか!?

???「やめなよ」

ゴP「あぁ?」



周子「あんたがそうやって追い詰めるから、さっきからそっちの子達、全然上手くいってないじゃん」

奏「貴方、最低ね、自分の無能を棚上げして、女の子に手を上げようとするなんて」

ゴP「てめぇら...811プロの...」

周子「あたし達折角の初オーディションなんだから、楽しくやりたいんだよ」
  「だから、あんたはさっさと消えてくんない?邪魔なんだよね、あたしたちにとっても、ゴーイング娘にとっても」

ゴP「クソ、このガキッ!」

P「おっとストップだ。相手のアイドルに手出したら反則負けだぞ?」

ゴP「てめぇ、放せ!」

P「あんたがおとなしく外野に引っ込んだらな」
「ほら、あんまりしつこいから審査員もめちゃくちゃ睨んでるぞ?」

ゴP「...クソッ!」

流石に暴れて反則負けにしたとなっちゃ首が危ういか...



P「ほら、さっさと戻るぞ。お前らは第3審査も頑張れよ」

奏「えぇ、任せて」

周子「じゃあねープロデューサーさん」

やっといなくなったわあの男
プロデューサーって、ああいうのもいるのね...

ゴ1「あ、あの...」
ゴ2「ありがとうございます...」

周子「いーよ気にしなくて、あたし達もムカついてたからさ」

ゴ3「でも...助けてもらいましたし...」

奏「うーん...じゃあこうしましょ」
 「次の審査、あんな男の事は一端忘れて、このオーディションを精一杯楽しんでみてくれない?」

ゴ1「楽しむ...?」

奏「そうよ、楽しんでちょうだい」
 「だって相手も楽しんでくれないと、私達も楽しくないもの」
 「それに、今を駆ける先輩アイドルの本気のパフォーマンスを、私達も見てみたいわ」

周子「心に余裕がないときはなんでも失敗するんだって」
  「だから、一端気持ちリセットして、このオーディションを思いっきり楽しんでみようよ!」

ゴ2「オーディションを...」

ゴ3「楽しむ...」




ゴ1「...わかりました!」

周子「よし!じゃあ次の審査、期待してるからね、先輩!」

ゴ1「はい!私達の本気、見せます!」
  「そして次の星全部貰って、逆転しますから!」


あら...これは敵に塩を送り過ぎちゃったかしら?
でも...




奏 周子(こっちのほうが楽しい(わね!)(よねぇ!))

流石、Eランクトップクラスのユニットね

ダンスもヴィジュアルも歌も、さっきまでとは比べ物にならないくらい力強い!
努力と経験に裏打ちされた、大迫力のアピールだわ!


審査員の目も、ゴーイング娘のパフォーマンスにどんどん惹かれていってる
このままだと、ホントに逆転されてしまうかも...

だけど!



奏 (だからって、負ける気はない)

周子(こんな所じゃ、まだ終われない)



奏&周子(私(あたし)達は今日、アイドルになるんだから!!)

奏(思い出せ、昨日のライブを)

周子(思い出せ、あの感動を)

このアピールに乗せて爆発させろ、私達の覚悟を!

アイドルになるって決めた、その覚悟を!


      

     奏&周子(これが、私達の全力!!!)

 最終結果

   ゴーイング娘  デュアルフルムーン
Da    ☆×3     ☆×2

Vi    ☆×2     ☆×3

Vo    ☆×2     ☆×3
          
現在合計 ☆×15 ☆×30

=============く○寿司===============

P「では、初オーディション合格を祝って!」

奏 周子「乾杯!」



周子「なんか湯のみで乾杯するって違和感あるわぁ」

P「しょうがねぇだろ、回転寿司なんだから」

オーディションに合格した私達は、約束通りプロデューサーさんの奢りで回転寿司に来ていた



奏「それにしても、第3審査のゴーイング娘は素晴らしかったわ。最初からあの勢いでこられたら危なかったかも」

周子「終わった後もすごかったよ!あのアホデューサーに『私達、プロダクション辞めます!』って」

P「あのプロデューサー、会社に絞られるだろうなぁ」
 「人気上昇中のユニット逃がしちまったんだから、最悪首切られるかも」

奏「自業自得よ」


周子「ゴーイング娘、また会えるといいね」

P「アイドル続けてれば、きっとまたぶつかることもあるだろうさ」

P「それにしても...マジで美味いな、久々にこんなうまいもの食った気がする」

奏「いや確かに美味しいことは美味しいけど、回転寿司でそこまで?普段何食べてるのよ」

周子「そういえばあたし、こうやって奢ってもらう時以外のPさんがカ○リーメイトと10秒チャージ以外食べてるとこ見たことないんだけど」

P「まあ普段そればっか食ってるからな、食事の時間もったいないし」

奏「いや、もっとちゃんと栄養取りなさいよ。いつか倒れるわよ?」

P「今度からそうするよ...それにしてもホント美味いな....」

そうやって今日の事を振り返っていると、急に誰かに声をかけられた


???「貴方たちが『デュアルフルムーン』?」

奏「誰....って!」

周子「えっ!嘘!なんでこんなとこに!?」


私達に話しかけてきた人の名は...





美嘉「オーディション合格おめでとう★」

私達が来週バックダンサーとして出演するライブのメイン、『城ケ崎美嘉』!

奏「貴方...城ケ崎さん?」

美嘉「美嘉でいいよ、あたしも奏って呼ぶねっ★」
  「さっき事務所でバックダンサーのオーディションが凄い白熱してたって聞いてね、その時近くのく○寿司に行くらしいって聞いたの」
  「だから、会いに来ちゃった!」

P「それでわざわざ会いにに来てくれたんですね。いやぁ光栄です城ケ崎さん!」

美嘉「だから美嘉でいいし、敬語じゃなくてもいいよ。堅苦しいの苦手だし」
  「それにしても...確かに二人とも凄い才能を感じる。あたしもうかうかしてると抜かれちゃいそうだな」

P「そんな、まだまだですよ。奏も周子も、熱くなりすぎて最後ステップ間違えてたし」

奏&周子「「えっ、ばれてたの!?」」

P「あったり前だろ。まぁ楽しんでるのは伝わってきたけどな」

美嘉「でも見てみたかったな、二人のオーディション」

奏「ちゃんと来週、あなたのライブで見せてあげるわよ。ねっ?周子」

周子「もちろん!美嘉ちゃんも楽しみにしときやー」

美嘉「...うん、楽しみにしてるね★」
  「来週のあたしのライブも楽しんでくれると嬉しいな、それじゃ今度はライブ会場でね!」

周子「お寿司食べていったら?Pさんの奢りだよ?」

P「おい」

美嘉「いやーあたし明日早いから早く帰って休まないと、それじゃまたねー★」

周子「ばいばーい!」

奏「また来週逢いましょう」





...そうか、私達、あの美嘉と一緒に踊れるんだ...!

来週のライブが待ち遠しいわね!

周子「か、奏ちゃん、まだやるの?」

奏「ええ、当たるまでやるわよ」

P「か、奏、俺もうそろそろきついんだけど...」

奏「もう少し頑張ってね、私も周子ももう食べられないから」

P「はやく...早く当たってくれびっ○らポン....」




だが、現実は非常だった

皿のカウンターが100を数えた頃、ついにプロデューサーがダウン

最後の望みをかけた一投は、"はずれ"の文字を虚しく踊らせるだけだった...

P(びっ○らポンって天井ねぇのか...?)

美嘉「楽しむ...か」
  「最後にお仕事が楽しいって思ったの、いつだっけ...?」
   
でも.....




美嘉「あたしがやらなきゃいけないんだから、頑張るしかないよね....」

『811プロから謎の超新星あらわる!?その名も『デュアルフルムーン』!』

『城ケ崎美嘉のライブに出演した811プロの新人アイドルユニット』
『彼女達は全くの新人でありながら、Eランク最大手ユニットゴーイング娘を下しバックダンサーの座を勝ち取り...』

『またこのライブで注目を集めたことから、デビューからわずか3日でEランクに昇格し...』


ビルのモニターはさっきからずっとこのニュースばかり


アイドル...811プロか...


アメリカに飽きて、日本に帰ってきてからも中々退屈な日常ばかりだったけど



???「アイドルか...どんな香りがするんだろ」


これは、ちょっと追及してみないとね❤




to be continued....

Chapter3終了したところで今日はここまで―

続きはまた明日の夜で!




アメリカ帰りの謎の少女...一体何ノ瀬志希なんだ....

プロローグ~Chapter3までの補足及びあらすじ(長いですが読まなくても特に問題はないです)

・プロローグ「Budding Fate」
P、奏をスカウト。ていうかデレステのメモリアルコミュ1そのまんま
なので特に語ることはなし。サブタイの意味は「芽生え始めた運命」

『速水 奏』
何かがあったらしく海で黄昏ていたが、この時悩んでた理由について公式の情報が少なすぎるので何があったのかはわからない
でも特にストーリーにその理由が絡むことはないので多分このssでは語られない

『P』
奏達のプロデューサー
と同時に811プロを設立し自ら社長の座についている
グラサンと深くかぶった帽子がトレードマークらしい

・Chapter1「Welcome to Happy Production!」
周子初登場、このssにおいてはアイドルだけじゃなく事務員も兼ねている
そして奏は筋肉痛。サブタイの意味はそのまんま「ようこそ811プロへ!」

『塩見周子』
奏より先に事務所に所属していたアイドル...兼事務員
正直事務員周子ってのがやりたかったというだけで811プロダクションが設立したばっかの事務所という設定になった
今は事務所近くのアパートに住んでいるが、部屋はPの隣らしい

『811プロダクション』
Pが設立した出来たてほやほやの芸能事務所
811の読みは「ハッピー」
外観は765プロを一回り大きくしてたるき亭の部分も事務所になっている感じ、レッスンルームもちゃんとある
しかし人数に対して建物が大きすぎて、使って無い部屋が多い

Chapter2「First Step」
このssにおいてのアイドルランクの解釈とか、オーディションのルールの説明回
ついでにベテトレさん登場、準レギュラーです
そしてベテトレさんの厳しいレッスンを乗り越えた奏と周子は、美嘉のライブを見て一層アイドルになるという決意を固めるのであった
やっぱ美嘉はすげぇよ...
サブタイの意味は「最初の一歩」、文字通りこのオーディションは811プロにとって最初の一歩なのだ


『ベテラントレーナー(青木さん)』
本名は公式設定より「青木 聖」
専属トレーナーではないのでレッスンの時はいつもいる訳ではないらしい
だがほぼ素人同然だった周子と奏を二週間で成長させる辺り、トレーナーとしての実力はとても高い

『城ケ崎 美嘉』
811プロではなく061プロ所属の先輩アイドル
設定を考えていた当初から、美嘉は先輩のカリスマアイドルと設定が決まっていた
今の奏と周子目標であり、憧れの存在でもある
書いてる側としては★を使うタイミングがよくわからないがどうすればいいんだろうか

Chapter3「Big Eater」
遂に迎えた初オーディション
協会推薦の説得力を上げるために相手は他の新人たちが逃げ出すレベルの格上に設定されたが、相手のPが無能だったおかげで結構あっさり勝ててしまった
あと奏さん、びっ○らポン20連敗(1回5皿なので100皿で20回)天井があるのかは知りません
サブタイの意味は「大物喰らい」、Fランクの新人が初オーディションでEランクの上位を倒すのはこの世界でも異例の出来事
その甲斐あってか奏と周子は無事協会推薦枠でEランクにランクアップした模様

『ゴP』
最初の敵ということでクッソ典型的な小悪党
担当が事務所の力で人気を出したのを良いことに天狗になっていたが、プロデューサーとしての実力は無い
オーディション終了後めでたく解雇、もう出ない

『ゴーイング娘』
こんなかませ役に原作アイドル当てたら担当Pに殺されかねないので急遽用意されたオリキャラ
その人気には事務所のゴリ押しによる面もあったが、彼女達のアイドルへかけた夢は本物だろう、ただプロデューサーが悪かった
最後に周子が再登場フラグを立てていたが、悲しい事にもう二度と出番はない

『???』
一体誰の事か全くわからない...ッ!

今からChapter4投下開始します

私達がEランクに上がってから一週間とちょっと
プロデューサーさんの見立て通り突如現れた超新星アイドルとして私と周子は業界の目に留まったらしく、多くの仕事が舞い込んできた

私はモデルやドラマのエキストラ、周子は食レポとかのローカル番組の仕事をメインにこなしている
そして時には、またあの時のように二人そろって先輩アイドルのライブのゲストやバックダンサーを務めたり...
アイドルになる前では考えられなかった様な忙しくも充実した日々を過ごしている

そんな日々を送っていたある朝、私達はPさんに、「プロダクションの今後の方針について話したいことがある」と呼び出された

P「本題に入る前にまずは二人にお礼を言っておく」
 「お前達のがんばりのおかげで、我が事務所は業界にも認知され始めて、かなり仕事が回るようになってきた」
 「ありがとな、奏、周子」

奏「私もプロデューサーに感謝してるわ、約束通り退屈な日常から私を連れだしてくれたこと」

周子「まあその分忙しくなっちゃったけどね、アイドルだけじゃなくて事務仕事もさ」

P「そういう意味でもホントに周子には感謝してるよ、ありがとな」

周子「いえいえ、どういたしまして♪」

P「んで本題なんだが、無事Eランクに上がって波に乗ってきてる今こそ、次の我が社の目標を発表したいと思う」

次の目標...それってやっぱり...



奏「Dランク昇格かしら?」

周子「まぁ、順当にいけばそうなるよねー」

P「残念、外れ」

奏「えっ?」

周子「でも、それ以外なんかある?注目浴びたとはいえまだEランクだし、そんな大きな番組のオーディションには出られないでしょ?」

P「いやまぁ、昇格も勿論目指したいんだけど...もう一つやっておきたいことがある」

奏「やっておきたいこと?」

           



              P「新しいアイドルのスカウトだ」





           




             Chapter4 「Come on New Stars!」





周子「新しい子雇うの?」

P「ああ、ウチも軌道に乗って、多少新規のアイドルを育てる余裕も出てきた」
 「やっぱり人の数は手札の数、いろんなタイプの子がいた方がより多くの仕事の依頼が来るようになるからな」
 「逆に人数が少ないと、事務所のイメージが硬くなりすぎて仕事の内容も偏って来る」
 「実際、ウチは周子と奏のクールっぽい雰囲気のイメージが強くなりすぎてきてて、既に方向性が偏り始めてるんだ」

確かに、最近似たような仕事が多いような気もしてきてたけど、成程ね


奏「どんな子を探すつもりなの?」

P「そうだなぁ...やっぱりつり合いを取るために、キュートで、元気なアッパータイプの娘が欲しいところなんだよな」
 「というわけで、しばらく俺はスカウトと営業に専念することになると思うから、あまりお前らの仕事に同伴は出来なくなると思う」
 
奏「大丈夫よ、私も最近は仕事慣れてきたし」

周子「あたしも自分の事は自分でなんとかできるから大丈夫だよー」

P「そうか?じゃあ今日のスケジュールを確認するぞ」

P「まず奏は11時からファッション雑誌のモデルが一つ、午後は周子と一緒にレッスンだ」
 「んで周子は奏が帰ってくるまで溜まってる事務仕事を頼む」
 「俺はテレビ局へ売り込みと、新人アイドルのスカウト」

奏「分かったわ、場所は渋谷の○△ビル前で合ってる?」

P「ちゃんと合ってるぞ、確かに慣れてきたみたいだな」

周子「しゅーこちゃんも了解でーす。書類とか溜まってたし、ちょっと片付けないとやばいよね」

P「電話番も頼むぞ、仕事の依頼の電話とかあるかもしれないからな」
 「分かんないことがあったら俺に連絡してくれ」

周子「はーい」




新しい目標を胸に、今日も811プロの一日が始まった

今日の撮影内容は女子高生の放課後がテーマ
確かもう一人一緒に撮影をするアイドルがいたはずだけど...



美嘉「あれっ、奏?」

奏「美嘉!久しぶりね」

美嘉「久しぶり!今日の共演者って奏だったんだね!」
  「一緒にライブしたの、一か月くらい前だっけ?」

奏「その位になるかしらね」

美嘉「そっかー、もうそんな経ったのかぁ」
  「最近ちょくちょく奏と周子ちゃんの話聞くよ?今期待されてる超新星だって★」

奏「超新星か...まだまだ駆け出しだけどね」

美嘉「いやー実際凄いよ、デビューからすぐこんな話題になることなかなかないよ?」

奏「そうなの?でも、私はまだここで満足する気はないわ。早く美嘉に追いつきたいしね」

美嘉「あたしに?」

奏「そうよ、美嘉はあたしたちの憧れだもの」
 「私はステージに立つ貴方の魅力に惹かれたからこそ、本気でアイドルになりたいと思ったんだから」

美嘉「そうなの!?嬉しいなぁ...」
  「じゃあ、あたしも奏ちゃんの憧れであれるようにもっと頑張らないとねっ★」

奏「えぇ、お互い頑張りましょ?」

「はいオッケーでーす!お疲れさまでした」

奏&美嘉「「お疲れさまでした!」」



監督「いやー今日はありがとう二人とも!想像以上にいい絵が撮れたよ!」

監督さんは興奮した様子でそう私達に告げた
私自身も、今日の撮影は会心の出来だったと思う
カメラを持っている人が今どういう画を欲しがっているか、雑誌を読む人の印象に残るにはどうすればいいか
今日ははそれが、手に取るように分かった

でも、今日私がここまで集中できたのはやっぱり...

奏「今日の撮影、隣に美嘉がいたからすごく集中できたわ。ありがとう、美嘉」

美嘉「私も奏ちゃんと一緒だからすっごく楽しかったよ!」
  「最近調子悪かったんだけど、奏ちゃんと会えて久々にいい仕事ができた気がする。ありがとねっ★」
  「あたしは次の仕事があるけど、奏ちゃんはこれからどうするの?」

奏「これから事務所に戻ってレッスンよ」
 「注目されてきたとはいえ、まだまだ経験不足だからもっと基礎を固めておかなきゃね」

美嘉「そっか、じゃあまたいつかね!」
  「またあたしのライブ見に来てねー★お客さんとしても共演としても大歓迎だから!」

奏「ええ、また会いましょ」

今日は美嘉にも会えたし撮影も上手く言って、本当にいい仕事だったわ
この高揚感、レッスンにぶつけに行かなくてはね!

美嘉「...奏ちゃん、頑張ってるなぁ」
  「あたしが、憧れかぁ...」

でも、今のあたしは、あの子の期待に応えられるのかなぁ...

今日は久々に奏ちゃんのおかげで楽しい仕事だったけど、最近お仕事を楽しく感じることがすごく減った
ここのところずっとランク昇格のチャンスもないし...



美嘉「いつも、今日くらい楽しく仕事できればいいんだけど...」
  「最近休んだの、いつだったっけ...?」

美嘉「あぁ...疲れたなぁ」








でも、パパにママ、莉嘉の為に、あたしは休んでなんかいられない

美嘉「...へこたれてなんて、いられないよね!」

よし行こう、次の現場に!

???「あれ?なんか落ちてる?何かのカード?」
   「よっと...カードは拾った!」
   「何のカードだろ?遊○王かな?ヴァ○スかな?どれどれ~...」
   

   「『芸能事務所 811プロダクション』...?」

P「ただいまぁ~.....」


レッスンが終わり、周子と一緒にプロデューサーさんが買い置きしていた饅頭をつまんでいると、営業に出てたプロデューサーさんが戻ってきた

だけど...


周子「Pさんどしたん?めっちゃ死んだ顔してるけど」

奏「営業が上手くいかなかったのかしら?」

P「いや、営業のほうは上手くいったんだ、何件か仕事もらえたよ」

周子「じゃあ良かったじゃん、なんでそんな凹んでるの?」

P「スカウトの方がな...全然ダメだった...」
 「街中でよさそうな子に片っ端から声かけても全部興味ないって断られるし、挙句の果てにお回りさんに職質されるし...」
「街中がダメなら養成所ならどうだって思って行ってみたんだけど、ティンとくる子は軒並み条件の良い大きいプロダクションからも声がかかっててさ」
 「ちょっと話題になったとはいえまだまだ小さいウチを選んでくれる子はいなかったよ...」

周子「あー...」


確かに、アイドル戦国時代なんて言われてる時代だもの
プロダクション同士の競争率も高いでしょうね...

P「ちくしょう...なんかいきなりアイドル志望の美少女が事務所に乗り込んでこねぇかなぁ...」

奏「そんな都合のいい話があるわけ...」


その時だった




???「たのもー!」

事務所の扉が勢いよく開き、知らない声が響く

???「ごきげんうるわしるぶぷれー?アイドルになりに来ました!面接お願いしまーす!」

P「 採 用 ! !」

???「ワーオ!秒速合格!フレちゃん選手、世界新記録更新だよー!」




周子「....あったね、都合の良い話...」

奏「奇跡って起こるものなのね....」

そう、彼女こそ811プロの3人目のアイドル

そのアイドルの名前は...




フレデリカ「てなわけで、たった今ここのアイドルになっちゃった、宮本フレデリカだよー!」
     「皆よろしくねー!」

速水奏のウワサ

・やたら年齢を間違えられるらしい

フレデリカ「自己紹介しまーす!」
     「あたし、宮本フレデリカでーす!歳は19で、今は短大でデザインのお勉強をしてまーす!呼びにくかったらフレちゃんでいいよー♪」

周子「変わった名前だね、ハーフ?」

フレデリカ「そうだよー、パパが日本人で、ママがフランス人のハーフなんだ♪」
     「でもアタシ、フランス語全然喋れないの!てへぺろ♪」

周子「フランスかー、どおりで可愛い見た目してると思ったわ」
  「んじゃアタシたちも自己紹介、あたしは塩見周子で、こっちは」

奏「速水奏よ。よろしく、でいいのかしら?811プロのアイドルになりに来たのよね?」

フレデリカ「そうだよー!これからよろしくねー♪」

周子「なんで811プロ選んだん?Pさんのスカウト?」

P「いや、見覚えがないな。こんな美人スカウトしたっけか...?」

フレデリカ「フレちゃんも覚えてないよー、初対面だからね♪」

奏「えっ、じゃあどうして?」



所属してる私が言うのもなんだけれど、アイドル志望なら今時811プロよりも条件が良いプロダクションは山ほどある
その中からわざわざウチを選ぶ理由って、一体...?

フレデリカ「ん~......ついカッとなってやったって感じかな?」

奏「カッとなって?」

周子「なんか志望動機っていうより、犯行動機だねー」

フレデリカ「そう、話は1時間前のフレちゃんに遡る...」
     「きまぐれに街を歩いていた宮本フレデリカは道端に怪しげな紙が落ちてるのを目撃したの」
     「そしてそれを拾ってみたら...なんと!名刺だったんだー!」


フレデリカはそう言いながらポケットから一枚の名刺を取り出した


P「ああ!?それ俺の名刺だ!」

周子「きっとスカウトしてるときに落としたんやねー」

フレデリカ「それで名刺を見てみたらここの住所が書いてあってね、思ったより近い場所だったし、これもきっと何かの運命!てな感じで、乗り込んじゃった♪」
     「それに、アイドルって皆を笑顔にする仕事でしょ?だったら、折角ママから貰った自慢のルックス、活かさない手はないよね!」

P「ああもちろん!そのルックス、アイドルにすっごく向いてるぞ!」
 「ぜひ、ぜひウチのプロダクションでアイドルになってくれ!」

周子「ちょっ!Pさんはしゃぎすぎ!」
  「急に大声出されるとびっくりするじゃん、Pさんの声よく響くんだから」

P「す、すまん」

奏「少し落ち着きなさい、はしゃぎたくなる気持ちは分からないでもないけど」



何せ本当にアイドル志望の子が飛び込んできて、しかも飛び込んできた子はぱっちり開いた瞳とフランス由来のキュートなルックスの持ち主
そして性格も望んでいた元気でアッパーときた

そんな奇跡が本当に起こったんだから、まあ子供のようにはしゃぐのも無理はない

フレ「それでそれでー?結局あたしアイドルになれるのー?」

P「もちろん大歓迎さ!なぁ?」

周子「意義なーし!」

奏「私もないわ。これからよろしくね、フレデリカ」

フレデリカ「やったー!よろしくねーみんな!」

P「よし!じゃあ歓迎会もかねて今日は俺が夕飯奢ってやる!」




周子「マジで!?今焼き肉奢ってくれるって言った!?」

P「言ってない、ファミレスとかで...」

フレデリカ「わーい!焼き肉屋なら近くにいいところ知ってるよー!パフェが美味しいんだってー♪」

P「いや肉じゃねえのかよ、ていうかマジで焼肉なの?4人分?」 
  
奏「あら、歓迎会なんだから豪勢にやらないと、ねっ?」


P「アッハイ...」

奏「ふふっ、ごちそうさま❤」

周フレ「「ゴチになりまーす!」」

その後向かった焼肉屋は実はちょっと高級な店だったらしい
値段を見て、やっぱり私達も少し払ったほうがいいのではと3人でこっそり話し合っていたのだけれど...


P「なんだ、思ったより安いじゃん。拍子抜けだわ」

と、結局プロデューサーさんさんが全部払ってしまった



プロデューサーさん、なんか金銭感覚おかしくない?

事務所、まだそこまで儲けが出てるわけではないと思うのだけれど...

次の日、フレちゃんの初レッスンが行われた
...だけど



ベテトレ「おい宮本ッ!ダンスを勝手にアレンジするんじゃない!」

フレデリカ「んー?じゃあこっちのほうがいいかな~?」
     「タンタンターンでクルっとしてキメッ♪」

ベテトレ「違う!そもそも手本通りにやれと言っているんだ!」

フレデリカ「お手本通りねー、わかったよ!」

ベテトレ「まったく...もう一度いくぞ!ハイ、ワン、ツー、ワン、ツー、ワンツースリーで」

フレデリカ「キメデリカ!」ビシィ!

ベテトレ「だから違うッ!!!」




まあ所謂、「問題児」ね...

さっきからずっと彼女はトレーナーさんの指示に反して勝手にアレンジを加えては怒られるのを繰り返してる

ボーカルレッスンではフレデリカソングなる鼻歌を急にに差し込んだり、ダンスも所々で変なキメポーズを取ったり...

気まぐれな野良猫を見てる気分だわ



でも...


周子「不思議だねぇ」

奏「えぇ、あんなにめちゃくちゃなのに、何故かイラつかない...むしろ心地よいというか...」

P「ただむちゃくちゃなパフォーマンスをしてるわけでは無いってことだろうな」
 「きっと、自分と自分を見る人がどうすれば楽しくなれるか、それを頭の中で常に考えてるんだろう」
 「無意識なのかわざとやってるかは分からないが、どっちにしろアイドルとして大事なことをちゃんとわかってるって事だな」

周子「そうやねぇ、実際青木さんもなんだかんだツッコミ続けてるだけで本気で止めに入ってないしね」

P「そうだな、あの人本気でキレると正座させて一時間くらい説教するもんな...」

奏「そうなの?...というか、まるで経験したような口ぶりだけど」

周子「奏ちゃんが来る前に一度ね...あれはもう二度と経験したくないよ...」

奏「あら、そう...」



周子がここまで怯える程の光景...
ちょっと見てみたかったわね...

P「それにしても、型に嵌らない独特なテンションにあのアドリブ力...」
 「これ...あの仕事ピッタリなんじゃないか...?」

周子「どしたんPさん?」

P「ちょっと出かけてくる、お前らは引き続きレッスン受けててくれな」

周子「?...まあいいや、行ってらっしゃーい」

P「ああ、行ってくる」

トゥルルルルルルルルル....

P「...どうも!811プロのPと申します」
 「はい、昨日伺った例のお仕事の件なのですが...まだ見つかってない?よかった!」
 「実は、どうしても見てほしい映像があるのですが...はい、今すぐそちらに向かわせていただきます」

P「ただいまー」

奏「お帰りなさい、プロデューサーさん」

周子「それで、どこ行ってたの?」

P「ちょっとばかし心当たりのあった所にフレデリカの売り込みをな...そしてその結果!」
 「なんと!フレデリカの初仕事を頂きました!」

フレデリカ「ホント!?」

周子「やるじゃんPさん!」

奏「それで、その仕事って?」

P「ローカルだが、ある芸人コンビと一緒のグルメ番組だ」

周子「えっ、いきなりテレビ!?」

フレデリカ「ワーオ!最初からクライマックスだよ!」

奏「でも、テレビ番組の出演って普通まずオーディションがあるんじゃ...?」


ローカルとはいえ、テレビ出演というのはアイドルにとって名前を売るための最も大きな手段

だからこそ、出演するためには多くのアイドルが参加する倍率の高いオーディションを受ける必要があるはずなのだけれど...

P「この前周子が○○局のローカル番組に出演しただろ?その時のディレクターさんがウチの事務所の事をえらい気にいってくれたみたいでな」
 「今度もウチのアイドルを使いたいって新しい番組の話をされたんだけれど、奏と周子のイメージが番組に合わないからって結局見送りになってたんだよ」

周子「あ~前言ってた仕事の偏りって、こういう事か...」

P「でも、今日のフレデリカのレッスンを見て、この子のイメージなら合うんじゃないかって録画してたレッスン映像を持ちこんでみたんだ」
 「そしたら見事ディレクターさんの心を掴めてな、是非この子を使わせてほしいって言ってもらえたのさ」

奏「成程、人の数は手札の数って事ね」
 「手札が多ければ多いほど、取れる選択肢は広くなる...」

P「そういう事だ」


一人の仕事が他の人の仕事につながり、また他の人へとつながっていく...
確かに、プロデューサーさんの言葉は正しかったみたいね

フレデリカ「やったー!ありがとプロデューサーさん!周子ちゃん!」

周子「えっ?あたしも?」

フレデリカ「だって、アタシにこの仕事来たのって周子ちゃんが前にお仕事を頑張ってくれたからでしょ?」
     「だから、フレちゃんのテレビデビューは、周子ちゃんのおかげでもあるのだー!」

P「ああ、お前のおかげだ周子」

奏「お手柄ね、周子」

周子「いやーなんか照れるなあ...」

P「というわけだ、明後日撮影だから頑張れよフレデリカ!」

フレデリカ「うん!フレちゃんにおまかせビシソワーズ!」

周子「明後日って、あたしたちはどっちもお仕事だったよね?」

P「ああ、二人ともドラマのエキストラと雑誌インタビューがある」
 「そして俺はフレデリカの初仕事に同伴だ。流石に初めての仕事にはついててやらんとな」

奏「ええ、二人とも頑張ってきてね?」

フレデリカ「うん!フレちゃん頑張る!」

P「期待してるぞ、フレデリカ」

フンフンフフーン、フレデリカー♪


えへへ、分かっちゃった?そうなの、すっごく良いことがあったんだ!

ななな、なんと!アタシ今度テレビに出てくるのー!

同じ事務所の皆が頑張ってくれたから、アタシにもお仕事が来たんだー!



奏ちゃんにしゅーこちゃん、それにプロデューサー

いい友達がいっぱい出来てアタシすっごくご機嫌なの!

ママも、明後日はテレビでフレちゃんが立派にアイドルやってるとこ、絶対見てねー!



