モバP「雪美様がゆく」(415)




このスレは膝神様に監視されています



あと、雑談以前の世間話などで構成されています

なお、このスレのカウントを引き継いでいます
モバP「雪美さんといっしょ」
モバP「雪美さんといっしょ」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1539405266/)

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♪ ♪ ♪

モバP「例えば朝、タイマー起動したラジオで目覚める」

モバP「流れてくるのはこの、静けさの中で・遙かなるタクラマカン砂漠」

雪美「……」

モバP「……雪美さん、イヤホンで聴き入っているな」

ちひろ「346プロ広しと言えど、喜多郎を知っているのは私を除くとプロデューサーさんくらいでしょう」

モバP「シンセサイザーが好きって子はなかなか……ピアノは音葉や久美子や亜里沙がいますが」

ちひろ「では雪美ちゃんをシンセサイザーの世界にでも誘うつもりで?」

モバP「雪美さんがシンセサイザー奏者……かっこよさが限界突破しそう」

雪美「…………」

モバP「……目を閉じてじっと聴き続ける雪美さんが美しい」

モバP「しかし、喜多郎は音だけでもどこかオリエンタルで悠久の空気が伝わってくるようで耳が潤いますね」

ちひろ「その空気は乾いてそうですけど……シルクロードやユートピアも良いですねえ」


千秋「雪美さんに上質な音楽を聴かせていると聞いてやって来たわ!」 ア、イイトコロニ

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モバP「日常の一枚絵」

モバP「玄関にて、制服姿で片足を後ろに上げて靴を履きかけの雪美さん」

ちひろ「爽やかで良い写真ですねこれは」

雪美「……片足……バランス……難しい……。……ほっ」

モバP「おお、ここでもやってくれるのか。再現良いですぞー」

雪美「んっ……」フラフラ

モバP「片足立ちは目を閉じると難易度が上がるよな」

雪美「んんんっ……」⊂(´-`)⊃

モバP「その場で実行するか。何か靴を履くか脱ぐかというより飛行機ブーンしているようなポーズですね」

ちひろ「アラレちゃん走りとかである……あっ、倒れそう」

パシッ

雪美「……ありがとう……」

モバP「どういたしまして。……じゃあ今度はアブドミナルアンドサイのポーズで写真を撮ろうか」


ちひろ「その名称はボディビルなんだよなあ」

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モバP「……」ゴゴゴゴゴ

ちひろ「……」

雪美「……」

モバP「何ですか? 二人して僕のこと見つめて」

ちひろ「いえ、何か超サイヤ人みたいなので」

雪美「……髪が……逆立ってる……」

モバP「あ、これ? 寝癖です」

ちひろ「ポマードで固めたのかってくらい重力に逆らってますけど」

雪美「……P」

モバP「触ってみたいのか? どうぞ」シャキーン

ちひろ「頭を傾けても垂れないゴワゴワな剛毛……しんべヱかな」

雪美「……ふふっ」ナデナデ

モバP「たまにやたらアクロバティックで手強い寝癖ができるのは何が原因なんでしょうね」

ちひろ「破滅的に寝相が悪いんじゃないですかね」

雪美「……(憧れの眼差し)」キラキラ

モバP「雪美もこうなりたいか? ニューヨークに行きたいか?」

ちひろ「こんな風になっちゃダメですよ? あとアメリカ横断ウルトラクイズもしないです」

雪美「……ボタンを押すと……帽子がピンポン……ってなる……」

モバP「あれはユニークだよな。解答ボタンを押すとパトランプが鳴るのは定番だが」

ちひろ「そんなことよりプロデューサーさん、その頭のまま仕事に出るんですか?」

雪美「……みんな……びっくり……する……」

モバP「とにかく男の朝の生理現象は一筋縄では収まらん。雪美にもう少し撫でてもらえば柔らかくなるかも」

ちひろ「女の子に朝の生理現象の世話をさせるんじゃない」

雪美「大丈夫……。……P……気持ちよく……なって……」ナデリナデリ

モバP「……はふぅ……」ヘナッ

ちひろ「」

雪美「……うまく……(力)抜けた……?」

モバP「おかげさまで、とても良かったよ。助かった。ありがとう」


ちひろ「私は一体何を見せられているんだ」

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モバP「猫じゃらし(植物)のふわふわって良いよな」

雪美「良い……!」 イイニャコレ

モバP「正式な名前はエノコログサと言うんだが、場所によっては未だによく見かける」

モバP「食用になることはあまり認識されていないかもしれない」

ペロ「……フンギャ」

雪美「……あれは……おいしくはない……って言ってる……」

モバP「猫は毛玉を吐いたりするために猫草を食べることがあるが、同じイネ科なんだな」

モバP「猫じゃらし(植物)と形が似ているものだとガマの穂というものもある」

雪美「……ソーセージ……みたい」

ペロ「……フミー」

雪美「……あれは……食べる気にならない……って言ってる……」

モバP「ペロが食べて安全か保証はないが、人の手にかかればガマから薬ができるし、若い芽なら食用にもなるとか」 ヘー

モバP「ちなみに蒲の薬は蝦蟇の油とは関係ないぞ。知ったかすると俺のように恥をかくかもしれないから気を付けよう」 ニャー


ちひろ「猫と普通に話をしていますけどこれが日常です」

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モバP「お寺で法事などがあると長時間座敷で正座――これって大変ですよね?」

ちひろ「そのテレビショッピングの実演販売士的な切り出しは何ですか」

モバP「何か特別なアイデアやアイテムを紹介するわけではないので身構えなくても良いですよ」

ちひろ「それは良かった。まずそこまで正座のことで深刻に悩んではいませんし」

雪美「……正座……足が……しびれる……」

モバP「足の痺れって様々だよな。くすぐったいものと痛いもの、麻酔みたいに感覚が無くなるものとか」

雪美「……P……私のために……いつも……しびれてる……?」

モバP「腕枕とか膝の上に乗ったりするからな。それについては大したことはないぞ。鍛えているからな」

ちひろ「神経や血管を圧迫するのを鍛えてどうにかできるものなのでしょうか」

モバP「くすぐったい時とそうでない時があるのは足の裏や脇をくすぐった時もですね」

雪美「……」コチョコチョ

モバP「ひひゃはははは、ちょやめ、くくっ……まあこういうことだ。自分でやってもくすぐったくないのに」

ちひろ「また、くすぐりは親しい人にされないと不愉快なだけで笑えないって言いますね」


ちひろ「笑ってくすぐり合えるお二人が親密だと分かります」 チヒロサンモドウデス? エンリョシマス

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モバP「この時期まで来てまた雪が降るかもしれないようだが、本格的な寒の戻りももうこれが最後かなあ」

雪美「……この冬は……暖かかった……ね」

モバP「今季は雪美と身を寄せ合って体を温めるということはあまりしなかったな」

ちひろ「しなかった……? 聞き違いでしょうか?」

モバP「あまりしなかった」

雪美「うん……。あまり……しなかった……」

ちひろ「頻繁に膝の上にいるのはノーカンですか」

モバP「いつも抱き締めているわけじゃないですからね。ただ座っているだけの時はノーカウント」

雪美「……ただ……座っているだけ……。……ここが……意外と……大事……」

ちひろ「特に目的とか無く乗っていたりもするんですね」

モバP「これから春夏へと季節が移行し、みんなの服も段々と薄着に変わって行くと思うと嬉しいような残念なようなむず痒さに纏われます」

ちひろ「プロデューサーさんの性癖のことはともかく、衣替えの季節ですねえ」

雪美「学校では……席替えの……時期……」


モバP「俺も雪美というマドンナの隣の席になりてえなあ」 ガクエンテンゴク……

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杏「プロデューサーってさ」

モバP「おう」

杏「アイドルより自分が表に、前に出たいタイプだよね」

モバP「……」

杏「アイドルを送り出す時に見せるあの目……代わってあげようか?」

モバP「いや、杏を見に来ているお客さんの前に何で事もあろうに俺が代役で出ないといけない」

モバP「まあ、裏方をやっていて表に憧れるというのは自然なことではあろうて」

杏「脚光を浴びたいんだろう?」

モバP「学生の頃は一時、演劇クラブに所属していたくらい目立つのは好きだ」

モバP「だが、俺が何か番組に呼ばれたりするとしても、ギャラはかなり安いぞ?」

杏「そうなの?」

モバP「業界ではよく言われるだろ? “文化人枠はギャラが安い”。コメンテーターとかな」

杏「プロデューサーは文化人枠なのか……」


雪美「この前……Pが出ていた番組……しっかり、録画してある……ふふ」

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『ざーこ、ざこ雑魚、ザーコっ!』

『小学四年生相手にこのザマなんて恥ずかしいと思わないんですか?』

モバP「雪美さんにそんな風に罵られて、というか煽られてみたい僕です」

ちひろ「何がそこまでプロデューサーさんを駆り立てるんでしょうか」

モバP「すいません持病が暴走してしまいました」

モバP「しかし、雪美様は心優しいおぜうさまですのでそんなことは言わないのです」

ちひろ「お嬢様じゃなくて敢えておぜうさまなのはちょっと馬鹿にしてますよね?」

雪美「……」ムッ

モバP「目は口ほどに物を言う……馬鹿にしてなどいませんよ」

雪美「……ならいい。……私は……口より先に……手が出る……タイプ」

モバP「肝に銘じておきます」

雪美「……よろしい」ニコッ


ちひろ「……上下関係の上にいる雪美ちゃんも割とそそりますねえ」

今日はここまで
今回でおわらない

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モバP「こらっ! と叱ると一番心に来るしょんぼり顔をしそうなアイドルと言えば」

雪美「……?」

モバP「割と真面目にライラな気がした」

ライラ「プロデューサー殿はライラさんを叱りますですかー?」

モバP「……ライラ」

ライラ「はいー」

モバP「……ライラを叱るなんて、俺には出来ん。怯えた目を向けられるなんて想像したくない」

雪美「……メンタルが……弱い……」

ライラ「でも、厳しく言ってもらいたいとも思うのですよー」

モバP「親を重ねるようなその寂しげな笑顔にも弱い」

モバP「ライラさんのただただ良い子な感じが尊くて、なるべくそのままでいてほしいのです」ナデナデ

雪美「……私からも……」ナデナデ


ライラ「……ぽかぽかでございますねー」

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モバP「アイドルの子たちも着けているが、最近はいろいろなマスクがあるな」

雪美「……?」

モバP「小学校の頃は給食当番で着けたガーゼマスクが一般的だと思っていたら」

モバP「大人になると使い捨てのサージカルマスク、更には黒いマスクなんかも見かける」

雪美「……くちばしのついた……マスクも……」

モバP「あれはオサレよな。更には口元に吸収缶という丸い出っ張りがあるガスマスクも味がある」

雪美「……結構……かっこいい……」

モバP「鳥山明の影響か、何か憎めない形だよな」

ちひろ「いやあ、みんながペストマスクやガスマスク着けて歩いていたら只事ではありませんよ?」

雪美「……ハロウィンでは……ありがち……」 ソウデショウカ?

モバP「マスクを着けることによってミステリアスな雰囲気を出し、外した時の素顔の端麗さが際立つのがたまらん」

雪美「……Pは……マスク……たくさん……持ってる……ね」

モバP「「ガイ・フォークス、ゴーストフェイス、ブギーマン――アイドルたちに着けてもらおうと思って」


ちひろ「どうしてそう不穏なのを気に入るんですか」

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モバP「雪美、あーん」

雪美「……んっ」

雪美「……ん……」コクン

雪美「……小さな……シュークリーム……」

モバP「良い顔いただき。一口サイズのシュークリームも今や売っていることが珍しくないな」

モバP「俺はシュークリームを見るとな、クレヨンしんちゃんを思い出すんだよ」

ちひろ「それずいぶん初期の頃のネタじゃないですかね」

雪美「……どんな……ネタ……?」

モバP「蚊の格好をしたしんのすけが、みさえが置いていたシュークリームにストローをぶっ刺して中のクリームだけ吸ってしまうという」

雪美「…………その発想は……なかった……」

ちひろ「感心しないでくださいね?」

モバP「何気ないシーンをずっと覚えているもんだな、とシュークリームを見るたびに苦笑い」

モバP「それと、シュークリームの横にエクレアが置いてあるとエクレアを選んでしまうのは宿命」

雪美「……シュークリームの方が……大きさでは……お得……」

ちひろ「どっちのケーキが大きいで争うような話ですね」

モバP「そんな全国346万人のシュークリーム意外と好き勢の自分でも食べてみたいものがありまして」

ちひろ「エクレアに浮気しといてですか? 普通に好きで行きましょうよそこは」

モバP「専門ブログを立ち上げるくらい好きかというとそこは本気な人に失礼かと」

雪美「……P……こう見えて……浅く広く……が、持ち味……」

ちひろ「一時期はドーナツやパンでしたしね。で、食べてみたいものというのは?」

モバP「クロカンブッシュですね。ただプチシューを積んでみましたというものじゃなく、本格的なやつを」

ちひろ「こういうモンテール(直球)じゃなくて、パーティーとかで出てくるタワー状の?」

モバP「はい。ケーキと違ってどこまで行っても基本シュークリームの群体であることに変わりはないんでしょうが」

雪美「……クロカンブッシュ……バベルの塔……みたいで……好き」

ちひろ「雪美ちゃんほどになると想起する物のスケールも違いますね……」 マッタクデス

モバP「バベ――クロカンブッシュは溶かしたカラメルや飴をかけてシュークリーム同士をくっつけるわけで」

モバP「建築と似た工作的な要素があるのも魅力ですね」

雪美「でも……崩したくなくて……食べられない……」 ワカルワ ワカリマス


モバP「ちなみにたこ焼きでクロカンブッシュもどきなら作ったんだがな」 チャレンジャーダナ

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紗南「Pさんは褐色の子を見る目が違うよね」

モバP「ほう? どんな目で見ていると言うのか」

紗南「恋する乙女のような」

雪美「……それは……興味深い……」

モバP「恋……か。ナターリアやライラを自然と目で追ってしまうのは、心配なのもあるが」

モバP「もしかすると俺の前世は褐色だったのかもな。憧れがあるのかもしれない」

紗南「へえ。ゲームでもやっぱり褐色系は好き?」

モバP「俺がイラストだけで一目惚れしたキャラクターは風来のシレン4のエドナが最後だからなあ」

紗南「キャラクターに一目惚れまでいくのは稀だけど、そういう時はあるよね」

モバP「ティンと来るんだよな。通常のおっこれはとなるのとは異なる、他と違う根源的な魅力というか」

モバP「そういえば昔からオセアニア、ポリネシアの小さな島国が何故か気になる性質だし、前世、もとい先祖がその辺りの人だったりして」

雪美「……そういえば……P……大きくて……筋肉質……」

モバP「サモアとかの人はフィジカルが凄いからな。その血が混ざっている可能性も微粒子レベルで存在する……?」


茜「でもプロデューサーは本場のラガーマン体型とは違いますね!」 ソラソウヤ

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モバP「商業施設にあると、特に買いはしないのに安心する自販機がある」

雪美「……?」

モバP「グリコのセブンティーンアイスだよ。種類が多くてデザインも良く、見ていて面白い」

ちひろ「アイスだけに冷やかしですね。買えば良いじゃないですか」

モバP「大人の男一人でキャッキャしながら自販機アイス買っていたら浮きませんか?」

ちひろ「そりゃあ地上346cmくらいは浮きましょうとも」

雪美「……舞空術……」

ちひろ「というかキャッキャするほど買いたいんですか」

モバP「あれがなかなか美味しいんですもん。値段・量と、一日一個食べるのにちょうど良いくらいの絶妙なバランスで心を掴みます」

モバP「それと食べ終わった後のスティックの形ですね。これがなかなか市販アイスにはないおしゃぶりの様な独特な形状で」

ちひろ「買ってるじゃないですか」

モバP「まあそれが子どもの頃の話で、今は誰か連れがいる時に見かければ買って食べさせ合うこともある程度です」

雪美「……二人で……二種類の味……楽しめる……」


ちひろ「外でそんなことをやられると私の肝が冷えますよ」

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ガチャ

モバP「戻りました」

ちひろ「お疲れ様です、プロデューサーさん」

モバP「いやあ、今日のアイドルたちのロケはなかなか面白くて、ミニ四駆対決でしたよ」

ちひろ「90年代に一大ブームになったやつですね」

モバP「あれを見ていてふと思ったんですが、現実の車にもローラーって付けられないものなんでしょうかね」

ちひろ「横が邪魔になると思いますよ?」

モバP「ですよねえ。あのホイールのようなリングが壁に接して回る姿に、風車のような風流を感じます」

ちひろ「あれは何も雅やかさを出すために取り付けてある物じゃないですけどね」

雪美「……P……回るのが……好き……?」

モバP「おお、雪美さん。そうだね……って、何をする気かな?」

雪美「……私も……Pのそばで……回る……」ピトッ クルクル

モバP「お、ルーレットか。よし、上手く対面で止めてみせるぞ~」


ちひろ「二秒後には抱き合う二人」

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モバP「こんな雪美どうでしょう」

モバP「補助倒立をする雪美」

雪美「……いきます……」

ヒュッ パシッ

モバP「結んであるとはいえ雪美の長い髪がマットに(1、2、3、4、5)」

雪美「……逆……」

モバP「雪美様のおみ足も大変美しゅうございます(6、7、8、9、10!)。はい、戻すよ」

スタッ

雪美「……もう。……ふざけないで……支えて……」プンスコ

モバP「はい。ごめんなさい」ペッコリン

雪美「……ふふ……、調子が……狂う……」

雪美「P……私だから……許す……。でも……みんなにしたら……ダメ……」

モバP「ん、おかのした」

モバP「それにしても、倒立をしていても本当に姿勢が綺麗だな」

モバP「逆立ち状態はしんどくなかったか?」

雪美「……ううん……楽勝……」v

モバP「どや! という顔も素敵ですぞ」

モバP「俺も昔は逆立ちなんて余裕のよしのんだったんだがなあ」

イマジナリー芳乃(わたくしの名を呼んだのはー、そなたでー?)

モバP「失礼、よっちゃんにしとく」

イマジナリー芳乃(むー?)

雪美「……?」

モバP「何でもないさ。……逆立ちだがな、昔は余裕だったというのは主に頭だ」

モバP「体が大きくなると圧で、同じ逆立ちでも頭に血が上るようになって辛い」

雪美「……」ホー

モバP「でも適度な逆立ちで頭への血液の流れが良くなるそうだから、若いなら毎日やって慣れさせるのも良いか」

モバP「頭皮にも良い影響を与えて、俺の髪も雪美さんのように艶々伸び盛りになるかもしれない」


雪美「……直感で……それはない……気がする……」 ソンナー

今日はここまで
苔の生すまで

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モバP「ふう……また俺ばかり喋ってしまったな」

雪美「……楽しかった」

モバP「雪美さんに聞き手に回ってもらってばかりで何かすまない」

雪美「……すまなくない……。Pの……話……聞いてるの……好きだから……」

モバP「雪美さんは聞き上手だなあ。いつも俺に気持ち良く喋らせてくれるというか」

雪美「……そういう……テクニック……、杏に……教わったり……する」

モバP「その安心感は杏由来の成分が含まれていたというのか」

モバP「でも、雪美さんに相槌役ばかりさせるのは勿体無い気がする。もっと君の声を聞きたいのだ」

雪美「……でも……ゆっくり……話すから……焦れない……?」

モバP「スローテンポでも良いんだ。その言葉を噛み締めて、味わえる」

雪美「あまり……味わわれると……恥ずかしい……///」

モバP「こやつ……ああもう何とこやつなこやつよ……!」


ちひろ「語彙力喪失が起きてますよ」

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モバP「学校の夢を見たんだが、自分の下駄箱の場所が分からない」

モバP「そんな内容を何度か見ていることを覚えている」

朋「場所が不鮮明なのは今の自分の在り方に迷いがあるんじゃない?」

モバP「速やかに診断してくれたな」

朋「割と見やすい夢みたいね。学校は規律と制約に縛られる場所で、下駄箱はそこから解放される出入り口みたいなもの」

モバP「それか、過去に下駄箱関連でトラウマがあってフラッシュバックしているのかもな。靴を隠されたり画鋲を入れられてみたり」

朋「P、そんなことあったの?」

モバP「そういう物語を読んで現実と重ね合わせて感情移入することはあった」

朋「なんだ。それは感受性が強いというか、被害妄想まで行ってない?」

朋「それで、どんなことで迷っているの?」

モバP「いやね、自分のキャラがこれで良いのかと」

朋「良いわよ別に」

モバP「答えも速いなおい」


雪美「……これで……いいのだ……♪」

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モバP「雪美さんはラブレターを貰ったことはあるかい?」

雪美「……」フルフル

ちひろ「小学校まではLIKEはあってもあまりLOVEの感情のやりとりは起こらない印象です」

モバP「分かりませんよ? 今は進んでいますからね」

雪美「……直接……告白されたことは……ある……」

ちひろ「レベル高かった」

モバP「今の雪美さんほどになると仕方のないことだな、うんうん」

雪美「幼稚園の……ころに……」

モバP「想定より前だった」

モバP「だがまあ、雪美さんはその頃から非凡な雰囲気があったのでしょう」

雪美「……」キラキラ

モバP「光っているなあ。ある時は太陽光のように眩しく、またある時は月光のように朧で儚げに」

ちひろ「幼稚園や保育園での人間関係って、結構その後のコミュ力や人格形成に影響したりしますよね」

モバP「自分は近くにボス園児がいたせいか、内向的でしたね。親友もいましたが」 ボス……

モバP「その頃から誰かの手を引っ張ってあげられる子になっていけたら良かったんでしょうが、おかげでシャイですね」

雪美「……Pは……私の手を……引っ張れる……。だから……大丈夫……」

モバP「それは、雪美さんが先に手を差し伸べてくれるからだよ。良い意味での強引さ図々しさが、俺には欠けているかもな」

雪美「……そんなこと……ない……。……P……」

モバP「まあ、好きな子の手は引っ張りたいよな。そういう風に変えてくれたのは雪美さんってことで」

雪美「……ん」コク

モバP「しかし、雪美さんがかぐや姫みたいにたくさんの人から求婚されたらどうしましょ」

雪美「……好きな人が……いる……と、言う……?」

ちひろ「それで引き下がるなら良いですが、世の中にはそれでも諦めない人も多いでしょうね」

モバP「火鼠の衣、蓬莱の玉の枝、仏の御石の鉢、龍の首の玉、燕の子安貝を取って来れば結婚して貰えるんですね?」

雪美「その時は……月から……迎えが……来そう……」

モバP「そんなぁ。……あれは翁たちを巻き込んだ挙句、こちらに馴染んだ姫様を勝手に引き取っていくから幼心に合点がいかなかった」

ちひろ「それはそうとして、プロデューサーさんはラブレターなどは?」

モバP「学生の時分には下駄箱にラブレターが入っていることに憧れていました。それだけです」


雪美「……ラブレターを……靴といっしょは……」 クサイカナ?

581

モバP「光り物が好きな私ですが」

ちひろ「あらら、実は意外と面食いで自分をよく見せたくてブランド志向だったりします?」

モバP「いや、宝石じゃなくて文字通り電灯とかです」

ちひろ「そういう光り物ですか」

モバP「子どもの時は信号機のおもちゃを欲しがっていましたね。電池で光るやつです」

雪美「……ライトは……宝石より……きれいかも……ね」

モバP「思春期くらいになると今度はトラックのカラフルなサイドマーカーランプを欲しくなりまして」

雪美「トラックを……買うの……?」

モバP「いえ、ランプだけ自分の部屋にたくさん並べて光らせて、それをずっと眺めていられれば良かった」

ちひろ「……プロデューサーさんの思春期とは」

モバP「それで気づいたんですが、原色三色の信号機ってカラーバランスが良いですね。青は緑寄りですが」

モバP「セネガル、ギニア、マリ、ルーマニア国旗のような配色の縦三色旗も靡き映えするってもんです」

ちひろ「光の三原色は黄色が緑に置き換わりますけどね」


雪美「……白と赤、だけだと……物足りない……?」 オカズガホシイネ ヒノマルベントウ?

582

モバP「想像してみよう、横断歩道を渡る雪美」

――

歩行者信号「青やで」

雪美「……、……」サユウカクニン

スッ

トコトコ

――

モバP「ええなあ」

ちひろ「平和な光景ではありますけど、そんなにですか?」

モバP「小学校も後半になれば通学帽なんてほとんど被りませんし、わざわざ手を挙げて渡ることも珍しくなりますからね」

モバP「では何故手を挙げるのか。例えば、後ろに低学年の子たちがいるから模範として手を挙げている?」

ちひろ「運転教本のイラストの危険予測問題みたいですね」

モバP「そういう一部の情報からバックグラウンドのストーリーまで想像することで、脳の活性化もできて良いと思います」


ちひろ「頭の中雪美ちゃんでいっぱい過ぎやしませんか?」

583

雪美「……」

モバP「……」

雪美「……」ギュッ

モバP「よくよく考えると怖くなるのも分からなくもないが」

モバP「月が赤いなあ」

雪美「……それは……告白に……なる……?」

モバP「“月が赤いですね”と言うと、何だかこれから血の雨が降りますよと警告・宣戦布告でもしているように聞こえなくもない」

モバP「しかしスーパームーンでブラッドムーン――不気味だね」

雪美「……うん」

モバP「結膜が黒で瞳が赤と化したexeキャラクターみたいだ」

モバP「まあそういう正体不明で不吉に感じたり危険を感じるものも、欠点や俗っぽさを見つけて生暖かく見つめると怖さは和らぐ。物は考えようだな」

雪美「……怖くない……怖くない……」ジッ


モバP「しかしこう大きい月はじっと見つめていると段々近づいてくるような……あっ、ごめん」

584

雪美「……Pの手……」ギュッ

モバP「ん?」

雪美「……」ニギニギ

モバP「……雪美の握力がマッサージのような刺激をくれて気持ちが良い」

雪美「……」

雪美「猫の……にくきゅうと……少し……似てる」

モバP「そうかなあ。俺の手は硬い方だと思うぞ」

雪美「……」グニグニ

モバP「心なしか母指球の所を重点的に攻めているように感じるが、そこの感触が好きなのか?」

雪美「……ふふっ」グニ

モバP「俺は他人の体にこんなに興味を持って触ることなんて出来なかったなあ。普通は嫌がられるものだし自分も嫌だ」

モバP「それをこうして雪美に許してしまうのが、改めて何だか新鮮」

雪美「Pは……嫌がらない……。……私も……こうするのは……Pだけ……。……特別……」


ちひろ「今は純粋でもこれいつ間違いに発展するか分かったもんじゃありませんね」

585

モバP「……」パラパラ

雪美「……」ピョコッ

雪美「……P……読書中……?」

モバP「……そうどす」

雪美「……」スタスタ

モバP「あっ、行ってしもた……。ほな……」パラパラ

雪美「……」スーッ

モバP「いやいや、雪美はん。ソファの後ろから覗き込むんはすこいわぁ」

雪美「……!」

モバP「なんや気を引くてんごな子猫みたいやん。そないな回りくどいことせんと、ここ」ポンポン

雪美「……良いの……?」

モバP「かましまへん――なんてな。どうぞおいでやす」

雪美「……うん……おおきに」


ちひろ「雪美ちゃんから何とかして京言葉を引き出そうの会」

今日はここまで
だれか かわってくんない

586

蘭子「我輩、暁の出陣には盛大なるファンファーレで送られたい」(私も登場BGMが欲しいです)

モバP「ああ、自分の入場テーマ曲があると燃えるよな。噺家さんにおける出囃子も粋で捨てがたいが」

モバP「スタン・ハンセンのテーマsunriseなんて乱入乱闘を促されるようでテンションが上がる」

雪美「うん……」キラキラ

奈緒「雪美が知っていることに驚きだよ……」 ナオモナ

モバP「しかし蘭子でそれをやると、例えばクッパ姫コスチュームで女子プロレスとか始めそうだから無しとして」 オイ

モバP「……そうだな、“思春期を殺した少年の翼”なんて良いんじゃない? この端末で聴けるぞ」ハイ

雪美「……もう……タイトルから……中二病……!」

奈緒「いや、それヒイロのテーマじゃないか! 自爆しそうだよ!」

蘭子「うむ、早速我が耳に入れてみようではないか!」ポチッポチポチッ

テレレテレレテレレテレレテレレテーレン! テーテテテテーテテテテー

蘭子「……おお!」キラキラ


モバP「ちなみに第二候補が“ナラク・ウィズイン”」 ワロックカヨ!

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モバP「ホールケーキってなかなか食べる機会がないよな」

雪美「……うん……大きすぎる」

モバP「人が多く集まる時に用意して、切り分けて食べるような物だからな。普段は手が出ない」

ちひろ「プロデューサーさんはマジパンの人形やチョコレートのネームプレートを取り合うタイプですよね」

モバP「そこがある意味楽しいところですからね」

モバP「ウェディングケーキのようにそのホールを何段も積んだような物を自分で買い上げるとなると一生に一度あるかないか」

ちひろ「結婚式のケーキは入刀用のイミテーションの場合も多いですね」

雪美「……食べられないの……?」

モバP「食べられません。その分、経費を安くできたり巨大なケーキにすることも出来るんだろうがな」

雪美「……それだと……ちょっと……がっかり……」

モバP「食べられる方が夢はあるよなあ」 ウン

モバP「しかし最近はケーキでもお菓子でもアソートタイプが台頭したなと思います」

ちひろ「いろんな種類を少しずつ食べる方が飽きませんからね」


雪美「……Pも……いろんな種類……いた方が……良いのかも……?」 ソンナコトナイヨー

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モバP「このご時世、手洗いうがい乳酸菌は大切ですね」

雪美「……ん……乳酸菌……」

ちひろ「手洗い♪ うがい♪」

モバP・雪美「乳酸菌」

ちひろ「ヤクルトは」

モバP「今後NHKに呼ばれるかもしれないのでぽろっと商品名を出さないように意識付けです」

雪美「バンドエイドは……絆創膏……」

ちひろ「あらまあ賢い(棒)」

モバP「あと、平時から気を付けることですが、目薬を差す時は手と顔を洗って清潔にすることを、今はより心掛けます」

雪美「……手……指……思ったよりも……汚れる……」

ちひろ「粘膜は気を付けないといけませんね」

モバP「それと市販の目薬は使用期限が書いてありますが、あれはあくまで未開封の場合で、使い始めたら一ヶ月くらいで使いきるべきだとか」

モバP「……頻繁に点眼しないとその期間で使いきるのは無理ですよね」

ちひろ「何ちょっとタメになるかもしれない話を始めているんですか」

モバP「目薬といえば、雪美は目が痒くなったりはしていないか?」

モバP「或いは鼻水が止まらなくなってティッシュが大量消費されてしまったり」

雪美「……大丈夫……」

ちひろ「他の話題に押し退けられていますけど今は花粉症のシーズンですよねえ」

モバP「人体は花粉をずっと蓄積していって、ある許容量を超えると一気に症状が出始める。厄介です」

ちひろ「鼻炎の症状が出るという意味では猫アレルギーも地味に辛いところですね」

雪美「……留美……」

モバP「ジレンマを抱えながらも猫を好きでたまらない留美さんを見ていると、人間ってまだまだ捨てたもんじゃないなと思います」

ちひろ「何の立場からの感想ですかそれは」

モバP「しかし、猫は仕方ないとして花粉症は、木が問題ですね」

ちひろ「杉や桧は材木用にたくさん植林されてそれを切り余しているので人の自業自得な所もありますからね」

モバP「最近の木造家屋再評価路線も悪くありませんが、やっぱり防火防災的には昔ほど多くはならないでしょうし」

モバP「これからはリンゴやみかんの木のような広葉樹を増やさないといけませんかね? 食料問題を補う為にも」

雪美「……針葉樹も……美味しかったら……良いのに……ね」


ちひろ「果実も人が手入れをしないとなかなか美味しいまでにはならないでしょうけどね」

589

モバP「……すまない」

雪美「……」

モバP「しばらく俺たちは距離を置かなくてはならないんだ」

雪美「……」

モバP「関係を解消しようという訳ではない。あくまで離れて接するということだ」

雪美「手……繋げない……。ひざにも……座れない……」

モバP「俺も苦しいが今しばらく我慢しなくてはならない。分かってくれるか?」

雪美「……」ツー

モバP「……!」

モバP「……雪美!」バッ

ギューッ

雪美「……P……、我慢……できなかった……ね……」グスッ

モバP「……言ったことを守れない大人で悪い。だが」

モバP「雪美が泣いている――我慢しないのにこれ以上の理由が要るのかい」

――

ちひろ「ジョニーとヨサクみたいなこと言ってんな」

モバP「あの二人のちょっと変わった形状の刀が好きです。菜斬り刀という菜切り包丁のような」

ちひろ「とにかく、そんなやり取りがあったか無かったか、今日もお二人は無事密接です」

モバP「膝に乗せる私」ナデ

雪美「……乗る私」チョコン

ちひろ「遠慮がありませんねえ」

モバP「ちひろさんも我々の仲の良さが段々と分かってきたようですね」

雪美「……」コクコク

ちひろ「ここ346でも流行りウイルスとかの感染対策はしていますけど、そのイチャつき具合は目に猛毒です」

モバP「親公認ですからね」

雪美「ただし……Pの親……」

ちひろ「雪美ちゃんの親の方じゃないのか。というかこの様を普通認めていたらおかしいんですけどね」

雪美「私たち……家族……みたいなもの……。Pも……みんなも……」

ちひろ「アットホームな職場過ぎて涙が出ますよ」

モバP「しかしこうしていられるのも例えば晶葉が特製のエアシャワーを作り」

晶葉「このくらいは私もしないとな。入室が少し面倒になるが」

モバP「志希が薬を作り」

志希「今の進捗状況だと副作用無しには難しいかな~。でも大丈夫、一時的に若返って記憶喪失になって半分獣化するだけなら……」

モバP「ちひろさんが抵抗力を付けるドリンクを作り」

ちひろ「いや、そんな凄いドリンクではありませんけど。というか志希ちゃん」

モバP「と、他にも何人ものアイドルたちがみんなの為に努力してくれているおかげです。感謝ですよ」

ちひろ「みんな私や晶葉ちゃんや志希ちゃんの腕を信頼していますけど、やっていることは人体実験かもしれませんね……」

モバP「倫理面は難しい壁ですね」

志希「倫理を無視するなら、現実改変性のあるキミのP細胞を取り込むって手もあるよー」ハスハス

モバP「それをやるとみんなが家族というより眷属になってしまうよ」 イイジャン? イイノカ?

――

日菜子「むふふ」

モバP「お、日菜子が幸せそうに日向ぼっこをしている。春だなあ」


日菜子「……ここまで全部日菜子の妄想……むふ」

590

柑奈「プロデューサーさん! 今日のステージ、ラブがしっかり伝わって来ました!」

モバP「おお、それは良かった。ギターで弾き語りなんて貴重な体験をさせてもらった」

ちひろ「おやおや、プロデューサーさんったら遂に歌まで歌い始めたんですか」

モバP「アイドルたちを元気づけようとテレワークのテストを兼ねてやりました」

モバP「ギターは高校の音楽の授業で習った以来ですが、その時の経験が役に立ちましたよ」

ちひろ「それで弾けるのも凄いな。どんな曲を披露されたんですか?」

モバP「雨やどり、関白宣言、関白失脚、恋愛症候群とかですかね」

ちひろ「さだまさしづくしとはたまげたなぁ」

柑奈「プロデューサーさんはコミックソングが意外とお好きなようで」

モバP「ネタとしても好きだし、以前学校の先生がフリーの時間でこれをやってくれて感動した影響もある」

柑奈「そういう先生、どの学校にも大抵一人はいますよね」 イマスカネ?

雪美「……P……ギター、良かった……。でも……笑い声……ないから……少し……さみしい……」 

モバP「確かにな。たださすがにドラマのフルハウスみたいなラフトラックを入れるのは遠慮した」 


ちひろ「フルハウスを例えに出すだけでラフトラックの意味が想像できる不思議」

591

雪美「……」スヤスヤ

モバP「雪美様が寝ておられる……無防備な格好で」

モバP「……」ジーッ

ポンッ!

悪魔(これは……誘ってる……手を出して……良い……)

天使(そんなことしたら……ダメ……。しっかり……添い寝……してあげて……)

モバP(結構五十歩百歩だな君たちは)

悪魔・天使((……?))

モバP(というか俺の脳内葛藤を表す天使と悪魔が何故雪美モデルなんだ。住み着いてるのか?)

モバP(それも天使のバブルスカートの白ワンピースもあれだが、悪魔はボンデージか? 際どい格好をしやがって)

悪魔(……///)

天使(……)ムッ

……! ……! ……!


