赤城みりあ「お返事、聞かせてください」【モバマスSS】 (58)


モバマス・赤城みりあちゃんSS


・基本台本形式
・キャラ崩壊、コレジャナイ感などありましたらごめんなさい

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  事務所


  城ヶ崎 美嘉(以下 美嘉「おはようございまーす★」


  佐久間 まゆ(以下 まゆ「あら、美嘉さん。おはようございます」


  美嘉「おっ、まゆちゃん。お疲れさま、今日はレッスン?」


  まゆ「はい。ですから早めに来て、Pさんの机を綺麗にしようと思って」


  美嘉「あー……なるほど、まゆちゃんらしいね」


  まゆ「今日は響子ちゃんもいなくて。まったく、Pさんったら、まゆが目を少しでも離すと、すぐに汚すんですから……まゆがしっかり綺麗にしないと。ふふふ♪」


  美嘉「そ、そう。頑張って」

  

  まゆ「ああ、そうでした。美嘉さん、お時間は、大丈夫ですか?」


  美嘉「アタシも、今日はレッスンだけだから大丈夫。モチロン、時間には余裕をもたせてあるから」


  まゆ「それなら、美嘉さん。ちょっと、こちらに……」


  美嘉「なになに? 相談ごとなら、アタシに任せて★」


  まゆ「実は、その―――」



  赤城 みりあ(以下 みりあ「…………」


  美嘉「……みりあちゃん?」


  まゆ「はい。事務所に来たときから、あんな風で。何か思い詰めたような、どこか上の空のような」


  美嘉「なーるほど……たしかに、いつものみりあちゃんらしくないって感じだね」
 

  まゆ「そうなんです。話しかけるのも、何だか憚られて……それで、美嘉さんなら、って。みりあちゃんとも、特に仲が良いですし」


  美嘉「ま、それにお姉ちゃんの先輩でもあるからね。うん、わかった。受けた女の子の悩みは数知れず。カリスマギャルにしてアイドル、この城ヶ崎美嘉に任せて★」




  美嘉「……」ヒョコッ


  まゆ「……」ヒョコヒョコッ


 みりあ「…………はぁ」


  美嘉「にしても、ほんとにらしくない感じだね」


  まゆ「普段の、元気いっぱいって感じとは、正反対です……」


  美嘉「学校か、それともお家で何かあったのか。ま、訊いてみないことには始まらないよね」


  まゆ「……そうですねぇ。それじゃあ、美嘉さん、よろしくおn「やっぱり……私……恋、してるんだ」」


  美嘉「!」サッ


  まゆ「!!」ササッ



  美嘉(つ、つい隠れちゃったけど……え、恋? みりあちゃんが?)ヒソヒソ


  まゆ(……そう、みたいですねぇ。言われてみれば、たしかにあれは、恋をする女の子の表情です。まゆとしたことが……)ヒソヒソ


  美嘉(……え、ウソ、恋? みりあちゃんが? この気持ちの読み方に気がついちゃったの? え、誰、クラスメイト? 近所のお兄さん? ももしかして学校の先生とか!?)


  まゆ(……美嘉さん、随分とその、大丈夫ですかぁ?)


  美嘉(ななななにが!? こ、恋の相談なら山の数ほど受けてきたし、それにアタシは、カリスマでギャルで城ヶ崎の城ヶ崎美嘉だよ!?)


  まゆ(正直今ので不安に変わりましたよぉ……)


  美嘉(よーしここはしっかりと、お姉ちゃんの先輩としても、恋の先輩としても、アタシがばっちし決めてくるから、まゆちゃん、安心して見てて!)


  まゆ(ほんとに大丈夫なんですかぁ!? な、なんか美嘉さん、すっごく目がぐるぐるしてますけど)


  美嘉(だ、ダイジョーブだって、先月の雑誌に載ってた通りにやれば、うん。イケる。渦巻いてる。今、ここが最高潮。輝いてる、カリスマめいてるよアタシ)


  まゆ(色々と落ち着いてください。やっぱり、なんかもうダメな気配しかしませんよぉ……こ、こうなったらまゆg「……大好きって伝えたら……やっぱり、だめだよね」」



  美嘉「!!」


  まゆ「!!」


 みりあ「はぁ……ううん、でも……やっぱり、好きなんだもん……でも」


  美嘉(みりあちゃん……)


 みりあ「好き……大好き……そんなの、どうしたらいいのかな……?」








 みりあ「プロデューサー……P、さん……」




  美嘉「」


  まゆ「」



  美嘉「」


  まゆ「」


  美嘉「」


  まゆ「」


  美嘉「……はっ!!」



  美嘉(え、聞き間違い? ぷ、プロデューサー? みりあちゃんが恋をして、その相手が、プロデューサー、P……?)