あれ?でも明後日収録だけど放送するのは明後日じゃないんだっけ?
まあいいや!楽しみだなー♪

~~~~当日、撮影現場~~~~


P「それでは、今日はよろしくお願いします」

フレデリカ「よろしくお願しるぶぷれー♪」

ディレクター(以下D表記)「こちらこそ、よろしく頼むよ」

D「それにしても、塩見さんといい宮本君といい、君は一体どこからこんな逸材を拾ってくるんだい?」
 「先日出来たばかりの事務所では人脈も資金も厳しいだろう?何かコツでもあるのかね?」

P「いやいや、コツなんてないですよ、ただ運が良かっただけです。」
 「この子も、つい先日色々な偶然が重なってウチに乗り込んでくれただけで、私がやったことなどなにもありません。」
 「それより、彼女にスタッフの皆さんへ挨拶をさせておきたいのですが」

D「挨拶?」

フレデリカ「うん!だって今日の撮影の為にこんなに人が集まってくれてるんだもん!」
     「よろしくーとか、ありがとーとか、しるぶぷれーとか、挨拶はしっかりしておきたいんだー♪」

D「成程、いい心がけだ!スタッフもこんな美人に声をかけられたら士気も上がるだろう」
 「案内するよ、着いてきなさい」

フレデリカ「はーい!行ってくるねプロデューサー♪」

P「ああ、張り切って行ってこい!」

P「さて、俺は一応今日の流れを確認しておくかな...」


???「ねぇねぇ、キミ」

P「ん?俺か?」

???「そうそう、キミだよ」
   「キミイイ匂いするねー、一体ナニモノ?」

P「ただのしがないプロデューサーだよ。ほら、名刺どうぞ」

???「ふむふむ...芸能事務所811プロダクションプロデューサー兼社長...」
   「へー、じゃあさっきの子ってアイドルなんだー!おもしろそー!」

P「そうだよ、あの子これからめちゃくちゃ売れる予定だから、今のうちにファンになっとくのをお勧めする」
 「ていうか、君は一体...?」

???「あたし?あたしはねぇ」




志希「一ノ瀬志希、ふつーのjkだよ。志希ちゃんってよんでねー♪」



to be continued...

次回予告!

突如地球に襲来した謎の生物、「UEKI」

地球に降り立ったUEKIは、人類を滅ぼし地球をわがものとすべく東京都心に大量のスギ花粉テロをぶちまける!
もはや人類に未来はないと誰もが諦めたその時、一人の少女がUEKIと心を通わせた!


フレデリカ「オー!メルシージュテームしるぶぷれー?」


そして少女は、UEKIの地球侵略に隠されたさらなる陰謀を知ることになる!
果たしてその陰謀とは!?


志希「正解は...じゃじゃん!一ノ瀬志希でーす!」



次回!Chapter5 「Golden Perfume」

志希フレ「「次回もお楽しみに!」」






なお、本編は予告と一部異なる場合がございます


Chapter4終了したところで今回はここまでー
Chapter5はまた明日の夜投稿予定です

今回の補足等はChapter5が終わったらまとめてやります

Chapter5投下していきます

最近見つけた『アイドル』っていう面白そうな観察対象
あたしはそれを追及するためにアイドルになるきっかけを探していた

ビルのモニターであの二人を見てから数日経ったお昼時、あたしの鼻が何かを嗅ぎ取った
その匂いを辿ってみると、なにやら撮影器具っぽいのを持った人が慌ただしく何かを準備する現場を見つけた
でも、この面白そうな匂いはこの人達の物じゃない。更にそのちょっと奥で話しているスーツのサラリーマンと金髪の女の子へと続いていた

あれはもしかして...にゃははー♪

スーツの人のほうが一人になったタイミングを見計らってあたしは声をかけた


志希「ねぇねぇ、キミ」

P「ん?俺か?」


あたしの呼びかけに振り返るこの人が、さっきの匂いの出どころであることを改めて確認する


志希 「そうそう、キミだよ」
   「イイ匂いするねーキミ、ナニモノ?」

P「ただのしがないプロデューサーだよ」
 「ほい、名刺」

志希 「ふむふむ...芸能事務所811プロダクションプロデューサー兼社長...」
   「へー、じゃあさっきの子、アイドルなんだー!おもしろそー!」

一応知らないふりをしておいたけど、あたしはさっきの匂いでさっきの子がアイドルであることもこの人がそのプロデューサーであることも察していた
しかも、あの時モニター越しにあたしの興味を引いた811プロときてる。

これを逃す手はないよね~♪

志希「ところでキミ、いい匂いしてるって事はお仕事たのしーんでしょ?」

P 「あーうん...まあ楽しいかな」

志希「じゃあさじゃあさ、アタシにもアイドル教えて教えて~♪面白いことならあたしもできると思うな!」

P「おっ!アイドル志望か!?いいぞいいぞ、大歓迎だ!」


おっと、意外とあっさり。というか全然疑ってないねこれ
まああたしとしては好都合なんだけど、この人詐欺とかに簡単に引っかかるタイプじゃないかな~?


P「じゃあとりあえずこの撮影終わるまで待っててくれるか?終わったら事務所に連れて...」

志希「どうしたの?」

P「いや、なんか現場のほうが騒がしいなって...ちょっと見てくるわ」

志希「ならあたしもいくよ。アイドルの仕事がどんなものか見てみたいしさ」

P「分かった、でもあまり離れないでね」

P「あの、どうかしましたか?」

D「ああP君、大変なことになった!」
 「今日のメインの予定だった891プロの芸人が、急な病気で来れなくなってしまったんだ」

P「えぇっ!?じゃあ撮影は延期...?」

D「いや、そうもいかないんだ」
 「実は今日紹介する商品の目玉に、明日の放送から3日間の期間限定スイーツがあってね...」

P「3日間限定!?じゃあ編集の時間も考えたら今日を逃すと間に合わないじゃないですか!」

D「ああ、だからフレデリカ君一人でもやってもらうしかない。あらかじめ用意された台本と流れをごっそり変更することになるが...」

P「それはいくらアドリブ力の高いフレデリカでも厳しいですね、初仕事ですし...」
 「誰かウチから芸人さんの代役を...いや、奏も周子も今日は一日別の仕事か...」

D「本当に困ったことになった。何かいいい手はないものか....」

D「...ところで、さっきから宮本君と話しているあの子は誰だい?君にくっついて来ていたが」

P「えっ?...志希!?いつの間に!?」
 「すいません、すぐに引っ込むよう言いにいきま...Dさん」

D「なんだい?」

P「こんな事態になってしまったのはもうしょうがない。嘆いても結果は変わりません」
 「それならいっそ、博打に出てみません?」

D「博打?」

P「ええ、ちょうどいい代役が見つかったことですし、ね?」

プロデューサーにくっついて現場に潜り込んでみたら、さっきのアイドルの子をはっけ~ん!

プロデューサーの話長くなりそうだし、ちょっと話しかけてこよ~と♪



志希「Bonjour,Comment tu t'appells?」

フレデリカ「オー!メルシージュテームしるぶぷれー?」


....?

あれ?何か聞き間違えたかな?

フレデリカ「ごめんねー、アタシフランス語全然喋れないの♪」

志希「なーんだ!日本語ペラペラじゃん♪」

フレデリカ「そうだよー!フレちゃんはメイドインジャパンなの!生まれはパリなんだけどね♪」

志希「パリか~あたし昔エッフェル塔見に行ったことあるよ、もう10年以上前だけど」

フレデリカ「ホント!?それならアタシもまだフランスにいた頃かもしれないなー」

志希「じゃああたしたち、昔あったこともあるかもしれないねー」

フレデリカ「なんか運命感じちゃうね!そんなフレちゃんの運命の相手のあなたの名前はなーんだ?」

志希「正解は...じゃじゃん!一ノ瀬志希でーす!」

フレデリカ「ワーオ!いい名前♪」

志希「ちなみにフレちゃんの名前は?」

フレデリカ「宮本フレデリカだよー!よろしくね♪」

志希「よろしくね、フレちゃん♪」

志希「フレちゃんこれから番組の撮影なんでしょ?頑張ってね!」

フレデリカ「うーん、でももしかしたら中止になっちゃうかもしれないんだー」

志希「えっ...なんで『いや、このまま続行するよ』」

P「ちょうどいい代役が見つかったからな、このまま撮影を続行することになった」
 「Dさん、この子はこっそり仕事を見学しに来てたウチのアイドルです。どうでしょうか?」

D「うむ、ルックスはばっちり。それに宮本さんとも波長が合うようだ。任せてみよう」



...!

まさか代役って!?

志希「なるほどねー、所属して数分でお仕事獲得かー。面白いねーキミ!」

フレデリカ「えっ!志希ちゃんとお仕事できるの?やったー!」
     「ていうか、志希ちゃんも811プロのアイドルだったんだねー!もしかして、ウチの秘密兵器ってやつ?」

P「ああ、ついさっきウチに入ってきた最新兵器さ」

志希「でもいいのかにゃー?アイドルなり立てほやほやのあたしを使っちゃって?」

P「俺は無茶振りはしても無理なことは言わないぞ」
 「お前たち二人が組めば不可能じゃないと思うから賭ける。それだけさ」

D「私もどうせ没にするくらいなら、君たちに賭けてみたい。先ほどの君たちを見て、そう思えたからな」

P「大丈夫、責任は俺たちがとるさ。だから二人とも折角のテレビ撮影、楽しんでおいで」

フレデリカ「うん!志希ちゃんと一緒なら大丈夫!ねっ、志希ちゃん!」

志希「うん!一緒にがんばろフレちゃん!」

P「じゃあ、撮影中にカメラさん達が使うサインを確認しておくぞ。」

志希フレ「「サイン?」」

P「収録中にスタッフの声が入るとマズイだろ?基本はカンペでやるけどどうしても手が空かずに書いてる暇がない時もあるからな。そういうときに使うハンドサインだ」
 「これは話を続けてOKのサインで、これは目線を向けて欲しいときのサインで....」

カメラマン「ではカウント入りまーす!3、2、1、スタート!」




志希「始まりました、宮本さん。この度はお世話になります。一緒に頑張りましょう。」

フレデリカ「一ノ瀬さん、こちらこそよろしくお願いします。楽しみましょう。」

志希「わーい!楽しもうねー!」

フレデリカ「イエーイ!」

志希「それでそれでー、今日のフレちゃんはどんなフレちゃんなの~?」

フレデリカ「今日はねー、この町の人気のスイーツを紹介する新人アイドルフレデリカなんだよー♪」

志希「わぁ奇遇ー!あたしもとれたてピチピチのアイドルとして、気になる香りをリサーチするんだー♪」

フレデリカ「すごーい!こんなに気が合うなんてアタシ達、まるで双子だねー♪」
     「てなわけで、この番組は仲良し双子アイドルのあたし達が!」

志希「素敵なスイーツを画面の前のキミたちの視覚野にお届けするよー!よろしくねー!」

フレデリカ「よーし!じゃあ志希ちゃん、早速お店を探すよー!」

志希「はーい!探し物は志希ちゃんのギフテッドなお鼻におまかせー!」
  「ハスハス...あっちからいい匂いがするー!」

フレデリカ「すごーい!名探偵志希ちゃんだね!」

志希「じっちゃんの名にかけて!ってやつだね♪」
  「それじゃあ気になるあの香りを目指してレッツゴー!」

P「とりあえず出だしは大丈夫そうですね」

D「ああ、開幕のあの挨拶は驚いたが、中々どうして引き込まれる」
 「そしてフワフワとした会話のようで、その中にきっちり今日の趣旨をしっかり盛り込んでいる」
 「もしかして、君が会話の内容を指示したのかい?」

P「いいえ、あれは彼女たちの完全なアドリブです」

D「なんと!」
 
P「もしかしたらあの子達には、最初から台本なんて必要なかったのかもしれませんね」
 「だってあの子達、めちゃくちゃプレッシャーかかる状況のはずなのに、しっかり笑って楽しめてますもの」

D「確かに、彼女たちならこの状況を変えてくれるかもしれない」
 「頼むよ二人とも、どうか撮影を成功させてくれ...!」

志希「フレちゃんあれ見てー!変な看板!」

フレデリカ「すごーい!たい焼きが空泳いでるよー!」

志希「毎日毎日僕らは鉄板の~♪上で焼かれていやになっちゃうよ♪」

フレデリカ「ところがどっこい!なんとここのたい焼き、鉄板使わないで作ってるんだってー!」

志希「なにそれー!どんな化学反応なんだろ?あたしすっごく興味あるー!」
  「というわけでー...おじさーん!ここのたい焼きってどうやって作ってるのー!?」

鯛焼き屋「おう、ウチのたい焼きはな....」

鯛焼き屋「......てな感じで作った記事でアイスを包んでるんだ。つまり、鯛焼きならぬ鯛冷やしってワケ!」
    「というわけでお一つもってけ!」

志希「わーい!ありがとー!」

フレデリカ「おじさん、メルシー♪」

鯛焼き屋「ところでそっちのお嬢ちゃん、よくあんな昔の歌知ってたな。俺がまだ若い頃に流行ったんだよ、懐かしいなぁ」

志希「昔ママが歌ってたんだー♪」
  「ママ、たい焼きがすごく好きだったからよく買ってきてくれて、その時によく歌ってくれたんだー!」

フレデリカ「志希ちゃんのママは、歌が大好きだったんだね!」

鯛焼き屋「なるほどねぇ、お嬢ちゃんにとっても思い出の歌ってワケか」

志希「『も』ってことはおじさんも?」

鯛焼き屋「ああ、俺も昔この歌を聞いてね.....」

D「よし!店主との会話も上手く弾ませているな」
 「というか一ノ瀬君、とても歌が上手いね!本当に新人か!?」

P「これは嬉しい誤算ですね。想像以上にいい拾いものをしました」

D「P君、君にはもしかして幸運の女神でもついているのかい?」

P「...ええ、そうかもしれません」

その後も、あたしとフレちゃんの撮影は順調に進み、最後の目玉スイーツの紹介に入っていた

クレープ屋「えーというわけでですね、この『漢のスーパーバニラヨーグルトクレープ』は明後日から3日間限定で...」



これで撮影は無事終了、その場の誰もがそう確信した






その時だった

あたしの鼻があの『匂い』を嗅ぎつけた

今まで何度も嗅いだことのある『匂い』

それを嗅ぎ取るのはいつも、あたしにとって都合の悪いとき
あたしに敵意を向ける人間から発せられる匂いだった








___ヤバいッ!?

DQN1「オイオイお前らよぉ?誰の許可取ってこんなとこで撮影なんてしてんだ?」

DQN2「ここは俺たちの縄張りなんだよ、クソ邪魔だからさっさと失せろや!」

クレープ屋「な、なんですか貴方たちは!」

DQN1「なんだテメェ...?俺たちになんか文句あんのか!?」

クレープ屋「ひっ....」






まずいね、これ...


このままこの男たちを放置すれば収録は台無しだし、かといって追っ払うことも...
一応持っておいたあの薬を...ダメだ、追い払うどころじゃすまないグロテスクな光景をお茶の間に届けることになっちゃう
それにそもそも、こんなとこカメラに入っちゃったらもうどの道修正効かないんじゃ...

...もうっ!こんな時に限ってあたしの頭は役に立たないんだから!





....えっ?


志希「フレちゃん....?」

P「しまった!」

D「な、なんだあいつらは!何で撮影場所に入ってこれたんだ!?ちゃんと撮影の邪魔が入らないように見張りがいたはず...」

P「兎に角止めないと!」




D「...いや待て!」

P「なんでですか!?今すぐ止めないと撮影が!」

D「分からん!だが宮本君が何かサインを出している!」

P「サイン?あれは...OK?それに目線要求?」
 「大丈夫だから見てろ...って事か?」

D「宮本君、一体何を....?」




大丈夫だよプロデューサー、アタシにお任せ!

だってアタシは、皆を笑顔にする為にアイドルになったんだから♪

もちろん、ここにいるみーんなを、ねっ!

フレデリカ「ではここで!今最も熱いパリジャンで賞のお二方に~...じゃじゃーん!こちらのクレープをプレゼント!」

DQN2「ああ?なんだお前?てかパリジャンってなんだ?」

DQN1「よくわかんねぇけど、なんかカッコイイ響きだな」
    「...いやいや!流されねえぞ!そもそもココは俺たちの縄張りなんだから...」

フレデリカ「なら許可を取れば大丈夫なんだよね?じゃあダイジョーブ!これを食べたら絶対許可を出したくなるから♪」

DQN1「ああ!?わけわかんねぇこと言ってんじゃ『ガレット・デ・ロワー!』フゴッ!」

DQN2「おいてめぇなにして『カリソン・デラーックス!』ぐおっ!」

DQN1「もぐもぐ...」

DQN2「これは...」









DQN1&2「「美味いッ!!!」」

DQN1「口に入れた瞬間ヨーグルトの酸味とバニラアイスの甘み、それにブルーベリーソースが絶妙にマッチして酸味と甘みが互いの魅力を高め合っているッ!」

DQN2「それにこのとてももちもちとした生地が噛むたびに食欲を掻き立てる!まさかこの生地、米粉!?」

クレープ屋「あっ、はい!その通りでございます」


DQN1&2(クソッ...こんなの、こんなの!)








DQN1&2「認めるしかぁ...ないじゃないですかー!!」

フレデリカ「やったー大成功!やったね志希ちゃん!クレープ屋さん!」

志希「えっ、あぁうん!やったね!」

フレデリカ「じゃあ最後にしっかりこのクレープを紹介しないとね!」
     「てなわけで!反抗期のお子さんも、ぎっくり腰のおじいちゃんも、彼女にフラれたそこのあなたも!」
     「食べたらたちまちみーんなハッピー!『漢のスーパーヨーグルトクレープ』は明後日から3日間限定で発売するよー!」
     「これは並ぶしかないよね志希ちゃん!」

志希「うん!寝ぼすけなあたしも早起き朝一で駆けこまなきゃね!」

フレデリカ「じゃあ最後に!今日の撮影でお世話になった皆の為に、一曲歌っちゃおうか!」

志希「じゃああたし、アレがいい!」

フレデリカ「アタシもー!じゃあ志希ちゃん、クレープ屋さん、それに撮影に協力してくれたパリジャンのお二人にスタッフさん達も♪皆準備はいーかなー!」

スタッフ一同「えっ?」

DQN1&2&クレープ屋「「「俺(私)たちも?」」」

フレデリカ「もちろん!みんなで歌った方が楽しいもん!」
     「ねっ?志希ちゃん」

志希「そうだね、みんなで楽しく歌っちゃおう!」
  「というわけでこの番組を作り上げた皆で歌っちゃうよー!『およげ!たいやきくん』!」

すごいよフレちゃん!

撮影の邪魔しに来た人まで仲間に引き込んで、スタッフ一同も巻き込んで大合唱!

こんな光景、あたし全然知らなかった!すごい!

こんなに分からなくて興味が尽きない事なんて今まで無かった!








これが...これがアイドルなんだ!

D「いやー素晴らしい!キミたちのおかげで無事撮影は成功だ!」


撮影が終了した後、Dさんはすぐ私達の所に来て私達を称賛してくれた


フレデリカ「えへへー!ありがとー!」

P「ああ、二人ともよくやってくれた、特に最後よく持ち直した!」

志希「うん、あの時のフレちゃんは凄かったよ」
  「それに比べて、あたしはどうすればいいのか分かんなくて役に立てなくて...ごめんなさい」

フレデリカ「ううん、そんなことないよ!」

P「ああ、寧ろとても役に立ってくれたぞ志希は」

志希「えっ?」


あたしが、役に立った?


...でもあたし、何にもできてない
むしろ危うく撮影を失敗させるところだったのに...

フレデリカ「アタシ、ホントは今日一人で撮影することになったって聞いて、ほんとーに心細くて、それに初めての仕事出すっごく緊張しててどうしよー!ってなってたの」
     「でも、そんなとき志希ちゃんが駆けつけてくれて、ずっと隣で一緒にお仕事してくれたから、不安な気持ちぜーんぶ吹っ飛んじゃった!」
     「...きっと、あたし一人じゃお仕事、大失敗しちゃってたと思う。だから」

     


     「ありがとう志希ちゃん、これからもアタシと一緒にお仕事して欲しいな!」




志希「フレちゃん...!」

D「そうだ、君たちはこれからもっと活躍するだろう!」
 「またいつか、アイドルとして大きく成長した君たちを撮らせて欲しい!頼めるかな?」

志希「...分かった!任せて!」

P「よしっ、じゃあ改めて」
 「811プロへようこそ、志希!」

志希「こっとこそ!あたし、アイドルの全部を追及するから!」
  「だから、もっといっぱいアイドルの楽しさを教えてね、プロデューサー!」

DQN1「あの~....」

D「おや、君たちは...」



あれは...さっきの不良たち?

もうあの匂いはしないけど...大丈夫かな?

また何か吹っ掛けに来たのか、と一応警戒したあたしだったけど...







DQN2「その....」

DQN1&2「本当にすみませんでしたアァー!!!!!」


一同『えっ?』

DQN1「俺たち、この撮影を潰すよう金でやとわれて、それでこんなことをしてしまって」

DQN2「俺たちマジでバカでした!本当にすいません!」

DQN1「お詫びに、俺たちにできることなら何でもします!ホントに!」






...この人達、さっきとはまるで別人だ

嘘をついてるようには見えないし...本当にフレちゃんによって改心させられちゃったの?

ていうか、『金で雇われた』ってことは...

P「『なんでも』、かぁ...言ったな?」

DQN1「ハイ!覚悟はできてます!」







P「じゃあ...この二人のファンになってやってくれ」

DQN1「えっ?」

P「この子達、これからトップアイドルになる予定なんだけど、その為にはファンの応援が必要不可欠だからな。」
 「キミたちがファン第一号になって、二人のアイドル活動をさせてやってほしい」
 「お前らも、それでいいよな?」

フレデリカ「もちろん!」

志希「応援よろしくねー!」

D「まあ結果的に大成功に収まったからね、私からも咎めるつもりはないよ」

DQN1&2「あ、あ...」







      「ありがとうございますーーーーーー!!!!!!!!!」

DQN1「俺、二人の出る番組全部見ます!」

DQN2「俺も、イベントとかあったら絶対駆けつけます!」

P「ありがとう。じゃあその思いに答えられるように、こっちも頑張らないとな」





P「...ところで、君たちを雇ったっていう人っていったい?」



そう、お金で雇われたって事はあたしたちを嵌めようとした黒幕がいるって事に他ならない
一体誰が、何のために....?

DQN「それは...あっ!あいつです!」

スタッフ?「!!」

D「彼は...見張り役の!」

見張り「チッ!」

P「あっ、待て!」


逃げ出す見張りをプロデューサーが追いかける


見張り「誰が待つかっての!」





走りながら見張りは懐から何かを取り出した

あれは...っ!

志希「プロデューサー!避けて!」

P「何っ!?...うおっナイフ!?」

見張り「へっ、あばよ!」

P「しまった!クソッ!」



プロデューサーは間一髪避けれたけど、その隙に見張りは瞬く間に走り去っていってしまった...

D「逃げられてしまったね...」

フレデリカ「プロデューサー大丈夫!?」

P「ああ、なんとか間一髪で避けれたよ。ありがとう志希」

志希「よかった、怪我とかないみたいだね」

P「ああ、だがあの野郎、今度見つけたら絶対とっ捕まえて...『トゥルルルル!!!』なんだ、電話?」
 「もしもし、ああ周子?奏も一緒か、どうした?」







周子に奏...?
それって確か、あのモニターに出てたアイドル!?

P「フレデリカの撮影?大成功、いや超成功だよ!撮影を成功させただけじゃなくてな!」
 「祝勝会?ああ、いいぞ...わかった、じゃあ駅の近くのサ○ゼな。予約とっといてくれ」
 「ああ、違う違う、5人で取ってくれ。何故か?まあ後でわかるさ、それじゃあ宜しく」ピッ

フレデリカ「なになにー何の話?」

P「周子と奏が初仕事成功記念に祝勝会しようってさ、喜べ!俺の奢りだ!」
 「さっきの事はひとまず忘れて、楽しむとしよう!」

フレデリカ「わーい!ゴチになります!」

志希「5人で予約ってことはあたしも行っていいの?」

P「勿論だ!あいつら驚かせてやろうぜ!」
 「早速行くぞ!ついてこい!」

フレ志希「「ハーイ!」」

...でも、まだ気になる謎があたしの頭の中には残っていた





       




         あの見張りの人はなぜ『全くの新人であるあたし達を狙った』んだろう?






そもそもフレちゃんは今日の番組がアイドルとしての初顔出しの無名アイドル
あたしに至っては本当にたまたま居合わせただけのイレギュラーだ


そんな新人を、こんな最初から潰しにかかる理由って一体何?
アタシ達じゃなくて、この番組か、もしくはこのテレビ局が狙い?
それとも、スタッフの誰かを...?







...まあ今は情報が足りないし、プロデューサの言う通り一端忘れて楽しむとするかにゃー

サ○ゼならきっとピザもタバスコもあるよね❤

P「というわけで、仕事の成功と新しく入ってきた超新星にー!」

全員「かんぱーい!!」




周子「いやーそれにしてもびっくりだねー。まさかフレちゃんの初仕事中に新しい子がスカウトされるなんて」

志希「改めまして、一ノ瀬志希だよ。アメリカ帰りのふつーのjkです!よろしくー!」

奏「ええ、よろしく志希」

周子「アメリカ帰りってどゆこと?」

志希「小学生の時にダッドを追ってアメリカに住んでたんだー。んでそっちで飛び級して大学まで行ってたんだけど、つまんなくなったから日本へ帰ってきて高校生やってるんだー」

周子「へー、飛び級って事はもしかしてめちゃくちゃ頭いいの?」

志希「多分ねー、ギフテッドって言われてたし」

奏「ギフテッド...先天的に高度な知的能力を持つ人の事だったかしら?」

周子「なにそれすごい!」

P「志希は向こうの大学ではなんの勉強を?」

志希「ケミカルだよー!日本語的には、ばけがくってやつね」

P「ばけがく...化学反応...補修...うっ頭が...」
 「この話はやめようか(真顔)」

フレデリカ「なんかトラウマを刺激しちゃったみたいだね~♪」

周子「いや自分で聞いたんじゃん...」

周子「そうだ、あたしと奏ちゃんの紹介まだだったね」

志希「知ってるよー、デュアルフルムーンでしょ?」

奏「あら、知ってたのね」

志希「結構前にすっごい報道されてたからねー...それにしても」

周子「えっなに...ちょっとちょっと、近いよ志希ちゃん」

志希「やっぱ二人ともいい匂いするねー♪流石モニター越しであたしにアイドルに興味をもたせただけはあるね!」

奏「私達が?」

志希「そうだよー、日本に帰ってきてからあたしが初めて興味をもったのが奏ちゃんとしゅーこちゃんだったんだ♪」
  「だからあたしはデュアルフルムーンのファンなんだよー!サインちょうだーい!」

奏「そうだったの...ふふっ、間近でファンですって言われると恥ずかしいけど、やっぱり嬉しいわね」

周子「そうだねー、応援してくれる人がいるってのは、やっぱ励みになるわ」

フレデリカ「あたし達も今日ファンができたんだよ!すっごく嬉しかった!」

P「これからもっと増えていくさ、番組も高視聴率間違いなしだろうしな」
 「奏と周子も、うかうかしてられないぞ?」

奏「そうね、もたもたしてるとあっという間に追い抜かれちゃいそう」

周子「あたしたちも、そろそろDランク昇格を目指さないとね、美嘉ちゃんにも追いつきたいし」

P「そのころには美嘉も昇格してるかもしれないけどな」

周子「そうしたら、また追いつくまで追いかけるよ」

奏「ええ、また一緒にライブしたいものね」

P「よしっ、人数も増えたことだし、今後は皆ランク昇格を目指して頑張ろう!」

全員『オー!!』

周子「....ところで志希ちゃん、その真っ赤なピザ、なに?」

志希「志希ちゃん特性タバスコピザだよー。美味しいよ?」

周子「いやそりゃ流石に「ホント!?一切れちょうだい!」フレちゃん!?」

フレデリカ「パクッ!......................................」

奏「...フレデリカ?大丈夫?」









フレデリカ「」チーン

周子「フ、フレちゃああああああああああああああん!!!!!」

P「み、水ー!水を誰か早く―!」

志希「にゃははーー♪...美味しいんだけどなぁ」

塩見周子のウワサ

・クリームたい焼きを買ってきたPと戦争になったらしい

その後、あの番組はローカル番組としては屈指の視聴率をたたき出し、志希とフレデリカは一気に注目を浴びすぐにEランクへ昇格した

私と周子も負けずにそれまで以上に仕事に打ち込んだ結果、ついにDランクに昇格!

そしてそれに呼応するかのように志希とフレデリカも目覚ましい成長を遂げている

私達がお互いに高め合うことで事務所も活気づいてきたと、プロデューサーも喜んでいたわ


でも、アイドルの階段はまだ始まったばかり、まだまだ満足できないわ

これからもプロデュースよろしくね?プロデューサーさん!

莉嘉「お姉ちゃん、大丈夫?」

美嘉「大丈夫だよ、急にどうしたのさ?」

莉嘉「だって、お姉ちゃん最近ほとんど休めてないし、辛そうだし...」

美嘉「大丈夫だって!あたし体力はあるし!」

莉嘉「でも!」

美嘉「それに、あたしが家族を守らないといけないんだから、あたしがやらなきゃいけないんだから...」
  「安心して!莉嘉は絶対あたしが守るから」


  「...あっ!そろそろ行かなきゃ!じゃあね莉嘉、ちゃんと宿題やりなさいよ?」

莉嘉「うん、行ってらっしゃい...」

莉嘉「お姉ちゃん...やっぱり大丈夫には見えないよ...」

莉嘉「あたしじゃ、お姉ちゃんの力にはなれないの....?」

莉嘉「なら誰か、誰でもいいから...お願い...」








お姉ちゃんを...助けて!








to be continued....

次回予告!

大変!ジョウガサキ王国のミカ姫が大魔王カナデに攫われちゃった!
しかもお弁当も忘れていっちゃった!このままじゃミカ姫がお昼抜きになっちゃう!

そんな事はさせないとミカ姫の妹、リカが立ち上がった!

リカ「お願い!案内して!あたしお姉ちゃんが家に忘れていったお弁当を届けなきゃいけないの!」

今、リカ姫頼れる仲間と一緒に、冒険の旅へ一歩踏み出した!

次回!

Chapter6 「Please help my sister!!」

リカ「次回もお楽しみに!」

ミカ「いや、絶対ウソ予告でしょコレ!?」






なお、本編は予告と一部内容が異なる場合がございます

Chapter5が終了したとこで今回はここまででー

次回はまた明日の夜

ちょっとしたら前回と今回のあらすじまとめと補足も投下します

Chapter4のあらすじ及び補足(長いですが別に読まなくても大丈夫です)

・Chapter4 「Come on New Stars!」
そりゃあCool属性二人だけだと来る仕事偏っちゃうよね
ということでPはアイドルの増員を決意!
あとなんか美嘉は疲れているらしい

フレデリカ「名刺は拾った」
そしてPのスカウト作戦は大失敗
そりゃあんちゃん、グラサンに帽子スタイルじゃ怪しいでしょ...
811プロ自体も話題になったとはいえ所属はEランクが二人だけだしもっといい事務所ありますよね...

フレデリカ「だから気に入った」ドン
P「 採 用 !」

ベテトレさんを怒らせたりしながらもなんやかんやでフレちゃん初仕事ゲット!
そして撮影現場に現れたもう一人の星の正体はっ!?
志希「志希ちゃんって呼んでねー♪」

『宮本 フレデリカ』
フランス人と日本人のハーフな小悪魔系アイドル
テキトーに見えて他人への気配りが上手なパリジェンヌである
彼女がPが落とした名刺を拾ったのは彼女の持つ幸運ゆえか、それともPの方が幸運だったのか...

『一ノ瀬 志希』
アメリカ帰りの帰国子女なギフテッドアイドル
街のモニターで見たデュアルフルムーンの姿に興味を持ちアイドルになるきっかけを探していた
匂いを嗅ぐことで探している人を嗅ぎ分けたりある程度人の感情を読み取れたりとやたらチートな嗅覚を持つ

「ディレクター(D)」
811プロを気にいりフレちゃんにテレビ番組の仕事を回した
割と便利なので多分また出る

Chapte5のあらすじ及び補足(長いですが別にry)

・Chapter5 「Golden Perfume」
P、志希の申し出にあっさり乗る。P君詐欺とか気を付けてね
それよりフレちゃんと共演するはずだった番組のメインが急病で来れなくなった
延期も出来そうになく窮地に陥っていたがここでP、急遽数分前にスカウトした志希を代役として投入
途中でDQNによる妨害が入るもフレデリカのコミュ力&アドリブ力の高さで無事収録を成功させる
撮影後、改心したDQN達は雇い主が撮影現場に人が入ってこないように見張っていたスタッフであることを暴露
すぐにPが追いかけるも取り逃がしてしまう
そして志希は新人である自分たちが狙われたことに違和感を抱くのであった

志希フレF→E かなしゅーE→D
そして莉嘉は姉の様子が明らかにおかしいと気づき始めているようで...?

サブタイの意味は黄金の香り、金髪パリジェンヌのフレデリカとギフテッド香りのスペシャリスト志希によって作られた世界は、黄金の様に煌く香水の様

『DQN1&2』
イメージは漫画で見るようなリーゼントのチンピラ
だがフレデリカにより見事に改心してしまい、志希フレの大ファンになった
でもごめんね、多分もう出ないよ

『見張り?』
番組スタッフになりすましてDQN達を使い番組を妨害しようとした張本人
もし志希というイレギュラーがなければ彼の目論見は成功していたかもしれない
また逃げ足も速く、Pの追跡をいとも簡単に振切ってしまった
なぜ番組の妨害を使用としたのかは不明

なお、本物の見張りは後でトイレから簀巻きにされた状態で発見された模様

23時ごろから投下する予定でしたが、Chapter6ちょっと長くなりすぎたので前後編に分けて一旦今から前編の方を投下します
後半は21時から23時あたりのどっかで投下開始予定です

志希とフレデリカの番組放送から一か月


アイドルランクがDに上がった私と周子は今までより更に大きな仕事やオーディションを受けることができるようになった
雑誌では私の写真が見開き1ページ使って乗るようになったり、ローカルではなく全国区の番組に出たりと、Eランクの時より数段レベルの高い仕事も多くなってきた





プロデューサーさん曰く、Dランクはデビュー後のアイドルの一番最初の山場であるらしい。

仕事のレベルが格段に上がるここからどうプロデュースしていくかがそのアイドルの今後に強く関わるとか


それに、あれから志希とフレデリカもものすごい勢いで成長を遂げてきている

だからこそ、これからの仕事は更に気を引決めていかないと

ファンにも、事務所の皆、私を支えてくれている人達の為にもカッコ悪い姿は見せられない







それに、美嘉にも。

1週間ほど前、美嘉のアイドルランクがCに上がった事が発表された

やっと追いつけたと思ったら、すぐに先に行かれて、私の心にはいろんな感情が生まれた

おいて行かれて悔しいとか寂しいとか、そう言うのももちろんあったけど、それ以上に「嬉しい」と思った

超えるべき目標であって、私がアイドルを志した「原点」である彼女がどんどんアイドルの階段を駆け上がっていくこと

そのことに私は、まるで自分の事のように嬉しくなった。


そしてその気持ちをみんなに話したら....





志希「奏ちゃんは美嘉ちゃんの大ファンなんだねー。あたしも、奏ちゃんと周子ちゃんがDランクに上がったときそんな感じだったもん!」



と志希に指摘された

大ファン...そうね!自分の事じゃないのにこんなに嬉しくなれるんだもの!
きっとそれがアイドルを応援するファンというものなのね


私のファンも、私が昇格したときは志希と同じような気持ちを抱いてくれたのかしら?

なら私も、ファンを今の私のようにもっと喜ばせられるようにこの道を突き進まないとね

周子も同じ気持ちらしく、あの時の言葉通り再び追いつくために、普段ののんびりとした雰囲気からは想像できないほど真剣に、かつ楽しんで仕事をしてるみたい

私も、美嘉にまた追いつくために走り抜けなきゃ!

その思いを胸に、私は今日も『アイドル・速水奏』として仕事へと向かった








...ちなみに、件の志希はレッスンの休み時間中に失踪したらしく、プロデューサーさんが血眼になって捜索中らしい

レッスン中の失踪は志希の習性みたいなもの

本人曰く、大抵の物事への興味が3分しか持続しないかららしい。
でもその興味が続いてる間は、事務所の中でも随一のセンスを見せつけてくる。いわゆる「天才型」というやつなのでしょうね。
失踪しても誰かが迎えに行けばおとなしく諦めるあたり、特別レッスンが嫌なわけじゃないと思う
だからこそトレーナーさんも普段は志希が失踪しても怒りはするけど、捜索はプロデューサーさんに任せてそのまま他の子のレッスンを続けていた






けど今日はトレーナーさんの機嫌がとても悪かったらしく

P「ヤバイ...このままじゃ青木さんが地球割るぞ....!!」

ってプロデューサーさんが焦っていたり、事務仕事をしてた周子が何かから逃げるように目の前の書類に向かっていたり...

私はそんなプロデューサーと周子の焦り具合を見て、戻ってきた時志希は無事で済むのか少し不安になった....

今日の仕事は、いつも以上に気合を入れなくてはならない

何故なら...



奏「美嘉!久しぶりね」

美嘉「あっ奏、今日はよろしくね★」


久々の美嘉との共演、それに美嘉がCランクに上がってから初めて生の城ケ崎美嘉を間近で見られる日だから。


奏「まずはCランク昇格おめでとう!私も自分の事みたいに嬉しいわ」

美嘉「ありがとー★奏のほうも順調みたいじゃん」

奏「ええ、すぐにまた追いついて見せるわ、その為にも今日の仕事、お互い頑張りましょうね」

美嘉「.....うん!」

レッスンから失踪して、とりあえず気ままに歩くこと数十分

街中であたしは面白そうな女の子を見つけた

ターゲットローック!と、なにやら地図とにらめっこしているその女の子にあたしは声をかける






志希「ねぇねぇキミ、イイ香りするねー!どうしたの?」

金髪の女の子「あっ、そこのお姉さん!この『ユニVSスタジオ』って場所分かりますか!?」

志希「ん~どれどれ~?」



このスタジオどっかで聞いたような...

あっ、この事務所今日の奏ちゃんの仕事先だ!
確かプロデューサーが昨日奏ちゃんに行き方を教えてたなー

えっと...確かあの交差点を曲がって...
よし、覚えてるね。

志希「うん、ここなら分かるよ」

女の子「ほんと!?お願い!案内して!あたしお姉ちゃんが家に忘れていったお弁当を届けなきゃいけないの!」

なるほどねー
まああたしも次いでに奏ちゃんのお仕事見てみたくなったし、助けてあげようかな♪

志希「いいよー♪」

女の子「ほんと!?ありがとう!..ってお姉さんよく見たらどこかで見たような...というか志希ちゃんって...えっ!?
   「もしかしてお姉さんって、一ノ瀬志希!?」

志希「おや、アタシのこと知ってるの?」

女の子「前にテレビのスイーツ特集でフレちゃんと一緒に出演してたの見たの!あれからあたしフレちゃんと志希ちゃんのファンなんだー!」

志希「へー、キミあたしのファンだったんだ!こんな所でファンと会うなんて、あたしもアイドルとして成長してきたって事かにゃー?」
  「っておっとっと、つい話し込んじゃったね。キミのお姉ちゃんがお腹を空かせないように、急いでお弁当届けに行こうか」

女の子「うん!案内よろしく!」

志希「はーい!志希ちゃんに着いておいでー...えーっと」
  「キミの名前聞いてなかったね。なんて呼べばいい?」

莉嘉「城ケ崎莉嘉だよ!莉嘉って呼んでね!」



えっ、城ケ崎?
それって...





志希「もしかしてお姉ちゃんの名前って、美嘉?」

莉嘉「うん!自慢のお姉ちゃんで、あたしの一番のアイドルなんだから!」





...これは、面白そうな香りがするね~♪

P「あいつ...マジでどこ行きやがった...このままじゃ事務所が青木さんにぶっ壊されちまうぞ...」
 「あっ、すいませーん!この写真の子見かけませんでした?」

 「....あっちに小さい女の子と歩いていくのを見た?ホントですか!?ありがとうございます!」
 「さて、あっちは...もしかしてあいつ、奏の仕事見に行ったのか...?」

私の分の撮影は無事終了し、いよいよメインの美嘉の撮影が始まった

今回の特集は「ギャル系ファッション特集」

美嘉の人気の影響で今女子高生の間でこういったコーデが流行っているらしく、その流行に乗っ取って練られた企画らしい

既に自分の分の撮影が終わった私達は帰っていいと言われたけど、私は美嘉から技術を学ぶため撮影を見学させてもらっている

それにしても、やっぱり美嘉は凄いわね

流石今をときめくカリスマギャル、カメラマンさんの要求すぐさま答え、今回のギャルコーデともマッチして普段以上に輝いてる








....けど、何故?

さっきから何かが引っかかる

スタッフさん達は気づいていないみたいだけど、私はずっと美嘉に小さな、だけど無視できない違和感を感じていた

結局、その違和感の正体に気づかないうちに美嘉の撮影が終わった

奏「美嘉、お疲れさま」

美嘉「奏ちゃんもお疲れー、今日のあたしはどうだった?」

奏「流石美嘉ね、コーデも似合ってたしいつも以上に輝いて見えたわ」
 「でも...」

美嘉「?」

奏「美嘉、もしかして何かあった?」

美嘉「えっ、なんで?」

奏「いえ、なんかちょっとだけ違和感を感じたっていうか...」

美嘉「そうだった?でもあたしは元気だし大丈夫だよ★」


そう言って笑う美嘉からは、さっきの様な違和感は感じられない
杞憂、だったのかしら...?

そんな時だった


莉嘉「あっ!お姉ちゃんいた!」

志希「やっほー奏ちゃん、失踪次いでに奏ちゃんに会いに来たよー」

美嘉「えっ!?莉嘉!?」

奏「あら志希じゃない、プロデューサーが貴方を探してるみたいよ」




志希が美嘉の妹を連れてやってきたのと




P「はぁはぁ...志希!やっと見つけたぞ...」




その志希を追ってプロデューサーさんがやってきたのは....

莉嘉「お姉ちゃん、お弁当忘れてたよ。はい!」

美嘉「マジで?ありがとう莉嘉!お姉ちゃん危うくお昼抜きになるところだったよー」

奏「美嘉、こんなに可愛い妹がいたのね。お弁当を届けに来てくれるなんて、とってもいい子じゃない」

志希「莉嘉ちゃんっていうんだ♪あたしのファンなんだって!」

P「へぇ、良かったじゃないか!プライベートでもファンに会えるなんて」

美嘉「はは...まあでも、結構いたずらっ子なのが困りものなんだけどね...」


そう言いつつも莉嘉をみつめる美嘉の目は優しい








でも、その逆に莉嘉はとても不安そうな顔をしていた

莉嘉「それで...今日はいつ帰るの?」

美嘉「今日は遅いし、多分終電逃しちゃうから今日は事務所に泊まっていくかも。明日も早いしね」

莉嘉「...お姉ちゃん、やっぱり最近働きすぎだよ」

美嘉「大丈夫だって、心配しないで」

莉嘉「でも!お姉ちゃんここ一か月くらいほとんど休んでないじゃん!」
  「流石にあたしだってわかるよ!こんなの絶対普通じゃない!」

奏「えっ?」

P「なんだと...?」









確かに美嘉はここ最近テレビや雑誌で見ない日はないほどの活躍をしてるけど、そんなに?
いくらなんでもそれじゃ体調を崩すと思うのだけど



もしかしてさっき感じた違和感は...

志希「ハスハス...なるほどー」
  「過労死寸前の人がよくさせてる匂いがするよ、それに大分ストレスも溜まってるみたいだねー」

美嘉「匂いって...気のせいだよ。あたしは大丈夫だから、本当に心配しないで...」

奏「美嘉...でも!」

美嘉「ごめん!次の仕事行かなきゃだから先行くね!」

莉嘉「あっお姉ちゃん!」







そう言って、美嘉はスタジオから足早に立ち去った

残された莉嘉ちゃんは、更に表情を曇らせ、目に涙を浮かべている

奏「莉嘉ちゃん...」

莉嘉「...ねぇ、奏ちゃん、志希ちゃん、それに二人のプロデューサーさん」
  「お姉ちゃんね、最近いつもアイドルなのに辛そうにしてて、でも...」

  

  「奏ちゃんや周子ちゃんとのお仕事の話だけは楽しそうに話してたの」
  「この前の志希ちゃんやフレちゃんの番組見た時も思った、きっと811プロのアイドルは、どんなに苦しんでる人でも笑顔にできるんだって!」
  「だから、お願い、お願い!」








 

             「お姉ちゃんを、助けてください!」













             Chapter6 「Please help my sister!!」






P「わかった!」


プロデューサーさんは、誰よりも早くそう答えた


莉嘉「ホント!?」

P「ああ!美嘉は今ままでウチのアイドルたちにとても良くしてくれていたし、そんな美嘉が苦しんでるって話を聞いたら流石に見過ごせない」

奏「ええ、美嘉のファンとしても見過ごせないわ」

志希「あたしはあんまり美嘉ちゃんとは関わり無かったけど、あたしのファンであるキミの頼みなら断れないにゃ~」

P「そうだ。美嘉のファンの為にも、そしてその美嘉のファンの中の一人としても、絶対に彼女を助けて見せる」


プロデューサーさんの言葉に心の中で激しく同意する
私達の為にも、美嘉と、美嘉を支える人達の為にも放っておくわけにはいかない

何より...莉嘉ちゃんの泣き顔をこれ以上見たくはないしね







莉嘉「みんな...ありがとう!」





その時、やっと私は莉嘉の笑顔を見ることができた
うん、やっぱりファンには笑顔でいてほしいものね

P「というわけで、美嘉を助けるために彼女の情報が欲しい」
  
莉嘉「情報?例えば?」

P「何も美嘉も理由なしであんな無理な働き方をしたりはしないだろう、必ず何か理由があるはず」
 「何か心当たりがないか教えてくれないか?」

莉嘉「理由か...それはなんとなく分かるよ」

奏「その理由って?」

莉嘉「半年くらい前にパパが事故にあって動けなくなっちゃって、それを理由に会社をクビになっちゃったの」
  「その時からだよ、お姉ちゃんがあんな風になったのは」
  「多分、自分がパパの代わりに働いてあたし達家族を助けようとしてるんだと思う」
  「パパがクビになったときは、このままじゃ生活費も学費も出せなくなりそうってママもパパもずっと悩んでたし...」

P 「成程、家族の為か...」

奏 「でも、それだと少しおかしくない?」
  「美嘉程のアイドルなら、あれ程根を詰めなくても不自由ない生活ができるくらい稼げると思うけど...」

志希「そうだねー、まだEランクのあたしやフレちゃんでも、普通に休みをもらえる上で日本の新卒の平均くらいのお給料もらえてるしね」

P「お前らは今話題性もあるから同じランクの平均よりちょっと高めだとは思うが...それにしたって不自然だな」
 「それに、いくらそういう目的があったってそんな無茶なスケジュール、絶対担当プロデューサーとか事務所が止めるはず」

莉嘉「じゃあ、お姉ちゃんのプロダクションはお姉ちゃんが無理してるの分かってて無視してるの!?」





事務所が無視している...どうかしら
美嘉はあの事務所の筆頭アイドル、だからこそ健康には一番気を使われるはず...

むしろ...

奏「むしろ事務所に無理やり...って事もあるかもしれないわね」

莉嘉「そんな!?ヒドいよ!」

P「いや、その可能性も十分に考えられるが...それならそれでまだ疑問が残るな」

奏「どういうこと?」

志希「なんで別の事務所に移らないのかって事だよね?」

P「その通りだ志希」
 「今の事務所にそこまで苛め抜かれてるんならまず真っ先に移籍する手が重い浮かぶはずだ。実際、事務所と方針が合わずに移籍するアイドルの話はそこら中にある」
 「美嘉程のアイドルが手に入るってなら色んなプロダクションが今よりもいい条件で手を差し伸べるだろう、むしろウチで雇いたいくらいだ」
 「移籍したって今の過酷な状況を訴えれば、世間に無責任だって責められることもないだろうしな」

奏「つまり、どうしても今の事務所を離れられない理由があるってこと?」

P「恐らく、な。莉嘉ちゃん、何か心当たりはあるか?」

莉嘉「うーん...ごめんなさい、お姉ちゃんの事務所の事はあんまり分からないや...」

P「そうか...大丈夫、気にしなくていいよ」



志希「じゃあ、調べてみるしかないねー」

莉嘉「調べる?何を?」

志希「美嘉ちゃんの事務所も~、美嘉ちゃん自身も」
  「どっちに原因があるのか分からないし、もしかしたら両方に理由があるのかもしれないからね。今の時点じゃとりあえず両方に探りを入れてみるしかないと思うよ」

P「そうだな、その辺調べ上げて助けるための作戦を考えよう」

奏「調べると言ってもどうやって?」

P「そうだな...まあ兎に角美嘉の担当プロデューサーに接触するのが第一だな」
 「スケジュール管理をする立場なんだからまず間違いなく何か手がかりを握ってるはず」
 「そして美嘉自身にも探りを入れる、その為には...」

奏 「その為には美嘉にも、美嘉のプロダクションにももっと近づく必要がある」
  「...プロデューサーさん、頼みがあるんだけど」

P「なんだ?」

奏「私たちに、なるべく多く美嘉と共演できる仕事を取ってきてくれないかしら」
 「そうすれば私達が美嘉から何か聞き出せるかもしれないし、もしかしたら彼女のプロデューサーが仕事を見に来ることもあるかもしれない」

志希「確かに、美嘉ちゃん自身に近づくには一番手っ取り早いね」

P「分かった、お前たちのプロデューサーとして全力を尽くそう」
 「幸い...と言っていいのかは分からないけど、今なら美嘉と共演できる仕事は多そうだしな」
 「他の皆にも協力してもらおう。奏の仕事も終わったし、一旦事務所へ帰ろうか」

莉嘉「811プロの事務所!?あたしも行ってみたい!あたしも連れてってよ!」

P「ああ、いいy....!!!!!ゴメン!今日はやっぱダメ!」

莉嘉「えー!」

奏「あら、別にいいんじゃない?」

志希「そうだよ、折角ならファンサービスしてあげようよ?」

P「俺がここに来たそもそもの目的を思い出したんだよ...」
 「今日はとにかくダメだ、連絡先教えとくから何かあったら連絡してくれ」

志希「?」

奏「....あー、そういうことね」

莉嘉「なんかよくわかんないけど...わかったよ」

志希「じゃあまたねー莉嘉ちゃん」

奏「またいつか会いましょう」

莉嘉「うん!またねー!」

そして、事務所に帰ってきてようやく私達はプロデューサーさんの言葉の意味を知ることになる










ベテトレ「遅かったじゃないかぁ一ノ瀬...」

P「手遅れだったか...」

志希「あの、トレーナーさんなんかすごい顔、ってか女の子がしちゃいけない顔してるよ...?」

ベテトレ「ああ...でも今はそんな些細なことどうでもいいじゃないか...なあ?」

P志希「「ヒィッ!!!」」

ベテトレ「どうやらお前には今日のレッスンは退屈みたいだったらしいからな...特別メニューを用意しておいた」

志希「あ、あのーあたし今日はもう帰「らせると思っているのか?」すいません受けますごめんなさい!」

奏「これが、本気でキレたトレーナーさん...」

周子(ガクガクブルブルガクガクブルブルガクガクブルブルブル.......)

フレデリカ「ワーオ、周子ちゃんマナーモードだねー」

P「ま、まあまあ青木さん、今日のところは許してやってくれませんか?本人も反省して「何を言ってるんだ?」え?」

ベテトレ「お前にもお仕置きがあるに決まってるだろう?監督不行き届けってやつだよ」

P「そ、そんな!いくら昨日合コン失敗したからって横暴過ぎ...やべっ」

ベテトレ「ほう...P、どうやら本当に死にたいらしいな?」

P「あ、あの、マジですいませんでした、あの、命だけはその、ご勘弁をですね...?」

ベテトレ「ダメだ」



P「...なあ、お前ら、助けて」

フレデリカ「ごめーん今日見たいテレビがあるから帰るねー!バイバーイ♪」

奏「私も、借りてたDVD返しに行かなきゃいけないから...」

周子「Pさん、志希ちゃん...骨は拾ってあげるから」

P&志希「」












その後、3人で事務所を出たとたん後ろから二人の断末魔が上がった

周子「あたし、骨は拾うって言っちゃったけどさ...骨、残るかなぁ?」

明日また、会えるといいわね....

ベテトレさんのウワサ

・一向に春が来ないらしい

奏「そう言えば二人とも、この後時間ある?二人に話しておきたいことがあるの」

周子「えっ?まああるけど」

フレデリカ「アタシも大丈夫だよー♪」

周子「フレちゃん見たいテレビあるんじゃないの?」

フレデリカ「よく考えたらそうでもなかったから大丈夫だよー。それに、今は奏ちゃんとお話ししたいな♪」

奏「ありがとう二人とも、じゃあとりあえず場所を移しましょうか。この話、あまり人通りの多いところで話したいことではないし...」




こんな街中で話して道行く人に聞かれたら大変だし、何処かいい場所はあるかしら...

周子「じゃあ、ウチ来る?ここから近いし誰かに聞かれるって事もないでしょ」

フレデリカ「周子ちゃんのお家かー!行きたい!」

奏「あら、じゃあお言葉に甘えて部屋、貸してもらおうかな」

周子「じゃあ次いでにご飯食べていきなよ。鍋でもやろう!夏だけど」

フレデリカ「さんせー!」

周子「じゃあ次いでに買い出し寄ってから行こうか」

奏「分かったわ、それじゃ行きましょ」

周子の住むアパートの近くのスーパーで材料を買ってから、私達は周子の部屋へと向かった


周子「いらっしゃーい、しゅーこちゃんハウスへようこそ♪」

フレデリカ「わーい!しゅーこちゃんの匂いがするー!」

奏「意外と普通のアパートなのね」

周子「まあねー、でも一人で住むにはこれで十分だよ」
  「それより、お腹もすいたし早速お鍋の準備しましょか」

フレデリカ「じゃあアタシお野菜切ってくるねー!」

奏「私も手伝うわ」

周子「分かったー、じゃああたしはお鍋セッティングしてるね」
  「えーと砂糖とみりんとお醤油....しまった、お醤油切らしてたか」

奏「あら、じゃあ買ってきましょうか?」

周子「いや大丈夫、ちょっと待ってて」

奏「?」


そう言うと周子は鍵を持って外へ出ていった

と思ったら1分ぐらいですぐ帰ってきた



周子「お醤油持ってきたよー」

奏「早くない!?」

フレデリカ「すごーい!周子ちゃんってもしかして錬金術師?」

周子「いや?隣のPさんの部屋から持ってきただけ」
  「実はこっそり大家さんに、『P君一人身だからもし体調崩したりしたら面倒見てあげて』って合鍵貰ってるんだよね」

奏「ああ、そう言えばPさんの部屋隣なんだっけ」

フレデリカ「でも、勝手に持ってきちゃってよかったの?」

周子「だいじょーぶだいじょーぶ、前にPさんも調味料とか無くなったら言えば分けてやるって言ってたし」
  「それにPさん、相変わらず料理あんましてないみたいだし。腐らせるより使っちゃったほうがいいでしょ」

奏「でもこれ普通に考えたら泥棒じゃ...まあいいか」



プロデューサーさん...ごめんね?

周子「それで、話って何なの?」


煮えてきた鍋の中身をつつきながら、あたしは奏ちゃんに向き合う
多分、あんまり面白い話ではないはず


フレデリカ「お仕事で何か嫌なことあったの?帰ってきてからの奏ちゃん、ちょっと顔色悪いよー?」


フレちゃんの言う通り、事務所に戻ってきてからの奏ちゃんは、どことなくイライラしてる感じがする
お仕事に行ってる間に一体何があったんだろう?


奏「ええ、実はね...」

周子「なにそれ!」


あの美嘉ちゃんが、そんなひどい目に合ってるっていうの!?


奏「ええ、でも美嘉を助けようにも何が原因で苦しんでるのが分からないと...」

周子「そんなの、美嘉ちゃんの事務所が悪いに決まってんじゃん!」
  「無理やりだろうと美嘉自身の意思だろうと、美嘉が苦しんでるのに何も対処しないなんてありえないでしょ!」

奏「私もそう思う、でもそれなら今の事務所を離れてさっさと別の事務所へ行くと思わないない?」

周子「それは...確かにそうか...」


あたしも美嘉ちゃんと同じ状況だったら多分移籍を考えるか、アイドルそのものをやめるか
とりあえずそこから離れることを考えるはず...










フレデリカ「なるほど―、つまり!探偵事務所811プロの出番って事だね!」

そんなことを考えていたらいつの間にかあたし達は探偵に転職してしまったらしい

周子「まあでも、探偵みたいなことをやらなきゃってことだよね」

奏「そうよ、二人にも美嘉の事情を調べるのに協力してもらいたいの」

周子「分かった、あたしも仕事先とかで自分なりに調べてみるよ」

フレデリカ「名探偵フレちゃんにおまかせあれー♪」

奏「ありがとう、一応プロデューサーさんも情報を集めやすいよう美嘉と共演できる仕事を探してくれるみたいだし、その時は二人とも頼むわね」

フレデリカ「もしかして、あたしも美嘉ちゃんと一緒にお仕事できるのかな!?」

周子「まあそこはPさんのがんばり次第じゃない?今大人気の美嘉と一緒のお仕事なんて、数が多くても取るの大変だろうし」

フレデリカ「そっかー、じゃあプロデューサーがお仕事持ってこれるように応援しないと!」
     「アタシ、ずっと美嘉ちゃんとお仕事できたらいいなーって思ってたから!」

奏「あら、そうなの?」

フレデリカ「うん!だって奏ちゃんと周子ちゃんって美嘉ちゃんの大ファンなんでしょ?」
     「二人がファンになる様な人なんだから、きっとすっごく素敵なアイドルだよ!だからいつか一緒に仕事したいなって思ってたんだ♪」

周子「...美嘉ちゃんはホントに凄いアイドルだよ」
  「何せ美嘉ちゃんはあたしと奏ちゃん、デュアルフルムーンのルーツだからね、あんなアイドルになりたい!ってずっと目標にしてきたんだ」



あの日のあのライブ、あれは正にあたしの人生をがらっと帰るほどの運命の出会いだった
あの時の美嘉の姿が、てきとー家出娘だったあたしに微かに、だけど確かに目指すべき目標を目標を作りだした


だからこそ...


周子「美嘉ちゃんの事、絶対助けようね」

奏「ええ、もちろんよ」

フレデリカ「それじゃ次の811プロの目標は」







「『美嘉ちゃん救出大作戦』で決定だね♪」

一端ここまででー

Chapter6の続き投下していきます

宮本フレデリカのウワサ

・108の必殺技があるらしい

周子の家で決起集会を行った翌日

志希「レッスン、タイセツ...オシゴト、タイセツ...」

P「青木さんは素敵な人ですあおきさんはすてきなひとですアオキサンハステキナヒトデス......」

奏「えぇ.......」







事務所では二つの死体が転がっていた.......

P「あ、奏おはよう...」

志希「オハヨウゴザイマス」

周子「この二人今朝からずっとこんな調子なんだよ、なんか青木さんのお説教終わった後も徹夜だったらしいし」

奏「死んだ魚の目みたいなになってるわね...というか周子、今日はオフじゃなかった?」

周子「そうだったんだけど、なんか昨日のこと考えるとじっとしてられなくてさー。どうせ一人でオフでもやることないし、とりあえず事務所にきちゃった」

P「まあ実際、ちょうど人手が欲しかったところでな。今日の俺の仕事を手伝ってもらうことにした」

奏「それで?美嘉との共演、取れそう?」

P「もちろん、早速今日の午後から取れたぞ」

奏「えっ、もう?」

P「今日の夕方美嘉のミニライブが行われるんだが、そのライブのバックダンサーが急病で欠けてしまったらしくてな」
 「そこで、前にもバックダンサーをやった経験がある奏か周子どっちかをゲストとして貸してくれないか、と美嘉の事務所から依頼があったから受けておいた」
 「急な話で事後承諾になっちまったが大丈夫か?」

奏「大丈夫よ。あれからももう一度美嘉と踊るためにってトレーニングは欠かしてないし」

志希「あたしは今日はフレちゃんと雑誌の取材だよね?」

P「ああ、頼むから失踪するなよ?」

志希「それはどうかにゃ~...って言いたいところだけど、昨日の今日だし自重します...」

P「それならいい。フレデリカは別の仕事から直で現場に行くよう言ってあるからそろそろ志希も出発しな」

志希「はーい、身体バキバキだからタクシー使っていい?」

P「さっき呼んだ、てかもう来てるから早くいってこい」

志希「気が利くね~♪」

P「まあ、あんなの見てたら翌日絶対死ぬのだろうってのは分かってたからな...見てるだけでもキツかった...」

志希「昨日...レッスン...うっ頭が」

奏「ホントに何があったのよ...」

周子「できることなら知らないほうがいいよ、ホント...」

周子「それで、あたしはどうすればいいの?Pさんの仕事手伝うんだよね?」

P「これからある所へ営業に向かうんだが、そのときちょいちょいと協力してほしいことがある。詳しくはその都度指示するから、とりあえず着いてきてくれ」

周子「はーい。何か準備とかいる?」

P「そうだな...とりあえず『塩見周子』だってばれない様に変装してほしい。衣装保管庫にいくつか使えそうなものがあるはずだ」

周子「そんな間に合わせで大丈夫なん?溢れるしゅーこちゃんオーラでばれちゃわない?」

P「髪適当なとこで結んで帽子深くかぶって眼鏡かけるだけでもだいぶ分からないもんだぞ。スーツとか学生服とか色々あったはずだからその辺着ればかなり雰囲気違って見えるはずだ」
 「それに、今勢いあるとはいえまだDランク、オーラがどうとか言うのはまだ早いな」

周子「厳しーねーPさん」

P「厳しい世界だからな、引き締めるところは引き締めないと」

奏「じゃあ私も今夜のライブに向けて軽く『TOKIMEKIエスカレート』の練習をしておくわ」

P「ああ、13時にはライブハウスに向かってくれ。そこで向こうのプロデューサーから指示があるはずだ」

奏「あら、向こうのプロデューサーも来るの?」

P「そう聞いてる。だから奏」

奏「分かってるわ、探りを入れろって事ね」

P「ああ、だが無理はするなよ」

奏「ええ、そっちの仕事も頑張ってね」

      ~~~昼下がり、どこかの高級料亭~~~

061社長(以下 社長)「成程...そのライブにウチの城ケ崎君を出演させてほしいと」

P「はい、是非ともお願いしたいのですが...」



全く、社長である私がこんな話に付き合わねばならないとは

まあ仕方ないといえば仕方ない、急な欠員のせいで061P君は今日のミニライブから手が離せないし、城ケ崎君以外のアイドルを担当している下っ端には判断が難しい案件だろう

これも我が社の名誉と金の為だと思って適当に聞き流すとするか

P「我々はまだ設立したばかりで知名度も低くアイドルも経験の浅い新人ばかり、後ろ盾の少ない状況で大きなライブをするのは不安があります」
 「そこで、今大ブレイク中の城ケ崎さんをゲストに呼ぶことで少しでも注目を集めたいのです」

社長「うーむ、811プロには前にもお世話になったし協力してあげたいのは山々なんだがね...何分城ケ崎君も今忙しいからね」




嘘は言ってない、城ケ崎君は今我が社の為に全力で尽くしてもらっているからな

別に受けてもいいのだが、どうせ最近やっと最高ランクがDランクになった弱小プロじゃ大した報酬も払えないだろう

それっだったらもっと上のランクの仕事をやってもらった方がはるかに効率がいい

P「勿論、無理を言っているのは承知しています」
 「ですので、ギャラはかなり上乗せしまして...これくらいでどうでしょう?」

社長「どれどれ...!?」


た、高い!
DランクどころかCランクでもほとんどないレベルの金額だぞ!?


社長「キミ、もしかして桁を間違えてないかい?」

P「いいえ、間違ってませんよ?このライブが成功すれば、奏はきっとさらに上のステージへたどり着けますからね。このくらいの先行投資は必要経費です」

社長「成程...まあここまで熱意を持ってくれているならしょうがない。城ケ崎さんも速水君には仲良くさせてもらってるみたいだし、この仕事引き受けようじゃないか」

P「本当ですか!?ありがとうございます!では早速日程等の打ち合わせを...」トゥルルルルルル...
 「すいません、別の営業先から電話が...少し席を外させてもらいますね」

社長「ああ、構わないよ。職業柄仕方ないからね」

P「申し訳ありません、それでは...」


そう言って電話を片手に811プロのプロデューサーは席を立ち去った
最初は適当に断るつもりだったが、中々お得な話だったじゃないか
気分もいいし良い酒でも注文しようかと思った、その時だった

???「あのー、さっきの話ちょっと聞いちゃったんですけど...もしかしておじさん、061プロの方ですか?」


一人の女が私の席に向かってきて話しかけてきた


社長「...?いかにも、私は061プロの社長だが?」

???「えっ!社長!?すごい!あたし超ラッキー!」



なんだこいつ、随分とテンションが高いな
制服姿だし、今時の女子高生というやつだろうか

???「あっ、すいません一人ではしゃいじゃって」

佐東「あたし、佐東 円(さとう まどか)っていいます、アイドル志望の女の子だよ」

社長「そ、そうか。それで?君は何か私に用事が?」

佐東「実はあたし、061プロの美嘉ちゃんに憧れてて、いつか同じ事務所で仕事できたらいいなって思ってて」
  「というわけで、あたしを061プロに入れてください!」

社長「いや、というわけでと言われても...」






...でも確かにこの女、良く見るといいスタイルをしているな
肌も白く、顔もいい
...もしかして、すこぶる逸材なんじゃないか?




お?おお!?

今日はツイてるじゃないか!

社長「いや...よく見たらなかなか見どころがありそうだね君」
  「そうだな...今日はまだ商談があるからダメだが、後日アポを取って事務所に来てくれ。その時は前向きに検討しよう」

佐東「ホント!?ありがとう社長さん!」

返事を聞いた途端、彼女は私に抱き着いてきた
あっ、いい匂いする...





...ってイカンイカン!811プロのプロデューサー君が戻ってきてしまう


社長「こらこら、離れなさい」

佐東「あっ、ごめんなさい...」

社長「いや、気にしなくていい。でもアイドルになったらこういった行動は控えるんだよ。スキャンダルにつながるからね」

佐東「はーい、じゃあまた今度会いに行くから、その時はよろしくお願いしまーす!」


そう言って彼女は去っていった

いやーしかしいい拾いものだったな

あの子なら城ケ崎君と一緒に我が社に莫大な利益をもたらしてくれるだろう...

P「お待たせしました...なんか機嫌よさそうですね?」

社長「そう見えるかい?まあ、君がいい仕事を持ってきてくれたから機嫌はいいほうだね」

P「ありがとうございます。あっ、折角ですし何か飲まれます?お代は私が出しますので」

社長「おっ、いいねえ。じゃあ遠慮なく....」






割の良い仕事に貴重な人材、それにタダ酒とは今日は本当に運がいい日だ!
笑いが止まらないな!

一ノ瀬志希のウワサ

・トレーナーさんが天敵らしい

約束の時間、私は指定されたライブハウスへと向かった

奏「こんにちは、811プロの速水奏です」

061P「おお速水さん、急な話だったのによく来てくれました」
    「私は城ケ崎美嘉の担当プロデューサー、061Pと申します」

奏「貴方が美嘉の?ふーん...」


この人が美嘉のプロデューサー...
美嘉にあそこまでの激務をさせているからもっとゴーイング娘のプロデューサーの様なタイプかと思っていたけど、意外と丁寧な人ね


奏「それで、私はこれからどうすれば?」

061P「とりあえず,今からバックダンサーと一度『TOKIMEKIエスカレート』を流してもらいます」

奏「分かりました、それじゃ早速行きましょう」

とりあえず同じバックダンサーの子達と一通りダンスを流してみた...のだけど







なんなのこの子達?まるでやる気を感じられない!


何故?この子達は美嘉と同じ事務所のアイドル達だったはず

それなら仲間として美嘉の足を引っ張る出来のものは見せられないはずでしょう!?


...考えても仕方ない、別の事務所の子なのに失礼かもしれないけど言わせてもらおう

奏「貴方たち...ちょっといい?」

BD1「ん?なぁにゲストさん?」

奏「こういうこと言うのは失礼だと思うけど...貴方たち、やる気あるの?」

BD1「あ?なに?」

BD2「私達の出来が悪いって言うの?」

奏「出来は悪いわ、でも別にそれを責めたいわけじゃないの」
 「全力でやってそれなら別にいいわ。でも、貴方たちからライブに対するやる気を全く感じないのよ。そんな状態で本番に望んだら、間違いなく美嘉の足枷になるわよ」

BD1「はぁ?あんた随分生意気じゃない。今勢い乗ってるっつってもまだド新人でしょ?」

奏「新人の目で見てもダメだって分かるほどなのよ、これじゃ美嘉を見に来たファンにもばれるわよ」

BD1「あんた調子乗ってんじゃっ!」

BD3「ちょっと、流石にゲストに手を出しちゃまずいって!」

BD1「チッ...」

BD2「...まあでも、やる気はないよねー」

奏「...それは何故かしら?」

BD2「だって、ただのラッキーで人気になってる奴の為に踊るのにやる気なんてあるわけないじゃん」

奏「ラッキー...?」

BD2「だってそうでしょ?あいつは偶々事務所の偉い人に気にいられたから事務所のゴリ押ししてもらってここまで人気盛ってもらえてるんだから」
   
BD3「まあ確かに、事務所もあいつを売るためにかなーり汚い手を使ったらしいじゃん。つまりあいつの人気は実力でもなんでもないってワケか」







奏「は?」

美嘉の実力が、ただのラッキー...?

何を、何を言ってるのこの人達は...






美嘉が、ここまで来るのにどれだけの努力をしてきたかも知らないで
大切なものを守る為に、どんな気持ちでアイドルを続けているかも知らないで


どれだけの苦悩を重ねても、家族の為にに、ファンの為にステージに立つ
そんな城ケ崎美嘉という『アイドル』が、どれだけ輝かしいものかも知らないでっ!

奏「哀れね...」


美嘉のライブの前に騒ぎを起こしてはまずい

沸騰している頭の中を、かろうじて理性で抑え込みそう呟いた

BD2「なんですって?」

奏「自分たちが売れない理由を全部美嘉に押しつけて、自分に何が足りていないのかを考えようともしない。そんな貴方たちが、哀れだと言ったのよ」

BD1「あんた、言わせておけばぁ!」

BD3「ちょっ!気持ちは分かるけどやめなって!」

BD2「そうよ、あんたのせいで私達までクビになったらどうしてくれんの!」

BD3「そうだよ!あたし達お仕事もらうためにあそこまでしたのに、こんなしょーもない事で終わったら...」

BD1「何よ!そもそも....」


そうして、3人は私そっちのけで喧嘩をし始めた


でも、私の頭の中は既に他の事で一杯になっている

BD1「ちょっとあんた1どこ行く気!?」

奏「美嘉に会いに行ってくるわ、貴方たちはそこで勝手に喧嘩しててちょうだい」

BD2「ちょっと!最終調整はどうすんのよ」

奏「私はもう準備できているわ、むしろ自分たちの心配をしなさい」
 「このままだと、大勢の前で無様をさらすことになるわよ」

BD2「ちょっとあんた!」

BD3「いいわ、ほっときましょ。確かにあいつのいうことも一理ある」
   「今日のライブでもし失敗したら今後お仕事もらえなくなるかもしれない。最低限だけでもやっておこう」

BD2「...チッ」



舌打ちを背に、私は部屋を出た
最低限...ねぇ?



奏「だから貴方たちは、『アイドル』になれないのよ...」





やはりここは、美嘉のいるべき所ではない
美嘉に話をしに行かなくちゃ...

奏「でも、美嘉はどこに...『いやっ!何するの!』!?」


今の声...!
あっちは確か控室のある方向...いや、そんなことはどうでもいい!


奏「美嘉!」




今はただ、声の方向へ、美嘉を助けるために走らなければ!

控室の扉にたどり着いた私は勢いよく扉を開け放つ

ゴォンと大きい音と一緒に私の目は美嘉と、美嘉に迫る061のプロデューサーを捉えていた


奏「美嘉!...貴方美嘉に何してるの!?」

061P「何って...ただのスキンシップですよ。ねぇ?」

奏「そんな訳!「いいの、奏」」

美嘉「大丈夫、ちょっとびっくりしちゃっただけだから、大丈夫だから...」

奏「美嘉...」


大丈夫だと笑って見せる美嘉の顔は、どう見ても大丈夫には見えない

美嘉「それより、もうちょっとで本番始まるし準備しとこ?ファンの皆をがっかりさせたくないし」

061P「そうです、城ケ崎さんのライブが潰れるようなことになればお互い困るでしょう?」

奏「...分かったわ。でも」


そうして美嘉の耳に唇を近づけ、彼女にしか聞こえないように小声で話す


奏「...ライブが終わったら、外で話を聞くから」

美嘉「......」


コクリ、と美嘉は頷く






こんなの、絶対放ってはおけない
同じアイドルとして、そして、美嘉のファンとして!

061P「...チッ」

その後一応、ライブは滞りなく終了した

お客さんも満足していたし、ほとんどの人から見れば成功であったといえるだろう








....でも、美嘉にとってはそうじゃない
そして、私にとっても

だって、美嘉自身がライブを楽しめていなかったから
流石にプロだから、美嘉もファンの前ではいつも通りの元気な姿を見せていた

でも、同じステージ立った私は気づいてしまった
笑顔で踊る美嘉の心が、苦痛に身悶え叫んでいることに
主役であるはずの美嘉が、全く楽しめていない事に


どれだけの人を魅了して、来た人を満足させて帰らせたとしても
会場にそれだけの熱をもたらした本人がライブを楽しめてないなら、絶対に成功だなんて言えない!

~~~ライブハウス裏~~~


美嘉「奏...」

奏「おいで、美嘉。まずはお疲れさま」
 「そして...聞かせて、本当はあの時何があったの?」

美嘉「...疲れてたから、控室で仮眠を取ってたの。そしたらなんか違和感を感じて、目を覚ましたらプロデューサーが胸、触ってて」

奏「なっ、それってセクハラじゃない!ならどうしてあの時」

美嘉「言えないよ!だって、そしたら奏を巻きこんじゃう...」

奏「私は巻き込まれたってかまわないわよ!...ねぇ、どうしてこの事務所から離れないの?こんな所でひどい仕打ちを受けるくらいならいっそ811プロに来れば」

美嘉「ダメ!...そんなことしたら、事務所が絶対に811プロに報復する!」

奏「報復...ですって?」

美嘉「ウチの事務所、実は裏で仕事を取るためにかなり汚い事をやってるみたいで、邪魔な事務所やアイドルには嫌がらせして仕事が来ないように根回ししたり、引退に追い込まれたアイドルもいて...」
  「061プロは手段を選ばない、あたしが移籍したらきっとその事務所が被害を受ける!」
  「...ホントはこれを知ったとき、アイドルやめようとも思ったんだけど、その時パパの事故があって...」

奏「やめるにやめられない状況になってしまったって事ね...」

美嘉「それに、あたしのことを応援してくれてるファンの事も、裏切りたくない...でも、でも、それが辛いの!」
  「最初は、アイドルやるの、すっごく楽しかったのに!お仕事も、ライブも、ちゃんと楽しめてたのに!」
  「少なかったファンもだんだん増えてきて、私を応援する声に、すっごく励まされてたのに!」




  「今は、その全部が苦しい!あんなに、あんなに楽しかったアイドルが、今は、すごく苦しいっ!!」

奏「美嘉...」

美嘉「かな、で...」

泣き崩れる美嘉を、私は抱きしめる

奏「つらかったわね...苦しかったのね...それでも、頑張ってきたのよね...」
 「でも、大丈夫。私は、『私達』は、あなたの味方よ」
 「嫌がらせなんて苦じゃないわ。きっと、皆で乗り越えられるわ。だから...」









「困りますねぇ、美嘉に余計なことを吹きまれては」

奏「ッ貴方は!」

061P「やめてくださいよ、もし美嘉がそんな甘い言葉に絆されて血迷った真似をしたらどうしてくれるんです」

奏「貴方が、貴方たちが美嘉を!」

061P「フン...おい美嘉」

美嘉「!」

061P「分かるよな?友達に手を出されたくなかったら今どうするべきか。まだ仕事は残ってる、こんな所で油を売ってる場合じゃないんだ」

美嘉「...はい」

奏「美嘉!?ダメよ!」

美嘉「いいの、奏ちゃん。やっぱり迷惑はかけたくない」
  「でも、ありがとう。奏ちゃんの優しさで、ちょっと元気になれたから」

061P「いい子だ、行くぞ美嘉。速水さんも今日はお疲れさまでした。せいぜいこれからも頑張ってください」

奏「私は...貴方を絶対に許さない、許さないから!!」

061P「...吠えてろ、ヒステリー女」

美嘉「っ...じゃあ、またね。奏....」




そうして、美嘉は行ってしまった

...もう少し待ってて美嘉、私達が絶対そこから助け出すから







莉嘉...貴方との約束、絶対に果たす!

      =========事務所=========

奏「ただいま」

P「おう、お帰り」

フレデリカ「ライブどうだったー?」

奏「残念ながら失敗ね、主役が楽しめてなかったもの。」

志希「そっかー、そりゃ失敗だね...慰め会する?」

奏「大丈夫よ、それより話しておきたいことがあるわ」

P「奇遇だな」

周子「あたし達の方も色々収穫あったからさ、とりあえず情報交換しよう」

フレデリカ「じゃあ今日の取材の帰りに買ってきたお菓子開けようよ!甘いもの食べながらのほうがお話しも盛り上がるよきっと♪」

奏「いや、あんまり盛り上げたい話では...」

志希「でもー、奏ちゃん今すっごくイライラしてるでしょ?一旦糖分補給してリラックスしよー?」

奏「それは...そうね、頂こうかしら」

周子「ムグムグ...もう食べてまーす」

奏「いつの間に!?」

P「まあ食べながらでいいから聞いてくれ、まずは...」

奏「私がCDデビュー!?」

P「ああ!それに伴って2週間後、新曲お披露目ライブをやることになった」
 「喜べ!初めてのお前がメインのライブだぞ!」

周子「しかも811プロアイドル初めてのCDデビューだよ」

フレデリカ「すっごーい!流石ウチのエースだね♪」

奏「エースって...でも、ふふっ、ついに私もCDデビューか...胸が高鳴るわね」

P「それでこのライブな...美嘉をゲストに呼ぼうと思うんだ」

奏「美嘉を?」

P「ああ、今回のライブはお前が抱いたアイドルの夢、その原点である美嘉...彼女と一緒に作り上げたいんだ」
 「奏もそうだろう?自分の晴れ姿、美嘉に見てもらいたくないか?」

奏「もちろんそうだけど...でも、今の美嘉をステージに立たせるのは...」

P「...何があったか聞かせてくれ」

P「アイドルが苦しい...か」

奏「ええ...だから今の美嘉をステージに立たせたら、更に追い詰めることになってしまうと思う」

志希「今まで好きだったものがそうじゃなくなる...辛いよね」

もちろん、欲を言えば美嘉と一緒にライブをしたい
でも、その願いが彼女を傷つけてしまうなら...それはできない

P「...なら、美嘉のほうを先に解決しよう」

周子「そうだね、じゃあ早速明日実行する?早いほうがいいでしょ?」

奏「解決って...そんな簡単に?」

P「いつも言ってるだろ?俺は無茶振りはしても無理は言わないぞ」

周子「それに言ったでしょ?あたし達も収穫があったんだよ。とびきり大きな収穫が♪」

061P「...というわけでして、これ以上余計なことをされる前に消しておいた方が無難かと」

社長「そうだね...よし、ならちょうどいい方法がある」

061P「というと?」

社長「実は今日、811プロの速水君のCDデビュー記念ライブに城ケ崎君をゲストにとの依頼があってね」

061P「なるほど...そのライブで」

社長「ああ、軽く『事故』を起こしてやればいい。不幸な事故を、あの時のように、ね」

061P「成程!そうしてライブを妨害して信用を失墜させつつ、ギャラはしっかりと頂く...と」

社長「ああ、無理してあれだけの報酬を払って結果は得られず...811プロもこれで終わりだ」

061P「流石です社長!」

061P「...ところで、さっきからすっごい酒の匂いがしますけど...」

社長「いやなに、実は811プロの奢りで高い酒を飲んでね、気分がいいものだからかなり飲んでしまって」
  「向こうのプロデューサーも気が利いてね、酔い覚ましまでもってたものだからいつも以上に酒が進んだよ」

061P「そうなんですか?...残念です、もし欠員が出ていなければ私が商談に向かえたのに」

社長「なぁに、今回の件が片付いたら私が同じ店で奢ってやるさ」

061P「本当ですか!?ならきっちり『仕事』しないといけませんね」

社長「ああ、期待してるよ...」



社長「フフフフフ...アッハハハハハッハ!!!!」

美嘉「そんな...今の話...!」

奏ちゃんのライブで、事故を起こす?

美嘉「どうしよう...このままじゃ奏が...







         「811プロが危ない!!」








to be continued...

次回予告!

かつてプロ音ゲーマーであった塩見周子だったが、ライバルに仕込まれた毒入り八つ橋により腱鞘炎になり音ゲの道から去っていった

しかし挫折から10年、謎の科学者Dr志希により腕をサイコガンに改造され、全国の強者が集まる音ゲの祭典、『シンデレラの音ゲ会』へと導かれる

一度諦めた夢をもう一度燃え上がらせ、彼女は再び戦場へと降り立った!