ちひろ「プロデューサーさん、そこに上の空で突っ立ってると邪魔ですよ?」

592

モバP「ファッションとは時に理解しがたく、格好良さとヘンテコさは紙一重だと思います」

ちひろ「具体的には?」

モバP「本日はここにモデルを用意しました。雪美さんです」

雪美「……」キラキラ

ちひろ「……なるほど、ダメージジーンズですか」

モバP「はい。雪美さんが穿くと意外な感じがしますよね。キャップも被って少しボーイッシュスタイルです」

雪美「……これ……きずがあって……使い古し……みたい……」

モバP「でも古着ではないんだよな」

ちひろ「こういうのは人によっては新品にわざと傷を入れたりして穿きこなすようですね」

モバP「元々鉱夫の作業着として作られた丈夫なのが良さであるジーンズを、ボロボロにして穿くというのは何かいただけなくもありますが」

雪美「……?」

モバP「所々で擦り切れから覗く肌がなかなかワイルドで……おほん、ストリート系です」

雪美「……ドキドキ……する……? ……ふふっ……そう……」


ちひろ「どうせならワッペンを縫い付けたりした方が合いそうなんですけど」

593

モバP「紗南と“Good Job!”で遊んでいたらもうこんな時間だ」

ちひろ「平然と職場で遊ぶ豪傑」

紗南「配信のためのロケハンに付き合ってもらったら盛り上がっちゃいました」

モバP「いやあ、オフィスで壁や物を壊して暴れ回る陽気で爽快なゲームだったな」

紗南「そういうゲームじゃ……そういうゲームか!」

ちひろ「街中でロケランぶっ放して手配度上げて楽しむような破壊願望を溜め込んでいたりしませんよね?」

モバP「いや、さすがに現実で同じことはしませんよ。ゲームでは破壊も好奇心をくすぐるギミックにしてあるから楽しいんです」

モバP「ただ、暴れること自体に楽しさを感じる場合、それは少し病んでいるのかもしれませんね。社畜的な意味で」

ちひろ「闇が深そうで笑えませんね」

紗南「PさんはDEEEER Simulatorなんかも凄く楽しそうにプレイするよね」

ちひろ「あっ……」

――

ありす「これが、ピクトグラムのキャラクターが面白物理で会社で雑用をするパズルゲームですか」


雪美「……雑用(破壊)……」

594

雪美「……」スゥッ

テー テー テー

パチパチパチパチ

モバP「おう、これは……単音だが“お辞儀の和音”じゃな?」

モバP「それもハーモニカの素朴な音色と間がとても懐かしい」

雪美「……起立、……礼、……着席……」

モバP「はい、それでは授業を始めます。教科書の346ページを開いてください」

雪美「ふふっ……。そういう……イメージ」

モバP「実際の授業は普通はキンコンカンコンのチャイムがあるからこれで始めることはないが」

モバP「何故か授業や出し物が始まる時に聴くイメージが強いな」モウイッカイ

雪美「うん……」~♪

モバP「ああ、ハーモニカを吹く雪美さん――未来に残したいこの光景」


ちひろ「中学以降になるとハーモニカって吹かなくなりますからねえ」

595

雪美「……」スリスリ

モバP「怖い夢を見たか」

雪美「……うん。……でも……よく覚えて……ない……」

モバP「歳を重ねれば長年の情報の蓄積が増えて複雑怪奇な夢を見るようになるが、まだ雪美さんの記憶の引き出しは総量が多くないはずだ」

モバP「だから、最近印象に強く残った出来事などを反映した夢を繰り返し見たりもするだろう」

雪美「……怖いことの方が……印象に……残る……」

モバP「そこで、効くか分からないが、安心材料として一つアイデアをあげよう」

モバP「夢は五感に影響される。例えば睡眠状態に入っていても耳に入ってきた音・情報が夢と混ざり合うことがある」

雪美「……」

モバP「寝ている横でテレビやラジオの音声を聞くと、その内容が夢に出る」

雪美「……」ホー

モバP「面白いよな。枕の下に本を置いて眠るとその内容の夢を見られるという迷信よりは再現性がある」

雪美「……迷信……なの……?」

モバP「何度かやってみたことがあるが、それで夢が見られた記憶が無いな。忘れているだけかもしれないが」

モバP「まあ、迷信というかおまじないみたいなものだな」

雪美「ペロを……抱いて……眠ると……ペロの夢……見る……よ……?」

モバP「それはペロだと分かっているからだよ。本に関しては記憶と願望で見るものなんだと思う」

モバP「例えば表紙だけで中身を読んだことのない本を枕元に忍ばせて、その本の夢が見られるだろうか」

雪美「知らない夢は……見られない……ね」

モバP「既知の情報があるから夢を見られる。無いのに見られたらそれは予言者だ」

雪美「……でも……見たい夢を……見られたら……すごい……」

モバP「儀式とかするとしても、だな。望んで好きな夢を作り出せる人は想像力と創造力がよほど豊かなんだろう」

雪美「……私も……イチゴの夢……見たい……」

モバP「今度雪美がお昼寝をする時に、俺が耳元でイチゴのことについて朗読してみようか」

雪美「……イチゴより……Pの声を……意識して……しまうかも……」

モバP「聞き慣れている声のはずだろう? 大丈夫、心地良い眠りに誘ってあげるよ」

雪美「……じゃあ……お願い……する……」


ちひろ「プロデューサーさんのASMRがアイドルたちに大人気になるとは、この時誰も思わなかった」

596

モバP「車載動画ってたまに見ると惹き込まれてつい追ってしまいますよね」

ちひろ「私はそうでもないですけど、今はそういう動画多いようですね」

モバP「車に限らず登山やドローン、電車の全面展望――それらも勿論好きです」

ちひろ「旅行気分に浸れるからでしょうか? そういう意味では某ストリートビューとか凄いと思います」

モバP「人の計り知れないポテンシャル、というかアクティビティの賜物ですね」

雪美「Pも……そういうの……撮って……みたら……?」

モバP「プライベートなら様々な所を回れるんだが、仕事が絡むとどうしても同じ所を行き来しがちだ」

モバP「いつかランボルギーニにでも乗ってシチリアの海沿いの道を走りつつ、撮ってみたいなあ」

ちひろ「結構な野望をお持ちですねえ」

モバP「ただ自分の力では無理そうだからこの夢はアイドルに託すことにします」

ちひろ「他力本願かよ」

モバP「雪美さん頼んだぜ」

雪美「……ランボルギーニ……、……がんばる」

ちひろ「頑張らすな」

雪美「Pは……高級スポーツカー……好き……、……なぜ……?」

モバP「何故だろうな。高級だから好きというつもりじゃないんだよ」

モバP「ただテールの赤色、橙色のランプがくりっとしている車って数が少なくて高級なイメージがあります」

ちひろ「丸目が少ないのって何か意味があるんでしたっけね?」

モバP「分かりませんが、それに当てはまるもので行くとランボルギーニはディアブロが好きです」

雪美「……ディアブロ……。……強そう……」

ちひろ「ランボルギーニはイタリアのメーカーですが、ディアブロはスペイン語で悪魔ですね」

ちひろ「ランボルギーニムルシエラゴ、スペイン語でコウモリなんてのもあります」 オオ……

モバP「ムルシエラゴの丸っこいボディを見て、それまでのどちらかと言うとロボットのようなそれから動物に進化したように感じたものです」

モバP「あ、テールランプは丸も良いですがイオタやカウンタックみたいな四角いのも外せません」

モバP「あのキュービィロップのようなポップな感じ……美味しそうです」

ちひろ「美味しそうときたか」

モバP「日産のスカイラインなんかも色はともかくドーナツへの食欲を触発させる形ですよね」

ちひろ「……そうやってあまり(車体の)お尻ばかり追いかけてるのもどうですかね」


卯月「お尻と聞いてやって来ました」 ナゼソレデクル

597

モバP「……」

雪美「……」

雪美「……」ノ スッ

モバP「……」コク

雪美「……」ポイッ

コロンッ コロコロコロ

雪美「……1と……4」

モバP「おっ、5枚リーチだな」

ちひろ「何をやっているんですか」

モバP「サイコロを使ったポーカーにビンゴをかけ合わせたような遊びです」

ちひろ「何かいろんなものを全部乗せして個性が迷子になった感が」

モバP「昔、グランディア3というゲームがありまして、その中に登場したカジノ的施設のカードゲームです」

ちひろ「……道理で見たことがないなと」

モバP「さあ、最後の五投目……振るが良い」

雪美「……」コク

雪美「……!」ポイッ

コロンッ コロコロコロ

雪美「……6と……6」

モバP「残念……ドボンだ」

雪美「」

ちひろ「大富豪8切りのような一見では分からないルールがあるようで」

モバP「まあ、欲しかった綺麗なクリアカラーのサイコロが手に入ったので、とりあえず何か遊んでみたかったんですね」

モバP「さて、賭けは俺の勝ちのようだ」

雪美「……む……、もう一回……だけ……」

ちひろ「賭けって、そこに何かコインらしきものが積んでありますけど」

モバP「最近の金貨チョコは精巧に作られていましてね。ムードを出すために使っているだけで賭博なんてせず、後でしっかり山分けしますよ」スパー

雪美「じゃらじゃら……お金持ち……。ココアシガレットも……ある」


ちひろ「もう少し健康的な遊びはできませんかねえ?」

598

ブウゥゥーン

――

モバP「おかえり」

雪美「……」ニコ

モバP「ヘルメットを被った雪美さん……素敵だ」

雪美「……そんなこと……ないと思う……」

モバP「いや、保証するよ。フルフェイスでなくストリートスポーツ系のヘルメットにすっかり魅せられた」

モバP「もっとも、フルフェイスのヘルメットを脱いで頭を振ったら、長い髪がふわっと広がる様も映画の美女のようで捨て難いが」

雪美「……」フムフム

モバP「ふふ、この前の収録のゴーカート対決企画で運転もすっかり慣れたものだな」

雪美「……でも……本物の車だと……足が……アクセルに……届かない……」

モバP「きっと届くようになるさ。ならなければ……俺がずっと運転席か」

雪美「頼りにしてる……あなた」


モバP「……完落ちさせる気か。ええい、今度は二人乗りで俺も乗るぞ!」

599

モバP「んっ……んん」モグモグ

雪美「……」ハムハム

ちひろ「また私に内緒でお菓子を食べてますね。晩御飯食べられなくなりますよ?」

モバP「注意の仕方がもう母親そのものですねえ」

ちひろ「は?」

モバP「我々はハードなレッスンをやるので大丈夫ですよ。ちひろさんも食べます?」

ちひろ「……これは?」

モバP「広島銘菓ぷよまんです」

ちひろ「冗談言っちゃダメですよ。何年前に製造終了したやつですか」

モバP「……18年前?」

巴「形が違うだけで、もみじ饅頭みたいな味じゃの。お茶に合うわ」パクパク ズズー

ちひろ「巴ちゃん、スケルトンTみたいに座布団に正座してる……。18年前の遺物がどうしてここにあるんでしょう」

モバP「そこは企業秘密ですね。ヒントは晶葉・タイムマシン。古すぎて食中毒などはないですから、まあまあクリーム入りでもどうぞ」


ちひろ「自作したくらい言うと思ったらファンタジーだったよ……大丈夫ですよね?」

600

モバP「資源ってのは取り過ぎると無くなってしまう」

雪美「……」チョコン

モバP「この上質なユキミニウムもいつか枯渇するんだろうか」ダキッ

ちひろ「ユキミニウムって雪美ちゃんからしか採れないとすればレアメタルみたいですね」

雪美「……」キラキラ ←SSRな存在

モバP「減っても雪美さんの中で作られて補充されていくものなら良いですね。秘伝スープのように」

雪美「……私を……何だと……思ってるの……。……ん?」グイグイ

モバP「そう小突くない。そういうことだから無くならないように大切にしないといけない、ということさ」ナデナデ

雪美「……」ムフー

モバP「目に見えて無くなっていくものって怖いからな。有名なアラル海の衛星画像なんて小学校の僕には軽くホラーでした」

ちひろ「妙な所で感受性が強いですね……。カラー資料集みたいな教科書に載っていましたね」

モバP「あの真っ青な水の色だけでも不気味ですが、それが嘘のように減少する深刻さ」

ちひろ「それは単に衛星画像が怖いだけで面積縮小はあまり関係なさそうですね」


雪美「P……存外に……トラウマ……多い……?」 ニンゲンデスカラネ

今日はここまで
うん、「また」なんだ。済まない。

601

雪美「……♪」

モバP「ご機嫌ですね、雪美様」

雪美「……Pに……執事服……着てもらった……から……」

モバP「……」キラキラ

雪美「……ふふっ……とても……似合ってる……」

モバP「……素で嬉しい。褒められるアイドルの気持ちが分かるなあ」

ちひろ「普段と逆の立場ですね」

モバP「我々は役割は違いますが力関係は基本的に対等ですからね。“与えよ、さらば与えられん”です」

ちひろ「聖書を引用するにはちょっと締まらない場面ですね」

モバP「聖書――世界で最も売れた本とか言われますよね。真偽の程は知りませんが」

モバP「あ、ちなみに執事が着るものって燕尾服とは言わないらしいですね。よく知りませんでした」

ちひろ「正直な告白」

雪美「……P……お茶に……しよう……」ワクワク


モバP「かしこまりました、お嬢様」ニコ

602

モバP「良い値段する、とまでは言いませんが少しグレードが上がったお菓子ってやっぱり味が違いますね」

ちひろ「それはそうでしょう」

モバP「例えばデュック・ドールのダークトリュフ。普段食べる国産チョコレート菓子より美味しく感じます」

ちひろ「ベルギーのチョコレートですか。確かに、箱のちょっとした高級感相応の美味しさはあると思います」

ちひろ「あとは単に輸入菓子なので、味が新鮮なのもあるかと」

モバP「甘さ苦さ等のバランスの好みは国々によって変わるでしょうからね」

モバP「輸入菓子と言えば、逆に信じられないくらい不味いのもあったりします。サルミアッキやシュネッケン……」

雪美「……カッチェスカッチェン……カティンヒェン……」

ちひろ「いわゆるリコリス菓子というものですか。雪美ちゃんのはどちらも袋の黒猫が目印ですね」

モバP「二人でシャノワールのような外国の黒猫商品を漁っていたら見つけたので、買って食べてみたことがあります」

雪美「…………ドイツ……こわい……」ブルブル

ちひろ「相当不味かったんですね……無理もありません」

モバP「漢方的で多分体には良いんだと思って、責任を持って食べきりました。もう二度とやりたくない」


ちひろ「ファイターだなあ」

603

モバP「ファンタジー系ゲームとコラボするの、良いよなあ。こういう時、アイドルが羨ましい」

杏「そうかなあ」

モバP「杏は某コラボでレイジーフェアリーというバニーホップなキャラクターをやったが」

杏「バニーっぽかったけどさ、バニホはしないよ」

モバP「丸腰も良いが、やっぱり異世界INするなら特有の得物が欲しいよな。魔法使いタイプにしても杖とか」

杏「杏は武器なんて重くて物々しいものは装備できないからね。平和主義者なんだよ」

モバP「と、口では言いつつ後列からエグいデバフ魔法とかぶち込んできそうだよな」

杏「間接的にでも圧力を持たずして平和は成し得ないからね」

モバP「アイドルらしからぬ現実主義者よ」

杏「プロデューサーならFF7クラウドのバスターソードでも振り回しそうだよ」

モバP「あれを背負って街中歩きたくねえなあ……」

モバP「穴が空いていてビー玉みたいなマテリアをはめ込めるのは好きだがな」

杏「形と色はほぼビー玉だよねえ。ただ、大きさは……」

モバP「リアル化以降は何かテニスボールとゴルフボールの中間くらいはあるよな」

モバP「思えばビー玉みたいな球体ってちょうど良い穴があるとはめ込みたくなるな」

杏「あーん」

モバP「ほい、飴ちゃん」つ○

杏「んっ、サンキュー。……これははめ込んだって言わないか」コロコロ

モバP「心理学ではこういうのをゲシュタルトの穴、と呼んだりするとかしないとか。完璧主義なのかな」

モバP「まあ良い。それより他のアイドルも武器を持つなら何が良いか考えてみたぞ」

杏「……?」

モバP「まず法子は燐火円礫刀だな」

杏「え、何それ」

モバP「雪美さんお願いします」

雪美「はい……、参考……画像……」つ□

杏「……フラフープじゃん」

モバP「かっこいいでしょう? チャクラム、戦輪、円月輪、輪刀の類……」

雪美「うん……。独特の……強者感……好き……」


杏「……法子の目が据わった立ち絵になりそう」コロコロ

604

モバP「ウィスパーボイスの使い手、雪美さん」

雪美「……ウィスパー……? 私が……使ってる……?」

モバP「そうそう、その声よ。ささやくような吐息のような」

雪美「……P……こういうの……?」スッ

モバP「おうっ」ブルッ

ちひろ「相手の耳元に寄って囁く――艶めいていますねえ」

モバP「ウィルオウィスプ、及びその派生があるせいか、ウィスパーボイスというと幽霊のような希薄な声、なんてイメージがありませんか?」

ちひろ「無いですね」

モバP「あっ、ない」

雪美「私は……ウィスパーで……キャスパーを……連想……する……」

モバP「結構昔のゴーストコメディ映画だな。これは雪美と見た記憶が無いが」

雪美「……仁奈や……みりあたちと……見た……」

モバP「良いなあ。アダムス・ファミリー2の2年後のクリスティーナ・リッチがまた上手くハマっていたな」


ちひろ「ウィスパーで真っ先に生理用品が思い浮かぶ私は汚れていますかね?」

605

モバP「こんにちはペロさん。相変わらずお元気そうで何よりです」

ペロ「ニャッ、ミギャ」

雪美「……目上の人への……あいさつか……って言ってる……」

モバP「毛艶も良いし、まだまだご健啖なようですな」

ペロ「……フー!」

雪美「引っかくぞ……」

モバP「やん。……ところでペロはこれからの猫生、目標とかは? 俺たちの仲だ、出来ることなら協力するぞ」

ペロ「……ミニャー……アーウ」

雪美「早く……姪の顔が……見たい……だって」

モバP「姪とは、ペロに兄弟姉妹がいるのか?」

ペロ「ニャニャニャ」

雪美「……雪美と……Pの……子ども……死ぬまでに……見せろ……って、ペロったら……」

モバP「君たち疑似姉妹の関係だったのか……とりあえずあと10年以上は長生きしてください」


ちひろ「猫の1年に歳を取るスピードは人間のおよそ4倍だとか」

606

モバP「戻りました」

雪美「……ました」

ちひろ「お疲れ様です」

ちひろ「……プロデューサーさんは雪美ちゃんをよく迎えに行きますよね」

モバP「時間がある時に限りますがね。場合によっては他の子を優先させることもありますよ?」

ちひろ「溺愛が高じているわけではないんですね」

モバP「雪美さんを迎えに行くのは、雪美さんが迎えに来てくれるからでもあるんですよ」

ちひろ「ちょっと何言ってるか」

モバP「普段何気ない場面で自分を待ってくれていて、一緒に帰ろう、とか言ってくれる――」

モバP「それって例えこことレッスンルームのような短い距離であっても、何だか家庭的で人の理想を表しているような気がします」

雪美「パパを……迎えに行って……いっしょに帰る……、たまにしかない……けど……とても……安心する……」

雪美「……手を繋いで……歩きながら……いろんなことを……話しているだけで……幸せ……」

モバP「泣けるぜ」


ちひろ「月明かりがふんわり落ちてきそう」

607

ライラ「ライラさんは聞きたいことがあるのですよー」

モバP「おう、何だい」

ライラ「チョコバリとブラックモンブラン、見た目が同じなのに違う会社が作っていますです」

ライラ「どちらを買うのが良いのでございますか?」

モバP「直感で選べば良いのです」

ライラ「直感ですかー」

モバP「両方を取り扱っている所は珍しいと思うが、チョコとクランチがかかったオーソドックスなアイスバーはそれだけ定番の売れ筋ということだろう」

モバP「どちらを選んでも誰もライラを責めないよ。味はそんなに違わないはずだ」

ライラ「でも、不思議なもので、プロデューサー殿が選んでくれましたアイスを、プロデューサー殿と一緒に食べる時が、一番美味しいのでございます」

モバP「それは……恋じゃな」

ライラ「恋ですかー」

モバP「そんな恋の熱冷ましにクランチシュガーコーンかヨーロピアンシュガーコーンでも買いに行くかな。あれはコーンに厚みがあって美味い」

ライラ「おー、ではわたくしもおともしましょう」


雪美「恋は甘い……アイスのよう……」

608

モバP「夏のセーラー服(上)ってたまにやたら丈が短いものがありますよね」

ちひろ「見つけるの結構大変でしたよ?」

雪美「……こういうの」キラキラ

モバP「少し伸びをしてみてください雪美さん」

雪美「……んんっ……」

モバP「雪美さんのへそチラ……これは表彰ものですよちひろさん」

ちひろ「私は一体何をしてるんだって自覚させるための表彰ですか?」

ちひろ「しかし伸びをするとか仰け反るとかすることで自然なチラリズムを見せるのは上級者ですね」

モバP「へそ、お腹が露出している衣装はそう珍しくないんですがね」

雪美「……私のおへそ……お腹……変じゃない……?」

モバP「健康的だぞ。だが、そうやって見せてこられると目のやり場を失ってしまうよ」

雪美「……見たいなら……ちゃんと……見て……」

モバP「相手の胸や腹を下心を出して見つめては失礼だからな。うん、見せて?」キリッ


ちひろ「意外でもなく早く堕ちたな」

609

モバP「春もすっかり進み、日は長くなり、街路樹はもう青々とした葉を付けている」

モバP「そうか、もうすぐみどりの日なんだなあ」

ちひろ「ゴールデンウィークでは無くみどりの日に何か特別な思いでも?」

モバP「良いですよね、自然色で和やかなグリーンカラーが何となく溢れる日。またの名をちひろさんヤッホーの日」

ちひろ「勝手な記念日を作らないでください。世にやたら何かの記念日は多いですけど」

モバP「ちひろさんヤッホーの日はちひろさんをお祝いする予定ですからお楽しみに」

ちひろ「私の誕生日か何かと誤解していませんよね? そういうのは11月28日にしてください」

モバP「良いなあちひろさんは一年に二度もお祝いされて」

ちひろ「人の話を聞けい」

モバP「しかし13年前までは4月29日がみどりの日だったんですよね。今は昭和の日」

モバP「当時以前の記憶が微かにでも残っていると、あれ? 今日何の日だっけ? となったりするものですかね? 自分はしませんが」

ちひろ「菜々さんがそういうことを言ってましたね。私にとっては4.29だと」

モバP「……まあ、幼い頃の記憶が鮮明な人も稀にいますからね」


雪美「……私も……ずっと前に……Pと会っていた気が……」 ナニソレキニナル

610

りあむ「うー、くっそ! 仕事ある日に寝坊するなんてぼくはクズだよ!」

りあむ「遅刻したら炎上する! タクシー呼ぶぞ!」

モバP「お呼びですか」 デスカ……

りあむ「えっ……Pサマ、何その黄色い車は。というかまだ呼んでないのに」

モバP「急がれるんでしょう? どちらまで」ガチャ

りあむ「わーもうっ! ○△□スタジオまでお願い!」パタン

モバP「分かりました。急行します」 カチャン キュイイイィイ

雪美「BGM……スタート」

ヤーヤーヤーヤーヤー!

りあむ「」

ブロロロロロ

りあむ「ちょっと待って、明らかに安全運転糞喰らえBGMじゃないか! やめてよ!」

雪美「……大丈夫……安全……」

モバP「一日100万円稼ぐタクシードライバーを舐めんなよください」 イジョウダヨ!

りあむ「はー、そもそも雪美ちゃんも一緒なの何でどうして?」

雪美「……一日助手……」b

りあむ「目立つなー良いなーぼくもチヤホヤされたいけど!」

モバP「じゃあ今からちょっと裏の坂道行きますんでしっかり掴まっていてね」

りあむ「どんな悪路を走る気!? さすがにやむよ!」

モバP「青色のハリネズミも駆け下りたような道をジャンプするだけですので」

りあむ「嘘だよ! 日本のどこにサンフランシスコがあるのさ!」

ガクンッ

りあむ「ひえーっ!」エーッ エーッ エーッ

――

モバP「お客さん、○△□スタジオに着きましたよ」

りあむ「えっ!?」ガタッ

雪美「りあむ……意識……飛んでた……?」

りあむ「ここどこ――って外、本当に着いてるじゃん。しかも時計は1分しか経ってないし、何これワープ? ……もうやむ」


モバP「料金346円になります」 ジョウダンダトイッテヨウ!

611

モバP「いちごミルク味のプリンを食べる雪美さん」

雪美「……」パクッ

雪美「……とろける……」

モバP「味は牛乳プリンの系統に似たものだが、層はしっかり二層あって味が楽しめる」

雪美「……食べる……?」

モバP「いや、一番美味しく食べてくれる人に食べてもらうのが良いよ」

雪美「Pは……いちごプリン……美味しく……食べられない……?」

モバP「俺実はイチゴよりリンゴ派なんだ。ついでに猫より犬派で」

雪美「……」

モバP「冗談です、はい」

雪美「……一人より……いろんな人に……美味しく食べてもらえた方が……きっと良い……」

モバP「……雪美さん、良いことを言いますね。俺の言い分は好き嫌いを聞こえ良く正当化しようとしているだけだった」

モバP「さっき雪美さんを待てずについ手が出てプリンを二つ食べたばかりだが、貰おうか」


雪美「それを……早く言おう……」

612

モバP「水族館はいつ来ても静かで涼しくて薄暗い空間なのが心地良いな」

雪美「不思議で……落ち着く……」

モバP「海の底のような異次元のような世界を自分の足で歩いて回れる――素敵じゃないか」

飛鳥「……」

モバP「おっ、どうした飛鳥。大水槽をじっと見つめて」

飛鳥「広い海と違って、このアクアリウムはとても狭いなと思ってね」

モバP「……小魚一匹だけなら充分広いだろうが、ここは大小様々にひしめいているからなあ」

雪美「魚にも……パーソナルスペース……ソーシャルディスタンスは……ある……?」

飛鳥「あるだろうね。そして、こうして境界線に近づいてくる魚がいるのは、そんな閉じられたセカイから解放されたがっているのかもしれない」

雪美「魚と……目が……合う……ね」

飛鳥「水槽の魚は透明な壁を隔てた向こう側、つまりこちらのセカイを認識しているはずなんだ」

飛鳥「でもこちらに来ることはできない。ボクたちの飽きるほど広い空と陸のセカイでは泳げない上に、溺れてしまうのさ」

モバP「地球に住む人と宇宙もそんな距離感かもな。目の前に見えるのに遠く、広いが過酷な世界」


七海「何か活き活きしているように見えるのは、暗闇効果なんれすかね~?」カエッテコーイ

613

モバP「雪美さんの頭、ほんま丸くて撫で応えあるわ」ナデナデ

雪美「……そんなに……丸い……?」

モバP「ヘッドドレスや帽子をしているとそうでもないが、普段はこれを見るとついふら~っと体が向かってしまう」

雪美「……」ツヤツヤ

モバP「雪美さんは秩序だな。目に入れるだけで心が穏やかになる形をしている」

雪美「……形だけ……じゃなくて……中も……見て……」

モバP「中も、人を安心させるような包容力があるよ」

モバP「俺が他の女の子に二人でのデートに誘われても、それを快く送り出してくれるのだから」

雪美「……最後に……私の……横に居れば……それでいい……」

モバP「そんなラオウ並の器の広さを見せられると、浮気する気も起こりません」

ちひろ「齢十にして達観しすぎやしませんか」

雪美「惚れなきゃ、だめ……。心底惚れないと……Pの……本当の良さは……分からない」

雪美「私が……命賭けで……惚れたのは……P……たった一人……」ニコ


ちひろ「男らしすぎやしませんか。こっちが惚れるんですけど」

614

モバP「大神や風のタクトみたいなゲームがまた出てこないものでしょうか」

ちひろ「接点がないようで少し似たような所がありますねその二つ。エフェクトとか胴長なところとか」

モバP「キャラクターのデフォルメの仕方に最初は癖を感じるんですが、世界に触れているとこれが良い味と感じてくる」

ちひろ「実際に生活してみたい世界だなって思わせますね」

モバP「それでいてどこかロストワールド感があってシリアスな重みを所々挟んでくるのも良い」

雪美「……P……また……何かのお話……?」

モバP「ああ……」ジッ

雪美「……?」

モバP「猫目リンクならぬ猫目雪美――いても良さそうだなあ」

雪美「……!?」

ちひろ「猫目はみくちゃんの領分なんですよね」

モバP「……いや、雪美はやっぱりこの顔かな。猫目はあまりイメージできない」

雪美「……」ホッ


ちひろ「えっ、そこって安心する所だったんですか?」

615

モバP「最近、小さい方のマスクを見かけると眼帯ビキニを思い出して萎えてしまう僕です」

ちひろ「普通逆では? というかプロデューサーさんもそういうものに興味を持たれる男性ですか」

モバP「普通の水着の方が好きですがね。おかしな形をしていると印象には残ります」

ちひろ「アイドルにそんなものを着けさせたりしてませんよね?」

モバP「……」チラッ

雪美「……」コク

モバP「……してません」

ちひろ「二人の間に一体どういう了解が交わされているんですか」

モバP「しかしまた夏にはアイドルの水着と、海で楽しむ姿を眺めるべく、346のプライベートビーチに行きたいですね」

モバP「あそこをザキントス島のナヴァイオ海岸みたいにDIYすれば、みんな驚くだろうなあ」

ちひろ「DIYを地形変更ツールか何かと思っていませんか?」

雪美「……ナヴァイオ海岸……紅の豚……」ポチポチ

ちひろ「雪美ちゃんもタブレットでささっと調べものをするんですねえ」


雪美「あと……眼帯ビキニ……画像……」 ソレハフィルターカカリソウ

今日はここまで
2/22飛ばした分の増刊号です

616

モバP「雪美に壁ドンされたい。もちろん異性に迫られる意味の壁ドンです」

ちひろ「あいさんや輝子ちゃんにされたいならまだ分からなくもないですけど」

モバP「そっちだったら分かるんですか……。自分、アイドルからしてくれとはよく言われるのに、させてくれとは言われないんですよね」

雪美「……」フム

雪美「……P……壁を背に……床に……座って……」

モバP「分かった」

雪美「足は……開いて……伸ばす……」

モバP「オーケーよ」

雪美「……私が……片足を……跨ぐ……」

ちひろ「……膝立ちだ」

雪美「……」ドンッ

モバP「」キュン

モバP・雪美「……」ドキドキ


ちひろ「本来の意味の壁ドンしたくなります」

617

モバP「たまにこう思うことがあります。もしも僕の家にソースポットがあったなら」

ちひろ「もしもピアノが弾けたならみたいに言いますね」

モバP「手作りカレーを食べるのにテーブルクロスを敷いてそこにソースポットがあって――想像すると食卓がエレガントな雰囲気に」

ちひろ「否定はしませんけど、一般家庭には基本的に置かれない食器ですね」

雪美「……魔法のランプ……みたい……」

モバP「ステンレスとかならともかく、銀製はたまに手入れで磨いたりしないといけなくて、そこがランプを擦る感があるな」

モバP「自分は銀用と銅・真鍮用の二色のトゥインクルを使い分けています」

ちひろ「プロデューサーさんはいつの間にかレストランでも経営されているんですか?」

モバP「いえ、知り合いの櫻井さんや西園寺さんや黒埼さんの家の手伝いで」

雪美「……全部……知ってる……名字……」

ちひろ「何で食器磨きをしに人の家に出入りしているんでしょうかねえ……」

モバP「そんな磨くのも好きな私ですが、逆に自身は雪美さんに擦られ磨かれたいとも思います」 ヤカマシイ

雪美「……こうすると……Pから……煙の魔人……出てくる……かも……」キュッキュ 


ちひろ「あまり人の体から出ないような音が聞こえるんですけど」

618

モバP「恋愛映画は焦れるな。そこが良いんだが」

伊吹「二転三転ないとね」パク

モバP「映画を見ながらポップコーンを食べる伊吹――真剣な横顔」

伊吹「……?」

モバP「ふと横目で見つめてしまう」

伊吹「な、何?」

モバP「暗くした部屋で映画を見ていると、画面の光が反射して伊吹の目が青く輝いて、綺麗だなあと」

伊吹「……///」

モバP「……失礼、映画を見ている最中によそ見をしたらダメだな」ハグッ

モバP「うん、ホットドッグも美味いわ」

伊吹「自分で作ったんでしょ? ……どうしてアタシと見ようと思ったの?」

モバP「伊吹と二人で実況気分を味わいたかったからかな。黙って見たい派には悪いが」

伊吹「Pはみんなと楽しい気分を共有して盛り上がりたいタイプなんだね」

伊吹「アタシも似てるかも。映画を見ていると自分も何かしなきゃ、と体が疼いてくるっていうかさ」

モバP「普通に顔を突き合わせて話をするのがコミュニケーションかもしれないが、こう横に並んで時間を共有するのも満たされるものだ」 ソウダネ

モバP「あっ、キスした」

伊吹「……!」

伊吹「わわ、これっていよいよ……そういうシーンなの?」

アンアン

伊吹「……始まっちゃった……///」

伊吹「……P?」チラッ

モバP「……」

伊吹(ポーカーフェイス……! やっぱりこういうの見慣れてるとかそういう……?)

モバP「気まずいな」

伊吹「顔に出ないだけかあ」

モバP「伊吹より年下の子とは見れんわこれ」

伊吹(……ちょっぴり優越感……って何考えてんのアタシ!)

モバP「しかし裸体を映すカメラワークがねっとりしてんなあ。定点だと少し芸術っぽくなるのに」


雪美のテレパシー(ちなみに……Pの部屋には……定点カメラ……ある……) エッウソ

619

雪美「……Pと……一狩り……楽しかった……」

モバP「いやあ、雪美と組んでドスファンゴ討伐ができるなんてな」

ちひろ「モンハンでもしていたんですか?」

モバP「いえ、どうぶつの森です」

ちひろ「どうぶつの森に狩り対象の猪が出てきたら驚きだわ」

雪美「……バーチャルで……Pと……狩り……良いかも……」

モバP「ナルガ装備の雪美さんとご一緒とかした日には、網ビキニが気になって討伐に身が入らないことは確かだな」

ちひろ「やっぱりモンハンじゃないか」

雪美「……実際に……着るわけじゃ……ない……」

モバP「だが雪美があの格好をしていると脳内変換するだけで動悸が」 ハイソコマデ

雪美「……どうぶつの森の……話なので……セーフ」 ドウブツノモリッテナンデスカ

モバP「それにしても、一世代新しいゲームだと雪美さんとかの方が上手いというか、反応や飲み込みが早いなあ」

モバP「これでもちょっとゲーム上手いお兄さんくらいの自負はあったんだよな。紗南には負けるが」

ちひろ「お兄さんの名が泣きますね」

ちひろ「あら、雪美ちゃんのアバターはあまり雪美ちゃんっぽくないですね」

雪美「うん……。……誰でもない……架空の存在だから……良い……」

モバP「自分に似せたアバターが攻撃を受けて痛そうにしたり負けて悲しそうにしたりしていると、複雑な気分になるな」

雪美「うん……。……私のようで……私じゃない……。混乱……する」

モバP「それで、番組の企画とかでは分かりやすく本人っぽく作るが、個人的に作ったこれは陽気な南国系という」

ちひろ「人それぞれで良いんじゃないですかね。RPGで勇者一行の名前に自分や友達の名前を付ける付けないがあるように」

モバP「ただ、通信・オンラインゲームでアイドルと遊ぶ時、アバターが本人と似ている子はやっぱり少なくて」

モバP「誰だか分からないことがあるので、少しは似ていた方が安心して話しかけられる気はします」

ちひろ「顔の特徴ワンポイントだけ似せるとかがちょうど良いのかもしれませんね」

雪美「……Pも……アバターが……アフロで……サングラス……。……同じ……陽気」

ちひろ「まずはあなたが自分に似せるところからでは?」

モバP「一理ある。見た目もですがチャットとかも結構言葉足らずになったり上手く喋れなかったりして、別人格みたいだと言われたり」

ちひろ「言葉でなく文字のやり取りだと普段無口な人がおしゃべりになったり、その逆とかも割とありますね」

モバP「雪美さんもゲームでは意外に饒舌でリーダーシップを発揮して、頼もしいお姉さんになります」


雪美「……///」

620

モバP「何かいろいろと落ち着いたら橋を見に行きたい。それも観光名所」

雪美「……橋……?」

モバP「ああ。山口の錦帯橋、熊本の通潤橋、ウェールズのポントカサステ水路橋……とかね」

雪美「それが……Pの……三大橋……?」

モバP「他にも魅力的な橋はたくさんあると思うが、今の気分ではこの辺かなと」

雪美「……じゃあ……連れてって……くれる……?」

モバP「行きてえなあ」チラッ

ちひろ「そういうお仕事を取ってきてください。三つめは外国で世界遺産ですからかなり大変でしょうけど」

雪美「世界遺産……」キラキラ

モバP「ポントカサステは橋の上に狭いが水路があってボートがそこを渡れるんだ。その眺めは空飛ぶ舟に乗っているようだとか……良いねえ」

モバP「錦帯橋は特殊なアーチ構造で、幼い頃に絵本で見た虹の橋を渡るってこういう感覚なのだろうかと教えてくれる」

ちひろ「ロマンチストですね」

モバP「そして通潤橋は、橋の中に水路が通っていて中心に開いた穴から放水をするのが名物です」ドレモイイゾ


雪美「……でも……まずは身近に……宇治橋……行こう……」 ニホンバシハ?

621

モバP「昔学校かテレビかのアンケートでこういう質問をされた気がする」

雪美「……?」

モバP「“家族といっしょに日の入りや日の出をこれまで何回見たことがありますか?”」

雪美「……そんなに……ない……」

モバP「よな? でも確か回数の選択肢があって、多い方が良いような尋ね方だった」

モバP「日の入り、日の出なんてそんなに頻繁に見る機会は無いでしょ、と思ったよ」

雪美「……家から……見える人……なら……いつも……見られる……」

モバP「海を臨む家とか、見える地平線が建物に遮られていない家ならそうだな」

モバP「ただ明け方夕方に、美しく見えるポイントまでわざわざみんなで見に行くことは稀です」

雪美「……Pは……あった……?」

モバP「年に一回くらいは、な。その都度、太陽って意外と動くのが速いんだなと感じる」

モバP「さーて着いたぞ、展望台だ。上まで急ごう、夕日が沈み始める前に」

雪美「……うん……」ギュッ


事務所のちひろ「夕日が綺麗ですねえ」ズズー

622

サッサッサ

ジワーッ

モバP「……では、いただきます」パンッ

カツカツカツカツ カリカリカリ カツカツ

ハフウ

サラサラサラ

コトッ

モバP「ほああ……ごちそうさまでした。やはりお茶漬けは美味いな! 日本に居るって気分になる」

雪美「……お粗末様……でした」

モバP「俺はずっとお茶漬けの素って緑茶をかけるのが正しくて、手間が惜しい時はお湯でも良い、だと思っていた。違ったんだな」

雪美「ふふ……落ち着いて……。お茶も……飲む……?」 イタダクヨ

雪美「待っていて……ね」ニコ

モバP「良いお茶椀に急須、そして小皿にちょっとした浅漬け。何よりたすき掛けした着物姿の雪美さんがそこにいる――贅沢極まれりだよ」


雪美「……P……喜んでくれるから……好き……」

今日はここまで
ちょうしがわるいぜ

623

モバP「不思議な夢を見た」

モバP「俺と雪美さんが霧に包まれた湖の真ん中で、舟に乗っている」

雪美「……二人きり……?」

モバP「いや、船頭さんがいたな。蜻蛉笠を被っていたが、全身体毛で黒く、長い尾があった」

モバP「俺は雪美に問いかけるんだ――“どこまでもいっしょだよな?”と」

雪美「……うん」

モバP「しかし船頭さんが、貴方の乗船券は他の人とは違う特別なものです、と言うんだ」

モバP「そして、霧の中に時々浮かぶ走馬灯のような景色を見ていたら、いつの間にか雪美も船頭さんもいなくなっていた」

雪美「……P……ひとりぼっち……」

モバP「孤独って怖いなあと思うわけです。……まあその後、湖から肌が青白くなって尻尾の生えた雪美さんが顔を出してきたんですがね」

ちひろ「他人の夢の話を詳細に聞くと本当に意味不明ですし、ウンディーネ化した雪美ちゃんとはまたマニアックな」

雪美「……三途の川……銀河鉄道……? と思ったら……」

モバP「とりあえず分かったのは、細野晴臣のTemo De La Adiauoは名曲ということと、雪美さんモンスター娘化路線は確実に性癖が歪みそうってことですかね」


ちひろ「そんな夢を見る時点でもう、ルト姫メドリミドナとか好きそう」

624

モバP「雪美さんは川渡り問題やうそつき村問題、水汲み問題なんかをやったことはあるかい?」

雪美「……多分……ある……」

モバP「少し時間があるから、やってみようか」

雪美「……」コク

――

雪美「……! ……もう……こんな……時間……」

モバP「狼と山羊とキャベツ、三人の内誰か一人が嘘をついている、二つの容器と水だけで量を測る――こういう論理パズルは没頭すると止められなくなる」

雪美「石取りゲームや……マッチ棒パズル……とかも……ね」

モバP「学校の授業とかはたまに息抜きでこういうのをやってくれる先生が良いよな」

雪美「……Pは……先生……?」

モバP「俺は息抜きしかしていないからな」

ちひろ「仕事しろ」

モバP「あっ、学年主任の千川先生。……彼女少しお堅いんだよ」ボソ ソウナノ……?


ちひろ「そんなわけあるかい」

625

モバP「しっとりしていて具のボリュームがあるお菓子ってな~んだ?」

モバP「うん、そうだね。月餅だね。激氣じゃないよ」

ちひろ「どこのギンコだ。……しっとりお菓子って他にもいろいろありそうなものですけど」

菲菲「というわけで、おやつの手作り月餅ダヨー」

「「「わーい!」」」

雪美「……おもち……っぽくはない……。……でも……おいしい……」モグモグ

モバP「月餅は中国のお菓子なんだよな。表面の模様が立体的で艶々で、アップルパイの網目と似ている」

菲菲「今流行りのたべるんごのうたには負けたくないネ!」

ちひろ「対抗意識を燃やす方向そっちですか……」モグモグ

モバP「まあ人生何で火が付くか分からないものです」モグ

モバP「ん、こいつは上等な味に出来たな。中華街に寄ったお土産で買う物にも劣りはしない」

菲菲「多謝茄子! 私も、プロデューサーさんとお菓子作るの楽しいヨー!」

ちひろ「茄子はダメです」

モバP「まあこの月餅自体はほとんど菲菲作で、自分は模様作りで力尽きたヨ」 オイ

ちひろ「それにしても本当、みんなで何でも作ってみるようになってますね」

雪美「誰か……いっしょに……食べてくれる人……いるから……」

モバP「独り生活だと食事なんて手を抜きがちになると思うんで張り合いが必要です」

菲菲「練習を怠ると体が振付を忘れちゃうように、料理も作らないと手が忘れちゃうからネ」

モバP「しかし何だ、こうして見ると大判焼きみたいな和焼き菓子も模様が入ると良いのにな」

菲菲「寄木細工の幾何学模様とか良いかもネー。フードプリントだと立体感までは出ないけどネ」

雪美「ふぇいふぇい……寄木細工……好き……?」

菲菲「木の温もりがあって好きネ。日本の物、いろいろ温もり――ううん、熱盛アル!」

ちひろ「熱盛……?」

菲菲「中でも袴は面白いヨ。チャイナドレスと逆のスリット!」

モバP「逆スリット……言われてみればな」

菲菲「アヤメの衣装や、砕蜂の衣装は凄いネ! 日本恐るべし!」

ちひろ「あれは“袴のような何か”ですからね?」

モバP「スカートならスケベスカートなどとも言われ、見せ紐なんかと組み合わせて見る男性を骨抜きにしますね」


雪美「……P……それを着たら……喜ぶ……?」 マダハヤイデスヨ

626

パクパク

モバP(変装)「あー、屋外で食べる三色団子はどうしてこうも美味いのか」

雪美(変装)「……食べっぷり……良い……」クス

モバP「時代劇で侍さんなんかがこういう茶屋で団子を頬張る様に憧れたからかな」

雪美「……ここ……雰囲気……良いから……ね」

モバP「そうよ。華麗なくのいちでお馴染み、緋毛氈の座席に野点傘――これが寛ぐことこの上ない」

雪美「京都に……よくある……」

モバP「古き日本を感じられるな。ああ、お茶も美味い」ズズー

凛「少しは外出気分に浸れた?」

モバP「おう、何でも屋のおりんじゃねえか。どうした」

凛「時代劇っぽく言わない。……こういうセットだから気持ちは分かるけど」

モバP「お忍びデート気分で忘れそうになるが、ここ自社スタジオなのよね」

凛「あと、二人は変装していてもすぐ分かるよ。本当に街中に紛れ込むなら、スキャンダルとか気をつけないと」


雪美「……私……そんなに……アイドルに……見える……?」 ミエルヨ

627

モバP「……」

雪美「……P……どうしたの……?」

モバP「ん? ああ、少し頭がぼーっとするというか」

ちひろ「体調不良ならすぐ言ってくださいよ? 何かあってからでは遅いんです」

モバP「ごめんなさい」

ちひろ「そう真面目なトーンで謝りますか」

雪美「……P」ナデナデ

モバP「……?」

サラッ コツン

モバP「」

雪美「……ママは……こうして……私の熱を……測る……」

雪美「……熱は……なさそう……だね……」

モバP「……雪美ママ……」


ちひろ「これは相当心が弱っていますかね」

628

ちひろ「プロデューサーさんは最近方向性が迷子ですよね」

モバP「……はい?」

ちひろ「はいじゃない。大丈夫ですかね? 雪美ちゃんとか影響されやすいお年頃なのに」

モバP「……迷子、ですか」

モバP「確かに、迷い過ぎて出られない森の中で、開き直って小屋を建てて住んでいるようなものですが」

乃々「もりくぼも森の中で静かに暮らしたいんですけど……」

モバP「同志かな? まあ、気軽に言うが実際やる場合、インフラが無いとかなりサバイバルな生活になるだろうな」

モバP「森でなくとも、例えば船や飛行機の事故で無人島に流れ着いてそこで助けを待つシチュエーションなんてな」

乃々「……救出される頃には、もりくぼとプロデューサーさんの、子どもが、たくさん……///」

ちひろ「乃々ちゃんは普段どんな読み物を読んでいるのか少し検閲させていただいても?」

モバP「まあまあ、若いんですから。だが、半分ギャグやご都合主義なのは置いといても、野生生活は相当の体力とメンタルがいるだろう」

モバP「乃々、万一そうなっても失意の中で息絶えたりしないために、今の内に体力だけでも付けておこうな」

乃々「あうぅ……頑張ります」 ガンバルンカイ


雪美「……乃々……いっしょに……体力(意味深)……付けよう……」 ナニヲスルキデスカ

629

モバP「犬夜叉の続編アニメが出るとか出ないとか」

菜々「犬夜叉や殺生丸の娘? がメインだとか言われてますね。時間が経つのは早いものですねぇ~」

菜々(殺生丸とりんちゃん、ちょうどプロデューサーと雪美ちゃんが子どもを作るようなイメージですか……)ジーッ

モバP・雪美「……?」

菜々「……///」ボッ

モバP「どうして赤面するんですかね?」

菜々「あっ、何でもありませんよ! キャハッ☆」

モバP「気になるな……しかし犬夜叉というと序盤の頃の話が印象深いですね。逆髪の結羅の存在感」

菜々「最初のボスには惜しいくらいの強敵の風格がありましたねぇ。しかも妖艶で」

モバP「後は奈落が絡まない寄り道エピソード的なものとして桃華――ではなく桃果人の話とか」

菜々「寄り道良いですよね。一話完結の山あり谷ありの妖怪退治道中という感じが伝わってきますから」

モバP「また、たまには現代パートも挟まれて、そこの段々眼を開いていくタタリモッケや人を次々喰らっていく呪いの能面なんかはよく覚えています」

菜々「……能面はトラウマ回でしたよ、本当に」 ネー


雪美「……よく知らない……でも……家の能面は……夜に見れない……」 ブキミナンダヨナ

630

モバP「最近、杏は精力的に仕事をこなしているよな」

杏「……何さ」

モバP「いや、極力働きたくないみたいなスタンスだったのが、一体どういう風の吹き回しかと」

杏「リモート出演とかの在宅の仕事が浸透してきたからね。楽な分、頑張ってやってるだけ」

モバP「本当にそうだろうか?」

モバP「昨今のやる気は、実際は仕事しないで良いとなるとそれはそれで落ち着かないから、だったりしない?」

杏「認めたくないなー。嫌いだった仕事のことが気になっちまうなんて」

モバP「険悪な関係から始まるラブコメみたいだな」

杏「でも、他の子もこういう時だからこそ打ち込めるものを探しているみたいだよ」

モバP「アイドルたちは各々でいろんなインドア部活動を立ち上げてやっているようだな」

モバP「ネコ部、科学部、料理部、飲酒部、キノコ部、コミュ障部、ゲーム部、りんご部、サメ部……中には限界集落的な所もあるようだが」

杏「この前あきらとRAFTってゲームをプレイしたけど、あれってサメ部だったのかあ」

雪美「……Pも……部活……入ろう……。私が……いろいろ……招待する……」


モバP「ちなみに雪美さんはかなり多くの部活を掛け持ちしている」 スゴイナァ

今日はここまで
せっしゃにはむかぬ

631

モバP「このモバP、今でこそ普通の人間ですが」

ちひろ「何を言っとるんだね君は。昔は普通じゃなかったみたいに」

雪美「……Pは……今も……昔も……変わらない……。知ってる……」

ちひろ「雪美ちゃん、よくご存じですね」

雪美「うん……。私と……ちひろさん……どちらも……Pと……幼馴染、みたい……」

モバP「赤ん坊の頃の雪美に指をしゃぶられたとか、小学校の頃家が近所だった年上のちひろさんに懐いていたなんてエピソードはありませんが?」

ちひろ「何ですかその具体的な作り話は」

モバP「普通の人間ですが! 昔は何と! 超能力があったんですよ」

モバP「適当に土を掘ると貝とか芋とかをピンポイントで掘り当ててしまう能力です」

ちひろ「……割と現実的なようなそうでないような」

モバP「個人差あれど、科学では説明できないような変な力って確かにある気がするんです。特に幼い頃は」

ちひろ「今は街にフラッと歩いて行ってアイドルの卵を見つけてくる能力があるでしょう」

モバP「……能力もそれが当たり前だと違和感が無いものですね。失って初めて気づくのかもしれません」


雪美「……普通じゃないのが……普通……」

632

雪美「……お腹……空いた……ね」

モバP「……そうだな」

モバP「……あー」

雪美「……?」

モバP「あのさ……おにぎり、作ってきたんだが……良かったら……食べるか?」

雪美「……食べる……」

モバP「……改めて聞くのも何だが、手作りは大丈夫か? 一応ちひろさんには先に食べてもらっている」

雪美「……? 変な具でも……入れたの……?」

モバP「いや。ラップ越しとはいえ他人が握ったおにぎりはちょっとなって人も世の中にはいると聞いて」

雪美「……Pと……私……今更……そんなこと、気にする……関係じゃない……」

モバP「それなら良かった。はい、竹の皮に包んだ塩おにぎり、沢庵付」

雪美「! ……これ……とても……良い匂い……」

モバP「ついでに買ったばかりの糖質カット中蓋を使って炊いたお米だ」


ちひろ「それをとりあえず使ってみたかっただけか……悪くないですね」モグモグ

633

ガタガタ

モバP「ううむ、この部屋の引き戸は建て付けが良くないのか動きが悪いな」

雪美「……学校の……教室……みたい……」

モバP「日本では引き戸は結構馴染み深いものだろうな。和室の襖や障子の印象が強い」

モバP「また、開き戸はドアの可動域が人の出入りや通行の邪魔になることがあるからな」

雪美「……突然、開いて……歩いている人に……当たると……危ない……ね」

モバP「そうだな。ドアに“ドアの反対側に人がいるかもしれないからゆっくり開けてね”なんて表示がしてあることもよくある」

モバP「あとはまあ、引き戸の良い所? は古いイタズラだが黒板消し落としがやれるところか」

雪美「……?」

モバP「やったことはないか。じゃあ俺の財布でやってみよう」

モバP「……こうやって挟んで固定して、あとは誰かが戸を開けるのを待つだけ」

ガラッ

ポロッ

雪美「……っ」パシッ

雪美「……Pのお財布……ゲット……」

雪美「……はい」

モバP「ありがとう。もし俺の財布でハンドボールを始めたらどうしようかと一瞬思った」

雪美「……そんな意地悪……しない……」

モバP「へいパース」ヒュッ

雪美「っ!」パシッ

雪美「……もう……自分の財布……雑に扱ったら……ダメ……」ハイ

モバP「何てことだ、雪美さんの方が俺より全然精神的に大人じゃないか……参ったな」

雪美「Pの物は……私も、守るべき……物だから……大事にして……?」

モバP「しかも逃げられない」

モバP「……まあこれが黒板消しの場合、頭にピンポイントに落ちることこそそう無いだろうが、やられると不愉快だ」

モバP「それをどこで着想を得たのかクラスの誰かがやり始める。そしてくだらないことだと判明してやめてしまう」

雪美「……その前に……先生から……怒られそう……」

モバP「それでも一度は試してみたがる仕掛け人精神の持ち主がいるんだよな。どうせなら手紙とかにしとけよと思うが」


隠れた麗奈(……早く入って来なさいよッ! 仕掛けた風船が割れないでしょ!)

634

雪美「……」

雪美「……」トコトコ

スタッ

雪美「……あまり……怖くは……ない……」

モバP「雪美さんは平均台を渡るのも苦になさらないんですのね」

雪美「高所の……綱渡りは……無理……」

モバP「それは普通やらないエクストリームの類だ。しかし体育用具や公園の遊具なんかでよく遊ぶことになるアスレチックは楽しいよな」

雪美「……」コク

モバP「まして大きい運動公園のような所だと、木とロープで作られた様々な種類があって、遊び尽くすのに夢中になる」

モバP「家族を連れてそういう所に行って、遊ぶ子どもたちを少しハラハラしながら眺めていられたら、親としても素晴らしい思い出の一日になりそうだ」

雪美「……きっと……幸せな時間……ね……」

雪美「……でも……子どもたち……ということは……、Pは……子ども……二人以上は……欲しい……の……?」

モバP「賑やかだろうし、まずアスレチックはやっぱり仲の良い団体で遊ぶからより楽しいというか」


雪美「分かった……私も……たくさん……欲しいから……がんばる……」 エ?

635

コツコツ

グシャッ

モバP「……」

――

モバP「ああ……どうして上手く行かないんだ……!」

ちひろ「プロデューサーさんが珍しく真剣に悩んでいるように見えますけど」

雪美「P……一体どうしたの……? お仕事……? アイドルのこと……?」

モバP「俺は……どうしても片手で生卵を綺麗に割れないんだ」

「「……」」

ちひろ「それ今悩む必要があることですかね」

モバP「周りの人がみんなできるのに自分だけできないのが何か格好悪く感じてしまって」

雪美「でも……私は……Pのように……リンゴの皮……上手く剥けない……」

雪美「みんな得意不得意……あって良い……」キラキラ

ちひろ「金子みすゞのようなことを言いますね」

ちひろ「でも雪美ちゃんは、片手で卵は割れるんですか?」

雪美「……割れる」

モバP「雪美さんでも割れるのに俺は両手を使ってテンポ悪く割るしかないなんて……」

ちひろ「コツを教われば良いじゃないですか」

モバP「それはさすがにいかんでしょう。マジシャンにお金を払ってタネを教えてもらうようなものです」

ちひろ「大袈裟ですよ。面倒臭いですねえ」

モバP「でもただ頑張ってもどうしようもないことというのはありますね」

モバP「縫い針の穴に糸が通らないこととか、お盆がやけに滑ることとか」

ちひろ「頑張れば何とかなることだと思うんですけど。というかトレーは滑り止めしましょう」

モバP「長く使っているせいか効かなくなっているんですかね。油断するとバランスを崩してどんがらがっしゃんしそうになります」

モバP「思えば、765の天海春香ちゃんがよく転ぶらしいのは靴がツルツルだからなのかもしれませんね」

ちひろ「或いは歩く床がことごとく濡れているか――ってないない」

モバP「はぁ……俺って自分が思っている以上にがさつで不器用なのかなあ」

雪美「……こういう……少し……人間臭い所が……良い……」ダキッ


ちひろ「ジビエみたいに臭みの抜けない人ではありますよね」

636

シーブーゴージーシキシッシー シーブーゴージーシキシッシー

モバP「……」ボーッ

雪美「……」ウツラウツラ

ペロ「……」ウトウト

ポーンポーンポーン デレンデレン! デレンデレン!

