【ラブライブ】梨子「ロストソング」 (571)

【性格改変・オリ設定・地の文一部有】

ーー人生はいじわるだーー

ーー悪いことは何もしていないのにーー

ーー私から何もかも奪っていくーー

ーーー

「長い間お世話になりました」

「いえ、娘さんとご両親の努力あってこそです。我々はその手助けをしたまでですよ」

「……ありがとう、ございました」

「これからも色々と大変かもしれないが、君ならきっと大丈夫だ」

「……はい」

「さ、ーー行きましょう」

今でこそそれが私の名前だと分かるものの、居心地の悪さ……不自然な響きは無くならない

「……はい」

余所余所しい私の返事に、少し悲しげな表情を浮かべるこの女性ーー私の母だということは頭では理解できても心がついていかない

「ありがとうございました」

私の主治医だった人にもう一度頭を下げる母
それに倣って私ももう一度頭を下げ、2人で病院を後にする

ーー私は……

ーー桜内梨子という人間は事故により1年間を失い

ーー記憶喪失により過去の16年間も失い

ーー何も無い17歳の身体だけが残った

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ーーー

梨子「……これが海」

母方の親戚を頼りに私は生まれ育ったらしい東京を離れ
、母と共に静岡県の片田舎へやってきた

梨子「……」

私の知らない私を知ってる街に居続ける事は精神的に良くないと考えた母の計らいである

梨子「……春の海って寒いのね」

私の事を知らない町なら私はきっと自然体でいられるだろうと

梨子「……」

「だめーーー!!」

梨子「えっ!?」ビクッ

「わっ!?わわわわ……わーー!?」

ザバーン

何かが私のすぐ側をすり抜けーー桟橋から海に落ちた

ーーー

「いやぁ、てっきりよからぬ事を考えてるのかと思っちゃってーーへっくしゅ!」

梨子「大丈夫……ですか?」

私と同じくらいの世代だろうかーー海に落ちた彼女は砂浜でずぶ濡れのまま慣れた手付きで火を起こし暖をとっている

「へーきへーき♪こんなの慣れっこだかーーへっくしゅ!」

梨子「……」

「すびっ……えっとこの辺の人じゃないよね?観光?」

梨子「まぁ……そんなところです」

「どこから来たの?」

梨子「……東京」

「東京!?凄い!」

梨子「……凄い?」

「ねぇねぇ!東京のどこ!?」

梨子「……えっと、秋葉原……?」

確かそんな名前の街だった

「秋葉原!ってことはμ'sとかA-RISEとかやっぱり生で見たことあるの!?」

梨子「……えっと……ごめんなさい、それは知らないです」

「えー!?じゃあスクールアイドルは!?」

梨子「スクール……アイドル……」

彼女の口から出る言葉の響きに戸惑う

梨子「……ごめんなさい……聞いたことあるような気はするけど……私その、疎くて」

「なーんだー……残念」

梨子「その……スクールアイドル?……がどうかしたの?……えっと」

「ん?……あっ!ごめんごめん!自己紹介してなかったよね!」

千歌「私、高海千歌!千歌でいいよ♪」

梨子「千歌さん……私は桜内……梨子です」

千歌「梨子ちゃんだね♪私ね!スクールアイドルをやってみたいんだ!」

梨子「……やってみたい?」

千歌「えっとね……これこれ!これがμ's!私のいっちばん好きなスクールアイドル!」

千歌さんがスマホの画面を向けると私達と同年代くらいの9人の少女達が華やかな衣装で歌い踊っている

梨子「……」

その姿に妙な懐かしさを感じる

千歌「どう!?」

梨子「えっ?」

千歌「凄くない!?」

梨子「え、ええ……そうね……凄い、のかな?」

千歌「μ'sってねみんな高校生だったの!多分どこにでもいるような……いや東京だから内浦の女子高生よりかはおしゃれだけどさ!でも普通の女子高生なの!なのにね、自分達で歌を作って衣装も作って……自分達の学校が廃校にならないようにスクールアイドルになったの」

目をキラキラとさせながら語る彼女の言葉に引っかかる

梨子「高校生……だった?」

千歌「うん、この動画何年も前のでね、現実のμ'sはみんなもう卒業しちゃってるんだ」

梨子「そう……ですか」

千歌「でもね!今でも沢山ファンがいて、今でも沢山復活を望んでる人がいるくらい凄いの!」

何年経っても待ち続ける人がいる……私にはそんな人がいたのだろうか……

千歌「だから私もスクールアイドルになってこんな風にキラキラ輝いてみたいーーってうわぁ!こんな時間!?みとねぇにキレられるぅ!?」

スマホの示す時間に飛び上がった彼女はまだ生乾きな制服のまま鞄を掴んで駆け出した

千歌「梨子ちゃん!もしまた会えたらもっとスクールアイドルの話しようね!それじゃ!」

梨子「う、うん……さようなら……」

突然現れて突然消えていく彼女
でも…今の私の事しか知らない彼女に少しばかり安心感を覚えたのを自覚し、母の判断は少なくとも間違いではなかったんだと思った

ーーー

浦の星女学院
今日から私が通う新しい学校
この学校は来年度からの新入生募集を止めるーーつまり廃校が決まっている
皮肉なことに過去のない私は未来のない学校に通うのだ

「桜内さん、どうぞ入って」

梨子「はい」

担任に促され古びたドアをくぐり、教室の広さに若干不釣り合いな少ない人数と対峙する

梨子「東京の音ノ木坂学院から来ました。桜内梨子です、これから2年間よろしくお願いします」

何度も練習したお陰か通った記憶のない学校名といまだに慣れない名前をスラスラと言えた

梨子「実は私は事故で1年間の休学をしており、また後遺症で事故以前の記憶がありません。年齢や知識等様々な点で皆さんにご迷惑をかけてしまうかもしれませんが、是非ともよろしくお願いします」


誤魔化していくことも考えた
でもいずれそれは綻びて明るみに出る時は来るだろう
その時に苦しい思いをするなら
いっその事初めから避けられた方がマシだ
そう考えて全てを打ち明けたものの、深く下げた頭を上げるのが怖かった

「奇跡だよー!!」ガタンッ

梨子「へ?」

その場にそぐわない言葉につい顔を上げてしまう
そこに広がる景色は私ではなく謎の言葉を発した彼女ーー高海千歌に注目するクラスメイトしかいなかった

千歌「梨子ちゃん!私と一緒にスクールアイドルやりませんか!?」

梨子「……はい?」


ーーー

放課後

千歌「だーかーらー梨子ちゃんも一緒にスクールアイドルやろーよー」

梨子「あの……さっきから説明してますよね?」

千歌「あのμ'sと同じ音ノ木坂に通ってた梨子ちゃんが入れば百人力!」

梨子「……渡辺さんからも言ってください」

曜「曜でいいよー、千歌ちゃん、音ノ木坂から来たって言ってもなんにも覚えてないって言ってるんだし……」

千歌「もしかしたらスクールアイドルやれば思い出すかもしれないじゃん!」

曜「いや……音ノ木坂にいたからってスクールアイドルやってたとは限らないんだし……」

千歌「有り得ないよ!だって見て!梨子ちゃんこんなに美人なんだよ!?スタイルもいいし!声も綺麗だし!」

梨子「あの……千歌さん……」

曜「いや……思いっきり迷惑そうな顔されてるよ…」

千歌「これで3人!あと2人で部活申請も出来るようになる!」

梨子「……いつもこんな感じなんですか?」

曜「たまにね……」ヤレヤレ

曜「てかさー、やるのは良いけどまだ曲作れる人も衣装作れる人もいないんだよ?」

千歌「梨子ちゃん!楽器とかやってない!?裁縫とか得意じゃない!?」

曜「千歌ちゃん……記憶喪失って何か知ってる?」

千歌「ものすっごい物忘れ!」

曜「梨子ちゃん、うちの千歌が大変申し訳ありません」

梨子「いや、うん……」アハハ…

曜「とにかくやる気だけでなんとかならないんだから落ち着いて」

千歌「いや、なんとかなる!なんとかする!」

曜「そんなこと言ってなんとかなった事ないでしょ……」

千歌「グサァッ!!」

曜「もう……とりあえず頭冷やして、ね?」

千歌「はぁい……」ガクリ

曜「梨子ちゃんもごめんね?」

梨子「いえ、私は……」

曜「でもさ、もしほんの少しだけでも興味が湧いたら…私も梨子ちゃんとスクールアイドルやりたいかな」

梨子「……考えておきます」

曜「ありがと♪ほら千歌ちゃん!ぐだくだしてたら連絡船乗り遅れるよ!果南ちゃんのところ寄るんでしょ?」

千歌「やばっ!?そんな時間!?梨子ちゃんまた明日!」

梨子「うん、また明日」

曜「バイバーイ♪」

まるで嵐のような一時だった
ただ千歌ちゃんがすぐに勧誘にくるものだから、物珍しそうに見てくる他の生徒達が近寄れなくなっていたのは、正直なところありがたかった


ーーー

母「どうだった?学校?上手くやれそう?」

迎えに来た母の車に乗り、また少し居心地の悪さを感じながら帰路につく

梨子「……うん」

母「全部話したんだってね」

梨子「……うん」

母「……お母さん安心した」

梨子「……え?」

母「記憶が無くなっても梨子は梨子のままなんだなって」

梨子「……」

母「昔から大人しくて引っ込み思案だったけど……って時にはちゃんと立ち向かえる強い子だったから」

梨子「……」

母「挫けそうになったらちゃんと頼ってね、梨子の記憶があっても無くてもお母さんは梨子のお母さんなんだから」

梨子「……うん」

ーーー

新しい私の部屋
なんの思い入れもない私物の中でも最も目立つ場所に座る

梨子「作曲……」

かつての私なら出来たのかもしれない
そんな事を考えながら目の前の大きな箱ーーピアノの鍵盤蓋を開ける
ずらりと並ぶ白と黒に指を伸ばし一つ音を出す

梨子「今の私には無理ね……」

この音がドレミのどれかも分からない
上に平積みされた楽譜を開けても何も読めない

梨子「……?」

その中でふと気付く
題名の無い手書きの楽譜
何枚も何枚も何枚もある

梨子「……私が、作ったのかな……」

素人の私でも一つ一つが違う曲だという事くらいは流石に分かった

梨子「……これをあげれば……って千歌さんも楽器はやってないんだったっけ」

一心不乱に勧誘してくる彼女の顔を浮かべながら楽譜を戻す
何も出来ない私にはーー彼女達の力になれない


ーーー

千歌「梨子ちゃん今日一緒に帰ろー?」

梨子「えっ……一緒に?」

曜「そういえば梨子ちゃんの家ってどの辺?沼津の方?」

梨子「いえ……えっと確か……十千万?とかいう旅館が近くにあった、かな」

曜「十千万?それってーー」

千歌「それってウチじゃん!?」

梨子「……えっ」

曜「そこ、千歌ちゃんの家族でやってる旅館なんだよ」

梨子「そうなの……?」

千歌「なーんだちょうど良いじゃん♪じゃあ今日から一緒に帰ろーよ♪」

梨子「今日……から?」

千歌「だってすぐ近くなんでしょ?だったら帰り道一緒なんだし」

梨子「え、ええ……まぁ……そうなるわね」

曜「梨子ちゃん残念だったね」

梨子「えっ……何が?」

曜「こうなったらもう千歌ちゃんから逃げられないよー」ニシシ

梨子「逃げるってそんな……」

千歌「よしっせっかくだから果南ちゃんにも紹介しよう!」

曜「今日もいくの?」

千歌「もちろん!」

梨子「あの……その果南さん……とは?」

千歌「会えば分かる!」

曜「私達の幼馴染み、歳は一つ上だけどね」


ーーー

千歌「とーちゃーく!」

曜「よっと、梨子ちゃん足元気を付けてね」

梨子「うん」

千歌「果南ちゃーん!」タタタッ

「お?千歌、今日も来たの?なんかあったっけ?」

千歌「新しい友達紹介しに来た!昨日話してた梨子ちゃん!」

梨子「は……はじめまして、桜内梨子です」ペコリ

果南「あー、はじめまして、私は松浦果南、早速千歌に振り回されてるみたいだね」クスッ

千歌「もーなにーその言い方ー」

果南「これ片付けたら終わりだし、デッキで待っててよ」

曜「りょーかいでありまーす」ビシッ

千歌「梨子ちゃんこっち」

梨子「あ、うん」

梨子「その……松浦さんって学校は?」

千歌「今休学中~お父さんが怪我しちゃってお店回らないんだって」

梨子「お店……?」

曜「ここ、連絡船の船着場兼ダイビングショップなんだ」

梨子「それでさっきボンベを……」

果南「おまたせ、何の話?」

千歌「果南ちゃんが学校行ってない話ー」

果南「言い方に悪意があるなぁ……私だって行きたくない理由じゃないんだから」

梨子「ごめんなさい……私が聞いたせいで……」

果南「あーいいよいいよ、別に責めたりしてるわけじゃないから」アハハ

果南「それよりメンバーは集まった?」

千歌「昨日今日で集まるわけないじゃーん」

曜「相変わらず2人のまま……」

果南「梨子ちゃんだっけ?はやらないの?スクールアイドル」

梨子「いえ……私はそういうのは……」

果南「ま、転校してきていきなりスクールアイドルやれーって言われても困るよねー」アハハ

千歌「これじゃあ果南ちゃんが入る前に卒業しちゃうよー」グデェ

果南「そんな事言ったって約束は変えてあげないよー」

梨子「約束?」

曜「メンバー5人集めて正式に部活になったら果南ちゃんが入ってくれるって約束してるんだ、休学中だから設立の頭数には入れられなくって」

梨子「そうなんだ……」

果南「1年生とかは?そろそろ部活勧誘始まるでしょ?」

千歌「部活になってないからおおっぴらに出来ないよー……誰か知ってる人入学したっけ?」

曜「知ってる人だとルビィちゃんとマルちゃんくらいかなぁ」

千歌「んむむ……」

果南「どっちもそういうのあんまり好きじゃないかもねー」

梨子「……?」

果南「今言った2人も幼馴染みでね、今年1年生なんだけど私らと違ってお堅ーい家柄なんだ」

曜「ルビィちゃんは昔からこの辺りの大地主のお家だし、マルちゃんはこれまた古ーいお寺の一人娘なの」

梨子「そう……なんだ……」

千歌「とりあえず聞くだけ聞いてみよーっと」

果南「マルって携帯持ってたっけ?」

曜「私たちが中学卒業した時はまだだったけど?」

果南「……やっぱり勧誘は難しいかもね」

千歌「これで……よしっ!ルビィちゃんから返事来たら教えるね!」

曜「ヨーソロー!私そろそろバス来るし帰るね」

千歌「梨子ちゃんはどうする?」

梨子「私は別に……いつでも……」

千歌「じゃー帰ろっか」

梨子「曜さんはこの辺りに住んでないの……?」

曜「私の家、中学の時に沼津の方に引越したの、まぁギリギリ沼津って言える程度だけどね、それじゃまた明日」フリフリ

千歌「バイバーイ」フリフリ

果南「梨子ちゃん」

梨子「はい……?」

果南「千歌から聞いたよ、色々大変なんだってね」

梨子「……」

果南「千歌って結構バカだし色々面倒臭いなぁって思うかもしれないけどさ」

梨子「……?」

果南「結構寂しがり屋でいい子なんだ、だから仲良くしてあげてね」

梨子「……はい」

千歌「梨子ちゃん、私たちも帰ろー」

梨子「あ、うん」

千歌「じゃーねー果南ちゃん」

梨子「お邪魔しました」ペコリ

果南「いつでもおいで、大体ここにいるから」

千歌「なんか今のおばさんくさーい」クスクス

果南「……なんだってー?」

千歌「わわっ!梨子ちゃん逃げるよー!」ダッ

梨子「ちょっ、千歌さん!?」アワアワ

今日?はここまで
明日?続きあげます

これラブライブじゃなくてラブライブサンシャインじゃない?

サンシャインまで入れたら長ったらしいなと思って省いたんだが
やっぱりあった方が良かったか…

いや、別に判るし
そんな些細なこと気にしないでいいよ

後ろにサンシャインを付けとくべきだったな

立て直すのもめんどくさいからこのまま行きます


ーーー

モブ「千歌ちゃーん、なんか1年生が呼んでるよー」

千歌「んん?」

曜「あれ、ルビィちゃんだ」

梨子「あの人が……?」


ーーー

曜「どうしたの?」

ルビィ「昨日千歌ちゃんからメールもらって…」

千歌「わざわざ会いに来てくれたのー!?相変わらずかーわいーなぁ」ギュー

ルビィ「ひゃあっ!?千歌ちゃん……く、くるし……!」バタバタ

曜「ちーかちゃーん」グイ

ルビィ「あの……それで……」チラッ

梨子「……」

ルビィ「……この人はどちら様ですか?」

千歌「色々手伝ってくれてる友達の梨子ちゃん」

梨子「えっ!?」

ルビィ「本人が一番びっくりしてますけど……」

曜「気にしないで、千歌ちゃんの最近のお気に入りだから」

ルビィ「あぁ……なるほど」

梨子「そんな説明で納得しちゃうんだ……」

千歌「で!で!スクールアイドルやってくれるの!?」ズイッ

曜「千歌ちゃん近いから」グイ

ルビィ「あの……マルちゃんはやっぱりそういうのよく分からないからって断られちゃったけど、私はやってみようかなぁって……」

曜「梨子ちゃん」ガシッ

梨子「えっ、あっ!」ガシッ

千歌「ルビィちゃーーうぐぇっ!?」

曜「ふぅ……危ない危ない」

ルビィ「あはは……ルビィね、誰にも言ってなかったんだけど実は昔からアイドルにちょっと憧れてて……」

曜「そうだったんだ、全然知らなかった」

ルビィ「部屋で動画みたり雑誌読んだりしてるだけでライブとかはまだ生で見たことないんだけどね、あと衣装とか自分で真似て作ってみたり……」

千歌「衣装作れるのっ!?ぃよっしゃー!これで3人!」

ルビィ「3人?」

曜「千歌ちゃんから聞いてない?私と千歌ちゃんとルビィちゃんで3人、あと2人で晴れて正式な部活になれるんだ」

ルビィ「えっ、部活まだ無いの!?」

梨子「どんな勧誘してたの……」

千歌「とにかく!ルビィちゃんはもう決まり!後は梨子ちゃんが入ってくれればあと1人!」

梨子「いや……だから私は……」

「なら私が入ってもいいかしら?」

曜「んっ?」

千歌「へ?」

「ハロー♪貴女達よね?スクールアイドルをスタートさせようとしてるのは」

千歌「そう……ですけど」

梨子「……誰?」ヒソヒソ

曜「知らない……三年生みたいだけどこんな人いたかなぁ」ヒソヒソ

鞠莉「はじめまして、私は小原鞠莉♪マリーって呼んでね♪私も貴女達と一緒にスクールアイドルをしてもいいかしら?」

千歌「えっと……大丈夫です……けど、誰から聞いたんですか?」

鞠莉「果南から♪」

千歌「果南ちゃんから?」

鞠莉「イエース♪実は私、1年の途中から留学しててね、この学校の思い出ってあんまり無いの。だからとっても楽しそうな事してる貴女達に惹かれちゃって♪」ウインク

ルビィ「留学……すごい……!」

鞠莉「それにちょっとくらいなら楽器も出来るわよ?」

千歌「よろしくお願いします!」ガシッ

曜「決断早っ!?」

千歌「これで5人!」

梨子「だから私はやらないって……」


ーーー

ルビィ「マルちゃん、やっぱり一緒にスクールアイドルしない?」

花丸「うーん……歌うのは好きだし憧れる気持ちも分かるけど……マル踊ったりはやっぱり……」

ルビィ「大丈夫だよ!ルビィも運動は苦手だけど好きなアイドルの振り付けとかいっぱい練習したら出来るようになったし!」

花丸「うーん……」

ルビィ「やっぱり……だめ?」

花丸「ルビィちゃんごめんズラ……マルにはやっぱりアイドルは無理だよ」

ルビィ「そっか……ごめんね無理に誘ったりして」

花丸「ううん、オラは平気♪その代わりルビィちゃんがスクールアイドルになったらいっぱい応援するから♪」

ルビィ「……うんっ♪」

花丸「じゃあまた明日」フリフリ

ルビィ「バイバーイ♪」フリフリ

ルビィ「……一緒に出来たらもっと楽しいと思ったんだけどなぁ……難しいなぁ……」

ルビィ「……はぁ」

「お待たせ、ルビィ」

ルビィ「あ、お姉ちゃん」

ダイヤ「どうかしたの?」

ルビィ「ううん、何でもないよ」

ダイヤ「そう……」

ルビィ「そうだ、お姉ちゃんは小原鞠莉さんって知ってる?」

ダイヤ「……何故ルビィがその名前を?」

ルビィ「今日千歌ちゃん達と喋ってたら……その人とあって」

ダイヤ「そう……」

ルビィ「……お姉ちゃん?」

ダイヤ「ルビィ、その人とはあまり関わらない方がいいわ」

ルビィ「どうして……?」

ダイヤ「……あんな無責任な人と付き合っていたらルビィに悪影響だわ」

ルビィ「……え」

ダイヤ「まぁ……三年と一年だから、そう関わる機会もないと思うけど」

ルビィ「……」


ーーー

千歌「果南ちゃん」

果南「何?」

千歌「小原鞠莉さんって知ってる?」

果南「……」

千歌「知ってるよね?」

果南「……なんでその名前が出てくるのさ」

曜「その、小原先輩もスクールアイドルに参加することになって」

果南「なんでそんなことに……というか戻って来たの?」

梨子「えっ……小原さんは松浦さんから聞いたって……」

果南「待って、私は鞠莉が戻って来てることも今初めて聞いたんだよ?」

曜「えっ」

千歌「どーゆーこと?」

梨子「……?」

曜「あ、ちょっと待って……じゃあそもそもあの人なんで私たちが果南ちゃんと知り合いだって知ってたの?」

果南「……」

梨子「松浦さん……何か知ってます?」

果南「……鞠莉はね、小さい頃から内浦に住んでたの」

千歌「えっ嘘っ!?」

曜「でも私も千歌ちゃんも知らないけど……」

果南「あそこ、淡島ホテルのオーナーの娘なんだよ」

千歌「えー……でも淡島ホテルのオーナーさんって外国人じゃなかった?」

果南「鞠莉はハーフだからね」

曜「あの喋り方……留学かぶれかと思ったらハーフだっんだ……」

果南「小学校の3年生だったかな、アメリカから転校してきてさ……引っ込み思案でまだ日本語も下手でさ……あの頃、多分仲良かったの私とダイヤくらいじゃないかな」

千歌「……」

果南「家庭教師だとか塾だとかでいっつもすぐ帰っちゃうから、放課後遊んだりもないし、中学は沼津の方の私立に行っちゃって、なのに浦の星に入学したんだよね」

曜「あ、思い出した」

梨子「知ってたの?」

曜「知ってたっていうか小学校の頃、確かに学校でいっつも果南ちゃんの後ろにくっついてた金髪の子がいた気がする」

果南「うん、それが鞠莉」

千歌「え、いたっけ?」

曜「いたよ、私たちが果南ちゃんに会いに行ったりしたら逃げたりしてた」

千歌「……それほんとに小原先輩?なんか私たちが見たのとイメージ違いすぎるけど……」

果南「私も一年の時に再開してびっくりしたよ、全然違う性格になってたから」

梨子「……」

果南「自分からどんどんアピールしたりしてさ……その頃に廃校の話も出て、生徒会に掛け合ったりして……妙に張り切ってたんだ、それこそスクールアイドルを始めようなんて話もあった……なのに突然留学したんだよ」

曜「えっ…」

果南「……全部放り投げていなくなったんだ……色々企画したりしてさ、みんなも賛同しはじめたり……私やダイヤももしかしたらなんて思ったりしてさ……なのに裏切ったんだ!夏休みが始まってすぐに何も言わずに無責任にいなくなったんだよ!」バンッ

千歌「ちょ、ちょっと……果南ちゃん落ち着いて……」

果南「あ……ご、ごめん……」

千歌「……」

曜「千歌ちゃん」

千歌「なに?」

曜「ちょっと考え直したほうがいいんじゃないかな?小原先輩の事」

千歌「……」

果南「ごめんね千歌……鞠莉が参加するなら私は千歌達と一緒にスクールアイドルはやれない」

千歌「……」

梨子「千歌さん……」

千歌「うん……ちょっと考えてみる……」


ーーー

ルビィ「そんな事が……」

曜「ダイヤさんには話したりした?」

ルビィ「はい……でもあまり関わらないほうがいいって言われただけで、それ以外は」

梨子「あの……その、ダイヤさんって?」

ルビィ「あ、私のお姉ちゃんです。果南さんと同じ三年生で生徒会長なんです」

梨子「生徒会長……」

曜「千歌ちゃんどうする?果南ちゃんもダイヤさんもそんな簡単に人を貶したりするような性格じゃないよ?」

千歌「……昨日夜ずっと考えてたんだけどさ」

曜「うん」

千歌「私はやっぱり小原先輩に入ってもらおうと思う」

曜「千歌ちゃん話聞いてた?」

千歌「分かってるよ、果南ちゃんがあんなに取り乱すなんてよっぽどの事だし、ダイヤさんだって昔から面倒見のいい人だもん……でも」

梨子「でも……?」

千歌「今、小原先輩の事を断ったら前に進めない気がする……作曲とか申請の必要人数とか、そういうのを含めて」

ルビィ「……」

千歌「利用するみたいで気分がいい事じゃないけど……でも私は小原先輩をまず受け入れてみたい」

曜「……果南ちゃんは諦めるってこと?」

千歌「今はそうかもしれない、どっちみち部活として形にならなきゃ一緒にやれないんだから」

梨子「……」

曜「ふぅ……分かった!」

千歌「……」

曜「乗りかかった船だからね、船長の千歌ちゃんがそういうなら私もそれに合わせるよ!」

千歌「曜ちゃん……」

ルビィ「る、ルビィも!せっかくスクールアイドルをやれるチャンスだから!辛いことも頑張る!」

千歌「ルビィちゃん……2人ともありがとう……」

曜「さぁ!そうと決まればあと1人!部活設立に向けて全速前進ヨーソロー!」ビシッ

ルビィ「よ、ヨーソロー……?」ビシッ

梨子「……」

一旦ここまで
後で続きあげるかもです


ーーー

千歌「いらっしゃーい、適当に座っていいよー」

ルビィ「よいしょ」

鞠莉「放課後に友達の家でまったり……これぞスクールガールって感じね♪」

曜「意味分かんないです……」

梨子「あの……千歌さん」

千歌「んー?」

梨子「なんで私も呼ばれたの?」

千歌「えっ?」

梨子「……えっ?」

ルビィ「あ、梨子先輩はメンバーってわけじゃないんだった……」

鞠莉「ワッツ?そうなの?いつも千歌っちと一緒にいるからてっきりメンバーかと思ってたわ」

千歌「……」

梨子「……」

千歌「まぁ来ちゃったんだし、くつろいで行ってよ♪」

梨子「えー……もぅ……」ヤレヤレ

曜「あはは、すっかり千歌ちゃんのペースだね」


ルビィ「で、今日は何するんですか?」

千歌「よくぞ聞いてくれたねルビィちゃん!今日はなんと!」

ルビィ「なんと……?」ゴクリ

千歌「グループ名を考えるのだ!」

曜「あー確かにそろそろ考えておかなきゃだね、設立してからじゃ遅いし」

鞠莉「それもそうねー」

ルビィ「他のスクールアイドルと被らないようにしないとだし、結構大変かも」

千歌「もしもーし、皆さんリアクションがあっさりしすぎじゃないですかー……?」

梨子「これは私も参加した方がいい流れ……?」

鞠莉「ナイスアイディアがあればどんどん発言していいんじゃない?♪」


曜「うんうん、アイドルに詳しいルビィちゃん的にはどんな風に名付けすればいいと思う?」

ルビィ「そうだなぁ……やっぱり私達らしさっていうのは重要だと思うの……千歌ちゃんはどんなスクールアイドルを目指したい?」

千歌「μ'sみたいなスクールアイドル!」グッ

ルビィ「じゃあどちらかと言えば正統派のアイドルかなぁ、それなら柔らかい印象がいいかも、あとあんまりひねくれない感じ?」

鞠莉「比較的ストレートなネームって事ね」

曜「んー……じゃあ歌うに踊ると書いて歌踊丸!」ドヤッ

千歌「曜ちゃん……漁船じゃないんだから……」

鞠莉「今ので曜っちのネーミングセンスがデンジャラスなのがよく分かったわ」

曜「えっそんなにダメ!?」ガーン

ルビィ「でも海に関係するのはいいかも、内浦らしいし」

梨子「じゃあ……5人になってからだけどファイブマーメイドとか?」

鞠莉「梨子っちも曜っちとイーブンね」

梨子「えっ!?」ガーン


ルビィ「あはは……じゃあえっと、とりあえずたくさん関係のある単語を挙げてみるのはどうかな?何か良いのがあるかも」

千歌「ミカン」

ルビィ「海はどこいっちゃったの!?」

曜「ヨーソロー」

鞠莉「曜っちは1回船から離れて」

梨子「うーん……海、魚、水……ビーチ……」

千歌「夏!」

ルビィ「期間限定ユニットになっちゃうよぅ……」

鞠莉「sea……water、marine、ocean……wave、aqua……splash……」

千歌「アクア……アクアっていいかも!」

曜「確かになんか透き通った感じするかも」

鞠莉「そうねー、いいんじゃないかしら?」

ルビィ「じゃあ……アクアで♪表記はどうしよう……カタカナ?英語?」

千歌「アクアって英語でどう書くの?」

曜「私が知ってると思う?」

鞠莉「A・Q・U・Aでaquaよ」

千歌「さすが留学生」パチパチ

鞠莉「この程度で褒められても嬉しくないんだけど……」ヤレヤレ

千歌「でもなんかさっぱりしすぎじゃない?」

梨子「うーん……単語そのままっていうのが駄目なのかな……」

ルビィ「造語にするならどんなのがいいかな?」

千歌「象語?パオーン?」

曜「それは無いよ千歌ちゃん……」

梨子「どんな風に変えるの?」

ルビィ「例えばμ'sは元々ギリシャ神話のMuseからきてるらしくて、更にギリシャ文字のμに置き換えたっていう……」

曜「μ'sって頭もいいんだね!」

千歌「更に遠い存在になった気がする!」

鞠莉「貴女達ほんとにやっていけるの……?」

千歌「じゃあアクアを英語に置き換えたら?」

梨子「アクアがそもそも英語じゃ……」

千歌「ホントだ!?」ガーン

ーーー

鞠莉「……んーじゃあ私達のものって感じでoursとかはどう?」

千歌「泡?」

梨子「ours……」

曜「でも読みはアクアにするんでしょ?」

ルビィ「oursを混ぜるなら……」

梨子「AとQは最初にないとめちゃくちゃになっちゃうよね?」

ルビィ「じゃあその後にoursを入れてaqoursua?」

鞠莉「なんか長ったらしくない?最後のUとAは無くてもノープロブレムじゃないかしら?」

ルビィ「Aqours……?」

曜「それでアクアって読めばいいんじゃないの?」

梨子「到底読めないけど……」

ルビィ「まぁグループ名だから読み方はこうだ!って言ったもの勝ちみたいなところはあるから大丈夫かなと……」

千歌「じゃあこれでけってーい!」

曜「やっと終わったー」

鞠莉「貴女達もっとスタディするべきよ……」

ルビィ「あはは……」

梨子「……」

千歌「よしっ!じゃあこれから私達はスクールアイドル……Aqours!……って、どうしたの梨子ちゃんニヤニヤして」

梨子「えっ……あ、面白い名前だなぁって」

曜「面白い?」

梨子「A・Q・Oursって読むと永久泡'sって聞こえるでしょ?永久の泡……絶対に弾けたりしない夢の泡って感じがしない?」

鞠莉「ふふっ♪梨子っちはポエマーなのね♪」

梨子「ぽ、ポエマーって別にそんな!」アワアワ

千歌「私は好きだな!」

ルビィ「千歌ちゃん?」

曜「でも泡ってなんかマイナスイメージな使われ方もしない?」


千歌「いいじゃん!この内浦みたいになんにもないところからブクブクブクって湧き出してさ!面白いじゃん!私達ここにいるよ!って!しかも割れないんだよ!ずっとそこにあるんだよ!」