  まゆ「P……さん……?」


  美嘉(あっ)


  まゆ「盲点でしたええ盲点でした凛ちゃんや響子ちゃんはもちろんありすちゃんや桃華ちゃん千枝ちゃんも最近は隠す気がなくなってきていましたがまさか」


  美嘉「ま、まゆちゃん落ち着いてって、ま、まだそうと決まったわけじゃ「……美嘉ちゃん? それにまゆちゃんも」


 みりあ「二人とも、なにやってるの? そんなところで」


  まゆ「……みりあちゃん、少し、まゆと、お話しませんかぁ……?」


  美嘉(アタシ、生きて帰れるかなぁ……)



  まゆ「…………」


 みりあ「…………?」


  美嘉(……気まずい。いや、まあ、アタシにも関係ないわけじゃ……い、いや、べ、別にプロデューサーがとかじゃ、そ、そうこれはみりあちゃんが気になるからで)


  まゆ「……みりあちゃん」


 みりあ「……なあに、まゆちゃん?」


  まゆ「なにか……最近、悩んでいることは、ないですかぁ?」


 みりあ「…………っ!」


  美嘉(うん決してPのことが好きとかじゃなくてアタシはアタシ自身がみりあちゃんのことを心配しているワケでみりあちゃんも中々手強そうとか思ってるとかそういう)



  まゆ「……なにか、あるんですねぇ。もし良かったら、話してみてくれませんかぁ?」


 みりあ「……別に、わ、みりあはそんな」


  まゆ「まゆも、美嘉さんも、話してくれるのであれば、みりあちゃんの力になりますよ。ねえ、美嘉さん?」


  美嘉「……えっ? ……あ、うん。みりあちゃん、もちろん無理にとは言わないから、安心して。誰かに言ったりもしない。ここで話すことは、三人だけの秘密★」


 みりあ「美嘉ちゃん……」


  美嘉「アタシは城ヶ崎美嘉だよ? ギャルのカリスマ、日本のファッションリーダー。受けた女の子の悩みは数知れず。いくらでも、みりあちゃんの力になるよ★」


  まゆ(先ほどのを見る限り……心配ですけれど)



 みりあ「…………みりあね。プロデューサーのことが、Pさんのことが好きなの。男の人として」


  まゆ「」


  美嘉(まゆちゃん!?)


  まゆ(だ、大丈夫ですよぉ……)



 みりあ「それでね……みりあ、Pさんのこと、好きになっていいのかな?」


  まゆ「……」


  美嘉「えっ……」


  まゆ「……みりあちゃん。みりあちゃんが、Pさんのことをどうして好きになったのか。どれくらい好きなのか。教えてくれませんかぁ?」


 みりあ「えっ……う、うん」

  

  「出会った瞬間に……ってわけじゃないの。最初は、お兄ちゃんって感じの人で、お父さんって感じにも思えて。それだけだったの」


  「でも、ね。いつだったかな、それはもう、みりあにも わかんないんだけど」


  「憧れみたいな気持ちだったのに。家族みたいな、大好きだったのに。それだけだったのに。いつからか。いつのまにか、そうじゃなくなったんだ」



  「―――気がつくと、いつも目で追っちゃってるんだ。一緒にいると、ぽかぽかするような、でも、とっても苦しくて、でも嬉しくて」


  「―――褒めてもらえると嬉しくて、撫でてもらえると、もっともーっと嬉しいよ。でも、嬉しくなるたびに、まだ足りないって思っちゃって」


  「―――プロデューサーが嬉しいと、みりあも嬉しくなる。プロデューサーが悲しいと、みりあも悲しくなっちゃうんだ」


  「―――朝は、プロデューサーに早く会いたいなーって思って。夜も、プロデューサーに早く会いたいなーって思って」


  「―――晴れの日は、ちゃんと太陽の光を浴びてるかなーって思って。雨の日は、雨に濡れて、風邪ひいちゃったりしてないかなーって思って」


  「―――プロデューサーのことを考えてるだけで、勝手に笑顔がこぼれちゃって。一度、授業中に叱られちゃった。えへへ」


  「―――それにね、他の子と話してるのを見ると、とっても心がキューっとするんだ。おかしくなっちゃうくらいに」


  「それから。それからね―――」





  美嘉(みりあちゃんの口から、次々とプロデューサーへの想いが溢れ出してくる)