「「「っ!!」」」ビクゥ

キンキュウジシンソクホウデス ツヨイユレニケイカイシテクダサイ

カタカタカタカタカタカタカタカタ

モバP(作業用ヘルメット)「………………」

モバP「おうふ、収まった……? ヨシ! あまりこの近辺の震度は大きくなかったようだな」

モバP「さすがは東京、上京してきた子がこっちはよく揺れるねと言うだけのことはある」

モバP「……あれ? 雪美? ペロ?」

雪美&ペロ「……」 ←テーブルの下に隠れている

モバP「よく訓練されているようで何よりだ。三角スポットが良いという説もあるが」

モバP「それにしてもあの音は心臓に悪いなあ」

雪美「……びっくりする……」ノソノソ

ペロ「フニャー」

オサマリマシタネェ フヒ……キノコハブジカ カンベンシテホシインデスケド

モバP「あいつら俺の机の下に屯してよく身動きが取れるなあ」

モバP「速報だが、スマホとかの方だと南国の鳥の威嚇声みたいでまだ良いんだがな」

雪美「でも……いきなり……くる……」

モバP「それはあるな。緊急放送チャイムやエリアメール・緊急速報メールは事後に鳴るからそんなに危機感を煽らない」

ペロ「ミャミャミャミャミャーン♪ ミャミャミャミャミャーン♪」

雪美「……上手……」 ペロッテホントウニネコナノカ?

モバP「音的にも機械的で不安にはなるもののマイルドで寿命は縮まらずに済む」

モバP「というか、不協和音は好きになれない。国民保護サイレンも苦手だ。被災してなくてもトラウマになる」

モバP「ついでに目覚まし時計もジリリリよりはピピピピの方が――あっ、ちひろさん」

ちひろ「席を外している間に少し揺れましたね……大丈夫でした?」 ハイ! ニャーン!


雪美「ちひろさんが……戻ってくると……みんな……安心する……」

637

加蓮「Pさん! 私のこといつも見ていてくれて、ありがとう」

モバP「加蓮……大きくなったなあ」シミジミ

加蓮「あなたの加蓮ちゃんは大きくなりました――ってそれはちょっとまゆっぽいか」

モバP「ハハハ、でも本当に、簡単には消えない力強い火になったと思う」

加蓮「夢を叶えて、そのレッドカーペットの上を歩いている途中だもの。病気とかしていられないよ」

モバP「そう、その意気だ。そして、それでも弱気になる時や闇に囚われそうな時に何らかの形で拠り所になるのが俺の仕事――いや、務めだ」

加蓮「ありがたいけど、Pさんも一緒に歩いているんだからね?」

加蓮「アタシも……私たちも、Pさんが落ち込んでいる時は助けて、慰めてあげるってことを忘れないで?」

モバP「ああ。年上年下、成年未成年関係なく、そこは素直に享受させてもらうとしよう」

モバP「……しかしこうして間近に見ると大きくなった気がする。155cmが160cmくらいになっていないか?」

加蓮「成長期かな? じゃあ、少しはPさんに近づいたってこと?」

モバP「少しはな。まあ俺もまだ伸びるぞ? 加蓮が俺の今現在の位置まで着く頃には俺は更にその先にいる」

加蓮「いやー、身長に限ってはPさんに追いつくことはさすがに無理だと思ってるけどね」


雪美「……アキレスと……亀……?」

今日はここまで
座興は此にてお仕舞

638

ピンポーン

モバP「んぁ…………あ、はぁい! 今出ます!」

パタパタ ガチャ

シーン

モバP「あれぇ……? 誰もいない」

モバP「……??」

まゆ「うふふ……そうやってぼんやりしている姿も可愛いですねぇ」

モバP「ん……まゆか? いつの間に入ってきた」

まゆ「今入ってきたわけじゃありませんよ? でも、その油断している隙間から泥棒猫さんが入ってくるかもしれませんね」

モバP「……戸締りはしているのにどこから……いいや、寝直すか。目が覚めてきたが」

まゆ「……もしかして、夢の中で鳴ったインターホンを聞いて、玄関に出たんでしょうか?」

モバ「夢の続きが見られますように」ファサ

雪美「……」スヤスヤ


モバP「またお隣失礼します」ギシッ マユハホウチプレイデスカ?

639

モバP「うーむ」

晴「……」トッ トッ トッ

モバP「リフティングをする晴、実に滑らかで華麗な足捌きだ」

モバP「そしてキャップとクォーターパンツがこれだけ似合うアイドルもそういねえや」

晴「……」トッ バシュッ

ゴッ

モバP「いてえ」

晴「アハハ、オレを変な目で見ているからだぜ」

モバP「むっ……よし、野球しようぜ! お前ドームな!」

晴「ボールより酷いだろそれ」

モバP「しかし晴、利き足ではない方で正確に俺に当ててくるとはやるやんけ」

晴「どちらからでも打てる練習はするからな」

モバP「キック力は軸足の踏ん張りで生まれる。晴はスイッチの素質があるかもな」 ネーヨ


雪美「……私は……左手を……よく上げる……。千客万来……」 マネキネコダッタカ

640

ちひろ「プロデューサーさん、と輝子ちゃんと雪美ちゃんはネットで何を見ているんですか」

モバP「水着ですね」

輝子・雪美「……」コクコク

ちひろ「それはプロデューサーさんの趣味でしょうか?」

モバP「いえ。夏に向けて予習みたいなもので、こういうの欲しいなと早めに目星を付けておくんですよ」

モバP「そうすれば買い物で待ち時間が減って自由行動の幅が広がります」

輝子「……あっ、これ、いいな……」

モバP「おう、濃紺のフリルビキニか。ラウラ・ボーデヴィッヒみたいになりそうだな」

雪美「ツインテールと……片目眼帯……。蘭子と……ペアに……なれそう」

輝子「ら、蘭子とリアルで、“煩わしい太陽ね”ができるとか、楽しそうだ……」

輝子「でも、ぼっちで行動する時は、こんなの絶対着れないぞ……」

モバP「ナンパされそうだな」

輝子「ナ、ナンパか……フヒヒ、そんなのリア充みたいだ……。でも私は、Pとジメジメリア充したい……」

モバP「じゃあ俺が随伴すればこの水着を着ていただけるんですね?」 クイギミダナ

雪美「……私は……これ……」

モバP「……ビーチバレーで着るようなビキニだな」

ちひろ「もう少し露出少なめなのは無いですかね?」

モバP「ミリオンシアターの子たちは超ビーチバレーやっていましたし多少はね?」

雪美「Pは……どういう水着が……好き……?」

モバP「せやなぁ……縁のラインと内側のツートンカラー、バイカラーはどうだろう。立体感が出るぞ」

モバP「単色や柄物、模様も良いが、これが合う人は他の何よりスポーティーでスタイリッシュに映る」

ちひろ「……いろんな子の水着を見てきた立場特有の意見でしょうか」

モバP「或いはビキニの上にショートパンツも結構男には効きますぞ。泳ぐ時にだけ脱いだりしてな」

雪美「……弱点を……教えてくれるP……優しい……」

モバP「まあ新しいものなら何を着てもがっかりはしないさ。それを言うと何でも良いのかよと思われそうだが、とりあえずあまり過激なやつでなければ良い」

モバP「過激な水着は俺がくたばってしまうのでこういう場では控えてほしい。いつかプライベートでナイトプールにでも行く時なら構わないので」

ちひろ「さらっととんでもないこと企むな」

輝子「あ、敢えて、去年の水着じゃ、ダメか……?」


モバP「……成長してきつくなってたりしたらそれはそれで」b オイ

641

モバP「ちひろさん、突然ですがこの右手を見てください」

雪美(人形サイズ)「……右手が恋人……佐城雪美……です」

ちひろ「なんですかこれわ」

モバP「……上半身だけですが雪美です。結合部がどうなっているかは考えないでください」

ちひろ「……え? 本物?」

雪美「……私は……本物……」フンス

ちひろ「いやいや、周子ちゃんが黒髪になって雪美ちゃんが銀髪になるくらい異常な事態ですよ」

モバP「雪美が僕のことを片思いし過ぎてこうなってしまったようです。何か元より結構ぐいぐい来る性格でして」

雪美「してない……でも……幽体離脱で……Pに……乗り移ったら……こうなった……」

モバP「それで、これはもういっそ僕は左手にカエルくんのパペットを着けて黒子になっても良いですかね?」

雪美「私が……焼肉に……なって……発見……されそう……。違うのに……して……」

――

ちひろ「美鳥の日々なのかパペットマペットなのかどっちかにしろ!」ガタッ エッ? チヒロサン?


ちひろ「あっ夢……失礼。……誰ですか私に怪電波を送り込んだ人は」

642

きらり「Pちゃん! 雪美ちゃん! おはようございます!」

モバP「おっすおっす」 オハヨウ……

きらり「おにゃーしゃー! うぇへへー、そいじゃ今日も行くよー☆ きらりーん、スペシャルクリーンチ!」

ガバッ

モバP「……」ニコニコ

雪美「……迫力……ある……」

きらり「うきゃー☆ こうやってハグハグするとはぴはぴだにぃ!」パッ

モバP「……いやあ、ここまでの力加減で抱き締めてくれる人は他にいないから気持ちが良いな! スタンしてしまうが」

きらり「きらりの100%ぱぅわーを受け止めてくれゆのはPちゃんくらいだよぉ☆ うれすぃ!」

モバP「臂力や斥力など様々な力がぶつかり合って良い勝負しているからな」

雪美「物理法則が……行方不明……」

雪美「私も……がんばる……!」メラメラ ガバッ

モバP「何もきらりに対抗しなくても良いんだぞ? こうされるのは嬉しいが」


きらり「雪美ちゃんのクリンチもきゅんきゅんするにぃ☆」

643 

ゴクゴクゴク

モバP「プハーッ!」

雪美「……P……お酒……?」

モバP「おう雪美よ上がったか。いや、日のある内に自分から酒は飲まないよ。これはオロナミンCとポカリスエットを混ぜたドリンクだ」

雪美「ジョッキいっぱい……甘そう……」

モバP「水分が失われたサウナの後はこれが美味しい」

雪美「P……サウナ……入るの……?」

モバP「ああ、痩せる訳ではないが新陳代謝が良くなったら良いなという目的で入る」

モバP「以前は結構疲労感が来るし、冷水に浸かるのが嫌であまりやりたいと思わなかったが、人間変わるものよな」

雪美「……Pも……大人になったの……ね」

モバP「雪美はサウナはどうだい? さすがに混浴混サウナは無いから一緒に入ることは出来んが」

雪美「……サウナは……まだ……。でも……ジェットバス……好き……」

モバP「雪美さんも充分大人やなあ」


ちひろ「私のスタドリエナドリも冷やして氷入れてジョッキだともっと美味しいんでしょうか……」

644

モバP「雪美さん、いーってしてごらん」

雪美「……いーっ」

モバP「……疑問に思わなかったか? そんなことをさせることに」

雪美「……?」キョトン

モバP「……雪美さんがそんな表情も出来るということに胸がいっぱいになった。結婚しろ」

雪美「……もう……してると……思ってた……」

モバP「その発想は持ち合わせていなかった。確かに、もう俺たちは家族か」

ちひろ「架空結婚とは無敵も良いところだなあ」

モバP「しかし雪美さん、歯が綺麗ですね。キラキラしている」

雪美「……ほめられると……嬉しい……。……Pが……もっと……磨いてくれる……?」

モバP「歯石を取ったりは出来ないが、やりたいならやってみるか」

ちひろ「阿良々木火憐かな? プロデューサーさん、ダメですよ?」

ちひろ「私とのお約束条項第3条、“年少アイドルと歯磨きプレイをやってはいけない”に抵触しますからね」


モバP「年長なら良いのか……というかその条項は初耳なんですが」

645

雪美「……P……今……こんなのが……流行っている……」

モバP「……おっ、これかあ。俺も最近知ったが……自宅での生活感が出るな」

雪美「りあむが……興味津々……。私も……気になる」

モバP「そうか……頭ごなしにやるなとは言えないし、じゃあとりあえず公開はせずにまず俺に見せてもらえるか? そこで検討します」

雪美「……それは……良いの……? いろんな子が……やるかも……」

ちひろ「一体何の悪巧みですか」

モバP「これです」スマホキジ

ちひろ「……」

ちひろ「私とのお約束条項第346条、“ピローチャレンジ等いかがわしい自撮りのやり取りは禁止”」

モバP「秒単位で追加されていませんかね……」

ちひろ「だってこれ、裸を枕やぬいぐるみで隠して撮るようなそれに近いでしょう」

モバP「ある程度隠れているからセーフだと思いますが……いえ、アイドルの枕隠し姿が見たいなんて下心は微塵も」

ちひろ「あるでしょう? というかプロデューサーさんが変なこと言うと、一部のアイドルの子たちは多分乗ってきますよそれ」


雪美「……」キラキラ ホラスデニ1メイ

今日はここまで
京都産業大前

646

モバP「アイアムハングリースパイダー」

雪美「……」

モバP「巣ごもりして獲物が引っかかるのをじっと待っている」

雪美「……」(つ゜-゜)つ

ヒョイ ポスン

モバP「そこにあなたのような美しい蝶々が自ら捕まえられに来るとは。養分を吸い尽くしてやろうか」

雪美「……Pになら……食べられても……いい……」

モバP「ほほう……死にたいから僕を食べてと言ってくるマフィンやアヒルの子みたいだな」

モバP「だが食べられない。俺は雪美さんに恋をしてしまっているからだ」

雪美「……」

モバP「あらしのよるに、というアニメがあったがああいう捕食者が本来の捕食対象に恋をしたり情を抱いてジレンマに葛藤する物語は多い」

モバP「そんな表現に感動する人間というのも独特な生物だと思う。俺と雪美も……」

雪美「……本当は……住む世界が……違う……の……?」 ドウダロウナ


ちひろ「二人だけの世界にはなっていますよね」

647

モバP「畳に座布団、そしてちゃぶ台にお茶――寛ぐね」

雪美「……うん」

モバP「時期的にはもう暑くなってきているので、こうして通気性が良い、い草の座布団は好きよ」

芳乃「幼き頃はー、これより大きな茣蓙の上でー、よくコロコロと転がったものでしてー」

モバP「転がる芳乃とか見る側には究極の癒しになりそうだ」

モバP「もっとも、今の君たちはそんなことをしてはいけないがな」

芳乃・雪美「……?」キラキラ

モバP「姉妹のようにお揃いを着るのはともかく、何でりあむTなんだ。何があった」

芳乃「時にはずぼらになるのも良きものと、そなたが申したのではありませぬかー」

モバP「言ったかなあ? 二人とも普段私服から整然としているからギャップが凄い」

モバP「しかしその格好は俺のリビドーを必要以上に刺激するから、せめて杏のようにスパッツくらいは穿いてください」

雪美「……はいてる……短いの……」

モバP「それとそのハートロックのチョーカーも、何か俺の物だと隷属させているような感じがして興奮いや何でもない」


雪美「Pも……着けてみる……? ……いっしょに……堕ちよう……」 オチマセン!

648

ガチャ

モバP「おはようございます」

ちひろ「あっ、おはようございます」

――

モバP「お疲れ様でした」

ちひろ「もうこんな時間ですか。お疲れ様でした」

パタン

ちひろ「……」

――

ちひろ「……プロデューサーさん、最近淡泊じゃありませんか?」

モバP「アイドルたちとは大したことは無くても接して話す機会を作っていますよ」

ちひろ「じゃあ、私には挨拶や事務的なこと以外では特に話をしなくても良いと?」

モバP「おっと、思わぬ所でデレ期入りましたか。ちひろさんも寂しいんですね」ニヤ

ちひろ「アシスタントへの気遣いが少し足りないのは相変わらずですね」

モバP「でもこういう雑談的なことをこちらから振ってばかりだと迷惑だったりしませんか?」

ちひろ「いいえ。……何だか慣れてしまって、やらなくなるとリズムが狂ってしまうというか」

モバP「……すいません。今後はもっと構いますので」

ちひろ「過度にならない程度にお願いしますね」

モバP「はい。自分もちひろさんに構ってもらうためだけにログインだってしますよ」

ちひろ「謎の専門用語を使わないでください。ログボと称していろいろ配ったりしますけども」

モバP「でもせっかくログインしたなら、ちひろさんからいろいろな話題で話しかけられたいものです」

ちひろ「フリートークはそんなに得意じゃないんですよね……声をかけるよりかけられたい、でないと寂しくなる結構面倒な性格です」

モバP「寂しくて夜中一人でノートに“プロデューサーさん”とびっしり書き込んでいたりしませんよね?」

ちひろ「どんな深刻な精神状態に追い詰められているんですかそれは」

雪美「……」ヒョコッ

ちひろ「あっ、雪美ちゃん。そこにいたんですか。聞かれていたとは気づかずに少し情けない所を」

雪美「……ちひろさん……一人で……悩まないで……」ギュッ

ちひろ「そんなに心配してもらうようなことでは……。でも、はい。ありがとうございます」


モバP「雪美は心理的距離の隙間をちょうど埋めてくれるなあ」

649

モバP「ちひろさんと言えば皆さん、どんなポーズを思い浮かべます?」

雪美「……ポーズ……?」

モバP「私はね、あのいつもの両手を合わせる姿を思い浮かべます」

雪美「……南無……」

モバP「お仏壇に手を合わせるのとは違うぞ。言うならあれはおねんねのポーズだ」

雪美「……おねんね……なるほど……」

ちひろ「はーい! みんな、おねんねしましょうねー、ってちゃうわ!」

モバP「言うこと聞かないとおねんね(昏倒)させられそうです」

ちひろ「そんなことしませんよ」ニッコリ

モバP「あっ、私が悪かったので拳骨を見せるのはやめてください」

モバP「ところでちひろさん、あのポーズってどんな意味があるんですか?」

ちひろ「えっ? 意味……と言われましても」

モバP「もしかして媚び……というやつですか? 営業スマイル、ぶりっ子ポーズ的な」

ちひろ「言い方が気に食わないですけど否定もできませんね……」

ちひろ「プロデューサーさんはある意味で顧客ですからね。媚びも売りましょう」

モバP「あとはコスプレ趣味の効果で、無意識の内にサービス精神や承認欲求で体が動いてしまうとか?」

ちひろ「……微妙に見透かしたようなことを言うのはその辺にしておいてもらえます?」

モバP「それと、手を合わせるのは手もみの意味もあって、何かお願いしたい時の態度とか」

ちひろ「わかった、この話はやめよう。はいさい、やめやめ」

雪美「私も……やってみる……」ポンッ ←おねんねのポーズ

モバP「……いい」

ちひろ「良いですねえ。というか、このくらいのジェスチャーは意味とかを一々考えなくたって誰でも自然とやるものじゃないですか?」

雪美「……幼稚園……くらいの……時とか……ね」

モバP「はい。ただそこで少々イタくなってしまうかどうかは年齢に依るでしょうね」

ちひろ「イタくないもん! ……うわキツ」

モバP「自分で言わないでくださいよ。我々は今のありのままのちひろさんが好きですので」

雪美「……うん」

ちひろ「まあ、変に優しかったり運営の手先だったりする私もいますからねえ」


雪美「……うん?」

650

モバP「雪美さんよ、事務所に教科書を忘れた子がいるのでちょっとひとっ走り届けてくらぁ」

モバP「留守をお願いできるかい?」

雪美「……分かった」

モバP「頼みましたよ。俺のイスに座っていてくれるだけで良いから」

ちひろ「私がいるんですけど」

――

prrrr prrrr

ガチャ

雪美「……はい……こちら……346プロダクション……」

ちひろ「えっ、電話応対するんですか?」

雪美「……? ……ん……分かった……。“エリアFelix”に、転送する……日が落ちるまでに……帰って……」ピッ

ちひろ「……誰ですか?」

雪美「……ペロ……。集会が……あるって……」


ちひろ「猫から電話がかかってくるとは……普通だな!(錯乱)」

651

モバP「いちっ、にっ、さんっ、しっ」

雪美「……っ、……っ、……っ」

慶「アイドルのみんなと一緒に、プロデューサーさんもトレーニングやるんですね」

モバP「ふぅ……プロデューサーとして、離れた場所から見ているだけではやっぱり嫌でしてね」

モバP「アイドルと対等に向き合い、理解し絆を深めるにはやっぱり同じメニューくらいはこなせないといけません」

慶「素敵ですね! でもデスクワークとかは後回しで良いんですか?」

モバP「自分の場合、適度な運動もしないと結局仕事の効率が落ちてしまうのでこれで良いんです。……嘘です。良くはない」

雪美「ふぅ……P……腹筋……速い……。……腕立て伏せも……やる……?」

モバP「ああ。乗るか?」 ウン

慶「えっ、乗せるんですか? 背中に?」

モバP「慶さんもどうです? なかなか良い負荷になりますよ」クイッ

慶「そんな……不覚にも、かっこいいって思っちゃいます……///」

雪美「……男らしい……背中……堪能……しよう……」


モバP「こちらからすれば女性の背中だって魅力です。乗りたいとか変な意味ではなく」

652

ちとせ「ねぇ、あなたの血が飲みたい」

モバP「ちとせよ、それは戯れでなく? ……君の臓物が食べたい的なベストセラーが以前あったが」

千夜「それは君の膵臓をたべたい、です。馬鹿め」

モバP「あっ……何故に臓物で覚えているのか……面目ない」

モバP「それはそうと、血か……せやな、他ならぬちとせの頼みなら仕方ない。一思いに吸ってくれ」

千夜「お前の血など飲んだらお嬢様が食中毒を起こしてしまう」

ちとせ「……これだけの精気の塊だもの。吸えば、私の寿命を延ばすことだってできるかもしれないよ?」ガシッ

モバP「そうだと良いが……両手で真正面から俺を捕まえて、顔を寄せる――キスならロマンチックだな」

ちとせ「直接狙える距離だね。でもしない。簡単に手に入ってはつまらない――と、誘い受けしてみたり」

千夜「近いですお嬢様。とりあえず経口はやめましょう」

雪美「……私の……Pに……手を出すのは……誰……?」ゴゴゴゴ

モバP「雪美さん!?」

ちとせ「……! ……ふふ」ゴッ

雪美「……」ゴゴゴゴゴ

千夜「あ、あの……」

雪美「……私も……手伝う……。押さえておけば……良い……?」

ちとせ「……ふふふ。そうだね、このまま脱がしてしまおっか」

モバP「いや、ちとせの頼みは聞きたいが、ここで放送できない展開をやるのはダメだぞ」

千夜「……これは放送ではない。それにどんないかがわしいことを想定した?」

モバP「この口から言わせる気か? とりあえずハグくらいで良しとしとくれ」

千夜「はぁ……。そして一触即発と思いきや……お前の周囲はおかしなことだらけです」

モバP「それは俺も思う。案外気が合うな」

千夜「お前に言われたくありません。……全く、何を考えているのだか」

ちとせ「じゃあ千夜ちゃんがまずハグしてもらったら? そうすれば少しは理解できるかも? その後は私ね。効能を期待するよ?」

雪美「……Pの存在は……天然温泉……のようなもの……。浸かれば……極楽……」

千夜「不要です。仮初めの理解なんてできたところで……」

モバP「大したことじゃない」ギューッ ナデナデ

千夜「……力加減がなっていない。これをお嬢様にさせる訳にはいきません。やり直し!」エー


ちとせ「うーん、私の番が来る前に浄化されてしまいそう」

今日はここまで
通販共和国

653

ヒラヒラ

雪美「……!」

モバP「お、てふてふ――ちょうちょちょうちょ菜の葉に止まれが飛んでいるな」

ヒラヒラ ヒラヒラ

雪美「……」ジッ

モバP「ここの家の庭の花壇とかが住処かな」

ヒラヒラ スッ

モバP「フェンスの向こうに隠れてしまった」

雪美「……P……?」

モバP「おう、いきなりこっちに向き直られると、不意に目が合って恋に落ちるわ」

雪美「……Pと……見つめ合うたび……新しく……恋に……落ちる……」

モバP「常に新鮮だな。……しかし、雪美は何でもじっと見つめる所が猫っぽいなと思う」

モバP「対して俺は結構顔を動かしてあちらこちら見るから鳥っぽいのかもしれない」


雪美「……Pが……カラスで……私が……黒猫……かも」 ニアウナ

654

\キュルルルル/ \ギュイーン/ \パン! パン! パン!/

モバP「画面分割動画って良いよな。一回を何度も見直す楽しみがあるし、画面が賑やかだ」

紗南「そういうものかな? あたしは一度で全体的に把握するよ」

ありす「観戦だと、こういう時にどこを見て良いか分からなくなります。視野と処理能力を大きくしたいです」

雪美「……あ……シャッターが……開いた……」

モバP「よっしゃ、もろたで工藤!」

ありす「工藤って誰ですか。忍さんですか?」 マジメカ

紗南「でもあたしの方が近いー。……ってチャージか。普通」

モバP「エビ天そばよりは良いじゃないか。しゃーない、切り替えて行く」

雪美「……オールなら……最高……だったね……あっ(ハイドラパーツが手に入る音)」

モバP「おっ? しかしシャッターでオールに遭遇した日にはドーパミンフィーバーだな。出たことが無いが」

ありす「数あるイベントの中からシャッターを引いて、そこでまた数あるアイテムの内のレアを引ける確率は1%もあるかどうか……」

紗南「うわっ! こんな絶妙な所に地雷置いたの誰!?」 イイエ ……チガウ オレカモ Pサンカ!


ちひろ「プロデューサーさんにもやっとシティトライアルで遊ぶ友達ができたんですね」 マエカライマシタヨ!

655

雪美「……」

モバP「おや? 今日は何だか距離を感じるな」

ちひろ「何をしでかしたんですか? 白状しなさいな」

モバP「雪美と特に何かをしていた訳ではないですが」

雪美「……P……昨日……男の人と……仲良さそうに……歩いていた……」

由里子「」ガタッ

ちひろ「アイドルの子たちをとっかえひっかえするだけでは飽き足らず、一般人それも男子に手を出しましたか」

モバP「男友達の一人や二人いたって良いでしょう?」

雪美「……年下に……見えた……。ちょっと……かっこいい……人……」

由里子「うーむ、プロデューサーさん、思ったよりもやり手だじぇ」

ちひろ「雪美ちゃんが言うくらいですからよほどイチャイチャしていたんですかね?」

雪美「……兄弟みたいにも……見えた……。でも……変な感じ……」

モバP「確かに男の子に、アイドルの素質的な意味で良いな、という興味を抱くことはあるが、普段から接している俺がオトコスキーに走るように見える?」

雪美・由里子・ちひろ「……」 ヒテイシテクレヨ

由里子「まあ、分からないじぇ? 自分は違うと思っていても素質があったり」

モバP「由里子はまずナマモノは守備範囲から外れていたはずでは?」

由里子「プロデューサーさんに関しては違うって。それに、普通の男同士の友情・信頼関係だって美しいものだじぇ」

雪美「……私や……みんなには……見せない……表情……だった……」

モバP「あー、変な誤解が拡大する前に白状しますが、昨日は新田くんの所用に付き合っていたんです」

ちひろ「新田って……美波ちゃんの?」

モバP「はい。美波の繋がりで仲良くなったというか。他のアイドルの兄弟姉妹たちともそういうことはよくあります」

雪美「……そうだったの……P……取られたかと……思った……」

モバP「何人たりとも俺の心までは奪えんさ」

ちひろ「体だけでも堕ちてしまったら問題ですけどね」

由里子「しかし、くん呼びとは男性アイドル同士みたい……にゅふふ」

モバP「新田くん、雪美が言うようにかっこいいからな。それでいて少年的というか、弟っぽさもあるというか」

ちひろ「揺らいでませんよね? しかし、伊達に美波ちゃんがお姉さんやってないですし、一緒に帰ったら噂とかされそうな感じは分かります」

モバP「藤崎詩織ばりの意見。まあ、打ち解けた男同士でないと出来ない話もあるので特別ではあるかもしれないですね」


雪美「私が……もし……男の子だったら……Pは……」 イイッスヨ? イイノカヨ

656

モバP「いつか今の状態から発展して、千夜にお前様と呼ばれてみたい僕です」

ちひろ「どう親密になればそんなルートに入れるんだっていう」

ちひろ「しかし、お前様って何だか貴様やお前よりは格式が高い語感がありますよね」

雪美「……ねーねー……おまえさまー……」

モバP「……!」

雪美「……おまえさま……?」ピトッ

モバP「その微妙に芳乃的な馴れ馴れしさのあるお前様――ちょっとEXボイスにさせてもらって良いですか?」タラー

ちひろ「涎を垂らしながら言わないでください」

雪美「……そんなに……良かった……?」

モバP「すまん……雪美にお前様と呼ばれるシチュエーションがありありとイメージされてしまって」フキフキ

モバP「では目を閉じているから、そのまま自由に続けてみてくれないか」 ワカッタ……

雪美「……おまえさま…………夜伽に……参りました……」

モバP「うんうん、良いぞ……夜伽な……夜伽!?」


ちひろ「夜伽なんて一般の小学生が使う言葉じゃないです」

657

モバP「まだ六月だというのに真夏のように暑いねい。梅雨入りが遅れて文字通り水無月にならないで良かったよ」

雪美「……」ボーッ

モバP「雪美、大丈夫か?」

雪美「……」コク

モバP「うーん、虚ろな表情が何だかクール。つい見惚れて顔を凝視してしまうぞ」

雪美「……」コク

モバP「反応も虚ろか。暑さで体力を消耗しないように低電力モードになっているみたいだ」

雪美「……」コク

モバP「……この流れで何か凄いお願いをしても頷いてくれるだろうか」

モバP「今日一日水着で過ごしてみるってのはどうだ?」

雪美「……」コク

モバP「良いのか……やったぜ」

モバP「まあ水に入るんでもなければ水着より通気性の良い薄着で過ごす方が良いんだがな」

雪美「……」コク

モバP「しかしこれはこれで面白いな。いたずらするぞー?」

雪美「……」コク

ムニッ

雪美「……」ピクッ

モバP「…………おお……雪美のもちもちした頬」

雪美「……(抗議の目)」

モバP「おでこちゃん」サラッ

雪美「……♪」

モバP「額は良いのか」

雪美「……Pの手……ひんやり……気持ちいい……」

モバP「クールタオルを解禁したからな。持ち歩いて時々こうやって触るから」

雪美「……私にも……貸して……?」

モバP「どうぞ。まだ下ろし立てだから肌触りも良いぞ」

雪美「……♪」


ちひろ「クーラーをもっと利かせても良いのでは?(裕福な発想)」

658

モバP「よくあるハプニング」

モバP「健全DVDだと思って再生したらディスクがR-18の物と入れ替わっていた」

ちひろ「ないでしょう(直球)」

モバP「ないですかね?」

ちひろ「プロデューサーさんはそういうことしばしばやっているんですか?」

モバP「自分はないですね。ケースと中身が一致していないと何となく気持ちが悪いので、見たり貸したりする際は確認します」

ちひろ「ないのによくあるとか言う……まず、混ざらないはずですからね」

モバP「いたずらですり替えられることはあっても再生前に完封するので、一度そういう定番ドッキリ的場面に出くわしてみたいです」

ちひろ「プロデューサーさんの場合、仕掛ける側のような……というかそういう物をお持ちなんですか?」

モバP「水着グラビアくらいのマイルドなものか、小梅が持ち込んだホラーとかだけですね」

モバP「未成年や小学生だって家に来ますから変な物が見つかったら怒られます」

雪美「……P……今日は……何を見る……?」

モバP「今日はアイドルのグラビア鑑賞会でもしようか。今後のお仕事の参考として」


ちひろ「それでも充分常軌を逸しているような気はします」

659

モバP「買い物に行くと種類豊富なサラダに目が行く」

モバP「女性は男性に比べてサラダが好きなイメージがあるがどうだろう」

みく「健康志向で食べるには良いと思うけど、好きかと言われると、ぼちぼちだにゃ」

雪美「……野菜にも……よる……」

モバP「俺はポテトサラダならいくらでも食べられるんだがな」

みく「じゃがいもはどちらかと言うと炭水化物でご飯の方に近いからね」

モバP「野菜らしい野菜の栄養が必要、それは分かってはいるが日頃つい手を抜きがちだ」

モバP「特に春菊とかセロリとか独特の苦みや食感がある野菜は、親離れして自炊し始めると食べなくなる」

みく「Pチャンは偏るもんね」 サカナハ? サカナノハナシハヤメルニャ

モバP「で、その代わりにニラをよく買うようになった。葉物では悪くない風味だし調理も簡単で」

雪美「スタミナ……付きそう……」

モバP「困ったらニラ玉、豚ニラ、餃子、麻婆豆腐、鍋――と、食欲の湧く料理にしやすい」

みく「ほうれん草でバターソテーとか、ピーマンで青椒肉絲も簡単だよ?」

モバP「それでもニラを使う料理の引き出し・レパートリーの方が多いなあ」

雪美「ピーマン……トマト……今は……いろんな色……ある」

みく「ピーマンの色違いはパプリカだね。サラダにもよく入ってるにゃ」

モバP「パプリカな、ピーマンだと思って食べると甘みがあって驚いたのを覚えている」

雪美「……甘い野菜も……多い……ね」

モバP「そうだな。昔はピーマンが嫌いという子が多かったそうだ。今よりも苦かったから」

雪美「……良薬……口に苦し……?」

モバP「美味しい物は体に良くないとか言われるし、苦い方が体には良いのかしら」

モバP「……考えれば考えるほど食事管理って大変だよな。体を見せるモデルやアイドルは余計にだろう」

みく「でも、ヘルシーでストイックな野菜だけのサラダより、ささみくらいは入ってる方が喜べるよ」

モバP「野菜の中にちょっとした肉、良いよな」

モバP「しかしやっぱり料理は何でも、誰かに作ってもらうか、作ってあげるのが良い」

みく「それはあるよね」

モバP「上げ膳据え膳が楽、と言うと嫌味だが、人のための料理って大抵何でも美味しくなる」

雪美「……おいしかった……とか……また食べたい……って一言が……うれしい……」


みく「雪美チャンは将来有望な嫁さんになりそうだにゃあ……」

660

モバP「……」ポチポチ

モバP「ん、こんなもんかな」

奈緒「おっ、Pさんの壁紙、桐須真冬になっているんだな」

モバP「うぃっ!? 何だにゃおか……失礼、噛みました」

奈緒「自分から言う時点でわざとらしいんだけど?」

モバP「うふふ、良いじゃあないですか、にゃおにゃお……じゃなくて、にゃおは一目で分かるんだな」

奈緒「奈緒に戻せ。……ぼくたちは勉強ができないの美人先生だろ?」

モバP「そ。で、おめめぱっちりでデフォルトが仏頂面で、でもポンコツ属性なところがなかなか新しくて」

奈緒「Pさんはいろんなタイプの女性に興味を持つよな」

モバP「持たなかったら俺の頭にPは付いてないぜ」

奈緒「だろうな。でもそんな移り気で雪美一筋だって言えるのか?」

モバP「俺と雪美はソウルメイトだからね。それはそれ、これはこれで片付くのさ」

奈緒「でも、そっちで桐須真冬のように目をぱっちり開けようとしているぞ?」 エッ


雪美「……んん……目を丸くするの……難しい……」

今日はここまで
見ざる言わざるてっぺんの天ざる

661

みく「……」

モバP「……」

みく「みく……言ったよね?」

みく「カレーの隠し味にケチャップは邪道だと」

モバP「言いました。それを黙って味見までさせました」

モバP「でもカレーにデミグラスソースは好相性。そのデミと似たような成分だから合うと思って試しているんだが」

みく「カレーが勿体無いよ。そんなに元が一味足りないの?」

モバP「上等なものじゃないからな。そのまま食べるのに飽きたら手を加えてナンボの味だろう」

みく「でもそこにピクルスまで入れるってどうなの」

モバP「カレーはちょっとトマトっ気と酸味が入った方が美味しいんだもん」

みく「……ちょっとPチャンはいい大人として残念というか、貫禄が保てるか不安になるにゃ」

モバP「そこまで言うことないだろ。みくが食わず嫌いのサバカレーだって食べてみればきっと美味いんだから」

モバP・みく「……」グググググ


雪美「Pとみく……また組み合ってる……」

662

幸子「ふぅ……」

モバP「おや、幸子」

雪美「……おはよう」

幸子「プロデューサーさんに雪美さん、おはようございます。相変わらずツーマンセルで行動ですか?」

モバP「二人でとてもいい汗をかいたので、シャワーでも浴びようかとね」

雪美「……幸子……さわやか……」スンスン

幸子「ボクが先にシャワーをいただきましたよ」

モバP「……ジャージ姿に首タオル、ほんのり上気した顔――美人だね」

幸子「なっ……! そんなカワイイなんて……」

モバP「自主トレも朝一でアスリートみたいだな。見たぞ? 低酸素マスクまで着けて」

幸子「そ、それは見間違いかと。ボクはそこまで追い込むトレーニングは(あまり)しませんからね?」

モバP「ん? 今、あまりって聞こえたような」

雪美「……幸子……マッターホルンにでも……登るの……?」 ノボリマセンヨ


モバP「幸子には既にサッチーホルンが二つそびえているからな」 ……ツノ?

663

モバP「……」ビリッ

ザザーッ

モバP「……」モッシャモッシャ

ちひろ「豪快……というか行儀を放り投げたような食べ方しますね」

モバP「……見たな……!」

ちひろ「見られてないとでも?」

雪美「……」モクモク

ちひろ「雪美ちゃんはあんなに慎ましく食べているのに。……それはそうと、餅太郎ですか」

モバP「はい。揚げ餅の小さいのがゴロゴロ、そこにピーナッツが一粒入ってたった10円の小袋駄菓子です」

ちひろ「駄菓子好きですねえ本当に」

雪美「……意味深な……一粒の……ピーナッツ」

モバP「何かレアな感じがして意味も無く最後まで残しておきたくなったりもするな」

ちひろ「お茶漬けのあられと同じで、食べられる乾燥剤的な役割なんでしょうね」

雪美「……ピーナッツ……すごい……」ポリポリ

ちひろ「それにしても、キャラメルコーンや柿の種でもピーナッツはしっかり脇を固めてくれますね」

モバP「その柿の種のピーナッツは量が減るんですよね……まあ自分はそんなに気になりませんが」

ちひろ「私はあれが黄金比だと思ってたので残念ですよ」

雪美「ちひろさんは……ナッツ……好き……?」

ちひろ「お酒のおつまみにちょうど良くて好きですね」

モバP「ピスタチオやジャイアントコーン、アーモンド、カシューナッツ、マカダミアナッツ」

ちひろ「食べたくなってきます」

雪美「……Pは……豆菓子……好き……」

モバP「雀の卵とかいか豆とか、あとは味ごのみの海苔醤油豆。勿論えびせんやピーナッツあられや揚げ餅も好きですが」

ちひろ「こっちはお酒よりお茶請けに合う印象ですよね」

モバP「そして雪美は歌舞伎揚げが好きだな? またの名をぼんち揚げや亀せんやどんど揚げ」

雪美「……地域によって……名前……違う……」

ちひろ「何だか雪美ちゃんの好みは本来よりプロデューサーさんの影響が出てきてそうですね」

モバP「家の、親の味を覚えるのは将来の糧になりますが、それを自分が阻害していないかはちと不安です」


雪美「……Pの味は……深い……」ウットリ ナンノアジデスカネエ

664

モバP「片手で生卵を割ろうと思えば割れるようになったがやっぱり綺麗には行かない僕です」

ちひろ「まだやってたんですか」

モバP「気づけば最近、家ではホットケーキばかり作っている気がします」

ちひろ「Oh! hot cake!」

モバP「ホットケーキって和製英語とは言いきれませんが外国ではあまり使われないようですね」

雪美「パンケーキ……」

ちひろ「冷静なツッコミをありがとうございます。しかし何故にまたホットケーキなんですか?」

モバP「魔女の宅急便のキキの気持ちになるですよしてみたかったとです」

モバP「というか卵を買い過ぎました。意外と保存が利きますし、たんぱく質が取れるので良いんですがね」

雪美「……ホットケーキ……好き。……焦げてなければ……」

モバP「俺って気楽ね。今にホットケーキみたいに真ん丸くなったらどうしよう」

ちひろ「その前に飽きるんじゃないですかね……」

モバP「しかし、子どもの頃は卵って、生物の命を直接的に奪わない至高の食品だと思っていました」


ちひろ「無精卵、命になるはずの物をいただく、ですか。変わった思考ですね」

665

モバP「たまには思春期男子の妄想でも」

モバP「学校の美術部……良いですよね」

ちひろ「部室は放課後の美術室とかになるんでしょうか? 画材とかの独特のにおいがしそうです」

モバP「そこでたまにヌードデッサン会が開かれるという噂」

ちひろ「一気に現実味がログアウトしましたね」

モバP「ここでそんなことをやっているのか、と思うと悶々として授業で絵筆がちっとも進みませんでした」

ちひろ「早く課題を提出してあげないと先生が困りそう」

雪美「……絵画の授業……時間に……追われる……」

ちひろ「細かくじっくり作業しようとすると時間が足りなく感じるんですよね、わかりみです」

モバP「やあ雪美、ヌードデッサンに興味はあるかい?」

雪美「……描きたい……?」

ちひろ「そんな全力で逮捕されに行くことないんじゃないですかね」

モバP「芸術ですので。まあ、書こうと思えば実物を見なくても想像で書けますが」 ダメデスカラネ?


雪美「……P……何でも……抽象画に……しがち……」 ソレモソレデドウカト

666

モバP「……」

雪美「……」チョコン

モバP「……」

雪美「……?」

モバP「……」

雪美「……P……いつもと……違う……?」

モバP「……ん? そうかな?」

雪美「……」

雪美「……気のせい……かも……」

モバP「きっとそうだと思うよ」

雪美「……」

――ザザッ

雪美「……!?」

――ザーッ

ちひろ「雪美ちゃん雪美ちゃん」

雪美「……ん……ちひろ……さん……?」

ちひろ「こんな所で寝ていると体調を悪くするかもしれませんよ?」

雪美「えっ……あれ……? P……は……?」

ちひろ「……」

雪美「……ひざ……借りていたのに……」

ちひろ「……気持ちは分かりますけど……いえ、仕方がありませんよね」

ちひろ「プロデューサーさんは急なお仕事が入ったので、少しの間ここを留守にするそうです」

雪美「……急な話……本当……?」

ちひろ「はい」

雪美「……ありがとう……」ピョン トコトコ

キィ パタン

ちひろ「……雪美ちゃん」

――

雪美「……」

ガチャ

マキノ「……はぁ……憂鬱ね」

雪美「……あっ」

マキノ「……あら、雪美」

雪美「……マキノ……」

マキノ「プロデューサーのことは残念だったわね」

雪美「……え……?」

マキノ「ここに来たということは、これ――渡しても良いのでしょう?」チャリッ

雪美「……666号室の……カギ……?」

雪美「……!」ゾワッ

マキノ「私はこの件については何も関知しないわ。ただこれを“預かって”いただけ」

マキノ「真実を知りたければ……自分でその扉を開けなさい」ハイ

雪美「……」ギュッ

マキノ「……世界は情報で出来ている。例え答えに後悔しても、その先の受け止め方が大切よ」

雪美「……」コク

――

ガチャガチャ キィ

雪美「……っ」

雪美「赤い……部屋……」

――ザザッ

雪美「……Pの……気配……」

雪美「……違う……!」

雪美「……ここに……Pの……頭……いっぱい……積まれてる……」

――ザーッ

雪美「……これ……まだ……新しい……」

雪美「……P……壊れた……の……?」ジワッ

雪美「……うう……P……」ポロポロ

――ザーーーーーーーーッ

プツン

――

モバP「うーむ、最近少し頭痛がするというか、頭がざわつく気がするんですよね」

ちひろ「年季が入っていますからね」

モバP「まだ若いですよ。しかし急なメンテナンス作業とは」

ガチャ

雪美「……」

モバP「お! おはよう雪美ちゃん」

雪美「……」ジッ

モバP「……どうしたの? 心なしか、目が赤いね?」

雪美「……おはよう……」タラッ

モバP「!!」

――ザザザッ

雪美「……どうしたの……?」

モバP「……え? いや、何でもないよ? 気のせいかな、何か目から血が流れたような……」

雪美「……そんなこと……あるわけ……ない……」 ソウダヨネ!


ちひろ「……何ですかね、この不吉な締めは」

667

モバP「何かお腹に入れないとって時にとりあえず買うもの」

雪美「……」ハムハム

モバP「雪美さんはランチパックのいちごジャム」

ちひろ「ランチパックはいちごシリーズだけでもかなり種類があるんですよねえ」

みちる「フジパンのスナックサンドとヤマザキのランチパック、両方売っていたらどちらを買うか迷いますね!」

雪美「……Pは……ふっくらバーガー……」

モバP「……」ガブッ

ちひろ「これも種類が多いですし、他の包み紙のバーガーよりボリュームがあるんですよね」

みちる「豪快に齧りつくのがこれほど幸せな食べ物はなかなかないと思いますね!」

雪美「……このサイズは……口が……大きくないと……難しい……」

ちひろ「プロデューサーさんはリンゴくらいのサイズなら丸ごと口に入りますから良いですよね」

モバP「一般的なイメージのリンゴの大きさだとさすがに顎が外れかねないんですが」

あかり「……プロデューサーさん、本当はすごい人だったんご……!」


モバP「いや、凄いの基準そこなのか?」

おまけ13

ちひろ「プロデューサーさんは絵は“描く”んじゃなくて“書く”タイプなんですね」

モバP「そうなんですよ。僕にとっては絵画とは文字みたいなものでして。……冗談ですけどね」

雪美「……描く……という漢字は……猫に……似ている……」

モバP「昔から写生対象として一番ポピュラーなものが猫だったのかもな」

雪美「……本当……?」 シンジチャダメデスヨ


おまけ14

モバP「666は獣の数字と言いますね」

ちひろ「ラッキーナンバーは7、末広がりな8、久と似て縁起の良い9」

モバP「寿限無の長“久”命の長助も演技の良い言葉の羅列でしたっけね」

雪美「三つ揃うと……良いことが……」

ちひろ「ジャンジャンバリバリなお店に三つ揃えに行くことはあまり良くはありませんね」

モバP「とにかく奇数が確変なんで666よりは逆さの999の方が嬉しいですね」 

ちひろ「行きもしないのに知ってるんですね。よくあります」 ハイ

ちひろ「で、それはさておき、さっきのホラー茶番は何だったんです?」 オモイツキデス

今日はここまで
ここまでにしといたるわ

668

雪美「……♪」

モバP「……雪美様、気分は如何でしょうか」

雪美「……良好……」

モバP「本日の膝をあなたは評価しますか? 1.大いに評価する。2.ある程度評価する。3.――」

雪美「……2……」

ちひろ「世論調査の聞き方ですね……」

ちひろ「しかし、相変わらず尻に敷かれていますね、文字通り」

モバP「雪美がそんな恐妻家な風に見えますかね?」

ちひろ「そうは言いませんけど、プロデューサーさんが結構頼りなくて雪美ちゃんがしっかりしているように見えるので」

雪美「……ダメな人ほど……私でないと……ってなる……」

モバP「雪美は意外と頼られたい性格で母性が強いタイプなのかな。りあむが言っていて妙に納得したが」

ちひろ「ダメな男に捕まらないようにしないといけませんね。現在進行形で」

雪美「……たまに……かっこいい所……見つけると……捕まえられて……いたくなる……」


ちひろ「懐の中にいるのに懐が大きいなあ」

669

ペロ「ふにゃぐー」スリスリゴロゴロ

モバP「あっ、ちょっとペロさんいけないわ雪美さんが見ているのにっ」ナデナデ

雪美「……ふふ……お腹に乗って……嬉しそう……」

ペロ「んぎゃあ」

モバP「おお、腹が減ったか? お魚でもくわえてきてあげようか?」

雪美「……泥棒は……ダメ……」

モバP「きちんと買ってからくわえてくるよ」

雪美「……くわえる動作は……必要……?」

モバP「やっぱりどら猫はお魚くわえないとね」

ペロ「……にゃうー」

雪美「……悪い噂が立つから……そんな行儀の悪いこと……しないで……って」

モバP「咎められた。まあどら猫とは手癖の悪い猫のことらしいしな。いや、足癖……口癖と言うべきか」

雪美「ペロ……、お水……飲む……? それとも……昔のように……ミルク……?」 ミャ!