鞠莉「私も千歌っちみたいなポジティブシンキングがいいと思うわ」

ルビィ「なんにもないところからどんどん湧き出る泡」

曜「しかも絶対に割れない永久の泡か」

ルビィ「賛成です!裏のイメージとしてもすごくいい!」

千歌「私達の海、永久の泡!Aqours!」

曜「なんか私も急に色々動き出してきてワクワクしてきた!」

ルビィ「憧れのアイドルへの1歩……!」

鞠莉「もう後戻りは出来ないわよ?♪」

千歌「絶対に退かないよ……絶対に!」

梨子「……♪」クスッ


ーーー

鞠莉「梨子っちお待たせ、少しなら大丈夫よ」

梨子「すみません小原先輩」

鞠莉「マリー」

梨子「……?」

鞠莉「マ・リ・イ」

梨子「鞠莉……先輩」

鞠莉「んもう、梨子っちの噂、三年まで聞こえてるのよ?」

梨子「……」

鞠莉「同い年なんだから先輩なんて付けなくていいわ」

梨子「……鞠莉さん」

鞠莉「んー、まぁそれでいいわ、で、用ってなぁに?」

梨子「渡したいものがあるんです、私の家がすぐ近くなんで来てもらえますか?」

鞠莉「OK♪」

梨子「こっちです」

鞠莉「……」

梨子「……」

鞠莉「何も聞かないの?」

梨子「何をですか?」

鞠莉「……果南かダイヤから全部聞いてると思ったんだけど」

梨子「……聞きましたよ」

鞠莉「貴女はどう思った?」

梨子「分かりません」

鞠莉「わからない……?」

梨子「今の私は経験が無さ過ぎて鞠莉さんがどんな気持ちかも、松浦さん達がどんな気持ちなのかも正直分かりません」

鞠莉「……」

梨子「でも今日の鞠莉さんを見て思いました、多分私と同じなんだと」

鞠莉「同じ……?」

梨子「多分ですよ?……経験がないんです、今も昔も……何があったのかなんて分かりませんけど多分鞠莉さんはどうしていいか分からなかったんじゃないかなって」

鞠莉「……」

梨子「本当はそんなつもりじゃなかった……こんなはずじゃなかった…でもそうするしかなかった……そんな感じだったんじゃないかなって」

鞠莉「ふふっ、面白い意見ね♪」


梨子「ここです、今取ってくるので少し待っててください」

鞠莉「ええ」

鞠莉「……」

鞠莉「そうするしかなかった、か……」

鞠莉「……結局は言い訳よね」

梨子「お待たせしました、これを」

鞠莉「……これは……楽譜?」

梨子「ピアノの楽譜なんですけど、鞠莉さん楽器出来るんですよね?」

鞠莉「ええ、まぁ……でもなんでこんなものを……?」


梨子「それ、多分全部私が作った曲なんです」

鞠莉「梨子っちが……これを?」

梨子「私、記憶がなくなる前はピアノをやってたみたいで……でも今の私には読めもしない単なる紙切れなんで……スクールアイドルをやるのに良かったら使って下さい」

鞠莉「……いいの?」

梨子「はい」

鞠莉「じゃ、有難く使わせてもらうわ……用件はこれだけ?」

梨子「はい」

鞠莉「なら私は帰るわね」

梨子「すみません、時間を取らせて」

鞠莉「気にしないで♪それじゃ、チャオ♪」ヒラヒラ

梨子「おやすみなさい」

今日はここまで

ワクワクする

いいね


ーーー

ルビィ「あのぅ……津島さん」

善子「何?」

ルビィ「津島さんはスクールアイドルとか興味ありませんか?」

善子「スクールアイドル?ごめんなさい、私そういうミーハーなのは嫌いなの」

ルビィ「そ、そうですよね……変なこと聞いてすみません…」

花丸「ルビィちゃん……ルビィちゃんは頑張ったズラ」ナデナデ


善子「それよりも私は今噂の記憶喪失先輩のほうが興味あるわね、貴女達も何か知らない?」

花丸「記憶喪失……先輩?」

ルビィ「それって……」

善子「知ってるのね!?このヨハネに紹介しなさい!」ガシッ

ルビィ「ひぃぃ!?い、いきなりそう言われてもぉ……」

花丸「津島さん、先輩の都合もあるだろうし……ね?」

善子「おっとそうね、不可抗力とはいえ人間界にいる以上は人間の都合にも合わせてあげなくちゃ」

花丸「……」ヤレヤレ

ルビィ「い、一応ちょっと聞いてみるね……」


ーーー

梨子「……その、初めまして……」

花丸「はじめまして、ルビィちゃんの幼馴染の国木田花丸です」ペコリ

梨子「うん、話は聞いてるよ、よろしくね」

善子「私は堕天使ヨハネ、貴女が記憶喪失だと聞いてピンときたの!貴女は間違いなく天界での我が半身だわ!」ギランッ

梨子「えっ……違うと思います……」

花丸「意味不明ズラ……」

ルビィ「津島さん……先輩だから……」

善子「覚えていないだけよ、私の魂が間違いなくそうだと囁いているの!さぁ、私と共に天界へ反逆の狼煙をあげるわよ!」ビシッ

梨子「あの……帰ってもいいかな?」

ルビィ「いきなり呼び出してすいませんでした……」ペコリ

花丸「すいませんでした……」ペコリ

梨子「気にしないで……私は大丈夫だから……それじゃ」

善子「あ、ちょっと待ちなさいよー!」

花丸「津島さんちょっといい加減しするズラ」ググッ

ルビィ「先輩相手に失礼過ぎるよー」ググッ


善子「あーんもう!せっかく上手く行きそうだったのにー」

花丸「何がどう上手くいきそうだったのか全然わからない……」

ルビィ「なんで梨子先輩にこだわるの?」

善子「だって記憶喪失なんて物凄く不幸じゃない」

花丸「う、うん」

善子「不幸体質の私と気が合わないわけないわ」

ルビィ「うん……?」

善子「もう黒澤さん!」

ルビィ「はいっ!?」

善子「アンタと関わりがあるってことはあの人もスクールアイドルって事よね?」ズイッ

ルビィ「いや……梨子先輩は違うけど……」

善子「庇ったってだめよ!こうなったら私もスクールアイドルになって記憶喪失先輩に取り入ってやるんだから」

花丸「はい……?」

ルビィ「えぇ……そんな理由で入られるのはちょっと……」

善子「アンタが先に勧誘したんでしょ」

ルビィ「うぅ……誘う相手間違えちゃった……」

花丸「ドンマイズラ……」


ーーー

善子「よろしくお願いします」

千歌「こちらこそよろしくね♪」

鞠莉「なんだかミステリアスな子ね♪面白そう♪」

梨子「……」

曜「梨子ちゃんどうかした?」

ルビィ「あの……梨子先輩……ほんとにごめんなさい……」

梨子「き、気にしないで、ルビィちゃんは悪くないから」

千歌「よし、じゃあこれで遂に5人!」

曜「やっと部活申請出来るね!」

千歌「うんっ!というわけで皆さん!この用紙に名前をお願いします!」バンッ

鞠莉「OK♪」


ルビィ「黒澤、ルビィ……と」カキカキ

善子「……ヨハネっと」カキカキ

ルビィ「津島さん」

善子「うっ……」カキナオシ

曜「出来た!」

千歌「よし!じゃあせっかくだからみんなで出しに行こう!」

ルビィ「えっ……みんなで……」

梨子「あ……ルビィちゃんのお姉さんが……」

千歌「あ、そうだった……じゃあ私が出してーー」

ルビィ「……大丈夫です」

梨子「ルビィちゃん……」

ルビィ「いずれはバレちゃうし……それなら最初から隠さないで堂々としたほうがいいと思うから……」

曜「ほんとに大丈夫?」

ルビィ「はいっ」

千歌「分かった、じゃあ6人で行こう!」

梨子「えっ、私も行くの!?」

ーーー

ダイヤ「……スクールアイドル部ですか」

千歌「はい、5人いれば部活の設立に問題はないですよね?」

梨子「……」ソワソワ

ダイヤ「そうですわね……幾許もない時期になぜ新設するのか等々言いたい事は山ほどありますが、規則としては問題ありませんし、私にそれを覆す権利もありませんわ」

千歌「じゃあ……!」

ダイヤ「スクールアイドル部の設立は認めます」

曜「やった!」

ダイヤ「ですが」

ルビィ「うっ……」

ダイヤ「鞠莉さん、貴女がもし私達にしたのと同じ過ちを繰り返すというのなら、私は何をするか分かりませんよ」

鞠莉「……ふふっ♪肝に銘じておくわ♪」

ダイヤ「……部室の割り当て等は改めて後日お伝えします」

千歌「ありがとうございます!」

ダイヤ「……」

千歌「失礼しましたー」ペコリ

鞠莉「チャオ♪」

ダイヤ「ルビィ」

ルビィ「な、何かな……」

ダイヤ「貴女ももう高校生、私がとやかく言う事はないけど、その分貴女達に責任が伴う事を忘れないように」

ルビィ「……うん」

千歌「……」


ーーー

千歌「よしっ、正式に部活にもなったし、早速スクールアイドルAqoursとして動き出さなきゃ」

曜「とにかく曲を作らないことには始まらないよね」

鞠莉「ふふっ♪そーんな貴女達のためにこのマリーがスペシャルなミュージックをプレゼントしてあげるわ♪」

ルビィ「へ?」

千歌「ミュージックって……もしかしてもう作曲したんですか!?」

鞠莉「イエース♪」

善子「用意周到ね」

鞠莉「だってみんなはともかく私はこの一年しかいないのだから、どんどん動かなきゃ勿体ないじゃない?」

曜「そっか……鞠莉先輩三年生だもんね」

鞠莉「ノンノン♪シリアスはノーセンキューよ♪とにかく聞いてみてくれる?」

千歌「はいっ」

梨子「……」

ルビィ「……」チラッ

鞠莉「どうかしら?」

曜「すごい……ほんとに曲になってる……」

善子「いかにもアイドルって曲ね」

鞠莉「まぁ私ももっとハードなテイストにしようかと迷ったんだけど、王道には王道の良さってものがあるから♪」

千歌「鞠莉先輩すごいよー!」

曜「これに歌詞をつけて振り付けを考えれば……」

ルビィ「私達も晴れてスクールアイドル!」

千歌「歌詞は誰が考える?」

善子「私はアイドルソングとか聞かないしパス」

曜「私もそういうのよく分かんないかな……」

ルビィ「ルビィは衣装作りですよね……?」

千歌「えっ、じゃあ振り付けは?」

善子「私踊りとかやったことないし」

曜「盆踊りくらいなら!」

ルビィ「衣装……」

鞠莉「ダンスもリリックもアイドルらしいのって難しいわね」

梨子「前途多難ね……」

千歌「とーにーかーく!鞠莉先輩は作曲だしルビィちゃんは衣装作りだから私達3人がなんとかしなきゃ!」

曜「やっぱりそうなるよね……」

善子「はぁ……黒澤さん」

ルビィ「何かな?」

善子「付け焼き刃になるけどなんかアイドルらしさが分かりそうなオススメとかないの?」

ルビィ「うーん……じゃあとりあえずいくつかまとめて後で送るね?」

善子「ありがと」

曜「ルビィちゃん!」

千歌「私達にも!」

ルビィ「えっ、 えぇ……」


ーーー

ピロリン

梨子「ルビィちゃんから……?」

ルビィ『いきなりすみません。余計なお世話かもしれないですけどこの動画を見てもらえませんか?』

梨子「……」

記された動画のページへアクセスすると
とあるスクールアイドルのライブ映像の詳細ページに繋がる
しかし、私はそのまま再生せずに元の画面へ戻った

梨子「……」

梨子『わざわざありがとう、でもごめんなさい、知識としてはもう知ってるの』

ルビィ『そうでしたか……出過ぎた真似をしてすみませんでした』

梨子「……」

梨子『気にしないで』

そう返して再び動画のページを選択する
二年前の日付と共に記されたタイトル

梨子「……音ノ木坂学院……アイドル研究部……1年生グループ…」

まだグループ名もなく、先輩の前座として踊った初舞台らしい
そこに連なる4つの名前の1つに懐かしさと気持ち悪さが湧き上がる

今日はこの辺りで


ーーー

千歌「うわぁぁ!もう全っ然思いつかない!」

曜「さっきからμ'sの曲の歌詞ばっかり書いてるもんね……」

善子「堕天使としての本能が隠しきれない!」

鞠莉「貴女達、ここ図書室よ」

千歌「そもそも図書室という落ち着かない空間が悪い!」

曜「他に誰もいないのがまたね……」

善子「嗚呼、リトルデーモンの気配が無い!一体どれほどの結界が張られて……」

鞠莉「貴女達ほんとダメ人間よね」ヤレヤレ

ガラッ

ルビィ「あ、まだいた」

花丸「お邪魔しますズラ……」

千歌「あっ!マルちゃん!」

曜「久しぶりー」

鞠莉「どちら様?」

花丸「千歌ちゃん、曜ちゃんお久しぶり」

善子「ズラ丸!アンタ私のリトルデーモンになりなさい!」ビシッ

花丸「リトルデーモンって何っ!?というかズラ丸って何っ!?」ガーン

善子「だってアンタいっつもズラズラ言ってるじゃない」

花丸「そんなひどい渾名初めてズラ!……あっ」

善子「ほらまた言った!」

鞠莉「ねぇどちら様ぁ?」

曜「あっ、私達の幼馴染みで国木田花丸ちゃんです」

花丸「初めまして国木田です、ルビィちゃんがいつもお世話になってます」ペコリ

鞠莉「オーウ♪初めまして♪」

千歌「マルちゃんもAqoursに入ってくれるの?」

ルビィ「来ていきなり!?」

花丸「あー……それは前にルビィちゃんにも誘われたんだけど…オラはそういうの苦手だから……」

千歌「えーマルちゃん可愛いし歌なんかめっちゃくちゃ上手いからぴったりだと思ったのに」

花丸「オラは聖歌隊で歌ってるだけで十分だから……」

曜「そういや、2人はどうしたの?」

ルビィ「本格的な衣装作りだともっと勉強しなきゃなぁって思って、そういう本がないか探しに」

花丸「マルは借りた本を返しに来たのと新しい本を借りに」

曜「それ全部読んでるの?」

花丸「もちろんズラ」ドサッ

千歌「漫画より文字多いのよくそんなたくさん読めるよねー」

鞠莉「それは千歌っちが読まなさすぎじゃ……」

千歌「あ」

曜「ん?」

千歌「マルちゃんって文章好きだよね!?」

花丸「文章が好きって……そんな考え方はしたことないけど……まぁ本は好きだけど?」

千歌「じゃあさ!踊らなくても歌わなくても良いから作詞担当として部員になるのはどう!?」

花丸「さ、作詞?」

曜「あーそっか別に部員だからってステージで踊る必要はないんだ」

善子「えっ、じゃあ私も裏方がいい」

鞠莉「貴女何か裏方作業出来るの?」

善子「……お茶くみ?」

鞠莉「論外デース」

善子「なんでカタコトなのよっ」

花丸「いや……オラはそんなことしたことないし……」

千歌「大丈夫!私達もこれからやること全部初めてだから!」

花丸「えぇ……」

ルビィ「マルちゃん……ダメかな?ルビィもマルちゃんと一緒にスクールアイドルやりたいの」

花丸「……」

千歌「今すぐにとは言わないから、ちょっとだけ考えてもらえないかな?」

花丸「うん……」

善子「そーいえば記憶喪失先輩は?」

曜「善子ちゃんその呼び方やめなって」

千歌「梨子ちゃんなら今日は沼津の病院に行くって帰っちゃった」

鞠莉「そもそも梨子っちは部員じゃないからいる方がおかしいと思うわよ?」


ーーー

梨子「……」

脳、身体共に特に異常はなし

梨子「……はぁ」

症状ーー全生活史健忘

梨子「……えっと、バス停は……あっちね」

「あっ」

梨子「ん?」

善子「記憶そーーじゃなかったえっと……桜内先輩」

梨子「津島さん、なんでこんなところに?」

善子「なんでも何も、私沼津に住んでるから」

梨子「あ、そうなんだ……浦の星に通うの大変じゃない?」

善子「そうでもないわ」

梨子「そっか……私ここまでくるのにすごい時間かかっちゃったし……」

善子「先輩は転校生でしょ?単に土地勘が無いだけじゃない?」

梨子「あはは……多分それもあるかな」

善子「……先輩は」

梨子「ん?」

善子「先輩は、なんで記憶喪失になったんですか?」

梨子「なんでって言われても……事故にあったからとしか…」

善子「どんな事故ですか?」

梨子「……私はわき見運転の車に跳ねられたとしか」

善子「そうですか……変なこと聞いてすいません」

梨子「ううん……もう慣れたから」

善子「そうだ、先輩の事渾名で呼んでいいですか?」

梨子「渾名……?鞠莉さんみたいな?」

善子「そうね……んー、りこ……りー……」

梨子「……」

善子「り……あっ!リリーとか!」

梨子「えー……」

善子「決定!今からリリーって呼ぶわ!」

梨子「まぁ……津島さんがそう呼びたいなら私は別に……」

善子「ヨハネ」

梨子「はい?」

善子「ヨ・ハ・ネ!私の事はヨハネって呼んで」ビシッ

梨子「えっ……なんで……」

善子「なんでって私がヨハネだからよ!」ギランッ

梨子「え……やだ……」

善子「やだって酷くない!?」

梨子「私はそのまま津島さんで……」

善子「いや!だって津島善子なんてダサいじゃん!」

梨子「……じゃあえっと……よっちゃん」

善子「……小原先輩から聞いたとおりあんまりセンスないわね」

梨子「うっ……」

善子「まぁ今はそれでいいわ、でもいつかヨハネって呼ばせてやるんだから!」ダッ

梨子「あっ、行っちゃった……」

梨子「……渾名で呼ぶって敬語もやめる感じなのかな……?」


ーーー

千歌「梨子ちゃんおはよー」

梨子「おはよう」

千歌「実は私!昨日すっごいいいこと思いついたのだ!」

梨子「いい事?」

千歌「梨子ちゃん!」ズイッ

梨子「な、なに?」

千歌「スクールアイドル部のマネージャーになってくれませんか!?」クワッ

梨子「マ、ネージャー……?」

千歌「そう!ステージで歌ったり踊ったりするだけがスクールアイドルじゃないんだって」

梨子「どういう事?」

千歌「曲を作ったり衣装作ったりさ、チラシとか!ライブの時も裏方さんってやっぱり必要じゃん!そういうのも全部含めてスクールアイドルなんじゃないかなぁって」

梨子「裏方もスクールアイドル……」

千歌「そう!ほら、私って馬鹿だしさ、曜ちゃんも変なスイッチ入っちゃう時あるし、善子ちゃんはあんなんだし、鞠莉先輩もルビィちゃんも結構マイペースでしょ?」

梨子「うーん……確かに」

千歌「そんなAqoursをまとめられそうな人がきっと必要なんだ、で、それを梨子ちゃんにやってもらいたいなぁって」

梨子「でも……私、元々余所者だし……その、記憶喪失だし」

千歌「だからだよ!」

梨子「……はい?」

千歌「ずっと内浦にいる私達と違うからこそ梨子ちゃんにお願いしたいんだ!きっと私達とは違うものが見えるから!」

梨子「違うもの……」

千歌「あっ」

梨子「えっ?」

千歌「善子ちゃんも内浦出身じゃないや」

梨子「ぷっ……♪」

千歌「あー笑ったー!」

梨子「ふふっ♪ごめんなさい♪」

千歌「もー私これでも真面目に考えてるんだからぁ」

梨子「そうね……私も考えてみようかな……」

千歌「ほんと!?」

梨子「うん、お手伝いくらいなら私にも出来るだろうし」

千歌「いよっしゃー!」

梨子「あの、まだ考えるとしか言ってないからね?」

千歌「これで7人だ!」

梨子「だからー……って、えっ?7人?」

後でまたあげます


ーーー

千歌「ばばーん!」

曜「じゃじゃーん!」

鞠莉「オーウ♪ようやく部室が出来たのね」

善子「でもなんで体育館なのよ?教室どころか校舎単位で余りまくってるのに」

ルビィ「スクールアイドル部のためだけに使ってない校舎を開けるのは難しいんだって」

曜「でもここだと練習とかも行きやすいし」

千歌「体育館でライブする時は控え室にもなるのだ!」

鞠莉「エクセレンッ♪」

千歌「そしてもう一つお知らせがございます!」

ルビィ「お知らせ?」

曜「2人ともこっちこっち」

花丸「……」ドキドキ

梨子「そんな畏まって紹介はいらないんじゃ……」

善子「リリーにズラ丸じゃない」

ルビィ「リリー……?」

千歌「なんと!マルちゃんと梨子ちゃんがサポート部員としてスクールアイドル部に入部することになりましたー!」パチパチ

曜「よっ!」パチパチ

ルビィ「マルちゃん……!」パチパチ

善子「ふふっ……やはりヨハネとリリーは惹かれ合う運命……!」

鞠莉「なんだかどんどん部活らしくなってきたわね♪」

千歌「じゃあ2人から一言ずつどーぞ!」

花丸「えっ!?あっ、マルはみんなと一緒に歌ったり踊ったりは出来ないけどみんなが頑張れるように色々お手伝い頑張るズラ」

梨子「えー、っと……私もステージには上がらないけど、その分裏方として力になりたいと思います……」

曜「拍手ー!」パチパチ

鞠莉「シャイニー☆」パチパチ

千歌「そしてそして!」

ルビィ「まだ何かあるの?」

千歌「こうして部活として動き出したからにはやっぱり見てもらわなきゃダメ!」

善子「まぁスクールアイドルだし」

千歌「なのでライブをしようと思います」

ルビィ「遂に……!」ゴクリッ

千歌「早ければ早い方がいいです」

曜「うんうん」

千歌「だから皆さん頑張って曲を作りましょう……」ガクッ

梨子「えっ……あれから進んでないの?」

花丸「聞いてた以上にマズいズラ……」

千歌「だから梨子ちゃんとマルちゃんが頼りなんだよぉ」

梨子「えっ」

花丸「えー……」

梨子「はぁ……」

花丸「桜内先輩……オラ達で頑張りましょう!」

梨子「そうね……鞠莉さん、曲のサンプルは?」

鞠莉「えっ?……あぁ、このプレイヤーよ」

梨子「ありがとうございます」

鞠莉「……」

梨子「花丸ちゃんは聴いた?」

花丸「オラはまだ聴いてないです」

梨子「じゃあまずは曲を聴いてイメージを考えましょうか」

花丸「分かりました」

鞠莉「……」

ルビィ「鞠莉先輩ちょっといいですか?」

鞠莉「ワッツ?何かしら?」

ルビィ「……ここじゃちょっと」

鞠莉「……OK」


ーーー

ルビィ「あの……鞠莉先輩」

鞠莉「何かしら?」

ルビィ「あの曲……鞠莉先輩が作った曲じゃないですよね?」

鞠莉「……どうして?」

ルビィ「……」

鞠莉「ルビィちゃん?」

ルビィ「変なこと聞いてすいません……鞠莉先輩が作ったならそれでいいんです」ペコリ

鞠莉「……」


ーーー

千歌「さすがマルちゃんと梨子ちゃん……もう歌詞が出来た!」

梨子「もう一度言っておくけど仮の歌詞だからね?」

曜「仮でもすごいよ、私達なーんにも浮かばなかったし」

千歌「そうそう」

梨子「難しく考えすぎなんじゃないかな?」

千歌「難しく?」

梨子「うん、私も花丸ちゃんもとりあえず音から作っただけだから」

曜「もう少しわかりやすく説明してほしいであります!」ビシッ

梨子「ええっ……そうね、意味よりも言葉のリズムを優先する感じかな?」

千歌「言葉のリズム……」ムムッ

梨子「うん、それから意味が分かるように言葉を変えたり……パズルみたいな感じ」

曜「千歌ちゃんパズルだって」アハハ

千歌「じゃー私と曜ちゃんには無理だね」アハハ

曜「だねー」アハハ

ようちか「はぁ……」

梨子「2人ともパズル苦手なのね……まぁこれからは私と花丸ちゃんで頑張ってみるから2人はダンスを頑張ってね?」

曜「そーだ!ダンス!うわぁ……」

千歌「とりあえずルビィちゃんに教えてもらったスクールアイドルを参考に色々考えてみよう」

曜「了解であります……あ、そろそろバス来ちゃう」

千歌「じゃあ曜ちゃんまた明日ー」

梨子「ばいばい」

曜「じゃーまたねー」


ーーー

千歌「んーと……ここはこう?ほっ!うわっ!?」ドテッ

千歌「いてて……んー?あ、こっちかぁ……ほっ」

果南「ちーかー」

千歌「ほへ?うわわっ!?」

バシャーン

果南「あっちゃー……もうほら掴まって」

千歌「あ、ありがどー」ブクブク

果南「何をクルクル回ってたのさ?」

千歌「ダンスをね、考えてたんだ」

果南「ダンス?千歌が?」

千歌「曜ちゃんもだけどね」

果南「ふーん……なんか千歌のそんなに真剣な顔初めて見たかも」

千歌「それ私がなんか適当に生きてきたみたいじゃない!?」ガーン

果南「ごめんごめん♪」

千歌「もぅ……」ムスッ

果南「……千歌はさ、今楽しい?」

千歌「うん?……そりゃぁ楽しいけど、どうしたの?」

果南「いーや、なんでもないよ♪ほらダッシュで帰らないと風邪引くよ」

千歌「あ゛ー……またみとねぇに馬鹿にされちゃうよー」

果南「自業自得だよ」

千歌「はぁ……じゃあ果南ちゃんまたね」フリフリ

果南「気を付けてねー」フリフリ

果南「……」


果南「……いつまでそこに隠れてるつもり」


鞠莉「ふふっ♪とーっても心配そうねー♪」

果南「誰かさんのせいでね」

鞠莉「ノープロブレ~ム♪千歌っち達はみんな立派にやってるわ」

果南「……」

鞠莉「……ねぇ果南」

果南「……って」

鞠莉「復学し「帰って!」

鞠莉「果南……」

果南「はっきり言うよ、鞠莉がいる限り私はスクールアイドルなんかやらない……だから帰って」

鞠莉「……そう、ごめんなさい」スタスタ

果南「……」


ーーー

千歌「それで、こう!」キュッ

善子「地味じゃない?」

曜「腕を伸ばしてみるとか?」

千歌「こう?」ビシッ

善子「あぶなっ」

曜「あー、今のステップのままじゃ距離が近いか、じゃあ、ここの足運びをもう1歩広げてみた方がいいかな」

千歌「こうして……こう!」キュッ

善子「なんとか形にはなってきたわね」

曜「どうかな?ルビィちゃん」

ルビィ「凄くいいと思う!」

鞠莉「スムーズに動けば中々のダンスになるんじゃない?」

千歌「よしっ!じゃあ1回みんなでやってみよう!」

善子「いや、先輩以外全員同じステップは変でしょ」

千歌「あっ」

曜「千歌ちゃんをセンターにするわけだから……善子ちゃんと鞠莉先輩は今のステップで……ルビィちゃんと私は逆のステップか」

千歌「出来る?」

曜「まぁ逆にするだけなら簡単だから、ちょっと3人でやってみる?」

善子「ものは試しね」


ーーー

ルビィ「梨子先輩、花丸ちゃーん」

花丸「どうしたズラ?」

ルビィ「歌詞はどんな感じかなぁって思って」

梨子「ほぼ完成してるわよ♪聴いてみる?」

ルビィ「聴くって……もう録音したんですか!?」

梨子「国木田さんの歌、凄く上手でびっくりしちゃった」

花丸「せせせ先輩!言わないでほしいズラ!」

ルビィ「花丸ちゃんの歌聴きたいっ!」


ーーー

花丸「……穴があったら入りたい……」

鞠莉「ワーオ……」

善子「歌になってる……」

曜「凄いよ梨子ちゃん!マルちゃん!」

千歌「うぉぉ!なんか私達すっごいことしてる!」

梨子「あはは……」

ルビィ「ルビィも早く衣装完成させなきゃ……!」

梨子「私達に手伝える事があったら言ってね、といっても大したことは出来ないけど……」

ルビィ「ありがとうございます♪」

千歌「あっ!」

鞠莉「どうかしたの?」

千歌「チラシ!」ガサゴソ

曜「チラシ?」

千歌「昨日ちょっと考えてみたの!」バーン

善子「……地獄絵図?」

花丸「相変わらずダメな方に限界突破してるズラ……」

千歌「はい、曜ちゃん!」

曜「はいきたー」

梨子「……?」

曜「えっと……ここはこうだから……」サササッ

曜「清書完了でありますっ!」ビシッ

鞠莉「まるでアルケミストね」

ルビィ「清書って一体なんだろう……」

千歌「どうかな!?」

梨子「ええ……曜さんの描いたのならとてもいいと思う」

千歌「よしっ!じゃあこれを配ったり貼ったりしよう!」


鞠莉「配るっていっても具体的にどこに?」

千歌「とりあえず回覧板で回したりかなぁ」

善子「案外小さく攻めるのね」

千歌「そりゃあたくさんの人に来てもらいたいけどさ、いきなり高望みしても仕方ないし、まずは内浦のみんなに見てもらいたいから」

善子「……っ!?」ガーン

花丸「善子ちゃんが面食らってる……」

善子「……思った以上にまともな答えが返ってきたらびっくりもするわよ」

千歌「なんか失礼じゃないかな!?」ガーン

鞠莉「じゃあチラシについては千歌っちに任せても?」

千歌「あっ、うんっ!」

ルビィ「それじゃ、チラシを完成させるためにも日程とか場所とか早く決めないとだね」

梨子「そうだね」


ーーー

ダイヤ「体育館の使用許可ですか?何の為に?」

千歌「はいっ、この日程のどれかで私達のライブをしたいんです」

ダイヤ「……少し待っていてください」

千歌「はいっ」


梨子「そういえば、生徒会長さんも幼馴染みなんだよね?」

曜「そーだよ?」

梨子「その割には果南さんと違って千歌さんの態度が堅いというか……」

曜「あー、昔からダイヤさんって凄く優等生なところがあったから、嫌いとか仲良くないって訳じゃないんだけど、なんて言うか……一緒にいたら背筋がピンっとしちゃう感じかな」

梨子「へぇ……」


ーーー

ダイヤ「ではこれで受理しておきます」

千歌「ありがとうございます」

ダイヤ「他に何か貸出が必要なものはあれば一緒に書類を用意しますが」

千歌「体育館の2階の照明と体育館の放送室って書類いりますか?」

ダイヤ「照明?……あぁ、あれはいりませんわ、放送室も使ってもらって構いません」

千歌「なら大丈夫です、ありがとうございました」

ダイヤ「えぇ」

千歌「ダイヤさん」

ダイヤ「他に何か?」

千歌「ダイヤさんにも色々思う事があるかもしれないけど、良かったら私達の初ステージ見に来てください」

ダイヤ「……考えておきますわ」

千歌「ありがとうございます!失礼しましたー」ガラッ

ダイヤ「……」

とりあえずここまで
明日中にはファーストライブ編が終わってもう少し話が動きます

いいね


ーーー

梨子「果南さんには言わなくていいの?」

千歌「果南ちゃんなら何となく私の気持ちも分かってくれるかなぁって」

梨子「気持ち……」

千歌「なんて言うんだろうなぁ……誘いたいけど今誘ったらもっと離れちゃいそうな気がして」

梨子「……」

千歌「果南ちゃんってさ、昔から〝お姉ちゃん〟って感じでさ、まぁ私本当のお姉ちゃんもいるんだけどさ」

梨子「うん」

千歌「私達の前を歩いてくれたり、後ろを歩いてくれたり……いつだって私達が私達でいられるように見守ってくれてるんだ」

梨子「……」


千歌「だから鞠莉先輩とのことであんなに怒ったりするのもきっと私達の事を思っての事なんだよ」

梨子「そっか……」

千歌「でもさ」

梨子「ん?」

千歌「ダイヤさんが言ってたじゃん、私達には責任が伴うって」

梨子「そうね」

千歌「鞠莉先輩の事だけじゃなくてこれから先Aquorsとして活動していくなかで、きっとそういう時がいっぱいくるのかもしれないじゃん」

梨子「……」

千歌「そんな時……昔みたいに果南ちゃんやダイヤさんに頼ってばっかりなままの私じゃダメなんだよ……」

梨子「千歌さん……」


ーーー

花丸「糸が……通らない……」プルプル

梨子「ルビィちゃん、そんなにすいすい縫って怪我しないの?」

ルビィ「衣装作りもそうだけど、お裁縫は昔から好きなんです、巾着袋とか小物も作ったりしてて」

梨子「凄いね……痛っ……また刺しちゃった……」ガックリ

善子「リリーもズラ丸も賢いだけで不器用ね」

ルビィ「善子ちゃん、ダンスは?」

善子「私はきゅーけー、今でこそ堕天し不幸体質になったとはいえ!はるか昔に天界にその名を轟かした天使なのだから!ダンスの一つや二つに手古摺るようなヨハネじゃないのよ!」ギランッ

ルビィ「善子ちゃん凄い!もう覚えちゃったの?」

善子「えっ!?あっ、まぁね……」タジッ

花丸「純粋無垢なルビィちゃんの真っ直ぐな賞賛にたじろいでるズラ……」

梨子「あはは……」

善子「そ、それより!今のリリーとズラ丸の様子じゃかえって時間がかかるんじゃないの?」

ルビィ「そんなことは……」チラッ

花丸「あっ……また糸が抜けたっ」ガーン

梨子「えっと……次はこっち側……かな?」

ルビィ「……あるかも」ガクッ

善子「仕方ないわね、リリー貸しなさい」

梨子「へっ?」

善子「こういう所は、ここを通して、このくらいで……こう」シュッ

梨子「えっ」

善子「ズラ丸は針を持つ時はここで糸を持つの、で、引っ張る時は針じゃなくてこうやって糸を引っ張るの」シュッ

花丸「おおっ!?」

ルビィ「善子ちゃん……お裁縫得意なの?」

善子「ふっ……ヨハネが本来纏うべき衣はこの現世に存在しないよ、つまり自ら生み出す事が必要なの……!」バッ

花丸「意味わからないズラ……」

ルビィ「……つまりコスプレ衣装を作ってるって事かな……?」

善子「コスプレ言うなっ!」

梨子「じゃあよっちゃんも裁縫出来るんだ」

ルビィ「あの……」

梨子「ん?」

ルビィ「前から思ってたんですけど、善子ちゃんと梨子先輩っていつの間にあだ名で呼び合う仲になったんですか?」

花丸「確かに、善子ちゃんが馴れ馴れしいのは分かるけど桜内先輩からってのが想像つかない」

善子「考えるまでもないわ!ヨハネとリリーは魂を分けた存在なのだから!」

梨子「全然違う……よっちゃんが渾名で呼べって言うから」

花丸「じゃあオラのこともマルって呼んでほしいな♪」

ルビィ「ルビィも……はっ!ルビィってあだ名で呼ばれた事ないっ」

善子「珍しい名前なんだから別にいいじゃない」

ルビィ「ぅゅ……確かに」

善子「とりあえずこの二人に任せてたらいつまで経っても完成しそうにないから私も衣装手伝うわ」

ルビィ「ありがとう♪」

ーーー

鞠莉「ライブのセットリスト?」

千歌「うん、一曲だけって流石にねぇ……」

梨子「でも今から作って間に合うの?」

曜「いや無理じゃないかな……」

善子「MCで乗り切る?」

千歌「喋ってるだけじゃアイドルのライブじゃないような……」

ルビィ「じゃあバラード曲を用意するとかはどうかな?」チラッ

鞠莉「バラード……バラードねー」ウーン

梨子「……」

花丸「桜内先輩となら歌詞はなんとかなるけどなんでバラード?」

ルビィ「バラードなら最悪踊らなくてもいいかなぁって」

善子「確かに、適当に手振りしてればそれっぽくはなるわね」

千歌「それでも2曲かぁ」

ルビィ「あとは……カバー?」

曜「カバーかぁ、千歌ちゃんµ’sの曲ならちょっと踊れるんじゃないの?」

千歌「そんなことしていいの?」

ルビィ「大会とかじゃないからオリジナルじゃなくても大丈夫だと思うよ?」

善子「大会ってあの見せてくれた……なんだっけ?」

鞠莉「ラブライブよ」

善子「そーそれ、ああいうのはオリジナルじゃないとダメなの?」

ルビィ「うん、他にも企業主催とか色々あるけどだいたいオリジナルに限定されてるの」


千歌「じゃあµ’sのカバーもして3曲!」

曜「初ステージならそれくらいでも十分かな?」

ルビィ「うんっ!」

鞠莉「じゃあバラード曲に関しては私と梨子っちとマルちゃんで用意するわ」

ルビィ「衣装は時間的余裕がないから今作ってる1着で全部やるしかないかな……」

千歌「分かった!じゃあ私達はµ’sのどれをカバーするか考えよう!」

曜「µ’sって9人だよね、ということは5人用にアレンジもしなきゃならないのかー」

善子「なんとかなるでしょ」


ーーー

むつ「ちーかー」

千歌「どーしたのむっちゃん」

いつき「これ見たよ」スッ

曜「あ、私らのチラシ」

千歌「来てくれるの!?」

よしみ「行くっていうか……」

むつ「なんか手伝えることないかな?」

千歌「へっ?」

いつき「ライブするって結構大変なんでしょ?」

梨子「まぁ……初めての事だから……」

むつ「だからさ、ライブの時だけでも助太刀出来たらなと思って」

よしみ「私達も部活あるから入部までは難しいけどね」

千歌「みんな……」

曜「どー思う?」

梨子「それは……始まったら私とマルちゃん以外ステージの上だから1人でも多ければ嬉しいかな」

千歌「というわけだから!」

むつ「任せて!」

いつき「また詳しいこと決まったら教えてね」

千歌「うんっ!」

曜「じゃあ行こっか」

梨子「それじゃ」

よしみ「頑張ってねー!」


ーーー

梨子「じゃあ一旦休憩で」

5人「はーい」

花丸「みんな凄いズラ、あっという間にアイドルらしくなってる」

梨子「ね、みんな頑張ってるよね♪」

千歌「あ゛ー……私がセンターなのに私が一番間違えてるー」グデェ

曜「でも、毎日どんどん改善してるから大丈夫だよ!」

千歌「そーだけどさー、曜ちゃんは運動神経良いの知ってるから分かるけど、善子ちゃんもルビィちゃんも鞠莉先輩も上達早すぎない?」

鞠莉「フフッ、私こう見えて色々スポーツはやって来てるのよ?」ドヤッ

ルビィ「ルビィは昔からアイドルのダンスとか真似してただけで……」

善子「ある程度動きが分かればそんなに難しく無いでしょ」

千歌「なんか酷いコンプレックスを抱えそうだ!」ガーン


ーーー

花丸「小原先輩は凄いなぁ、すぐこんな曲作れるんだもん」

梨子「……」

花丸「……桜内先輩?」

梨子「えっ?」

花丸「なんかぼーっとしてたけど大丈夫ですか?」

梨子「あぁ、ごめんね、歌詞を考えてたらちょっと」

花丸「確かにバラードって難しいズラ……」

梨子「あんまりネガティブ過ぎるのも良くないからね」

花丸「うーん……」

梨子「……」


ーーー

千歌「……」ソワソワ

曜「千歌ちゃん大丈夫?」

千歌「う、うんっ!」ソワソワ

梨子「えっと、この曲はイントロがかかったらこの順番で色を変えてもらえますか?」

むつ「曲中はずっとこの繰り返し?」

梨子「うん、ただサビで足元のスポットを点けるせいで分かりにくくなるから気を付けてください」

よしみ「りょーかい」

梨子「サビの始めと終わりは分かりやすい曲だけどその分ズレると目立っちゃうから注意してね」

いつき「責任重大だ……」

キィィィィン!!!

善子「うぎゃぁあ!?」

鞠莉「ノォォォ!?」

ルビィ「ひぃぃぃっ!?」


キィィィィン…ブツッ

曜「び、びっくりしたぁ……」

千歌「ぅぁぁ……まだきーんってしてる」フラフラ

鞠莉「ボリュームフルスロットルにしたみたいね……」

善子「ズラ丸……」

曜「マルちゃん相変わらず機械苦手だもんね……」

ルビィ「うん……大丈夫かなぁ」

梨子「と、とりあえずそろそろリハーサルしましょうか……」

千歌「おっけー、衣装はどうする?」

ルビィ「衣装の最終チェックもしたいから着てもらった方がいいかな」

鞠莉「じゃあすぐ着替えましょうか」

梨子「じゃあ着替え終わったらステージに上がってくれる?」

曜「はーい」

よしみ「じゃあ各自持ち場へ!」

むつ「ラジャー」

いつき「はーい」


ーーー

『あー、あー、こちらむつ、少しずつお客さんが来はじめてます、どうぞ』

曜「こちら曜、了解であります、どうぞ」

善子「なんでスマホで無線みたいなやり取りなのよ」

ルビィ「ぅゅ……」ソワソワ

鞠莉「ルビィちゃん大丈夫?」

ルビィ「今になって緊張してきちゃった……」オロオロ

千歌「……」

鞠莉「千歌っちも緊張してる?」

千歌「緊張っていうか……なんだろうこれ」

鞠莉「?」

曜「武者震いじゃない?」

鞠莉「武者?サムライ?」

曜「ワクワクし過ぎて落ち着かない感じかな、私も高飛び込みの大会の時とかいっつもソワソワしちゃって、でも怖いとか逃げたいってのは全然無くって、むしろ早くやりたいって」

千歌「そっか……こんな気持ち初めてだよ……」グッ

善子「いい話っぽいことしてるところ悪いけど、千歌先輩ニヤニヤし過ぎてキモイ……」

千歌「えっ!?」ガーン

鞠莉「ヨハネちゃん……それは酷いわよ」

善子「だってー」

ルビィ「……ぷっ♪」

曜「あ、ルビィちゃんが笑った」

ルビィ「だって本番前なのに、みんな自由だから」クスクス

鞠莉「ホント、マイペースよね~」

善子「先輩がそれ言うの?」


ppp

千歌「あ、むっちゃんから……開場するって」

曜「お客さん……どれくらいいるかな」

ルビィ「見に行くよって言ってくれる人は結構いたと思うけど……」

鞠莉「鬼が出るか蛇が出るか……」

善子「武者震い知らない癖になんでそんな言葉知ってるのよ……」

千歌「そーだ」

ルビィ「ん?」

千歌「あれやろう、あれ……円陣?」

鞠莉「いいわね」

曜「肩組もう肩!」

善子「そんな暑苦しいの嫌なんだけど……」

鞠莉「掛け声は?」

ルビィ「えいえいおー、とか?」

善子「運動会みたい……」

曜「µ’sはなんかやってたの?」

千歌「えっと……知らない……」ガクッ

ルビィ「あんまりそういう裏の話する人いないよね……」

曜「出航~とか」

鞠莉「イッツァショータイム♪とかは?」

善子「それでいいんじゃない?」

千歌「グループ名とか言うものじゃないの?Aqours……なんとかー!って」

鞠莉「そういもの?」

善子「さぁ……」

ルビィ「アクアー、イッツショータイム……って語呂が悪い気が……」

千歌「うーん……あ、じゃあサンシャインとか!」

善子「いや、なんで」


千歌「なんとなく!他と被らなさそうだし!」

鞠莉「随分フワッとした理由ね」

曜「まぁオリジナリティー溢れるって言えば溢れるかもね」

ルビィ「うんっ」

善子「じゃあもうそれでいいわ」

千歌「よしっ!じゃあ、みんな手を重ねよう!1っ!」

曜「えっ数字?えっと2っ!」

ルビィ「えっえっ、3っ!」

鞠莉「4っ♪」

善子「5っ」

千歌「アクアー……」

5人「サンシャイーン!」

善子「……やっぱり意味分からないわよこれ」

鞠莉「まぁシャイニーだし☆ノープロブレムよ♪」

ppp

千歌「梨子ちゃんだ……みんな、始まるよ!」


ーーー

梨子「御来場の皆様、大変長らくお待たせいたしました、まもなく浦の星女学院スクールアイドル、Aqoursのステージが開演いたします、開演後は足元が暗くなりますのでお気をつけください、また携帯電話、スマートフォンの電源はお切りいただくようお願いたします」

花丸「……」

梨子「ふぅ……緊張した……」

花丸「凄いズラ、アナウンサーさんみたい、さすが標準語……」

梨子「いや……読んでるだけだから……」

花丸「それが全然違うんだなぁ、オラには出来ない」

梨子「方言も可愛いと思うけど……じゃあマルちゃん始めよっか、カメラOK」

花丸「はいっ、ステージライトオン!」ポチッ

梨子「音楽スタート!」ポチッ

花丸「開幕ズラ~♪」ポチッ

~♪~♪

梨子「始まった……」

花丸「お客さんもちゃんと来て良かった……」

梨子「……」ズキッ

花丸「ルビィちゃん凄い嬉しそう……」

梨子「……」

花丸「善子ちゃんも何だかんだいって楽しそうズラ」

梨子「……」

花丸「……桜内先輩?」

梨子「……えっ?」

花丸「なんか……怖い顔してたけど……何かありました?」

梨子「えっ……いや……ごめんなさい……別にそういうのじゃ……」


花丸「あ、いやマルこそごめんなさい、変なこと聞いて」

梨子「ううん……ごめんね……」

花丸「……」

梨子「あ、サビ入るよ、スポットよし……バッチリだね」

花丸「あ、うんっ、良かったズラ」

梨子「……」ズキッ

ーーこの込み上げる気持ちはなんだろうか?
ーー憧れ、それとも記憶の底に沈んだ感情?
ーーならどうしてこんなにも
ーー突き刺すように痛いのか


ーーー

~♪~♪

ダイヤ「……」


ダイヤ「……そんなところで隠れてないで堂々と見ればいいのでは?果南さん」

果南「……」


果南「……ダイヤは平気なの?」

ダイヤ「正直な所、複雑な気持ちではあります」

果南「私は……」

ダイヤ「ですが」

果南「……?」

ダイヤ「私のつまらない感情でルビィの晴れ舞台から目を逸らしたくはないんです」


果南「……」

ダイヤ「ルビィだけではありませんわ、千歌さんや曜さんだってそうですし、裏方ではありますが花丸さんだっているんです」

果南「……」

ダイヤ「いつも私達の後ろを走り回ってたルビィ達が、自分達だけで何かを成し遂げようとしてる、姉として先輩として、生徒会長として、見届ける義務が私にはあると思ってます」