  まゆ「…………」


  美嘉(……それを語るみりあちゃんの目は、真剣そのもので。そして、時に幸せそうで。時に苦しそうで。時に辛そうで。時に悲しそうで)


 みりあ「―――」


  美嘉(それは、確かに、誰かのことを強く想ってる。誰かに恋をしている。そんな、一人の女の子だった)



 みりあ「―――だからね。みりあは、プロデューサーが好き。大好き。プロデューサーに、恋、してる」



  美嘉「…………」


  まゆ「……みりあちゃんのお話は、よーくわかりました。どのくらい、Pさんのことが好きなのかも」


  美嘉「まゆちゃん……ちょっと」


  まゆ「……それで、みりあちゃんは、Pさんと……どうなりたいんですかぁ?」


 みりあ「……えっ?」



  まゆ「みりあちゃんはさっき、Pさんのことを好きになってもいいのかな……って言いましたよね?」


 みりあ「う、うん……」


  まゆ「それは、どうしてですかぁ?」


 みりあ「そ、それは……」


  まゆ「……それは?」


 みりあ「だ、だって、みりあがPのことを好きになるってことは」


  まゆ「……ことは」


 みりあ「イケない、こと……だから」



  まゆ「それは、どうしてですかぁ?」


  美嘉「ま、まゆちゃん、だからちょっと……」


 みりあ「だって、みりあ、アイドルなんだよ? みりあは、アイドルだから……好きになっちゃ、いけない」


  まゆ「……なるほど」


  美嘉「…………」


  まゆ「アイドルに……恋愛は御法度、ですからねぇ」


  美嘉「……まゆちゃんがそれ言う?」


  まゆ「なんのことだか、わかりませんねぇ」



 みりあ「……でも……でも、でも! それって……イケないこと、だよね? アイドルは」


  まゆ「……ええ。それでも、まゆは。Pさんのことを、心から、心の底から愛しています。そう、断言できます」


 みりあ「う、あ、だ、だって、それって、ファンのみんなをうらぎるってことだよね? 恋愛はしませんって約束を、破るってことなんだよね?」



  まゆ「はい。そうです。裏切っています。でも、ファンのみなさんも、同じくらい、大切に思っています。それは、みりあちゃんも同じではないですか?」


 みりあ「そ、それは……だけど、それって、いいの?」


  まゆ「いいとか、わるいとか、そんなんじゃないんです。まゆはPさんのことを愛しています。それは、変えられない事実です」


  まゆ「その上で、まゆは、ファンの皆さんが大好きなんです。応援してくれる方々が大切なんです」



  まゆ「みりあちゃんは、どうですか?」


 みりあ「……みりあも、同じだよ。プロデューサーのことが大好きで。ファンのみんなが大好きで。みんな……好き」


  まゆ「ええ。でしたらそれで、いいんですよぉ……」


 みりあ「でも、そんな欲張りで、それに、ファンのみんなに」


  美嘉「うーん……確かにそうかもしれない。裏切られたって、思う人もいるかもしれない。怒る人だって、いるかもね」


 みりあ「…………」


  美嘉「でもさ、誰かを好きになることに、禁止もなにもないって。アタシはそう思う。こ、婚約します、とか、け、結婚……しますってなると違うのかもしんないけど」



  まゆ「ええ、少なくとも、誰かを好きになってはいけない。なんてことは、決してありませんよぉ」

 
 みりあ「……ほ、ほんとうに、いいの? だって、だって……」


  まゆ「もう一度訊きますよ、みりあちゃん。みりあちゃんは、Pさんのことをどう思っていますか? Pさんと、どうなりたいですか。どうしたいですか?」


 みりあ「どう……したい」


  美嘉「……焦んなくていいよ。ゆっくりで。うん。大丈夫だから」


 みりあ「…………私は」




 みりあ「みりあは、伝えたいよ。プロデューサーに。Pさんに。好きって、大好きって。
     世界中で、誰にも負けないくらい愛してるって。Pさんのお嫁さんにしてくださいって! 伝えたいよ……!」