モバP「俺も幼きペロにミルクを飲ませてみたかったなあ」

670

雪美「……かゆい」

モバP「雪美さん、蚊にでも食われたんですかね?」

モバP「我が家の秘薬を塗ってあげるから患部を見せなさい」

雪美「……ムヒが……秘薬……?」

モバP「ひんやりして良いぞ」

雪美「ん……お願い……」ヌギヌギ パサッ

モバP「……」

雪美「……ここ」

モバP「ちょっと赤く腫れているな。よし、こうして……」チョン ススッ

雪美「……本当……ひんやり……」

モバP「雪美さんの血を吸う不届き者を退治するために蚊取り線香でも付けておくか。敢えてアナログ路線だ」

雪美「……ぐるぐる……渦巻き……」

モバP「或いは蚊帳でも張ってみるか。蚊帳付きハンモックで昼寝なんて最高だぞ」

雪美「……アウトドア……気持ち良さそう……」

モバP「……それにしても雪美さん、暑いから違和感ないとはいえ、キャミソールですか」

雪美「……まだ……新しい……」キラキラ

モバP「エッッッッッ」

雪美「……ふふ……Pは……こういう私に……慣れない……?」

モバP「ぐいぐい来る雪美さんに慣れる頃にはもう何も怖いものは無くなっていそうだよ」

雪美「……じゃあ……今の内に……もっと……誘惑……しておく……」スッ

モバP「肩紐を下ろすのは待ってくれ。まだこちらに覚悟が……そうだ、これをどうぞ」

雪美「はむっ……、……?」

モバP「ホームランバーのいちご味だぞ」

雪美「……♪」

モバP「俺の好感度は“○三塁打(3ポイント)”くらいかな?」

――

モバP「そんな夏のライフプランを提案したいのですが」

雪美「……」コクコク


ちひろ「却下。誰がそんな野放図で惚気させると思いますか」

671

モバP「……雪美さん」

雪美「……なぁに……? P……」

モバP「前髪が伸びたね。少し目にかかるくらいになってきたか」

雪美「……」

モバP「うほっ、少し頭を下げると目隠れになるな。……イイ……」

雪美「口……開けっ放し……」

モバP「これが短髪男子ならモブ感全開だが、雪美だと見惚れてしまう」

雪美「……私が……何を、考えているか……分かる……?」

モバP「人はパッと見の表情だけでなく、目を見ることで相手の感情を推察する」

モバP「だから目が隠れていると分かり辛いかもな。じっと見れば楽勝だ」

雪美「……私……Pに……見られている……」ドキドキ

モバP「雪美のような親しい関係なら口元を見ただけでもおおよそは分かる」

モバP「ちなみに雪美マスターの俺なら、声が聞こえなくても読唇術で何を喋っているか分かるぞ」

ちひろ「とんでもない観察眼というか変態の熱意というか」

雪美「……」ポーッ

モバP「……」ニコ

雪美「……あっ」ササッ

雪美「……」

ちひろ「よしよし、怖いことされませんでした?」

モバP「微笑みかけただけなのに……雪美さんのキャラまで変わって見えてしまう」ゴソゴソ

モバP「少し惜しいが、このmyハサミで髪を元の長さまでカットしてあげよう」

ちひろ「プロデューサーさんがアイドルのヘアスタイリストまでやるなんて聞いたことがないですけど」

モバP「一応この仕事をするにあたって最悪全部ワンマンでも何とかなるような心得はあるので」

ちひろ「個人事務所かな? ……でも、髪って伸びるものなんですね」

モバP「市松人形じゃないんですからそりゃあ伸びますし、肉人形のように巨大化も」 トラウマヤメイ

ちひろ「それとふと思いましたけど、プロデューサーさんの身長の割にお仕事のカメラ目線って結構視点低いですよね」

モバP「カメラさんが撮っているか、もしくは膝立ちやしゃがみで撮ったりしますからね」

モバP「俯瞰構図ばかりだとアイドルの魅力は引き出しきれないのです……さあ雪美、やろうか?」


雪美「……うん……痛くしないで……?」 グハッ

672

ポツポツ ザー

雪美「……あっ……雨……。……降る前に……戻れて……良かった……」

ちひろ「買い物に行って来たんですね」

モバP「はい。レジが新しいセミセルフ精算機に入れ替わっていました」

ちひろ「自分で支払い方法を入力して入金するんですね」

モバP「そうです。家の近くのスーパーもそうなった時に最初は戸惑いましたがもう慣れてきて」

モバP「今はどれだけスピーディーに格好良く精算を終わらせられるか、自分の中で競技のようになっていますねえ」

ちひろ「自分ルールですか」

モバP「子どもっぽいと思われるかもしれませんが、スムーズに行くとこれが気持ちが良い」

ちひろ「子どもっぽいですね」

雪美「でも……人生……楽しんだ者……勝ち……」

ちひろ「雪美ちゃんは達観していますねえ」

雪美「……Pの……そういう所を……見ているの……好き……」

ちひろ「プロデューサーさん、誰かと関わっていない時はきりっとしたポーカーフェイスで何を考えているのか読みにくいですからね」

雪美「……真面目な顔、して……変なこと……考えている……そういう所」

ちひろ「そういうとこだぞ」

モバP「笑えば良いのかい?」

ちひろ「……プロデューサーさんって昔、車窓から動く景色に忍者を走らせる妄想とかしていたタイプですか?」

モバP「え? 何で知っているんですか?」

ちひろ「していたんですか……」

雪美「……それは……私も……たまに……///」

モバP「まあ、大抵の人はやりますよね」

ちひろ「えっ?」

モバP「話を戻しまして、精算で小銭の計算間違いをした時はテンションサゲサゲですよね」

ちひろ「たまに呆けていてお釣り計算を間違ってテンパるんですね、分かりません」

ちひろ「というか現金支払いなんですか?」

モバP「アイドルたちはカードを使っていることが多い中、私は現金ですね」

モバP「カードだとつい使い過ぎる。それと予算を決めて買い物をするのが楽しいものですから」


雪美「……Pの小銭入れ……がまぐち……かわいい……」 イイダロ?

673

ザー

モバP「雨だなあ」

雪美「……うん」

モバP「春雨のような落ち着いた雨と違って、土砂降りが多くてもう夏だなと感じる」

雪美「勢い……強い……」

モバP「この時期の雨を五月雨と言うんだよな」

雪美「六月なのに……五月の雨……?」

モバP「五月雨という言葉が出来たのが陰暦の時だから今と少しずれがあるんだ」

モバP「今言葉を作るなら、皐月の雨がさみだれだから、水無月の雨は……みなだれ?」

雪美「……漢字の……部首、みたい……」

モバP「ともかく、今年の夏も厳しい暑さだそうだから、水不足にならない程度に降っておいてほしいものだ」

モバP「集中的に振り過ぎて豪雨災害が起きてはもちろん良くないがな」 ……ウン

モバP「それと注意すべきは、六月は晴れた場合一番紫外線がきつい月だってことだ。曇ってくれていた方が良いのだ」


ちひろ「六月も終わりかけになってそんなこと言うんですか」

674

ザーーーーー

雪美「……」

パラパラパラッ パラパラパラッ

雪美「……」

ポチャッ チャポッ チャポチャポチャポッ ピチャッ

雪美「……」

カンッ カンッカンッ

雪美「……?」(゜-゜ )

ブゥゥゥウウウウウゥゥゥン ザァァアアアァァン ビシャーッ

雪美「…………」( ゜-゜)

ピーッ カッチッカッチッ

雪美「……!」

ガチャッ


雪美「……♪」

675

モバP「……雪美は今日は膝の上からあまり動かないな」

雪美「……」

モバP「卵でも温めているのかな」

ちひろ「鳥じゃないんですから」

モバP「昔やってみようと思ったことはありますが、体温的にヒトが温めても孵らないですよね」

雪美「……」

モバP「でも雪美バードのヒナが孵ったら……?」

ちひろ「一羽欲しいですね」

雪美「……ん……生まれそう……」

モバP・ちひろ「えっ」

雪美「……冗談」

モバP「何だ、雪美ラーミアに乗って世界を飛び回れるかと思ったのに」

雪美「……あつい……、だから……もっと……密着……する……」


ちひろ「意地になってませんか?」

おまけ15

モバP「演技の良い言葉~」

雪美「……?」

モバP「ウボアアアアア! また間違えたああ!」

雪美「」ビクッ

ちひろ「プロデューサーさんは割と間違いだらけなんで大丈夫です」

モバP「じゃあ安心ですね」 ソウデスネ オチツイテ……


おまけ16

モバP「雪美さん、ガラガラポンを回してみないかい? 三びきのやぎのがらがらどんじゃないぞ?」

ちひろ「それを混同できる人はいませんから安心してください」

雪美「……知ってる……。福引……回す……」キラキラ

ガラガラガラ コロッ

モバP「何と! 金の玉! 一等ペア温泉旅行券です!」カランカランカラン!

雪美「おお……じゃあ……Pと……行く……」

ちひろ「……これは新しいデートの誘い方か何かですか?」

今日はここまで
Microsoft Edgeが使い辛いので初投稿です

676

モバP「戦うコックさんってかっこいいよな」

雪美「……」コクコク

ちひろ「料理も作れるし戦闘もこなせるみたいな人ですか?」

モバP「そうです。自分もそんな風になりたいです」

雪美「P……スティーブン・セガール……お気に入り……」

モバP「ああ。セガールは良いよな。暴走特急の黒づくめの服の強者感。流れるように極まる間接」

ちひろ「雪美ちゃんから出てくる戦うコックさんの第一候補がセガールとは……サンジくんとかじゃなくてそっちですか」

モバP「サンジくんの手は使わないポリシーも好きです。食材にだけ包丁を使ったり」

雪美「なろうと思えば……剣士にも……なれそうな……包丁捌き……」

モバP「あれも列車内の戦闘だったな。コックさんは列車で光る」

ちひろ「船でも光りますけどね」

ちひろ「しかし、プロデューサーさんがもし背丈は似ているセガールそのものだったらと思うと……巻き込まれ体質になりそうですね」

雪美「でも……みんなとは……仲良くやれそう……」


モバP「セガールでも普通に溶け込める346プロダクション」

677

モバP「……」スッ

雪美「……」サッサッサ

モバP「……?」

雪美「……」ササッ ササッ

モバP「……!」ポン

雪美「……」コクコク

ちひろ「またボディーランゲージで会話をしていますね」

モバP「あ、ちひろさん。これはですね、手話です」

モバP「タフなウイルスが流行っていますから、声を出さないで意思疎通をすることも役に立つはずと思って」

ちひろ「手話にしてはオーバーアクションですね。他の人が見て理解できるでしょうか」

モバP「これは主に雪美にだけ通じる暗号手話です。鹿児島弁のようなものですね」

ちひろ「日常会話を暗号化するってどんな監視社会に備えているんですかねえ」

モバP「まあテレパシーでも会話できる我々なんですが、雪美の言わばちょっとしたダンスを見られるのが眼福で」


雪美「……」(゜-゜ 三 ゜-゜)ヒュンヒュン

678

モバP「本日はアイドルたちの匿名での要望や質問を読み上げたいと思う」

雪美「……箱に……いっぱい」

モバP「目安箱というやつだな。早速行ってみよう」

ガサガサ

モバP「ん……まずは一人目」

『プロデューサーはお腹の中に金魚を飼ってるって本当?』

雪美「……私も……気になってた……」

モバP「どこでそんな奇抜で突拍子もない噂が発生したのか知らないが、飼ってません」

モバP「俺は天才えりちゃんではないし、胃袋がガラスの金魚鉢で出来ているわけでもないし」

雪美「……」ジーッ

モバP「何で疑うのかな? 普通あり得ないからね?」

雪美「……次」ガサガサ

『プロデューサー、たまには敬語で話してほしいかな』

モバP「敬語……ですか」

雪美「……たまに……年下でも……敬語に……なる……」

モバP「何だろう。寡黙で無表情で、時々『笑顔です』なんて言ってくる感じをご所望ですかね」

雪美「……どこかに……いそう……」

モバP「でもそんな大人しめだと雪美さんと相性は良さそうだな。普段は放送事故くらい言葉のやり取りが途絶えそうな気もするが」

モバP「まあ、今度抜き打ちでやってみるので俺より年下のアイドルたちは楽しみにしておいてください」

雪美「年上は……いつも通り……? ……次」ガサガサ

モバP「こちらは雪美さん宛てですね」

『佐城さんのウーバーイーツが見たいわ』

雪美「……ウーバー……?」

モバP「デリバリー代行サービスだな。やりたい時にやりたい人がやる、という自由な仕事のようだ」

モバP「この場合、雪美さんにお届け物を持ってきてほしいということだろう。働く雪美さんシリーズはファンが多いからな」

雪美「……私で良ければ……やる……」

モバP「ウーバーじゃないが敷地内配達とかなら良いか? でも何かそのまま寮の部屋に連れ込まれたりしないか不安だな」

雪美「……それも……サービスの……うち……?」


ちひろ「配達員指定でオプション行使とか高くつきますよ~」

679

モバP「ツイストキャンディーって美味しそうですよね」

ちひろ「クリスマスに見かける赤白ストライプの、キャンディーケインでしたっけ? あんな感じの?」

モバP「あれも良いんですが、もっとねじってある――」

ちひろ「ああ、イメージビデオで女の子がよく舐めている例のアメ」

モバP「何か言いました?」

ちひろ「いえ別に」

ちひろ「しかし渦巻いた大きなロリポップキャンディーとか特にそうですが、食べきるのに一苦労だろうなって」

モバP「一度食べてみたいんですが、大食いチャレンジと同じで一度やったらもういいわってなるんでしょうかね?」

ちひろ「舐める度に味が変わる粋な計らいでもあれば良いんでしょうけど」

雪美「……♪」モゴモゴ

モバP「雪美さんの舐めてるチュッパチャプスのいちご味くらいがちょうど良いんですかね」

ちひろ「あれでも溶けきるまで2、30分くらいかかるそうですし不二家のポップキャンディくらいが手頃でしょう」

モバP「あれだけ薄いと最後の方は噛み砕いてしまいますね。せっかちじゃないつもりですが」


杏「勿体無いなあ。飴はゆっくり舐めないとね」

680

雪美「P……来て……」

モバP「その短いセリフだけですごく官能的に聞こえるのが雪美さんクオリティ」

雪美「今日は……これ……」

モバP「……これは……ポッキーじゃな?」

雪美「……そう……。ポッキーゲーム……しよう……」

モバP「ポッキーゲームか……」

┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ←これを一本だけ動かして野菜を作りなさい

モバP「みたいなことをやるのか」

雪美「……それは……ポッキーじゃなくて……マッチ棒……」

モバP「いや、冗談だよ。分かってる。本当のポッキーゲームは……ポッキーゲームは……」

雪美「……キス」

モバP「まずどちらがチョコレート側を咥えるのかが問題だ」

ちひろ「食い意地か」

ちひろ「というか、やるなら寸止めまでにしてくださいね? でないとアウトですよ?」

雪美「……どうする……?」

モバP「……ポッキーじゃなくてフランにすればキスまで行ってもセーフかな?」

ちひろ「フランでもプリッツでもトッポでもダメです」

雪美「……」

パクッ

雪美「……」ンー

モバP「……」

パクッ

ちひろ「……」ジッ

サクサクサク サクッ

モバP「…………」ジーッ

雪美「………………」ジーッ

ちひろ「途中で止まって真顔で見つめ合ってる……折れるのか? 折れるのか?」

ポキッ


モバP「ズキュウウウン」 ソコ、ツケタサナイ

681

モバP「今日は俺、上手く笑えただろうか。好きなあの人と上手く話せただろうか――なあ千夜」

千夜「私は杏さんのように聞き上手ではありません。その手の人生相談には応じかねます」

モバP「杏を聞き上手と評するとは千夜もなかなか分かってきたな」

モバP「ちなみに好きな人とは大体ご想像の通りです」

千夜「油断ならない環境だと理解が進んでいるところです。それとその追加情報は不要です」

モバP「で、本来逆の立場であろうことは承知で聞くんだが、最近の俺はどこか変だと思ったりとか、ない?」

千夜「私はお前の都合のいい話し相手ではない……ですが、まあいいでしょう」

千夜「そうですね、ないです。お前の品と屈託のない笑いは良くも悪くも変わりなし」

千夜「時刻を合わせずに動かしている時計のようなものです」

モバP「なら良かった。俺が俺のままであるなら多分上手く笑えているし、よし、楽しく話せたな、なはずだ」

千夜「しかしそんな時計……誰かに迷惑をかける前に止めておいた方が良いのでしょうか」スチャッ

モバP「まあまあ。しかし一定であれば良いが、狂いが進行して行っている場合はちと問題なんだよな」コキッ

千夜「あっ、首が」


雪美「Pは……割とアンティーク……」

682

テレレテッテレ テレレテッテレ テレレテッテレ テッ テン!

ちひろ「何ですかこのこれから詐欺師がギャングをハメる仕込みでもするかのようなBGMは」

モバP「ジ・エンターテイナーですね」

モバP「最近は何も良い企画アイデアが思いつかないので、気分だけでも軽快に」

ちひろ「枯れましたか」

モバP「ストレートに枯れた言われるとズシンと来るので」

雪美「……この曲……ペロが……好き……みたい……」

ペロ「んにゃあ」

モバP「リズムが良くてシンプルな曲だからな。ねこふんじまったみたいに」

ちひろ「GTAのミッション失敗みたいに言わないでください」

雪美「P……早くお仕事……片づけて……The Sting……見よう」 ニャア

ちひろ「雪美ちゃんの興味がどんどん歳相応からかけ離れた方向に行ってますけど、諸悪の根源さん?」 ハイ

ちひろ「あなたは雪美ちゃんを一体どんなティーンに育て上げようとしているんですか?」


モバP「うーん……芯がしっかりした女の子、ですかね……?」 アナタモシッカリシマショウ

今日はここまで
しとやかサワデー

683

モバP「クラスに転校生がやって来るというのはよくある話」

雪美「……うん」

モバP「それで早速授業を受けるんだが、体育で使う学校指定の体操服がまだ届いていない」

モバP「そんな時、普通はどうします?」

礼子「前の学校で使っていた体操服でとりあえず出るわね」

モバP「そう。なので周りはクォーターパンツなのに一人だけブルマを履いている――そんなシチュエーション、経験ありませんか?」

志乃「……あるある」

菜々「ありましたねえ!」

ちひろ「えぇ……」

雪美「……つい……見つめて……しまいそう……」

モバP「当人には悪いが男子なんて意識しないはずがないわな」

ちひろ「プロデューサーさん絶対三十代でしょう? 年齢詐称はいけませんよ」

モバP「でも結構強力なアクセントだと思います。例えば2Pカラーのピンク雪美を体操服で選択するとブルマになったり」


ちひろ「袴田ひなたかな?」

684

モバP「七夕も過ぎたが梅雨はまだ明けず、大雨だ」

雪美「……」ドンヨリ

モバP「雨じゃなくて飴が降れば良いのに、と一度は思う少年時代」 イタソウ……

モバP「だが雨はいつかは止み、空に虹がかかる」

モバP「或いは静寂の中でカエルが鳴き始める」

グワグワグワグワグワグワグワグワ

雪美「……!」

雪美「アマガエル……?」

モバP「だな。雨が止んで静まり返ったところを見計らうように合唱を始める」

モバP「ちょっとうるさいかもしれないが遠くから聞く分には何だか心が落ち着く」

雪美「……そういえば……カエルといえば……梅雨……」

モバP「雨蛙は夏の季語だからな。その割に他の動物より忘れられやすい気がするのは、デフォルメし辛いからかな?」

雪美「よく見ると……かわいいのに……ね」


ちひろ「……この都会の真ん中のどこで鳴いてるんでしょうかね?」

685

雪美「……大きな……かぶりもの……。これ……何……?」

モバP「これはVRゴーグルだな。ものによっては一人称視点で疑似的に360度、見渡すことができる」

モバP「平面のディスプレイを見るのと違って、まるで実際にその場に立ち会っているかのような体験ができるというわけだ」

雪美「……おお……この前の……お仕事の……」

モバP「そうだ。これで画面の中の雪美さんと触れ合ったり、雪美さんのライブを見たり」

雪美「本物のような……私が……どんどん……増えていく……」

モバP「まあその雪美さんは何かを演じている雪美さんの映像の再生なんですがね」

モバP「素の雪美さんは多分今ここだけに一人しか居ない」

雪美「……」スッ (゜-゜)(゜-゜)(゜-゜)

モバP「三人くらい居たな」

雪美「……晶葉も……作っていた……。サングラスくらい……薄いのを……」

モバP「そっちは何というか、3Dメガネみたいに透けるんだよな。立体感が出る」

モバP「他にもウサちゃんドローンとかいろいろ凄いの作っているからこれくらいではもはや驚かない自分がいるが」

雪美「昨日……室内実験……していた……」

モバP「あ、あれは実験か。ドローンの編隊に囲まれた時は生きた心地がしなかったよ」

モバP「それにしても青赤の3Dメガネなら、昔はかっこいいと勘違いしてよく頭に乗せていたなあ」

雪美「……それも……良さそう……だけど……」

雪美「……せっかくだから、はい……着けてみて……」

モバP「え、俺が着けるの? ……こんなものかな」スチャッ

雪美「……ん、かっこいい」

モバP「パワードスーツの頭部っぽくはあるのかな? これで体もアイアンマンなら完璧か」

モバP「っと、映像が始まった。……お、雪美じゃないか。どうした? こっちに来るのか? ほーら来い」

雪美「……分かった……」ポスン

モバP「まるで本物のような重みまで感じるぞ……」ナデナデ

雪美「……♪」

モバP「本当に撫でているかのようだあ……これはまだ開発中のデモ映像だったはずだが技術が高いな」

モバP「ふぅ……これがリリースされたら『うちの雪美が今日も甘えん坊でつらい』みたいな日常会話が各方面で繰り広げられそうだ」カパッ

雪美「……ハロー」 エッユキミ!?


ちひろ「プロデューサーさんレベルだと分かっててやってるのかないのか判断が難しいですね……」

686

雪美「……P」

モバP「ん? 何だい雪美」

雪美「……好き」

モバP「えっ」

雪美「……?」

モバP「……えっ、えっ? 本当に? 夢じゃなくて?」

ちひろ「あなたは普段どうやって過ごしているんですかね」

モバP「いや、まあ日頃から仲は良いつもりですが、面と向かって好きと言われるまでとは」

ちひろ「鈍感すぎるだろ、常識的に考えて」

雪美「……Pは……?」

モバP「好きに決まっているじゃないか。そう何度も口にはしないが、な」

モバP・雪美「……ふふふ」

ちひろ「何だ、いつもの予定調和なイチャイチャですか。他所でやれ」


モバP「よしんば見せつけているだけだとしたらどうです?」 ヨケイニタチワルイデス

687

モバP「ふう、やっと家まで着きましたよ」

あかり「プロデューサーさん! おかえりんご!」

モバP・雪美「……」

あかり「おかえりんご?」

モバP「いや、言わねえよ?」

雪美「……続けない方が……良い気が……した……」

あかり「ここはただいマンゴーですよ? 何もおかしくないです」

モバP「まあマンゴーだったり君たちキュウリ、パエリヤ、マンボウだねならセーフか」

七海「悪食にもほどがあるのれすよ」

モバP「今日は七海とあかりが来ていたか。ただいま」

七海「おかえりなさい。お風呂にします? ご飯にします? それとも……」ニコ

雪美「……七海……新妻……みたい……」エプロン……イイ

七海「新妻って言葉が妙に生々しいれす」アリガトウレス

七海「あっ、プロデューサー、少し濡れてるじゃないれすか」

モバP「肩幅が広いからな。仕方ないさ」

モバP「雨で傘を差していてもさ、濡れるものは濡れるんだよな」

あかり「それは確かにありますね。無いよりはあった方が全然良いですけどっ」

雪美「Pと……相合傘……してみたい……」

モバP「相合傘かあ……青春っぽくて良いもんだな」

モバP「しかし体格差があるから今日のような斜め降りの雨だと雪美はノーガードになる」

七海「プロデューサーがアイドルと相合傘すると、アイドルにスペースを譲り過ぎてずぶ濡れになりそうれすね~」

モバP「葉っぱを傘にしているトトロ並に雨ざらしになるだろうな」

モバP「ちゅーことでお風呂、というかシャワーでも浴びようかな」

雪美「……じゃあ……私も……いっしょに……」

あかり「一緒にシャワーを浴びるんですか? 都会の女の子は進んでるな~」

七海「あまり普通じゃないれすから真に受けてはいけないれすよ?」

あかり「わかったんご! では、手作りりんごジャムを用意して待ってますね!」

モバP「今は高いが、イチゴ・ブルーベリー・マーマレード慣れすると恋しくなる味だな」


雪美「……夕食に……りんごジャム……?」

688

モバP「比奈はゾンビものは好きかい?」

比奈「特には……。小梅ちゃんにでも影響されたっスか?」

モバP「せやね。昨今のインドアタイムでそういう物に触れる機会を得て」

モバP「パニック系や終末系が多かったが俺は異端でもほのぼの系が好きということが分かった」

比奈「ゾンビとほのぼの、ですか。殺伐ばかりよりは良いかもしれないっスね」

モバP「まあ殺伐が無いと安易な属性付けで終わりそうな危険性は孕んでいるのかな」

比奈「はら……ところでゾンビって孕むんでスか?」

モバP「おや、そっちの方に興味が?」

比奈「はい。プロデューサーはそういうことであまりからかわないので、抵抗なく聞けるっス」

モバP「でも適度にからかってくれることを望む子もいるから難しいんだよな」

モバP「女性経験に精通していればもっと理解できるのだろうか」

比奈「みんなはプロデューサーには処女性を求めていると思うんで、そこは無しで」

モバP「俺は女かい」

モバP「それと、ゾンビって多分基本的には無代謝だと思うから、孕めないんじゃないんかなあ」

比奈「ある意味でより完全な生命体と言えるんでスかね?」

モバP「生物的に不老不死に近ければ生殖機能は無くても良いようになるだろうし、そうかもな」

モバP「ヒトって不完全でそれを自覚しているから、半人半モンスターのような強くて便利で長寿そうな属性に憧れを抱くような面はあると思うんだわ」

比奈「……人の姿をした神様とかも?」

モバP「ああ。ちなみに俺は多脚のアルケニーになってみたい願望があります」 ソレハキモイッス エッ

比奈「……でも確かに、プロデューサーもみんなが真っ直ぐ成長できるように、悪い道に落ちないためになら何でもしまスから」

モバP「何でもはしないが」

比奈「そんな超人性にみんな惹かれてるとは思うっス。そしてみんなを超人化させていくから、ゾンビの親玉みたいっスね」

モバP「俺は女でゾンビかい」

比奈「それでも私は良いっスよ? 腐りかけは困るので肌が青いくらいの理性的なゾンビさんで」

モバP「滅茶苦茶言いおる。俺がゾンビなら買い物に付き添って食玩とか食べてやらないぞ?」

比奈「あんなに嬉しそうに消費してくれるのに」

モバP「カードやシール入りのウエハースなんて美味しいんだからな。あまりたくさんは食べられないが」

比奈「……仮に代謝が無くても美味しいから食べるって発想はヒトっぽいっスね」 ヒトダヨ!


雪美「……P……属性……てんこ盛り……」

689

モバP「中華のデザートはマンゴープリンと杏仁豆腐どちらにするか迷う人手を挙げて」

雪美「……」ノ

ちひろ「私は胡麻団子ですかね。お茶に合いますから」

モバP「ちひろさんはもっと意外に大学芋とか好きそうなイメージでした」

ちひろ「私に偏見持ってませんよね?」

モバP「いえ? 最近密かに流行りじゃないですか。大学芋もしくは抜絲地瓜」

ちひろ「まあそうですけど。それで、マンゴープリンと杏仁豆腐なら、杏仁豆腐です」

雪美「不思議な味……癖になる……。よく乗ってる……赤い実……含めて……」

モバP「クコの実か。あれも和洋食では馴染みが薄くて中華の珍しみがあるよな」

モバP「あたしゃ最初は味はともかく長靴いっぱい食べたいようなナッツ系かと思ってたよ」

ちひろ「プロデューサーよ、それはチコの実である」

雪美「……流砂に……落ちた先で……食べたい……実だね……」

ちひろ「ともかく、黄色いのか白いのか、迷うならどちらも食べれば良いだけです」


モバP「ちひろさんは中華は結構食べますからね。この前も炒飯追加とかしていたら会計が予想以上に高く――」 コラ

690

モバP「遊佐こずえに着せてはいけない服シリーズー」

こずえ「えー……?」

ちひろ「こずえちゃんでやるんですか」

ちひろ「いけないと口で言いつつその実はやっぱり着せてみたいんでしょう?」

モバP「……えーと、今回はですね」

雪美「目が泳いでる……?」

ちひろ「誤魔化し下手だなあ」

モバP「美少女戦士セーラームーンRのあやかしの四姉妹、ベルチェです」つ画像

こずえ「……せくしーだねー……。こずえも、これをきせてもらえるのー?」

ちひろ「着せてはいけないんですけどね。コスプレ的にはこずえちゃんが大人になったら似合うかもしれません」

モバP「セラムンは悪役幹部が個性的で憎めなくて良いですよね。格好はレオタードやスケバンの時代背景を感じますが」

雪美「……ペンデュラム……武器なのは……かっこいい」

こずえ「――ふりこ(ぺんでゅらむ)もなしで……だうじんぐをするなんて……じゃどうだわ」キリッ


ちひろ「やだ精悍……ちなみに私はアマゾネスカルテットのジュンジュンが好きです」 ミドリ……

今日はここまで
一体どこまで

691

ザザーン

モバP「海だなあ」

雪美「……うん」

モバP「撮影の合間にやってきたが、風が強い」

モバP「日本海側の海は波が荒くて砂浜があっても離岸流で遊泳禁止だったり、泳ぐのに適した所が少ないイメージだが」

雪美「……砂浜を……歩くだけなら……良い……」

モバP「……ん? 何かが漂着しているようだ」

雪美「……ビン……?」

モバP「栓がしてあって中に……ボトルシップではないが巻いた紙が入っているようだな。大陸から海流に乗って冒険してきたのだろうか」

雪美「誰かがここに……置いたのかも……」

モバP「可能性としてはそれもあるが、一瞬でもこれは宝の地図だとか期待してみたいじゃない?」

モバP「……見せてもらいますよっと。……何々、『海の向こうの誰かへ。お友達になりませんか?』か」

雪美「……日本語……だね……」


モバP「……これも一つの海の向こうではあるさ。湾曲した向こう側だが」

692

モバP「今日のお仕事、よく頑張ったな。偉いぞ」

雪美「……えらいの……?」

モバP「……偉いさ。連続すると感覚が麻痺してきがちだが」ナデナデ

雪美「……♪」ナデラレナデラレ

モバP「アイドルになる前だったら考えられないくらい毎日頑張っているんだ。偉くないはずがない」

雪美「……じゃあ……Pも……」

モバP「俺も良いの?」

雪美「うん……。……よく……頑張りました……」ナデナデ

モバP「……良いな。凄く良いと思う」ナデラレナデラレ

雪美「……ほめられると……元気になる……ね」

モバP「ああ。親元を離れてみるとよく分かるようになった。家族愛に飢えてくるというか」

雪美「……今は……大丈夫……?」

モバP「ああ。雪美さんがいるからな。そしてみんなも」


ちひろ「でもさすがに撫で合いは馴れ合いだと思うんですけど」

693

モバP「んんっ……あぁっ……! ……あはぁー……」

ちひろ「おやおや、デスクワークが一段落して背伸びですか。よくある光景ですね」

モバP「すいません、こんな色気もない男がセクシーポーズみたいにやっちゃって」

まゆ「……いい」●REC

ちひろ「好きな人はいるようなので良いんじゃないですか?」

モバP「同じ体勢のままだと体が硬くなりますから、柔軟にしないと」

雪美「……体操でも……する……?」

モバP「雪美が体操のお姉さんか……紳士になれそうだ」

ちひろ「真摯にはなるべきですね」

モバP「運動会で児童代表の子が朝礼台に立って、ラジオ体操の模範役を務めるの、良いと思います」

雪美「……あれは……やってみたい……」

モバP「経験として一度は志願してやってみるべきなんだろうな」

モバP「俺は結局そんなのや選手宣誓やスターターピストルを撃つ役なんかはやらずじまいで来て、やや心残りがあるから」

まゆ「よーいドンでピストルを撃つのは、慣れていないと自分がびっくりしそうですね」

モバP「空に向けた銃でも怖いんだ。いくら覚悟しても俺はペルソナを出すのは無理だろうな」

ちひろ「プロデューサーさんは運が悪ければこめかみを撃ち抜くようなロシアンルーレットの勝負も切り抜けて来た男でしょう?」

モバP「そんな命を軽んじる綱渡りスカウトや営業はしていませんよ。もしそういうことを迫られたら惨めに泣くと思います」

まゆ「惨めに泣くプロデューサーさん……見てみたい好奇心に負けそうなまゆがいます」

雪美「その後……Pを助けて……よしよしして……ずっとそばにいて……安心させる……」

モバP「無事依存まっしぐらじゃないか。怖い怖い」

モバP「それはそうと、月火水木金が平日で土日が休みという日常感覚がもう懐かしい」

ちひろ「今は月月火水木金金みたいなものですからね」

モバP「戦時中ですか。まあ残業が月300時間とか行かないだけ良いですね」

ちひろ「無休で毎日10時間残業とか人ってそんなにしなきゃいけないことがありますかっていう」

モバP「……休日の終わりを告げるサザエさんで憂鬱になる症候群が何てことなく見えます」

ちひろ「プロデューサーさんは一週間で一番精神的にきついと思うのは何曜日です? やっぱり水・木ですか?」

モバP「週の真ん中は中弛みしますね。ただ業界的には週末が詰めですから金曜、いや土曜が一番……」

ちひろ「山場ですね。月曜から一日一日と週末に進むたびに追い詰められるような焦りが強くなって……」


まゆ「……まゆが家に監禁しましょうか?」 イイッスネ ヨクナイ

694

モバP「独り暮らしだとよくあること」

モバP「サラダボウルでご飯を食べる」

ちひろ「丼と間違って買って来たんですかね?」

モバP「ちょうど良いサイズなもので。普通のお茶碗もあるんですがこれ一杯ではなかなか満足できず」テヘ

ちひろ「食べ過ぎないように敢えて小さめの器で細かく食べる意識付けが必要な気がしますね」

モバP「……それだと結局後でエネルギーが持たないんですよね」

ちひろ「そんなに肉体的に過酷な重労働していますかねえ?」

モバP「あと、前日のシチューの残りをご飯にかけてチーズを乗せて温めてグラタンにする」

ちひろ「独り暮らしなのにシチューを作り置きするんですか。というかオンライスしますか」

モバP「しっかり野菜を取るためです。オンライス良いじゃないですか。カレーだってライスでしょう?」

ちひろ「ご飯の甘さにシチューの甘さが乗って結構ウッとなりませんか?」

モバP「……いいえ? ガツガツいけますよ」

ちひろ「プロデューサーさんは未だに食べ盛りのようですね」

モバP「食べることが日々の楽しみでもありますからね」

ちひろ「……いつか太りそう。みくちゃんにしっかり言っておかないと」

モバP「みくに管理栄養士的な役割を任せるのはどうなんですか」

雪美「……私は……肉じゃが……好き……」

モバP「雪美さんだ。肉じゃが良いよな、和風シチュー。あれもごはんにかけても美味しい」

ちひろ「雪美ちゃんが小食だとはいえ、プロデューサーさんと結構一緒になって食べるんですから気を付けてくださいね」

モバP「まあアイドルがよく立ち寄るようになってかなりまともになりましたから……」

雪美「……」コクコク

ちひろ「みくちゃん以外からも結構管理されている節はありますね」

モバP「でも楓さんや早苗さんが来ると代わりにお酒が入ったりするので緩いものですよ。ああ、でも久しぶりにグラタンが食べたい気分」

雪美「……グラタンと……ドリア……違いが……よく分からない……」

モバP「ドリアは下がライス、グラタンは下はマカロニ。まあマカロニじゃなくても良いようだが分かりやすく言うとそうなるな」

雪美「……なるほど……。ライス……マカロニ……おいしさでは……甲乙……つけがたい……」

モバP「雪美はお好み焼きも関西風と焼きそばの入った広島モダン風、どちらも好きだよな」

雪美「……この前……いっしょに食べたのは……ソースが濃かった……ね」 ソウスカ?


ちひろ「淡味が分かる雪美ちゃんはなかなか舌が成熟していますよね」 ……テレル

695

ちひろ「今朝は途中で直帰していましたけど、何かあったんですか?」

モバP「着替えと荷物を置く目的で。それと、新田くんに頼まれてお弁当作りを」

ちひろ「ライブ感のあるスケジュールですねえ。しかし何故弁当」

モバP「以前作ってあげたおにぎりがとても気に入ったらしく、他に作れる人がいないからと」

ちひろ「作れる人がいない……?」

モバP「ある日、家に二人でいる時に、お腹が空いたのでおにぎりを作って食べようということになったんですが」

モバP「ちょっと悪ふざけのつもりでいつもよりぎゅっと固く握ったんですよ。それがツボにはまったというかウケたようで」

ちひろ「圧縮おにぎりってやつですか。プロデューサーさんは握力が強いですから質量がありそう」

雪美「……P……私には……それ……、食べさせて……くれたこと……ない……」

モバP「そりゃあ、普通に軽めに握ったおにぎりの方が美味しいからな? ただ新田くんはそれが好きだとさ」

雪美「……」ジーッ

モバP「大した代物じゃないが、そう催促するなら今度作るよ」

雪美「……うん……」キラキラ


ちひろ「プロデューサーさん家の炊飯器は良いやつなんでそっちは羨ましいんですけどねえ」

696

モバP「当たり付きお菓子やアイスにもいろいろありますが、ホームランバーはなかなかいやらしいですよね」

ちひろ「そうですか?」

モバP「漏れなく賞品が貰えるホームランはまず出ないものとして、抽選は4塁打分集まったら1口なんですが」

モバP「なかなかピタリ4の倍数で止まらず残塁が出てしまって応募を出せません」

雪美「ヒットは……結構……出やすい……」

ちひろ「チョコボールは銀のエンゼルですらそう当たらないですからね」

モバP「当たったら五枚揃うまで買いまくると思います。とにかく応募券とかが余るのが勿体無いんです」

ちひろ「そういう意味のいやらしさですか……庶民的ですね」

モバP「この心境を見透かされて次を次をと買わされる……メイトーの策略にまんまと乗せられている気がします。悔しい(ガチャガチャ)」

ちひろ「んな大袈裟な。どさくさ紛れにガチャを回してくれるのは良いんですけどね」

ライラ「でも、ホームランバー、小さくて食べやすいのですね」

雪美「……銀紙に……包まれていると……よりおいしく感じる……不思議……」

モバP「家に来るアイドルたちは、そんな俺を見て協力したいみたいで、よくホームランバーを食べています」

ちひろ「もうビッグイニングになってそうですね」

ライラ「みんなでたくさんたくさん集めて、Tシャツを当てますのですよー」

モバP「気づけばアイドルたちの方が盛り上がっているようです」

ちひろ「Tシャツなんて買えば良い気もしますけど」

モバP「これは最初の一塁打を引いてしまった時から始まった因縁……当てられるもんなら当ててみやがれ、という挑戦状みたいなものですから受けて立たねば武士の名折れ」

雪美「……ただし……一人で戦うとは……言ってない……。私が……いる……」

ライラ「ライラさんもー」

ちひろ「芸能事務所の人から大口の応募が来たら担当者困りそう……大人組も参加していたりします?」

モバP「しますね。ペアルック狙いの人もいれば、単純に面白そうだからって人もいます」

モバP「中途半端な数が当たった場合、誰が着るか公開じゃんけん大会で決めることになるかもです」

ちひろ「もはやそういう企画かな」

モバP「そんな当たり棒が台所の一スペースに並べてあるんですが、あれはリーチ棒を連想させますね」

ちひろ「麻雀かい」

モバP「最近は早苗さんとかと麻雀を少しやってみているんですが、絶好調なんですよ」

モバP「信じてもらえないかもしれませんが、脳内に雪美さんが現れて和了への手順が見えるようになるんです」


ちひろ「枕神怜ちゃんかな? いつもの膝乗せはそういうフラグか……」

697

モバP「PCを使っているとたまに思わぬ広告が表示されたりする。こんなのとか」

雪美「……冷凍……ビーツ……?」

モバP「ターゲティング広告なのだろうが、俺はビーツに関して検索したり購入しようとしたりした覚えがない」

モバP「イチゴとかなら分かるが……それでビーツってのも最初は冷凍イチゴ関連なのかと思ってたらそれが違って」

雪美「……ビーツって……何……?」

モバP「果物のように見えなくもないが野菜です」

雪美「……野菜……。見た目は……カブや……ラディッシュ……」

モバP「食感も蕪に近いらしいが、ほうれん草や甜菜の仲間だそうな。何でも甘くて、食べる輸血と言われるくらい栄養も充分」

雪美「……野菜なのに……甘くて……カブなのに……ほうれん草……色は……赤紫……???」

モバP「雪美さんが混乱している貴重な姿が……しかし本当に、これは何に伴って出てきた広告だろう?」

ちひろ「あ、プロデューサーさん。業務、ではない連絡ですけどね」

ちひろ「アーニャちゃんが『今度ボルシチ食べませんか』と言ってましたよ? 良い食材が手に入ったそうで」

モバP「ボルシチですか。……アーニャかなあ? 確かにこの前PCを貸してあげたっけ」


雪美「борщ……、……хорошо」キラキラ タベタイミタイデスネ

今日はここまで
魚肉キャラメル

698

モバP「何事もいつまでと期限が設定された方が覚悟が決まることってありますよね」

ちひろ「それはそうですね」

モバP「例えば346日後に死ぬとか」

ちひろ「長丁場すぎて緊張感が無いです」

モバP「やっぱり100日が長すぎず短すぎずちょうど良いんですかね」

ちひろ「ワニにでもなるおつもりですか」

モバP「ワニと言えば、アリゲーターとクロコダイルの違いって顔の形らしいですね」

モバP「某ワニはそれでいくと先が丸いのでアリゲーターなんでしょうか。言及されているのか知りませんが」

ちひろ「知らんのかい」

雪美「……P……この……カウントダウン……日めくりは……何……?」

モバP「それか。実は何をするか決めずにめくりながら考えているんだ」

雪美「……本当?」

モバP「ああ。別にそれが0になったら試験があるとか、プロデューサーを退職するとかそういうことはない」


雪美「……思わせぶりが……好きな人……ね」

699

雪美「……」テクテク

モバP「雪美様がゆく」

雪美「……」テクテク

モバP「その姿、実に泰然自若なり」

雪美「……」ピタッ

モバP「おや、壁だ」

雪美「……」

モバP「目の前に立ちはだかる壁をじっと観察する雪美様」

雪美「……」テクテク

モバP「?」

トプン

モバP「……」

モバP「9と3/4番線かウォーターランドか――臆することなく壁に吸い込まれていった」


晶葉「それは液体型ドアだ」 アキハッテスゴイヨナ イマゴロキヅイタカ

700

娘「……パパ……おはよう」

モバP「おはよう。今朝も早いな」

娘「ラジオ体操……行ってくる……」

モバP「夏休みの定番だな。ほい、気を付けてな」

娘「ん……」

パタパタ キィ パタン

雪美「……まだ涼しい……この時間だから……良い……」

モバP「夏場は日が昇ると朝でももう暑いからな」

雪美「……私……相変わらず……暑いのは……苦手……」

モバP「暑くなる前に我々二人も家で軽く体操でもします?」

雪美「…………///」

モバP「体操とまでしか言ってないが……雪美さんは意外とむっつりなところあるよね」

雪美「……むっつりじゃ……ない……///」プンスカ

モバP「だがそんな雪美さんだから良いんだ」ナデナデ

雪美「……とにかく……朝食の準備……しよう……?」

モバP「そうだな。パンに卵に牛乳に……そして果物はスモモなんてどうだろう」

雪美「……P……スモモ……プラム……好き……ね」

モバP「ラジオ体操から帰ってきて、ちょうど少し喉が渇いた時に食べるスモモが美味いんだ」

モバP「夏休みのとある一日の始まりを感じられてとても良い。それにこの――」

シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン

モバP「クマゼミの鳴き声、これもまた夏の朝を感じさせてくれる」

雪美「……今年も……何度でも、思い出せる……いろんな経験を……しよう……」

雪美「家族三人で……ね」

モバP「ああ。……ん、東日が眩しい」

――

モバP「そんな未来の夢を見せて惑わしてくる妖怪がいたら自分は魂を渡してしまうかもしれません」

ちひろ「ぬ~べ~のチャブクロみたいですね。あれは過去改変を誘ってきますけど」

雪美「P……知らない妖怪に……ついて行っちゃ……ダメ……」 ワカッタヨ


ちひろ「まあ、あなたの魂は売約済みですから妖怪風情に手を出させはしませんけどね」 エッ

701

モバP「事務所のロビースペースにはテレビが置いてある」

モバP「来客が来た時は、ここのソファで待ち時間の間にテレビを見ていてもらったり」

ちひろ「或いは誰も来ない時はアイドルが使ったり、プロデューサーさんとアイドルがイチャついたり」

雪美「……」チョコン

モバP「温泉とか銀行でよくある、シックな空間で居心地が良いですよね。テレビは大体NHKとか流していたりして」

ちひろ「温泉とか銀行でもそうやって雪美ちゃんを膝に乗せてみたりしていませんよね?」

モバP「こんなことを公然とやるとお思いですか?」

ちひろ「はい」

モバP「そんなぁ」

雪美「……Pは……こういう所のテレビが……目に留まる……?」

モバP「そうだね。特に高校野球中継や大相撲中継とかをやっているとまったりと見入ってしまいがち」

モバP「……相撲といえば、雪美の好きな力士は確か宝富士だったな。刃牙みたいな足の筋肉が良いとかで」

雪美「……刃牙は……言い過ぎ……。でも……良いと……思う」


ちひろ「お二人は普段、周囲の人と話が合うんでしょうか」

702

モバP(ん……?)