周子「じゃ、いっくよー!気分は太鼓の達人で!」

次回!
Chapter7「Reach for the moon」

周子「次回もお楽しみに...ってああ!フルコン逃した!」





なお、本編の内容は一部予告と異なる場合がございます

Chapter6が終わったところで今回はここまで―

次回はまた明日の夜投下予定です

Chapter7投下していきます

   ~~~夜、奏の部屋~~~


奏「そろそろ寝ましょうか...」(トキメキドコマデモー)
 「あら?...美嘉からだわ。もしもし?」

美嘉「奏ちゃん、起きてる!?夜遅くゴメン!」

奏「起きてるわよ...それで、一体どうしたの?」

美嘉「大変なの!お願い!」
  「今度の奏のライブ、中止して!」

奏「えっ...なんで?」

美嘉「さっき社長とプロデューサーが、奏のライブで事故を起こすって計画してて...」
  「ゴメン、あたしのせいだ...あたしのせいで、奏のライブがめちゃくちゃに...」

奏「落ち着いて美嘉、あなたのせいじゃない」
 「それに、折角教えてもらって悪いけど、ライブは中止しないわ」

美嘉「えっ?でもライブをやったら奏、どんな目に合うか分かんないよ!?」

奏「大丈夫よ。美嘉、今日は家に帰れそう?」

美嘉「えっ?うん...明日も早いけど、今夜は久しぶりに帰れそう」

奏「そう、ならちょうどいいわ。莉嘉に伝えておいて」
 「私達、ちゃんと貴方との約束を果たすわ。だからお姉ちゃんにに『お帰り』を言う準備をしておいてって」

美嘉「えっ....どういうこと?」

奏「明日になればわかるわ、それじゃあね」

美嘉「えっ、ちょっと!...切れちゃった」






一体なんなの....?

翌日、今日もあたしは事務所へ向かっていた

最近、どんどん事務所への足取りが重くなっている
まるで、三途の川の向こうへ歩んでいくように....


それでもなんとか事務所へたどり着き、まるで地獄の門をくぐるようにして事務所の扉をくぐる

プロデューサーという名の悪魔の出迎えを受けて、いつも通りの日々が始まる...







そのはずだった

奏「おはよう、美嘉」

美嘉「えっ!?」

P「俺たちもいるぞ」

周子「おはよー、美嘉ちゃん久しぶり!」

フレデリカ「わーい!本物の美嘉ちゃんだ!握手しよー!ぶんぶん!」

志希「ハスハス...ん~やっぱいい匂いだね♪相変わらず疲れてるみたいだけど」

美嘉「って周子ちゃん!?それに志希ちゃんとフレちゃん?」

志希「あれっ?フレちゃんの事も知ってたんだ。初対面だよねフレちゃん?」

フレデリカ「そうだよー、でも嬉しいな!美嘉ちゃんアタシのこと知っててくれてありがとー!」

美嘉「莉嘉がファンらしくて、『志希ちゃんとフレちゃんすごいんだよ!』ってよく話してたから...」
  「...ってそうじゃなくて!なんで061プロにいるの!?」

P「ちょっと大事な商談にね。ちょうどいい、美嘉も着いてきな」

美嘉「えっ、ちょっとどういう」

周子「まあまあ、面白いもん見れるから着いておいでよ」

フレデリカ「お菓子もあるよー!はい!」

ぴょんぴょんとはしゃぎながらフレちゃんは私にカップケーキを押し付けてきた
包装的に市販のじゃないな、手作り?

奏「じゃあ役者もそろったし、行きましょうかプロデューサーさん」

P「ああ...」








          「悪党どもに、クライマックスを突きつけてやろうぜ!!」







             




             Chapter7『Reach for the moon』






        =====061プロ、社長室=====



社長「それで、話とは一体何だね?」

P「昨日お話しした奏のライブの件で、少し変更点がございまして。それも重要な変更でしたのでご報告にと」

061P「ああ、ウチの美嘉がゲストで出演するというやつですね」



奏のライブ、確かにあたしがゲストで出るとは聞いてる...
でも、あのライブをやったら奏が...!

P「実はそこに変更がありまして。あの後社内会議でそのことを報告したところ、折角初めての811プロ主催のライブなのでやはり他社の力を借りずに自分たちの力でライブを成功させたい!と反発がありまして。」

奏「会議の結果、今回他社からのゲストはなしとさせていただくことになったわ」

社長「それでは...美嘉君の出演はなしということに?それは困るねぇ」

061P「ええ、もうその仕事があること前提にスケジュールを組んでしまいましたし、そちらの勝手な都合でということでは...」

P「ええ、存じております。それに、我々としても奏のアイドルとしてのルーツである城ケ崎さんにはやはり出演してもらいたいということで...」


社長「?...つまりどういう事だ?城ケ崎君を起用するのかしないのか、どっちなんだい?」

周子「あー、ちょっとあんた達には難しかったかな?」

社長「何?」

P「出演は811プロからのみ、でも美嘉は起用する。つまり...」






    P周子奏「美嘉を811プロに引き渡せってこと(だ!)(だよ!)(よ!)」



美嘉「えっ!?えっ!?どういうこと!?」


話が急展開過ぎてついていけないんだけど!?


フレデリカ「美嘉ちゃん!お話長くなりそうだからお菓子食べてよっか!」

美嘉「いやそんなばあいj『オランジェーッと!』むぐ...」




...美味しい

っそうじゃなくて!

社長「いやいや君ィ...そんなこと出来るわけないだろう」

061P「それにもし本当に移籍させるにしても、今回のライブの件の違約金も含めてしっかり請求しますよ。それこそ貴方たちの様な弱小プロでは払えないような金額をね」

P「はっ、良い感じに頭湧いてんねぇ」

奏「貴方たちに払うお金なんて一銭たりともあるわけないでしょ」

周子「というわけで、違約金も移籍金もぜーんぶタダでもらっていくよ」

社長「はあ!?お伽噺も大概にするんだな!」

        




         P「お伽噺かどうかは...これを聞いてからにしてもらおうか」







ピピーガガッ...


(061P「...というわけでして、これ以上余計なことをされる前に消しておいた方が無難かと」)
(社長「うむ、そうだね...よし、ならちょうどいい方法がある」)


(社長「実は今日、811プロの速水君のCDデビュー記念ライブに城ケ崎君をゲストにとの依頼があってね」)
(061P「なるほど...そのライブで」)
(社長「ああ、軽く『事故』を起こしてやればいい。不幸な事故を、あの時のように、ね」)





美嘉「えっ!?」

061P&社長「こ、これは!?」

これ、昨日あたしが聞いた会話!?


P「おやおやー?随分物騒なお宝が入ってましたねー?」

社長「き、貴様!どうやってこの会話を!?」

P「社長さーん、ダメですよこの業界で隙をみせちゃあ。わるーい美人局に引っかかっちゃいますよ、ね?」

社長「美人局...まさか!?」

周子「おっ気づいた?じゃあネタばらしといきましょか♪」
  「どうも、『佐東円』改め、『塩見周子』でーす。アイドル兼事務員やってまーす!」

社長「き、貴様は....」



【佐東(周子)「というわけで、あたしを061プロに入れてください!」】※Chapter6



社長「あの時のアイドル志望!?」

P「そう、最初から全部罠だったって事」

周子「抱き着いたときにコートのポケットに盗聴器突っ込ませてもらったよ。どう?スパイしゅーこちゃんの演技」

P「中々良かったぞ。今度女優の仕事持ってきてやるよ」

周子「マジ?やったー♪」

奏「じゃあ次いでにもっと面白いもの聞かせてあげましょう。ねぇ、プロデューサーさん?」

社長「何!?」

061プロ「まだあるのか!?」

P「もちろん、こんなんじゃ終わりませんよ、ぽちっとな」

ピピーガガッ...




(P「つまり、美嘉を事務所にとどめるためにそんな手を?」)
(社長「そうだよ~ヒック城ケ崎君がアイドルを続けざるを得ないように彼女の父親が事故に合うようにプロデューサー君に細工をしてもらってねぇ」)






美嘉「えっ...!?」

061社長P「」

事故に合うように細工...?
そんな、じゃあパパの事故は...!




(P「いやー勉強になりますわーそんな手法私じゃ思い付きませんわー」)
(社長「いやーふふふヒックまあ確かに、私ぐらい大物にならないとここまでのことはできないだろうねぇ」)
(社長「君もこの業界で成り上がりたいのなら手段を選んじゃダメだよぉ~?アイドルは商品なんだから、しっかりと『管理』してやらないとねぇ」)
(P「いやー流石です社長!よっ日本一!」)
(社長「そうだろうそうだろう!よし、もっと酒もってこーい!」)






P「いやーホントに勉強になりますわ~」
 「俺ならそんな惨い手、思い付きもしないし思い付いても絶対実行しねえよ腐れ外道」

美嘉「ちょっと社長!今の話は本当なの!?」

061P「いや、その...」

社長「違うんだ、城ケ崎君...これは...」

P「あの時社長さんに飲ませた酔いざまし、実はウチのとあるギフテッドアイドルが作ったものでして、効果は抜群なんですが...効くまでに30分ほどタイムラグがありましてね」

志希「その間、べろんべろんになって聞かれた事なんでも答えちゃう上に、効果が切れて酔いがさめると酩酊状態の時の事は忘れちゃう副作用があるんだー♪」

周子「んでそれを飲んだあんたの会話を、Pさんに電話をかけた後ずっと通話状態にして後ろの席でご飯食べてた円ちゃん、つまりあたしが録音してたってワケ」

061P「き、汚いぞ!」

奏「あら、貴方たちが言えた義理ではないでしょう?」
 「汚い腹で美嘉を弄んで、汚い手で美嘉の体に触れて、『アイドル』そのものを汚したんだもの。そんな汚れに汚れた貴方たちが、手段を選んでもらえ得ると思って?」


美嘉「...許さない!パパをあんな目に合わせて!警察に突き出して...」
  
P「待って、残念だけど美嘉のお父さんの事故に関しては時間がたちすぎてるし警察も事故として処理しちまった、有力な証拠は処分されてるだろう」
 「それにさっきの自白も、裁判で使えるかどうか怪しい。自白剤に盗聴...違法な手段なで手に入れた証拠だからな」

美嘉「そんな!」

P「まあそれでも、これを週刊誌にでも持ってったら確実にこのおっさん共は破滅だろうがな」

社長P「くっ...」

P「それに、俺たちは警察じゃない。ただのプロデューサーとアイドルです。あれこれ騒ぎ立てて美嘉に変な噂がつくのもあまりよろしくない」
 「というわけで、商談といきましょうや社長さん」

社長「チッ...要求はなんだ!」

P「さっきから言ってるだろ?まずは美嘉を811プロに移籍させること」
 「そして、金輪際ウチの事務所とアイドルに手を出さない事。これが俺が提示する条件です」

社長「チッ...分かった、その要求を呑もう...」

P「賢い判断です。ではこちらの契約書を....」

P「はい、では今をもって美嘉は811プロ所属のアイドルになりましたー!」

フレデリカ「わーい!ようこそ811プロへ!とりあえずハグしよー♪ぎゅー!」

志希 「これから一緒に頑張ろうね美嘉ちゃん!ハスハス!」

美嘉「ちょっ、ちょっとフレちゃん志希ちゃん....でも、ありがとう、これから宜しくね!」

061P「もういいだろう!さっさと出ていってくれ!」
    「美嘉、お前もだ!もう顔も見たくない!」

美嘉「こっちだって願い下げだよ!もう2度と来ないからね!行こ、みんな!」




奏「待って」


美嘉「えっ?」

奏「まだ商談は終わってないわよ?」

社長「なっ!そっちの要求はちゃんと飲んだじゃないか!」

周子「そりゃPさんの要求はね」

奏「まだ私たちの要求が残っているわ」

P「いやー、俺はこれくらいで勘弁してやろうと思ったんですけど...まだうちの事務員とエースが納得いってないみたいでね」

周子「それと美嘉ちゃんの要求もね」

美嘉「えっ、あたしも?」

奏「散々苦しめられたんだもの、今くらいハメ外しちゃってもいいんじゃない?」

061P「なっ、何を要求する気だ...?」

奏「...プロデューサーさん...アイドルの暴力行為は、やっぱりNGよね?」

P「まあ、一発退場だろうな」

周子「でも、それを誰も見てなかったら、それは無かったのと同じだよね?」


....!
まさか!?

P「...あー目にゴミが入ったーなにもみえないー!」

志希「あたしも薬品が目に入っちゃったー志希ちゃん失明中ー」

フレデリカ「フレちゃんはバルスを唱えた!....目が、目があああああああああ!!」

P「自爆してるじゃねえか」



美嘉「...そっかー、見えてないならしょうがないね」ゴゴゴゴゴ゙

奏「ええ、見えてないんだものね」ゴゴゴゴゴ゙

周子「あたし演技とはいえこんな奴に抱き着いたのちょっとイライラしててさー。青木さん直伝の男をオトす必殺技、役に立つ時が来たみたいだねぇ」ゴゴゴゴゴ゙

P「あぁ、『アレ』かぁ...あの人アイドルになんてもん教えてんだ....」

奏「もしもの時の護身術って事で前に教えてもらったのよ。それじゃあ...」

社長「や、やめろ....」

061P「来るな!...来ないでえ!」






周子「じゃ、いっくよー!気分は太鼓の達人で!」

パチパチチパチドンパチパチカッパチパチパチパチパチィン!!!
フルコンボダドンッ!

美嘉の事務所との『商談』を終えて私達は811プロに帰ってきた
新しいアイドル、それもとびきり大物が増えたんだもの、今後の方針を話さなくちゃね?


周子「あースッキリした!」

P「いやほんと、『アレ』は食らってるのが自分じゃなくてもトラウマが刺激される...うっぷ」

奏「あら?何も見ていなかったんでしょ?」

P「...よし!何もなかったな!」

フレデリカ「プロデューサー今記憶消したね」

P「ここはどこ?俺は誰?」

周子「いや消し過ぎでしょ」



志希「じゃあ忘れられた記憶が蘇る志希ちゃん特性ドラッグを投与しよっか、そーれ♪」

P「もごっ....!!!!!辛イィ!!」

志希「どう?刺激で記憶も蘇ってくるでしょ?」

P「いやこれっ、逆に全部ぶっ飛...ビイィィィ!」

美嘉「...ぷっ、あははははは!」

奏「あら、美嘉がここまで大笑いしてるのは初めて見るわね」

美嘉「あははは、ゴメンゴメン!ツボに入っちゃってさ!」

奏「いいのよ、寧ろもっと笑ってちょうだい」
 「私達はあなたの、その曇りのない笑顔を見たかったのだから.....」

周子「でも、美嘉ちゃんはまだスッキリしてないんじゃない?」

美嘉「えっ?」

周子「だって、美嘉ちゃんのお父さんの事故の犯人分かったのに、司法のお咎めなしじゃん?」

美嘉「それは...確かにムカつくけど、でも仕方ないよ。こうやって無事移籍で来ただけでも十分...」





P「いや何言ってんだ?あの事務所をあのまま野放しにするわけないだろ?」

美嘉「えっ?でも使える証拠がないって」

P「俺たちの手元にはな、でもこういうのは専門の人間に任せればいいんだよ」

美嘉「専門の人間?」

P「いつもお世話になってるだろ?雑誌にテレビ...マスコミの力だよ。あいつらに流してやれば、あとは勝手に騒ぎ立ててくれるし、世論の影響で警察も再捜査に乗り出してくれるだろうしさ」
 
 「一応知り合いの警察官にもそれとなく話は流しておくから、きっと大丈夫さ」

周子「情報を垂れ流すって事?」

P「そういう事。もう美嘉の移籍が済んだ以上後はもうこっちのもんだよ。すぐにはやらないがな、奏のライブが無事終わるまでは握りっぱなしにしとくよ」

奏「あら、別にすぐ発表しちゃってもいいんじゃないの?」

P「破滅まで追い詰められた人間は何しでかすか分かったもんじゃない、ヤケを起こされてライブを邪魔されたらコトだ」

美嘉「でも、契約破っちゃって大丈夫なの?あたしの移籍の代わりに黙ってるって話だったんでしょ?」

P「そんなもん向こうが潰れちまえば関係ないさ。それに俺は美嘉の移籍を要求しただけで、条件を飲んだら黙ってるなんて一言も言ってなーい♪」

周子「うわーずっこいなぁPさん」

P「向こうの社長も言ってただろ?手段を選ぶなってさ。だからこっちだって手段は選ばねえよ」

奏「そうね、あの人達は今まで散々美嘉を、そしてきっと他の事務所のアイドル達に酷いことをしてきたんだもの。しっかり法の裁きを受けてもらわないと」


美嘉「そっか....皆!今回は、本当にありがとう!」
 
奏「いいのよ...今までよく頑張ったわね、美嘉」





本当にお疲れさま、美嘉.....

P「さて、じゃあ早速美嘉にこれからのスケジュールを伝えよう」

美嘉「...あっそうだ!今日もまだ何個か仕事が!」

P「それは俺が仕事先に頭下げてキャンセルさせてもらう。それよりも、今君にとって最も重要な仕事を託そう」

美嘉「えっ?」

P「今日はもう家に帰って、これから一週間ゆっくり休むこと」
 「今は身体を休めること、それが一番美嘉にとって必要なことだよ」

フレデリカ「お仕事ならピンチヒッターフレデリカに任せて!だから」

志希「莉嘉ちゃんにただいまって言ってあげて。莉嘉ちゃんが、あたし達のファンが笑ってくれれば、あたし達も嬉しいから」

奏「大丈夫よ、私達ももうあの時から大分アイドルとして成長してるもの。だから今はゆっくり休んで、ね?」

P「さっきタクシー呼んでおいたから、それで帰りな」





美嘉「...分かった、皆、ありがとねっ★」
  「でも、休ませてもらった分、奏ちゃんのライブは一緒に最高の物にするから、期待しててね!」

奏「ええ、待ってるわ。」

美嘉「じゃあみんな、またねっ!」

       =======城ケ崎家===============

こんなに早く家に帰れたの、久しぶりだな

日曜日だし、莉嘉も家にいるかな?だとしたら、ちゃんと言わなきゃね



扉を開けると、どたどたと走る音と、とびきりの笑顔が、あたしを出迎えた








莉嘉「お姉ちゃん!お帰りなさいっ!」



....ただいま!

社長「申し訳ございません!次のアイドルは必ず、それにまた『商品』もご用意しますので!どうか、どうかご慈悲を!」

  「そんな、待ってください!援助を受けられなければ、私は!(ガチャッ!)」

  「あ、ああ、そんな...うわあああああああああああああああ!!!!」

城ケ崎美嘉のウワサ

・移籍前より笑顔が増えたらしい

       ========一週間後============


ん~....いい朝!

一週間きっちりリフレッシュしたし、これからまた頑張らなきゃね!


美嘉「おはよー」

莉嘉「おはよ―お姉ちゃん!今日は811プロに行くんでしょ?」

美嘉「うん!アイドル城ケ崎美嘉、再始動★」

莉嘉「...よかった!」

美嘉「えっ?」

莉嘉「前まで仕事行くとき辛そうだったけど、今日はすっごい楽しそうだもん!」

美嘉「...うん!今日からの仕事、すっごい楽しみ!」

莉嘉「あっ、それでね!さっきテレビで志希ちゃんとフレちゃんがDランクに上がったって宣伝してたんだ!」

美嘉「知ってる。昨日LINEで連絡来たよ」

莉嘉「えっ!お姉ちゃん志希ちゃんとフレちゃんのID持ってるの?いいなー!」

美嘉「そりゃあ仕事仲間だから持ってるよ。それより莉嘉、早く朝ご飯食べないとママに怒られるよ」

莉嘉「やばっ!いただきます!」

美嘉「あたしもいただききまーす!」

『それでは次のニュースです』

あっ、ニュース始まった!
堅いニュースから今の流行が読み取れることもあるし、こういうのはちゃんとチェックしておかないと





   『先日電撃移籍したことで話題となった人気アイドル城ケ崎美嘉さんの元所属事務所、061プロダクションが昨日、倒産していたことが発覚しました』





美嘉莉嘉「「....えっ!?」」



『倒産についての詳しい理由はまだ判明していませんが、061プロダクションは所属アイドルへのセクハラ、パワハラや他の事務所への嫌がらせなど、数々の違法な営業をしていた疑いがかかっており...』
『また違法行為を先導していたと思われる社長の輪島 塁氏は現在行方がつかめず....』




あたしにとって衝撃的すぎる内容が、テロップとともにテレビの中で静かに歌っていた

     ====811プロ====

美嘉「皆!今朝のニュース見た!?」


そう言って慌てた様子の美嘉が事務所に飛び込んできた

美嘉の慌てように今朝のニュース...間違いなく061プロ倒産のニュースね


奏「見たわ...一体なぜ...」

周子「プロデューサーさんもうばらしちゃったの?奏ちゃんのライブが終わるまで黙っとくんじゃ?」

P「...いや、俺はまだ情報を流してない」

奏「プロデューサーさんが流したんじゃないじゃないとすると...一体どういう事?」

P「俺ら以外の誰かが061プロの情報を流したのか、それとも向こうが勝手に自爆したのか...でもそれにしたって気になることはある」

美嘉「気になること?」

P「倒産するのが早すぎる、社長の犯罪行為が発覚して逮捕されたとしても、代理の社長を立てるなりなんなりで資金があるうちは会社自体はなんとか誰かが存続させるはずだ。」
 「そもそも、社長は逮捕されたわけでなく行方不明ときたもんだ、それなのにわずか一週間で倒産...どうにも腑に落ちない」


そうか、会社の頭が消えてもそれまで稼いだ資金や人材が一瞬でなくなるわけじゃないものね
言われてみれば、確かに不自然かしら...

周子「なるほど...分かるような分からんような...」

奏「でも、美嘉は大丈夫なの?少し前に061プロから移籍したばかりだし、なにか良くない噂をされたりするんじゃ」

フレデリカ「んー、その辺は大丈夫じゃないかな?」

志希「世間は結構美嘉ちゃんに同情的な感想が多いね、『辛い環境でよく耐えた!』とか『手を切って正解!曲がったことを許さない美嘉タンに惚れ直した!』とか『すげぇよミカは...』とか」

P「まあそんな感じで、美嘉に対して不当な貶めはなさげだし、そこは安心していいと思う」

奏「そう、ならいいけど...」

周子「でも、考えようによっちゃラッキーじゃない?わざわざこっちが動くことなく勝手につぶれてくれたんだから」

P「まあ....そうだな。これでライブの準備に集中できるしこっちとしては有り難いんだが...一応皆警戒しておいてくれ」

全員「はーい」

周子「じゃあ面倒な話はここまでにして、今日もお仕事頑張るよみんな!」

P「ああ、久々だけど大丈夫か美嘉?」

美嘉「勿論!あたしは今を時めくカリスマアイドルだからね★」
  「それに...今なら、皆となら、久々にお仕事楽しめそうだしさ!」

P「そうか...なら良かった」
 「よしっ、じゃあ今日も811プロ、営業開始だ!」

それから更に一週間後

とうとう、私のCD発売記念ライブの日がやってきた

ステージの裏から客席を覗くと、そこにはもの凄い人の塊が!




奏「すごい...こんなに沢山の人が...!」

P「だろ?ここにいる人間、皆お前の歌を聞きに来たんだ」

周子「大丈夫奏ちゃん?緊張してない?」

緊張は...勿論している。自分が主役のライブは初めてだから...



...でも!



奏「大丈夫よ。ファンがこんなに私の為に集まってくれたんだもの、絶対に満足させて帰らせなきゃ!」

美嘉「安心して!後ろにはあたし達が着いてるから★」

志希「あたしも今すっごい興奮してるよ!奏ちゃんの仲間としても、1ファンとしても!」

フレデリカ「じゃあ、ステージに出る前に円陣組もうよ円陣!ファイトー!って♪」


フレデリカが手を伸ばすと、全員がそれに同調するように手を重ねる


P「じゃあ今日の主役の奏さん、なんか気の引き締まるお言葉をどうぞ!」

奏「そうね...皆、今日は初めての811プロ主催ライブよ」
 「だから...全力で楽しんで、ファンのみんなも楽しませて、今この世界で一番楽しい世界を作り上げるわよ!」

全員「うんっ!」

奏 「じゃあ行くわよ...811プロー!ファイト―!」








全員「オーーっ!!」

ああ!今あたし、すっごく楽しい!
それに...すごく嬉しい!

アイドルを嫌いにならくて済んだことが
アイドルは楽しいものなんだって思い出せたことが!

ありがとう、皆!!

奏、あたし全力で『アイドル』を楽しむから!

だから今日は...奏の最高の姿を、隣で見させてね!

美嘉、見ていて頂戴



あの時、満月のように輝いていた貴方を目指して、その輝く姿に必死に手を伸ばし続けて、ようやくここまで来たわ

だから今日は貴女にも、思わず手を伸ばしたくなる満月の様な私の姿、絶対に見せてあげるから!

(週刊!今アツいアイドル!今回は、811プロから流星のように現れた超新星!速水 奏さんにお越しいただきました!)
(先日CDデビューを果たしそのお披露目となった記念ライブでも会場のファンを大いに熱狂させたあのアイドルです!)
(また、発売されたCD「Hotel Moonside」はオリコンチャート4位を獲得しました!)
(これはDランクアイドルとしては異例の売り上げであり、この結果を評価されアイドルランクがCに昇格したとのことです!)





周子「やってるねー、この前の奏ちゃんの番組」


書類と格闘していた手を止め、テレビへと目を向ける

P「ああ、奏も今やメジャーアイドルの仲間入りだ、仕事もどんどん入ってきてる」

Pさんも番組が気になるのか、事務仕事をさぼり始めたあたしを咎めず、自分もテレビを眺め始めた

周子「あれからウチの事務所も怖いくらい上手く行ってるよね~」
  「美嘉ちゃんもあれからどんどん仕事に熱が入ってるし、志希ちゃんとフレちゃんも休養中の美嘉ちゃんの代役で出た仕事が評価されてDランクに昇格したし」
  「それにあたしのCDデビューも決まったし、向かうところ敵なしって感じ?」

P「まだまだこれからだよ、Cより上はもうメジャーアイドルの戦場、まだまだとんでもねえ奴等がわんさかいる」
 「それにこの業界、唐突に大型新人が現れたりするもんだ、気を引き締めていかないと足元救われるぞ?」

周子「勝って兜の緒を締めよってやつだね!でも、大丈夫だよ。てきとー娘だったあたしでも、みんなと一緒にここまで来れたんだからさ!」

でも、そう言えば何か忘れてることがあるような...あっ


周子「そういえば...結局061の社長はどこ行ったんだろうね。何か仕掛けてくるかもと警戒してたのも、結局杞憂だったし」

P「...まあ、会社もなくなって警察に追われる身さ、もう何もできることはないだろう」
 「そんなことより手を動かすぞ、明日はお前もロケなんだから、時間があるときに書類片付けとかないとな」

周子「はーい...いやぁ事務員とアイドルの二足のわらじは辛いねぇ」

P「その分給料も払ってるだろ?」

周子「まあね、それにこっちはこっちで楽しいよ。裏方がどういう仕事をしてるのかも知れてさ。何事も経験だよねー」

P「そうだな、この経験をしっかりアイドルの仕事に活かしていけよ?」

周子「はーい、しゅーこちゃん頑張りまーす」

P「でもいい加減長いことやって疲れたし、番組終わるまで休憩するか。お茶入れてくるよ」




周子「じゃあ戸棚の一番下の二重底になってるとこにあるお菓子も持ってきてー」

P「分かった...........なんで隠し場所を知ってる」

周子「前に志希ちゃんが匂いで見つけてた」

P「...今度から匂いが漏れないように保管するか........」

P「...............」









      ~~~~ライブの翌日、どこかの喫茶店~~~~~~
早苗「あっ!P君こっちこっち!」

P「どうも片桐さん、お元気そうで何よりです」

早苗「そっちは...うん、前よりは元気そうね」
  「奏ちゃんのライブ見に行ったわよ、なんか上手く言えないけど...すごかった!お姉さん年甲斐もなくはしゃいじゃったわよ」

P「ありがとうございます...で?わざわざ呼び出したんです。話ってそれだけじゃないでしょう?」

早苗「...本題に入るわ」






  「061プロの社長、昨日遺体で見つかったわ」

P「!?」

早苗「部屋から遺書が見つかったわ。会社もなくなり、ネットでも誹謗中傷ばかりで人生に絶望した、とかそんな内容の」
  「だから状況的に自殺だとは思うんだけど...ちょっときな臭いことがあってね」

P「きな臭いこと?」

早苗「上のお偉いさんから捜査を早めに切り上げろって圧力があったみたいなの」
  「正直私が見ても自殺としか言えない状況だったから捜査が切り上げられても不思議ではないんだけど...少し強引すぎな気がするのよね」

P「確かに...わざわざ圧力をかけるような状況でもありませんよね。遺書があったんならほっといても自殺で処理されるだろうに」

早苗「まあ、君が追ってるものとは関係ないかもしれないけど。一応伝えとくわ」

P「...いえ、ありがとうございます。お礼に一杯奢りますよ」

早苗「ほんと!?じゃあそこのお兄さん!とりあえず生中10本!」>カシコマリー!

P「ちょ、ちょっと!一杯って言ったでしょ!」

早苗「うん、だからいっぱい頼んだんじゃない」

P「そういう意味じゃねえよ!」

早苗「なによ、あたしの酒が飲めないっての?」

P「飲むって、俺明日も仕事...てかなんでまだ飲んでないのに出来上がった感じになってるんですか!?」

早苗「P君を待ってる間にに2杯飲んだからね!」

P「あんたこんな大事な話の前に飲んだんすか...」

P「まあ、言わないほうがいいのは確かだよな...」ボソッ

周子「ん?なんか言ったPさん?」

P「いや、何でもない。しょうがねえからあの秘蔵の饅頭も持ってきてやるよ...後でコッソリ食べようと思ってたのに...」

周子「やった♪」









to be continued...

次回予告!

Pとの取引によりついに事務所に自分のラボを用意してもらった志希

志希「事務所の空き部屋を一つ、実験室として貰ったんだー!」

周子「もしかして最近2階から時々異臭がするのって...」

新しいラボを手に入れてテンションが上がった志希は早速Pをモルモットとして実験を開始することに
特に意味のない投薬がPを襲う!

次回!

Chapter8 「Know Maiden,The Bigocean」

志希「次回もお楽しみに!」

Pだったもの「オダノジミニ...」

Chapter7終了したとこで今回はここまで―、今気づいたけど元ネタは『意味のない』じゃなくて『理由のない』でした...やっちまった...

これで物語の3分の1、第一部が終わりました
このペースならこのスレの間に完結...できるでしょうか?(不安)

次回はまた明日の夜、そして少し時間をおいてChapter6,7の補足及びあらすじを投下します

Chapter6と7のあらすじ及び解説(読まなくても問題はないです)

・Chapter6 「Please help my sister!!」
レッスンを抜け出し失踪した志希は美嘉の妹である少女、莉嘉と遭遇
面白そうな気配を感じ取った志希は、奏の仕事を見に行く次いでに莉嘉をスタジオまで案内することに
一方奏は共演している美嘉から何か妙な違和感を感じていた
そして撮影が終わった後、合流した奏と志希、そして志希を追ってきたPは莉嘉からその違和感の正体、美嘉が事務所に酷使され続けていること聞かされる
そして莉嘉の姉を助けてと欲しいという願いを叶えることを811プロは決意するのだった
しかし美嘉は811プロを潰そうと自分の事務所が暗躍していることを知ってしまい....?
サブタイの意味は 莉嘉「お姉ちゃんを助けて!」とそのまんま

『城ケ崎莉嘉』
おなじみ城ケ崎姉妹の妹の方、かわいい。
このssの世界線ではまだアイドルになっていないが、芸能界で活躍する姉を見て憧れは抱いているようだ
しかし、同時に無理な仕事をし続ける姉を心から心配していた
姉の方は一発変換出来るが莉嘉は何故か変換できないのが困りもの

『佐東 円』
唐突なオリキャラ....ではなく、変装した周子
Pと協力し061プロの社長から情報を抜き取った

・Chapter7『Reach for the moon』
重い足取りで自らが所属する事務所、061プロへ向かう美嘉
しかし入り口で彼女を待っていたのは811プロの面々だった
わけのわからないまま商談があるというPたちに連れられて社長室へ向かう
その商談の内容...それは811プロに美嘉を移籍させること
当然061の社長は要求をつっぱねるが、Pは061プロの悪事の証拠を掴んでいた
なんと、社長に近づいたアイドル候補生佐東 円の正体は周子だったのだ!(知ってた)
裁判の証拠には使えないが社長と061Pを破滅させるには十分であることを悟った社長は、渋々美嘉の移籍を認めた
だが当然061プロをこのままで終わらせておくはずもなく、奏のCD記念ライブが終わり次第情報をリーク...
する予定だったのだが、なぜかその前に061プロが倒産する
さらにPは知り合いの警察官、片桐早苗に061プロの社長が自殺したことを聞かされる
しかしアイドル達に余計なショックを与えてはいけないと、その事実をPは胸の中にしまい込むのだった...
サブタイの意味は『月に手を伸ばす』

『城ケ崎 美嘉』
今回で無事に811プロへの移籍に成功
設定を考えていた初期から先輩アイドルとして出すと決まっていたものの、設立したばっかの事務所で先輩として出すには違和感があったので別事務所から移籍させることになった

『061社長』
美嘉の所属していた事務所、061(ワルイ)プロダクションの社長
なんでこんなあからさまに悪徳企業っぽい名前の事務所にしたのか、まったくもって意味不明である
援助だのなんだの誰かと意味深な通話をしていたが、遺書を残して自殺してしまった

『061P』
美嘉を担当していたプロデューサー、美嘉だけでなく他のアイドルにもセクハラをしていた模様
061プロが倒産してからは行方不明

話が長くて今までの話を忘れてしまった場合には、ちょくちょく残してあるこのあらすじを読んでいただければ大まかな話の流れは思い出せるようになってると思います

※補足追加

『片桐 早苗』
みんなご存じ元婦警アイドルのあの人、
このssではまだ警察官で、所属も交通課ではないらしい
Pとは既知の仲のようだが...?
実は準レギュラーだがまともな再登場はまだ先の予定

遅くなりましたがChapter8投下していきます

眼前には無数のサイリウム
私を支えてくれてきたファンが作りだした、青く光る川の流れ

そして背中には、ずっと共に歩んできた仲間たち
これまでも、これからも一緒に階段を駆け上がっていく仲間たち



...うん!どう考えても無敵の布陣だよね!







周子「じゃあみんな、いっくよー!」
  「『青の一番星』!」

P「それじゃあ、周子のCDデビューとLIVE成功を記念してー!」

全員「かんぱーい!」


フレデリカ「湯のみで乾杯ってなんか新鮮ー」

周子「寿司屋だからねー、回る奴だけど」

P「いいだろ回転寿司、こっちのほうが雰囲気あってさ」

志希「あたしあんま日本にいる期間無かったから、むしろ回転寿司の方が新鮮かなー?」
  「ダッドが和食連れてってくれた時も、回らないとこばっかだったし」

奏「でもここに来ると思い出さない?私達の最初のオーディションの事」

周子「そういえば...あの時もく○寿司だったねー。確か美嘉ちゃんに初めてあったもその時だっけ」

美嘉「そうだったねー、あたしのライブバックダンサー決めるオーディションにデビュー前の新人アイドルが合格したって聞いて、気になって見に行ったんだった!」

奏「あの時は、こうして同じ事務所で仕事をするなんて思ってなかったわね」

フレデリカ「じゃあく○寿司が、デュアルフルムーンと美嘉ちゃんの運命の出会い!だね♪」

P「ほんとになぁ...その後落とした名刺がきっかけでフレデリカが、フレデリカの初仕事の最中に志希が」
 「そして右往曲折あって美嘉が加入して...まだ半年くらいだけど、短期間で本当によく濃いのが集まったもんだ」

美嘉「あたしの時はすごかったねー。しゅーこちゃんとプロデューサー、まるでスパイみたいだったし」

P「志希が自白剤を作ってくれたから思ってたより簡単に進んだよ。あの時は青木さんのシゴキのあとすぐ徹夜させて悪かったな」

志希「まあその分の報酬はしっかり貰ってるしね。気にしなくていいよ」

美嘉「報酬?」

志希「事務所の空き部屋を一つ、実験室として貰ったんだー!」

周子「もしかして最近2階から時々異臭がするのって...」

志希「さて、なんのことかなー?」

P「あげといてからなんだが、頼むから法を犯すようなことはやめてくれよ...?」

志希「流石にそんなヘマしたりはしないよ。前の自白剤もちゃんと合法な奴だから、一応」

P「ならいいんだが...」

周子「ていうか、ウチの事務所なんであんなに一杯衣装あったん?」
  「ステージ衣装っぽいやつの他にも学生服とか警察官とか、もはや衣装って言うよりコスプレっぽいのまで色々あったけど...もしかして、Pさんの趣味?」

P「んな訳ないだろ。昔度々知人がこれ着てみて、次はあれ着てって押し付けられてたんだよ」
 「んでプロダクションを立てた時に、もしかしたら役に立つかもって思って事務所に運び込んだんだが...まさか本当に役に立つ時が来るとはな」

美嘉「じゃあ、衣装をくれたその人に感謝しなくちゃね」

P「まぁ、な。ホントにあの人には頭が上がんねぇよ...」

周子「それにしても、この半年くらいで本当にいろんなことがあったよねー」




あたしがPさんにスカウトされてから半年

もう、そんなに経ったんだなぁ

あの時は、変な人に変な話を持ちかけられて、ちょっと面倒だなぁとか思ったもんだけど



(こんな深夜に公園で寝るなんて、どんな不良かと思えば....)

(.....折角可愛く生まれたんだ。どうせなら....)

(ダメだったらダメだったで、スパッとやめてもいいからさ...ちょっと試してみないか?)






もしあの時、Pさんに声をかけられなかったら...

周子「あたし、どうしてたんかなぁ」

美嘉「えっ?」

周子「いや...もしあたしがPさんにスカウトされてなかったら、今頃何してたのかなって」

志希「そういえばあたし、皆がどうやってアイドルになったか知らないなー。興味湧いてきた❤」

美嘉「それ、あたしも気になるな。周子ちゃんがアイドルになった理由」

周子「うーん...あたしはまあ、なり行きかな。実家追い出されてとりあえず東京来て、んでふらふらしてたとこをPさんにスカウトされたんだ」

P「そんでそのまま周子が811プロ初めてのアイドル、且つ初めての従業員になったわけだ」

周子「事務員の仕事のほうもお給料いいし、最悪アイドルとして目が出なくても大丈夫かなーって思ってたけど、まさかCランクまで登ってきちゃうとはねー」
  


そう、あたしのアイドルランクはちょっと前にCランク...メジャーアイドルの領域に足を踏み入れた

今日のCD記念ライブ打ち上げは、その昇進記念パーティも兼ねてる

周子「就職も進学も放り投げて家出ぬくぬくしてたあの時は、こんなの想像できなかったなぁ......人生って何があるか分からないね」

P「ああ...全くだ」

志希「そしてこれからも、まだまだアイドルって未知の世界♪研究のし甲斐があるねフレちゃん?」

フレデリカ「うん、ドクターイチノセとナースミヤモトで、一緒にアイドルの謎を解き明かそうね♪」

志希「うん、あたし達レイジーレイジーで、もっとアイドルの深淵にもぐっちゃおー!」

美嘉「そういえば今度二人はユニット組んでオーディションするんだっけ?」

P「ああ、今度開催される新人アイドル発掘の企画にな」

フレデリカ「そのオーディションに合格すると...なんと!」

志希「有名な作曲家がそのアイドルの為に曲を作ってくれるんだってー!♪」

P「だが報酬も注目も大きい分、倍率も非常に高くなるだろう。これに受かれば楽曲だけじゃなく、そのままランク昇格に直結するからな。参加条件のE,Dランクアイドルほとんどが乗り込んでくるかもしれない」
 「これまで以上に青木さんのレッスンがキツくなると思うから覚悟しとけ。...失踪するなよ?」

志希「えー...でもフレちゃんとレイジレイジーの活動するのは楽しいし、今回は大丈夫!」
  「それに...下も上も魑魅魍魎渦巻くアイドルがいっぱい集まるこのオーディションには、すっごい興味あるしね」

フレデリカ「アタシも、オーディションでどんな子に会えるのか楽しみ♪色んな子と仲良くなれるといいなー♪」

美嘉「あたし達もウカウカしてたら追い越されちゃうかも...頑張らないとね」

P「美嘉の言う通り、アイドル業界っていつどっから超新星が現れるかわかんねえからな」
 「周子と奏も、明日のオーディション、気を付けていけよ?ウチはなんだかんだ指名とかコネで来た仕事も多かったし、他のCランクアイドルよりオーディションを経験してないんだから」

周子「大丈夫だって、今のあたし達、向かうとこ敵なしじゃない?明日のオーディションだってかるーく決めて見せるよ。ねっ奏ちゃん...?」

P「だからそうやって油断してると.......聞いてるか周子?」

周子「いや、奏ちゃんが...」

P「奏?そう言えばさっきから全然喋らな...おいおいなんだその皿の量」

奏「くっ...流石に限界...でもこれだけ弾数があれば、きっと....」

美嘉「うわっ!奏ちゃん流石にこれは食べ過ぎじゃない!?顔色悪いし明らかに無理してるでしょ!」

奏「いいの...これくらいしないと、きっと、当たってくれないから....」

美嘉「当たるって一体...」

周子「...まさか奏ちゃん、びっ○らポンの為にそこまで...?」

P「びっ○らポンの何がお前をそこまで駆り立てるんだよ...」






しかし奏ちゃんの検討虚しく、結局何一つ当たらなかった...


奏「なんでよ...」

速水奏のウワサ

・びっく○ポンは宿敵らしい

突然だけど、ロトカ・ボルテラ方程式というものをみなさんはご存じだろうか
いや、引用したあたしも詳しいことは覚えてないんだけどさ.....まあ餌と捕食者は常に波打つように増減し続けて安定することはないって、そんな感じの話

...そう、ロトカ・ボルテラ方程式の様に、どんな勢いも決して上がり続ける事はない。
必ず、どこかで落ちるタイミングがある。
でもそんなの、方程式云々が無くたって18年も生きてきた間にとっくに気づいていた。
というか、そんな事は誰だって気づく常識の様なものなんだろう


でも、あたしは慢心していたのかもしれない

初めてのオーディションを突破してからずっとブレーキをかけてこなかったからか、あたしはそんな常識をすっかり忘れていた


破竹の勢いだって、竹を割った鉈が地面に落ちれば止まるのだということを

1位 トライアドプリムス ★×27 010プロ

2位 NO TITLE  ★×13 WESTプロ

3位 デュアルフルムーン ★×3  811プロ
       ・
       ・

       ・ 
       ・   





        Chapter8 「Know Maiden,The Bigocean 」



奏「...惨敗、だったわね」

周子「......」

P「...ッ、すまない!俺も、どう指示すればいいか分からなかった」


奏ちゃんの言う通り、Cランクに上がって初めてのオーディションで、あたし達は惨敗を喫した
オーディションを甘く見ていたわけじゃない。そのはず。
だけど、どこか楽観視していたのかもしれない


デュアルフルムーンは今まで負け知らずの無敗ユニット
だから今回だって、この勢いのままもっともっと突き進める。
...そういった、油断はあったのかもしれない


でも、今日の対戦相手を見て、あたしはまだまだ井の中の蛙だったことに気付いた

周子「トライアドプリムスは...正直、別次元だった」

奏「そうね...私達が取れた★は、まだ心に余裕をもてていた第一審査の3つだけ。その後は...」



第二審査...ううん、第一審査の途中から焦りを感じた私達は、その後調子を崩しまくり。
結局、最初の数分以降審査員の目があたしたちに向くことはなかった

P「010プロダクション...アイドル業界において最大手の一角の事務所...事務所内で選抜が行われるような厳しい環境だ。だからこそ、そこで育つアイドルは皆一線級の魅力を持つ...」
 「でも、010プロだけじゃない。2位のWESTプロのユニットも、トラプリには及ばずとも俺たちじゃ相手にならないほどの実力だった。トラプリに差をつけられようと、焦らず自分たちのペースを維持できていた。そしてきっとこのランクには...」

奏「これ程のレベルのアイドルが山のようにいるのでしょうね...」

周子「.....」

P「周子、あまり気を落とすな、まだまだこれから」

周子「分かってる、大丈夫だよPさん」
  「まだ一度負けただけ、まだアイドルそのものが終わったわけじゃないものね」

P「お、おう...大丈夫みたいだな」

奏「私も、今回のオーディションで自分の反省点が見えたわ。そこを直して、次はきっと勝つ」

P「よし、じゃあ事務所に戻って反省会しよう。荷物纏めとけ」





Pさんに言われた通り、帰り支度をしようとしたら....

???「P君、久しぶりですね」

P「えっ...貴方は!?」




 



P「...お久しぶりです、ちひろさん」

周子「Pさんの知り合い?」

P「まあな、010プロに再就職したとは聞いてたけど...もしかしてトラプリのプロデューサーに?」

ちひろ「いいえ、ただの事務員です。ただ今日はトラプリを担当しているプロデューサーが他の現場の対応で忙しくて、たまたま手が空いていた私が送迎をすることになったの」

P「そう、ですか.....」

ちひろ「早苗ちゃんから貴方が担当している子の話をちらっと聞いたわ、なかなか面白い子達じゃない」

P「ありがとうございます...それじゃ俺たちは反省会があるのでこれで。行くぞ、二人とも」

奏「あら、いいの?折角久しぶりに再会したんなら少しくらい話していっても」

P「いや、いい」

ちひろ「つれないですね...まあいいです。じゃあ帰る前に一つ、トラプリの皆から811プロに会いに行くなら伝えてほしいと一つ伝言を預かってます」
   「『次に会える時は、期待してる』って」

周子「!」

ちひろ「正直、今日は経験不足が目立ったけど、最初の数分の間は彼女たちも何か感じるものがあったようです。だから、これからに期待してるそうですよ?」

周子「そう...なんだ」

奏「なら、ありがとうって伝えておいて。きっと次は貴方たちをもっと楽しませられるよう、自分自身を鍛え上げていくわ」

ちひろ「分かりました、伝えておきますね。それじゃあ」

そう言って、ちひろさんは立ち去っていった

P「俺たちも行くぞ、ちゃんと宣言通り、次は勝てるように、な」

周子「...うん!」

今日、あたしはアイドル業界という海の広さを知った。








でも、まだ知ったのは広さだけ

井戸の中を飛び出したばかりの未熟なあたしは、まだ海の恐ろしさを知らなかった。

この大きな海に対して、自分がどれだけちっぽけな存在なのかを、あたしはまだ知らなかった



今にもあたしを飲み込まんとする荒波にどうやって抗えばいいのか、あたしは分からなかったんだ

周子「ん...朝?」

いつもの餡子の甘い匂いで、あたしは目が覚めた

家の和菓子屋の伝統の餡子、今朝もお父さんが仕込んでいるのだろう









.....いつもの、餡子?

周子「あれ、アパートは...あたし、なんでここに?」
  
周子母「こら周子!あんたいつまで寝てんの!早く起きて下りてらっしゃい!」

周子「お、お母さん、811プロは?なんであたし実家に、上京してアイドルやってたはずじゃ」

周子母「はあ?あんたがアイドル?まだ寝ぼけてるの?」
   「早く起きて朝ご飯食べちゃいなさいよ、お母さんお父さんの手伝いに行くから」




寝ぼけてる...あたしが?

周子「全部、全部夢だったの?そんな...いやだ...」





811プロの皆とのつながりも、アイドルとしての思い出も、ちゃんと胸に残ってるのに
それが全部、嘘だったたなんて。そんなの、そんなの!







周子「嫌ぁ!!」ガバッ

ベッドから飛び起きると、見慣れた壁に見慣れた天井に狭い部屋
あたしのアパートそのままの光景が広がっていた

周子「夢...そうか、あっちが夢...良かった」




でも、もしアイドルやめることになったら...
さっきまでの夢が、現実になってしまう...?





周子「勝たなきゃ...次は絶対....」

あたし達は経験不足を解消すべく、数日後すぐ別のオーディションへと参加した

前回、自分たちの実力がまだまだ足りていないということを知ったあたしたちは、今回のオーディションに向けてこの数日の間ずっと特訓に励んでいた

オーディションの内容から対策を練り、万全の状態でオーディションへと臨んだ

そのおかげか、デュアルフルムーンは第2審査を終えた時点で★15を獲得していた

2位の★11に大差を付けることはできていないけど、このまま順調に行けば1位を守り続けられるだろう




...でも、油断はしない

拮抗している以上、いつどこで抜き返されるかわからないし、最後まで集中して挑む
今度こそヘマはしない、絶対に負けない

そう、心に決めていたんだ

だから、なのかな

負けたくない、その一心で、『楽しむ』って事を忘れちゃってたのは

それで、あたしの心にはゆとりってもんがなくなっていた



だから、あんな事態を起こしてしまった

第三審査中盤に差し掛かる頃、あたし達のすぐ後ろ、2位に食らい付いていたユニットが急にペースを上げ始めた

ウソっ!?まだあんな底力が!?それともここまで隠してたっていうの!?

...ヤバイ、審査員の目が向こうに流れ始めた
このままじゃ...なんとか、なんとかしないと!

そう思い、あたしは少しでも印象を強くしようと少しづつ前へと進み始めた
このまま、何とか逃げ切る!その一心を抱えたまま、最後のアピールへと近づいた、その時








P「ッマズイ!?止まれ周子!」

周子「えっ!?」

奏「きゃっ!?」

周子「しまっ!うわぁ!?」




Pさんの制止する叫び声が聞こえた瞬間、前に出過ぎたあたしは奏ちゃんとぶつかり転倒してしまった

結局最後の最後で逆転され、あたし達は連敗を喫した

P「負けた...な」

奏「ごめんなさい周子...私、気づかなく『やめて』」

P「...しゅう『やめて!』」

周子「Pさん、奏ちゃん、気ぃ遣わないで正直に言って...」
  「今回の負けはあたしのせい...そうでしょ?」

P「ッ!」

奏「そんなことない...だから、」








P「勝てた、オーディションだった」

奏「プロデューサーさん!?」


プロデューサーさん!?何言ってるの!?
これ以上周子の心を傷つけるつもり!?


P「周子、お前は最後勝ちを急いで一緒に奏が躍っていることが頭から抜けてただろ?2位の動向に気を取られ過ぎて焦って、十分なパフォーマンスができなくなっていた。」
 「正直なところ、最後の接触がなければ、あのまま逃げ切れた可能性は高い」

周子「ッ!!」

奏「プロデューサーさん!」





周子「!.....ごめん!」ダッ!

奏「あっ、待って周子!」





制止の声も虚しく、周子は走り去ってしまった

奏「ッ!プロデューサーさん!なんであんな事言ったの!?」

P「...周子が、そう望んだだろ」

奏「でも!なんであんな責めるようなことっ『奏!』!?」

P「もし、逆だったら...お前が失敗した立場だったらって考えろ......」

奏「!」 






P「自分の失敗で仲間が負けて、自分が敗因だって痛いほど自覚しちまってるとき...そんな時に、足を引っ張ってしまったその本人に情けをかけられたら、どれだけ惨めな気持ちになるかを考えろ!」

奏「それは...」



確かに、もし立場が逆で、私が足を引っ張ってしまった周子に慰められたら
...きっと、凄く申し訳なくなって、自分がもっと許せなくなるだろう



P「優しさと甘さは違うんだ...ただドンマイ、ドンマイと慰める為に言った言葉が、余計にそいつを追い詰める刃になることもあるんだよ...」

奏「でも、あれじゃフォローにもなってないわ!」

P「...分かってる、少し言葉を選ばなさ過ぎた。それに今日の周子のミスも、元はといえば俺のミスでもある」
 「だから...周子の事は、俺に任せろ。こんなとこで周子を終わらせりゃしないさ」

奏「...わかった、でももし周子がこのまま潰れるようなことがあったら....許さないから」

P「ああ...周子は、俺が責任もって必ず連れ戻す!」

あのまましばらく必死走り続けた後、あたしは逃げるように自分の家へと帰ってきていた

家の隅で、ずっと動けず、蹲っていた


周子「グスッ...ヒック...あたしの...グスッ」
  「あたしの...せいで...奏ちゃん...」


今日の失敗が、頭から離れない

まるで動画サイトのループ再生のように、ずっと、ずっと、頭の中であの瞬間が再生され続けていた

18年の人生、かつて味わったことのない苦しみが、今私の中で回り巡っていた





そんな絶望の中、ドンドンと、煩く玄関のドアを叩く音が鳴り響いた

P「周子、いるんだろ」






それは、確かに理解不能な苦しみに身もだえるあたしに差し伸べられた救いの声だったけど
その声の主と今、あたしは顔を合わせたくなかった......








to be continued...

次回予告

これは、罰だろうか
今まで一度だって本気になって生きてこなかった、そんなどうしようもないあたしへの罰

なら......


周子「あたしアイドル、辞めるから」


ねぇ?そうすれば、文句ないでしょ?


次回
Chapter9 「Myself newly」

Chapter8終了したところで今回はここまで―
明日もまた遅くなりそうです...

某まとめサイトにまとめられていて有り難いと思う反面、20話超える予定なのに一話ずつまとめていたらカテゴリ検索結果でとんでもなく邪魔なのでは?と思う今日この頃
でも今までどこまで伏線張ったとかを自分で確認するときにとても便利なのは確かなのでやっぱまとめてもらえるのは有り難いです


まだまだ未熟な身ゆえにまとめサイトの方で手厳しい感想もよくいただきますが、すべて真摯に受け止め少しずつ良い作品が書けるように精進していきたいと思います!

とりあえず現状完成しているChapter20を投下するまではエタラず投下できるようになんとか時間を作れるよう努力しようと思います

それでは遅くなりましたがChapter9、投下していきたいと思います

周子「帰って、帰ってよ...今は一人にして」

P「そりゃできない相談だ。女の子が一人で蹲って泣いてるのを見過ごすわけにゃあいかない」

周子「やめてよ!今は...誰とも顔合わせたくない!合わせられないよ...」

P「じゃあ、扉越しでいい。お前が泣き止むまでここにいるから、ちょっと話そうぜ」

周子「うるさい!話すことなんてないよっ!」

P「そんなことないだろう、そんなに泣きじゃくって、何もないなんてことはない」

周子「ないったらないんだから!」

P「じゃあ話してくれるまででここで待つ」

周子「やめてっ!帰って!なんであたしにそこまで構うのさ!」

P「俺がお前のプロデューサーだからだッ!」

周子「...じゃあ、あたしアイドル、辞めるから...それならもう、Pさんはあたしとは無関係でしょ?」








P「ダメだ」

周子「えっ?」

P「お前がアイドルをやめるのは、俺が認めない」

周子「そんな、前と言ってることが違うじゃん!あの時はダメだったらスパッとやめていいって!」

P「...周子、俺はさ、自分がプロデュースする子には、『アイドル』になったことを後悔してほしくないんだ。どんな子でもいつかはアイドルを引退する日が来る。その時に、俺はお前たちに『アイドルやってて良かった』って言ってほしいんだ」
 
 「アイドルになったことを後悔しないために、結果的に辞めるしかないんならしょうがない。その時は俺も背中を押すさ。でも、今アイドルをやめたら周子、お前は絶対アイドルになったことを後悔するだろ?それを分かってて認めることは出来ない」

周子「後悔って、あたしは!」

P「なんだ?」

周子「...あたしは、怖いの。また失敗するのが、奏ちゃんや、皆の足を引っ張っちゃって、そのせいで負けるのが」
  「そうやって、オーディションに勝てなくなって、皆から見放されるのが、すごく怖い...!こんな恐ろしさ、今まで生きてて感じたことないよ...だから、そんな未来が来る前に、あたしはここで歩くのをやめるの」
  
P 「................」

周子「それに、アイドルだってなり行きで流されてやってただけで、本気でやりたいわけじゃない!そんな適当な奴と皆が一緒に仕事していいわけないじゃん!」
  「だから...こんなテキトーなあたしなんてほっといて、さっさと消えてよ!」
  「お願い...お願いだから...」

   



              P「お前らしくねぇな」





周子「...はぁ?」

P「負けるのが怖いとか、足引っ張るのが怖いとか、いつもの気まぐれ自由人な周子らしくないってんだよ」

周子「あたしらしく...ない?」

P「なあ周子、ちょっと外出て来いよ。あの時みたいに、そこの公園で星でも見ながら話そうぜ」
 「ていうか、出てこないんなら出てくるまでここに居座るぞ」

周子「P、さん...女の子の部屋の前に居座る男とか、それすっごい変態だよ.....」

P「そうだな、だから通報される前に早く出てきてくれ」

周子「...分かったよ」

 ====公園====


Pさんと一緒に、あたしは公園のベンチに座って、Pさんが買ってきた缶コーヒーを口にしていた

P「懐かしいなぁ、あの時、お前このベンチで寝転がってたんだよな」

周子「そんなことも、あったね....」

     ~~~半年前~~~



やばい...もう東京にいられるお金がない
お見合いが嫌で東京に逃げてきて一週間、もう貯金ほとんど使っちゃった
これからどうしよっかな...おとなしく帰って言われた通りお見合いする?


...結局、それが一番いいのかもしれない
そのまま流されて実家継いで、親に決められた人と適当に過ごすのも悪くはない選択肢なんだろう

周子「でも、なんだかなぁ...」

そういう人生を生きる上で、あたしがあたしである意味はあるんだろうか?
生まれてから一度も本気になったことなんてなくて、ただ流れに身を任せてゆるーく生きて、ゆるーく死ぬ

なあなあの人生にふと嫌気が刺していた頃、『働かないんならお見合いしてウチ継いでくれ』って迫られて
別に実家が嫌いだったわけじゃないんだけど、知らない人と結婚前提に付き合うってのが気に食わなくて、つい親と喧嘩しちゃった
そうしたら『じゃあ本気出して自分の道探して来い!!』って追い出されて、とりあえず溜まってたお年玉とかバイト代をかき集めて東京へ来て...

でも、そう簡単に運命の出会いなんてあるはずもなく、やりたいことも見つからず普通に東京で遊んで過ごして一週間、とうとう宿代も厳しくなってきた
もう! 東京ってなにもかも高いもんばっかなんだから!

でも、お金ないから大人しく帰るって選択肢も取りたくないなあ...

周子「バイト探してとりあえず延命...住所不定の家出娘なんて雇ってくれるとこないかぁ...」


所詮一人で生きる力のないあたしは、自由に生きることなんてできないんだろうか


周子「まあいいや、取り合えず今日はここで野宿して、また明日考えよう」


公園の硬いベンチに不満を抱きつつも、仕方ないと割り切って眠りに付こうとしたその時










???「若いくせにこんな深夜に公園で寝るなんて、どんな不良かと思えば....なかなか別嬪じゃないか」

あたしの眠りは、帽子とサングラスで顔を隠した不審者に妨げられた

周子「んあ?お兄さん誰?」


正直すっごく怪しいし、こんな夜中に女の子に声かけるとかほぼ不審者でしょ
...でも、不思議と悪い人ではない...様な気はする


P「ああ、失礼。俺はこういうもんでね。ほれ、名刺だ」

周子「ん...芸能事務所811プロダクション、社長兼プロデューサーP?」

P「そうだ、しかもその名刺、作ってから初めて渡した1枚だ。大事にしてくれよ」

周子「ふーん...それで?お兄さんはこんなかよわい女の子なしゅーこちゃんに何の用なの?」

P「そりゃもちろん、スカウトさ。しゅーこちゃんって言ったか?」


 「アイドル、やってみないか?」

周子「アイドル?」


アイドルって、あれやんな
テレビとかでよく見る、ステージとかで歌って踊るお人形さんみたいにキレ―な人達
それを、あたしが?


P「ああ、ウチこの前できたばっかの事務所で、まだ所属アイドル0人なんだ」

周子「それであたしにアイドルになって欲しいって事?」


アイドルかぁ
そこまで興味があるわけじゃないなぁ...


周子「別にあたしじゃなくてもいいんじゃない?」

P「そうはいかない、君からはアイドルの才能を感じるからな」

周子「才能?」

P「ああ、一目見て思ったよ」

周子「ふーん....」



なんか、ナンパっぽいセリフやなー...褒められて悪い気はしないんやけど...
食い扶持が向こうからやってきてくれたのは有り難いけど、でもなぁ...

P「ところで...なんでこんなとこで寝てたんだ?家帰らないの?」

周子「家からは追い出されちゃったー。ホテル代もなくなっちゃったし、今日はここで野宿しよっかなぁて」

P「なっ!?家なし!?」

周子「そっ、だから悪いけどアイドルなんてやってる暇ないし、他をあたってちょーだいな」



折角声をかけてくれたお兄さんには申し訳ないけど、あたしみたいな遊び人にはアイドルなんて向いてない
そう思ってさっさと断ろうとした...のだけど

P「...じゃあ、住むとこあればアイドルになってくれるか?」

周子「えっ?」

P「俺の今住んでるアパート、ちょうど隣の部屋の人が引っ越して空室になってんだよ。ウチでアイドルやってくれるんなら大家さんに紹介するし、頭金も肩代わりしてやるよ」

周子「....マジ?」


アイドルになれば、とりあえず住むとこが手に入る...?
めっちゃくちゃいい条件、だけど...

周子「でも、アイドルって売れるまで収入安定しないし、そもそも売れるかわかんないでしょ?頭金肩代わりしてもらっても、収入なけりゃその後がなぁ...」

P「なら、ついでに事務員としても雇うよ。それならアイドルとして目が出てない時期も普通に生活するくらいはできるだろう」
 「ウチ今ホントに俺しかいないからさ。事務仕事が溜まりに溜まるわで、ちょうどそっちの方の人手も欲しかったところなんだよ」

周子「ホント?ちなみにお給料はどのくらい?ホントに生活費出せるくらい貰えるの?」


そう尋ねると、お兄さんはスマホで何やら計算を始めた


P「そうだな...東京の今の相場よくわかんないけど、大体こんなもんかな?」

周子「どれどれ...えっ!?高っ!?」


すごい...街で見たバイト募集の倍はあるじゃん!

P「金の卵を捕まえるならこれくらいは必要経費さ。折角可愛く生まれたんだし、どうせならあの星みたいに一発綺麗に輝いてみたくないか?」

周子「星?こんな都会に星なんて...あっ」


お兄さんが指刺す先には、確かに一つだけ光る星があった


P「ああいうの、一番星って言うのかな?こんな都会でも見えるもんなんだなぁ」



ビルの青い光に負けずに一つだけきらきらと輝く星

そんな我儘な星を見てると、なんだか背中を押されてるみたいで
"もっと自分に挑戦して生きろ"って、発破をかけられてる感覚になった



『アイドル』かぁ
ちょっと試してみても、いいのかもしれないな......

P「ダメだったらダメだったで、スパッとやめてもいいからさ...ちょっと試してみないか?」



住むとこ見つけて、お給金良くて、ワンチャンアイドルになれる、か...

ちょっと胡散臭いような気がするけど、これは...受けない手、ないな

一応ダメそうだったら辞めてもいいって言ってくれてるし、とりあえずの延命処置としてならこれ以上ウマい話もないだろう



周子「分かった、あたし、アイドルやってみるよ。よろしくねお兄さん。Pさんって名前であってたっけ?」

P「おう、君は...」

周子「塩見 周子。周子でいいよ、あたしもPさんって呼ぶからさ」

P「わかった、じゃあさっさとアパートの契約いくか。こんなとこで所属アイドルに寝てもらわれたら困るしな」

周子「了解!口利きよろしくね」

~~~現在~~~~

周子「あの時はホントに、アイドルとして輝いてる今の自分が想像できなかったなぁ」

P「でも、今こうしてメジャーアイドルとして頑張ってる。それはもう夢物語じゃなくて、事実だ」

周子「うん。でもそんなの、たまたま上手くいってただけで...あたし、適当だから、本気でアイドルやってなかったから...」

P「...ところで周子、これ見てくれないか?」

周子「なに?...カメラ?」

P「ああカメラだ、でも見てほしいのは中身の方」


中身の方...?
映像って事?


P「んじゃ、再生するぞ...ほれ」


Pさんがボタンを押すと同時に映像が流れ始める

これは...ウチのレッスン室?
レッスンしてるのは...志希ちゃんとフレちゃんだ。うわキツそー!二人とも息死んでんじゃん!
美嘉ちゃんも青木さんと協力して志希ちゃんとフレちゃんにアドバイスしてる。美嘉ちゃん、先生役似合ってるなぁ。あたしたちの中で一番経験豊富だろうし、適任なんやろなぁ





凄いなぁ、いつも以上に皆気合入ってる
皆本気で、次のオーディション狙いに行ってるんだ...

しばらく見ていると、3人がレッスンを中断してカメラに近よってきた


美嘉『やっほー周子ちゃん★アタシ達のレッスン見てくれた?』

志希『見ての通りあたし達、今地獄の猛特訓で死んじゃいそうでーす...青木さんと美嘉ちゃん、すっごくキツいんだから』

フレデリカ『プロデューサーさんにも、このままじゃオーディション合格ははキビシー!って言われちゃった』

志希『でも、無理だとは言われなかったからさ...それならあたし達、周子ちゃんに追いつくために頑張らなきゃって思えるんだ』

フレデリカ『だから、周子ちゃんはこの先であたし達を待っててほしいな♪周子ちゃんと同じ目線で一緒に仕事するのが、今のアタシの目標だから!』

美嘉『周子ちゃん、061プロの時、あたしは周子ちゃんに助けられたからさ...だからあたしも先輩アイドルとして、周子ちゃんの支えになってあげたい』
  『それに、奏ちゃんも』

美嘉ちゃんが奏ちゃんの名前を呼ぶと、カメラが死角にいたらしい奏ちゃんを映した
カメラに映った奏ちゃんは、他の皆と同じくらいレッスンに集中していた

奏ちゃんがカメラの方へ向き直る

奏『周子、私、またあなたが先走っちゃってもフォローできるよう...ううん、そんなアクシデントすらパフォーマンスに変えて見せるわ』
 『貴方がちゃんと安心して背中を預けられるよう頑張るから...だから、待ってて』
 『ほら、プロデューサーさん、貴方からも』

すると、カメラが奏ちゃんの手に渡されて、映像には今まで皆を撮影していたらしいPさんが映る

P『周子、確かに今日の負けはお前の焦りから出たミスが敗因だ。でもあのミスも、元はといえば俺のせいだ』

周子「Pさん.....?」

P『俺は今までお前らを上に上にと押し上げることばかりで、お前らに経験を積ませるのを怠った。最初のオーディション以来、危ない橋を渡らせず、負ける経験ってのを積ませてこなかった。だから、いざ負けた時にそれを引きずらせてしまったんだな』
 『本当に、すまなかった。俺もプロデューサーとして成長することを誓う、だから』
 『俺に、もう一度、いや一度だけなんていわずに最後まで、『アイドル』の塩見周子の姿を見せてくれ』








待ってて...か
みんな、あたしが帰ってくるって信じてくれてるんだ...
こんなあたしの事も、信じてくれてるんだ...!

周子「皆...」

P「なあ周子、さっきも部屋の前で話した時も思ったけどさ、本気でやってなかったってのはぶっちゃけ嘘だろ?」

周子「え?」

P「あのアパート防音しっかりしてないからさ。前にトラプリに負けて以来、ずっと聞こえてきてたよ」
 「お前が泣きじゃくる声も、事務所から帰ってきた後も必死に歌って練習してたことも」

周子「!!」

P「負けることが怖くなったのは、お前が本気でアイドルやってたからだよ」






あたしが...本気だった?

P「周子、オーディションで負けた時、悲しいとか、申し訳ないとかの他に抱いたものがあったろ?それもあの時抱いた感情で一番大きいもの」
 「吐き出してみな。言葉にして吐き出せば、少しはスッキリするぞ」



あの時、抱いた感情...
そうだ、あの時、あたしの心をぐるぐると暴れ回ってたもの、あれは....







周子「くやし...かった」

周子「初めてオーディションに負けて、自分がまだまだちっぽけな存在だったことに気付いて、自分なら出来ると思ってた自分が恥ずかしくって!でも!」
  
  「それ以上に、悔しかった!あの時もっとこうしておけばなんて事ばかり考えて、ああしとけば勝てたかもしれないって後悔して!」
  
  「生まれて初めて本気になって、その上で負ける側になって...それでようやく分かったんだ...!本気でやって負けたらすごい悔しいんだって、ようやく、分かったの...!」
  
  「あたし、本気でぶつかったのに!全然、全然届かなくてっ!それが、本当に悔しかった!」

P「そうか...でも大丈夫」
 「悔しいって思えたんなら...その心がある限り、お前はまだ戦えるさ...」

周子「P、さん.....あたし、あたし....!」


  








「あ、ああ....うあああああああああああああああああああん!!!!!」

そうか、あたし、アイドルに本気になってたんだ


やっと、見つけられた....




あたしがあたしらしく生きるための、あたし自身の道を

             




               Chapter9 「Myself newly」





P「落ち着いたか?」

周子「うん...ありがと、Pさん」

P「いいんだよ、俺はお前のプロデューサーなんだから」

周子「ねぇ、Pさん。あたし決めたよ。あたし、本気でトップアイドルを目指す。あたしのペースであたしらしく、新しい『塩見 周子』に生まれ変わるから!」 
  「だから、ちゃんと傍で見てて。Pさんが選んだあたしが、どんな夜空でも輝ける一番星になる所を!」

次の日からあたしは、本気でアイドル活動に励み始めた

レッスンにも集中して臨んで、色んなオーディションに応募した

もちろん全部に合格できたわけじゃく、負けた時はその都度本気で悔しくなった
でも、その日の内に反省点を考えて、克服できるように努力した

その間事務仕事を任せたPさんは


「だ、大丈夫...必要経費だから...」


と書類の闇にのまれそうになってたけど、あたしがオーディションで合格したときは一緒になって喜んで、落ちた時は一緒にどこがダメだったかを考察してくれた


奏ちゃん達ともお互い助けあって、自分たちの技術を高め合っていった


そんな仲間たちと過ごす忙しく大変な日々が、とても楽しかった!
アイドルになる前、本気になれることがなかったあの頃のあたしには無かったものが、今確かにここにあった

そして今日、あたしはとある番組のレギュラーを決めるオーディションに参加している


あたしが受ける長寿のグルメ番組は、定期的にクビレースなるもので成績の悪い番組レギュラーが降板させられるのが特徴の番組
今回は、その開いたただ一つの枠を埋めるためのオーディション
これに合格すれば、あたしは遂にテレビ番組のレギュラーの座を手に入れることができる

でももちろん、そのハードルは高い
なにせ今回のオーディションにはあの時あたしと奏ちゃんが完敗したトライアドプリムス
その一角、北条加蓮ちゃんも参加していた

加蓮「あっ!あんたもしかしてデュアルフルムーンの周子ちゃん?」

周子「おー久しぶり!あたしのこと覚えてくれてたんだね」

加蓮「前のオーディションで結構印象に残ってたからね、途中調子落ちちゃったみたいだけど」

周子「あはは...あの時は見苦しいとこ見せちゃったね」

加蓮「でも...期待通り、今日はあの時とは違うみたいじゃん?」

周子「もちろん!あれから色々自分の事見つめなおしたからね。だから」

加蓮「でも、あたしも本気でトップアイドル目指すからさ」




  「今日(も)は絶対、あたしが勝つよ」





周子「...じゃあ」

加蓮「本番で会おうね」

今回はグルメ番組のオーディションだけど、形式はLIVEバトル形式で行われる

いつもこの手のオーディションの時は指示を出しについてきてくれるPさんは、別会場で行われてる志希ちゃんとフレちゃんのユニット、『レイジーレイジー』の大一番のほうへ行っているからいない

でも、大丈夫。今日まで積み重ねてきた経験と、一緒に過ごした仲間たちとの絆が、あたしの心を支えてくれている

だから今日も、いつも通り



周子「あたしらしく、本気で行くとしますか!」

             第2審査結果
   塩見周子  北条加蓮  モブ子1  モブ子2 モブ子3 モブ子4
Da    ☆×2    ☆×1  ☆×1    ☆×1  ☆×0   ☆×0

Vi    ☆×1    ☆×3  ☆×1    ☆×0  ☆×0   ☆×0

Vo    ☆×2    ☆×2  ☆×0    ☆×0  ☆×0   ☆×1
          
現在合計 ☆×10    ☆×12  ☆×4    ☆×3  ☆×0   ☆×1





第2審査が終わった時点であたしは現在2位、加蓮ちゃんに☆2つ分リードされていて、ちょっとピンチかな
それに、次の審査次第では他の子達にも追い抜かれる可能性もある
なんとかダンスやボーカルでは食らいつけているけど、加蓮ちゃんのヴィジュアル演技は正直あたしとは別次元だ
なんとか☆を1個もぎ取るのが精いっぱい、ダンスやヴォーカルもあたしが抜きんでてるわけじゃない以上、このままだと勝つのは厳しいだろう

さてどうすっかなっと考えていると、スマホの着信音が小さく鳴り響いた
確認してみると、事務所のLINEグループに一枚の写真がアップされていた

志希ちゃんとフレちゃんのVサイン
そして下のほうにはメッセージが書いてあった

『逆境の時ほど、楽しく笑え!』

周子「...あはっ!粋なことしてくれるじゃん!」

そうだったそうだった!最初のオーディションの時もそんな事と言ってたね!

