【モバマス】佐城雪美「私……まほうつかい……」 (24)

氷結の魔導士・佐城雪美と見習い勇者Pのお話です
6500文字ぐらいのお話です。

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雪美「…………ここは………どこ?」

モバP「目が覚めたか、氷結の魔道士雪美」

雪美「ひょうけつ………?…………すとろんぐ……ぜろ………?」

モバP「なんだそれは、新しい魔法か?」

雪美「私も………わからない…………」

モバP「…………?」

ペロ「雪美ちゃん、もしかして記憶を失くしちゃったんじゃ?」

雪美「記憶………?わからない………起きたら……ここ…居た……」

ペロ「実はかくかくじかじかで……」

雪美「そう……。私……魔法使い………」

雪美「魔王……倒そうと…した……。でも……やられちゃった……」

雪美「だから……オーブ……探す………?」

ペロ「そういうこと」

雪美「よく……わからない……。けど……やってみる……」

モバP「ペロと何はなしてるんだ?」

雪美「ううん……なんでもない……。モバP……行こ……」

モバP「うん、行こう。まずはもりくぼのもりに緑のオーブを取りに行こう」

雪美「もりくぼの……もり…………?」

モバP「そう、もりくぼのもり」

モバP「そこにある大きな机の形をしたご神木があるんだ」

モバP「その御神木の下に居る精霊ノノがどうやら緑のオーブを持っているらしい」

雪美「そう……わかった………」

――――――――――

モバP「ついたぞ、ここがもりくぼのもりだ」

雪美「木……おっきい…………。机……みたい……」

モバP「あそこに誰か居るぞ」

乃々「あの…何かようですか…」

雪美「やっぱり…………乃々…だ………」

乃々「どなたですか…」

モバP「気をつけろ雪美、精霊ノノは植物を操り空を飛び近寄るものを葬り去るらしい」

乃々「そんな物騒なことしないんですけど…」

モバP「それに、強力な狼を従えているらしい」

乃々「あっ、それ美玲さんだと思います…」

雪美「乃々………私………緑のオーブ……欲しい………」

乃々「それはノーノーなんですけど…」

モバP「仕方ない、こうなったら力づくで奪おう」

雪美「えっ……力づく……。だめ………乃々……可哀想……」

モバP「手段を選んでる場合じゃない、行くぞ!」

美玲「ノノに触るな!」ドンッ

モバP「ぐえー!」

乃々「あっ、美玲さん…ありがとうございます…」

美玲「ノノには指一本触れさせないからな!」

雪美「モバP…………弱すぎ………」

ペロ「所詮は見習いの勇者だからにゃ」

美玲「オマエもこいつの仲間か!? それ以上近づくならひっかくぞ!」

雪美「えっ………怖い……」

ペロ「ここは戦うしかにゃいと思うぜ」

雪美「戦う……わからない………。どうしよう……」

ペロ「魔法を使うにゃ。この距離から打てば反撃されずに済む」

雪美「まほう……?どうやって……?私…まほう……使えない……」

ペロ「本来の雪美は無詠唱魔法の使い手だが……詠唱をするにゃ」

雪美「えいしょう……?何か……言う……?」

ペロ「そうにゃ、杖を相手にむけて雪美ちゃんの得意技『氷結・紅ほっぺ』を唱えるにゃ!」

雪美「うん………。ひょうけつ……べに……ほっぺ…………」

美玲「ん?なんだ?………うわっ、なんだこれ!どんどん寒くなってきたぞ!」

ペロ「説明しよう!氷結紅ほっぺとは対象の体温を下げる魔法にゃ!」

ペロ「体温を下げられた相手のほっぺが寒さで紅色に染まることから名付けられたぞ」

美玲「す、すごく寒いぞ」

乃々「だ、大丈夫ですか…の、乃々でよければ暖を取ってもいいんですけど…」

美玲「いいのか!?くっつくぞ!」

乃々「は、はい…どんとこい…です…」

美玲「ノノ、すごく暖かいぞ」ギュッ

乃々「ちょっとだけ恥ずかしいんですけど…」

美玲「ノノってすごくいい匂いするな」ボソッ

乃々「ひっ……助けてほしいんですけど…」

雪美「助ける………。そのかわり……オーブ……欲しい…………」