モバP(体に違和感。そして世界が大きく見える)

モバP(俺はまた、猫になってしまったのだろうか)

ペロ(……P)

モバP(ペロ)

モバP(……君とこうして話をするのは初めてかもしれないな)

ペロ(……そうだね)

モバP(おお、まさか本当に意思疎通ができるようになるとは。念願叶えり)

ペロ(ぼくもだよ)

モバP(意外とボーイッシュな口調だったんだな)

ペロ(口調という定まった形はないんだ。Pが思い描いたぼくの声で伝わっているだけ)

モバP「ニャー」

ペロ「ンギャア」

モバP(何となく分かったこととする)

モバP(しかし、猫の知り合いがいると心強いな。このまま街へ繰り出そうか)

ペロ(……浮かれているようだけど、気を付けた方が良いよ)

ペロ(Pが猫に変身するたびに、尻尾の数が増えている)

モバP(えっ? 本当?)

ペロ(それが9本まで増えると……二度と猫にはなれなくなるんだ)

モバP(何ですと!? 俺ってグリマルキンの魔女だったのか?)

ペロ(……なんてね。冗談だよ。怒ったかい?)

モバP(何だ冗談か、びっくりしたじゃないか。むきー! だよ)

ペロ(ふふふ、Pは猫になっても相変わらずだ)

ペロ(ごめんね。……街へ、か。天気が良くないのが難点だね)

ペロ(ねえ、P。来年さ、“ヴァルプルギスの夜”にいっしょに行こうよ)

モバP(5月1日のヨーロッパの魔女の集いじゃないか。どうやって行くのさ)

ペロ(どうって、それは飛ぶに決まってるでしょ?)

モバP(飛ぶって猫特有のゲート的な? ……行きたいが俺も人として忙しい身だしどうかなあ)


雪美「……」ウットリ ←ペロと猫Pのツーショットを幸せそうに見つめている

703

雪美「……」モミモミ

モバP「……」

雪美「……」モミモミ モミモミ モミモミ

モバP「……」

雪美「……何も……感じない……?」

モバP「……いや、雪美さんの手で俺の太ももを揉まれて何かを感じてしまうのはまずいと思って心を無にして後でじっくり悶えますが」

ちひろ「何周りを巻き込んだ苦行チャレンジやってるんですか」

雪美「……P……競輪の……選手のような……足、じゃない……」

モバP「ああ、あれは一度触ってみたいと思うことはあるよな」

モバP「俺も下半身を相当トレーニングすればなれるかもしれないが、このスーツが入らなくなるのはな」

モバP「それとやっぱりスキニージーンズとかも穿きたいし」

雪美「……じゃあ……これでも……良い……」スリスリ

モバP「うっ。腹に力を入れておかないと、スーツの上だから良いが下着の時とかにやられたら俺は純潔を失いそうだ」


ちひろ「もう既に充分不純の領域に入ってませんかね」

704

モバP「……チョコボールのピーチ味、結構美味いっすね」

雪美「……モモの……味……」

モバP「それからパチパチキャンディのような口の中で弾ける感じが懐かしい。最近食べていなかった」

雪美「……あっ……もう、空……」

モバP「普段はこのまま捨ててしまうところだが、今日は少し展開してみようか」

雪美「展開……?」

モバP「雪美は学校の授業で、厚紙でサイコロを作ったことはないか? 立方体、正六面体ともいうが」

雪美「……ある」

モバP「お菓子の箱も糊代の部分を剥がしていくと、元は平べったい紙なんだよな」

雪美「……本当……でも……複雑な……構造……」

モバP「これを展開図として、真似して厚紙を切って折り目を付けて折って貼り合わせると、自作チョコボール箱もできる」

雪美「……くちばしの……部分は……こんな風に……出来ていたの……ね」

モバP「発見があるだろ? もし空間認識に苦手意識を持っているのなら、こういう身近なもので馴染んでおくと多少は良いのかもしれないな」


ちひろ「箱の内側から桃の匂いがしそう」

705

ガラガラ

雪美「……♪」

モバP「雪美は猫車に乗せても結構収まりが良いよな」

雪美「……猫車……?」

モバP「こういう手押し運搬台車をそう呼ぶらしいな」

雪美「……じゃあ……猫気分だ……にゃー」

モバP「俺が少年で雪美が妹だったら、こんな風に雪美と猫でも乗せたまま田舎道をくたびれるまですっ飛ばしていくことだろう」

モバP「……少々悪ガキの発想かもしれないがな」

雪美「……押す人力車も……あれば良いのに……ね」

モバP「大人用の乳母車なんて無いからな。雪美を大五郎にして子連れ狼をやるのは難しい」

雪美「……マシンガン……付きそう」

モバP「世の中には手押しキャリーワゴンとかあるにはあるが、何か悔しい気がするのでもう一周するぞ」

雪美「次は……もう少し……速く……」 ヨシキタ!


ちひろ「サービス精神がお父さん並ですよね」

今日はここまで
やっとここまで来たというのに

706

モバP「口に巻物とか竹とか咥えている系女子って今流行りですよね」

ちひろ「竈門禰豆子ですか。あれは咥えているというか噛ませているんですけども」

雪美「……無口な……女の子……いい……」

モバP「雪美さんは気になりますか?」

雪美「……」コク

モバP「……俺もしばらく無口路線で行こうかな」

ちひろ「この期に及んでミラーリング効果でも期待しているんですか?」

ちひろ「それにしても、雪美ちゃんは撮影で忍者の格好で巻物を咥えてみるポーズはやってましたよね」

雪美「……口が……疲れた……」

モバP「歯の治療で歯医者に行った時に口を開けた状態で固定されるから辛いのに近いものがあるな」

モバP「あれは雪美が頑張っただけあって動画が凄い再生回数になっていた」

ちひろ「普段の雪美ちゃんは口を開けているカット自体が多くないですから、それ見たさもあるんでしょうかね」

雪美「……Pには……よく見せるのに……ね。開けた口……」アー


モバP「自然に口の開いた雪美さんも美味そうやなホンマ」 ソノクチヲトジロ

707

雪美「……」ジーッ

モバP「本棚の高い所をじっと見上げる雪美さん」

雪美「……」ジーッ

モバP「……こんな時、取ってほしいと言われたい、頼られたいんだよなあ」チラッ

雪美「……」フイッ スタスタ

モバP「あれ、どこかに行ってしまった」

雪美「……」スタスタ

モバP「と思ったら帰って来た」

雪美「……」(つ゜-゜)つ□ トンッ

モバP「足場になる踏み台を置いて……乗った」

雪美「……ん」

モバP「一生懸命に手を伸ばす雪美……がんばれもう少し」

雪美「ん……! ……取れた……。……ほら……P……」キラキラ


モバP「頼ってほしい反面、自分で何とかしようとするのを見守るのも良いな(親心)」

708

ニャー

みく「あっ、可愛いねこチャン!」

みく「ペロチャンとは違う子かにゃ? どうして事務所内に? ……そういえば」

芳乃『最近はP殿が猫化する体質になっているのでしてー』

みく「なんてことを言っていたけど……君はPチャン?」

ニャー?

みく「ふふ、そんなことないよね」

雪美「……あ……黒猫メンバーズ……おつかれ、にゃー」 ニャー

みく「ヤマト運輸かにゃ? でもペロチャンの黒猫の友達は多いみたいだね」

雪美「……うん」

みく「良いにゃあ……」

スリスリ

みく「ふふ、結構人懐こいんだね。よしよし」ナデナデ

雪美「……気持ちいい……みたい」

みく「抱っこしてみても良い?」

雪美「……大丈夫」

みく「おいでー。よし、そのままにゃ……にゃふふ」

雪美「……みく……良い笑顔……」

みく「照れるにゃ。……それにしても君は大人しいにゃあ」

雪美「照れているだけ……かも……?」

みく「君は照れなくて良いにゃ」ギュッ

雪美「胸が……当たってる……から……」

みく「……? この子、普通のねこチャンだよね?」

雪美「……名前は……ペロと同じ……Pから始まる……普通の……猫……」

みく「……ん?」

ニャー

雪美「……蘭姉ちゃんと……お風呂に入った……コナンの気持ちが……少し、分かった……って、言ってる……」

みく「Pチャンだったー!?」ガビーン


みく「……まあ、嫌じゃないからしばらく抱かせるにゃ」 ヤサシイ……

709 

雪美「……」グデー

モバP「梅雨が明けて本格的な暑さ到来で雪美の目が死んでいる」

モバP「ビニールプールでも出してみようか」

雪美「……!」ピクッ

――

チャプチャプ

雪美「……♪」

モバP「水分を得て生き返ったように元気な雪美様よ」

雪美「……Pも……入る……?」

モバP「いや、俺はせっかくなので足だけ浸かりつつ撮影をしていますよ」

雪美「……いけず」パシャッ

モバP「あはは、遊ばれて俺の脛が喜んでいる。そして今の雪美の表情で一枚」パシャッ

モバP「アメリカのドラマに出て来るような白い家と緑の芝生と庭の屋外プールはさすがにないが」

モバP「大きめのビニールプールにビーチチェアにサイドテーブル、カクテル風のジュース……ばっちし☆」

雪美「……ふぅ」

モバP「そして本日の雪美の水着も素晴らしい。ラップタオルを巻いて着替えて登場したのはこのセーラー水着」

雪美「……ちょっと……大胆……?」

モバP「大胆でも良いじゃない。青と白基調のミニスカートのビキニで布地は少なめ、動きやすそうだ」

モバP「いやあ、ライブで皆さんにお見せ出来ないのが本当に残念です」

雪美「誰にも見せない……なら……P……もっと……寄って」

モバP「……アップで撮ります?」

雪美「カメラも置いて……二人で……濡れて……繋がろう……」グイッ

モバP「あっ、雪美――」

――

モバP「いけない雪美、気分が乗ったからって俺たちは……あああ」ムニャムニャ

雪美「……P……私と……いい夢……見ている……?」

ちひろ「あーあ勿体無いですね。今すごい水着を着た雪美ちゃんが目の前にいるのになあ」

モバP「それは本当ですか!?」ガバッ


雪美「……Pは……自分に素直に……生きてる……ね」 ナンダイツモノユキミサンカ

710

友紀「くはあぁぁぁーっ! ビールが美味いねいっ♪」

モバP「キャッツが勝ったな(確信)」

友紀「好調だよ! 野球を見られるのがありがたいし強いのがまたありがたい!」

雪美「野球……」

モバP「雪美はあまり野球には詳しくないか」

雪美「ルールは……まだ……曖昧……。バット……三つ折られたら……KO負け……?」

モバP「そんなマリオテニヌエースみたいなルールはないぞ」

モバP「でもそれはそれで面白そうよな。お気に入りの装備を試合に合わせて持ち込んで」

友紀「コルクとか入ってないと良いけどね?」

モバP「それはそうと、ビールサーバーの売り子って諸々20kgくらいを背負って客席を行き来しているんだと思うと凄いよな」

雪美「20kg……ひえぇ……」

モバP「雪美さんから聞き慣れぬ鳴き声が。以前友紀の前で背負った時は俺はそんなでも無かったが」

友紀「球場に注ぎたての冷たいビールは欠かせないものだし、重い仕事だよね」 ダナ


友紀「サーバーからじゃないけどさ、プロデューサーもそんな重みのある一杯、どう?」 マダシゴトチュウナノデ

711

パンパン! パシン!

雪美「……」

モバP「今度は朝乃山に見入っているのかな?」

雪美「……背中に……気合を入れてる……」

モバP「ああ、花道の奥から送り出す時にな」

雪美「羽が生えた……みたい……」

モバP「雪美はあの手形を羽と形容するか。……羽か……不覚にもかっこいい表現だと思った」

雪美「……」キラキラ

モバP「あれを貰うと引き締まるだろうな。退きそうになったり倒れそうになっても背中を押して支えてくれる気がしそう」

雪美「……」ジーッ

モバP「いや、やらないぞ? ステージに出る前とかにあれで送り出されてみたい気もちっとは分かるが」

モバP「あんな赤く残るくらい強く叩くと痛いし、まず背中の開いた衣装を着なきゃいけないし」

雪美「……でも……想像すると……熱い……」


ちひろ「アイドルは背中を大事にしましょう」

712

雪美「……」コロコロ

ちひろ「雪美ちゃんがプロデューサーさんの膝で小さなパンジャンドラムを転がしていますね」

モバP「これはパンジャンドラムではなく砲身を外した砲車――ということにしたマッサージローラーです」

ちひろ「えらく車輪のデカい二輪砲車ですね」

モバP「こういう形の縦プロペラのドローンってないんですかね?」カチャカチャ

ちひろ「力学は分かりませんけど絶対に真っ直ぐ飛ばないと思うんですよ」

ちひろ「ところでPCの方では何をしているんですか」

モバP「これは音声合成ソフトで作った簡易の雪美roidです」

雪美roid『……あ、い、う、え、お……』

ちひろ「雪美ちゃんの声ですね。アクセントが変ですけど」

モバP「雪美のいろんな声を集めれば集めるほど流暢に本人っぽく喋るようになるんですよ」

ちひろ「本人の許可は取ってます? ……そうですか。まあ、今はそういう技術も進歩しましたね」

モバP「はい。それと同時に声の扱いも気を付けないといけませんね。例えばみくにチーにゃポンにゃ言わせたらどうなるか」


ちひろ「言わないと思いますけど?」

今日はここまで
ここはまずい早く逃げろ

713

モバP「徐に空を見上げると、そこには満月から少し欠けたお月様」

モバP「自然と目に入ってきたその姿に、晴れの日々を実感する」

雪美「……」

モバP「そしてそれをただじっと、切なそうに見つめて見える雪美さんもまた味がある」

雪美「……切なそうに……見える……?」

モバP「遠い故郷を思うような佇まいに見えて……こちらが勝手に想像を膨らましているだけだが」

雪美「……きれいな……オレンジだから……つい……見とれて……」

モバP「昇ったばかりの月は赤く見えることがあるな。うさぎがお餅をついているような模様もしっかり見える」

雪美「……月も……ずっと……こっちを……見てる」

モバP「月が追いかけてくるように感じた経験は誰でもありそうだ。面が同じだから余計に」

モバP「そして、平面的に見える」

雪美「……もっと……近くにあったら……球体に……見えた……?」

モバP「どうだろうな。惑星が月と同じ距離にあったり地球に土星のような環があったら、地球からどう見えるんだろうな」


ちひろ「……そういう系の動画を漁っていたら寝られなくなりそう」

714

雪美「……」ボーッ

モバP「……雪美を背後から見ていると思うんですが、ストレートロングの女の子って背中が隠れますよね」

ちひろ「……どうしたんですか? たまにはショートカットの雪美ちゃんが見たいとか?」

モバP「そういう訳じゃないです。雪美は雪美であの後ろ姿で安定感がありますから」

モバP「でも、背中が見える子にはその子なりの良さが出ますねと」

ちひろ「見返りポーズとかありますけど、人の背中をじっと見ることってそんなにないですよね」

モバP「正面の方が多いですね。だからこそ、例えば吊りスカート幸子の後ろ姿について誰かとじっくり語ったりしてみたい」

ちひろ「えぇ……。まあ、華奢で女の子だなあって感じはしますね。もう少し優しく扱ってあげてください」

モバP「優しく、ですか。……たまに幸子の背中は哀愁を醸し出したりもしますからねえ。気を付けます」

ちひろ「どれだけ人の背中を凝視していたらそんなことが分かり始めるんですか」

モバP「それでなくてもアイドルの後ろ側には気を配りますね。たまにスカートがカバンやリュックに引っかかって捲れることもあるので」

ちひろ「すぐ注意してもらえると助かりはしますけど、普段からそんな所見てるの? って思われそうです」

モバP「男はつらい」


雪美「……P……私も……見てるだけ……?」 ア、ゴメン

715

凛「プロデューサー」

モバP「どうしたー、凛?」

凛「プロデューサーってさ、レアキャラだよね」

モバP「俺が?」

凛「うん」

モバP「そんなことはないよ」

凛「最近自然遭遇できていなかったしさ」

モバP「お仕事で合流することはあるじゃないか」

凛「ダメだよ。オフに“あっ、プロデューサーじゃん。偶然だね”みたいな会い方をしたいんだ」

モバP「偶然ってのはただぶつかってくるのを待つだけじゃなかなか起こらないと思うぞ」

モバP「相手の行動・習慣を調べて偶然を装って自分から仕掛けるものじゃないかな」

凛「なるほど。じゃあ率直に、会いに行っても良いかな?」

モバP「偶然でなくても会いに来てくれて良いぞ」

凛「わーい」

モバP「しかし凛やアイドルたちなら分かるが俺はそんなにレアかね?」

凛「たまに偶然会えると嬉しいというか、ラッキー! って気持ちになるよ」

モバP「週一の水泳教室でたまにとても綺麗な女の子と一緒になるような感じか」

凛「それは私には分からない」

モバP「あらぁ……まあそりゃそうだ」

凛「プロデューサーは行動が読みにくいタイプだよね。あくまで常識的な範囲でだけど」

モバP「頭が良くはないから誰でも想像できること以上の行動は出来ないつもりだ」

モバP「あ、そうだ。凛、今度二人で植物園にでも行かないか」

凛「えっ?」

モバP「夏場にアレだが温室とか巡りながら凛の花言葉解説を聞いて過ごしたい気分でさ」

凛「突然すごい気分になるんだね? ふふっ、別に良いけど?」

モバP「よし、ではこの辺の日でどうでしょう」つ□

凛「OK。……始めてじゃないのに少し緊張するかも」

モバP「おっと、あまり店で話し込んじゃいかんな。じゃあ、この俺と似たデンドロビウムを買っていこう。家の手伝い、頑張れ」 ニテルカナ?


雪美「デンドロビウムの……花言葉……わがままな美人……?」

716

ナターリア「んん~♪」パクパク

雪美「……」パクパク

モバP「余ったチョコスプレーをスマートにスイートに使いきるのにチョコバナナは正解だったな」

ナターリア「おいしいゾ! まるでお祭り気分ダ!」

モバP「ホイップクリームにイチゴにバナナにチョコと全部乗せ出来るクレープと迷ったんだがな」

雪美「クレープは……都会……のイメージ……」

モバP「一応、お祭りシリーズで別にいちご串も作ってありますので」

雪美「……Pは……最高の……プロデューサー」キラキラ

ナターリア「りんご飴もそうだケド、お祭りにフルーツは何でもあるナ!」

モバP「本当よね。シンプルなチョコバナナにしても家ではそう作らない気がするから特別な感じだな」

ナターリア「作れば良いんダヨ!」

モバP「たくさん作って売ったりあげたりするには良いが、少人数用に作るのは面倒なんだよな」

ナターリア「そんナ!?」

雪美「P……素は……面倒くさがり……」

モバP「でもチョコレートとチョコスプレーが無くても、冷凍バナナというだけでも美味いのは良いよな」

ナターリア「そこは否定できないナ!」

雪美「夏は……冷たい方が……良いかも……」

モバP「柔らかいそのままのバナナより噛み応えがあるから満腹感も得られる気がするし」

モバP「また、バナナの良いところはカリウムによって余計な塩分を排出してくれることだ」

ナターリア「知ってたんダ? それを聞くト、意識して食べたくなるでショ?」

モバP「なるね。寿司で醤油の塩分を取り過ぎたと思ったらバナナで中和、みたいな」

雪美「……お寿司の、デザートに……バナナは……」

モバP「糖分の方が心配か」

モバP「何にしてもナターリアが喜んでくれたなら作った甲斐があった」

ナターリア「Pも、ナターリアと同じバナナ好きで良かったヨ」ハム

モバP「……バナナを食べるナターリア、良い顔をしているよなあ」

ナターリア「あっ、もっと優しく食べてほしいカ?」

モバP「いや、食べ物を口元で弄ぶのは失礼なので普通にどうぞ。そういうグラビア? あれはな……」


雪美「……普通に……食べていても……ナターリアは……魅力的……」

717

モバP「雪美さんに着せてはいけない服」ヒソヒソ

ちひろ「密やかにやるのか」

雪美「……三人で……悪巧み……みたい……」

モバP「今回は、咲-Saki-の国広一の私服ですね」

雪美「……実物は……ある……?」

モバP「今回も画像で」つ□

ちひろ「うわあ……何だこの痴女は」

雪美「……涼しそう……。どこに行けば……こんな服……買える……?」

モバP「これをしまむらやユニクロで売っていたら世紀末を疑うから、コスプレ専門の所かな。ちひろさんなら持っているはず」

ちひろ「私は持ってません。……いや、本当に無いですからね?」

雪美「……こっちには……着崩しすぎた……巫女も……いる……」

モバP「はっちゃんの格好をされるとさすがに失血死しそうなのでこちらからストップ」

ちひろ「どっちもどっちですよー」


モバP「しかしこの永水、芳乃が居ても違和感ないな。もしくは九州赤山」 マージャンツヨソウデスヨネ

718

雪美「P……私……ここにいる……」

モバP「そうだな。俺の膝の上、目の前にいるからな」

――

雪美「P……私……ここにいる……」

モバP「近くの物陰に隠れたって見えるぞ」

――

雪美「P……私……ここにいる……」

モバP「事務所のドアの隙間から覗き見とは、なかなか遠ざかるね」

――

雪美「P……私……ここにいる……」

モバP「中庭まで下りたのか。手を振らなくても分かるがさ」

――

雪美「P……私……ここにいる……」


モバP「ゆきみーーー? どこまで行ったんやゆきみーーー?」

719

モバP「今はもう夏は空調がないと命に関わる、なんて時代なんですね」

ちひろ「毎年猛暑かもっと猛暑かですからね」

モバP「扇風機だけで過ごせていられるなら電気代的にも環境的にもその方が良いんでしょうが」

ちひろ「今は他にもサーキュレーターとか冷風機とかハンディファンとかいろいろありますけど」

ちひろ「とりあえずヒートアイランドの悪循環の中で自分だけ痩せ我慢とかしても体に良いことはなさそうです」

雪美「……」ソヨソヨ

モバP「こんな中、雪美さんをお外に連れ出さないといけないのは心苦しい」

ちひろ「快適な温度になっている室内から出たくないのは分かりますけど、頑張って。温度差で自律神経をやられないように気を付けて」

モバP「ふぁい。それにしてもこの気温でノースリーブとはいえゴスロリ系の格好で大丈夫だろうか」

雪美「……暑くなったら……Pに……冷ましてもらう……。何度でも……」

雪美「さあ……行こう……」

ちひろ「出たがらないと思ったら意外とやる気ですね」

モバP「そういえば最近買ったパゴダ傘があるんだったな。それのお披露目というわけか?」


雪美「うん……。蘭子みたいに……マダムっぽく……歩きたい……」

720

モバP「この時期に聴いていたい環境音ベスト3」

モバP「鴎の鳴き声が混じる港の波の音、コオロギが鳴いている音、バスがバス停に停まっている時のアイドリングやスイングドアが開閉する音」

ちひろ「最初の二つは良いとして最後のは何ですか、バス好きなんですか」

モバP「ノスタルジーに浸れるので好きですね」

ちひろ「お父さんが乗って帰ってくるバスをバス停で今か今かと思いながら待っていた記憶でもあるんでしょうか」

モバP「そんな綺麗な思い出が欲しかったですねえ」

モバP「そうそう、我々のこうした雑談も実は環境音として聴取されているそうですよ」

ちひろ「何ですかそれは聞いてないんですけど。というか誰需要のコンテンツですか」

モバP「ラジオみたいなものと思えば良いんじゃないですか? アイドルが密かに楽しんでいるとか」

ちひろ「それもしかしてただの盗聴なんじゃないですかね」

雪美「……トークは……BGM……ある方が……良い……」

モバP「お、雪美さんが来てくれました。……確かに声&声だけじゃ少し寂しいと感じる時もあるな」

ちひろ「雪美ちゃんはこういうBGMが欲しいなってのはあります?」


雪美「……ししおどし……?」 シブイデスネ

今日はここまで
俺を置いて先に行け

721

モバP「雪美はカリオストロの城が好きだよな」

雪美「……うん」

ちひろ「何度でも見てしまうほどお気に入りというわけですか」

雪美「……見直すと……発見が……ある」

モバP「先の展開が分かっていても飽きない面白さなんですよね」

モバP「個人的に名シーンだと思うのは、レストランでミートボールスパゲティを食べる場面と、廃墟できつねうどんを食べる場面と、怪我を治すためにおじいさんが持ってきてくれたパンやチキンやソーセージをドカ食いする場面ですね。あのフィアスコのようなボトルのワインで流し込んだら幸せで満たされそう」

ちひろ「大切な物を盗んでいきました、の場面じゃないんですか」

モバP「そこはもう名シーンとして扱われすぎて改めて挙げるのも芸がないかなと」

雪美「……私も……心を……盗みたい……」

ちひろ「盗む方ですかい」

ちひろ「でも宮崎駿アニメの飯テロ、というか食事シーンは本当に美味しそうに見えますし、美味しそうに食べるんですよね」

モバP「味わって食べるのも良いですが、がっついている方が見ていてこちらの食欲も湧くという」

雪美「今度……二人で……あのミートボールスパゲティ……食べたい……ね」


ちひろ「東京で食べられる所いくつかありますけど、かなり量多いですよ?」

722

モバP「ちひろさんって版権キャラクターもののコスチュームも結構持っている方ですか?」

ちひろ「そりゃあ業界最大手ですからね」

雪美「……業界……とは……」

モバP「中には際どい衣装も?」

ちひろ「雪美ちゃんに着せるのはどうかという物もありますね」

モバP「良いなあ。ちひろさんの能力、四次元鍵付きクローゼット」

ちひろ「私にそんな能力はないです」

モバP「しかしそうですか。あんな衣装やこんな衣装もあるんですか?」

ちひろ「ええ。たまに雪美ちゃんを招待して好きな服を試着してもらいます」

モバP「……は?」

ちひろ「貴重な黒髪のBMGになってもらったりしましたね?」

雪美「……ブラック……マジシャン……ガール……」キラキラ

モバP「ズルいですよ! 雪美さんのBMGを独り占めとか……そんな……そんな……っ! ううっ」


ちひろ「泣くほどですか」

723

モバP「……や」ノ

雪美「……」ノ

ちひろ「何ですかその挨拶」

モバP「コンパクトコミュです」

ちひろ「え?」

モバP「最近話が長くなりがちでしたから」

モバP「もっと端的に行こうかと」

ちひろ「始終業式の校長先生みたいな悩み」

モバP「エネルギーを使いますからね」

雪美「……無口にも……やさしい……」

ちひろ「……」

モバP「……」

雪美「……」

ちひろ「さすがにこれでは」

モバP「では雪美さん、遊ぼう」

雪美「……何をして……?」

モバP「そうだな、マリオカートはどうだ」

ちひろ「事務所に来てゲームするんか」

モバP「ただ罰ゲームは基本よね」

モバP「負ける度に一枚脱いでいこうか」

ちひろ「こら」

雪美「……Pも……脱ぐ……?」

モバP「俺だけ脱がんわけにはいかん」

雪美「……じゃあ、やる……」

雪美「ちひろさんは……?」

ちひろ「事務所に来て脱衣ゲームするんか」

モバP「レア度が上がるたび、露出が増えるね」

ちひろ「美少女ソシャゲかな?」


雪美「P……悪いこと……しないって……信頼してる……」 ウレシイネ

724

モバP「御晩です」

ちひろ「北日本のこんばんわ的な挨拶ですか」

モバP「失礼、間違いました。お盆です」

ちひろ「お盆ですね。大体13日から15日の三日間」

モバP「お墓参りをして、親戚と食事をしてね」

雪美「……お盆が……温度……一番……暑く……感じる……」

モバP「出かけるも迎え入れるも準備の忙しさがあるからな」

モバP「だらっとした休日と違って、残暑を実感しますね」

雪美「……P……ナスとキュウリ……買う……?」

モバP「お、忘れないように買っとかないとな」

ちひろ「精霊馬にでもするんですか?」

モバP「いえ、家のお漬物が切れていたので糠漬け用に」

ちひろ「プロデューサーさんは平常運転ですか」


雪美「……Pのぬか漬け……懐かしい味で……好き……」 キョウトフウ?

725

モバP「346プロには多くの施設が入っている」

モバP「だがこのおばけ屋敷は何のためにあるのか」

??「……」

モバP「ん? 今何か動いた? しかし中は薄暗くてひんやり」

??「うー……らー……めー……しー……やー……」ピトッ

モバP「冷たっ!? って雪美さん」

雪美「……私は……幽霊……」

モバP「いや、雪美さんでしょ」

雪美「……」ピトッ

モバP「冷たっ!? クールバブバブのゲルフォームかそれ」

モバP「……しかし、こんな幽霊なら喜んで取り憑かれたい」

雪美「……もっと……怖がって……」

モバP「白い着物越しにボディラインが出るのは怖いかも。太ももが柔らかそう」


雪美「……」ピトッ ツメタッ

726

モバP「スイカが一番美味しい季節だな」

雪美「……でも……食べ飽きる……ね」

ちひろ「味・食べ方にバリエーションを持たせにくいですからね」

モバP「素麺や冷麦と同様に夏の思考停止連投メニューに挙げられがち」

雪美「塩でも……振る……?」

モバP「スイカに塩か。塩麹とか塩何々ってある時から急増した印象」

ちひろ「甘くはなりますよね」

モバP「生ハムメロンのような感覚ですかね」

雪美「スイカに……生ハムは……合う……?」

モバP「スイカも“ウォーター”メロンだからな。でもまるで合わなかった時に後悔しそう」

ちひろ「化学反応を試すのは楽しいんですけどね」

モバP「食べ合わせは大抵は実験して結果を出している先人がいますから」

雪美「天ぷらにスイカ……プリンにしょうゆ……」

ちひろ「まあその辺は興味本位で試そうとは思わないですね」

モバP「そういえば生ハムメロンって特に食べた記憶がない」

雪美「……美味しい……の?」

ちひろ「飽きるくらい食べてますけど、普通ですよ」

モバP「良いなあ。生ハムもメロンも庶民には高級ですが」

ちひろ「今はそうでもないでしょう。安いのもあります」

モバP「……たまには少し贅沢してメロンとか食べようかなあ」

雪美「……P……甜瓜は……食べるのに……」

モバP「何故か甜瓜は実家の方から送られてきたりするからな」

ちひろ「甜瓜もメロンの仲間なので実質メロン食べてると思えば良いんです」

モバP「やだい! おいらはオシャレでリッチなメロンを食べたいんだい!」

ちひろ「結構見栄っ張りですね」

雪美「スイカも、メロンも……皮を食べられて……種もチョコレートだったら……良いのに」

ちひろ「スイカバーかな?」

モバP「でもスロットマシンでスイカシンボルが多いのは少し誇らしいです」


ちひろ「結局スイカも好きなんですね」

727

モバP「ちひろさんはまた一週間ほど休暇を取るんですね」

ちひろ「その辺は会社が応相談ということにしていますからね」

モバP「寂しくなります。これ、花束です」

ちひろ「私は定年退職する先輩か何か?」

雪美「……夏場は……お花……枯れやすい……から」

ちひろ「何か含みとかありませんよね?」

ちひろ「じゃあ、テーブルフラワーとして使わせてもらいます」

モバP・雪美「……ちひろさん……」

ちひろ「別れのムードを演出しないでください」

ちひろ「プロデューサーさんは私がいなくても大丈夫でしょうか……」

モバP「アシスタント代理が来るので。アイドルですが」

雪美「……今度は……誰が来る……?」

モバP「誰だろうな」


ちひろ「というかプロデューサーさんは年中無休で大丈夫なんでしょうか?」

おまけ17

凛「初めてじゃないのに少し緊張するかも」

モバP「訂正乙」

凛「そういえばプロデューサーと植物園に行くの初めてじゃないんだよね」

モバP「凛がアイドルになったばかりの頃に行ったな。そして、仕事だがバンクーバーのバンデューセンバーゲン? にも行ったっけ?」

凛「バンデューセンガーデンだよ。早口言葉噛んだみたいになってる」

モバP「……凛との思い出の場所を言い間違える俺は情けねえ……」

凛「また行こうね? そうすれば間違わないはずだよ」ヨシヨシ


おまけ18

モバP「ラニーニャ現象発生の可能性が高まる、か」

ちひろ「夏は暑く、冬は寒くなるんですね。早く影響が出れば残暑がきつく長引くかもしれません」

雪美「……ずっと……暑い……。……にゃー」

モバP「雪美が先のことを考えるのを拒否している」

モバP「まあ、あと何週間暑さに耐えなきゃいけないのかと思うとめげるよな」

ちひろ「猫になって顔を洗っていいお湿りでも来るのなら良いんですけどねえ」

今日はここまで
それは嘘だったのか

728

モバP「おはようございます」

留美「おはよう、P君」

モバP「……!」

留美「あら、私だと意外だったかしら?」

モバP「いえ。アシスタントからプロデューサーさん、ではなくしっとり君付けされるのが何か新鮮で」

留美「そう? でも、プロデューサーさん、と呼んだ方が仕事上は適切ではあるわね」

モバP「いえ、もう少し君付けを堪能させてください」

留美「ふふ……今日から一週間、アシスタント代理を務めさせていただくわ」

留美「改めて、自己紹介は必要ないかしら?」

モバP「はい。よろしくお願いします、和久井留美さん」

モバP「元秘書の留美さんなら心強いです。前回は脱線が多く結構仕事が滞ったので」

留美「前回……? 誰だったの?」

雪美「          心 か          」


モバP「心先輩でした。というかそれなんてウルキオラ?」

729

留美「P君、この後18時から打ち合わせが入っているわ」

留美「それと食事が取れていないようだから、お弁当よ」

モバP「サラダにスープまで……助かります。まだ少し時間があるので食べていこうかな」

留美「私は書類の整理をしておくわね」

モバP「あっ、ありがとうございます」

雪美「……できる……アシスタント……」ピョコッ

モバP「ああ。ちひろさんも気が回る方だが、留美さんは何かこう、頼もしい」

雪美「……分かる」

モバP「そんな留美さんのために自分も頑張らずにはいられない」

モバP「頼もしさとは時に孤独なもの。そんな留美さんの隣に堂々と立って、頼られるようにもなりたい」

雪美「……もう……留美は……Pのこと……頼りに……してる……と思う」

モバP「既にそうだと良いな。にしては普段、物理的な距離を感じる時もあるが」

雪美「……それは……Pが……少し、猫体質だから……」 エッ?


留美「はくちゅんっ!」

730

留美「聞きたいことがあるのだけれど、良いかしら?」

モバP「何でも聞いてください」

雪美「ん……? 今……何でも……って」

モバP「雪美さんは膝にお座り」

雪美「……」ポスン

雪美「……Pが、何でもするって……言ったら……婚姻届も……書いてくれそう……」

留美「そうなの?」

モバP「書きませんよ」

留美「社会人は何でもハイハイと二つ返事で署名捺印したらダメよね」

モバP「書類によっては取り返しのつかないことになりますからね」

留美「それで、聞きたいことだけど……P君って年中無休なの?」

モバP「……それはありませんね」

留美「ちひろさんが心配してたわ。いつ休暇を取っているのだろうって」

雪美「それは……私も……思う……」

モバP「とりあえず、まとまった休暇は無いですね」

モバP「休日も一応来て資料に目を通したりアイドルと遊んだりしますし」

雪美「半分……遊びに来ている……?」

モバP「言い逃れしにくいところだね。で、サービス出勤なので給料は出ません」

留美「……労基的に大丈夫かしら。ちひろさんが気にするのも分かるわ」

モバP「苦では無いですし、ドリンクや栄養剤を貰っていますから大丈夫です」

モバP「それからアイドルの笑顔を見られたりスキンシップをされたりといった現物支給もありますし」

雪美「……自宅……兼……職場……みたい」

留美「P君は今の環境が快適に感じ過ぎて、転職とか出来ないタイプね」

モバP「転職ですか。これまで考えたことも無かったです」

留美「それで良いのよ」

モバP「それに、学校の午前中授業じゃないですが、半ドンで帰宅したらその日の残りは実質休日感覚です」

雪美「……午前は学校……午後は休み……わくわくする……」

モバP「下手に休みか出勤かよりその方が楽しいよな」


留美「趣味は仕事……そんな風に思っていたことが私にもあったわね」

731

モバP「プールで泳いでいると暑さや悩みを忘れられる気がするなあ」プカプカ

雪美「……」プカプカ

留美「こうして見ると親子みたいに似たような動きをしていて面白いわね」

モバP「……視界の端に映る留美さんの水着……ビーチパラダイスを思い出す。クールだ」

留美「……私には少し大胆過ぎる気がしないでもないわ」

モバP「そうですか?」

留美「こんな歳になると、もっと落ち着いた装いにすべきじゃないかしら」

モバP「その水着が似合っていますよ。日頃の努力と鍛錬のボディ、見せないと勿体無いです」

留美「そうやって年上をあまり煽てたらだめよ? 勘違いするかもしれないわ」

ザブン

スーッ

モバP「留美さんは泳ぎまでクールだなあ」

雪美「……む……私も……クールの……端くれ……。負けない……」

モバP「雪美さんが端くれだと、クールを極めたら一体どうなるのか」

――

モバP「泳いでいると時間があっという間に過ぎるな」

雪美「うん……」

留美「良い運動とリフレッシュになったわ」

モバP「水に浸かったり浴びたりするのは悪いものを洗い流してもらえる感じがして好きですね」

雪美「すっきり……した……?」

モバP「でも、こうして雪美や留美さんが服に着替え直してしまうと、プールで見せた一時の水着姿が名残惜しい」

留美「煩悩が残っているわね」

雪美「私も……Pの水着……見られたから……おあいこ」

留美「あの引き締まった体……P君も陰ではジムで努力しているの?」

モバP「……まあ、見られても恥ずかしくないようにはしておかないとですね」

モバP「アイドルのプロデューサーでありながら自分だけ肌を晒すのが嫌、なんてことは言えませんから」

モバP「しかしプール上がりに当たる風もまた気持ち良い」

雪美「濡れた、部分は……風が当たると……冷たく……感じる……」


モバP「気化熱か。……ああ、良いねえ……」ソヨソヨ

732

カナカナカナカナカナ

雪美「……P……この音は……何……?」

モバP「これはひぐらしの鳴き声だね」

雪美「ひぐらし……」

モバP「文字通り日暮れ時の山林でよく鳴いているセミだ」

カナカナカナカナカナ

雪美「……」

モバP「……」

雪美「……」ギュッ

モバP「夏の終わりの切なさみたいなものを感じさせてくれる声だな」

雪美「……私の……最初の……ひぐらしの思い出……Pとに……なった……ね」

モバP「今後雪美さんはどこかでひぐらしの声を聞くと、今日のことを思い出すのか」

雪美「……その時は……また……隣に……いて……? 寂しく……ならない……ように」 アア


カナカナカナカナカナ

733

モバP「くかー……くかー……」

雪美「……よく……眠ってる……」

留美「疲れたのかしら? ……ふふっ」ナデナデ

雪美「……留美……ママ……みたい……。優しい……顔……」

留美「そんなにお母さんっぽい? でも、油断しきった寝顔が、何だか良いわ」

雪美「寝ている時は……みんな……無防備……」

留美「まるで猫が寝ているような愛らしさね」ナデナデ

留美「……くしゅんっ!」

雪美「留美……?」

留美「ふー……おかしなことに、P君を猫として意識しだしちゃうと症状が出てくるの」

留美「……いえ、これは気持ちの問題。P君は猫じゃない。こうして近づいても大丈夫――」

モバP「ん……留美さん? とても距離が近」

留美「にゃんっ!?」


雪美「P……いきなり起きたら……ダメ……」 スイマセン

734

モバP「最近、日焼けサロンのチラシをよく見かける気がするな」

雪美「……P……焼くの……?」

モバP「自分で言うのも何だが白い方だし、焼いたら? とたまに言われることはあるな」

モバP「でも想像してみてくれ、黒い俺を。黒光りする俺を」 ヒカルノ?

雪美「……」

雪美「…………」

雪美「そのままが……良い……」キリッ

モバP「じゃあそのままでいます」

モバP「まず、高校の時に海で遊んで真っ黒に日焼けしたことがあったんだが」

モバP「その時は体色だけで威圧感が増して、しばらくみんなから距離を置かれたからなあ」

雪美「……お気の毒様……」

モバP「当時は日焼け止めを塗っていたんだが、泳いでいたら落ちてしまったんだろうな」

モバP「塗るなら泳ぐな、泳ぐなら塗るなってことかなあ。環境にも悪そうだし」


雪美「私と……塗るか、泳ぐかなら……どっち……?」 キュウキョクダナ

735

雪美「……今日の撮影……終わった……」

留美「お疲れさま。見ただけで分かる、頑張った顔ね」ナデナデ

雪美「……ありがとう……」キラキラ

雪美「……Pも……」(つ゜-゜)つ

モバP「はいよ」ヒョイ ポスン

雪美「……」シャキーン

雪美「……」ツヤツヤ

留美「さっきまでくたびれていた雪美ちゃんが完全再生したわね」

雪美「ふふ……もう一頑張り……できそう……」ピョン

モバP「歩く天然温泉とは私のこと。留美さんも乗ってみます?」 エ? イイノ?