周子「しゅーこちゃんのしたことが、悩んだ顔なんてあたしらしくなかったね!」



あたしはあたしらしく、笑ってアイドルを全力で楽しむ!
それが一番大事なことなんだから!

第3審査、やっぱり加蓮ちゃんのスキルは凄い
特にVi、ここに来て第1第2審査の時とは比べ物にならない程圧倒的なパフォーマンスだ、あたしの今の技術じゃあのレベルの物はちょっと無理かな


だから、Viの星はあげるね、加蓮ちゃん
その代わり....


周子(DaとVoは、もらっていくよ!)


あたしは、あたしのペースで、あたしらしいパフォーマンスを!


弾けろ!あの時誓った夢!本気しゅーこちゃんの魂!
あたし、本気でトップアイドル目指すんだから!こんなとこじゃ止まらないよ!
  



今日の一番星は、あたしだ!

志希「プロデューサー、早く早く!」

フレデリカ「周子ちゃんのオーディション終わっちゃうよ?」

P「待て待て、走ったら危ないだろ...ここだ」

志希「見て!もう最後の最後みたいだよ!」

フレデリカ「ホント!?周子ちゃんはどれ...あっ...」







フレデリカ「綺麗...」

志希「凄い、今の、周子ちゃんだよね?」

P「当然だ、俺たちが周子を見間違えるはずないだろう?」

フレデリカ「周子ちゃん、まるでお星さまみたいで...すっごく綺麗だった」



P「周子...ホントに、お前をスカウトできてよかった...」

     最終結果
   塩見周子  北条加蓮  
Da    ☆×5    ☆×0

 
Vi    ☆×0    ☆×5  

Vo    ☆×4    ☆×1 
          
最終合計 ☆×19    ☆×18

周子「はぁ...はぁ...」

19対、18

あたしの方が、一つ、多い




...勝った

あたし、加蓮ちゃんに、勝てたんだ!

周子「やった....やったー!!」

フレデリカ「周子ちゃん!」

志希「やったー!おめでと―周子ちゃん!」

周子「えっ、フレちゃんに志希ちゃん!?なんでここに?」

P「向こうのオーディションが終わった後、周子のオーディションを見に行きたいってゴネだしてな。急いで車飛ばしてきたんだ」

周子「そうなんだ...ありがとう。そして、おめでとう!二人も合格したんでしょ?」

志希「うん!すっごい白熱して、すっごい楽しかった!」

フレデリカ「それに、お友達もいっぱい出来たんだ!みんな凄い子ばっかりなんだよ!」

志希「これできっとあたし達もCランクになれる、周子ちゃんと肩を並べられるよ!」

P「それだけじゃない、美嘉と奏も、無事ドラマのオーディションに合格したらしい」
 「一話だけだがエキストラじゃなくて役名のあるちゃんとした役だ。皆、駒を一歩前に進めたな」

周子「そうか...でも志希ちゃん、フレちゃん」
  「あたし、もうちょっと先に行くからさ。もう少し、追いかけてきなよ!待ってるから!」

志希フレ「うん!」

加蓮「あー、お取込み中のとこみたいだけどちょっといいかな?周子ちゃんに会いに来たんだけど」

P「あっ、どうぞどうぞ」

周子「加蓮ちゃん...あたし、ちゃんと加蓮ちゃん達の期待に応えられた?」

加蓮「うん...でも、これはこれでちょー悔しい!だからさ周子ちゃん」

  「次はあたしが、あたし達トライアドプリムスが勝つから、それまで待っててよ」

周子「...うん!」

加蓮「それじゃ、またどこかで!」

P「大物に目をつけられちまったな、周子?」

周子「うん...だから加蓮ちゃんがあたしをちゃんと追いかけたくなるように、もっと頑張らなきゃね!」
  「...それと、Pさんにちゃんと言っておかなきゃいけないことがあるんだ」

P「なんだ?」



周子「Pさん!」






あたしをアイドルにしてくれて、本当にありがとう!  

あれから2週間が経った

今あたし達は、事務所でレイジーレイジー昇格パーティをやっている

志希ちゃんとフレちゃんはユニット曲「クレイジークレイジー」のヒットを理由に、二人そろってCランクに昇格

奏ちゃんと美嘉ちゃんも、ドラマの出演やモデルの仕事なんかで着々とファンを増やしてるみたい。それに今度は、ドラマのメインキャラ選抜のオーディションにも出るらしい



そして、あたしは...

P「では志希とフレデリカ、そして周子のランク昇格を記念してー!」

全員「かんぱーい!」




奏「3人とも、おめでとう」

美嘉「おめでとう!周子ちゃんにはとうとう追い抜かされちゃったね」

P「我がプロダクション初のアイドルが811プロ史上初!Bランクアイドルとなった!」
 「Bランクといえばもう一流!知らないほう人間の方が少ないアイドルだ!やっぱり俺の目に狂いはなかった!」

周子「いやーみんな、どうもありがとう!」

志希「あたし達も、この勢いに乗ってまたすぐ追いつくからさ!」

フレデリカ「勢い余ったアタシ達を抱きとめる準備して待っててね、周子ちゃん♪」

美嘉「あたしと奏ちゃんも、次のオーディション絶対合格して追いつくから!」

奏「ええ、だから期待していてちょうだい」


周子「みんな...うん!待ってるから!」

P「それと、周子に今日はプレゼントがある」

周子「えっ?」

P「外に待たせてるから、会いに行ってやってくれ」

周子「会いに...?分かった」




言われた通り、あたしは(今日の主役なのに)事務所の外へと出た
そこであたしを待っていたのは...

周子父「周子、久しぶりだな」

周子母「元気に...してたみたいね。良かった」

周子「二人とも....なんで!?」


半年前家出して以来、一度も連絡していなかった両親が、扉の前で待っていた

ずっと連絡をよこさなかったあたしを叱りに来たのだろうか、そう頭によぎった

周子母「Pさんがね、ずっとあなたのことを教えてくれていたの」

周子父「周子...お前の晴れ姿、テレビで見たぞ。...自分のやりたいこと、ようやく見つけたみたいだな。」

周子母「お父さん、貴方の出てる番組全部録画しててね...本当に、立派になった」

周子父「...あー、一度しか言わないからよく聞けよ」


   「周子...お前は、俺たちの誇りだ...」





周子「....お父さん!お母さん!」


周子母「頑張ったわね、周子...」

周子父「ったく、泣き虫なとこまで似るんじゃねぇよ...」

奏「パーティーも終わってしまったわね」

パーティーが終わった後、私はプロデューサーさんと二人で後片付けをしていた

P「すまんな奏、手伝わせちまって」

奏「いいのよ、周子は両親と積もる話があるみたいだし、他の3人は明日も朝から仕事だからね」
  「...ねえプロデューサーさん」

P「なんだ?」

奏「周子を見て、私もアイドルにもっと本気になろうと思えたの。アイドルになって、退屈だった日常に色がついて、心から信頼して、競い合える仲間も手に入れた」
 「だから...きっとトップアイドルになって、あなたに復讐するわ」

奏「周子を見て、私もアイドルにもっと本気になろうと思えたの。アイドルになって、退屈だった日常に色がついて、心から信頼して、競い合える仲間も手に入れた」
 「だから...きっとトップアイドルになって、あなたに復讐するわ」

P「復讐?」

奏「そうよ。貴方にこの世界に引きずり込まれて、私の世界アイドル無しでは考えられない世界になってしまった」
 「だから、責任を取って私に魅了されてちょうだい、ね?」

P「...なら期待してる。いつか、トップアイドルの『速水 奏』を見せてくれ」

奏「ええ、待っていてちょうだい」
 「...ところで、折角自分の心を明かしたんだもの。プロデューサーさんにも一つ質問していい?」

P「いいぞ、何が聞きたい?」

奏「ずっと気になっていたんだけど...」

奏「プロデューサーさんは、なんでプロデューサーになろうと思ったの?」

そう問うと、プロデューサーはわずかに沈黙して、口を開いた





P「俺も、復讐....かな?」

奏「えっ?」

復讐?私と同じく?
誰に...というか、私と同じ意味の復讐なの?




P「...なんてね。ほんとは、ただアイドルが好きだからってだけだよ。そんな心配そうな目で見るな」

奏「...もう!変なとこでからかわないで!」

P「ははっ!いつものお返しだよ!お前ら事あるごとに俺をからかってくるんだから」

奏「あら、偶にはからかいじゃなくしてもいいのよ?」

P「変な冗談言わないの。...あらかた片付いたし、そろそろ切り上げるか。事務所閉めるから、早く荷物纏めて外出てくれな」

奏「ええ、お疲れさま」

P「ああ、またな」





.....いつか、話してくれるのかしらね?







to be continued....

Chapter9終了したところで今回はここまで

今日はもう遅いので補足等はまたいつか

すいません、明智小五郎見てたら遅くなりました!
いつも纏めてくださる方々に感謝を込めつつChapter10投下していきます

周子がBランクになってから2ヵ月とちょっとが過ぎた頃
あれ以来事務所の全員のモチベーションにさらに火が付き、一月経つころには私と美嘉はあるドラマのメイン役をやったときの演技が評価され、更に多くの出演依頼を受けていた
それらの仕事が評価されたのか、遂に周子と同じBランクに昇格することができた


レイジレイジ―の二人はユニットの活動だけではなく、それぞれ自分たちの持ち味を活かしたソロ活動にも精を出している
志希は高い歌唱力を活かして新曲、『秘密のトワレ』を発表
その頭が蕩けるような甘く蠱惑的な歌声に多くの人が惹きつけられたようで、CD発売記念の握手会では前代未聞の来場者数を記録したらしい


フレデリカの方は持ち前のトーク力とどんな相手とも仲良くなれるフレンドリーな気質のおかげか、バラエティ番組に引っ張りだこ
その結果、某動画サイトで自身がメインパーソナリティを務めるラジオ番組、『フレちゃん'sティータイム!』が放送開始
毎週数え切れないほどのお便りが届くらしく、ある番組のラジオ特集でも『今最もアツいラジオ番組』として取り上げられ、一躍人気番組になった

そしてレイジーレイジーとしての活躍も目覚ましく、二人そろって『科学捜査班の女たち』というW主人公のサスペンスドラマの主役の座を二人そろって勝ち取ったわ

その仕事ぶりが影響してか二人のファンの数は2ヵ月前のおよそ倍以上に増加したらしく、つい先日二人ともBランクに昇格!

そして、一足先にBランクに上がっていた周子もその勢いをとどめる事を知らずいろんなところで大活躍している

先日レギュラーの座を勝ち取った「ぐるぐる九十九」では毎回ギリギリのところで自腹を回避する好(?)成績を収める人気レギュラーとしての立場を確立
更にもう一つ、自身が主役を務めるレギュラー番組「シューコちゃんのぶらり遊び旅」も放送を開始し、着々とファンを増やし続けている。
その上ソロ2曲目「Private Sign」も大ヒットして、周子は今や日本中のほとんどの人が知る超有名アイドルになった。

それに、もう一つ変わったことがあった
今まで私達に熱心に指導を続けてくれていた青木さんが、ついにウチの専属トレーナーとして所属してくれることになったの
この数か月の私達の活動を見ていて再び昔の情熱が再燃したらしく、派遣だった頃以上に厳しく、そして丁寧に私たちに指導をしてくれている



設立して1年経たない内に5人という少人数の小規模プロダクションでありながら、その全員が一流アイドルの証であるBランクに上りつめたモンスター事務所として811プロそのものに取材が来たこともあった

あの時は楽しかったわね

記者さんが開幕早々フレデリカの独特な雰囲気にのまれたり、志希の研究室から得体の知れない何かが這い出てきたり、それにPさんと美嘉が大慌てしたり...そしてトレーナーさんがそんな二人を一喝で沈めつつ、未確認生物を素手で仕留めたり...
色んなみんなの一面が見れて、本当に面白い取材だった





そしてそんなモンスター事務所811プロは今...

奏&美嘉「「HAPPY SATURDAY!!!」」

奏「というわけで、始まったわ。811プロのアイドル達がお送りする『正気のサタデーナイト!』」

美嘉「明日はみんな大好き日曜日!一週間の疲れを、今日で纏めて解き放っちゃおー!」






811プロ主催の生放送番組、『正気のサタデーナイト』を放送できるまでになったわ!





        Chapter10 「Do you want to go to Hollywood!?」





[特報!!]



シュウコ「決着をつけよう、カナデ」


[811プロ総出演!!]



カナデ「ええ、この銀河で私と貴方、どちらが正しいのか!」



「カナデエエエエエエエエエエエエエエ!!!」バシュウン!>シュウコ カナデ<バシュウウン!「シュウコオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」




銀河歴8100年

ミカ「カナデ総統、ご報告が」

カナデ「なにかしら?ミカ軍隊長」

世界はカナデ総統率いるカナディア連邦によって支配されていた

ミカ「先日支配下に置いたL-1992宙域ですが」

遺伝子操作を受け圧倒的な力を持った、「新世代人類」カナディア連邦の勢力

その脅威に対抗しうる、「旧人類」最後の希望

ミカ「イチバンボシと名乗るレジスタンスに、支配権を奪われました」


           \デエエエエエエエエン/
          シュウコ&フリッカ

カナディア兵「なんだこいつ、旧人類の癖にこのスピード!ぐわぁ!」
カナディア兵「なぜこれほどまでの性能のiDOLを...ギニャア!」

シュウコ「この銀河に生きる人間は...みんな自由でいなくちゃならないんだよ」

次々と星を支配から解放していくレジスタンス
しかし、そんな彼女たちに迫る新たな脅威!



シキ「おっと、久々に楽しめそうな子が来たねぇ」

シュウコ「こいつ、強い...!」

フリッカ「シュウコちゃん、先に行って」

シュウコ「そんな、危険だよ!」




再び巡り合う因縁の敵!

フリッカ「こいつは、あたしが倒さないといけない存在なんだ」

シキ「あれぇ?フレちゃんじゃん。ダメじゃん死んだ人間が出てきちゃあ、死んでなきゃさアァ!!」



ミカ「アタシの『Iセント・アニマ』で、銀河の塵にしてあげるよ!」

シュウコ「あんた達が、あんた達なんかがいるからアァ!」




         
           仲間との別れ




シキ「これで終わりだよ!フレちゃんはもう死んだんだ!」

フリッカ「うん、あたしはここで終わり...でも、『あたし達』はまだ続く!」

シキ「....しまっ!?まさかフレちゃん、最初から自爆覚悟で!」


フリッカ「後は頼んだよシュウコちゃん...銀河に、笑顔を」




ミカ「なに、このパワー!?まさかパイロットの感情の増幅をエネルギーに変えるって言うの!?」

シュウコ「あんた達を...カナディア連邦を許さない!」
    「行けえ!FULL・ムーーーーーーン!!!!」

そして銀河戦争は、遂に終幕へと至る



主題歌[ガールズインザフロンティアfeat塩見周子]


シュウコ「これが、FULL・ムーン最後の力!FULL・ムーン99!」

カナデ「面白いじゃない...!」
   「貴方を墜として、私は英雄になる!」
   「私と、FULL・ムーンL(ライアー)の前にひれ伏しなさい!旧人類!!」

シュウコ「ありったけをぶち込む...いくよ、FULL・ムーン!!!!!!!」

         
     劇場版 銀河戦神シュウコ Last Cinderella
      
明日、ついに全国ロードショー!