果南「……」

ダイヤ「……もちろん」

果南「……」

ダイヤ「鞠莉さんと特に仲の良かった貴女がそんな簡単に割り切れたり出来ないのも分かってはいますが」

果南「……」

ダイヤ「あの子達の眩しい姿を少しくらい見たってバチは当たりませんわ」

果南「……」


ーーー

千歌「……♪」ハァハァ

パチパチパチ♪
ワーワーワー♪

千歌「っ……」

曜「千歌ちゃん♪」

千歌「うん……!」

千歌「皆さん!今日は来てくれてありがとうございました!」

4人「ありがとうございました!」

千歌「えっと、改めまして私達、スクールアイドルのAqoursです!」

チカチャーン
ヨカッタヨー

千歌「あはは、ありがとうございます!」

曜「皆さん知ってると思いますが、私達のいるこの浦の星女学院は廃校が決定しました」

千歌「おばさんやおばあちゃんも通ったこの学校が私達の代で無くなってしまうのが……悔しくて悔しくてたまりません……」グッ…

曜「……」

鞠莉「……」

ルビィ「で、でも!……えっとだからこそ……ここに私達の学校があったんだよってみんなに知ってほしくて……!」

善子「……」

千歌「うん……だから!私達はスクールアイドルを始めました!」

……


千歌「全国で有名になんて簡単になれないし、もしかしたら県内の人にすら覚えてもらえないかもしれないけど……でも!」

曜「私達はここにいるよって、ここにいたんだよって!誰かに知ってもらいたくて!」

千歌「なんの取得もない私だけど、この町が好きだから!みんながいるこの学校が好きだから!」

千歌「だから……」

ルビィ「千歌ちゃん……」

千歌「私は……私達は歌を歌っていきます!なので!応援よろしくお願いします!」

4人「お願いします!」

パチパチ…
パチパチパチ
パチパチパチ

千歌「っ……!」

ガンバレー
マタライブヤッテネー
シンセキニジマンシトクゾー

曜「ぁ……!」

千歌「頑張ります!今日は本当にありがとうございましたっ!」


ーーー

花丸「よ、よがっだずらぁぁ」ズビッ

ルビィ「マルちゃん!?」

善子「えぇ……顔ぐっしゃぐしゃ……まるで魔物じゃない」

鞠莉「……」フゥ…

梨子「お疲れ様でした」

鞠莉「お疲れ様♪」

梨子「ステージ凄かったです♪」

鞠莉「フフッ、このマリーがいるんだから当たり前よ♡」

千歌「梨子ちゃーん!」ダキッ

梨子「きゃっ!?」

千歌「終わったぁ」グデェ

梨子「お、重い……んだけど……」ググッ

曜「ほら、千歌ちゃん、汗くらい拭いて」


花丸「ひぐっ、ぢかぢゃんのえんじぇぢゅ凄がっだじゅら……」ズビッ

曜「おぉ!?どうしたのマルちゃん!?」

梨子「最後のMCで感極まったみたい……」

千歌「ありがとうマルちゃん、梨子ちゃん」

梨子「私達は手伝っただけだから、ステージに上がったみんなの結果だよ」

千歌「ううん、梨子ちゃんもマルちゃんもいなかったら何も出来なかった」

鞠莉「……」

千歌「むっちゃん達もだし、来てくれたみんなもいなかったら何も無かった」

善子「……」

千歌「みんながいてくれたから歌えたんだよ」

ルビィ「……」

千歌「だからみんなありがとう、私のスクールアイドルをやりたいっていう夢に付き合ってくれて」

曜「千歌ちゃん」

千歌「ん?」

曜「それを言うのはこれから先ぜーんぶやり切ってからだよ」

善子「そうそう、これから……えっとなんだっけ、なんとかの大会」

ルビィ「善子ちゃん……まずは夏のラブライブを目指して」

鞠莉「夢はビッグにチャンピオンよー♪」

千歌「ラブライブ……うんっ♪よしっ、じゃあまた円陣組もう!」

曜「ほいきた!」

梨子「えっ何?」

鞠莉「いいから合わせて♪」

善子「あぁ……この体育会系なノリにいつ慣れるか……」

ルビィ「みんなでサンシャイーン♪って言うんだよ♪」

花丸「なんでサンシャイン?」

千歌「なんでもいいの!いくよっ!1っ!」

曜「2っ!」

ルビィ「3っ!」

鞠莉「4っ♪」

善子「5っ」

梨子「えっ?えっと6っ?」

花丸「じゃあ7っ!」

千歌「目指せラブライブ!アクアー!」

7人「サンシャイーーン!!」

今回はここまで


ーーー

千歌「リーダー?」

ルビィ「うん、リーダー」

千歌「私が?」

曜「むしろ他に誰がいるの?」

千歌「私でいいの?」

鞠莉「千歌っちじゃなきゃ嫌よ♪」

善子「誰でもいいわよ」

千歌「じゃあ……」

カタカタカタ

ルビィ「あとは全員の名前を書いて……登録っ♪」

カチッ

千歌「お、おおっ♪……って4000位!?ランク低っ!?」

鞠莉「たった今エントリーしたんだから当たり前じゃない」

千歌「現実は厳しいねー……」ガックリ

曜「これでどうすればラブライブに行けるの?」

ルビィ「参加資格は2つで、公式サイトに登録して活動中であること、オリジナルの楽曲があること」

曜「それだけ?」

ルビィ「うん、あとは時期が来れば各予選の案内が届くから、エントリーして出場して勝ち進んでいけば最終的に本戦に出られるんだ」

善子「じゃあ何のためのランキング形式よ」

ルビィ「うーん、例えば私達のライブって内浦の人しか見てないよね?でもここに動画をアップすれば他の地域の人も見れるようになって」

花丸「ふむふむ」

ルビィ「例えばこのグループみたいに今のイチオシみたいにピックアップされたり、他にもランキング上昇率とか色々な点で注目されてライブのお誘いを受けたりするようになるの」

鞠莉「つまり自分達が全国でどれだけフューチャーされてるか一目で分かるってことね?」

ルビィ「うん、そうやって沢山の支持を集めることがラブライブに出場するのに大切なの」

千歌「ちなみに今の1位のグループは!?」

ルビィ「えっ……えっと……」チラッ

梨子「……?」

ルビィ「今の1位は……このν-tralって2人組です……」

曜「にゅーとらるって読むんだ……」

千歌「この2人、音ノーーあっ」

梨子「……!」

ルビィ「……」

千歌「す、凄いんだねー、投票数も2位のグループより全然多いや♪私達じゃこんなに投票してもらえないねー、あはは……」

鞠莉「……千歌っち」

千歌「ご、ごめんなさい……そうだ!動画!動画アップしなきゃ!」


ルビィ「あっ、そうだね、善子ちゃんお願い」

善子「はいはい、ちょっと待ってよね」

鞠莉「自分達の踊ってる姿を見るってなんか不思議よね」

曜「確かに、練習でチェックするのとはまた違うからね」

善子「お待たせ、とりあえず歓声とかは出来るだけ小さくしたけど……音源が別にあるわけじゃないし、私もそこまで知識ないから出来る事は限られてるんだけど、こんな感じ」

千歌「凄い……」

花丸「善子ちゃん凄いズラ……マルには一生出来そうにないや……」


善子「編集ソフトがあれば誰でも出来るわよ、公式のガイドラインだとエフェクトとかあんまりかけられないから、今後は別でレコーディングして被せるって手もあるけど、どうする?」

曜「何か変わるの?」

ルビィ「踊りながら歌ってるから声量とかリズムが崩れちゃう事もあるし、アイドルっていっても素人だから、それなら別で歌だけ撮って被せてしまった方が綺麗には出来ると思うけど」

鞠莉「でもそれだとライブ感は薄れそうよねー」

ルビィ「うん、プロみたいに綺麗に編集出来れば良いんだけど、そうもいかないから……」

善子「頑張ってはみるけどね」

千歌「いいんじゃないかな?このままで」

曜「私もそう思う、ありのままの私達を見てもらおうよ」

ルビィ「うんっ♪」

善子「分かったわ、じゃあアップするわよ」

千歌「うんっ!」


ーーー

曜「最近果南ちゃんのところ寄ってなくない?」

千歌「うーん……なんとなく顔合わせ辛くて……」

曜「まぁ……鞠莉先輩のことがあるからね」

千歌「んー……どうしたらいいのかなぁ、どうしたらいいと思う?梨子ちゃん」

梨子「えっ?……うーん、私には想像もつかないかな……」

千歌「だよねー……」

曜「いっそ次のライブ誘ってみる?」

千歌「そのほうがいいかなぁ……その前に次のライブ決めなきゃだけど」

曜「じゃあまた明日考えよっか」

梨子「そうね」


ーーー

鞠莉「ーー!ーー!」

千歌「お待たせー……って鞠莉先輩外で何してるの?」

善子「さぁ、電話で喧嘩してるみたい」

花丸「ちらっと聞こえたけど英語で喋ってたから何言ってるかさっぱり」

ルビィ「ぅゅ……」

曜「プライベートなことかもしれないしそっとしとこうよ」

梨子「そうね、今日のランキングはどうだった?」

ルビィ「うん、少し上がってたけどかなり落ち着いてきちゃった気はするかな」

千歌「ホントだ、2つしか上がってないや」

曜「やっぱり早く新曲と大きなライブしなきゃダメかー」

梨子「そうね、全国にこれだけスクールアイドルがいるんだからどんどん新しいものを出していかないとすぐ埋もれちゃうもんね」

千歌「そだねー、イベントには呼んでもらえるけどほとんど身内みたいなものだし新曲もないしね」ウーン…


善子「やっぱり沼津でやるのが一番じゃないの?」

花丸「でも沼津の高校にもスクールアイドルはいるんだよね?怒られたりしないかな?」

ルビィ「別に縄張り争いしてるわけじゃないからそんなことはないけど……アウェーなのは間違いないかな」

ガラッ

鞠莉「みんなごめんなさい、ちょっと急用で今日は帰るわ」

千歌「あ、はい」

曜「ばいばーい……」

ルビィ「……」ビクビク

善子「……」

梨子「……凄い怒ってたね」

花丸「いつもニコニコしてる分余計に怖いズラ……」

曜「と、とりあえず次のライブ開場の候補とか色々決めよー」


ーーー

ルビィ「……?」

ルビィ「お父さんと……誰か来てるのかな?」

ルビィ「……」ソローリ

ルビィ「……外国人?」

「何してるのルビィ」

ルビィ「っ!?」バッ

ダイヤ「そんなところで盗み聞きなんてしてないで早く寝なさい」

ルビィ「お、お姉ちゃん……はい……」オズオズ

ダイヤ「……」


ーーー

鞠莉「ハーイ♪新曲お待たせー♪」

曜「あ、鞠莉先輩」

千歌「おおっ!さすが鞠莉先輩!」

梨子「最近何かあったみたいですけど大丈夫ですか?」

鞠莉「ノープロブレム♪心配させちゃってごめんなさい」

梨子「何か力になれる事があったら言ってくださいね?」

鞠莉「ありがと♪もしもの時は頼りにしてるわ♪」

花丸「ルビィちゃん、新曲どう?」

ルビィ「うんっ、今回も凄くいいと思う♪なんだか元気になれそうな曲だよ♪」

曜「私も聴きたーい♪」


善子「これで一つ条件はクリアしたわね」

梨子「あとはライブ開場ね」

ルビィ「それなんだけどね、実はちょっと考えてて」

千歌「いい候補あった?」

ルビィ「ううん、ライブじゃなくてね、PVもいいんじゃないかなぁって」

花丸「ぴーぶい?」

鞠莉「プローモーションビデオよ、ミュージックビデオとも言うわね」

ルビィ「うん、動画編集とか撮影の仕方とかライブと違った技術が必要だけど、会場も観客もなしで出来るし……例えばこのグループみたいにPVの出来次第で注目もしてもらえるかなぁって」

善子「その辺はまぁ頑張るわ」

ルビィ「撮り直しとかも出来るから一つの方法としてはいいんじゃないかな?」

千歌「いいね!PVやってみようよ!」

花丸「じゃ、じゃあ早く歌詞を書かないと」

梨子「ふふっ、そうね♪」


ーーー

千歌「うわっ、踊りにくいっ」ザッザッ

曜「一回合わせてみよっか、梨子ちゃーん」

梨子「はーい、音楽……スタートー」ポチッ

花丸「……」

梨子「……」

花丸「流石のマルにもこれが酷い出来なのは分かるズラ……」

梨子「ダンスも衣装も砂浜で踊ることを考慮してなかったみたいね……ストップストーップ!」

善子「なんで砂浜で踊るのにヒール高いのよー!」

ルビィ「はぅ……ごめんなさい……」

鞠莉「と言うか、どこで踊るか先にイメージするべきだったわね……」

曜「場所から考え直しかー」

千歌「内浦にいながら浜で踊れないなんて内浦民失格だー!」ウガー


ーーー

千歌「こんな感じで鞠莉先輩まで順番に映せる?」

梨子「やってみるけど一回で成功しないかも……」

千歌「それは仕方ないよ」

善子「ねぇマリー、いいカメラ持ってないの?お金持ちでしょ?」

花丸「そんな直球で言っちゃうの!?」

鞠莉「うーん、あるにはあると思うけど借りれたところで使い方が分からないと思うわよ?」

善子「あー、確かに」

ルビィ「ここのカットも一緒に撮ったほうがいいかも」

千歌「背景はどうするの?」

ルビィ「こうやってちょっと下から撮ったら映り込みはないかなって」


曜「なんかルビィちゃんスカート覗いてるみたい」

ルビィ「……違う場所で撮りましょう」ムッ

曜「うそうそっ!冗談だよー」アワアワ

ルビィ「むー」プクゥ

曜「もー拗ねないでー♪」ナデナデ

梨子「ふふっ、じゃあそろそろ始めましょうか」

千歌「はーい、鞠莉先輩、善子ちゃん、マルちゃん始めるよー」

鞠莉「オッケー♪」

梨子「えっと……ここからこんな感じ……ん?」

花丸「ん?」

梨子「ちょっとストップ」

千歌「どうかした?」

善子「バッテリーでも切れたの?」


梨子「そうじゃなくてあっち」

曜「んー?あ、人がいる」

鞠莉「……」

千歌「ちょっとだけ離れてもらえないか聞いてくる」ダッ

梨子「あ、千歌さん」

鞠莉「あれは……多分無理ね、仕事中っぽいから」

花丸「残念、日を改めないとだね」

梨子「うん……」

千歌「ごめーん、やっぱり無理だってー」

曜「あちゃー」

善子「ていうか、こんなところで何してるのよ」

ルビィ「他の人から見たらルビィ達もそう思われると思うけど……」

鞠莉「……仕方ないわ、帰りましょう」

千歌「はーい」

梨子「……」


ーーー

善子「……」カチカチッ

善子「あっ……もう……えっと……」カチカチッ

曜「ほいっ、善子ちゃんの分」コトッ

善子「ありがとう」カチカチッ

ルビィ「何かお手伝い出来たらいいんだけどなぁ」

千歌「仕方ないよー、私達さっぱりだもん」

花丸「次の曲の相談でもする?」

曜「そうは言っても作曲の鞠莉先輩がいないんじゃねー」

梨子「お待たせー」

千歌「どうだった?」

梨子「はい、音楽室の鍵」

曜「おっ、良かったー、やること見つかった」

梨子「まだ鞠莉さんから連絡ないの?」

曜「うん」

ルビィ「どうしたんだろうね」


千歌「……」

花丸「とりあえず音楽室が使えるなら歌の練習が出来るから先に始めるズラ」

曜「うんっ」

花丸「一層ビシバシ厳しくやるから覚悟するように」キリッ

ルビィ「えっ!?」

曜「マルちゃん怖っ」

花丸「さぁキビキビ歩くのだー」

ルビィ「キャラが変わってる……」ガーン

曜「千歌ちゃん、行くよー」

千歌「あ、うんっ」

梨子「私は部室で待ってるね、お手伝い出来ることもないだろうし」

善子「私もー、もうちょっとしてから行くわ」カチカチッ

千歌「分かったー」

梨子「……」


善子「……もうちょい?……ん……やっぱ無し……」カチカチッ

梨子「……」

善子「……」カチカチッ

梨子「なんか意外だね」

善子「何が?」カチカチッ

梨子「よっちゃん、最初あんまりやる気無さそうだったから」

善子「まぁね、リリーに近付くためだけに入ったし、こんなものかな」カチカチッ

梨子「楽しい?」

善子「そうね、楽しくないって言ったら嘘になるわ」カチカチッ

梨子「なら良かった」


善子「リリーは?」カチカチッ

梨子「もちろん楽しいよ、自分が普通じゃないって事を忘れそうなくらい」

善子「ダメよ、闇の眷属としてのプライドは常に高めておきなさい、いつラグナロクが始まるのか分からないのよ!」カチカチッ

梨子「……」

善子「……」カチカチッ

梨子「よ、よく聞こえなかったなー……」

善子「返しが下手すぎるでしょ!?」ガーン

梨子「ご、ごめんなさい……」シュン

善子「……あのなんだっけ、1位のグループ」カチカチッ

梨子「……」ピクッ

善子「にゅーなんとか、リリーの同級生でしょ?」カチカチッ

梨子「……そのはず」

善子「ふーん」カチカチッ

梨子「……」

善子「記憶が無くなる前と後じゃ性格とかも違うの?」カチカチッ

梨子「……さぁ、お母さんは私は私だって言ってくれてたけど……」

善子「……つまり根っこは変わらない……と、あ、間違えた」カチカチッ

梨子「そう……なのかな」

善子「つまり、魂は継続し続ける!例え記憶がなくとも私の前世が堕天使である証明ね!」ガタッ

梨子「……」

善子「……」

梨子「……えっ?」

善子「リアクション薄っ!?」

梨子「こ、これもだめー……?」

善子「まぁいいわ、さて今日はこのくらいにしてズラ丸達と合流しようかな」ノビー

梨子「編集終わりそう?」

善子「どうかしら、ただずっとパソコンとにらめっこしてたらせっかく柔らかくなり始めた身体がまた硬くなっちゃいそうだし」


梨子「全部任せちゃってごめんね」

善子「いいわよ、出来る人がやればいいんだから、その分ダンス考えるのは2人に任せちゃってるし、歌詞もリリー達に丸投げだし」

梨子「それもそうなのかな」

善子「そうなの、リリーはどうする?一緒に行く?」

梨子「ううん、鞠莉さんが来るかもだから掃除でもしながら待ってる」

善子「そ、じゃ」

梨子「頑張ってね」

善子「あ、そうそうマリーのことだけど」

梨子「ん?」

善子「あんまり良くないことになるかもねー」

梨子「どういう、事?」

善子「勘よ、ただヨハネって不幸体質なせいか悪い事には勘がよく働くのよねー」

梨子「……」

一旦ここまで

一旦ここまで

力抜けよ


ーーー

千歌「おっまたせー」

曜「PVの反響はどう?」

ルビィ「それが……」

花丸「……」

梨子「あれ……?」

曜「も、もしかして……」

鞠莉「ヨハネちゃん、見せてあげて」

善子「ん」スッ

ようちかりこ「……」

千歌「……県内上昇率……」

曜「に、2位!?」

梨子「東海エリアピックアップアイドルにも入ってる!?」


ルビィ「凄いでしょ!2日で600以上ランクが上がってるの!」

花丸「一躍有名人ズラ~♪」

善子「皆、ヨハネの魅力に気付いてしまったようね……!」

曜「コメントもいっぱい来てる!」

梨子「頑張った甲斐あったね♪」

鞠莉「ランクはまだまだ下の方だけど少しラブライブが見えて来たんじゃない?」

千歌「うんっ!!」


ーーー

志満「千歌ちゃん、動画見たわよー♪」

千歌「志満姉、チェックしてくれてたの?」

志満「可愛い妹が頑張ってるんだもの、当たり前じゃない」

美渡「千歌のくせに中々いい調子みたいじゃん」

千歌「美渡姉、一言余計だよー」ムスッ

美渡「まぁまぁ、珍しく美渡お姉様が千歌に良いものをあげようじゃないか、はいプリン」

千歌「くれるの?ってこれ元々私のじゃんっ!?」ガーン


美渡「はははっ、何かの大会で入賞でも出来たらほんとになんかあげるから頑張りなー」

千歌「もー全っ然期待出来ないんですけどー」

志満「まぁまぁ、ああ見えて美渡も千歌ちゃんの頑張りには期待してるのよ?」

千歌「どこが!?」

志満「美渡は素直じゃないから~♪」

千歌「むぅ……」

志満「千歌ちゃん」

千歌「ん?」

志満「内浦や学校の為に頑張ってくれてるんだと思うけど、頑張り過ぎて迷子になっちゃだめよ?」

千歌「う、うん……?」


ーーー

千歌「……東京の大会に……招待!?」

曜「……マジか」

ルビィ「どどどどうしたらいいの!?」

鞠莉「思わぬ展開ねー」

善子「今の私達には荷が重くない?」

花丸「オラにはどうすればいいか分からないー!」

梨子「……」

千歌「行こう!」

曜「東京だよ!?東京!」

ルビィ「ととととととーきょー」アワワワ

花丸「大都会……怖いズラっ」

鞠莉「ステップアップするには絶好のチャンスだけど……」


善子「……各エリアのピックアップと比べたら私達最底辺よ?」

梨子「……」

千歌「だから行こうよ!」

善子「腕試し的なつもり?」

曜「面白そうだとは思うけど……」

ルビィ「どうしよう……東京と言えば……あのグループにあのユニットが……秋葉原にも行ってみたい……けど怖い……」プルプル

花丸「東京では喋らないようにしなきゃ……田舎者だと思われたら笑われるズラ……」ガタガタ

鞠莉「どんな結果でも受け入れる覚悟はある?」

千歌「うん、まだ始めて数ヶ月の私達が結果を残せるなんて思ってない、だからむしろ見てみたい!全国のスクールアイドルを!」グッ

曜「……はぁ、こうなったらテコでも動かないや」ヤレヤレ

善子「ま、いざとなればこのヨハネが!」ギランッ

ルビィ「ま、マルちゃん、ルビィ達もが、頑張ろう!」

花丸「う、うんっ!」


梨子「……」

千歌「……梨子ちゃん」

梨子「……」

千歌「梨子ちゃーん」

梨子「えっ?あ、どうしたの?」

千歌「梨子ちゃんはどうする?」

梨子「どうって、部員なんだからもちろん行くよ?」

千歌「無理してない?」

梨子「大丈夫♪」

千歌「ありがとう、私のワガママにいつも付き合ってくれて」

梨子「なんでそんなに改まって言うのよ、もう」クスクス

千歌「あはは、よし!じゃあみんな!ラブライブに向けて、の……こういう時なんて言うんだっけ?ほら、なんとかせんってやつ!」

善子「……前哨戦?」

千歌「それっ!ぜんしょーせんとして東京行くぞー!」

「おー!」


ーーー

鞠莉「出口はこっちね」

ルビィ「……ぅゅ……」オロオロ

花丸「……」ガタガタ

千歌「おおぅ……これがとーきょーしてぃー……」

曜「ライブの時より人多くない!?」

梨子「とりあえず荷物を置きにチェックインだけ済ましに行こっか」

鞠莉「そうね」

善子「ほら、置いてくわよー」

千歌「なんで平気なの!?」

ルビィ「マルちゃん、あの3人から離れちゃだめだよ」ガタガタ

花丸「うんっ」オロオロ


曜「右も左も人人人……ぅあ、人酔いしてきた……」ガクッ

ルビィ「音がいっぱいだよぉ……」

花丸「目がちかちかするズラ……」

千歌「曜ちゃん曜ちゃん!」バシバシッ

曜「ぅぅ、どうしたの千歌ちゃん」トボトボ

千歌「今もμ'sのグッズが売ってる!」

鞠莉「本当に凄い人気なのねー」

善子「凄いっ……魂の真名が顕現してる者がこんなにも!」ギランッ

梨子「……貴女達……これじゃいつまで経っても宿に着かないんだけど……」ガクッ


ーーー

鞠莉「さーて、大会は明日、今はまだお昼前♪これからどうする?」

千歌「はいはーい」

鞠莉「はい、千歌っち」

千歌「おと、じゃなくて……えっと……神田明神!」

曜「神田明神?」

ルビィ「確かμ's縁の神社だよね?」

千歌「うんっ、明日の大会のこともお参りしたいし!」

梨子「お昼はどうする?」

善子「途中で適当なところでいいんじゃないの?」


花丸「都会だからきっとどこでも美味しいんだろうなぁ……でも高そう……」

鞠莉「じゃあ他に候補もないみたいだしとりあえずそこにいきましょー♪」

梨子「……」

曜「梨子ちゃん大丈夫?」

梨子「え?」

曜「やっぱり、気まずかったりするんじゃない?」

梨子「ありがとう、私は大丈夫だから」

曜「しんどくなったら無理しないでちゃんと言ってね?」

梨子「うん♪」


ーーー

善子「ん?どっち?」

鞠莉「逆よ逆」

善子「もう、あっちもこっちもビルばっかりで分かりにくいのよ」

ルビィ「もうすぐで着くと思うけど先にご飯食べちゃう?」

花丸「すまーとほんで地図も見れるなんてルビィちゃん凄いズラ」

ルビィ「そんなに難しいことはしてないんだけど……」

曜「どこに入る?」

梨子「……」ピタッ

千歌「あそこのお蕎麦屋さんにする?」

梨子「……」ズキッ

梨子「……?」

ルビィ「……?梨子先輩、ここ和菓子屋さんみたいですよ?」

梨子「えっ?あ、ほんとだ、ちゃんと見なきゃだめだね」アハハ…

ルビィ「……?」

ルビィ「……穂むら……?」


ーーー

千歌「着いたー!」

善子「……長い階段しか見えないけど」

鞠莉「この先にあるってことかしら?」

ルビィ「ここはμ'sが普段の練習場所に使ってたらしいんです」

花丸「こんな階段で練習してたの!?」

曜「私達もやってみる?」

善子「やるって何をよ」

千歌「走るっ!」ダッ

曜「だよね!」ダッ

善子「うそでしょー……」


ルビィ「ルビィもっ!」ダッ

鞠莉「ほらほら、置いてっちゃうわよー♪」ダッ

善子「もー分かったわよー!」ダッ

花丸「行っちゃった……」

梨子「……」

花丸「オラ達も行ったほうがいいのかな?」

梨子「……」

花丸「桜内先輩?」

梨子「あっ、うんそうだね、せっかくだから行ってみよっか」

花丸「が、頑張るズラっ!」ダッ

梨子「……」ダッ

ーーー

千歌「ゼェゼェ……」ベチャァ

曜「くぅぅ……μ's凄いなぁ」ハァハァ

ルビィ「……」チーン

善子「はぁはぁ……食べたばっかりにやる運動じゃないわよこれ……」ヨロヨロ

鞠莉「流石に……伝説のスクールアイドルは格が違うわね……」ハァハァ

花丸「足、あがら……ない……」ヨロヨロ

梨子「はぁはぁ……」

千歌「これくらい……へっちゃらで登れないと……ラブライブで優勝なんて、夢のまた夢なのかな……」


曜「でも、多分μ'sも最初から登れたわけじゃないんじゃないかな?」

鞠莉「そうね……μ'sだって元々普通のスクールガールだったんだもの」

ルビィ「……」ベチャァ

善子「お腹痛くなってきた……」

花丸「マルには無理ズラ……」ベチャァ

梨子「……」

千歌「そう、だよね……よしっ!じゃあお参りしよう!」プルプル

曜「千歌ちゃん膝が笑ってるよ……」

千歌「か、肩を貸してください……」


ーーー

善子「時間まだあるけどどうする?」

鞠莉「秋葉原まで戻って観光でもする?」

千歌「……」

曜「どこか行きたいところある?」

千歌「うーん、秋葉原でいいんじゃないかな」

ルビィ「次は頑張ろうねマルちゃん」

花丸「うんっ!分かってれば何とかなる!」

梨子「……」

鞠莉「梨子っちもそれでいい?」

梨子「千歌さん」

千歌「ん?」

梨子「私に遠慮しなくていいよ」

千歌「……なんのことかな?」

鞠莉「……?」


梨子「見てみたいんじゃない?……音ノ木坂」

千歌「……」

善子「おとのきざかってなに?」ヒソヒソ

曜「μ'sの母校で梨子ちゃんが浦の星に来る前に行ってた学校」ヒソヒソ

梨子「私は近くで待ってるから、見ておいでよ」

鞠莉「梨子っちは行かないの?」

梨子「うん……私の事を知ってる人に会うのはちょっとまだ……」

千歌「……いいの?」

梨子「うん、私のせいで我慢させるのは申し訳ないし」

千歌「私はそんなつもりじゃなかったけど……」

梨子「でも一度見ておきたいんでしょ?」

千歌「……ありがとう!」


梨子「みんなはどうする?」

ルビィ「私も、見に行きたいかな」

花丸「ちょっと気になるズラ……」

曜「私も!μ'sが救った学校だし、梨子ちゃんのいた学校でもあるから」

千歌「じゃあちょっと行ってくる!」

梨子「うん♪」

鞠莉「いってらっしゃーい」

善子「どこか適当なお店にでも入って待っておきましょ」

梨子「2人はいいの?」

善子「私は別に、μ'sに憧れてるわけでもないし」

鞠莉「ミートゥー」

梨子「そっか、じゃあみんなが戻って来るまでお茶でもしてよっか」


ーーー

千歌「なんかさ、こういうの合宿みたいでワクワクするね!」

曜「分かる!青春って感じだよね!」

ルビィ「家族以外とお泊まりってあんまりしたことないからなんか緊張しちゃう……」

花丸「オラも……」

鞠莉「さぁ!夜は長いわ!目一杯エンジョイしなきゃ!」

梨子「1日歩いてまだそんな元気あるのね……」

善子「リリーはリリーでおばあさんみたいなこと言うわね……」

千歌「よしっ!何しよっか!」

梨子「明日に備えて早く寝る」

曜「却下!他には?」

梨子「却下って……」ガックリ


鞠莉「女子が集まって夜することなんて一つしかないでしょ♪」

ルビまる「?」

鞠莉「イッツァ!ガールズトークタァァイム!」バーン

善子「えー……」

鞠莉「さぁ♪花も恥じらう年頃ガールなんだから恋バナの一つ二つあるでしょー?」ウキウキ

善子「ない」キッパリ

ルビィ「そ、そういうのはルビィ分かんないかな……」

花丸「本の中の話なら……」

千歌「曜ちゃんなんかある?」

曜「あると思う?」

梨子「記憶にありません」

鞠莉「……oh」


千歌「鞠莉先輩こそ留学先とかでなんかないんですかぁ?」

鞠莉「1日でも早く内浦に帰るために勉強漬けだった私にそんなロマンスがあると思ってるの?」

曜「いや初耳だし……」

善子「なんで恋バナなんてしようとしたのよ……」

鞠莉「じゃあ他に何かあるの?」

善子「正邪が入り乱れるこの魔都の闇深き刻に、ヨハネの導きに従い崇高なる悪魔召喚を行うべきよ」ギランッ

千歌「このお饅頭美味しい」

花丸「この穂むらってお店知ってる、檀家さんがたまに持ってきてくれる有名な老舗ズラ」

善子「聞きなさいよー!」クワッ

ルビィ「穂むら?」

善子「なんでそっちは聞いてるのよ!」


花丸「うん、ルビィちゃんも知ってる?」

ルビィ「ううん、でもどこかで……あ」

鞠莉「ん?」

ルビィ「お昼に神田明神に行く時に通り過ぎた和菓子屋さん、ほら、梨子先輩が見てたお店」

梨子「え?……あぁ、あのお店」

曜「へぇ、東京って新しいものばっかりかと思ってたけど有名な老舗もあるんだねー」

千歌「お土産これにしよーよ♪」

花丸「おばあちゃんここのお饅頭好きだから喜んでくれそう」

ルビィ「お姉ちゃんも喜んでくれるかなぁ」

曜「家の分でしょ?クラスのみんなにもあげなきゃ」

千歌「果南ちゃんにもお裾分けしたいしー……お小遣い大丈夫かな……」

鞠莉「……」

梨子「私達何しに来たか覚えてるのかしら……」

とりあえずここまで

でかみかんかわいい


ーーー

曜「でかっ!」

善子「これがアキバドームシティーホール、3000人収容だって」

花丸「三千!?Aqoursの最初のライブはえっと……」

鞠莉「146人よ」

曜「えっと……何倍?」

ルビィ「で、あっちがアキバドーム……!」

千歌「あれが……」

ルビィ「ラブライブ本戦の舞台……まさに聖地!」パシャパシャ

梨子「アキバ、ドーム……」

ルビィ「わぁぁ♪あれは九州で今大注目のスクールアイドル!あっ!あっちはν-tralと並ぶと言われる大阪のグループ!」キラキラ

鞠莉「どのグループも私達よりずっと格上ねー」


ルビィ「格上なんてものじゃないです……あの3人グループは去年冬の大会で本戦出場してますし、あっちのグループはラブライブ未参加なのに1桁ランクなんです」

曜「サメに囲まれたイワシの気分だね」

花丸「他にもっと例えるものなかったの……」

梨子「……」

千歌「で、なんで会場前にこんなにスクールアイドルいるの?」

善子「さぁ」

?「もしかして貴女達も招待グループですか?」

千歌「ほぇ?」

?「この大会は開場前にファンやグループ同士の野外交流会もやってるんです、もし参加グループなら控え室で衣装に着替えて一緒にどうですか?」

善子「あぁ、そうなのね」

花丸「ご親切にありがとうございます」ペコッ

?「それじゃ、今日はよろしくね」

?「……また会いましょう」チラッ

梨子「……?」


ルビィ「……!」パクパク

鞠莉「なんだか見たことある顔ね」

曜「どうしたのルビィちゃん、酸欠?」

ルビィ「にゅにゅにゅ……ν-tralですよ!」

千歌「えっ!?今のが!?」

鞠莉「どうりで……意外と私服だと気付かないものね……」

花丸「普通の親切な人だったズラ……」

ルビィ「気付いてよぅ!昨年の冬の優勝者なんだよっ!」

善子「言ってくれればよかったのに、まぁいいわ、私達も控え室行きましょ」ヤレヤレ

ルビィ「善子ちゃんあっさり過ぎるよー!」アワアワ

梨子「……」


ーーー

ルビィ「あわわ……」

鞠莉「ほら、ルビィちゃん♪リラックスリラックス♪」

ルビィ「りり、りらっくしゅ……」アワアワ

善子「流石にこんなに大勢の前で歌うのは勇気いるわね……」

千歌「……みんな始まるよ」

曜「ν-tralからなんだ」

鞠莉「オープニングも兼ねたエキシビションなのね」

ルビィ「わぁぁ……♪」

善子「……」

千歌「これが……1位」ギュッ

鞠莉「……」

善子「こんなのほとんどプロじゃないのよ……」

ルビィ「凄い……生で見れるなんて……」


曜「ねぇ千歌ちゃん」

千歌「なーに?」

曜「どんな気持ち?」

千歌「……ドキドキでワクワクで……怖い」

曜「私も」

鞠莉「気軽に目指せチャンピオンなんて言えなくなったわね」

善子「そもそも気軽に言っていいものではないでしょ」

ルビィ「……」

千歌「でも、嫌な気持ちじゃない」

曜「うんっ」

鞠莉「ベリーハードよ?♪」

善子「まぁ分かってたけど」

ルビィ「はいっ」

千歌「まずは今の私達を見てもらおう!それがどんな結果でも!」


ーーー

梨子「みんなお疲れ様」

花丸「全然負けてなかったよ」グッ

善子「とは言ってもねー……」

ルビィ「はぅ……」

鞠莉「40組中37位、同率最下位じゃねぇ……」

千歌「覚悟してたとはいえ、マルちゃんと梨子ちゃんの2票しか入ってないってどういう事ー!」

曜「まぁ、スクールアイドル始めて2ヵ月だし……」

善子「呼んでもらえただけでもありがたいと思うしかないわね」

千歌「そうだけどさぁ……」

梨子「まだまだこれからだよ」

花丸「うん、オラ達ももっと頑張るから!」

ルビィ「マルちゃん……」

曜「帰ったら反省会だー!」

鞠莉「それは明日でいいんじゃないの……?」


?「Aqoursの皆さん」

ルビィ「はい?……うわわわ!?」

?「今日はお疲れ様でした」

千歌「あっ、ν-tralの……お、お疲れ様でした!」

?「今日は楽しめましたか?」

曜「はいっ!」

善子「結果は惨敗だけどね」ボソッ

?「これから帰られるんですか?」

千歌「はい、そうですけど……」

?「もしお時間があれば少しお茶でもどうですか?」


鞠莉「お2人と……?」

?「はい」

ルビィ「行きますっ!」

花丸「ルビィちゃん!?」

ルビィ「あっ……」

?「ふふっ、じゃあ行きましょうか♪」

梨子「……」

曜「前回優勝者に声掛けられるなんてもしかしてもしかする!?」

鞠莉「多分……そっちじゃないわよ」


ーーー

?「改めて突然ですみません」

千歌「あ、いえ、ν-tralのお2人に誘ってもらえるなんて光栄です」

ルビィ「……」ドキドキ

?「そんなに畏まらなくていいですよ、同じ高校生なんですから」

曜「そうは言っても……」

?「そう言えば自己紹介がまだですね」


「音ノ木坂学院三年の高坂雪穂です」
「同じく三年の絢瀬亜里沙です」


梨子「……」


千歌「う、浦の星女学院二年の高海千歌ですっ」

曜「渡辺曜です」

ルビィ「一年の、くく、黒澤ルビィ……です……」

善子「ヨハーーじゃなくて津島善子」

鞠莉「私は三年の小原鞠莉よ」

花丸「国木田は、花丸です……」

梨子「……」

雪穂「……」

千歌「あ……」

梨子「……二年の桜内梨子です」

亜里沙「……」

善子「……気まずっ」ボソッ

雪穂「……」

曜「……」


雪穂「……元気そうでよかった」

梨子「……っ」

鞠莉「まぁ……知ってて当然よね……」

梨子「……覚えて、なくて……ごめんなさい」

亜里沙「梨子……」

雪穂「皆さんは梨子の……桜内さんの事情は?」

千歌「記憶喪失の事なら知ってます」

梨子「……」

雪穂「そっか……」

亜里沙「こんな形でまた梨子と会えるとは思ってなかったね」

善子「どういうこと?」


雪穂「……梨子は話した?」

梨子「……」フルフル

雪穂「……話してもいい?」

梨子「……」

千歌「……」

梨子「……はい」

亜里沙「……」

雪穂「……梨子はね、本当は私達と同じ三年でね」

千歌「それも知ってます」


雪穂「私達と一緒にスクールアイドルをしてたの」


千歌「えっ……」


鞠莉「……」

ルビィ「……」

善子「マジ?」

曜「初耳……」

梨子「……隠しててごめんなさい」

亜里沙「あんな事が無ければ、今頃梨子もν-tralの1人だったんです」

曜「あんな事?」

善子「リリーが記憶喪失になった原因の事故の事でしょ」

千歌「……」

雪穂「でもよかった」

梨子「……えっ」

雪穂「引っ越したって聞いた時は、もう会えないんじゃないかって思ってたの」

亜里沙「でもこうやってまたスクールアイドルとして会えた、立場は違うけどね」

梨子「……」

雪穂「梨子は何があっても梨子のままなんだって、ホッとしたよ」

梨子「……」

雪穂「皆さん、梨子のことよろしくお願いします」

千歌「は、はいっ!」

亜里沙「雪穂、そろそろ」

雪穂「そうだね、今日はお時間取らせてすみませんでした」

曜「あ、いえ」

ルビィ「こちらこそありがとうございました」

雪穂「じゃあね、梨子」

亜里沙「またね」

梨子「……はい」

鞠莉「……」

ルビィ「……」

善子「はぁー、なんか色々あって疲れたわ」

千歌「……さ、私達も帰ろうよ、内浦に」

曜「そうだね」


ーーー

曜「さて、さっそく昨日の反省会であります!」

善子「渡辺先輩ってほんと元気ねー……」

千歌「梨子ちゃんとマルちゃんは客席から見てどうだった?」

花丸「うーん……オラ、ダンスとかそういうのよく分からないからなんとも言えないズラ……」

鞠莉「やっぱり技術的な問題じゃないかしら?」

梨子「その点についてはどうしようもないと思います……」

千歌「なんで?」

梨子「……昨日の話聞いてた?」

千歌「梨子ちゃんは元スクールアイドルだった!」

梨子「いや、そうなんだけど……」

鞠莉「つまり、梨子っちが音ノ木坂にいた時からあの2人もスクールアイドルだったわけだから経験値がそもそも違い過ぎるのよね」

梨子「……うん」


ルビィ「他のグループも一年生の時からとか、中学生の頃からダンスの練習したりしてた人がほとんどだよね」

善子「あー……中学でダンス部とか流行ってたわね」

曜「なんで?」

ルビィ「一番はμ'sやA‐RISEの存在じゃないかな、ちょうどルビィ達が中学一年生の頃にラブライブが始まったから」

千歌「そだっけ?」

善子「それで憧れた子が高校入る前から練習してたって訳ね」

鞠莉「そうなると他の部分で補うしかないわよね」

曜「歌とか?」

花丸「それならマルがもっとビシバシ鍛えればいいから大丈夫」ニコッ

善子「目が笑ってないわよ……」

ルビィ「他の部分もどうかな……」

梨子「そうだね、歌唱力や知名度も長くやってる方がずっと有利なのには違いないから」


曜「じゃあどうしたらいいの!?」

千歌「完全に手詰まりだよー……」

ルビィ「……でもね」

鞠莉「ん?」

ルビィ「そういうのを全部ひっくり返せるのが本当のアイドルなんじゃないかな」

曜「どういう事?」

鞠莉「……μ'sね」

ルビィ「うん、μ'sってね一年しか活動してないんだ」

善子「えっ、いまだに名前聞くくらい有名なのに?」

ルビィ「うん、なのにその頃絶対的人気だったA‐RISEを超えて第2回の優勝者になったの」


鞠莉「まさにジーニアスね」

ルビィ「そうかもしれない……でもそれだけじゃないと思うの……多分」

千歌「μ'sかぁ……」

梨子「……」

千歌「あれ?」

花丸「どうしたの?」

千歌「μ'sが活動してたのが私が中二だった頃ってことは……」

曜「……?」

千歌「梨子ちゃんが音ノ木坂に入学した時ってμ'sのほとんどがまだ音ノ木坂にいたんじゃ……」

梨子「……そうなるかな」


ーーー

梨子「……」ガサガサ

梨子「……」ピッ

『ーー』
『ーー!』
『ーー♪ーー♪』

何度見たって実感の湧かない練習風景


梨子「……」


あの頃のままだと言われても
私自身がそれを理解出来ない

『ーー?』
『ーー!』
『ーー、ーー♪』

梨子「……」


画面の向こう側にいる『私』はどんな気持ちだったのだろうか


梨子「……」

梨子「……」ピッ

梨子「……はぁ」

梨子「……」


きっとあの頃憧れていたあの人達のことすら思い出せない『私』のどこがあの頃のままなのだろうか……


ーーー

志満「大変、のんびりお喋りしてたら遅くなっちゃった、美渡にまた小言言われちゃうわねー」イソイソ

「ーー」

志満「ん?もう閉園の時間よね……誰かいるのかしら」

「ーー」

志満「あれは……確か千歌ちゃんの……」

「無理を言ってーー」
「我々もーーだから、ーーしてるよ」
「ーーにありがとうございます」
「またーー連絡してくださいね」
「はいっ、では失礼します」

志満「……?」


ーーー

鞠莉「そう言えば、梨子っちが元スクールアイドルってバレたんだから隠す必要もないのよね?」

千歌「なにが?」

ルビィ「……」

梨子「まぁ……話したところで何も変わらないと思いますけど……」

曜「んー?」

鞠莉「あのね、私達が歌った曲、本当は私じゃなくて梨子っちが作った曲なの」

善子「えっ」

千歌「えええっ!?」ガタッ

花丸「どういう事ズラ?」

梨子「正確には私が記憶を失う前に作ってた曲なの……」

曜「じゃあ梨子ちゃん楽器出来るの?」

梨子「元々ピアノをやってたみたいなんだけど……今は流石に……楽譜も読めないし」


千歌「全然知らなかった……」

鞠莉「ふふっ♪ルビィちゃんは気付いてたみたいだけど?」

曜「えっなんで!?」

ルビィ「ぁぅ……」チラッ

梨子「もう全部話しても大丈夫だよ?」

ルビィ「じゃあ……実はこれ」

善子「動画?」

千歌「音ノ木坂学院、アイドル研究部……一年生グループ……絢瀬亜里沙、高坂雪穂……」

曜「……桜内梨子」

ルビィ「二年前、まだ入学して間もない頃……ν-tralとして活動するずっと前の動画です」

千歌「この……ナナっていうもう1人の人は?」

梨子「……分からないの、当時は一緒にスクールアイドルとして活動するつもりだったみたいだけど……」


ルビィ「それで下に……」

千歌「作曲、桜内梨子……ほんとだ……」

梨子「その時に作ってた楽譜がいっぱいあってね、読めない私にはどうしようもないから、今は全部鞠莉さんに預けてるの」

鞠莉「まぁ、作りかけのだったり、思い付きで書いただけみたいなのがほとんどだからすこーし手は加えてるけど」

曜「言ってくれれば良かったのに」

梨子「その時はこうして入部までして一緒にやるつもりがなかったから……その後も言い出せなくて……」

ルビィ「先輩……」

千歌「ありがとう梨子ちゃん」

梨子「えっ、いや私は別に……」

千歌「よしっ!」

曜「お?どした?」

千歌「ライブやろう!」


善子「えっ、どういう流れでよ」

千歌「梨子ちゃんと鞠莉先輩が作る曲をもっと聴いてもらいたいから!それに、こんなふうに喋ってるだけじゃ何にも解決しないじゃん!」

ルビィ「そうだね、出来ることをどんどんやっていかないと」

花丸「でもどこでやるズラ?」

善子「そりゃ……沼津?」

曜「まぁいつまでも内浦でやってたって仕方ないところはあるよね」

千歌「大丈夫!だって私達東京でだって歌えたんだし!」

曜「それもそうだね!」


鞠莉「ねぇ、それについては私に1度預けてくれない?」

千歌「へ?」

善子「アテでもあるの?」

鞠莉「イエース、そんなところ♪もう少しで新曲の用意も出来るからライブをする前提で動いてノープロブレムよ♪」

花丸「小原先輩は手回しが早くてすごいズラ!」

千歌「分かりました!じゃあ鞠莉先輩に任せます!」

鞠莉「ありがと♪」

千歌「よしっ!まずは夏のラブライブに向けて頑張ろー!」

曜「ヨーソロー!」

梨子「ふふっ♪」

今日はここまで


ーーー

ガラッ

鞠莉「ハァイ♪みんな♪」

曜「あ、鞠莉先輩、ご機嫌ですね」

鞠莉「ふふっ♪実はね、いいニュースと悪いニュースがあるんだけどどっちから聞きたい?」

ルビィ「映画みたいな台詞!」

花丸「小原先輩が言うと様になりますね」

鞠莉「リアリー?嬉しいわ♪一度言ってみたかったのよね♪」

善子「言ってみたかったって……」

鞠莉「ニュースが二つあるのはほんとよ?」

千歌「じゃあいいニュース!」

鞠莉「ライブが決まったわ♪」

梨子「もう?随分早く決まったんですね」

鞠莉「このマリーにかかればちょちょいのちょいよ♪」


曜「どこどこ?沼津?」

鞠莉「なんと!伊豆・三津シーパラダイスよ!」

ルビィ「みとしー!?」

梨子「みとしー?」

花丸「内浦にある水族館ズラ」

善子「小さい頃に行ったきりね」

千歌「なんでみとしー?」

鞠莉「私達らしさを出すにはうってつけじゃない?」

花丸「確かに地元の水族館でライブなんてなかなか出来ない気がするね」

ルビィ「普通のライブとは違う形になるだろうから注目はしてもらえるかも!」

千歌「イルカショーとライブとか!」

曜「なにそれ凄い!」


梨子「ちなみに悪いニュースは?」

鞠莉「それは……」

千歌「……?」

鞠莉「……」

ルビィ「鞠莉先輩……?」

鞠莉「……ごめんなさいっ」

曜「急にどうしたの?」

善子「まさか辞めるとか言うんじゃないわよね」

梨子「えっ……」

鞠莉「いいえ、そうじゃないわ……」

花丸「じゃあ一体……」

鞠莉「みんなの……Aqoursの力を貸して欲しいの……」

千歌「ちから?」

鞠莉「……今から話すことはまだ誰にも話さないでくれる?」

善子「……」


ルビィ「か、家族にも?」

鞠莉「えぇ、公になったら大変な事になりかねない……だから私達だけの秘密にしておいてほしいの」

梨子「……」

千歌「分かった」

曜「約束するよ!」

ルビィ「うん!」

花丸「オラは口が堅いから安心するズラ」

善子「フフッ……このヨハネと密約を交わそうなんていい覚悟ね」ギランッ

梨子「よっちゃん、茶化さないで」

鞠莉「みんな……ありがとう」


ーーー

千歌「じゃあランニングいってきまーす」

花丸「いってらっしゃーい」

梨子「さて、じゃあ歌詞考えよっか」

花丸「はい!」

梨子「それにしても一気に二曲なんて思い切った事するよね、鞠莉さん」

花丸「色々と焦ってるのかもしれないですね……」

梨子「うん……私達がしっかりサポートしてあげなきゃね」

花丸「……」

梨子「マルちゃん?」

花丸「へっ?あっ、すいません、じゃあこっちの曲から考えましょう」

梨子「うん……?」


ーーー

梨子「はぁ、一本乗り遅れるだけでこんなに遅くなっちゃうなんて……」

タッタッタッ

梨子「……!」

梨子「……足音……なに……?」

タッタッタッ

梨子「あっ……あれって……」


ーーー

「1、2、3、4、1、2、おわっ!?」ドテッ

「いたた……」

花丸「はぁ……みんなよくこんなの出来るズラ……」

花丸「ダメダメ、もう一回!」

花丸「1、2、3、4、1、2、わっとっと!」

花丸「うーん……」

「そこは二歩前のステップをもう少し大きく出せば上手くいくよ♪」

花丸「二歩前ってえっと……って、わわっ!?」ビクッ

梨子「ふふっ♪こんばんは」

花丸「あわわわ……こ、これはそのっ……」


梨子「見ててね」

花丸「えっ……」

梨子「1、2、3、4、1、2、3、4、ほらっ♪」

花丸「桜内先輩……」

梨子「マルちゃんは……1人で練習してて寂しくない?」

花丸「……でも、オラどんくさいし……みんなに迷惑が……」

梨子「大丈夫、来て数ヶ月しか経ってない私にもそれくらい分かるよ」

花丸「……」

梨子「それとも、小さい頃からずっと知ってるマルちゃんから見たら、みんなそんな風に見えちゃうの?」

花丸「そんなことない!みんなすっごく優しくてーー」

梨子「なら大丈夫」

花丸「あ……」ウルッ…


梨子「きっと千歌さんもルビィちゃんも、みんな待ってるんじゃないかな♪」

花丸「……っ」ゴシゴシ

梨子「ふふっ♪」

花丸「い、今のステップもう少し練習してから帰る!」

梨子「付き合ってあげるよ」

花丸「そんな、悪いズラ」

梨子「いいから、いいから」

花丸「大丈夫だから」

梨子「私こそ大丈夫だから」

花丸「……」

梨子「……」


花丸「……桜内先輩、いつからオラの事見てました?」

梨子「えっ……いや……その……ジョギングしてるのを見つけて、ついてきて……」

花丸「……」

梨子「……」

花丸「……帰れないんですか?」

梨子「……っ」ギクッ

花丸「……ふふっ♪」

梨子「し、仕方ないじゃない……ついて行くのに夢中で周りなんか見てなかったんだから……」オロオロ

花丸「分かりました♪ちゃんとオラが案内してあげるズラ♪」


ーーー

曜「はい、次背中伸ばすよー」

鞠莉「はーい」

善子「はぁ……そろそろヨハネにとって辛く厳しい季節がやって来るのね」

ルビィ「夏苦手なの?」

善子「だって暑いし」

曜「こらー!だらだら喋りながらだと練習中に怪我するよー」

ルビィ「はいっ!」

千歌「よいしょ……ん?」

鞠莉「どうかした?」

千歌「あれ……」

梨子「遅くなってごめんなさい」

曜「梨子ちゃんとマルちゃん……どうしたのその格好?」

花丸「あ、う、えっと……」

梨子「私達も練習に参加していいかな?」

曜「それはいいけど……」

善子「……?」

梨子「ほら、マルちゃん♪」

花丸「うん……その……みんなが頑張ってるのを見てたら……その……オラ運動神経も良くないから……迷惑かけちゃうけど……その……」モジモジ

鞠莉「あらあら?♪」

花丸「お、オラもみんなと一緒に踊りたいから!」

ルビィ「マルちゃん……!」

梨子「私も、今更だけどみんなと一緒にステージに上がりたいと思って」

りこまる「よろしくお願いしますっ!」

千歌「二人共……」


鞠莉「反対の人はいるかしら?♪」

曜「ここにはおりませんっ!」ビシッ

善子「まぁ良いんじゃない?」

ルビィ「うんっ!」

千歌「梨子ちゃん、マルちゃん、改めてようこそAqoursへ!」

花丸「……はいっ!」

梨子「改めてよろしくね♪」

曜「ただーし!」キリッ

善子「また始まった……」

曜「トレーニングに関しては一切手心を加えるつもりはないので覚悟するよーに!」クワッ

花丸「が、頑張るズラ!」

梨子「……これがいわゆる体育会系?」

善子「というか軍隊に近いわね……」

曜「ではストレッチから全員やり直しー!」


ーーー

鞠莉「ステージの見取り図貰ってきたわよ♪」バーン

千歌「おおっ!って……あれ?ここ、こんなに広かったっけ?」

鞠莉「私達の為に特設ステージとして拡張してくれるそうよ」

曜「そこまでしてくれるの?」

鞠莉「地元で頑張る私達の為に出来ることはやってあげたい、だそうよ♪」

花丸「おお……今から緊張してきたズラ……」

ルビィ「マルちゃん大丈夫、ルビィもいるから」

梨子「ホントは全部踊れたら良かったんだけど……」

鞠莉「それについては仕方ないわ、全曲分のフォーメーションから何から考え直す時間はないもの」


千歌「でもその分、新曲でサプライズ出来るし!」

曜「今までの曲だってこれからまだまだ踊る機会はあるんだから気にしないで♪」

梨子「千歌さん、曜さん……ありがとう」

善子「今回チラシは?」

鞠莉「曜っちの用意してくれた原案を先方に渡してあるわ、数日もしない内に完成するんじゃないかしら」

ルビィ「海の上のステージでしょ……落っこちたらどうしよう……」

善子「さすがにそこまで心配する必要はないでしょ……」

千歌「じゃあ、そろそろ歌の練習しよっか」

曜「はーい、マルちゃん先生よろしくであります!」

花丸「任せなさい!」ドヤッ

梨子「ふふっ♪」


ーーー

曜「ヨーソロォォオ!」

善子「……なにあれ」

梨子「さぁ……海に向かって吠えてるんだと思うけど」

善子「毎日見てるのになんで……?」

梨子「私に聞かないで……」

千歌「すっごいねー!ほんとに海の上にステージが出来るんだ!」

鞠莉「正確にはイルカショーのスペースなんだけども」

ルビィ「わぁ♪」

イルカ「キュー」ザバンッ

ルビィ「……ぅぁ」ビショビショ

花丸「ルビィちゃん!?」

曜「海バンザーイ!」


善子「もしかしてライブ中もイルカいるの?」

鞠莉「ステージにはあがれないようにするみたいだけども、イルカ自体はずっといるそうよ?」

梨子「それイルカ的に色々大丈夫なの?」

千歌「ライブしてる間にも跳ねたりするのかな?」

鞠莉「やってもらう?」

千歌「出来るの?」

鞠莉「さぁ?聞いてみないことには」

梨子「色々と勝手が特殊だからその辺りも含めてしっかり話をしないといけないね」

善子「それ、ライブ決める前にする事だと思うんだけど……」

鞠莉「まぁ何とかなるわよ♪」

曜「おーもかーじいーっぱーい!」

善子「さっきからうるさいわよっ!」


ーーー

「失礼しましたー」

千歌「もうこんな時間になっちゃったね、曜ちゃんと善子ちゃんバス大丈夫?」

善子「まだ大丈夫よ」

曜「問題なーし」

鞠莉「じゃあどこか寄ってく?」

千歌「そだねー」

「お待ちなさい」

善子「ん?」

ルビィ「あっ……お姉ちゃん……」

ダイヤ「……」

曜「果南ちゃんまで……どうしたの?」

果南「……鞠莉、どういうつもり」

鞠莉「ワッツ?何の話?」

ダイヤ「とぼけないでください」

鞠莉「……みんな、先に帰ってていいわよ、私に話があるみたいだから」

千歌「……」

善子「あ、そう?それじゃ……」

ルビィ「……」ガシッ

花丸「……善子ちゃん」

善子「冗談よ冗談……」

鞠莉「貴女達……」

梨子「大方話の予想はつきますから」

ダイヤ「……」

果南「……千歌達は、何とも思わないの?」

千歌「私達は納得してここにいるから」

果南「まさか何か変わると思ってるの?こんな田舎で」

千歌「思ってる」

ダイヤ「東京のイベントに呼ばれて勘違いでもしたんですか?これはそういう類の話とは違うのですよ」


果南「鞠莉は、自分の都合で千歌達を利用してるんだよ!?」

鞠莉「……っ」

千歌「知ってるよ」

果南「……!」

千歌「でも、こんな言い方したら酷いけど、私だって鞠莉先輩を利用してるし」

ダイヤ「どういう……」

曜「部活設立も曲作りも鞠莉先輩がいなきゃ出来なかったんだよ」

梨子「……」

果南「そんな理由で……」

千歌「……そんな理由じゃない!」

果南「っ!?」

ルビィ「千歌ちゃん……」

千歌「私達にとっては大事な事なんだよ!今回のライブだって、そりゃスクールアイドルの活動としては変かもしれないけど……でも私が……私達がやりたい事のためには必要な事なの!」

果南「千歌……」

千歌「……ごめん」


梨子「……勝負しませんか?」

花丸「桜内先輩!?」

ダイヤ「貴女……一体何を……」

梨子「私達が何も変えられないのかどうか、このライブで証明してみせます」

鞠莉「ちょっと梨子っち……」

果南「出来なかったら?」

梨子「もう二度とこんな馬鹿げたことしないように……解散します」

曜「ええぇっ!?」

ダイヤ「……正気?」

梨子「その代わり、私達が勝ったら鞠莉さんと話をしてください」

鞠莉「な、何を言ってるの!?」

果南「何の為に……」

梨子「誰も後悔しないために」

果南「……」

善子「言ってること無茶苦茶じゃない……」

ダイヤ「……好きにしなさい」

梨子「約束ですよ」

ダイヤ「たった7人の高校生に出来るんですかーー」



ダイヤ「ーー内浦の複合リゾート開発計画を止めるなんて」



梨子「……止めてみせます」



鞠莉「……梨子っち」

千歌「梨子ちゃん……」

これで半分

期待


ーーー

梨子「……ぅぅ」

千歌「……梨子ちゃん」ナデナデ

善子「いいの?これで」

曜「まぁ……うーん」

梨子「……ぁぁ、ぁああ、あああ!」

ルビィ「ひっ!?」ビクッ

梨子「私なんであんな事言っちゃったのよぉ!?」ウワァァ

花丸「もう後戻りは出来ないズラ……」

鞠莉「……私のせいでごめんなさい」

千歌「いいんです」

曜「うん、やるって言ったのは私達だし」

善子「まぁ……なんかヤバい方向に話が転がってるけど」

梨子「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」ブツブツ


千歌「ほーら梨子ちゃん、もう過ぎたことなんだし」

梨子「だって私、ほとんど部外者なのに……解散するとか言っちゃうし……もう……」

花丸「背水の陣でむしろ頑張れるから!」

ルビィ「マルちゃん、手がぷるぷるしてるよ……」

花丸「む、武者震いズラ!」

善子「ま、今更無しになんて出来ないんだし、やるしかないでしょ」

曜「むしろ、梨子ちゃんのお陰だよ」

千歌「うんっ!」

梨子「私の……なんで?」

曜「私達じゃ色々と堪えちゃってうやむやにしちゃったかもしれないから」

梨子「……」

ルビィ「ルビィもどうしたらいいのか分からなくて何も言えなかったから……」

千歌「これが私達が背負う責任なんだよきっと」

花丸「責任……」

梨子「……」


千歌「楽しいとかいいことばっかりじゃやっていけない……それでも目をそらしちゃいけない……私達がやってるのはそういうことなんだよ……多分」

善子「多分じゃ締まらないじゃない……」

鞠莉「梨子っち」

梨子「鞠莉さん……」

鞠莉「みんなも、ありがとう」

千歌「へへっ♪」

鞠莉「私、何としても……パパを止めてみせるから」

曜「みんなで、だよ!」

善子「……そういえば、なんで生徒会長はこのこと知ってたの?あれまだ公になってないんでしょ?」

ルビィ「多分、お父さんの話を聞いちゃったんじゃないかな?」

善子「どういう事?」


花丸「あー、なるほど、確かにルビィちゃんのところなら話が行っててもおかしくないよね」

善子「いやだからどういう事よ」

曜「ルビィちゃんとダイヤさんの家って昔からここら辺一帯の大地主なんだ」

善子「……は?」

ルビィ「今はもう昔ほど沢山管理してるわけじゃないみたいだけど、はっきりと分からないけど、まだそれなりに息のかかってる所は多いみたいだから……」

善子「アンタ、お金持ちだったの……?」

ルビィ「えっ?いやそういうわけじゃないけど……それなら花丸ちゃんのところの方が……」

花丸「ウチはただのお寺だからそんなことないよ」

善子「寺なんてお金持ちの象徴みたいなもんでしょ……」

曜「影響力って意味じゃマルちゃんのところも古いお寺だから話がいってるかもね」

善子「こんなのほとんど全面戦争じゃない……」


ーーー

梨子「……あれ?」

むつ「よろしくお願いしまーす」

よしみ「伊豆・三津シーパラダイスでAqoursのライブやりまーす」

梨子「みんな、それ……」

いつき「あ、桜内さん」

むつ「駅前で会うなんて奇遇だね!沼津で何か用事?」

梨子「今日は検診で……それよりそれは?」

よしみ「ビラ配りだよ」

むつ「さっき千歌からごっそり貰って来ちゃった」

梨子「どうして三人が?」

いつき「桜内さんも国木田さんも踊るんでしょ?練習とか大変だろうしと思って」

よしみ「みとしーじゃ体育館の時よりお客さんも沢山入るから沼津からもしっかり人呼ばなきゃねって事で」

梨子「みんな……」


むつ「私達にはこんな事しか出来ないからね」

梨子「ううん、そんなことないよ、ありがとう、私も頑張るね」

いつき「ちなみに私達三人だけじゃないんだよ?」

梨子「えっ?」

いつき「今、アーケードの方でもクラスのみんなが配ってるの」

梨子「いつの間にそんなに……」

むつ「Aqoursのライブをみんな楽しみにしてるんだ」

よしみ「だからライブまでは私達に任せて!」

いつき「本番の事だけに集中して頑張って」

梨子「……うんっ!絶対成功させるね!」


むつ「頑張り過ぎて怪我しないでね」

梨子「ありがとう!それじゃ私行くね」

いつき「ばいばーい」

むつ「……」

よしみ「桜内さんなんかすごく柔らかくなったね」

いつき「うん、あとキラキラしてる」

よしみ「さすが都会っ子」

いつき「それは関係ないんじゃ……」

むつ「ほら二人共、今日中に半分は配っちゃうよー」


ーーー

花丸「心の準備はしてきたつもりだけど……ほんとにテレビ局まで来てる……」

ルビィ「生中継……なんだよね……」ゴクリ

鞠莉「……」

曜「天気よーし、風よーし!」ビシッ

ルビィ「今日はまだ気温高くなるみたいだから気を付けてね?」

善子「マジ?……ただでさえ辛いのに……」

千歌「そろそろ始まるよー」

花丸「……」ゴクリ

梨子「マルちゃん、リラックスリラックス♪リハーサルはちゃんと出来てたよ♪」

曜「梨子ちゃんは随分落ち着いてるね」


梨子「うん、なんでかな、ワクワクしてる」

千歌「分かるよその気持ち」

善子「逆にマリーはいつになく緊張してるみたいね」

曜「鞠莉先輩にとっては正念場だからね……」

千歌「先輩」

鞠莉「ん?」

千歌「私達もいます」

鞠莉「……」

ルビィ「今は目の前のライブをいっぱい楽しみましょう」

鞠莉「……うん」

曜「今日までに出来ることは全部やったんだから、あとは後悔しないライブを、ね?」

鞠莉「……そうね!」


マモナクカイエンシマース

梨子「はーい」

千歌「よし、みんな行くよ!1っ!」

曜「2っ!」

ルビィ「3っ!」

鞠莉「4っ♪」

善子「5っ!」

梨子「6!」

花丸「7っ!」

千歌「アクアー!」

7人「サンシャイーン!!」


ーーー

花丸「あぁ……もうすぐ出番ズラ……」ソワソワ

梨子「……」

花丸「どうしよぉ……」ソワソワ

梨子「……」

花丸「先輩はなんでそんなに落ち着いてられるんですか?」

梨子「……」

花丸「……桜内先輩?」

梨子「……」ジワッ

花丸「……?」

梨子「……」ポロポロ

花丸「せ、先輩!?どうしたの!?」オロオロ

梨子「……えっ?」ポロポロ

花丸「き、緊張しすぎちゃったズラ?」オロオロ

梨子「分からない……なんで……」ゴシゴシ


花丸「先輩……」

梨子「……違う」ゴシゴシ

花丸「……?」

ミナサンアリガトウゴザイマス!

『心の準備は大丈夫?』

梨子「……何も覚えてないのに……」ポロポロ

ジツハミンナニオシラセガアリマス!

『出来ることは全部やった!』

梨子「……何も思い出せないのに……」ゴシゴシ

アクアニアタラシイメンバーガクワワリマシタ!

『目一杯楽しもう!』

梨子「……私……“知ってる”……」ポロポロ

花丸「えっ……」

クニキダハナマルチャント!

『行くよっ!みんなっ!』

梨子「……ごめん」ゴシゴシ

サクラウチリコチャンデスッ!

梨子「……行くよ、マルちゃん!」

花丸「は、はいっ!」

ワァァァァ!


ーーー

花丸「お、終わった……練習より疲れた……」プシュー

ルビィ「マルちゃんお疲れ様♪すっごく良かったよ♪」

花丸「ありがとズラぁ……」

鞠莉「……」

千歌「鞠莉先輩、やり切れましたね」

鞠莉「そうね、あとはどう転ぶか……」

曜「おりゃっ」グイッ

鞠莉「ひょわっ!?ひょうっひにゃにひゅりゅの!?」

曜「せっかく楽しいライブだったのにそんなしかめっ面してたらダメですよ」ニシシ

鞠莉「曜っち……ふふっ♪」

善子「あとはこのヨハネが人心掌握の黒魔術を実行すれば……」ギランッ

ルビィ「変なことしちゃダメだよ!? 」


花丸「……桜内先輩」

梨子「どうしたの?」

花丸「さっきの……先輩もしかして……」

梨子「……ううん」

花丸「……」

梨子「残念だけど何にも……」

花丸「……そうですか……」

梨子「……実はね」

花丸「……?」

梨子「……実はちょっとだけ不安だったの……何を見ても何にも感じなくて、思い出せなくて……私はからっぽになっちゃったんじゃないかって」

花丸「……」

梨子「でも今日で分かったの、私の心はちゃんと覚えてるって……ただ思い出せないだけだって」

花丸「先輩……」

梨子「だから少し希望が湧いたかな♪」

花丸「……うんっ!」


千歌「希望がなーに?」ズイッ

花丸「わっ!?千歌ちゃん!」

梨子「ふふっ♪今回のライブ、上手くいったから希望はあるんじゃないかなぁって♪」

千歌「梨子ちゃん……だよね!鞠莉先輩!梨子ちゃんも希望はあるって!」

鞠莉「梨子っち……ありがと♪」

梨子「まぁ私が蒔いた種だし……」アハハ…

ルビィ「そういえば……いつ分かるんだろう……」

鞠莉「私がパパに直接聞くしかないわね」

曜「その時は私達も一緒に行くよ!」

鞠莉「えっ?」

ルビィ「うんっ!私達にとっても大事な事だから」

鞠莉「……分かったわ♪その時はみんな一緒に」

善子「えっ、私も?」

花丸「当たり前ズラ」


ーーー

ルビィ「みんな揃ってますか!?」

千歌「そんなに慌ててどーかしたの?」

善子「どーもこーもないわよ、コレ!」

曜「んー?」

梨子「えっ!?なにこれ……」

鞠莉「ランキング……907位!?」

千歌「なんでこんなに上がってるの!?」

曜「この間やっと2500位越えれたくらいだったよね?」

梨子「うん……」

花丸「この間のみとしーのライブの反響が凄くて……」

千歌「コメントもすごいいっぱい……」

鞠莉「テレビの生中継で見たよ……こんな素敵なライブ初めて見た……新しい二人も凄く可愛い……」

曜「どんどん完成度上がってる……今回もいい曲、毎回新曲が楽しみ……次は現地で見たい……」


ルビィ「あと……これも」カチカチッ

千歌「上昇率4位……前は2位じゃなかった?」

ルビィ「ちーがーいーまーすぅ!これ!」ビシッ

梨子「全国上昇率4位……全国!?」

善子「トップページにもでかでかと名前出てるのよ」

花丸「なんかとんでもない事になってきたズラ!」

千歌「これはもしかするともしかするのかな!?」

曜「鞠莉先輩!」

鞠莉「……うん、みんな着いてきてくれる?」

千歌「はいっ!」


ーーー

善子「でっか……」

曜「え、ここ家だったの……?」

梨子「庭だけで校庭くらいありそう……」

千歌「ウチのお客さん全員泊めてもまだ部屋余ってそう……」

鞠莉「みんなはゲストルームで待っててくれる?案内するわ」

ルビィ「お、お邪魔しまぁす……」

花丸「げすとるーむって何?」ヒソヒソ

ルビィ「客間の事じゃないかな?」

善子「私の部屋より広い玄関って……」

梨子「あんまりキョロキョロしたら失礼よ……」

曜「わぁ……鹿の頭ってほんとに飾るんだ」

鞠莉「それはトナカイよ、それじゃここで待ってて」

千歌「はぁい」


ルビィ「なんて言うか……白い……」

花丸「目がチカチカするズラ……」

曜「ここから海に飛び込めそう」

梨子「鞠莉さん大丈夫かな……」

善子「……」

ルビィ「……」

千歌「……今ランキングどうなってる?」

善子「え?ああ、ちょっと待って」

曜「……」

善子「はい」

梨子「……882位ね」

花丸「また上がってる」

善子「みとしーライブの影響で他に上げたのも再生回数とかかなり増えてるわね」

千歌「これで私達だけじゃなくて内浦に興味を持ってくれたらいいんだけど」

曜「……海が綺麗……夏に絶対行く……景色最高……PVのコメントも増えてるから大丈夫だと思いたいけど……」


ーーー

ガチャッ

鞠莉「おまたせ」

千歌「鞠莉先輩!どうでした!?」

善子「……」ゴクリ

鞠莉「……」

梨子「……まさか」

鞠莉「……プロジェクトは中止するつもりはないって……」

ルビィ「そんな……」

花丸「あんなに頑張ったのに……」

鞠莉「……」

千歌「もう一回、私達でお願いしてーー」

鞠莉「でもね」

曜「?」


鞠莉「大規模なリゾート開発は一旦取り止めるって!」

梨子「それって……」

鞠莉「再来年度から順次開発開始の予定だったんだけど、それを一旦白紙に戻して今の内浦を残したままで再計画出来ないか検討してみるって!」

曜「じゃあ……!」

ルビィ「やったぁ!」

千歌「私達のやったことは無駄じゃなかった……」

善子「解散にならなくて良かったわね」ニヤリ

梨子「ホントにすみませんでした……」

鞠莉「みんなありがとう……私……」ウルッ

梨子「鞠莉さん……」

鞠莉「私……本当に……グスッ……今までどうしていいか分からなくて……」ポロポロ

ルビィ「……」

鞠莉「みんながいてくれなかったら……私……全部無くしちゃうところだった……」ゴシゴシ

千歌「鞠莉先輩……」

善子「マリー、感傷に浸る前にもう一つ大仕事が待ってるわよ」

梨子「重ね重ね、勝手なことしてすみません……」ガクッ

ーーー

善子「……やっぱり帰りたい」ゲンナリ

花丸「善子ちゃん……我慢して」


鞠莉「……」

果南「……」

ダイヤ「……」


曜「かれこれ10分くらいあの状態だけど……」

ルビィ「こっちまで気まずい……」

千歌「あーもう!」ガタッ

ルビィ「ち、千歌ちゃんっ」ガシッ

曜「ちょっと待ってってば、千歌ちゃんっ!」ガシッ

千歌「むぅ……」

梨子「あ、やっと喋りそう」


果南「……はっきり言って、私は鞠莉が何をしたいのか分からない」

鞠莉「……」

果南「浦の星で再会したらまるで別の人みたいにやけに明るくなって、廃校を止めるなんて騒ぎ立てたくせに何も言わずにいなくなって……」

ダイヤ「……」

果南「またふらっと帰ってきて、何か言い訳でもするのかと思ったら何も言わずに千歌達に取り入って……」

鞠莉「……」

ダイヤ「鞠莉さん……自分でもクラスの皆から白い目で見られてるのは分かっていますよね、それなのに何故何も言ってくれないんですか」

鞠莉「……私ね……初めてこの町に来た時のこと……今でもはっきり覚えてるの」

果南「何、今更思い出話がしたいの?」

ダイヤ「果南さん、少し落ち着いてください、糾弾しに来たわけではないでしょう」

果南「……」


鞠莉「……それまでずっとイギリスで暮らしてたのに、ある日急に日本に来ることになって……ママから教わったとはいえ、カタコトの日本語で最低限の意思疎通くらいしか出来なくて……」

ダイヤ「……」

鞠莉「どうしていいか分からない子供の私には……ただただ怖いって気持ちしかなかった……」

果南「……」

鞠莉「でも……そんな私に一生懸命みんな話しかけてくれて……特に果南とダイヤは……私が何か伝えようとするのをじっと待ってくれたりして……私、嬉しかったの」

果南「……それが何の関係があるの」

鞠莉「だからね……私、本当にこの町が……果南やダイヤ……みんなの事が……大好きなの」

果南「……だったら!」ガタッ

ダイヤ「果南さん」

果南「っ……だったらなんで居なくなったりするのさ……」


鞠莉「私ね、昔からパパに『ゆくゆくは後継者としてグループの中心になる存在』なんて言われてきたの」

ダイヤ「……」

鞠莉「いずれは日本での展開をしていく上で必要だからこそ、私を日本で育てたかったみたい……」

果南「……」

鞠莉「二人も知ってるでしょ?……日本に馴染む前からずっと習い事や家庭教師で息苦しい毎日だった……私が沼津の私立中学に行ったのも全部パパの決めたこと」

ダイヤ「それで……」

鞠莉「そうやってパパの言う通りに生きていくんだなって、納得は出来なかったけど理解はしてたつもりだった……でもやっぱり耐えられなかった」

果南「……」

鞠莉「家から見える内浦の町が恋しくて……みんなが恋しくて……浦の星に来る為だけに、パパと喧嘩して酷いことも沢山言って……パパの指定した学校の入試を全部わざと落ちたの」

ダイヤ「そこまでして……浦の星に」

鞠莉「パパは納得しなかったけど、娘が高校にもいけないんじゃメンツが立たないからね……そうやってまたみんなのところに帰ってこれた……」


果南「……なんで別人みたいに明るくなったのかわかんないんだけど」

鞠莉「……ただでさえ外から来て上手く馴染めたとは言えなかったんだよ……その上で10代の三年間がどれだけ大事だったか……無理してでも……そうやって輪に入らなきゃ、なくなった三年間を埋められないって思って……」

果南「……」

鞠莉「結局……私は本当の自分なんて上手く言えない臆病者だから……そうするしかないと思ってたの……」

ダイヤ「……留学については?」

鞠莉「それもパパの決めたこと、よっぽど浦の星にいるのが気に食わなかったみたい……びっくりしちゃうよね……ある日帰ったら荷物がまとめられて今からアメリカに行けって、知らない間に周りに手回しして私の事なんかお構い無しで全部決まってたの」

果南「……!」

ダイヤ「そんな……!」

鞠莉「……ううん……結局のところそれでも行かないって言えなかった私が悪いのよね……なんにも言えなくてやっぱりパパのいいなりにしか出来なかった私の弱さが悪いの……」

ダイヤ「そんなこと……ただの高校生に出来るわけありません……」

鞠莉「……」


果南「なんで……なんでそんなこと言ってくれなかったの……」

鞠莉「言えるわけないでしょ……あれだけ廃校を止めようなんて言って回ってたのに……全部台無しにしたのは私なのよ!」

果南「だったら……だったらなんで今更戻ってきたの!少なくとも帰って来なかったらそんな思いしなくて済んだじゃん!」

ダイヤ「ちょっと二人共、落ち着いて……」

鞠莉「私だって分かってるわよ!いじめられるんじゃないかって思ったりもしたわよ!それでもここに帰りたい理由があったから死にものぐるいで勉強して1年半で留学を終わらせてきたの!」

果南「一体何の為にさ!」


鞠莉「みんなと卒業したかったから!!」



果南「っ……!?」

ダイヤ「鞠莉、さん……」

鞠莉「良く思われてなかったとしても……ぐすっ……最悪いじめられることになっても……あの日私の手を握って受け入れてくれたみんなと……ぐすっ……卒業したかったの……」

果南「そん、な……」

ダイヤ「……私……今まで、なんて事を……」

鞠莉「私っ……わだしだっで……ほんとは……みんなと笑っで過ごしだいの……ぐすっ……でも……ぜんぶ私のぜいだから……ひぐっ……謝っでゆるしてもらえるようなこどじゃないから……だから……だがら……」