 
  美嘉「みりあちゃん……」


 みりあ「……みりあがプロデューサーのこと、大好きでも、いいの?」


  まゆ「ええ。そうですよぉ。だって、Pさんのことが大好きで大好きで、仕方ないんですよね?」


 みりあ「……うん。何度でも、言えるよ」


  美嘉「だったら、それだけでいいんだって。好きって気持ちに嘘はつけないから。好きになっていいんだよ。、恋して、いいんだよ。みりあちゃん」


 みりあ「……そっか…………そっかぁ」








  まゆ「―――みりあちゃん、すっかり元気になりましたねぇ。若干ゴリ押しっぽくもありましたけど」


  美嘉「いーのいーの、結果オーライ★ ま、これがカリスマたる ゆえん、みたいな★」


  まゆ「おいしいところだけ、持っていきませんでしたかぁ……?」


  美嘉「なんのことだか覚えにないなー★」





 みりあ「…………あ」


  美嘉「あれ、みりあちゃん、どしたの?」


 みりあ「……もしかして、美嘉ちゃんも?」


  美嘉「……え、なにが?」


 みりあ「そっかぁ……うーん。でも、うん。よし」


  まゆ「……?」



 みりあ「みりあね、二人に宣戦布告……します!」


  美嘉「!?」


  まゆ「!?」


 みりあ「……? 合ってる、よね?」


  美嘉「え、宣戦布告? って、えーと」


  まゆ「……ああ、そういうことですかぁ♪」



 みりあ「えへへっ♪ 美嘉ちゃん。まゆちゃん。今から二人は、私の、恋のライバルです!」


  美嘉「」


  まゆ「♪」


  美嘉「え、ちょ、ちょっと待って。まゆは分かるけど、なんでアタシまで!?」


 みりあ「え? だって美嘉ちゃんも、Pさんのこと、好きなんでしょ?」


  美嘉「」



 みりあ「なーんかね、分かっちゃうんだ♪ 同じ人を好きになったからかな?」


  まゆ「なるほど。まゆも分かります。まゆのPさんをじーぃっと見つめてる、誰かの視線♪」


 みりあ「むー、私の、みりあのPさん、だもん!」


  まゆ「こればっかりは、まゆも譲れませんよぉ……!」


  美嘉「」



  美嘉「……ハッ!」


 みりあ「あ、美嘉ちゃん起きた」


  美嘉「ちょっと、待って。な、ななななんでアタシがぷ、ぷろぷろプロデューサーのことがすすす好きだって」


  まゆ「もう暴露してるのと同じような……」


 みりあ「えっとね。思い出してみると……Pさんへの視線の使い方とか、Pさんと会話してるときの表情、とか。美嘉ちゃんは結構わかりやすいかも」



  美嘉「い、いやいやいやいや! そそそりゃ周りに男の人は少ないしぷぷろでゅーさーにはいつも助けられてるけどべべっべつにそんなかおとかもこの「好きなんだー♪」


  美嘉「あぅ……////」


 みりあ「わー照れてる♪ 美嘉ちゃん顔真っ赤だね!」


  まゆ「素直じゃなさそうで、意外と純情みたいですねぇ……」


  美嘉「もう勘弁してぇ……////」






  
 みりあ「―――美嘉ちゃん、まゆちゃん、今日は、ありがとうございました。おかげで、みりあ、新しい目標ができたよ!」


  美嘉「そっか★ なら良かった。うんうん。もしまたなんかあったら、どんどん頼っていいからさ★」