シュウコ「プレゼント付き前売り券で、シュウコ&FULL・ムーンストラップをゲットしよう!」

周子「じゃあ今日はこの辺で『しゅーこちゃんのダーツ飯』のコーナーもおしまーい。スタジオの二人に返すねー」

美嘉「はーい!周子ちゃんお疲れさま!」

奏「では、今日の放送はこれにて最後となるわ、また来週、お会いしましょう」

奏 美嘉「「HAPPY HOLYDAY!!」」

~~~~都内の高級レストラン~~~~~~~

P「では、『正気のサタデーナイト!!』初回放送成功とその他諸々を記念して!」

全員「かんぱーい!!」



放送終了後、私達はプロデューサーさんに誘われ都内の有名なレストランへ打ち上げに来ていた



美嘉「プ、プロデューサー?メニューに書いてあるの、どれもめっちゃ高いんだけど!?」

奏「一番安い紅茶でも一杯2000円ね。午○の紅茶20杯分くらいかしら?」

P「安心しろ、もちろん全部俺の奢りだ!」
 「最近忙しくてお前らがドラマや映画の大役取ったりしても祝えてなかったからな。その分もあわせて今日は豪勢に行こうぜ!」

周子「やったー!じゃあとりあえずあたしこの甘鯛のポワレ!(6500円)あとこの鴨のポトフも!7000円)」

フレデリカ「アタシ孔牛のローストワインソース(7500円)とイセエビのスープ・ド・ポワソン(3500円)!」

志希「あたし香草とトマトソースのピッツァ!(4000円)」

美嘉「み、みんな遠慮なさすぎじゃない?」

周子「奢りでこんな高級店なんて滅多にないからね。美嘉ちゃんも折角だからPさんに甘えようよ」

P「ああ、今日はホントに遠慮なく頼んでくれていいぞ」



奏「というか、周子は『ぐるぐる九十九』で結構こういうディナーは食べ慣れてるんじゃないの?」

周子「奏ちゃん...たしかにあの番組で美味しいものいっぱい食べてるけど、その代わり毎回心臓が止まりそうな思いしてるんだよ...?」

美嘉「ああ....いつもギリギリだもんね周子ちゃん...」

周子「とうとうこないだおみや代は払っちゃったし、そろそろマジで自腹切るんじゃないかってビクビクしてるよ...」

P「...今日は好きなだけ食え、周子....」

美嘉「それにしても、あたし達全員でBランク...一流アイドルになれるなんてまるで夢みたいだね」

志希「ホントにねー。最近のアイドル活動はあたしの期待通り、いや期待以上に未知で溢れてておもしろーい!」

奏「私たちならこのままAランク...いやSランクにも昇り詰めることができるんじゃないかしら?」

周子「まあ油断大敵ではあるけど。本気で走ってればきっと全員でトップアイドルも、きっと夢じゃないと思うな」

フレデリカ「そうだよ!みんなと一緒なら、世界中の人達を笑顔にできると思うな♪」


見えてきたトップアイドルという夢に対し、みんな揃って決意を固める





でも、そんな中プロデューサーは少しだけ苦い顔をしていた

P「あーお前ら、意気込んでるとこ悪いんだが、しばらくはアイドルランクの事は考えないほうがいい」

奏「えっ?」

周子「そりゃまた、なんで?」


P「お前ら、アイドルの引退時の最終ランクで多いのって何だと思う?」

周子「そりゃあ、Fランクじゃないの?駆け出しの時点で芽が出ないってパターン、一番ありそうじゃない?」

P「まあその通り、一番多いのはFランクなんだが...2番は実はBランクなんだ」

美嘉「そうなの?なんか意外、EとかDの方が多いかと思ってた」

P「理由は単純に、BからAへの壁がめちゃくちゃ分厚いから」

志希「分厚いって、どの位?」

P「一説ではFからBまで上がる時の3倍以上の努力が必要と言われている」

周子「3倍!?」

フレデリカ「シ◯ア専用なのかな?」

P「その壁の分厚さに挫折して失速、そして引退するってパターンが多いんだ」
 「だから今はランクの事は一端置いといて、ゆっくり結果を積み重ねていくことが大事って事」

奏「...でも結局のところ、いつも通りアイドルを全力で楽しめって事、でしょ?」

P「まあ、そういう事だな。というわけで明日からも全力で楽しむために、今日はいっぱい食え!」

全員「わーい!」





店員「お会計24万4千円になります」

奏「24万!?嘘でしょ!?」

周子フレ志希「ゴチになりまーす♪」

P「キャッシュで」

美嘉「しかも現金!?大丈夫なの!?」

P「お前らのおかげで事務所も俺も儲かってるからな、全然大丈夫だよ」


だとしても、流石にそんなに落ち着ける値段じゃないんじゃないかしら...
ギャラの配、プロデューサーさんが私達を大分優遇してくれてるおかげで、事務所の取り分はそんなに高くなかったはずだけど...

打ち上げから一週間、その日の仕事終わりに私達は重大発表があるとプロデューサーさんに集められていた

フレデリカ「重大発表って、いったい何だろうねー?」

美嘉「なんだろう、時期的に銀河戦神シュウコの事とか?中々好評みたいだし」

奏「いきなりロボットアニメに出ろって言われたたときは驚いたけど、なかなか面白い仕事だったわね」

周子「まあ、あたしは事務仕事してるときに書類見ちゃったから何の報告か知ってるけどねー」

志希「なになにー?あたしにも教えて!」

周子「慌てなくともPさんが教えてくれるよ」
  「まあとにかく大きな話って事だけは確かかな~...おっPさん来た」

P「よし、みんな集まってるな。すでに伝えてる通り今から重大発表を行う」
 「...時にお前ら、海外旅行に興味はあるか?」

奏「海外旅行?話が見えないのだけど」

志希「もう、もったいぶらずに早く教えて教えてー?」







P「...iDOL MOVIE BIGBANGって知ってるか?」


...!?
それって!?

奏「『iDOL MOVIE BIGBANG』....去年ある映画製作会社によって行われた、ハリウッド映画の企画ね」

P「おっ、流石奏!映画好きを公言するだけはあるな」

フレデリカ「『シネマ・速水奏』はハッピーLIVEサタデーの人気コーナーだもんね!」

美嘉「それで、そのiDOL MOVIE BIGBANGってどういう企画なの?」

奏「かつて765プロアイドルが総出演して話題になった『果てしなく仁義ない戦い』という映画があってね」

P「名作だったぞ、内容はもちろんのこと主題歌の青い鳥がもうこりゃまた音楽史に残る神曲でな!」

周子「Pさん説明中だからちょっと黙ってて」

P「すまん....」

奏「続けるわね?そしてその映画がヒットして以来、売れてるアイドルを起用して製作するアイドル映画というジャンルがじわじわと人気になってきているの。そしてその人気に目を付けたある映画会社が去年、ハリウッドで色んなアイドル事務所でアイドル映画を作ろうって企画を立てた」
 「確かその時は010プロの様な勢いのあった大手事務所が、それぞれ自分たちのアイドル達をメインキャストに据えて一本ずつ映画を製作したの。どれもキャストが話題のアイドルであることを抜きにしても名作揃いだったわ」
 「それで、今iDOL MOVIE BIGBANGの話をするって事は...」

P「ああ...今年もそのiDOL MOVIE BIGBANGが開催することになったんだが...その企画に、我が811プロが招待された!」

志希「!」

美嘉「ホント!?」

P「ああ、最近のお前らの活躍が評価されたんだ!皆何かしらのドラマや映画で主役やったりしたのと、この前の銀河戦神シュウコを製作した映画会社からの推薦でな。ぜひウチからも一本映画を出してほしいと依頼があった」
 「というわけで来週からハリウッドで海外ロケだ!気張っていくぞ!」

フレデリカ「やったー!ハリウッドだ!海外旅行だ!皆一緒に楽しもうねー♪」

志希「...うん!そうだねフレちゃん!」

美嘉「海外ロケかぁ、莉嘉にお土産何がいいか聞いてこなきゃ!」

周子「荷造りもしなきゃねー。こんなの、高校の修学旅行以来かな」

奏「ハリウッドといえば映画の聖地...ふふっ!今から楽しみね!」

P「お前ら、観光じゃなくて仕事で行くんだからな?...まあ自由時間もあるけどさ」
 「というわけ今から俺と周子が昨日作った旅のしおりを配るから、みんなそれをしっかり確認して準備を済ませておくように」

周子「結構長いロケになるから、準備怠ると悲惨なことになるから気を付けてね?」





全員「はーい!!」

志希「ハリウッド...アメリカかぁ」
  「まさかこんな形で戻ることになるとはね...」
  






「.........パパ」

ロケ開始日、半日ほどのフライトを満喫した私達は今、ロサンゼルス国際空港に降り立っていた


P「ハリウッドに行きたいかー!」

フレ志希「「おー!」」

周子「ていうかもう来てるやん」

美嘉「すごい!金髪の人がいっぱいいるよ!」

奏「あら、本当ね...でも、金髪はフレデリカで見慣れているからかしら、不思議と親しみがわくわね」

美嘉「確かにそう言われると、なんか金髪の人がみんなフレちゃんに見えてきたよ」

フレデリカ「フランス忍術奥義!多重影分身の術だよー♪」

周子「いやフランス関係あるかーい♪」

P「おーいお前ら、漫才はその辺にしとけ、まずホテルに荷物とか置きに行くぞ」
  「その後は明日からの予定についてのミーティング、終わったらあとは自由時間だ。長く遊ぶためにもキビキビ動け!」

周子「そうだねぇ、Pさんもアメリカ観光楽しみにしてたもんねぇ?早く遊びに行きたいよね♪」

P「いや、俺はプロデューサーとしてしっかり引率をする必要があるだけで、決してはしゃいでなどは...」

志希「ん~?その割に旅のしおりの内容、半分以上は観光スポットの紹介だったけどなー?」

美嘉「そうそう!おかげでわざわざガイドブック買わなくて住んだよ」

フレデリカ「楽しみを詰めすぎたから国語辞典みたいな分厚さになっちゃったんだねー♪」

P「いやちがっ!?そんなんじゃないって!」

奏「ふふっ!旅行が楽しみ過ぎて眠れなかったなんて、プロデューサーさんも子供っぽいとこあるのね」

P「だって前にアメリカ来たときは観光する余裕なんてなかったし...ハッ!?」

周子「あちゃー引っかかっちゃったねPさん♪」

美嘉「プロデューサー、眠れなかったんだ♪」

P「くっ、この俺がカマかけに引っかかるなんて...」
 


渡米して早速プロデューサーさんの意外な一面を見れるなんて、幸先いいわね♪

ハリウッド映画にまで出演できるほど演技力を磨いた甲斐があったわ!

     =========ホテル・エントランス============


P「・・・・というわけで、今日のうちに各自さっき配った台本を一度は目を通しておくこと」
  「明日は現地時間7時にこのエントランスに集合だ。夜更かしして寝坊しないようにすること」

周子「特にPさんね」

P「うるさいやい...」

美嘉「じゃあ、これでミーティング終わり?」

P「ああ、というわけでこれからは」

フレデリカ「みんなで遊びにいこー!」

奏「ええ、折角のアメリカだもの、映画のロケ地になったような場所とか行ってみたいわ」

志希「うーん、あたしは最近まで住んでたし、もう既に粗方見て回っちゃったなあ」

P「そういえば、志希はアメリカからの帰国子女だったな」

志希「うん、ケンブリッジあたりなら案内できるよ。大学あった辺りだから」



奏「...ケンブリッジ、ですって?」

周子「どうかしたの奏ちゃん?」

奏「志希...貴方の通ってた大学ってまさか」

志希「マサチューセッツ工科大学。よくMITって言われてるとこだね」



全員「えーーーー!!??」









P「んで、どういう大学なんだそこは?」

周子「あたしも分かんない」

フレデリカ「アタシもー♪」

奏(ズコッ!)

美嘉「いや、じゃあなんで驚いたのさ!?」

3人「なんかノリで」

美嘉「ノリ!?」

奏「...MITはアメリカ国内どころか世界でトップレベルの名門工科大学よ。ノーベル賞を取得した学生の数はあのハーバードを優に上回るらしいわ」

P「...そういや、今回の映画のロケ地の一つにケンブリッジがあったような気がするな...」

志希「そうなの?」

周子「じゃあ下見がてら行ってみようよ。志希ちゃん案内頼める?」

志希「あー、うん。いいよー、志希ちゃんに着いておいで―」

フレデリカ「わーい!志希ちゃんありがとー♪」

美嘉「ケンブリッジってなんか大きな美術館とかあるんだよね?しおりに書いてあったような」

奏「多分ボストン美術館の事ね、日本庭園もあるらしいわよ」

周子「その前にそろそろお腹すいたーん、先にどこかでご飯食べてかない?」

P「そうだな、じゃあその辺歩いてみるか」

美嘉「あっ、そういえばさっきしおりに書いてあったお店ちらっとみたよ。あそこ行ってみない?」

P「おっ、あれか!なかなか美味そうな店だと思ってメモってたんだった!」

奏「じゃあそこにいってみましょう」

         ========街道==========

フンフンフフーン、フンフフーン♪

名探偵フレちゃん、美嘉ちゃんの後を追跡ちゅ~♪

アタシの推理によれば美嘉ちゃんの目的地はきっと....デレデレデレデレ デン!

プロデューサーさんが『おいしそー!』って目をつけてたレストランだ!

証拠は、さっき美嘉ちゃんが見つけた場所への案内を買って出てくれたから♪

えっ?それって推理じゃない?てへっ❤

アメリカのご飯、楽しみだなー♪




.....あれ?志希ちゃんどうしたんだろ?

フレデリカ「志希ちゃーん、どしたの?UFO見つけた?」

志希「えっ、ああフレちゃん!いやーそうそう、UFOぽいの見つけたよ!」

フレデリカ「ホント?どこどこー?」

志希「あー、さっきどっかとんでっちゃった」

フレデリカ「えー!残念、宇宙人と友達になってみたかったなー」

P「おーい二人とも―!置いてくぞー?」

志希「あーごめんごめん!いこっかフレちゃん♪」

フレデリカ「うん!今行くねプロデューサー!」







フレデリカ(んー.........)

みんなでご飯を食べた後、あたしはケンブリッジ周りとかボストンの名所を案内して回った

昔行った時は何処もあんま印象に残らなかったけど、今日は何故か楽しかったなー♪


...きっと、あの時と違って一人じゃなかったから...なのかな?



...あの時のあたしは他人に興味なかったし、一人でも全然平気だと思ってたけど
やっぱり心のどこかで、一緒に遊ぶ仲間が欲しいと思ってたんだろうか?




美嘉「いやー色々回ってみたけど、どれも面白かったねー!」

周子「いやーまさかホントにアメリカで日本庭園が見れるとはねー。しかもめちゃくちゃデカかったし、もう何でもありだったねあの美術館」

奏「トリニティ教会もとても印象的だったわ。ああいう雰囲気、私好きよ」

P「俺はアメリカにラーメン屋があったのがびっくりだったよ...しかも見るからに二郎系ぽかったぞあれ...」

フレデリカ「志希ちゃん、アタシ達を案内してくれてありがとね❤」

志希「どういたしましてー♪」

P「んじゃ、もうぼちぼちホテルに戻るとするか」

周子「折角だしこの辺でご飯食べていかへん?さっき見つけたラーメン屋ちょっと気になるやん」

志希「うーん、あそこはちょっと行くには覚悟が要るかなぁ...」

P「明日からガチガチのスケジュールで収録なのに二郎系なんか食えるかよ...ホテルでディナーにしようぜ」

志希「じゃあまた駅まで案内しよっか、バスガイド志希ちゃんに皆着いておいで―♪」

フレデリカ「どうも!当バス運転手の、宮本フレデリカでーす!」

周子「いや徒歩やんかーい♪」

美嘉「あははっ!アメリカでもみんないつも通りだね★」

奏「ええ、そして明日からもいつも通り」

P「全力で楽しんで、収録を成功させよう!」

全員「おー!」

皆で明日からの収録の成功を心に近い、駅の方へ足を進める



でもその時、あたしはひどく懐かしい匂いを嗅ぎ取ったんだ
懐かしくて愛おしい、でも、もう会いたくない、会うことはない
そう思っていた、あの香りを...

フレデリカ「志希ちゃん?」

P「どうした?」

志希「ど、どうしてここに...?」

???「どうしても何も、ケンブリッジを私が歩いていてもなにも不思議な事ではないだろう」

美嘉「誰?志希ちゃんの知り合い?」







志希「...ダッド」

奏「えっ?」




志希父「久しぶりだな、志希」

全く考えて無かったわけじゃない
大学に近いここを歩いていればばったりパパに鉢合わせる事もあるかもとは思ってたし、寧ろ、少し期待していたのかもしれない


志希「っ...」


でも、いざホントに会ってしまうと、この場の最適解を導き出してくれるはずのギフテッドなあたしの脳も、すっかり機能停止してしまっていて
何を言えばわからなくなってあたしは、パパの顔から目をそらしてしまう

P「初めまして、わたくし、娘さんの所属する811プロダクション社長兼担当プロデューサーのPと申します。志希には本当にいつもお世話に...」

志希父「悪いが、君に用はない」

P「えっ」

プロデューサーにしては珍しく丁寧な様子でパパに挨拶するけど、そんなプロデューサーさんを無視してパパはあたしの目の前へと歩いてきた

志希父「志希」

志希「....なに?」







志希父「アイドルを辞めて、科学者に戻れ」

志希「えっ...?」


志希父「もう十分楽しんだだろう、そろそろ自分のやるべきことを思い出せ」

美嘉「ちょっと!何勝手なこと言ってるのさ!」

奏「志希の父親だか何だか知らないけど、いきなり現れて娘の意思も関係なしに勝手すぎるんじゃないの?」

志希父「君達も、あまり志希をたぶらかさないでもらおうか」

周子「たぶらかす...?」

志希父「志希は世界の科学の歴史を変える、その力がある。そんな志希が日本でアイドルをやっているなど、世界にとってとても大きな損失だ」
   「志希、まだ大学にはお前のポストを残してある。アメリカに戻って、また研究を続けるんだ」

志希「なに、それ...今更、そんなこと...あたし、もうあの場所に興味なんてないよ」
   「それにダッドは、科学者のあたしに興味が無くなったんじゃなかったの?興味が無くなったから、あたしが大学辞めても、何も言わなかったんじゃなかったの?」

P「..............」

志希父「志希、お前は分かっているはずだ、お前の居るべき場所が」





志希「...いこ、皆」

美嘉「志希ちゃん、いいの?」

志希「うん。今は......ここに居たくない」

志希父「...私はしばらく研究で研究室に籠ることになる。決断できたら会いに来い」
    「良い返事を、期待している」

     =========帰り道=============


ホテルへと向かう私達
でも、観光名所を回っていたときの楽しい空気は、泡のように消えていたいた

美嘉「志希ちゃん、大丈夫?」

志希「大丈夫だよ」

美嘉「でも、さっきからずっと」

志希「ごめん、大丈夫だから。今は、ほっといてほしいにゃー?」

美嘉「志希ちゃん...」



そう笑う志希の顔は、明らかにほっとけるものでは無くて
でも、私達は志希にどう声をかければいいのか分からず、どうすることも出来ずただ口をつぐんでしまっていた






ただ一人を除いては

フレデリカ「みんなー!さっき買ったお土産のお菓子食べよー!」

奏「ちょっ、フレデリカ!?」

フレデリカ「だってみんな顔怖いんだもん!まるでトレーナーさんみたいだよー!?折角の旅行なんだからもっと笑った方が楽しいよ!」

志希「フレちゃん.....」

周子「...せやねー♪いつも全力で楽しむのが811プロの信条だもんね!」
   「というわけでおひとつもーらい!」

美嘉「...じゃあたしもっ★志希ちゃんも一緒に食べよ?」

志希「...うん!あたしにもちょーだい!」


フレデリカ「そうだ!志希ちゃん!写真撮ろうよ!」

志希「えっ?」

フレデリカ「海の向こうでもアタシ達元気に旅行楽しんでまーす!って、ファンの人達に伝えてあげよ!」
      「ほら、笑って笑って!写真を撮るときは笑顔でピースするのが全世界共通のマナーなんだよ?」

P「....そうだな、日本に置いてきちまったファンにちょっとはサービスしてやらねえとな!」

志希「...うん!あたし達の最高の香りを、日本のファンに届けちゃおー!」

奏「ふふっ!そうね。いつも応援してもらってるんだもの、会えなくて寂しい思いをしている皆を安心させてあげなきゃね!」

P「よし!じゃあお前ら!俺が撮るからそこに並びな!」



フレデリカの言葉によって、私たちの顔にじわじわと笑顔が戻っていく
フレデリカ、貴方はやっぱり凄いわ

どんな重い空気もたちまち明るく出来るその笑顔、それはきっとこの世でフレデリカしか持ちえない確かな才能
フレデリカ、あなたのその笑顔は811プロ一番.....いえ、きっと世界で一番優しくて元気な、ひまわりの様な笑顔ね!

そんなフレデリカと友達になれたことを、私は今日、改めて誇らしく思った





P「じゃあいくぞー?1+1は!?」

全員「にー!」


パシャッ

ホテルで皆でディナーを食べた後、明日に備えて今日は解散ということであたし達はそれぞれの部屋に戻った

部屋に戻ってお風呂に入った後、あたしはプロデューサーさんに釘を刺された通り台本を一応流し読んでいるみた


なるほどなるほど......


どうやらあたしの役は、ある日突然アメリカ最大のギャング組織に狙われてしまうヒロインの女学生
そしてあたしの演じるその子は終盤、ギャングに狙われることになった自身の複雑な出生の秘密を知ることになる...らしい

このの映画のテーマは、ハリウッドらしい派手なアクションを盛り込んだ裏社会の戦い。そして...

志希「『家族』、かぁ...」

家族、カゾク、かぞく....

言葉は知ってる、でも、自分にとってそれが何を意味するのかは、全く分からない


あの頃、まだママとパパと3人んで暮らしていたころは分かっていたのかもしれない
でも今は、自分がかつてそれを知っていたのかさえ思い出すことができない


あたしにとって、『家族』って何なんだろう





そして、それ以上に......



志希「結局のところ、パパにとって、あたしってなんなんだろうなぁ...」

結局のところ、あたしはそれが一番分からなくて......それが一番知りたいこと、なんだろうな




志希「...よしっ」

それに気づいた時には、あたしはもう行動を始めていた

ピンポーン

奏「あら、誰かしら?」

周子「あー、奏ちゃんいるー?」

奏「周子?どうしたの?」

周子「いやーやっぱり折角友達と旅行来てんだし、夜に遊びながら語り合うお決まりのやつやりたいから誘いに来たよ」
   「それに、やっぱり志希ちゃんちょっと心配だしさ。みんなで遊んだら元気になるかなーって」

奏「成程ね、確かに良い案だわ」

周子「でしょ?てなわけでこれから皆を誘いに行くんやけど、奏ちゃんはどうする?」

奏「勿論、参加させてもらうわ」

周子「よしっ、じゃあ一緒に皆を呼びに行こう」

その後、美嘉とフレデリカも呼び出して最後に志希の部屋の扉の前へとやってきた

ピンポーン

周子「志希ちゃーん、いるー?」




シーン.....



奏「反応がないわね」

美嘉「もう寝ちゃったのかな?」

周子「あれー?志希ちゃん夜型って言ってたしまだ起きてると思ってたけど」






フレデリカ「ねぇねぇ、鍵開いてるみたいだよ?」

奏「えっ?ここオートロックよ?」

美嘉「...見て!扉になんか挟まってるよ!?」

美嘉が指刺した所には、志希のスマホが挟まっていた

周子「これのせいで扉が閉まらなかったんやね...って、なんでスマホが挟まってんの?」

奏「志希のスマホなんだし、志希自身がやったんじゃ.....まさか!」

全員「!」




嫌な予感が頭をよぎった私達は、鍵の開いていた扉を勢いよく開け、部屋の中へ飛び込む

そこに、志希の姿はなく、代わりにあったのは...



              『失踪します』




確かに志希の字でそう書かれた、小さなメモ一切れだけだった.....



to be continued.....

だって、アイマスで生放送ネタやるんならロボットアニメのウソ予告もやらなきゃいけないって聞いたから....

そんなわけでChapter10終了です




ちなみに、ケンブリッジには『Yume Wo Katare』なる二郎系ラーメン屋がマジで実在します

いや唐突なかぐや様コラボは草
どこもかしこもエイプリルフールイベばっかで時間が足りねぇ....

Chapter11投下開始します

P「失踪か...そういや最近やってなかったな」

美嘉「プロデューサー、まさか志希ちゃんホントにアイドル辞めたりしないよね?」

P「流石にその気なら、志希も何も言わずに出ていかないと思う。あの子は間違いなく、アイドルを楽しんでたし」

周子「タイミング的にお父さんの事関連、だよね。何も言わずに出ていくなんて...私達には、相談できなかったのかな...」

P 「さぁな、その辺は本人に聞くしかない。とにかく探しに行かにゃあならんが...」

奏「でも、こんな夜に知らない街を闇雲に探し回ったら、ミイラ取りがミイラなんてことになりかねないわね...最悪、みんな揃って明日の撮影に出られなくなるかも...」

周子「一応アメリカだし、治安もよくはないもんね」

美嘉「だとしても、志希ちゃんを一人にはできないよ!探しに行こう!」

P「落ち着けって美嘉」

美嘉「落ち着いてなんていられるわけ!」


P「落ち着け!」

美嘉「っ!」

P「もしお前らの身に何かがあったら、あいつはずっと自分を責め続けるぞ!」

美嘉「でもっ!志希ちゃんの身に何かがあったら!そっちの方が取り返しがつかないじゃん!」

P「分かってるよ!だから先に志希が行きそうな場所にアタリをつけてからだな!」






周子「...あれっ、フレちゃんは?」

奏「えっ?...いない!?」


辺りを見回してみると、確かにさっきまでいたはずのフレデリカの姿が忽然と消えていた


P「なっ!フレデリカまで!?」ピロンッ!


そのことに驚くのもつかの間、皆の携帯が一斉に鳴りだした


P「事務所のグループLINE....フレデリカからだ」




『みんなー!志希ちゃんの事はアタシにおまかせ!』

『名探偵フレちゃんの名推理で志希ちゃんの居場所は分かったから会いに行ってくるねー!』

『必ず連れて帰るから、皆はトランプの準備してて待っててねー!』

周子「フレちゃん、居場所分かったって...」

美嘉「いやいや!フレちゃんまでいなくなったら余計マズイじゃん!二人ともどこ行ったのさ!?」

P「クソッ!どいつもこいつも!」

奏「いえ、フレデリカは適当に見えて、その実周りへの気配りは私達の中で一番上手い子よ。そして志希と一緒にユニットを組み活動している、志希にとって最も近い存在」
 
 「そのフレデリカが心当たりがあるって言ったんだから、きっと本当に思い当たる場所があったんでしょう」

P「それは...そうかもしれないが...」

周子「じゃあどうする?やっぱ心配だし探しに行く?」

P「...いや、わざわざ一人で行ったんだ、きっと何か二人きりで話さなきゃいけないことがあるのかもしれない」
 
 「それに...多分ここでフレデリカが志希を連れて帰っても、根本的な解決にはならないだろう」

美嘉「どういう事?」

P「...志希の父に会いに行こう。あの時言ってたことなら本当ならまだMITとやらにいるはずだ」

奏「会いに行くって、アポもなしで?」

P「しょうがないだろ、連絡先分かんねえし」

美嘉「でも、急に行って志希ちゃんのパパに会いたいから入れてくれって言っても認めてくれるかな?」
  
  「あの時のあたし達への言動的に、あまり会ってくれそうにないよね」

P「その時はもうなんとかして忍び込んで...」

周子「ちょっ、マズイよ!無理に入ろうとして捕まっちゃったらどうすんのさ!?世界でもトップレベルの大学なら、きっと警備だってトップレベルだよ!?」

美嘉「そうだよ!プロデューサーこそ落ち着いてよ!プロデューサーが怪我しても志希ちゃんきっと悲しむよ!?」

P「うぐっ...じゃあ一体どうすれば」






奏「...ねえ、もしかしたらこの志希のスマホに連絡先入ってないかしら?」

美嘉周子「「!!」」

P「それだ!ちょっと貸してくれ....あっ」

周子「どしたん?」

P「パスコードかかってる...」

美嘉「あー...そりゃそうか」

奏「4桁...何か心当たりはないかしら?」

周子「無難に誕生日...とか?」

P「確か0530...ダメだ、流石にそんな単純じゃないか...」

美嘉「じゃあ、志希ちゃんがアイドルデビューした日とかは?」

P「....ダメだ」

周子「あと一回でロックかかっちゃうね...」

P「クソッ!他に志希が設定しそうな番号は....」






4桁の数字で、他に思い当たるもの.....!
もしかして!

奏「ちょっと貸して」

P「えっ、ああ...」


プロデューサーからスマホを受け取った私は、さっき思い浮かんだ数字を押し間違えないようにゆっくりと入力していく
志希...もし私達が貴方に信頼されているというのが自惚れでなければ、貴方がちゃんとアイドルを楽しめていたのなら、きっと....







奏「0、8、1、1.....」

ロックが解除された

周子美嘉「「!!」」

奏「0811...811プロ...」

周子「そっか...」

美嘉「ちゃんとあたし達は、志希ちゃんの居場所になれてたのかな?」

P「ああ、きっとな.....それで奏、連絡先はありそうか?」

奏「ちょっと待ってて...」


電話帳を探ってみると、『ダッド』と登録された電話番号を見つけた


奏「あったわ!」

P「でかした!じゃあ早速連絡しよう!」

志希のお父さんにコールをかけ、プロデューサーさんにスマホを渡す



志希父「...志希か?」

P「いえ、先ほどお会いした担当プロデューサーのPです」

志希父「志希はどうした?」

P「生憎、現在携帯を残して失踪中でして...そちらは既にウチのアイドルが捜索しています」

 「ですが、今私が用があるのは貴方です。今からそちらまで向かいますので、一時間ほど後、お会いできませんか?」

志希父「私は君に用はないのだが」

P「それでもです。こちらは志希を預かる身として、父親である貴方には一度きちんとお話をしなければなりません。貴方も、志希の日本での動向はなんだかんだ気になっているのでは?」

志希父「...いいだろう。受付に話は通しておく」

P「有難うございます、では後程」ピッ

奏「プロデューサー、私達も」

P「いや、お前たちはここでフレデリカと志希の帰りを待っていてくれ」

 「それに、いろいろ言いたいこともあるだろ?ちゃんと帰ってきたあの子の気持ちを、受け止めてやってくれ....」

フンフンフフーン フンフフーン♪

アタシは名探偵フレデリカ!

アタシの推理によるときっと志希ちゃんはここに....

あっ!志希ちゃんだ!今日も名推理だったね!





フレデリカ「おーい!志希ちゃーん♪」

あたしにとって家族とはいったい何なのか

あたしはそれを調べるために、この国で唯一「親子の思い出」があったこの場所に来ていた

でも....


志希「やっぱり、わからないなぁ...」


あたしにとって分からないこと、『未知』は全部面白いことだった

でも、この『未知』だけは、何故だか面白く思えない

むしろ、意識してからずっとあたしの心の中にもやもやと渦巻いていて、まるで毒でも飲んだかのようにに苦しみを与え続けていた





「......ちゃーん!」

志希「この声....まさか」


この声は、いつも、いつも、毎日のように聞いているあの声

ひまわりの様な笑顔でに関わった人皆を和ませる、あたしの大好きな、相方の声だった


フレデリカ「志希ちゃーん!やっぱりここだったんだ!」

志希「フレ....ちゃん...」

フレデリカ「それにしてもこのお店、なんか美味しそうな匂いがするね!折角だから入ってみよーよ!」

志希「えっ、ちょっと『たのもー!!』」





....どんなに頭が良くても、フレちゃんにはどうやっても敵わない気がするなぁ

         ========研究室===========


夜も更け、学内の人間もいなくなり、研究に集中するには心地よい静寂が訪れている
だからこそ、その足音はハッキリと聞こえた


志希父「...来たか、少し遅かったようだが」

P「申し訳ございません。あまりに広いもんで、少し迷子になってしまいまして」

志希父「それで、話とは一体何だ?私は無駄な時間を過ごすのは嫌いでね、手短に話してもらおう」


P「では単刀直入に......何故急に、志希にアイドルを辞めろと?」

志希父「さっきストリートで会ったときも言っただろう。志希の才能を無駄にしてはならないからだ」








P「違うね」

志希父「何?」

P「本当にそれが理由なら、あんたは最初から志希を大学にとどめるための努力をしたはずだ。志希が日本に帰国するのを止めなかったなんてありえない」

志希父「...では、他に何か理由があると?」
 



P「あの時のあんたの志希を見ていた目...俺はあんな目をした人間を知ってる」

 「だから、分かるよ。あんたの腹の中の淀みがなんなのか」

志希父「........」

P「あんたは、志希に謝りたいんだ」

志希父「ッ!!」

P「きっとあんたは、志希に対して何か取り返しのつかない事をしたんだろう。それを、あんたはずっと後悔し続けている」
 
 「正直に言うと、そのあなたの後悔について、なんとなくアタリを付けれてはいるんです。でも」

志希父「知ったような口を!」

P「ええ、何も知りません。だからこそ聞きに来たんです!!」

志希父「!」

P「俺は志希のプロデューサーです。志希をアイドルの道に引き込んだ者として、志希の抱える問題を知り解決する義務と責任がある!」
 
 「だから教えてください。志希とあなたの間に一体何があったのかを。教えてもらうまで俺はここをテコでも動きません」

志希父「............」

P「どうか、お願いします」ザッ

志希父「...!?」


そう呟いた途端、目の前の男は膝をつき、頭を床に押し付けた

志希父「君....」

P「俺たちでは、あの子の抱える闇を知らない俺たちでは、あの子を縛る鎖を解くことは出来ません」
 「あの子の鎖の鍵を持つのは貴方だけなんです。どうか、お願いします.....!」

志希父「..................」













志希父「ずっと、後悔していた。研究者としても、父親としても」

フレデリカ「うーん、迷っちゃうねー....志希ちゃんはどれにする?」

志希「あー...えっと、どうしようかなー」

フレデリカ「じゃあ二人でこれ食べようよ!」

志希「どれどれ....これって」

フレデリカ「志希ちゃん、なんかここずっと眺めてたし、きっと食べたいもの決まってたけどアタシのこと待っててくれたんでしょ?」

     「だったら志希ちゃん待たせるのも悪いし、アタシも志希ちゃんと同じもの食べるー!」

志希「いや、食べたかったわけじゃ...いや、どうなんだろ?食べたかったのかも、しれない」

フレデリカ「じゃあ決まりだね!店員さーんお願いしるぶぷれー!」

フレちゃんが注文を済ませ、あたしと再び向き合う
その優しい翠の瞳に見つめられると、心が落ち着いてくる

けど、その優しさが、今はちょっと眩し過ぎて



...えっと、とりあえず何か話を振らなきゃ



フレデリカ「志希ちゃん、このお店好きなんでしょ?」

志希「えっ?」

フレデリカ「お昼このお店を見てた志希ちゃん、中に入りたそーな目をしてたから」



....見透かされてたんだ、すごいなフレちゃんは
というより、あたしが少し露骨すぎだったのかなー?

志希「特別好きだったわけじゃないよ。ただ、ここを通ったときふと料理の匂いがしてさ、パパと一緒に来た時の事を思い出したから」

フレデリカ「てことは、お父さんとの思い出の場所?」

志希「そのはずだったんだけど...なんでかな?何も感じなかったんだ。確かに前にパパときたときは、すっごく嬉しい気持ちになった覚えがあるんだけど」

  「今回の台本読んで、あたしにとって家族って何だったんだろうって考えちゃってさ、ここに来たら何か分かるかもって思ったけど、ダメだったねー」

フレデリカ「..........」

志希「それに、仮にあたしにとって大事な思い出だったとしても、パパにとってはそうじゃないかもしれなかったのかも」
  
  「そう思ったら、あたしには本当は家族の思い出なんて無かったのかなーって、そう思ったんだ」







フレデリカ「それは違うよ」

志希「えっ...?」

フレデリカ「本当に思い出がなかったら、最初からパパのこと思い出さないよ」

     「それに、志希ちゃんと志希ちゃんのパパって似たもの親子だもん!だから、志希ちゃんにとって思い出の場所なら、きっとパパにとっても思い出の場所だよ!」

志希「あたしとパパが、似てる...?」

フレデリカ「ねぇねぇ志希ちゃん!アタシ、志希ちゃんの事も、志希ちゃんのパパの事も、もっと知りたいなー!」

     「そしたら志希ちゃんともっと仲良くなれると思うし、志希ちゃんのパパともお友達になれると思うもん!」

志希「フレちゃん...」

フレデリカ「だから悩み事は、この名探偵フレデリカにドーンとお任せ!華麗に事件解決へ導いてあげる―♪」

     「だから...志希ちゃんの悩み、聞かせてほしいな?」

志希「.....フレちゃん....あのね....」

志希父「志希が5つになった誕生日、一度日本の志希と妻がの住む家へ帰国したときのことだった。あの子がギフテッドだったのを知ったのは」

   「私は自分の娘が世界を変える才能を持っていたことに酷く興奮してね、その日以来私は家に帰る頻度を増やし、志希に多くの知識を与えていった」

   「志希はまるでスポンジのように知識を吸収していき、次々と新しい謎を発見してはそれを解き明かしていった」

   「そして私も、そんな志希を見ているのが楽しく、そして誇らしかった」
    




   「だが、あの国は志希の様な才能あふれる物を許さなかった」

P「.....出る杭は打たれる、そんな世の中ですもんね」

志希父「ああ、小学校4年の授業参観に出た時だ」

   「小学校であの子は所謂、『いじめ』にあっていた。同級生には愚か、教師でさえ志希を腫れ物に触るように扱っていた」

   「本物の天才に同調圧力をかけ貶める...そんな国は志希の居場所じゃない。そう思った私は、志希にアメリカへの移住を提案し、志希もそれを受け入れた」



   「だが、身体の弱い妻は連れていくことができなかった...何より、本人が故郷を離れることを拒んだんだ」

志希「それでも、ママはあたしを送り出してくれた。」

  「『希望』を『志す』から志希...あたしはママとパパの希望。だから向こうでパパと一緒に頑張りなさいって。だから、あたしは行った。パパと一緒に海の向こうへ」

  「海の向こうにはあたしの知らない事がいっぱいあって、気になったことを片っ端から解いていったら、どんどん飛び級しちゃって」

  「1年でジュニアスクール...日本でいう小学校を飛ばして、中学校...ジュニアハイスクールに入って、更に2年でハイスクール、更に1年でまた飛んであの大学に入ったんだ」
 
  「大学では好きなこと研究できたし、パパとも一緒にいられて楽しかった。けどね.....」

志希父「自分の理解できない存在を恐れる、それはどの国の人間も同じ」

   「10代という若さにして自分たちには想像もつかなかった発見をする志希を、この大学の研究員も、そして....この私も、次第に恐れるようになった」

   「他の人間に避けられる志希を見かねて、私も志希も一度気分転換をしようと、あれ以来研究に熱を入れ過ぎて帰っていなかった妻の元へ、志希を連れて帰国したのだ」








志希父「そして帰国した先で、妻が数か月前に病死していたことを知った」

P「!!?」


志希父「私達は妻を裏切ってアメリカへ飛び立ったと、彼女の遺族に酷く恨まれていたようでね。死んだことを知らされていなかった....」

   「そして、私も志希も、逃げるようにアメリカへ戻った....」

志希「アメリカへ戻った後あたしは、更に研究にのめりこんだ」

  「ママの死から目をそらすためだったのかもしれない、ママに恨まれてた事を忘れたかったからかもしれない」

  「でもそれ以上に、多分、パパに元気になってもらいたかったんだと思う」

  「落ち込むパパをこれ以上落ち込ませないように、あたしは元気な姿を見せなきゃって思った。だからあたしはパパを喜ばせようと、次々と新しいことを見つけてはパパに報告してた」
  

  

  



志希「....でも、それがダメだったんだ」

  「あたしは希望なんかじゃなかった、ママを見捨てた上に、パパまで壊した」
  

  「あたしはきっと、二人にとっての癌細胞だったのに、あたしは自分でそれを分かってなかったんだ」

志希父「妻の死に精神が参っていたのかもしれない。だが、そうだとしてもあの時の私は本当に愚かだった」

   「母親の死にまるで堪えていないように、私の想像のつかない程の成果を上げる志希に、私が数十年賭けてたどり着いた場所に瞬く間にたどり着いてしまった志希に」
   
   「私は志希に、怖いと、その才能が、ただただ恐ろしいと....そう言ってしまったんだ」




志希父「志希が大学を辞めると言い出したのはその次の日だった」

   「つまらなくなったから辞めるとだけいって立ち去る志希を、私は引き止めなかった」
   
   「...正直、その時はすこしほっとしていた...得体の知れない怪物が消え去ったのだと、娘に対して本当にそう思ってしまった」


P「............」

志希父「だが、その安堵は月日が経つにつれ後悔へと変わっていった」

   「妻が死んで以来、私を支えていてくれたのは他でもない志希だったということ、そして愛する娘から居場所と才能を奪ったことが、痛いほどに分かってしまった」

   「だから私は、志希に償わなければならない。もう一度あの子が存分にその才能を振るい、自分のやりたいことをやれる場を返さなくてはならない」

   「志希は日本のアイドルに収まるべきではない...きっとあの時のように科学であらゆる未知を解き明かす事を楽しみにしているはずなんだ。」

「だから今度は父親として、あの子のやりたいことをさせてあげるのが....」








P「そこまで考えてるなら、なんであの子にそれをちゃんと言わないんですか?」

志希父「何故って....あの子は、自分を傷つけた私の言葉など聞きたくないだろう。あの時、ストリートで会った時もそうだったように」

   「だから、私が無理に口をはさみすぎれば帰って自分を捻じ曲げてしまうかもしれない」

   「あの子は賢い子だ、私よりも....だから、きっと自分で正しい答えを...」




言いきる前に、目の前の男に胸倉をに掴まれる




志希父「!なにをするっ!」

P「違うだろ....」

志希父「...?」





    P「あんた達の頭がいいのは、言葉端折って、会話を投げ捨てるためじゃねえだろ!!」




フレデリカ「...やっぱり、志希ちゃんとパパは似てるよ」

志希「そう....なの?あたしにはよくわからないんだけど」

フレデリカ「じゃあ、折角志希ちゃんが思い出話をしてくれたんだし!あたしも自分の思い出、話しちゃうねー♪」

志希「フレちゃんの、思い出?」



フレデリカ「...あたしもねー、昔ママを泣かせちゃったことがあるんだ」




フレちゃんが、親を泣かせる?
...全然想像つかない、フレちゃんが人を笑顔にする姿は思い浮かべれても、泣かせる姿はどうしても思い浮かばないな

志希「そりゃ、一体なんで?」

フレデリカ「うーん...あの時はまだ、アタシがおとなしくて、怖がりだったからかな?」

志希「大人しい?フレちゃんが?」

フレデリカ「そうだよー、あたし5歳くらいまでは大人しい女の子だったんだー」

     「でも、大人しくし過ぎたせいで色々ママに心配かけちゃって、その結果ママを泣かせちゃったんだ」

     「その時にアタシは分かったんだ。大好き!とか、幸せ! っていうのは、ちゃんと言葉で伝えなきゃダメだって」

志希「言葉で?」

フレデリカ「うん!だから志希ちゃんも教えてあげればいいんだよ!」

     「自分は、パパとママの子供ですっごく幸せなんだって事!」

P「結局あんたはただ逃げてるだけだ...前と同じように、あの子とちゃんと向き合うことが怖いから、適当な理由をつけて逃げてるだけだ!」


志希父「逃げている...私が...?」


P「そんだけあの子を思ってるんなら、ちゃんとあの子にそれを自分の言葉でぶつけろよ!あの子の言葉をしっかり受け止めろよ!それが家族だろ!」

 「じゃないとあんた...絶対後悔する、あの時、なんで言葉にして伝えなかったんだって、ずっと、引きずることになる.....」

 「本当に大事な人への想いは...顔を合わせて、はっきりと言葉にしなきゃダメなんだよ!それをせずして伝わる心なんかねえんだよ!」

志希父「............」



P「それに....志希がアイドルをするのが認められないなら、なんであのデスク、志希のアイドルの写真が飾ってあるんですか!」

志希父「それは....」

P「それだけじゃない、あの時街で鉢合ったの、本当は偶然じゃないだろ!?」

志希父「ッ!」


P「志希が来ることを知っていたんでしょう!?今回の海外ロケの事、知ってたんでしょう!?」

 「さっきスタッフ内でロケ地を確認したときに気付いた...ロケ地の一つに、この大学があった。この大学の人間から、是非ともウチを使ってほしいと推薦があったって」
 
 「それ、あんたのことだろう?あんたホントは、アイドルとしての志希をその目で見たかったんじゃないのか!?」


志希父「.........!」






P「そういうの全部...ちゃんと腹を割って話し合えよ...二人で本音をぶつけ合えよ!」

 「親子そろって.....逃げてんじゃねえよ!」

志希父「私は.......」



トゥルルルルル.....
P「もしもし....ああ、そうか。分かった、こっちも大丈夫だ。じゃあまた後で」ピッ

 「志希が、見つかったそうです。これからホテルに帰ると」

 「...あなたは、どうします?」








志希父「...連れていってくれ、もう一度、志希と話をしなければならない」

P「分かりました...ああ、それともう一つ」

 「あなたの奥さん、一ノ瀬.....ですか?」

志希父「妻を知っているのか!?」

P「10年ほど前に一度だけ会ったことがあります......俺がまだ中学生だったころ、岩手にある祖父の家に遊びに行った時の事です」

 「その時、たまたま何かのお祭りがあって、その祭りの中でのど自慢大会がありました。貴方の奥さんは、そこで優勝したんです」

志希父「妻が...」

P「遠い海の向こうにいる、旦那さんと娘さんを思って歌ったそうです。とても、素晴らしい歌声でした...一度聞いただけなのに、今でも思い起こせる...
 
 「だから、俺が保証します」








   一ノ瀬さんは、決して貴方たちを恨んでなんかいなかった。貴方の奥さんは、最期まで貴方たちを想っていたんです......

ホテルに戻った瞬間、あたしは3人の女の子に抱き着かれた


志希「わっ、みんなどったの!?なんだかとっても情熱的~♪」

周子「うるさい、偶にはあたし達にも志希ちゃんの匂い嗅がせなさい」

奏「普段好き勝手されてるんだもの、偶にはあたし達も好き勝手するわ」

美嘉「勝手にいなくなって、心配したんだから!...戻ってきてくれて、ホントに良かった...」

フレデリカ「もう、皆ずるい!あたしも志希ちゃんぎゅーってしたい!ていうかする!」

志希「ちょっとちょっと、流石に苦しいよ!」

奏「だめよ、心配かけたお仕置きだもの。甘んじて受け入れなさい」

 「皆、貴方が大好きなんだから...今度からは、相談してよ....」



志希「...そっかー、ならしょうがないなあ」

  「にゃははー、心配かけてごめんねーみんな」 
  






ああ、やっぱり811プロは...



志希「それと...みんな、ありがとう。」



あたしの大事な、居場所なんだ








志希「ただいま!」

P「あーお前ら、取り込み中スマンが、ちょっといいか?」

奏「あっ、Pさん...それと」



志希「....ダッド」

志希父「志希、話したいことがある。少し付き合いなさい」

志希「...うん、あたしも、一杯話したいことがあるから」



P「というわけで、しばらくお邪魔虫は退散しましょか」

フレデリカ「はーい!みんなー!終わるまであっちでおしゃべりしてよー!それそれー、超特急デリカ―!」

美嘉「ええ!?待ってよフレちゃん!あーもう、ホテルの中走らないのー!」

周子「...大丈夫なのPさん?」

P「ああ、もう大丈夫だ。あとはあの二人が、お互いを縛ってる鎖をほどくだけ」

奏「そう...なら、信じて待ちましょ。私達は志希の帰る場所なんだから」

志希父「志希」

志希「なあに?」


志希父「お前が、今一番やりたいことはなんだ?」


志希「...ダッドは、あたしがアイドルやってるとこ、見たことある?」

志希父「...ある。こちらでも少しは話題になっていたからな」

志希「そっか...ねえ、ダッド。アイドルとしてのあたしを見て、どう思った?」

志希父「...正直、志希の才能をあの国で腐らせておくわけにはいかない。すぐに辞めるべきだと思ったし、今でもそう思っている...だが」

志希「だが?」

志希父「それと同時に、アイドルとしてのお前の姿に、見惚れてもいた...」

   「自分の娘がステージで輝くのを見て、父親として誇らしくもなった...父親として、何もしてやれなかったというのに」

   「そんな矛盾した二つの感情を生むお前の姿に、私は少しずつ目が離せなくなっていた」


志希「へぇ...面白いね」


志希父「...志希、今さらだとは思うが、謝らせてくれ」

   「あの時、お前を拒んだこと、ずっと私を支えてくれていたのに、それを踏みにじった事」

   「何より...母を失ったお前に、何もしてやらなかったこと。お前から『家族』を奪った事...」

   「本当に、すまなかった...」


志希「ダッド...」

志希父「本当は、ケンブリッジで最初にあったときにこれを言わねばならなかった」

   「だが私は、お前と向き合うことから逃げていた...お前に拒絶されるのが怖くて、自分の伝えたいこと、伝えねばならない事...謝罪の言葉すら、吐き出すことができなかった」

   「お前は賢い子だから分かってくれると、自分の臆病さに蓋をして逃げていた」

   「愚かだったよ...言葉にせずして伝わることなど、何一つなかったというのに...」

志希「...それを言うなら、あたしもだよ」


志希「あたしも、またダッドを傷つけちゃうんじゃないかって、またあたしが家族を引き裂いちゃうんじゃないかって、ずっと怖がってた」

  「あの時、ママが死んだ後もそう...ダッドに元気な姿を見せなきゃって空回りして、でも、伝えなきゃいけないことをはっきりと伝えなかった」

  「ダッド、あたしね、ママが死んじゃったとき、本当に悲しくて、悔しかった...でも、それ以上にあたしは、ダッドに元気になってもらいたかったの...」

  「だから、泣いてる姿を見せちゃだめだろうなーって...そう思った」

志希父「だから、私を慰める為に研究を....」


志希「うん、でもそれじゃあだめに決まってるよね」

  「だってあたしがあの時やるべきだった事は、ダッドと一緒に二人で一緒に泣いて...二人で乗り越えることだったんだもの」

  「なのに、自分の娘がママの死をものともしない風で、ただただ研究を進めるだけじゃ...そんなの、怖いに決まってるよね」

志希父「志希...」

志希「ねぇダッド、やっぱりあたし達って、正真正銘の『親子』じゃない?」

  「だって、親子そろって同じ間違いしてるんだもの。こんな似たもの親子、そうそういないよ♪」

志希父「...もちろんだ!お前は...パパと、ママの娘だ....!」

志希「えへへっ!そうだよね!あたし達ちゃんと家族だよね!」

  「...良かった、あたしもちゃんと『家族』を知ってたの、思い出せて!」

  「パパとママと、ちゃんと家族なの、知れて良かった!」







志希「....本当に...良かった...」

志希父「志希...」

志希「良かった....良かったよぉ....」







志希父「...おいで、志希」


志希「ダッド...パパ!」ギュッ







  「あたし、二人の娘で、本当に良かった...!」

志希父「志希、もう一度聞きたい」

志希「うん」

志希父「お前は今、何をしたい?」


志希「...もちろん、アイドル!」

  「アイドルって、本当に面白い子との連続で、興味が尽きないんだ!全く先が読めないの!」

  「それに...あたしアイドルになって、やっと...やっと、心を許せる友達ができたんだ」

  「フレちゃん、奏ちゃん、周子ちゃん、美嘉ちゃん、そしてプロデューサー...811プロの皆は、18年生きてきた人生で初めてできた、どんなものでも代替できない大切な仲間なんだ」

  
  「それに利嘉ちゃん達...ファンの皆もたくさん、あたしを、一ノ瀬志希を応援してくれてるんだ」 
  
  「そんなあたしを受け入れてくれた人達...あたしを仲間だと呼んでくれた811プロのみんなと、あたしを認めてくれたファンのみんなと一緒に、アイドルの世界を解き明かしたい!」



志希「そして、お空の上のママにも届けるんだ」

  「ママの育ててくれた志希ちゃんは、今こんなに人生を楽しんでるって!」

志希「そして、お空の上のママにも届けるんだ」

  「ママの育ててくれた志希ちゃんは、今こんなに人生を楽しんでるって!」

志希父「そうか...なら一つ、約束しなさい」

   「必ず、頂点を取ってきなさい...一ノ瀬志希はここにありとこのアメリカにも、いや世界中に届くように」

   「お前ならきっと...アイドルとして、世界を変えられるはずだ...」

   「お前は、パパとママの希望なのだから」
   

志希「...うん!任せて!」

  「だからパパも、これからのあたしを、アイドルとしてもギフテッドのあたしを、ちゃんと見ててね!」

志希「ただいまー!」

フレデリカ「おかえりなさーい!」

奏「今の気持ちはどう?」

志希「すっっっごい晴れやか!不純物全部分解しきって完全純水だよ!」

美嘉「そっか!じゃあもう安心だね!」

周子「じゃあ気を取り直してあたしの部屋でみんな遊ぼうよ!今夜は寝かさないよ?」

P「おい、明日早い...まあいいや、適当なとこでちゃんと寝ろよ」

奏「さあ、それはどうかしら?」

P「おいおい...」

美嘉「そうだ志希ちゃん、あたし達志希ちゃんのスマホの中勝手に覗いちゃったんだ。ごめんね?」

志希「別に気にしなくていいけど、パスコード分かったの?」

美嘉「うん、だから変えておいたほうがいいよ」

志希「そっかー...じゃあ気が向いたときに変えとくよ」

周子「じゃあみんなシューコちゃんルームへレッツゴー!」

フレデリカ「お菓子とトランプとウノと将棋も用意してあるよ!」

奏「将棋だけすっごい浮いてるわねそれ...」

志希「将棋かーあんまやったことないからちょっと楽しみだなー、早くやりにいこっ♪」

  「でもその前に...プロデューサー、ちょっとこっち、耳貸して」

P「?」

志希「あっ、みんなは先に行って準備してていいよー♪」

美嘉「分かった、じゃあ先行って待ってるね★」

周子「ちゃんと来てよー?失踪したってどこまでも追いかけてやるんだから!」

フレデリカ「その時はまた名探偵フレちゃんが華麗に解決しちゃうもんね♪」

奏「あら、心強いわね。それじゃあ、先に行って待ってるわね」

志希「うん!また後で!」

P「んで、なんの話だ?」

志希「...ママの事パパから聞いたよ、ありがとね」

P「俺は何もしてないぞ?ただ昔話をしただけだ」

志希「ううん、ママがあたし達を恨んでないって事、教えてくれたよ」

  「あたしもパパも、ママをずっと苦しめてたって思ってて、それで色々こじらせちゃってたからさ。でも...プロデューサーがそれは間違いだって教えてくれたから、あたし達、やっと自分たちに巻いた鎖をほどけた」

  「だから...ありがとうプロデューサー、そして....」




志希「これからもプロデュースよろしくね!あたしに、あたし達に、もっともっと楽しいアイドルの世界を見せてよ!」

P「...ああ!勿論だ!」

あの後、皆で色んな事を語り合って絆を再確認した私達は、翌日以降のロケにもかつて無い程の集中を持って臨んだ
自分にとっての『家族』を思い出した志希の演技は飛びぬけて輝いていて、それを間近で見ていた私達もそれに呼応するかのようにお互いを高め合っていった



そして最後のシーンの収録が終わったとき、私達は確信していた




この映画は、間違いなく大成功だと...

P「えーというわけでこの一週間、みんなお疲れさま!」

奏「ええ、プロデューサーもね」

美嘉「アメリカともこれでお別れかー。寂しいけど、日本に帰って家族にロケの話いっぱいしたいって気持ちも大きいかな★」

フレデリカ「志希ちゃん、パパにまたねーって言ってこなくて大丈夫?」

志希「大丈夫、もう一杯話したし!...それにこれからは、アイドルのあたしを、ちゃんと見て貰えるって分かったから!」

P「オイオイお前ら、確かに明日の今頃には日本の地面を踏んでいるだろうが...今日が終わるのはまだ早いぞ?」

美嘉「どういうこと?」


周子「....あーそっか!まだ今夜は予定があったね♪」

奏「予定?」

P「ああ、アメリカ旅行最後のシメは...あの有名ホテルで記念パーティーだ!」

全員「!!」

P「他の事務所の人達もやってくるから、色んなアイドルと関わって、存分に楽しんで来い!」

周子「ご飯は?」

P「もちろんご馳走がたんまりと出る立食パーティーさ、たんまり食って来いよ」

周子「やった♪」








フレデリカ「タッパーで持って帰れないかなー?」

美嘉「空港で止められるかもしれないから止めときなよ...」

奏「このホテルが、会場...?」

周子&美嘉「「で、でっかーー!!!」」

P「国内でもトップクラスのホテルらしいからな、流石金かかってるわー...」

フレデリカ「すごーい!ウチの事務所何個分かな?」

志希「ん~...ざっと2桁後半は行くんじゃない?」

P「むしろウチどころか、010プロだってタジタジになるレベルのデカさだと思うぞ...」

 「まっ、今回企画に参加してる全ての事務所が集まるってのもそうだし、業界の重鎮達が集まって大事な商談やら意見交流をする場でもあるからな。こんぐらい豪華じゃないとダメなんだろうさ」

奏「交流ね...私達も色んな人達に顔を売っておいたほうがいいかもね。次の仕事につながるかもしれないし」

P「そういうこった、他のアイドルとも、映画業界の人達に話しておくのも悪くないと思うぞ」

 「まあ、折角だしイイもの食ったりおしゃべりしたりして楽しんでおけ」

周子「そういえば今回010プロも参加してるんだよね?てことはトラプリも...」

P「ああ、トラプリは010の映画の主演だったはずだ、きっと来てると思うぞ」

奏「あら、本当?」

周子「やった!久々に会いにいこーっと!」

     ===========会場=================

P「じゃ、また後でな」

美嘉「プロデューサーはどうすんの?」

P「折角業界の偉い方々が大勢来てるんだ、プロデューサー兼社長として色々お話しに行っとかないとな」

奏「なら、頑張ってきてね」

P「ああ、んじゃ行ってくるわ」

フレデリカ「じゃああたし達も遊んでくる―!」ビューン

志希「あたしもあたしもー!」ビューン

美嘉「ちょっ、そんなに走ったらあぶないって!...行っちゃった」

周子「まあ大丈夫でしょ、あたし達も楽しもーや♪」

奏「ええ、折角のパーティーだもの。ここ一週間ロケで忙しかったし、偶には思いっきり羽を伸ばしましょ」

???「そうそう!折角の立食パーティだもん!楽しまないと損損!」




...?いま私達以外の声がしたような....

奏「って貴方たちは!」


加蓮「やっほー!久しぶりだね811プロのみんな!」

凛「やっぱりみんな来てたんだね」

周子「加蓮ちゃん!それに凛ちゃんも!」

美嘉「...あれ?トラプリって3人組だよね?一人足りなくない?」

凛「ああ、奈緒ならあそこで固まってるよ」

周子「えっ?」


奈緒「すげぇ...本物のシュウコとカナデ総統と美嘉軍隊長だ!すげー!」

周子「いやそりゃ本物だけども...てか最近はあんまかち合う事なかったけどちょくちょくオーディションで対決しとるやん」


あの周子と加蓮のオーディションでの対決以来、私達とトライアドプリムスは多くのオーディションでぶつかり合ってきていた
お互い勝率は五分五分といったところだけど、トライアドプリムスとの戦いは勝っても負けても得るものが多くて、毎回貴重な経験を積むことができるのよね

加蓮「いやーなんか最近奈緒ったら『銀河戦神シュウコ』に嵌っちゃったみたいでさ、DVDも全巻買っては一気見して翌日寝坊してきたこともあったし」

周子「奈緒ちゃん、ロボット物も守備範囲やったんやね」

奈緒「実はこの前の映画公開記念イベントも変装して行ったんだ...等身大FULL・ムーンに生の役者たち...めちゃくちゃ楽しかったよ!」

奏「ふふっ、ありがと!」

周子「てか来てたんなら言ってくれりゃよかったのに」

奈緒「そりゃダメだよ、他のファンもいっぱいいたんだしアタシだけ特別扱いしてもらうのも嫌だからさ」

美嘉「成程!アイドルとしてもファンとしてもプロなんだね奈緒ちゃん!」

奈緒「そういうこと!」

凛「でも、私は美嘉に会えたのが一番うれしいかな」

美嘉「あたし?」

凛「私、美嘉を見てアイドルに憧れてこの業界に入ったの。その憧れはBランクになった今でも変わらない、美嘉は私の憧れなんだ」

奏「あら、気が合うわね」

周子「あたし達がアイドル目指すきっかけも美嘉ちゃんだったもんね」

美嘉「えへへ...なんか照れるなぁ」

加蓮「...ねぇ、あたし思うんだ」

  「もしこの先アイドルのてっぺんを狙う時、その時ぶつかるのはきっと811プロだろうなぁって」

奏「...ええ、私も、トライアドプリムスは最大のライバル、そう思っているわ」

加蓮「だよね!...だからお互い、ここからもっと上を目指そう!」
  「そしていつか、頂上で戦おう!」

凛「そうだね、その時は負けないよ」

美嘉「もちろん!折角みんなの憧れになれたんだもん!最高の舞台で、皆と踊りたいな★」

奈緒「あたしも、一緒に歩んできた凛と加蓮、そしてあたしに最高の夢を見せてくれてるあたし達のプロデューサーと一緒に頂点を目指す!」

周子「あたしも811プロの皆と、本気でトップを狙っていくよー♪」

トラプリ「だから」

811「だから」




全員「いつか頂上で戦おう!」

加蓮「よし!じゃあシリアスなムードを出したところでパーティーに戻ろう!」

周子「さんせー♪おっ!あれ美味しそう!」

奈緒「ちょっと加蓮!お前さっきから脂っこいもん食い過ぎだぞ!?もっと栄養あるものをなぁ!?」

美嘉「周子ちゃん盛り過ぎだよ!食べられる分だけにしなって!」


奏&凛「...ふふっ!」

美嘉ちゃんの忠告を無視して走ると、やっぱ危ないわけで
あたしは案の定前から歩いてきたにぶつかってしまうのでした



ドンッ!
男「ってえ!気を付けろ!」

志希「あっ!ごめんね?」


...あれ?
なんかこの顔、それにこの匂い、既視感があるような...

志希「...ん?お兄さんどっかで会ったことある?」

男「!...気のせいだろう。んじゃ俺急いでるんで!」

志希「そうなの?じゃあねー!」


んー?まあ思いだせないって事は、大して興味深い人じゃなかったんだろう
...だと思うんだけど、なーんか引っかかるんだよねー


フレデリカ「志希ちゃん大丈夫?」

志希「全然大丈夫だよー!やっぱ美嘉ちゃんの言うことは聞いとくべきだったね」

フレデリカ「そうだねー、フレちゃん反省。ちょっとゆっくり歩こうか」

志希「そうだねー、じゃあ気を取り直して冒険に出掛けよー!」

フレデリカ「おー!...あれっ?早速お宝見つけたよ!」

志希「えっ、どれどれ...?」

フレデリカ「なんかのカードかなあ?よっと、カードは拾った!」

志希「これ、名刺だね。さっきの人が落としてったのかな。なになに...?」





         阿苦都苦出版



志希「阿苦都苦出版...?」

フレデリカ「さっきの人記者さんだったんだ!どうする?返しに行く?」

志希「....いや、貰っとこうよ!名刺だしもともと配るものでしょ!」

フレデリカ「それもそうだねー♪じゃあ次の目的地までレッツゴー!」

志希「おー♪」

皆と一旦別れ、いろんな人と話しながらパーティーを楽しみながら歩いていると、プロデューサーさんが誰かと話しているのを見つけた

プロデューサーさん、随分親しく話してるみたいだけど、相手の男性は誰かしら?
結構年を取ってるように見えるし、映画業界のお偉いさんかしら?


奏「プロデューサーさん、お仕事は順調?」

P「奏か、まあぼちぼちってとこかな」

男性「確か君は....811プロの速水奏君だったかな?」

P「はい、ウチのエースなんです」

男性「そうか...P君、なかなか見る目がある様じゃないか」

P「そんな...ただ運が良かっただけですよ」


奏「それで、貴方は一体...?プロデューサーさんのお知り合いですか?」

男性「私かね?私は『891プロ』という事務所で社長をやっているものだよ」

奏「891プロって...えっ!あの891プロ!?」

P「ああ、アイドルだけじゃなく芸人、歌手、モデルと多くの芸能分野の最先端を行く、あの超大手芸能事務所の891プロだ」

 「アイドル部門以外での稼ぎも考えると、010プロの倍はでかい事務所だな」


奏「プロデューサーさん....そんな大きな事務所の社長さんとどんなご関係?」

P「んー...まあかつての仕事仲間で、恩人ってとこかな」

奏「恩人...?」

891社長「...おっとすまない!私は次の商談があるので失礼させてもらうよ。P君、またいつか会おう!」

P「はい!またいつかお会いしましょう!」





....プロデューサーって、何者?

その後、それぞれでパーティーを楽しんだ私達はホテルへ戻った後、一週間たまりにたまった疲れ癒そうとすぐにベッドに沈んだ

そして翌日......


        ========空港============

全員「ただいまー!」

周子「いやー、とうとう帰ってきたねー日本」

フレデリカ「なんか今思うとあっという間だったねー♪」

志希「うん、たった一週間だったからね」

  「でも...すっごく面白い一週間だった!」

美嘉「ていうかあたし、調子に乗って家族へのお土産買いすぎちゃった★...重い」

奏「ちなみにプロデューサーさん、明日からの予定はどうなってるの?」

P「海外ロケ開けだからな、念のため明日から3日は全員オフにしてある」

 「だがオフが明けたら完成記念LIVEがあるからな、皆時差ボケとかしっかり治して、体調整えておくように」

全員「はーい!」

周子「なんかまとまった休みって久々な気がするね」

美嘉「それだけあたし達が成長してるって事だよ!」

奏「そうね、そして今回の映画出演でもっともっと、私達は階段を上ることができるはず」

 「これからもこの調子で、皆でアイドルという果てしない階段、駆け上がっていきましょう!」


周子美嘉志希フレ「「「「おー!!」」」」

フレデリカ「そうだ!折角みんなお休み一緒なんだし、皆でどっか遊びに行こうよ!」

志希「さんせー!」

美嘉「じゃあ、この前渋谷の方に出来た新しいカフェとかいってみない?」

奏「ああ、あのプリンが美味しいって評判のとこね。いいんじゃない?」

周子「プロデューサーは?どっか行きたいとこある?」

P「えっ、俺?」

周子「だってプロデューサーも休みでしょ?なら一緒に行こうよ」

P「いやいや、俺はまだLIVEの打ち合わせとかその他諸々の仕事があるから休みじゃねえよ」

フレデリカ「えー!?」

美嘉「どうしても駄目なの?偶にはしっかり休むことも大切だよ?」

P「ちゃんと休めるときにしっかり休んでるから大丈夫だよ」

 「それに、アイドルが集まって遊んでるとこに俺みたいなおっさんが混じって変な噂立てられても困るだろ?だから俺の事はいいから皆で楽しんできな」

周子「そっか...でも今度はPさんも一緒やからね?」

P「まあ、そのうちな」

奏「...なんか適当に誤魔化そうとしてない?」

P「気のせいだよ。んじゃお前ら、とりあえず今日は現地で解散ってことで、俺は用事あるから帰るわ」

 「お前らも気を付けて帰れよー!」

奏「..........」




....本当に、気のせいなのかしら...ね?

         【速報!!】




奏「『イチノセ』め...やってくれたわね....」


iDOL MOVIE BIGBANG参加作品

奏「ミスティックエリクシル....あれは我が組織にとって『存在した』という痕跡すら残してはいけないものよ」

 「必ず、組織の総力を挙げて末梢せねばならない」

構成員「ボス!例のブツの手がかりが見つかりました!」

奏「...続けなさい」

構成員「はっ!戸籍を改変されていたので今まで発覚していなかったのですが、奴にはどうやら娘がいたようで!」

   「奴は生前、その娘に例のブツの手がかりらしきものを渡していたようです!」

奏「して、その娘の名は?」








志希「くしゅん!」

志希「んー、誰か志希ちゃんの事噂してる?」

      811プロ総出演!!


黒服「イチノセシキだな?」

志希「あー、キミあんまいい匂いしないからデートの誘いならパスね」

黒服「...ついてきてもらおうか」

志希「きゃっ!ちょっと何なのさ!乱暴するようなら警察を」

黒服2「少し黙っていてもらおうか」ゴンッ

志希「ッ!.....」ガクッ

黒服「手間取らせてくれる...行くぞ」

黒服2「げへへ、これで俺たちも昇進間違いなしだな」





???「うーん?残念だけど解雇だと思うよ?」

黒服「なっ、だれd!」バキューン

黒服「」

黒服2「ア二キ!」

???「ごめんね?」ザシュッ

黒服2「がっ!そん、な...」ガクッ





???「あーあ、折角お気に入りの服だったのになー」

志希「うーん...あれ、確かあたし殴られて...」

???「おはよー!」

志希「...キミ誰?」



一人の少女の平穏は今



???「というわけで!志希ちゃんはアタシが組を乗っ取るための人質になってもらいます!」

志希「人質!?ってかキミ誰!?」

???「アタシ?」
フレデリカ「アタシはフレデリカ!ふつーのギャングの女の子だよー♪」



イカれたギャングにより脆くも崩れ去る!



志希「ギャングはフツーじゃないでしょー!」

美嘉「一ノ瀬志希さん、貴方は今この国最大のギャング『ヴァニタス・ファミリー』に狙われています」

フレデリカ「つまり志希ちゃんはあいつらにハチの巣にされるか、命がけであたし達の人質になるしか選択肢ないってワケ♪」

志希「ていうか警察のくせになんでギャングの仲間なの?」

美嘉「やむを得ない事情があるの!あたしだって嫌だよ!」

フレデリカ「つれないこと言わないでよー、あたし達の絆パワーは全米一でしょ?」

美嘉「あんたのせいでどんだけ痛い目見てきたと思ってんのさ!?ほんっとに不本意なんだから!...ッ!皆伏せて!」


ドカーン!!



少女を巡り暴走するギャングたち




黒服「『イチノセ』の娘を渡せ!」

美嘉「一ノ瀬さん、ここに隠れてて」

志希「でも!」

美嘉「大丈夫、あんなチンピラなんかには負けないから」



数十秒後

黒服の山 チーン

フレデリカ「お片付け終わり―!」

美嘉「アンタねぇ!あたしまで巻き込むところだったじゃん!」

フレデリカ「あははー!メンゴメンゴ!」

志希「ワーオ!...これ現実?」

周子「やめときや、こいつらはあんた達にゃ荷が重いて」

黒服「アンダーボス!」

志希「アンダーボスだって!?」

美嘉「『ヴァニタス・ファミリー』のナンバー2って事ね」

周子「シュウコ・シオミいいます、よろしゅーな♪」
  「ああ、別に覚えてくれなくてかまへんよ?あんた達はここで首と体がおさらばするんやし❤」





フレデリカ「あははっ!周子ちゃんすごーい!」

周子「せやろー?どうやらあんたもあたしと同類みたいやね」

美嘉「ちょっとフレちゃん!今はこいつと争ってる場合じゃないって!」

志希「まるで映画みたいだね、美嘉ちゃんポップコーン買ってきてー♪」

美嘉「あんたも呑気なこと言ってないで逃げるよ!」


そして少女は、自らの『運命』を知る

美嘉「一ノ瀬さん、よく聞いて...」

志希「えっ...」

       

志希「このまま終わりになんてしない。パパが私に命がけでつないだこの思い...絶対に守り抜く!」

  「お願いフレちゃん...力を貸して!」

フレデリカ「....うん!分かった!」

志希「なっ!あいつは!?」


周子「やっと決着がつけられるねぇ!フレちゃん!」

フレデリカ「...ごめんね?今はまじめにやらなきゃいけないんだ」

周子「つまり今まで本気じゃなかったって事...?いいじゃんいいじゃん!つまりあたしも本気でぶっ殺しに行ってもいいって事だよねぇ!!」

         



周子「ごめんね奏...負けちゃった...」

奏「いいのよ...貴方は十分役に立ったわ」チャキッ

志希「えっ?」

フレデリカ「危ない志希っ!?」

     バキューン

   

志希「ママ...ママ!」

  「ずっと、ずっとあたしを守ってくれてたんだね....」

フレデリカ「志希....大きく、なったね♪」

志希「ママァ!!!」

     主題歌『PROUST EFFECT』(一ノ瀬志希)


奏「まさか、なぜ貴様がそれを!?」

志希「これが、パパとママの残してくれた最後の希望!」  
  「あたしが、全部終わらせるんだ!」


      LAST NOTE
        女神の香水

       来週ロードショー





フレデリカ「同時上映は、うえきちゃんの地球侵略物語!」

      =======LIVE会場=========

奏「というわけで、来週から私達が出演する『LAST NOTE』がロードショーされるわ」

美嘉「ハリウッドでのあたし達の活躍、みんな目に焼き付けてねー!」

ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!

ワーオ、すっごい熱気!
パパも、ママも、こうやってアイドルやって観客を熱狂させる志希ちゃんを見て、笑顔になってくれてるかな?

....やっぱり、アイドル続けてて良かった!

とと、そろそろ出番だよね

周子「てなわけでー、今日の主役の登場だよ!」

フレデリカ「志希ちゃん!キミに決めた!」

舞台から、仲間があたしを呼ぶ声がする

どんな時でも答えてあげたくなる、あたしのかけがえのない仲間の声が

だから...期待には応えなくっちゃね!

志希「やっほー!呼ばれて飛び出て志希ちゃんだよー!」

ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!

志希「今日は主題歌にもなったあたしの新曲、『PROUST EFFECT』の初披露だよー!楽しんでいってね!」

イヨッシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!

あたしを受け入れてくれる、たくさんの歓声に答えるために前に出る
その時、ふと優しい匂いがした



客席のど真ん中に、あたしに笑顔を向けるパパがいた

そして

その傍らに、優しく微笑むママが見えた気がした

....そっか

二人とも、見に来てくれたんだね

....なら


志希「みんなー!今日は皆の視覚野に、皆の人生史上最高で刺激的な物、焼き付けてあげる!」
  「だから皆!思いっきり楽しんで!アリーナの香りを嗅ぐたびに、脳が今日の事を思い出すくらいに!」

最高のトリップ、させてあげないとね!






パパ、ママ、見ててね!

いつか二人の希望が、トップアイドルになるところを!

         




          Chapter11 「My Hope Eau De Toilette」






その後、記録的な成功を収めた記念LIVEの影響も相まってか、「LAST NOTE」は大ヒット!
海外でも公開され、811プロのアイドル達の名は海の向こうでも確実に広まっていった....



でも、私達はまだ気づいていなかった
このiDOL MOVIE BIGBANGに、アイドル業界に潜む真っ黒な闇が潜んでいたという事を
物語を動かす歯車が、少しずつ狂い始めているということを






それは、『私達』の物語が大きく動き始める予兆だったということを、この時の私達はまだ、知らない

P「369、WEST、193...あと456はシロ...か」

 「まだまだ手が届く気はしないが...あの子達のおかげで確実に近づいていることは確か」

 「...必ず、突き止める」
  
 「そして、いつか来るその時は....」


     必ず、俺の手で!








To Be Continued......

映画予告にやたらレスを割きすぎたことを反省しつつChapter11終了です

やっと、話が前に進むんやなって.....

なお、次の話で少し改稿しなきゃいけないところができたので次回更新は少し時間が開くかもしれません

次の話の修正がまだ終わってないので今日の更新はなしで

あと見直して気付きましたがChapter10誤植多すぎですね...
特に>>501でフレちゃんが謎の番組名を出していますが、これは番組名を試行錯誤しながら書いてた時のを修正し忘れてたからです。すいません...

単純な疑問なんですが…

ここまでざっと見る限りにおいて、このスレには作者さんしかいないですよね、ここ数日は。
一体何の為に書いてるんですか?
SSのスレって、書きながら読者の反応がリアルタイムで見られるところがいいんじゃないかなと思うんですけど、ここってそうじゃないですよね。作者さんが完成まで書き込まないで、という呼びかけをしたなら別ですが…
こうして公開しながら書いて、何の反応もないって虚しくならないですか?
作品について言えば、端的に言ってすごく読み辛いです。
オリジナル設定が随所にあって、せっかくのキャラが活かせていなくて。
SS(ショートショート)である以上は、もっと手軽に、スキマ時間に読み切れるものをどうしても期待してしまいます。

多分最初の頃にいた人も、そういう所が苦痛で離れたんだと思いますよ。

突然出てきてグダグダ言ってすみませんでした。

静かに楽しんでる奴もここにいるんだがなぁ

たとえ内容が気に入らなくても
少なくとも書いてるやつの邪魔をする権利はないな

最後まで書ききることに意味があるからめげずに頑張れよ

俺は見てるぞ

昨夜書き込んだ者です。

書き込まなくとも読者の方が沢山いらっしゃることを知らず、皆様に不快な思いをさせることをしてしまい、申し訳ありませんでした。

折り返しに来ていると思いますので、今後も執筆、頑張ってください。

スレ汚し、大変失礼致しました。

>>612 貴重なご意見ありがとうございます
確かに自分の実力が不足している事、ssとしては冗長すぎる事、せっかくの版権キャラの魅力を活かしきれていない事は痛感しています
それでもなぜ書き続けるのかと聞かれたら、こう答えるしかありません

書き終えるためだと。


私が一度始めた物語は私自身の手でしっかり完結させなければいけない。そう考えているからです
そうしないと、次に活かす為にどういったところを今後改善していくか、その分析すらできませんから

あとはやはり一話一話丁寧にまとめてくださる方、そしてそれを見てくださる方々
たとえ肯定的な意見がないとしても、一人でも読んでくれている人がいるのなら、その方々の為に私は投げ出したくありません。

もちろん、私がまだまだ未熟であること、それ故に多くの批判を受けてしまうことは当然であることは承知しております!
なのでどんな感想もすべて真摯に受け止め、少しずつ改善できるようできる限りの努力はしていきますので、どうかこのまま完結まで書き続けることをお許しください

丁寧なご指摘、本当にありがとうございます!

>>613
>>614
応援ありがとうございます!マジで励みになります!

>>615
ありがとうございます!

>>616
いえいえ!むしろ貴重なご意見本当にありがとうございました!励みになります!

それではChapter12、投下始めていきます

どうしても時間の捻出ができず更新が深夜になってしまうのは申し訳ない.....

iDOL MOVIE BIGBANGが成功してから少し後
季節は秋の中頃、段々と肌寒くなってきて外出にコートが欠かせなくなってきた頃

今を時めくカリスマギャルことあたし、城ケ崎美嘉は、かつてない危機に陥っていた

それは....


美嘉「ど、どうしよ...」

奏「これは...多分マズい...のよね?」

美嘉「うん....すっごく」







\  バアァァァァァァァン!!!!  /
(模試の結果)





大学受験である!!!!!





Chapter12「The enemy of the White paper!!」



美嘉「やばいって、もう完っ全にヤバいって!」

奏「落ち着いて美嘉、焦り過ぎて語彙力が無くなってるわよ」

周子「大丈夫だよ美嘉ちゃん。あたしだって大学行ってないけど何とかなってるし!」

P「いや、お前は大分特殊な例だからな...?」

 「まあ実際、ちょっとでも行く気があるなら大学はちゃんと行っといたほうがいいぞ。後から行っといてよかったってちゃんと思えるから」

周子「経験者は語るってやつ?」

P「そんなところだ。将来の選択肢が増えるって意味でも、単純な経験としても、行っておくに越したことはない」

奏「私も来年には通る道だし、他人事じゃないのよね...」

周子「ふーん...まっ、あたしは今さら行く気はないかな。やりたいことは、ちゃんと見つかってるし」

美嘉「あたしは...やっぱり大学行っとかなきゃって思う...将来の事もそうだし、これじゃあたしのイメージ丸つぶれだし!」

P「ギャル路線ならむしろいいんじゃねえのか?『ビリギャル』とか前にあったろ」

美嘉「あたしの路線は『カリスマギャル』でしょ!学業もシャキッとしなきゃダメ!」

  「ていうかそれ最後は東大行く話じゃん!全然頭いいでしょ!」

志希フレ「「ただいまー!」」

奏「あら、お帰り二人とも」

フレデリカ「あれれー?美嘉ちゃんどうしたの?顔怖いよー?」

周子「なんか模試の結果が悪かったらしいんよ」

志希「模試―?...あー、そういやセンター来月だっけ?興味ないから忘れてたー」

奏「志希....あなたも高3なんだからちょっとは興味持っておきなさいよ...」

志希「いやー志希ちゃん今更こっちの大学に興味ないし、べつにいいかなって」

周子「まあアメリカの大学と比べちゃあね...」




確かに、MITなんて行ってたんだから今更日本の大学に行く気なんか起きないよね

....待てよ?

美嘉「そうだ!志希ちゃん勉強教えてくれない!?特に化学!もうあたし化学の教科書燃やしたいくらいに苦手なの!」

P「その気持ちすげぇ分かる」

志希「いいけど、あたし教えるのは凄いヘタだよ?」

周子「いっぺんやってみたら?志希ちゃん化学は得意分野でしょ」

フレデリカ「志希ちゃん頑張れー!」

志希「うーん...まあやってみるよ。それで美嘉ちゃん、どのあたり教えてほしいの?」

美嘉「えーと、この辺の化学式なんだけど」

志希「あーこれはね....」





30分後




志希「ていう事なんだ...ってアレ?」



美嘉「」チーン


せ、説明が詳細過ぎて、逆に複雑で分からない.......

奏「あの...途中から全く分からなかったのだけど」

周子「Pさんとかもう寝てるよ」

P「Zzz......ん、終わったか?」

フレデリカ「ワーオ!志希ちゃんラリホー使えたんだね!」

志希「あー...やっぱりね。あたしパッと見て答えは浮かぶんだけど、それを言葉にして伝えるってのがなんか苦手でさー。多分ほかの教科でも一緒だよ」

  「だからあたしは教師役には向いてないかなー...ごめんね?」

美嘉「ううん、ありがとう志希ちゃん」

志希「でもこの模試の結果ならもっと志望校のランク落とせば合格できるんじゃない?赤点って程のレベルではないし」

P「確かに、最近勉強する暇ほとんどなかったはずなのにここまでは取れてるんだろ?そこまで悲観することではないと思うが」

美嘉「まあ大学に行くだけならそれでもいいんだけどさ....」



そうすれば、確かに大学に行くって『目的』だけは果たせる
けど...

美嘉「あたし、この大学のこの科で、どうしても学びたいことがあるの。だからどうしてもここがいい」

   「それに、そうやって妥協する道を選ぶのはあたし嫌なんだ。あたしはいつだって自分に誇れるあたしでいたいから、何事も手を抜きたくないの」

フレデリカ「美嘉ちゃん...なんかカッコイイね!」

奏「ねぇプロデューサーさん、なにか一つくらい教えてあげれる教科無いの?」

P「強いて言えば英語は....ギリギリ平均点足りないくらいだった」

周子「いや足りてないんかい」

P「うっせ、そう言う周子はどうなんだよ」

周子「あー...ぼちぼちだったけど、もう忘れてるかなー」

   「それに美嘉ちゃんの高校とあたしの学校じゃ偏差値が雲泥の差だし、そもそものレベルがね...寧ろあたしの方が教えてもらうことになりそう」

フレデリカ「美嘉ちゃんの学校、頭いいもんね♪」

志希「フレちゃんはどう?高校の勉強思い出せる?」

フレデリカ「補修常習犯だったことは覚えてるよー♪」

美嘉「つまりフレちゃんもダメって事か....」




フレデリカ「あっ!フレデリ学なら満点だよ♪」

P「俺も音楽ならいけるぞ!」

奏「どっちも大学受験には必要ないでしょ....」

周子「...そうだ!青木さんならどうかな?」

美嘉「!!」


確かに、いつも大人っぽい雰囲気のあの人なら望みはあるかも!


P「何言ってんだ、あの人脳筋だからトレーニング以外の事はてんでダメだぞ。鉛筆転がしてテスト突破してたらしいし」

美嘉「秒で望みが断たれた!」

P「いやぁ、ゴリラが人の学問を理解できるわけないだろ?」

ベテトレ「誰がゴリラだって?」


P「えっ?......」
  「ヒィッ!!いつの間に!?」

ベテトレ「P」

P「あの、お情けを...」





ベテトレ「有罪(ギルティ)」

P「あっ、やめっ、アッーーーーーー!!!」

Pだったもの「」チーン

ベテトレ「まったく......」

周子「ていうかベテトレさん、今日は休みじゃなったっけ?」

ベテトレ「そのつもりだったんだが、そろそろ城ケ崎が受験期だったことを思い出してな。だから、城ケ崎の力になってくれる助っ人を連れてきた」

美嘉「ホント!?トレーナーさん、折角休みだったのにわざわざありがとう!」

ベテトレ「気にするな、こういう事は学生アイドルにはよくあることだからな」

奏「それで、その助っ人っていうのは?」



ベテトレ「ああ、入って来い早苗!」

P「....今誰呼んだ!?」

トレーナーさんの合図とともに、ドアがゆっくり....ではなくかなり大きな音を立てて勢いよく開いた


早苗「やっほー!811プロの諸君!」

  「あたし片桐早苗!警察官やってます!よろしくね♪」


ドアの向こうに立っていたのは、ものすっごいスタイルの良いセクシーお姉さん、片桐早苗さん
後にあたしの家庭教師になる人だった

P「片桐さん!?」

早苗「おーすP君久しぶりっ!最近頑張ってるみたいじゃない!」

P「あ、ありがとうございます...じゃなくて、何でいるんですか!?」

ベテトレ「私が城ケ崎の家庭教師をしてもらうために呼んだんだ」

P「美嘉の受験をサポート......えっ、片桐さんが?」

早苗「何よ、なんか文句あんの?」

P「いや...片桐さんって頭良かったんですか?」

早苗「あのねぇ、一応警察官なれてるんだからそれなりに良いに決まってるでしょ。こう見えても地元の高校じゃ特進クラスだったのよ?」

美嘉「特進!?」

P「ま、まじかよ...」

奏「というか、片桐さんはプロデューサーさんの知り合いなの?」

P「俺と青木さんの共通の知り合いだよ」

早苗「後、ちひろちゃんもね♪」

周子「そういや、前に警察官の知り合いがいるみたいなこと言ってたね」

美嘉「警察官の知り合いがいるって、プロデューサー何か悪いことしたの?」

フレデリカ「校舎裏でタバコ吸ったり―?それとも学校のガラス割って回ったりー?」

志希「もしかして...怪しい薬でトリップしてたりー♪ハイスクール通ってた時クラスメートがそれで捕まってたなぁ」

P「何もしてないしタバコはむしろ嫌いだ。てか志希のそれはマジで犯罪じゃねえか」
 
  「...まあ、色々あったんだよ」

早苗「そうねぇ、『色々』あったわねえ」





....『色々』?





P「.....とにかく!協力してくれるなら有り難い!どうか美嘉の事、よろしく頼みます。」

美嘉「お願いします片桐さん!!」

早苗「オッケー!お姉さんに任せなさい!」

早苗「んじゃ早速...といきたいところなんだけど、その前にもう一つ話しとかなきゃいけないわよね聖ちゃん?」

ベテトレ「ああ...P、今週の『週刊スクープ』を読んだか?」

P「まだです、そういや今日発売でしたね」

奏「週刊スクープ?プロデューサーさんああいう雑誌も読むのね」

P「まあ業界の情勢とか知っとかなきゃいけないからな、芸能関係の記事が載ってる雑誌は一通り読んでるよ」

周子「あたしも一応事務員としての仕事もあるし、Pさんの買ってきたのを読んでるんだ」

   「でも...週刊スクープってゴシップ中心の雑誌じゃなかったっけ?あの雑誌がどうかしたん?」


ゴシップ雑誌って....まさか!?


美嘉「もしかして...何か811プロの悪い噂書かれてたりとか!?」

ベテトレ「いや、そう言うわけでは無いのだが...」

美嘉「あれっ、じゃあ何で?」

ベテトレ「見てもらった方が早い...これだ、この記事」




 

 『369プロ、賄賂の実態!!』

 『WESTプロのあのアイドルに熱愛報道!?』

 『456プロの人気アイドル、不正だらけだった!?』








奏「......ほとんどのページが、アイドルとか芸能事務所の不祥事の記事ね」

志希「でも、ゴシップ雑誌ならこれが普通なんじゃない?」

周子「いや、いくらなんでも記事がアイドル関連に偏り過ぎだよ。いつもならもっと政治家とか芸人とかの記事も多いもん」

   「それに、ゴシップ中心なだけで専門ではないからね。普通のニュース記事だってちらほらあるはずなのに....今回はそれがマジで一つもない」

フレデリカ「369プロにWESTプロ、それに456プロかー.....どっかで聞いたような気がするなー?」

美嘉「そりゃあ何処も有名な事務所だし、聞いたことくらいはあるでしょ」

フレデリカ「うーん、そうかなぁ....?」









P「...全部、iDOL MOVIE BIGBANGに参加した事務所だ」

全員『!!』

ベテトレ「その通り。だが参加した全部の事務所が取り上げられている訳じゃないようで、この3つの事務所以外に関する記事はなかった」

     「だから確実にiDOL MOVIE BIGBANGへの参加が理由で狙っているとまでは言えないが...」

早苗「一応、用心した方がいいわね。最近カメラ持ってうろつく不審者が多いって話も聞くし」

奏「そうね...私達も隙を見せないように気を付けましょう」

  「それにしても、自分と関係ないものでもやっぱりこういう人を貶める記事は、あんまり見てて気分いいものではないわね...」

周子「綺麗なことばっかの業界じゃないって、分かっちゃいるんだけどね....やっぱこういうの書くやつはちょっとムカつくかな」






志希「........」

フレデリカ「志希ちゃん、これって」

美嘉「どうしたのフレちゃん?」

フレデリカ「んー、この雑誌ってどこの出版社が出してるのかなーって見てたんだけど」

奏「えーっと......『阿苦都苦出版』って書いてあるわね。これがどうかしたの?」





フレデリカ「アタシ達、あのパーティーでこの出版社の人と会ったんだ」

全員『!?』

P「何だと!?」


志希「うん、確かここに...あった」


志希ちゃんのポケットから一枚の名刺が取りだされた


志希「これ、パーティーであたしがぶつかっちゃった男の人が落としていったんだ」

奏「....確かに、阿苦都苦出版って書いてあるわね」

P「阿苦都苦出版っつったら業界じゃ悪印象しかない出版社だ。そんな出版社がどうやってあの会場に入った?警備員もちゃんといたし、まず門前払いされるはず...」

フレデリカ「んー...わりと堂々と歩いてたよー?」

周子「んなアホな!だってあのパーティーはホントに沢山業界の偉い人達が集まってたんだよ?そんな場所をゴシップ雑誌の記者が堂々と歩けるわけが....」









志希「....そうだ!思い出した!」

志希「....そうだ!思い出した!」

美嘉「思い出したって?」

志希「あの時ぶつかった人、どっかで嗅いだ覚えのある匂いだと思ってたんだけど、やっと思い出した!」
   「あたしとフレちゃんの初仕事の時だ!」


フレデリカ「!」

P「もしかして、あの時の偽見張りか!?」

志希「そうだよ、あの人と匂いが同じだった!」

美嘉「その見張りって、確か志希ちゃんとフレちゃんの仕事中に悪い人送り込んで邪魔しようとしたってやつ?」

志希「うん、思い出してみれば背格好とかもよく似てた。ずっと前の事だし、すぐに興味失くしたから忘れちゃってたけど...」

フレデリカ「あの人、阿苦都苦出版の人だったんだねー。でも、だったらなんであの時はテレビ局でスタッフやってたんだろー?」

周子「それにさー、なんであの時阿苦都苦出版は、まだデビュー前で世に出てなかった志希ちゃんとフレちゃんを狙ったん?」

   「仮にネタが欲しくて自作自演で撮影を失敗させても、デビュー前の新人の失敗なんて大したスクープにならないよね?」

P「....分からない、だがさっきの名刺のおかげで、いくつかはっきりしたことがある」

  「今回被害にあった事務所は、間違いなくiDOL MOVIE BIGBANGへ参加したことがきっかけで阿苦都苦出版に狙われた」

  「そして....今回は無事だったが、一度狙われたことがある以上ウチも今後狙われる可能性が高い」

奏「今まで以上に警戒しろって事ね...」

P「そういう事だ。とりあえず皆今日はもう予定ないからこれで解散とするが、帰り道には十分気を付けるように」

全員『はーい!』


早苗「美嘉ちゃんはあたしと一緒に試験勉強ね。とりあえず現状の成績を確認しておきたいから通知表とか見せてもらえる?」

美嘉「はい、じゃあ家まで付いてきてもらえますか?」

早苗「分かったわ、あとそんな固い言葉使わなくていいわよ、皆もね」

美嘉「そう?分かったよ早苗さん」
 
P「あと青木さん、休みなのに悪いんですがついでにこれからの予定についてお話できますか?」

ベテトレ「ああ、いいだろう」

     ~~~~~~事務室~~~~~~~

ベテトレ「話の前にP、一ついいか?」

P「なんです?」

ベテトレ「...本来入れない場所に阿苦都苦出版が入り込んでいたということは、その場に集まった誰かが協力していたということ....」

     「それはお前も気づいていただろう?なぜ言わなかった」




P「...あの子達に、余計な疑念を持ってほしくないんですよ」

ベテトレ「疑念?」

P「それを口にしてしまえば、あの子達は今回逆に被害を受けなかった事務所に疑念を持つ。その事務所の所属するアイドルとオーディションで戦う時、決して良くない影響を及ぼすでしょう」

 
  「...特に、今回無事だった事務所の中にはあの子達のライバル...トラプリが所属する010プロもあります」

ベテトレ「成程な...いや、そういう理由ならいいんだ」

P「どういう理由だと思ったんです?」

ベテトレ「言わなくても心当たりはあるだろう?」

P「..........」

ベテトレ「なあ、P」




     
     


     お前はまだ、自分を許せないのか?

P「...今はあの子達の事以外考える余裕はありません。だからもっとまじめな話をしましょうよ」

  「これからどういう風にレッスンを組んでいくか、美嘉の受験もそうですし、スケジュールちゃんとすり合わせとかないと」

ベテトレ「....そうだな」







P......いつかお前を縛るその鎖が、断ち切られることはあるのだろうか?

もし、それが出来る人間がいるとしたら...




ベテトレ(あの子達だけ、だろうな...)

早苗「んじゃあたし達は先に帰るわ、皆またねー♪」

美嘉「またねーっ★」

周子「お疲れー」

フレデリカ「お勉強頑張ってねー♪」


軽い挨拶を交わし、美嘉と早苗さんが去っていった



さて...と

私達は私達でできることをしないとね

奏「皆、これから少し時間ある?」

周子「まあ、今日は皆もう仕事終わったから大丈夫だけど...さっきの記事の事?」

奏「それもあるけど、その前に美嘉の合格祈願に近くの神社へお参りに行って置きたいなと思って」

  「ほら、やっぱり美嘉の為にできる限りの事はしてあげたいじゃない?」

志希「さんせー!」

奏「あと、その後はやっぱり阿苦都苦出版の事について、皆で対策を練っておきたいわね」

  「美嘉が受験に集中できるよう、降りかかる火の粉は私達が払えるようにしておきましょう」

周子「そうやねー、同じアイドル仲間としても、811プロの看板事務員としても、できる限りのサポートはしておきたいな」

フレデリカ「皆でおしゃべりするのー?じゃあお参り行ったらまた前みたいにしゅーこちゃんの家で鍋パしようよ!」

周子「おっ、いいねぇ。じゃあまた材料買って帰ろっか」






志希「鍋パ?そんなのした事あったっけ?」

奏「前に貴方がプロデューサーさんと一緒にトレーナーさんの説教を受けてる間にやったのよ」

志希「トレーナーさん、説教...うー...思い出そうとすると頭が...」

周子「あの時の事、よっぽどトラウマになっちゃったんやなぁ....」

   =========城ケ崎家============


美嘉「ただいまー!」

莉嘉「お姉ちゃんおかえりー!...って、そっちのお姉ちゃんは?」

早苗「どうも!今日から美嘉ちゃんの家庭教師になった片桐早苗よ」

莉嘉「早苗ちゃん...あー!この前学校に交通安全講座しにきてたお姉さん!」

美嘉「あれ?莉嘉知ってたんだ」

早苗「あの学校の生徒さんだったのね。覚えててくれてありがとー!」

莉嘉「お姉さんの講座面白かったよ!ああいう講座っていつもつまんないって思ってたからびっくりしちゃった!」
   「あっ、あたし城ケ崎莉嘉!お姉ちゃんの妹やってます!」

早苗「莉嘉ちゃんね、よろしく!」

美嘉「早苗さん、そろそろ...」

早苗「そうね。じゃあ莉嘉ちゃん、お姉ちゃんの事応援してあげてね!」

莉嘉「うん!二人とも頑張ってね」

  ===========美嘉の部屋============

えーっと、確かこの辺に...あった!

美嘉「はい早苗さん、通知表」

早苗「拝見させてもらうわね、どれどれ.....」


.....なんかやたら真剣な顔で眺めてる.........
もしかして、やばい...?

美嘉「えっと...どう....?」

早苗「美嘉ちゃん」







早苗「思ったより全然いいじゃない!」

美嘉「えっ!?あ、ありがとう?」

早苗「いやー、あのPくんや聖ちゃんが頼んでくるぐらいだからもっと酷い成績なのかと思ったわよ!」



プロデューサーさんにトレーナーさん、一体どんな成績だったのさ....?



早苗「一年次と二年次の成績もかなり良かったみたいだし、期末試験の結果次第では推薦も全然狙えるかも!」

美嘉「ホント!?良かった...」

早苗「でも」

美嘉「?」

早苗「それは志望校が今の場所じゃなければの話、ここを狙ううんだったら正直かなり覚悟を決めないといけないわね」






早苗「でも、不可能じゃない」

美嘉「!!」

早苗「幸いこの大学の推薦受験日は他の大学より遅めで12月頭。美嘉ちゃん地頭はかなりいいみたいだし、ここから一緒にスパートかけていけば決して届かない目標じゃないわ」

美嘉「そっか...」
   「ならあたし、頑張るから!よろしくお願いします!」

早苗「もちろん!絶対合格してやりましょ!!」

近くの神社でお参りをした後、私達はスーパーでお鍋の材料を買って周子のアパートへと向かっていた

志希「しゅーこちゃんのお家行くのも久々―❤」

周子「前はたこ焼きパーティだったっけ?志希ちゃんとフレちゃんがBランクに上がったときの」

フレデリカ「そうそう!あの時は面白かったねー。志希ちゃんがタバスコ入れたたこ焼きを奏ちゃんが食べちゃって、ファイヤー!だったもんね♪」

周子「それで焦った美嘉ちゃんがお水渡そうとして掴んだものがまた志希ちゃんのタバスコで...ダメだ、思い出すだけで笑えてくるっ....」

奏「あの時はホントに死んだかと思ったわよ...志希、今日はタバスコ使わないでよ?」

志希「んー、それは志希ちゃんの気分次第かなー」

奏「全くもう...」

そんな感じで、前回のホームパーティの事を思い出しながら、私達は周子の住むアパートのすぐそこまで歩いてきた



その時



奏「ッ!?」

周子「?どしたん奏ちゃん?」

奏「なんか、妙な視線を感じるわ」

フレデリカ「ホントに?」

志希「ハスハス....ホントだ、なんか嫌な匂いするね」

私は後ろを振り返り、視線を感じた方へと目を光らせる
ここで隠れられそうな場所は...



奏「...そこの塀の裏ね!出て来なさい!」

怪しい男「チッ!」スタコラサッサー!

周子「あっ、逃げた!」

フレデリカ「すっごーい、もう見えなくなっちゃったね」


奏「さっきの男、ちらっとカメラを首から下げてたのが見えたわ」

周子「てことは、やっぱりあたし達も狙われてるって事か...」

奏「ここ、プロデューサーさんも住んでるんでしょ?報告した方がいいんじゃない?」

周子「せやね、今から電話で報告してみるよ」

P『成程...確かにアパートで俺と周子が鉢合うとことかをすっぱ抜かれるとマズイな......』

  『ほとぼりが冷めるまでしばらく俺は事務所で寝泊まりするよ。報告ありがとな、以後も警戒を怠らないように』

周子「分かった、また何かあったら報告するね。バイバーイ」


フレデリカ「どうだった?」

周子「Pさんはしばらく事務所で寝泊まりするって」

志希「事務所、何気に住み心地いもんね。仮眠室のベッドも結構ふかふかだし」

奏「そういえば志希、偶に研究室に籠って帰らない時あるわね」

志希「そうそう、実験のキリがつかないと段々家に帰るのめんどくさくなってきてさー」

フレデリカ「じゃあ今度、事務所でパジャマパーティーしようよ!志希ちゃんの実験室で!」

志希「おっ、志希ちゃんラボにキョーミあるー?いいねいいねー♪」

奏「実験台にされたりしそうね...」

周子「はいはいみんな、外で話し込むのもなんだしとりあえず上がって上がって!」

フレデリカ「はーい!お邪魔しまーす♪」

志希「お邪魔しまーす♪」

奏「ふふっ、じゃあ私は買ってきた野菜切っておくわね」

周子「おっけー、じゃあみんな、お鍋の準備するよー」

志希フレ奏「はーい!」






お鍋が煮えてきたことを確認すると、皆で席に付きそれぞれよそい始めた


周子「じゃあお鍋も煮えてきたところで第....何回だっけ?811プロ会議を始めるよー」

志希「いえーい!」

フレデリカ「どんどんぱふぱふー♪」

奏「そもそも数えるほどやった覚えないんだけど...」

周子「というわけで議長の速水奏さん、今日の議題をどうぞ!」

奏「私?まあいいけど....」

 「今日の議題は阿苦都苦出版の対策についてよ。さっきもそれらしき人間に狙われていたみたいだし、早急な対策を用意すべきと考えるわ」

フレデリカ「異議なし!」

志希「同じく!邪魔をされたって借りもあるし、ただただ怯えてるわけにもいかないよね」

周子「それに、このままだとPさんが家に帰れないしね」

奏「あんなのにうろうろされて美嘉の受験に影響が出ても困るわ。それだけは何としても止めないといけない」

フレデリカ「んー、でもどうすればいいんだろ?」

周子「手掛かりは名刺だけか...この名刺落とした人に会いに行ってみる?」

志希「アイドルがゴシップ記者に会いに行ったら袋叩きになるだけじゃない?」

周子「だよねぇ...」

奏「...手掛かりというか、ひとつ分かったことがあるわ」

フレデリカ「それって?」

奏「あのパーティー会場は関係者以外は入れなかったはず、そんな場所に阿苦都苦出版は堂々と入り込めていたのよ?」

  「まず間違いなく、パーティーの参加者の中に協力者がいる...おそらく、今週の週刊スクープによる被害を受けなかった芸能事務所からね」

周子「映画会社の関係者って可能性は?」

奏「否定はしきれないけど、利害のことを考えると芸能事務所の方が可能性が高いと思うわ」

志希「まあ、芸能事務所が潰れて喜ぶのは映画会社よりも同業者、ライバル企業だよね。あたしもその可能性の方が高いと思うな」

奏「そしてきっとPさんやトレーナーさんもそれには気づいてるはず...でも、私たちに余計な心配をさせないためにわざと言わなかったんだと思う」

フレデリカ「むー.....あたし達のことを心配してくれるのはいいけど、もっとプロデューサーはあたし達を信じてくれてもいいと思うな!」

周子「まあまあ、確かにそんなこと言われたら、オーディションであの企画の参加事務所とかちあった時に相手疑っちゃうかもしれへんし、Pさんを責められないよ」

志希「まっ、嫌な気持ちもってオーディションしたくはないよね」

奏「でも....他の事務所からしたら、811プロも容疑者なのよね」

周子「そっか、一応あたし達も今回被害を受けてない事務所だから」

志希「実際は一度受けてるわけだけど、記事になってるわけじゃないからねー」

奏「組織は大きいほど力の代わりに綻びも増える物。でも811プロは一般的な芸能事務所と比べて格段に人が少ない、だからこそ逆に隙が少なくて向こうも手を出しづらいのかもしれないわ」

周子「だから志希ちゃんとフレちゃんの時もわざわざ無理やり自作自演を...あれっ?でもあの時はまだiDOL MOVIE BIGBANGとか全然関係ないよね?」
   
   「じゃあ、結局なんで阿苦都苦出版は、あそこまでして二人のデビューを邪魔したんやろ?」

奏「...それについて、二つ考えられる理由があるわ」

志希「一つは『あたし達じゃなくてテレビ局か番組スタッフが狙われていた』でしょ?あたしも当時それは考えた」

奏「志希の言う通り一つはそれよ。でも...私はもう一つの方の可能性が高いと思うわ。根拠は"女の勘"ってことになってしまうけれど」

周子「んで、そのもう一つの可能性ってのは?やっぱ最初から志希ちゃんとフレちゃんが狙われてたって事?」

奏「いえ、少し違うわ」






奏「狙われていたのは志希とフレデリカ個人ではなく、811プロそのものという可能性よ」

周子「811プロ、そのもの?」

奏「考えてみて。まずそもそも、あの時まだ世に出てなかった志希とフレデリカには狙われる理由が薄い。大して話題にできるようなネタにならないから」

  「あのテレビ局自体を狙ったとしても、小さいローカル番組での不祥事ではそこまでのネタにはならない。番組スタッフの誰かが狙われたって言うのも、同じく話題性の面からして考えづらい。
    
  「だとすると、一番考えられるのは811プロそのものを狙ったという可能性よ。理由までは分からないけど、犯人はどうしても811プロを早いうちに潰したかったんだと思う」

周子「なるほど....」




志希「でもさー、それなら最初から話題になってたデュアルフルムーンを狙った方が早くない?」

奏&周子「「あ」」

それは...そうね
話題性という理由ならあの時なら私や周子を狙った方が早いわね...


志希「それに、あの時はまだ奏ちゃんと周子ちゃんもEランクで、フレちゃんはFランク、あたしに至っては収録直前にスカウトされたド新人だよ?」

  「そんな弱小プロダクションだった811プロをわざわざ潰しにかかるのはリスクに見合ってなくない?阿苦都苦出版にとってもライバル企業にとってもさ」

奏「た、確かに...」

周子「じゃあ、やっぱりテレビ局が狙われてたのかな?」

志希「うーん、それはそれでやっぱりなんか不自然だと思うんだよねー...」

奏&周子「「うーん...」」



なんだろう、この前に進んでるようで全くその場から動いてる気がしない感覚、すごく不気味....

なにか、もっと別の考えを.....









フレデリカ「皆食らえー!究極オランジェーット!」ボチャン!

奏「....えっ!?」

周子「ちょ、ちょっとフレちゃん!今鍋に何入れたの!?」

志希「一瞬オレンジ色のなにかが見えたね」


フレデリカ「皆顔が暗すぎだよー!もっと笑って笑って!」

奏「....そんなに暗い顔してたかしら?」

フレデリカ「そうだよー!アイドルがしちゃいけない顔だったよー!そんな顔してたらファンの人も、それに美嘉ちゃんも一緒に暗い気分になっちゃうよ!」

      「雑誌の意地悪なんて、皆の笑顔で吹き飛ばしちゃえばいいんだよ♪プロデューサーもいつも言ってるじゃん、逆境の時こそアイドルを全力で楽しめって!」

 『!!!』

フレデリカ「あたし達アイドルなんだからさ、あたし達を応援してくれるファンの皆の為にも、美嘉ちゃんを応援する為にも!」

      「そして、ゴシップでいじめられちゃった人達を励ます為にも、あたし達が笑顔で楽しんでアイドルやって、皆をハッピーにしようよ!」

志希「...そうだね!あたしうっかりしてたよ、折角パパにもママにもあたしの楽し無姿を見せるって誓ったばっかりなのにさ!」

周子「うんうん!暗い顔で悩むなんて、あたし達らしくなかったわ♪」

奏「ふふっ、ありがとうフレデリカ」

  「811プロの社訓、『全力で楽しめ』...私達、大事なことを見失うところだったわ」

フレデリカ「えっへん!じゃあみんなでさっき入れたあたしのオランジェット食べて笑顔になろ―♪」

全員「おー!」


フレデリカの投入したオランジェットはオレンジの酸味とポン酢の酸味、それに出汁のコクが絶妙なコンビネーションを見せて

見せて....

もの凄く....








 
全員(もの凄く、マズい......)



フランス菓子は、和風出汁のお鍋に入れてはいけないと、思い知った...

   ~~~翌日~~~


ピピピピピピピ!!!!