乃々「うぅ…背に腹は代えられないですね…」

ペロ「雪美ちゃんも意外と強かにゃ」

雪美「ペロ……解除方法……。教えて……」

ペロ「その杖で頭を軽く叩くだけでいいにゃ」

雪美「わかった……」コツン

美玲「おっ……なんだか身体がぽかぽかしてきたぞ」

乃々「助かりました………」

雪美「乃々……………」

乃々「仕方ありません…お渡しします……」

雪美「すごい………綺麗……………」

乃々「装備すると天然が5あがる代わりに弓の命中率が30上がる優れものなんですけど…」

雪美「……………翠?」

乃々「なんでもないです…なんだか言わないといけない気がしただけですので…」

乃々「もりくぼの言うことはお気になさらず…」

雪美「…………?……オーブ……ありがとう………。モバP……行くよ………」

モバP「お、おう……」

――――――――――

モバP「いやぁ、引掻かれたときは棺桶になるかと思ったよ」

雪美「大丈夫………?」

モバP「あぁ、回復してもらったしもう大丈夫だ」

雪美「次……どこ行く………?」

モバP「そうだな次はにのみやのみやだ」

雪美「………飛鳥?」

モバP「雪美も知ってるか。にのみやの宮に居る魔法剣士アスカが『漆黒ニ煌メク宝玉』をもっているらしい」

雪美「早速……行く………」

モバP「気合十分だな、行くぞ」

――――――――――

モバP「ここがにのみやの宮か」

雪美「かっこいい………………!」

モバP「雪美もこういうのが好きなんだな」

雪美「早く……入ろ………」

モバP「あぁ」

飛鳥「誰だ!?」

モバP「俺は勇者モバPだ」

ペロ「みにゃらいだけどにゃ」

モバP「魔王を倒すために『漆黒ニ煌メク宝玉』を借りに来た」

飛鳥「あのオーブを渡すわけにはいかない。すまないが帰ってくれないか?」

モバP「こちらは殺してでもうばいとるつもりだ」

飛鳥「手段を選んでる場合じゃないってわけかい。いいよ、相手になろう」

雪美「大丈夫………………?」

モバP「大丈夫だ、勇者は不意打ちには弱いがこういう一対一の戦いには強いんだ」

飛鳥「悪いけれど初めから全力で行かせてもらうよ」

モバP「望むところだ」

飛鳥「人の世を照らすは光、人の心に救うは闇…」

雪美「モバP……攻撃……、しないの……?」

モバP「詠唱中は待ってあげるのが礼儀なんだよ」

雪美「なるほど……」

モバP「それに……」

雪美「………?」

モバP「めっちゃかっこよくない?」

雪美「………………わかる」

飛鳥「駆け抜ける紫の雷鎚よ……」

飛鳥「我が剣に紫を運び給え。彼の者に死を運び給え」

飛鳥「解き放て! ―紫電ノ刻印―」

モバP「ぐえー!」

雪美「…………わかってた…………」

ペロ「アホにゃ……」

飛鳥「拍子抜け、だね」

飛鳥「それとも、彼はただの傀儡でキミが真打ちかい?」

雪美「ペロ………私も……長いやつ…やりたい……」

ペロ「優れた魔道士は自然と詠唱が脳の根底から湧き出るらしいにゃ」

ペロ「己を信じて、根底より湧き出る言葉を紡ぐにゃ!」

雪美「わかった…………」

飛鳥「驚いたね猫と話せるのかい?」

雪美「猫…じゃない……。この子……ペロ…………」

飛鳥「他の猫とは違う、大切な友達ってわけか」

雪美「飛鳥……友達…居る……?」

飛鳥「なぜボクの名前を…!?もちろん居るさ」

飛鳥「そろそろ帰って来る頃だ」

蘭子「ただい……何奴!?」

雪美「蘭子…………」

蘭子「なにゆえ我の名を知っている!?」

飛鳥「わからない……ボクの名前も知っていた」

蘭子「瞳を持つものか?」

飛鳥「いや、違う。どうやらオーブを狙ってここにきた侵入者のようだ」

蘭子「良かろう、我が相手だ」

雪美「カマ…………かっこいい…………」

蘭子「そう?ありがとう!」

雪美「ふふっ…………」

蘭子「そ、そのような戯言で我は惑わされぬぞ!」

雪美「天より舞い落ちる白雪よ………」

飛鳥「気をつけろ蘭子、魔法を詠唱するつもりだ」

雪美「切り裂くは白……飛び散る血は黒……」