果南「ま、り……」

鞠莉「ぜめて……この内浦を……ひぐっ……内浦だけはなくじたぐなくで……私……だがらぁ……うわぁぁぁん!」


ーーー

鞠莉「……ぐすっ」

ダイヤ「落ち着きましたか?」

鞠莉「……うん……ごめんなさい……」

ダイヤ「謝るのは……私の方です……ごめんなさい鞠莉さん……事情も知らず責め立てるような事を言って」

鞠莉「……私が話さなかったんだから仕方ないよ」

果南「……」

ダイヤ「果南さん」

果南「……酷いこと言って、ごめん」

鞠莉「ううん……私こそごめんなさい」

果南「……」

鞠莉「……」


ダイヤ「……ぷっ」

果南「なんで笑うのさ」

ダイヤ「こんな歳でこんな内容なのに、子供みたいな謝り合いで終わってしまうのがなんだか可笑しくて……」

鞠莉「ふふっ……ほんとね」

果南「でも、そんな簡単な事がずっと出来なかったんだね私達……」

ダイヤ「ええ……」

鞠莉「……あのね二人共」

果南「ん?」

ダイヤ「どうしました?」

鞠莉「私、もう一つ叶えたい夢があるの」


ーーー

ガラッ

鞠莉「ちょっとみんな!昨日先に帰ったでしょ!」

花丸「いやぁ……そのぉ……」

善子「あんな重たい話、そう何度も聞けないわよ……」

ルビィ「三人の間に水を差すのも悪いかなって……」

千歌「で、ちゃんと仲直り出来ました?」

鞠莉「うん、それなんだけどね……」

曜「まさか上手くいかなかったの?」

鞠莉「ううん、そうじゃなくてその……」

ガラッ

ダイヤ「誘っておいていつまで待たせるつもりですか?」

果南「ほんと、せっかく復学したのに」

千歌「おぅぇえ!?」ガタッ

梨子「果南さん!?」

ルビィ「お姉ちゃん!?」


果南「よっ♪」

曜「よっ♪……じゃないよ!」

鞠莉「その……二人もAqoursに入ってもらうっていうのはダメ……かしら?」

善子「……は?」

花丸「うん?」

梨子「え、ちょっと待って……話の流れが分からない」

ダイヤ「鞠莉さんがどうしても私達とスクールアイドルをしたいって言うんです」

果南「私は千歌との約束もあるからね」

千歌「果南ちゃん……」

梨子「曜さん」ガシッ

曜「がってん!」ガシッ

千歌「果南ちゃーーうぐぇっ」


鞠莉「これは私のわがままだから……ダメなら……」

ルビィ「ダメじゃないよ♪」

ダイヤ「ルビィ……」

花丸「オラも賛成♪」

善子「なんか随分大所帯になっちゃったわね」

曜「2人がいれば百人力だね♪」

梨子「これからよろしくお願いします♪」

鞠莉「みんな……」

千歌「果南ちゃん、ダイヤさん、ようこそAqoursへ!」

果南「ありがとう、よろしくねみんな」

ダイヤ「見知った顔も多くいますが、不束者ですがよろしくお願いします」


曜「そうと決まれば早く2人のお披露目しなきゃね!」

ルビィ「ライブ早く決めなきゃ!」

善子「あぁ、それについてだけどうってつけのがあるわよ」

花丸「善子ちゃんいつの間に!?」

善子「私が手配したわけじゃないわよ、出演依頼のメールが来てたのよ」カチカチッ

千歌「また東京?」

善子「違うわよ、これ、夏休み入ってすぐ」

梨子「沼津夏まつり実行委員会……?」

千歌「えっ!?」

曜「狩野川のやつじゃん!!」

果南「えっ……マジ……?」


梨子「……有名なの?」

花丸「昔からやってる伝統的なお祭りです」

鞠莉「何十万人も見に来るお祭りよ」

ルビィ「スペシャルゲストとして御出演していただけないでしょうか……って私達が!?」

ダイヤ「まさかそんなところで初舞台をやれと……?」

善子「今からなら新曲も間に合うし、生徒会長と松浦先輩も踊れるようにはなるでしょ」ニヤリ

千歌「やろう!」

果南「えっ、ちょっと待って私踊りとか初めてなんだよ?」

花丸「大丈夫ズラ!オラでも頑張って練習したら踊れるようになったから!」

ダイヤ「いつもこんな感じなんですか……?」

梨子「まぁ……そうですね」アハハ…

ダイヤ「相変わらずと言うかなんと言うか……」ヤレヤレ

今日はここまで


ーーー

曜「じゃあ少し休憩ー!」

善子「あっつ……もう無理……溶けて消える……」

花丸「疲れたズラぁ……」

ルビィ「でも、マルちゃんどんどん速くなってきたよ♪」

鞠莉「はい、千歌っち」

千歌「ありがとー」

梨子「それにしても本当に暑くなってきたね」

ダイヤ「はぁ……はぁ……みんな凄いですわね……」

果南「……」

ダイヤ「……どうしたんですか?……と言うか、果南さん……相変わらずすごい体力……」

果南「なんかさ……鞠莉の気持ちやっとわかったかも」

ダイヤ「はい……?」

果南「ちょっと見なかっただけで、みんなおっきくなったなぁって、マルなんて昔から運動はダメダメですぐへばってたのに」

ダイヤ「……断トツの1位でゴールしておいて……息ひとつ切らさない貴女が言うと……嫌味に聞こえますわ……」

果南「いや、そういう話じゃないんだけど……」


ーーー

千歌「1、2、3、4、1、2、3、4、マルちゃん遅れてる」

花丸「はいっ!」

千歌「1、2、3、4、梨子ちゃん、もっと大きく」

梨子「はいっ!」

千歌「はいっ、みんなお疲れ、じゃあビデオチェックするよー」

曜「ルビィちゃん、もっとおっきくジャンプしていいんじゃないかな?」

ルビィ「じゃあ次はもっと跳んでみるね」

花丸「あ、ここからちょっと遅れちゃってるのかぁ……」

善子「こっちの振りが大きすぎるわね」

ダイヤ「なんというか……」

果南「ん?」

ダイヤ「思ってた以上に真剣で……」

果南「確かにねー」


梨子「それにしても果南さん凄いですね」

果南「ん?何が?」

花丸「すぐにダンス覚えちゃうんだもんね」

曜「果南ちゃん昔から運動神経オバケだからねー」

ルビィ「いつもほわほわしてるのにね」

千歌「でもその分おバカだよねー」

果南「いや、千歌には言われたくないんだけど……」

善子「生徒会長も生徒会長でなんかやってるんですか?」

ダイヤ「日本舞踊なら幼い頃からずっとしてますが」

梨子「だからあんなに綺麗な動きなんですね」

ダイヤ「いえ、勝手が随分違うのでなかなか上手くはいきませんわ」

花丸「はっ!……オラの立場危うし……」

ルビィ「マルちゃんは歌が一番上手だから大丈夫だよぉ」ナデナデ


ーーー

ダイヤ「はぁ……思った以上に疲れましたわ、こんな事ならもう少し基礎体力を付けておくべきでしたね……」

果南「じゃあ明日から一緒に私のトレーニングする?」

ダイヤ「無茶言わないでください、果南さんに付き合ってたら1日で身体壊します」

果南「えー」

鞠莉「ふふっ♪二人共ありがとう」

果南「なに急に、気持ち悪いなぁ」

ダイヤ「もう少し言葉を選んでください……」

鞠莉「ほんとよねー、昔の果南はもっと優しかったのにー」

果南「悪かったねー、優しくなくなって」

鞠莉「それに比べてダイヤは全然変わらないわね」


ダイヤ「そうでしょうか?」

鞠莉「胸とか」

ダイヤ「張り倒しますよ」

果南「ぷっ♪」

ダイヤ「なんでそこで笑うんですか!そもそも二人が無駄に成長し過ぎなんですわ!」

鞠莉「きゃー♪セクハラよー♪」

ダイヤ「なっ……!そもそも話を振ったのは鞠莉さんでしょう!」

ワーワーキャーキャー


梨子「鞠莉さん、楽しそう」

曜「うん、なんか前より生き生きしてるね」


ルビィ「お姉ちゃんも嬉しそう♪」

千歌「やっぱり笑ってるのが一番だよね」

花丸「うん♪」

善子「ほのぼのするのも良いけどライブ近いんだからシャキッとしてよね」

梨子「よっちゃん……」

曜「なんか真面目なセリフ似合わないね……」

善子「なんで普通のこと言ったのにツッコまれるのよっ!?」ガーン


ーーー

千歌「じゃーん!」バーン

曜「あっ、夏まつりのチラシ!」

千歌「ここにちゅうもーく!」ビシッ

ルビィ「話題沸騰中……静岡発の人気スクールアイドル達によるスペシャルステージも開催……」

花丸「また大ごとになってるズラっ!?」

果南「去年何人くらい来てたっけ……」

ダイヤ「1日目は18万人くらいだったかと」

梨子「じゅーはちまん……」

善子「……東京の大会は?」


鞠莉「アキバドームシティホールは収容人数3000人超ね」

曜「何倍?」

千歌「6倍!」

ダイヤ「60倍ですわ……」ヤレヤレ

花丸「全員が見るわけじゃないにしてもそれでも数万人は確実に見るってことになるよね……」ガタガタ

ルビィ「そんなプロみたいなことやったら緊張で死んじゃうよ……」ガタガタ

果南「ま、今更後悔しても遅いし諦めて恥を晒そう♪」
ケラケラ

ダイヤ「貴女は全く……その通りですけど……」


ーーー

花丸「今日は風が涼しいズラぁ」ノビー

曜「潮のいい香りだねー」ノビー

果南「泳ぎたくなっちゃうよねー」ノビー

善子「あ、メール……」カチカチッ

千歌「7人だとフォーメーション難しいね」

梨子「それどころか次は9人になるからもっと大胆に変えることになるかも」

ルビィ「こうしてみると改めてμ'sって凄かったんですねー」

ダイヤ「そう言えばμ'sも9人でしたわね」

千歌「ダイヤさん知ってるの?」

ダイヤ「あれだけ話題になれば当然知ってますわ、これでもスクールアイドルをやろうとしてたこともあるんですから」

鞠莉「参考になるかもしれないからまたみんなで見てみる?」

ルビィ「見るっ!」

ダイヤ「ルビィ……貴女、ただ見たいだけじゃ……」

ルビィ「ぎくっ……」


曜「そろそろ再開しよっか」

千歌「はーい」

善子「ちょい待ちー」

果南「どうかした?」

善子「全員しゅーごー」

花丸「んん?」

千歌「なになに?」

善子「遂に来たわよ」

梨子「何が?」

善子「予選の案内」

曜「予選って……まさか」

ルビィ「遂に……夏のラブライブが始まるっ!」

善子「どうする?」

千歌「やる!」


善子「最初の予選は夏まつりの直後よ?」

果南「てことは、大会用に新曲を用意してる暇は無いね」

ダイヤ「この場合、私と果南さんは外れる方が良いのでは?」

果南「だね」

千歌「それはダメ」

花丸「うんっ、マルも9人で出たいズラ」

ダイヤ「足手まといになりますわ」

鞠莉「二人を外して出る大会に意味は無いわ」

梨子「私もそう思うかな」

ダイヤ「はぁ……」

果南「こりゃ言っても聞かないね」

善子「じゃ、責任もってリーダーがエントリーして」ズイッ


千歌「……?」

曜「……?」

鞠莉「……?」

梨子「……千歌さん?」

千歌「えっ?……あっ、リーダー私か!」

果南「えっ、それ忘れる……?」

ダイヤ「頭が痛くなってきましたわ……」

千歌「じゃあえっと……」カタカタカタ

花丸「本当に始まるんだね……」

ルビィ「うんっ!」

千歌「送、信!」カチッ

善子「オッケー」

曜「さーて、忙しくなるぞー!」

梨子「練習の前に一度ラブライブについて話した方がいいんじゃないかな、私もよく分かってないし」

千歌「そうだね、じゃあ予定変更!今からミーティング!部室に移動!」

後で続き行きます


ーーー

果南「ルビィせんせー、これさ何回くらい勝ち抜けばいいの?」キョシュ

ルビィ「参加組数にもよりますけど、本戦出場の為にルビィ達は最低でも県予選、県大会、地区予選の3回勝ち抜く必要があります」

鞠莉「なかなかに高い壁ね」

ルビィ「はい、例年通りならまず県予選はブロック毎に行われて約20組が県大会へ行きます、ちなみに去年の静岡県大会予選の出場組数は101組です」

善子「5分の1か……」

ルビィ「現段階のAqoursは静岡県内のランクで見れば27番目なので正直厳しいけど、可能性はあると思います」

曜「はーい」キョシュ

ルビィ「はい、曜ちゃん」

曜「県大会に行けたら?」

ルビィ「予選を勝ち抜いた約20組で県大会本戦が行われ上位5組に地区予選への出場権が与えられます」


千歌「それも勝ち抜いたら?」

ルビィ「Aqoursの場合は静岡、岐阜、愛知、三重の4県からそれぞれ勝ち進んだ計20組で地区予選が行われます」

花丸「地区予選からは何組が本戦に行けるズラ?」

ルビィ「ラブライブ本戦に行けるのは上位3組だけ」

花丸「まさに狭き門だね……」

ルビィ「そして全国15地区をそれぞれ勝ち抜いた計40組により2日間かけて本戦が行われます」

果南「ん?もしかして地区毎に本戦行ける組数が違う?」

ルビィ「うん、特に東京大会は参加組数がかなり多いから実質地区予選扱いで5組選出されるの」

千歌「ずるくない!?」

ルビィ「ううん、去年の東海地区の総参加は約400組だったんだけど、東京大会だけで約500組いたの」

鞠莉「ワーオ……」


ルビィ「他にも兵庫と大阪の阪神地区も5組で、東海、北海道、南関東、北九州が3組だったかな、後の地区は2組ずつ」

梨子「随分偏るのね……」

ルビィ「うん、都道府県毎に高校の数が何倍も違ったりするし、東京や阪神地区なんかは一校で2グループ以上参加したりするから」

ダイヤ「……ルビィってスクールアイドルに関する話をする時はいつもこんなに饒舌なんですか?」ヒソヒソ

曜「うん、凄いよね」

ルビィ「単純計算でも本戦に行けるのは100分の1以下、年々スクールアイドルは増えてるから実際はもっと少ないと考えてください」

善子「無理ゲーじゃないの」

ルビィ「正直なところ、ランク800代後半のAqoursが本戦に出れる確率は0に等しいです」

果南「ズバリ言っちゃうねー」

ルビィ「ただ一つ勝ち抜く方法があるとすれば……」

曜「あるとすれば……?」

ルビィ「夏まつりで更にブーストをかけた上での一般投票」


千歌「なにそれ?」

ルビィ「予選、本戦のすべてで行われるんだけど、審査員による技術面での採点とは別に一般観覧者による投票があるの」

ダイヤ「でも、それは学校関係者による集団投票でかなりの差が出るのでは?」

ルビィ「さすがお姉ちゃん、一つ一つ説明すると長くなるから省くけどそこはちゃんと色々対策がされてるから安心していいと思う」

ダイヤ「なるほど」

ルビィ「一般投票は総投票数から得票率を出してそれを元に加点されるの、だからそれで大きく加点することが出来ればチャンスがあると思う」

千歌「……?」

鞠莉「言わば魅力点ってところかしら」

ルビィ「うん、ラブライブ本戦出場が難しいのはそこ、どれだけ歌やダンスが上手くてもファンの心を掴めなきゃいけない、逆に言えば歌やダンスが多少拙くてもファンの支持を得られれば勝ち抜ける可能性があるの」

梨子「その指標がランキングなのね……」


果南「……そろそろ頭がパンクしそう」

善子「なるほどねー……」

花丸「より心動かされるアイドルになる必要があるってことだね」

ルビィ「うん、もちろんそれだけで全てが決まるわけじゃないし、冬は冬でまた少し違った採点基準があるんだけどそれはまたその時に話すね、というわけでルビィのラブライブ講座は以上でした」ペコリ

千歌「ルビィちゃんありがとう」

曜「なかなか骨が折れそうだねー」

ダイヤ「そうですわね」

千歌「でもやることは変わらないんじゃないかな」

善子「結局のところ、人気あるグループが勝てると」

ルビィ「乱暴な言い方になっちゃうけどそういうことだね……」

果南「私達が加入して人気落ちたりしない?」

花丸「果南さん、いつもより後ろ向きズラ」


果南「そりゃぁ、後から入るわけだし、今までみんながやって来たことを台無しにしちゃったらどうしよう、とか思うじゃん?」

ダイヤ「それについては私も果南さんと同じですわ」

千歌「大丈夫!」

果南「なんでそんなこと言い切れるの?」

千歌「今まで何とかなったから!」

曜「私達だって別に誰彼構わず加入させてるつもりはないよ」

ダイヤ「他にも加わりたいという方が?」

梨子「そういう訳じゃないですけど、でもなんとなくこのメンバーなら大丈夫かなって私も思います」

千歌「だからもうそういうネガティブな考え方無し!前だけ向いてー!」

曜「全速前進ヨーソロー!」ビシッ

善子「意味不明なんだけど」

果南「あはは♪」

ダイヤ「全く、敵いませんわ」クスクス


ーーー

曜「なんじゃこりゃー!」

花丸「おっきい画面がいっぱいズラ~!」

梨子「まさか……これ全部に映し出されるってこと?」

鞠莉「そういうことみたいね」

千歌「ほんとにプロのアーティストみたい!」

ルビィ「あわわわ……どうしよう、どうしよう、こんなところでライブするの!?」オロオロ

果南「めちゃくちゃお金かかってるねー」

ダイヤ「まさにスペシャルステージですわね……」

善子「ぅぇ……緊張で吐き気がしてきた……」

ルビィ「こんなフェスみたいな環境でほんとにやるの!?」

曜「何回確認するの、ルビィちゃん……」

ダイヤ「いきなりこんなところに立たされるなんて思いもしませんでしたわ……」


鞠莉「千歌っち、ルビィちゃん、代表の人が呼んでるから行くわよー」

千歌「あ、はーい」

ルビィ「うう、頭が回らない……」トボトボ

花丸「ルビィちゃん、頑張れ!」

果南「……」

ダイヤ「打ち合わせはいつもあの三人が?」

梨子「はい、千歌さんはリーダーで、ルビィちゃんはアイドルとか詳しいし、鞠莉さんも最年長ということで」

ダイヤ「そうでしたか……」

曜「うーん、これだけ広いとフォーメーションも少し直さなきゃダメだね」


善子「そうね、ここを直接見る人もいるわけだし、あんまり小さくまとまるような動きは無い方がいいかも」

花丸「ちょっと踊ってみる?」

曜「そだね、今のうちに動きは見た方がいいかも、とりあえずいつもの立ち位置に並んでみよっか」

梨子「こんな感じ?」

花丸「やっぱりいつもより広いね」

善子「んじゃ、半歩ずつ広がってみて?」

果南「こんな感じ?」

梨子「さっきよりは大きく見えるんじゃないかな?」

曜「これ以上広がっちゃうと踊りにくいかもだし、これで調整しよっか」

ダイヤ「分かりましたわ」


ーーー

ガヤガヤガヤ

梨子「いくら夏休みだからって……何この人だかり……」

曜「ぁぁ……もう酔ってきた……」ゲンナリ

果南「相変わらず曜は人混み苦手なんだね」

善子「そういや東京でも同じこと言ってたわね」

千歌「あー!浴衣着たかったー!」

ルビィ「仕方ないよ、ライブしなきゃダメなんだし」

花丸「浴衣は明日にお預けズラ」

ダイヤ「あんまりはしゃぎすぎて時間に遅れないようにお願いしますよ?」

鞠莉「それじゃ一時解散よー♪」


ーーー

ダイヤ「遅いですわ」

果南「まぁまぁ、まだ30分以上あるし」

ダイヤ「そういう気の緩みが後々に大事になるんです」

鞠莉「もぅだからってそんなにぷりぷり怒ることないじゃない」

ダイヤ「ダメです」

ルビィ「あ、お姉ちゃーん」

花丸「さすがダイヤさん、早いズラ」

善子「リリー達はまだなの?」

ダイヤ「まだですわ、全く……リーダーの自覚はあるんでしょうか……」

善子「……あんまり無いと思うわ」

果南「無さそうだねー……」

ダイヤ「はぁ……」


花丸「あ、あれ、千歌ちゃん達じゃないかな?」

鞠莉「あ、ほんとね、おーい♪」

曜「ほら千歌ちゃん!早くっ!」

梨子「遅くなってごめんなさい……!」

千歌「もごもご!」

ルビィ「千歌ちゃんハムスターみたいになってる……」

千歌「んくっ……いやぁ焼きそばの屋台が混んでて」アハハ

果南「あーなら仕方ないね」

ダイヤ「仕方なくありません、他のグループはもう来てるんですから、私達も挨拶して準備しますわよ」

曜「はーい」

鞠莉「梨子っち」

梨子「はい?」

鞠莉「口、ソース付いてるわよ」クスッ

梨子「っ……!」ゴシゴシ

ーーー

鞠莉「それじゃ、出番までゆっくりしてましょうか」

千歌「やっぱり外に出ちゃだめー?」

梨子「ダメって言われたでしょ?」

果南「えー」

千歌「えー」

曜「えー」

梨子「人酔いするのになんで曜さんも出たがるの……」

曜「じっとしてるの苦手だし!」

善子「そもそもトリなんか引き当てるからこんな待ち時間長いんじゃない……」

千歌「いやぁ、私そんなにくじ運強い方じゃないんだけどねぇ♪」

ダイヤ「お陰で私と果南さんの出番が締めの1曲になってしまいましたわ」

花丸「多分今日一番の注目を浴びるズラ……」

果南「荷が重い……」

ルビィ「わぁぁ♪」

鞠莉「やっぱりこうして見るとみんなハイレベルねー」


梨子「負けてられないよね」

曜「なんか……前から思ってたんだけど、梨子ちゃんって結構負けず嫌いなとこあるよね」

梨子「えっ!?そ、そうかな……」

ダイヤ「そういえば、私達に勝負しろなんて持ちかけたのも桜内さんでしたわね」

梨子「いや……あれは……」

ルビィ「いつも頼りになるお姉さんって感じ♪」

善子「まぁ、普段忘れてるけど本当はリリーも三年生のはずだしね、なんだかんだ頼りになるわよね」

梨子「年齢だけで言えばそうだけど……」

曜「私は!?」キョシュ

善子「賑やかし」

曜「この団子引きちぎるぞこのやろー!」ガシッ

善子「ぎゃー!やめなさいよー!」

ダイヤ「貴女達、あんまり騒がない!」

鞠莉「始まる前から体力使ってどうするのよ、もー」

梨子「あはは……」


ーーー

千歌「曜ちゃん、リボン曲がってるよ」

曜「ほんと?こう?」

花丸「スゥー……ハァー……スゥー……ハァー」

ルビィ「こう?こっち?」

善子「さっきの方がいいかも」

果南「なんかやっぱり恥ずかしいなぁ……」

千歌「果南ちゃんってフリフリな服全然着ないもんねー」

果南「変じゃない?大丈夫?」

鞠莉「とっても似合ってるわよー♪ベリープリティー♪」

果南「余計恥ずかしくなってくるからやめてよ……」

ダイヤ「もう少し締めてもらって大丈夫ですわ」

梨子「じゃあこれくらいですか?」

ダイヤ「はい、ありがとうございます」


千歌「よーし、じゃーいつもやろう!」

果南「いつもの?」

花丸「円陣組んで番号を言っていくの」

ダイヤ「掛け声みたいなのもあるんですか?」

ルビィ「千歌ちゃんがアクアーって言ったらサンシャイーンってみんなで言うの」

ダイヤ「……なんでサンシャインなんですか?」

果南「どうせ、千歌が適当に決めたんでしょ」

千歌「グサァッ!バレてる!?と、とりあえずやるよ!」

ルビィ「はぁい♪」

千歌「みんな、いくよ!1っ!」

曜「2っ!」

ルビィ「3っ!」

鞠莉「4っ♪」

善子「5っ!」

梨子「6!」

花丸「7っ!」

果南「じゃあ8っ!」

ダイヤ「9っ!」

千歌「アクアー!」

9人「サンシャイーン!」


曜「じゃあ先に行ってまいります!」ビシッ

ルビィ「頑張ってくるね!」

善子「しっかり盛り上げておくわ」

果南「いってらっしゃい」

ダイヤ「……」

果南「……」

ダイヤ「頼もしい背中ですわね」

果南「うん、ちょっと寂しいね」

ダイヤ「ええ、ですがその分、追いかける楽しみが出来ましたわ」

果南「だね!」

今日はここまで

引き込まれるねぇ

バーン

ようちか「善子ちゃん!」

善子「うわっ!?ちょっといきなり大声で入ってこないでよ」

ルビィ「あれ?今日、練習休みだよね?」

梨子「気になって気になって仕方ないみたい」

ダイヤ「桜内さんもですか?」

梨子「いえ、私は二人に引っ張り出されて……」

ダイヤ「あぁ、なるほど」

善子「ダメ、明日までおあずけ、私だって昨日夜にアップしてから見てないんだから」

曜「先輩の権限で見せてよっ」

善子「ダメなもんはダメよ、ネット周りは私が一任されてるんだから私の指示に従ってもらうわ」

千歌「じゃあリーダー命令で!」ビシッ

善子「却下」

千歌「なんでなのだー!」ガーン


梨子「だから明日みんなで見ればいいじゃない」

千歌「梨子ちゃんは気にならないの!?」

梨子「気にはなるけど……」

千歌「でしょ!?」

善子「そもそも今日、予選用に衣装直しに来てるだけでノーパソ持ってきてないし」

曜「えっ!?」

梨子「残念でした、帰るよ二人とも」ガシッ

千歌「あーん……気になって宿題に身が入らないよー」ズルズル

曜「上の空になっちゃうよー」ズルズル

梨子「日頃の宿題も出来てないのに何言ってるの……」

ルビィ「ば、バイバーイ……」

善子「先輩としてどうなのよあれ……」

ダイヤ「昔からあんな感じですわ……」


ーーー

鞠莉「おっまたせー♪」

千歌「遅いっ!」ビシッ

果南「ごめんごめん」

善子「んじゃ、揃ったし見ましょうか」カチカチッ

ルビィ「何位くらいになってるかな」

梨子「多分、他のグループも上がってるだろうけど……」

ダイヤ「この結果次第で夏のラブライブへの活路が開けるかどうか決まるのですね」

善子「……」カチ…

花丸「……善子ちゃん?」

曜「ど、どう?」

善子「……ん」スッ


ルビィ「ランク……471位!?」

果南「結構いいの?」

善子「いいなんてもんじゃないわ、上位10%くらいまでくい込んできたのよ」

梨子「始めてまだ半年も経ってないのにもうこんなところまで来ちゃった……」

千歌「これなら……ラブライブだってほんとに夢じゃないかも!」

曜「私達って実は凄いのかな!?」

鞠莉「イエース!勝利の女神が微笑んでくれてるのかも♪」

ルビィ「……」

ダイヤ「……ルビィ?嬉しくないの?」

ルビィ「嬉しいけど……」

花丸「けど?」

ルビィ「本当に大変なのはここからだから」


善子「……あー、そっか」

曜「どういうこと?」

善子「ほら、私達これまで上がる時は一気に上がってたでしょ?」

千歌「うん」

善子「特にみとしーライブの時、どのくらいランク上がったか覚えてる?」

鞠莉「……あっ、そういう事ね……」

花丸「2500位くらいから900位くらいまで上がってたような……」

梨子「あっ……それで上昇率で全国4位になったんだ……」

ルビィ「うん……上昇率って実はランクが低い方がずっと取り上げられやすいの」

果南「そうなの?」

ルビィ「だいたい二週間毎に集計されるんだけど、その期間で特にランクを大きく上げたグループがピックアップされるのが上昇率ランキングなの」

ダイヤ「なるほど……」

善子「極端な話、2位のグループが1万票獲得して1位になった場合と4000位のグループが千票獲得して3000位になった場合じゃ、単純に1000ランク上がった後者が急上昇と扱われる、と」

果南「それじゃ……」

ルビィ「うん、もちろん他にも色んな特集とかあるけど、やっぱり注目を浴びる事は今までよりずっと少なくなってくるから、ここから先はランクを一つ上げるだけでも難しいと思う」