周子「ん...もう朝か、おはよー...」


目覚ましを止め、布団から這い出る


周子「んー...目が覚めない、とりあえずお天道様を拝もう...」


日光で身体を無理やり起こそうと何気なくカーテンを開ける


周子「......!?」


....しかし、身体は日光によって温められることはなく、むしろ凍り付いた

周子「あの人...」


アパートの外、昨日奏ちゃんが見破った場所に、カメラを持った怪しい男を見つけた

...とりあえず連絡しよう


周子「ぴ、ぽ、ぱ、ぽ、ぱっと」トゥルルルルルル....

P『.....もしもし、周子か?』

周子「うん、おはようPさん」

P『ああ、おはよう...なんかあったのか?』

周子「あのね、またアパートの前にあからさまに怪しい奴がいる」

P『なんだと?昨日の今日でまた来たのか......こりゃ完全に狙われてるな』

周子「みたいだねー、あたし普通に出勤しても大丈夫かな?」

P『いや、怪しい奴がいるって分かってて一人で出勤はさせたくないな...奏と美嘉は学校だしレイジレイジ―はこれから仕事先いかなきゃならないから...青木さんに迎えに行ってもらうからそのまま二人で現場に向かってくれ』

周子「分かった、待ってる」






人気になればこういう事もあるって分かっちゃいたけど
流石にこれは、ちょっと気分が悪すぎるなぁ...

=======レイジーレイジーの撮影現場=======

志希「みんなー、今日はよろしくねー♪」

フレデリカ「よろしくしるぶぷれー♪」

イケメン俳優「よろしくお願いします。レイジレイジ―のお二方」

人気芸人「おう、よろしくな二人とも」





今日はレイジレイジ―の二人があるイケメン俳優と今流行りの人気芸人と一緒に街の名所を訪問するバラエティ番組の収録

そして、今は収録前に共演者への挨拶中


ああ、人気アイドルと俳優に人気芸人、いい並びだ

本当に、いい画が取れそうだねぇ♪

決定的瞬間を激写する為に、俺はしっかりとカメラを構える....







P「あのー」

???「!?」

P「如何しましたか?これからここで番組の収録が行われるので用がないならはけてもらいたいのですが」

スタッフ?「あ、えっと、俺番組スタッフです」

P「...では、番組スタッフの証明である腕章は?」

スタッフ?「えっ?...あーえっと、さっきどっかで落としちゃったみたいで」

P「そうですか....それは妙ですね」

スタッフ?「えっ?」

P「番組スタッフの腕章なんてものありませんよ、存在しないものをどうやって失くしたんです?」

スタッフ?「えーっと...それは...」




...ちくしょう!ハメられた!

ディレクター(以下D)「どうしたんだいプロデューサー君?」

スタッフ一同 ナンダナンダ?

P「どうやら、ネズミが潜り込んでいたみたいですね」

D「...なるほど、君が言っていたゴシップ記者か」

スタッフ?「あ、いやぁ...」

D「誰かこの男をスタッフルームに連れていきなさい」

ガタイのいいスタッフ1「アイアイサー!」

ガタイのいいスタッフ2「おらっ、向こうでお話ししようじゃねえか」

スタッフ?「クソッ!放せ!」






チクショーーーーーーー!!!!!!

志希「終わった?」

P「ああ、一応今日は仕事付いてきて正解だったな」

フレデリカ「プロデューサー、ありがとね♪」

P「ああ、だがやっぱ俺たちは阿苦都苦出版に狙われているらしい...」トゥルルルルルル

  「青木さんだ...もしもし?」

ベテトレ『P、そっちはどうだった?』

P「やっぱり潜り込んでました、警戒しといて正解でしたね」

ベテトレ『そうか...実は、こっちにも許可されていない記者が紛れ込んでいた』

P「周子の仕事先にも?アパートに張り込んでたくせに仕事先まで張り付いてやがったのか、いくらなんでもしつこ過ぎるぞ阿苦都苦出版!」


ベテトレ『いや...それなんだが』

P「えっ、何か問題が?」

D「プロデューサー君!大変だよ!あの偽スタッフ、阿苦都苦出版ではなかった!」

  「あの記者、須藤華出版の記者だ!」

P「何ですって!?」

ベテトレ『P、実はこっち出捕まえた記者も阿苦都苦出版ではない、極亜久出版の人間だ』

P「極亜久出版に、須藤華出版...!?」.

志希「どっちもあんまり面白い話聞かないけど...阿苦都苦出版じゃ、ない?」

フレデリカ「アタシ達を狙ってたのって、阿苦都苦出版じゃなかったの?」






P「...めちゃくちゃ、嫌な予感がする...」

授業が終わって、校門から出ると早苗さんがあたしを待ってくれていた


美嘉「あっ、早苗さん!」

早苗「お疲れ美嘉ちゃん、これから仕事でしょ?」

美嘉「そうだけど...早苗さんは?」

早苗「しばらく有給取ってね、美嘉ちゃんに着いて回ろうかなって。ほら、移動中にも英単語とか公式とかくらいは詰め込めるでしょ?」

   「もしかして...おせっかい過ぎかしら?」

美嘉「全然!むしろ助かるよ、ありがとう!」

早苗「なら良かった!んじゃ向こうに車停めてあるから仕事先まで送っていくわ」

   「...それに、最近811プロの周りに怪しい奴がうろついてるみたいだし、一人でいるのは危険だしね。次いでにボディーガードも任せて!」

美嘉「早苗さん...ホントにありがとう!じゃあ早速現場に...」




???「おい、城ケ崎」

美嘉「!!」

美嘉「先生!?」

早苗「先生?担任の?」

美嘉「うん、そうだけど....」


担任「城ケ崎、お前分かってるのか?もう受験まで時間がないんだぞ?」

美嘉「それは、わかってるよ!」
  
担任「本当か?だがお前の最近の成績の低下は目に余る、いい加減あんなくだらないお遊びなんか辞めて、我が校の誇りある生徒としての自覚を...」

早苗「あーはいはいそこまで!これから美嘉ちゃん大事な仕事があるからまた今度にしてちょうだい」

担任「だ、誰だ貴様は!」

早苗「美嘉ちゃんの家庭教師兼ボディーガードよ」

担任「フンッ!家庭教師なんぞが偉そうに!」

早苗「...言っとくけど、アイドルはくだらないお遊びなんかじゃないから」

担任「なに?」

早苗「外から見たらキラキラしてる世界でも、その裏では血と汗の滲む努力が積み重なってできてんのよ」

   「そして、時には理不尽な悪意にさらされる事もある...それでもたくさんの人を笑顔にする為に前を向いて戦い続ける、立派なお仕事なの」

   「だから....もしそんなアイドルを下らないなんて言うなら...」

担任「な、なんだ...?」

早苗「シメる」

担任「ヒッ!!!」

   「....きょ、今日は見逃してやるが、いい加減にしておけよ城ケ崎!」

早苗「チッ、ムカつくわねあいつ」

美嘉「あの、さっきはありがとう早苗さん」

早苗「いーのいーの!美嘉ちゃんもあんな奴のいうこと気にしなくていいからね」

美嘉「うん...ってヤバッ!ロケ遅刻しちゃう!?」

早苗「マジで!?美嘉ちゃん急ぐわよ!フルスロットルで飛ばして必ず間に合わせるから!」

美嘉「うん!お願い早苗さん!」











カシャッ

???(ニヤリ)

       =======翌日=======


ピピピピピ

周子「んー...朝だぁ...」


....ダメだ、あんま寝れた気がしない
昨日ずっと外から見られてる気がして中々寝つけなかったからなぁ


周子「もしかして今日も...」カララッ


...良かった、いない
昨日スタッフに紛れてたのがばれたから流石に自重したんかなぁ?

周子「今日は一人でも大丈夫かな...Pさんだ」トゥルルルル

   「もしもし?」

P『周子!今家か?』

周子「そうだけど、そんなに慌ててどしたん?」

P『いいか、今青木さんがそっちへ向かっているから絶対部屋から出ずに待ってろよ!』

周子「えー、今日は記者いないっぽいし一人でも大丈夫だよ」

P『大丈夫じゃねえことが起きてんだ!いいから一人で出歩くな!』

周子「えっ、何?急にどうしたのさ?」

P『詳しいことは事務所で話す!とにかく青木さんと一緒に事務所へ来てくれ!』

周子「わ、わかった」







Pさんがあんなに慌てるなんて、一体何が...?

学校に行く前に、コンビニに寄って芸能雑誌を買いにきた

プロデューサーたちだけに負担をかけるわけにはいけないし、私自身もちゃんと今の芸能界の情勢をチェックしておかなければいけない

そんな思いで雑誌コーナーの前で商品を見定めていた





その時、私の目はある雑誌の表紙で止まる


奏「嘘でしょ...?」

美嘉「な、なにこれ...」

なんで、なんでこんな記事が!?






       【城ケ崎美嘉、芸能界引退!?】





To Be Continued.....

Chapter12が終了したところで、今回はここまで―
最初は1スレで収まるやろwwwwwとタカをくくっていましたが、これ絶対収まらないっすね.....

なおこのスレにおいてのLiPPSの学年は

奏  高2
周子 高卒
フレ 短大2
志希 高3
美嘉 高3となっております

少なくとも美嘉の高3設定は公式だったはず.....

頑張れ

すっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっごい今更気づいたんですが、>>1に長編って書くの忘れてますね。そりゃ長いって怒られるわ.....

はい、というわけでこの物語は長編です(今更)Chapter13の投下はじめていきます

>>681 ありがとうございます!完結まで頑張ります!

  ======811プロ事務所=======

青木さんの車で事務所に到着するやいなや、Pさんに一冊の雑誌を押し付けられた


周子「これ、須藤華出版の『ストーKINGアイドル』?」


確か、プライバシ―ガン無視の記事も多くてあまり業界には良く思われてない雑誌のはず...



周子「....えっ?」

渡されてすぐ、表紙に書かれた内容に目を止めた





美嘉ちゃんが、引退!?

周子「Pさん!これってどういう事!?」

P「とりあえず中身を見てくれ。気分悪くなるだろうけどさ.....」


すぐにあたしは中身を開き記事の内容を確認する...



【城ケ崎美嘉が芸能界を引退するとの情報が!】

【原因は成績の低下!?教師と言い争う姿を激写!】

【芸能活動を理由に学校をズル休み!?】





周子「...なんなんこの記事!?」

P「昨日、校舎前で担任教師に成績のことについて苦言を言われていたらしい。学校まで張り付かれてるとは...」

周子「だとしても!ただそれだけのことで引退とか勝手なこと言ってはしゃぎたてるなんて、須藤華出版どんだけ暇なのさ!?」

ベテトレ「それに須藤華だけじゃない、他にも...」バサッ

周子「極亜久出版の『週刊文冬』に阿苦都苦出版の『芸能日報』.....どいつもこいつも美嘉ちゃんの記事ばっかり...!」

P「ああ、複数の雑誌が昨日の美嘉の事を取り上げてる」

周子「酷い...こんなの、ただのリンチじゃんか!」

P「ああ、クッソムカつくぜ...」


ベテトレ「そういうわけだ塩見、悪いが今日のレッスンはキャンセルだ。今日は事務員としての仕事に集中してくれ」

周子「分かった、電話対応とか大変そうだもんね」

P「俺は昨日の事を片桐さんに聞いてみるよ。昨日美嘉を学校まで迎えに行ったらしいからな」

周子「分かった。そっちはお願いね」

早苗『ええ、写真は本物で間違いないわ。......ごめん、あたしもいたのに、撮られてた事気づかなかった...』

P「いえ、片桐さんは悪くないです。むしろ美嘉を助けてくれてありがとうございます」

早苗『チクショー!もし犯人見つけたら盗撮の現行犯で逮捕してやるんだから!』

P「ははは...でも、また美嘉に悪意を持った人間が寄り付くかもしれません。しばらくボディーガード、お願いできますか?ちゃんと報酬は出しますんで」

早苗『もちろん!むしろやらせて!』

早苗『報酬なんていらないわ!自分の失態は自分で取り戻したいもの。それに、美嘉ちゃんをもうこんな目に合わせたくないし!』

P「ありがとうございます。では引き続きよろしくお願いしますね?」

早苗『任せなさい!」


早苗『......でもP君、この状況って』

P「はい、『あの時』と似ている........」

早苗『もしかして、今回も?』

P「そうかもしれません......ですが、今は美嘉を守るのが最優先です。詳しく調べるのは後にします」

早苗『そう....ならあたしも警察官として、美嘉ちゃんを全力で守るわ!もうこんなこと絶対にさせないんだから!』

P「確認取れた、少なくとも写真については本物らしい」

周子「こっちも美嘉ちゃんに電話して確認取ったよ。担任と言い争いになったのは事実だけど、アイドルはやめないから安心してって」

周子「でも美嘉ちゃん、やっぱり辛そうだった...」

P「だろうな...クソッ!見れば見るほどムカつく記事だぜ

P「................ん?」



怒り心頭のPさんが急に固まったと思うと、Pさんは3つの雑誌の美嘉ちゃんの記事を並べてじっくりと眺め始めた



周子「どしたん?」

P「妙だな...」

周子「妙って.....なにが?」

とりあえず大丈夫って言っておいたけど、やっぱり周子ちゃんにはばれちゃってるかな?

モデルの時から長いこと芸能活動やってきてるし、それなりに修羅場も潜ってきてはいるはずだけど、やっぱこういうの堪えるなぁ...





美嘉「...奏ちゃんから電話だ」ピッ

奏『大丈夫美嘉!?』

美嘉「う、うん。大丈夫だよ」

奏『それならいいのだけれど...ごめんなさい、貴方を守れなかった...』

美嘉「そんな、奏は悪くないよ!悪いのはこんな記事書いてる出版社なんだから!」

美嘉「でも、迂闊だった.....あたし達を狙ってるのは阿苦都苦出版だけじゃなかったなんて...」


奏「美嘉、それなんだけど......今日出た美嘉の記事が載ってる雑誌、少しおかしいのよ。まあそもそもデタラメ書いてるんだからおかしくて当たり前ではあるんだけど...」

美嘉「おかしい?」

奏「ええ、さっき3つの雑誌を並べてみたんだけどね....」

P「この3つの記事、出版社は違うのに使われてる写真がどれも全く同じだ」

周子「......ホントだ!映ってる物も角度も全部一緒だね」

P「違う雑誌なのに寸分違わず同じ写真だと...?一枚二枚ならまだしも、これだけの数は有り得ない」

周子「これって、出版社の間で写真を共有したって事だよね。でも、普通そんなことする?」

周子「この出版社達って一応商売敵でしょ?折角手に入れたスクープは、やっぱ自分たちで独占したいものなんじゃないの?」

P「そのはずだ。だが現実に起きている...どういう事だ?」

美嘉「3つの出版社が、同じ写真を....」

奏「美嘉、気を付けて。理由は分からないけどこの3つの出版社は今、徒党を組んで貴方を貶めようとしている」

奏「もし何かあったら、必ず私達を頼って。私たちは何があっても、貴方たちの味方だから」

美嘉「うん、ありがとう奏。またね★」




美嘉「...はぁ」





なんでこんなことになっちゃったんだろ.....

    ~~~~~放課後~~~~~~


またよからぬことが無いようにと、あたしを家まで送りに来た早苗さんが校門前で待機しているらしい

最近寒くなってきたし、待たせないようにしないと!

そう思ってあさっさと荷物をまとめて教室を出た、その時だった


担任「待て、城ケ崎」

美嘉「...何、先生?」

担任「お前、やっとアイドル引退するらしいな。ようやく現実に目を向けたか」

美嘉「はあ!?あの記事は事実無根だよ!あたしまだ引退する気はないから!」

担任「なんだと...?お前、まだ寝ぼけているのか」

美嘉「寝ぼけてなんてっ!」



担任「だが、事実アイドル活動のせいで成績が落ちているのは事実だろう?」

美嘉「ッ!」

担任「これで大学受験に失敗したらどうする?お前だけじゃない、親にも迷惑がかかるぞ」

美嘉「それは...」


そりゃあ...アイドルだって、ずっと続けられる訳じゃないけど....




担任「全く、これだからアイドルというやつは嫌いなんだ。いつもいつも夢を語るばかりで、現実を目を向けようともしない。そしてそれを見て感化された馬鹿が、同じように現実を見なくなる」
  「.....担任として、生徒の成績低下を見過ごすわけにはいかない。後でご両親に連絡しておく、お前の今後の為に三者面談をすると」

美嘉「なっ!?」

担任「そこで、はっきりと現実を突きつけさせてもらう。お前にも、お前の親にも。」

担任「話がスムーズに進むよう、しっかり親と話しておけ。それじゃあな」




美嘉「.......っ」

早苗「お疲れー美嘉ちゃん!...なんか暗くない?大丈夫?」

美嘉「大丈夫...」

早苗「...またあの担任になんか言われたのね?」

美嘉「....うん」

早苗「そっか....よし!とりあえずお家帰りましょう。その間、お姉さんに愚痴っちゃいなさい!」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


  ======早苗の車==========

早苗「成程ねぇ...あいつ、また美嘉ちゃんをバカにして!」

美嘉「でも、言い返せなかった...あの記事のせいで今もみんなに迷惑かけてるし、このままじゃ家族にも......」

早苗「...家に着いたわよ美嘉ちゃん」

美嘉「あっ...ありがとう早苗さん」

早苗「それと美嘉ちゃん、今日のカテキョはお休みね」

美嘉「えっ!?」

早苗「まずは、その悩みにケリをつけてからにしましょ。何事も自分を見失ったままじゃ上手くいかないからね」

美嘉「自分を、見失う....あたしが?」

早苗「ええ、美嘉ちゃんは今自分がどうありたいかを見失いつつある。だからまずはそれをもう一度思い出してみて。美嘉ちゃんにとってアイドルって何なのかを」
  
早苗「大丈夫!答えはすぐそこにあるわ!」

美嘉「えっ?すぐそこって、『じゃまったねー!』ちょっと!」








い、行っちゃった...

莉嘉「お姉ちゃんおかえりー!」

美嘉母「おかえりー美嘉...何かあったのね?」

美嘉「えっ....分かるの?」

美嘉母「まあさっき変な電話あったし、それに何年あなたの母親やってると思ってんの。貴方が悩んでることくらいすぐ見抜けるわよ」

美嘉母「とりあえずリビングでおやつでも食べながら話してみなさい。ちょうどお友達も来てるしね」

美嘉「...お友達?」

フレデリカ「美嘉ちゃんお帰りー!」

志希「おかえりー!」




.....えっ!?

美嘉「志希ちゃんにフレちゃん!?なんでいるの!?」

志希「雑誌で変な記事書かれて美嘉ちゃん落ち込んでるかなーって思ってさー、フレちゃんと一緒に励ましに来たんだ!」

フレデリカ「でもー、来てみたら美嘉ちゃん学校行っちゃってた♪」

美嘉母「ちょうど貴方が学校行った後に来てくれたんだけど、折角美嘉の事思って遊びに来てくれたのに帰らせちゃうのも申し訳ないでしょ?」

美嘉母「ママも美嘉のお仕事での話聞いてみたかったし、さっきまで一緒にお茶してたのよ♪」

莉嘉「学校から帰ってきたら生のレイジレイジ―がいるんだもん!あたしびっくりしちゃった!」

フレデリカ「美嘉ちゃんのママ、お料理すっごく上手いんだね!お昼ごはん美味しかったー!」

美嘉母「フレちゃんのお菓子も美味しかったわよー!それに志希ちゃんの作ったお料理もおいしかったわ!」

志希「一応、正気のサタデーナイトで料理コーナーやってるからね!」

美嘉「ていうか朝から来たの?二人とも学校は?」

志希フレ「「サボった♪」」

美嘉「えぇ....」

フレデリカ「ほらほら美嘉ちゃん、座って座ってー!あたしマフィン作ってきたんだ!食べて食べて~♪」

志希「自分の家だと思ってくつろいじゃってねー!」

美嘉「いやあたしの家だし....」

莉嘉「それでお姉ちゃん、学校で何か嫌なことあったの?」

美嘉母「もしかして、さっきの3者面談がどうのってやつと関係ある?」

美嘉「...実は」


カクカクシカジカ......


美嘉母「なるほどねぇ.....」

美嘉「あたし、どうしたらいいのかな?811プロの皆にも心配かけて、ママにも莉嘉にも...」

美嘉母「...美嘉」


   「貴方、ずいぶんくっだらないことで悩んでるわね」

美嘉「えっ?」


美嘉母「あたし達に心配かける?だからアイドル辞める?ちゃんちゃらおかしいわよ。だって貴方、アイドル楽しいし、続けたいんでしょ?」

美嘉「それは...そうだけど、でもそのせいでみんなに迷惑がかかるんなら....」

美嘉母「美嘉、私たちにとって一番つらいのはね、貴方が自分の選んだ道に後悔すること。貴方が自分のやりたいことを笑顔でやれなくなることなのよ」

美嘉母「だから、貴方は貴方のやりたいことを精一杯やりなさい。その為なら誰が何と言おうとママとパパが守るわ!」



莉嘉「そうだよお姉ちゃん!お姉ちゃんはあたしの目標なんだから!」

美嘉「あたしが、目標?」

莉嘉「あたし、将来お姉ちゃんみたいなアイドルになる!だからお姉ちゃんにはあたしが追いつくまでトップで待っててもらわなきゃ困るもん!」

美嘉「莉嘉...」

フレデリカ「美嘉ちゃんってやっぱり凄いね!たくさんの人の憧れなんだもん!」
 
志希「うん!莉嘉ちゃんも、奏ちゃんと周子ちゃんも、皆美嘉ちゃんに憧れてアイドルになりたいって思ったんだもんね!」

フレデリカ「もちろん、アタシ達もね♪」


志希「それにさ、迷惑ならあたし達の方がいっぱいかけてるじゃん」

美嘉「えっ?」

志希「あたし達いっつもフリーダム過ぎて、良く皆を困らせちゃうでしょ?でも、そんなあたしたちのフォローを美嘉ちゃんがしてくれているから、あたし達はいつだって安心してあたし達らしくいられるんだよ」

フレデリカ「だから困ったときはお互い様だよ!偶には美嘉ちゃんもあたし達に迷惑かけちゃおー!」

フレデリカ「それに、アタシ達の為に悩んで美嘉ちゃんが遠慮しちゃう方が、アタシ嫌だよ」

美嘉母「それに、今病院でリハビリしてるパパもよく言ってるわ。どんなに辛くてくじけそうになったって、美嘉が本当に楽しそうに輝いてる姿を見ているから、何度だって立ち上がれるって」

美嘉母「だから美嘉、安心して私達を頼って、美嘉が心から楽しんでいる姿を、私たちに見せてちょうだい?」


莉嘉「お姉ちゃんいっつも言ってたじゃん!いつだって本気でイチバンを目指すって!だったら遠慮なんてしないでよ!」
  
莉嘉「いつもみたいにお姉ちゃんがイチバン輝いてるんだって、ちゃんとあたし達に見せてよ!その為ならアタシ達、いつだってお姉ちゃんの力になるから!」

ああ、そうだ...
今のあたしは、061プロにいた時とは違う
あの時の、苦しみながら他人の描く道を自分の道として歩まされ続けていた時とは違うんだ


『あたし』の背中を守ってくれてる仲間が、こんなにいるんだ
一緒にアイドルとしての道を走り抜けて、一緒にアイドルのトップに立ちたいって、心からそう思える仲間がいるんだ.....


成績とか、ゴシップとか、そんなのどうでもよかった

皆の声に答えたいから、みんなの憧れでありたいから
アイドルを続ける理由なんて、それだけで十分じゃないか

どんな苦難の上でも妥協しないって決めたのは、あたし自身じゃないか!




皆の憧れとして、あたし自身が描いた夢として、一緒に歩いてきた仲間たちと一緒にトップアイドルになりたい


あたしにとって『アイドル』は、世界で一番のあたしになるために、あたし自身が選んだ道


だから、最初から悩む必要なんてなかった

どんな壁を振り切ってでもアイドル続けたい理由が、あたしにはあったじゃんか...!

美嘉「みんな......」




涙目になりながらでも決意を固め、一緒に歩いていく仲間に、伝える
あたしはもう、迷わないと





美嘉「ありがとう.......!」

美嘉母「そうだ!折角だから志希ちゃんとフレちゃん、今日は泊まっていきなさいよ!美嘉と莉嘉とめいっぱい遊んであげて!」

志希「いいの!?」

フレデリカ「やったー!美嘉ちゃん、莉嘉ちゃん、今夜は...寝かさないぜ♪」

莉嘉「わーい!レイジレイジ―がお泊りだー!やったー!」

美嘉「そうだね!折角だから遊んで行ってよ!」





美嘉「...でも、明日も学校だからあまり遅くはしないでね...?」

志希フレ「「それはどうかな!」」

美嘉「いやホントにお願い...」






でも結局、夜が更けるまで話し込んだ....

翌日、授業終わりにママと合流して面談に臨む...はずだったんだけど


美嘉「あれっ、莉嘉ァ!?」

莉嘉「やっほーお姉ちゃん!」

美嘉「えっ、なんで莉嘉まで来たの!?」

美嘉母「実はね...」


   
莉嘉『あたしだってお姉ちゃんをいじめる人に文句言いに行く!』



美嘉母「...って聞かないから、連れてきちゃったのよ。だから3者面談じゃなくて4者面談ね」

莉嘉「だって、昨日の話聞いてめっちゃくちゃムカついたんだもん!あたしだって言いたいこといっぱいあるよ!」

美嘉「だからって...」

美嘉母「まぁまぁ、味方は多いほうがいいじゃない?それじゃ早速教室まで行きましょ!」

美嘉「えぇ....」

ウチの家族は偶に、ホントに凄い行動力になるんだよなぁ....

担任「えー...そちらの子は?」

美嘉「あーっと....」

美嘉母「次女の莉嘉です、可愛いでしょう?」

担任「いや、なんで連れてきてるんですか......」

莉嘉「良いじゃん別に!お姉ちゃんの大事な話ならあたしだって聞きたいよ!」

美嘉母「まぁまぁ、話はしっかり聞きますので許してください」

担任「.......まあいいでしょう、では今回お呼び出しさせていたただいた理由についてなのですが...」







担任「というわけでして、もしこのまま成績が下がり続ければ今の志望校どころかランクの低い大学にしか狙えなくなると思われます」

担任「なので娘さんの将来の為にも、アイドルなんて遊びにかまけさせず...」




美嘉母「将来?」

担任「...?なにか?」

美嘉母「なんであんたがそんなこと語れるんですか?美嘉の事、何も知らないくせに!!」

担任「!?」

美嘉母「美嘉のアイドルへの情熱も、アイドルを続けるためにしてきた努力も、何も知らない、知ろうともしない貴方が、勝手に美嘉の将来を語らないでちょうだい!」

莉嘉「それに、アイドルは遊びなんかじゃない!志希ちゃんも、フレちゃんも、お姉ちゃんも!皆全力で戦ってるんだ!」

莉嘉「アイドルって、アタシ達が見る部分はキラキラとしたところばっかりだけれど、テレビの裏、見えないところでみんな頑張ってるの!楽しいばっかりじゃない、お姉ちゃんってアイドルやってて苦しんでたことだってあった!でも!皆の憧れになるために、ファンの皆を笑顔にするために、どんな壁があったって本気でぶつかってるの!」

莉嘉「それを、遊びだなんて言わないで!」

担任「な、何を...」





美嘉「.....先生、何を言われてもあたし、アイドルはやめないよ。でも、受験も妥協しないから安心して」

美嘉「どっちかの為にどっちかを捨てるなんて妥協した生き方、あたしはしたくない。いつだってあたしがイチバンだって宣言できるように...あたしは本気で生きたい!」

美嘉「だから、見ててよ。アイドル続けるあたしがイチバンだって、『あたし達』で証明するから!」

   ==========翌日、811プロ==========


美嘉「おはよー★」

奏「おはよう美嘉...どうやら、元気出たみたいね」

美嘉「うん、色々吹っ切れた!むしろみんなの方こそ大丈夫?変な奴に付きまとわれたりしてない?」

奏「あの記事が出てからは大分減ったわ。完全になくなったわけじゃ無いけど、とりあえずは大丈夫よ」

周子「電話対応もまあいつもよりは忙しいけど、それでも思ってたよりは大した事ないから安心して」

奏「でも気を付けて、いつも美嘉を学校まで迎えに行くときに、度々怪しい奴を見かけるって早苗さんが言ってたわ」

美嘉「そうなの?じゃああいつらあたしを集中砲火する気なのかな?」

P「大丈夫、何があっても必ず俺たちが守る。もし受験も合わせてキツイようなら、しばらく仕事とレッスンの量も減らすよう調整するが...」

美嘉「ううん、普段通りで...いや、いつも以上に頑張らせて!」




美嘉「あたし、全部妥協しないから!アイドルとして今までよりもっと輝いて、受験も成功させて、『あたしはこれからもアイドル続けていくよー!★』ってファンを安心させなきゃいけないし!」

P「そうか...なら遠慮なくスケジュールを組ませてもらおう。だから美嘉、アイドルも学業も全部物にして、自分が思う一番の自分を手に入れろ」

P「もちろん、それを成し遂げるには途方もない労力がかかるが...俺はm」

美嘉「『無茶振りはしても無理な事は言わない』でしょ?」

P「お、おう。その通りだ!」

周子「あららー、キメ台詞とられちゃったねPさん♪」

奏「ふふっ!みんなプロデューサーさんの扱いに慣れてきてるものね」

美嘉「プロデューサーって、結構素直だからねー★」

P「うっさい,,,...だが無理とは言わないが過酷であることに変わりはない。覚悟はできてるか?」

美嘉「大丈夫。だって、あたしはもう苦しんでアイドルをやっていたあの時とは違う。アイドルも楽しくて、いつだって頼れる仲間もいるから!あの時に比べたら全然平気!」

美嘉「だから周子ちゃん、もしまたあたしが引退するとかで電話かけてこられたらこう言っておいて!」


『城ケ崎美嘉はアイドルを辞めたりしない、むしろこれから今まで以上に輝けるアイドルになる』って!




周子「おっけー、まかせとき!」

奏「美嘉、辛いときはいつだって思い出してね。あなたには、どんな時でもあなたの力になりたいと、そう心から思ってる仲間がいるんだって事!」

美嘉「うん!みんなも見ててね!」







全部、あたしがイチバンだって証明してみせるから!





    Chapter13 「I'm proud of me」




その後、美嘉は今まで以上の量のアイドル活動と受験勉強を見事に両立し、期末試験も最上位へと食い込み見事志望校の推薦を手に入れた

その間、あの3つの出版社は美嘉に対して『現実逃避でアイドル活動をしている』とか『勉学に集中しないのは裏口入学が決まっているからでは』とか勝手な憶測を書き連ねてきたけど
美嘉の堂々とした姿勢と、日に日にアイドルとして成長していく美嘉の姿を見た世間の反応は、むしろ美嘉を応援する方に流れていた




そして今日は、合格発表日...

美嘉「ふぅー.....あー!やっぱ緊張するー!」

フレデリカ「大丈夫だよ!美嘉ちゃんの番号は幸運の番号だし!」

志希「そうそう、あたしのスマホのパスコードと同じー♪」

奏「志希、まだ変えてなかったのね...」

志希「だって気が向かないし。それに皆になら見られちゃっても平気だし」

周子「志希ちゃん、嬉しいこと言ってくるじゃん♪」

P「...見ろ!結果張りだされてるぞ!」

早苗「ホントだ!みんな美嘉ちゃんの番号を探せー!たとえドライアイになって目が腐り落ちたとしても見つけるのよ!!」


  『合点!!!』


美嘉「いやいや!そんなに無理しなくていいから!」



いつも通りツッコミを入れ(てしまい)つつも、張りだされた結果を見つめる

あたしの番号は......

0532
0536
0588
0652

 ・
 ・
 ・
 ・

0811



美嘉「あった..............」

  




美嘉「あったよ皆!!」

全員『いやったあああああああああああああ!!!!!!!』

そんなわけで無事合格を確認したあたし達は打ち上げをしようということになって、その場所をあたしが決めることになった
そしてあたしが選んだ場所は...


美嘉「よーし!久々に思いっきり歌うよー!」

全員「いえーい!!!」


そう、カラオケ!


P「でも、ホントにカラオケなんかでよかったのか?俺の奢りなんだからもっと高いところでも良かったのに」

美嘉「うん、ここがいい!テストから解放されたらやっぱカラオケで思いっきり歌って今までのストレス全部ぶっ飛ばすに限る!」

P「それは凄い分かる」

奏「カラオケ.....そう言えばあんまり来たことはなかったわね。中学生の時に家族で来て以来かしら」

志希「あたしもー、友達とカラオケ来るなんて初体験!」

フレデリカ「アタシはよくママとか友達とかと来てたよー!」

周子「へー、何歌ってたん?」

フレデリカ「『ウルトラリラックス』!」

美嘉「聞いたことないなー...」

フレデリカ「えー!?」

P「まあ確かにお前らが生まれるよりは前の曲だから知らないのも無理はない。でも確かにあの曲はフレデリカのイメージと合うな、今度カバーの許可取りに行ってみるか...」

フレデリカ「あと『おふくろさん』も!」

P「ごめんそれはイメージできない」


早苗「それにしても、今のカラオケってタッチパネル一つでビールまで頼めて便利ね!P君の奢りだし飲み過ぎちゃいそう!」

P「えっ?片桐さんは自分で払って下さいよ」

早苗「ひどい!年上を敬いなさいよー!」

P「....冗談ですよ!美嘉の事面倒見てくれたお礼もしたいですし、片桐さんの分も奢りますよ」

早苗「よっしゃー!じゃあとりあえず生中5本!」

P「ちょっとまてとりあえずで5本って何杯飲む気だアンタ」

美嘉「日曜日はダメダメよ♪もっと愛を鍛えてね♪...わたしだけをずっと愛してみてよ♪」

   デン!
  98.110点!

周子「すっご!?」

美嘉「へへーん!どんなもんよ!」

フレデリカ「美嘉ちゃん『カラオケバトル』出れるんじゃない?」

P「それいいな、今度企画持ちこんでみるか」


奏「そういえば、皆結構歌ったけどプロデューサーさんは?」

志希「そういえば、プロデューサー一回も歌ってないね」

P「えっ!?いや、俺は歌ヘタクソだしさ......それに折角現役アイドルの生歌聞き放題なんだから聞き専でいるよ」

周子「もー、遠慮しないでPさんも歌いなよ!ヘタクソとか皆気にしないしさ♪そろそろ時間だし、最後に一曲行っちゃいなよ」


そう言って周子がマイクをプロデューサーさんに押し付けるけど、プロデューサーは頑なに受け取ろうとしない


ここは...その気にさせてやる必要があるわね

プロデューサーさん実は結構音楽に詳しいみたいだし、一度本人が歌ってるとこを私も見てみたいわ♪

それじゃあ、貴方の育てたアイドルの演技力、見てもらおうかしら?

奏「ひどい...」

P「えっ」

奏「みんな、プロデューサーの歌が聞きたいのに....私達じゃ貴女の歌を聞く資格はないのね...」ホロリ

P「いやいや!別にそういうわけじゃないぞ!だから泣くなって!」


奏「じゃあ、歌ってくれる?」

P「えっ!?いや、それは..........」




ふふ、私だって人の心を掴むために色々と研究してるのよ
女の必殺、泣き落としで流石のプロデューサーさんも...








...あれ?

プロデューサー、なんだかいつになく本気で焦ってない?

というより...もしかして、怖がってる?

早苗「.....はいはーい!かたぎりしゃなえ、シメに『気分爽快』でいきまーしゅ!!!!」

周子「うわびっくりした!急に立ち上がらんといてよ早苗さん...」

美嘉「もう完全に出来上がってるね...」

P「えっ、あっ!どうぞどうぞ片桐さん!」

奏「あっ!もう...」

P「悪いな、また今度」

奏「......まあいいわ、今度はプロデューサーさんも歌ってね」

~~~~それから1週間後~~~~~~


  =====811プロ事務所=====


P「はい、ウチの城ケ崎を...分かりました!こちらこそよろしくお願いします!」

P「周子、来週フジヤマテレビのクイズ番組に美嘉が出ることになった、ホワイトボードにメモしておいてくれ」

周子「りょーかい。美嘉ちゃん最近引っ張りだこやねぇ」

P「まあなんだかんだで注目されたし、大学受験での逆転劇があの『情熱の夜明け』で取り上げられたからな。」

P「それに受験生の間で空前の美嘉ブームが到来してるらしいぞ?一般受験の受験生たちには美嘉のCDがもっぱら学業向上のお守りみたいになってるらしい」

周子「美嘉ちゃん、ついに学問の神様になっちゃったのかー....」

周子「それにしてもさー、受験終わってから阿苦都苦出版とかも美嘉ちゃんのデタラメ記事めっきり書かなくなったし、平和になったねぇ」

P「暴れまわってた出版社、割とバッシング貰ったらしいぞ?美嘉の件にしろ、他の事務所の記事にしろやりすぎだって」

P「あと片桐さんからうっすら聞いたんだけど、美嘉の担任もなんか謹慎食らったらしい。なんか美嘉だけじゃなく、他の生徒にもパワハラまがいの事してたんだとか」

周子「へー、因果応報やね」

P「ああ、全くだ!」









P「でも片桐さん、『警告無視したからシメたのよ♪』とか言ってたけど......大丈夫かな?」

周子「......多分それ、あんま詳しく聞かないほうがいい奴だよ」

P「警察官を怒らせると怖いんだな..........」

周子「まあなんにせよ、一件落着って感じだね。あいつら諦めてくれたみたいでよかったよ」

周子「あいつら受験終わりまで毎日のように美嘉ちゃん相手に勝手な事ばっか書いてたけど、こんなしょーもないネタ引きずるなんてどんだけ暇やったんかな?」







P「.......周子、その疑問は正しい」

周子「えっ?」

P「その通りなんだよ、ゴシップなんて今の世の中山ほどある。でも、今回の美嘉みたいなネタは学生アイドルにはありがちの話で、大して興味を持たれるものじゃない」
 
P「それでも美嘉は知名度があったから多少の反応もあったけど、それもすぐに止んだだろ?」

周子「それは...そうだね。むしろ毎日のように応援メッセ―ジが届くようになってた」

P「あいつらだって暇じゃないんだ、普通こんなネタ長い事引っ張り続けない」

周子「でも、実際あの3つの出版社は美嘉ちゃんのネガキャンし続けたよ?」

P「ああ...写真の共有といい、非常に不自然だ」

周子「んー...どういうことなんやろ?」

P「それに、美嘉は最初から集中砲火されてたわけじゃなかった。むしろ最初の方は皆に全体的に、特に周子に記者が張り付いてたよな?」

周子「あー...そうだねー。家にも仕事先にも来てたもんね」

P「多分、811プロのイメージを下げれれば誰でもよかったんだ。周子にマークが多かったのはもしかしたら同じアパートに住んでるプロデューサー...俺と一緒に映ってる写真を撮ってネタにするつもりだったのかもしれない」

P「でもウチが少数精鋭なのもあって、なかなか皆隙を見せなくて焦っていたんだろう。実際みんな警戒してたしな」

周子「そこにたまたま美嘉ちゃんを叩けそうなネタが出てきたから、小さくてもそれを引っ張り続けて必死にイメージダウンを狙ったってこと?」

P「まぁ、考えられるとしたらそれくらいだろうな...だがそれでも、やっぱりなんか違和感が残る。人気アイドルを抱えてるとはいえ、業界の中ではコネも資金も小規模のウチをこんなムリのあるやり方で狙い続けた理由もよくわからんし」



周子「.....まっ、どんな理由あれ美嘉ちゃんを傷つけたのは許せないけどね。いつかこの借り、返してやるんだから!」

P「だが気を付けろ。多分この事件、まだ終わっちゃいない」

周子「えっ?」
 
P「出版社には大したメリットもないのに、ここまで無理なリンチを決行したんだ。3つ出版社の裏に、もっとデカい何かが隠れているのは間違いない」

周子「それって所謂、『黒幕』ってやつ?」

P「ああ.......絶対につきとめて、借りは返す」






P(それにしてもこの3つの出版社、確かあの時も....)

周子「Pさん?」

P「!.......なんだ?」

周子「さっきからずーっと怖い顔してるけど、どしたん?」
 
P「いやなに、出版社にやられたこと思い返すとなんか凄くムカついてきてな」

周子「ふーん....」 

P「それより、仕事に戻るぞ。まだまだ処理できてない案件は山ほどあるんだからな」

周子「はーい」

ようやく、ようやく、尻尾が見えてきた....

待ってろ...俺は必ずお前を見つけだして、そして.....









  この復讐を、やり遂げる...












to be continued.....

Chapter13が終わったところで、今回はここまで―
実際アイドルと受験生の両立ってめちゃくちゃ大変そうだけど、美嘉ねぇはどっちも妥協しないんだろうなぁと思ったり

シリアス続いたので、次回は箸休め回みたいなのになる予定です

ミスト「Pさんの復讐は、ただの復讐と思ってませんから」

>>726 「霧が濃くなってきたな...」

Chapter14、投下開始していきます

美嘉の受験からまた時は流れて2月

もうコートなしでは外を歩けないくらいの寒さになってきたこの季節。世間は女の子の一大イベント、バレンタインが到来していた

もちろん私達もチョコを作ってプロデューサーに送ったけど、こと811プロにおいて2月14日の一番のイベントはバレンタインではない



では、一番のイベントは?

それは....








フレデリカ「みんなー!ボンジュール!」

    


    パンッ!!



『フレちゃん、誕生日おめでとー!』

フレデリカ「わー!サプライズだー♪」







811プロ一番のムード―メーカー、フレデリカの誕生日よ!





        Chapter14「How to Make Smile」



フレデリカ「てなわけで始まりましたー!ぱちぱちー♪」

志希「ぱちぱちー♪」

美嘉「始まったって、何が?」

奏「あら?フレデリカの持ってるそれ、カメラ?」

フレデリカ「探偵フレデリカのしるぶぷれ捜査、誕生日特別篇だよー?今日はパパから借りてきたこのカメラで、皆の笑顔をばっちり撮影するんだー♪」


周子「なるほどー、じゃあ今日の依頼は?」

フレデリカ「今日の依頼は....じゃじゃじゃん!P.N『アタシ猫辞めるよ』さんから!」

美嘉(それフレちゃんじゃ...)


フレデリカ「こんにちはフレちゃん、アタシは今あなたの頭の中に直接語り掛けています」

周子(本人だからね)

フレデリカ「早速ですがアタシは今日誕生日です、なのでとてもウキウキしながら事務所へ行くと早速皆がサプライズでお祝いをしてくれました」
     
「それでアタシは朝一番からとてもハッピーな気分になれたので、今度はアタシが皆をハッピーにしたいです!そこで、811プロ皆をハッピーにする方法を教えてください!おねがいしるぶぷれ!」
     
「『アタシ猫辞めるよ』さん!その依頼、確かにこの名探偵フレちゃんが引き受けた―!」


志希「採用されたP.N『アタシ猫辞めるよ』さんには志希ちゃん印のリラックスできる香水をプレゼント―!」

フレデリカ「やったー!ありがとー志希ちゃん!」

美嘉(やっぱりフレちゃんなんだ...)

フレデリカ「というわけで、今日のゲストは811プロの皆!名探偵フレちゃんが、皆を笑顔にする魔法を街に探しに行くよー!よろしくねー♪」

周子「よろしくー♪あっ、これプレゼントのしゅーこちゃん特性和菓子詰め合わせセットね、自信作だよー♪」

フレデリカ「ワーオ!早速お宝ゲット~♪じゃあこれは今から皆で食べよっか!」

奏「あら、あなたのプレゼントなのに私達が食べてもいいの?」

フレデリカ「もちろん、だってみんなで食べた方がおいしいもん!というわけで、しゅーこちゃんのダーツ飯出張版!自家製和菓子編だよ!」

周子「ダーツ投げてないけどねー」

フレデリカ「そこで助手のプロデューサー君!」

P「あいよ(全部和菓子と書かれたダーツの的)」

美嘉「プロデューサーさんさっきから喋らないと思ってたらそれ作ってたんだね」

P「急ぎだから手描きだけどな、というわけで周子、いつもの奴よろしく」

周子「はーい、...よっと!」ヒュッ


ストンッ


志希「おー、ナイスBULL!」

周子「どんなもんよ!まぁ、どこ狙っても一緒だけどさ」

フレデリカ「それじゃ、しゅーこちゃんのダーツ飯探偵デリカ出張版、始まるよー!」




『いえーい!』

フレデリカ「美味しかったねー♪」

奏「ええ、流石和菓子屋の娘ね」

周子「えへへ...皆が喜んでくれたなら何よりだよ」

フレデリカ「てな訳で美味しいおやつで皆ハッピーになったところで、次にいってみよー!」

志希「次はどうするの~?」

フレデリカ「うん!探偵フレデリカ、ゲストの皆といっしょに街へ皆をハッピーにする魔法を探しに出掛けるよー♪」


P「散歩に行くのはいいけど、お前ら人気アイドルなんだからちゃんと変装して行けよ~?騒がれたら撮影どころじゃなくなるぞ?」

フレデリカ「え~!アタシ今眼鏡も帽子もお面も特殊メイクも持ってきてないよー!」

美嘉「そこであたしの出番だね!というわけで『カリスマ★チェンジ』出張版!はいフレちゃん、プレゼント!」

フレデリカ「わーい!中身はー......わぁ!可愛いワンピースだ!それに帽子と、眼鏡だね!」

美嘉「眼鏡は伊達眼鏡だよー★今週のあたしイチオシコーデなんだー!」
  
美嘉「フレちゃん普段街に出るときも変装とかしないでよく周りにばれてるし、これで普段から少しは隠すように心掛けること!」

フレデリカ「はーい!」


志希「なんか美嘉ちゃんって、あたし達のママみたいだよね♪」

フレデリカ「ママ―!ありがとー!」

美嘉「ちょっ、ちょっと!やめなさい///」


周子「ママ―!あそぼー♪」

奏「ふふふっ!ママは人気ものね♪」

美嘉「もうっ!二人まで!」

P「んじゃ、行ってらっしゃい」

フレデリカ「んー?プロデューサーも行くんだよ―?」

P「えっ?」


フレデリカ「だって今日のゲストは、811プロ皆だもん!もちろん、プロデューサーもその中に入ってるんだよー♪」

周子「そうだよPさん。ご飯ばっかりじゃなくって、偶には一緒に遊びに行こうよ。この前のカラオケも結局歌って無かったしさ」

P「い、いやいや!変装して行くとはいえ、アイドルとプロデューサーが一緒に遊んでるのすっぱ抜かれたら問題だろ!?特に今はいろいろ警戒しなきゃいけないのに...」

フレデリカ「むー!行くったら行くのー!」

P「駄々こねたってダメなもんはダメ!......ていうかなんだその動き、およそ地球人の動きには見えないんだが」

フレデリカ「昨日見たうえきちゃんのダンスだよー?」

P「うえきちゃんって....えっ?あの商店街の福引でもらったよくわかんないオブジェ?あれ動くの?怖っ....」







奏「......なら、プロデューサーさんも変装すればいいんじゃない?」

P「えっ」

奏「美嘉、メイク道具はあるわね?」

美嘉「そりゃもちろんあるけど...成程ね!」

周子「そういえば、ウチの衣装保管庫には色々あったねぇ...」ニヤリ

P「えっ、おい、話が見えないぞ...」

志希「まあまあプロデューサー、折角誕生日なんだしフレちゃんのお願い聞いてあげたくない?」

P「そりゃまあ、叶えられる範囲なら叶えてやりたいが.....」

志希「よし言質取れたよ」ボイレコ

P「しまった!」

周子「この業界で油断しちゃだめだよPさん♪」

P「...だが、結局変装ってどうするんだ?どう変装しようがアイドルが男と仲良く歩いてるのは.....」

奏「簡単よ、プロデューサーさんが私達の担当プロデューサーの『男性』だって分からなくすればいいのよ」






P「......おいまさか!」

フレデリカ「じゃあじゃあここで新コーナー!プロデューサー改造計画の始まりはじまりー!」

P「マ、マジかよ...」 

三十分後


美嘉「よしっ、メイクも完成....したけど...」

奏「プロデューサーさん、あなた......」










奏「女装似合うわね」

P「うるさい....絶対似合って無い....」


周子「いやいや、ホント似合ってるって。美嘉ちゃんのメイクが上手いのも相まって、元がPさんって分かんないよこれ」

周子「....いやダメだ、笑えるっ......!」

フレデリカ「まさか!プロデューサーが新しいアイドル!?」

志希「あたし達に後輩ができたねフレちゃん♪」




P「嬉しくねぇ...嬉しくねえし...しかも....」











P(メイド服)「しかも!なんでよりにもよってコレなんだよ!」バァアアアーン!!

周子「いや、折角だから一回本物のメイドってやつを見てみたくてさ」

P「だからって俺でやる必要あるか!?」

奏「大丈夫よ、ホントに似合ってるから」

P「こんなので褒められてもうれしくねえよ!むしろ悲しくなるわ!」

P「ちくしょう、またこれを着る羽目になるとは........」

美嘉「また、ってことは前にも来たの?」

P「....保管室のコスプレはな、全部俺の知人がスペースに困って押し付けたものか...もしくは俺に着させるためにわざわざ買ってきたものなんだよ...」

美嘉「あー...メイド服は着せられた方だったんだ...」

奏「それとプロデューサーさん、しゃべる時気を付けないと声で男ってばれちゃうかもしれないから気を付けた方がいいわよ」

P「あっ、そうか。それはマズいな」

P「じゃあ...これくらいならどうだ?』ウラゴエ

フレデリカ「わー!女の子の声だ!」

志希「凄い!喉にボイスチェンジャーでも仕込んでるの?」

P『普通にちょっと高い声を出すよう意識してるだけだよ。これくらいなら全然大丈夫だが...マジでこのカッコで行くの?』

フレデリカ「もちろん!新しいアイドルも増えたとこで、調査にしゅっぱーつ!みなのものフレちゃんに続け―!」

『おー!!!!!』

P『おー....』











周子「ところでPさん、その声で『おかえりなさいませご主人様』って言ってみてくれない?」

P『誰がやるか!!』

P『うう...やっぱり視線が痛い、恥ずかしい...』

奏「まあ、メイド服で街歩く人なんてそうそういないものね」

美嘉「大丈夫だってプロデューサー、まさか周りの人もまさか女装男子だとは思ってないって!」

P『それはそれで男としてどうなんだ俺....』

周子「んじゃ、まずどこ行こうか?」

美嘉「またカラオケでも行く?」

フレデリカ「んー、皆でカラオケは前に行ったし、折角なら別の場所がいいなー?」

奏「じゃあ、映画なんてどうかしら?ちょうど今面白そうと思ってた映画があるのよ」

志希「『シネマ・速水奏』も出張版だねー♪」

フレデリカ「いいねー!じゃあ映画館にいこっか♪」

P『ちなみに、その映画はタイトルは何なんだ?』




奏「『シャークタイフーン』よ」

全員(!?)

P『サメ映画って、かなり地雷な気がするが...大丈夫か?』

奏「大丈夫よ、絶対名作だから!」


美嘉(そういえば事務所に置いてある奏ちゃんのDVD...)

周子(やたらB級ぽいのばっかだったような...いや割と面白かったけど)

そして視聴後.....




フレデリカ「なんかすっごく面白かったねー!」

美嘉「うん、なんか予想以上に面白かった...」

周子「サメ映画かと思ったら唐突にミステリになったり恋愛映画っぽくなったりしたけど、ちゃんと最後の最後で全部つながったね......」

志希「あたしでも全然展開読めなくてワクワクした!」

P『挿入歌も流れるシーンといい感じにマッチしてたな...流石映画の為に曲丸ごと書き下ろしただけはある...』

奏「ね?面白かったでしょ?」

周子(なんだかんだ、見る目はあるんだよなぁ...)

フレデリカ「そろそろ、おなかすいたーん♪」

周子「おっ、しゅーこちゃんのマネ上手いねフレちゃん♪」

フレデリカ「いつも一緒にいるからね♪」

奏「確かにそろそろお昼時ね。どこかでランチにする?」

フレデリカ「あっ!じゃあまた皆でパーティーしたい!鍋パとかタコパとか!」

志希「じゃあ、『ドクター志希の料理は化学!』も出張版!志希ちゃん式闇鍋パーティー!」

美嘉「闇鍋かぁ、やったことないけど面白そうじゃん!」

周子「じゃあそこのデパートで各自材料買ってここに集合しようか、場所は...」

P『確かこの辺にキッチン付きのフリースペースあったからそこ借りるか』

奏「じゃあ決まりね、皆また後で落ち合いましょう」

全員「了解!」

数十分後



志希「ただいまー!あたしで最後かな?」

奏「ええ、みんな揃ってるわよ」

周子「フリースペースの予約はさっきPさんが取ってくれたよ」

フレデリカ「じゃあ皆!いざ決戦の地へ、いくぞー!」

全員「おー!」






奏(それにしても...一応闇鍋とはいえみんなお鍋の具を買いに行ったはずなのに)

美嘉(見事に皆違う方向に歩いてったな...結局一度も鉢合わせなかったし...大丈夫だよね?)

志希「それじゃあ電気消して...ケミカルショーの始まり始まり―!」

P『じゃあ始めるぞ。各自自分がつかんだものは必ず自分で食べきる事!総員、食材投入!』



ポチャボチャポチャンピチュンズドンボチャアン!!


美嘉「....なんか今変な音なかった?」

周子「気のせい気のせい。じゃあ皆ー、一つずつ何か掴んでって」


P『じゃあ俺から...よっと、割と大きいな』

奏「次は私ね...何かしっとりしてる様な...」

美嘉「んじゃあたしもー...なんかちっちゃいの掴んだ...ていうか豆じゃないこれ?」

フレデリカ「次アタシ―!...なんかぷりぷりしてる!」

志希「あたしも行くよー!...んー?なんか軽いねー?」

周子「んじゃ最後はあたしだねー...おっ、これはアタリっぽい感触!」

P『全員とったな...よし、明かり着けるぞ』

美嘉「気になるお鍋の中身は....!?」

美嘉「ちょっ!出汁の色やばくない!?」

P『どれどれ....!?おいなんだこの色!真っ赤な何かと小豆色のなにかでワケわからん事になってんじゃねえか!』

周子「小豆色ってかあたしの入れた餡子だよそれ」

志希「赤いのはあたしのタバスコだねー」

P『二つとも何でいれた!?』

志希「好きだから♪」

周子「意外とぜんざいみたいになって美味しいかもしれんやん?」

奏「鍋の色もアレだけど...お椀の中は....」



P→大根

奏→饅頭

美嘉→小豆

フレデリカ→カニ

志希→マカロン

周子→厚切り肉



美嘉「いやお鍋っぽくないの一杯あるんだけど!?」

P『大根は美嘉だな、一番良識あるチョイスだし』

美嘉「おっ、プロデューサー正解★....ていうか、皆が変なもの選びすぎなんじゃない!?」

奏「私のお饅頭は...周子?」

P『いや、それは俺だ』

美嘉「プロデューサーはまともだと思ったのに!」

P「すまん....なんか目についたから食べたくなって....」

フレデリカ「プロデューサーってお饅頭好きだよね。事務所によく置いてあるし」

P『毎回ちゃんと隠してるはずなのになんでお前ら見つけられるの...そしてなんで俺の分まで勝手に食べるの....』

周子「フレちゃんのもってるカニはあたしがいれた奴だね」

フレデリカ「アタシのはマカロンだよー♪」

志希「このマカロンフレちゃんのかー。ちなみにあたしはー...周子ちゃんの持ってるお肉でーす!」

周子「やったー、しゅーこちゃん大当たり―♪」

美嘉「あたしの掴んだ豆は周子ちゃんの入れた餡子の小豆か...なんか悲しくなる大きさ...」

奏「私のは誰も取らなかったのね...残念」



P『奏の入れたのは...なんだこの赤いの?』

奏「ザクロよ」

美嘉「奏ちゃんもそっち(変なもの)側かー...」

周子「それじゃ実食ターイム!皆自分の掴んだものはちゃんと食べる事!」

P『まあ俺は無難なものだから大丈夫だろ...』パクッ



P『....!!!!??!???』

美嘉「ど、どうしたのプロデューサーさん!?」

P「ぢゃいきょんに、でゃいこんにめっちゃタバスコ染み込んでてぇ!カライイイイイイ!!!!」

志希「声戻っちゃったね」

P「こんなの、声変えてる余裕...!水!」

奏「私も...!!!」
 
奏「水!!」

フレデリカ「お饅頭にも染み込んじゃったんだねー」

美嘉「あたしは...うん、小豆一粒だし大したことないね。逆に良かったかも....」

志希「あたしはタバスコ平気だけど、マカロンふやけててびみょー...」

フレデリカ「アタシのカニは....ちょっと辛い、てか辛すぎ!お水ちょーだい!」

周子「そんな中しゅーこちゃんは大勝利するのであった。お肉だからタバスコの辛味もいい感じのアクセントになってるだろうしね」パクッ
  


周子「.....いやダメだこれ、餡子の味が邪魔だわ」

美嘉「自爆してんじゃん...」

P『どうすんだよこれ、もう出汁の時点で崩壊しててこの先なに入ってもダメだぞこれ...』

志希「んー、ちょっと待って。この味なら...これとこれを調合して....」

志希「よしっ、プロデューサー食べてみてー」

P『えー...じゃあ奏のザクロを一つ...』パクッ


P『....美味い、だと!?』

志希「へへーん!ドクター志希のケミカルテクニック!出汁の味がいい感じに中和されてるでしょ?」

周子「....ホントだ、お肉美味しくなってる!」

フレデリカ「凄い!志希ちゃんお料理博士だね!」

奏「ええ、これでちゃんと食べられるわ。お手柄ね志希」

美嘉「元凶のタバスコをいれたのも志希ちゃんなんだけどね....」

志希「マッチポンプなんてこの業界じゃよくあることだよ♪よくヤラセ企画とかあるでしょ?」

P『そう言うのとはまた違うと思うんだが...』

その後も...

フレデリカ「いっけー!フォンダン・オ・ショコラ!」


ゴロゴロゴロ......カラコーン!


志希「おー!フレちゃんナイスストライク!」


私達はいろんな場所へ行き....

奏「くっ、さっき見たあの技が出れば....」

P『甘いぞ奏』ショーリューケン!

奏「嘘っ、完封負け!?」KO!


皆で色んな遊びをして....

周子「...よっと!」

美嘉「あちゃー、先に落とされちゃった。周子ちゃんビリヤードも上手いんだね!」

周子「美嘉ちゃんも初めてなのに凄いよ、ちょっとやばいと思っちゃった」


そして....

======811プロ事務所======



美嘉「いやー遊んだねー!もうこんな時間だよ」

フレデリカ「うん!皆の笑顔、一杯撮れたよ!」

志希「撮れ高すごかったねー!これは最高視聴率間違いなし!」

P「地上波公開されないから...てかさせないから....」

周子「あれ、着替えちゃったのかPさん」

奏「もったいないわね、もっと着ててもよかったのに」

P「勘弁してくれ...」

P「.....あっ!そういえば俺からのプレゼントまだ渡してなかったな」

奏「私もね、じゃあ一緒に渡しましょうか」

フレデリカ「やったー!楽しみー♪」



P「俺からはこれだ」

フレデリカ「どれどれ...これって、ワイン?」

P「ああ、今日でフレデリカも二十歳だろ?折角飲めるようになったんならと思って知り合いに良いワインを見繕ってもらったんだ」

奏「あら、じゃあちょうど良かったわね。」

奏「どうぞフレデリカ、私のプレゼントはワイングラスよ。ちゃんと赤用と白用両方あるわ」

フレデリカ「わーい!二人ともありがとー!」

周子「これでフレちゃんも、大人の仲間入りだねー」

P「周子はまた来年な」

P「んじゃ皆、今日はもう遅いし早い所帰りなさい。最近この辺不審者の情報も多いし気を付けて帰るんだぞ」

フレデリカ「.....まってプロデューサー。アタシちょっと残ってもいい?」

P「いいけど...何でだ?」

フレデリカ「折角お酒飲めるようになったし、一度プロデューサーと一緒に飲んでみたいかなーって」

奏「あら、良かったじゃないプロデューサーさん、美人から夜のお誘いよ」

周子「勿論断らないよねー?こんな美人と飲める機会、そうそうないよ?」

P「茶化すなって....まあ、いいぞ。でもあんまり遅くならない様にな?」

フレデリカ「やったー!」


美嘉「じゃああたしたちは飲めないし、そろそろ解散しよっか★」

志希「えー、あたしまだまだ遊びたいー!」

美嘉「ダメだよ、JKが遅い時間まで外に出てたら補導されちゃうよ。それに今何かと危ないでしょ?」

志希「ちえー、分かったよママ」

美嘉「ママ言わない!」

奏「じゃあフレデリカ、プロデューサーさん、また明日ね」

周子「ばいばーい」

フレデリカ「ばいばーい!また明日―!」

皆が家に帰った後、贈ったワインを抜染し、二つのグラスに注ぐ

自分で贈った物を自分で飲んでもいいのかと躊躇ったが、フレデリカ曰く美味しいものはみんなで分けてこそらしいので、お言葉に甘えて俺も飲むことにした



P「さてと、それじゃあ二十歳の誕生日おめでとう。乾杯」

フレデリカ「乾杯!」

フレデリカ「ゴクゴク....美味しい!」

P「それなら良かった」





P「......いつもありがとなフレデリカ。」

フレデリカ「んー?」

P「テキトーな様にみえて、いつもみんなのフォローしてくれてるだろ?お前のその向日葵みたいな笑顔に、みんな元気貰ってるよ」

フレデリカ「そうなの?アタシが皆を元気にできてるなら嬉しいなー♪」

P「ああ、もちろん俺もお前に元気を貰ってる一人だ。ありがとな」

フレデリカ「えへへー!どういたしまして♪」



P「......そういえば、もうそろそろ短大も卒業だよな?ファッションデザインを学んでるって聞いたけど、卒業したらどうするんだ?」

フレデリカ「とりあえずはアイドルを続けつつ、まだまだデザインも勉強する!アタシ、いつか自分のブランド立ち上げるのが夢だから!」

P「そうか、なら俺もその夢に役立てるような仕事を取ってこれるよう頑張るよ。ファッションコンテスト的なやつとか」

フレデリカ「ホント!?ありがとうプロデューサー!」

P「それにしても、ファッションデザイナーか...」



ふと、興味を持った
いつもフリーダムスタイルなフレデリカは、一体何故ブランドを立ち上げる夢を持ったのか



P「そういえば、フレデリカはなんでデザインを学ぼうと思ったんだ?」


ただ純粋な、興味だった


だが、その質問をした瞬間、フレデリカの手が少し固まって、一瞬何かを考えこんだように見えた

...もしかして、聞いちゃいけない事だったか?

しかし一瞬の間のあと、そんな心配とは裏腹にフレデリカは笑顔で口を開いた



フレデリカ「アタシねー?むかーしむかしパリにいた頃は大人しい子だったんだよ?」

P「そう、なのか?」


正直、想像できない
大人しいフレデリカとか、それはもはやフレデリカがモデルのただのフランス人形なんじゃないだろうか?








フレデリカ「聞きたい?」

P「えっ?」

フレデリカ「ではではー!パリジェンヌ昔話、『宮本さんちのフレちゃん』のはじまりはじまりー♪」

P「まだ何も言ってないんだが......まあいいか」

興味あるし.....な







to be continued...

Chapter14終了したとこで今日はここまで―。箸休め回とはいえちょっとカットし過ぎたかなとは思った(小並感)

ちなみに、ストーリー上重要じゃないからカットしてるだけで、フレちゃん以外の皆も誕生日パーティーはやってる設定です


あとフレちゃんが成人したように、サザエさん時空ではないのでストーリー中の時間の流れとともに、一部キャラクターは年齢が公式とずれています


・美嘉 17→18

・周子 18→19

・フレデリカ 19→20

など

このスレ内で話が納まるかにぃ……

>>758 多分収まらない....っていうか当初危惧していた年齢制限が怪しくなりそうなシーンすらたどり着くか怪しい....

というわけでChapter15投下していきます。今回は短いです

むかしむかし、あるパリにフレちゃんのパパとママがいました


仕事でパリに来ていた日本人のパパとフランスの出身のママは出会ってすぐに一目惚れをしました

すぐにママとパパは結婚しようと思いましたが、ママのパパ、フレちゃんのおじいちゃんはそれを許してくれませんでした

ママのお家はフランスで有名なお家だったから、テイサイ?とかなんか色々あったんだって



それで結婚を認められず落ち込むママでしたが、パパはそんなママに『何があっても俺が守るから一緒に暮らそう!』とプロポーズしました
パパかっこいー!

そんなパパのプロポーズを受けたママはますますパパにメロメロになっちゃって、ママとパパは一緒に駆け落ちするのでした



そして駆け落ちした先で、二人の間に可愛い女の子が生まれました♪

そしてママとパパは生まれた赤ちゃんに

ママ&パパ「「桃から生まれたから桃デリカ、略してフレデリカ!」」
と名付けました♪



P(どこを略したって言うんだ.....?)

ママとパパはフレちゃんを大事に大事に育てながら、3人で幸せな時間を過ごしていました

その時のアタシは今と違ってあんまりおしゃべりしない大人しい子だったけど、今と同じでママとパパのことが大好きなキュートな女の子だったんだ!







でもフレちゃん5歳になったころ、とうとうおじいちゃんにお家が見つかっちゃいました

ちろんママとおじいちゃんは大ゲンカ!
パパも仲を取り持とうとしたんだけど、おじいちゃんは聞く耳を持ってくれなかったの

結局、ママとおじいちゃんは

『絶縁だー!!!!』

ってなっちゃったの




アタシおじいちゃんにはそれまで会ったこと無くて、その時のアタシにとっては全然知らない人だったんだけどね

なんでかな、おじいちゃんがママを怒る事だけじゃなくて、ママがおじいちゃんに悪口を言うのも、なんかすごく悲しかったんだ





そんなこんなで、ママはもうおじいちゃんのいるフランスには居たくないって思ったんだって

だから宮本さんちは家族みんなでパパの故郷、日本へと渡ったんだー

でも、日本へ渡っても暫くはまだ今みたいな明るい性格ではなかったの
幼稚園の間はまだまだ日本にも馴れてなかったし、色々不安で大人しくしてた...っていうより、ちょっとおどおどしてたかな?


だからかな?フレちゃん、クラスの皆にちょっとだけ避けられてたの
やっぱこっちだとアタシのフランス製の金髪とかおめめとか珍しかったからかな?
それに、パリにいた時からお父さんにちょっとずつ教えてもらってたけど、あの時はまだ日本語でしゃべるのにも馴れてなかったしね



だから、幼稚園ではやっぱりちょっと....寂しかったなぁ

そして、幼稚園を卒園する時だったかなぁ

ママが、アタシに謝ってきたの

『ママの...フランスの見た目のせいでフレちゃんに苦労させて...ごめんね...』って

アタシ、その時本当に悲しかった

幼稚園でアタシに友達が出来なかった事なんかより、ママが辛そうにしてるのが....本当に悲しかった

でも、その時のアタシはまだママをどう慰めればいいか分からなくて。
ただ、『泣かないで』って言う事しかできなかったの....





そんなこんなでもやもやした気分を抱えたまま、アタシは小学生になったの

小学生になってからは日本語で話すのにも馴れてきて、ちょっとずつ友達が作れるように頑張り始めたんだ

避けられない為に嘘の自分を被って、大人しい子じゃなくて、親しみやすい元気な子って思ってもらえるようにね

でも、最初はみんなアタシの事珍しがって話かけてくれるけど、やっぱり急に人と話すのが上手くなるわけじゃなくってさ

結局、段々皆離れていっちゃったんだよね....

そんな感じで毎日を過ごしていた時ね、クラスの男の子が二人がケンカを始めちゃったの

そしたらその二人の友達もそれぞれ喧嘩しだして、大ゲンカになっちゃったんだ

あまりにも大きなケンカだったから、皆止めに入れなくってね

クラスの子が一人先生を呼びに行ったんだけど、向こうでもなんかトラブってたみたいで先生が来るのに時間かかっちゃってたんだ



だから長い間喧嘩が続いちゃってたんだけど、アタシ段々その空気に耐えられなくなっちゃってね


アタシ、別に喧嘩してた子達と特別仲が良かったわけじゃないの

でもなんていうか、周りがどんどん重い空気になる度に、アタシどんどん悲しくなってきて
まるで、ママとおじいちゃんが喧嘩してた時みたいだった...






だから、考えるより先に体が動いちゃったんだ

ケンカを止めようとして、ケンカしてた子達の中に割って入ったんだ

急にアタシが出てきたからケンカしてた子もみんなびっくりして固まっちゃったんだけど、アタシも頭真っ白で飛び込んだからテンパっちゃって

でも、何か言わないととは思ってさ、パニクった頭でなんとか言葉を絞り出したんだけど、その時の言葉がね








幼フレ『はろはろー!そんなキミたちにさわやかパリジェンヌのフレちゃんはいかがー?』


もう、我ながらいろいろ無理があったよねー♪

でも、そんなアタシの無茶振りにケンカしてた子達がツッコミを入れてくれてさ!

そしてアタシも必死にツッコミに対して頑張ってボケ倒してたら、いつの間にか皆が笑顔になっていってたんだよね♪

それを見たら、あたしもすっごく嬉しくなってきてさ.....


その時、やっと気付いたんだ

アタシはたとえどんな人でも辛そうにしてる人を見るのは嫌なんだって
自分だけじゃなくて、皆で笑いあえることが大好きなんだって!

アタシと関わった人が皆ハッピーになってくれれば、アタシすっごくハッピーになれるんだって!
そして、ママがアタシを可愛く産んで育ててくれたからからこそ、アタシは皆をハッピーにできたんだって!




だからアタシは、沢山の人を笑顔にできる、そんなパリジェンヌになりたいって思ったんだ


そしていつか、パリにいるおじいちゃんもアタシが笑顔にしたい。そう心から思ったの!

P「良い話だな...」

フレデリカ「でしょでしょー!これがアタシのルーツなんだ♪」

フレデリカ「沢山の人を笑顔にしたい、いつだってそう思ってるから、あの日プロデューサーの名刺を拾った時、これはチャンス!って思ったんだよねー♪もしかしたらアイドル続けてる内にパリでLIVEとかやることになって、おじいちゃんも笑顔にできるかもしれないし!」


P「成程...だが、結局なんでファッションデザイナーを志したんだ?」

フレデリカ「それはねー....」

そんな感じで将来の目標をゲットしたフレちゃんだったんだけど、その目標をかなえるためにはまず最初に笑顔にしなきゃいけない人がいたの

そう、ママだね!


ママは前にアタシがおフランスな見た目のせいで避けられてるのを悲しんでたから、どうにかしてその悲しみを取り除いてあげたかった

それでどうすればいいかなーって考えてるときにね。あの一件以降仲良くなった友達の一人がお絵かきをしていたの


その子はね、自分がおしゃれな服を着る絵を描いてたんだー
なんか、寝てるときに色んなおしゃれを楽しむ夢を見たから、それを忘れないように絵に描き起こしてたんだって


それを見てアタシはひらめいたの!ママを喜ばせる方法を!

家に帰ったアタシはクレヨンと自由帳を取り出して、自由帳いっぱいにアタシが色んなおしゃれな服を着てる絵を描いて、それをママに見せて言ったんだ!

幼フレ『ママがかわいくうんでそだててくれたから、フレちゃんこんなにおしゃれさんになれましたー♪

幼フレ『さらにさらに~!おしゃれなフレちゃんはそのおしゃれさでともだちいっぱいつくれたよー!』ってね!


そしたらママ泣き出しちゃって!
でも、泣きながらすっごく良い笑顔で笑って!

『ありがとう』とか、『愛してる』って何度も言ってくれたんだ!




そしたらアタシもうれしい気持ちでいっぱいいっぱいになっちゃって!アタシも泣き出しちゃった♪



あの時、アタシは初めて嬉しすぎると涙が出るって事を知って、嬉しくて出る涙、は悲しい涙と違ってとってもあったかくなるって分かったんだー!

フレデリカ「そんな感じでその後もおしゃれな自分を描いてる内に、段々ハマってきて、いつかファッションデザイナーになって自分のブランドを持つ夢を持ったんだ♪」

P「そうだったのか.....」

フレデリカ「いつも元気なフレちゃんもさー、最初は嘘で作った自分だったの。でも、あの時に自分は地味で大人しいホンネより、元気で楽しいウソの方が好きだって分かったの。だから...この楽しいウソの方を、本当にしたいなって思ったんだ」


P「地味な真実より楽しい嘘を...か」

P「そうだな、その方がきっと....正しいんだろうな...」

P「...おっと、ワインも後一杯くらいで無くなるな...ほい、最後の一杯注いでやるよ」



ボトルの口をフレデリカに向ける
するとフレデリカもグラスを寄せてきたので、最後の一杯をグラスに注いだ

フレデリカ「ありがとープロデューサー!」

P「もう大分遅いし、これ飲んだら帰るんだぞ」





そう言うと、フレデリカは少しグラスの中身に口をつけ、グラスを置き

一呼吸おいて、口を開いた



フレデリカ「じゃあさ、アタシも昔話したんだし帰る前にプロデューサーにも質問していい?」

P「質問?...いいけど、何を聞きたいんだ?」





「プロデューサーは、どうしたら心から笑ってくれるの?」








Chapter15 「How can you see your smile?」



P「ッ!」

フレデリカ「アタシ、皆がハッピーなのが一番だからさ。プロデューサーが心の底から笑えて無いのを見るといつも悲しくなるんだよ。だから皆で遊びに出掛けたり、お酒一緒に飲んでお話ししたり、色々試したんだけど、ダメだったねー」

P「そんな事...俺はいつもお前たちのおかげで毎日楽しめてるよ」

フレデリカ「アタシ、地味なホントより楽しいウソの方が好きだけど、楽しくないウソは嫌いだな」

P「......」



フレデリカ「でも、どうしても話したくないんだよね?なら、いいや。アタシもプロデューサーが辛い思いしてまで聞きたいと思わないから」

P「...すまない」

フレデリカ「ううん、大丈夫。だけど...アタシ達みんな、本当にプロデューサーに感謝してるし、みんなプロデューサーの事大好きなの。プロデューサーが辛いのは皆イヤなの」
     

フレデリカ「だから...待ってるね」

フレデリカ「てなわけでまた明日ー、バイバイ」



いつもより少し暗めに挨拶を残して、フレデリカは事務所から出ていった


後には孤独と、静寂だけが残る




P「....コーヒーでも飲むか」



そうか、志希の時もそうだったもんな

フレデリカはあれでいて人の内心見抜くのがとても上手い
だからこそ、俺の心も見抜かれていたのか

でも、ごめんな
俺はもう止まれないんだ


真実で苦しむ暗いなら楽しいウソをとる。フレデリカのその考えは、本当に良いものだと思う

でも....俺はそれが選べない。例えどれだけ苦しもうとも、俺が今やっていることが、どうしようもない間違いだと分かっていても
俺は、腐った『真実』を追い求めずにはいられない


例え、お前たちを自分の目的の為に利用して、使い捨てることになったとしても
俺は、納得できる『真実』を手に入れなければならないんだ...!

ふと空を見上げると、月が出ていない事に気づいた
どうやら今夜は新月らしい


P「夜空に月がないのは、虚しいもんだな...」

















 
P「なぁ、お前もそう思うだろ?」




コーヒーから香る思い出に語りかける

今日も、返事は無い




P「ああ、俺本当に、プロデューサー失格だなぁ...」
 
謝ったとこで許されないのは分かっている
だが、言わずにはいられなかった








P「ごめん、ごめんなぁ。みんな........」


to be continued....

Chapter15終了。今回はここまで―

フレちゃんの過去については、主にデレステの限定SSRのセリフから色々と妄想を膨らませていって、こうなりました

彼女が日本に来てから今の性格になるまで、本当に色々な事を経験したんだなぁと考えると、なんだか目頭が熱くなりますね


でもフランスにいた頃の大人しめのフレちゃんも割と気になる。絶対かわいい

Chapter16投下始めていきます

フレデリカ「というわけで、『プロデューサーベロンベロンでげろっちゃえ作戦』は残念ながら失敗しちゃいました...無念!」

周子「んー...早苗さんとか青木さんに連れまわされてたって言ってたし、なんだかんだ肝臓鍛えられてたのかな?」

奏「待って、その作戦初耳なんだけど」

美嘉「あたしも...」

志希「言ってくれたら前に使った自白剤渡したのにー」

美嘉「ダメだよ!?」





      Chapter16 「What identity of the shadow?」



夜も更け、そろそろベッドに入ろうかと考えた所、スマホが周子からのコールを告げた

あの周子が『緊急!』なんて言って集合をかけるから、一体何事かと思ったのだけど...


奏「成程、プロデューサーさんを酒盛りに誘ったのは、そんな理由があったのね...」

志希「ていうか、もしかして周子ちゃんとフレちゃん一緒にいる?」

フレデリカ「うん!今日アタシしゅーこちゃんのお家にお泊りなんだー♪」

周子「あたしも気になってたからねー、Pさんがあたしたちに何を隠してるのか。もしかしたらフレちゃんとの酒盛りで何かゲロってるかもなーって思って、飲みが終わった後フレちゃんにウチまで来てもらえるよう頼んだんだ」

美嘉「プロデューサーの、隠し事?」

周子「そそ。いい加減気になってきたやん?あの人嘘つくのヘタだから、何かあるってのはなんとなく分かるんやけど...何なんやろうね?」

志希「まあフレちゃんの質問に対する反応的に、何か隠しているのは確定していいんじゃないかにゃー?」


プロデューサーさんが私たちに何か隠しているというのは私も感じてはいた
プロデューサーさんは時々、露骨に話を逸らす時があるから


特に....



奏「あの人はいつも自分自身の事を話したがらない...」



もしかしたら私達...プロデューサーさんの事を知っているようで、実は何も知れていないのかしら?

ハーメルンで書いたほうが受そウケう

美嘉「そういえば...まだあたしが移籍する前の時から感じてたことがあるんだけど」

奏「感じてた事?」

美嘉「プロデューサーって811プロを立ててからまだそんなに時間が立ってないはずなのに、なんか妙に業界に詳しいって言うか、現場に馴れ過ぎてる様な感じがするんだよね」

美嘉「だから前からプロデューサーをやってたのかなって思ってたんだけど....」

周子「でも、Pさん前に担当するのはあたしが初めてって言ってたよ?」

美嘉「そうなの?」

周子「まあPさんが嘘ついてなければやけど...わざわざそんな嘘をつく理由あるかなぁ?」



なぜプロデューサーになったのか、なぜ自らプロダクションを立てたのか
なぜトレーナーさんと知り合ったのか、どうして警察官である早苗さんと知り合ったのか
プロデューサーになる前は一体何をしていたのか...

思い返してみれば、私達はプロデューサーさんの過去を何も知らない事に気づいていく





でも...
私は何か、それに繋がる手がかりを持っていたような...?

美嘉「...っていけない、もうこんな時間じゃん!あたし明日8時からお仕事なのに!」

美嘉「てなわけでゴメン!あたし落ちるね!」

周子「えっ...うわホントだ!もう2時回ってるじゃん!」
  
周子「しゅーこちゃんも明日は午前中からデュアルフルムーンでオーディションあるからお休みしまーす。また明日ー」

フレデリカ「じゃあアタシも寝るねー、ばいばーい!」

奏「あら、じゃあお開きにしましょうか」

志希「あたしも今日は遊び疲れたから寝るー、お休みー」


全員が通話を切ったのを確認し、私も明日に備えるためベッドに入り目を閉じる



プロデューサーさん、きっと気のせいじゃないわよね?

貴方に信頼してもらえてない気がするのは...


ねえ、もし私達がトップアイドルになれるほどの魅力的な女になれたら、貴方は自分の事を全部話してくれる?

そうだとしたら....俄然、燃えてくるけど


プロデューサーさん....いつか貴方に誓った復讐は、必ず果たしたい。でも......



それを果たすとき時貴方は、ちゃんと私達の姿を見てくれるのかしら?