  まゆ「まゆも、いつでも、みりあちゃんの力になりますからねぇ♪ あ、もちろんPさん以外のことならですが」


 みりあ「うん! でも、みりあも負けないからね♪」




 みりあ「……あっ! もうこんな時間なの!? そろそろ帰らないと。レッスンが終わって、そのままだったんだ」


  まゆ「まあ。時間が経つのはあっという間ですねぇ」


 みりあ「それじゃあ、美嘉ちゃん、まゆちゃん、また明日ね! ……あっ! 忘れちゃやだかんね?」


  美嘉「あれー? 明日、何かあったかなー★ ああ、ウソウソ、ちゃんと覚えてるって★」


  まゆ「ええ。明日は、みりあちゃんの誕生日、ですもんねぇ♪」


 みりあ「ふふっ、ちひろさん達も準備してくれてるんでしょ? 楽しみだなー♪ それに、Pさん……も」


  美嘉「後は明日のお楽しみ★ ほーら、帰んなくていいの?」



 みりあ「はーいっ♪ ふふふ、楽しみだなぁ…………そうだ!」


  美嘉「どしたのみりあちゃん?」


  まゆ「どうかしましたかぁ?」


 みりあ「私、決めたよ! 明日、Pさんに告白する!」


  美嘉「!?」


  まゆ「!!」



  美嘉「え、こここ告白ってみりあちゃん、えっ明日!?」


 みりあ「うん! 明日、みりあの誕生日に!」


  まゆ「……みりあちゃん。本気、なんですかぁ?」


 みりあ「もちろん! 明日、Pさんに大好きって伝えるよ!」


  美嘉「い、いや、その、好きになるのは自由だけどさ、さすがにこ、告白って」


  まゆ「ふふ、応援はできませんけどぉ……見守っていますね」


  美嘉「何言ってんのまゆちゃん!?」



 みりあ「まゆちゃん、ありがとね♪」


  まゆ「……いえいえ。ふふっ」


  美嘉「えっ、みりあちゃんほんとにやるの!?」


 みりあ「それじゃあ、美嘉ちゃん、まゆちゃん、お疲れ様でしたっ! またねー!」


  美嘉「き、気をつけてねー★ ……マジかー」


  まゆ「まゆも、うかうかしていられないですねぇ……美嘉さんは、いいのですか?」


  美嘉「あ、アタシ!? いやっ、あ、アタシは、ほら、その……」


  まゆ「このままだと、持ってかれちゃいますよ?」


  美嘉「そういうまゆちゃんだって。あ、アタシは違うけど。アタシは違うけどさ、ほら。みりあちゃんが言うには、ライバルなわけだし」


  まゆ「もちろん、まゆだってただ指をくわえて見ているつもりはありませんよ? けど、それはそれ。これはこれです」


  美嘉「これはこれ、ね。でも、確かに……みりあちゃんが元気になってくれただけで、それでオッケーって感じ」



  美嘉「まあ……普段が明るくて活発だから、分かりにくいけど。本当は真摯で、真面目な子だからね。アタシたちには、ああやってみせるけどさ。
     それも普段の反動っていうか。家ではお姉ちゃんのみりあ。外ではアイドルのみりあ。ちゃんとしなくちゃって、気を張ってたと思うよ」


  まゆ「なんだかんだ言って、もう十一歳とはいえ、まだ十一歳。
     他の子と比べてみても、十一歳にしては立派な、しっかりした子だと、まゆでも分かりますけど。それでも、甘えたりしたい時だってありますよねぇ」