千歌「……」

ルビィ「特にこのくらいのランクになってくると他のグループは3年目だったりするから固定のファンも多くいるし……」

鞠莉「動画を一つ上げるだけでも1度に多くのポイントが動く訳ね」

ルビィ「うん……もしかしたら今のランクで身動きが取れなくなるかもしれない……」


千歌「でも……だからって止まるわけにはいかないよね」

鞠莉「ふふっ♪そうね♪」

善子「まぁ、まぐれだったとしても間違いなくここまで来れたわけだし」

花丸「チャンスはあるズラ!」

曜「一つだけ、確実に更に上位に食い込める方法があるよね」

ダイヤ「果たしてランクを上げるのと、その方法を実現するのはどちらが難しいのでしょうか……」

梨子「でも、やることは結局同じですよね」

ルビィ「……うんっ!」

果南「んじゃ、のんびりしてないで練習しなきゃね」

千歌「……絶対行こう!ラブライブに!」


ーーー

梨子「予選なのに結構人が来てるね」

鞠莉「私達のブロックは周りの市からも出場してるからその応援でしょうね」

「みんなー!」

千歌「あっ!」

むつ「良かったー!始まる前に会えた!」

いつき「応援に来たよ」

曜「ありがとう!」

よしみ「とはいっても、抽選外れちゃったから中で応援してあげられないけど……」

千歌「来てくれただけで充分だよ!」

むつ「頑張ってね!本戦は絶対会場で見るから!」

曜「うんっ!私達も絶対本戦に行くから!」

梨子「あれ?そういえばルビィちゃん達は……」キョロキョロ

ダイヤ「あちらで果南さんと一緒にファンに囲まれてますわ」

千歌「ファン!?」


ファン「Aqoursの黒澤ルビィちゃんですよね!?可愛い~♡」

ルビィ「あわわ……あ、ありがとうございます……」

ファン「私っ、国木田さんの歌すっごく好きなんです!」

花丸「そ、そんな、マルは全然……」

ファン「つ、津島さん……あ、握手してください!」

善子「握手っ!?え、ええ、いいわよ」ギュッ

ファン「松浦さんって普段どんな事してそのスタイル保ってるんですか!?」

果南「私、ダイビングしてるからそれのせいかな~」


鞠莉「すっかり人気者ねー♪」

千歌「むむっ……羨ましい……」

曜「千歌ちゃん千歌ちゃん」トントン

千歌「ん?」

ファン「あのっ!Aqoursの皆さんですよね!?」

梨子「えっ?あ、そうですけど……」

ファン「私達みとしーのライブ見に行ったんです!」

千歌「あ、ありがとうございます!」

ファン「もちろん夏まつりも見に行きました!あの日の中で一番凄かったと思います!」

ダイヤ「そう言ってもらえると嬉しいですわ」

ファン「良かったら写真一緒に撮ってもらっていいですか!?」

鞠莉「OK♪じゃあみんなで撮りましょう♪」

むつ「じゃあ私が撮ってあげるよ」


よしみ「みんなー、はいチーズ♪」

カシャッ

ファン「ありがとうございます!あのっ!今日も応援してるんで頑張ってください!」

曜「ありがとう!またライブにも来てねー♪」フリフリ

千歌「……」ポカーン

鞠莉「千歌っち、口開いてるわよ?」

千歌「私達にも、ちゃんとファンがいたんだね」

梨子「こうして直接応援してもらえると嬉しいね」

曜「ますます負けられないね!」

千歌「うんっ!」

ダイヤ「さ、そろそろ中に入りましょうか」

千歌「おーい!果南ちゃーん、みんなー入るよー!」

ルビィ「あっ、ま、待ってー」アワアワ

後でまたあげます


ーーー

千歌「夏まつりとブロック予選を終えて今更ですが!夏休みと言えば!」

ようかな「海ー!」

梨子「毎日見てるのに?」

果南「はぁ……梨子ちゃん、分かってないなぁ」ポンポン

曜「夏の海は夏の海という特別なものなんだよ!」

梨子「そ、そうなの?」

花丸「オラは肝試しもしたいズラ~」

梨子「肝試し?」

花丸「夜に怖いところに行ったりするズラぁ」ズイッ

梨子「こ、怖いのは遠慮しておこうかな……」

善子「クーラーの効いた部屋で一日中ゴロゴロしてるだけでいいわ……」グデェ

ダイヤ「あまりだらけていると身体壊しますわよ?」

鞠莉「ウチのホテルでバカンス気分を味わうのはどう?♪」

千歌「いいねっ!」ビシッ


ルビィ「もぉ!みんな遊んでる暇ないよぉ!」

千歌「ルビィ先生!」

曜「そこをなんとか!」

ルビィ「ダメですっ!次の土曜日には県大会なんだよ!ブロック予選突破したからって浮かれてる場合じゃありませんっ!」フンス

善子「具体的に何すればいいのよ」グデェ

曜「あっ!合宿とか!」

千歌「合宿!なんかいい響き!」

梨子「合宿?」

果南「みんなで同じところで寝泊まりして何日も常に一緒で練習したりするの」

梨子「へぇ……ちょっと楽しそう」

ダイヤ「では、県大会本戦までに合宿ということで?」

花丸「はーい」

果南「でもどこでやる?」


善子「マリーの家でいいんじゃない?広いし」

鞠莉「それは無理ねー、パパの仕事関係者も出入りするから」

ダイヤ「私達の家も同様に無理ですわね」

ルビィ「花丸ちゃんの家は?おっきいお寺だし……」

花丸「夏休みは子供向けの学習合宿とかで開放するから難しいズラ……」

善子「ウチは近くに練習出来る所なんかないし、そもそもマンションだから9人も無理」

果南「私の家も泊まるとこないなぁ」

曜「ウチも泊まれないかなぁ……」

梨子「私のところも……」

8人「……」チラッ

千歌「えっ、と……き、聞いてみないと分かんないかなぁ……」オロオロ

果南「鞠莉んところのホテルは?」

鞠莉「練習で敷地を使うくらいならまだしも、泊りがけってのはねー……」


果南「となるとやっぱり十千万だね」

千歌「……あ、もしもし?志満ねぇ?その……来週四、五日くらい予約入ってない部屋とかない?」

曜「でも近場で合宿ってのも変な感じだね」

ダイヤ「私達ではあまり遠出するお金もありませんし」

ルビィ「や、やっぱり衣装代のせいかな……」

善子「それは必要経費だから気にしなくていいんじゃない?」

ダイヤ「ええ、それに大会直前ですから下手に環境を大きく変えて調子を乱してもいけませんし」

鞠莉「練習場所があるのに別の場所に行く必要もあんまりないしねー」

ダイヤ「ええ、時間は気にせず練習を出来るだけでも十分だと思いますわ」


千歌「……うん、分かった、ちょっと相談してみる、ありがとね、はーい」ピッ

花丸「どうだったズラ?」

千歌「流石にこの時期じゃ何日も空いてる部屋はないって、満室の時もあるから部屋を入れ替えるのも無理って」

梨子「それじゃ、合宿出来ないんじゃ……」

千歌「でも宴会場なら使えるって、朝はお客さんの朝食時に使うから早く出なきゃだし、夜も宴会後になるから結構遅くなっちゃうけど……」

果南「どうする?」

善子「まぁ、それしか合宿出来るところないんだし、やるならありがたく使わせてもらうしかないでしょ」

千歌「ただその……」

梨子「……?」


ーーー

美渡「はい、じゃあとりあえず片付けよろしく!あんまりちんたらしてたら寝る時間なくなるんだし頑張れー」ケラケラ

千歌「じゃあ、一年生は座布団を全部あっちに集めてから、食器を下げる!」

ルビまる「はいっ」

善子「何でこんなことに……」ゲンナリ

千歌「三年生は厨房からワゴン持ってきて、その後に銘々膳を下げて!」

ダイヤ「二人共、行きましょうか」

かなまり「はーい」

千歌「私達はまずゴミをまとめよう、固形燃料とか竹箸とか、残り物は厨房で処分するからそのままで!」

曜「了解であります!」

梨子「はーい」


ーーー

志満「じゃあそろそろ脱衣場の方掃除するから三人来てくれる?」

曜「私いきまーす!」

果南「じゃあ私も行ってくるよ」

ダイヤ「私も行きますわ」

千歌「はーい」

美渡「千歌ー、お父さんが厨房に二人くらい寄越せってー」

千歌「分かったー!洗い物とかくらいだと思うから梨子ちゃんと鞠莉先輩行ってきてもらえます?」

梨子「分かったわ」

鞠莉「レッツゴー♪」

千歌「私達はここを早く掃除しちゃって早く寝られるようにしなきゃね」

ルビィ「はいっ!」

善子「練習よりきつい……」

花丸「ほーら善子ちゃん頑張るズラ!」


ーーー

善子「っ……はぁぁ……露天風呂最高……」

ダイヤ「流石に一日練習して旅館のお手伝いは疲れますわね……」

果南「店と接客の仕方が違うから、変な疲れが来ちゃった」

梨子「いつもこんなことしてるの?」

千歌「いつもは繁忙期だけ近所の人がお手伝いしてくれるんだけどね、今回は私達がいるから他の人は昼間だけ」

曜「そういえば十千万でアルバイトとか見たことないね、厨房は何人もいるのに」

千歌「普段からそんな沢山泊まりに来るわけじゃないからねー、厨房の人達も掛け持ちとかしてるみたいだし」

鞠莉「色々大変なのねー」

果南「淡島にホテル建ったからじゃないの?」

鞠莉「oh……」ブクブクブク


千歌「それもあるかもしれないけど……やっぱり内浦に来る人は昔より減っちゃってるみたい」

ルビィ「でも、私達が頑張ったから去年より人は来てるって夏まつりの人達も言ってたよ!」

花丸「うんっ!ちょっとずつでも内浦に興味持ってくれる人は増えてる!」

善子「とはいえ、それもいつまで続くかでしょ、マリー達が卒業したらAqoursも終わるんだし」

ルビィ「ぁぅ……」

花丸「それもそうだけど……」

善子「あっ……」

果南「……」

千歌「そういえば……そうなんだよね……」

ダイヤ「……」

曜「……」

善子「……変なこと言ってごめんなさい……」


梨子「……私達の名前」

曜「ん?」

梨子「Aqoursの名前を決めた時の事覚えてる?」

花丸「……?」

鞠莉「ファイブマーメイド?」

梨子「そ、そっちは忘れてっ!」バシャバシャ

ルビィ「……A・Q・Ours」

果南「……?」

千歌「ぶくぶく湧き出して……絶対に割れない永久の泡……」

ダイヤ「泡……?」

梨子「一つ一つの泡はちっちゃくて誰にも気付いてもらえないかもしれないけど……それが沢山集まったら」

善子「……」

曜「……誰かが、気付いてくれる!」

ルビィ「私達、ここにいるんだよって!」

鞠莉「この先もずっと残り続ける泡……」


梨子「……もちろんラブライブで優勝したりできたら凄い事だし、きっと沢山の人にも見てもらえる……でもそれだけが私達のしたい事じゃないんじゃないかな」

ダイヤ「……」

梨子「千歌さんがスクールアイドルを始めたのは、ラブライブに勝つためでも、内浦を救うためでもないよね?」

千歌「そうだったね……最近私なんかいろんな事が思った以上に上手くいって……浮かれて迷子になってたかも」

果南「千歌……」

千歌「私……ここにいるよって……私達はここにいるんだよって……ただそれを伝えたかったんだ」

花丸「……」

千歌「町を離れた人や……まだ知らない人や……とにかくいろんな人に伝えたい!」ザバァッ

ダイヤ「……千歌さん?」



千歌「私達はここだよぉぉっ!!」


善子「いっ!?ちょっと、いきなり叫ばないでよ」

曜「でもやっぱりそのための一番の近道は?」

ルビィ「ラブライブ!」

鞠莉「出場するためにはー?♪」

花丸「大会で入賞する!」

梨子「入賞するために私達がすることは?」

千歌「明日も練習だっ!」

ガラッ

美渡「千歌!アンタこんな時間に何考えてんの!寝てるお客様もいるんだよ!」

千歌「あっ!?……ご、ごめんなさい……」ブクブクブク


ーーー

曜「柔軟終わり!このまま浦の星まで走るよー!」

善子「ぅぇ……マジで……?」

千歌「じゃあいってきまーす!」

志満「頑張ってねー♪」フリフリ

しいたけ「ワウッ」

ルビィ「ひっ!?い、いってきまーす!」ダッ

志満「あ、鞠莉ちゃん、だったかしら?」

鞠莉「はい?」

志満「みとしーのライブ、この町の為に頑張ってくれてありがとうね」

鞠莉「えっ?」


志満「ふふっ、うちもそれなりに古いから少しくらいはそういう話も耳に入るのよ」

鞠莉「そうでしたか……その節はお騒がせしてすいませんでした」ペコリ

志満「いいのよ、それにライブするためにあんなに夜遅くまで一人で交渉してるの見ちゃったら、ね♪」

鞠莉「……えっ!?」

志満「ふふっ♪千歌ちゃん達には内緒にしてあるから安心して♪それじゃ練習頑張ってね♪」

鞠莉「……」ポカーン

花丸「小原せんぱーい!置いてっちゃうよー!」

鞠莉「あっ、す、すぐ行くわー!」


ーーー

千歌「曜ちゃん、銘々膳おねがーい」

曜「了解であります!」

果南「空き瓶はこれだけ?」

善子「空き瓶まだあるー?」

梨子「ないよー」

果南「んじゃ持っていっちゃうね、よいしょ」

美渡「千歌ー、みんなもちょっと」

千歌「なにー?」

美渡「明日早く帰ってこれる?」

千歌「何かあるの?」

美渡「お客様のリクエスト」

千歌「リクエスト?」

美渡「Aqoursのステージ見たいってさ、そこで踊れる?」

千歌「えっ!?」

ルビィ「お客さんが!?」


美渡「明日ここ使うお客様の一組がね、お昼食べに戻って来たアンタ達に気付いてさ」

千歌「本当に?」

美渡「若い人もいるグループだったからねー、で、是非見たいって、一応基本的にそういうサービスはしてないとは伝えてあるけど」

梨子「どうする?」

千歌「他のみんなにも聞いてみないと……」

美渡「じゃあ寝るまでに決めといてねー」

千歌「はーい」

果南「次何か運ぶー……ってどうかした?」

曜「なになに?」

千歌「お客様が明日ここでAqoursのステージ見たいって」

曜「ここで?」

果南「やるの?」

千歌「私は……やっても良いかなぁとは思うけど」

梨子「じゃあやろっか?」

善子「まぁ、これも練習の一環と思えば別に良いけど」

千歌「後でマルちゃんと鞠莉先輩が戻ってからまた決めよう」


ーーー

志満「みんなお疲れ様ー♪凄く良かったわー♪」

美渡「お客様喜んでたよ」

千歌「良かったぁ」

花丸「いつものライブとまた違う感じでドキドキしたズラ」

果南「でも、こういうのも悪くないね」

鞠莉「ウチのホテルでも出来ないかしら」

曜「沼津や静岡以外からの人にも覚えててもらえてるのって嬉しいね」

ルビィ「うんっ!」

美渡「で、喜んでるところ悪いけど片付けはいつも通りよろしく」

千歌「だよねー」ガクッ

志満「ごめんねみんな、一応約束だから」

曜「大丈夫でありますっ!」

千歌「よーし、ちゃちゃっと片付けて温泉入っちゃお!」

善子「はーい……」


ーーー

鞠莉「はぁ……疲れたわー」

ダイヤ「これで合宿も終わりですわね」

果南「うん、明日はゆっくり休んで明後日の県大会に備えなきゃね」

千歌「じゃあ、戻って早く片付けして最後は温泉でゆっくりしよっか」

曜「はーい」

ルビィ「梨子先輩は合宿どうでした?」

梨子「楽しかった♪」

ルビィ「えへへ、ルビィも♪」

花丸「なんだか夏休み中ずっと合宿してたいね♪」

善子「流石にそれは辛いわ……」

果南「マルー、なら私が付き合ってあげよーか?」

花丸「え゛っ……それは遠慮するズラ……」


ダイヤ「いくら何でも果南さんの個人トレーニングはハード過ぎますわ」

果南「えーそうかなぁ」

曜「なかなかいい汗かけるのにねー」

ルビィ「二人は元々運動出来るからそんなこと言えるんだよぅ……」

梨子「そんなにキツイの?」

千歌「今度朝早く起きてみて、外見たら新聞配達のバイクと一緒に走ってるから」

梨子「そんな時間に走ってるの!?」

善子「アスリートかっ」


志満「あ、帰ってきたわ、おーい」

千歌「あれ?志満ねぇどーしたの?」

志満「練習お疲れ様♪はい♪」

曜「これ……花火?」

花丸「沢山ある……」

志満「頑張ったご褒美よ♪」

果南「片付けはいいんですか?」

志満「明後日大会なんでしょ?まだ夏休み始まったばかりとはいえずっと練習漬けなんだし、ちょっとくらい遊んでも罰は当たらないわ♪」

千歌「志満ねぇ……ありがとう!」

志満「ふふっ、お礼なら誰かさんに言ってあげて♪」

ルビィ「誰かさん?」

志満「わざわざ買ってきてくれたのよ」

千歌「誰か……むっ……まさかまた何か要求されるんじゃ……」ムムッ

志満「そんなこと言わないの、みんなAqoursの事応援してるんだから」


ダイヤ「本当にいいんでしょうか?」

志満「大丈夫♪ほら、浜でゆっくり楽しんでらっしゃい♪温泉も用意しておくから♪」

千歌「うんっ!じゃあみんな浜までダッシュ!」

善子「ちょっ、また走るの!?」

梨子「ありがとうございます!千歌さん待ってー!」

志満「火には気を付けてねー♪」


志満「ふふっ♪直接渡してあげれば良かったのに」

美渡「……あんまり持ち上げたら千歌はすーぐ浮かれるからねー」

志満「もう、そんなこと言ってー」

美渡「じゃ、宴会場片付けてくるねー」

志満「もう……素直じゃないんだから♪」


ーーー

善子「あー久々の家だー」バタッ

善子「今日はもう部屋から一歩も出ないわよー……」グデェ

善子「……」

善子「……ランキングだけチェックしとこ」ノソノソ

善子「んーと……457位か……」カチカチッ

善子「ルビィの言う通りなかなか上がりにくくなってるわねー」カチカチッ

善子「まぁ……着実に見てる人は増えてるみたいだけど……」カチカチッ

善子「あ、またみとしーのコメント増えてる?……ん?」

善子「……」カチッ…

善子「……っ」

善子「……」カチカチッ

善子「何よこれ……」


ーーー

千歌「おー!やっぱりブロック予選より人多い!」

ダイヤ「ラブライブ本戦までの途中とはいえ、県内のスクールアイドルの頂点を決めるわけですからね」

曜「むっちゃん達はもう中に入ってるって」

ルビィ「今回は抽選当たったんだね!」

花丸「どんな人が出場するんだろう」

善子「チェックした限りじゃ半分以上が私達よりランク高いグループよ」

曜「やっぱりなかなか大変そうだね」

果南「私達もみっちり練習したんだし、自信持ってやれば大丈夫だよ」

鞠莉「そうね、今更こんなところで怖気付くAqoursじゃないわ!」

千歌「よしっ!地区予選目指してみんな頑張ろー!」

8人「おー!」

今日はここまで


ーーー

美渡「たっだいまー」

志満「あ、美渡おかえりー」

美渡「……千歌は?」

志満「部屋にいるわ」

美渡「やっぱ、落ち込んでる?」

志満「美渡も結果見たの?……帰ってきた時は元気そうにしてたけど……多分」

美渡「ま、スクールアイドルもそう甘くはないって事だね、千歌にもいい勉強になったんじゃない?」ガサゴソ

志満「これで辞めるなんて言い出さなきゃいいけど……」

美渡「どうだかねー、片付ける部屋とかある?」

志満「じゃあ椿と竜胆にお布団運んでくれる?」

美渡「はーい」

志満「……もう回りくどいんだから」

『勝手に食べていいぞ by美渡お姉様』


ーーー

梨子「……」ボフッ

ルビィ『……終わっ、ちゃった……の?』

梨子「……」

鞠莉『17位……』

梨子「……」ギュッ

果南『……まだ足りなかったみたいだね……』

梨子「……」

花丸『……あんなに頑張ったのに……』

梨子「……」ズキッ

善子『……清々しいくらい、ぼろ負けね……』

梨子「……」

ダイヤ『……仕方ありませんわ……』

梨子「……」

曜『……悔しい……』

梨子「……」グスッ

千歌『……やっぱりそんなに甘くないよね』

梨子「……」


コンコン

母「……梨子?」ガチャッ

梨子「……なに?」ゴシゴシ

母「……残念だったわね」

梨子「うん……他のグループの方がずっと上だった」

母「……隣座ってもいい?」

梨子「……うん」

母「……お疲れ様」ナデナデ

梨子「……」

母「今日はゆっくり休んで、また明日から頑張りましょう?」

梨子「うん……」

母「……」

梨子「……」


母「……昔ね」

梨子「……?」

母「梨子が初めてピアノのコンクールに出た時」

梨子「……うん」

母「その時は入賞も出来なくて、梨子は昔から負けず嫌いなところあるから、すっごく泣いててね」

梨子「……」

母「お母さんもお父さんもいっぱい頑張ったねって慰めたことがあるの」

梨子「うん……」

母「でも、その時にね梨子が『私、前より一番上手に弾けたよ』って泣きながらだけど誇らしげに言ったの」

梨子「……!」

母「ただ勝ち負けに拘るんじゃなくて、自分の出来ることに自信を持てる梨子が、お母さん凄く嬉しくてね」

梨子「……出来ることへの自信……」

母「それで今日のみんなの……梨子のステージをテレビで見て思ったの」

梨子「……?」


母「誰よりも楽しそうに踊るみんなは、きっとまだまだ成長出来るって」

梨子「……」

母「梨子が中学生でピアノコンクールの最優秀賞を取れたみたいに、Aqoursももっと大きくなれるって」

梨子「……」

母「時間は沢山ある訳じゃないんだろうけど、4月から始めて、ここまで来れたんだもの」

梨子「……」

母「お母さんは今からもう冬の大会が楽しみよ♪」ナデナデ

梨子「……うん」

母「まだ思い出せなくても大丈夫、悔しい思いをしてもやって来たことを誇れる強さは梨子の心がちゃんと覚えてる」

梨子「こころ……」ギュッ


母「貴女が産まれた時からずっと見てきてるお母さんにはちゃんと分かるわ」ポンポン

梨子「……うん」

母「……♪」ナデナデ

梨子「……ありがとう、お母さん」

母「ふふっ、今日は梨子の好きなものを作ってあるから、それ食べて、また明日からみんなで頑張れ♪」

梨子「……うん!」


ーーー

梨子「流石に早すぎたかな……」ガラッ

ダイヤ「あら、随分遅かったですね」クスッ

梨子「ダイヤさん……!?」

ルビィ「あっ!梨子先輩♪おはようございます♪」

梨子「ルビィちゃんも……」

果南「ただいまー」

花丸「はぁ……はぁ……あ、朝からこんなに走ってるなんて……」

曜「やっぱり朝走ると気持ちいいなぁ♪あっ、梨子ちゃんおはよー♪」

梨子「果南さんに曜さん、マルちゃんまで……」


ガラッ

善子「ふわぁぁ……って、いっぱいいるし……」

梨子「よっちゃん……」

鞠莉「さーて、どこに隠れてようかしらー♪」ジャーン

ダイヤ「隠れるとは?」

鞠莉「oh……遅かった……」

梨子「鞠莉さん……」

善子「なによ、みんな考えること一緒じゃない」

ルビィ「そうみたいだね♪」

果南「あとは千歌だけだけど……」

ダイヤ「真っ先に来てると思ってたんですけどね」


ガタッ

鞠莉「何っ!?」

花丸「ロッカーから?」

曜「……まさか」

ガチャッ

千歌「……zzz」

ルビィ「……寝てるね」

ダイヤ「もしかして私達より先に来て隠れてたと……?」

花丸「そういう事みたい……」

梨子「……千歌さん」トントン

千歌「……zzz」

梨子「千歌さん!」

千歌「っふぇあ!?」ビクッ


果南「あーあー涎垂れてるし」クスクス

千歌「はれぇ?……みんな?」ゴシゴシ

善子「練習始めるわよ」

千歌「……えっ!?みんな来ちゃったの!?」ガタッ

ダイヤ「当たり前ですわ」ヤレヤレ

千歌「えー……せっかく驚かそうと思ったのにぃ……」

鞠莉「ちょっとチープだったわねー♪」

梨子「隠れる気満々だった鞠莉さんが言います?」

鞠莉「な、何のことかしらー」


花丸「何からする?」

ダイヤ「まずは冬のラブライブに向けてこれからどうしていくか話しましょうか」

曜「ルビィ先生の出番だね!」

ルビィ「任せてくださいっ!」フンス

千歌「……」ポカーン

鞠莉「新曲を持ってきたから後で聴いてくれる?」

花丸「分かりました!」

果南「夏休み終わった後も含めて、練習プランも練り直さないとね」

善子「あんまりハードなのはやめてよ?」

果南「えー」


千歌「……みんな」

ルビィ「ほら千歌ちゃん♪」

ダイヤ「いつまで惚けてるんですか?」

果南「夏休みもまだ半分あるしね」

曜「早く始めようよ!」

花丸「やらなきゃいけない事がいっぱいあるズラ!」

鞠莉「止まるわけにはいかない、でしょ?♪」

善子「やらないなら帰るわよー?」ニヤッ

梨子「千歌さん、お願い♪」

千歌「……うん!」


千歌「じゃあ今日も……Aqoursの練習始めるよ!」


ーーー

善子「これ何インチよ……」

鞠莉「75くらいだったかしら」

花丸「マルよりおっきいズラ~……」

果南「そろそろ始まるよー」

曜「……この感じ……ポップコーンが欲しくなる!」

ダイヤ「映画じゃないんですから……」

千歌「……」ソワソワ

梨子「本当に最初から最後まで生中継なの?」

果南「そう、書いてあるけど」

善子「断言するわ、私途中で寝る」

ルビィ「みんな静かに!」


TV『ーー8月も最終週!夏の暑さに負けない盛り上がりがやって参りました!皆様お待ちかね、第七回ラブライブ!!』

千歌「始まった……!」

TV『全国を勝ち抜いた総勢40組のスクールアイドルによる頂上決戦!』

鞠莉「……」

TV『全てのスクールアイドルの頂点に立つのは一体どのグループなのかっ!』

ダイヤ「……」

TV『日本中が注目する中、アキバドームのステージにスクールアイドルが集結します!』

ルビィ「まさにそうそうたる顔ぶれだね……」

善子「いや、分かんないし……」

『前回優勝者により、優勝旗が返還されます! 』

果南「これがν-tral?」

ルビィ「はい」

梨子「……っ」ズキッ


『第一回優勝者にして、公式サポーターでもありますA‐RISE綺羅ツバサさんより、開会の挨拶です!』

鞠莉「私達も優勝すればプロアイドルになれるのかしら?」

曜「μ'sがプロになってないし無理なんじゃない?」

ルビィ「そもそもラブライブ優勝経験のあるプロアイドルはA‐RISEだけだよ」

千歌「そうなの?」

ルビィ「うん、あとテレビに出てる人はμ'sの矢澤にこさんがマルチタレントとして出てるくらいかな……」

鞠莉「そう簡単にはいかないのね」

ルビィ「もちろんプロとしてデビューするチャンスはぐっと上がるけど、それでもプロとしてやっていくのはスクールアイドルよりもずっと難しいんだと思う」

TV『ーーエントリーナンバー1!雨にも負けず風にも負けず、三度目の本戦出場!悲願の優勝なるか!岩手県花巻市立ーー』


ーーー

曜「1、2、3、4、1、2、3、4、おっけー」

果南「チェックするよー」

千歌「どれどれ~?」

ダイヤ「果南さんは少しここの振りが大きいので、もう少しコンパクトにしてもいいのでは?」

果南「あー確かに、次ちょっと気を付けるよ」

曜「あっ、ここちょっとズレてない?」

ルビィ「あっ、ルビィがちょっと早いかも……」

千歌「後でそこだけ合わせてみよっか」

ルビィ「うんっ」


花丸「……頭痛、大丈夫?」

梨子「……うん、ごめんね」ズキッ

鞠莉「あまり酷いようなら病院行ったほうが良いんじゃない?」

梨子「うん……」

善子「明日から二学期も始まるし、ライブだって控えてるんだから、無理しないでよ?」

梨子「うん……」ズキッ


ーーー

医者「あくまで痛みを和らげる為の薬だから、あまりにも酷くて動けない時に服用してくださいね」

梨子「はい……」

医者「激しい運動よりもストレッチや軽い体操を中心にしてもらったほうが改善に繋がると思いますから、焦らずゆっくり様子を見ましょう」

梨子「はい……ありがとうございました」ペコリ

梨子「……」

梨子「……これから頑張らなきゃ駄目なのに……何してるんだろ……私……」ズキッ


ーーー

梨子「……」トボトボ

梨子「……あっ」

梨子「第七回ラブライブ特集……ν-tral、二度目の優勝……」ペラッ

梨子「……約束……守れない、のかな……」ボソッ

梨子「……」ピタッ

梨子「あれ……約束……?私何言ってるんだろ……」ズキッ

梨子「だめだめ、帰って休まなきゃ……頭痛いからってネガティブになっちゃだめよ……」トボトボ


ーーー

千歌「梨子ちゃんお疲れ様っ!今日は調子良さそうで良かった♪」

梨子「うんっ!ライブ楽しみだったから、ちゃんと整えて来たよ♪」

善子「松浦先輩とマリー、歌詞間違えてなかったー?」ニヤッ

果南「げっ、バレてた……」

鞠莉「そういうのもライブの醍醐味なんだからいいじゃない♪」

ダイヤ「完璧にしろとは言いませんが、開き直るのはどうかと」ヤレヤレ

ルビィ「善子ちゃん!この間のPVは評判どう?」

善子「えっ?あー、うん、上々よ」

花丸「ランキングはどうズラ?」

善子「えっ、まぁ、ランクはイマイチかな、見てくれる人は格段に増えてるけどね」

曜「コメントは?いっぱい来てる?」

善子「コメント……うん、まぁ、いつも通り……大丈夫……ごめん、ちょっとお手洗い行ってくる」

曜「……?」

ルビィ「善子ちゃん……?」


ーーー

梨子「……」

ガタッガタッバンッ

梨子「……まだ入っちゃだめー?」

ダメー!

梨子「はーい……何やってるんだろう……」

鞠莉「あれ?梨子っち、ドアの前で何してるの?」

梨子「あ、鞠莉さん……それが中に入るなって言われて」

鞠莉「……ははーん、なるほどね♪」

梨子「そういえば、その大きな箱なんですか?」

鞠莉「イッツァシークレッツ♪ちょっと通してくれる?」

梨子「あ、はい」


鞠莉「はぁい♪マリーのとうちゃーーきゃぁっ!?」

梨子「ひっ!?鞠莉さんが部室に吸い込まれちゃった!?」

オソイデスワッ
ソーリーソーリー♪
ドコオイタズラー!?
ソッチニナイノ!?

梨子「……」

梨子「……まだかなぁ」

バァンッ

梨子「っ!?」ビクッ

千歌「おまたせ!」

梨子「あ、もう入ってもーー「そいやっ!」ガバッ

梨子「きゃっ!?何っ!?何被せたの!?紙袋!?見えないよっ!?」アワアワ

千歌「外しちゃダメだよ!足元気を付けてね」

梨子「気を付けるも何も見えないんだって……」

千歌「梨子ちゃん、ここ、椅子あるから座って」

梨子「い、椅子?えっと、これ?」

千歌「じゃあ紙袋取るよー」

バッ


梨子「一体何を……」

8人「ハッピーバースデー!!」

梨子「えっ……と……」キョトン

曜「18歳のお誕生日おめでとう梨子ちゃん♪」

鞠莉「19日なのはもちろん分かってるんだけど、平日じゃない?」

梨子「え、えぇ……」

ルビィ「だからちょっと早いけど今日お祝いしちゃおって、みんなで話してたの♪」

梨子「そう、なんだ……」

果南「うーん……あんまり嬉しくなかった?」

梨子「あ、いえ……そういう訳じゃなくて……」

善子「……?」


梨子「その……自分の誕生日って実感があんまりなくて……なんて言うか、今の私に取ってはまだ2回目だから……」

ダイヤ「確かにそうですわね……すみません、私達の考えが至らないばかりに」

梨子「あっ、別にお祝いしてもらって嫌だったとかじゃないんですよ?」アワアワ

千歌「じゃあ18歳のお誕生日兼、2歳のお誕生日ってことで!」

花丸「いや、それはなんだかおかしい気がする……」

梨子「……ふふっ♪」

千歌「あっ、笑われた!?一応真面目に考えてるつもりなんだよー!?」ガーン

梨子「ごめんなさい♪」クスクス

鞠莉「まぁまぁ細かい事は気にしないで♪とにかくバースデーパーティーを楽しみましょう♪」

曜「賛成ー!」

梨子「うんっ♪みんなありがとう♪」


ーーー

千歌「沖縄と言えばー?」

曜「海ー!」

梨子「また海……?」

曜「はぁ……分かってないなぁ梨子ちゃん、沖縄の海は沖縄の海という特別なものなんだよ……」ポンポン

梨子「前にも聞いたような台詞ね……」

果南「今年は沖縄なんだ、良いなぁ、私も沖縄で泳ぎたかったなぁ」

曜「果南ちゃん、思い出話で我慢してよね」ニシシ

ダイヤ「あの二人の前世は間違いなく魚ですわね」

ルビィ「あはは……」


鞠莉「しゅーがくりょこーかー」ムスッ

花丸「あ、そっか小原先輩、留学してたから……」

鞠莉「そーなのよー……自腹でついて行っちゃおうかしら」

ダイヤ「馬鹿なこと言わないでください」

鞠莉「生徒会長権限でどうにかならないのー?」

ダイヤ「なりません、そもそも私の任期はこの間終わりました」

鞠莉「まだ出入りしてるじゃなーい」

ダイヤ「引き継ぎをしてるんです!」

善子「……」

果南「どーしたの?善子ちゃん、難しい顔して」


善子「えっ?あー、私も修学旅行、あんまりいい思い出ないなーって」

花丸「なんで?」

善子「ふふっ……ヨハネがあまりにも崇高過ぎて並び立てる人がいなかったのよ!」ギランッ

鞠莉「ぼっちだったのね」

善子「ぼっち言うなぁ!」

花丸「来年は絶対オラが一緒に回ってあげるズラ!」ギュッ

ルビィ「もちろんルビィも一緒だよっ!」ギュッ

善子「そんな不憫そうな目で見ないで……」シクシク

千歌「というわけで、数日はいないからよろしくね」

梨子「新曲の準備とか諸々任せちゃってごめんね?」

曜「次のライブも近いしね!」


ーーー

善子「混沌より出でし反逆の業ーカルマー」

花丸「却下」

善子「じゃあ、魂に刻まれし獄炎の聖痕ースティグマー」

花丸「却下」

善子「えー……じゃあ偽りの楽園に囚われた者達の解放ーリベルタスー」

花丸「さっきから意味不明ズラ……」

善子「ぬぅ……作詞って難しいわね」


果南「ここでバク転、よっ!」

鞠莉「いや……無理でしょ」

果南「そう?曜は出来たと思うけど」

鞠莉「貴女達二人くらいしか出来ないわよ」

果南「えー、あっ、じゃあこういうのは?鞠莉そこに立ってて、屈んじゃダメだよ」

鞠莉「バッドフィーリングしかないわ……」

果南「いくよー!」ダッ

鞠莉「ちょっ!?」ビクッ

果南「とうっ!」タンッ

鞠莉「怖っ!」

果南「よっと、こんな感じで跳び箱みたいに……」

鞠莉「出来るわけないでしょ!」


ダイヤ「苦戦してるわね」チクチク

ルビィ「今まで千歌ちゃん達が中心になってやってたからね」チクチク

ダイヤ「なんだかんだでいないと困るわね」

ルビィ「でも最初はルビィ達もあんな感じだったし、慣れじゃないかな?」


鞠莉「アクロバティックな動きは禁止!」


花丸「罪とか悪魔とか変な言葉禁止ズラっ!」


ダイヤ「……慣れる以前の問題な気もするけど」

ルビィ「あはは……」


ーーー

梨子「……」

善子「煉獄を突き進む翼をもがれた使者ーリトルデーモンーはやがて地上で堕天使と共に新たなるエデンの礎となる……どうよ!」

花丸「りとるでーもんズラぁ……」フラフラ

梨子「マルちゃんの心が折れてる!?しっかりしてー!」アワアワ


果南「よっ!」クルンッ

曜「ほっ!」クルンッ

果南「バッチリだねっ!」

曜「流石果南ちゃんだねっ!」

鞠莉「貴女達、とりあえずそこに正座して」


ダイヤ「……いかがですか?」

千歌「……衣装だけでも進んでることを良しとしよう!」

ルビィ「もしかしたら次のライブは既存曲でなんとかするしかないね……」

千歌「果南ちゃーん!そんなの私出来ないからー!」

ミッカアレバデキルッテー!

千歌「出来ないしっ!」


ーーー

花丸「はろうぃん?」

善子「そ、ハロウィン、秋葉原でやるんだって」

ルビィ「秋葉原!?」

曜「またあの人混みの中に……」

果南「そんなに人凄いの?」

千歌「うん、なんかイベントしてるんじゃないかってくらい人がいたよ」

鞠莉「まぁ、私達が前行った時は実際イベント前日だったんだけどね」

ルビィ「ハロウィン……秋葉原……はっ!」

ダイヤ「どうかしたの?」

ルビィ「まさか!ちょっと待って!善子ちゃん、パソコン!」

善子「持ってきてないわよ」

ルビィ「今日も?もう……えっとそのイベントは……」ケンサクケンサク

梨子「……」


ルビィ「……出た、これ!?」

善子「あー、うん、それ」

鞠莉「なーに?知ってるの?」

ルビィ「これ、μ'sやA‐RISEも過去に出演したハロウィンパレードなの!」

千歌「うそっ!?」

果南「じゃあ凄いイベントってこと?」

ルビィ「うんっ、年々規模が拡大して、今では秋葉原駅周辺を始めとするかなりの広範囲で開催されるの!去年も30組以上が出演したり、周辺のお店もほとんどがパレードに合わせてハロウィン仕様だったり!」

曜「協賛の数がとんでもない……」

花丸「これも大会ズラ?」

ルビィ「ううん、これは特に投票とかもないの、ステージも道路を通行止めにしただけ」


果南「なかなか豪快なイベントだねー」

ダイヤ「私達がそれに呼ばれた……と」

ルビィ「私達の出番は最終日!これもμ'sやA‐RISEと同じ!」

善子「なんかルビィの気合い入り過ぎじゃない?」ボソッ

曜「多分μ'sとかA‐RISEと同じっていうのがそうさせてる」ボソッ

ルビィ「やるよみんな!」ガタッ

千歌「えっ!?」

鞠莉「今日のルビィちゃんは頼もしいわね♪」

ダイヤ「暴走してるだけでは……」

梨子「……っ」ズキッ


ーーー

曜「ちょっと座らせて……」ガクッ

果南「これ、夏まつりより人多くない?」

花丸「はぐれたら二度と会えなくなりそうズラ……」

ルビィ「みみみ、μ'sと同じ場所で……」ソワソワ

善子「フッフッフ、感じる……感じるわ!この混沌渦巻く都に湧き上がる闇の力が!私に……ヨハネにその翼を広げよと呼びかけている!」ギランッ

ダイヤ「なんですの、アレ……」

千歌「凄く生き生きしてるね……」

鞠莉「まぁ、今日は堂々とあんなファッション出来る状況だからねー……」


善子「さぁ!立ち上がりなさい我が使徒、リトルデーモン達よ!間も無く黄昏の聖戦の角笛が吹き鳴らされるわ!」バサァッ

花丸「もうすぐ始まるから準備しようだって」

ダイヤ「よく分かりますわね……」

花丸「何となく慣れてしまってる自分がいるズラ……」

ダイヤ「ご苦労様ですわ……」

梨子「……」

千歌「梨子ちゃん大丈夫?」

梨子「えっ?えぇ……」

千歌「なんだかずっと顔色悪いけど……」

梨子「大丈夫、出番になるまでに落ち着くと思うから……」

千歌「……」

今日はここまで


ーーー

オーラーイ
ユックリー
オケーイ
イイヨーアゲテー

9人「お疲れ様でしたー」

千歌「いやぁ楽しかったー♪」

曜「うーん、踊るとなんかスッキリするね♪」ノビー

ダイヤ「たまにはこういったイベントも良い刺激になりますわね」

鞠莉「普段と違って一体感みたいなのがあるからね♪」

ルビィ「はぁぁ♪ルビィはとにかくμ'sやA‐RISEの立った舞台に上がれただけで満足ぅ♪」ルンルン

花丸「オラにぱそこんの知識があれば昔の動画も観れるのになぁ……気になるズラぁ……」

善子「それくらいすぐ覚えられるわよ……」


果南「内浦でもこういうイベントやれば人集まったりしないかなぁ?」

ルビィ「うーん、こういうのは東京とかの方が豪華だったりするからどうなんだろぉ……」

曜「飾り付けとかも凄いもんねー」

善子「その分、片付けが大変そうだけどね」

ダイヤ「明日にはまた通常営業に戻られるでしょうからね」

花丸「そう簡単にはいかないよねぇ……」


ミシッ…


善子「ん……?」



ギギギ…


千歌「善子ちゃんどうかしたー?」


善子「あ、いや、なんか砂みたいなのが降ってきてーー」


ギギ…バキィッ!


梨子「っ!!」ダッ


鞠莉「梨子っち!?」


果南「善子ちゃん!!」


善子「えっーー」


梨子「ーーーー!!」


ガッシャァァン!


ナンダー!?
ゲートガクズレタゾー!

花丸「……えっ……」

ルビィ「善子ちゃん!!」

ダイヤ「ルビィ、待ちなさい!」ガシッ

ルビィ「だって善子ちゃんが!!梨子先輩がっ!!」

「君達、危ないから離れて!」

果南「あのっ!私達の友達がーー千歌っ!」

「君っ!待ちなさい!」ガシッ

千歌「嘘だっ!善子ちゃん!梨子ちゃん!」ジタバタ

「誰か手貸して!女の子がいる!救急車も!」

曜「あっ……」ゾワッ

鞠莉「……離れてましょう」グイッ

ルビィ「嫌だ……やだやだやだ……」ギュッ

ダイヤ「……っ」ギュゥッ

果南「……ダイヤ、みんなのことお願い」ダッ

花丸「か、果南さん!?」


「貴女、大丈夫?立てる?」

善子「だ、大丈夫です……ちょっと擦りむいただけで」ヨロッ

「君っ、おいっ、しっかり!聞こえてる!?」

梨子「……」グッタリ

善子「リリー……?」

「呼吸確認、脈拍……大丈夫、担架!急いで!」
「気を失ってる、頭を打ってるかも、気をつけて、1、2、3!」

梨子「……」グッタリ

善子「リリー……!リリー!」

「落ち着いて、彼女はきっと大丈夫だから、貴女も念のため病院に」

善子「は、はい……」

果南「善子ちゃん!」

善子「松浦先輩!?」


果南「善子ちゃん、大丈夫?怪我は!?」

善子「私はちょっと擦りむいただけ……でも……」

果南「……梨子ちゃんは……?」

善子「先に救急車で……気を失ってて……」グスッ

「貴女お友達?」

果南「はいっ!」

「念のためにこの子を今から病院へ送りますね」

果南「私も付き添います」

「分かりました、貴女歩ける?」

善子「は、はい、大丈夫です……」

果南「……もしもし?ダイヤ?私、今から二人の病院に付き添うから……善子ちゃんはちょっと怪我してる」

善子「……」

果南「梨子ちゃんはまだ分かんない……うん、善子ちゃんの家と梨子ちゃんの家に連絡入れてくれる?うん、ありがと、みんなは先に内浦帰ってていいから、病院の場所は後で送る」


ーーー

果南「本当に申し訳ありませんっ!」

善子「ごめんなさい……っ」

母「二人共、顔を上げて、みんなのせいじゃないんだから」

善子「でもっ、私がぼんやりしてたせいで……」グスッ

果南「私がもっと早く気付いてたら梨子さんがこんな目に合わなくて済んだんです……」

母「大丈夫、大丈夫だから、ね?そんなに自分を責めないで?」

果南「はい……」

善子「……」グスッ


父「あ、いたっ、梨子は!?」

母「お父さん、梨子はまだ……でも命に別状はないそうよ」

父「っ……そうか、良かった……君達は?」

果南「梨子さんと同じ学校の松浦果南といいます」

善子「津島善子……です」グスッ

母「彼女達と一緒にいた時に事故にあったみたいで……」

父「そうか……君達は怪我は?」

果南「私は何も……」

善子「先輩が助けてくれたから……少し擦りむいたくらいで……」


父「梨子が……助けた……?」

母「そう……みたい」

父「それじゃ、梨子は……」

母「ううん、そうじゃないみたい……」

父「……そうか……それなのにあの子は全く……人の事ばっかり考えて……」

果南「あの……すみません……一体何の話ですか……?」

父「あぁ、すまないね、こちらの話ばかりして、君達梨子の事情は?」

果南「本人から記憶喪失だという話は……」

母「あまり人に話す話ではないのだけど……実はね、あの子の記憶喪失の原因はーー」


ーーー

母「梨子!」

梨子「あ……お母さん……」

母「良かった……もう、心配したんだから」ギュッ

梨子「ごめん……なさい……」

母「ここ、どこか分かる?ちゃんと覚えてる?」

梨子「うん……さっき先生から聞いたし……なんでここにいるかも分かってる」

母「良かった……」

梨子「……みんなは?」

母「内浦で梨子の事待っててくれてるわ」


梨子「……ナナは?大丈夫だった?」


母「……えっ?」

梨子「……?」

母「梨子……今なんて……?」

梨子「ん……?あれ……違う……えっと……」ズキッ

母「梨子……?」

梨子「あ……よっちゃん……善子ちゃんだ……」

母「……津島さんなら大丈夫よ」

梨子「良かった……」

母「梨子……今日が何日か分かる?」

梨子「えっ?うん、さっき教えてもらって……えっと……12月?……違う……11月……ハロウィンのイベントだったから」ズキッ

母「梨子……」


梨子「あっ、先生が今日と明日は様子を見て、明後日には退院出来るって」

母「そう……じゃあお母さんも先生とお話ししてこなきゃね」

梨子「うん、心配かけてごめんなさい……」

母「いいのよ、貴女が無事ならそれで、じゃあ無理しないでね」ナデナデ

梨子「うん」

ガラッ

梨子「……痛っ」ズキッ

梨子「……頭が……割れ、そう……っ」ギュッ


ーーー

千歌「だめなのだ!」

梨子「えっ?」

ダイヤ「病み上がりなんですから大人しくしててください」

梨子「でも……冬のラブライブもあるし……」

曜「だからだよ、練習したい気持ちも分かるけど、まだ本調子じゃないでしょ?」

梨子「でも……」

善子「じゃあヤモリの干物食べる?」スッ

梨子「……大人しく休んでます」

花丸「なんでそんなもの持ち歩いてるズラ……」

善子「私がヨハネだからよっ!」ギランッ


ルビィ「梨子先輩♪歌の練習は一緒にしようね♪」

梨子「うん、ありがとう♪」

果南「じゃあ行ってくるね、こっそりついてきたりしたらダメだよ」

梨子「果南さんじゃあるまいし、そんなことしません」

果南「ちょっとどういう意味ー!?」

鞠莉「梨子っち分かってるー♪」

果南「鞠莉まで!」

梨子「ふふっ♪」


梨子「さて……じゃあ何してよっかな……」キョロキョロ

梨子「……先に音楽室で歌の練習でもしてよっかな」


ーーー

梨子「……」

梨子「……ピアノ」スッ…

ポロンッ…

梨子「……あ……」ゾワッ

梨子「いっ……つぅ……」ズキズキッ

梨子「はぁ……はぁ……」

梨子「……」グスッ


ーーー

千歌「おーい梨子ちゃーん」

花丸「しんどくて帰っちゃったとかかな?」

曜「それなら何か言ってくれると思うけど……」

ルビィ「……?」ピクッ

鞠莉「……ん?」キョロキョロ

果南「どうしたの二人共」

ルビィ「なんか聞こえない?」

ダイヤ「……?」

千歌「……あっ」


善子「……これ、ピアノ?」

果南「誰か弾いてるのかな?」

花丸「……っ!」ダッ

ルビィ「思い出した!START:DASH!!だよっ!」ダッ

ダイヤ「ちょっと、校舎内で走らない!」

曜「何っ!?」ダッ

鞠莉「いいから!」ダッ

千歌「……!」ダッ

果南「二人共置いてくよ♪」ダッ

善子「あっ!そういうこと!?」ダッ

ダイヤ「もう!」ダッ


ーーー

ガラッ

ルビィ「はぁ……はぁ……!」

花丸「あっ……!」

果南「……!」


~♪~♪


鞠莉「嘘っ……」

善子「まさか……」

曜「すごい……」



梨子「……♪」



ダイヤ「……優しい音」

千歌「うん……分かるよ……梨子ちゃんの音だ……」


梨子「……弾けた」

パチパチパチパチ

梨子「……!?」ガタッ

千歌「梨子ちゃぁんーーうぐぇっ!?」

果南「すぐ抱きつかないの」グイッ

鞠莉「ビューティフォー♪」

ダイヤ「素晴らしい音色でしたわ」

梨子「み、みんないつから!?」

ルビィ「少し前から♪」

花丸「うぐっ……感動的な曲じゅらぁ」ズビッ

善子「えっ、泣き過ぎでしょ!?」ビクッ


梨子「……私……私ね……」ウルッ

鞠莉「梨子っち……」

梨子「ずっと弾いてなかったから……全然指が動かなくってね……本当はもう少し上手に弾けたんだけど……」ゴシゴシ

ダイヤ「……」

梨子「頭も痛くって……集中も出来なくて……人に聴かせてあげられるような出来じゃないし……」ゴシゴシ

ルビィ「……」

梨子「でもっ……でも……」グスッ

曜「梨子ちゃん……」

梨子「私……ピアノが好きなの……」ポロポロ

善子「っ……!」



梨子「私……ちゃんと覚えてた……ぐすっ……好きなこと……少しだけど……思い出せた……!」



千歌「……梨子ちゃん」ウルッ

梨子「ぐすっ……ごめんな、さい……」ゴシゴシ

千歌「もっと聴きたいな!」

梨子「……えっ?」

千歌「もっと……もっと私達に聴かせてよ!梨子ちゃんの好きな音!」

ルビィ「ルビィも聴きたい!」

鞠莉「これで作曲家マリーは引退ねー♪」

果南「元々梨子ちゃんが書いた曲が土台でしょー」

梨子「でも……まだ全然……」

ダイヤ「上手い下手は関係ありませんわ」

善子「そうね、上手い曲が聴きたいんじゃなくて、リリーの曲が聴きたいわ」

花丸「オラも……じぇんぱいのぎょく……ひぐっ……きぎだいじゅらぁ……」スビッ

曜「マルちゃん……梨子ちゃんより泣いてる……」アハハ…


梨子「……どんなに下手でも笑わないでね……」

千歌「うん、笑わないよ」

曜「そもそも上手いとか下手とか分かんないしね」

果南「私も」

ダイヤ「心のこもったものを笑う様な人はここにはいませんわ」

梨子「……ありがとう」


鞠莉「じゃあせっかくだから今日は梨子っちの伴奏で歌のレッスンしましょうか♪」

梨子「えっ!?そ、それはちょっと……!」

花丸「ずびっ……よーし、全員整列!」ゴシゴシ

善子「諦めなさい」ニヤリ

梨子「えっ……えー……もう……」


ーーー

鞠莉「お待ちかねの新曲よー♪」

果南「あれ?作曲家マリーは引退したんじゃなかったの?」

鞠莉「ノンノン♪今回はなんと梨子っちが作ったのよー♪」

花丸「いつも桜内先輩の作った曲なんじゃ……」

鞠莉「まぁね、ただ今回のは未完成だったのを梨子っちが新しく作り直したのよ」

曜「ホントに!?」

梨子「うん……まだ技術的に不安だったから打ち込みを鞠莉さんにお願いしたけど」

千歌「聴きたーい!」

鞠莉「じゃあ流すわよー」

~♪

ルビィ「わぁ……♪」

ダイヤ「とても良いと思いますわ」


梨子「なんか、恥ずかしい……」

千歌「難しいことはよく分からないけど、梨子ちゃんらしい曲だと思う!」

曜「うん!優しくて暖かい気持ちになるね!」

梨子「気に入ってもらえたなら良かった♪」

千歌「これで冬のラブライブは必勝だ!」

果南「また、そんな大口叩いて……」

花丸「作詞するの楽しみズラ~♪」


ルビィ「善子ちゃん」

善子「ん?」

ルビィ「そろそろ冬のエントリーが始まると思うけど連絡きた?」

善子「んー、まだだったと思うけど来てたらエントリーしておくわ」

ルビィ「えっ……あ、うん」

善子「……」


ーーー

善子「ただいまー……」

善子「ふぅ……」

善子「……」カチカチッ

善子「……まただ……」

善子「……」

善子「あとは私が何とかしなきゃ……」

善子「大丈夫……私はヨハネなんだから……」

善子「……」

善子「これ以上……」



善子「……嫌な思いはさせたくないのよ……」ギリッ



ーーー

ダイヤ「寒くないんですの?」

果南「ん?んーそんなに」

鞠莉「クシュンッ……これで寒くないとかなんなのよ……」

果南「海の中の方が冷えるし」

ダイヤ「どんな理屈ですか……」

鞠莉「もうウィンターよ!北海道は雪降ってるのよ?」

果南「えー、でもここ降ってないし」

ダイヤ「……もう冬なんですよね」

鞠莉「ダイヤ……?」

ダイヤ「あと3ヵ月もすれば卒業なんですね」

鞠莉「……そうね」


ダイヤ「鞠莉さんはどこを受験するんですか?」

鞠莉「しないわよ?」

果南「えっ?」

鞠莉「だってもう大学決まってるし」

ダイヤ「どういうことですの?」

鞠莉「あれ?言ってなかった?私留学中に飛び級してるから大学受験終わってるのよ?」

ダイヤ「……聞いてませんが……」

果南「じゃあ本当に浦の星を卒業するためだけに戻ってきたの?」

鞠莉「ええ、だから卒業したらまた向こうに戻るの」

ダイヤ「そう……でしたか」


鞠莉「大学卒業したらまたこっちに戻って来るつもりだけどね♪果南は?」

果南「私はそのまま店で働くよ、お父さんも怪我してからあんまり無理出来なくなっちゃったし」

鞠莉「そう……ダイヤは?」

ダイヤ「鞠莉さんと似たようなものですわ、県外に進学してから、家を継ぐために戻って来ます」

鞠莉「そっか」

果南「二人共、ちゃんと戻ってきてよねー、私待ってるから」

ダイヤ「当然ですわ」

鞠莉「意地でも帰ってくるわ」


ーーー

千歌「そういえば梨子ちゃん」

梨子「ん?」

千歌「ν-tralの二人にはもう連絡したの?」

梨子「……ううん」

曜「なんで?せっかく記憶戻ってきてるのに」

梨子「まだ断片的にしか思い出せてないし、何か失礼な事とか言っちゃったら悪いし」

千歌「それでいいの?」

梨子「うん……まだあの二人と友達だった実感もなくて……」

曜「そっか……」

梨子「だから、もう少し今のままでいようと思って」

千歌「じゃあその時は私達の事紹介してほしいな!」

曜「そだね!」

梨子「ふふっ♪もちろん!」


ーーー

ルビィ「……」

花丸「無限の選択肢が……うーん、ちょっと言葉が堅い気がする……うーん」ブツブツ

善子「……」

ルビィ「善子ちゃん」

善子「ん?」

ルビィ「何か……ルビィ達に隠してない?」

善子「は?何の話よ」

花丸「……?」

ルビィ「……じゃあ最近どうしてパソコン持ってこないの?」

善子「慣れてきたから家で作業するだけで十分だし、なんだかんだ重いしねー」

ルビィ「……本当にそれだけ?」

花丸「……ルビィちゃん?」


善子「何が言いたいの?」

ルビィ「夏のラブライブの時はわざわざ千歌ちゃんにエントリーするように言ってたのに、今回は善子ちゃんがエントリーしちゃったよね」

善子「……あれは初めてのエントリーだから花を持たせてあげただけよ、誰がエントリーしたって結局一緒なんだからいいでしょ」

ルビィ「……みんなでランクとかコメントとか見るの楽しかったのに……」

善子「……別にそれぞれアカウント用意して見ればいいでしょそんなの」

ルビィ「……だから見たよ」

善子「……っ」

花丸「あの……何の話ズラ?」

ルビィ「……今までは出来るだけみんなで見たいと思ったから、Aqoursのページは見ないようにしてたけど……善子ちゃんが全然見せてくれないから……ルビィのアカウントで見てみた……」

善子「……あっそ」


ルビィ「……なんでコメント非表示になってるの」


善子「……」

ルビィ「……ねぇ」

善子「私あれなのよねー、あれ、画面に文字流れるの嫌いなのよ、だから」

ルビィ「……そんなの見る人が自由に出来るでしょ……」

善子「……そうだっけ、それは気付かなかったわねー」

ルビィ「……」

善子「聞きたいのはそれだけ?私が管理任されてるんだから私の好きにして何か問題ある?」イラッ

花丸「あの……二人とも……」オロオロ

ルビィ「……動画編集とか出来るからって……善子ちゃんに全部任せちゃってるのは悪いと思ってるよ……」

善子「別にいいわよ、そんなの」

ルビィ「でも、だからってルビィ達にまで見せないようにする必要ないよね……」

善子「……だから私が任されてるんだから、私がどうしようと関係ないでしょ!」

ルビィ「あるよ!」

善子「っ……」


ルビィ「ルビィ達みんなでAqoursだもん!」

善子「……」

ルビィ「……だから見せてほしい……見てる人がどんな風に思ってくれてるか、知りたいから」

善子「……いやよ」

ルビィ「なんで!」

善子「なんでも」

ルビィ「いやだっ!見せて!」

善子「しつこい!」

ルビィ「なんで見せてくれないの!」

花丸「る、ルビィちゃん落ち着いて」オロオロ


善子「あんなもの見せられるわけないでしょ!」


花丸「善子……ちゃん……?」

ルビィ「……」

善子「……チッ」

ルビィ「……やっぱり」

善子「……っ!?」

ルビィ「……ルビィはね、善子ちゃんが思ってるよりずっとスクールアイドル好きなんだよ……」

善子「……」

ルビィ「だから“そういう事”があるのも知ってる……」

善子「……っ」

ルビィ「善子ちゃん……いつもぶっきらぼうだけど本当は優しいのも知ってる……」

善子「……違う」


ルビィ「だからルビィ達の事思って、コメントを隠しちゃったんだよね?」

善子「……私は」

ルビィ「でもね、善子ちゃん1人だけで背負ってほしくないな……」

善子「……」

ルビィ「ルビィ達、9人でAqoursなんだから……嬉しいことも嫌なことも9人で感じてたいから……」

善子「っ……」

ルビィ「だから、見せてほしい」

善子「……」

善子「……わかったわ」

ルビィ「善子ちゃん……!」

善子「ただし」

花丸「……?」


善子「まだ……リリーには黙ってて」

とりあえずここまで

優しい堕天使


ーーー

善子「……」

ルビィ「……」ギュッ

果南「なんなのさ……これ……」

ダイヤ「……」

曜「酷い……」

千歌「……いつから?」

善子「ブロック予選の前くらいから……」

花丸「じゃあ夏休みの初めくらいからずっと……?」

善子「うん……毎日じゃないけど……」

千歌「なんで黙ってたの……」

善子「……」

千歌「ねぇ」

果南「千歌、落ち着いて」

千歌「……ごめん」


善子「……大会前だったし……消したりしてたら……すぐに飽きて止めるだろうと思って……」

ダイヤ「それで……一人で抱え込んでいたわけですね」

善子「ごめんなさい……なんとか出来ると思って……」

ルビィ「善子ちゃんが謝る事じゃないよ……」

曜「でもこのままどうするの?」

善子「打てる手は全部打ったつもりだけど……」

千歌「……」

果南「このまま隠し通すつもり?」

花丸「……」

ダイヤ「ここまで来てしまった以上、収まるまではそのつもりでーー」


ガラッ


梨子「誰かいる……の……?」


曜「えっ……」

果南「っ……!」

千歌「梨子、ちゃん……」

梨子「……みんな揃ってなにしてるの……?」

ダイヤ「……っ」

花丸「その……これは……えっと……」

梨子「それ……動画?みんなで見てたの……?」

ルビィ「これは……」

善子「……」

梨子「……なに……こ、れ……」



『ν-tralについていけなかった落ちこぼれ』
『ダブりなのによくスクドルやれるよね』
『ラブライブ出れなかったらまたダブって転校してそう』



果南「あのね、梨子ちゃん……」

善子「ごめんなさい!」

梨子「……」

善子「私がもっと早くちゃんと対処出来てたらこんなことにはならなかったの……だから……ごめんなさい……」

梨子「……」

ダイヤ「桜内さん……」

梨子「……あっ、わ、私……忘れ物取りに来たんだった……」フラフラ

ルビィ「あのね梨子先輩!」

梨子「良かった……やっぱりここにあった……」

曜「梨子ちゃん……」

梨子「……じゃあ、私、先に帰るね……」

千歌「梨子ちゃん!」

梨子「……ごめんなさい……少し、1人になりたいから……」

千歌「ぁ……」

梨子「……っ」ダッ


ーーー

千歌「……」

曜「どう、しよう……」

鞠莉「ハッキリ言って、一番最悪な状況ね……」

ルビィ「ルビィのせいだ……」ギュッ

花丸「ルビィちゃん……何を……」

ルビィ「ルビィが善子ちゃんのこと問いただしたりしなかったら……こんなことには……」

善子「アンタのせいじゃないわよ……私がもっと上手くやれてれば……」

果南「誰の責任とかじゃないでしょ、私達全員被害者なんだから」

花丸「そうだよっ!ルビィちゃんも善子ちゃんも悪くないって」


千歌「……私の、せいだ」ボソッ

鞠莉「千歌っち……?」

千歌「私が……無理に誘わなかったらよかったんだ……」

果南「千歌!」

千歌「私が梨子ちゃんのこと何にも知らないのに無理矢理誘ったりしたから……梨子ちゃんが嫌な思いしちゃったんだ……」ギリッ

バンッ

ルビィ「ひっ……!?」ビクッ

ダイヤ「貴女達、いい加減にしなさい!」

千歌「っ……」ビクッ

ダイヤ「……津島さん、運営に通報は?」

善子「……してる……アカウント凍結とか対応してくれてるけど……余計に逆恨みされる原因になって……」

ダイヤ「少なくとも見捨てられてる訳ではないのですね」

善子「そう、かもしれないけど……」

ダイヤ「けど、けど、けど、とネガティブになるのはやめてください」

善子「そんなこと言われたって!」


ダイヤ「私達が沈んでいていれば、桜内さんは誰を頼ればいいか、分からなくなってしまいますわ!」

鞠莉「ダイヤ……」

ダイヤ「確かに私達に事を解決する力なんて無いかもしれません、ですが……せめて桜内さんを受け止めてあげることは出来るでしょう?」

曜「……」

ダイヤ「千歌さん」

千歌「……」

ダイヤ「桜内さんを誘った自分のせいだと言うのなら、その責任、最後まで背負ってください」

千歌「せき、にん……」

ダイヤ「全く……普段はヘラヘラとおバカなくせに、無理に悩んでどうするんですか」

千歌「お、おバカ!?」

ダイヤ「ええ、おバカですわ、だからクヨクヨ悩まずにいつも通り根拠もなく前向きにいて下さい」

鞠莉「褒めてるのか、貶してるのかハッキリしなさいよ……」

ダイヤ「桜内さんがどうにもならなくなった時、この部室は……私達がいる場所だけは、彼女の居場所として守ってあげるのが友達というものでしょう?」


千歌「……居場所」

果南「……そうだね」

曜「わかった!私もおバカだから悩まない!」

善子「なによそれ……」

花丸「マル達が桜内先輩を支えてあげなきゃ」

善子「……もう少し出来ることないか粘ってみる」

ルビィ「ルビィも!」

千歌「うん……うんっ!……一番苦しいのは梨子ちゃんなんだもんね!」

ダイヤ「そうですわ」

千歌「だから私が……私達が居場所になってあげなきゃ!」


ーーー

むつ「ねぇ、ちょっと」

千歌「どうしたの?」

むつ「……桜内さんと喧嘩でもしたの?」

千歌「えっ?」

いつき「桜内さん、最近授業終わったらすぐ帰ってるみたいだから……」

よしみ「なんかあったの?」

曜「そういうわけじゃないけど……」

むつ「……?」

いつき「私達にも何か出来ることない?」

千歌「ありがとう、でも今は待っててあげることしか出来ないから」

よしみ「……」

曜「でも、きっとまた元のAqoursに戻れるから、だからみんなも待っててくれないかな」

いつき「……」

むつ「……わかった、二人がそういうなら」

よしみ「うんっ!」

いつき「またライブする時は手伝うからね」

千歌「ありがとう!」


ーーー

ルビィ「善子ちゃん、これ」

善子「……不味いわね」

鞠莉「どうかしたの?」

善子「とうとうν-tralにまで飛び火しちゃってる」

果南「えっ」

ルビィ「ν-tralは元々人気も凄いから動画も画面いっぱいにコメントが出ちゃって見えなくなるって理由でコメント非表示を推奨してるんだけど……」

花丸「とんでもない理由ズラ……」

ルビィ「そこに多分私達の動画にコメントしたのと同じ人がコメントしてたらしくって……それに気付いた人達もいたみたいで」

果南「どこまでも酷い奴だね……」

ルビィ「それで昨日ν-tralのページに二人からのコメントが出てたの」


ダイヤ「……現在、一部の方よりご指摘を受けている件について……」

鞠莉「プライバシーに関わる事であるため、詳しい内容については伏せさせていただきますが……一部事実とは全く異なる内容であり、ご指摘いただいたようなトラブルは一切なく、現在に至るまで良好な関係であると認識しております……」

ダイヤ「……また今回の件につきまして、私共は一個人を狙った悪質な誹謗中傷であると判断し、このような行為が行われている事に対し、深く遺憾の意を表明します……国立音ノ木坂学院アイドル研究部所属……ν-tral、高坂雪穂、絢瀬亜里沙、及びアイドル研究部部員一同……」

果南「大事になってきちゃったね……」

善子「流石にランキング1位のグループまで巻き込まれたとなるとね……」

ダイヤ「ですが、ここまで大っぴらになれば運営も表立って動きやすくなるのでは?」

鞠莉「確かにね、それがどう転ぶかは分からないけど……」

ルビィ「……梨子先輩」


ーーー

花丸「……」グスッ

善子「……」

ガラッ

ルビィ「あっ……千歌ちゃん……」

千歌「おはよう、どうしたの?」

果南「ダイヤ……」

ダイヤ「私達が来た時に書き置きが……ご迷惑おかけしました、退部します……とだけ」

曜「そんなっ……」

千歌「……退、部」


鞠莉「……」

果南「千歌……」

曜「なんで……梨子ちゃん……」

千歌「……梨子ちゃんの家に行こう」

ダイヤ「……全員で行っては家の方にご迷惑ですわ」

千歌「私だけで行ってくる」

善子「私も行くっ!」ガタッ

ルビィ「善子ちゃん……」

善子「私があんなの見せちゃったせいなんだから!」

ダイヤ「ですから、そういう話は……」

善子「分かってるわよ!分かってるけど……やっぱりちゃんと謝りたいの!」

鞠莉「……なら、ヨハネちゃんと千歌っちで行ってきて、私達はここで待ってるから」

花丸「……」グスッ

千歌「分かった、善子ちゃん行こう」

善子「絶対リリーを連れ戻してくるから!」



果南「……これからどうするの?」

ダイヤ「……どうもこうもありませんわ、届けが受理されていればそれまで」

ルビィ「お姉ちゃん……!」

ダイヤ「桜内さんの意志を私達の勝手で覆すわけにはいきませんわ……」

鞠莉「ダイヤ……バカ真面目なのはいいけど、あんまり融通利かないなら……」ギリッ

ダイヤ「一個人の私が何の融通を利かせろと?」

鞠莉「じゃあ何!?このまま黙って梨子っちを見捨てろって言うの!?」バンッ

花丸「っ……」ビクッ

ダイヤ「誰もそんなこと言ってません!」

曜「やめてよ二人とも!」

果南「マルとルビィが怖がってる」

鞠莉「っ……ごめんなさい」

ダイヤ「すみません……」

果南「……とにかく千歌と善子ちゃんが連れ戻して来るまで待ってよう」

後でまた続けます

うーん面白い

匿名の悪意は恐ろしい…
謎の『ナナ』という人物が記憶喪失とどう絡んで来るのかすごい気になる…


ーーー

ピンポーン

母「はーい」

ガチャッ

母「あら……貴女達……」

千歌「朝から突然すみません!あのっ、梨子ちゃんに会わせて下さい!」

善子「どうしても話がしたいんです!」

母「……ごめんなさい」

千歌「っ……お願いですっ!少しだけでいいんです」

母「そうじゃなくて……今いないのよ」

善子「えっ……」

母「朝早くにね……出かけちゃったみたいで」

千歌「どこにですか!?」

母「……お父さんに会ってくるって書き置きがあって……」

善子「お父……さん……?」


母「今、主人が……梨子のお父さんが1人で暮らしてる家……私達が元々住んでた家に行ってるみたい」

善子「元々って……東京……」

母「ええ、だからごめんなさい……」

千歌「そう……ですか……」

善子「突然すみませんでした……」

母「力になれなくてごめんなさいね……」

千歌「あのっ!」

母「……?」

千歌「梨子ちゃんが帰ってきたら……私達ずっと待ってるからって伝えてあげてください!お願いします!」

母「……ええ……ありがとう、必ず伝えておくわ」


ーーー

梨子「……」

父「はい、梨子」コトッ

梨子「ありがとう……」

父「それにしても、突然でびっくりしたよ、連絡くれれば良かったのに」

梨子「ごめんなさい……」

父「いや、構わないんだがね、休日は庭の手入れくらいしかすることもないから」

梨子「……いつもしてるの?」

父「ああ、放っておいたら母さんに怒られるからな」

梨子「お母さん……いつも綺麗にしてたもんね」

父「……お母さんの言ってた通り、少しずつ戻ってきているんだね」

梨子「……うん、本当に少しずつだけど……」

父「良かった、本当に」

梨子「……うん」


父「……この間の怪我は大丈夫かい?」

梨子「え?あ、うん、それは大したことなかったから」

父「そうか……あの時と全く一緒だから驚いたよ」

梨子「……」

父「本当に……人の事ばかり心配して……」

梨子「……そう、だね」

父「あぁそうだ、今更だが、今日はどうしたんだ?」

梨子「……特に用があったわけじゃないんだけど……なんかお父さんに会いたくなって……」

父「……」

梨子「……」

父「そういうところも変わらないな」

梨子「……えっ?」


父「何かあるとすぐ父さんの側に来るくせに、何もないなんて誤魔化すところがね、昔から変わらない」

梨子「そう……なんだ……」

父「心の目でよく見なければものごとはよく見えない」

梨子「えっ?」

父「父さんが梨子にいつも言ってた言葉だよ」

梨子「……心の目……」

父「何に悩んでるのかは父さんには分からないし、そもそも年頃の女の子の悩みなんて、父さんがアドバイスしてあげられることはないけどね」

梨子「……」

父「いつだって答えは梨子の心にちゃんとあるはずだよ」

梨子「……私の……中に……」


父「ああ、梨子は多感な時期だ、色んな事を見て、色んな事を考えて、色んな事に迷うだろうけど、そんな時はじっと心を見つめて、心で見つめなさい、そうすれば自ずと答えは見つかるはずだ」

梨子「……こころを……」

父「さて、梨子、せっかくだからお昼でも食べていきなさい」

梨子「えっ?あ、わかった……」

父「母さんや梨子みたいに上手じゃないけどね、それなりに食べられるものは作れるようになったから」

梨子「……なんか不安になる言い方だね」クスッ


ーーー

梨子「……じゃあ私、そろそろ行くね」

父「帰るのか?」

梨子「うん、でもその前に行かなきゃいけない場所があるのを思い出せた……」

父「……そうか、気をつけてな」

梨子「うん、ありがとうお父さん」

父「父として当然のことをしただけだ」

梨子「うん」

父「梨子、父さんはいつだって梨子の味方で、梨子のファンだからな」

梨子「ふふっ……ありがとう」

父「梨子、心の目でよく見なければものごとはよく見えない」


梨子「……肝心なことはいつも目で見えないんだ、だよね」


父「……!」


梨子「お父さんと話してたらまた少しだけ思い出せた」

父「……そうか」

梨子「本当にありがとう、また来るから」

父「ああ、いつでもおいで」

梨子「それじゃ」

父「梨子」

梨子「ん?」

父「いってらっしゃい」

梨子「……うん!行ってきます!」

父「全く、変わらないようでちゃんと成長してるんだな……」


父「……ただ、反抗期が来てないような気がするんだが……うむ……」


ーー

梨子「……」キョロキョロ

梨子「多分……この辺りなんだと思うけど……」キョロキョロ

梨子「うーん……」

ワンッ

梨子「ん?」

?「えっ……」

梨子「あっ……」

ワンワンッ

梨子「ナナ……」

ナナ「梨子……なんで……」


ーーー

ナナ「……」

梨子「……あの、いきなり来て、ごめん……」

ナナ「ううん、梨子が転校しちゃって……もう会えないかと思ってたから、ちょっとびっくりしちゃった」

梨子「……」

ナナ「でも、記憶が無くなったって聞いてたのに……」

梨子「少しずつだけど……戻ってきてるの」

ナナ「えっ……」

梨子「小さい頃のこととか……ナナ達と過ごした時のこととか……事故のこととか……」

ナナ「そっか……良かったね」

梨子「うん」

ナナ「……」

梨子「……」


ナナ「あの時は……本当にありがとう」

梨子「……」

ナナ「それから……ごめんなさい」

梨子「ううん……ナナは悪くないよ」



ナナ「でも……梨子は私を庇ったせいで車に撥ねられて……」



梨子「もう過ぎた事だし、見ての通り今も元気にやってるから」

ナナ「梨子……」


梨子「……ねぇナナ」

ナナ「ん?」

梨子「一つ聞いていいかな?」

ナナ「何?」



梨子「どうしてスクールアイドル辞めちゃったの?」



ナナ「……あんな事があったのに……続けてられないよ」

梨子「……」

ナナ「私が逃げ遅れたせいで梨子が入院して……記憶まで無くなって……それなのに私だけ続けるなんて出来ないよ……」


梨子「雪穂や亜里沙は?穂乃果先輩達は?」

ナナ「みんな引き留めてくれたよ……私だって最初は梨子のことを待ってようって思ってた……でもやっぱり続けられなかった」

梨子「……」

ナナ「雪穂も亜里沙も、他のみんなも今でも仲良くしてくれてるよ?……でもやっぱり自分のこと責める気持ちだけは無くならないから……結局スクールアイドルそのものから離れないと耐えられなかった……」

梨子「……」

ナナ「……ごめんね、せっかく梨子も記憶が戻ってきて良くなってるのに……こんな話して……」

梨子「……」

ナナ「……」


梨子「ナナ」

ナナ「……?」

梨子「ナナに見てほしいものがあるの」

ナナ「見てほしいもの……?」

梨子「えっと……これ」

『今日はみとしースペシャルライブに来てくれてありがとうございます!』

ナナ「これ、は……スクールアイドル……」

梨子「今、私のいる学校のスクールアイドル……Aqoursって言うの」

ナナ「……どうしてこんなのを」

梨子「いいから見てて」

ナナ「……」

梨子「……」


『実はみんなにお知らせがあります!』

『Aqoursに新しいメンバーが加わりました!国木田花丸ちゃんと!』



『桜内梨子ちゃんです!』



ナナ「えっ……」

梨子「……」

ナナ「嘘……」


梨子「不思議だよね……」

ナナ「……」

梨子「何にも覚えてないのに……何にも知らないのに……私、懲りずにまたスクールアイドル始めちゃったの」クスクス

ナナ「梨子……」


梨子「伝えに来るのが遅くなってごめんね……ナナや雪穂達とは一緒じゃなくなっちゃったけど……私は今もちゃんとスクールアイドルだよ」


ナナ「……っ」

梨子「だからもう自分を責めないで」

ナナ「り、こ……」グスッ

梨子「……私のせいで辛い思いさせてごめんね」

ナナ「梨子のせいじゃない!私……私が……うぅっ……」

梨子「ナナ……」ギュッ

ナナ「うわぁぁぁん!」ギュウッ


ーーー

ナナ「……はぁ……」ズビッ

梨子「落ち着いた?」

ナナ「……久しぶりに会えたのに……みっともないところ見せてごめん……」

梨子「そんなの気にしないよ」クスクス

ナナ「ありがと……少し楽になれた気がする……」

梨子「良かった♪」

ナナ「梨子は今、楽しい?」

梨子「えっ?」

ナナ「この新しいグループのみんなといて、楽しく過ごせてる?」

梨子「うん、どうして?」

ナナ「苛められてない?」

梨子「苛められてません」

ナナ「なら良かった」

梨子「なにそれ、もう」


ナナ「雪穂と亜里沙には言ったの?」

梨子「うーん……言ったというか……まだ記憶が戻ってない頃に一度会ってるの」

ナナ「そうなの?」

梨子「うん、まぁそれからまだ会えてないけど……」

ナナ「……」

梨子「……」

ナナ「会いたい?」

梨子「えっ?」

ナナ「今日のこの時間だと……もう少ししたら男坂で練習始まるんじゃないかな」

梨子「……」

ナナ「離れたって言っても同じクラスだし、雪穂と亜里沙とは中学から一緒だしね、どこで練習してるかくらいは分かるよ」

梨子「……」

ナナ「きっと雪穂も亜里沙も喜んでくれるよ」

梨子「……うん」


ナナ「……」

梨子「……」

ナナ「はぁ……考えてる暇があったらとりあえず動く!」

梨子「えっ?」

ナナ「凛先輩がいつも言ってたでしょ」

梨子「そう……だっけ」

ナナ「うん、だから行ってきなよ」

梨子「……わかった」

ナナ「……今日は本当にありがとうね」

梨子「ねぇ、ナナ……またみんなで会えるかな?」

ナナ「うーん、どうかな、私達はもう卒業だから」

梨子「そう……だよね」

ナナ「でも、大丈夫、今日会えたから」

梨子「……うんっ」


ーーー

「じゃあ、まず一年生から」

「はーい」

「いくよー……スタート!」

タッタッタッタッ

「しっかり足上げてー」

タッタッタッタッ

「……」

タッタッタッタッ

「はい、お疲れー、タイムは?」

「うん、ちょっとずつ短くなってるよ」

「だいぶ体力付いてきたね、じゃあ次ー」

「はーい」


梨子「……」


ーーー

亜里沙「お疲れ様、じゃあ10分休憩してから基礎ステップの練習ねー」

「はーい」

雪穂「亜里沙ー」

亜里沙「なに?」

雪穂「ブロック予選の曲なんだけどね」

亜里沙「うん……ん?」

雪穂「どうかした?」

亜里沙「……!」ダッ

雪穂「亜里沙?」

亜里沙「梨子かもしれない!」

雪穂「えっ!?ちょっと!ごめん!ちょっと後任せる!」

「えっ?分かりましたー……?」


ーーー

亜里沙「梨子!梨子ー!いるの!?」

雪穂「亜里沙、本当に梨子なの?」

亜里沙「忘れるわけないよ!あれは梨子だよっ!」

雪穂「亜里沙……」

亜里沙「梨子ー!」

雪穂「……」キョロキョロ

亜里沙「梨子ー!」

雪穂「あっ!亜里沙!あれ!」

亜里沙「あっ!やっぱり梨子だ!梨子ー!」

梨子「……」スタスタ

亜里沙「おーい!会いに来てくれたんだよね!」

梨子「……」スタスタ


雪穂「……亜里沙、ちょっと待って」

亜里沙「っ……なんで……止まってくれないの……梨子」

梨子「……」スタスタ

雪穂「……」

亜里沙「……どうしてこっち見てくれないの……」

雪穂「……亜里沙」

亜里沙「……なに?」

雪穂「私に合わせて」

亜里沙「えっ?」

雪穂「すぅ……音ノ木坂学院アイドル研究部!高坂雪穂っ!」

梨子「……」ビクッ

亜里沙「っ……同じくアイドル研究部!絢瀬亜里沙っ!」

雪穂「私達は!ν-tralとしてー!絶っ対決勝に行くからー!」

亜里沙「アキバドームで待ってるからー!」


梨子「……」

雪穂「はぁ……はぁ……」

亜里沙「……はぁ……梨子……」

梨子「……っ」

雪穂「……戻ろ」

亜里沙「でも……」

梨子「……」


梨子「……浦の星女学院!スクールアイドル部!桜内梨子っ!」


雪穂「……っ」ビクッ

亜里沙「梨子……!」

梨子「今度は……今度は必ず決勝に行くから!」


雪穂「……」

亜里沙「……」

梨子「形は違っても!約束を守るために!絶対!」

雪穂「……!」

亜里沙「それって……!」

梨子「……っ」ダッ


雪穂「……」

亜里沙「ねぇ、雪穂……」

雪穂「……思い出せたんだ……梨子……」


ーーー


梨子「はっ……はっ……はっ……」


梨子「帰らなきゃ……っ」


梨子「謝らなきゃ……っ」


梨子「みんなに……っ」


ーーー

ガシャンッ

梨子「……はぁ……はぁ……」

梨子「……門……開いてない……」

梨子「はぁ……はぁ……そうよね……もうこんな時間なんだし……」

梨子「……何か挟まってる……紙?」

梨子「……」スッ

梨子「……っ!」ダッ




『初めて会った場所で待ってます 千歌』



ーーー

梨子「……っ!」

梨子「……いたっ!」ザッ

梨子「はぁ……はぁ……はぁ……」


千歌「……」

ルビィ「梨子先輩……」

花丸「……」

鞠莉「ほんとに来たわね」

ダイヤ「……」

曜「梨子ちゃん……」

善子「り、リリー……」

果南「善子ちゃん待って」


梨子「……っ」グッ


梨子「ごめんなさいっ!」


千歌「……」


梨子「練習行かなくなったり……勝手にいなくなって……自分勝手でした!」


ルビィ「そんなこと……」

ダイヤ「ルビィ」

ルビィ「っ……」


梨子「どうすればいいか分からなくて……みんなに迷惑かけたくなくて……」


花丸「……」


梨子「でも……お父さんに会って……ナナや雪穂達と会って……気付いたの……」


善子「……」


梨子「私……心の底からスクールアイドルが好きだって!だから記憶がなくたって、またここでスクールアイドルを始めたんだって!」


果南「梨子ちゃん……」


梨子「だからっ!だから自分勝手で滅茶苦茶で!迷惑もいっぱいかけちゃうけど!またスクールアイドル部に入れてくださいっ!!」


鞠莉「……何を馬鹿なこと言ってるの」


梨子「っ……分かってます……馬鹿で最低な事を言ってるのは……でもっ……たとえ一緒に踊れなくても……同じ部員としてーー」


千歌「梨子ちゃん、なんか勘違いしてないかな」


梨子「……えっ」


千歌「スクールアイドル部を辞めた人なんていないよ」スッ


梨子「これ……私の書いた退部届……なんで……」


ダイヤ「全く、私が回収してなければ本当に受理されてましたわよ」

果南「ダイヤが先生に掛け合って保留にしてもらったの


梨子「……どう、して……」


千歌「信じてたから」


梨子「……っ」


千歌「梨子ちゃんなら絶対戻ってくるって信じてたから」

曜「負けず嫌いな梨子ちゃんがこんなところで逃げ出したりしないって」

花丸「それでもヒヤヒヤしたズラ……」



千歌「だから、おかえり、梨子ちゃん」

梨子「っ……うん……うんっ……ただいまっ……」グスッ


面白いか?


ーーー

善子「……ほんとにいいの?」

梨子「うん」

ルビィ「今ならまだ止められるよ?」

梨子「これは、私なりのけじめだから」

善子「……わかったわ、じゃあ撮るわよ」


ーーー

ナナ「雪穂、亜里沙」

雪穂「どうしたの?」

ナナ「ちょっと相談と報告」

亜里沙「ん?」

ナナ「とりあえずこれ見て」

雪穂「なに?」


梨子『動画をご覧の皆様、初めまして、浦の星女学院スクールアイドル部、2年の桜内梨子です』


亜里沙「梨子!?」


梨子『まずこの度、私の事について、運営やスクールアイドル、応援してくださるファンの皆様にご迷惑をおかけしたことについてお詫び申し上げます』


雪穂「梨子が悪いわけじゃないのに……」

ナナ「私も一連のことは調べた……酷いよね……」


梨子『この件については、私に詳しい事情を説明する責任があると思い、このような形で皆様にお伝えすることにいたしました』


亜里沙「……」


梨子『まず、私がかつて音ノ木坂学院の生徒であったこと、本来なら3年生であることについては、紛れもない事実です』


ナナ「……」


梨子『ただ、私が今の状態になった理由については、一部で囁かれているような事は無く、二年前の12月……私がまだ音ノ木坂の一年生だった時、交通事故にあったからです』


雪穂「……」


梨子『交通事故により、私は全生活史健忘、いわゆる記憶喪失に陥りました、怪我と記憶喪失によるリハビリを余儀なくされ、一年の休学、そして家族が私の精神的負担を考慮しーー』