~~~~~~深夜、某芸能事務所前~~~~~~


怪しい男「.......」ニヤリ

ゴソゴソ.........











警備員「おい!誰だお前!」

怪しい男「!!」

次の日、私と周子の二人、デュアルフルムーンである大型番組のオーディションに挑んだ

毎年この時期に恒例で行われるこの番組は毎回大きな視聴率をたたき出す超人気番組
その分倍率はとても高く、私達の他にも多くの事務所が人気のアイドルを参加させていた

その中にはもちろん、010プロイチオシのアイドルユニットで、私達の良きライバルであるトライアドプリムスも



そんな大一番だからか、今日はプロデューサーさんもサポートの為オーディションに付き添ってくれた

プロデューサーさんが見に来ているのなら、無様なところは見せられないわね
そう周子と意気込み、今の私達の出せる全力でオーディションに挑んだ

そして、そんなアイドル業界の猛者が入り乱れた激しい戦いの結果は....







P「嘘、だろ....?」



1位 トライアドプリムス  ★×45 010プロ

2位 デュアルフルムーン  ★×0  811プロ

2位 NO TITLE   ★×0 WESTプロ

2位 Venus      ★×0  369プロ

2位 NightJuels ★×0  456プロ

2位 キングダムガールズ  ★×0  891プロ

             ・
             ・
             ・
             ・
             ・



圧倒的な力を持って作られた、焼け野原が残るのみだった

周子「こりゃあ完敗、だね...」

奏「ごめんなさいプロデューサーさん、折角見に来てくれたのに...」

P「いや、謝らなくていい。お前らは今回ちゃんと全力を出し切れていた、だが...」


それ以上に、今日のトライアドプリムスは圧倒的だった

私たちだけじゃない、全ての参加者が非常に高いレベルのパフォーマンスを発揮していた

でも...



P「トライアドプリムスは、それを寄せ付けないほど完成されたパフォーマンスだった...」
 
P「正直、次元が違う、そう感じさせられるほどのオーラだった.....だがまさか、全ての星をかっさらっていくとは....」

周子「トラプリの皆、最後に戦った時とは比べ物にならない技術力だったよ」

P「二人とも、あまり気を落とさずに....」

周子「大丈夫、今回はちゃんと自分を出し切っての敗北だから悔いはないよ、次勝てるように頑張るだけ」
  
周子「...ごめん嘘、やっぱりちょっと...ううん、ちょー悔しい。トラプリの皆、一体今回の為にどれだけの練習を積み重ねてきたんやろ...」

奏「それはもう、想像なんてできない程でしょうね」
 
奏「でも...」

P「でも?」

奏「審査中、ちらっとトラプリの方を見た時にね...」

その時、オーディション会場の扉が開き中からトライアドプリムスの3人が出てきた
おそらく番組の打ち合わせが終わったのだろう
彼女たちのプロデューサーらしき人も一緒だ



周子「みんなお疲れさま。今日は完敗だったよ」

トラプリP「君たちは...デュアルフルムーンのお二人ですね。お疲れさまです」

凛「どうだった?今日の私達は」

奏「とても美しかった、正直格の違いを感じさせられたわ...」

凛「そっか、なら良かった」

加蓮「あんだけのレッスン、こなした甲斐あったね」

トラプリP「だがお前ら、いい加減オーバーワーク気味じゃないか?言えば少しは休息を入れてやるが...」

加蓮「ううん、今はあたし達が頑張らなきゃいけない時期でしょ?」
  
加蓮「...010プロダクションの為にも」






...?
プロダクションの為?

トラプリP「いいや、だとしてもだ。お前らに倒れられたらその方がマズイ。やっぱり、今回の番組が終わったらしばらく休みを入れさせてもらう。これからの為にも一旦しっかり体力を回復しておくんだ」

トラプリP「.......それに、これからもっと忙しくなるだろうしな」

加蓮「でも!」

凛「加蓮、ここはプロデューサーのいうこと聞いておこうよ」

奈緒「そうだぞ!ただでさえここ最近加蓮は無茶し過ぎなんだから!」

加蓮「....分かったよ」


トラプリP「じゃあお前ら、下に送迎待たせてるから先に戻っててくれ。俺はまだスタッフと打ち合わせがあるから」

凛「分かった、じゃあまた後でね」

周子「またね皆、次は負けないよ!」

奈緒「こっちこそ!次も勝つからな!それじゃあ...」



加蓮「ちょっと待って」


凛「加蓮?」

加蓮「ねえ奏、周子、聞かせてほしいんだけど」

奏「聞かせてほしいって...」

周子「何を?」


加蓮「....二人はあの噂、どう思ってる?」

奏「噂って...一体何の?」

加蓮「知らない?あたし達010プロが...」

トラプリP「加蓮!」

加蓮「っ!」

トラプリP「それを聞いたら、答えが何にしろ困らせるだけだろう」

加蓮「それは...」

周子「...なんかよーわからんけど、今日の加蓮ちゃん達は凄かったよ」

奏「ええ、今日の貴方たちを見れば、貴方たちがとても素晴らしいアイドルであることはちゃんと分かるから」
 
奏「だから...折角オーディションに完全勝利したんだから、もっと楽しそうな顔を見せてほしいわ」

加蓮「えっ?」 

奏「一緒にオーディション受けたんだから分かるわよ...今日の貴方たちのパフォーマンスは本当に凄かった」
 
奏「でも...ちょっとだけ、辛そうに見えたから」

トラプリP(...この子達、気づいてたのか...)





加蓮「...ありがとう」

奏「いいのよ、でも次は負けないから。覚悟してなさい」

加蓮「ふふっ、望むところだよ!」
  
加蓮「.....って、なんか緊張解けたらどっと疲れが...」

奈緒「加蓮!?...あっつ!お前熱高いぞ!?」

凛「やっぱ無理してたんだね...プロデューサー」

トラプリP「ああ、事務所には連絡しておくから先に病院へ連れてってやってくれ」

加蓮「あはは...ごめんねプロデューサー」

トラプリP「いいってことよ、それじゃお前ら、また後でな」

周子「ばいばーい」

P「ああそうだ、トラプリのプロデューサーさん、この後少しお時間あります?ちょっと話したいことがあるんですけど」

トラプリP「えっ?まあ打ち合わせまでまだ時間は........成程、分かりました。では」



奏「何を話すの?」

P「えっ!?...ああ、お前らは先に事務所に戻っててくれ。」

奏「何を話すのかって聞いてるんだけど?」

P「ちょっと大人の話だよ、お前らにゃまだ早い」


奏「...また、隠し事?」

P「別に、そういうわけじゃ........」

奏「答えて」



マチカドニソノメロディ♪

P「電話?」

奏「私のね、こんな時に一体誰から...!!」

P「どうした?」

奏「いえ、間違い電話だったみたい。切れちゃったわ。それよりもプロデューサー...」

周子「まあまあ!なんか聞いちゃいけない話みたいだし見逃してあげよ?」

奏「....周子がそう言うなら、しょうがないわね」


周子「んじゃ帰ろっか、早く事務所戻ってPさんの分のおやつも食べちゃお?」

奏「あら、いいわね」

P「いやよくないぞ」

周子「いいでしょ?手打ち金替わりって事で」

P「えぇ...分かったよ」

周子「やった!じゃあお先―」

奏「また後でね、プロデューサー」

P「おう、またな。......それじゃあトラプリPさん」

トラプリP「ええ、こんな廊下で立ち話もなんですしあちらで...」

P『まずは今回のオーディション合格おめでとうございます。あの気迫、やはり...』

トラプリP『ええ、『IG』の為にはどうしてもAランクに上がらねばならなかったので』

トラプリP『公になってからではさらに厳しくなりますからね...』

P『やっぱり、IGの開催は本当の事だったんですね』

P『あのIAやIU、WINGと肩を並べるアイドルの祭典......それが、よりにもよって今開催されるとは....』

トラプリP『ウチの事務所の情報網は優秀ですからね、しっかり裏も取れたそうです』

トラプリP『それで、811プロのアイドルの皆さんはどうするんです?やっぱり出場を狙うんですか?』


P『......IGには...出場させる気はありません』

トラプリP『えっ?』

P『今IGに出るのは危険すぎます。それに出場権を手に入れるための時間も足りない。なのにIGの為に期待を押し付け無理をさせれば、取り返しのつかない事になる』

トラプリP『....それでいいんですか?』

P『ええ、無理に目指すものではないですし』

トラプリP『....そうですか』
     
トラプリ『でも、貴方が聞きたいのはIGの話ではないでしょう?』

P『一応、IGの裏を取る目的もありましたよ。でも確かに、本命は違う』

トラプリP『...あの噂の事ですね?』

P『ここ最近、よく耳にしますからね...010プロが、iDOL MOVIE BIGBANGの参加事務所への妨害をしているという噂』
 
P『実際のところ、どうなんです?』

トラプリP『...貴方は、どう思います?私達が不正をしてると思いますか?』

P『ぶっちゃけ、トラプリに関しては無実だと思います。今日のオーディションを見ればあの子達がちゃんと実力で戦ってるのは分かる。そしてあなたの事も、信用できると思ったから話してます」

P『だが...あんた達は無実でも、010全体がそうとは限らない』

トラプリP『そうですか...とりあえず自分たちが疑われてない事を喜ぶべきなのか、それとも事務所の無実を証明できない現状を嘆くべきか...』

P『...何か、社内で怪しい動きとかはありましたか?』

トラプリP『無い、と言いたい所ですが...私も社内全部の事を知れてるわけじゃありません』

トラプリP『それに私が入社する以前、前社長の時の話になりますが...010プロには前にも不正の疑惑が立ったことがありますし』

P『完全にシロとは断定できないって事か...』

トラプリP『しかし最近では、010に疑惑が集中してきています。iDOL MOVIE BIGBANGに参加した事務所で被害を受けていない事務所でしたから...』
     
トラプリP『それに、おそらくこれからもっと...』

P『もっと?どういうことです?』

トラプリP『昨日の夜891プロに不審者が侵入して、警備員に取り押さえられたとの情報が入りました』
     
トラプリP『そして...それが阿苦都苦出版の記者だったと』

P『!!』


トラプリP『この情報は今夜にでも雑誌やニュースで流れるでしょう。更に、いくつかのテレビ局はこれを機に今起きてる事件...[iMB事件]の特集企画を組み始めてます』

P『なんだって!?そんなの大っぴらに報道されたら!』

トラプリP『今回の件で010プロは唯一被害を受けてない事務所.....だからこそ、一番怪しい立場になってしまった』
     
トラプリP『加蓮達も、自分たちの手で010プロは不正なんかしていないって証明すると今まで以上に頑張ってくれてでいたのですが...』

P『正直、疑いを晴らすには厳しいだろうな...』

トラプリP『実際、この疑惑のせいでウチの所属のアイドルの何人かは仕事が減っていて、信用も失いつつあります...このままだと、トライアドプリムスにも...いや、事務所全てのアイドルに悪い影響が...』

P『なんか思い詰めてたみたいですしね。あんたのフォローがなかったら危なかったかもしれません。トライアドプリムスはプロデューサーに恵まれたみたいですね』

トラプリP『いえいえ、いいライバルに恵まれたからですよ。デュアルフルムーンの二人、上手く加蓮を励ましてくれましたし』

P『...あの子達には、この辺の暗い噂は話してないんですけどね...』

トラプリP『......っとと、そろそろ打ち合わせの時間だ』

P『すいませんお時間取らせちゃって』

トラプリP『いえいえ、また811プロの皆さんと会えることを楽しみにしてますよ』

トラプリP『ああ、それと』

P『なんです?』







トラプリP『貴方は、もう少しアイドルを信用してあげてもいいと思いますよ?』

P『えっ?』

トラプリP『....それじゃ、またどこかで』

=====811プロ事務所======


P「ただいま」

周子「お帰りプロデューサーさん」

フレデリカ「おかえりー!」

美嘉「みんな揃ってるよー」

P「もう全員帰ってきてたのか、じゃあこの後はレッスン室で...」


志希「ああ、レッスンはトレーナーさんに頼んで少し待ってもらってるよ」

P「え?なんで?」

奏「プロデューサー、私達いい加減頭に来ているの」

P「頭に来てるって.......俺なんかした?」
 
奏「プロデューサー、これを聞いてもらえる?」ピッ

ピピー...ガガッ!













【P『IGには...出場させる気はありません』】


P「ッ!?

周子「驚いたPさん?」

P「一体どうやってこれを!」

周子「鞄の中見てみ?」

P「鞄?....これは!?」



P「周子のスマホ!?」

周子「実はあの時奏ちゃんにかかってきた電話、あたしからだったんだよねー。んで奏ちゃんには通話状態にしてもらっておいて、あたしは自分のスマホをPさんの鞄にこっそり突っ込んだってワケ」

美嘉「それって061社長にもやったやつ?」

周子「そっ、あの時の経験が生きたねー」


奏「というわけでプロデューサーさん、話してもらえる?あの時私達に隠したこと。もういい加減、蚊帳の外にされるのは辛いわ。だから嫌とは言わせないわよ?」

P「しかし...」

奏「プロデューサーさんが私達の事を思って色んなことを秘密にしてくれてることは分かってる。でもね、今回の事件に関しては私達だって大きな被害を受けてる」

奏「だからこそ、外野にされるのは嫌なの。だからお願い、ちゃんと話してちょうだい」

P「奏....」




奏「お願い、プロデューサーさん」

P「...分かったよ」

P「まずは...iMB事件からか」

美嘉「名前的に、『iDOL MOVIE BIGBANG事件』って意味でいいんだよね?あの企画に参加した事務所のスキャンダルが次々発覚したってやつ」

P「ああ、そのまんまじゃ長いから業界の中では縮めてiMB事件って通称が広まってる」

志希「それで、その事件で被害を受けてない010プロが疑われているって事ね」

周子「被害を受けてないのは891プロもだったけど、それも阿苦都苦出版が侵入したから...」

P「010は唯一被害を受けていない事務所になってしまったって事だ」



志希「確かに、インターネットの情報サイトにはもうその記事いくつか上がっているね」
  
志希「...それと、iMB事件の疑惑についても」

美嘉「ていうか、なんでそんな大事な事プロデューサーは秘密にしてたの?あたし達だって一度狙われてるのに!」

P「それは...」



奏「当てて見せましょうか?私達に010に対して余計な疑いを持ってほしくなかったから」

奏「いえ...もっと言えば、私達に事件の事を考えてほしくなかったから、違う?」

P「ッ!...」

奏「図星のようね」

P「....芸能界はテレビの上で見るような綺麗な世界ばかりじゃない...むしろその分大きな影が潜んでいるんだ。そんな影を引き受けるのが、俺の、プロデューサーという職業の人間が請け負う責務」
 
P「だから、お前たちに安心して明るいところを歩いてもらうために、そういう暗い世界の事は秘密にしていた」

奏「そう...まあいいわ、ずっと前からその辺は予想ついてたし」

P「えっ?」

奏「前にWESTプロや456プロのゴシップ記事が出た時から気づいてたわよ、あの企画の参加者の中に得体の知れない影が潜んでいたことなんて」
 
奏「そして、プロデューサーさんがその事実を隠した理由もね」




※Chapter12
(あのパーティー会場は関係者以外は入れなかったはず、そんな場所に阿苦都苦出版は堂々と入り込めていたのよ?)

(まず間違いなく、パーティーの参加者の中に協力者がいる...おそらく、今週の週刊スクープによる被害を受けなかった芸能事務所からね)

(...多分私たちに余計な心配をさせないために、わざと言わなかったんだと思う)





奏「まあ、大方予想通りだったからiMB事件の情報を秘密にしてたのは見逃してあげるわ」

周子「そもそも隠したところで、どっちみち公に出てしまえば分かっちゃうとこだったしね。ていうかむしろなんでわざわざ隠したん?」

P「いやまあ...あははは...」

奏「大方、私達に事件の事を考えさせるわけにはいかないって考えだけが強すぎて、後でばれるって事なんか頭になかったんでしょ」
 
P「ギクッ!」

奏「....というか、前から気になってたんだけど、プロデューサーさんって妙にこの事件に執着していない?」

P「そりゃあ、美嘉が被害にあってるからちゃんと調べておかないといけないだろ?」

奏「それはそうだけど...本当にそれだけかしら?」

P「...そうだよ」

奏「........まあ、いいわ。じゃあ次の質問」
 




 


「IGって、一体何?」

P「...お前ら、アイドルランク制定の規定でこういうルールがあるのは知ってるか?」
 
P「『通常の手段で昇格できるのはAランクまで』」

周子「いや、初耳だね。でもそれが何か...」


フレデリカ「んー?...でもアイドルランクって、Sランクまであるんじゃなかったっけ?」

周子「あれ?そういえば....」

美嘉「あっ!あたし聞いたことある!確かSランクに上がるには特別なオーディションに合格しなければいけないって」
  
美嘉「でも、そのオーディションがいつ開催されるかは分からないとも聞いたけど...」

奏「...成程、IGは通常のオーディションじゃない...Sランクに昇格するための、特別なオーディションって事ね」

P「ああ、そういう事だ。IG、正式名称IDOL OF GRATESTは、あのIAやIUに並ぶほどの大規模な特別オーディション」




 

 「Sランク認定オーディションだ」

周子「Sランク認定オーディション...」

P「まだあくまで業界の一部界隈だけの噂で公には発表されてないが...もうじき一般にも情報が公開されるだろう」
 
P「010程の力がある事務所が本物だと判断したんなら、間違いない」

志希「んで、そんな大きなオーディションの事をキミは何で秘密にしてたわけ?」

美嘉「そうだよ!そんなオーディションがあるならその為にもっと頑張らないとダメじゃん!」


P「...それがなお前ら、IGの参加資格は来月...3月22日のIG予選開幕までにAランクであることらしいんだ」

奏「あら、だったら尚更Aランクに昇格できるように努力しなければならないんじゃない?」


周子「...あー、そういう事か」

フレデリカ「どゆこと?」

周子「ほら、前に打ち上げやったときプロデューサー言ってたやん。BからAに上がるには、FからBに上がるのにかけた3倍の時間と努力が必要ってさ」

P「ああ、それ程までにBランクとAランクの壁は厚い。実際、Sランク認定オーディションが開催されるときは決まってBランクのアイドル達は荒れる、参加資格のAランクに昇りつめるためにな」
 
P「そして、そのせいで無茶をして怪我したり心が折れたり...そうやって引退してしまうアイドルも多く出る」
 
P「今日のトライアドプリムスくらいの成果を出せればAランクに昇格できるだろうが...実際、かなり無理して身体を壊しかけてただろ?」

周子「まあ、そうだったね」


P「それに、今の芸能界は危険だ....特に、アイドル業界は。きっとIGにも、iMB事件の黒幕が何か仕掛けてくるだろう」

奏「まあ、時期的にあの事件の犯人の本命はIGであってもおかしくはないわね」

P「それに俺は、お前たちを頂上まで連れ居ていける程優秀なプロデューサーじゃない。事務所のサポートも、他の事務所に比べたら虫みたいに小さい事しかしてあげられない。だからこそ、お前たちが無理をして壊れるようなことは絶対にさせたくないんだ」
 
P「それにほら、俺はさ....」




    無茶振りはしても、無理なことは言わないからさ....


奏「成程ね...理解はできたわ」




でも..........

 










『そんなの、納得出来ない!』

P「えっ?」

美嘉「プロデューサー、今のは流石にちょっとムカついたよ」

周子「あたしも。だってそれじゃあまるで、あたし達にはトップアイドルになるのは無理って言ってる様なものじゃん」

P「そういうわけじゃない!ただ今急いで目指さなくてもってだけで...」


フレデリカ「でもそれって、今頑張らなくていい理由にはならないと思うなー」

志希「目の前にすっごい面白いものがあるのに追いかけちゃだめって言うの?それはつまんないよ、すっごくつまんない!」

P「頑張っちゃいけないって言ってるつもりじゃねえよ、でもその為に無理するようなことは!」


奏「プロデューサーさん、私達やっと分かったわ」

P「分かったって...何が分かったってんだよ?」

奏「私達にずっと足りてなかったもの。そして、貴方がずっと抱えていた影、その正体」

P「影?...一体何だってんだよ」

奏「ずっと、私達とプロデューサーさんは、一緒に肩を並べて歩いているんだと思ってた」

奏「でも、それは違った。貴方はずっと私たちより少し前の方で一人離れて歩いてる。私達は今までずっと、貴方に本当の意味で信頼されてなかったのね」
 
P「!!」


奏「貴方にとって私達は守るべき存在...でも同時に、守らなきゃいけないちっぽけな存在。だから自分の影...本心を預けることができない」
 
奏「もっと単純に言ってしまえば、私達を舐めてるって事でしょ?」

P「そんな...そんな事!」

奏「無いって言える?私達を守りたいからなんて理由付けて、何にも話していなかったって言うのに」

P「ッ!」


奏「本当は、私達の事を信頼していなかったから、私たちじゃあなたの抱える荷物を背負えないから、だから何もかも秘密にしていたんじゃないの?」
 
奏「だから...IGに出場するのも無理って決めつけて、一人で勝手にあきらめをつけて、何もかも自分だけで抱え込もうとしてる。違う!?」

P「それは...」
 


奏「...いいわ、そっちがその気ならそれでいい。私達は勝手にやるわ」

P「勝手にやるって...今のお前らじゃ無理だ!」
 
P「第一、Aランクに上がるにはただ大きなオーディションで勝つだけじゃダメなんだぞ!?今日のトラプリみたいに圧倒的な格の違いで勝たなきゃならないんだ!」
  

周子「でも、トラプリはちゃんと出来たよ。アイドル歴でいったらあたし達と変わんないだろうに」

P「それはそうだが...大規模事務所の010のあの子らとウチじゃそもそも環境が違う!あの子達は下積みの時から、事務所内ですら戦場だったはずだ!」
 
P「プロデューサーだってそうだ!俺とは違ってあっちのプロデューサーはいくつもの困難を潜り抜けたベテランだ!」
 
P「...言いたかないが、お前らとトラプリじゃ用意された物も、経験の質も、初めから違う!特にここまで上のランクまで登ってきたからこそその差の影響が大きくなってる!ホントは今張り合うべき相手じゃないんだ!」


周子「....Pさん、あたし今のPさんが何言ってるか分からないよ。なんでそこまで、あたし達が諦めなきゃいけない理由ばかり並べるの?」

P「分かってくれ...今そこまでする必要は『分からないよ!!』」




周子「今は環境の事を言い訳にして妥協するのが一番楽で賢いのかもしれない。今起きてる事件にも巻き込まれずに済んで安全なのかもしれない。でも、今あたし達は『アイドル』に本気なんだよ!」

周子「それなのに、ライバルは先に進んだけどあたし達には無理だから指をくわえてみてろって?.......本気で言ってるなら、いい加減マジで黙って欲しいんだけど」

美嘉「プロデューサーはあたし達のプロデューサーじゃん。だからどんな理由であれ担当のアイドルであるあたし達に、『諦めろ』っていうのはどうかと思うよ」
  
美嘉「というか、そんなにトラプリと張り合ってほしくないなら、何で今までは止めなかったの?」

P「それは....」


奏「今のプロデューサーさんからはあの時...カラオケでマイクを渡されたあの時と同じ何かを感じるわ」

奏「プロデューサーさん、貴方は一体、何を恐れているの?」
 
P「....俺は!お前たちが無理して壊れるところを見たくねえんだ!」
 
P「今IGの為に無理をしたら絶対に苦しむ!そして...それでも駄目だったときに絶望する...心がポキリと折れちまう!そしたら...アイドルになったことを後悔することになる...」
 
P「別にチャンスは今回だけじゃない!わざわざ自分から苦しみに飛び込まなくたっていい!だから!」



美嘉「やらなくていい事か、やるべきことか、それはあたし達自身で決めることだよ!」
  
美嘉「だから...無理だなんて勝手に決めつけないで!あたしは妥協なんてしたくないの!」

P「!!」

志希「あたしは、ただアイドルっていう未知の世界を解き明かしたい...そして、パパやママにトップアイドルになったアタシの姿を届けなきゃいけないの」
  
志希「だから、止まってる暇なんかないんだよ。どんなに興味がふらふらして失踪したりするあたしでも、未知への好奇心はいつだって全開なんだから」

フレデリカ「無理かどうかは、無理してるとこを見てから決めてもいいんじゃない?それにアタシ達、ここまで連れてきてくれたプロデューサーにもありがとうって言いたいから」
     
フレデリカ「だから...もっとアタシ達を信用してほしいな?」


P「やめろ...やめてくれ...」

P「俺はもう...あの子の様な子を見たくは....」



奏「『あの子』?」

P「ッ!?」

奏「ねぇ、『あの子』って誰の事?」

P「.......」



奏「...意地でも話したくないって顔ね、いいわ」



私はプロデューサーへと一歩踏み出し、ずっと、ずっとずっと貯め続けた想いを吐き出す


怒りも、悲しみも、寂しさも、決意も、全部!
目の前の分からず屋に叩きつける!!





奏「貴方が私達を信頼できないなら、信頼できるようにしてあげる。この一か月で、私達全員Aランクに昇格してみせるわ。」

奏「だから、私たちから逃げないで、ちゃんとその目で見ていなさい」



奏「私達が、貴方に守られてばかりの弱い存在じゃないって事を!私達が蛹から蝶になるその瞬間を!」

奏「その両目に、しかと焼き付けなさい!!」











to be continued...

Chapter16終了したところで今回はここまでー。IGは原作で言うIUやIAみたいななんかすごい大会だと思って下さい
原作からそのままIAとか使おうとも思ったんですけど、それだとあっちの世界のルールに話を合わせなきゃいけなくてめんどくさかったので.....

>>786
正直書いてて自分でもそう思ってちょっと後悔してます....
でも今更場所変えられ無いので、このままVIPで頑張ります

とりま、諦めて次スレまで伸びるのも視野に入れた方が無難かと


これで無理矢理今スレで終わらせられたら消化不良甚だしいです

>>821
今からでも誤字修正したりして少しずつあっちに投げてもいいと思うよ

>>822 ちゃんと次スレ建ててでも完結させる気なんで安心してください!私自身も消化不良で終わらせたくないので!

>>823 後から渋かハーメルンで修正版あげようとは考えています。ですが今はまだ最終話の原稿が書きあがってないので、まずそちらを優先して終わり次第ちょっとずつ修正版を上げていこうかなと思います


皆さまいつもこの作品を読んでいただき誠にありがとうございます
とりあえず間違いなくもう1スレ立てることになるので長くなりますが、完結までぜひ楽しんでいってください!

そんなわけでChapter17投下開始していきます

必ず、あの人に認めさせる
その決意を抱え、私達はレッスンルームの扉を開ける



ベテトレ「話は済んだか?」

奏「ええ、宣戦布告しておいたわ」

ベテトレ「そうか...なら、覚悟は出来ているな?」

全員「もちろん!」

ベテトレ「よろしい、なら始めるぞ!」





    Chapter17 「We are 」



ベテトレ「まず先に今回の目標となるオーディションを伝えておく」
    
ベテトレ「そのオーディションの名は...『歌姫楽園』」


フレデリカ「歌姫楽園?」

美嘉「毎年3月に行われる大きな番組のオーディションだよ、紅白と肩を並べるくらい大きな音楽の祭典」

周子「あー!毎年春休みにやってたアレか!」
  
周子「確かアイドル、ロックバンド、演歌歌手...それぞれのジャンルのスペシャリストが集まって歌うって番組!」

奏「そういえば...何度かテレビで見たことあるわね」

ベテトレ「そうだ、お前たちには今回その歌姫楽園の『アイドル枠』を勝ち取ってもらう」
    
ベテトレ「だが歌姫楽園に出演できるのは1ジャンルにそれぞれ一枠...当然その一枠を勝ち取るために多くのアイドルが集うだろう。厳しい戦いになることは間違いない」

志希「ちなみにー、目標を歌姫楽園にした理由は?Aランクに上がるために人気を上げるんなら、もっと広い範囲でオーディション受けていろんなとこに顔を広めた方がいいんじゃないの?」

ベテトレ「理由は二つ、まず一つはIGの参加条件である、『既定の特別オーディションの合格経験』を満たすためだ」
    
ベテトレ「IGに参加するには、アイドルランクがAかつIR(アイドルランク協会)が定めた特別なオーディションのいずれかに合格していなければならない。今日トラプリが合格したTOP×TOPもその特別オーディションの一つだ」

美嘉「でも、IR規定の特別オーディションってまだ他にもあるよね?」

ベテトレ「ああ、今からIGの締め切りまでの間にも『HIT-TV』や『カラフルメモリーズ』、『LONG TIME』といくつか特別オーディションは存在する」

周子「特別って言う割には結構多いね」

ベテトレ「実際そこまで数が絞られてるわけじゃない、今回のように多い月には3つ4つ開催されるときもある」
    
ベテトレ「...今思えば、IGが開催されるのが決まったからこそ今月と来月の特別オーディションの開催も多くなったんだろうな」


フレデリカ「でも、どれでもいいならいっそ全部出ちゃったほうがいいんじゃないの?」

ベテトレ「特別オーディションに合格する...ただそれだけなら良い。だが、もう一つの問題のせいで歌姫楽園に絞らざるを得ないんだ」

周子「もう一つの問題?」

ベテトレ「今回はさらに、Aランクの昇格も同時に行わなければならないからだ」
    
ベテトレ「アイドルランクの昇格には経験値...積んできたキャリアも重視される。早い話、時間をかけて経験を積んだアイドル程昇格しやすい。だが、お前たちは驚くべき速度でスピード出世してきた分、他のアイドルと比べて判断基準となるキャリアが少ない」

美嘉「でも、あたし達にはキャリアなんて積んでる時間ないよ?」

ベテトレ「ああ、だからこそ今日のトラプリのように『格』の違いを見せて勝たなければいけない。IRが一発で『もはやBランク出収まる器ではない』と判断するほど圧勝しなければならないんだ」
    
ベテトレ「歌姫楽園を選んだのは、単純に開催までに一番時間があるからだ。他のオーディションでも絶対に勝てないとは言わないが...」

奏「圧勝は厳しい...だからこそ少しでも確率を上げるために時間を費やすということね」

ベテトレ「ああ、だがそもそも勝利することが厳しいオーディションだ。IGへ滑り込む為のチャンスだから尚更な」

志希「IGに参加したいアイドル達が、皆全力で挑みに来るわけだからね。倍率とんでもないことになるのは確実な訳だ」

ベテトレ「その上で、お前たちは圧勝しなければならない。Pにも言われたと思うが...正直かなりの無茶、というより無謀に近い」
    

ベテトレ「もう一度聞くが....それでも、挑む覚悟はあるか?」

トレーナーさんの問いに、私達は顔を見合わせる
誰もが、同じ顔をしていた


覚悟は、もう、とっくに決まっていると!



奏「当然よ。私達全員IGに出場する為に、どんな困難だって立ち向かう覚悟はできてる」

ベテトレ「そうか...ならもはや何も言うまい」
    
ベテトレ「だが覚悟しておけ、ここから先のレッスンは楽しいなんて絶対に思えないきっと死んだ方がマシと思えるほどの苦難の道だ!それでも挑むと決めたのなら......絶対に、折れるんじゃないぞ!」
    
ベテトレ「...あのバカの為にもな」


『はい!』

....彼女達と喧嘩してから、一週間が過ぎた

奏達は目標にしている歌姫楽園の為のハードなレッスンをこなしつつ、今まで通りちゃんと仕事も行っている
だが、仕事の合間にレッスンをして、レッスンの合間に仕事をする。そんな過密スケジュールだ

...まるで、かつて美嘉がいた061プロのように



あんな事があった後だが、口を聞いてもらえないなんてことはなく、意外と皆ちゃんと俺と接してくれている

...ただ、今まで通りとはいえない


なんというか、皆俺と顔を合わせて話すことが少なくなっている気がする
どこか、今までより距離を感じるようになった



...いや、それも少し違うか


むしろあの子達は、今までこっそり俺が取り続けてきた距離を縮めるために俺に踏み込んできている
それなのに今までより距離を感じるのはのはきっと、俺自身があの子達を遠ざけているから

今さらになって、あの子達と向き合うのが一層怖くなった


目的の為ならなんだって投げ捨てる
あの時からずっと、その覚悟をちゃんと決めていたはずなのに

...今さらになって、迷いを感じてしまっている



...そして、今まで以上に自分自身に怒りを抱いている

『おいP。自分が支えなきゃいけないアイドルを心配させて、お前はなんて情けない奴なんだ』、と....


だが、それでも、俺の胸の中の黒い炎は消えてくれなかった

己のエゴに巻き込んでいるあの子達に、死ぬほど申し訳ないと思っていても
それが不可能だと分かった上で、それでも彼女達の輝きを見ていたい。その気持ちを強く抱いているとしても


それでも俺は、ただこの炎に我が身を委ね、身を焦がす事しかできないのだ......


ああ、こんな迷いを抱くならいっそ....









本当にあの時、何もかも壊れてしまえばよかったのに

翌日、奏が倒れたと電話があった

  =====病室=====


奏「ん.....」

P「起きたか」

奏「あら、プロデューサーさん...番組はどうなった?」

P「倒れたのが収録終わった後だったから、まあ何とかなったらしいよ」

奏「そう...良かった。収録中、意地でもここで倒れるわけにはいかないって思ってたけど、なんとか踏ん張りきれたようね」


P「途中でやばいって分かってたなら、なんで言わなかった!?」

奏「意地があるもの、アイドルとしての意地が。そして、アイドルの頂点を掴むという意思が」
 
奏「だからほら、倒れるわけにはいかないじゃない?」

P「だからって、馬鹿な事を...」

奏「あら?私は貴方が思っているより直情的...所謂馬鹿なのよ?貴方と同じでね」

P「...やっぱり、過労だそうだ」
 
P「そりゃそうだ、5人の中でもお前は特に無茶が目立ってた。ぶっ倒れるに決まってる」
 
P「一応、今日一日ちゃんと休めば大丈夫らしいが...」


奏「そう、なら今日一日は我慢するしかないわね」

P「....別に、一週間くらい休んでもいいんだぞ?というか俺はそうしてほしい」

奏「いいえ、一日で済むんなら一日で。というか、それ以上伸ばすんなら病室抜け出すわよ?」

P「それはマジでやめろよ...あらゆる方向に心配かけるから」

奏「なら、見逃すことね」


P「......お前、家に帰った後も練習を続けてたらしいじゃないか」

奏「それは他の皆も同じよ、私はちょっとやり過ぎてただけ」
 
奏「ちゃんとトレーナーさんは私達が倒れないように調整してくれていたわよ?自主練習のメニューも調整してくれてたけど私はそれを無視しただけよ」





P「...もう、やめろよ」

奏「.......」

P「もう、やめてくれよ...お前らが苦しむところを見ると、俺すっげぇ辛いんだよ...」
 
P「もう、無理しないでくれ...辛いなら、逃げたいなら、そうだって言ってくれ!」


奏「それは私達のセリフよ」

P「えっ?」


奏「大事な人が苦しんでいるのを見るのが辛い、それは私達も同じ。だからこそ、時折貴方が見せる苦悩が、それを一人で抱え込む姿を見るのが、いつも辛かった!」
 
奏「特に...iMB事件が起きてからはそんなあなたの姿を見るのが多くなっていたから...余計に辛かった」

P「奏...」

奏「分かる?貴方はその感情をいつも、私達に味合わせていたのよ。自分が痛めつけられるよりよっぽど辛い、そんな感情をね」
 

奏「それに...私言ったわよね?ちゃんとその目で見てろって」

P「ああ...すまないと思ってる、ちゃんとお前の体調に目を光らせておけば...」

奏「そうじゃないわよ。私達を見ていなかったってのはそういう事じゃない」

P「は....?」

奏「貴方は....」

その瞬間、ガララッと扉が開く音がした
空いた扉の先に立っていたのは...



美嘉「あれ、奏もう起きてたんだ」

奏「美嘉、お見舞いに来てくれたのね。でも予定は大丈夫なの?」

美嘉「うん、一発OKだしてきたからギリギリ時間開いたんだ」
  
美嘉「まあ、あんま長居は出来ないんだけどさ、みかんゼリーとか買ってきたから元気出してね★」

P「美嘉、ちょうど良かった。お前からも奏に休むよう伝えてくれないか?」
 
P「...どうも、俺が言うんじゃ逆効果みたいだしな」

美嘉「?....奏、休みたいの?」

奏「いえ、今日休めば大丈夫らしいしまた明日から復帰するつもりよ」



美嘉「じゃあいいじゃん、別に止めなくてもさ」

P「なっ!?」

美嘉「でも、また倒れるような無茶はしないでよ?ちゃんとトレーナーさんの組んだメニュー守ること!」

奏「ええ、流石にちょっと反省したわ...一日時間が無くなるペナルティを受けるくらいならちゃんと従った方がいいわね」

P「おいおい待てよ!」

美嘉「何?奏がそうしたいって言うならそうさせてあげた方がいいじゃん。お医者さんも一日休めば大丈夫って言ってたんでしょ?」

P「でも....美嘉、お前なら分かるだろ?今の状況はお前が061プロで受けた仕打ちと同じ、無茶に無茶を重ねてるだけ!これじゃアイドルを苦しんでやってた時と同じじゃないか...そうだろ!?」
 
P「もう...お前たちが苦しむ姿を見せないでくれよ...」

美嘉「プロデューサー....」







美嘉「やっぱり、あたし達の事ちゃんと見てないね?」

P「えっ....?」

美嘉「だって、061プロの時のと今は全然違うもん。同じに見えてるんなら、あたし達の事ちゃんと見えてない証拠だよ」

奏「プロデューサーさん、私達の事を見ていないってのはこういう事よ」
 
奏「だって私達は今誰一人、仕事でもレッスンでも苦しい顔は見せてないし、そもそも苦しいなんて事少しも思って無いもの」

P「そんな...だってあんなに!」


美嘉「そりゃあ疲れるしいつも以上にキツいのはキツいけどさ、あたし達それ以上に楽しんでるし、燃えてるんだよ」

 
美嘉 「ただただ事務所の悪意に流されてたあの時とは違う。今のあたしには追いかけたい夢と、その夢を目指して一緒に走ってる仲間がいるから。だからどんなに厳しい道でも、自分の夢を叶えるために走れている今は全然苦しくないんだ」 


奏「私たちだけじゃない、みんなそれぞれの目標の為に全力で走っている。だからこそ止まってなんていられない、止まりたくないわ」

P「なんで...なんだってそんな...一体何がお前たちをそこまで駆り立てるんだよ!」


美嘉「理由は...割と皆それぞれ違うんじゃない?」
  
美嘉「あたしは、あたし達がナンバーワンだって証明したいから!だからいつどんな時だって本気で挑むの!」

奏「私は、前にも言ったでしょ?貴方への復讐よ」
 
奏「復讐というか、魅了かしら?アイドルとしての頂に昇って、モノクロな世界しか知らなかった私にアイドルという煌びやかな夢を見せてくれた貴方に、心から言わせてやりたいのよ」
 






私を、アイドルにして良かった......と

P「お前ら...そんな事の為に」

奏「プロデューサーさんにとっては『そんな事』かもしれないわね」

美嘉「でも、あたし達にとってはそれだけで本気を出す理由になる。今を投げ出さない理由になる」
  
美嘉「だから、いい加減ちゃんとあたし達の事見てよね!」

P「美嘉...」


美嘉「って、そろそろ時間だ。じゃあ奏、ちゃんと体調直してね!」

奏「ええ、すぐに追いつくから待ってなさい」

奏「Pさんも、まだ仕事あるでしょう?私の事はいいから、こんなとこでサボってないで早くいきなさい。周子が事務仕事で忙殺されるわよ?」

P「お、おう....じゃあ、またな」

P「............」
 
P「俺は........」



俺は、どうしたら.....

奏の病室を後にした俺は、ある人に会うために010プロの事務所へと足を運んでいた


結局、今でも頭の中で色んな感情が暴れまわって、どうしたらいいのか分からなくなってる

俺はあの子達の為にどうしてやればいいのか、プロデューサーとして未熟な俺は、それが分からなくなっていて


だから、あの人に会いにきた。俺が迷った時、いつも手を取って導いてくれたあの人に




P「.......さん、久しぶりですね」


???「そうね.....こうしてちゃんと話すのは、随分無かったわね」
   
???「それで?何があったの?」

???「成程...そんな事が」


P「俺はずっと、あの子達には...『あの子』の事件の情報を手に入れられるようになるくらいまで有力なアイドルになってくれれば、それでいい」
 
P「その後は...『あの子』のように潰れないように、立ち止まったっていい、むしろそうしてほしかった」
 
P「全てが終わった後、きっと俺はもう皆の隣にはいられないから」

???「.....」


P「でも、今のあの子達を見て...いや、もしかしたらもっと前から、デュアルフルムーンの初めてのオーディションを見た時からそうだったのかもしれません」
 
P「この子達がトップアイドルになる、その瞬間を見たいという気持ちが芽生えてしまった...それがダメなことだと分かっているのに、俺は本当の意味であの子達のプロデューサーになりたいと願ってしまっている!」
 
P「矛盾した感情が胸の中でないまぜになって...身体がはじけ飛びそうなんです...だから、貴方をもう一度頼りにきたんです。いつも俺を支えてくれた貴方なら、この胸の痛みをどうにかしてくれるんじゃないかって...

