【デレマス】タクシー運転手「お客さんはアイドルとプロデューサー その3」 (28)

このSSは若いタクシーの運転手さんの車にアイドルとプロデューサーが乗ってくるという話です


その2→【デレマス】タクシー運転手「お客さんはアイドルとプロデューサー その2」 - SSまとめ速報
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「ありがとうございました」

そう言い俺は今日最初のお客さんに別れをつげる。

今日は夜番のため7時から働いているが今日は雨のせいか客足が少ない。

もう11時を過ぎているのに今日のお客さんはまだ1組。

まぁ今日土曜日だし、最近寒いし、みんな外に出たくないのだろう。

そう自分に言い聞かせて俺は次の客がいそうな飲み屋街へ向かった。

飲み屋街に着くと早速手を挙げてる人発見。

ほら、やっぱりな、と思いながらその人の横にタクシーを止める。

「楓さん、しっかり歩いてください。」「は~い♪ちゃんと歩いてますよ~」

そんな事言いながら男性と長身の女性が入ってきた。

俺は目的地を聞くために後ろを振り向いた時、女性を見て驚いた。

吸い込まれるようにみとれてしまう緑色の右目、まるで夜空に輝く星のような青色の左目、

透き通った白く綺麗な顔に、酒を沢山飲んだのか頬に赤みがさされていて、

簡単に言うととんでもない美人さんだった。

女性の方がやっぱりかなり酔っているらしく男性が目的地である(たぶんどちらかが住んでいる)マンションを言ってくれたので、俺は車を走らせる。

後ろで男性と女性は話している

男性「なんであんな所で一人で飲んでいたんですか、楓さん。」

女性「だって昨日あんなに凄いライブしたのに。反省会、してくれないじゃないですか。だから一人でヤケ酒です。」

男性「え?それなら昨日のライブの後の打ち上げでしたじゃないですか、ここの演出が良かった~とか、次はこうしたいですね~って」

女性「違います。そういう事じゃありません。あ、運転手さん、聞いてもらえますか?」

突然話を振られた。

「え?あ、はい。なんでしょうか?」

女性「この人酷いんです、2人で約束したんですよ、何か大きな事があったらその後反省会しましょう、って言ったのに」

男性「それただ楓さんがお酒だけと言うことが分かってやめましたよね。」

女性「どうせ私なんかより若い女の子の方が大切なんですよ、この女タラシ」

男性「いや僕の担当楓さんだけじゃないですか。」

女性「私を檻から解き放ってくれたPさんはどこへ行っちゃったんですか!」

男性「アンタ自分から「アイドルにしろ」って言ってきただろ!」

「へ、へぇ~」

何て返せばいいか分からない。

女性「こんな人どう思いますか?」

えぇ…ここで問いかけんの…えっーと、じゃあ

「女性のお客様は「楓、でいいですよ」じゃあ、楓さんはその、Pさんを気に入っているのですね。」

楓さん「えぇ、この業界で上手くやっていけているのもPさんのおかげです。」

「そうなんですか。」

楓さん「はい、いつも私のことを考えてくれて仕事を持って来てくれます。ですよね、Pさん♪」

Pさん「え、も、もちろんです、担当アイドルですから。」

楓さん「むぅ、なんだか当たり障りのないコメントですね。Pさんは私のことが嫌いなんですか?」

Pさん「いえ、決してそんな事は、ただ」

楓さん「私は」


楓さん「Pさんのこと、好きですよ。」


車内が一気に静まり返った。

Pさん「え、あの、それは、」

楓さん「もちろん、仕事仲間や友達としてという意味」

Pさん「あ、なんだ、ですよね~いや~ビックリし」

楓さん「ではありません。」

Pさん「……………た」

うん、俺もビックリしてる。

バックミラー越しに見えるPさんは豆鉄砲を食ったよう、とはこうゆうことを言うのだなと思う顔をしてた。

対照的に楓さんはニコニコと微笑みながら答えを待っている感じだ。かわいい。

数分の沈黙、口を切ったのはPさんだった。

Pさん「い、いや~静かですね、運転手さん、ラジオをつけてもらえますか?」

ヘタレだ。このPさんヘタレ野郎だ。

楓さん「…ヘタレ」ボソッ

しかしお客さんの頼みを断ることはできない。俺はしょうがなくラジオをつけた。

ラジオ音声「真夜中のMagic Hour~♪今日のお相手は私、川島瑞樹が担当しています。まだ外は雨が降っているらしいけど「これならお肌が乾燥しないわ~」なんて、思ってないでしょうね。え?「瑞樹さんはそう考えてるんじゃないの?」ですって?甘い!甘いわ!もしそう思うならあなたは真の川島瑞樹ファンじゃないわ!いい?今降っている雨はただの水の雨じゃないの。酸性、そう酸を含んでいる雨なの!酸はお肌の敵よ!酸がどれだけ肌に悪いか━━━」


なんか、濃い人がラジオやっているなぁ…

楓さん「あ、今日のマジアワ、瑞樹さんがやっているんですね。ふふっ、瑞樹さん、面白いですね。」

Pさん「そ、そうですね。いや~瑞樹さん、今日も面白いな~」

どうやら2人の共通の知り合いっぽい。

楓さん「Pさんは瑞樹さんのような面白い女性が好きなんですか?」

Pさん「え、ええ。まあ、一応。」

楓さん「良かった、じゃあ私のこと好きなんですね♪」

Pさん「え…」

楓さん「私、面白いですよね。だから、私のことが好きだということですよね」

また始まる沈黙の時間。ただラジオの音声だけが車内に響く。

ラジオ音声「いい?雨の日のお肌対策その6は、って、何?   メールを読んでくれ、ですって。最低でもお肌対策その17までは言いたかったのに~瑞樹、悲しいわ。ま、そんな事言ってたってしょうがないわね。じゃあ続いてのメールはマジアワネーム、めいぷるさんからで~す♪」

ラジオ音声「「瑞樹さん、マジアワです。」はいマジアワ~♪」

ラジオ音声「「私は最近、困っているがあります。私は同じ職場に好きな人がいます。その人にアプローチをかけてはいるのですが、彼はなかなか鈍感で気付いてくれません。彼を振り向かせるにはどうしたらいいのでしょうか?」」

ラジオ音声「同じ職場での色恋沙汰ってなかなか進まないのよね~私も以前働いて場所でもそういう風景をよく見たわ。周りの目もあるし、玉砕しちゃったり、もし別れちゃったりしてもすぐには離れられないからもしバッタリ会っちゃった時なんてもう、耐えられないわよね。」

ラジオ音声「めいぷるさん、あなたの気持ちはよくわかるわ。けどそんな所で立ち止まっていると、いつまでたってもあなたの気持ちは彼には伝わらないわ。こうゆう時こそね、少女漫画のごとく直接彼にアタックすればいいのよ!向こうがその気になればこっちの勝ちよ!なんだったらいきなりキスでもしちゃえばいいじゃない♪」

誰も喋らないタクシー車内。そんななか楓さんが急に、

楓さん「なんだかラジオつまらないな~私音楽が聞きたいです♪」

ウソつけ。さっき自分「面白い」言ってたじゃん。

さっきのラジオの内容からして楓さんが何したいかだいたい分かる。

楓さんも多分俺が察してることを分かってて言ったのだろう。アンタ絶対酔ってないだろ。

楓さんの緑色の右目がバックミラー越しに俺に訴えかけてくる。

そしてPさんの「やめてくれ」という目線もバックミラー越しに感じた。



けど、さ、私タクシー運転手なんですよ。

「そうですね。FMにでもしましょうか。」

Pさん「え、ちょっ」

楓さん「お願いします♪」

「あれ?ちょっと音量小さいかな?音量上げますね。」

俺は外からでも聞こえるんじゃないかと思うくらい音量を上げた。




私、お客さんの頼みは断れないんです。

それから俺は目的地に着くまでバックミラーどころかサイドミラーすら見なかった。

多分タクシー運転手になってから、いや、人生で一番危ない運転だっただろう。

なんとか事故らず目的地に着くことができた。

Pさん「ほら、家に着きましたよ。僕が支払いますから楓さんは先に降りて下さい。」

先に降りた楓さんを見た後、俺は料金を受け取る。

料金を受け取る時に、

Pさん「僕から告白したかったのに」

と言われた。ありゃ、そりゃ悪い事したな。

楓さんを背負って楓さんの自宅のマンションに入っていくPさんを俺は見送り、

まだまだ夜はこれからと思い、次のお客さんを求めてタクシーを再び走らせた。

雨はやんでた。

~二日後 月曜日~

俺は会社の休憩室でテレビを見ていた。

テレビ「先週の金曜に行われた高垣楓さんのライブは2万人の観客を動員し━━」

そこには先日乗客として乗せた高垣楓の輝いている姿が映っており、

その姿に感動し、興奮しているファンの姿も映っていた。

もしこのファンたちがこの前の車内の中の出来事を知ったらどうなるのか。俺には想像できない。

しかしよく車内であんな事したもんだ。いや、見てないけど。

なんであんな事できたのだろう。俺なりに考えてみた。

多分だが、

他の物を全て失ってでも、プロデューサーが欲しかったのだろう。

それほど彼女はプロデューサーのことが好きだった、だからタクシーの中でも告白できた。

そんなロマンチックな理由だったら面白いのにな、と思う。だってもし本当にそうだったら、

「はーあ、美人はズルいな。」

ロマンチック過ぎて他の人に話したくなくなるよね。

俺と楓さんとPさんだけの秘密にしておきたいじゃん。

終わりです。

この作品を書き終えた時に
①楓さんなのにダジャレ言ってない。
②こういう時って社用車使うよね。
て思いました。

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