今回はここまで


ーーー

ガラッ

善子「さぁ、リトルデーモンのみんな!」バァン

花丸「どうかしたズラ?」

ルビィ「マルちゃん、普通に返事しちゃうんだ……」

善子「とんでもない事になったわよー」

果南「またー?」

梨子「私の動画……やっぱり荒れちゃったりしてるの?」

善子「ええ、そりゃもう大荒れに大荒れ、大波乱に大混乱よ!」ギランッ

ダイヤ「意味が分かりませんわ」


善子「じゃーん!なんとランキングが46位よー!」バッ

ルビィ「え?」

梨子「ん?」

鞠莉「……ワッツ!?」ガタッ

千歌「46!?」ガタッ

ルビィ「えぇぇ!?460の間違いじゃないの!?」アワアワ

曜「一気に50位以内まで上がっちゃったの!?」ガタッ

花丸「またとんでもない事になったズラぁ!?」ガーン

善子「まぁスクールアイドルとしてどうかとは思うけど
、リリーの動画を見た人から、感動したとか色々コメントくれててね」

梨子「そんな……」

善子「これまでアップした動画も鰻登り!獲得ポイントも桁が上がる快進撃よ!」

果南「善子ちゃんのテンションまでおかしい……」

ダイヤ「まぁここまで上位に来てしまったわけですから、4月からずっとやってきた鞠莉さん達にしてみれば、盛り上がるのも当然でしょう」

千歌「梨子ちゃん、絶対ラブライブ出よう!」

梨子「うんっ!」


ーーー

鞠莉「クシュンッ……寒い……」

曜「今日は一段と寒いねー……」ブルッ

千歌「雪降るかな!」

ダイヤ「降水確率は0ですわ」

千歌「がーん……」

花丸「こんなに寒いのに人はいっぱいいるズラ」

曜「そういえば梨子ちゃん達は?」

ダイヤ「……あちらでファンにもみくちゃにされてますわ」

千歌「凄い人だかり……」

曜「あ、出てきた」


善子「さ、流石にこんなにたくさんのリトルデーモン相手にしてたら、魔力がいくらあっても足りないわ……」ボロッ

果南「大丈夫、ルビィ?」

ルビィ「ひぃぃ……」フラフラ

梨子「と、とりあえず中に入りましょう……」ヨロヨロ

鞠莉「まだブロック予選なのにとんでもない盛り上がりねー」

ダイヤ「まぁ私達、県内1位になってしまいましたからね……」


ーーー


『スクールアイドル部、Aqours、ブロック予選突破!』


ルビィ「これは……恥ずかしい……」

花丸「おっきい垂れ幕ズラぁ……」

善子「まだブロック予選突破しただけなのに……」

花丸「でもみんな応援してくれてるんだよね」

善子「まぁ、そうなんだろうけど……」

キャーキャー

ルビィ「すごい窓から手を振られてる……帰りたい……」フリフリ


ーーー

千歌「あーあ……地区予選行けたら冬休みの宿題免除とかしてもらえないかなぁ」ベチャァ

ダイヤ「何を馬鹿なことを言ってるんですか……」ヤレヤレ

鞠莉「ーー!ーー!」

善子「さっきからマリーは何怒ってるの?」

果南「私達、かなり有名になってきたでしょ?だから鞠莉のお父さんがAqoursをホテルのCMに出したいんだって」

善子「なんというか商魂たくましいお父さんね……」

梨子「なんというか……私のせいでごめんなさい」ガクッ

曜「もぉ、前向きに行こうヨーソロー!」ビシッ

花丸「ヨーソローの使い方おかしい気が……」

曜「気にしない!」


鞠莉「もう、勝手なんだから!」プンプン

ダイヤ「終わりましたか?」

鞠莉「CMがダメならパンフはどうかだって!何なのよもう!」

ルビィ「あはは……」

善子「随分食い下がるのね……」

千歌「じゃあそろそろ練習始めよっか」

曜「おっけー♪」

鞠莉「待たせちゃってごめんなさいね」


ーーー

志満「千歌ちゃんおめでとう♪」

千歌「うんっ!ありがとう志満ねぇ!」

美渡「ほれ」ドサッ

千歌「えっ?何この大量のみかん……しかも高いやつ!」

美渡「お姉様は約束を守る人だからねー」ニシシ

千歌「約束?」

美渡「忘れてんのかっ、じゃあ没収ー」

千歌「えぇぇ!?」

志満「もう美渡、意地悪しないの」


美渡「冗談だってば、何かの大会で入賞で出来たらなんかあげるって言ってたでしょ」

千歌「えっ!あれ本気だったの!?」

美渡「アンタねぇ……せっかく県大会優勝したアンタの為に買ってきてあげたのに」

千歌「美渡ねぇ……ありがとう!」

美渡「そうそう、素直に感謝してればよろしい」

志満「ふふっ♪Aqoursのみんなにも分けてあげてね♪」

千歌「わかった♪」


ーーー

果南「うわ……なにこれ」

ルビィ「すごい料理いっぱい……」

鞠莉「クリスマスパーティーするならってパパが県大会優勝のお祝いも兼ねてくれて……」ガクッ

善子「絶対食べきれないでしょ……」

千歌「こんなにおっきいケーキ初めて見たよ!?」

曜「あ、後でお金請求されたりしないよねっ!?」

鞠莉「それは大丈夫」

ダイヤ「これでは、どこぞの企業の祝賀会ではないですか……」

梨子「見たことない料理ばっかり……」


千歌「せっかくだし他の子も呼ぶ?」

花丸「いきなり呼んで来れるかなぁ?」

鞠莉「ダメ元で呼んでみましょうか」

曜「はーい」

ルビィ「誰か来てくれるかなぁ」

善子「刺身とかあるわね……」

果南「誰か来るにしても、待ってたら傷んじゃうから先に食べよっか」

梨子「そうね」


ーーー

千歌「遂に来たね」

曜「名古屋も人多いなぁ……」

鞠莉「ラブライブ本戦への出場を決める大事な大会だからねー」

ルビィ「東海4県の猛者達がここに集まってくるんだぁ♪」キラキラ

善子「いや、私達もその内の1組なんだけど……」

果南「勝ち目は?」

ダイヤ「出場グループのランキングですと3番目でしたわ」

梨子「ランキングだけ見れば可能性は大いにあるってことかな」


ルビィ「ダメだよ!その慢心が失敗に繋がるんだからっ!」フンス

花丸「そうだねルビィちゃん!」グッ

果南「全力でやらなきゃ足元すくわれるもんね」

ルビィ「そうです!今、私達よりランクが下でも本戦出場経験のあるグループも沢山います!何が起きるか分かりませんよっ!」

千歌「3番目にランクが高いなら出場決まったも同然だねっ!」

善子「ルビィの話聞いてた……?」

曜「とはいえ、あんまり気負い過ぎてもダメだよ」

梨子「そうだよね、いつも通り楽しいライブにしなきゃ」

ダイヤ「今年最後のライブですものね」

千歌「それが言いたかった!」ビシッ

鞠莉「全然違うじゃない……」


ーーー


MC『ーー皆様大変長らくお待たせいたしました』

曜「……」

MC『……この場に集まった20組の内……』

鞠莉「……」

MC『一体どのグループが本戦への切符を手に入れるのか!』

花丸「……」

MC『東海エリア地区予選!予選突破グループ上位3組の発表です!』

ルビィ「……お願いっ」

ドゥルルルル…

MC『……エントリーナンバー3!岐阜県立束濃フロンティア高等学校ーー!』

果南「……あと2枠……」


ドゥルルルル…

MC『……エントリーナンバー7!愛知県名古屋市立光陽高等学校ーー!』

善子「……っ」

ダイヤ「……」ゴクリ

ドゥルルルル…



MC『……エントリーナンバー12!静岡県私立浦の星女学院、スクールアイドル部ーーAqours!』



梨子「えっ……」

MC『以上がラブライブ本戦への出場を決めた3組ですっ!そして、素晴らしいライブを見せてくれた全ての出場グループに盛大な拍手を!』

千歌「……」ポカーン

曜「っ……千歌ちゃん!」ダキッ

果南「本戦……出場……!」

ルビィ「夢のラブライブに……」

鞠莉「出れる……!」

花丸「やったズラぁ!」

ダイヤ「やりましたわね!」

梨子「……っ」グスッ

善子「まだ泣くには早いでしょ」

梨子「……うんっ」ゴシゴシ

果南「ラブライブに……アキバドームに行けるんだ!」

ルビィ「ずっと憧れてたあの場所で歌える!」

千歌「……嘘、じゃないよね!?」

ダイヤ「そんな訳ないでしょう」


千歌「私達……ほんとにラブライブに行けるんだ……!」


ーーー

ゴーン…

花丸「みんな、あけましておめでとうございます」ペコリ

ルビィ「おめでとうございます♪」ペコリ

ダイヤ「おめでとうございます」ペコリ

千歌「おめでとう♪ダイヤさん、ルビィちゃん、マルちゃん♪」

曜「みんな、あけましておめでとう!」

ゴーン…

梨子「おめでとう……3人のその格好は……?」

花丸「これ?巫女さんズラ、本当は寺だから巫女っていうのも変なんだけど……」アハハ…

ルビィ「でも可愛いよね♪」

ダイヤ「私はあまり気が進まないのですが……ご住職の意向でしたので……」

千歌「あはは……」

花丸「しかも、巫女さんの方が受けが良さそうだから、って理由なんだよね……」ガクッ


梨子「……??」

曜「……あっ!梨子ちゃん、ここマルちゃんの家」

梨子「えっ!?」

花丸「あっ、そういえば桜内先輩ってウチに来たことなかったっけ?」

梨子「初めて内浦に来たときに、お母さんと一緒に来て住職さんに挨拶だけはしたけど……」

ダイヤ「あぁ、それでは気付きませんわね」

花丸「ウチの表札、本殿の裏の家の方にしか出てないから、あと多分その住職はオラのおじいちゃんズラ」

梨子「そうだったのね……そういえばダイヤさんとルビィちゃんはどうしてその格好を?」

ダイヤ「黒澤家も古くからお世話になってるお寺ですので、半ば親戚みたいなものですわ」

ルビィ「だからこういう人が沢山来る時はお手伝いに来てるの」

梨子「なるほど……」


鞠莉「ハーイ♪ハッピーニューイヤー♪」

曜「あ、鞠莉先輩!うわ……凄い晴れ着……」

鞠莉「あら、ほんとに誰も着てないのね」

果南「だから言ったじゃん」

鞠莉「もう!勿体ないわよ!」

梨子「果南さん、あけましておめでとうございます」ペコリ

果南「あけましておめでとう♪ルビィ、その格好可愛いね」

ルビィ「えへへ♪でしょー♪」

鞠莉「あれ?ヨハネちゃんは?」

千歌「あ、そういえば来てないね」


ーーー

善子「寝てたわ」

ようちか「勿体なーい」

善子「ヨハネは堕天使だから……聖なる除夜の鐘を聴くと魂を締め付けられるような痛みが……!」ギランッ

梨子「むしろ浄化してもらった方がいいんじゃ……」

美渡「ほら、喋ってないで働くー」

千歌「はーい」

善子「ていうか、他のみんなは?」

曜「ルビィちゃんとダイヤさんは親戚に挨拶回り」

千歌「マルちゃんは初詣のお手伝い」

梨子「鞠莉さんもお父さんの関係者なんかに新年の挨拶しなきゃって言ってたよね」


善子「松浦先輩は?」

曜「初潜りするってさ」

善子「そんなのありっ!?」ガーン

志満「みんなー、お客様が来る前に表の掃除よろしくー」

千歌「はーい」

善子「ラブライブがあるからって、親の実家に行かないで残ったのに、新年早々旅館のバイトをする羽目になるとは……」ガクッ


ーーー

母「忘れ物は大丈夫?」

梨子「えっと……うん、大丈夫」

母「もう暗くなる時間だから気を付けてね?」

梨子「うんっ」

母「お母さん会場には見に行けないけど、梨子達が出る時は絶対TVで見て応援してるから、頑張ってね!」

梨子「うん、頑張る!」

母「お父さんにもよろしくね」

梨子「うん」

母「じゃあーー」


梨子「お母さん」

母「ん?」

梨子「ありがとう、この町に連れてきてくれて」

母「急にどうしたの……」

梨子「なんか、今言いたくなったの」

母「……そう」

梨子「私、色んな物を無くしちゃったけど……その分この町で手に入れた物も沢山あったから……」

母「……」

梨子「だからありがとう!じゃあいってきます!」

母「うん、いってらっしゃい!」


ーーー

梨子「散らかってるかもしれないからごめんね」

父「酷いなぁ……一応昨日の夜ちゃんと掃除したんだよ?」

梨子「ほんとにー?ふふっ、じゃあ上がって」

曜「お邪魔しまぁす!」

ルビィ「お、お邪魔しますっ!」

花丸「ここが桜内先輩が住んでた家……」

善子「思ったよりデカい……」

果南「これで海が見えたら最高だねー」

鞠莉「果南、貴女海以外に楽しみないの?」

ダイヤ「夜分遅くに申し訳ありません、少しの間ですが、よろしくお願い致します」ペコリ

父「おぉ、これはこれはご丁寧に、こちらこそ大したもてなしも出来ずすみません」ペコリ


千歌「梨子ちゃんの部屋は?」

梨子「えっ?特に面白いものはないと思うけど……」

果南「曜」

曜「ラジャー!突撃であります!」

梨子「えっ!ちょっと!場所分かるのー!?」

曜「あっ!」

ルビィ「人の家なんだからあんまり詮索しちゃダメだよぅ……」

ダイヤ「貴女達、ご好意で泊めてもらえるんですから大人しくしなさい!」


鞠莉「すみませんお父様、キッチンをお借りしてもよろしいですか?」

父「お父様!?あ、あぁ、自由に使ってくれて構わないよ……」

鞠莉「ありがとうございます♪もしまだお済みでなければご一緒に夕食はいかがですか?」ニコッ


父「あぁ、申し訳ない……気持ちは嬉しいが、仕事終わりに済ましてきたもので」アセアセ

鞠莉「そうでしたか、では、明日の朝食は是非ご一緒に♪」

父「あぁ、そうさせてもらおうかな……り、梨子」

梨子「どうかした?」

父「なんというか……個性的な子達だね……」

梨子「あぁ……うん……」

鞠莉「梨子っちー♪レッツクッキングよー♪」

梨子「あっ、はーい」

花丸「あ、オラも手伝うズラ!」


ーーー

千歌「ふわぁ……おはよ……」

ルビィ「ぅゅ……」ゴシゴシ

梨子「二人共おはよう♪もうすぐ朝ごはん出来るから顔洗ってきて」

ルビィ「はぁい……」

鞠莉「梨子っちー何かお手伝い出来ーー」

梨子「鞠莉さんは座っててください♪」ニコッ

花丸「笑顔が怖いズラぁ……」シミジミ

鞠莉「oh……オーケー……」シュン…

善子「まぁ、これからラブライブ本番だってのに朝からあんな殺人的な料理食べたくないしね……」


ダイヤ「何故、あんなに自信満々だったのか甚だ疑問ですわ……」

果南「あんな硬いお肉初めて食べた……」

曜「うわー……こんな朝早くから人集まりすぎ……」ウヘァ…

ルビィ「わぁ♪生放送は一局だけなのにどのチャンネルもラブライブの話ばっかりだねー♪」ワクワク

花丸「出来たよー♪」

千歌「うーん……いい匂い♪」

果南「じゃあしっかり食べて、今日も全力で行こう!」

9人「いただきまーす!」


ーーー

ダイヤ「あちらの関係者用から入るそうですわ」

果南「はーい」


千歌「……ええっ!?」

花丸「なんて言ってるの?」

千歌「むっちゃん達……全校生徒連れてきたって……」

梨子「ぜ、全校生徒!?」

千歌「入れなくても外のモニターで応援するからって……」

花丸「何時間ここにいるつもりズラ……」


鞠莉「……」

曜「鞠莉先輩どうかした?」

鞠莉「……私達あそこでこてんぱんに負けちゃったのよねーって思って」

ルビィ「うん、マルちゃんと梨子先輩の2票しか入らなかったんだよね」

果南「そうだったんだ……」

曜「なんかすっごい昔の話みたいだけど半年前なんだよね」

善子「あれから色々あったもの」

千歌「……絶対勝とうね」

梨子「……うんっ!」

千歌「じゃあ入ろっか」

ダイヤ「ええ、グループ毎に控え室が用意されてるそうですわ、まずはそちらに荷物を置きましょう」

善子「専用の控え室って……お金かかってるわね……」

ルビィ「日本屈指の一大イベントだからね!」グッ

今日はここまで
あと2~3回で終わります

見てる
がんばれ


ーーー

千歌「すごい……」

果南「ステージからしておっきいねー」

鞠莉「夏まつりの時くらいあるかしら?」

ルビィ「あぁ……ルビィは今最高に幸せです……っ!」

花丸「ルビィちゃん、始まる前から満足してるズラ……」

善子「私達が待つ席ってここなのよね?」

ダイヤ「そうですわ」

善子「踊ってるの見えなくない?」

ダイヤ「まぁ、これだけスクリーンが大きければ気にならないのでは?」

梨子「……」ゴクリ…


曜「梨子ちゃん」ツンツン

梨子「ん?」

曜「梨子ちゃんにお客さんだよ」ニシシ

梨子「えっ?」

善子「んー?」

ルビィ「にゅ……ν-tral!」

千歌「梨子ちゃん、行ってきなよ」

梨子「……うん!」


ーーー

梨子「あの……どこ行くの?」

亜里沙「いいからついてきて♪」

雪穂「私達が夢見た場所」

梨子「夢見た場所って……ドームのことじゃ……」

亜里沙「そうだけど、そうじゃないでしょ」

雪穂「せめて気分だけでもね」

梨子「……?」


雪穂「ここ」ガチャッ

梨子「ここって……?」

亜里沙「ステージ裏、出番が近くなったらここに来て待機するの」

梨子「……!」

ナナ「あっ、やっと来た」

梨子「ナナ!?どうして……関係者以外入れないんじゃ……」

ナナ「雪穂と亜里沙にお願いしてね」

雪穂「ナナが急にアイドル研究部に戻れないかって」

梨子「もしかして私が行ったから……」

ナナ「まぁね、今更2人と一緒には踊れないけどさ、あの日の約束くらいは叶えなきゃって思って」

亜里沙「卒業までの期間限定マネージャーになってもらったの」

梨子「そうだったんだ……」

雪穂「……」


亜里沙「……アイドル研究部に入部した時のこと、私まだ覚えてるよ」

梨子「……」

雪穂「私も、μ'sの、お姉ちゃん達の姿をずっと見てきて……部活決める時にすぐ入部届け出しに行ったよね」

ナナ「懐かしいなぁ……私、2人に引っ張られてたなぁ」クスクス

梨子「私も思い出したよ……部室の前で入ろうか迷ってたら中にいた亜里沙に引っ張られたんだよね」

亜里沙「えっ!そんなことしたっけ!?」

雪穂「全然覚えてないじゃん」クスクス

梨子「もぅ……でも嬉しかった、友達はみんなUTXに行っちゃってたから、あんなに簡単に受け入れてもらえて凄く助かったよ」

ナナ「梨子はピアノが出来たから真姫先輩にいっつもついて回ってたよね、あとことり先輩にも」

梨子「だって、真姫先輩の曲に憧れて入った様なものだし、衣装の作り方にも興味あったから……そういうナナだって何かあるとだいたい花陽先輩に聞いてたじゃん」

ナナ「だって花陽先輩アイドルに詳しいし、私そういうの全然分かんなかったしー」


雪穂「亜里沙は部活に入る前から海未ちゃん一筋だよね」

亜里沙「変な言い方しないでよー、海未さんのファンなだけっ!」

梨子「雪穂は意外と凛先輩と仲良かったよね」

雪穂「なんか凛さんってもう一人のお姉ちゃんみたいだったから」

ナナ「確かに穂乃果先輩と凛先輩と雪穂って三姉妹みたいだったよね」

亜里沙「お姉ちゃん達が卒業して、μ'sが解散した後もみんなすごい人気だったね」

雪穂「うん、初めてライブに出た時はプレッシャー凄かったよね」

梨子「でも楽しかった」


ナナ「うん、だからみんなで絶対ラブライブに出ようって、アキバドームに行こうって思えた」

亜里沙「……懐かしいなぁ」

ナナ「あれからもう三年近く経っちゃったんだね……」

亜里沙「……随分時間かかっちゃったね」

雪穂「うん……凄く遠回りしちゃった」

梨子「……そうだね」

ナナ「あれから……こうして4人集まれるなんて思わなかった」

雪穂「……でも、やっとこの場所に……形は違っても、この4人で来れた」

梨子「……うん」

亜里沙「……」


梨子「亜里沙、雪穂」

亜里沙「ん?」

梨子「……私……私達、負けないから」

ナナ「相変わらず負けず嫌いなのね」

亜里沙「私達だって負けないよ!」

雪穂「これでも2回優勝してるんだからね」

梨子「うん」

ナナ「よっし」

梨子「ん?」

ナナ「ν-tralとAqoursの健闘を祈ってアレやろう!」

雪穂「うん!」

亜里沙「梨子は覚えてる?」

梨子「……うん、ちゃんと思い出したよ」


ナナ「すぅ……心の準備は大丈夫っ?」

雪穂「出来ることは全部やった!」

亜里沙「目一杯楽しもう!」

梨子「……行くよ!みんなっ!」

4人「ゴー……ラーイブ!!」

雪穂「……」グッ

梨子「……」ギュッ

亜里沙「……」

ナナ「三人とも後悔のないように……私ちゃんと見届けるから」

雪穂「うん、勝っても負けても恨みっこなし」

亜里沙「頑張ってね、梨子」

梨子「うん、雪穂と亜里沙も、ナナもありがとう」


ーーー

花丸「あ、おかえりなさい桜内先輩」

梨子「ただいま」

果南「もうすぐ開場するみたいだよ」

千歌「……ちゃんと話せた?」

梨子「うん、少しだけあの頃に戻れた気がした……ちゃんと約束も果たせた」

千歌「……」

梨子「だから、これで心置き無く踊れるよ!」

鞠莉「頼もしい限りねー♪」

ダイヤ「ええ、私達も何一つ後悔しないように全て出し切りましょう」


梨子「……あっ」

善子「なに?」

梨子「その……」

曜「まだ何かやり残した事が?」

梨子「ううん、そうじゃなくて……その……」

ダイヤ「ハッキリ言って頂かないと分かりませんわ?」

梨子「えっとその……絶対負けないとか言ってきちゃった……雪穂と亜里沙に」

ルビィ「えええっ!?」ガーン

花丸「2連覇の王者にそんなことを!?」ガーン

果南「あちゃー……負けず嫌いが出ちゃったかぁ」

梨子「……ナナにも同じこと言われました……」シュン…

鞠莉「ほんとに根っからなのね……」ヤレヤレ


曜「……千歌ちゃん今どんな気持ち?」

千歌「プレッシャーで押し潰されそうなのだ……」

曜「私も……」

梨子「ご、ごめんなさい……」

千歌「……でも嫌じゃない」

善子「ま、それくらいの気持ちでやらなきゃ優勝なんてそう簡単に譲ってもらえないわよねー」

ルビィ「にゅにゅ……にゅーとらるに勝つ……にゅーとらるに勝つぞっ……」ガタガタ

花丸「ルビィちゃん落ち着いて……」ナデナデ

ダイヤ「会場の方もずいぶんと賑やかになってきましたわね」

鞠莉「そろそろオープニングも始まるでしょうし、私達も行きましょうか」

千歌「うんっ!」


ーーー

MC『ご来場の皆様!大変長らくお待たせいたしましたー!新年が明けて早1週!遂にやってまいりました!』

千歌「……」

MC『身を切る寒さの中、この会場を熱気で満たしてくれる総勢40組のスクールアイドルが遂に集結!』

花丸「……」ゴクリ

MC『勝利の栄冠を手に入れるのは一体どのグループか!』

果南「……」

MC『第八回ラブライブ!ここに開幕ですっ!』

ワァァァッッ!!

鞠莉「すっごいパワーね……」

MC『まずは前回大会優勝者より、優勝旗の返還です!』

梨子「雪穂……亜里沙……」


MC『ありがとうございます、それでは公式サポーターでもありますA‐RISEの綺羅ツバサさんから開会の挨拶です』

ダイヤ「……」

ツバサ『皆様、厳しい寒さの中お集まりいただき大変ありがとうございます、今回もまた素晴らしいスクールアイドル達がこのアキバドームにやって来ましたーー』

ルビィ「わぁぁ♪生の綺羅ツバサさんだぁ♪」

善子「生って言ってもこの距離じゃ……ねぇ……」

ツバサ『ーー私も観客の皆様と共に大いに盛り上げていければと思っております、そして今日、明日とこのステージを彩る全てのスクールアイドルが心置き無く素晴らしいライブを披露してくれることを願っています、以上を開会の挨拶とさせていただきます』

パチパチパチパチ

曜「それでもオーラっていうのかな……やっぱり全然違うね」

MC『ありがとうございます、それでは改めてルールの説明をさせていただきます、まず本日と明日の二日間で計40組のライブを行い、各グループ楽曲は2曲、衣装交換は原則不可となっておりますーー』


ーーー

善子「これで大丈夫?」

曜「オッケーだよ」

果南「じゃあお昼買ってくるね」

鞠莉「いってきまーす♪」

ダイヤ「よろしくお願いしますわ」

千歌「いってらっしゃーい」

ルビィ「じゃあルビィもステージ見てくる!」

梨子「三人が帰ってきたら連絡してね」

曜「ラジャー!」

ダイヤ「音はちゃんと切っておいてくださいね」

ルビィ「うんっ!」

梨子「いってきます♪」


花丸「それにしても……まだ一時間しか経ってない……」

曜「流石にずっと見てるのも疲れるしね……ルビィちゃんも梨子ちゃんも凄いや」

ダイヤ「そもそも、夏まつりの時もそうですけど、どうしてこういう時に限ってトリを引き当てるんですの」

千歌「あはは……ごめんなさぁい……」

曜「ほんとだよねー」

花丸「プレッシャーが重過ぎて押し花丸になっちゃう」

千歌「えっ?」

ダイヤ「……」

曜「……」

花丸「……」

ダイヤ「すみません、もう一度お願いしますわ」

花丸「聞き直さなくていいズラぁ……」ウズクマリ


ーーー

果南「……やっぱりここまで来るだけあってみんな凄いね」

ルビィ「うんっ♪」

ダイヤ「ルビィ、そろそろ気持ちを切り替えなさい……」

鞠莉「リーダー、何か言う事はないの?」

千歌「えっ?えーっと……」

善子「……」

千歌「……みんなありがとう」

花丸「……」


千歌「今日、ここに来れたのは曜ちゃんや梨子ちゃん、ルビィちゃんにマルちゃん、善子ちゃんと鞠莉先輩、それから果南ちゃんにダイヤさん、あと学校のみんなや内浦の人達、私達を応援してくれたファンのみんなも」

鞠莉「……」

千歌「みーんながいてくれたから私頑張れた」

曜「それは私達も同じだよ」

ルビィ「千歌ちゃんがいてくれたからだよ♪」

千歌「うん……辛くても苦しくてもみんなで支えあってきたから来れたんだよね……」

果南「……」

千歌「最初は小さな泡だった私達だけど、やっとみんなに気付いてもらえた気がする」

梨子「うん……」

千歌「だから最後まで歌おう!私達はここにいるよって!」



MC『ーーありがとうございましたっ!さぁ!遂に本日最後のグループとなりました!』


千歌「よしっ!みんなっ!1っ!」

曜「2っ!」

ルビィ「3っ!」


MC『エントリーナンバー21!数多の苦難に立ち向かう9人のその背中はまるであの伝説のスクールアイドルのように!』


鞠莉「4っ♪」

善子「5っ!」

梨子「6!」



MC『彼女達が目指す先に勝利の女神は微笑むのか!』


花丸「7っ!」

果南「8っ!」

ダイヤ「9っ!」


MC『静岡県私立浦の星女学院!スクールアイドル部!Aqours!』


千歌「アクアー!」


9人「サンシャイーン!!」


ーーー

千歌「……」


『1位 ν-tral』
『4位 Aqours』


ルビィ「……悔しいね」

善子「……うん」

果南「完敗だね」

ダイヤ「そうですわね……」

花丸「むしろ4位になれて凄いと思う」

鞠莉「……ええ、そうね」

曜「Aqoursもこれで終わりか……」


梨子「あの……」

千歌「……ん?」

梨子「……まだ終わってないよ」

果南「どういう事?」

ダイヤ「私達は3月で卒業ですのよ?」

梨子「うん、ラブライブはこれで終わりだけど……」

ルビィ「……あっ!」

花丸「ルビィちゃん?」

ルビィ「アレがまだあるんだ……!」


雪穂「梨子、Aqoursの皆さんもお疲れ様でした」

亜里沙「お疲れ様でした!」

梨子「あ、雪穂、亜里沙、ナナ」

千歌「こ、こちらこそお疲れ様でしたっ」

ナナ「最高のステージだったよ♪」

梨子「ありがとう、でもやっぱり雪穂達には叶わなかった」

亜里沙「私は負けたかもって思っちゃったけどなぁ」

雪穂「私達は三年やってるから、それで勝てた様なものだよ」

梨子「それでも私達の負けは負けだから……」

亜里沙「もぅ、拗ねないでよー」プニプニ

梨子「ぁぅ……」


雪穂「それにラブライブは終わったけど、最後のライブがあるんだし」

梨子「アレは勝ち負けがないでしょ」

亜里沙「だからいいんだよ♪」

梨子「ふふっ♪それもそうかもね♪」


曜「あの……そのアレ?って……」

雪穂「あぁ、実は3月の末にあるんですまだ、もう一つのスクールアイドルの祭典ーー」


ルビィ「ーースクールアイドルフェスティバル!」


ーーー

ルビィ「前は見るだけだったけど……つ、遂に音ノ木坂の中に……」ゴクリ

鞠莉「ルビィちゃん……右手と右足が同時に出てるわ……」

梨子「懐かしい……そういえば鞠莉さんってアメリカの大学なんですよね?こんな時期まで残って大丈夫なんですか?」

鞠莉「ノープロブレム♪入学は8月だもの」

梨子「あ、そうなんですか」

亜里沙「梨子ー!」

梨子「亜里沙♪わざわざ出迎えてくれなくても良かったのに」

亜里沙「だって講堂の場所思い出せてないかもしれないし!お二人もよろしくお願いします♪」

ルビィ「よ、よろしくお願いしますっ!」

鞠莉「よろしくお願いするわ♪」

ーーー

「函館聖泉女子高等学院からきました、Saint Snowの鹿角聖良です」

「同じくSaint Snow鹿角理亞です」


雪穂「ーーはい、それでは皆さん忙しい中、改めてお集まりいただきありがとうございます、ご存知かと思いますが3月末の第4回スクールアイドルフェスティバルについての打ち合わせを始めたいと思います」

亜里沙「まずそれぞれ作詞作曲、衣装、振り付けに別れて話し合いをしてもらいます、ちなみに事前アンケートで募集した結果、今年のテーマは『思い出』と『勇気』の二つに決まりました」

鞠莉「きっと梨子っちのせいね」ヒソヒソ

梨子「えっ、そんな……」


雪穂「明日まで、出来れば本日中には全体の方向性を固めたいと思っています、それから現段階での中央通りの構想はこのようになってますので、こちらも参考にしてください」

ルビィ「すごい……ハロウィンの時より豪華……」

雪穂「お分かりかと思いますが、スクールアイドルフェスティバルは最も多くのスクールアイドルが一堂に会する場です、皆さんはその代表であることを忘れずにお願いいたします」

亜里沙「それではまず衣装班は三年生校舎へ、振り付け班は体育館へ移動をお願いします、作詞作曲班はここに残ってください」

雪穂「それでは、振り付け班は私についてきてください」

ナナ「衣装班は私が案内しまーす」

鞠莉「じゃ、二人共、また後でね♪」

ルビィ「が、頑張って来ます……」ガチガチ

梨子「うん♪それじゃ♪」


ーーー

ダイヤ「これはまた……豪勢な……」

曜「もしかして、ここにいるのみんなスクールアイドル?」

ルビィ「うんっ!全国から参加希望者を募って抽選が当たった500組!総勢1800人以上!」

千歌「じゃあこれよりもっと沢山のスクールアイドルがいるってことなんだよね」

梨子「ええ、あくまでここで踊るのが500組なだけだから、これから更に見に来る人の中にもスクールアイドルは沢山いると思う」

花丸「見に来る人達は踊れないの?」

鞠莉「そんなことは無いみたいよ、あくまでこの秋葉原のエリアは私達が踊るだけで実際のエリアはえっと……」


梨子「中央通りだとこの万世橋から末広町の駅までがメインエリアで、実際は上野駅までが完全に封鎖されるの、それで末広町から向こうは自由参加エリア」

善子「えっ……大通りをこんな長い距離封鎖して大丈夫なの!?」

鞠莉「……大丈夫だから封鎖するんじゃない?」

花丸「東京はとんでもないズラぁ……」

梨子「それで、衣装の型は無料公開されてるから、衣装さえ用意すればスクールアイドルなら自由参加エリアで曲を披露したりしていいの」

果南「なんか……とんでもなくお金かかってるイベントだね……」

prrr

梨子「あ、雪穂から……最終の打ち合わせするからUTXに集合だって」

ルビィ「はぁい♪」

ここまで
次でラストです


ーーー

雪穂「それじゃ、明日はよろしくお願いします」

千歌「こちらこそよろしくお願いしますっ!」

亜里沙「明日はいっぱい楽しもうね♪」

ルビィ「はいっ!」


「雪穂ー、亜里沙ちゃーん!」


善子「ん?」

雪穂「お姉ちゃん!?」



穂乃果「いやーすごいね、これ!」

雪穂「どうしたの!?今日バイトじゃなかったの?」



ことり「激励に来たの♪」

海未「明日は雪穂達も忙しいかと思ったので」


亜里沙「海未さんっ!ことりさんも!」


海未「お久しぶりですね、亜里沙、元気にしてましたか?」

亜里沙「もちろんですっ!」

ことり「梨子ちゃん、久しぶりー♪元気そうで良かったよぉ」ギュー

穂乃果「あれからの事、色々雪穂から聞いてたけど、ホント良かった」

梨子「こ、ことり先輩くるし……穂乃果先輩も、ありがとうございます」

海未「また会えて良かったです」

梨子「私もです♪」


ルビィ「あわわ……みゅ……みゅみゅみゅ!?」

花丸「ルビィちゃん!?大丈夫ズラ!?」

千歌「ほ、本物……!?」

ダイヤ「これは……驚きましたわ……」

善子「ねぇ、この人達って……」ヒソヒソ

果南「うん……μ'sだね」ヒソヒソ



「アンタ達ねぇ、もうちょっとくらい待ちなさいよ」

「梨子ちゃーん!」ダッ



梨子「凛先輩!」

凛「久しぶりー!」

穂乃果「あはは、梨子ちゃんが来てるって聞いてたからついー」

にこ「まったく……」

絵里「亜里沙ー♪」フリフリ

亜里沙「あっ!お姉ちゃーん♪」

ルビィ「あわわわわ……」ガタガタ

花陽「梨子ちゃん、元気そうで良かったぁ♪雪穂ちゃんも亜里沙ちゃんも久しぶり♪」

希「この子が言ってた子?」

真姫「ええ、そうよ、みんな色々お疲れ様」

雪穂「皆さん、お久しぶりです」

凛「なんか雪穂ちゃん、去年より大人びてるねー♪」

雪穂「そ、そうかな?」


鞠莉「oh……」

曜「μ'sが……みんないる」

ルビィ「マルちゃん!ルビィのほっぺたつねって!」

花丸「ええっ!?」

善子「ん」ムニッ

ルビィ「い、いひゃい……夢じゃない……」

絵里「久しぶりね、梨子♪」

梨子「お久しぶりです♪ご心配おかけしました」ペコリ


希「ふむふむ、なかなか波乱万丈な星の下に生まれてるみたいやね」

ことり「希ちゃん分かるの?」

真姫「さっき色々話したから」

希「真姫ちゃん、ネタバレはあかんよー」

ルビィ「ああああ、あのっ!さささ、サインもらえませんか!?」

にこ「にこの?しょうがないわねー♪本当はオフの日は書かないんだけど特別ニコ♪」

ルビィ「あああ、ありがとうございます!!家宝にしますっ!!」

ダイヤ「ルビィ……それはお父様に怒られますわ……」


梨子「そういえば、皆さんは卒業してからは?」

花陽「みんな、それぞれ頑張ってるよ♪、ことりちゃんなんてこの今日のためにわざわざパリから帰ってきたんだよ」

ことり「えへへ~♪雪穂ちゃん達の最後のステージだし♪それに梨子ちゃんにも会えたからホントに帰って来てよかった♪」

梨子「すごい……」

真姫「一番びっくりしたのは凛が医学部に行ったことね」

凛「えっへん!」ドヤッ

梨子「えっ……凛先輩が!?」ガーン

海未「梨子の驚きはすごく良くわかります……」


凛「久しぶりにあったのに2人とも酷くない!?」ガーン

穂乃果「凛ちゃん、スポーツドクターになりたいんだって」

梨子「スポーツドクター……それで」

花陽「三年生の時なんか真姫ちゃんより勉強してたもんね♪」

絵里「にこも頑張って」ポンポン

にこ「なんで名指しなのよ!?にこもタレント業頑張ってるんだけど!?」ガーン


希「それにしてもウチらの時よりずいぶん豪華になってるよね」

凛「μ'sの時は秋葉原だけだったのにねー」

花陽「年々範囲が広くなってすごいよね」

雪穂「ここに集まってるのはみんな、μ'sやA‐RISE……あの時ここで踊ってたスクールアイドルに憧れた人達ばっかりだから」

穂乃果「私達が思い付きで始めた事がこんなことになるとは……」

ことり「なんか嬉しいよね♪」

真姫「懐かしいわね」

絵里「それじゃ、思い出話も含めて後で飲みにでも行きましょうか」

希「賛成ー♪」


穂乃果「そういえば、海未ちゃんも二十歳になったしお酒解禁だね!」

海未「私は飲みません」

ことり「えー」

にこ「えー」

海未「なんでそんなに飲ませたいんですか」

真姫「酔ったら面白そうだから」

花陽「確かに」

海未「なら尚更飲みません!」

梨子「ふふっ♪」


ーーー

海未「では明日もあるのでそろそろ行きましょうか」

穂乃果「じゃあ雪穂、明日も見に来るからねー♪」

絵里「亜里沙もね♪」

真姫「梨子、また近い内に食事でも行きましょう」

花陽「Aqoursのみんなも頑張ってね♪」

凛「みんな楽しんでねー♪」

希「ほな~♪」

ことり「素敵な曲楽しみにしてるね♪」

にこ「手抜くんじゃないわよー♪」


亜里沙「ありがとうございまーす♪」

雪穂「お姉ちゃん飲みすぎないでねー!」

梨子「ありがとうございました♪真姫先輩、絶対誘ってくださいねー!」

雪穂「はぁ、びっくりした、来るなら言ってくれれば良かったのに」

亜里沙「ホントにね♪」


梨子「会えて良かった……って、みんなどうしたの?」

千歌「……」ポカーン


鞠莉「なんというか……」

ダイヤ「あれから三年経ってるとは思えないオーラでしたわ……」

果南「なんか圧倒されちゃったね……」

ルビィ「ににに……にこさんのサイン……ルビィの名前まで……書いてもらえた……」ガタガタ

花丸「ルビィちゃん!?大丈夫!?」

善子「あれがμ's……」

曜「人生で一番緊張した時間だったかも……」

梨子「ふふっ、確かにすごい人達だよね」

雪穂「……私達も三年やってるけど、それでもお姉ちゃん達にはまだまだ敵わないと思ってる」

亜里沙「そうだね」


千歌「ν-tralのお二人でも?」

雪穂「うん、なんといっても音ノ木坂を救った英雄だから」

亜里沙「今でも音ノ木坂に入学する子の中にはμ'sに憧れて来る子が結構いるんだよ?」

梨子「私達もそうだったよね」

千歌「私も……私も最初はμ'sに憧れてスクールアイドルをしたいって思ったんだよね」

果南「私達も二年前はそうだったよ」

ダイヤ「ええ、μ'sみたいに、なんて言ってましたわね」

鞠莉「その節については大変申し訳ございませんでした……」ガクッ

果南「あ、いや、別に鞠莉のこと責めてる訳じゃないよ」

ダイヤ「そうですわ、今思えばあの時、スクールアイドルを始めていても、廃校を免れたとは思えません」


雪穂「……えっ」

亜里沙「廃校って……」

善子「浦の星って今の一年生……私達が卒業したら廃校になるんです」

花丸「もう……来年からの新入生は募集してないんです」

雪穂「……」

亜里沙「そんな……」


曜「でも、だからこそ私達ここまで頑張れたんだと思うんです」

千歌「浦の星があったこと……そこで毎日を精一杯生きてる私達がいたこと……それをみんなに知ってもらいたくて私達はAqoursを結成したんです」


雪穂「そうだったの……」

亜里沙「……」


千歌「だから……だからこそ明日は目一杯楽しみたいんです」

ダイヤ「もちろんですわ」

曜「全速前進ヨーソロー!ってね!」

善子「悔やんだって仕方ないしね」

雪穂「……うん、もちろん私達も」

亜里沙「うんっ!」

梨子「雪穂、亜里沙、改めて明日はよろしく!」

ルビィ「よろしくお願いしますっ!」

雪穂「ええ、最高のステージにしよう!」

千歌「はいっ!」


ーーー



ーーー

「皆さーん!第6回スクールアイドルフェスティバル!お疲れ様でしたー♪」

「今年も沢山の人が来てくれたわね」

「もちろんみんなも楽しめたかな?」

パチパチパチ

「良かった♪」

「ん?なに?どうしたの?」

「わっ、おっきい花束……くれるの?」

「みんな……ありがとう……」



ルビィ「……皆さん知ってのとおり、私達の学校は……浦の星女学院は3月いっぱいで廃校になります」


花丸「消えゆく私達の学校を知ってもらいたい、覚えてもらいたい一心でここまでやってきました」


善子「私達はこんなに素敵なみんなと出会えたことを忘れない……だから私達の事もほんの少しだけでも覚えていてくれたら嬉しいかな」

ルビィ「……」

花丸「……」

善子「……」



「今までありがとうございました!」



ーーー

梨子「思ったより早く着いちゃったなぁ」

梨子「ちょっと寄り道してから行こっかな」

梨子「……海かぁ」テクテク

梨子「……私にとってはここから始まったんだよね……懐かしいなぁ……」

プップー

梨子「ん?」

千歌「あー!やっぱり梨子ちゃんだ!」

梨子「千歌さん!久しぶり♪」

千歌「ほんとに久しぶりーだよー、もぉ梨子ちゃん全然内浦に帰ってこないんだもーん、ちょっと待ってね、今停めてくるし!」


梨子「ごめんなさい、なかなか時間取れなくて」

千歌「ピアノの方はどう?」

梨子「うーん、順調……かな?」

千歌「なんでそんなに自信ないのー」

梨子「それはやっぱり私より上手い人なんていっぱいいるし……」

オーイ

千歌「世界は厳しいんだねー」

梨子「大学の中の話なんだけど……」

オーイ!

梨子「千歌さんは?」

千歌「めちゃくちゃ忙しい!短大にするんじゃなかったよぉ」


「おーい!無視するなー!」


梨子「えっ!?曜さん!?」

千歌「うぇぇっ!?なんで船で来てるの!?」

果南「私が迎えに行ったから、梨子ちゃん久しぶり♪」

梨子「お久しぶりです果南さん♪」

千歌「船で迎えに行くって相変わらず無茶苦茶だなぁ……」

曜「よっと」

果南「じゃあ私これとめてくるね」

曜「ありがとー!また後でねー!」


梨子「曜さんは最近どう?」

曜「頭が破裂しそう!」

梨子「ええっ!?」

曜「勉強が難しくて難しくて、船長どころか航海士にもなれるか不安になってきたよー」

梨子「もう……らしくないよ?」クスクス

曜「もちろん諦めたりはしないよ!実習で海に出るとやっぱりやる気出てくるし!」

千歌「みんな色々大変なんだねー」

曜「……?」

梨子「どうしたの?」

曜「あの高そうな車がさっきから停めるのに手こずってるのが気になって……」

千歌「ほんとだ、ちょっと見てくる」


鞠莉「梨子っちー!曜っちー!」

ダイヤ「二人共、お久しぶりですわ」

梨子「鞠莉さん!ダイヤさん!」

曜「もしかしてあれ鞠莉先輩の車?」

鞠莉「イエース♪日本で乗る用よ♪」

ダイヤ「乗せてくださると言うのでお言葉に甘えたのですが……」

千歌「あー緊張したぁ、あんな高そうなの初めて乗ったし……というか鞠莉先輩よく免許取れたね……」

梨子「どういうこと?」

鞠莉「私駐車するのがちょっぴり苦手なの♪」

千歌「後ろボコボコになってたから、私が停めた」

曜「こわっ」


ダイヤ「えぇ非常に怖かったですわ……走ってる時は何ともなかったのですが」

鞠莉「馬の方がずっと素直で困っちゃうわ」

梨子「馬って……」

曜「ダイヤさん、ルビィちゃんは?」

ダイヤ「ルビィなら津島さんや花丸さんと一緒に学校で準備をしてますわ」

千歌「私達もそろそろ行く?」

鞠莉「果南は?」

曜「果南ちゃんならさっき船停めに帰ったから、もうちょっとしたら来るんじゃないかなぁ」

ブロロロ

ダイヤ「言ってるそばから来ましたわね」


果南「おっ、鞠莉とダイヤも来てたんだ、久しぶり」

鞠莉「久しぶり♪元気してた?」

果南「もちろん、2人は?」

ダイヤ「ええ、息災ですわ」

鞠莉「私もバイクにすれば良かったかしら」

ダイヤ「大人しく運転手でも雇ってください」

果南「何の話?」

曜「鞠莉先輩の運転が下手って話」

鞠莉「駐車が苦手なだけよっ」

千歌「じゃあ揃ったし行こっか、梨子ちゃんと曜ちゃんは私が乗っけてくし、ダイヤさんも乗る?」

ダイヤ「そうさせてもらいます」

鞠莉「ええっ!?酷いっ!」


ーーー

ダイヤ「この部室も最後ですわね」

梨子「そうですね」


ガラッ

千歌「3人ともおまたせー♪」

ルビィ「あっ、みんな!」

花丸「久しぶりー♪」

曜「みんな久しぶりー♪元気そうで良かった♪」

梨子「三人とも、改めてラブライブ優勝おめでとう♪」

果南「おー、ほんとに優勝旗置いてある」


『第一回優勝 A‐RISE』
『第二回優勝 μ's』

『第六回優勝 ν-tral』
『第七回優勝 ν-tral』
『第八回優勝 ν-tral』



『第十二回優勝 Aqours』



ダイヤ「結局六人になっても三人になってもAqoursのままでしたね」

千歌「それ以外の名前でなんて考えられなかったしね」

善子「やっぱり思い入れがあるからね、変えようなんて誰も言わなかったし」

花丸「これから先もマル達はAqoursでいたいから」

鞠莉「そうね、例え離れ離れになっても仲間であり続けたいわね」


千歌「……私達、ちゃんとやれてたかな」

善子「急になによ」

千歌「この浦の星や私達、この内浦のこと、ちゃんと誰かの心に残せたのかなって」


曜「それは誰にも分からないんじゃないかな」

ダイヤ「そうですね、でもそれでいいのでは?」

善子「なにも特別になりたいわけじゃないし」

ルビィ「うん、誰もが知ってるアイドルになりたかったわけじゃないからね」

果南「この町のこの海を見て、少し思い出してもらえればそれでいいよね」

花丸「うん、この町を大切に思う人がいるって想ってくれるだけで十分だよ」

鞠莉「そして、そういう気持ちが受け継がれていく事が大切なのよね」

梨子「うん、だから私達のしたことはきっと無駄じゃないよ」

千歌「……そうだよね!」


曜「……よしっ!私はいつか大きな船の船長になって世界中の海を渡りたい!」

花丸「えっ!?なにっ!?」ビクッ

鞠莉「ふふっ♪じゃあ、私は会社を継いで沢山の人を笑顔にしたいわ!」

ダイヤ「急になんですの……」

鞠莉「ほらダイヤも♪」

ダイヤ「えっ……こほん……えー、ゆくゆくは黒澤家当主としてこの町を支えて行きたいと思っています」

果南「ウチの店を通じて一人でも多くに海の良さを知ってもらいたいな」

千歌「私は沢山の人に泊まりに来てもらって、沢山の人の思い出を作ってあげたい」

花丸「マルはいつか小説家になって色んな人に夢を届けたい!」

ルビィ「もっと服飾の勉強して、未来のアイドルを輝かせるデザイナーになりたい」

善子「特になんにも決まってないけど……まぁ、誰かの幸せを支えてあげるような人になりたいかな」

梨子「立派なピアニストになって、小さくても誰かの希望になれるような曲を作りたいなって思ってる」


千歌「……ふふっ♪」

鞠莉「みんな素敵な夢ね♪」

善子「なんか私だけふわっとしてて恥ずかしいんだけど……」

ダイヤ「そんなことありませんわ、とても素敵な夢です」

梨子「いつか夢が叶ったら……ううん、例え叶わなくても、自分の出来ることを胸を張って言える大人になれたら……またここに来よう?」

曜「うんっ!」

果南「案外早く集まっちゃったりしてね」

鞠莉「その時はまた新しい夢でも語り合いましょうよ♪」

花丸「さんせー♪」

ルビィ「あっ、もうちょっとしたら出番だよ」

ダイヤ「そうですわね、一度リハーサルしてから向かいましょうか」

善子「みんなちゃんと練習してきたー?」

梨子「もちろん♪」


ーーー


ーー人生はいじわるだーー


千歌「これまで沢山の人がこの学校に通い卒業していきました、そして今日、この町から浦の星女学院もまた卒業します」


ーー悪いことは何もしていないのにーー


千歌「最後の日に皆さんがかけつけてくれたことで、この学校がどれだけ愛されていたのか、改めて感じることが出来ました」


ーー私達から何もかも奪っていくーー


千歌「この学校は無くなってしまいますが、この学校で学んだ事、出会えた事は皆さんの心にはきっといつまでも残り続けると思います」


ーーでもーー


千歌「だから今日は笑顔で見送りましょう!」


ーーだからこそ何かを手に入れるためにーー


千歌「そして、今日の思い出が大切な思い出になれるように、私達もAqoursのラストステージをさせていただきます!」


ーー人は頑張れるのだろうーー



ーーそしていつかーー


梨子「……」


「桜内さん、まもなく出番でーす」


梨子「分かりました」


『御来場の皆様、大変長らくお待たせいたしました』


梨子「……」カツ…カツ…


『まもなく、桜内梨子ーー』


梨子「……」ギュッ



ーーそしていつか、それが思い出となってーー



『ーーアクア記念ホール落成記念』


『ーーソロ・ピアノコンサート〝サンシャイン〟開演となります』



ーー私達を形作っていくのだろうーー


以上で完結です
長々とお付き合いありがとうございました

おつ!良かったよ

面白かった、おつ

面白かった、ありがとう!乙です!

乙!
最後まで面白かったし良かった!

おつおつ

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