――

モバP「……お二人が元気いっぱいになって何よりです」ゲッソリ

留美「……えっと、エネルギー切れを起こしたらスタミナドリンクを補充するように、とちひろさんのメモに書いてあるわね」ツヤツヤ


雪美「スタドリ……持って来た……」 タスカルワ

今日はここまで
そう告げたはずだぞ

736

モバP「雪美さんは本日は何と二部構成。前半はゴスロリの黒ドレス、そして後半は」

雪美「……」キラキラ

モバP「まさか真逆のような白ワンピースに着替えるとは」

雪美「……どう……?」

モバP「グッド。黒猫から白猫になるというストーリーがそそる」

モバP「ふぅ……おんし、ウチのタマ取りに来とるのう?」

雪美「……巴?」

モバP「感動のあまり広島の方の方言が出ただけじゃけえ」

雪美「P……広島の出身……だった……?」

モバP「冗談じゃ。あ、タマと言ってもうちのタマ知りゃあせんか? のタマではない」

雪美「言い方……。……でも……猫の名前……タマは……あまり、いない……ね」

モバP「昔は定番の名前が犬・猫でポチタマだったんだがな。しかし目に毒だあ」

雪美「……くっついてしまえば……毒じゃない……?」ポスン


モバP「でも上から見る膝上雪美の短いスカートから伸びる足も……いい」

737

モバP「……ふふふ……くく」

雪美「……ここ……すき……」

菜々「あっ、プロデューサーに雪美ちゃん」

菜々「お二人とも、な~にを読んでいるんですかっ?」

雪美「……菜々……? これは……猫の……漫画……」

菜々「こっちに複数巻積んでありますね。って、これは……!」

菜々「ホワッツマイケルじゃないですか! しかも全巻ありますね♪」

モバP「……あっ、つい文香モードになっていて菜々さんに気付くのが遅れた」

菜々「そんなに熱中しちゃいますか? 」

モバP「黒じゃなくて茶トラですがやっぱり猫好きとしては。初出1984年ですってね」

菜々「もうそんなに昔ですか……いえ、生まれてませんけどね? 永遠のセブンティーンなので☆」

モバP「さすがにか……いえ、なんでもないです。菜々さんもどうです?」

雪美「P……次のページ……」 ア、ハイ


菜々「……普通は回し読みになるんですけどねぇ。二人で同じ漫画を読むとは」

738

舞「でね……今日は……」

雪美「……私も……うん……」

モバP「ふう……。……ん?」

舞・雪美「……?」

舞「あ、プロデューサー!」

雪美「P……やっほ」(゜-゜)ノ

モバP「やっほ」ノ

舞「気さくな挨拶良いですね!」

雪美「9月からの……リニューアル版を……先行使用……」

モバP「いや、思いつきだよな?」

雪美「……?」キョトン

モバP「くぅー、こやつめ、すましおる。舞もやっほ」ノ

舞「やっほ!」ノ

モバP「二人は意外と一緒にいることが多いが、そういえば唯一の同い年だったな」

舞「授業で習ってる箇所がちょうど同じで、雪美ちゃんとはよく学校の話をするんです」

モバP「へえ、そうだったのか」

モバP「しかしこうして見ると、俺も学校帰りに友達と一緒に歩きながら喋くっていたのを思い出した」

雪美「……Pも……誰かと……?」

モバP「ああ。楽しくて、いつまでもこんな時間が続けば良いのにと思う瞬間だな」

モバP「ただ、行きは一緒に行くことがあまりなかった」

舞「道すがらお友だちと会ったら一緒に行きませんか?」

モバP「それはあるが、予め待ち合わせてまでは行かないなと」

舞「確かにですね。でも、たまに遊びに行く時とかはしっかり待ち合わせします」

雪美「おしゃれして……噴水で、待ち合わせて……デートも……良い……」

モバP「でもまあ、仲の良い幼馴染だったら、毎日のように迎えに行って学校まで同行しても苦じゃないのかもしれないな」

雪美「……うん。……私……また……Pと……朝に会って……途中まで……一緒に行きたい……」

モバP「油断すると気づくとそのまま学校まで付いて行ってしまってそうで怖いや」

仁奈「雪美ちゃんは偶然会うまでもなく通い妻でごぜーますね」


モバP「お、一輪車トリオ集結。それはそうと仁奈は通い妻なんて言葉どこで覚えて」

739

モバP「……猫が美味しそうにスティック状のおやつを食べるCMを見て思うが」

モバP「あれ、美味しいのかな? ヒト感覚だと味は薄そうだが」

雪美「……P……猫化……進んでる……?」

モバP「えっ? いや、ただの興味だよ。あれが最近美味しそうに見えてきたとかそんなんじゃない」

モバP「中にクリームが入ったカリカリのドライフードとか高級そうな猫缶・ウェットフードとか全然美味しそうだなんて」

雪美「……(疑いの眼差し)」

鈴帆「時にPしゃん。“ぎんのすぷーん”という言葉で何ば連想すんね?」

モバP「キャットフード」

比奈「漫画」

鈴帆「そこは洋菓子店ばい」

モバP「いや、福岡県民でないと“銀のすぷーん”は馴染みがないのでは?」

鈴帆「そげんことなかよー。現にPしゃんは知っとーもん」

雪美「少し……誘導っぽい……」

鈴帆「でも迷わずキャットフードが出てくる、そげなPしゃんも好きやけん」 ドンナオレダヨ

比奈「あー、プロデューサーは最近はよくシリアル系を食べてるそうっスね」

モバP「ハーシーチョコビッツがな。なかなか絶妙な二層の舌触りでドライフード感……あっ」

モバP「雪美、どうしよう。俺、猫化しているのかもしれない」

比奈「そこで気づくんスか」

鈴帆「なーんか、Pしゃんがもし猫になってもそのままプロデューサーやっとー気がするとよ」

比奈「猫プロデューサー……猫駅長さんみたいなマスコット的存在になりそう」

鈴帆「そん時はウチが専用の半纏ば作って着せちゃるけんね」

モバP「猫になりきってしまう前提で話を進めないでおくれよ……」

モバP「CIAOちゅ~るじゃないが、スティックゼリーでも食べて気を紛らわせるか」

比奈「持ち歩いてるんスか」

雪美「……」(゜o゜)

モバP「……はい、どうぞ」

雪美「……♪」ハム

鈴帆「負けじとこっちも猫っぽかね」


比奈「……女の子にスティックゼリーを食べさせる絵面は結構際どいっスね」

740

モバP「はー、なー。スイカ食べないか?」

颯「食べるー♪」

凪「はーちゃんに寄せた呼び方に驚きの木です」

モバP「では持ってきましたこのどこを見ても普通のスイカ」

モバP「これを……」シャキーン

凪「包丁やハサミの逆手持ちは危ないですよ、と、小学校の男子に先生がよく言っていました」

雪美「P……傘を……逆手持ち、しているのも……見たことある……」

颯「Pちゃんったらヤンチャだねー」

モバP「手遊び癖が出るのは僕の悪い癖です」

モバP「では真面目に、切ります」スパッ

パカッ

雪美・颯「……!!」

凪「わお、まさかの果肉が黄色いスイカでしたか」

モバP「一般的にはクリームスイカと呼ばれていたりする」

――

雪美「……おいしい」

凪「スプーンの提供感謝です。これで若干お淑やかに食べることができます」

モバP「味はほぼ想定内のスイカの味なんだよな」

モバP「クリームと名がついているからとろっとしていて生クリームの味がする、わけではない」

凪「ところがミニトマトと同じく、色が違うと栄養成分も違うそうで。ふしぎふしぎ」

モバP「あ、そこも俺が言おうとしたのに。なーは賢いなあ……ところで、はー?」

颯「……♪」パクパク

雪美「颯……夢中」

凪「はーちゃんはクールなのです。これが真理か……」

モバP「ところで、はーとなーは一日だけ入れ替わりとかしたことあるか? 偏見かもしれないが創作の双子がよくやるイメージ」

凪「御多分に洩れず、ですね。きちんと見抜いてもらわねば凪のPへの好感度はこっそりダウンします」

モバP「まさか時々入れ替わっているのか? ……当てる自信がないとは言わないが、そういう減点方式はお互い得しないな」

凪「それはわかりみです」


颯「……♪」パクパク

741

モバP「……自分一人でもやれるが、雪美がしてくれるのか?」

雪美「……」コク

モバP「分かった、頼むよ」

バフッ

モバP(ソファに横になる俺)

モバP(馬乗りになってくる雪美)

ガチャ

美波「こんにちはー。プロデューサーさん、います? ――って」

美波「……お、お取込み中のところを失礼しました///」

モバP「待てい、目薬を差してもらおうとしているだけだから」

雪美「……P……怖くない……よ? 大人しく……して……」

モバP「それは分かるんだが、目に直接来ると思うとどうしても反射的に白目になるんだよ」

雪美「……ふふ……面白い……顔……。もっと……見せて……」


美波「雪美ちゃん……恐ろしい子!」 ミナミガシロメニナルンカイ

742

雪美「……P」

モバP「何だい」 ピヨピヨ

雪美「……何でもない」

モバP「そうかい」

雪美「………………P」

モバP「何だい」 ピヨ

雪美「…………やっぱり……何でもない」

モバP「そうかい」

雪美「……怒らない……の?」

モバP「俺はせっかちなところもあるがそのくらいでは動じない」

モバP「雪美の決心がついた時に言えば良い」 ピヨピヨ

雪美「……分かった……。……P……頭に……鳥……飼ってるの……?」

モバP「最近は頭に黄色い鳥を乗せたトンファー持ちがモテると聞いてな」 ソウ……


帰ってきたばかりのちひろ「ツッコミ不在のまま進めるな」

今日はここまで
私にはもう何も聞こえぬ、見えぬ……

743

モバP「もう9月か」

雪美「……残暑が……厳しい……ざんしょ?」

モバP「……くっ」プルプル

雪美「……私……楓を……インストール……」

モバP「いやんもう、雪美さんったら俺を和ませないでくれ」

雪美「……寒く……ならなかった……?」

モバP「まあ駄洒落は駄洒落だ。それに普通はオヤジギャグを言うのは逆で、俺の方だろう」

モバP「でもそんなくだらないやり取りで笑い合えることが、何だか仲の良い家族みたいで良いな」ナデナデ

雪美「……んっ……」

モバP「それにしても、もうこんな暑苦しい日々は二度と御免だ、なんて毎年思うのに、喉元過ぎれば熱さを忘れる、と言うのかね」

モバP「一年経ってまた夏が来れば、今年は涼しくなるはずだとか根拠のない期待をしている俺がいる」

雪美「……そして……やっぱり暑い……の、繰り返し……」

モバP「実際はいつの夏も暑いものなんだよな。観念して生活作りをするしかない」


ちひろ「観念した結果の距離感がこちらですか」

744

モバP「雪美力を鍛えよう(提案)」

ちひろ「ほう、感心感心――って何ですかその聞き慣れない力は」

モバP「女子力の一つの形のようなものです」

モバP「雪美さんのようになりたいなら、雪美さんに近づけば良い」ダキッ

雪美「……」(゜-゜)

ちひろ「近付き過ぎだと思いますよ」

モバP「雪美さんの行動を自分に合った形で上手く取り入れて、自然体で真似る」

モバP「……」(゜-゜)

雪美「……P……スイッチ……入った……」

モバP「……うん」

ちひろ「何か雰囲気が雪美ちゃんっぽくはなりましたね」

モバP「……本当?」

ちひろ「でも率直に言って不自然なので戻してください」


雪美・モバP「……不自然……?」 ハイ

745

モバP「食レポの番組って最近多い気がしますね」

ちひろ「アイドルが出ているものだけでもそれなりに数がありますからね」

モバP「食レポは飯テロ。見る度にお腹が空きます」グー

雪美「!」ビクッ

モバP「おう、すまない雪美」

雪美「急に……お腹が……鳴ったから……びっくりした……だけ」

ちひろ「QON」

ちひろ「というかプロデューサーさんのお腹に耳をつけて何をやっているんですか」

雪美「……聴診……?」

モバP「昔、小児科とかにある聴診器、自分も着けてみたいなと思っていました」

ちひろ「ああいう検査されるのって子ども心には未知の恐怖がありますね」

モバP「舌圧子なんてアイスの棒みたいなのを口に突っ込んだりしますからね」

雪美「……Pの、体の音……落ち着く……」

ちひろ「服を捲らないとそんな大した音は聞こえないと思いますけど」

モバP「しかし、チェストピースを当てるのに服を捲ってもらうとか上半身の前面を曝け出してもらうってなかなかですよね」

ちひろ「医療行為ですからね」

雪美「……Pも……私の音……聴く……?」

モバP「そうだな。これは雪美の体に異常が無いか確かめるためだ。じゃあ脱いでもらおうか」

ちひろ「戯けが」

モバP「はい。……世に言うお医者さんごっこ(意味深)ってそういうことをするんでしょうかね?」

モバP「あ、話を戻しまして、食レポですよ」

モバP「今は中にクリームのたっぷり詰まったロールケーキが食べたい気分です」

雪美「ロールケーキ……イチゴやキウイ……モモが入って……ふわふわ……」

モバP「フルーツロールケーキは芸術の域っすよね。他にも最近はチーズクリームとかハチミツレモンとか見かける」

雪美「ハチミツレモン……甘酸っぱくて……すき。チーズは……濃厚……」

モバP「というか乳製品全般が大体好き」 ……ウン

ちひろ「随分広く出ましたね。プロデューサーさんは甘党のようで」

モバP「小学生の頃は辛いもの好きだったのが、最近段々……親離れした反動でしょうかね?」


ちひろ「周りに女の子だらけな環境なのも影響はしてそうです」

746

晶葉「できたぞ! ハイライトを消せる眼鏡だ!」

モバP「ほほう」

モバP「見たところ普通の眼鏡だな。薄くて軽い、かけても良し」スチャッ

晶葉「使い方は簡単で、右の丁番部分のツマミを回すとハイライトカットモードになる」

モバP「これか……ん」

晶葉「……どうだ?」

モバP「……晶葉の目が笑ってなく見える」

晶葉「……Pの視線が熱いな」

モバP「失礼、見つめ過ぎた。面白い発明だと思うが……スランプか?」

晶葉「そういう時もあるさ」

雪美「……P……? あ……眼鏡……かけてる……」

モバP「……雪美。ハイライトを消した状態で見つめられると何だか申し訳なくなるな」

雪美「……」ポーッ


晶葉「Pは意外と裸眼より眼鏡をかけている方が男前じゃないか?」 デザインノオカゲデスヨ

747

モバP「ちひろさんは財布の色って気にします?」

ちひろ「いいえ? 特には」

モバP「金運の黄色い財布とか、以前はよく新聞の広告に載っていたそうですよね」

ちひろ「これを持っていると宝くじが当たりました、とか?」

モバP「はい。当時のものを閲覧する機会があったんですが、率直に騙されそうになりました」

ちひろ「そんなのでお金が儲かるなら誰も苦労はしないんですけど、困窮して視野が狭くなったりすると信じてしまうんですかね」

モバP「でもよく考えると黄色い財布なんてそこらへんに売っている気がします」

ちひろ「色の問題ですか」

モバP「今使っている財布が結構くたびれてきているので新しいのが欲しいと思っているんですが」

モバP「黄色はどうかなーとちょっと聞きたかったんです。もしくは自分のパーソナルカラーを意識して緑」

ちひろ「それは私と被るのでやめてください。というかプロデューサーさんのパーソナルカラー緑色じゃないでしょ」

モバP「おや、ちひろさんの財布は緑色ですか。黄色よりは落ち着いた色ですが、緑も風水的には良いらしいですよね」

ちひろ「そんなちょっとした下心ありで緑財布使ってるわけじゃないです」


雪美「P……小銭入れは……既に、緑色……ね」 ガマグチデスネ

748

モバP「キャンピングカーはロマンだなあ」カチカチ

雪美「……あ……これ……いい……」

モバP「軽トラックを改造したやつか。馬力がやや心配だが、リーズナブルだな」

ちひろ「買うんですか?」

モバP「見ているだけです」

ちひろ「賢明だと思います」

モバP「住所不定の渡り鳥生活は憧れますが現実的には難しいんだろうなと」

モバP「後は大型クルーザーを買って海の上で生活してみるのも夢です」

ちひろ「で、それらを経て、地に足が付いた、というか地に根差した家がやっぱり一番だ、と回帰するんですね」

モバP「そういうものですかねえ。移民宇宙船やメガフロート海上都市や地下都市にも憧れはありますが」

ちひろ「そこまで行くと個人レベルではない上にSFの世界ですね」

雪美「……P……全部……自分で……作れそう……」

モバP「キャンピング軽トラなら作ってみたいな。後ろを金の神輿のような装飾にしたりしてな」


ちひろ「宮型霊柩車かな?」

749

モバP「9月といえば」

雪美「……9月といえば……?」

モバP「雪美の誕生日がある月か」

ちひろ「そこかい。というかプロデューサーさんはアイドルの誕生日を全部覚えていますよね」

モバP「はい。一年は365日、そこにアイドルが200人近くもいると2日に1日は誰かの誕生日という」

ちひろ「その都度、裏でお祝いしているんですからほぼ毎日何かあるようなものですね」

雪美「……Pの誕生日は……いつ……?」

モバP「俺は初期ロットと誕生日が違うからなあ。何日と言うべきなのか」

ちひろ「さらっと非人間アピールしないでください」

モバP「閑話休題、9月といえば9月入学の話なんてありましたよね」

ちひろ「海外ではポピュラーですね。季節や気候の違いもあるので日本に合うかは微妙ですけど」

雪美「……夏休み……終わって……入学式……」

モバP「社会全体も引っ張られるように8月が年度末になったら大変だろうな」


雪美「私も……Pも……今月から……新しい一年生……」 ソウハナランヤロ

750

ちひろ「プロデューサーさん」

モバP「……あい?」

ちひろ「これはえらくまた脱力していますけど、どうかしたんですか?」

モバP「いやあ、雪美がね」

モバP「鼻歌を歌っていたんですよ。フンフンフーンって感じで」

ちひろ「分かりました」

モバP「分かりましたか。いやあ、あの雪美が嬉しそうに鼻歌なんて歌っているところを見ることができたらさすがにこうなりますよね」

ちひろ「否定はしないですけどプロデューサーさんは反動がオーバー過ぎます」

ちひろ「この前も眠い目を擦る仕草の雪美ちゃんを見てからしばらく放心していましたよね」

モバP「あぁ……思い出すとまた……天に召されるような」

mobaP「」グデー

雪美「……P……いっしょに……お散歩、しよう……」

モバP「行きます」シャキッ


ちひろ「また雪美ちゃんの新しい表情を発見して来そうですね」

今日はここまで
※sageが外れていて2回もageてしまい申し訳ない。以後気を付けます

751

モバP「少年時代、テレビのバラエティ番組で顔にパイ投げやケーキ投げにシーンを見ていてずっと思っていたことですが」

モバP「あれって美味しいんでしょうか」

ちひろ「味がないとか聞いたことがありますね」

雪美「味のない……パイ……ケーキ……」

モバP「砂糖が入っていない、ただホイップしただけの生クリームか……」

ちひろ「どこかの国のトマト祭りでは熟れて潰れやすくなったトマトを投げつけるって言いますしね」

モバP「まあ普通に食べられる物を使ったら勿体無いですよね」

ちひろ「服に付いたり床に落ちたものをスタッフが後で美味しくいただくわけにもいきませんし」

雪美「でも……ケーキ……食べられるようには……作ってある……?」

モバP「それはそうさ。まともに食べないからって例えば洗剤で作ったケーキを用意して、それが間違って口に入ったら病院行きだからな」

ちひろ「洗剤ケーキを作って許されるのはマリオストーリーの中だけですね」

雪美「でも……せっかくなら……甘いケーキが……いい……」

モバP「雪美さんはそこまで体を張る覚悟はしなくて良いです。そんな仕事はさすがに受けませんので」


雪美「……」(゜-゜) ←ほんの少し残念そう

752

モバP「ここ数年思うことなんですが」

ちひろ「一応聞いてあげましょうか」

モバP「夏のピーク時があまりに暑いせいか、9月なのに気温が少し下がるだけでやたら涼しく感じません?」

雪美「……」コクコク

ちひろ「実際に涼しいんだと思いますよ? 熱帯夜続きだったのが夜は20℃を切ったりし始めますから」

モバP「感覚が狂っているのではなく、涼しいのは確かですか」

ちひろ「四季が無くなりつつあるとか言いますけど、これで充分秋の始まりかもしれませんね」

モバP「でも日本には志希がいるし」

志希「にゃっははー、季節感のように失踪するかもしれないけどねー」

雪美「気まぐれ……ね……」

志希「あたしは気まぐれレインメーカー、雨上がりの匂いが好きだから♪」

モバP「オカダ・カズチカかな? 今は地域によっては雨で冷やされている感はあるな」

ちひろ「今後初夏と初秋は四季に加えて雨季と呼ばれるようになるかもしれません」


モバP「季節が五つで……ちょっと口に出したくない読み方に」

753

雪美「……」ジーッ

モバP「……」ジーッ

雪美「……P……相変わらず……高い……ね」

モバP「……」スッ

雪美「しゃがむと……ちょうど良い……」

モバP「……」ナデナデ

雪美「……んっ」

モバP「……」ニコニコ

雪美「……私も……」ナデナデ

モバP「……気持ちが良い」

雪美「……こうしないと……届かない……」

モバP「雪美さんに撫でてもらえるのならいくらでもしゃがむぞ」

雪美「……しゃがまなくても……なでなで……できるように……なりたい……」

雪美「でも……身長……伸びない……」

モバP「諦めるのは早い。11歳や12歳で急に伸び始めるかもしれない」

ちひろ「11歳や12歳になる日はいつ来るんですかね……」

モバP「そういうことを言うのはやめましょう」

モバP「でも現実的に、現在10歳で137cmのここから180cmを超えるくらいまで伸びるものなのか……?」

ちひろ「世の長身の女性はどういう成長曲線を描いてきたのか気になりますね」

モバP「妄想ではきらりは小学校中盤くらいまでは小さかったタイプです」

ちひろ「妄想かい。アルバムとか見せてもらえば確認できるのでは?」

雪美「Pは……早くから……高かった……?」

モバP「小学校の頃には身長順で一番後ろの方だったな」

モバP「しかし早熟、というのかな? ある程度まで達すると成長期でも全然伸びなくなる子もいたぞ」

雪美「……まさか……ずっと……このまま……」

モバP「ハハハ、心配性だな。俺の身長を分けてあげられるならそうするんだがな」

ちひろ「柱のきずが一昨年のより低くなるんですね」

モバP「親の遺伝もあるだろうが、伸びる人と一緒に生活すれば伸びるんじゃないかな」


雪美「……なるほど……」ピトッ

754

モバP「人間ってのは弱いものですね」

ちひろ「あなた人間でしたっけ」

モバP「私は人間です」

ちひろ「人間じゃないと主張されたらどうしようかと思いました。それでどうかしたんですか?」

モバP「自分の身に影響がありそうな範囲で大きな災害が差し迫ったり起きたりすると、テレビなどで情報を得て、不備はないかとか心配と不安で落ち着かなくなるんです」

ちひろ「テレビは誇張や煽りもありますからね」

モバP「そう考えて開き直ってポジティブになればその場は楽になるんですが、ついまた考えすぎてしまって」

モバP「それで仕事が手に付かなくなったり、好物が喉を通らなくなったりして……」

ちひろ「プロデューサーさんは正常性バイアスを恐れて必要以上にネガティブを保とうとするタイプかもしれませんね」

モバP「自分だけは大丈夫と思っていてはいけない、とは思っています」

ちひろ「でも、世の中完璧な人ばかりじゃないと思います。根拠に基づいて精神的にタフな人も稀にいますけど」

ちひろ「身と身の回りを守る対策はある程度やって、あとは来てみないことには分からない、くらいの姿勢でも良いんじゃないんですかね?」

雪美「……いざという時は……体が……動く……。……自分を……信じて……」


ちひろ「美味しい所を持っていかれたような」

755

雪美「……ん……」パチッ

雪美「……あれ……P……?」キョロキョロ

雪美「Pが……いない……」

→探す
  泣く

雪美「……」スクッ

雪美「……深呼吸……集中……」スー ハー

雪美「……!」カッ

――

モバP「ふう、雪美と添い寝をしていたのに、保管庫に資料を取りに行ってくれなんてちひろさん」

モバP「改めて言われると迷う挙句に探すのが大変です……ん、誰だ?」

雪美「……」クンクン

雪美「……P……ここにいたの……。……探した……」ダキッ


モバP「途中で抜け出してすまない。……しかし警察犬みたいな追跡だ」 ……エッ? エッ?

756

雪美「……ん……」パチッ

雪美「……あれ……P……?」キョロキョロ

雪美「Pが……いない……」

  探す
→泣く

雪美「……」ジワッ

雪美「……P……私を……ひとりに……しないで……」グスッ

光「おや、そこにいるのは雪美ちゃんか?」

――

モバP「急な呼び出しで来てみたらキャンセルだなんて……まあこれは仕方ないか」

モバP「雪美はまだ寝ていてくれているかな? ……ん、誰だ?」

雪美「……P……!」ダキッ

光「……良かったな雪美ちゃん。P、もう彼女の手を離しちゃいけないぞ?」


モバP「はい。雪美ごめんよ……しかし子猫みたいだな」ヨシヨシ ……モット

757

雪美「……」 コンッ

コロコロコロ カコンッ

雪美「……入った……!」

モバP「社長、お上手で」

雪美「むっ……そうかね……?」

ちひろ「……室内にパターマットを置いて遊ぶとかちょっと良い家のお父さんですかね」

モバP「屋外のパットゴルフも楽しいですよね。あとカービィボウル」

ちひろ「カービィボウルはコピー能力で荒らし回るんでゴルフというよりはゴノレフくらいですけどね」

モバP「あれをやると斜面のカップに入れるのが難しいって分かります」

ちひろ「ストーンやニードルでピタッと落とす旗つつみみたいなことができますけどね」

雪美「次は……P……。ホールインワン……狙って……」

モバP「ようし、一発で入ったら雪美にはミニスカートのゴルフウェアを着てもらおうかな」

ちひろ「おい。その前にプロデューサーさんは私がゴルフ場で相手をしましょうか」


モバP「ちひろさんは行き慣れている口ぶりですよね」 ワルイデスカ?

758

ちひろ「今日は何かやけに三白眼なプロデューサーさんですね」

モバP「日によって白目の面積が変わるみたいに言いますね」

ちひろ「それとも、寝不足ですか? 目つきが良くはないですよ」

モバP「寝不足……はありますね。疲れでしょうかねえ。雪美さんは目つきをどう思う?」

雪美「……ニヒルで……セクシー」

モバP「そうかい……? 一部の子には怖がられそうだが」

雪美「……怖くないよ……?」

ちひろ「目つきが怖い人って意図したものじゃなくて、目が悪いからってことがありますよね」

モバP「相手をよく見ようとして目を凝らしてじっと睨むようになってしまうとかですか?」

モバP「自分の場合、目は悪くないですが疲れていると半目になりがちです」

ちひろ「そんなにお疲れならエナジードリンクでもいかがです?」

モバP「お砂糖を取りすぎる気がするので今はやめておきます」

ちひろ「砂糖なんて一般的なものがこれに入ってると思っています?」


モバP「じゃあ代用甘味料が入っているのかな? ……え? 何怖い」

759

モバP「はぁー」

雪美「どうしたの……? 私を……ひざに乗せて……」

モバP「雪美さんを膝に乗せること自体は普段通りのことに過ぎないのだが」

モバP「パソコンのキーの位置が滅茶苦茶にされる悪夢を見たので癒されようと」ギュッ

雪美「……これだけで……いやしに……なる……?」

モバP「なるともよ」

ちひろ「気分を晴らすのにエナジードリンクでもいかがです?」

モバP「エナジードリンクを推しますね。謹んで遠慮しておきます」

ちひろ「えー」

モバP「市販の栄養ドリンク系は炭酸ものが多くて、道理で糖分が気になるわけですよ」

モバP「無糖の炭酸水一本を甘くしようと思ったらスティックシュガーをドバドバ入れないといけませんからね」

ちひろ「まずそんなことをしたら吹き零れると思うんですけどね」

雪美「ソーダ……サイダー……スカッシュ……。炭酸水も……いろいろ……ある」


モバP「たまに、炭酸じゃない方が美味しそうに見える物もあるよな」

760 

モバP「雪美さんは膝に座ると大人しいタイプだよなあ」

雪美「……」チョコン

みく「Pチャンのお膝の上でじっとしている雪美チャンを見ると、福の神みたいに見えるにゃ」

モバP「大黒帽子でも被せてみようか」

雪美「……給食当番で……かぶる……ような……?」

モバP「似てるな。そんなのあったなあ……ついでに着物とちゃんちゃんこはどうです?」

みく「長寿のお祝いかな?」

モバP「雪美の頭に丸い帽子って、フェアリーフィーストでのベレー帽でも思ったが実に合うんだよな」

雪美「……ありがとう……。……うれしい」

モバP「ど、どうイタ飯まして」

みく「どういう噛み方したらそうなるにゃ」

モバP「いや、たまにこう不意を突くようにストレートに、“ありがとう”と“嬉しい”を言ってもらえるのが一番グッとくるんすよ」

雪美「……難しい言葉は……いらない……」

みく「良い嫁さんだにゃあ……」

モバP「しかし福の神か。こんな世の中、そういう存在に縋りたくなるな」

雪美「福の神……といえば……七福神……」

みく「Pチャンは七福神、全員パッと出てくる?」

モバP「名称だけはな。まず乙姫のような姿の弁財天が唯一の女性」

雪美「……」

モバP「そして釣り好きの恵比寿、武士のような毘沙門天、お金の神様大黒天」

みく「……」

モバP「ふくよかな布袋、地味な方のおじいちゃんが寿老人で、頭が長いおじいちゃんが福禄寿」

みく「最後の二人が適当過ぎるよ!」

モバP「すまない、適当で」

モバP「ちなみに四獣とかも玄武が蛇亀で朱雀が鳥で白虎が虎で青龍が龍ということは分かる」

雪美「……黄龍と……麒麟は……?」

モバP「黄龍も龍だし麒麟はキリーンと鳴く動物でしょ」

モバP「すまない、適当で」


みく「突っ込む前に締め切るのやめるにゃ」

761

モバP「今日は期せずして猫の里親探しをすることになった一日だった」

雪美「……充実感……」

ちひろ「プロデューサーさんのお仕事って何でしたっけ……?」

モバP「しかし少しの間でも情が移るものだ」

雪美「……」コクコク

モバP「彼女たち、飼い主さんにどんな名前を付けてもらうんだろうな」

ちひろ「プロデューサーさんなら野良とかでも自分の中で勝手に名前を付けたりしそうですね」

モバP「はい。今日の双子は鬼面夜叉と蘭陵王、と心の中で呼んでいました」

ちひろ「画鋲丸といいどうしてそう物々しい名前にしたがるんですか」 カッコイイジャナイデスカ エエ……

雪美「……桔梗……スターアニス……元気でね……」

ちひろ「雪美ちゃんもですか。しかしこちらは可愛いネーミングですね」

モバP「植物の名前を引用すると大抵無難にはなりますからね」

雪美「二匹とも……背中に……星みたいな模様……あったから……」


ちひろ「センスの差の割にお二人の気が合うのが不思議です」

762

モバP「雪美よ、イチゴでも食べないか?」

雪美「……食べる……!」キラキラ

モバP「雪美の目がしいたけみたいに輝いている」

ちひろ「ビームとか撃ちそうなグランドクロス」

雪美「……でも……秋に……イチゴ……?」

モバP「まあ食べてみると良い」

雪美「……いただきます……。……ん……甘い……イチゴ……」

モバP「冬から育てて春に食べられるのが一季成りの一般的なイチゴ。これは夏秋イチゴという四季成り」

モバP「自然の摂理に反して本来育たない季節に育てるのでなかなか美味しくできないのだそうだ」

雪美「……秋に……おいしいイチゴが……食べられる……幸せ……」

モバP「しかし何だ、イチゴはやっぱりまずは練乳とか塩とかはかけないでそのまま食べたいよな」

ちひろ「塩はかけないと思うんです、常識的に考えて」

モバP「かける人もいるそうですよ? 我々はしませんがね」


雪美「……ありすにも……食べさせたい……」 ヤサシイ

763

モバP「……」スタスタ

野良猫「……」ジーッ

モバP「……?」

モバP「うぉっ!?」ギョッ

野良猫「」ビクッ

――

モバP「いやあ、道を歩いていて物陰に猫がいると気づかずにかなり接近していることってたまにあるよな」

モバP「で至近距離で急にその存在に気づいてびっくりして、それを見て猫もびっくりする」

雪美「……ふふ……かわいい……」

モバP「何だか滑稽で他人事のように自分も笑えてきてしまう」

雪美「P……私や……ペロなら……すぐ見つけるのに……」

モバP「集中してアンテナを張っていれば気配はすぐ察知できるんだよ」

モバP「だが考え事をしていたり油断していたりするとダメだな」


ちひろ「今度プロデューサーさんの不意を突いて驚かせてみようと思う雪美ちゃんであった」

764

モバP「撮影も終わって後は帰るだけか」

杏「そうだねー」

雪美「ん……」

モバP「……キャラメルでも食べるかい?」スッ

杏「飴じゃないのか……でも貰おう」

雪美「貰おう……」

パクッ パクッ

モバP「キャラメルは漢字で書くと軍粮精――これは戦時中に敵性言語を使わないための言い換えだそうだが」

モバP「そんな昔からあるお菓子で、非常食というか行動食としてポケットにあるとホッとする存在だ」

杏「……まあ暑い中で持ち歩くと溶けるけどね。飴も袋にくっついたりするしさ」

雪美「……キャラメルの箱って……独特……」

モバP「外箱から内箱をスライドさせる形だな。マッチ箱やキャラメル箱には昭和情緒がある気がする」

モバP「あとはオブラートに包まれたボンタンアメも印象に残るんだよな。そっちも食べてみる?」スッ


杏「どれだけ隠し持ってんのさ」

765

モバP「765プロって凄いですよね」

ちひろ「藪から棒ですね。偉大な存在であることに疑う余地はないですけど」

モバP「何というかライブや生放送でも団結力が違う……よくここまでまとめられるなって」

ちひろ「プロデューサーさんや社長さんや事務員さんの力ですかね?」

モバP「ちひろさんだけに言いますが、あちらの社長さんは普段は昼行燈の振りをしていると思います」

ちひろ「見抜いているようないないような」

モバP「またプロデューサーとも付き合いがありますが、会って話す限りだととっても普通です」

ちひろ「普通じゃない見た目で優秀な人は嫌でも目立ってしまいますからね」

モバP「……」 ←割と普通じゃない

モバP「ちょっと待ってください、普通じゃないですかどう見ても」

ちひろ「え? 何だって?」

モバP「こりゃ参った、アシスタントに普通の人だと思われていないなんて」

雪美「普通とは……なんじゃろな……」


ちひろ「ためらわないことさ」 ギャバンデスカ チャバンデス

今日はここまで
雨漏りの午前二時

766

モバP「雪美も家に来るようになってずいぶんと経つなあ」

雪美「……♪」

モバP「同棲というわけではないが家事、特に料理とかを抜かりなくやってくれる」

雪美「……Pといたら……上手になる……」

モバP「またまたぁ。雪美さんは最初から随分と上手かったじゃないか」

雪美「そう……?」

モバP「ああ。逆に紙一重の違いで下手な子が居着く世界線ならどうなっていただろうな」

モバP「家事とか全然できない子が居候させてと転がり込んできて、共同生活なんてシチュエーションになって」

モバP「部屋が無いので仕方なく押し入れに住ませて長い期間面倒を見て、でもある日出て行くことになって、最後に夕食を作ってくれるんだ」

モバP「ふわっと炊けたお米、香りの飛んでいないしっかり味噌の溶けたお味噌汁、そして綺麗に焼き目が付いて火も通っている焼き魚」

モバP「お前も魚を焦がさず焼けるようになったんだなあ、なんて言いながらしみじみと思い出を振り返って、思わず泣けてきてしまう――なんて」

雪美「……」

モバP「……すまない、妄想をベラベラと喋り過ぎたな」


雪美「……で……それから……どうなるの……? ……続き……聞きたい……」 エ、イイノ?

767

雪美「……」ハグハグ

モバP「美味しそうだなあ」

ちひろ「ですね」

モバP「メロンパンを食べる雪美さんを見るとメロンパンが大きく見える」

ちひろ「我々も食べましょうか」

モバP「はい。最近少し豪遊しちゃったので節約ですね。ヨーグルッペどうぞ」

ちひろ「ありがとうございます。……って張り込みの食事みたいですね。普通はコーヒー牛乳な気もしますけど」

モバP「しかしこのメロンパンは良いですね。皮がサクサクしていて」

ちひろ「たまにガムガムしいメロンパンがありますからね」

モバP「ちなみに個人的なメロンパンの格付けはチョコチップ入りは普通、生クリーム入りは大当たりです」

モバP「意外と少ないんですよね、クリームが挟んであるやつ」

ちひろ「私はクリームは邪道、とは言いませんけどやっぱりシンプルな方が好きですね」

雪美「……P……。メロンパンに……どうしてメロンは……入ってない……の……?」


モバP「……そこに気づいてしまったか……」 ダレデモギモンニハオモイマスヨ?

768

モバP「……またここに来てしまった」

雪美「……意外と……早かったね……」

モバP「あ、そのセリフ良いな。黄泉比良坂や六道の辻で死別したはずの親しい人が待っていたみたいで」

雪美「私……生きてる……」ギュッ

モバP「本当だ……安心した」

雪美「……」ニコ

モバP「来ちゃったね……自分が壊れそうなのに、ね。きっと良いことだよ」

モバP「質問。どうして来たのかな?」

雪美「……?」

モバP「まあエアリスの真似をするような場面でもない」

モバP「ちひろさんがいないから俺が説明に回るが、ここは街の夜景が見える展望台の上だ」

雪美「……何度来ても……良い……」

モバP「先日の誕生日にここに来たばかりだからな。興奮冷めやらぬ内にもう一度だが」

モバP「前回見落としたかもしれない、今しか見られない景色を見納めようじゃないか」

雪美「……P」

モバP「……ん?」

雪美「……」ジッ

モバP「……」コク

チュ

雪美「……」

モバP「……」

雪美「……///」

モバP「今のはとてもしっとりとして良い雰囲気だった」

雪美「……さあ……景色も……見ないと……ね……。Pばかり……見そうに……なるから……」

モバP「……ああ、そうだな」

雪美「……夜景……キラキラ……してる……」

モバP「光の少ない場所で夜空を眺めるのも良いが、地上の銀河のような夜景を眺めるのも良いよな」

雪美「……うん」


一方のちひろ「デートのお二人も今頃私と同じ街の明かりを見ているんでしょうかね」

769

雪美「P……不可逆って……何……?」

モバP「難しい言葉だな。そうだな、例えで良いか?」

モバP「トマトを絞るとトマトジュースができるよな」

雪美「……うん」

モバP「だが、そのトマトジュースをトマトに戻すことはできない」

モバP「それが不可逆だ」

雪美「……哲学……みたい」

モバP「雪美は晶葉の助手をしているが、トマトジュースをトマトに戻す研究なんてやっていたりしないか?」

雪美「……それは……しない……」

モバP「そうか……いや、個人的にトマトジュースは喉がイガイガするから少し苦手でね。そうならない物もあるんだが」

モバP「で、実家から送られてきたケースのトマトジュースをどう捌くか困っているんだ」

ちひろ「料理にでも使えば良いじゃないですか」

モバP「塩入りだとちょっと使い辛くないですか?」


雪美「……トマトジュースを……トマトに戻せたら……ノーベル賞も……夢じゃない……?」

770

モバP「雪美さんに着せてはいけない服シリーズ」

ちひろ「シリーズ化してもそれは流行らないです」

モバP「今日ご紹介するのはかなり大まかな括りになるんですが……」

雪美「……?」

モバP「…………」ジッ

雪美「…………」ドキドキ

モバP「…………」ニコ

雪美「…………」エッ

ちひろ「ミリオネアかい。早く発表してください」

モバP「レースクイーンですね」

雪美「……いけない……?」

ちひろ「ドライブRQ美世ちゃんやバーニングハート茜ちゃんがそれっぽいのを着ましたけど、普段のライブ衣装との線引きが難しいところです」

モバP「物にもよるんですが露出が激しいのは本当に煽情的過ぎますからね」


モバP「でもあのビーチボールのような柄の傘を差した雪美さんは見たい」 タシカニ

771

モバP「夏の思い出捏造コーナー」

モバP「水源の近い山の中の沢で、雪美と二人で水遊び」

雪美「……楽しかったね……」

ちひろ「存在しない思い出を語るのはどうかと思うんですけど」

モバP「水が冷たくて気持ち良かったよなあ。水着の雪美も……むふふ」 オイ

雪美「木陰で……薄暗くて……隠れ家みたい……だった……」

モバP「海やプール、開けていて日が差す河原とは別の良さがあるよな」

雪美「……」ウンウン

モバP「まあそういう所でタープテントとか立てて、大勢で賑いながらバーベキューも楽しいんだが」

ちひろ「そっちはみんなでやりましたよね」

モバP「雪美と誰にも見られない所で二人きりで自然を感じながら涼むのもまた格別だ」

モバP「あのスポット、もう水遊びはさすがに季節外れとして、今度紅葉狩りに寄ってみようか」

雪美「……うん……行きたい……」


ちひろ「え、捏造ですよね? 本当に行ってません?」 ……イッテナイ ホントカナア

772

モバP「……」

モバP「今宵は雪美と月見と洒落込みたいところだったが……曇っておるなあ」

雪美「……そんな年も……ある……」

モバP「そうだな。日食だって場所によっては曇って見えなかったり全部欠けなかったりするし」

雪美「……皆既日食は……少し……怖い……」

モバP「昼は明るいのが当たり前だから、それが暗くなると凶事のように感じるのはある」

雪美「……暗いままだったら……どうしよう……」

モバP「その時は天照様に天岩戸から出てきてもらうために、雪美さんに一肌脱いでもらわないと」

雪美「……ん……みんなのためなら……!」

ちひろ「天鈿女命かな? そしたら猿田彦のあなたは高天原(社会)から追放ですよ?」

モバP「それは真っ当なオチですな」

雪美「P……お月様に……ウサギは……住んでいると……思う……?」

モバP「ウサギか……科学的に無理だろうが、住んでいてほしいな。スクリーマーズみたいなのは住んでいてほしくない」


ちひろ「将来的にはウサちゃんロボが住んでいそうですけど」

773

モバP「雪美さん、また美しくなったな」

雪美「……」キラキラ

モバP「恋をすると美しくなる、なんて言うが、あながち嘘とも言えないかな。恋なのかは不明だが」

雪美「……」

モバP「もしくは自信と自覚の賜物か」

雪美「……」ソワソワ

モバP「……」

雪美「……」

モバP「……下に何か見られると恥ずかしいものを穿いていたり?」

雪美「……///」

モバP「えっ、何それ興奮するんですが」

雪美「……この前……貰った……黒い、下着……着けてる……だけ……だから……」

モバP「雪美が……! 黒い……! 下着……! だと……!?」ビターン!


雪美「! …………し……死んでる……(誇張表現)」

774

モバP「マスカットが美味い季節だが、それ以外の岡山の魅力を今ホットな君たちに聞きたい」

紗南「あたしに聞くの? んー……やっぱ桃太郎ランドかな」

モバP「桃鉄をやっていると錯覚する可能性が微粒子レベルで存在するかもしれないが、岡山に桃太郎ランドは無いぞ」

紗南「じゃあドバ」

モバP「やめとけ」

肇「岡山と言えば、私はやっぱり備前長船長光ですね」

モバP「肇なら備前焼を推してくると思ったらまさかの刀工か」

肇「形は違いますけど、刀もまた長く伝えられる美しい表現方法の一つだと思います」

モバP「肇自身にも時々刀のような切れ味があるからな」

悠貴「私はベネッセですねっ!」

モバP「ベネッセかあ……あ、これ進研ゼミでやったところだ的な?」

悠貴「進研ゼミはやってませんけど、あの漫画は面白いですよねっ!」

雪美「……あれは……ドキュメンタリーと、見せかけた……健康食品CMと……似てる……」


モバP「分かる。分かるがそれが分かる雪美さんとは」 ママガイッテタ……

775

モバP「ちひろさん、果物でも一口いかがですか?」

ちひろ「プロデューサーさんが持ってくるとは、何か変わった物ですか」

モバP「定番物はちひろさんがいつも出してくれますからね」

雪美「こっちが……P担当……」

モバP「というわけで、はいどうぞ」

ちひろ「おお、これは……何でしょうね。白い果実に黒い種?」

モバP「ドラゴンフルーツですよ」

雪美「ドラゴン……フルーツ……!」シャキーン

ちひろ「その謎のポーズは何ですか可愛い」

ちひろ「なるほど、ドラゴンフルーツでしたか。いただきます」パクッ

雪美「……火……吹く……?」ワクワク

モバP「動物系幻獣種の悪魔の実かな?」

ちひろ「それを私に食べさせる意図は何ですかね?」

ちひろ「……あ、こんな味でしたね」オイシイ

モバP「食べたことがあったんですか。初めての一口の感想を聞きたかったのに残念」

ちひろ「こう見えても大抵の物は食べたことがありますよ?」

雪美「……ちひろさん……手ごわい……」

モバP「次はミラクルフルーツかポポーの実くらいは用意しないといけないか」

ちひろ「対抗意識燃やさなくて良いですから」

雪美「ミラクルフルーツなら……ちひろさん……驚く……?」

ちひろ「どういうものかは知っていますよ? 後でレモンとか食べさせられるんですよね?」

雪美「……P」

モバP「……市場に流通しないようなすっごい珍しい物を探すしかないな」

ちひろ「はあ……」

モバP「それにしてもこれ、なかなか果物とは想像しにくい見た目ですよね。強いて言えば芋に見えます」

ちひろ「鱗みたいな皮が鮮やかな紅や黄色で中身が白や紅や紫……毒々しくすら見えて、名前負けしませんよね」

モバP「食べた感じは瑞々しい甘さがあって、例えるなら酸っぱくないキウイのようで、想像よりはあっさりなんですがね」

ちひろ「果物はそういうものだと思います。あまり過激な味になるのは珍しいというか」


ありす「ドラゴンフルーツは意外にもサボテンの仲間だそうですね。あ、この前はイチゴをありがとうございます」 ドウイタシマシテ

776

雪美「P……何しているの……?」

モバP「ん、これか? これはパソコンで遊べるピンボールゲームだな」

雪美「……」ジーッ

モバP「よし、やってみようか。膝の上に来ると良い」

雪美「……」(つ゜-゜)つ

ヒョイ ポスン

ギュイイイイイイイイイイーン キーン ガッシャン

雪美「……」ワクワク

モバP「このキーでフリッパーを動かしたりライトの点灯場所を変えたりする。そしてこっちを長押しするとボールの発射だな」

雪美「……分かった……」

ちひろ「おやおや……ピンボールで遊ぶくらい暇してるんなら仕事しましょうよ」

ちひろ「って、それスペースキャデットじゃないですか」

モバP「よくご存じで。――あ、そしてこのキーで台パン(揺らし)が出来るよ」

ちひろ「台パンって……やり過ぎるとティルトで反則終了になるので気を付けてくださいね?」

ちひろ「しかしプロデューサーさんのパソコンってWindowsXPだったんですか……」

モバP「そんな旧OSなんてセキュリティーブラックホールは恐ろしくて使えませんよ」

モバP「昔遊んで懐かしかったのでこのPCでも遊べるように入れただけです」

ちひろ「趣味になるとこだわりますね。そのこだわりを本業の方にも」

モバP「リトルウイングのクリスタルカリバーンなんかも入れていますよ」

ちひろ「好きな人にはたまらなさそう」

モバP「しかしこの3Dピンボール、BGMのオンオフがあるんですが」

モバP「BGMがかかっていた方が何故かノリノリになって良いスコアが出ます」

ちひろ「音楽を聴くと作業をする際の効率が上がる人っていますよね」

モバP「体がリズムに乗るんですかねやっぱり」

ちひろ「まあ作業の性質と合った曲を聴かないと逆に集中が乱されるかもしれません」

雪美「……」カコッ ガッチャコン

モバP「雪美さんは我々の雑談の中でも全然ペースを乱しませんね」

ちひろ「あっ、中央のターゲットに引っかかってエクストラ量産し始めた」 ビビビビビューン


モバP「さらっと行われる高度なテクニックに嫉妬」

777

雪美「……」マッタリ

モバP「ああ、膝の上の雪美さんのフィット感。そんな雪美さんを彼女にしたかった」

ちひろ「今更何を言っているんですかこの人は」

モバP「雪美さんがアイドルである以上、自分がどんな立場でも“彼女”は難しい」

ちひろ「彼女どころの関係性じゃないんですからそれくらい我慢しましょう」

ちひろ「まずプロデューサーさんに彼女とかいらっしゃらなかったんですか?」

モバP「青春時代に彼氏彼女的な距離感でお付き合いした人はいなかったですね」

モバP「彼女に、“私の好きな所を1000個挙げてみて”なんて一度言われてみたかったです」

ちひろ「1000個はおかしい。好きと100回言って、ならまだ分かりますけど」

モバP「1000個ほどになると途中で被っても女の子の方は気づかないから水増しは出来そう」

ちひろ「意外と気づきますよ? でも人間、途方もない数に見えても千羽鶴は折りますからねえ」

モバP「まあ千羽鶴感覚で毎日一つずつ挙げていっても346個か777個目くらいには彼女の方が飽きそうです」

モバP「だから、こうして時々関係ない話も混ぜつつ、僕は雪美と未踏の境地を目指していきますよ」


雪美「……ご覧のSSは……『モバP「雪美様がゆく」』……です……」

778

雪美「……P……これは……?」

モバP「ああ、このゲームはマインスイーパと言ってな」

ちひろ「3Dピンボールやソリティアとかと一緒にパソコンに入っていたゲームですね」

モバP「まずどこか適当な枠をクリックしてごらん」

雪美「……ん」カチッ

雪美「……1」

モバP「数字はその周りの枠のどこかに一つだけ爆弾があるということを示している」

モバP「その爆弾の枠を開けてしまったらゲームオーバーというわけだ」

ちひろ「どかーん!」

モバP「あ、右クリックで怪しいと思った箇所に旗印を付けることができるよ」

雪美「……運頼み……?」

モバP「開き方次第で運ゲーにも論理ゲーにもなる。なおこれは最初の一手は確実に爆弾にはならない」

ちひろ「ちょっ、スルーしないでくださいよー」ユサユサ


雪美(……かわいい)

779

モバP「……」

モバP「よっ……」ヒュッ

バシッ

モバP「あらあ、外したわ」

渚「プロデューサー、惜しいよッ!」

モバP「よし、次は入れちゃる」

雪美「……リング……高い……」

モバP「小学校の体育館のリングまでは結構低かったんだがなあ」

渚「でもこういうストリートコートも良いでしょ?」

モバP「ああ、何か都会の公園って感じがするな。しっかりラインの引かれたアスファルトのコート」

渚「ここから成り上がってやるんだ! って、気持ちになる場所だね」

モバP「バスケなあ……中学の新入生の頃は身長が高い方だったからバスケ部に勧誘されたっけ」

雪美「Pなら……ダンクとか……できそう……ね」ヒュッ スポッ


渚「ナイッシュー! 雪美ちゃん上手いねッ!」 ヤルナァ

780

モバP「ふう……」

ちひろ「また何か見ていますね」

モバP「こういうの、実際に見てみたいよなあ」

雪美「……」コク

ちひろ「へえ、夕焼けと参道ですね」

モバP「福岡県にある宮地嶽神社の光の道です」

雪美「……これ……ポストカードに……なりそう……」

モバP「こんなの見たら行きたくなるやん? それも年に二度しか見られなくてその一度がこの10月らしい」

ちひろ「へえ……行こうとしていますね?」

モバP「こういう観光情報とか見ていると綺麗な景色には滅法弱いなと我ながら思うのです」

ちひろ「プロデューサーさんの場合はそれもちょっと素朴な綺麗さが好きですよね」

雪美「……これも……良いけど……もう少し……近い所……」

モバP「そうだなあ……あ、これはどうだろう」カチカチ


ちひろ「これは家族旅行計画を立てているお父さんですねえ」

今日はここまで
ルマンドの神様

781

モバP「……Abre los ojos」パチッ

雪美「……?」

雪美「……Tranquilo」パチッ

ちひろ「プロデューサーさんは雪美ちゃんに何を真似させているんですか」

モバP「人差し指と親指で片目を開くポーズです」

モバP「内藤哲也ですね」

雪美「……」キラキラ

モバP「もう片方の目を細めて強調してみせるのも何だかコミカル」

ちひろ「あのポーズはプロレスラーがやるから際立つ部分もありますけどね」

雪美「体……大きくて……良いなって……思う……」

モバP「まあ雪美さんは既に懐が深くて人物が大きいからな」

りあむ「まさにヒール! 癒しだよ! 年上のぼくがいつもお世話になってます!」

モバP「プロレスの話中にヒール言い出すと悪役みたいになるな」


りあむ「そっちの意味で言ったんじゃないよう!」 ワカッテルヨ

782

カチャカチャ

モバP「ん……ちょっと休憩」

紗南「どうしたの? まだまだここからだよ?」PAUSE

モバP「ああ、少し画面酔いして疲れたみたいだ」

紗南「画面酔いって、一人称視点3Dゲームで上下左右に振られるなら分かるけどさ」

紗南「これクインティだよ?」

モバP「ワープみたいなパネルを見ていると目が回ってくるんだよなあ」

紗南「えぇ……」

雪美「じゃあ……バトンタッチ」

モバP「任せたぞ。しかしさすがポケモンを生み出したゲームフリークの原点。面白くて創作意欲が湧くな」

紗南「Pさんは自分でゲームを作ろうと思ったりするの?」

モバP「そりゃあするとも。宝箱をコレクションするゲームとか作ってみたいと思っている」

紗南「宝箱はその中身にワクワクするものだと思うけど、器の方に惹かれちゃうのかー」


雪美「宝飾……されていると……高そう……」

783

モバP「幽霊はりんごを食べるか?」

ちひろ「何ですかその“アンドロイドは電気羊の夢を見るか?”みたいな問いかけは」

モバP「ふと疑問に思いまして」

あかり「透明人間がりんごを食べてもりんごは透明にはならないんご」

モバP「じゃあ幽霊がりんごを食べたとしたらりんごはどこに消えるのか」

モバP「アストラルに変換されて見えなくなるのだろうか」

ちひろ「まるで透明人間は見たことあるような言い方……そもそも何故りんご?」

雪美「死神は……りんごが好き……。幽霊も……?」

ちひろ「リュークかな? そうでなくても禁断の知恵の実的なアイテムにされがちですけど」

モバP「というわけで小梅に頼んであの子に来てもらっています」

あかり「えっ、どの子ですか?」

雪美「あの子は……あの子……」

あかり「???」

ちひろ「霊感無いのに来てもらっても分からないんじゃないですかね……」

モバP「恐らくお近くにいらっしゃると思うので、このりんごをプレゼントしたいと思うのです」サッ

ちひろ「唐突に取り出しましたけどどこから持って来たんですか」

あかり「私にとって近所のような山形県朝日町のりんご温泉でのお仕事があったので、そのお土産です!」

雪美「りんごが浮かぶ……温泉……私も……行きたい……」

ちひろ「ああ、あの有名な」

モバP「さて、あの子はこれを食べてくれるのでしょうか。フルーツキャップを外しまして――」

ツルッ

ちひろ「手から滑り落ちましたよ?」

モバP「わわ、急にワックスがかかったように滑って……どこに転がった?」

「「「???」」」

――

モバP「探してもりんごは見つからなかった。忽然と消えてしまった……神隠しかな?」

ちひろ「小さな物を無くす時ってこんな感じですけど、りんごですからね……机の下や隙間にも無いですし」

ピロリーン


モバP「あ、小梅からだ。何? りんごありがとう?」 ンゴゴ……

784

モバP「アクティブな女性に似合うなと思うアイテムを雪美さんに差し上げよう」

雪美「……これは……スカーフ……?」

モバP「バンダナだな。区別が分かり辛いものではある」

雪美「……バンダナ……」

モバP「本当は違うが頭に巻くのがバンダナ、首に巻くのがスカーフという印象」

モバP「さて、これを巻いてあげよう」

クルッ キュッ

モバP「鏡はこちらです」

雪美「……おお……海賊……みたい……」キラン

モバP「雪美さんはバンダナを巻くイメージが無いから試してみたが……これは行けるな」

雪美「……P……お揃い……しよう……」

モバP「何か照れるな。しかしバンダナって便利でね。こうして――」キュッ

モバP「顔の下半分を隠したりするのにも使えるぞ」 マスク……ネ 


ちひろ「銀行強盗に見えますね」

785

モバP「家に帰ると幼馴染が出迎えてくれるシチュエーションって良いですよね」

モバP「どうやって入ったのか聞いたら、植木鉢の下の合鍵を使って開けた、とか言って」

ちひろ「ポストとか植木鉢って定番の隠し場所ですけど防犯的にアウトですよ?」

雪美「……でも……知ってると……優越感……」

モバP「自分は特別に出入りを許されている感じがね」

ちひろ「プロデューサーさんの家はアイドルが入り放題なんでしたっけ」

モバP「まあそうですね。代表者としてまゆに合鍵を渡したら複製されて配られていたので」

ちひろ「……そこに突っ込むのはやめるとして、そんな大人数共有の鍵、誰かが無くしたりしたら大変ですね」

雪美「……私も……カギ……持ってる……。……大事な……もの……」

モバP「でもおかげで家には大抵常に誰かが居るため、少し安全ではあります」

モバP「その時々で暇が出来たアイドルが漫画を読みに来たり宅飲みをしに来たりしますからね」

ちひろ「これが現代の鍵っ子か……」

モバP「古めかしい響きの言葉ですね、鍵っ子。かぎばあさんの絵本を図書館でよく読んだものです」

雪美「……パイナップルハンバーグ……」 ミタコトアルンデスネ

ちひろ「しかしそうまでしてプロデューサーさんの家に入る魅力って一体」

モバP「やたらと広いですからね。それと漫画喫茶や図書館並に本とかありますし、時間を潰すには困りませんよ」

ちひろ「あまり入り浸るのに居心地が良い空間を率先して構築しないでくださいよ?」

モバP「善処します。……と言いつつリクエストカードに目を配る」

ちひろ「図書館ですねこれは」

モバP「しかし、どうせなら鍵より、アリババと40人の盗賊の合言葉のようなシステムで家に入れたら更に面白いのに」

雪美「……オープン……セサミ……」

モバP「または、ひらけゴマ(直球)! だな。それを認識して自動で開く扉も高度科学技術並だが」

ちひろ「現代の声紋や指紋でロックを解除するなんて、昔の人からすれば魔法みたいなものでしょう」

モバP「そんな感じで秘密の暗号と森へのパスポートで入れる隠れ家なんてあれば、誰でも憧れを禁じ得ないと思います」

ちひろ「素敵な冒険が始まりそう」

雪美「……Pの家……冒険するの……楽しい……」

モバP「でも雪美さんくらいになるともう冒険し尽くして、俺より俺の家のことに詳しいよな」

雪美「……どこに……何が……あるか……大体、分かる……。……でも……飽きない……」


ちひろ「自宅がレクリエーション施設と化すなんて私なら御免ですね」 タノシイデスヨ?

786

モバP「昔のバスって耳が生えていたんだよな」

雪美「……そんなわけ……ない……」

モバP「小さい耳だがな、車両のフロントとリアのルーフに、マーカーランプとしてね」

ちひろ「あれを耳と言って良いのかはさておき、まだモノコックとかが走っていた頃ですか」

ちひろ「トラックにも昔は速度表示灯という緑の三つのランプがありましたね」

モバP「失われしロマンですねえ。これを見てみると良い」カチカチッ

雪美「……本当……、今と……違う……。……耳……かも……?」

モバP「となりのトトロのネコバスにもこのマーカーランプがあるんだよな。ネズミだが」

ちひろ「あのふかふかで少し生暖かそうな座席のボンネットバスが再現されたら乗りたいです」

雪美「……乗り心地……猫の背中を……触ったみたい……なのかな……?」

モバP「ネコバスは白と赤だったと思うが、この画像にある西鉄バスの青いマーカーランプとかカッコいいと思う」

雪美「でも……青いランプ……今は……バスの後ろに……ある……」

モバP「あれは知らずに見たら何のためにあるのか分からないが、バスジャック等の異常事態発生時に点灯するランプらしいな」


雪美「……光っては……いけない……ランプ……。そう言われると……見たい……気も……」 コウキシンダナ

787

モバP「生活の凡知識#346。値引きされたキムチは酸っぱい」

みく「発酵が進んでいるからね」

モバP「いくら賞味期限は切れていないと言っても発酵食品の衝動買いには注意しないとなあ」

みく「そういういるいらないの判断力も空腹だと鈍るから、事前にキャンディとか舐めておくと良いかも」

モバP「賢いな。それとまるごとバナナも割引品はバナナがべちゃべちゃになっていることがある」

モバP「外れを引かないと分からないことって世の中には多いな」

みく「べちゃべちゃバナナは嫌だにゃあ。Pチャンはやっぱり誰かと食事をした方が良いにゃ」

モバP「かもな。独りの時の食事は残り物を上手く片づけることに執着してしまいがちだし」

みく「Pチャン、みんなが帰った後、無気力になるタイプでしょ?」

モバP「そりゃ直前まで賑やかだった静かな部屋を見たら、何もやる気が起きなくなるし寂しくてしょうがないよ」 (゜-゜)!

雪美「……じゃあ……今日は……私が……ずっと……いる……」

みく「お泊りはダメだにゃ。いくら仲が良くても親御さんが心配するにゃ」

雪美「……夕ご飯は……サンマで……良い……?」


みく「今日はお暇するので雪美チャン後は任せたにゃ」 オイマテ

今日はここまで
しかし 何も 見つからなかった。

788

モバP「戻りました」

愛海「はなしてよー」ジタバタ

雪美「……!」

モバP「ほんま、オイタはあかんよー?」

愛海「きちんと許可は得てやったから!」

モバP「それは本当に許可なのかね?」

愛海「……了解は得たと思う」

モバP「自信が無いのならそれは許可になっていないぞ」

愛海「でもそこに山がある以上、あたしは登りたいんだ!」

モバP「……まあ、俺がいない所だとその悪癖をほとんど出さない部分だけは助かるが」

雪美「……愛海……Pに、構ってほしくて……やってるのかも……」

モバP「確かにわざと俺に捕まるような、というか見せつけるように犯行に及んでいるような」

愛海「……えっ、そ、そんなわけ……///」 オイオイ


ちひろ「今日も346プロは平和です」

789

モバP「古いVHSを再生しているとありがちなこと」

モバP「本編終わって少ししてからの品質管理用の信号画面」

プーーーーー

菜々「ひえぇっ……早く止めてください……!」ガクガクブルブル

雪美「……不安になる……音……ね……」

モバP「この反応の差は何や」

モバP「でも菜々さんが震えて雪美さんに抱き着くという光景には賞レベルの価値がある」

雪美「……でも……異常ではありません……だから……大丈夫」

モバP「しばらくしたらこの画面は消えるので。それにしても枠がお花でキレイダナー」

菜々「今すぐ消してくださいよぉ!」ヒシッ

モバP「まあまあ。しかし改めて聞くと深夜のカラーバー画面の音とはまた少し違う気がしますね」

菜々「あ、あれも局によって音が違いますよね。千葉の踏切も場所によってかなり不気味な音に聞こえたり……」

モバP「そういうトラウマって意外と思い出補正が大きくて、今遭遇するとそうでもなかったりしません?」


菜々「しません! ……あっ、雑談をしていたら消えた」 ダレカイッショダト……コワクナイ

790

雪美「……P……今日も……楽しかった……」

モバP「それは何よりだよ。俺も楽しかった」

雪美「……次は……いつ……会える……?」

モバP「……」プルプル

雪美「……?」

モバP「次はいつ会える、か。そんなこと言われたら離したくなくなるんだが」ギュッ

雪美「……あっ」

雪美「……もう……P……ずるい……」

雪美「……ふふっ……もっと……」

イチャイチャ

ちひろ「これをいつか思い出した時に、あの時何て恥ずかしいことをやっていたんだろうと後悔しないようにしてくださいね?」

モバP「ヒトは時々バカになるものです、とても」ナデナデ

雪美「……♪」ムフー

ちひろ「まあ、次を期待されるって嬉しいですよね」 ハイ

モバP「しかし雪美は髪型のせいかあまり耳が露出しないよな」サラッ

雪美「……うん」

雪美「……直に……触られると……弱い……」

モバP「自分から弱点を明かしてくるとは……ごくり」

ちひろ「いけませんよお客様その辺にしておいてもらわねば」

モバP「専用おやつを買いますから、もう少しだけ雪美さんと触れ合いたい」

ちひろ「ここは猫カフェじゃないです」

モバP「猫カフェとはキャバクラに似ている、とどこかの偉い人が言ったそうですね。じゃあ雪美さんにこのパイナップルの主張が激しいやつを」

ちひろ「余計にダメです。未成年ですから。それにフルーツ盛り合わせ頼もうとしない」

雪美「……フルーツ……食べたい……にゃー」

モバP「買って来て作ってみるか。キャバクラに行ったことはないがテレビとかで見るあれは憧れるんだよな」

雪美「うん……約束……ね?」

モバP「お刺身の舟盛りみたいに、フルーツも舟に盛ってみるかな?」

ちひろ「よくそう次から次へと奇抜なことを考えますね。というか器用の舟あるんですか?」


雪美「……Pの家には……ある……」 ナナミニモライマシタ エェ……

791

モバP「のあさんは猫語が分かるんですか?」

のあ「ええ。ほら、あそこで日向ぼっこしている白黒がいるわ。話しかけてみましょう」

のあ「にゃーお」

ピクッ スタコラサッ

のあ「あっ……」シュン

雪美「のあ……猫は……距離感に……聡い……」

雪美「心を……無にして……。そうすれば……自然に……近づける……かも……」

のあ「分かったわ。交流さえできれば言葉は分かる」スタスタ

モバP「あ、追いかけて行ってしまった。失敗してもクールな表情を崩さないのあさんは気丈夫だな」

雪美「のあなら……きっと……上手くいく……」

モバP「そういえば女性のパーソナルスペースは自分中心に真円。男性は前に細長い円なんだそうだね。猫はどうなんだろうな」

雪美「猫も……似ている……。私と、Pのように……ゼロ距離? ……じゃない……」

モバP「雪美にとっての俺はもはやパーソナルスペースの一部でもあるんだな」 ウン


のあ「にゃー、ふにゃにゃにゃにゃー?」 ノアサンッ!?

792

雪美「……」

モバP「……」

ちひろ「二人が膝上の距離から見つめ合っている……」

雪美「……」スッ

モバP「あっ」

ちひろ「片手を頬に……?」

雪美「……」スッ

ちひろ「両方……これは……もしかして……?」

モバP「……」ドキドキ

雪美「……(そっと目を閉じながら顔を寄せる)」

ムニムニ

モバP「……!?」

雪美「……ふふ……変な顔……」ホッペムギュー


ちひろ「……せっかくホイッスルを吹こうと思って取り出したのに」

793

ブロロロ

モバP「久々に通る道だが、新しいバイパスが出来ているな」

雪美「きれいな……道路……。高速道路……みたいに……広い……」

モバP「本当だな。しかしこうなると以前使っていた道は旧道という感覚になってしまうわけか」

雪美「旧道も……建物が、続いていて……好き……」

モバP「道沿いにな。こういう道路だと防音壁で仕切られているからなあ」

モバP「しかし見てごらんよ。道がそびえ立つようだよ」

雪美「……本当……」

モバP「下り道の先に上り道が続くような場所は、坂道が崖のように見えることってあるよな」

モバP「高低差のある住宅街の道路とかを見ると、ダイナミックだなと感じずにはいられない」

雪美「……でも……こうして走ると……普通の道……」

モバP「錯視の一種なんだろうがジェットコースターみたいで面白いな」 ……ウン

モバP「ちなみに俺は高速に等間隔に設置してある非常電話を見ると、何故か落ち着くタイプです」 


雪美「……事故……起こさないで……ね……」 モチロンヨ

794

モバP「この前自宅にあった知らない漫画を読んでいたら面白いシチュエーションがあった」

雪美「……?」

ちひろ「自宅に知らない漫画が置いてある怖さ」

モバP「誰かが持って来たんでしょう。で、内容は主人公が事故で両手を骨折してしまうというもので」

モバP「それで仲の良い女の子にいろいろと生活の介護をしてもらうんです」

ちひろ「ごはんをあーんしてもらったり、お風呂で体を拭いてもらったりですか」

モバP「ああいうことも一度はされてみたいものですよね」

ちひろ「如何わしい期待をしているように思えてなりませんけど」

雪美「Pが……もし……両手骨折……したら……、みんなで……交代で……お世話(意味深)……する」

モバP「その気持ちだけでも嬉しい」

雪美「気持ちだけ……じゃない……。みんなで、前もって……決めている……こと……」

雪美「……私は……こずえと……二人で……Pを……助ける……」

モバP「雪美とこずえにお世話されるとか……まあ両手骨折なんてアクシデントはそう起きまいが」


ちひろ「プロデューサーさんを骨折させないようにしないと……」

795

モバP「たまには雪美さんにこんな格好させたって良いじゃないシリーズ」

モバP「ロックマン風の雪美さん」

雪美「……」キラキラ

ちひろ「精巧に作られていますけど自分で作ったんですか?」

モバP「晶葉との共同開発ですね」

雪美「……」ジャキンッ

モバP「片手をロックバスターにすることもできますし、色も変わります」

ちひろ「その機能凄いですけどどこで使うんですか」

モバP「まあ飾って眺める分冊百科的な感じの自己満足ですね」

ちひろ「はあ……でも、女性の水着のようなカラーリングのスーツに、ポニテ穴のあるヘルメットと、ロックマン風というかロッコちゃん風ですね。髪は黒で姉妹キャラ的ですけど」

雪美「……ロッコちゃん……もう……遊べない……」シミジミ

モバP「FLASHゲームよ安らかに……」

モバP「しかしロッコちゃんやシエルみたいなタイプのポニーテールって良いですよね。ボディはレヴィアタンのデザインと迷いました」


ちひろ「レヴィアタンは露出度がね……いやロボットスキンなんですけども」

今日はここまで
まりもサラダでございます

796

モバP「……」カタカタ

??「……」トコトコ

モバP「……」カタカタ

??「……」チラッ

モバP「……」カタカタ

??「……」

モバP「……誰?」

??「……私……」

モバP「いや、分かっていたがな。紙袋を被った雪美さん――敢えて顔を隠すのも……良いよね」

雪美「……本当に……分かってた……?」

モバP「俺は雪美を顔や髪型だけで認識している訳じゃないから安心して」

雪美「ん……。……トリック、オア……トリート……」

モバP「おお、ハロウィンか。良いだろう、この飴とついでにゆで卵と花火も持って行け」


ちひろ「イースターや独立記念日まで混ざっていませんか?」

797

モバP「ソファーに深々と腰を下ろし、新聞を読む――厳格な父親の朝って感じだ」

雪美「……」

ちひろ「雪美ちゃんが隣で覗き込んでいるのは良いんですか?」

モバP「若い内から活字に興味を持つのは大事なことです。あ、この寸評枠は二周年か……」

モバP「しかし、新聞の漫画って凄いですよね。毎日よくネタが尽きないと思います」

ちひろ「大体テレビ番組欄の裏の左上にある印象ですね」

雪美「……これ……2500話も……描き続けるの……すごい……」

モバP「単純計算でここまで行くのに毎日一本休み無しで約7年かかるのか。日々どんなペースで書いていらっしゃるのが知らないが」

ちひろ「一日一本という時もあれば、数話書き溜めてまとまった休みを作って旅行に行く時もあるんでしょうかね?」

モバP「モチベーションとクオリティーの維持を考えても、定期のお仕事は心の逃げ場が無さそう」

ちひろ「それはそうとプロデューサーさんは雪美ちゃんと長年連れ添ったように仲が良いですよね」

モバP「実質9年くらい一緒にいる感覚なのでもう幼馴染みたいなものですね」

ちひろ「その感覚はおかしい。……まあいつの間にかシンデレラガールが9人もいますけど」


雪美「生まれながらの……幼馴染まで……もう少し……?」

798

モバP「出先の喫茶店とかでメニューにあるといつもつい頼んでしまうものがある」

雪美「……?」

モバP「これだよ。グレープフルーツジュース。紙パックだが」

モバP「いつもと違う特別な日には、何故かこれが飲みたくなるんだ」

雪美「……P……グレープフルーツ……好き……?」

モバP「この甘さと酸っぱさと苦みの加減が好きだな」チュー

モバP「ん、デリシャス」

雪美「……一口……」

モバP「どうぞ」

雪美「……」チュー

ちひろ「同じストローに口を付けることに抵抗ないんですね」

雪美「……少し……大人な……味……」

モバP「これを好きになったのは背伸び感覚でもあったかもしれないが、きちんとした? 理由もあるんだ」

雪美「……?」

モバP「雪美は普通のジュースが少し甘すぎると感じることはないか?」

雪美「……」フルフル

モバP「例えば、喉が渇く夏にココアってあまり飲まないだろ? ホットは勿論だがアイスでもそんなに」

雪美「……」コク

モバP「まあアイスココアも嫌いじゃないんだ。まず作るのが手間というのはあるが」

ちひろ「冷たいとパウダーはよく溶けないんですよね」

モバP「それ以上に甘いものやドロっとしたものは、飲んでも割とすぐにまた喉が渇くんだよな。それが煩わしい」

雪美「……確かに……」

モバP「だから水分補給には基本はお茶や水。ただせっかくの外食時には、ということで甘さ控えめのグレープフルーツジュースが好きだ」

モバP「ちなみにファミレスとかのドリンクバーでポピュラーな物だけでなく、そういうジュースの種類がやたら充実しているお店はこだわりを感じちゃうね」

ちひろ「プロデューサーさんはドリンクバーがあったら適当に混ぜそうなタイプですよね」

モバP「飲み放題ならその前にまずは一通り味見しようとおかわりしてそこでギブアップです」

雪美「……Pは……レモネードや……りんご酢も……好き……ね」

ちひろ「酸いのが好きなんですね。適度に唾液が出そうで良いですけど」


雪美「そして……キスは……レモン飴の……味……」 ナゼシッテルンダ

799

モバP「へくしっ! ……さあ、寒くなって参りました」

雪美「Bless you. ……P……風邪……引かないように……ね」

モバP「Thank you. ああ、体調には気を使って寝られる時は早めに寝るよ」

雪美「いつも……しっかり寝ないと……」

モバP「まあ伊達にこの仕事を務めてないから、そう簡単にはくたばらんよ」

雪美「……心配」

モバP「雪美さんに心配してもらえるなんて俺は幸せ者だなあ」

雪美「もう……、……は……くちゅんっ!」

モバP「雪美っ! 大丈夫か? 具合が悪いのか? 今日の仕事は切り上げようか?」

雪美「……空気が……少しひんやり……感じただけ……。大丈夫……」

モバP「こっちおいで」

雪美「……!」

雪美「……///」ダキッ


ちひろ「“こっちおいで”は言われるとキュンとする言葉だとか」

800

モバP「夢はいつか覚めるもの、魔法はいつか解けるもの」

モバP「……ある朝目が覚めたら、それまでの幸せは全て泡沫と消えているのではないか――いつもそんな不安が付きまとう」

雪美「……ん……おはよう……P」

モバP「おはよう! 良かった……今日も正しい現実に帰還することができた」

雪美「……できないことも……あるの……?」

モバP「違う世界に迷い込んで帰って来られなくなったコピーの自分はたくさんいるかもな」

モバP「この自分は相変わらずどうにか耳は聞こえるし、言葉も理解できる。大切な人も変わらずにいる」

モバP「でも雪美さん、お泊りを許可したっけ? それも大人なローライズの下着姿だし……あ、これはまだ夢かな?」

雪美「シンデレラの……過ごした舞踏会は……夢じゃない……。……奇跡も、魔法も、ある……」

モバP「救いはあるんですね? ……その下着は新しいやつか? とても似合ってるぞ」

雪美「! ……うれしい……。……Pに……見せたかった……から」ギシッ

――

モバP「……今朝のは夢で良かった。いや、良くないな。何を考えているんだ俺は」


雪美「P……今日は……Pに……見せたいものが……ある……」 マテオチツケ ……?

801

モバP「卒業祝いや成人祝いに万年筆を貰うことがありますよね」

ちひろ「万年筆ですか。あまり印象が……」

モバP「個人的にはあまり使わないんですよね。良いものなんでしょうが」

ちひろ「ボールペンやシャープペンシルなら使いますかね?」

モバP「ですね。ただ、電子化であまり字を書かずに入力で済ます機会も増えてきて」

モバP「何か立派な箱に入っていて勿体無いので大抵はそのままです」

ちひろ「安い使い捨ての物ばかり先に使ってしまうタイプですか」

雪美「……ラストエリクサー……症候群……」

モバP「そういえばゲームでも貴重消耗品とかを温存してそのまま使わないことが多いな」

雪美「宝物……大事に……しまっておきたいのは……分かる」

モバP「やっぱり良い物はここぞという時に使いたいんだよな。待てど暮らせどその時が来ないんだが」

ちひろ「で、持ち腐れちゃうんですね」

モバP「ドーピングアイテムなんか、いつか絶好の機会が来るはずだと思っていたらクリアしてしまい拍子抜け」

ちひろ「時間経過で腐るとかなら仕方なく使うんでしょうけどね。ゲームの食品は防腐剤でもかけてあるんでしょうか」

モバP「ちなみにアイテムを、町人も食べたり使ったりして効果を実感しているような会話があると、ゲームの世界の生活感がしてテンションが上がります」

ちひろ「ドーピングされてやたら強い一般人とかいても面白そうです」

雪美「命の木の実……イラストでは……おいしそう」

モバP「ドラクエの木の実か。他のゲームでも大抵こういうのは美味しそうなんだよな」

ちひろ「そういえば以前はリアルポーションが売られていましたっけ。私のドリンクに比べたら効果は……」

モバP「ちひろさんのドリンクは買えるエリクサーですからね。インフレした最終盤ダンジョンみたいで却って恐縮して買えません」

ちひろ「いや買えよ」

モバP「しかし木の実も使い惜しんでいたら奴隷にされて10年経過するかもしれない。そうなるともう発芽とかしてそうですよね」

ちひろ「じゃがいもみたいに言いますね。でもドーピングアイテムを栽培できたら楽しいでしょうね」

モバP「まあ、現実では10年も経つといろいろ劣化するのがオチですね。ボールペンなんてインクが固まって書けなくなる」

雪美「……時間が経つのは……こわい……」

ちひろ「大人みたいなことを……プロデューサーさんは余分なボールペンを持ち過ぎでは?」 デスカネ

モバP「話を最初まで戻しまして、他にもお祝いで貰うものと言えば腕時計ですが、携帯スマホの普及からか、Apple Watch以外あまり着けている人を見なくなりました」

モバP「……将来、雪美さんの卒業・成人祝いには何をあげようか。永遠の悩みです」


ちひろ「文字通り永遠に悩めそうなのが何とも……」

802

モバP「作業の進捗が思わしくない。うーむ……」

くるみ「ぷろでゅーしゃー……?」

モバP「おう、俺の初恋の人に雰囲気が似ている大沼くるみよ、どうした?」

くるみ「ふぇっ!?」

モバP「おっと失礼、マスクデータが漏れてしまった」

くるみ「……くるみ、ぷろでゅーしゃーの、初恋の人に、似てるの?」

モバP「ああ、似てる……と思う。接触が切れて結構経つから、本当に似ているのか精度はかなり怪しいものだが」

くるみ「……ぷろでゅーしゃーの、初恋のお話……」

モバP「……そうだな。休憩がてら、少し吐き出してみるとするよ」

モバP「えっと、中学生の時かな。その初恋の人は部活の先輩で、前髪アップのツインテールがチャームポイントで、いつも笑顔でフレンドリーだった」

モバP「俺が1年生の時の3年生だったから仲良くなりきる前にすぐ卒業で会えなくなって――」

――

くるみ「……(真剣に聞いている)」

モバP「――それから先輩と面影が似た人と出会う度に、異性として気になることが続いた……もう元の顔をはっきりは思い出せないのに」

モバP「先輩、今頃どこかで幸せに暮らしているのかな……? すまんな、個人的な思い出とくるみを比べるようなことを言って」

くるみ「ううん。ぷろでゅーしゃー、ティッシュ……使う?」

モバP「ありがとう。どうもくるみの顔を見ていると当時の記憶がどんどん引き出されてくる。懐かしいな……ぐすっ」

くるみ「ぷろでゅーしゃー、くるみもいっしょに、泣くよぉ……ぐすっ」

雪美「……まさかの……貰い泣き……」

モバP「あ、雪美さん」スン

雪美「Pは……頼りない所もある……。だから……身近に……感じる……」

モバP「ははは……頼りないのは堪忍な」

雪美「……豆乳……持って来た……。くるみも……いっしょに……飲もう……」

くるみ「いいの? ……えへへ、豆乳、好きぃ」

雪美「……いい笑顔です……」

モバP「くるみの笑顔が強いのは写真写りの良さからも覗えるな」

モバP「普段は泣き顔も多いが、いざという時は自然体のように、でもしっかり決めてくる才能がある」

くるみ「才能……ぷろでゅーしゃーが言ってくれるなら……信じてみる!」


ちひろ「くるみちゃんが部活の先輩とか胸が厚くなるな」

今日はここまで
今日は一日後の昨日

803

モバP「……」グテー

ちひろ「どうしたんですか? 大型イベントが終わった後のような燃え尽きようですけどそんなのありませんでしたよね?」

モバP「そりゃもう、大型イベント。終わりましたよ……ドラフト会議」

ちひろ「ああ、一年の総決算的な……というか本業関係ないことですか」

モバP「いえ、“アイドルドラフト会議”のことです」

ちひろ「私の知らないドラフト会議ですね……アイドルや声優や食べ物のドラフト会議はバラエティ番組とかで見なくもないですけど」

モバP「ウチの場合は、年一でプロデューサー同士で寄り集まって、各々がパワプロで作った渾身のアイドルを集めて1位から順に指名していくんです。重複したらクジで」

モバP「そして指名した選手でトーナメント戦をして盛り上がる感じですね。毎年層が厚くなっていって、編成が楽しい」

ちひろ「思ったよりも野球要素入っていましたね。というか仲良いな」

モバP「やっぱり一年溜めてからのお祭りですから楽しくて、終わった後の虚無感……」

雪美「……私も……ゲストで……参加した……」

モバP「そうそう。独自ルールで過去に指名したアイドルを実際に連れて来ても良いんですよ」

モバP「雪美は第一回のドラフト3位でした……346プロはアイドルの数が多い分、他所のPに指名されるリスクが高いのが難点で、駆け引きが捗って仕方ありません」


ちひろ「妙にリアルな順位付けるんですね。敢えて1位じゃない所とか」

804

雪美「……」ピトッ

モバP「……」ダキッ

ちひろ「ニホンザルの猿団子のように身を寄せ合っていますね」

モバP「最近少し二人の関係にマンネリが出てきたので、距離感を見直そうと」

ちひろ「距離を置くどころか余計に近づいているんですけどそれは」

雪美「……温かい……」

モバP「嫌なことがあったからくっつく、というのは慰めとしてよくありますが」

モバP「良いことがあったからくっつく、幸せを分かち合うというのも良いものですね」

雪美「……とりあえず……くっつきたい……だけ……?」

ちひろ「雪美ちゃんもそれで堂々としていますよねえ」

雪美「……これが……普通……」(゜-゜)キリッ

モバP「しかしニホンザルと言えば温泉ですね。雪美と温泉にも入りに行きたいな」

雪美「……その時は……背中……しっかり……洗って……あげる……」 ハハハ、イウネエ


ちひろ「当然のことと言わんばかりに混浴する気か」

805

モバP「これは天保五両判金か」サクサク

雪美「……波のような……模様……。これは……削頭千……?」サクサク

ちひろ「一見では何の会話か分かりませんね」

雪美「……ちひろさんも……どうぞ……」

ちひろ「ありがとうございます。……じゃあこれ」

ちひろ「……これは寛永通宝ですね」

モバP「袋にあるリストを見なくても分かるとか凄いですね」

ちひろ「字を見れば分かりますし」サクサク

モバP「普通のお菓子は形なんて全部同じだったりそうでなかったりしますが、このエースコインはそうでない方で」

モバP「一枚一枚、食べる前にどんなコインを模してあるのか自然と確認してしまう」

雪美「ゆっくり食べられて……良い……」

モバP「そうだな。アルフォートとかもついどんどん食べてしまうから、手を止めて見られるように絵の種類がいくつかあったら良いのに」

ちひろ「その製造の手間の代償で値上げしたり内容量が減ったとしても?」

モバP「それはちょっと困ります」

ちひろ「それにしても、ビスケット単体を久々に食べた気がします。味はシンプルですけど美味しい」

モバP「クッキー、ビスケット、サブレ――昔は区別出来ませんでしたね」

ちひろ「作り方とかに違いがあることは分かっていましたけど、曖昧でしたね」

雪美「アイスクリーム……アイスミルク……ラクトアイス……」

モバP「そんなのあまり考えずに食べていたよな」

雪美「アシカ……アザラシ……オットセイ……トド……セイウチ……」

モバP「それもよく分からずに似たような動物という括りで見ていたな」

ちひろ「似たような動物扱いは酷いと思いますけど」

雪美「……あまり……接点が……ないから……。猫なら……詳しい……」

モバP「雪美さんは猫のことには詳しいよな。交尾が凄く痛いこととかを知っている」

雪美「……排卵誘発のため……ね……」

ちひろ「お菓子食べながら交尾の話をするのはお二人の時だけにしてくださいよ?」

モバP「失礼、少し品を損なってしまいました。……これは和同開珎か」サクサク

ちひろ「こういうお菓子とか新聞広告とか、最近古銭ブームなんですかね?」


モバP「どうでしょうね? お札の印刷番号キリ番くらいなら自分も探しますが」 キリバン……?

806

モバP「金剛杵ってありますよね」

ちひろ「はい」

モバP「あれって武器としては凄く性能的に微妙そうに見えませんか?」

ちひろ「刃物としてはあまりリーチがありませんからね。まあダブルセイバーみたいに長くても扱いにくそうですが――って何の話ですか」

雪美「……んっ……んっ……」

モバP「雪美がダンベルを持って上腕二頭筋を鍛えている姿を見ると何となくそんなことを考えるのです」

ちひろ「ダンベル女子……流行りそうな気配がなくもない」

雪美「……ふっ……ふっ……」

モバP「……」ポーッ

ちひろ「何熱い視線を送っているんですか」

モバP「いや、真剣な表情が神々しく見えてしまって」

雪美「……! ……」ニコ

モバP「こっちに気づいて笑顔を見せる雪美さん、控えめに言って最高やな」


ちひろ「……おもちゃのダンベルですよね?」

807

むつみ「私、実はずっと、Pさんのデスクの下がどんな空間になっているのか興味がありました」

むつみ「いざ往かん、小さな冒険へ!」

輝子「フヒ……冒険家さん、この先に行きたいのか?」

むつみ「あ、あなたがこの入り口を守るというキノコの門番ですね!」

輝子「え、えっと……そうとも! ここを通してほしくば、証を示せ」

むつみ「証……ですか」

むつみ「そうだ! 以前の冒険で喋るキノコ、マ・ピニョンから友達の証として貰った、この○きのこバッジ○をあげましょう」

輝子「と、トモダチの証……! い、良いのか? そんな物を貰って」

むつみ「たくさん貰いましたから! ほら、サファリジャケットにいっぱい」

輝子「トモダチいっぱい……羨ましいな……」ノソノソ

輝子「よし……さあ、通れ」

むつみ「入口は小さいですね。四つん這いでないと通れないかも……でも、こんな所で引き返しません」

むつみ「では、行ってきます!」

――

むつみ「広い空間に出たと思ったら、ここは……草原? みんなで遊べそうなほど広い! 事務所の地下がこんなになっていたなんて!」

――

むつみ「何か墓石らしき台から更に地下へと続く階段を見つけ、下りてみた所、貯蔵庫らしき場所に来ました。……ちょっとかび臭いですけど、こういう空間ってロマンですね」

――

むつみ「この崖下に広がって見えるのは地下帝国ですか。たくさんの労働者が建設作業をしていますね。あの千川のマークは見なかったことに……」

――

むつみ「監視の人に見つかって慌てて隠れたトイレが迷宮に繋がっているなんて。それも襖で仕切られていて変な感じ……でももう少し奥まで逃げましょう」

――

むつみ「ここは地下水脈でしょうか、人の手の入ったような洞窟に水の流れる音……もう随分降りてきましたけど、私ここからどうやって脱出すれば……」

――

むつみ「梯子を下りたら突然病院か研究所のような空間が……。何だか息苦しい……こんなに地下に来たら当たり前ですね」

むつみ「……はぁ……はぁ……。まずい、意識が遠く……。……ん? あ、あなたは……」

雪美「……お帰りは……こちらになります……」 エッ ユキミチャン!?

(゜-゜) <……


モバP「――むつみ、俺の机の下で熟睡か?」 エッ ワタシイッタイナニヲ?

808

モバP「♪」

雪美「……♪」

紗南「Pさんと雪美ちゃんのコンビプレイでどんどん進むねー」

ありす「あ、ゴールですね。みなさんスターは取りましたね、行きますよ?」

テレレレッテ テレレレッテッテ yahoo!

モバP「いやあ、スーパーマリオ3Dワールドで複数プレイは未だ現役を張れる楽しさだな」

紗南「確かnewスーパーマリオブラザーズwiiからだね、4人同時にプレイ出来るのって」

モバP「マリオブラザーズ2やマリオワールドの頃は交代制だったからな」

モバP「しかしカジノ街のようなライトアップされたテーマパークの雰囲気が好物だ。ジャズBGMも心地良く夜の華やかさに没入する」

ありす「本場のカジノには行ったことがありませんけどね。いつか行ってみたいです」

モバP「俺もだ。カジノとは違うがマリオカートのワルイージピンボールもコースの中で一番くらい好きかも」

紗南「Pさんはセガのソニックシリーズとかも好きそうだね」

ちひろ「プロデューサーさんにもやっとマリオで遊ぶ友達が以下略」 マエカラ(ry


雪美「……ふふ……にゃーお……」 ←ネコマリオお気に入り

809

モバP「ちひろさん、ロックって何でしょうね」

ちひろ「李衣菜ちゃんに惑わされでもしましたか」

モバP「中らずと雖も遠からず。李衣菜をどう導くべきか自信が無くなりつつあります」

ちひろ「プロデューサーさんがそれだと困りますね」

モバP「とりあえずThrough the Fire and Flamesを弾けるようになれ、とは言っておきましたが」

ちひろ「獅子は我が子を千尋の谷に落とす的なスパルタですかそれは」

モバP「でも、ああ見えて育ちが良くて、優等生なんですよね。舐めてかかると頭脳で負けます。みくと合いそうなタイプなんですがね」

ちひろ「……李衣菜ちゃんがと言うつもりは無いですけど、一番好きなものが一番不得意、という人は稀にいますよね」

モバP「スポーツとかで、はい。やっぱり険しい道ほど燃えるものがあるんですかね……ん?」 ガヤガヤ

チガウニャ! イイジャン! ココハコウダカラ! ソレアナタノカンソウデスヨネ?

みく・李衣菜「「もう! 解散にゃ(だ)!」」

雪美「……ケンカ……しない……!」メッ

みく・李衣菜「「はい……」」


モバP「母は強し、ですねえ」 ハハ……?

810

モバP「雪美さんに着せてはいけない服シリーズー(不定期)」

ちひろ「まだやるんですか」

雪美「……」コクコク

モバP「そんなにネタがある訳じゃないのでいつか消滅します。いつかはね」

雪美「……着せたい服……そんなに……ないの……?」

モバP「着せてはいけない服であって着せたい服じゃないんだ、建前は」

ちひろ「アウトな衣装でもいくつも挙げれば大抵は被りが出てきますからね」

モバP「えっと、今回は、これは完全に狙ったような格好になりますが、スクール水着の上にセーラー服ですね」

ちひろ「某潜水艦娘みたいですね」

モバP「スカートを穿いていないのがアンバランスな感じがしますが、穿くとスクール水着要素が見えなくなるという」

雪美「これだと……着衣水泳……みたいに……貼りつきそう……」

ちひろ「泳ぐ時はさすがにセーラー服は脱ぐと思いますけどね」

モバP「半脱ぎみたいな姿が無垢な少女感を引き立てますが、よく考えれば着せてはいけないって程じゃなかったかも」


雪美「……じゃあ……着てみたい……」キラキラ ドウシマスコレ?

今日はここまで
ありがとウサギ

811

モバP「人生は選択の連続である」

モバP「どちらか一つしか、その一度きりしか選べない運命の選択」

モバP「そんな機会が多々訪れると言って良い」

雪美「進路……とか……?」

ちひろ「雪美ちゃんの歳で進路のことなんて考えたくないですねえ」

モバP「そして今ここで俺も、雪美にある選択を課すことになる」

雪美「えっ……」

モバP「よく考えて選んでくれ」

雪美「……」ドキドキ

モバP「今日のおやつはクイニーアマンとじゃりパン、どっちを食べたい?」

ちひろ「」ズルッ

雪美「……むむむ……」

ちひろ「悩みますか」


みちる「ブルターニュか宮崎か、これは迷いますよ!」 ナンデソノフタツナノ?

812

テレビ<ダイヤモンドカーラーユーメーヲハナツペールセーウースー

モバP「野球選手がオールドスタイルの格好をしていると、足が締まって見えるなあ」

友紀「ストッキングを外に出して見せる格好だね。クラシックスタイルとも言う」

法子「オールドファッション?」

モバP「そらドーナツや。ミスドの定番だとフレンチクルーラーの方が人気らしいな」

法子「フレンチクルーラーの類似品はオールドファッションに比べるとそんなに無いからね」

雪美「……でも……ポンデリング……強い……」

モバP「こほん。しかし裾を出さないのって何かメリケンスタイルって感じがするよな」

友紀「シャツ入れデニムショートパンツとかアメリカのティーンエージャーって感じだね」

モバP「何故かガタイが良い子がイメージされる」

雪美「……私が……やったら……?」

モバP「似合わなくはないが、それで髪もおかっぱボブくらい短かったら中性的で男子と見間違うかもな」

友紀「今時男の子でもショートパンツはなかなかいないよね。ハーフパンツならともかくだよ」


モバP「でも小学校には学年に一人は年中短パンの児童がいると聞くがな」 ……トシデンセツ?

813

モバP「こういう仕事をしていると旅館に泊まったりホテルに泊まったりする機会が増えていく」

ちひろ「経費で落ちますからね」

雪美「でも……あまり……忙しいと……満喫できない……」

モバP「せっかく泊まっても忙しかったり疲れて爆睡したりして楽しみ所を逃すと勿体無いよな」

ちひろ「ただ泊まるだけなら簡素な所でも良いですからね」

モバP「まあビジネスホテルやカプセルホテルだと疲れすら取れないこともありますが」

モバP「……想像してみてください、和室のある旅館に泊まる光景を」

雪美「……広くて……良い匂い……しそう……」

モバP「ですな。まずはチェックインして独特の四角柱が付いたキーで部屋に入ったら荷物を置いて、畳に思いきり大の字になりたい」

モバP「洋室のベッドと違っていくら転がっても落ちないので安心です」

ちひろ「はしゃぎ過ぎです」

モバP「そして給湯器でお茶を入れて、備えてあるゴーフレットと共にいただきます」

ちひろ「お着き菓子ですか。入浴前に血糖値を上げた方が良いとかで置いてあるそうですね」

モバP「そして、テーブルに置かれた木で出来たタングラムパズルで遊びます」 アソブノカヨ

雪美「あれ……意外と……難しい……」

モバP「そこが良いんだよな。で、後は、温泉! 夕食! 温泉! 温泉! って感じで」

ちひろ「温泉入るなあ」

モバP「温泉は何度でも入れるなら入らないと損な気がします」

ちひろ「それは一理ある」

モバP「そしてしっかり浴衣にも着替えて、緩い雰囲気でのんびり夜更かしですかね」

雪美「……泊まりは……なかなか……眠れない……ね」

モバP「枕が変わると、か。非日常で興奮して目が冴えてしまうのはよく分かる」

モバP「で、あまり寝た気にならないままモーニングコールと」

雪美「そして……朝風呂……」

モバP「最高だね朝風呂。気持ち良く目が覚めるね」

ちひろ「寝不足は大丈夫ですか?」

モバP「大丈夫です。でも、一度は一泊二日のところを一日延長して、間の一日は部屋でテレビを見たり、有線放送を聴いたり、ブラブラしたり、何の予定も無く過ごしてみたいものです」

ちひろ「ホテル暮らしとかに憧れていそうですね」


雪美「……ホテルで……暮らすと……いろいろ……ダメに、なりそう……」 ソコナンダヨナ

814

モバP「あっ、幸子だ」スタスタ

幸子「あっ、プロデューサーさん。どうも」テクテク

モバP(このままだとぶつかるな、右に避けよう)

幸子(このままだとぶつかりますね。左に避けましょう)

モバP・幸子「……っ!」50%

モバP(おっと。じゃあ今度は左に)

幸子(右に避けましょう)

モバP・幸子「……っ!」25%

モバP(ここは敢えてまた左だ!)

幸子(もう右に行きますからね!)