飛鳥「今のうちに攻撃だ、蘭子!」

蘭子「光産みしは闇、闇産みしは我…」

飛鳥「やれやれ、加勢するしか無いようだね」

飛鳥「見えるは閃光、聞こえるは雷鳴……」

雪美「ペロ……今のうち……オーブ……盗んで……」

ペロ「意外とえげつないこと言うにゃ」

雪美「早く………」

ペロ「はいはい」

飛鳥「その刃振るうときその心は鬼」

ペロ(二人とも自分の詠唱に酔ってるにゃ、今のうち……)

蘭子「ならばこそ我が闇を産み、闇こそが光を孕まん」

ペロ「取ってきたよ」

雪美「今のうち……逃げよう……。モバP……行くよ……」

モバP「お、おう……」

ペロ(人はなぜ、詠唱するときに目を閉じてしまうのか)

飛鳥「穿け!」

蘭子「切り裂け!」

飛鳥・蘭子「「双翼の独そ……あれ?」」

飛鳥「どうやら、逃げられたみたいだね」

蘭子「ふっ、敵前逃亡とは口ほどにもない奴め」

飛鳥「所詮、ボク達の敵ではなかったということさ」

蘭子「ははは、愚かな人間どもめ!我にひれ伏すが良い!」

飛鳥(オーブを盗まれたことはしばらく黙っておこう)

――――――――――

モバP「いやー死ぬかと思ったよ」

雪美「モバP………油断………。だめ………」

モバP「ああ、次は気をつけるよ」

雪美「でも……オーブ……げっとした………。やった…ね……」

ペロ「勇者御一行が盗みって……いいのか……?」

モバP「まぁ、奪い取るよりも盗むほうがまだマシだよな……」

雪美「使い終わったら…ちゃんと……返して……。ね………」

モバP「そうだな、ちゃんと返そう」

雪美「次は……どこ………?」

モバP「最後は魔王の城へ繋がる道の途中にある関所」

雪美「ひろみの……関………………?」

モバP「知ってるのなら話は早いな」

モバP「そこに居るドラゴン使いの裕美が『関ちゃんの丸いオーブ』を持っているんだ」

雪美「早速…………行くよ………」

モバP「待ってろよ丸いやつ!」

――――――――――

裕美「で、私のところに来たと」

モバP「そういうことだ、オーブを渡してもらえるとありがたい」

裕美「ダメ、これは私のお気に入りなの」

雪美「裕美…………。お願い…………」

裕美「だめなものはダメ!」ジッ

雪美「裕美…………………」

裕美(ど、どうしよう今怖い顔で睨みつけちゃったかな)

裕美(この人達も何か事情があって来たんだよね)

裕美(オーブは渡せないけど、笑顔でいなきゃ)ニコッ

雪美「………………?」

雪美「…………………」ニパーッ

裕美(眩しい笑顔、私もこんな風に笑顔になれるといいな)

雪美「………裕美……どうしたの………?」

裕美「な、なんでもないよ。私もそんな風に笑えたらなって思っただけ」

雪美「笑う……誰でも…出来る……。違う…………?」

裕美「誰にでもできるわけじゃないと思うよ」

雪美「そう……」

裕美「ところで、このオーブがなぜ必要なの?」

モバP「魔王を倒すために必要なんだ」

モバP「『緑のオーブ』『漆黒ニ煌メク宝玉』『関ちゃんの丸いやつ』これらが揃うとき…」

裕美「ちょっと待って、私の持ってる天球儀って『関ちゃんの丸いやつ』って呼ばれてるの!?」

モバP「知らなかったのか?」

裕美「知らなかった。後緑のオーブだけ普通だね」

雪美「でも………弓…命中……たくさん………アップする……」

裕美「二人共弓持ってないけど、いいの?」

モバP「あっ………」

裕美「ちなみに、私の天球儀は何に使うの?」

モバP「魔王のりゅうせいぐんを無効化できる」

裕美「この天球儀にそんな効果があったんだ……」

雪美「飛鳥から……盗んだオーブ……何に…使う……?」

モバP「これはなんていうか……名前とか黒色の光を放ってるところとかなんかかっこいいから……その……」

裕美「そんな個人的な理由で盗みをしたの?」キッ

モバP「えっ、いや冗談だよ。本当は闇属性の攻撃力が…」

裕美「どちらにしろ盗みはだめ!」キュピィィン

モバP「ぐえー」

雪美「すごい………眼力……だけ…………」

ペロ(モバPが弱すぎるだけなのでは……)

裕美「ごめんなさい、そんなつもりじゃ……」

雪美「大丈夫………たぶん……」

裕美「そう、それならいいけど」

雪美「裕美……丸いやつ………。好き……?」

裕美「うん、だから渡せない」

雪美「わかった……。それ……無くて…いい……」

裕美「私が言うのも変だけど、いいの?」

雪美「大丈夫……。きっと……」

裕美「それならせめて、魔王の間まではこの子で送ってあげる」

ドラゴン「任せろ」

雪美「ありがとう…………」

裕美「じゃあこの人をこの子の背中に乗せてあげて」

雪美「モバP……置いていく……」

ペロ「この戦いについて来れないからな」

裕美「わかった、それじゃあ行くよ」

ーーーーーーーーーー

裕美「ここが魔王の間に繋がるテラスだよ。この戸の向こうが魔王の間」

ペロ「随分ショートカットできたにゃ」

雪美「ありがとう……」

裕美「じゃあ私はこれで」

雪美「またね………」

ペロ「いよいよだにゃ」

雪美「…………うん」

ペロ「準備はいいか?」

雪美「うん……」

ーーーーーーーーーー

こずえ「ふわぁ…だれか…きたのー?」

雪美「うん……来た…………」

こずえ「ゆきみー……おはよー……」

雪美「今日こそ………倒す…………」

ペロ「行くぞ!」

雪美「ところで………魔王………倒す………どうして……………?」

ペロ「えっ?それ知らにゃいのに来たの?」

雪美「…………うん」

ペロ「魔王こずえは人々から朝を奪ったのにゃ」

雪美「そう………」

こずえ「こずえのおうちねー……かーてんないのー……だから、おひるねするとき……おそらくらくするのー」

ペロ「スケールがでかい」

こずえ「でもねー……おひるねあきちゃった……。だからねー……かーてんつけてくれたら……かえすよー」

雪美「わかった………」

ペロ「わかったって……どうするつもりにゃ」

雪美「魔法で…………なんとか………」

ペロ「魔法は万能ではないにゃ」

雪美「やってみなきゃ………わからない……………」

ペロ「雪美ちゃんは氷結系の魔道士だから無理にゃ……」

雪美「行くよ………」

雪美「氷結…………すとろんぐ…………………ぜろ…………………」

そのとき、不思議なことが起こった。

魔王の間と呼ばれたその名に似つかわしくないピンクの天蓋付きベッドやぬいぐるみが置かれた部屋。

その部屋に備え付けられたテラス戸に結露するように雪が集まる。

まるで織るように雪は寄り添いあって面積を広げながら布のように揺らめいていく。

程なくして、まるで初雪の柔らかい白いカーテンができあがった。

こずえ「おー……ゆきのかーてん……きれいー………」

雪美「これで……良い…………?」

こずえ「うんー……こずえねー……これ……すきー……」

こずえ「だから……たいよー……かえすねー……」

雪美「ありがとう…………………」

こずえ「ついでにゆきみも……もとのせかいにかえすよー……」

雪美「……………?」

ペロ「どういうことだ」

こずえ「ゆきみはねー……このせかいのひとじゃないよー……」

雪美「そう…………やっぱり…………」

こずえ「だからねー……かえしてあげるのー……」

雪美「ありがとう…………」

こずえ「めをとじて……とじろー……」

雪美「うん……………」

こずえ「じなえー………たすんもー……つばさ、さずけろー…………」

――――――――――――――――――――

―――――――――――――――

――――――――――

―――――

雪美「夢………?でも……楽しかった………」

雪美「アイドル………冒険みたい…………」

雪美「でも……現実…………Pが……まほうつかい…ね……。ふふっ………」

終わり

以上です
これからも膝の上の恋人こと佐城雪美ちゃんをよろしくお願いします!

前作です
【デレマスSS】モバP「クール系安眠妨害アイドル」
【デレマスSS】モバP「クール系安眠妨害アイドル」 - SSまとめ速報
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