  美嘉「そんな中出来た、好きな男の人が担当プロデューサー、だもんね」


  まゆ「きっと、こんがらがっちゃったんでしょうね」


  美嘉「それも無事解決できたし……斜め上に飛んで行った気がしなくもないんだけど」


  まゆ「まあまあ、命短しなんとやら。ともいいますから」









  美嘉「―――にしても、結構な時間話してたんだねー。もう、こんな時間n…………あ」


  まゆ「……? どうしたんですか、美嘉さ…………あっ」


  二人「「レッスンの、時間……!?」」


  美嘉「わーっ!? やっばいマジで急がないと、マストレさん謹製・地獄の猛特訓メニュー追加は勘弁だって!」


  まゆ「ああ、お茶も片付けないとあとでちひろさんが―――」


  美嘉「一回落ち着いてって、アタシも手伝うから―――」







  もうすぐ夜の十二時になってしまう。そのくらいの時刻。


  灯りはついてるけれど、事務所からは、人の気配がほとんどしない。……あんまりわかんないけどね。


  プロデューサーは、明日の準備があるからと、事務所に泊まるらしいから、多分、いるとしたらプロデューサー一人。


  杏ちゃんの話によれば、寝る前に必ず一回は扉を開けて、外を確認するんだって。


  入り口の前。階段のおどり場に、私は立っている。


  下では、若葉ちゃんが……若葉さんが車で待ってくれてる。


  ここで待ってれば、大丈夫なはず。







  でも、あれ? すぐに寝るとは限らないよね。それも、日付けが明日になっちゃう前には。


  そしたら、失敗? それはちょっと、ううん、すごく嫌だ。


  ママにもパパにも、色んな人に迷惑をかけちゃったし、色んな人にお願いした。


  ここで失敗するわけにはいかないよ。




  なんでそんなことまでして、ここにいるのかなんて。


  それは、もちろん。


  私は今夜、プロデューサーに、Pさんに、告白するんだ。









  えへへ、例え日付けが変わった直後でも、明日は明日。だよね♪


  どうせなら、二人っきりのときがいいもん。


  それに、誕生日を大好きな人と迎えるなんて、すっごく素敵だなって思うの。


  ふふ。いけない、自然に笑っちゃうよ。




  本当にこれでいいのかなってことは、やっぱり思うんだ。


  アイドルが、男の人を好きになって、プロデューサーを好きになって、いいのかなって。


  でも大好きなんだもん。どうしようもないくらいに。大好きなんだもん。


  冷たい風が吹いた。


  四月になったけれど、夜はまだちょっと寒い。上着を持って来ておいてよかった。


  でも、上着もいらなかったかも。


  身体は寒いはずなのに、心はとっても熱くって。心臓も、どくんどくんと聞こえるくらいに鳴っている。  








  こうして待っていると、まるで、デートの待ち合わせをしているみたいだなーって♪


  莉嘉ちゃんから借りたマンガでも、似たようなシーンがあった気がする。


  大好きな人が来るのを、まだかな、まだかな、って待つの。


  マンガと同じように、私もソワソワが止まらない。




  まるで、もう恋人同士になっているような、そんな気分だった。


  告白だってまだしてないのに。それに、振られちゃうかもしれないのに。


  でも、不思議と怖くはなかったんだよ。だって、大好きな人に、大好きって伝えられることが、幸せだって思うから。


  伝えられるだけで、私は嬉しいって思う。たとえ、Pさんに振られても。







  でも。できるなら。もし願いが叶うなら。


  Pさんにも、大好きって言われたいな。


  Pさんとデートしたいな。


  Pさんとキスがしたいな。


  Pさんの、お嫁さんになりたいな。




  がちゃり。




  プロデューサーの、その驚いた顔と目があっちゃった。






  「えへへ、プロデューサー。お疲れ様、です」



   さすがのプロデューサーも、驚いてて、そのあとにコラって怒られちゃった。



  「……ごめんなさい。で、でもね。み、みりあ……待って! ちゃんと、ちゃんと説明するから」



   一人じゃなくて、若葉さんが下にいること。ちゃんとママにもパパにも許可はもらってきたこと。
   
   ちゃんと、最初から全部説明したよ。



  「……うん。ママもパパも、みんな驚いてた」



   みりあがそんなことを頼むなんて。みんな最初そんな風に驚いて。 

   すぐにコラって怒られて。でもね、みりあも引き下がれなかったから。

   頑張って、頑張ってお願いしたんだ。
   
   このときのために。






   「どうしてって? それはね―――」



    もうすぐみりあの誕生日だから、一番最初にプロデューサーに、直接お祝いしてほしかった。

    一番大事なことは言ってないけど、でも、お祝いしてほしいのも、ほんとのことだから。いいよね。

    そしたらプロデューサー。とっても変な顔してた。

    嬉しそうで、悲しそうで、怒ってそうで、でも、嬉しそうに。



   「あっ、だめ! ここじゃなきゃ。だめ」



    中に入れって言われちゃったけど、どうにか断ったよ。

    ここでないと、いけないからね。







    そのあと、少しだけだったけど、いろんな話をした。

    はじめて会ったときのこと。

    はじめての撮影。はじめてのレッスン。はじめての営業。はじめてのLive

    プロデューサーと出会ってからの、今までの、たくさんの思い出。




    楽しいことも、嬉しいことも、悲しいことも、悔しいことも。

    そうやってお話する時間は、ほんの少しだけだったはずなのに。

    みりあには、とっても長く感じられたんだ。




    そうしてプロデューサーと話してるとね。

    心がぽかぽかして、苦しくて、辛くて、でも嬉しくて。



    やっぱり、みりあは―――。







    もうそろそろ、時計が十二時を指す。

    プロデューサーが時計を見て確認している。



   「ねえ、プロデューサー」



   「私ね、プロデューサーと会えて、本当に良かった」



   「プロデューサーと一緒に過ごせて本当に良かった」



   「プロデューサーのアイドルになれて、本当に良かった」





    プロデューサーが、カウントダウンを始める。
    そろそろだね。



   「ねえ、プロデューサーさん―――Pさん」



     ちらりとPさんがこっちを向いた。

     みりあは、ぴょんと、Pさんに飛びついて、離さないようにぎゅうっと抱きしめる。

     Pさんの顔が真正面にあって、今にもくっついてしまいそうだった。


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