モバP・幸子「……っ!!」12.5%

モバP・幸子「ぐぬぬぬぬ」6.25% 3.12% 1.56% 0.78% 0.39%

雪美「……P……幸子……廊下で……見つめ合って……どうしたの……?」


ちひろ「息が合ってますねえ」

815

モバP「果物と名が付きながら常識的に甘くないと分かる物ってあるよな」

雪美「……レモン……とか」

モバP「それもあるし、これもそうだ。そろそろ熟れてきたころ」

雪美「……これは……アボカド……?」

モバP「正解。雪美はアボカドは食べたことはある?」

雪美「……うん」

モバP「そうか。これがなかなかハマると美味いのよな」

雪美「わさび醤油で……食べると……おいしい……」

モバP「お、知っているじゃない。別名“森のバター”は大袈裟かと思ったら本当にバターっぽいという」

雪美「……これも……果物……」

モバP「ドリアンやライチと並んでトロピカルフルーツとしてよく名前が挙がるから、最初は甘い物だと勘違いしていたなあ」

雪美「牡蠣は……海のミルク……、大豆は……畑の肉……。……じゃあ……私は……?」

モバP「雪美は……雪美は……何だろうな? 陸のアイドル?」


ちひろ「そのまんまやないか」

816

雪美「……P……スーツに……毛が、付いてる……」スッ

モバP「おう、目敏いな。ありがとう」

雪美「……」

モバP「……」

雪美「……ドキドキ……しないの……?」

モバP「このくらいのスキンシップで狼狽えていたら体が持たないよ」

雪美「……私に……飽きた……?」

モバP「飽きてはいない。雪美に触れられるのは好きだ。だが、慣れてきている」

雪美「……もう少し……深い繋がりを……持つべき時が……来た……?」

モバP「雪美とは既に充分深い関係だと思っていたんだが」

雪美「……でも……まだ……出来ていないことも……ある……///」

モバP「意味深に顔を赤らめないでくれ。そういうの、ドキドキしてくるから」

雪美「……ふふふ……。Pも……まだまだ……ね」


ちひろ「こんなプチ・マドモアゼルもいつかはマダムになるんでしょうかね」

817

モバP「童心に返って鬼ごっこをやりたい気分だな」

雪美「……やる?」

モバP「やろうか」

ちひろ「今は真面目に仕事してください。でないと私が自動的に鬼になりますよ」

モバP「はい」

雪美「……残念……また今度……」

モバP「まあ、あまり頭を使う作業ではないから話だけなら出来るぞ」

雪美「……鬼ごっこ……好き……?」

モバP「好きだが、なかなか難しいよな」

ちひろ「と言いますと?」

モバP「シンプルな追い追われだと持久戦になりがちなので」

ちひろ「そこに追加のルールやハンデを組み込んで楽しくするんでしょう。特定の場所で何をしろ的な指令をしたり」

雪美「色鬼……とか……」

モバP「じゃあ金色! とかね」 ムチャイウナ

モバP「しかしあまり煩雑になり過ぎても遊びとして楽しめなくなりますし、バランス調整がシビアです」

モバP「見るだけならバラエティの逃走中とかVS100人刑事とかとても面白そうなんですがね」

雪美「……うん」

ちひろ「広い土地を貸切で鬼ごっこみたいなことをするって発想が凄いですよね。出来ますけど」

モバP「出来るんですか……。個人的にはプロデューサーVS200人アイドル的な遊びをいつかやってみたいです」

モバP「まあ逃げきる自信があるので目に見えた勝負でつまらないかもしれませんね」フフン

雪美「……P……1人で逃げる……の……?」

モバP「サバゲーで鍛えているから余裕」

ちひろ「プロデューサーさんが鬼で制限時間内にアイドル全員捕まえる、とかの方が面白いかと」

雪美「……私は……Pには……捕まらないから……楽勝」フフン

ちひろ「お互いに大した自信ですね」

モバP「実は広範囲鬼ごっこは以前、一度やったことがあります。ルールをよく理解できずに雰囲気だけで年長者に付き合っていた形ですがね」

モバP「遊びの分かりやすさと公平さと面白さを三点両立させるのはとても大変なんですよね。あと地域住人の理解と、試合としてのガチ感」

ちひろ「バラエティも例えばビーコン演出とかは良いとして、カメラマンが随伴して位置がバレる不自然さはいつも気になります」


雪美「……Pと……ちひろさんの……本気の鬼ごっこも……見てみたい……」 コダワリマスヨ?

今日はここまで
じっくりダシを取りません

818

紗南「よし、ステーションとドッキング完了」

モバP「緑くんが活き活きしているな。この探査が片道切符となるとは知らずに」

紗南「いや、ちゃんと帰って来られるから」

ちひろ「おや、それはカーバルスペースプログラムですか」

雪美「……英語と……数字が……いっぱい……。難しそうな……ゲーム」

モバP「現実の国際宇宙ステーションもこのくらい大きくしていけないんでしょうかね?」

ちひろ「無重力で天井とかもスペースとして使えるとは言え、狭いは狭いですからね」

モバP「自分が勝手に思っているだけですが、宇宙進出への中継基地的なものとするには規模が物足りないというか」

雪美「……衛星みたいに……大きかったら……良いかも……ね」

モバP「SFに出てくるスペースコロニーとか巨大だからな」

ちひろ「あんな質量のある物、少しずつ地球から打ち上げて組み立てるのにはとてつもない時間と費用がかかるでしょう」

モバP「地球は重力と大気から手厚く守られている反面、脱出するのも一苦労ですからね。ましてや有人では」

モバP「……しかしこのゲームを遊びこなせる人は理系適性がある気がします、何となく」


紗南「この中で理系のイメージと言えば、ちひろさんだね」 ワタシ? ソリャネ?

819

モバP「……ああ、いつもと変わらぬ日常だねえ」

桃華「……///」

ちひろ「膝の上に乗っているのが桃華ちゃんであることを除けばですね」

モバP「あれ? それは結構大きな変化じゃないですか?」

雪美「……私だと……思ってた……?」

桃華「だ、誰でも良かったんですの?」

モバP「冗談さね。桃華のことはしっかり感じ取っているよ」

モバP「まだ少し硬い感じが伝わってくる。この席には慣れていないようだな」

桃華「わ、わたくしはレディですから、すぐに馴染んでみせますわ!」

モバP「桃華ならそれも早いことだろう。しかし俺の膝上に乗せてもらいたがるとは」

桃華「子どものようなおねだりをして、はしたなかったかしら?」

モバP「いや、桃華がこういうお願いをしてくれることが嬉しかったよ。頼れる年上らしいことの一つもなかなかしてやれないことが多いし」

桃華「……Pちゃま。……では、もう少し肩の力を抜いて、甘えさせていただきますわ」 ギュッ


雪美「……Pの……父性が……高まっていく……」

820

雪美「……P……お茶にしよう……」

モバP「おう、そうだな」

コポコポコポ

雪美「……はい」

ゴクゴク

モバP「苦いねえ。シンプルな水筒から注がれた……ハーブティーか? いつもこれを持ち歩いて?」

雪美「……いつもは……普通の……お茶……」

モバP「良かった。『あのーもりくぼ犯人分かっちゃったんですけど』とか言い始めるタイプじゃないか」

ちひろ「乃々ちゃんはそんなこと言いません」

モバP「外見の割に赤のレースのパンツしか穿かないとか」

ちひろ「絶対それ10代のセンスじゃないですから。……最近はケイゾクの再放送でも見ていたんですか?」

モバP「はい。あれは何度見ても飽きませんね。古畑任三郎や相棒もですが」

ちひろ「それと床にシート広げて座っているのもツッコミ待ちですか?」

雪美「……冷えないように……座布団も……ある……」 ヨウイガイイデスネ

モバP「やっぱりほら、気分的には水筒でお茶するならレジャーシートの上がしっくり来ませんか?」

ちひろ「でもここ事務所ですからね?」

モバP「ついでにお弁当箱におにぎりといなりと唐揚げと肉団子・うずらの玉子・ミニトマトの串刺しとかも欲しいね」

ちひろ「運動会かな?」

雪美「……今度……作ってくる……!」

ちひろ「作らすな。……プロデューサーさんは運動会お花見ピクニック等の行楽欠乏症ですね」

モバP「子どもの頃は休日は親によく行楽に連れられたもので、頭と体と胃が覚えていて、今禁断症状が出かかっています」

ちひろ「記憶力の良い胃だなあ」

雪美「……P……道理で……シートの上が……馴染んでる……」

モバP「……そうかい? しかし事あるごとに弁当を作っていた親は偉大だな」

モバP「俺も今度アイドルたちとピクニックに行く時は早起きして大きな三段箱くらいの弁当を作ってみようかな」

ちひろ「親子じゃないんですから仕事外であまりはりきりすぎないでくださいよ?」

雪美「……じゃあ……その時は……手伝う……」

モバP「よろしくな。まずちょうど疲れたところに甘い油揚げと酢飯が染みるいなりは最高だし、おにぎりの海苔がしっとりした独特の状態もたまらんよなあ……」


ちひろ「この人シートに座るだけでお腹が空いてきたようですね」

821

雪美「……P」

モバP「ん?」

雪美「……私……喋るの……遅い……?」

モバP「ゆっくりめではあるが、俺はそのスピードで良いと思う。……何か言われたりしたのか?」

雪美「……違う。……でも……速い方が……伝えたいこと……より多く……伝わる……と、思って……」

モバP「かもな。でも、ゆっくり丁寧に綺麗に言葉を発する人も、魅力的に感じるよ」

雪美「……そう……?」

モバP「以前、免許取得の為に自動車教習所に通っていた時、そこの受付のお姉さんが台湾出身でね」

モバP「ゆっくりした、ジャズシンガーのような色っぽいスモーキーボイスと喋り方だった」

モバP「見た目は普通の社会人の黒髪美人さんって感じだったから、電話で話す時のイメージを良い意味で裏切られたな」

雪美「……色っぽい……。……じゃあ……私も……?」

モバP「スモーキーよりはウィスパーのそれだが、雪美さんも、です。当たり前だよなあ?」

雪美「……そう言われると……少し……うれしい……」


早苗「P君って試験場飛び込み一発合格してるイメージだったから意外ね」 ソンナチョウジンジャナインデスカラ

822

モバP「11月11日はポッキー&プリッツの日!」

モバP「……だった」

雪美「……忘れてた……ね」

モバP「まあ日常において別に覚えておかないといけないことではないからな」

ちひろ「関連のお仕事でもあれば別ですけどね」

モバP「というわけでヤンヤンつけボーが食べたくなってきました」

雪美「……それなら……ここに……」スッ デカシタ!

ちひろ「ポッキー何の関係も無いじゃないですか」

モバP「僕はねえ、昔からこういう知育菓子の類がたまらなく好きなんですよ」

雪美「知育……。……お菓子の……家とかも……そう……?」

モバP「あれはちと高いが最近の物は本格的よな。崩すのが惜しくて食べられなくなるくらい」

ちひろ「お菓子で家を作るという発想って、大抵はヘンゼルとグレーテルから得ますよね」

雪美「……お話は……怖い……。でも……お菓子の……家は……夢……」


モバP「グリム童話の食べ物描写って食欲を煽るよな」 ワカル……

823

モバP「最近は寒くなってきたね」

雪美「……」コク

モバP「秋が深まってきたのを実感する」

モバP「そうなれば鍋……のシーズンにはまだ少し早いか」

晴「……Pと鍋したら闇鍋になりそうだな」

モバP「それはせんよ、さすがに。みんなで好きな材料を持ち寄ってぶち込むのは好きだがな」

晴「本当か? ふざけてイチゴとか入れたりしないよな?」

モバP「ありすでもさすがにそこまではやらないぞ。思いつくまではいくだろうが」

雪美「……鍋……作ると……何日分も……できそう……」

モバP「鍋はみんなで食べる時に作りたい物ではあるよな」

モバP「今はお一人様向けの外食もあれば個食鍋の種類も豊富だから、余分になってでも作ろうとはあまり思わない」

雪美「あとは……おでん……」

モバP「ああ、良いね。俺は昔おでんの匂いと練り物が苦手だったが今は好物だ」

晴「ご飯のおかずにあまり合わないからなー」

モバP「そんなおでんと言えばやはり餅巾着だな。これぞおでんである必要がある一品」

晴「いや、そこは普通大根だぜ大根」

雪美「私は……玉子……」

モバP「好みが割れたなあ。大根は定番だが何かからしがしっくりこない時があるんだよな。あと玉子は熱い」

晴「何だよその澤もドリブルが上手い、みたいな適当なあしらいは」

雪美「口の中……火傷でも……した……?」

モバP「経験あります。でも美味しいよなどちらも。……ちなみに好きなネタ二番手は?」

晴「牛すじかな」

雪美「……こんにゃく」

モバP「あれれー、おかしいぞー? 全然合わないな。俺はじゃがいもだ」

晴「じゃがいもで合わすのは難しいと思うぜ?」

モバP「自分の好きな物はなかなか譲れないんよ。で、今日の夕飯は何を食べたい?」

雪美「そこはP……譲るの……?」

モバP「好きなことだけで世の中は生きて行けないからね。悲しいけど」

晴「そんなこと言うなよ……。じゃあ、何かスタミナが付くやつとか」

モバP「回鍋肉とか作ってみるか? キャベツと豚肉でシンプル中華だが食欲湧くぞ!」

晴「おっ、ご飯に合うやつを持って来たな。シンプルはシンプルだけどさ」

モバP「人間、シングルタスクよりシンプルタスクだよ」

晴「何言ってんだか」

モバP「普段も白菜と豚肉のミルフィーユとかアサリの酒蒸しみたいなおかずをよく作るからな」

雪美「シンプルでも美味しい……これ……大事……」

モバP「さあ、それと決まればこのまま仕事返りにスーパーに寄って帰るか」

晴「……」

雪美「……」

モバP「どうした? 二人とも外に出たら突然静かになって」

晴「……まだ6時になってないのにもう真っ暗だな」

モバP「……そうだな。宵闇の薄暗さが物寂しく感じる」

雪美「……」コク

晴「夏ならもう少し外で遊んでいられるのにな」


モバP「日が沈んだら家に帰らなきゃって本能的に思うよな」サ、カエロウ

824

雪美「……」チョコン

モバP「……こうして雪美を乗せていると時々手の行き場が余る感じがする」

雪美「……じゃあ……手遊び……しよう……」ワチャワチャ

モバP「……雪美に自分の手を良いようにされるのは快感」

ちひろ「はぁ……プロデューサーさんの手、雪美ちゃんと絡むと本当に大きく見えますね」

雪美「……大きな手……。でも……私に……よく、馴染む……そんな……存在……」

モバP「……この手をしっかり利用して、雪美さんを抱き締めても良いんだ」

雪美「……大胆……!」

モバP「でも、間違って変な所を触ったりしたらいけないからなあ」

ちひろ「プロデューサーさんは女性を抱き慣れていないんですね」

モバP「ちひろさんに抱き慣れるなんて言われると不覚にもドキドキしますね。はいそうです」

雪美「P……シャイだから……ふふっ……」

モバP「おかげで女の子に触れるだけでも勇気が要るんですよこう見えて」


ちひろ「おまえは何を言っているんだ」

825

モバP「我々、我慢の限界で遂にやっちゃいました」

雪美「……」コクコク

ちひろ「二人並んで何ですか、大人の階段でも上っちゃった訳じゃありませんよね?」

モバP「家にこたつを出したんです」

ちひろ「それは別に我慢する必要はないと思うんですけどね」

モバP「しかしあれがあるとやっぱり動くのが億劫になってしまいますね」

雪美「……きっと……今も……誰かの……ねぐら……」

ちひろ「気づかずに足を突っ込んだら杏ちゃんとかがいるんですかね」

モバP「ウチのこたつは皆が押しかけても良いように大きいのをいくつか置いてありますからね」

モバP「それにしても部屋が暖かいと冷たい物が美味しいです。アイスとか」

ちひろ「贅沢ですねえ。今週は食欲の秋真っ盛りなようで」

モバP「楽しい食事タイムがあるから前後の運動も捗るというものです。元々自分は動いていないと落ち着かないマグロみたいなものですからちょうど良いですよ」

雪美「……Pは……回遊魚……だった……?」


通りすがりの美優「前後運動……? Pさんは……マグロ……?」

今日はここまで
紅は園生に植えても隠れなし

826

モバP「ここにあったビル、いつの間にか無くなっているんだな」

雪美「……本当……」

モバP「更地に変わった場所を見ていると、土地というのは建物が無いと何だか狭く感じる」

雪美「周りが……高い……建物……ばかり……だから……」

モバP「それはあるな。景色が開けていれば違って見えそうだ」

雪美「……こうして……形ある、物は……いつか……無くなる……」

モバP「人が集まり留まる都会も少しずつ姿を変えていく。ずっと同じままではいられない」

モバP「ここにどんなお店があったとか、思い出とか、少しずつ忘れられていくのかな」

雪美「……切ない……」

モバP「自分がもしいつも通りの感覚で朝起きたのに50年後だったらどうしよう。周りは知らない人に知らない建物ばかり」

雪美「……浦島太郎……みたい……。……考えたく……ない……」

モバP「浦島太郎か……俺にとっては346プロが竜宮城みたいなものかもしれないな。人生のメタファー的な」

雪美「……もし……そうだとしたら……最後は……玉手箱……開ける……?」


モバP「……開ける、と思う。というか開けないとあれはどうなるんだろうな?」

827

杏「プロデューサーってさ」

モバP「何かね?」

杏「何も無い休みの日って何やってるの?」

モバP「俺に休みの日があると思うか?」

杏「あっ……ごめん」

モバP「あるに決まっているだろ。何当然のようにやっぱり無いんだと納得しかけているのよ」

杏「……まあその代わり、普段からあまり根を詰めて働いている感じはしないよね」

モバP「やかましいわ。休みの日でも無給で事務所に来て残っている仕事を消化したりアイドルと遊んだりするんだから」

杏「暇潰しに来てるのかな?」

モバP「運動会の観戦者側の余裕ってやつだな。俺は今日休みだけどー? って立場で悠々」

杏「うっわー、いい性格してるよ……。どこかに出かけたりはしないの?」

モバP「346プロが閉まっているような時は、図書館で本を読んだりDVDを見たりして午前を過ごし」

モバP「お腹が空いたら近くの洋食店で食事をして、午後はぶらぶらってところか。優雅な休日だろ?」


雪美「……憧れる……!」キラキラ ユキミチャン……

828

モバP「……」ソワソワ

ちひろ「落ち着かないですね」

モバP「雪美が来ないかなあと」

ちひろ「プロデューサーさんってそこまで雪美ちゃんがいないとダメでしたっけ?」

モバP「依存症というわけではないと思いますが、口寂しいならぬ膝寂しいというか」

ちひろ「雪美ちゃんを嗜好品のように認識しているのはどうかと」

ちひろ「雪美ちゃんには雪美ちゃんの生活がありますし、プロデューサーさんは他のアイドルにとってもプロデューサーさんなんですからね?」

モバP「心得ております。……よし! 気持ちを切り替えよう」

パタン

雪美「……」ソーッ

モバP「……さて、全集中の呼吸も済んだし早速仕事にとりかかろうと思ったら」

雪美「……」ピクッ

モバP「俺のここは、いつでも空いてますよ? あ、いつでもじゃないか」

雪美「……」クスッ

――

モバP「雪美さん捕まえた」

雪美「……捕まった……♪」

ちひろ「捕まえたというか食虫植物のように誘き寄せましたけどね」

モバP「雪美は捕まえようと思えばイチゴや黒猫グッズですぐ捕まえられますよ」

ちひろ「そんなことしちゃあ、ダメでしょ?」

モバP「……もしかして、嫌だったか?」

雪美「……」フルフル

モバP「本人許可が出ているので大丈夫です。雪美さんは誰にでもそうする訳じゃありませんし」

雪美「……千秋にも……よく……捕まりに……行く……」

ちひろ「雪美ちゃんはプロデューサーさんが絡まなくても割とこんな感じですか」

ちひろ「……まあ、同じような人は多いと思いますけど、私は雪美ちゃんを好きなプロデューサーさんを好きな自分が好きな気はします」

モバP「だって私、あの人を追いかけてる私が好きなんだもの――という千年女優のセリフを連想しますね」

雪美「黄金の月……草の露に……♪」


ちひろ「でも平沢進を歌う雪美ちゃんはもはやなんでもありが過ぎると思います」 デスカネ?

829

雪美A「……」ヒソヒソ

雪美B「……」コクコク

雪美C「……散」 シュンッ

モバP「雪美たちが集まる光景ってシュールだよな。最上級の目の保養だが」

あやめ「分身の術とは近代化の波で失われた特殊な歩法が元になっているのです」

あやめ「今で言うダンスがそれに近いのでしょうな」

モバP「ほう……よくそんなことを知っているな」

あやめ「……想像です」

モバP「想像か」

あやめ「はい」

モバP「いやいや……まあ案外そういうものなような気はする」

あやめ「プロデューサー殿は納得が早いですな。あやめもそうやって分身の術を会得したいのです」

モバP「……しかし、例えば自分のコピーが自分として周りの子からチヤホヤされていたら、嫉妬しそうなものだよな」

あやめ「自分は何人いても自分でありますから、良いのです」

モバP「そういえば以前読んだ小説に、青年の主人公が病気で死にかけの悪人と意識だけ入れ替わるという話があったな」

あやめ「なんと……」

モバP「肝心のタイトルを思い出せないが、なかなか理不尽な展開を忘れられずにいる」

モバP「最終的に自分の体を取り戻すことができるんだが、そこで可哀想な結末が待っていて」

あやめ「……どうなるのでしょうか?」

モバP「悪人の意識が消滅して、記憶を持ったまま体に戻った自分と、そのまま病人の体に残された自分の二人になってしまうんだ」

あやめ「同じ記憶を持った主人公が二人に……」

モバP「そして病人の方の主人公は何で僕は死ななきゃいけないんだ? と言いながら死んでいく。最期まで理解者の女性が一人付き添ったことが僅かな救いだったが」

あやめ「……そのお話、読んでみたいものであります」

モバP「そういう視点を知ると、自分が複数いるって事実は想像以上に酷なことかもしれない、と思うなあ」 ガタッ

あやめ「物音? 何者かが潜んでいるのでしょうか」

モバP「ハムスターの集団が雨樋を滑り降りているのかもな」 カモネ……?

あやめ「ご冗談を――って、雪美殿いつの間に!?」

雪美「……秘密の……通り道……から……参上……」


あやめ「忍者屋敷か猫の通り道のような事務所ですなあ」

830

ハナコ「ワンワン!」

モバP「ばう?」

ハナコ「ワン!」

モバP「わうわう」

ハナコ「ハフーン」

モバP「なるほどわからん」

凛「プロデューサーは最近やっと猫の考えていることが少し分かるようになった、って言うけど、犬のことはまだまだだね」

モバP「声を聞く感覚がなかなか難しいって知り合いの動物好きの我那覇さんも言っていたよ」

凛「……大物アイドルと知り合いなんて、やるじゃん」

モバP「でもまあせっかく渋谷家に来たからにはハナコにも挨拶をしておかないとな。昔実家にヨークシャー・テリアがいたから親近感がある」

凛「ふーん……ハナコ、おいで」 ワンッ!

モバP「俺にはこんなにじゃれつかないんだよな。好かれてはいると思うんだが」

雪美のテレパシー(……Pは……今は……猫と……同調率が……高いから……)


凛「……何か雪美の声が聞こえた」 リンモキコエルンダナ エッ

831

モバP「最近女の子とかの輝いている姿を見ると胸が高鳴るんですよね。恋でしょうか?」

ちひろ「この期に及んでどんだけピュアなんですか」

モバP「この感覚に任せてスカウトしたのが今のアイドルたちの一部ですが、どうも少しアンテナが敏感になっているような」

ちひろ「そういえばそんな機能を持っていましたね。……機能って人としておかしいですけど」

雪美「アンテナマーク……3本くらい……絶好調……?」

モバP「やだ雪美さんじゃないですか。何だか恥ずかしくて目を合わせ辛いなあ」スッ

雪美「……」ササッ ジッ

モバP「……」プイッ

雪美「……」ササッ ジッ

ちひろ「目を逸らした方向に回り込んで見つめるとは良いアピールですね」

モバP「降参です。雪美さんには敵わない……」

雪美「……ふふっ」キラキラ

モバP「ああ~、俺の感度がビンビンになるぜ」


ちひろ「変態みたいに聞こえますからやめて」

832

ちひろ「……けほっ」

モバP・雪美「……!」

ちひろ「失礼しました。乾燥して少し咳が」

モバP「大丈夫ですか? 加湿器を置きましょうか? 飲み物持って来ます」

雪美「ボイスケア……キャンディ……食べる……?」

ちひろ「大袈裟ですねえ。大丈夫ですよ」

モバP「お茶をどうぞ。あとネブライザーとか要ります?」

ちひろ「はやっ!? ストップストップ! 何喘息治療するような物持ち出そうとしているんですか」

モバP「大事なちひろさんにもしものことがあったらと思うと……みんな心配なんです」

雪美「……ちひろさん……」

ちひろ「プロデューサーさん……雪美ちゃんも……」

モバP「よし雪美、とりあえずちひろさんの周りにこのアロマディフューザーを並べよう」

ちひろ「……私を蒸す気ですか、そうですか」ニコニコ


モバP(ちひろさんのスマイルは結構圧を感じる時がある) ナニカ? イエナニモ

今日はここまで
今夜が山田

833

モバP「先日、プロデューサー友達と話をしていて聞き出したんですが」

モバP「何でも幼馴染がアイドルとして所属しているそうです。世間は広いようで狭い」

ちひろ「周りと少し違った距離感の関係になりそうですね」

雪美「……」コク

モバP「それが仲も良いようで、惚気ていましたよ」

モバP「他のアイドルたちとも上手く行くように働きかけてくれるそうで」

ちひろ「健気ですね。それでいつの間にか隠していた性癖とか意外な一面が知れ渡っていたり……」

モバP「その通りで結構硬派を気取っていたのが今では弄られるようになったそうです」

雪美「……Pも……怖そうに……見えて……面白い……人……」

モバP「子どもの当時アニメで目つきが悪い朴念仁系主人公が流行っていたのに影響を受けてこうなった」

ちひろ「そういうのにはよく幼馴染系負けヒロインがセットになるんですよね……」

モバP「でも幼馴染、現実には一緒に過ごした時間が長い分、情が移るというと何ですが、くっつきやすいイメージです」

雪美「……じゃあ……今からでも……私も……幼馴染……やる……」


モバP「みりあもやるー! みたいに言うなあ。こちらこそお願いします」 オネガイスルンカイ

834

ギャー!

紗南「」ビクッ!

雪美「」ビビクッ!

モバP「……(ここで来ることは)知ってた」

紗南「……ふぁー、突然全画面大声で来られると心臓に悪いってー」

雪美「……」ドキドキ

モバP「でも大袈裟過ぎず自然な感じで二人の反応は大変良かった」

モバP「ホラーゲームでこういうのはジャンプスケアと言うんだよな」

紗南「そうそう。不意打ちでこれをやられたら大抵の人はそりゃ驚くって」

モバP「これでビビりとか怖がりとか言われるのはちょっと不本意だよな」

雪美「P……知ってたなら……教えて……」

モバP「まあそれはね? 見ている側としては実況者の景気の良い反応を楽しみたいものでさ」

モバP「……しかしこういうゲームは初見でついよそ見とかして演出の瞬間を見逃すと遣る瀬無い気持ちになるよな」


紗南「経験者かな?」 ソウダヨ

835

モバP「女騎士というと上は鎧で固めて下はミニスカにレガースという格好のデザインを見かけたりする」

雪美「……おしゃれ……」

モバP「戦闘用としては足がむき出しなのはどうかと思ったりもするが、とにかく上半身下半身で露出度が大きく違う服って何か良い」

モバP「ということで雪美さんにタンクトップとサロペットを合わせてもらいました」

雪美「……どう……?」キラキラ

モバP「君の肩から二の腕、良い形しているよね」

ちひろ「おさわりは許しまへんで」

モバP「ダメですか」

雪美「……いつも……触れて……もらうのに……」

ちひろ「日常的に女の子の肩や上腕を直にベタベタ触るのはNG」

モバP「でもどことなく隙がある感じが大変刺さります。何か自由に動くかポーズでもしてみてくれ」

雪美「……」(/゜-゜)/バンザーイ

モバP「雪美の……脇…………いい」

ちひろ「お前は厨房で働くシータに見惚れるルイか」

ちひろ「というか女騎士の話をしておいて関係ないサロペットを持ってきますか」

ヒョイ ポスン

雪美「……」(*゜-゜*)

モバP「手の甲に触れた雪美の二の腕……なんて柔らかいんだろう……いい」

ちひろ「もう分かりましたから」

モバP「……上比下貧、だと違う意味になりそうですがそういう女騎士的な格好は千秋の方が堂に入った感じですよね」

ちひろ「堂に入るものでもないと思いますけど」

モバP「なので雪美には新しく、ビキニアーマーみたいな保護面積が少ないトップスに」コチョコチョ

雪美「……ふふふふ」

モバP「太ももまで見えるようなスリットロングスカートを組み合わせたりしてみたいですね」

ちひろ「羽の付いた帽子を被せたらナムコのワルキューレですね。また妙にセクシーな」

ちひろ「というか何でもないような顔して雪美ちゃんをくすぐらない! イチャハラしやがって」

雪美「……Pに……いろんな格好……させられて……遊ばれるの……すき……」

モバP「おいおい、女騎士の素質もありそうじゃないか」


ちひろ「もうめんどうみきれよう」

836

モバP「幸子はカワイイなあ」

幸子「うふふ、そうでしょうそうでしょう! もーっと褒めてくださいね!」

モバP「遠回しに言わずストレートに“褒めろ”ってのが威勢が良い」

幸子「言わぬが花、という諺もありますけど、ボクのカワイさの前に遠慮はいりません!」

モバP「いやはや、幸子のカワイイはもはや固有スキルだよ」

幸子「悪い気はしませんね♪」

幸子「でも、プロデューサーさんはボクばかりでなく、雪美さんとかをカワイイと褒めても良いのですよ?」

モバP「確かにな。言われて嫌な顔をする子はあまりいないだろう」

モバP「ただ、その言葉を口にしようとするたびに幸子の顔が浮かんできて、それは相手に失礼かなと思ったりするんだよ」

幸子「プロデューサーさんの頭の中はもう、カワイイ=ボクでいっぱいなんですね」

モバP「鳥のヒナが初めて見たものを親と認識するが如く、そうインプリンティングされているのかもな」

雪美「……つまり……可愛い……以外の、言葉なら……早い者勝ち……」

モバP「インプリンティングは永久では無いから、その気になればカワイイ自体も誰かに上書きされるかも」


幸子「プロデューサーさんのカワイイはやっぱりボクが支配することにします(天下無双)」

837

友紀「……」ドヨーン

雪美「……友紀……よしよし」ナデナデ

ちひろ「日本シリーズでキャッツがスイープされましたからね……心中察します」

――

紗南「……」ドヨーン

雪美「……紗南……よしよし」ナデナデ

ちひろ「マリオ35で凡ミスして連勝が止まってしまったらしょうがないかもしれませんね」

――

モバP「……ドヨーン」

雪美「……Pも……よしよし」 ドヨーン

ちひろ「プロデューサーさんはどうして落ち込んでいるんです?」

モバP「……まほうのビキニ装備の雪美さんを引けなかったからです」

雪美「……!?」


ちひろ「そんな限定ガチャはやっとらんわ」

838

カコーン

雪美「……やった……ストライク……」

輝子「フヒヒ、ハイタッチ……」パシッ

留美「ナイスボール」パシッ

モバP「……前に立つ姿が何だかステージみたいだな。いえいっ」パシッ

雪美「……」キラキラ

モバP「ボウリング用のお靴を履いている雪美さん、良いと思います」

留美「バンパーが無くてもとても上手だわ」

雪美「……Pが……教えてくれた……おかげ……///」

輝子「P……私にも、手取り足取り教えてくれても、良いぞ? 良いですよ?」

モバP「そうしても良いのだが、留美さんも輝子もサウスポーだからなあ」

モバP「でもこういう時に左投げって凄く格好良く見えるよ」

輝子「ほ、本当か? ……よ、よし。次は、もっと良い所を、見せる、ぞ……」

モバP「施設全体貸切撮影の後にボウリングをやろうとなったが、ちょうど1レーンに四人登録できるのが良かったな」

モバP「今の所、ボールが重かったりしないか?」

雪美「ん……大丈夫……」

モバP「よし。……留美さんに輝子に雪美と一緒だと周りからだと家族に見えそうだ。他の客はいないが」

留美「ふふ、次はあなたの番よ?」

モバP「照れますね……行ってきます」

――

モバP「ふう、しかしこうなるとアイドルが揃ってボウリングやるのに私服なのが惜しいな」

雪美「……?」

モバP「プロが着けている競技用のウェアとかあればね――いや、ミニスカートが見たいとかじゃないぞ?」

留美「どうかしらね? 食い気味に聞こえたわ」

モバP「いやあ……たまにボウリング場に来ると上手そうな人がよくそんな格好で、リスタイも着けてプレイしていて、様になっているんですよね」

雪美「千夜……みたいな……グローブ」

モバP「千夜は何か知らんがボウリングが上手そうなイメージがあるのはグローブのせいなのか……」

輝子「並んだピン、よく見ると、キノコみたいに、見えなくもないな……いくゼーッ!」 カコンッ

輝子「あっ、一つ残った……ボッチノコ……」

――

モバP「ボウリングの点数計算って知らないと謎だよなあ」

雪美「……」コク

留美「そこは分かっていた方が楽しめると思うわよ?」

輝子「点数、最下位は、フヒ……罰ゲームだぞ」

モバP「何だそれは聞いていないんだが。まあ俺は簡単に負けんがな」

モバP「あ、また俺の番だ。行ってきます」

雪美「頑張って……でも……程々に……」

留美「負けたら一枚脱ぐんだもの。私たちは下に水着を着ているとは言え、ね」

モバP「」ズルッ

輝子「あっ……P、大丈夫か? 盛大に、ガーターしたな……」

モバP「まさかの脱衣ボウリングだったんですかこれ?」

留美「冗談よ。ちょっとP君にプレッシャーをかけてみただけ」

モバP「何ですか、期待してしまったじゃないですかーあはは」


雪美「よし……次回から……検討……」 ホンキニスルナ

839

モバP「346プロには何でもある」

モバP「例えばゲームセンターに置いてあるお菓子のクレーンゲーム。スウィートランド系だな」 デレレレレレレレ

雪美「……ベルトコンベア……流れて……飴が……取れた……」キラキラ

モバP「思えばミルキーのキャンディはゲームセンターで取って食べたのが初めてで」

モバP「あれがとても美味しかったんよね。思い出補正かな」

雪美「Pにも……あげる……」 アリガトウ

モバP「……あ~、気づいた時に飴を補充する立場の俺が言うのも何だが、雪美に取って貰ったミルキーはまた格別の味だ」

雪美「今度は……お菓子タワー……作ろう……!」

モバP「おお、ロマンを追い求めるか。ならこっちのプッシャー型にしようか。だが簡単に崩させないぞ?」

ちひろ「いやいやいや、いつのまにこんなの搬入したんですか。346内にゲームセンターでも作る気ですか?」

モバP「馴染みのしまむらが店じまいするにあたって、ゲームコーナーの筐体を処分するからタダで持って行って良いよと言われたので、つい」

晶葉「ロボでなくてもこういうメカを修理改造してみるのは面白いものだな? 助手よ」 アア!

ちひろ「元々は晶葉ちゃん用に持って来たというわけですか」


ちひろ「……あ、ジャンケンマンもありますね。それも上に青いランプが乗っているタイプ……」

840

雪美「……今日……外は……風が……強い……ね」

モバP「ああ。より寒く感じるなあ……」ジロ

雪美「P……私を……見て……何を……考えている……の……?」

モバP「んー、イソップ童話の北風と太陽、かな」

モバP「北風と太陽はどちらが強いか勝負をすることになって、地上を歩く旅人の服を脱がした方が勝ちにしようと決めた」

雪美「北風は……強い風で……旅人の服を……吹き飛ばそうと……した……」

モバP「でも逆に着込まれてしまって失敗。一方、太陽は日差しを浴びせた」

雪美「……すると……暑くなった……旅人は……簡単に……服を……脱いだ……」

モバP「というお話だったとさ」

モバP「もし今、俺が雪美さんに寄り添って暖めてあげたら、雪美さんも服を脱ぐかなあ――なんて考えた」

雪美「……P……時々……変なこと……考える……ね」

モバP「天才とは99%のどうでもいいことの中に紛れ込む1%の閃きである、って言うし」

雪美「……ぼーっと……していると……先に……行く……よ……?」 アッマッテクダサイヨ


事務所のちひろ「ここは冬でも暖かくて快適だなあ」

今日はここまで
終わりのないのが尾張

841

モバP「……俺は少し大きくなり過ぎたかもな」

雪美「……俺もこっちで……強くなりすぎた……みたい……」

モバP「どこで覚えたその言葉」

モバP「いや、もし俺が150cm台だったら、雪美に背中を預けて寄りかかれたりしたんじゃないかと」

雪美「……149cm以下の……アイドルを……担当……してそう……」

雪美「……私は……Pが……双子の……お姉ちゃん……だったら……良いなって……」

モバP「……雪美にお姉ちゃん呼びされるなんて絶対妹に過保護でデレッデレの姉になりますわよ」

雪美「Pが……少し……頼りない……でも……優しい……お姉ちゃん……」

モバP「そしてしっかり者の妹雪美か。日常を想像するだけでほっこりしてくる」

モバP「血を分けていても男と女だと成長するにつれ結構世界が違ってくるから、女同士の親愛って俺には一つの憧れだ」

雪美「でも……今は……今で……良い……でしょ……?」ナデナデ

モバP「ああ。この膝枕は心が洗われるというか、聖母の抱擁を受けているような心地です」

雪美「Pだって……甘えたい時……ある……。だから……私が……全部……受け止める……」


ちひろ「男同士だったら兄弟仁義になりそう」 アニジャ…… オトウトヨ

842

ペラッ

モバP「今年もカレンダーの終点がやって来たなあ」

雪美「12月……」

モバP「これより先はない」

雪美「でも……来年は……やって来る……」

モバP「今年も一年、お世話になりました」

雪美「……こちらこそ」

ちひろ「何か早くないですかね」

モバP「思いついた時に言っておかないと後で素で忘れるかもしれないですし」

ちひろ「納会で言うでしょ」

モバP「しかし先がないカレンダーって怖いです。マヤ暦の終わりの人類滅亡説を思い出します」

ちひろ「ノストラダムスの大予言の時は信じる人も多かったそうですけど、今時終末思想はさすがに……」

雪美「オオカミ少年……みたいに……なってきてる……?」


モバP「でも、はいはい、と思いつつ次はいつだ? って追っちゃうんですよねえ」

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モバP「この時期になると南国に行きたくなるな」

雪美「……南……」

ちひろ「本能? で南の方角を向く雪美ちゃん」

モバP「ビーチでクリスマスパーティーって一度やってみたいんですよね」

ちひろ「やれば良いじゃないですか。焚き火を囲んで一晩語り合うとか」

モバP「凍えますよ」

モバP「言いたいのは、南半球なんかの真夏のクリスマスです」

雪美「真夏なのに……クリスマス……不思議な……感じ……」

ちひろ「この忙しい時期に南の国で優雅にクリスマスを満喫は諦めましょう」

モバP「よし、アーリーリタイアして若い内に行けるようにお金を稼ごう」

雪美「P……以前に……七海と……行った……。今度は……私を……連れ去って……?」

モバP「雪美は結構“犬は人に付き猫は家に付く”家猫気質かと思っていたが、遠出もしたいか」

ちひろ「駆け落ちみたいなことはやめてくださいね? 14歳がレッドカード退場だとすれば10歳はブラックリスト出禁です」

モバP「手は出しませんよ?」 ダサナイノ……? ソウイウモンダイジャナイ

モバP「しかし南に行き過ぎるとまたこれが寒くなる」

ちひろ「私は南アメリカ大陸の南端とかに一度行ってみたいとは思っています」

モバP「パタゴニアのあたりですか」

雪美「パタゴニアの……ピューマ……見てみたい……」

ちひろ「雪美ちゃんはネコ科に惹かれますねえ。氷河とかもスケール大きそうで好奇心を刺激します」

モバP「チリの南端で海を臨んだら、この先にはもう南極大陸しか無いんだなと何か切ない気持ちになりそうですね」

ちひろ「ゲーム終盤の氷ステージで長い旅の思い出を振り返って感傷的になる冒険家か何か?」

雪美「レインボーリゾート(夢と寒冷地の面)……が、BGMで……流れそう……」

モバP「夢の泉の物語はグレープガーデン(セレクト)とかも聴いていると泣きたくなってくる」

ちひろ「どうでも良いですけどキャンディとキャンディーってどちらが正しいという訳でもないのに、カービィってカービィーだと間違いなんですよね」

雪美「伸ばしたく、なる時と……そうでない時……ある……ね」

モバP「……南国に行きたいって話がすっかり飛んでしまいましたが、とにかく暖かい所で開放的になりたい」

ちひろ「無人島貸切なんてプロデューサーさんは好きそうですね。不便さと紙一重でしょうけど」

雪美「……私は……無人島に……何か一つだけ……持って行ける、としたら……Pにする……」


モバP「それは寂しくないパートナーとして? それとも歩く十徳ナイフ的な意味で?」

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イーシヤーキイモー

雪美「……」

雪美「いーしやーきーいーもー……(小声)」

雪美「……」

モバP「……」

雪美「……!」

雪美「……聞いた……?」

モバP「俺がいないと思って油断したな。ばっちり聞こえましたよ」

雪美「……忘れて」

モバP「嫌だよ。あんな雪美さんを見られたら今生の名シーンとしてあの世まで持って行く」

雪美「忘れなさい……」ガバッ

モバP「押し倒し方が激しいぜ。良いじゃないか減るもんじゃなし」

美波「こんにちはー。プロデューサーさん、います? ――って」

美波「……またお取込み中のところを失礼しました///」

モバP「待ってくれ美波、誤解だって……雪美とプロレスごっこでじゃれ合うのも程々が良いか」

美波「プロレスごっこ(意味深)」

モバP「……それより石焼き芋が食べたくなったな」

雪美「……P……焼き芋……好き……?」

モバP「好きだとも。さつまいも、またの名を甘薯やスイートポテト。栽培量産が比較的簡単で戦時中はこれが主食だったりした人もいた」

モバP「でも俺は少年時代、おやつでふかし芋が出てくると今日は芋かぁ……なんてがっかりしていたっけ」

美波「お菓子とか食べたいお年頃だったんですね」

モバP「現代っ子だからな。ねっとり美味しい安納芋とか甘さの強い紅はるかを食べた時は感動したが」

モバP「そして、幼稚園の頃って何をしていたかあまり覚えていないんだが、何故か芋掘りをやったことは忘れていない」

美波「見えない土の中から思った以上の量が取れてやり応えがあるんですよね」

雪美「……スコップで……割っちゃうと……がっかり……」

モバP「二人もよく覚えているんだな。で、持ち帰ったさつまいもをアイスクリームに混ぜ込んで、それがまたモンブランのような味で忘れられない」 オイシソウデスネ

雪美「……ふふ……でも……外で食べる……焼き芋も……とても……おいしい……」

モバP「焼いてあるとこれまた違うよな。アルミホイルや新聞紙、紙袋に包まれていると手に持つのにちょうど良い温かさになって――」


美波「あ、トラックが行ってしまいますよ?」 オイカケヨウカナ

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??「P……あなたは……今年一年……良い子に……していた……」

モバP「いえいえそんな(謙遜)」

??「ご褒美として……クリスマスプレゼントを……あげる……」

モバP「ええっ、まだ12月の一週目じゃないか? クリスマスには早いよ」

??「……いらないの?」

モバP「いりますいります。暗闇に声だけ聞こえて誰かは存じませんが、この声は雪美――」

??「……サンタ」

モバP「サンタさんですね。はい」

??「あなたには……ウイルスが……見えるように……なる……眼鏡を……あげる……」

??「ウイルスが……漂っている……場所は……赤く……見える……から……」

――

モバP「仮眠から起きたら耳元に本当にメガネが置いてあった。どれどれ……」スチャッ

モバP「……視界が真っ赤で何も見えないぞ」


ちひろ「この物語はフィクションです」

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モバP「この時期になると賑わいますが、宝くじって当たりませんよねえ」

ちひろ「そりゃあ還元率が低い最たるギャンブルですからね」

モバP「堅実なことを言いますね」

ちひろ「株に手を出す時もそうですけど欲張って一獲千金を狙うと大抵失敗しますよ」

ちひろ「知識やコツが介入する余地のあるものは、まずは少額から始めましょう」

モバP「言うことがそれっぽいですね。でもそれを言うと宝くじなんて運頼みです」

ちひろ「買うとすれば、自分が特別である、奇跡を信じられる人が買えば良いと思います」

モバP「買うな、とは言わないんですね」

ちひろ「そんなことは言いませんよ。買うか買わないかはあなた次第です」

モバP「まあ人は時には奇跡も信じきれないと後悔しますからね」

モバP「でも、天文学的な確率もいい所でしょうから当たったら何かしらの陰謀を疑いそうです」

ちひろ「もし当たるようなことがあれば私に忘れずに報告してくださいね?」

モバP「えっ」

ちひろ「?」

雪美「P……真顔で……どうしたの……?」

モバP「雪美? いや、何だかちょっとした恐怖というか嫌な予感がしたというか」

ちひろ「予感というのは何かしら心当たりがあるから生まれるものです。お金の話は複雑ですね」

雪美「! ……P……お金に……困ってる……?」

モバP「心配しないでくれ、それは大丈夫だ」

雪美「私の……今ある……おこづかい……Pに……あげる……」つ346円

モバP「……こんな……雪美の大切なお小遣いを……俺に……」プルプル

モバP「許してくれ、俺が悪かった! もうギャンブルはしない、しないよ!」(´;ω;`)

ちひろ「なぁにやってるんですかねえ」

モバP「しかし宝くじ以外にも、自分が実は資産家の子で突然莫大な遺産を相続することに! といったコメディとかは定番ですが面白いんですよね」

雪美「……最終的には……破産……、でも……本当の……幸せを……見つける……ような……?」

ちひろ「雪美ちゃんも結構好きですね?」

モバP「ただ実際そういう状況に置かれても疑心暗鬼にはなりそうです。これはトゥルーマン・ショーか何かじゃないかと」

ちひろ「周りの態度が変わって人間関係が壊れるかも、とかは心配じゃないんです?」


雪美「……そこは……私たち……信頼……されてる……」 ミンナケッコウオカネモチダカラネ

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雪美「……」テクテク

モバP「おっ」

雪美「……P……?」

モバP「おっと、こんにちは雪美」

雪美「……こんにちは……?」

モバP「辞書……いや、国語辞典を持った姿がとても目に留まったよ」

雪美「……これ……? 使う……?」

モバP「いや、そのまま持っていてくれ」

モバP「本や資料といった道具をバッグ等に入れて持ち歩くのは良いんだが、そういう小脇に抱えて来られるのには弱いんだ」

雪美「……片手で……本を読む……とかも……?」

モバP「カッコいいよね。そうか、雪美さんも分かるか」

雪美「……でもそれは……Pが……やった方が……似合う……」

モバP「そんなイケメンムーブはちょっとこれ見よがしには出来ないなあ」


ちひろ「プロデューサーさんがやると残念イケメンムーブになりそう」

今日はここまで
ネタが被っても編集不可

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