P「情けないってのは分かっているけど、自分じゃどうしようもないんです!」


P「だから、教えてください...俺は、どうすればいいんですか...あの子達のプロデューサーとして、何をしてやれるんですか!?」

P「お願いします.......どうか、もう一度だけ力を貸してください!」












P「プロデューサー!!!」

???「そっか、また私をプロデューサーと呼んでくれるのね...」
   
???「なら、私もしっかり答えてあげないとね!」





ちひろ「891プロが誇る大物歌手『Q』、いや.....他ならぬP君のプロデューサー、千川ちひろとして!」

P「プロデューサー...!」

ちひろ「じゃあ、もう直球で言わせてもらうわね」


ちひろ「.......逃げるなッ!!」
   
P「ッ!?」


ちひろ「まず、自分自身としっかり向き合いなさい、どんな人間だろうと、自分自身から逃げている内は、何も出来ない」

P「向き合う...自分自身と?」

ちひろ「貴方は未だに、自分自身を許せていない。それこそ『あの子』を陥れた犯人以上に、貴方は自分自身を恨んでいる。そうやって自分への恨みに縛られて、前を見ることができていない。貴方の時間はずっとあの時から止まったまま」
   
ちひろ「そして自分自身と向き合えていないからこそ、奏ちゃん達に『あの子』の影を被せてしまう。だから自分だけでなく、あの子達と向き合うこともできない。それじゃあいつまでも、本当の意味で奏ちゃん達のプロデューサーにはなれませんよ。」
  
ちひろ 「覚えておいて。人間、一番立ち向かわなきゃいけないものはいつだって自分自身。何度も自分自身に立ち向かうことで、少しずつみんな成長していくの」

P「......」


ちひろ「失った事を嘆くのでなくて、失ってから得たものの事を考えるの。そして、得たものを守るために、何ができるのかを考えなさい。貴方にはまだ、あの子達の為にやれることがあるでしょう?」
   
ちひろ「あの子達が挑むものが歌姫楽園だって言うなら、それこそ貴方だからこそできることが残っているはずよ」
   

P「俺だからこそやれること...まさか」



ちひろ「P、貴方は歌を失ったわけじゃない。ただ自分を鎖で縛り付けた時に、一緒に封じてしまっただけ」
   
ちひろ「きっと今が、その鎖を解く時よ」

P「..........ありがとう」

ちひろ「.....P君、私はいつまでも貴方のプロデューサーを辞めるつもりはないわ。だから...私に、貴方が見た夢の先を、もう一度見せてちょうだい」
   
ちひろ「自分の担当が自分自身の夢を描けることが、私達プロデューサーとって最高の幸せなんだから...」

~~~~翌日、811プロレッスン場~~~~~


周子「奏、大丈夫なん?」

奏「ええ、安心してちょうだい」


ベテトレ「だが速水、次勝手にオーバーワークで倒れたら...覚悟しておくように」

志希「奏ちゃん、気を付けた方がいいよ。あれマジのときの目だ!」

フレデリカ「奏ちゃんもあの説教受けたら、811プロで未経験なの美嘉ちゃんだけになっちゃうね」

美嘉「なんかそう言われると、あたしもちょっと受けてみたいような気も...怖いもの見たさってやつ?」

周子「やめとき」

美嘉「えっ?」


周子「マジで、やめとき」(真顔)

美嘉「う、うん...」(周子がここまで怖がるほどなの...?)

ベテトレ「あー、それと一つ知らせておく事がある。今日からボーカルレッスンだけ担当が私から変更になった」

奏「このタイミングで変更?」

ベテトレ「ああ、だが安心しろ。新しい担当はボーカルレッスンだけなら間違いなく私を超える...いや、私だけじゃない。私の姉を越えるほどの腕だ.....まあ、歌以外はへっぽこだからダンスとヴィジュアルは今まで通り私がやるがな」
    
ベテトレ「ただしその分、歌に関しては私よりうるさいし、私より圧倒的に厳しいから覚悟を決めろよ?」


周子「青木さんのお姉さんって、伝説のトレーナーって呼ばれてる人だよね?それよりすごい人って、いったい誰?」

ベテトレ「お前らもよく知る奴だよ」

周子「えっ?」

ベテトレ「入って来い!」







~♪~~~♪~~♪~~♪~~.....

その歌声が耳に入った瞬間、私達は一瞬にしてその歌の世界に引きずり込まれた


今まで聞いたことがない程、心地よい歌声
でも不思議なことに、聞いたことがない歌声のはずなのに、なぜだかとても聞きなれた声のような気がした


歌声とともに、どんどん足音も近づいてくる
ドアの前にたどり着いた足音がドアノブをひねる音に変わったとき、私達は歌声の正体を知った

P「....待たせちまったな、お前ら」

奏「プロデューサー、さん?」
 

P「お前たちの為に何をしてやれるか必死に考えてさ...でも結局最後に残ったのは、あの時捨てたはずの、コレだけだったよ」
 
P「だから、取り戻してきたんだ。自分のルーツを」


ベテトレ「...もう、大丈夫なんだな?」

P「いやー、正直まだ完全に吹っ切ることは出来てません。今でも、歌う事を怖がってる自分、歌う事を咎める自分がいます。けど、皆が頑張ってるのをただ眺めるだけなのは、それ以上に嫌ですから」
 
P「だから...胸の黒い炎が消えないとしても、今だけは俺が皆の為に、皆のプロデューサーとしてできることを精一杯やる。そう決めたんです!だから!」

P「お前らの事を信じてなかった俺が、今更こんなこと言えた義理じゃないけどさ...」
 
P「俺が持ってる武器は全部くれてやる、少しづつでも自分と、お前たちと、ちゃんと向き合えるようにする!だから!」

 
 






俺を信じてくれ!!!

『もちろん!!』

P「皆...ありがとう」


P「よし!じゃあ今回の811プロの目標を発表する!まずは歌姫楽園、そして圧勝だ!」

P 「そして....」








『めざせ、トップアイドル!!』

P「まずお前らにはそもそもの基礎が足りてない!圧倒的な技術ってのは、まず圧倒的な基礎あっての物だ!基礎を極めてこその一流だ!」
 
P「だからまず、一週間で基礎を極めてもらう、いいな!?」


『はい!』





数時間後,,,,


全員「」チーン

ベテトレ「見事に死体の山だな.....」

フレデリカ「ほ、ホントにトレーナーさんよりきつかったよー...」

P「だが、思った以上に皆飲み込みが早い。もしかしたら一週間かからずに次のステップへ進めるかもな」

奏「確かに、自分の課題点がハッキリとわかって...それを乗り越えるための力が付いてくのも感じて...」

美嘉「すごい、昨日までの自分から成長した気がするね...」


周子「ていうかプロデューサーさん、歌凄い美味いし、教えるのも凄い上手いね」
  
周子「もしかして...前職はトレーナーだったの?」

P「いや、歌手だ」

『歌手!?』

周子「でも、Pなんて名前の歌手聞いたことないよ!?」

P「そりゃあ現役の時は芸名でやってたからな、本名の方はあんま広まってなかったと思うよ」
 
P「『Q』って名前でやってたんだけど、知ってるか?」

奏「Qって...えっ!?」

美嘉「あの『Q』!?○○とか、△△とか歌ったあの!?」

P「ああ、そのQだ」

志希「それ、あたしもアメリカにいた時に聞いたことある!」

フレデリカ「てことは、プロデューサーって実は世界レベル?」

P「あー、なんかアメリカとかヨーロッパとか、あの辺で歌ったことはあるな」



『Q』...私も知っている程の...いや、そもそもこの国で知らない人を探す方が難しいレベルで人気だった幻の歌手...


でもそんな人気絶頂だったさなか、ある日突然『Q』は、ぱったりと活動を辞めて失踪した

そんな幻の歌手の正体が、プロデューサーさん?


でもそれなら、一体なぜ...

奏「なんで、歌手を辞めてしまったの?」

P「それは...そうだな、お前らが無事Aランクに上がれたら話す。そういうことで」

周子「ってそこ焦らすんかーい!」

フレデリカ「ぶーぶー!アタシ達の事信じてくれたんじゃないのー?」


P「もちろん信じてるさ、それは嘘じゃない。だが...これについて話すのは、少し心の準備をする時間をくれないか?」
 
P「やっぱりまだ、完全に吹っ切ることができてるわけじゃないからさ、それに...」

周子「それに?」

P「そういう飴があった方が、やる気出るだろ?」

奏「...そうね。そういう『ご褒美』があるって思えば、俄然燃えてくるわ」

 
奏「なら約束よ、私達がAランクに昇ったときは、その時は必ず話して。貴方の抱えてきたもの、全部。私達も、それを全部受け止めると約束するから」
 
P「ああ、約束する。必ず全部、お前たちに打ち明ける」

ベテトレ「オホン!....大事な話のところ悪いが、そろそろ次のレッスンへ移るぞ」

志希「あーそうか...まだヴィジュアルとダンスのレッスンあるんだった」

美嘉「そうじゃん....ボーカルだけで3つのレッスン全部やったくらいに疲れてたから忘れてたよ」

P「どうした?疲れたんならもう辞めとくか?」


美嘉「...まさか!むしろ、今の話聞いて更に燃えてきたよ」

志希「あたしの知的好奇心はいつだってフルスロットル!キミという未知を解き明かす為には、失踪してる場合じゃないよね」

周子「そーやねぇ...なにより、目標に向けてどんどん突き進めている今が楽しいし!」

フレデリカ「アタシ達みんなの力でファンの皆をもっともっと笑顔にできるとこ想像できてて、すっごく嬉しい!」


奏「プロデューサーさん、ちゃんと見ていてね?」
 
奏「あなたが育てたアイドル達が、蛹から蝶へと生まれ変わる所を!」

P「ああ...今度こそ....」





お前たちが歩く道の先を、ちゃんと、この目で見届けよう....

~~~~~翌日~~~~~~


奏「どうかしら?期待してた結果は?」

P「いや、確かに一週間かからずに次へ行けるかもとは言ったが...」
 

 


P「まさか、一日で全員マスターするとはな...」

ベテトレ「どうやら、随分とやる気の出る飴だったみたいだな?お前の秘密は」

P「そのようですね....本当に俺は、お前たちを舐め過ぎていたらしい」

美嘉「へへーん!どんなもんよっ!ナンバーワン目指すんだから、これくらいちゃちゃっとできないとねっ★」

奏「分かったでしょ?私達の実力は、貴方が思っていたほど低くないってこと。それこそ、頂上を掴む程の力がるって事をね」 

P「面白い...じゃあもっとペース上げていくぞ!お前ら、振り落とされんなよ!」

『応ッ!』

~~~~さらに数日後~~~~~


ベテトレ「やはり、彼女たちはとんでもない逸材だったな。あの子達をスカウトしたお前と、あの子達に可能性を見出した私達の目に狂いは無かった」

P「ええ、まさかここまでのスピードで与える技術をモノにしていくとは.....」

ベテトレ「このままのペースで行けばオーディション合格は十分狙える所まではいくだろう。だが、圧勝するにはもう一押し欲しいところだ」

P「その事なんですが、実はずっと考えていたことがります」

ベテトレ「ほう、その考えとは一体?」

P「今まであの子達を見ていて、ずっと思っていたんですよ。この子達全員でユニットを組めば、最強のアイドルユニットが誕生するんじゃないかって」
 
P「企画草案も書いてはいたんです。ただ...」

ベテトレ「実際にそのユニットを見てしまったら、復讐心が揺らぐと考えたか?」


P「...やっぱ俺って、分かりやすいですかね?」

ベテトレ「当然だ、特に私は付き合いだけで言ったらあの子達より長いんだ。あの子達でも気づくようなことに気づけないはずがないだろう」

P「ははは...まあ、そうです。もしこのユニットが結成されるところを見てしまえば、俺は復讐よりも、あの子達を選んでしまうんじゃないかと思って...」
 
P「でも、もういいんです。今はただ、あの子達が最高に輝いている瞬間を見たいから」

ベテトレ「そうか...それで?お前にそこまで言わせるほどのアイドルユニット、その名前は?」

....『LiPPS』

そして、過酷で充実した時間はどんどん過ぎていき...

ついに、歌姫楽園のオーディションの開催日がやって来た




奏「ついに、この日が来たわね」

美嘉「長いようで、あっという間だったねー」

P「ああ、お前らよくここまで頑張った。あとは本番で持てる力全部出し切るだけ」
 
P「そして...今回は811プロの新ユニットのお披露目でもある、あらゆる意味で大事な一戦だ」

フレデリカ「じゃあここで、プロデューサーのありがたい一言をどうぞ!」

P「えっ、いきなりっすかフレデリカさん」

志希「ほらほらー、決戦に向かう女の子達の背中、押してあげてー?」


P「えーっと、急に何か言えって言われても...まあ、これだけは言っておかなきゃな」
 
P「このオーディションは、いわばIGへたどり着くための最後の切符、どのアイドル達も全力でこの切符をつかみに来るだろう。決して楽な戦いにはならない事は確かだ」
 
P「だからこそ忘れるな、811プロの社訓を!全力でアイドルを楽しむ!それさえ忘れなければ、きっと勝てる!」

周子「アイドルを全力で楽しむ...そうだね、あたし達はいつだってそうやって進んできた」

フレデリカ「だいじょーぶ!だってみんな一緒なんだもん!絶対、楽しいステージになるよ♪」

美嘉「そうだ皆!円陣組まない?こういう時のお決まりでしょっ★」

志希「いいねー!やろやろー!」

美嘉「よし、じゃあみんな肩組んで―!ほら、プロデューサーも!」

P「俺も?」

美嘉「もちろん!だって、プロデューサーもいてこその『LiPPS』だもん!」

周子「ほらほら、おいでよPさん。今なら両手に花だよー?」

P「おう、じゃあ遠慮なく...」



プロデューサーさんも輪に入り、全員で肩を組む



P「じゃあリーダー、号令頼むぞ」

奏「ええ、それじゃあ行くわよ...」



奏「811プロー!!ファイト―!!!」

『オー!!!』




Chapter17 「We are LiPPS!」



特別オーディションというだけあって、歌姫楽園のオーディションは通常のオーディションとは違うルールを採用している



まず違うのが、審査は一度きりということ

通常は3回審査があるので審査の合間に審査員の傾向や他の参加者を見て対策を取るということが可能だが、今回はそれが出来ない
星も最後にまとめて計45個が振り分けられる




もう一つは、通常のオーディションでは複数のユニットが同時に審査を行うところ、今回は1ユニットずつ個別で審査される事

そして最後は、実際に番組が収録されるドームで、観客席に座った審査員に一曲丸々披露する
しかも審査員の座る場所は固まっておらずその都度バラバラだ

ドームのどこから見ても人の目を引き付けることができるかを見る為に、あえてばらけて座っているらしい
近くの観客だけではない。端の方から見る観客、2階席にいる観客、あらゆる場所から見ても映えるアイドルがこのオーディションに合格できるのだ





だが、環境が違うからと言って調子を狂わせるアイドルは、ただの一人もいなかった

P「やっぱりどこも完成度が高い...流石に、簡単には勝たせてくれないよな」
 

P「.....だが!」

奏「私たちならやれる、でしょ?」

P「ああ!俺は無茶振りはしても無理な事は言わないからな!」



スタッフ「すいませーん、そろそろ準備の方お願いしまーす」

P「.....出番が来たみたいだな。それじゃお前ら、楽しんでおいで」

美嘉「うん、行ってくるねプロデューサー!」

周子「かるーく、大成功させとこー♪」

フレデリカ「会場にいる人みーんな、笑顔にしてくるね♪」

志希「飛び込んでくるよ、未知の世界!」



奏「プロデューサーさん、行ってきます!」

P「ああ......」  





行ってらっしゃい...

LiPPSの皆がステージに並んだ
スポットライトが、彼女達を照らし出す

後数秒で、曲がスタートする

3、2、1...

















カウントダウンが終わったその瞬間
ドームという名の世界に、一瞬にして革命が起きた


その瞬間を、この世界があの子達を中心に回る瞬間を

俺は今度こそ、この目に焼き付けた......

1位 LiPPS  ★×45 811プロ

========翌日、焼肉屋=========


P「えーそれでは歌姫楽園完全勝利、及びLiPPS全員のAランク昇格にー!」

全員「かんぱーい!」


ベテトレ「お前ら、本当によく頑張った!!」

早苗「みんな、おめでと―!」









P「....ん?待って待って待って」

早苗「どうしたのP君?」

P「青木さんはともかく、何で片桐さんまでいるんですか!?」

美嘉「いや入る前に気付こうよ...」

志希「なんかさりげなーく溶け込んできてたよね早苗さん」

早苗「いいじゃない!めでたいことは皆で祝うものよ!」
  
早苗「それに、奢りで飲むビールほどおいしいものはないからね!」

P「いや、片桐さんは自分で払って下さいよ...」

早苗「えー!ひどいひどい!もっと年長物を敬いなさい!逮捕するわよ!」

ベテトレ「まあまあ早苗、今回はPも頑張ったわけだし、偶には遠慮しておいてやれ」

P「いや青木さんも自腹ですからね」

ベテトレ「なんだと!?」

P「当たり前です!担当の子にしか奢るつもりありまっせんよ!
 
P「ていうかあんたらもいい歳した大人なんですから、年下に奢られようとしないでください!」

ベテトレ「宮本だって成人してるじゃないか!」

P「フレデリカは担当アイドルなんだからいいんです!」

フレデリカ「プロデューサー、ゴチになりまーす♪」

周子「いやーそれにしても我ながら最高の出来だったねー♪」

志希「ホント!あたしあんな感覚今まで味わったことなかったよ!もう一回やりたいなー!」

美嘉「きっと、IGでまた出来るよっ★」
  
美嘉「それにしても、IRから通達来るの早かった。まさかオーディションの翌日すぐ来るなんて」

P「それだけ昨日のオーディションの結果が評価されたって事だ、まあIGの参加資格という側面もあっただろうがな」

P「まあとにかく、これでお前たちは全員IGにエントリーができるようになったわけだ。ていうか通達着た後即エントリーしといた」

周子「仕事が早いねーPさん」

P「もっと褒めてくれていいんだぞ?」

ベテトレ「早い男は嫌われるぞ」

P「上げて落とされた!」

周子「奢りじゃなくなったから拗ねてるね.....」

奏「それでPさん、約束、覚えてるわよね?」

早苗&ベテトレ「!」



P「...ああ、覚えてる」

早苗「P君、ほんとにもう大丈夫なの?」

P「はい...もう覚悟は決めてきました。ちゃんとみんなに話したい、俺がなぜプロデューサーになったのかを」

奏「.......聞かせて」



P「あれは、今から3年くらい前の話....俺がまだ現役だったころの話だ」

目の前に広がるのは、赤い、赤い海

でもこれはきっと、血なんかじゃない
横たわっているひしゃげた肉の塊も、きっと俺の知るあの子とは別のナニかだ

だって、さっきまで俺はあの子と話していたはずだから、これがあの子の死体であるはずがないじゃないか


だから、だから










夢なら、醒めてくれ....!







to be continued....

Chapter17が終了したところで、今回はここまで―。Pの現役時代の芸名は、P→p→q→『Q』って感じのノリです

ちひろさんって折角公式でコスプレが趣味って美味しい設定があるのに、なんで二次創作で拾われることが少ないんでしょうか?

なおPが3年前と言っていますが、一話の時点から劇中で既に一年近くが経過しているので、正確には物語開始直後から約2年前となります。


次回はChapter18ではなく、Chapter0になります。そして次回でちょうど話の区切りがいい所まで行くので、そこで次スレに移行しようと思います

Chapter0 投下開始していきます

今回はPの過去話なので、LiPPSの出番がもの凄く少ないです

~~~~3年前~~~~



P「あー....めっちゃ疲れた.....まあ、割と楽しかったかけど」


数年前、まだ高校生だった俺をとあるおっちゃん......891プロの社長が見つけてくれた
以来、俺はプロデューサーであるちひろさんや、屋久井のおっちゃんのサポートを受けながら歌手を続けてきた


そんな感じで歌手を続けて現在、人気のほどは...自分でいうのもなんだがかなりのもんだと思う。
891プロ歌手部門の、今最も推すべき歌手.......らしい。おっちゃんがそう言ってた

まあなんにせよ、売れっ子であろうがなかろうが、俺としては歌って飯が食えるなら何でもいいのだが

そんな感じで、普段は芸名の『Q』として活動していた俺は、大好きな歌を歌って多くの人を楽しませて自分も笑顔になる。そんな幸せで充実した人生を過ごしていた...のだが


P「流石に最近忙しすぎるよなー...今日の帰りもこんな夜になっちゃったよ.....まあでも、おっちゃんとプロデューサーのおかげで明日からしばらく休みになったし、久々に羽を伸ばすとするか!カラオケとか!」

P「でも今夜はその前に...いつものいっとくとするかねぇ!」





     Chapter0 「Bad End Nightmare」



ここ最近、俺はいつも日課にしていることがある
仕事終わりの夜、自販機で缶コーヒーを買い、家の近くの公園のベンチに座って月を見上げながら飲む
月見酒ならぬ、月見コーヒーというやつだ


P「こんなきれいな満月で飲まないってのは嘘だよな」


缶のプルタブを開け、唇に傾ける
たかが缶コーヒーでも、少しづつ味わって飲むのが楽しむコツだ


P「ん~!高いコーヒーも色々飲んだけど、やっぱこの缶コーヒーが一番うめぇ!」


一人で月を眺めてコーヒーを煽る、そんな1日を締めくくる安らぎの時間をいつも通り過ごす
...はずだったのだが、今日は少しいつもとは違った







P(ん...?誰か来た?)


静まり返った夜の公園に、イヤホンを付けた少女がやってきたのだ
少女はベンチの俺に気づかず、公園の中心地まで歩いていく

P(女の子がこんな夜中に何で一人で公園なんか来てんだ?)


当の昔に成人した大人も来る場所ではないということは棚に上げつつ、珍しい来訪者を観察してみる


P(手に持ってるのは...なんかの木の棒?...ははーん、なるほどねぇ。)


サイズと握り方的にあの棒はマイク代わり
それを持って公園に来たということは、当然歌いに来たということだろう

見たとこと中高生っぽいし、いちいちカラオケに行くのも金銭的に厳しいのかもしれない


P(折角だし、お手並み拝見させてもらうか...)
















少女「ボエエエエエエエエエエエエ!!!!!」

P(!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?)

なんじゃこりゃ!?み、耳が爆発しそうだ!!

P(ば、爆音痴じゃねえか!!)

少女「ボエエエエエエエエエエエエエ!!!」

P(お、俺の憩いの場所を潰されるわけには....)

止めに行きたい...けど、気持ちよく歌ってる女の子を止めるのは心が痛む...

てか、そもそもあまりの音波に身動きが取れねぇ!
このまま一曲終わるまで待つしかないな....

P(うごごごごごごごごご......)

数分後、歌い終えたらしく少女から発せられる爆音波は止んだ

P(ま、まだ耳がピリピリする....)

1曲で満足したのか、それとも流石に遅い時間だから長居する気がないのか、少女は出口の方へ振り返っ....


少女「.....!」


た時に、思いっきり目があってしまった...



こちらに気づいた少女は、とてとてとこちらに駆け寄ってきた

少女「あの!」

P「えっ、あっ、な、何かな?」

少女「私の歌聞いてましたよね!どうでした!?」

P「どうって、感想?」

少女「はい!率直にお願いします!」


...これは、どう答えてあげればいいんだろうか

正直に『とても聞けたもんじゃない』って言う?いやそれはちょっと可哀想じゃないか?
じゃあ『良かったよ』って誤魔化す?でも率直にって言われたし、何より俺は嘘つくのヘタだからすぐにばれて逆に傷つけてしまうかも.....
無視してさっさと帰るという手は.....いやそれは感じ悪すぎるだろ!

頭の中で延々と悩みぬいた挙句、俺が出した答えは...


P「あ、あんまり上手くなかったかなぁ、あはは....」





ごめんなさい、名前も知らない少女よ..........

少女「やっぱり、そうなんですね...」

P「えっ?」

少女「私、いつも歌がヘタクソって駄目出しされて、養成所のトレーナーさん達にも見放されて......青木さんは諦めずに頑張って教えてくれるけど...このままじゃ...」

P「養成所って...なんの?」

少女「アイドルです。あたし、アイドルになるのが夢なんです。でも、両親には猛反対されて、それでも説得し続けてようやく掴んだチャンスなのに...」

P「チャンス?」

少女「1年間東京の養成所に通う事を許してもらったんです、でも代わりにそ、の間にデビューできる目途が立たなかったらアイドルになるのを諦めるって条件なんです」

少女「だけど、もう後半年しか期間がなくて...」

P「ふーん...」


確かに、アイドルはなろうと思ってなれるほど甘い職業じゃないだろう

生まれ持った才能もいるし、過酷なレッスンをこなさないといけない。それでも売れなきゃ収入なんてないし、テレビに出れるようなアイドルなんてほんの一握りだ

確かに、親に反対されるのも無理は無いな...



少女「だから、今日からここで毎晩練習しようと思うんです!」

P(なんですと!?)

そ、それは困る!
折角見つけた俺の憩いの場所なのに、あんな爆音波毎回聞かされてたら溜まったもんじゃないぞ!

ど、どうしよう...そうだ!


P「あーお嬢ちゃん、今から俺がいう事を意識してもう一度歌ってみてくれないか?」

少女「はい!なんでしょうか!?」

P「まず呼吸をな....」

少女「ふむふむ...分かりました、やってみます!」



数分後...



少女「すごい...人生で一番いい出来です!」

P「そ、そうか。それなら良かった」


確かに上達したな...核弾頭レベルの爆音波が、戦闘機レベルの音波になったくらいには

だが、まだまだ人に聞かせるには果てしなく遠い...このままじゃ結局俺の月見コーヒーの未来はない...
何としてでもこの音波兵器を人間に改造しなければ...

P「なぁお嬢ちゃん、君さえ良ければ『師匠!』」
 
P「...へっ?」

少女「師匠!どうか私に歌を教えてください!」

P「えっ!?」

少女「お願いします!私どうしてもアイドルになりたいんです!どうか!」

P「えっ、ああ、うん!こっちこそよろしく!」

少女「本当ですか!?ありがとうございます師匠!」


P(まあ、元よりそのつもりだったし、別にいいか...)





こうして、歌手の俺とアイドル志望の少女の特訓の日々が始まるのだった...
...また忙しくなりそうだなぁ

奏「夜の公園で缶コーヒー....プロデューサーさん、意外とクールな趣味があったのね」

周子「確かにプロデューサーさん、良くコーヒー飲んでるもんね。偶に調味料もらいに家に入る時も、やったらコーヒー豆多く出てくるし」

P「......周子、もしかして最近妙に醤油の減りが早いのって」

周子「気のせいじゃない?そんな事より続き、早く早く―♪」

次の日、ちょうど休みを貰っていた俺は、音波兵器少女が通っているというアイドル養成所へと向かっていた

養成所の入り口、受付っぽいお姉さんに声をかけてみる


P「すいませーん!.....って子に会いに来たんですけど」

受付「あの子に?失礼ですが、どういったご用件で?」

P「あーっと...P、いや名前教えてなかったな......師匠が来たって言えば多分分かってくれると思うんですけど」

受付「師匠?」

P「あーいや、向こうが勝手にそう呼んでるだけで...」



???「ほう、お前か。あの子が言っていた師匠とは」

P「へっ?...ぐおっ!」


なんだ!?
後ろから女の声がしたと思ったら、急に首根っこを掴まれたぞ!?

受付「お客様!?」

???「いいところに来た、ちょっとこっちへ来てもらおうか」

P「ちょっ、ちょっと!あんた誰なんですか!?」

???「いいから黙ってついてこい!」

P「痛い痛い痛い!引きずらないでくれー!!」

ウワー!!!






受付「....行っちゃった」

その後、俺は謎の女にゴリラじみた力で部屋に引きずり込まれた


P「いてててて....何なんですか!?俺はカツアゲには屈しませんよ!?」

???「違う!お前が例の師匠とかいう奴だと聞いたから連れてきただけだ!」

P「連れてきたって...」


少女「あっ、師匠!来てくれたんですね!」

P「あれっ、お嬢ちゃん!?」

???「ここはこの養成所のレッスンルーム、こいつは毎日ここでアイドルになるための研鑽を積んでいるんだ」

少女「この人はいつもあたしに付いてくれてるトレーナーさんなんです!」

ベテトレ「トレーナーの青木 聖だ、よろしく」

P「は、はい...よろしく」

P「......ていうか、俺たちしかいないように見えるんですけど...他の候補生は?」

少女「他の皆は、その...私の歌があまりにもヘタクソだから...」

ベテトレ「こいつだけ一人この部屋で隔離されてレッスンしているというわけだ」

P「えぇ...それってなんか酷くないですか?」


まあ、確かに毎回毎回あんな爆音波流されてたら身が持たないだろうけど....

 
ベテトレ「たしかに気にいらない話ではあるが、逆に言えば一人でレッスンに集中できるともいえる」

少女「私、いろんなトレーナーさんに見捨てられちゃってたんですけど...青木さんだけはずっと熱心に私に指導してくれてるんです」

ベテトレ「私はこいつには大きな潜在能力が眠っていると思っている。実際、私の指導についてこれるだけの根性があるし、ダンスやヴィジュアルの技術はかなり良いペースで上達してきている」
  
ベテトレ「だが、どうやら歌だけは本当にセンスがないらしくてな...私がどれだけ手を尽くしてもなかなか成長させられなかった......どうしたものかと手をこまねいていたら、今日になって急に成長していた」

ベテトレ「何故かと聞けば、昨日歌の上手い師匠に会ってコツを教えてもらったというじゃないか。お前、一体どんな手を使ったんだ!?」

P「どんな手って...普通に基礎の基礎を教えただけですよ」
 
ベテトレ「歌の基礎くらい私たちだって当然教えている、それだけでここまで改善されるわけじゃない」

P「そりゃあ基礎っつっても、そもそもその人の声や性格で歌いやすい歌い方違うんですから。一人一人に合わせた歌い方の基礎があるんですよ」
 
P「得にアイドルなら、カラオケで高得点が出せるような正確な歌い方がいいとは限りませんからね。この子声はちゃんと出せてるから、音が暴走しないように歌えるようなコツを教えたんです」

少女「師匠から教わった通りに歌ったらすっごく上手く歌えたんですよ!」

P「まだ人に聞かせられるレベルでは無かったけどな...」

少女「がーん!?」

ベテトレ「一人一人違う基礎...それを、たった一回聞いただけで?それに、こいつの歌を矯正できるほどの音楽センス...お前は一体何者だ?」

P「あーっと俺実は....」

 

P(いや、ちょっと待てよ!?)


【ちひろ「いいP君?初対面の人に軽々しく自分の正体を明かしちゃだめよ?貴方の人気は今世間に対してかなりの影響力を持ってるんだから」】

【ちひろ「それに...P君詐欺とか引っかかりやすそうですし!」】


P「俺は...P太郎です。ただの歌好きのリーマンです」

少女「P太郎...良い名前ですね師匠!」

P(......そうか?とっさに考えたとはいえ、我ながらクッソ適当だと思うんだが.....)

ベテトレ「ところで、お前さえ良ければ今後もこいつのヴォーカルレッスンに協力してくれないか?手が空いてるときだけでいい」

P「いいですよ、元よりそのつもり出来ましたし。ただ...今は偶々まとまった休みが入ってるんですけど、普段は忙しくて...」

少女「じゃあ、昨日みたいに夜にあの公園でレッスンしませんか?師匠が教えてくれるんでしたら、何時だって駆けつけますから!」


この少女、また俺の憩いの場を破壊する気か...
でも、一度引き受けてしまった手前、中途半端で投げ出すわけにもいかないしな...仕方ない


P「そうだな、じゃあそうしよう。明日からはなるべく夜に時間取れるようにするよ」

少女「ホントですか!やったー!」

ベテトレ「感謝するぞP太郎。これならこいつも、ちゃんとアイドルになれるかもしれない」

P「いえいえ、お安い御用ですよ。それでは今日も早速ヴォーカルレッスンしましょうか?」

ベテトレ「その前に、こいつのレッスンを一通り見てみないか?相手の事をより理解できていた方が教えやすいだろう?」

P「それもそうですね...では折角なので」

仕事柄アイドルのステージを見ることはあっても、アイドルのレッスンは見たことはなかったが......これは!


P「凄い...」

ベテトレ「彼女は他の候補生と比べて特別とがった才能があるわけでは無い、むしろ歌のセンスは最悪だ、しかし...」

P「アイドルに対する情熱っつーか.......気合が普通じゃない」

ベテトレ「そうだ、多くのトレーナーに見捨てられようと、もはや狂気といってもいいほどの執念で彼女は必死に食らいついてきた」
    
ベテトレ「その結果、短期間でほぼ素人だった状態から、少なくとも歌以外の技術はデビューしても問題ないレベルまで成長した」

P「あとは、歌さえどうにかできれば...ってことか」



面倒なこと引き受けちまったかと思ったが...

どうやらむしろ、とんでもなく面白そうな事に出会えてたみたいだな!

フレデリカ「それがプロデューサーとトレーナーさんの出会いだったんだね!」

ベテトレ「あの時は私もPの正体にまでは気づかなかったが、まあ変な名前の奴だとは思ってたな」

P「ですよね!?いや考えたの俺ですけど、やっぱ変な名前ですよね!?」

ベテトレ「ああ.....ところでP」


ベテトレ「誰 が ゴ リ ラ だ っ て ?」

P「やっべ」

早苗「まあまあ聖ちゃん!まだ話の続きだし、ここは抑えて抑えて!」

ベテトレ「............チッ」

P(怖っ!!)

志希「なんかプロデューサーに死亡フラグ立ったから、回収される前に続き、早く~?」

P「お、おう......シニタクナイ....」

なんだかんだで俺はその後も養成所に通い続け、あの子へのヴォーカルレッスンを続けていた

そしてある日、偶には気分転換しようということになり、何がいいかと聞いたら


少女「あたしお散歩好きなんです!師匠とお散歩したらもっと楽しくお散歩できるんです!」


ということなので、適当に二人で街をぶらぶらすることにした




でもまあ、そんな時に限って会いたくない人にエンカウントするのがお約束な訳で

早苗「あれっ、P君じゃない!元気?」

P「えっ?」

ちひろ「あら本当だ、しっかり日頃の休みは取れてる?」

P「ちょっ、早苗さんにちひろさん!?」

少女「師匠の知り合いですか?」

P「そうなんだけど...なんでここに!?」

早苗「偶々休みが合ったから、久々に女二人で飲み会しようと思ってたのよ」

P「そ、そうなんですか.....」

ちひろ「...ところで、そっちの子は誰かしら?」

P「えっ!?ああこの子はですね...」

少女「私は....です!いつも師匠にアイドルになれるよう導いてもらってます!」


早苗「ふむふむ、アイドル志望の女の子がP君に言葉巧みに連れまわされていると...」
  
早苗「P君、とりあえず逮捕しようか?非番だけど一応ワッパ持ってるわよ」

P「ちょっ、違いますよ!誘拐じゃないです!」

少女「お姉さんもしかして警察官なんですか!すごい!!」

早苗「正解!昔P君をシメたことだって『あーちょっといいですか二人とも!!こっちでちょっと話しましょうよ!!』えっ?」


P「すまん、ちょっとここで待っててもらえるか?」

少女「えっ?いいですけど...」

余計なことを口走りそうだった早苗さんを遮りちひろさんと早苗さんをあの子に声が届かない様にちょっと離れる



早苗「なによ、これからいい所なのに」

P「俺のことバラしてほしくないんですよ!」

ちひろ「どういう事?」

P「実は....」


カクカクシカジカ.....

P「というわけでして、あの子に正体がばれるようなこと話してほしくないんですよ!俺と片桐さんの馴れ初め話したら、いろいろばれちゃうでしょ!」

ちひろ「まあ確かに........」

早苗「でも、別に黙っててもらえば正体バラしても大丈夫なんじゃないの?」

ちひろ「そういうわけにも行きませんよ。情報はどこから漏れるか分かりませんし、それにちょっとでもマスコミに流れたらお互い言いたい放題騒がれますよ?」

早苗「そういうもんなの?芸能界って大変なのねー」
  
早苗「それにしても、聖ちゃんが目をかけてる子に会えるなんて今日はついてるかも!」

P「聖ちゃんって、青木さん?知り合いなんですか?」

早苗「そうよ、学生時代の先輩後輩みたいな関係なの。昔よく二人でよくつるんで遊んだりトレーニングしたりしてたし、今でもよく一緒に飲みに行くの」
  
早苗「それで、前飲んだ時に面白い子を見つけたって聖ちゃんはしゃいでたから、ちょっと気になってたのよねー」

ちひろ「へー...こんなとこで繋がるなんて、世界って意外と狭いのかもしれませんね」

P「ホントですねー...って、いい加減あの子を待たせるのもマズイですし戻りましょうか。片桐さん、くれぐれも余計なことは喋らないでくださいね!」

早苗「大丈夫大丈夫、安心してって!」

P「本当に大丈夫ですか....?」








案の定、また余計な事をぶちまけそうになってて焦った...

美嘉「その頃から、早苗さんとプロデューサーは知り合いだったんだね」

奏「ちひろさんって、私がCランクの時、オーディションで一度会った010の事務員さんよね?あの人がプロデューサーさんのプロデューサーだったんだ....」

周子「というか、結局早苗さんとプロデューサーって何で仲良くなったん?」

P「えーっと....それは.....」


早苗「昔、P君が路上でテンション上がったからってゲリラライブ始めてね?それで人が大勢集まって騒ぎだして色々問題が起きたのよ。だから近くの交番にいたあたしが叱りに行ったってワケ」

美嘉「プロデューサー、やっぱり警察のお世話になってるんじゃん!」

早苗「しかもその数日後懲りずにまたやったから、今度はちひろちゃんと一緒にシメたわ。流石にそれで懲りたみたいだけどね」

P「その節はほんと、ご迷惑をおかけしました......」

早苗「皆も路上ライブする時はちゃんと許可とるのよ?」


『はーい!』


P「.......じゃあ、俺の黒歴史が暴かれたところで、続きいくぞ」

片桐さんとちひろさんと別れた後、散歩のゴールとして向かった先は....


少女「いつもの公園に到着でーす!」

P「もうこんな時間か、随分長い間歩いてたな...そこのベンチでコーヒーでも飲んで休むか。君は何に飲む?奢ってやるよ」

少女「いいんですか?じゃあコーラで!」

P「おっけー、待ってな」






自販機で飲み物を買って公園のベンチへ戻ると、あの子はイヤホンで何かを聴いていた

少女「あっ!おかえりなさい!」

P「ただいま。なに聞いてたんだ?」

少女「聞いてみます?」

イヤホンを片方さしだしそう聞いてきたので、遠慮なくイヤホンを受け取り耳に突っ込む



これは...聞いたことない曲だな、声入ってないしカラオケ音源か?それともオフボーカルの曲なのか?

だが、なんにせよ......

P「良い曲だな」

少女「本当ですか!?ありがとうございます!」

P「いや、何で君が礼を言うんだよ」

少女「だってこの曲作ったの、あたしですもん!」

P「.....なんですと!?」


えっ?この曲を、この子が?
爆音痴怪音波兵器のこの子が?

嘘だろ!?


少女「私、作曲が趣味なんです!よく自分がアイドルになれたらこんな曲歌いたいなーっていう気持ちを良くぶつけてるんです。思う様に歌えないのでまだ声は入ってないですけど、ちゃんと歌詞もあるんですよ?」

P「君...なんで音痴なんだ?」

少女「いやー、自分で歌うのはなんか曲打ち込むみたいにうまくいかなくて...」


マジで?そういうもんなの?


少女「でも最近はPさんのおかげでちょっとずつ音痴克服できてますし!きっとこれに声がつけられる日も遠くないはずです!」
  
少女「私、この曲を大きなステージで歌うのが夢ですから!」

P「!」


少女「だから、これからもご指導よろしくお願いします!」

夢を語る少女の瞳は、月の光の様に眩しく輝いていて
その輝きを見ていると、俺はどうしても認めざるを得なかった

この子がステージで輝く様を、本当に見てみたいと


P「...ああ、まかせろ!」


少女が語る純粋で煌びやかな夢に、いつか自分も魅せられる日が来る
そんな日が来るような予感を、確かに俺は感じていた

そして月日は流れ....

ついに、あの子のデビューの日がやって来た


あれから音痴もみるみる改善し、俺からしちゃまだまだではあるがしっかり人に聞かせることができるレベルにまではなった

その成果が認められてか、彼女はあるプロダクションにスカウトされてデビューすることになったのだ


今日、小さなローカル番組で新人アイドルとして歌うらしい。俺も知り合いに頼んで、スタッフの中に紛れてその姿を見せてもらうことにした

そしてとうとう、あの子の出番がやって来る


少女「はじめまして!108プロの...です!今日はこの場をお借りして歌わせて頂きます!いざ!」


少女「~~~♪」


まだまだ未熟な部分も垣間見える歌声

だが...

P(よしっ!)

彼女がアイドル道を歩みだした事を告げる、最高の、ハジマリの歌だった

=====公園=====
デビューの日の夜、またあの公園で語り合おう
彼女と交わしたその約束通り、俺はいつもの公園で彼女を待つ

少女「P太郎さーーーん!!」

P「来たか、デビューライブはどうだった?」


聞くや否や、少女は弾丸のような勢いで俺に抱き着いてきた

少女「大、大、大成功です!!やったー!!!!」

P「だろうな、俺も見てたし」

少女「えっ!?見てたんですか!?」

P「スタッフにこっそり紛れ込んでたんだよ、気づかなかったか?」

少女「全然気づきませんでした...いたなら言ってくれてもよかったのにー!」

P「ははは、まあ後でスタッフさん達への挨拶とか色々仕事あったろ?だから邪魔しちゃいけないと思ってな」

P「それに...こいつを買いに行こうと思ってたからな」

少女「何を買ったんですか?」

P「デビュー祝いだよ、ほら」


夢の一歩を踏み出した少女に、祝福の品を差し出す

少女「これは...花束?きれー!!!」

P「チューリップだよ。祝いの花を何にしようか悩んでた時に、あの曲の事を思い出してな」

少女「つまり、曲名で選んだって事ですか?」

P「す、すまん。花には詳しくなくて、つい安直な発想になっちまった...」

少女「いえいえ!すっごく嬉しいです!ありがとうPさん!」


少女は花束を抱え、月に照らされながら満面の笑みを浮かべる
ああ、そうだ...
今日一日ずっと、俺はこの笑顔が見たかったんだ....





少女「...あれ?Pさん、泣いてる?大丈夫?」

P「馬鹿、ないてねぇよ...ただ」



お前が眩し過ぎて、どうしようもなく嬉しすぎるだけだよ.....

その後も、俺とあの子の交流は続いていた

俺のほうも仕事がさらに忙しくなったり、彼女も下積みを積まなきゃいけない期間だったりで、会える回数は少なくなっていたけど

それでも、時間が合えばいつもあの公園でベンチで缶コーヒーを飲みながら自分たちの近況を語り合ったり、レッスンをしたり...

そしてその度に見せるあの子の笑顔に、俺はいつも元気を貰っていた

...だが



P「今日も...日付変わっちまった...」

連日の過密スケジュールに、流石の俺も疲労困憊になっていた



...だから、間違えたんだ

トゥルルルッルルル!!

P「...ん?あの子からだ」ピッ

少女『あっ、Pさん...』

P「おう、こんな夜中にどうした?」

少女『えっと...Pさん疲れてるみたいだし、いいや』

P「いいのか?」
  
少女『うん、ちょっと声聞きたくなっただけだから。でももう遅い時間だから切るね、おやすみ』

P「お、おう。おやすみ」

ガチャッ、ツーツー


P「...まぁ、次に会った時に聞いてみるか。あまり掘り出されたくないのかもしれないし」
 
P「疲れたし、もう寝よう...」



...なんかあったんだろうな、とは思った

だが、俺は日々の疲れがたまっていたから...いや、これはいい訳だな


俺は、自分があの子の最後の砦だった事を、自覚してなかったんだ

だから、あの子の最後のSOSを見逃してしまったんだ...


俺はこの夜を、この先ずっと、死ぬほど後悔する事になる

P(今夜は新月か...)




ふと窓から眺めた夜空に、月はなかった

それが、これからの悲劇を告げる凶兆だったことには、気づかなかった

人が一番慢心するのは、絶頂であるとき

山に上ったら下りるように、幸せというのは必ず続かないものである

そして....



大きい山を登った時ほど、転がり落ちるスピードは速いものだ

P「なんだよ...これ...」


[108プロ新アイドル、枕営業!?]
[デビュー直後から不正を働くビッチ系アイドル!]
[108プロアイドル、援交の現場!?]


コンビニに並ぶ週刊誌は、皆一様に、あの子が枕営業をしたという見出しを晒していた



・108プロのアイドル枕だってよwww
・デビューしてすぐちんぽにしゃぶりつくクソビッチアイドルがいるらしいwww
・新人さん、秒速で退場の模様


ネットの掲示板を見れば、皆狂ったようにあの子を叩いていた




華々しいデビューから一瞬で、あの子は闇へと貶められた

どこの雑誌も、ネットも、テレビも
よってたかって、あの子へと悪意を向けていたッ!!!


P「一体何だってんだよ、クソが!!!!」

美嘉「ヒドい!!」

P「ああ、今思い出しても怒りが収まらない.....」

ベテトレ「ッ.....!」




奏「.....それで、その後はどうなったの?」

P「兎に角あの子に会いに行かないと...」


プロデューサーに今日の予定は全ブッチだとメールを送り、家を飛び出した
プロデューサーからのコールを無視して、あの子の番号へと電話をかける


しかし、返事はない


P「クソっ!どこだ?あの子はどこにいるんだ?」


公園、養成所、家...
心当たりがある場所は探して回るが、見つからない

この際、もう手当たり次第に探し回るしかないと街を駆け巡っていたその時だった


トゥルルルルルル!!!

P「またか!今日は全ブッチだって...!?」


プロデューサーからのコールだと思い取りだしたスマホには、あの子の名前が表示されていた

P「おい!俺だ!Pだ!お前は一体どこにいるんだ!」

少女『ごめんなさい...ごめんなさい...』

P「謝る必要はねぇ、兎に角一旦あって話を『ダメ!』」

少女『それだけは絶対ダメ!そんなことしたらまた...』

P「どういうことだ!?なんでダメなんだ!?」

少女『ごめんなさいPさん...ごめんなさい!私なんかが、アイドルになっちゃいけなかったの!』

P「何言ってんだ、お前は確かにアイドル『Pさん!』」

少女『今までありがとう...さよなら』

P「さよならって、何言って...」


通話が切れ、同時に誰かの悲鳴が聞こえた

P(...まさか!?)


何かの間違いだとそう自分に言い聞かせ、悲鳴の方へと走った
走って、走って、走って、走って



P「どいて、どいてください!どけって!」

野次馬を押しのけ、人混みの中心部へとたどり着く

そして...

P「....え?」


たどり着いた先で、悪夢を見た
地面にたたきつけられて動かなくなった、あの子がいた

P(俺が、俺が殺したんだ...)
 


俺があの子を、ちゃんと守ってあげられなかったから、あんなに近くにいたのに、守ってあげられなかったから
 
あれはあの子のSOSだったんだ、なのに俺はこの子を見殺しにしたんだ


俺のせいだ俺のせいだ俺のせいだ俺のせいだ俺のせいだ俺のせいだ俺のせいだ俺のせいだ俺のせいだ俺のせいだ俺のせいだ俺のせいだ俺のせいだ俺のせいだ俺のせいだ俺のせいだ






P「あ...あ...あああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」












意識は、そこで途切れた

目を覚まして最初に目に入ったのは、見慣れない真っ白な天井だった
一体ここは...

ちひろ「起きた?」

P「ちひろさん?」

早苗「あたしもいるわよ」

ちひろ「貴方が街で倒れて病院に運ばれたって聞いて飛んできたのよ」

早苗「あたしは...ほら、事情聴取。一応ね」

P「...あの子は、どうなったんですか?」


早苗「...死んだわ」

P「ッ!!」

早苗「飛び降りたビルの屋上から遺書が見つかったわ。あのバッシングに心を痛めて、本気で目指していたアイドルに絶望して、それで...」

P「嘘だっ!」

早苗「っ...」

ちひろ「P君...」


P「だって、あの子はようやく最初の一歩を踏みだして、これから自分の描いた夢へとあるきだして!本当にこれからだったのに!」
 
P「いつも公園で会う時だって、本当にアイドルやるのが楽しそうで!死にたがってる様になんてどう見えなかった!」
 
P「なあ片桐さん...嘘なんでしょう?ホントはあの子は死んでないんでしょう!?そうだって言ってくれよ!?」


早苗「...ごめんねP君、あたしの警察官の誇りとして、嘘ついて誤魔化すことは出来ない」

早苗「さっき身元の確認が取れたわ...あのビルから飛び降りて死んだのは、間違いなくあの子よ」


P「そんな...そんなことって......」

屋久井「P君!!無事かね!?」

ちひろ「社長!?」

屋久井「ハァ...ハァ...病院へ運び込まれたと聞いて急いで駆けつけたのだが...容体は!?」

ちひろ「ショッキングな光景を見てしまって気を失っただけなので身体に影響はありません。今目を覚ましたところですので、すぐに退院できると思います」

屋久井「そうか...それならよかった...ところで、隣のキミは?」

早苗「片桐早苗、警察官です。P君に事情聴取をさせてもらいに来ました」

屋久井「事情聴取!?P君は何か事件に巻き込まれたのか!?」

早苗「自殺の現場を目撃してしまったんです。それで目撃者の一人であるP君にも一応事情を聞かなければいけなくなりまして」
  
早苗「ただ、自殺であることは間違いないので聴取はすぐに済みます。安心してください」

屋久井「そ、そうか。ならいいんだが...だが見たところ、自殺を目撃しただけにしてはP君のダメージが大きいように見えるが...」

P「.........」

ちひろ「実は、飛び降りたのはP君の知人でして、それで...」

屋久井「大きなショックを受けてしまったと言う事か....」

ちひろ「はい...なので身体は良くても精神的には...」

P「すいません...」

屋久井「.......P君」








こういう時こそ、歌ってみてはどうかな?」

P「えっ?」


早苗「ちょっと!流石に今歌える気分じゃないでしょ!」

屋久井「いや、気が落ち込んでいる時こそ、自分の好きな事をやると元気が出る物だ。君は歌が好きだろう?こういう時こそ、自分の好きな歌を歌って自分を奮い立たせるんだ」

屋久井「...死んでしまった者の分まで、生きるためにな」

ちひろ「社長...」

早苗「......」


P「...そうっすね、ちょっと一曲歌わせてもらえますか?病院の中ですけど」

屋久井「構わん、責任は私が取る!」

P「分かりました、では早速...」


いつも通り口を開き声を、声を、声を...








いつも通り?

P「......!!??」



声が、声が出なかった

歌おうとすると、首が鎖で縛られたように息が詰まった

あの子を死なせてしまったという罪悪感が、俺の喉を押さえつけていた



お前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺した
お前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺した
お前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺した
お前が殺した俺が殺したお前が殺した俺が殺したお前が殺したお前が殺した俺が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺した俺が殺した俺が殺した俺が殺した


P(あ、あああ、あああああ!!!!)

P「ァ...アア...アアアアアアアアアアア!!!!!」

『P君!?』


その日から、俺は全く歌うことができなくなった

歌を忘れた後、多くの人が俺を励ましに来てくれた
プロデューサーにおっちゃん、早苗さん
...それに、俺と同じくらい心に傷を負ったはずの青木さんも、何度も俺を励ましに来てくれた


でも結局、俺は歌手を辞め891プロも退社した

おっちゃんは頑張って引き留めてくれていたけど、自分の中にもう、歌う理由が見つからなくなっていたから...


それに俺は、プロデューサーにも迷惑をかけてしまった


プロデューサーは、俺の引退の責任を自ら取る形で891プロを退社したらしい
彼女があんなに誇りを持って務めていた仕事を、俺は奪ってしまったのだ


それ以来、顔を合わせていない
合わせる顔なんか、ない


もう俺に、あの人をプロデューサーと呼ぶ資格なんかないのだから

あの子を亡くした後の俺は、死人と何ら変わらなかった

美味いもんでも食えば元気が出ると言われたが、何を食っても味がしなかった

旅行でもすれば気が紛れると、色んな人が色んなとこに連れまわしてくれたが、何も感じなかった


どうやら俺は歌と一緒に味覚と、色んな事を楽しむ心まで失ってしまったらしい



住んでたマンションも引き払って、狭いアパートへと引っ越した

とにかく今までと同じ環境に居たくなかった。じゃないとあの子の事を思い出してしまうから

だが、環境を変えたところで過去は消えない

結局何も変わることはなく、毎晩悪夢ばかり見ていた

そんなある日だった

食料を買い足しにコンビニに行くと、ふとある週刊誌の見出しが目に入った


[108プロ、ついに倒産を発表]


P(108プロって、確かあの子の...倒産したのか)

正直、胸のすく思いだった

まだ新人だったあの子に枕を強要する事務所なんて、さっさと潰れてほしいと思っていた
この事務所のせいで、あの子はデビューしてすぐにあんなバッシングを受けて....









デビューして、すぐに?

P(待てよ...それっておかしくないか?)


頭をハンマーで殴られたような感覚だった

止まっていた思考が急に回転し始め、死んでいた心に火が灯る



P(あの子はまだFランクのド新人だったんだぞ?なのにどの雑誌も一様にあの子の枕営業を表紙にしていた)

P(そもそもあんなに同じ記事ばかり並ぶものか?いくらゴシップ雑誌だとしてもネタの内容も優先度も同じだなんて)

P(それに...デビューは成功だったとはいえ他のアイドルに比べて抜きんでて目立ってたわけじゃない。今時山のようにあるゴシップで、なんでたいした旨味のないネタをそこまで?)



頭の中でカチリと音が鳴る
手詰まりになっていたパズルのピースが見つかったような、そんな感覚がした



P「...調べてみるか」

高度情報化社会というのは便利だ。週刊誌のバックナンバーすら、電子書籍ですぐに購入出来るのだから

俺は当時の、あの子のバッシングをしていた雑誌を軒並み買いあさり...

そして、気づいた





P「なんだこれ...どれも出版社が違うのに、あの子の記事で使ってる写真が全部同じじゃないか!」


独占スクープやら新鮮なネタやらが好きな出版社が、手に入れた写真をライバル企業と共有して、みんな揃って同じような記事を作る。そんなの、絶対にありえない
2つ3つならまだしも、この時期に発売された芸能界を取り扱う雑誌は、軒並み同じ写真を使ってあの子の記事を描いている


こんなの偶然じゃない、つまり...






P「...あの二人に伝えなきゃ!」

==============居酒屋=====================


ベテトレ「久しぶりだなP、ちょっとは元気出たか?」

早苗「とりあえずビールとつまみ頼みましょ!」

P「いや、俺はいいです。どうせ味わかりませんし...」

早苗「じゃあ、あたしの酒を飲むのが話を聞く条件って事で!第一、折角居酒屋来て飲まないなんてお店に失礼でしょ!?」

P「えぇ...分かりましたよ」

ベテトレ「というか、ちひろは呼んでないのか?」

P「プ、...ちひろさんは、その...顔合わせ辛いっていうか...」

ベテトレ「そうか...まあいい、何かあれば私たちから伝えておこう。それで、話というのは?」

P「はい、実は..........」

P「....というわけなんです」


ベテトレ「これは...確かにどれも全く同じ写真だ。寸分も違いがない。2つ3つならまだしも、これだけの数は...」

早苗「流石に不自然よねぇ...」

P「あの子は、嵌められたんです。正体不明の誰かに。それに気づいてしまった以上、俺はもう止まれない。あの子の事件についてもう一度調べてみようと思うんです」

P「その為に、お二人の力も借りることになると思います」

ベテトレ「調べるったって、どうするんだ?出版社に潜り込むのか?」

早苗「いや.......あの子の記事を書いた雑誌が多すぎて、どこに潜り込めばいいか分からないわ。それにおそらく...」

P「はい...多分この事件の真犯人は、出版社じゃない」


ベテトレ「なに?」

早苗「考えてみて聖ちゃん。そもそもこれ、出版社からしたら手間のわりにメリットが薄すぎるわ。恐らく、いえ間違いなく裏に黒幕がいる。しかも、こんなに多くの出版社を動かせるほどのとんでもない力を持った奴がね」

ベテトレ「なるほど...しかし、それなら尚更どうやって探る?黒幕の手がかりはほとんどないんだぞ?」








P「...アイドル事務所を建てようと思います」

早苗&ベテトレ「「....なんだって(ですって)!?」」

P「あの子は死ぬ直後、『自分がアイドルになっちゃいけなかった』と言っていました。裏を返せば、アイドルになったからこそこんなことに巻き込まれたって事になります」
 
P「だとすれば、事件の真相はアイドル業界にあるはずです」

ベテトレ「だからって、別にイチから事務所を作ることはないんじゃないか?どこかの芸能事務所に入社すれば...」

P「いえ、それだと履歴書で俺の素性がばれてしまいます。もし入社しようとした先に黒幕がいたとしたら、あの子と関わりがあった俺を警戒するでしょう?」
 
P「これだけの出版社を動かせる力の持ち主だ。履歴を頑張って偽造したところでバレてしまうでしょう。今自ら懐に潜り込むのは、返り討ちに合う可能性が高い」
 
P「それに...入社できたとして、芸能界の深い所まで探れるほどの機会を得るまでに時間がかかり過ぎると思うんです。だから...」

早苗「そのすべてをパスするために、自ら事務所を立てて社長になるって事ね」


P「あと青木さん、事務所を立てたら一つ頼みたいことがあります」

ベテトレ「なんだ?」

P「ウチに入ってきたアイドルを指導してやってください。この作戦、事務所が業界の中で相応の地位を手に入れないと、黒幕の情報にはたどり着けないでしょう。その為には、所属しているアイドルのランクを上げることが必要不可欠ですから...」

ベテトレ「成程.....分かった、その時は必ず引き受けよう。」

P「ありがとうございます。では話が済んだので俺はこれで...お金置いてくんで、これで好きに飲んじゃってください」


テーブルに万札を3枚ほど置いて席を立つ


早苗「待ってP君、最後に一つだけ言わせて」

P「なんですか?」


早苗「私に、貴方を逮捕させないでね?」

ベテトレ「..........」

P「....失礼します」







分かった、とは言えなかった

俺自身、どうやっても思えなかったからだ




黒幕を目の前にした俺が、胸に灯った黒い炎を抑え切れるなんて.....

その後俺は、数か月かけて芸能事務所『811プロダクション』を立ち上げた

しかし、事務所を立てれたところでアイドルがいないんじゃお話しにならない。そもそも俺一人じゃ事務の仕事も手が回らなくなる


出来たばっかの芸能事務所じゃ、求人やスカウトも中々食いついてもらえない

それ以前に、芸能界の闇を探るにはそれ相応に実力のある子を見つけないといけない
 
トップとまではいわないが、Bランクくらいまでは行ってもらわないと業界の深い所には潜り込めない

だが、そんな逸材は早々見つからない....


開始早々詰まってしまって途方にくれいた時、ふとあの公園の事を思い出した

俺があの子と出会ったあの公園にいけば、もしかしたらまたあの子の様なアイドルの卵に会えるのではないだろうか?

そんな予感はしたものの、心の中でそんな次鵜の良い事ポンポン起きるはずないだろと毒づき
それでも、俺の足はあの公園へと向かって行った









そして、俺は出会った

停滞していた世界を加速させる、運命の歯車に

...あの子に背中を押された気がした

これが俺が進むべき道だと、背中を押し出された感覚だった

だからこそ、俺は躊躇わず目の前の運命に足を踏み出した

P「若いくせにこんな深夜に公園で寝るなんて、どんな不良かと思えば....なかなか別嬪じゃないか」

周子「んあ?お兄さん誰?」

P「ああ、失礼。俺はこういうもんでね。ほれ、名刺だ」

周子「ん...芸能事務所811プロダクション、社長兼プロデューサー P?」

P「そうだ、しかもその名刺、作ってから初めて渡した1枚だ。大事にしてくれよ」

周子「ふーん...それで?お兄さんはこんなかよわい女の子なしゅーこちゃんに何の用なの?」

P「そりゃもちろん、スカウトさ。しゅーこちゃんって言ったか?」
 






 


アイドル、やらないか?

~~~~現在~~~~~


P「...というのが、俺の隠してた秘密だ」

『.........』

想像を絶するPさんの過去に、皆一様に黙り込んでしまう






P「俺は今まで、自分の目的の為にお前たちを利用していたんだ」


P「罪悪感はあった、だが真相を追うためならどんな犠牲をも払って見せると思っていた」
 
P「...だが、お前らと過ごしていくうちに...どんどんお前らが愛おしくなった...純粋にお前らのアイドルとしての輝きを、もっと見てみたいと願うようになった」
 
P「だからこそ、打ち明けるのが怖かったんだ...お前らと過ごせば過ごすほど、真相を明かして、お前らに拒絶されるのが怖くなっていった」

 
P「すまない...俺はプロデューサー失格の男だ。いくらでも罵ってくれて構わない...」

奏「いいえ、プロデューサーさん。貴方は紛れもなく、私達のプロデューサーよ」

P「えっ?」


周子「奏の言う通りだよ、だってPさんはちゃんとあたし達にアイドルの世界を教えてくれて、こんなに高いところまで引っ張ってくれたじゃん!」
  
周子「それが利用するって事なら、いくらでも利用してくれたっていいよ!」


美嘉「ていうか、水臭いよプロデューサー!そんな事件ずっと追ってたんならあたし達にも相談してよ!」
 
美嘉「あたし達の生きるアイドルの世界にそんな悪い奴がいるんなら、あたし達だって許せないし!」


フレデリカ「プロデューサー!悩むときは、一緒に悩もう?だってアタシ達、仲間だもんね♪」
     
フレデリカ「辛いときは、苦しいときは、あたし達皆で一緒に抱えよ?嬉しいとき、幸せなときは、皆で一緒に分かち合おう?その方がきっと素敵だよ!」


志希「あたし達皆どこかぶっ飛んでる人ばっかりだからさー、むしろ優等生なプロデューサーよりキミの方がずっと相性がいいんじゃないかにゃ~?」
  
志希「それに...プロデューサーはあたしとパパを縛る鎖を解いてくれたじゃん。キミがなんて言おうと、あたしたちにとってキミは、あたし達家族の恩人なんだよ」


早苗「...本当に、良い仲間を持ったわね、P君」

ベテトレ「ああ、私の見立ては正解だった。やはり、彼女たちこそがお前の鎖を解くカギだったんだ」
    
ベテトレ「...そしてきっと、私の鎖もな」

奏「プロデューサーさん、私、今すっごく嬉しいの。貴方の本音を聞くことができて。貴方に信頼されているのが分かって、愛おしいとさえ言ってもらえて...本当に、嬉しいわ」
 
奏「プロデューサーさん、大丈夫。私達は何があっても、貴方の味方だから...」
 
奏「だから...謝るんじゃなくて、ね?もっと、温かい言葉をちょうだい?」







P「皆......」


ありがとう..............!

to be continued...

Chapter0終了したとところで、今回はここまで―
....というか、この話だけ見たら完全にスレタイ詐欺じゃないか(白目)



『少女』には誰か原作のアイドルの子を当てはめようとも思ったのですが、でも死ぬしなぁ.....と思ったので結局オリジナルのまま進行しました
でも不便だから名前くらい付けてあげてもよかったかもしれない


これでようやく物語の3分の2が終わり、遂に終盤へと移ります
もちろん残り60レスくらいで終わるわけがないので、次スレ建ててきます

【モバマス】LiPPS「虹光の花束」 2スレ目
【モバマス】LiPPS「虹光の花束」 2スレ目 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1554816955/)

次スレ建てましたー
こっちはHTML願い出してきます

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom